(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】中空樹脂粒子、その製造方法、およびその用途
(51)【国際特許分類】
C08F 212/34 20060101AFI20221114BHJP
C08F 212/04 20060101ALI20221114BHJP
C08G 65/48 20060101ALI20221114BHJP
C09D 125/00 20060101ALI20221114BHJP
B01J 13/14 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
C08F212/34
C08F212/04
C08G65/48
C09D125/00
B01J13/14
(21)【出願番号】P 2022532085
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 JP2021045347
【審査請求日】2022-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2020209335
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100121636
【氏名又は名称】吉田 昌靖
(72)【発明者】
【氏名】松浦 春彦
(72)【発明者】
【氏名】松野 晋弥
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-160399(JP,A)
【文献】特開昭64-065140(JP,A)
【文献】特表2014-529672(JP,A)
【文献】国際公開第2014/203511(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/44
C08F 12/00
C08F 20/00
C08F 290/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェル部と該シェル部により囲われた中空部分を有する中空樹脂粒子であって、
該中空部分が1つの中空領域からなり、
該シェル部が、式(1)により表されるエーテル構造を有する
ポリマー(P)を含み、
該シェル部中の該ポリマー(P)の含有割合が、60重量%~100重量%であり、
該ポリマー(P)は、式(1)により表されるエーテル構造を有する化合物(A)と該化合物(A)と反応するモノマー(B)の反応によって得られ、
該化合物(A)はポリフェニレンエーテルであり、
該モノマー(B)は、架橋性モノマーと単官能モノマーを含み、
該架橋性モノマーは芳香族系架橋性モノマーであり、
該芳香族系架橋性モノマーは、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジアリルフタレートから選ばれる少なくとも1種であり、
該単官能モノマーは芳香族系単官能モノマーであり、
該芳香族系単官能モノマーは、スチレン、α-メチルスチレン、エチルビニルベンゼン、ビニルトルエン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレンから選ばれる少なくとも1種である、
中空樹脂粒子。
【化1】
【請求項2】
平均粒子径が0.1μm~50.0μmである、請求項1に記載の中空樹脂粒子。
【請求項3】
前記中空樹脂粒子を窒素雰囲気下において10℃/分で昇温した際の5%熱重量減少温度が300℃以上である、請求項1または2に記載の中空樹脂粒子。
【請求項4】
半導体部材用樹脂組成物に用いる、請求項1から3までのいずれかに記載の中空樹脂粒子。
【請求項5】
塗料組成物に用いる、請求項1から3までのいずれかに記載の中空樹脂粒子。
【請求項6】
断熱性樹脂組成物に用いる、請求項1から3までのいずれかに記載の中空樹脂粒子。
【請求項7】
光拡散性樹脂組成物に用いる、請求項1から3までのいずれかに記載の中空樹脂粒子。
【請求項8】
光拡散フィルムに用いる、請求項1から3までのいずれかに記載の中空樹脂粒子。
【請求項9】
請求項1から3までのいずれかに記載の中空樹脂粒子を含む、半導体部材用樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1から3までのいずれかに記載の中空樹脂粒子を含む、塗料組成物。
【請求項11】
請求項1から3までのいずれかに記載の中空樹脂粒子を含む、断熱性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1から3までのいずれかに記載の中空樹脂粒子を含む、光拡散性樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1から3までのいずれかに記載の中空樹脂粒子を含む、光拡散フィルム。
【請求項14】
請求項1から8までのいずれかに記載の中空樹脂粒子の製造方法であって、
式(1)により表されるエーテル構造を有する化合物(A)20重量部~80重量部と該化合物(A)と反応するモノマー(B)80重量部~20重量部(化合物(A)とモノマー(B)の合計量を100重量部とする)を、非反応性溶剤の存在下、水系媒体中で反応させる、
中空樹脂粒子の製造方法。
【化2】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空樹脂粒子、その製造方法、およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器を用いた情報処理の高速化を図るため、多層プリント基板の絶縁層を低誘電化、低誘電正接化する試みがなされている。その一環として、シェル部と該シェル部により囲われた中空部分を有する中空粒子を熱硬化性樹脂に混在させることで、樹脂層に空域を導入し、低誘電化、低誘電正接化を図る検討がなされている。
【0003】
このような用途に使用される中空樹脂粒子には、例えば、該中空樹脂粒子が混在する熱硬化性樹脂を成型加工する際やはんだを使用する際に加熱されても、該中空樹脂粒子に実質的な変化が生じないような高い耐熱性が求められている。
【0004】
また、中空樹脂粒子中に水分が存在すると、上記のような加熱時に該水分が蒸発してアウトガスとなり、絶縁層の信頼性を損なる可能性がある。このため、このような用途に使用される中空樹脂粒子は、吸水率が低いことが求められている。
【0005】
中空樹脂粒子として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートやジペンタエリスリトールヘキサアクリレートをはじめとするアクリル系多官能モノマーを主成分としたモノマーを疎水性溶剤と共に懸濁重合することでアクリル系中空樹脂粒子が得られることが報告されている(特許文献1)。
【0006】
中空樹脂粒子として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートを始めとするアクリル系多官能モノマーと、メチルメタクリレートを始めとするアクリル系単官能モノマーを主成分としたモノマーを、疎水性溶剤と共に懸濁重合することで、シェルにより囲われた中空が、複数の中空領域からなる中空樹脂粒子が得られることが報告されている(特許文献2)。
【0007】
中空樹脂粒子として、ジビニルベンゼンを炭素数8~18の飽和炭化水素類(より具体的には、ヘキサデカン)と共に懸濁重合することで、スチレン系中空樹脂粒子が得られることが報告されている(特許文献3)。
【0008】
中空樹脂粒子として、多官能モノマーと単官能モノマーを重合して得られる中空樹脂粒子を樹脂に配合することで、絶縁特性に優れ、低誘電率かつ低誘電正接の有機絶縁材とすることが報告され、具体的なモノマーとしては、スチレン、メチルメタクリレート、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどが使用されている(特許文献4)。
【0009】
中空樹脂粒子として、シェルが架橋性モノマーの重合体及び共重合体、及び該架橋性モノマーと単官能性モノマーとの共重合体のいずれかでなり、単相構造を有する、代表的には、ジビニルベンゼンを炭素数8~18の飽和炭化水素類(より具体的には、ヘキサデカン)と共に懸濁重合することで得られるスチレン系中空樹脂粒子が報告されており、該中空樹脂粒子と熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物が、電子機器等に用いられる多層プリント基板の製造に好適であることが報告されている(特許文献5)。
【0010】
一般に、アクリル系樹脂について、誘電率、誘電正接の数値が高いこと、耐熱性が不十分なこと、吸水率が高いことが知られている。このことから、特許文献1、特許文献2に記載のアクリル系中空樹脂粒子は、樹脂層の低誘電化、低誘電正接化を図る目的、樹脂層に高い耐熱性を付与する目的、樹脂層の吸水性を抑える目的に対しては不向きである。
【0011】
特許文献3に記載のスチレン系中空樹脂粒子は、アクリル系中空樹脂粒子に比べて、比誘電率、誘電正接の低い素材(架橋性ポリスチレン)からなる。このため、樹脂層の低誘電化、低誘電正接化を図る目的には有効な粒子と言える。しかし、その製造には、炭素数8~18の飽和炭化水素類(具体的には、ヘキサデカン)を使用しているため、蒸留等による中空部分からの溶媒除去が難しく、得られるスチレン系中空樹脂粒子中に炭素数8~18の飽和炭化水素類が残存しており、中空部分を完全に空気に置換したスチレン系中空樹脂粒子が得られ難い。また、中空部分を完全に空気に置換したスチレン系中空樹脂粒子とするためには、上記のような溶媒除去のために製造コストがかかる。さらに、特許文献3に記載のスチレン系中空樹脂粒子は、耐熱性が不十分である。
【0012】
特許文献4に記載の中空樹脂粒子は、スチレン系モノマーと、誘電率、誘電正接の数値の高いアクリル系モノマーを併用しているため、樹脂層の低誘電化、低誘電正接化が不十分である。また、特許文献4には、耐熱性の指針として、窒素雰囲気化、10℃/分の昇温条件でのTG―DTA測定による10%重量減少温度が示されているが、耐熱性が不十分である。
【0013】
