(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】心臓の異常について歩行可能患者のECG信号を監視する着用型医療(WM)システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/346 20210101AFI20221114BHJP
A61B 5/256 20210101ALI20221114BHJP
A61B 5/332 20210101ALI20221114BHJP
A61B 5/33 20210101ALI20221114BHJP
A61B 5/358 20210101ALI20221114BHJP
A61B 5/36 20210101ALI20221114BHJP
【FI】
A61B5/346
A61B5/256 210
A61B5/332
A61B5/33 120
A61B5/358
A61B5/36
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019084868
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2019-06-12
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522262186
【氏名又は名称】ウェスト・アファム・ホールディングス・ディーエーシー
【氏名又は名称原語表記】West Affum Holdings DAC
【住所又は居所原語表記】32 Molesworth Street, Dublin 2, Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】110003786
【氏名又は名称】HIPF弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジェホ・キム
(72)【発明者】
【氏名】パメラ・ブレスキー
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・ティー・カバナス
【審査官】▲瀬▼戸井 綾菜
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0364918(US,A1)
【文献】特開2012-071018(JP,A)
【文献】特開2013-048767(JP,A)
【文献】特表2017-512581(JP,A)
【文献】国際公開第2014/006891(WO,A1)
【文献】特表2008-521487(JP,A)
【文献】特表2010-527251(JP,A)
【文献】特開平11-113868(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0059237(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05-5/0538
A61B 5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心電図(ECG)電極と、
歩行可能患者の身体上にECG電極を維持するように歩行可能患者によって装着されるように構成された支持構造であって、前記ECG電極は、このように維持されると、歩行可能患者のECG信号を感知するように構成される、前記支持構造と、
出力装置と、
基準テンプレートを記憶するように構成されたメモリであって、前記基準テンプレートは、第1の持続時間中に感知される歩行可能患者のECG信号の1つ以上の早期部分から作られる、前記メモリと、
プロセッサであって、
第2の持続時間の間に感知される歩行可能患者のECG信号のテスト部分を入力し、前記第2の持続時間は前記第1の持続時間の終了後少なくとも10分経過後に開始し、
入力されたテスト部分のテストアスペクトの値を、前記メモリに記憶された基準テンプレートの基準アスペクトの値と比較して、差を決定し、
前記差が警報閾値を超えたことに応答して前記出力装置に警報を出力させるように構成された前記プロセッサとを含
み、
前記メモリがデフォルトテンプレートを記憶し、
基準テンプレートが作成され又は完了する前に、入力されたテスト部分のテストアスペクトの値を、基準テンプレートの基準アスペクトの値と比較する代わりにデフォルトテンプレートの基準アスペクトの値と比較して、差を決定する、
歩行可能な患者のための着用型医療(WM)システム。
【請求項2】
前記プロセッサが、
前記ECG信号の前記早期部分のそれぞれの早期振幅波形から複合振幅波形を生成し、
前記複合振幅波形を前記基準テンプレートとして前記メモリに記憶するようにさらに構成される、
請求項1に記載のWMシステム。
【請求項3】
前記プロセッサが前記ECG信号の前記早期部分のそれぞれの早期振幅波形の類似性統計を識別するようにさらに構成され、
前記複合振幅波形がその類似性統計が閾値を超える前記早期振幅波形から生成される、
請求項2に記載のWMシステム。
【請求項4】
前記プロセッサが、前記早期振幅波形から前記複合振幅波形を生成する前に、前記早期振幅波形を整列させるようにさらに構成される、
請求項2に記載のWMシステム。
【請求項5】
前記プロセッサが、前記早期振幅波形を整列させる前に、前記早期振幅波形をフィルタリングするようにさらに構成される、
請求項4に記載のWMシステム。
【請求項6】
前記ECG電極のうちの特定の1つが前記支持構造に結合され、前記結合が、前記支持構造が前記歩行可能患者によって装着されている間に、前記特定のECG電極が前記患者の身体に対して移動可能であるように前記特定のECG電極が前記患者の身体との接触を時々失うように前記患者の移動に応答して前記患者の身体に対して移動可能である非バイアス状態と、前記非バイアス状態にあるときよりも前記患者の身体に対して移動可能でないように前記支持構造に対して前記特定のECG電極が前記患者の身体に対して機械的にバイアスされたバイアス状態とのうちの1つにあり、
さらに、特定のECG電極をバイアスされていない状態からバイアスされた状態に遷移させるように構成されたバイアス機構であって、特定のECG電極がこのようにバイアスされた状態に遷移したときに、特定のECG電極がECG信号を感知するように構成されたバイアス機構を含む、
請求項1に記載のWMシステム。
【請求項7】
前記バイアス機構が、監視条件が満たされているとの決定に応答して、前記特定のECG電極を前記非バイアス状態から前記バイアス状態に遷移させるように構成される、
請求項6に記載のWMシステム。
【請求項8】
前記プロセッサが、監視条件が満たされているか否かを決定するようにさらに構成され、
前記テスト部分が、前記監視条件が満たされているとの決定に応答して入力される、
請求項1に記載のWMシステム。
【請求項9】
前記監視条件が、前記患者の心拍数が心拍数閾値を超えることを含む、
請求項8に記載のWMシステム。
【請求項10】
前記歩行可能患者のECG信号ではない前記歩行可能患者の少なくとも1つの生理学的パラメータを監視するように構成された監視装置をさらに含み、
監視パラメータの値が監視閾値に到達したことに応答して監視条件が満たされる、
請求項8に記載のWMシステム。
【請求項11】
前記生理学的パラメータが、歩行可能患者の心拍数、血液潅流、血流、血圧、血中酸素レベル、潅流された組織の光透過または反射特性の拍動性変化、心音、呼吸音、脈拍および運動から選択される、
請求項10に記載のWMシステム。
【請求項12】
前記テストアスペクトが前記ECG信号の前記テスト部分の集合波形を含む、
請求項1に記載のWMシステム。
【請求項13】
前記テストアスペクトが、1)前記ECG信号の前記入力されたテスト部分のQRS群のQRS間隔、2)前記ECG信号の前記入力されたテスト部分のQRS群の後のSTセグメント、3)前記ECG信号の前記入力されたテスト部分のQRS群のST間隔、および4)前記ECG信号の前記入力されたテスト部分のQRS群の後のT波、のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1に記載のWMシステム。
【請求項14】
前記WMシステムがユーザインターフェース(UI)を含み、
前記出力装置が前記UIに属し、
前記警報が、人間が知覚可能な指示を発する前記出力装置によって出力される、
請求項1に記載のWMシステム。
【請求項15】
前記WMシステムが前記出力装置である通信モジュールを含み、
前記通信モジュールが通知を他の装置に送信することにより、前記警報が出力される、
請求項1に記載のWMシステム。
【請求項16】
着用型医療(WM)システムのための方法であって、前記WMシステムが心電図(ECG)電極と、歩行可能患者の身体上にECG電極を維持するように歩行可能患者によって装着されるように構成された支持構造であって、前記ECG電極は、このように維持されると、歩行可能患者のECG信号を感知するように構成される、前記支持構造と、出力装置と、メモリとを含み、
前記方法が、
第1の持続時間の間に感知された前記歩行可能患者のECG信号の1つ以上の早期部分から作られた基準テンプレートをメモリに記憶し、
第2の持続時間の間に感知される前記歩行可能患者のECG信号のテスト部分を入力し、前記第2の持続時間は、前記第1の持続時間の終了後少なくとも10分経過後に開始し、
入力されたテスト部分のテストアスペクトの値を、前記メモリに記憶された基準テンプレートの基準アスペクトの値と比較して、差を決定し、
前記出力装置によって、前記差が警報閾値を超えたことに応答して警報を出力
し、
前記メモリがデフォルトテンプレートを記憶し、
基準テンプレートが作成され又は完了する前に、入力されたテスト部分のテストアスペクトの値を、基準テンプレートの基準アスペクトの値と比較する代わりにデフォルトテンプレートの基準アスペクトの値と比較して、差を決定する、
前記方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
人が何らかの心臓不整脈を患った場合、身体各部へ流れる血液が減少する結果を招く恐れがある。不整脈によっては、突然の心停止(Sudden Cardiac Arrest:SCA)をもたらす恐れさえもある。SCAは、とりあえず治療しなければ、例えば、10分以内のごく短時間に、死に至る可能性がある。一部の観察者によって、SCAは心臓発作と同じであると考えられたが、実はそうではない。
【0002】
SCAのリスクの高い人もいる。そのような人には、心臓発作、または以前SCAを発症した経験を持つ患者が含まれる。このような人に対しては、植込み型除細動器(Implantable Cardioverter Defibrillator:ICD)の装着を勧められることが多い。ICDは胸部に外科的に植え込まれ、患者の心電図(Electrocardiogram:ECG)を継続的に監視する。特定の種類の心臓不整脈が検出された場合、ICDは心臓を通る電気ショックを与える。
【0003】
SCAのリスクが高いと見なされた人には、ICDを植え込むまでの間、着用型除細動器(Wearable Cardioverter Defibrillator:WCD)システムが提供されることがある。そのようなシステムの初期バージョンのものは、着用型心臓除細動器(Wearable Cardiac Defibrillator)システムと呼ばれていた。WCDシステムは、一般的に、患者が着用するための、ハーネス、ベスト、ベルト、またはその他の衣類を含んでいる。WCDシステムは、さらに、ハーネス、ベスト、またはその他の衣類に接続された除細動器および電極などの電子部品を含んでいる。患者がWCDシステムを着用しているときには、電極が患者の皮膚と良好に電気的接触をすることができ、そのため、患者のECGの感知をしやすくすることができる。ECGから除細動適応心臓不整脈が検出された場合、除細動器は、患者の身体を通る、したがって、心臓を通る適度な電気ショックを与える。これによって、患者の心臓を再起動し、それによって患者の生命を救うことができる。
【0004】
