(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】情報処理システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/02 20120101AFI20221114BHJP
G06F 13/00 20060101ALI20221114BHJP
G06F 21/62 20130101ALI20221114BHJP
【FI】
G06Q30/02 380
G06F13/00
G06F21/62 345
(21)【出願番号】P 2020200148
(22)【出願日】2020-12-02
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】519173048
【氏名又は名称】株式会社アーリーワークス
(74)【代理人】
【識別番号】100207619
【氏名又は名称】渡辺 知晴
(72)【発明者】
【氏名】園田 裕大
【審査官】久宗 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-181004(JP,A)
【文献】特開2016-100014(JP,A)
【文献】特開2019-159686(JP,A)
【文献】特開2016-139198(JP,A)
【文献】特開2019-219774(JP,A)
【文献】特表2016-534455(JP,A)
【文献】特表2019-537769(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0005315(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0162417(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G06F 13/00
G06F 21/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターネットを介した利用者及び前記利用者の行動の解析を希望する追跡者に係る情報処理装置を含む情報処理システムであって、
前記利用者毎に一時的に付与される前記利用者を一意に識別する第1符号又は単一のドメインでのみ前記利用者を一意に識別する第2符号に基づいて計算された前記利用者を複数のドメインに共通して一意に識別する第3符号と、前記利用者が利用する前記インターネットの識別に関する識別情報とを関連付けて記憶する記憶手段と、
新たな前記第1符号を取得した場合に、取得した前記第1符号に関連付けられている前記識別情報に関連付けられている前記第3符号を検索する検索手段と、
前記検索手段の検索の結果、該当する前記第3符号が存在する場合に、前記第3符号と紐づけられている前記識別情報の内容を更新する更新手段と、
前記追跡者からの要望に応じて、前記第2符号に基づいて、前記第3符号とは異なる所定のドメインでのみ前記利用者を一意に識別する第4符号を生成する第4符号生成手段と、
を備える情報処理システム。
【請求項2】
新たな前記第2符号を取得した場合に、新たな前記第2符号を生成する第2符号生成手段と
をさらに備える請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記検索手段の検索の結果、該当する前記第3符号が存在しない場合、新たな前記第3符号を生成し、生成した当該第3符号に、取得された新たな前記第1符号と関連付けられている前記識別情報を関連付ける第3符号生成手段と、
をさらに備える請求項1又は2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記第3符号生成手段は、前記追跡者が前記第4符号の取得を許可されているか否かを判定して、許可されている場合にのみ前記第4符号を生成する、
請求項3に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記更新手段は、該当する前記第3符号に基づいて前記第2符号を生成し、生成した前記第2符号を送信することができる、
請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の情報処理システム。
【請求項6】
インターネットを介した利用者及び前記利用者の行動の解析を希望する追跡者に係るコンピュータに、
前記利用者毎に一時的に付与される前記利用者を一意に識別する第1符号又は単一のドメインでのみ前記利用者を一意に識別する第2符号に基づいて計算された前記利用者を複数のドメインに共通して一意に識別する第3符号と、前記利用者が利用する前記インターネットの識別に関する識別情報とを関連付ける関連付けステップと、
新たな前記第1符号を取得した場合に、取得した前記第1符号に関連付けられている前記識別情報に関連付けられている前記第3符号を検索する検索ステップと、
前記検索ステップの検索の結果、該当する前記第3符号が存在する場合に、前記第3符号と紐づけられている前記識別情報の内容を更新する更新ステップと、