特許文献5に記載の中空樹脂粒子は、特許文献3に記載のスチレン系中空樹脂粒子と同様、その製造に炭素数8~18の飽和炭化水素類(より具体的には、ヘキサデカン)を使用しているため、蒸留等による中空部分からの溶媒除去が難しく、得られるスチレン系中空樹脂粒子中に炭素数8~18の飽和炭化水素類が残存しており、中空部分を完全に空気に置換したスチレン系中空樹脂粒子が得られ難い。また、中空部分を完全に空気に置換したスチレン系中空樹脂粒子とするためには、上記のような溶媒除去のために製造コストがかかる。さらに、特許文献5に記載のスチレン系中空樹脂粒子は、耐熱性が不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特許第6513273号公報
【文献】特許第4445495号公報
【文献】特開2002-080503号公報
【文献】特開2000-313818号公報
【文献】特許第4171489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、シェル部と該シェル部により囲われた中空部分を有する中空樹脂粒子であって、低誘電化、低誘電正接化が達成でき、優れた耐熱性を発現できる、中空樹脂粒子を提供することにある。また、そのような中空樹脂粒子を簡易に製造する方法を提供することにある。さらに、そのような中空樹脂粒子の用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の実施形態による中空樹脂粒子は、
シェル部と該シェル部により囲われた中空部分を有する中空樹脂粒子であって、
該シェル部が、式(1)により表されるエーテル構造を有する。
【化1】
【0017】
一つの実施形態においては、本発明の実施形態による中空樹脂粒子は、平均粒子径が0.1μm~50.0μmである。
【0018】
一つの実施形態においては、上記中空部分が1つの中空領域からなる。
【0019】
一つの実施形態においては、上記中空部分が複数の中空領域からなる。
【0020】
一つの実施形態においては、上記中空部分が多孔質構造からなる。
【0021】
一つの実施形態においては、上記中空樹脂粒子を窒素雰囲気下において10℃/分で昇温した際の5%熱重量減少温度が300℃以上である。
【0022】
一つの実施形態においては、本発明の実施形態による中空樹脂粒子は、半導体部材用樹脂組成物に用いる。
【0023】
一つの実施形態においては、本発明の実施形態による中空樹脂粒子は、塗料組成物に用いる。
【0024】
一つの実施形態においては、本発明の実施形態による中空樹脂粒子は、断熱性樹脂組成物に用いる。
【0025】
一つの実施形態においては、本発明の実施形態による中空樹脂粒子は、光拡散性樹脂組成物に用いる。
【0026】
一つの実施形態においては、本発明の実施形態による中空樹脂粒子は、光拡散フィルムに用いる。
【0027】
本発明の実施形態による半導体部材用樹脂組成物は、本発明の実施形態による中空樹脂粒子を含む。
【0028】
本発明の実施形態による塗料組成物は、本発明の実施形態による中空樹脂粒子を含む。
【0029】
本発明の実施形態による断熱性樹脂組成物は、本発明の実施形態による中空樹脂粒子を含む。
【0030】
本発明の実施形態による光拡散性樹脂組成物は、本発明の実施形態による中空樹脂粒子を含む。
【0031】
本発明の実施形態による光拡散フィルムは、本発明の実施形態による中空樹脂粒子を含む。
【0032】
本発明の実施形態による製造方法は、
本発明の実施形態による中空樹脂粒子の製造方法であって、
式(1)により表されるエーテル構造を有する化合物(A)20重量部~80重量部と該化合物(A)と反応するモノマー(B)80重量部~20重量部(化合物(A)とモノマー(B)の合計量を100重量部とする)を、非反応性溶剤の存在下、水系媒体中で反応させる。
【化2】
【発明の効果】
【0033】
本発明の実施形態によれば、シェル部と該シェル部により囲われた中空部分を有する中空樹脂粒子であって、低誘電化、低誘電正接化が達成でき、優れた耐熱性を発現できる、中空樹脂粒子を提供することができる。また、そのような中空樹脂粒子を簡易に製造する方法を提供することができる。さらに、そのような中空樹脂粒子の用途を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】中空部分の構造を説明する概略断面図である。
【
図2】実施例1で得られた中空樹脂粒子(1)の断面写真図である。
【
図3】実施例2で得られた中空樹脂粒子(2)の断面写真図である。
【
図4】実施例3で得られた中空樹脂粒子(3)の断面写真図である。
【
図5】実施例4で得られた中空樹脂粒子(4)の断面写真図である。
【
図6】実施例5で得られた中空樹脂粒子(5)の断面写真図である。
【
図7】実施例6で得られた中空樹脂粒子(6)の断面写真図である。
【
図8】実施例7で得られた中空樹脂粒子(7)の断面写真図である。
【
図9】実施例8で得られた中空樹脂粒子(8)のTEM写真図である。
【
図10】実施例9で得られた中空樹脂粒子(9)のTEM写真図である。
【
図11】実施例10で得られた中空樹脂粒子(10)の断面写真図である。
【
図12】実施例11で得られた中空樹脂粒子(11)の断面写真図である。
【
図13】比較例1で得られた粒子(C1)の断面写真図である。
【
図14】比較例2で得られた粒子(C2)のTEM写真図である。
【
図15】実施例1で得られた中空樹脂粒子(1)の紫外可視近赤外分光反射スペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0036】
≪≪1.中空樹脂粒子≫≫
≪1-1.中空樹脂粒子の構造と特性≫
本発明の実施形態による中空樹脂粒子は、シェル部と該シェル部により囲われた中空部分を有する中空樹脂粒子である。ここでいう中空とは、内部が樹脂以外の物質、例えば、気体や液体等で満たされている状態を意味し、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは、気体で満たされている状態を意味する。
【0037】
シェル部と該シェル部により囲われた中空部分は、
図1(a)の概略断面図に示すように、1つの中空領域からなるものであってもよいし、
図1(b)の概略断面図に示すように、複数の中空領域からなるものであってもよい。
【0038】
シェル部と該シェル部により囲われた中空部分は、
図1(c)の概略断面図に示すように、多孔質構造からなるものであってもよい。このように中空部分が多孔質構造である場合、中空部分が1つの中空領域(連続孔)からなる場合と複数の中空領域(独立孔)からなる場合とこれらの混合形態からなる場合があり得る。
【0039】
本発明の実施形態による中空樹脂粒子の平均粒子径は、好ましくは0.1μm~50.0μmであり、より好ましくは0.1μm~40.0μmであり、さらに好ましくは0.2μm~30.0μmであり、特に好ましくは0.3μm~20.0μmである。中空樹脂粒子の平均粒子径が上記範囲内にあれば、本発明の効果がより発現し得る。本発明の実施形態による中空樹脂粒子の平均粒子径が、上記範囲を外れて小さすぎる場合、シェル部の厚みが相対的に薄くなるため、十分な強度を有する中空樹脂粒子とならないおそれがある。本発明の実施形態による中空樹脂粒子の平均粒子径が、上記範囲を外れて大きすぎる場合、懸濁重合中にモノマー成分が重合して生じるポリマーと溶剤との相分離が生じにくくなるおそれがあり、これによってシェル部の形成が困難となるおそれがある。
【0040】
本発明の実施形態による中空樹脂粒子は、窒素雰囲気下において10℃/分で昇温した際の5%熱重量減少温度が、好ましくは300℃以上であり、より好ましくは320℃以上であり、さらに好ましくは340℃以上であり、特に好ましくは360℃以上である。上記5%熱重量減少温度の上限は、現実的には、好ましくは500℃以下である。本発明の実施形態による中空樹脂粒子の、窒素雰囲気下において10℃/分で昇温した際の5%熱重量減少温度が上記範囲内にあれば、本発明の実施形態による中空樹脂粒子は優れた耐熱性を発現できる。本発明の実施形態による中空樹脂粒子の、窒素雰囲気下において10℃/分で昇温した際の5%熱重量減少温度が、上記範囲を外れて小さすぎると、例えば、中空樹脂粒子を熱硬化性樹脂と混合した場合、硬化反応のための加熱により粒子に変形が生じてしまい、中空部分が失われることで、低誘電効果、低誘電正接化効果が低下してしまうおそれがある。
【0041】
本発明の実施形態による中空樹脂粒子は、該中空樹脂粒子を、40℃、95%RHの雰囲気下において96時間静置した後の水分含有率が、好ましくは0.50重量%以下であり、より好ましくは0.45重量%以下であり、さらに好ましくは0.40重量%以下であり、特に好ましくは0.35重量%以下である。上記水分含有率は低ければ低いほどよく、好ましくは0重量%以上である。中空樹脂粒子を40℃、95%RHの雰囲気下において96時間静置した後の水分含有率が上記範囲内にあれば、本発明の効果がより発現し得る。中空樹脂粒子を40℃、95%RHの雰囲気下において96時間静置した後の水分含有率が上記範囲を外れて大きすぎると、中空樹脂粒子の吸水率が高くなるおそれがある。
【0042】
≪1-2.シェル部≫
シェル部は、式(1)により表されるエーテル構造を有する。
【化3】
【0043】
シェル部は、好ましくは、式(1)により表されるエーテル構造を有するポリマー(P)を含む。シェル部が、このようなポリマー(P)を含むことにより、本発明の効果がより発現し得る。
【0044】
ポリマー(P)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0045】
シェル部中のポリマー(P)の含有割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは60重量%~100重量%であり、より好ましくは70重量%~100重量%であり、さらに好ましくは80重量%~100重量%であり、特に好ましくは90重量%~100重量%である。
【0046】
シェル部は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分を含んでいてもよい。
【0047】
<ポリマー(P)>
ポリマー(P)としては、式(1)により表されるエーテル構造を有していれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なポリマーを採用し得る。本発明の効果をより発現し得る点で、このようなポリマー(P)としては、好ましくは、式(1)により表されるエーテル構造を有する化合物(A)と該化合物(A)と反応するモノマー(B)の反応によって得られるポリマーが挙げられる。