本明細書の本背景技術の節で論じた対象のすべてが必ずしも従来技術であるというわけではなく、本背景技術の節で示されたというだけの理由で従来技術であると見なしてよいわけではない。加えて、本説明におけるいかなる従来技術への参照も、そのような従来技術が、いかなる国のいかなる技術における共通の一般的知識の一部を成すとの認識またはいかなる形の示唆ではなく、そのように解釈すべきでもない。これらの方針に沿って、本背景技術の節で論じた従来技術における問題点に対する、またはそのような対象に関連するいかなる認識も、従来技術であると明示されない限り、従来技術として取り扱うべきではない。むしろ、本背景技術の節におけるいかなる対象に対する論考も、特定の問題に対して本発明者らが取ったアプローチの一部として取り扱うべきである。このアプローチは、それ自体、発明的であってもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本説明は着用型医療(WM)システム、デバイス、プログラムを記憶することができる記憶媒体、及び方法の例を示し、それらの使用は、従来技術の問題及び制限を克服するのに役立つことができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態では、着用型医療(WM)システムが、ECG電極と、ECG電極を患者の身体上に維持するように、歩行可能患者が装着することができる支持構造とを含む。このように維持されると、ECG電極は、歩行可能患者のECG信号を感知するように構成することができる。WMシステムは、基準テンプレートを記憶するメモリと、出力デバイスとをさらに含む。基準テンプレートは、患者のECG信号の1つ又は複数の早期部分から作成することができる。次いで、ECG信号の後の部分が感知され、基準テンプレートと比較されて、特定の問題があるかどうかが判定される。そのように決定された場合、出力デバイスは、警告を出力することができる。
【0007】
実施形態では、着用型医療(WM)システムは、歩行可能患者が着用することができる支持構造と、患者のECG信号以外の患者の生理学的パラメータを監視する監視装置とを含む。WMシステムはさらに、心筋梗塞(Myocardial Infarction: MI)に関連する1つ又は複数の心筋梗塞アラーム状態を記憶するメモリと、出力デバイスとを含む。監視された生理学的パラメータの値が入力され、その値が1つ又は複数のMIアラーム条件のうちの少なくとも1つを満たすかどうかが判定される。そのように決定された場合、出力デバイスは、警告を出力することができる。
【0008】
特許請求の範囲に記載された本発明のこれらおよび他の特徴および利点は、本明細書で説明され、図示される実施形態に鑑みて、すなわち、本明細書の記述および添付図面において、より容易に理解できるようになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に従って作製されたWCDシステムの一例の構成要素の図である。
【0010】
【
図2】
図2は、実施形態に従って作製された、
図1のシステムに属する除細動器のような体外式除細動器の構成要素の例を示す図である。
【0011】
【
図3A】
図3Aは実施形態による着用者の身体に向かってバイアスされていない、
図1の電極の可能な実施形態などの電極を示す図である。
【0012】
【
図3B】
図3Bは
図3Aの電極を示す図であるが、電極は代わりに、実施形態による着用者の身体に向かってバイアスされている。
【0013】
【
図4】
図4は、WCDシステムの構成要素の例示的な実施形態の図である。
【0014】
【
図5】
図5は、実施形態によるWCDシステムにおいて異なるベクトルに沿ってECG信号を感知するために複数の電極をどのように使用することができるかの一例を示す概念図である。
【0015】
【
図6】
図6は、実施形態に従って作られたWMシステムの構成要素の図である。
【0016】
【
図7】
図7は、基準テンプレートを作成するために使用される患者の早期ECG信号の時間図、及び基準テンプレートと比較される後のテストECG信号の時間図、ならびに基準テンプレートを生成するために波形セグメントを選択するための条件、ならびに後に比較をさせるための条件を含む、複数の関連する図を実施形態に従って示す。
【0017】
【
図8】
図8は理想的なECG信号の波形振幅のセグメントの時間図であり、実施形態によって監視することができる態様をさらに示す。
【0018】
【
図9】
図9は、実施形態による、他のものと整列させることができるようにフィルタリングされたサンプルECG波形の時間図である。
【0019】
【
図10】
図10は、実施形態による、基準テンプレートを構築するための追加のサンプル方法を説明するためのフローチャートである。
【0020】
【
図11】
図11は、実施形態によるサンプル方法を説明するためのフローチャートである。
【0021】
【
図12】
図12は、実施形態によって検出され得る健康なECG波形及び疑わしいECG波形のサンプル時間図を示す。
【0022】
【
図13】
図13は、
図12の波形のいくつかのような疑わしいECG波形を検出するための、実施形態による波形類似係数を計算するためのサンプル方程式を示す。
【0023】
【
図14A】
図14Aは、実施形態による、検出されたQRSピークを有するECG信号の第1の時間図と、ピークについて計算された波形類似度係数を示す第2の時間図とを示す。
【0024】
【0025】
【
図15A】
図15Aは、実施形態による、検出されたQRSピークを有するECG信号の第1の時間図と、ピークについて計算された波形類似度係数を示す第2の時間図とを示す。
【0026】
【0027】
【
図16】
図16は、実施形態によるサンプル方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
上述したように、本説明は、着用型医療(WM)システム、デバイス、プログラムを記憶することができる記憶媒体、及び方法に関する。次に、実施形態をより詳細に説明する。
【0029】
実施形態に係るWCDシステムは、必要な際には、歩行可能患者の心臓を電気的に再起動することによってその患者を保護しうる。そのようなWCDシステムは、複数の構成要素を含みうる。これらの構成要素を、相互接続可能なモジュールとして別々に設けたり、他の構成要素と組み合わせたりすることなどができる。
【0030】
図1は、患者82を示す。患者はWCDシステムの構成要素を着用しているので、患者82を、人や着用者とも呼ぶこともできる。患者82は歩行可能である。すなわち、患者82は、WCDシステムの着用部分を着用した状態で、歩き回ることができ、必ずしも寝たきりではない。患者82はWCDシステムの「使用者」でもあると見なしてもよいが、そうである必要はない。例えば、WCDシステムの使用者は、医師、看護師、救急救命士(Emergency Medical Technician:EMT)などの臨床医療者、または他の同様の任務を負った個人または個人のグループであってもよい。場合によっては、使用者は、居合わせた人であってもよい。本説明の範囲内におけるこれらおよび関連する用語の特定の文脈は、適宜解釈されるべきである。
【0031】
実施形態に係るWCDシステムは、WCDシステムの指定部分を着用している患者の細動を止めるように構成可能である。電荷を電気ショックの形で患者の身体に与えるWCDシステムによって、除細動を施すことができる。電気ショックは、1つ以上のパルスで与えることができる。
【0032】
特に、
図1は、実施形態に従って作製されたWCDシステムの構成要素も示す。そのような構成要素の1つが、歩行可能患者82によって着用可能な支持構造170である。したがって、支持構造170は、1日当たり少なくとも数時間で、少なくとも数日間、あるいは数か月間さえも、歩行可能患者82によって着用されるように構成される。
図1は、支持構造170を、単に一般的に示しており、実際には、半ば概念的に示していることが理解されるであろう。
図1は、単に支持構造170の概念を示すために提供されたもので、支持構造170を実装する方法や、着用する方法を限定するものと見なすべきではない。
【0033】
支持構造170は、多くの異なった手段で実装されうる。例えば、支持構造170は、単一構成要素、または複数構成要素の組み合わせの形で実装されうる。実施形態においては、支持構造170は、ベスト、ハーフベスト、衣類などを含んでもよい。そのような実施形態においては、そのような品物は、被服のようなものと同様に着用することができる。実施形態においては、支持構造170は、ハーネス、1本以上のベルトまたはストラップなどを含んでもよい。そのような実施形態においては、患者は、そのような品物を、胴や腰の周り、肩越しなどに着用することができる。実施形態においては、支持構造170は、容器またはハウジングを含んでもよく、それを防水性にすることもできる。そのような実施形態においては、例えば、米国特許第8,024,037に図示され説明されているように、支持構造を、患者の身体に接着剤で付着させることによって着用することができる。支持構造170を、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願番号US2017/0056682の支持構造に関して説明されているように実装してもよい。そのような実施形態においては、例えば、US2017/0056682に説明されているように、WCDシステムの追加的構成要素は、支持構造の外部に取り付けるのではなく、支持構造のハウジング内に収容されうることを当業者は当然理解するであろう。他の例もありうる。
【0034】
図1は、体外式除細動器100の一例を示す。本明細書においてより詳細に後述するように、体外式除細動器100のいくつかの態様は、ハウジング、およびハウジング内にエネルギー蓄積モジュールを含む。このことから、WCDシステムの文脈において、除細動器100を、メイン電子モジュールと呼ぶことがある。エネルギー蓄積モジュールは、電荷を蓄積するように構成されうる。他の構成部品は、蓄積された電荷の少なくとも一部を、電極を介して患者を通じ放出させ、1回以上の患者を通る除細動ショックを与えることができる。
【0035】
図1は、さらに、電極リード線105を介して体外式除細動器100に接続された除細動電極104、108の例も示す。除細動電極104、108は、様々な方法で患者82が着用するように構成されうる。例えば、除細動器100と除細動電極104、108は、直接的または間接的に、支持構造170に接続可能である。言い換えれば、支持構造170は、患者82が動き回ったりする間、除細動電極104、108のうち少なくとも一方が歩行可能患者82の身体に接触し続けるように、歩行可能患者82によって着用されるように構成されうる。このように、電極は、単に患者82の皮膚に、直接または衣類などを介して押し付けられることにより、身体に接触し続けることができる。実施形態によっては、電極は必ずしも皮膚に押し付けられず、WCDシステムの介入に値しうる状態が感知された時点で、そのように付勢される。さらに、除細動器100の構成部品の多くは、除細動電極104、108のうち少なくとも一方を介して、直接的または間接的に、支持構造170に接続されると考えることができる。
【0036】
除細動電極104、108が患者82の身体と良好に電気的接触をしているとき、除細動器100は、短時間の強い電気パルス111を、電極104、108を介して身体を通じ加えることができる。パルス111は、ショック、除細動ショック、治療、電気療法、治療的ショックなどとも称される。パルス111は、患者82の命を救うために、心臓85を通過して再起動するよう意図されている。パルス111は、さらに、必要があれば単に心臓85をペーシングするための、1つ以上のより低強度のペーシングパルスなどを含んでもよい。
【0037】
従来技術の除細動器は、典型的には患者のECG信号に基づいて除細動するか否かを決定する。しかし、外部除細動器100は、ECG信号を単に入力の1つとする様々な入力に基づいて除細動を開始したり控えたりしてもよい。この例では、ECG電極が設けられており、そのうちのECG電極109が示されている。さらに、この例では、ECG電極109にバイアスをかけるためにバイアス機構194が設けられている。このようなバイアス機構の詳細については、本明細書で後述する。
【0038】
実施形態に係るWCDシステムは、患者82からデータを取得することができる。そのようなデータを収集するために、WCDシステムは、少なくとも外部監視装置180を任意選択的に含んでもよい。装置180は、例えば、除細動器100のハウジング内にではなく、スタンドアローン装置として設けられうるため、「外部」装置と呼ばれる。装置180は、少なくとも1つの局所的パラメータを感知または監視するように構成されうる。局所的パラメータは、本明細書で後述するように、患者82のパラメータ、WCDシステムのパラメータ、または環境のパラメータであってもよい。
【0039】
これらのパラメータの一部のために、装置180は1つ以上のセンサまたはトランスデューサを含んでもよい。そのようなセンサの各々は、患者82のパラメータを感知し、感知されたパラメータに応じた入力を提示するように構成されうる。実施形態によっては、入力は、例えば、感知されたパラメータの値のように定量的であり、他の実施形態においては、例えば、しきい値を交差したかどうかなどの情報のように定性的である。患者82に関するこれらの入力は、生理学的入力や患者入力とも呼ばれることがある。実施形態においては、センサは、より広義に、多くの個別センサを包含するものとして解釈される。