前記追跡者からの要望に応じて、前記第2符号に基づいて、前記第3符号とは異なる所定のドメインでのみ前記利用者を一意に識別する第4符号を生成する第4符号生成ステップと、
を含む処理を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ネットワークを利用した広告配信等の分野において、利用者のWebページの履歴情報は、より良質なサービスの実現のために重要な情報として理解されてきた。一方で近年では、利用者の個人情報保護意識の向上等を背景として、いわゆるWebブラウザの追跡防止機能のように、利用者以外の者に対して不要な情報を取得させないような仕組みの構築も進んでいる。
この点、例えば、1stパーティCookieを利用した広告効果の計測を行う手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1を含む従来技術のみでは、Webページ配信者等が保有するDNSサーバに対して追加の設定等を行う必要があり不便である(例えば、特許文献1の段落[0019]参照)。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、より容易かつ柔軟に利用者の行動追跡を補助する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様の情報処理システムは、
インターネットを介した利用者及び前記利用者の行動の解析を希望する追跡者に係る情報処理装置を含む情報処理システムであって、
前記利用者毎に一時的に付与される前記利用者を一意に識別する第1符号(一時ID)又は単一のドメインでのみ前記利用者を一意に識別する第2符号(ローカルID)に基づいて計算された前記利用者を複数のドメインに共通して一意に識別する第3符号(グローバルID)と、前記利用者が利用する前記インターネットの識別に関する識別情報(識別要素)とを関連付けて記憶する記憶手段と、
新たな前記第1符号を取得した場合に、取得した前記第1符号に関連付けられている前記識別情報に関連付けられている前記第3符号を検索する検索手段と、
前記検索手段の検索の結果、該当する前記第3符号が存在する場合に、前記第3符号と紐づけられている前記識別情報の内容を更新する更新手段と、
前記追跡者からの要望に応じて、前記第2符号に基づいて、前記第3符号とは異なる所定のドメインでのみ前記利用者を一意に識別する第4符号(仮名化グローバルID)を生成する第4符号生成手段と、
を備える。
【0007】
本発明の一態様のプログラムも、本発明の一態様の情報処理システムに対応するプログラムとして提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より容易かつ柔軟に利用者の行動追跡を補助する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る情報システムの概要を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る管理者サーバのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図2の管理者サーバの機能的構成例の一例を示す機能ブロック図である。
【
図4】
図3の管理者サーバにより実行される各種処理のうち、登録処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図5】
図3の管理者サーバにより実行される各種処理のうち、ローカルID更新処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図6】
図3の管理者サーバにより実行される各種処理のうち、仮名化処理の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0011】
ここで、本発明の前提となる従来技術について、補足する。
従来の広告配信等の分野では、Webサイトの提供者が利用者のWebブラウザ等を通じて一時的にWebブラウザ等に情報を書き込み保存させるCookieと呼ばれる仕組みを利用して利用者の行動追跡(利用者のWebサイトの閲覧履歴等の取得や調査)が行われていた。
このCookieには、一般的に利用者がWebブラウザを用いて閲覧しているWebページを配信するドメインが発行する1stパーティCookieや利用者がWebブラウザを用いて閲覧しているWebページを配信するドメイン以外が発行する3rdパーティCookieが知られている。
そして、従来では、容易に利用者の行動追跡が行えるという理由から3rdパーティCookieに基づいた利用者の行動追跡が数多く行われていた。しかしながら、近年では、上述のように利用者の個人情報保護意識が向上している等の背景から、3rdパーティCookieを、第三者等に対して容易に提供しない運用がなされることが多くなっている。
【0012】
このような状況において、本発明の一実施形態の情報処理システム(以下、「本システム」と呼ぶ)は、3rdパーティCookieを利用することなく、利用者の行動追跡を可能とする。具体的には、本システムは、1stパーティCookie、ブラウザストレージ等の複数のタギング方式、フィンガープリンティング方式等の複数の手法を組み合わせて利用することで、単一の識別方式のみに依存しない利用者の行動追跡を可能とする。