【0048】
式(1)により表されるエーテル構造を有する化合物(A)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0049】
式(1)により表されるエーテル構造を有する化合物と反応するモノマー(B)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0050】
化合物(A)とモノマー(B)の比率は、化合物(A)とモノマー(B)の合計量を100重量部とした場合、重量部比(化合物(A):モノマー(B))で、好ましくは(20重量部~80重量部):(80重量部~20重量部)である。
【0051】
上記好ましい比率の一つの実施形態としては、より好ましくは(50重量部~80重量部):(50重量部~20重量部)であり、さらに好ましくは(55重量部~75重量部):(45重量部~25重量部)であり、特に好ましくは(60重量部~70重量部):(40重量部~30重量部)である。
【0052】
上記好ましい比率の別の一つの実施形態としては、より好ましくは(30重量部~70重量部):(70重量部~30重量部)であり、さらに好ましくは(35重量部~65重量部):(65重量部~35重量部)であり、特に好ましくは(40重量部~60重量部):(60重量部~40重量部)である。
【0053】
化合物(A)の含有割合が、上記範囲を外れて小さすぎると、耐熱性が不十分となるおそれがある。化合物(A)の含有割合が、上記範囲を外れて大きすぎると、シェル部と該シェル部により囲われた中空部分の形成が困難となるおそれがある。
【0054】
化合物(A)としては、式(1)により表されるエーテル構造を有していれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な化合物を採用し得る。本発明の効果をより発現し得る点で、このような化合物(A)としては、好ましくは、ポリフェニレンエーテルが挙げられる。ポリフェニレンエーテルの市販品としては、例えば、商品名「ノリル」(SABIC株式会社製)、商品名「ユピエース」(三菱化学株式会社製)、商品名「ザイロン」(旭化成株式会社製)、商品名「OPE-2St」(三菱瓦斯化学株式会社製)が挙げられる。
【0055】
後述の非反応性溶剤との相溶性の点や、耐熱性に優れた中空樹脂粒子をより簡便に作成可能な点から、ポリフェニレンエーテルはオリゴマーであることが好ましく、数平均分子量(Mn)が500~3500であることが好ましい。
【0056】
モノマー(B)としては、例えば、架橋性モノマー、単官能モノマーが挙げられる。本発明の効果をより発現し得る点で、化合物(A)の末端基と反応するモノマーが好ましい。
【0057】
架橋性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリル酸エステル;N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’-エチレンビス(メタ)アクリルアミド等の多官能アクリルアミド誘導体;ジアリルアミン、テトラアリロキシエタン等の多官能アリル誘導体;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジアリルフタレート等の芳香族系架橋性モノマー;が挙げられる。本発明の効果をより発現し得る点で、架橋性モノマーとしては、芳香族系架橋性モノマーが好ましく、ジビニルベンゼンがより好ましい。架橋性モノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0058】
単官能モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等の炭素数1~16のアルキル(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、α-メチルスチレン、エチルビニルベンゼン、ビニルトルエン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン等の芳香族系単官能モノマー;ジメチルマレエート、ジエチルフマレート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート等のジカルボン酸エステル系モノマー;無水マレイン酸;N-ビニルカルバゾール;(メタ)アクリロニトリル;が挙げられる。本発明の効果をより発現し得る点で、単官能モノマーとしては、芳香族系単官能モノマーが好ましく、スチレン、エチルビニルベンゼンがより好ましい。単官能モノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0059】
ポリマー(P)は、代表的には、化合物(A)とモノマー(B)の反応によって形成し得る。
【0060】
化合物(A)とモノマー(B)の反応は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な反応によって行うことができる。このような反応としては、好ましくは、懸濁重合反応である。
【0061】
懸濁重合反応を行う際には、代表的には、水相に油相を加えて懸濁させて重合反応を行う。水相や油相には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な溶剤を含んでいてもよい。このような溶剤としては、例えば、後述するような水系媒体や非反応性溶剤が挙げられる。溶剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0062】
化合物(A)とモノマー(B)の反応を行う際には、本発明の効果を損なわない範囲で、化合物(A)及びモノマー(B)のいずれにも該当しない任意の適切な添加剤(C)を用いてもよい。添加剤(C)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。ここでいう添加剤には、後述するような水系媒体や非反応性溶剤などの溶剤は含まない。
【0063】
添加剤(C)の含有割合は、化合物(A)とモノマー(B)の合計量に対して、好ましくは0重量%~~40重量%であり、より好ましくは0重量%~30重量%であり、さらに好ましくは0重量%~20重量%であり、特に好ましくは0重量%~10重量%である。
【0064】
添加剤(C)としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な添加剤を採用し得る。このような添加剤(C)としては、例えば、非架橋性ポリマー、分散安定剤、界面活性剤、重合開始剤が挙げられる。
【0065】
添加剤(C)として非架橋性ポリマーを含むことにより、反応進行に伴い生成するポリマー(P)と溶剤との相分離が促され、シェル形成が促進し得る。
【0066】
非架橋性ポリマーとしては、例えば、ポリオレフィン、スチレン系ポリマー、(メタ)アクリル酸系ポリマー、スチレン-(メタ)アクリル酸系ポリマーからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0067】
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリα―オレフィンなどが挙げられる。モノマー組成物への溶解性の観点から、原料に長鎖のα-オレフィンを使用した側鎖結晶性ポリオレフィン、メタロセン触媒で製造された低分子量ポリオレフィンやオレフィンオリゴマーの使用が好ましい。
【0068】
スチレン系ポリマーとしては、例えば、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体などが挙げられる。
【0069】
(メタ)アクリル酸系ポリマーとしては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0070】
スチレン-(メタ)アクリル酸系ポリマーとしては、例えば、スチレン-メチル(メタ)アクリレート共重合体、スチレン-エチル(メタ)アクリレート共重合体、スチレン-ブチル(メタ)アクリレート共重合体、スチレン-プロピル(メタ)アクリレート共重合体などが挙げられる。
【0071】
≪1-3.中空樹脂粒子の比誘電率≫
本発明の実施形態による中空樹脂粒子の比誘電率は、好ましくは1.0~2.5であり、より好ましくは1.0~2.4であり、さらに好ましくは1.0~2.3である。本発明の実施形態による中空樹脂粒子の比誘電率が上記範囲内にあれば、本発明の効果がより発現し得る。本発明の実施形態による中空樹脂粒子の比誘電率が2.5を上回る場合、中空樹脂粒子を、例えば、熱硬化性樹脂に混在させても、十分な低誘電化効果を得ることができない。
【0072】
本発明の実施形態による中空樹脂粒子の比誘電率は、例えば「混合系の誘電率」(応用物理、第27巻、第8号(1958))を参考に算出することができる。分散媒と中空樹脂粒子の混合系の比誘電率をε、分散媒となる基材(例えば、ポリイミドやエポキシ等の樹脂組成物)の比誘電率をε
1、中空樹脂粒子の比誘電率をε
2、混合系中の中空樹脂粒子の体積率をφとした場合、下記式が成り立つ。すなわち、ε、ε
1、φを実験的に求めれば、中空樹脂粒子の比誘電率ε
2を算出することができる。
【数1】
【0073】
なお、分散媒と中空樹脂粒子の混合系中の中空樹脂粒子の体積率φは以下のように求めることができる。
【数2】
【0074】
中空樹脂粒子の密度はピクノメーター(コーテック株式会社製、TQC50mL比重瓶)と液状ポリマーである製品名「ARUFON(商標) UP―1080」(東亜合成株式会社製、密度1.05g/cm
3)を用いて実験的に求めることができる。具体的には、中空樹脂粒子の割合が10重量%となるよう、中空樹脂粒子とARUFON UP―1080を遊星攪拌脱泡機(KURABO株式会社製、「マゼルスターKK-250」)を用いて脱泡攪拌し、評価用混合物を作製する。評価用混合物を容量50mLのピクノメーターに充填し、混合物で満たされたピクノメーターの重量から、空の状態のピクノメーターの重量を差し引くことで充填した評価用混合物の重量を算出する。この値から、以下式を用いて中空樹脂粒子の密度を算出することができる。
【数3】
【0075】
≪1-4.中空樹脂粒子の用途≫