【0040】
任意選択的に、装置180は、支持構造170に物理的に接続されてもよい。さらに、装置180は、支持構造170に接続された他の構成要素に通信可能に接続されてもよい。そのような通信は、当業者によって本説明に鑑みて適用可能と見なされるような、通信モジュールによって実装することができる。
【0041】
実施形態においては、示されたWCDシステムの1つ以上の構成要素が、患者82用にカスタム化されてもよい。このカスタム化は、複数の態様を含んでもよい。例えば、支持構造170を患者82の身体にフィットさせることができる。他の例として、例えば、休息中および歩行中の患者82の心拍数、歩行中の運動検出器出力などの、患者82の基準となる生理学的パラメータを測定することができる。患者の身体はそれぞれ異なるため、WCDシステムの診断の精度を上げるために、上記のような基準となる生理学的パラメータの測定値を使って、WCDシステムをカスタム化することができる。もちろん、そのようなパラメータ値はWCDシステムのメモリなどに蓄積することができる。さらに、そのような基準となる生理学的パラメータの測定値を入力するプログラミングインタフェースを、実施形態に従って、作成することができる。そのようなプログラミングインタフェースは、それらの測定値を、他のデータと共に、自動的にWCDシステムに入力してもよい。
【0042】
図2は、実施形態に従って作製された、体外式除細動器200の構成要素を示す図である。これらの構成要素は、例えば、
図1の体外式除細動器100に含まれてもよい。
図2に示された構成要素は、ケーシング201とも称しうるハウジング201の中に設けられてもよい。
【0043】
外部除細動器200は、
図1の歩行可能患者82のような、それを装着する患者のために意図されている。除細動器200は、ユーザ282のためのユーザインタフェース(UI)280をさらに含み得る。ユーザ282は、着用者82としても知られる患者82とすることができる。あるいは、ユーザ282が、支援を提供することができる居合わせた人、又は訓練された人物など、現場の地元の救助者とすることができる。あるいは、ユーザ282がWCDシステムと通信する遠隔に位置する訓練された介護者であってもよい。
【0044】
UI280は、多くの方法で作ることができる。UI280は、画像、音声、または振動を出力することによって使用者へ通信するために、視覚的、聴覚的、または触覚的でありうる出力装置を含んでもよい。画像、音声、振動、および使用者282に知覚されうるあらゆるものはまた、HPIと呼ぶことができる。出力装置には、多くの例がある。例えば、出力装置は、ライト、または感知や検出や測定されたものを表示する画面であってもよく、救助者282に、蘇生の試行などに対する視覚的フィードバックを提供してもよい。他の出力装置は、音声プロンプトや、ビープ音や、大きな警報音や、居合わせた人々に警告する言葉などを発するように構成されうるスピーカであってもよい。
【0045】
UI280は、使用者からの入力を受信するための入力装置をさらに含んでもよい。そのような入力装置は、押しボタン、キーボード、タッチスクリーン、1つ以上のマイクロフォンなどの各種操作機器を含んでもよい。入力装置は、「生きている(I am alive)」スイッチまたは「ライブマン(live man)」スイッチと呼ばれることもある取り消しスイッチであってもよい。実施形態によっては、取り消しスイッチを作動させることによって、ショックの放出を直前に防止することができる。
【0046】
除細動器200は内部監視装置281を含んでもよい。装置281はハウジング201に組み込まれているため、「内部」装置と呼ばれる。監視装置281は、患者の生理学的パラメータや、システムパラメータや、環境パラメータなどの患者パラメータを感知または監視することができる。患者パラメータは、すべて患者データと呼ぶことができる。言い換えれば、内部監視装置281は、
図1の外部監視装置180に対して補完的または代替的であることができる。パラメータのうちのどれを、監視装置180、281のうちのどちらが監視するかについての割り当ては、設計検討に従って行うことができる。本明細書の他の箇所でも説明したように、装置281は1つ以上のセンサを含んでもよい。
【0047】
患者パラメータは、患者の生理学的パラメータを含んでもよい。患者の生理学的パラメータは、例として、そして限定するものとしてではなく、患者がショックまたはその他の介入や支援を必要としているかどうかをWCDシステムが検知する際に、何らかの役に立つ可能性がある生理学的パラメータを含んでもよい。患者の生理学的パラメータは、患者の病歴やイベント歴などを任意選択的に含んでもよい。そのようなパラメータの例としては、患者のECG、心拍数、血中酸素濃度、血流量、血圧、血液灌流、潅流組織の光透過または反射特性の拍動性変化、心音、心臓壁運動、呼吸音、および脈拍が挙げられる。したがって、監視装置180、281は、患者の生理学的信号を取得するように構成された1つ以上のセンサを含んでもよい。そのようなセンサまたはトランスデューサの例としては、ECGデータを検出する1つ以上の電極、灌流センサ、パルス酸素濃度計、血流量検出用装置(例えば、ドプラ装置)、血圧検出用センサ(例えば、血圧計バンド)、光学センサ、おそらく光源と協働する、組織の色変化を検出するための照明検出器およびセンサ、モーションセンサ、心臓壁運動を検出できる装置、音響センサ、マイクロフォンを有する装置、およびSpO2センサなどが挙げられる。本開示に鑑みて、このようなセンサは患者の脈拍の検出に役立ち、したがって、脈拍検出センサ、脈拍センサ、及び脈拍数センサ、心拍数センサ、心拍不規則性センサなどとも呼ばれることが理解されるであろう。さらに、当業者は、脈拍検出を実行する他の方法を実装してもよい。
【0048】
実施形態によっては、局所的パラメータは、患者282の監視された生理学的パラメータ中に検出可能なトレンドである。トレンドは、短期および長期に渡って、異なる時点におけるパラメータ値を比較することによって検出できる。検出されたトレンドが特に心臓リハビリテーションプログラムに役立つパラメータには、A)心機能(例えば、駆出分画率、一回拍出量、心拍出量など)、B)休息中または運動時の心拍変動、c)運動時の心拍プロファイル、および、例えば、加速度計信号のプロファイルからのものやレート適応型ペースメーカ技術からの情報によるものなどの、活動力の測定値、d)心拍数のトレンド、e)SpO2、CO2などからの灌流、または上記パラメータなどの他のパラメータ、f)呼吸機能、呼吸数など、g)動き、活動のレベルなどが含まれる。トレンドが検出されると、おそらく理由があれば警告とともに、通信リンクを介したトレンドの保存と報告の少なくとも一方をすることができる。患者282の経過を監視している医師は、報告から、状態が改善していないか、悪化しているかについて知ることになるであろう。
【0049】
患者状態パラメータには、動き、姿勢、最近話をしたか、および多分何を話したかなど、さらには、任意選択的にこれらのパラメータの履歴などの、患者282の記録された態様が含まれる。あるいは、これらの監視装置の1つは、グローバルポジショニングシステム(GPS)位置センサなどの位置センサを含むことができる。そのようなセンサは、位置を検出することができ、さらに、時間の経過に伴う位置の変化率として、速度を検出することができる。多くの運動検出器は、検出器の運動、したがって患者の身体の運動を表す運動信号を出力する。患者状態パラメータは、SCAが実際に起きているのかの判定を絞り込む際に、非常に有用となりうる。
【0050】
したがって、実施形態に従って作製されたWCDシステムは運動検出器を含んでもよい。実施形態においては、運動検出器を、監視装置180内または監視装置281内に実装することができる。そのような運動検出器は、例えば、加速度計を用いて、当技術分野で公知のように、多くの手段で作製することができる。本例では、運動検出器287は、監視装置281内に実装される。実施形態に係るWCDシステムの運動検出器は、運動イベントを検出するように構成されうる。運動イベントは、便利の良いように、例えば、基準となる動きまたは休息からの動きの変化などとして定義することができる。そのような場合、感知された患者パラメータが運動である。
【0051】
WCDシステムシステムパラメータには、システム識別、電池状態、システム日付時刻、セルフテストのレポート、入力されたデータの記録、発症と介入の記録などを含むことができる。検出された運動イベントに応答して、運動検出器は、検出された運動イベントまたは運動から、後続の装置または機能によって受信されうる運動検出入力を提示または生成してもよい。
【0052】
環境パラメータには気温と気圧を含むことができる。さらに、湿度センサは、雨が降りそうかどうかの情報を提供する可能性がある。患者の推定位置も、環境パラメータと見なしうる。監視装置180または281が上記のようにGPS位置センサを含み、患者がWCDシステムを着用していると推定される場合、患者の位置を推定することができる。
【0053】
除細動器200は、一般的に、除細動ポート210を含む。除細動ポート210はハウジング201内のソケットであってもよい。除細動ポート210は、電気的ノード214、218を含む。
図1のリード線105などの、除細動電極204、208のリード線は、それぞれ、ノード214、218と電気接触するように、除細動ポート210に差し込み可能である。そうする代わりに、除細動電極204、208を連続的に除細動ポート210に結合することも可能である。いずれにしても、本明細書でより十分に後述するエネルギー蓄積モジュール250に蓄積された電荷の少なくとも一部を、電極を介して、着用者に導くために、除細動ポート210を使用することができる。電荷は、除細動、ペーシングなどのためのショックになるであろう。
【0054】
除細動器200は、ハウジング201内に、ECGポートとも呼ばれることもあるセンサポート219も任意選択的に有してもよい。センサポート219は、ECG電極およびECGリード線とも呼ばれる感知電極209に差し込まれるように適合させることができる。そうする代わりに、感知電極209を連続的にセンサポート219に結合することも可能である。感知電極209は、特に、患者の身体、中でも患者の皮膚と良好に電気的に接触している場合に、例えば、12リード信号、または異なる数のリード線からの信号などのECG信号の感知をしやすくすることができるトランスデューサの一種である。支持構造は、除細動電極204、208と同様に、感知電極209を患者282の身体に接触し続けるように、患者282に着用されるように構成されうる。例えば、除細動電極204、208と同様に、感知電極209を、患者と良好に電気的に接触させるために、支持構造170の内側に取り付けることができる。
【0055】
任意選択的に、実施形態に係るWCDシステムは、電極と患者の皮膚の間に自動的に展開することができる流体も含む。流体は、電極と皮膚の間により良好な電気的接触を確立するために、電解質を含むことなどによって導電性とすることができる。電気的に言えば、流体が展開されると、各電極と皮膚との間の電気インピーダンスが低下する。機械的に言えば、流体は、展開後にそれが放出された電極の近辺の位置から流れ去らないように、低粘度ゲルの形態であってもよい。流体は、両方の除細動電極204、208のため、および感知電極209のために使用することができる。
【0056】
流体は、最初は、
図2に示されていない流体貯留容器に貯蔵されている。 そのような流体貯留容器は支持構造に結合することができる。加えて、実施形態に係るWCDシステムは、流体展開機構274をさらに含む。流体展開機構274は、流体の少なくとも一部を貯留容器から放出させ、電極204、208が患者に取り付けられるように構成される患者位置の一方または両方の近くに展開させるように構成されうる。実施形態によっては、流体展開機構274は、放電の前に、本明細書でより十分に後述するプロセッサ230からの起動信号ASの受信に応答して起動される。
【0057】