換言すれば、本システムの適用対象となるサービス(以下、「本サービス」と呼ぶ)の提供を受ける追跡者等は、3rdパーティCookieを取得することなく、必要な範囲で利用者の行動追跡を行うことができる。これにより、追跡者等は、例えば、利用者のWebサイトにおける行動を収集してWebサイトの改善等に役立てることができる、Web広告の内容を利用者毎に最適化できる、広告の効果をより正確に測定して最適化できる等の理由から、利用者に対して利便性の高いサービスを提供することができる。
また同様に、利用者は、3rdパーティCookieを含まない最低限の情報のみで、自身に適した利便性の高いサービスの提供を受けられることが期待できる。
続いて、
図1を参照しつつ、本システムの具体的な構成について説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る情報処理システムの概要を示すブロック図である。
図1に示す通り、本システムは、管理者サーバ1と、利用者装置2、追跡者サーバ3とを含み構成される。管理者サーバ1と、利用者装置2と、追跡者サーバ3とはインターネット、LAN(Local Area Network)等を含む所定のネットワークNを介して相互に接続されている。
なお、ネットワークNは、必須な構成要素ではなく、例えば、ブルートゥース(登録商標)の近距離無線通信が合わせて利用されてもよい。
管理者サーバ1は、本システムの管理者により管理される。管理者サーバ1は、後述する各種識別要素を、インターネットの利用者毎に紐づけて登録、紹介を行う機能を有する。
利用者装置2は、本サービスにおける利用者により利用される。利用者装置2は、Webサイトの閲覧等に利用され、各種情報(後述する識別要素)を、ブラウザ等を介して管理者サーバ1に提供する。
なお、利用者装置2から管理者サーバ1への各種情報の送信は、任意の方式で実行されてもよいが、例えば、汎用的な追跡スクリプトが用いられる。追跡スクリプトは、インターネット利用者の行動を追跡するためにWebページ等に記述されるスクリプトであり、タギング方式やフィンガープリンティング方式により後述する識別要素を取得し、外部に送信する機能を有する。
追跡者サーバ3は、利用者の行動解析を希望する追跡者により管理される。なお、追跡者は、例えば、利用者の閲覧するWebサイトの所有者等である。
【0014】
<ハードウェア構成>
図2は、本発明の一実施形態に係る管理者サーバのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
管理者サーバ1は、パーソナルコンピュータ等で構成される。
図2に示すように、管理者サーバ1は、制御部11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、バス14と、入出力インターフェース15と、出力部16と、入力部17と、記憶部18と、通信部19と、ドライブ20と、を備えている。
【0015】
制御部11は、CPUやGPUおよび半導体メモリを含むマイクロコンピュータ等で構成され、ROM12に記録されているプログラム、または、記憶部18からRAM13にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。
RAM13には、制御部11が各種の処理を実行する上において必要な情報等も適宜記憶される。
【0016】
制御部11、ROM12およびRAM13は、バス14を介して相互に接続されている。このバス14にはまた、入出力インターフェース15も接続されている。入出力インターフェース15には、出力部16、入力部17、記憶部18、通信部19、ドライブ20が接続されている。
【0017】
出力部16は、各種液晶ディスプレイ等で構成され、各種情報を出力する。
【0018】
入力部17は、各種ハードウェア等で構成され、各種情報を入力する。
【0019】
記憶部18は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等で構成され、各種情報を記憶する。例えば、本実施形態に係るプログラムを含む各種情報が記憶されている。
通信部19は、インターネットを含むネットワークNを介して他の装置(例えば、利用者装置2や追跡者サーバ3の夫々)との間で行う通信を制御する。
【0020】
ドライブ20は、必要に応じて設けられる。ドライブ20には磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリ等よりなる、リムーバブルメディア31が適宜装着される。ドライブ20によってリムーバブルメディア31から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部18にインストールされる。またリムーバブルメディア31は、記憶部18に記憶されている各種情報も、記憶部18と同様に記憶することができる。