本発明の実施形態による中空樹脂粒子は、各種用途に採用し得る。本発明の効果をより活用し得る点で、本発明の実施形態による中空樹脂粒子は、半導体部材に好適であり、代表的には、半導体部材用樹脂組成物に好適に用い得る。また、本発明の実施形態による中空樹脂粒子は、上記の半導体部材用樹脂組成物への用途の他に、例えば、塗料組成物、化粧料、紙被覆組成物、断熱性組成物、光拡散性組成物、光拡散フィルム等の用途へも適用し得る。
【0076】
<半導体部材用樹脂組成物>
本発明の実施形態による中空樹脂粒子は、低誘電化、低誘電正接化が達成でき、優れた耐熱性を発現できるので、半導体部材用樹脂組成物に好適に用い得る。
【0077】
本発明の実施形態による半導体部材用樹脂組成物は、本発明の実施形態による中空樹脂粒子を含む。
【0078】
半導体部材とは、半導体を構成する部材を意味し、例えば、半導体パッケージや半導体モジュールが挙げられる。本明細書において、半導体部材用樹脂組成物とは、半導体部材に用いる樹脂組成物を意味する。
【0079】
半導体パッケージとは、ICチップを必須構成部材として、モールド樹脂、アンダーフィル材、モールドアンダーフィル材、ダイボンド材、半導体パッケージ基板用プリプレグ、半導体パッケージ基板用金属張積層板、及び半導体パッケージ用プリント回路基板のビルドアップ材料から選ばれる少なくとも1種の部材を用いて構成されるものである。
【0080】
半導体モジュールとは、半導体パッケージを必須構成部材として、プリント回路基板用プリプレグ、プリント回路基板用金属張積層板、プリント回路基板用ビルドアップ材料、ソルダーレジスト材、カバーレイフィルム、電磁波シールドフィルム、及びプリント回路基板用接着シートから選ばれる少なくとも1種の部材を用いて構成されるものである。
【0081】
<塗料組成物>
本発明の実施形態による中空樹脂粒子は、それを含む塗膜に優れた外観を付与し得るため、塗料組成物に好適に用い得る。
【0082】
本発明の実施形態による塗料組成物は、本発明の実施形態による中空樹脂粒子を含む。
【0083】
本発明の実施形態による塗料組成物は、好ましくは、バインダー樹脂およびUV硬化性樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む。バインダー樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。UV硬化性樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0084】
バインダー樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なバインダー樹脂を採用し得る。このようなバインダー樹脂としては、例えば、有機溶剤または水に可溶な樹脂、水中に分散できるエマルション型の水性樹脂が挙げられる。バインダー樹脂としては、具体的には、例えば、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、アモルファスポリオレフィン樹脂が挙げられる。
【0085】
UV硬化性樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なUV硬化性樹脂を採用し得る。このようなUV硬化性樹脂としては、例えば、多官能(メタ)アクリレート樹脂、多官能ウレタンアクリレート樹脂が挙げられ、多官能(メタ)アクリレート樹脂が好ましく、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート樹脂がより好ましい。1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート樹脂としては、具体的には、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4-シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサアクリレートが挙げられる。
【0086】
本発明の実施形態による塗料組成物が、バインダー樹脂およびUV硬化性樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む場合、その含有割合は、目的に応じて、任意の適切な含有割合を採用し得る。代表的には、バインダー樹脂(エマルション型の水性樹脂の場合は固形分換算)およびUV硬化性樹脂から選ばれる少なくとも1種と本発明の実施形態による中空樹脂粒子との合計量に対して、本発明の実施形態による中空樹脂粒子が、好ましくは5重量%~50重量%であり、より好ましくは10重量%~50重量%であり、さらに好ましくは20重量%~40重量%である。
【0087】
UV硬化性樹脂が用いられる場合には、好ましくは、光重合開始剤が併用される。光重合開始剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な光重合開始剤を採用し得る。このような光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、α-ヒドロキシアルキルフェノン類、α-アミノアルキルフェノン、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類(特開2001-139663号公報等に記載)、2,3-ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、オニウム塩類、ボレート塩、活性ハロゲン化合物、α-アシルオキシムエステルが挙げられる。
【0088】
本発明の実施形態による塗料組成物は、溶剤を含んでいてもよい。溶剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。本発明の実施形態による塗料組成物が溶剤を含む場合、その含有割合は、目的に応じて、任意の適切な含有割合を採用し得る。
【0089】
溶剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な溶剤を採用し得る。このような溶剤としては、好ましくは、バインダー樹脂またはUV硬化性樹脂を溶解または分散できる溶剤である。このような溶剤としては、油系塗料であれば、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤;が挙げられ、水系塗料であれば、例えば、水、アルコール類が挙げられる。
【0090】
本発明の実施形態による塗料組成物は、必要に応じて粘度を調整するために、希釈が施されていてもよい。希釈剤としては、目的に応じて、任意の適切な希釈剤を採用し得る。このような希釈剤としては、前述した溶剤が挙げられる。希釈剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0091】
本発明の実施形態による塗料組成物は、必要に応じて、他の成分、例えば、塗面調整剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化触媒、体質顔料、着色顔料、金属顔料、マイカ粉顔料、染料が含まれていてもよい。
【0092】
本発明の実施形態による塗料組成物を使用して塗膜を形成する場合、その塗工方法としては、目的に応じて、任意の適切な塗工方法を採用し得る。このような塗工方法としては、例えば、スプレー塗装法、ロール塗装法、ハケ塗り法、コーティングリバースロールコート法、グラビアコート法、ダイコート法、コンマコート法、スプレーコート法が挙げられる。
【0093】
本発明の実施形態による塗料組成物を使用して塗膜を形成する場合、その形成方法としては、目的に応じて、任意の適切な形成方法を採用し得る。このような形成方法としては、例えば、基材の任意の塗工面に塗工して塗工膜を作製し、この塗工膜を乾燥させた後、必要に応じて塗工膜を硬化させることによって、塗膜を形成する方法が挙げられる。基材としては、例えば、金属、木材、ガラス、プラスチック(PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、アクリル樹脂、TAC(トリアセチルセルロース)など)が挙げられる。
【0094】
<断熱性樹脂組成物>
本発明の実施形態による中空樹脂粒子は、それを含む塗膜に優れた断熱性を付与し得るため、断熱性樹脂組成物に好適に用い得る。本発明の実施形態による中空樹脂粒子を含む塗膜は、紫外光から近赤外光までの波長の範囲において優れた反射率を発現し得る。
【0095】
本発明の実施形態による断熱性樹脂組成物は、本発明の実施形態による中空樹脂粒子を含む。
【0096】
本発明の実施形態による断熱性樹脂組成物は、好ましくは、バインダー樹脂およびUV硬化性樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む。バインダー樹脂、UV硬化性樹脂については、前述の塗料組成物についての説明を援用し得る。
【0097】
本発明の実施形態による断熱性樹脂組成物は、溶剤を含んでいてもよい。溶剤については、前述の塗料組成物についての説明を援用し得る。
【0098】
本発明の実施形態による断熱性樹脂組成物は、必要に応じて粘度を調整するために、希釈が施されていてもよい。希釈剤としては、前述の塗料組成物についての説明を援用し得る。
【0099】
本発明の実施形態による断熱性樹脂組成物は、必要に応じて、他の成分、例えば、塗面調整剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化触媒、体質顔料、着色顔料、金属顔料、マイカ粉顔料、染料が含まれていてもよい。
【0100】
本発明の実施形態による断熱性樹脂組成物を使用して塗膜を形成する場合の塗工方法、形成方法としては、前述の塗料組成物についての説明を援用し得る。
【0101】
<光拡散性樹脂組成物>
本発明の実施形態による中空樹脂粒子は、それを含む塗膜に優れた光拡散性を付与し得るため、光拡散性樹脂組成物に好適に用い得る。
【0102】
本発明の実施形態による光拡散性樹脂組成物は、本発明の実施形態による中空樹脂粒子を含む。
【0103】
本発明の実施形態による光拡散性樹脂組成物は、好ましくは、バインダー樹脂およびUV硬化性樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む。バインダー樹脂、UV硬化性樹脂については、前述の塗料組成物についての説明を援用し得る。
【0104】
本発明の実施形態による光拡散性樹脂組成物は、溶剤を含んでいてもよい。溶剤については、前述の塗料組成物についての説明を援用し得る。