実施形態によっては、除細動器200は測定回路220も含み、その1つ以上のモジュールはそのセンサまたはトランスデューサと協働する。測定回路220は、患者の1つ以上の電気的な生理的信号がセンサポート219から提供されている場合には、それを感知する。除細動器200がセンサポート219を欠いている場合でも、除細動電極204、208が患者に取り付けられているときは、測定回路220は、任意選択的に、ノード214、218を通じて生理的信号を取得することができる。これらの場合には、入力はECG測定値を反映する。患者パラメータはECGでもよく、それは電極204、208間の電圧差として感知することができる。加えて、患者パラメータはインピーダンスでもよく、それは電極204、208間、および対ごとに考えたセンサポート219の結合部間のうち、少なくとも一方で感知することができる。インピーダンスを感知することは、とりわけ、これらの電極204、208と感知電極209のうち少なくとも一方が患者の身体と良好に電気的に接触していないことを検出する際に、有用となりうる。患者のこれらの生理学的信号は、利用可能であれば、感知することができる。その後、測定回路220は、それらに関する情報を、入力、データ、その他の信号などとして提示または生成することができる。このことから、測定回路220は、センサが患者パラメータを感知したことに応答して患者入力を提示するように構成されうる。実施形態によっては、測定回路220は、感知電極209によって感知されたECG信号に応答するECG信号の値などの患者入力を提示するように構成されうる。より厳密に言えば、測定回路220によって提示された情報は測定回路220から出力されるが、この情報は後続のデバイスまたは機能によって入力として受信されるため、入力と呼ぶことができる。
【0058】
除細動器200はプロセッサ230も含む。プロセッサ230は、様々な方法で実装されうる。そのような方法は、例として、そして限定するものとしてではなく、マイクロプロセッサおよびデジタル信号プロセッサ(Digital Signal Processor:DSP)などのデジタルやアナログプロセッサ、マイクロコントローラなどのコントローラ、マシン内で実行されるソフトウェア、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)や、フィールドプログラマブルアナログアレイ(Field-Programmable Analog Array:FPAA)や、プログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)などのプログラム可能回路、特定用途向け集積回路(Application-Specific Integrated Circuit:ASIC)、およびこれらのうち1つ以上の任意の組み合わせなどを含む。
【0059】
プロセッサ230は、本明細書でより十分に後述するメモリ238などの非一時的記憶媒体を含むか、またはそれにアクセス可能であってもよい。そのようなメモリは、マシン読み取り可能でマシン実行可能な命令を記憶するための不揮発性要素を有することができる。そのような命令のセットは、プログラムとも呼ばれうる。「ソフトウェア」とも称されることがある命令は、一般に、本明細書に開示されるか、または開示された実施形態に鑑みて当業者によって理解されうるような行為や動作や方法を実行することによって機能性を提供する。実施形態によっては、また、本明細書で用いる慣例上、ソフトウェアの例を、「モジュール」、および他の同様の用語で呼ぶことがある。一般に、モジュールは、特定の機能を提供または果たすように、命令のセットを含む。提供されるモジュールおよび機能の実施形態は、本明細書に記載の実施形態によって限定されない。
【0060】
プロセッサ230は、複数のモジュールを有すると見なすことができる。そのようなモジュールの1つは検出モジュール232でありうる。検出モジュール232は心室細動(Ventricular Fibrillation:VF)検出器を含むことができる。入力、値を反映するデータ、または他の信号値として利用可能な、測定回路220からの感知された患者のECGは、患者がVFを経験しているかどうかを判定するために、VF検出器によって使用されうる。VFは、一般的に、SCAに至るため、VFを検出することは有用である。検出モジュール232は、心室頻拍(Ventricular Tachycardia:VT)を検出するためのVT検出器などをさらに含むことができる。
【0061】
プロセッサ230内のもう1つのそのようなモジュールは、何をすべきかの助言を生成する助言モジュール234であってもよい。助言は、検出モジュール232の出力に基づいてもよい。実施形態によれば、多くの種類の助言がありうる。実施形態によっては、助言は、プロセッサ230が、例えば、助言モジュール234を介して下す、ショック/ショックなしの決定である。ショック/ショックなしの決定は、記憶されているショック勧告アルゴリズム(Shock Advisory Algorithm)を実行することによって、下すことができる。ショック勧告アルゴリズムは、実施形態に従って捕捉された1つ以上のECG信号からショック/ショックなしの決定を行い、ショック基準が満たされているかどうかを判定することができる。決定は、捕捉されたECG信号のリズム解析または他の方法から行うことができる。例えば、VF,VTなどに対するショック決定がありうる。
【0062】
行われ得る決定のもう1つの例は本明細書で後述するように、1つ以上の電極を人体に向かってバイアスすることである。これらの実施形態のいくつかでは、バイアス信号BAを生成することによって、決定を伝達することができる。除細動器300は、バイアスポート292からバイアス機構194などのシステムのバイアス機構にバイアス信号BAを送出するためのバイアスポート292も任意選択で含む。
【0063】
実施形態によっては、決定がショックを与えることであるとき、電荷が患者に放出される。電荷の放出は、放電して患者にショックを与えることとしても知られている。上述のように、それは除細動、ペーシングなどのために利用できる。
【0064】
完全な状態においては、感知された患者のECG信号の断片から、非常に信頼性の高いショック/ショックなしの決定を下すことができる。しかし、実際には、ECG信号は電気的ノイズによって破壊されることがよくあり、それによって解析が困難になる。過大なノイズは心臓不整脈の誤検出を引き起こし、患者に対する誤警報を招く。ノイズの多いECG信号は、2018年7月17日に出願され、US2019/0030351A1として公開されている米国特許出願第16/037,990、および2018年7月17日に出願され、US2019/0030352A1として公開されている米国特許出願第16/038,007に説明されているように対処することもできる。なお、両方とも同一出願人によるもので、参照により本明細書に援用される。
【0065】
プロセッサ230は、他の機能のために、他のモジュール236などの追加のモジュールを含むことができる。さらに、内部監視装置281が実際に設けられている場合には、その入力などをプロセッサ230が受信してもよい。
【0066】
除細動器200は、任意選択で、プロセッサ230と協働することができるメモリ238をさらに含む。メモリ238は、様々な方法で実装されうる。そのような方法は、例として、そして限定するものとしてではなく、揮発性メモリ、不揮発性メモリ(Nonvolatile Memory:NVM)、読み出し専用メモリ(Read-Only Memory:ROM)、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)、磁気ディスク記憶媒体、光記憶媒体、スマートカード、フラッシュメモリデバイス、これらの任意の組み合わせなどを含む。このように、メモリ238は、非一時的記憶媒体である。メモリ238が設けられている場合、メモリ238はプロセッサ230用のプログラムを含むことができ、プロセッサ230がそれを読んで実行することができてもよい。より具体的には、プログラムは、プロセッサ230が読み込んで実行しうるコードの形態の命令のセットを含むことができる。実行は物理量の物理的操作によって行われる、そして実行すべき機能や動作やプロセスや行為や処置や方法をもたらすこと、およびプロセッサが他の装置、構成要素、またはブロックにそのような機能や動作やプロセスや行為や処置や方法を実行させることのうち少なくとも一方が行われてもよい。プログラムは、プロセッサ230の固有のニーズに対して動作可能であることができ、また、助言モジュール234によって決定がなされうるプロトコルおよび方法も含みうる。加えて、メモリ238は、使用者282が現場の救助者である場合の使用者に対するプロンプトを記憶することができる。さらに、メモリ238はデータを記憶することができる。データは、例えば、内部監視装置281および外部監視装置180によって学習されたように、患者データ、システムデータ、および環境データを含むことができる。データは、除細動器200から送信される前に、メモリ238に記憶されてもよく、あるいは、除細動器200によって受信された後に、そこに記憶されてもよい。
【0067】
除細動器200は、遠隔支援センター、緊急医療サービス(EMS)などの他のエンティティの他のデバイスとの1つ又は複数の有線又は無線通信リンクを確立するための通信モジュール290を任意選択で含むことができる。通信リンクは、データ及びコマンドを転送するために使用することができる。データは、患者データ、事象情報、試みられた治療、CPR性能、システムデータ、環境データなどであってもよい。例えば、通信モジュール290は例えば、US 20140043149に記載されているように、インターネットを介してアクセス可能なサーバに、例えば、毎日、心拍数、呼吸数及び他のバイタルサインデータを無線で送信することができる。このデータは患者の医師によって直接分析することができ、また、進行中の病気を検出し、次いで、テキスト、電子メール、電話などを介して医療従事者に通知するように設計されたアルゴリズムによって自動的に分析することもできる。また、モジュール290は当業者が必要と考えることができるような相互接続されたサブ構成要素、例えば、アンテナ、プロセッサの一部、サポート電子機器、電話又はネットワークケーブルのためのコンセントなどを含むことができる。
【0068】
除細動器200は電源240をさらに含んでもよい。除細動器200の携帯性を可能にするために、電源240は一般的には電池を含む。そのような電池は、一般的には、電池パックとして実装されるが、それは充電式であってもなくてもよい。充電式と非充電式の電池パックを組み合わせて使用することもある。電源240の他の実施形態は、交流(Alternating Current:AC)電力が利用可能な場所用のAC電力オーバーライド、エネルギー蓄積コンデンサなどを含むことができる。充電または電源240の交換に備えるために、適切な構成要素が含まれてもよい。実施形態によっては、電源240はプロセッサ230による制御および監視のうち少なくとも一方の対象となる。
【0069】
除細動器200は、エネルギー蓄積モジュール250をさらに含んでもよい。エネルギー蓄積モジュール250は、例えば、直接または電極とそのリード線を介して、WCDシステムの支持構造に接続されうる。モジュール250には、ショックを与えるための放電のためにそれを準備する際、いくらかの電気エネルギーを一時的に電荷の形で蓄えることができる。実施形態においては、プロセッサ230による制御に従って、所望量のエネルギーまで、モジュール250を電源240から充電することができる。代表的な実装形態においては、モジュール250は、単一のコンデンサまたはコンデンサのシステムなどでありうるコンデンサ252を含む。実施形態によっては、エネルギー蓄積モジュール250は、ウルトラキャパシタのような、高電力密度を示す装置を含む。上述のように、コンデンサ252は、エネルギーを患者に与えるための電荷の形で蓄積する。
【0070】
上記の決定のように、ショック基準が満たされたことに応答して、ショックを与える決定を下すことができる。決定がショックを与えることであるとき、プロセッサ230は、ショック111を患者82に与えるように、支持構造が患者82に着用されている間、モジュール250に蓄積されている電荷の少なくとも一部または全部を、患者82を通じ放電させるように構成されうる。
【0071】
放電を引き起こすために、除細動器200は放電回路255をさらに含む。決定がショックを与えることであるとき、プロセッサ230は、放電回路255を制御して、エネルギー蓄積モジュール250に蓄積されている電荷の少なくとも一部または全部を、患者を通じ放電するように構成されうる。ショックが患者に与えられるように、放電はノード214、218に対して、さらにそこから除細動電極204、208に対して実行することができる。回路255は1つ以上のスイッチ257を含むことができる。スイッチ257は、Hブリッジなどの様々な方法で作製することができる。また、回路255は、プロセッサ230やUI280を通じて、上記のように制御することができる。
【0072】
このように放電回路255を制御することにより、放電の時間波形を制御することができる。放電のエネルギー量は、どのくらいのエネルギー蓄積モジュールが充電されたかによって、また、放電回路255がどのくらいの期間開いたままであるように制御されるかによって、制御することができる。
【0073】