【0021】
ここで、利用者装置2及び追跡者サーバ3のハードウェア構成は、管理者サーバ1のハードウェア構成と基本的に同様とすることができるので、ここでは説明を省略する。
【0022】
図3は、
図2の管理者サーバの機能的構成例の一例を示す機能ブロック図である。
図3に示すように、管理者サーバ1の制御部11は、登録処理部60と、ローカルID更新処理部70と、仮名化処理部80とが機能する。
また、管理者サーバ1の記憶部18の一領域には、一時IDDB300と、グローバルIDDB400とが設けられている。
【0023】
ここで、管理者サーバ1の制御部11においては、制御部11が実行する各種処理のうち、登録処理時には登録処理部60が機能し、ローカルID更新処理時にはローカルID更新処理部70が機能し、仮名化処理時には仮名化処理部80が機能する。
このような管理者サーバ1、利用者装置2及び追跡者サーバ3の各種ハードウェアと各種ソフトウェアの協働により、利用者の行動解析に係る上述の各種処理の実行が可能となる。なお、上述の各種処理の詳細な流れについては、
図4乃至6を参照しながら説明する。
【0024】
まず、登録処理時の機能的構成を説明する。登録処理部60には、ID受信部100と、一時ID登録部101と、グローバルID登録部102とが設けられている。
【0025】
ここで、登録処理とは、例えば、利用者毎に付与された一時ID又はローカルIDと、利用者毎に取得される識別要素を関連付けて各種DBに格納する一連の処理を言う。
以下、各種用語の定義を説明する。
一時IDとは、利用者を一時的に識別するために、Webブラウザ等が無作為に生成する一時的な識別符号である。一時IDは、利用者装置2のWebブラウザ等が管理者サーバ1と通信を行う際に管理者サーバ1に対して通知される。
ローカルIDとは、ある単一のドメインのWebサイトにおいて、利用者を一意に識別するための符号である。ローカルIDは、利用者の識別に利用できる反面、単一のドメインのみでしか利用することができない。なお、本システムに係るローカルIDは、後述するグローバルIDを所定の方式で暗号化したものとする。
識別要素とは、所定のタギング方式やフィンガープリンティング方式により取得された利用者のインターネット利用に関する特徴等を示す情報である。具体的に例えば、識別要素とは、利用者の利用するブラウザの種類、利用者装置2のOS(Operating System)の種類、バージョン、IPアドレス、シリアル番号等である。なお、識別要素は、通常、利用者装置2のWebブラウザ等により取得されるが、例えば、外部に設定された専用のサービス等により取得される場合もある。
ここで、タギング方式とは、Webブラウザ等により任意の情報を保持させて利用者の利用する端末等を特定する方式である。近年では、多くのWebブラウザ等に搭載されているものの上述の理由等により有効期限等が設けられていることが多い。また、フィンガープリンティング方式とは、インターネットに接続している機器のハードウェアやソフトウェアに関する情報を取得して利用者の利用する端末等を特定する方式である。ハードウェアやソフトウェアが画一的なスマートフォンやタブレット端末等では有効に機能しない場合がある。
【0026】
管理者サーバ1のID受信部100は、利用者装置2等から送信されてくる一時ID又はローカルIDを受信する。上述の通り、利用者装置2では、利用者のインターネットの利用環境や、その他状況に応じて、一時ID又はローカルIDが利用者毎に付与され、その情報は管理者サーバ1へ送信される。
そこで、管理者サーバ1のID受信部100は、このようにして利用者装置2から送信されてきた一時ID又はローカルIDを受信する。
また、ID受信部100は、利用者装置2等から送信されてくる識別要素を取得する。なお、各種ID又は識別要素が、例えば、上述の専用のハードウェア(サービス)等で取得された場合、ID受信部100は、それらの情報を当該専用のハードウェア(サービス)から取得してもよい。
【0027】
一時ID登録部101は、利用者毎に一時的に付与される利用者を一意に識別する一次IDと、利用者が利用するインターネットの識別に関する識別要素とを関連付けて記憶する。
すなわち、一時ID登録部101は、ID受信部100で一時IDが受信された場合、ID受信部100で受信された一時IDと、ID受信部100で取得された識別要素とを関連付けて、一時IDDB300に格納する。
【0028】
グローバルID登録部102は、単一のドメインでのみ利用者を一意に識別するローカルIDに基づいて計算された利用者を複数のドメインに共通して一意に識別するグローバルIDと、利用者が利用する前記インターネットの識別に関する識別要素とを関連付けて記憶する。
ここで、グローバルIDとは、利用者を複数のドメイン(クロスドメイン)で共通して一意に識別するための符号である。なお、上述の通り、ローカルIDはグローバルIDを所定の方式で暗号化したものであるので、ローカルIDを復号することによりグローバルIDを算出することができる。
すなわち、グローバルID登録部102は、ID受信部100でローカルIDが受信された場合、受信されたローカルIDに基づいてグローバルIDを算出する。