【0105】
本発明の実施形態による光拡散性樹脂組成物は、必要に応じて粘度を調整するために、希釈が施されていてもよい。希釈剤としては、前述の塗料組成物についての説明を援用し得る。
【0106】
本発明の実施形態による光拡散性樹脂組成物は、必要に応じて、他の成分、例えば、塗面調整剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化触媒、体質顔料、着色顔料、金属顔料、マイカ粉顔料、染料が含まれていてもよい。
【0107】
本発明の実施形態による光拡散性樹脂組成物を使用して塗膜を形成する場合の塗工方法、形成方法としては、前述の塗料組成物についての説明を援用し得る。
【0108】
<光拡散フィルム>
本発明の実施形態による中空樹脂粒子は、それを含む塗膜を備えるフィルムに優れた光拡散性を付与し得るため、光拡散フィルムにも好適に用い得る。
【0109】
本発明の実施形態による光拡散フィルムは、本発明の実施形態による中空樹脂粒子を含む。
【0110】
本発明の実施形態による光拡散フィルムは、本発明の実施形態による光拡散性樹脂組成物から形成される光拡散層と基材を含む。なお、光拡散層は、光拡散フィルムの最外層であってもよいし、最外層でなくてもよい。本発明の実施形態による光拡散フィルムは、目的に応じて、任意の適切なその他の層を含んでいてもよい。このようなその他の層としては、例えば、保護層、ハードコート層、平坦化層、高屈折率層、絶縁層、導電性樹脂層、導電性金属微粒子層、導電性金属酸化物微粒子層、プライマー層が挙げられる。
【0111】
基材としては、例えば、金属、木材、ガラス、プラスチックフィルム、プラスチックシート、プラスチックレンズ、プラスチックパネル、陰極線管、蛍光表示管、液晶表示板が挙げられる。プラスチックフィルム、プラスチックシート、プラスチックレンズ、プラスチックパネルを構成するプラスチックとしては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、アクリル樹脂、TAC(トリアセチルセルロース)が挙げられる。
【0112】
≪≪2.中空樹脂粒子の製造方法≫≫
本発明の実施形態による中空樹脂粒子の製造方法は、式(1)により表されるエーテル構造を有する化合物(A)20重量部~80重量部と該化合物(A)と反応するモノマー(B)20重量部~80重量部(化合物(A)とモノマー(B)の合計量を100重量部とする)を、非反応性溶剤の存在下、水系媒体中で反応させる。
【化4】
【0113】
上記製造方法によれば、本発明の実施形態による中空樹脂粒子を簡易に製造し得る。
【0114】
化合物(A)とモノマー(B)を、非反応性溶剤の存在下、水系媒体中で反応させることにより、本発明の実施形態による中空樹脂粒子が得られ得る。代表的には、本発明の実施形態による中空樹脂粒子は、化合物(A)とモノマー(B)を懸濁重合反応に供することによって製造し得る。
【0115】
懸濁重合は、代表的には、水系媒体を含む水相と、化合物(A)とモノマー(B)と非反応性溶剤を含む油相とを用いた懸濁重合であり、好ましくは、水系媒体を含む水相に化合物(A)とモノマー(B)と非反応性溶剤を含む油相を添加して分散させて加熱して懸濁重合を行う。
【0116】
分散は、水相中で油相を液滴状で存在させることができさえすれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な分散方法を採用し得る。このような分散方法としては、代表的には、ホモミキサーやホモジナイザーを用いた分散方法であり、例えば、ポリトロンホモジナイザー、超音波ホモジナイザーや高圧ホモジナイザーなどが挙げられる。
【0117】
重合温度は、懸濁重合に適した温度であれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な重合温度を採用し得る。このような重合温度としては、好ましくは30℃~80℃である。
【0118】
重合時間は、懸濁重合に適した時間であれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な重合時間を採用し得る。このような重合時間としては、好ましくは1時間~48時間である。
【0119】
重合後に好ましく行う後加熱は、完成度の高い中空樹脂粒子を得るために好適な処理である。
【0120】
重合後に好ましく行う後加熱の温度は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な温度を採用し得る。このような後加熱の温度としては、好ましくは70℃~120℃である。
【0121】
重合後に好ましく行う後加熱の時間は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な時間を採用し得る。このような後加熱の時間としては、好ましくは1時間~24時間である。
【0122】
化合物(A)、モノマー(B)としては、≪≪1.中空樹脂粒子≫≫の≪1-2.シェル部≫の<ポリマー(P)>の項目における説明をそのまま援用し得る。
【0123】
化合物(A)とモノマー(B)の含有割合は、≪≪1.中空樹脂粒子≫≫の≪1-2.シェル部≫の<ポリマー(P)>の項目における説明をそのまま援用し得る。
【0124】
水系媒体としては、例えば、水、水と低級アルコール(メタノール、エタノール等)との混合媒体などが挙げられる。
【0125】
水系媒体の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な量を採用し得る。このような水系媒体の使用量は、代表的には、水相に油相を加えて懸濁させて行う懸濁重合反応において該反応が適切に進行する量であり、化合物(A)とモノマー(B)と非反応性溶剤の合計量100重量部に対して、好ましくは100重量部~5000重量部であり、より好ましくは150重量部~2000重量部である。
【0126】
非反応性溶剤は、式(1)により表されるエーテル構造を有する化合物(A)と化合物(A)と反応するモノマー(B)とのいずれとも化学的な反応を起こさない溶剤であり、好ましくは、有機溶剤である。非反応性溶剤は、代表的には、粒子に空域を与える中空化剤として作用する。非反応性溶剤としては、例えば、ヘプタン、ヘキサン、トルエン、シクロヘキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、クロロホルム、四塩化炭素が挙げられる。中空樹脂粒子からの除去が容易である点で、非反応性溶剤の沸点は100℃未満であることが好ましい。
【0127】
中空化剤としての非反応性溶剤は、単一溶剤であってもよいし、混合溶剤であってもよい。
【0128】
非反応性溶剤の添加量は、化合物(A)とモノマー(B)の合計量100重量部に対して、好ましくは20重量部~250重量部である。
【0129】
化合物(A)とモノマー(B)の反応を行う際には、本発明の効果を損なわない範囲で、化合物(A)及びモノマー(B)のいずれにも該当しない任意の適切な添加剤(C)を用いてもよい。添加剤(C)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。ここでいう添加剤には、水系媒体や非反応性溶剤などの溶剤は含まない。
【0130】
添加剤(C)の含有割合は、化合物(A)とモノマー(B)の合計量に対して、好ましくは0重量%~~40重量%であり、より好ましくは0重量%~30重量%であり、さらに好ましくは0重量%~20重量%であり、特に好ましくは0重量%~10重量%である。
【0131】
添加剤(C)としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な添加剤を採用し得る。このような添加剤(C)としては、例えば、非架橋性ポリマー、分散安定剤、界面活性剤、重合開始剤が挙げられる。
【0132】
非架橋性ポリマーについては、≪≪1.中空樹脂粒子≫≫の≪1-2.シェル部≫の<ポリマー(P)>の項目における説明をそのまま援用し得る。
【0133】
分散安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸、セルロース類(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。また、トリポリリン酸ナトリウム等の無機系水溶性高分子化合物も使用できる。さらに、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛等のリン酸塩;ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸アルミニウム、ピロリン酸亜鉛等のピロリン酸塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、コロイダルシリカ等の難水溶性無機化合物;なども使用できる。中空樹脂粒子からの除去が比較的容易であり、中空樹脂粒子の表面に残存しにくいことから、ピロリン酸マグネシウムの使用が好ましい。
【0134】
分散安定剤の添加量は、水系媒体100重量部に対して、0.5重量部~10重量部が好ましい。分散安定剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0135】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0136】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、モノアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩等の非反応性のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム等の反応性のアニオン性界面活性剤などが挙げられる。なお、界面活性剤としては塩構造に限定されず、例えば、アルキル硫酸エステルや、アルキルリン酸エステルも使用することができる。具体的には、ラウリル硫酸やラウリルリン酸が挙げられる。
【0137】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルトリエチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ジアルキルジエチルアンモニウム塩、N-ポリオキシアルキレン-N,N,N-トリアルキルアンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0138】