除細動器200は、任意選択で、他の構成要素を含むことができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、ECG電極が患者の皮膚と常に良好な電気的接触をしているわけではない。実際には、これらのECG電極のうちの特定の1つは支持構造が患者によって装着されている間に、特定のECG電極がいわゆるバイアスされていない状態にあるように、支持構造に結合することができる。非バイアス状態にあるとき、特定のECG電極は例えば、患者が動き回る結果として、患者の身体に対して移動可能である。例えば、特定のECG電極は例えば、患者の身体の周りに締め付けられていないシャツがそうように、通常の衣服がそうように、患者の皮膚に接触することができる。したがって、特定のECG電極は患者の皮膚の周りを移動し、時折、患者の皮膚との接触を失う可能性がある。これらの時折の瞬間において、特定のECG電極と患者の皮膚との間の電気インピーダンスは無限大になる。もちろん、特定のECG電極について書かれたものは、同様の機能を実行する同類の電極にも適用することができる。
【0075】
特定のECG電極が皮膚との一貫して良好な電気的接触を形成しないことが、支持構造を長期間にわたって着用するのをより快適にする。もちろん、特定のECG電極が必ずしも長期間にわたって一貫して良好な電気的接触を行わないことは望ましくないが、ここで説明するバイアス機構によって対処されることになる。
【0076】
本発明のシステムの実施形態は、バイアス機構をさらに含むことができる。バイアス機構は、特定のECG電極を上述のバイアスされていない状態からいわゆるバイアスされた状態に遷移させるように構成することができる。バイアス状態にあるとき、特定のECG電極は、支持構造に対して患者の身体に向かってバイアスされる。その場合、バイアスは、バイアスされていない状態にあるときよりも、特定のECG電極が患者の身体に対してあまり動かないようにする力による。したがって、バイアス状態にあるとき、特定のECG電極は、バイアスされていない状態よりも、患者の皮膚とのより良好な、及び/又はより信頼性のある電気的接触を行う。より良好な電気的接触は特定のECG電極の場合のように、より信頼性の高い除細動及び/又はECG信号の受信のために使用することができる。
【0077】
好ましい実施形態では、監視条件が満たされたことに応答して、バイアス機構が特定のECG電極をバイアスされていない状態からバイアスされた状態に遷移させることができる。したがって、バイアス機構は、監視条件が満たされたという決定がなされたことを示すバイアス信号を受信するように構成することができる。例えば、論理デバイスがその決定を行うために提供された場合、バイアス機構は、その論理デバイスからバイアス信号を受信するように構成され得る。信号BAにバイアスをかける例を上述した。
【0078】
バイアス状態から非バイアス状態への移行は、特定のECG電極のバイアス及び展開とも呼ばれる。展開は、特定のECG電極、及び場合によってはシステムの他の電極のためである。この意味での展開は患者の身体に対する特定のECG電極の位置を必ずしも大きく変化させるわけではないが、身体に向かって押圧又はバイアスされる力を変化させることが理解されるであろう。
【0079】
バイアス機構は支持構造に対して特定のECG電極に圧力を加え、したがって、特定のECG電極を患者の身体に向かってバイアスするように、任意の方法で作製することができる。バイアス機構の様々な実施形態は解放されるバネを含み、支持構造を身体の周りに締め付け、バルーンを膨張させ、油圧システムに圧力を加え、電磁石などで力を加え、ねじスクリューガン構成を回転させて並進運動を生じさせ、及び/又は複数のそのようなECG電極が身体により良好に接触するように身体の周りにベルトを締め付ける。
【0080】
次に、サンプル展開について説明する。
図3Aは、一実施形態による図である。患者382は支持構造370を装着しており、そのうちの2つの部分が示されている。支持構造370は実施例に従って作られ、
図1と同様に、その2つの部分は、一般的にのみ示されている。特定のECG電極309は、バイアスされていない状態で支持構造370に結合される。
図3Aの瞬間において、特定のECG電極309は患者382の皮膚にさえ接触しない。バイアス機構394も支持構造370に結合されている。
【0081】
図3Bはバイアス機構394がバイアス力396を及ぼし、それによって特定のECG電極309が支持構造370に対して患者382に向かってバイアスされることを除いて、
図3Aと同じ要素を示す図である。
図3Bの瞬間において、特定のECG電極309は、患者382の皮膚に接触する。特定のECG電極309は、
図3Aよりも
図3Bでは容易に移動できない。
【0082】
多くの実施形態において、バイアス機構は、好ましくは着用者によって、又は居合わせた人によって、又は遠隔監視医療専門家によって、さらに可逆的であるように作製される。は、システムによって対処されるべきアクション可能なエピソードが存在しないことを検証することであり得る。逆転は、さらなる機能によって自動的に可能にすることができる。あるいは、逆転が特定のECG電極及び任意の他の電極が展開されたもの機械的な逆転運動を可能にすることによって実施され得る。逆転が早期に示唆されないこと、システムの機能を理解しない患者によること又は例えば情報を与えられていない善意の居合わせた人によることには注意を払うべきである。
【0083】
特定のECG電極がバイアスされた状態にあるとき、身体とのより良好な電気的接触を行うことが期待できることができることが理解されるであろう。したがって、特定のECG電極によって受信される任意のECG入力は好ましくは特定のECG電極がバイアスされていない状態よりもバイアスされた状態にあるときに、より信頼される。それにもかかわらず、好ましい実施形態では、患者に対する追加の偶然のチェックが、特定のECG電極がバイアスされておらずその内容がアラームを引き起こす、偶然に受信されるECG読み取りであり得る。このようなECG読み取りは、多くの方法で使用することができる。
【0084】
図4は、WCDシステムの構成要素の例示的な実施形態の図である。支持構造470は、可撓性ベスト様着用可能衣類を含む。支持構造470は、背面471と、患者の胸部の前で閉じる前面472とを有する。
【0085】
図4のWCDシステムはまた、外部除細動器400を含む。
図4は、外部除細動器400のためのいかなる支持も示しておらず、それは財布の中、ベルトの上、肩の上のストラップなどに担持され得る。ワイヤ405は、外部除細動器400を電極404、408、409に接続する。これらのうち、電極404、408は除細動電極であり、電極409はECG感知電極である。
【0086】
支持構造470は電極404、408、409を患者の身体上に維持するように、歩行可能患者によって装着されるように構成される。実際、後部除細動電極408は、ポケット478内に維持される。もちろん、ポケット478の内側は、電極408が特に展開された導電性流体の助けを借りて、患者の背中に接触することができるように、ゆるいネットで作ることができる。さらに、感知電極409はECG信号及び/又は患者のインピーダンスを感知するために、患者の胴を取り囲む位置に維持される。
【0087】
さらに、バイアス機構は好ましくはECG電極409の近くに、実際にはECG電極409の後ろに設けられるストリング494を含む。ストリング494はユーザを妨害しないように、ベスト470内に完全に設けられてもよい。その2つの端部は、好ましくは衣類が前部に固定される場所の近くで、衣類に取り付けることができる。図示されていない機構が、ストリング494を締め付け、ECG電極409を患者の身体に向かって内側にバイアスしてもよい。
【0088】
さらに、監視装置480は、システムに関連して、患者のために提供されてもよい。このような監視装置480は、装置180、281に関連して説明した患者の非ECGパラメータについて説明したようなものとすることができる。
【0089】
WCDシステムにおけるECG信号は、有用であるには多すぎる電気ノイズを含み得る。この問題を改善するために、多くのECG感知オプションをプロセッサ230に提示するために、複数のECG電極409が設けられる。これらのオプションはここでより詳細に説明するように、ECG信号を感知するための異なるベクトルである。
【0090】
図5は、実施形態による、WCDシステムの複数の電極が異なるベクトルに沿ってECG信号を感知するためにどのように使用され得るかを説明するための概念図である。心臓585を有する患者582の一部が示されている。
図5において、患者582を頭上から見て、患者582は下方に向いており、
図5の平面は患者の胴体で患者582と交差する。
【0091】
4つのECG感知電極591、592、593、594は、患者582の胴体上に維持され、それぞれのリード線561、562、563、564を有する。電極591、592、593、594は
図4の例におけるECG電極409と同様に、胴を取り囲むことが認識されるであろう。
【0092】
これらの4つのECG感知電極591、592、593、594の任意の対は、それに沿ってECG信号が感知及び/又は測定され得るベクトルを規定する。したがって、電極591、592、593、594は、6つのベクトル571、572、573、574、575、576を規定する。したがって、
図5は、マルチベクトルの実施形態を示す。
【0093】
これらのベクトル571、572、573、574、575、576は、チャネルA、B、C、D、E、Fをそれぞれ規定する。したがって、同時ECG信号501、502、503、504、505、506はそれぞれチャネルA、B、C、D、E、Fから、特に各チャネルのリード線561、562、563、564の適切な対から感知及び/又は測定され得る。
【0094】
図5ではECG電極591、592、593、594は簡略化のために同じ平面上にあり、好ましいものとして描かれているが、必ずしもそうである必要はないことが理解されるであろう。したがって、ベクトル571、572、573、574、575、576も、必ずしも同じ平面上にある必要はない。
【0095】
実施形態ではショック/非ショック判定を可能な限り正確に行うために、WCDはECG信号501、502、503、504、505、506のうちのどれがリズム分析及び解釈に最良であるかを評価することができる。例えば、最も雑音の多いECG信号は無視され、廃棄され、考慮されないが、残りのECG信号はショック/無ショック判定を行うための候補として残される。
【0096】
いくつかの実施形態では、ウェアラブル医療(WM)システム(WMS)が除細動器及び除細動器電極を含まないことを除いて、WCDシステムの態様と同様の態様を有する。例えば、
図6は、WMシステムの構成要素の例示的な実施形態の図である。もちろん、実施形態によるWCDシステムは、装着型医療監視システムの一種でもある。
【0097】
図6において、支持構造670は、ベスト状の着用可能な衣類を含む。支持構造670は、背面671と、患者の胸部の前で閉じる前面672とを有する。
【0098】
図6のWMシステムはまた、デバイス600を含む。
図6は、財布、ベルト、肩を覆うストラップ等によって、又は支持構造670上に担持され得る、装置600のための支持体を示していない。ワイヤ605は、装置600をECG電極609に接続する。
【0099】
支持構造670は患者の身体上にECG感知電極609を維持するように、歩行可能患者によって装着されるように構成される。さらに、ECG感知電極609は、患者の胴を取り囲む位置に維持される。したがって、ECG電極は2つ以上のチャネルを画定し、2つ以上のチャネルにわたって患者のECG信号の2つ以上のバージョンを感知するように構成される。さらに、バイアス機構はストリング494と同様に、ストリング694を含む。
【0100】
デバイス600は、WMプロセッサと、プロセッサ230及びメモリ238について説明したようなメモリとを有することができる。したがって、デバイス600は、感知されたECG信号の少なくとも1時間の間に採取されたサンプルから生成されるWMシステムデータを記憶することもできる。この記憶されたWMシステムデータは実施形態によれば、患者82に関するものであってもよい。
【0101】
デバイス600はまた、ユーザインターフェース(UI)の出力デバイスであり得るスクリーン699を有し得る。画面699は、タッチスクリーンである場合、UIの入力デバイスであってもよい。いくつかの実施形態では、すべての処理がWMプロセッサによって行われ、結果及びグラフが画面699に表示される。
【0102】