そして、グローバルID登録部102は、算出したグローバルIDと、ID受信部100で取得された識別要素とを関連付けて、グローバルIDDB400に格納する。
【0029】
次に、ローカルID更新処理時の機能的構成を説明する。ローカルID更新処理部70には、ID受信部120と、更新ローカルID生成部121と、グローバルID検索部122と、グローバルID更新部123と、ローカルID生成部124とが設けられている。
ここで、利用者装置2は、稼働の状況等により、利用者毎に付与されたローカルIDを保持し続けている場合と、そうではない場合(ローカルIDを破棄している場合や一時IDを利用し続けている場合)が存在する。しかし利用者装置2等は、仮にローカルIDを保持し続けている場合であっても、セキュリティ等の問題によりそのローカルIDを更新したい場合がある。
また、利用者装置2がローカルIDを保持し続けていない場合、結果として一時IDを利用し続けるため、利用者の識別(紐づけられた情報の量)には必然的に限界が生じることになる。このような場合に行われる処理がローカルID更新処理である。
【0030】
管理者サーバ1のID受信部120は、利用者装置2等から送信されてくる新たな一時ID又はローカルIDを受信する。
【0031】
更新ローカルID生成部121は、ID受信部120でローカルIDが受信された場合、新たにローカルIDを生成し、それを利用者装置2へ送信する。
【0032】
グローバルID検索部122は、新たな一時IDを取得した場合に、取得した一時IDに関連付けられている識別要素に関連付けられているグローバルIDを検索する。
すなわち、グローバルID検索部122は、ID受信部120で一時IDが受信された場合、一時IDDB300を参照しながら受信した一時IDと関連付けられている識別要素を特定し、グローバルIDDB400を参照しながら特定された識別要素と関連付けられているグローバルIDを検索する。
【0033】
グローバルID更新部123は、検索手段の検索の結果、該当するグローバルIDが存在する場合に、グローバルIDと紐づけられている識別要素の内容を更新する。
すなわち、グローバルID更新部123は、検索の結果として該当するグローバルID(以下、「該当グローバルID」と呼ぶ)が存在した場合、該当グローバルIDに対応する(関連付けられている)識別要素の内容を更新する。
なお、グローバルID更新部123は、該当するグローバルIDが存在しなかった場合、新たなグローバルIDを生成し、上述の一時IDと関連付けられている識別要素を、生成したグローバルIDと関連付けて、グローバルIDDB400に格納する。
ここで、該当するグローバルIDの基準は、本システムの管理者等により任意に決定することができるが、例えば、一つでも共通する識別要素を有していた場合に該当するグローバルIDが存在するものとしてもよい。
【0034】
ローカルID生成部124は、該当グローバルID及びリクエストの対象となるドメインに関する情報に基づいて、ローカルIDを生成し、それを利用者装置2へ送信する。なお、更新ローカルID生成部121及びローカルID生成部124により利用者装置2へ送信された新たなローカルIDのそれぞれは、利用者装置2で記憶されたローカルIDの更新に利用される。
【0035】
続いて、仮名化処理時の機能的構成を説明する。仮名化処理部80には、ローカルID取得部140と、権限確認部141と、仮名化グローバルID提供部142とが設けられている。
ここで、管理者サーバ1は登録処理により構築した各種DBや、ローカルID更新処理の結果として保持されているローカルIDに基づいて、利用者の行動追跡を希望する追跡者に対して仮名化グローバルIDを提供する。
仮名化グローバルIDとは、グローバルIDに対して、本システム独自の方式である仮名化処理を施すことで取得される符号である。仮名化グローバルIDは、通常のグローバルIDと比較して利用者の利益を保護しつつ、一定の限度で追跡者の利益を保護する目的で、追跡者毎に提供される。仮名化グローバルIDは、通常のグローバルIDと比較して、追跡者の保有するWebサイトのドメイン等の、追跡が許可されているドメイン間でのみ利用者を一意に識別可能となる。
【0036】
ローカルID取得部140は、利用者装置2等から送信されてくる新たなローカルID等を取得する。
【0037】
権限確認部141は、仮名化グローバルIDの提供を希望する追跡者サーバ3が、仮名化グローバルIDの提供を許可されているか否かを確認する。
なお、権限確認部141が、権限を確認する方法は本システムの管理者等に任意で決定されてもよいが、例えば、権限確認部141は、事前に権限を許可する追跡者サーバ3を登録し、その情報と照合することにより追跡者サーバ3の権限の有無を確認してもよい。
【0038】
仮名化グローバルID提供部142は、追跡者からの要望に応じて、ローカルIDに基づいて、グローバルIDとは異なる所定のドメインでのみ利用者を一意に識別する仮名化グローバルIDを生成する。