両性イオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミンオキサイド、リン酸エステル塩、亜リン酸エステル系界面活性剤などが挙げられる。
【0139】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン-オキシプロピレンブロックポリマーなどが挙げられる。
【0140】
界面活性剤の添加量は、化合物(A)とモノマー(B)と非反応性溶剤の合計量に対して、0.01重量%~5重量%が好ましい。界面活性剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0141】
重合開始剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な重合開始剤を採用し得る。このような重合開始剤としては、例えば、過酸化ラウロイル、過酸化ベンゾイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-t-ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、1,1'-アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物;などが挙げられる。
【0142】
重合開始剤の含有割合は、化合物(A)とモノマー(B)の合計量に対して、0.1重量%~5重量%の範囲が好ましい。重合開始剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【実施例】
【0143】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を意味する。
【0144】
<体積平均粒子径の測定(実施例1~7、実施例10、比較例1)>
粒子の体積平均粒子径の測定は、以下のようにしてコールター法により行った。
粒子の体積平均粒子径は、コールターMultisizer(登録商標)3(ベックマン・コールター株式会社製測定装置)により測定した。測定は、ベックマン・コールター株式会社発行のMultisizer(登録商標)3ユーザーズマニュアルに従って校正されたアパチャーを用いて実施した。なお、測定に用いるアパチャーは、測定する粒子の想定の体積平均粒子径が1μm以上10μm以下の場合は50μmのサイズを有するアパチャーを選択し、測定する粒子の想定の体積平均粒子径が10μmより大きく30μm以下の場合は100μmのサイズを有するアパチャーを選択し、粒子の想定の体積平均粒子径が30μmより大きく90μm以下の場合は280μmのサイズを有するアパチャーを選択し、粒子の想定の体積平均粒子径が90μmより大きく150μm以下の場合は400μmのサイズを有するアパチャーを選択する等、測定する粒子の大きさによって、適宜選択した。測定後の体積平均粒子径が想定の体積平均粒子径と異なった場合は、適正なサイズを有するアパチャーに変更して、再度測定を行った。Current(アパチャー電流)及びGain(ゲイン)は、選択したアパチャーのサイズによって、適宜設定した。例えば、50μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は-800、Gain(ゲイン)は4と設定し、100μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は-1600、Gain(ゲイン)は2と設定し、280μm及び400μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は-3200、Gain(ゲイン)は1と設定した。
測定用試料としては、粒子0.1gを0.1重量%ノニオン性界面活性剤水溶液10ml中にタッチミキサー(ヤマト科学株式会社製、「TOUCHMIXER MT-31」)及び超音波洗浄器(株式会社ヴェルヴォクリーア製、「ULTRASONIC CLEANER VS-150」)を用いて分散させ、分散液としたものを使用した。測定中は、ビーカー内を気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、粒子を10万個測定した時点で測定を終了した。なお、粒子の体積平均粒子径は、10万個の粒子の体積基準の粒度分布における算術平均とした。
【0145】
<平均粒子径の測定(実施例8、9、比較例2)>
動的光散乱法を利用して、中空樹脂粒子または粒子のZ平均粒子径を測定し、測定されたZ平均粒子径を得られた中空樹脂粒子または粒子の平均粒子径とした。
すなわち、まず、得られたスラリー状の中空樹脂粒子または粒子をイオン交換水で希釈し、0.1重量%に調整した水分散体にレーザー光を照射し、中空樹脂粒子または粒子から散乱される散乱光強度をマイクロ秒単位の時間変化で測定した。そして、検出された中空樹脂粒子または粒子に起因する散乱強度分布を正規分布に当てはめて、平均粒子径を算出するためのキュムラント解析法により中空樹脂粒子または粒子のZ平均粒子径を求めた。
このZ平均粒子径の測定は、市販の粒子径測定装置で簡便に実施できる。以下の実施例および比較例では、粒子径測定装置(マルバーン社製、「ゼータサイザーナノZS」)を使用してZ平均粒子径を測定した。通常、市販の粒子径測定装置は、データ解析ソフトが搭載されており、データ解析ソフトが測定データを自動的に解析することでZ平均粒子径を算出できるようになっている。
【0146】
<断面観察>
乾燥した粒子を光硬化性樹脂D-800(日本電子株式会社製)と混合し、紫外光を照射することで硬化物を得た。その後、硬化物をニッパーで裁断し、断面部分を、カッターを用いて平滑に加工し、日本電子株式会社製、「オートファインコータJFC-1300」スパッタ装置を用いて試料をコーティングした。次いで、試料の断面を株式会社日立ハイテクノロジーズ製、「SU1510」走査電子顕微鏡の二次電子検出器を用いて、撮影した。
【0147】
<TEM測定:中空樹脂粒子または粒子の中空の有無と形状の観察>
乾燥粉体としての中空樹脂粒子または粒子に対し、メイワフォーシス株式会社製「オスミウムコータNeoc-Pro」コーティング装置を用いて表面処理(10Pa、5mA、10秒)を行った。次いで、中空樹脂粒子または粒子をTEM(透過型電子顕微鏡、株式会社日立ハイテクノロジーズ製「H-7600」)にて観察し、中空の有無および中空樹脂粒子または粒子の形状を確認した。この時、加速電圧は80kVとし、倍率は5000倍または1万倍として撮影した。
【0148】
<窒素雰囲気下において10℃/分で昇温した際の5%熱重量減少温度の測定>
5%熱重量減少温度は、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製「TG/DTA6200、AST-2」示差熱熱重量同時測定装置を用いて測定した。サンプリング方法及び温度条件に関しては以下のように行った。
白金製測定容器の底に、すきまのないように試料を10.5±0.5mg充てんして、測定用のサンプルとした。窒素ガス流量230mL/分のもと、アルミナを基準物質として、5%熱重量減少温度を測定した。TG/DTA曲線は、昇温速度10℃/分で30℃から500℃までサンプルを昇温させて得た。この得られた曲線から装置付属の解析ソフトを用いて、5%重量減少時の温度を算出し、5%熱重量減少温度とした。
【0149】
〔実施例1〕
式(1)により表されるエーテル構造を有する化合物としての二官能ポリフェニレンエーテルオリゴマー(商品名「OPE-2St 1200」、三菱瓦斯化学株式会社製)2.5g、ジビニルベンゼン(DVB)810(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、81%含有品、19%はエチルビニルベンゼン(EVB))2.5g、ヘプタン5.0g、重合開始剤としての2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(商品名「V-65」、富士フィルム和光純薬株式会社製)0.05g、ラウリルリン酸0.004gを混合し、油相を作製した。
水相としてのピロリン酸マグネシウム2重量%水分散液32gに油相を加え、ポリトロンホモジナイザー「PT10-35」(株式会社セントラル科学貿易製)を用いて懸濁液を作製した。得られた懸濁液を50℃で24時間加熱することで反応を行った。得られたスラリーに塩酸を加え、ピロリン酸マグネシウムを分解させた後、ろ過による脱水で固形分を分離し、水洗を繰り返すことで精製を行った後、60℃で乾燥することで粒子(1)を得た。
得られた粒子(1)の断面写真図を
図2に示す。得られた粒子(1)は、シェルにより囲われた中空が一つの中空領域からなる中空樹脂粒子と、シェルにより囲われた中空が多孔質構造からなる中空樹脂粒子との混合物であることが確認できた。
得られた粒子(1)の平均粒子径は16.3μmであった。
得られた粒子(1)の、窒素雰囲気下において10℃/分で昇温した際の5%熱重量減少温度は306℃であった。
配合量などを表1に示す。
【0150】
〔実施例2〕
式(1)により表されるエーテル構造を有する化合物としての二官能ポリフェニレンエーテルオリゴマー(商品名「OPE-2St 1200」、三菱瓦斯化学株式会社製)を3.0g、ジビニルベンゼン(DVB)810(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、81%含有品、19%はエチルビニルベンゼン(EVB))を2.0gとした以外は、実施例1と同様に行い、粒子(2)を得た。
得られた粒子(2)の断面写真図を
図3に示す。得られた粒子(2)は、シェルにより囲われた中空が一つの中空領域からなる中空樹脂粒子であることが確認できた。
得られた粒子(2)の平均粒子径は15.2μmであった。
得られた粒子(2)の、窒素雰囲気下において10℃/分で昇温した際の5%熱重量減少温度は320℃であった。
配合量などを表1に示す。
【0151】
〔実施例3〕
式(1)により表されるエーテル構造を有する化合物としての二官能ポリフェニレンエーテルオリゴマー(商品名「OPE-2St 1200」、三菱瓦斯化学株式会社製)を3.5g、ジビニルベンゼン(DVB)810(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、81%含有品、19%はエチルビニルベンゼン(EVB))を1.5gとした以外は、実施例1と同様に行い、粒子(3)を得た。