さらに、監視装置680は、システムに関連して、患者のために提供されてもよい。このような監視装置680は、装置180、281に関連して説明した患者の非ECGパラメータについて説明したようなものとすることができる。
【0103】
いくつかの実施形態は、患者のECG信号の悪化(これはある時間にわたる病気の進行による可能性がある)について患者を監視する。そのような実施形態では、WMシステムのメモリが第1の持続時間中に感知される歩行可能患者のECG信号の1つ又は複数の早期部分から作成される基準テンプレートを記憶することができる。その後、患者が監視されている間に、ECG信号のテスト部分が入力され、基準テンプレートと比較されてもよい。これらの実施形態のいくつかでは、WMシステムが実際には着用型除細動器(WCD)システムであり、これはまた、支持構造が患者の身体上にさらに維持する1つ以上の除細動電極を含む。このようなWCDシステムはまた、患者を通して除細動電極を介して放電される電荷を蓄積するエネルギー蓄積モジュールを含む。次に、これらの実施形態のいくつかについて説明する。
【0104】
図7は、複数の図及びそれらの間の関係を示す。図のほぼ中央において、垂直軸747に対して、ECG信号振幅は、一箇所で中断される時間軸748にわたってプロットされる。ECG信号振幅の2つの部分、すなわち早期部分711及び後期部分712がプロットされている。
【0105】
早期部分711は、第1の持続時間内に感知される。第1の持続時間は、この例では時間切片720と721との間に生じるものとして定義される。後の部分712は、第2の持続時間内に感知される。第2の持続時間は、時間切片722と723との間に生じるものとして定義される。第2の持続時間は、第1の持続時間の後に生じる。実際、第2の持続時間は、第1の持続時間が終了して少なくとも10分以上経過後に開始することができる。言い換えれば、矢印745によっても示される、時間切片721と722との間の持続時間は、少なくとも10分である。この持続時間は患者が長期間監視されるように、数分、数時間、数日、数週間、及び数ヶ月とすることができ、第1の持続時間又は第2の持続時間の間に起こるものよりもはるかに長くすることができる。これが、時間軸748が矢印745の持続時間の間中断されて示されている理由である。
【0106】
この例では、早期部分711のECG信号が基準テンプレート731を作成するために使用される。基準テンプレート731の完了状態は直下の図から繰り返される時間軸748にわたり、垂直軸737に対して概念的に示される。この図では完了が0%から100%に徐々に上昇するように示されているが、これは概念を説明するためだけのものである。実施形態では、以下に見られるように、上昇は緩やかではない。時間間隔内に十分な数の正常なQRS拍動が存在する場合、基準テンプレート731を定式化することができる。第1の持続時間が時間切片721で完了すると、基準テンプレート731は完了し、100%の完了状態に達することが理解されるであろう。次に、時間切片723で、比較工程732を行うことができる。比較は、基準テンプレート731に対して第2の持続時間742の間に感知されるECG信号712のテスト部分742のものであってもよい。このような比較の例は、この文書の後半で与えられる。
【0107】
基準テンプレート731に戻ると、それは、第1の持続時間中に、ECG信号711の部分740、741を用いて生成されたことが理解されるであろう。しかし、実施形態によるシステムは、患者のデータから作成された基準テンプレート731から必ずしも開始するとは限らない。いくつかの実施形態では、デフォルトテンプレート730が基準テンプレート731が作成又は完了される前に、WMシステムのメモリに任意選択で記憶される。このような実施形態では、基準テンプレート731の代わりにデフォルトテンプレート730を使用することができる。特に、比較工程732は、ECG信号の入力されたテスト部分712のテストアスペクトの値を、基準テンプレート731の基準アスペクトの値ではなく、デフォルトテンプレート730の基準アスペクトの値と比較することによって、差を決定することができる。
【0108】
このような実施形態では、デフォルトテンプレート730がデータベース704内にあるような、以前の患者の以前のデータから構築されていてもよい。これらの実施形態のいくつかでは、以前のデータ708が性別、年齢、身長、体重などを含むセットの少なくとも1つの人口統計学的パラメータにおいて歩行可能患者と一致する以前の患者からであるように、データベース704から選択される。ECGデータはそれらが標準的な「12リード」測定から供給される場合、
図4~6に示されるタイプのECG電極から供給される場合とはいくつかの態様において異なり得ることに留意されたい。
【0109】
次に、基準テンプレート731の作成又は構築をより詳細に説明する。
【0110】
いくつかの実施形態では、WMシステムのプロセッサがECG信号の1つ又は複数の早期部分711のうちの特定の1つの振幅波形を選択し、選択された振幅波形を基準テンプレートとしてメモリに記憶するようにさらに構成される。例えば、
図8は、患者がこのように捕捉されたものを有していたと仮定した、理想的なECG信号の波形振幅のセグメントの時間
図811である。理想的ではなく、より普通のECG信号振幅波形1211も、後の図面に示されているが、異なる目的のためである。患者の信号が理想的でない場合であっても、
図8は、工程732の実施形態に従って監視することができるアスペクトを示すのに十分に役立つ。ECG振幅波形は、垂直軸847に対して、時間軸848にわたって示されている。2つのQRSピーク821、822が含まれる。テストアスペクト及び基準アスペクトのような実施形態に従って監視されることができるアスペクトは、RRインターバル824、QRSインターバル825、T波持続時間826、STセグメント持続時間828、及びSTインターバル持続時間829を含む。これらのアスペクトは例えば、軸847、848上のそれらの切片によって与えられる値を有することができる。それぞれの場合において、基準テンプレートとして記憶される波形の部分は、監視することが望まれるアスペクトに従って選択される。もちろん、複数のアスペクトは、従って、実施形態に従って監視され得る。
【0111】
他の実施形態では基準テンプレート731が複数の波形を使用して作成又は構築され、この場合、基準テンプレート731は複合振幅波形とも呼ばれ得る。特に、WMシステムのプロセッサは、ECG信号の早期部分740、741のそれぞれの早期振幅波形からそのような複合振幅波形を生成するようにさらに構成することができる。複合振幅波形は、加算、平均化、中央値による選択、そのような技法の組合せなど、任意の多くの技術によって生成することができる。次いで、プロセッサは、複合振幅波形を基準テンプレート730としてメモリに記憶することができる。この場合も、信号の複数のアスペクトをこのように監視すべき場合、基準テンプレート730は、それぞれが1つ又は複数の値を有するなど、複数のアスペクトを有することができる。
【0112】
これらの実施形態のいくつかでは、複合振幅波形が互いに類似する早期振幅波形から生成することができる。類似性は、少なくとも、
図8において上述されたアスペクトにおいて、及び他のアスペクトにおいてもあり得る。実際に、類似性はこれらの振幅波形がどの程度良好に相関しているかを示すために、内部相関として定量化することができる。例えば、WMシステムのプロセッサは、ECG信号の早期部分のそれぞれの早期振幅波形の類似性統計を識別するようにさらに構成することができる。次に、類似度統計値が閾値を超える早期振幅波形の波形から複合振幅波形を生成することができる。
【0113】
これらの実施形態のいくつかでは、プロセッサがさらに、早期振幅波形から複合振幅波形を生成する前に、早期振幅波形を整列させるように構成される。位置合わせは、結果として得られる複合振幅波形がより良い答えであることを助けることができる。フィルタリングは、多くの方法で実行することができる。そのような例の1つは、バンドパスフィルタによるものである。このようなフィルタは、8Hzから25Hzまでの周波数を通過させることができる。
【0114】
これらの実施形態のいくつかでは、プロセッサが早期振幅波形を整列させる前に、早期振幅波形をフィルタリングするようにさらに構成される。フィルタリングは、ピークをシャープにする可能性があるので、アライメントを助けることができる。一例が
図9に示されており、
図9は、フィルタリングされたサンプルECG波形の時間
図960を示している。アライメントは、早期振幅波形をそれらの鋭いピーク965によってアライメントすることによって行うことができる。
【0115】
本明細書で述べた装置やシステムは、機能や動作やプロセスや行為や処置や方法を実行することが可能である。これらの機能や動作やプロセスや行為や処置や方法は、論理回路を有する1つ以上の装置によって実装可能である。そのような装置の1つは、コンピュータなどと代替的に呼ばれうる。それは、スタンドアローン装置、または汎用コンピュータのようなコンピュータ、または1つ以上の追加機能を有したり実行したりできる装置の一部であってもよい。論理回路は、プロセッサ、および、メモリなどの、本明細書の他の箇所でも説明したような種類の非一時的コンピュータ読み取り可能な記憶媒体を含んでもよい。しばしば、便宜上の理由のみによって、プログラムを、各種の相互結合された個別のソフトウェアモジュールまたは特徴として実装し説明することが好ましい。これらは、データと共に、個別的にも集合的にも、ソフトウェアとして知られている。場合によっては、ソフトウェアはハードウェアと組み合わされて、ファームウェアと呼ばれる混合物を成す。
【0116】
さらに、方法およびアルゴリズムを以下に説明する。これらの方法およびアルゴリズムは、必ずしも、何らかの特定の論理デバイスまたは他の装置と本質的に関連するわけではない。むしろ、これらの方法およびアルゴリズムは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、マイクロプロセッサ、本明細書の他の箇所でも説明したようなプロセッサなどの計算機によって使用されるプログラムによって有利に実装される。
【0117】
本詳細説明には、フローチャート、表示画像、アルゴリズム、および少なくとも1つのコンピュータ読み取り可能な媒体内のプログラム動作の記号的表現が含まれうる。一組のフローチャートを用いて、プログラムと方法の両方を説明できるようにすることで、経済性が得られる。したがって、フローチャートはボックスに関して方法を説明するが、プログラムを同時に説明することもできる。
【0118】
図10は、実施形態による方法を説明するためのフローチャート1000を示す。任意選択の工程1022によれば、自己相似早期波形を選択することができる。これらの早期波形は、振幅波形とすることができる。選択は例えば、ECG信号の早期部分のそれぞれの早期振幅波形の類似性統計を識別し、類似性統計が閾値を超える早期振幅波形の類似性統計を選択することによって実行されてもよい。
【0119】
別の任意選択の工程1024によれば、早期振幅波形をフィルタリングすることができる。
【0120】
別の任意選択の工程1026によれば、早期振幅波形は、時間軸に沿ってシフトされることを意味して、整列されてもよい。シフトはそれらの重要な特徴の1つ、例えば鋭いピーク965が、一致するようにすることができる。
【0121】
別の任意選択の工程1028によれば、複合振幅波形を早期振幅波形から生成することができる。
【0122】
別の任意選択の工程1030によれば、複合振幅波形は、基準テンプレートとしてメモリに記憶され得る。
【0123】
図7に戻ると、この例では、基準テンプレート731がECG信号部分740、741のみの寄与で完了し、第1の持続時間のECG信号の他の部分からの寄与ではないことが理解されるであろう。この改良は必要ではないが、正常とみなされる状態の間にECGセグメントを使用することに有利であることが好ましい。例えば、いくつかの実施形態では、WMシステムのプロセッサがECG信号の早期部分のうちの特定の1つが感知されたときに正常条件が満たされたか否かを判定するようにさらに構成される。そのような実施形態では、正常条件が満たされたときに特定の早期部分が感知されたと判定することに応答して、特定の早期部分の早期振幅波形が複合振幅波形を生成するために使用される。しかし、正常条件が満たされなかった場合、その早期振幅波形は、複合振幅波形を生成するために使用されない可能性がある。
【0124】
一例が
図7に示されており、垂直軸757は2つの値、すなわち、正常条件が満たされ、満たされていないことを示すために使用される。この例では、プロット759が時間軸748にわたるその値の展開をプロットする。プロット759は、時間間隔750及び751の間にのみ正常条件が満たされることを示す。これらの時間間隔750及び751は、直前の図のECG部分740及び741を規定するものであることが理解されるであろう。