すなわち、仮名化グローバルID提供部142は、ローカルID取得部140で取得されたローカルIDに基づいてグローバルIDを算出する。仮名化グローバルID提供部142は、算出したグローバルIDに仮名化処理を施し、仮名化グローバルIDを生成する。仮名化グローバルID提供部142は、生成した仮名化グローバルIDを追跡者サーバ3へ送信する。
ここで、仮名化グローバルIDとは、グローバルIDに暗号処理を施すことにより生成され、それぞれの利用者を保護するために提供される。仮名化グローバルIDは、追跡者の追跡が許可された所定のドメイン内でのみ利用者を一意に識別することが可能となる。
また、仮名化グローバルIDの生成における暗号処理のパラメータには、追跡者を識別可能な情報が含まれる。これにより、管理者サーバ1はグローバルIDと仮名化グローバルIDとの対応関係を記憶することなく、特定の追跡者のみに有効な仮名化グローバルIDの提供を行うことができる。
すなわち、追跡者にグローバルIDではなく仮名化グローバルIDを付与する利点の一つは、追跡者毎に異なる利害の調整を図ることができる点である。仮名化グローバルIDを付与された追跡者は自身が追跡を許可されたドメインの範囲でのみ利用者を一意に識別することができるが、他の追跡者の保有するドメイン等では同じ利用者であっても一意に識別できず異なる利用者として認識される。これにより、追跡者同士の利害関係の調整を図ることができ、また、利用者にも必要以上の情報が追跡者に把握されることがない。
【0039】
図4は、
図3の管理者サーバにより実行される各種処理のうち、登録処理の流れを説明するフローチャートである。
ステップS1において、管理者サーバ1のID受信部100は、利用者装置2等から送信されてくる識別要素を取得する。
【0040】
ステップS2において、ID受信部100は、利用者装置2等から送信されてくる一時ID又はローカルIDを受信する。
ここで、ステップS2において、ID受信部100がローカルIDを受信すると処理はステップS3へ進む。他方、ステップS2において、ID受信部100が一時IDを受信すると処理はステップS4へ進む。
【0041】
ステップS3において、グローバルID登録部102は、ステップS2でローカルIDが受信された場合、受信されたローカルIDに基づいてグローバルIDを算出する。
また、ステップS3において、グローバルID登録部102は、算出したグローバルIDと、ステップS1で取得された識別要素とを関連付けて、グローバルIDDB400に格納する。
【0042】
ステップS4において、一時ID登録部101は、ステップS2で一時IDが受信された場合、ステップS2で受信された一時IDと、ステップS1で取得された識別要素とを関連付けて、一時IDDB300に格納する。これにより、管理者サーバ1による登録処理は終了する。
【0043】
図5は、
図3の管理者サーバにより実行される各種処理のうち、ローカルID更新処理の流れを説明するフローチャートである。
【0044】
ステップS21において、管理者サーバ1のID受信部120は、利用者装置2等から送信されてくる新たな一時ID又はローカルIDを受信する。
ここで、ステップS21において、ID受信部120がローカルIDを受信すると処理はステップS22へ進む。他方、ステップS21において、ID受信部120が一時IDを受信すると処理はステップS23へ進む。
【0045】
ステップS22において、更新ローカルID生成部121は、ステップS21でローカルIDを受信した場合、新たにローカルIDを生成し、それを利用者装置2へ送信する。そして、そのままローカルID更新処理は終了する。
【0046】
ステップS23において、グローバルID検索部122は、ステップS21で一時IDを受信した場合、一時IDDB300を参照しながら受信した一時IDと関連付けられている識別要素を特定し、グローバルIDDB400を参照しながら特定された識別要素と関連付けられているグローバルIDを検索する。
【0047】
ステップS24において、グローバルID検索部122は、ステップS23の検索の結果、該当する該当グローバルIDが存在するか否かを判定する。
該当グローバルIDが存在しないと判定された場合、ステップS24においてNOであると判定され、処理はステップS25へ進む。
これに対して、該当グローバルIDが存在すると判定された場合、ステップS25においてYESであると判定され、処理はステップS27へ進む。
【0048】
ステップS25において、グローバルID更新部123は、ステップS24で該当グローバルIDが存在しないと判定された場合、新たにグローバルIDを生成する。
ステップS26において、グローバルID更新部123は、ステップS21で受信された一時IDと関連付けられている識別要素を、ステップS25で生成した新たなグローバルIDとを関連付けて、グローバルIDDB400に格納する。
【0049】
ステップS27において、グローバルID更新部123は、ステップS24で該当グローバルIDが存在すると判定された場合、該当グローバルIDと関連付けられた識別要素の内容を更新する。
【0050】