得られた粒子(3)の断面写真図を
図4に示す。得られた粒子(3)は、シェルにより囲われた中空が一つの中空領域からなる中空樹脂粒子であることが確認できた。
得られた粒子(3)の平均粒子径は13.9μmであった。
得られた粒子(3)の、窒素雰囲気下において10℃/分で昇温した際の5%熱重量減少温度は309℃であった。
配合量などを表1に示す。
【0152】
〔実施例4〕
式(1)により表されるエーテル構造を有する化合物としての二官能ポリフェニレンエーテルオリゴマー(商品名「OPE-2St 1200」、三菱瓦斯化学株式会社製)2.5gに代えて、式(1)により表されるエーテル構造を有する化合物としての反応性低分子量ポリフェニレンエーテル(商品名「Noryl(登録商標)SA9000-111樹脂」、SABIC株式会社製)2.5gを使用した以外は、実施例1と同様に行い、粒子(4)を得た。
得られた粒子(4)の断面写真図を
図5に示す。得られた粒子(4)は、シェルにより囲われた中空が多孔質構造からなる中空樹脂粒子であることが確認できた。
得られた粒子(4)の平均粒子径は16.5μmであった。
得られた粒子(4)の、窒素雰囲気下において10℃/分で昇温した際の5%熱重量減少温度は373℃であった。
配合量などを表1に示す。
【0153】
〔実施例5〕
式(1)により表されるエーテル構造を有する化合物としての二官能ポリフェニレンエーテルオリゴマー(商品名「OPE-2St 1200」、三菱瓦斯化学株式会社製)を3.0gに代えて、式(1)により表されるエーテル構造を有する化合物としての反応性低分子量ポリフェニレンエーテル(商品名「Noryl(登録商標)SA9000-111樹脂」、SABIC株式会社製)3.0gを使用した以外は、実施例2と同様に行い、粒子(5)を得た。
得られた粒子(5)の断面写真図を
図6に示す。得られた粒子(5)は、シェルにより囲われた中空が多孔質構造からなる中空樹脂粒子であることが確認できた。
得られた粒子(5)の平均粒子径は15.6μmであった。
得られた粒子(5)の、窒素雰囲気下において10℃/分で昇温した際の5%熱重量減少温度は420℃であった。
配合量などを表1に示す。
【0154】
〔実施例6〕
式(1)により表されるエーテル構造を有する化合物としての二官能ポリフェニレンエーテルオリゴマー(商品名「OPE-2St 1200」、三菱瓦斯化学株式会社製)2.5g、ジビニルベンゼン(DVB)810(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、81%含有品、19%はエチルビニルベンゼン(EVB))2.5g、ヘプタン5.0gに代えて、式(1)により表されるエーテル構造を有する化合物としての反応性低分子量ポリフェニレンエーテル(商品名「Noryl(登録商標)SA9000-111樹脂」、SABIC株式会社製)1.8g、ジビニルベンゼン(DVB)810(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、81%含有品、19%はエチルビニルベンゼン(EVB))1.2g、ヘプタン5.0g、トルエン2.0gを使用した以外は、実施例1と同様に行い、粒子(6)を得た。
得られた粒子(6)の断面写真図を
図7に示す。得られた粒子(6)は、シェルにより囲われた中空が多孔質構造からなる中空樹脂粒子であることが確認できた。
得られた粒子(6)の平均粒子径は15.1μmであった。
得られた粒子(6)の、窒素雰囲気下において10℃/分で昇温した際の5%熱重量減少温度は415℃であった。
配合量などを表1に示す。
【0155】
〔実施例7〕
式(1)により表されるエーテル構造を有する化合物としての二官能ポリフェニレンエーテルオリゴマー(商品名「OPE-2St 1200」、三菱瓦斯化学株式会社製)2.5g、ジビニルベンゼン(DVB)810(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、81%含有品、19%はエチルビニルベンゼン(EVB))2.5g、ヘプタン5.0gに代えて、式(1)により表されるエーテル構造を有する化合物としての反応性低分子量ポリフェニレンエーテル(商品名「Noryl(登録商標)SA9000-111樹脂」、SABIC株式会社製)4.0g、ジビニルベンゼン(DVB)810(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、81%含有品、19%はエチルビニルベンゼン(EVB))1.0g、ヘプタン4.0g、シクロヘキサン1.0gを使用した以外は、実施例1と同様に行い、粒子(7)を得た。
得られた粒子(7)の断面写真図を
図8に示す。得られた粒子(7)は、シェルにより囲われた中空が多孔質構造からなる中空樹脂粒子であることが確認できた。
得られた粒子(7)の平均粒子径は13.1μmであった。
得られた粒子(7)の、窒素雰囲気下において10℃/分で昇温した際の5%熱重量減少温度は428℃であった。
配合量などを表1に示す。
【0156】
〔実施例8〕
式(1)により表されるエーテル構造を有する化合物としての二官能ポリフェニレンエーテルオリゴマー(商品名「OPE-2St 1200」、三菱瓦斯化学株式会社製)1.5g、ジビニルベンゼン(DVB)810(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、81%含有品、19%はエチルビニルベンゼン(EVB))1.5g、ヘプタン3.0g、重合開始剤としてのパーロイルL(日油株式会社製)0.09gを混合し、油相を作製した。
次いで、イオン交換水34gとラピゾールA-80(日油株式会社)0.0128gを混合し、水相を作製した。水相に油相を加え、超音波ホモジナイザー(BRANSON社製、「SONIFIER450」、条件:DutyCycle=50%、OutputControl=5、処理時間3分)を用いて懸濁液を作製した。得られた懸濁液を70℃で4時間加熱することで反応を行った。得られたスラリーを100℃で24時間加熱することで乾燥した粒子(8)を得た。
得られた粒子(8)のTEM写真図を
図9に示す。得られた粒子(8)は、シェルにより囲われた中空が多孔質構造からなる中空樹脂粒子であることが確認できた。
得られた粒子(8)の平均粒子径は320nmであった。
得られた粒子(8)の、窒素雰囲気下において10℃/分で昇温した際の5%熱重量減少温度は315℃であった。
配合量などを表1に示す。
【0157】
〔実施例9〕
式(1)により表されるエーテル構造を有する化合物としての反応性低分子量ポリフェニレンエーテル(商品名「Noryl(登録商標)SA9000-111樹脂」、SABIC株式会社製)1.08g、ジビニルベンゼン(DVB)810(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、81%含有品、19%はエチルビニルベンゼン(EVB))0.72g、ヘプタン3.0g、トルエン1.2g、重合開始剤としてのパーロイルL(日油株式会社製)0.03gを混合し、油相を作製した。
次いで、イオン交換水34gとラピゾールA-80(日油株式会社)0.0085gを混合し、水相を作製した。水相に油相を加え、超音波ホモジナイザー(BRANSON社製、「SONIFIER450」、条件:DutyCycle=50%、OutputControl=5、処理時間3分)を用いて懸濁液を作製した。得られた懸濁液を70℃で4時間加熱することで反応を行った。得られたスラリーを100℃で24時間加熱することで乾燥した粒子(9)を得た。
得られた粒子(9)のTEM写真図を
図10に示す。得られた粒子(9)は、シェルにより囲われた中空が多孔質構造からなる中空樹脂粒子であることが確認できた。
得られた粒子(9)の平均粒子径は379nmであった。
得られた粒子(9)の、窒素雰囲気下において10℃/分で昇温した際の5%熱重量減少温度は399℃であった。
配合量などを表1に示す。
【0158】
〔実施例10〕
式(1)により表されるエーテル構造を有する化合物としての二官能ポリフェニレンエーテルオリゴマー(商品名「OPE-2St 1200」、三菱瓦斯化学株式会社製)を2.0g、ジビニルベンゼン(DVB)810(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、81%含有品、19%はエチルビニルベンゼン(EVB))を3.0gとした以外は、実施例1と同様に行い、粒子(10)を得た。
得られた粒子(10)の断面写真図を
図11に示す。得られた粒子(10)は、シェルにより囲われた中空が多孔質構造からなる中空樹脂粒子であることが確認できた。
得られた粒子(10)の平均粒子径は14.4μmであった。
得られた粒子(10)の、窒素雰囲気下において10℃/分で昇温した際の5%熱重量減少温度は312℃であった。
配合量などを表1に示す。
【0159】
〔実施例11〕
式(1)により表されるエーテル構造を有する化合物としての二官能ポリフェニレンエーテルオリゴマー(商品名「OPE-2St 1200」、三菱瓦斯化学株式会社製)2.5g、ジビニルベンゼン(DVB)810(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、81%含有品、19%はエチルビニルベンゼン(EVB))2.5gに代えて、式(1)により表されるエーテル構造を有する化合物としての反応性低分子量ポリフェニレンエーテル(商品名「Noryl(登録商標)SA9000-111樹脂」、SABIC株式会社製)2.0g、ジビニルベンゼン(DVB)810(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、81%含有品、19%はエチルビニルベンゼン(EVB))3.0gを使用した以外は、実施例1と同様に行い、粒子(11)を得た。
得られた粒子(11)の断面写真図を
図12に示す。得られた粒子(11)は、シェルにより囲われた中空が多孔質構造からなる中空樹脂粒子であることが確認できた。
得られた粒子(11)の平均粒子径は12.7μmであった。
得られた粒子(11)の、窒素雰囲気下において10℃/分で昇温した際の5%熱重量減少温度は366℃であった。
配合量などを表1に示す。
【0160】
〔比較例1〕