【0125】
正常状態は、多くの方法で定義することができる。一例では、正常状態が患者の心拍数が心拍数閾値未満であることを含み得る。良好な心拍数閾値は、80 bpm(拍/分)であり得る。別の例では、正常状態がQRS群が正常に現れることなどを含み得る。さらに、患者が寝ているとき、又は仰臥位であるが寝ていないとき、又は座っていないとき、又は静止しているときに、通常の状態を設定することが望ましい場合があり、これは、音センサ、動きセンサ、クロック入力などの様々なセンサで確認することができる。
【0126】
いくつかのそのような実施形態では、WMシステムが歩行可能患者のECG信号ではない歩行可能患者の少なくとも1つの生理学的パラメータを監視するように構成された監視デバイスをさらに含むことができる。そのような実施形態では、正常状態が監視されるパラメータの値が正常閾値未満であることに応答して満たされる。一例は、プロット769によって
図7に示されている。そのような監視されたパラメータの値は、時間軸748上の垂直軸767に対して追跡される。プロット769は時間間隔760及び761の間にのみ正常条件が満たされることを示し、これは、正常閾値765を超えないときであるからである。これらの時間間隔760及び761は直ぐ上にプロット759を作成したものであり、したがって、図のECG部分740及び741をさらに上に定義したものであることが理解されるであろう。
【0127】
監視される生理学的パラメータは、患者の心拍数、血液潅流、血流、血圧、血中酸素レベル、潅流された組織の光透過又は反射特性の拍動性変化、心音、呼吸音、脈拍、及び運動のうちのいずれか1つであり得る。したがって、WMシステムの監視装置は、状態が正常であるときを検出するためのセンサを含むことができる。センサは監視されている生理学的パラメータの値を感知し、生成するのに適している。
【0128】
図11は、実施形態による方法を説明するためのフローチャート1100を示す。工程1131によれば、基準テンプレートをWMシステムのメモリに記憶することができる。
【0129】
別の任意選択の工程1175によれば、監視条件が満たされるかどうかを判定することができる。例は、本文書の他の箇所に記載されている。満たされない場合、工程1175はおそらくいくらかの遅延の後に、再び実行され得る。
【0130】
満たされる場合、別の任意選択の工程1194によれば、ECG電極を患者に向かってバイアスすることができる。これは、多くの方法で実行することができる。例えば、ECG電極のうちの特定の1つは、バイアス機構194、394によって、バイアスされていない状態からバイアスされた状態に遷移させることができる。さらに、このバイアスは通常の条件が満たされたときに、第1の期間にわたって行われてもよい。実行された後、バイアスは、患者を軽減するために後に逆転されてもよく、以下同様である。
【0131】
別の工程1142によれば、ECG信号のテスト部分を入力することができる。そのようなテスト部分は、第1の持続時間が終了して少なくとも10分経過後に開始する第2の持続時間の間に感知されてもよい。入力は、患者から感知することによって、又はメモリに記憶された信号を呼び出すことによって行うことができる。
【0132】
別の工程1132によれば、入力されたテスト部分のテストアスペクトの値を、メモリに記憶された基準テンプレートの基準アスペクトの値と比較して、差を決定することができる。これは、工程732と同様である。さらに、ECG信号のテスト部分の波形は、比較のために集合されてもよい。したがって、テストアスペクトは、ECG信号のテスト部分の集合波形を含むことができる。
【0133】
別の工程1133によれば、工程1132で決定された差が警告閾値を超えるかどうかが決定される。そうでない場合、実行は、工程1175などの以前の工程に戻ることができる。
【0134】
そうである場合、別の工程1180に従って、出力ユーザインターフェースデバイスに警告を出力させることができる。
【0135】
工程1175のような監視条件は、正常条件が満たされているか否かを判定するために説明したものと同様とすることができる。例えば、WMシステムは、通常の状態が満たされているか否かを判定することに関連して説明したような、1つ又は複数の監視デバイスをさらに含むことができる。これらの監視装置は代わりに、監視条件が満たされているか否かを決定することができる。なお、監視条件は、必ずしも正常条件と同じである必要はない。
【0136】
一例を
図7のプロット779に示す。そのような監視されたパラメータの値は、時間軸748上の垂直軸777に対して追跡される。プロット779は、プロット779が監視しきい値775を超えるときであるので、監視条件が時間間隔772の間だけ満たされることを示す。この時間間隔772は、上記の図の定義されたECG部分742であることが理解されるであろう。
【0137】
さらに、監視しきい値775は、必ずしも正常しきい値765と同じ値を有する必要はないことが分かるであろう。それらが両方とも心拍数閾値である場合、監視閾値775は、90 bpmなどの適切な値に設定することができる。
【0138】
別の例は、プロセッサが時間を保持するように構成されたクロックをさらに含む場合である。監視条件は、チェック時点に到達する時間に応答して満たすことができる。もう1つの例は、WMシステムが患者によって作動されるように構成された入力デバイスを有するユーザインターフェース(UI)をさらに含む場合である。監視条件は、患者自身が入力装置を作動させることに応答して満たされてもよい。
【0139】
図12は、実施形態によって検出され得る健康なECG波形及び疑わしいECG波形のサンプル時間図を示す。波形1211は、QRSピークの後にT波が続く、比較的健全なものとみなされる。波形1211はまた、この図では健全ではない他の波形とのコントラストを容易にするために提示されている。実際、波形1222はピークT波を示し、波形1232、1233、1234は、増加するSTセグメント上昇度を示す。波形1242はQ波形成及びR波の欠落を示し、波形1252はT波反転を示す。
【0140】
図12の波形のような不健全な波形は、テストアスペクトの適切な選択によって検出することができる。例えば、テストアスペクトは、入力されたテスト部分のQRS群のQRS間隔を含むことができる。又は、テストアスペクトが入力されたテスト部分のQRSコンプレックスの後のSTセグメント又はST間隔を含むことができる。又は、テストアスペクトが入力されたテスト部分のQRS群の後のT波を含むことができる。これらの例では、テストアスペクトの選択が基準アスペクトの対応する選択を示す。検出は、上述のように波形を整列させ、その後、他のアスペクトにおける差異を調べることによって容易にすることができる。
【0141】
いくつかの実施形態では、工程1132の差が波形類似係数を計算することによって決定される。このような実施形態では、計算された波形類似性係数が類似性閾値未満であることに応答して、警告を出力することができる。
【0142】
これらの実施形態のいくつかでは、波形類似係数がこの文書の
図13の式1377に従って計算される。式1377において、FCCは特徴相関係数を表す。その値は完全な相関に達する1から、相関の完全な欠如を意味する0までの範囲である。また、そのようなFCC統計は、基準テンプレートを構成する早期波形の安定性及び自己類似性を測定するためにも使用することができる。サンプリングレート及びQRS-T持続時間に応じて、Nの良好な値を選択することができる。いくつかの実施形態では、約8点の値が良好に機能する。次に、FCCの使用例について説明する。
【0143】
図14Aは、平行な垂直線として人間の目に現れるQRSピークを有するECG信号1410の時間図を示す。小円1421、1422は、QRSピークが検出された場所を示す。ECG信号1410は、患者の通常の心拍の間に取られる。
【0144】
図14Aはまた、ECG信号1410と同じ時間軸上の別の時間
図1470を示す。第2の時間
図1470は、
図13の式1377に従って計算された、上記の図で検出されたピークの波形類似係数をプロットする。これらのうち、QRSピーク1421、1422にそれぞれ対応する2つのサンプル係数1471、1472が示されている。この例では、すべての係数が0.94の値に対応するしきい値線1479より上にあることが理解されるであろう。実際、すべてはるかに高く、すべては1にはるかに近く、すべては互いにかなり類似している。したがって、ECG信号1410は、かなり良好に相関している。この内部相関を定量化するために、メトリックを適切に確立することができる。
【0145】
ECG信号1410の波形は例えば、平均を抽出することによって集約することができる。500Hzのサンプリングレートが与えられると、ECG信号1410の図示された3万サンプルは約60秒の信号を与え、これは集約に適切である。平均化のためには、波形を加算する前に整列させ、整列させる前に、少なくとも
図10において上述したように、波形を最初にフィルタリングすることが好ましい。
【0146】
集約された波形は、フィルタリングされていない各ECG信号の平均QRS_T波形を形成することができる。結果を
図14Bに示し、DCオフセットを除去した後のサンプル同時集約信号1411、1412、1413、1414を示す。これらの集約された信号はECG電極1491、1492、1493、1494に対応し、共通基準電圧に関するものであり、したがってシングルエンドとも呼ばれる。ECG電極1491、1492、1493、1494は例えば、ECG電極591、592、593、594とすることができる。しかし、チャネルからの信号は、これらの信号の差をとることによる。集約された信号1411、1412、1413、1414は、各電極の信号のための1つ、又はチャネル当たり2つの差の基準テンプレートとして使用することもできる。以前の基準テンプレートが記憶されていたが、内部的に十分に相関されていなかった場合、信号1411、1412、1413、1414はより良好に相関される更新された基準テンプレートとして機能することができる。言い換えれば、新しい基準テンプレートが集約信号1411、1412、1413、1414から作成される前に、以前のテンプレートがメモリに記憶されていてもよい。前のテンプレートは内部相関の第1のメトリックを有することができるが、新しい基準テンプレートは内部相関の第2のメトリックを有することができる。したがって、前のテンプレートは、第2のメトリックが第1のメトリックを超えたことに応答して、新しい基準テンプレートによって置き換えることができる。
【0147】
図15Aは、平行な垂直線として人間の目に現れるQRSピークを有するECG信号1510の時間図を示す。小円1521、1522は、QRSピークが検出された場所を示す。ECG信号1510は、約120 bpmの患者の上昇した心拍数の間に得られる。
【0148】
図15Aはまた、ECG信号1510と同じ時間軸上の時間
図1570を示す。第2の時間
図1570は、
図13の式1377に従って計算された、上記の図で検出されたピークの波形類似係数をプロットする。これらのうち、QRSピーク1521、1522にそれぞれ対応する2つのサンプル係数1571、1572が示されている。この例では、係数1572が0.94の値に対応する閾値線1579を超えない。このように、ECG信号1510は、ECG信号1410よりも内部的にあまり相関しない。
【0149】
ECG信号1510の波形は例えば、
図14A、14Bと同様に、平均を抽出することによって集約することができる。結果を
図15Bに示し、DCオフセットを除去した後のサンプル同時集約信号1511、1512、1513、1514を示す。これらの集約された信号はECG電極1591、1592、1593、1594に対応し、共通基準電圧に関する。ECG電極1591、1592、1593、1594は例えば、ECG電極591、592、593、594、又は1491、1492、1493、1494であってもよいが、
図14Aよりも遅い時間であってもよい。
【0150】
集約された信号1411、1412、1413、1414が基準テンプレートとして記憶され、集約された信号1511、1512、1513、1514が後のテスト部分としてそれらと比較される場合、FCCは、工程1132のための差を計算するために使用されてもよい。そのような場合、ECG信号1510はECG信号のテスト部分であり、集約信号1512、1514は、そのテストアスペクトである。工程1132の違いは、新しい特徴1538、1539を含む。これらは基準テンプレートに対するT波変動に対応し、これは心臓がストレスを受けたときに起こり得る。このような心臓へのストレスは、ランニング、雪かきなどの活動中に生じることがある。STセグメントは上昇又は低下することによって変化することができ、これは心臓発作症状であり得る。そのようなものとして、患者及び/又は臨床医に通知することができ、患者は、それが問題であった場合、活動を停止することができる。もちろん、STセグメントの変化は患者の活動とは無関係に、心筋梗塞/心臓発作の間に起こり得る。加えて、活性誘導STセグメント変化は、冠動脈痙攣のような心臓発作以外の問題を示し得る。
【0151】
いくつかの実施形態では、プロセッサが警告閾値を超える差に応答するイベントをメモリに記憶するようにさらに構成される。このようにして、イベントは、後で再検討することができる。
【0152】
工程1180のアラートは、いくつかの方法で出力することができる。いくつかの実施形態ではWMシステムがユーザインターフェース(UI)を含み、出力デバイスはUIに属する。そのような実施形態では、警告が音、光、振動などの人間が知覚できる表示を発する出力デバイスによって出力される。
【0153】
他の実施形態では、WMシステムが出力デバイスである通信モジュールを含む。そのような実施形態では、警告が例えば遠隔の人が反応するために、コンピュータ、電話などの別のデバイスに通知を送信する通信モジュールによって出力される。
【0154】
いくつかの実施形態では、WMシステムのメモリが歩行可能患者の複数の可能性のある病気を列挙するテーブルをさらに記憶する。そのような病気は、より高い心拍数、起こり得る心臓発作、代償不全、卒中、及び心不全、又は心不全の発症の可能性についての注意を含み得る。例えば、基準テンプレートはそのような病気のために記憶されてもよく、そのような病気をマッチングするために比較が行われてもよい、などである。
【0155】
多くの実施形態は、患者のECG信号ではない患者の生理学的パラメータを主に監視することによって、急性心筋梗塞(AMI)などの心筋梗塞(MI)について患者を監視する。そのような実施形態では、WMシステムのメモリがMIに関連する1つ又は複数の心筋梗塞(MI)アラーム状態を記憶することができる。患者が監視されている間、監視された生理学的パラメータの値が入力され、その値が1つ又は複数のMIアラーム条件のうちの少なくとも1つを満たすかどうかが判定される。これらの実施形態のいくつかでは、システムはまた、支持構造が患者の身体上にさらに維持する1つ又は複数の除細動電極も含む、着用型除細動器(WCD)システムである。このようなWCDシステムはまた、患者を通して除細動電極を介して放電される電荷を蓄積するエネルギー蓄積モジュールを含む。次に、これらの実施形態のいくつかについて説明する。
【0156】
図16は、実施形態による方法を説明するためのフローチャート1600を示す。
【0157】
任意選択の工程1610によれば、心筋梗塞(MI)アラーム条件は例えば、WMシステムのメモリに記憶される。これらのMIアラーム条件は心筋梗塞に関連し得、さらに、監視される生理学的パラメータに従って選択され得る。これらのMIアラーム条件は、本明細書で後述するように生成することができる。
【0158】
別の工程1620によれば、監視された生理学的パラメータの値を入力することができる。この生理学的パラメータは患者のECG信号である必要はなく、例は本明細書の他の箇所に記載されている。
【0159】
別の工程1632によれば、入力値は、記憶されたMIアラーム条件と比較されてもよい。
【0160】
別の工程1633によれば、工程1632の結果として、入力値が、記憶された1つ又は複数のMIアラーム条件のうちの少なくとも1つを満たすかどうかを判定することができる。そうでない場合、実行は終了するか、又は工程1620などの以前の工程に戻ることができる。
【0161】
工程1633において、答えがイエスである場合、オプションの工程1694が提供されるか否か、及び/又は実行されるか否かに応じて、2つのオプションが存在する。任意選択の工程1694が実行されないか、又は提供されない場合、別の工程1680に従って、出力デバイスに警告を出力させる。これは、例えば、
図11の工程1180と同様に実行することができる。別の任意選択の工程1690によれば、蓄積された電荷は、歩行可能患者を通して除細動電極を介して放電されてもよい。
【0162】
これらの実施形態のいくつかでは、WMシステムが支持構造によって歩行可能患者の身体上に維持されるように構成された心電図(ECG)電極をさらに含む。このような実施形態では、ECG電極がこのように維持されると、歩行可能患者のECG信号を感知するように構成することができる。このECG信号は、可能性のあるMIについての追加の情報を提供することができる。
【0163】
これらの実施形態のいくつかでは、上述したものと同様に、バイアス機構が設けられる。そのような実施形態では、
図16の任意選択の工程1694を、条件に応じて提供し、実行することができる。そのような条件は、工程1633において、監視条件及び/又は入力値が1つ又は複数のMIアラーム条件のうちの少なくとも1つを満たすことを判定することなど、上述のタイプの任意の適切な条件とすることができる。次に、工程1194と同様に、ECG電極を患者に向かってバイアスすることができる。その後、先の実施形態と同様に、追加の工程を行うことができ、最終的に工程1680又は1620につながる。具体的には、基準テンプレートをメモリにさらに記憶することができ、したがって、バイアス状態にある特定のECG電極によって感知される、歩行可能患者のECG信号のテスト部分を入力することができる。次いで、入力されたテスト部分のテストアスペクトを、記憶された基準テンプレートの基準アスペクトと比較して差を決定することができ、出力デバイスは、差が警報閾値を超えたことに応答して警報を出力させることができる。
【0164】
これらの実施形態のいくつかでは、患者の監視される生理学的パラメータが心音、呼吸音、心拍数、拍動性血流、血液酸素レベル、血液潅流、潅流組織の光透過又は反射特性の変化、皮膚の色、及び運動のうちの1つ又は複数を含む。
【0165】
そのような監視される生理学的パラメータの各々について、監視装置は、適切なセンサを用いて、それに応じて作製されてもよい。実施形態によるWMシステムは、1つ又は複数のタイプのセンサと、各タイプの1つ又は複数のセンサとを有することができる。このようなセンサ及び監視装置の出力はより高い信頼性のために、個別に、又は一緒に使用することができる。
【0166】
監視される生理学的パラメータの各タイプについて、対応するMIアラーム条件は例えば、WMシステムのプロセッサのための論理規則として、パラメータに関連して生成され得る。特に、各パラメータのどのアスペクトが可能なMIを意味するかを識別することができる。
【0167】
例えば、監視装置は、潅流検出器を含むことができる。そのような潅流検出器は患者の血液潅流を監視し、潅流、心拍、心拍数、心拍強度、心拍一貫性などを検出することができる。対応するMIアラーム条件はこれらの検出された量が正常でない場合、例えば、急速な心拍(閾値よりも高い頻度)、不規則な心拍(閾値を満たさない規則性に関するカスタム統計)などの場合に生成することができる。
【0168】
別の例では、監視装置がマイクロフォンを含むことができる。そのようなマイクロフォンは、適切な配置などによって、患者の心音及び/又は呼吸音を監視するように構成することができる。
【0169】
心音の場合、マイクロフォンは、心拍の周波数、音量、強度、規則性などを検出することができる。この場合も、対応するMIアラーム条件をそれに応じて生成することができる。
【0170】
呼吸音の場合、マイクロフォンは、呼吸の周波数、音量、規則性などを検出することができる。この場合も、対応するMIアラーム条件をそれに応じて生成することができる。例えば、高すぎる頻度は、息切れを示し得る。呼吸音はまた、特に、おそらく周囲光が低い、時間が夜間で他の動きがないことを示す動きセンサなど、いびきに関連する状態の指示を確認することと組み合わせた場合に、いびきの検出に使用することができる。
【0171】
上述の方法において、各々の動作は、起こりうると書かれたことを、積極的行為、または、実行する、またはもたらす動作として、実施することができる。そのような実行する、またはもたらす動作は、システム全体、または装置、あるいはその1つ以上の構成要素によって実施することができる。方法および動作は、例えば、上記のシステムや装置や実装を用いて、様々な方法で実装可能であることが認識されるであろう。さらに、動作の順序は示されたものに限定されず、様々な実施形態に応じた様々な順序が可能であろう。そのような順序の代替案の例として、文脈上別段の指示がない限り、重複、交互、割り込み、順序変更、逐次、予備、補足、同時、逆、または他の変形順序などがある。さらに、特定の実施形態においては、新規動作を追加しても、あるいは個々の動作を修正または削除してもよい。追加される動作は、例えば、主として異なるシステム、装置、デバイス、または方法を説明しながら言及されたものからのものであってもよい。
【0172】
当業者はこの説明を考慮して本発明を実施することができ、これは全体として解釈されるべきである。詳細は、完全な理解を提供するために含まれている。他の例では、この説明を不必要に不明瞭にしないために、周知の態様は説明されていない。
【0173】
本説明は、1つ以上の例を含むが、このことは、本発明を実施しうる方法を限定するものではない。実際に、本発明の例、事例、バージョンまたは実施形態は、記載された内容に従って、またはさらに異なる方法で、また、さらに、他の現在または将来の技術と併せて実施することができる。他のそのような実施形態は、例えば、以下と同等である実施形態を含む、本明細書に記載された特徴のコンビネーションおよびサブコンビネーションを含む。説明された実施形態とは異なる順序で特徴を提供または適用する、1つの実施形態から個々の特徴を抽出し、そのような特徴を別の実施形態に挿入する、一実施形態から1つ以上の特徴を除去する、または そのようなコンビネーションおよびサブコンビネーションに組み込まれた特徴を提供しつつ、一実施形態から特徴を除去し、他の実施形態から抽出された特徴を追加する。
【0174】
概して、本開示は本発明の好適な実施形態を反映する。しかし、注意深い読者は、開示された実施形態のいくつかの態様が特許請求の範囲を超えて拡張することに気付くであろう。開示された実施形態が実際に特許請求の範囲を超えて拡張するという点で、開示された実施形態は補助的な背景情報とみなされるべきであり、請求の範囲に記載されている発明の定義を構成するものではない。
【0175】
参照符号に関しては、本説明では、単一の項目、態様、構成要素、またはプロセスを表すために、単一の参照符号が一貫して使用されることがある。さらに、本説明の作成において、同一または少なくとも類似または関連のある項目、態様、構成要素、またはプロセスの他のバージョンまたは実施形態を表すために、類似であるが同一ではない参照符号を使用するさらなる努力がなされえた。そのようなさらなる努力は必要とされなかったが、努力された場合においては、必要でないにもかかわらず、読者による理解を促進するために行われた。本明細書においてなされたとしても、このようなさらなる努力は、本説明によって可能にされるすべてのバージョンまたは実施形態に対して完全に一貫してなされていないかもしれない。したがって、説明がコントロールするものは項目、態様、構成要素、またはプロセスの定義であって、その参照符号ではない。参照符号のいかなる類似性も、文章中における類似性を推察するために、しかし文章または他の文脈が類似性を示していない場合には態様を混同しないようにするために、利用することができる。
【0176】
本文書の特許請求の範囲は、新規かつ非自明であるとみなされる、要素、特徴、及び行為又は工程の特定の組合せ及びサブコンビネーションを定義する。特許請求の範囲はまた、明示的に言及されたものと同等である要素、特徴、及び運動又は工程を含む。他のそのような組合せ及び下位組合せのための追加の特許請求の範囲は、この文書又は関連文書に提示されてもよい。これらの特許請求の範囲は、本明細書に記載される主題の真の精神及び範囲内にあるすべての変更及び修正を、それらの範囲内に包含することが意図される。特許請求の範囲を含む、本明細書で使用される用語は一般に、「オープンな」用語として意図される。例えば、「含む」という用語は「含むが、これに限定されない」と解釈されるべきであり、「有する」という用語は「少なくとも有する」などと解釈されるべきである。特定の数字がクレームの列挙に帰せられる場合、この数字は最小であるが、特に明記しない限り最大ではない。例えば、クレームが「1つの」構成要素を列挙する場合、それは、クレームがこの構成要素又はこのアイテムの1つ又は複数を有することができることを意味する。