メタクリル酸メチル2.5g、エチレングリコールジメタクリレート2.5g、シクロヘキサン5g、重合開始剤としての2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(商品名「V-65」、富士フィルム和光純薬株式会社製)0.05g、ラウリルリン酸0.004gを混合し、油相を作製した。
水相としてのピロリン酸マグネシウム2重量%水分散液32gに油相を加え、ポリトロンホモジナイザーPT10-35(株式会社セントラル科学貿易製)を用いて懸濁液を作製した。得られた懸濁液を50℃で24時間加熱することで反応を行った。得られたスラリーに塩酸を加え、ピロリン酸マグネシウムを分解させた後、ろ過による脱水で固形分を分離し、水洗を繰り返すことで精製を行った後、60℃で乾燥することで、乾燥粉体としての粒子(C1)を得た。
得られた粒子(C1)の断面写真図を
図13に示す。得られた粒子(C1)は、シェルにより囲われた中空が一つの中空領域からなる中空樹脂粒子であることが確認できた。
得られた粒子(C1)の平均粒子径は8.3μmであった。
得られた粒子(C1)の、窒素雰囲気下において10℃/分で昇温した際の5%熱重量減少温度は245℃であった。
配合量などを表1に示す。
【0161】
〔比較例2〕
メタクリル酸メチル(MMA)1.74g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ADPH)(新中村化学株式会社)1.74g、トルエン2.4g、ポリスチレン(非架橋、重量平均分子量30万)0.126g、パーロイルL(重合開始剤、日油株式会社)0.104gを混合し、油相を作製した。
次いで、イオン交換水34gとラピゾールA-80(界面活性剤、日油株式会社)0.034gを混合し、水相を作製した。
水相に油相を加え、超音波ホモジナイザー(BRANSON社製、「SONIFIER450」、条件:DutyCycle=50%、OutputControl=5、処理時間3分)を用いて懸濁液を作製した。得られた懸濁液を70℃で4時間加熱することで重合を行い、スラリーを得た。得られたスラリーを100℃にて24時間加熱することで、乾燥粉体としての粒子(C2)を得た。
得られた粒子(C2)のTEM写真図を
図14に示す。得られた粒子(C2)は、シェルにより囲われた中空が一つの中空領域からなる中空樹脂粒子であることが確認できた。
得られた粒子(C2)の平均粒子径は478nmであり、粒子密度は0.614g/cm
3であった。
得られた粒子(C2)の、窒素雰囲気下において10℃/分で昇温した際の5%熱重量減少温度は327℃であった。
配合量などを表1に示す。
【0162】
【0163】
<性能評価1:比誘電率・誘電正接評価1>
各実施例、比較例にて得られた粒子0.4gと超高耐熱ポリイミドワニス(商品名「SPIXAREA HR(登録商標)002」、ソマール株式会社製)10gを、遊星攪拌脱泡機(KURABO株式会社製、「マゼルスターKK-250」)を用いて脱泡攪拌し、評価用混合物を作製した。
評価用混合物を厚み5mmのガラス板にウエット厚250μmに設定したアプリケーターを用いて塗工した後、120℃にて10分、180℃にて180分、270℃にて60分加熱することで溶剤を除去した後、室温まで冷却することで、各粒子を含むフィルムサンプルを得た。得られたフィルムの比誘電率・誘電正接評価を空洞共振法(測定周波数:5.8GHz)にて実施した。結果を表2に示す。
【0164】
【0165】
表2の結果から、本発明によって提供される中空樹脂粒子は、基材の比誘電率・誘電正接を下げる効果を有することが確認でき、半導体材料の低誘電化、低誘電正接化を図る目的に対して有効であることがわかる。
【0166】
<性能評価2:比誘電率・誘電正接評価2>
実施例、比較例にて得られた粒子0.425gと、酢酸エチル12.1gと、溶剤可溶型ポリイミドKPI-MX300F(河村産業株式会社製)1.7gを、遊星撹拌脱泡機(KURABO株式会社製、「マゼルスターKK-250」)を用いて脱泡撹拌し、評価用混合物を作製した。
評価用混合物を厚み5mmのガラス板にウエット厚250μmに設定したアプリケーターを用いて塗工した後、60℃で30分、90℃にて10分、150℃にて30分、200℃にて30分加熱することで酢酸エチルを除去した後、室温下まで冷却することで、各粒子を含むフィルムサンプルを得た。得られたフィルムの比誘電率・誘電正接評価を空洞共振法(測定周波数:5.8GHz)にて実施した。結果を表3に示す。
【0167】
【0168】
表3の結果から、本発明によって提供される中空樹脂粒子は、基材の比誘電率・誘電正接を下げる効果を有することが確認でき、半導体材料の低誘電化、低誘電正接化を図る目的に対して有効であることがわかる。
【0169】
<性能評価3:水分含有率評価>
各実施例、比較例にて得られた粒子に対し、下記条件で吸湿処理を実施した。
各実施例、比較例にて得られた粒子を、温度40±1℃,相対湿度95%の恒温恒湿槽の中に入れて96時間後に取り出し、(温度20±1℃、湿度65±5%)の環境下にて30分冷却した。冷却後、水分含有率を測定した。
水分含有率は、各実施例、比較例にて得られた粒子0.1gを試料とし、株式会社三菱化学アナリテック製の「CA-200」カールフィッシャー水分測定装置及び「VA-236S」水分気化装置にセットして測定した。測定時の陽極液、陰極液には、それぞれ、三菱ケミカル株式会社製の商品名「アクアミクロン(登録商標)AX」、商品名「アクアミクロン(登録商標)CXU」を使用した。測定(気化)温度は250℃とした。キャリアガスは窒素を用いた。キャリアガスの流量は150mL/minとした。試料の試験回数は3回とした。試料採取場所の空気のみでの水分量を2回測定し、その平均値をブランク値とした。各測定結果からブランク値を減算し、試料重量で除して、試料の水分含有率(重量%)を求めた。試料の水分含有率(重量%)は次式で算出した。
水分含有率(重量%)=[実測水分量(μg)-ブランク水分量(μg)]÷1000000÷試料重量(g)×100
最終結果として、3回の測定結果を平均し、試料の水分含有率(重量%)とした。結果を表4に示す。
【0170】
【0171】
表4の結果から、本発明によって提供される中空樹脂粒子は、従来の中空樹脂粒子と比較して、吸湿処理後の水分含有量が低く、半導体材料の低誘電化、低誘電正接化を図る目的に対して好適であることがわかる。
【0172】
<性能評価4:断熱性評価>
市販の水性塗料(株式会社アサヒペン製、商品名「水性多用途カラークリア」)10gに対し、実施例1で得られた粒子(1)を2.5g加え、遊星撹拌脱泡機(KURABO株式会社製、「マゼルスターKK-250」)を用いて脱泡撹拌し、評価用塗料を作製した。
評価用塗料を隠蔽率試験紙の黒側にウエット厚250μmに設定したアプリケーターにて塗工した後、室温下で十分に乾燥させ、光反射性評価用サンプル板を得た。光反射性評価用サンプル板の紫外光、可視光、及び近赤外光に対する反射率を以下の点順で評価した。
反射率の測定装置として紫外可視近赤外分光光度計(株式会社島津製作所製、「Solid Spec3700」)を使用し、光反射性評価用サンプル板における塗工面の紫外光から近赤外光(波長300nm~2500nm)の反射特性を反射率(%)として測定した。なお、測定は60mmΦ積分球を用い、スペクトラロンを標準白板に使用して行った。
得られた結果を
図15に示す。
図15に示すように、紫外光から近赤外光のほぼ全ての波長において、40%以上の高い反射率を有することがわかった。
【0173】
<性能評価5:塗膜外観評価>
実施例1で得られた粒子(1)2重量部と、市販のアクリル系水性つやあり塗料(株式会社カンぺパピオ製、商品名「スーパーヒット」)20重量部とを、撹拌脱泡装置を用いて、3分間混合し、1分間脱泡することによって、塗料組成物を得た。
得られた塗料組成物を、クリアランス75μmのブレードをセットした塗工装置を用いてABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂)板上に塗布した後、乾燥することによって塗膜を得た。
また、得られた塗料組成物を厚み3mmのアクリル板に吹き付け塗工することにより、厚み50μmの艶消し塗膜を作成した。得られた塗膜は、ブツ(突起)が見られず、良好な艶消し性を有していた。
【0174】
<性能評価6:光拡散性評価>
実施例1で得られた粒子(1)7.5重量部、アクリル樹脂(DIC株式会社製、商品名「アクリディックA811」)30重量部、架橋剤(DIC株式会社製、商品名「VM-D」)10重量部、溶剤として酢酸ブチル50重量部を、撹拌脱泡装置を用いて、3分間混合し、1分間脱泡することによって、光拡散性樹脂組成物を得た。
得られた光拡散性樹脂組成物を、クリアランス50μmのブレードをセットした塗工装置を用いて、厚さ125μmのPETフィルム上に塗布した後、70℃で10分乾燥することによって光拡散フィルムを得た。
得られた光拡散フィルムの全光線透過率及びヘイズを、それぞれJIS K 7361-1:1997及びJIS K 7136:2000に従い、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、商品名「NDH 2000」)を使用して測定した。ヘイズの値は、光拡散フィルムを透過した光(透過光)の拡散性が高い程、高くなる。
測定の結果、ヘイズが40.2%、全光線透過率が81.5%であり、得られた光拡散フィルムが光拡散性に優れていることが認められた。
【産業上の利用可能性】
【0175】
本発明の実施形態による中空樹脂粒子、本発明の実施形態による製造方法により得られる中空樹脂粒子は、半導体材料などに利用可能である。本発明の実施形態による中空樹脂粒子、本発明の実施形態による製造方法により得られる中空樹脂粒子は、例えば、半導体部材用樹脂組成物、塗料組成物、断熱性組成物、光拡散性組成物、光拡散フィルムの用途に適用し得る。
【要約】
シェル部と該シェル部により囲われた中空部分を有する中空樹脂粒子であって、低誘電化、低誘電正接化が達成でき、優れた耐熱性を発現できる、中空樹脂粒子を提供する。また、そのような中空樹脂粒子を簡易に製造する方法を提供する。さらに、そのような中空樹脂粒子の用途を提供する。
本発明の実施形態による中空樹脂粒子は、シェル部と該シェル部により囲われた中空部分を有する中空樹脂粒子であって、該シェル部が、式(1)により表されるエーテル構造を有する。
【化1】