ステップS28において、ローカルID生成部124は、該当グローバルID及びリクエストの対象となるドメインに関する情報に基づいて、新たにローカルIDを生成し、それを利用者装置2へ送信する。
【0051】
ステップS29において、グローバルID更新部123又はローカルID生成部124は、ステップS21で受信された一時IDを削除する。これにより、管理者サーバ1によるローカルID更新処理は終了する。
【0052】
図6は、
図3の管理者サーバにより実行される各種処理のうち、仮名化処理の流れを説明するフローチャートである。
ステップS41において、ローカルID取得部140は、利用者装置2等から送信されてくる新たなローカルID等を取得する。
【0053】
ステップS42において、仮名化グローバルIDの提供を希望する追跡者サーバ3が、仮名化グローバルIDの提供を許可されているか否かを確認する。
仮名化グローバルIDの提供を希望する追跡者サーバ3が仮名化グローバルIDの提供を許可されていない場合、ステップS42においてNOであると判定され、そのまま処理は終了する。
仮名化グローバルIDの提供を希望する追跡者サーバ3が仮名化グローバルIDの提供を許可されている場合、ステップS42においてYESであると判定され、処理はステップS43へ進む。
【0054】
ステップS43において、仮名化グローバルID提供部142は、ステップS41で取得されたローカルIDに基づいてグローバルIDを算出する。
ステップS43において、仮名化グローバルID提供部142は、算出したグローバルIDに仮名化処理を施し、仮名化グローバルIDを生成する。
ステップS43において、仮名化グローバルID提供部142は、生成した仮名化グローバルIDを追跡者サーバ3へ送信する。これにより、管理者サーバ1による仮名化処理は終了する。
【0055】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0056】
また例えば、上述の実施形態において、識別要素は、複数のタギング方式やフィンガープリンティング方式により取得されるものとして説明したが、特にこれに限定されず、本システムの管理者等は任意の方法により取得された各種情報を識別要素として採用してもよい。
さらに言えば、識別要素に含まれる各種情報の内容も上述の実施形態の事例に限られず、特に限定されない。具体的に例えば、識別要素には、IPアドレス、ユーザエージェント、ブラウザ設定、画像解像度、Canvas フィンガープリント等の任意の情報が含まれていてもよい。
【0057】
また例えば、上述の実施形態において、追跡者とは、利用者の閲覧するWebサイトの所有者であるものとし、広告の配信等についても追跡者が行う者として説明したが特にこれに限定されない。
すなわち、例えば、追跡者とは別に、Webサイトや広告の配信を行う配信者が存在し、追跡者は、利用者の追跡のみを行い、その結果を配信者等に提供してもよい。
【0058】
また例えば、
図1に示すシステム構成、
図2に示す管理者サーバ1のハードウェア構成は、本発明の目的を達成するための例示に過ぎず、特に限定されない。
即ち例えば、本発明の一実施形態に係る情報処理システムの各サーバの夫々は、一つのハードウェア上に構成されてもよいし、その機能や処理数に応じて複数のハードウェア上に構成されてもよい、また、既存の情報処理装置上に実現されてもよい。
【0059】
また例えば、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
換言すると、
図3の機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。
即ち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が情報処理システムに備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に
図3の例に限定されない。また、機能ブロックの存在場所も、
図3に特に限定されず、任意でよい。
さらに言えば、1つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【0060】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。
コンピュータ等は、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。
また、コンピュータ等は、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えばサーバの他汎用のスマートフォンやパーソナルコンピュータであってもよい。
【0061】
このようなプログラムを含む記録媒体は、ユーザにプログラムを提供するために装置本体とは別に配布される図示せぬリムーバブルメディアにより構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体等で構成されてもよい。
【0062】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
また、本明細書において、システムの用語は、複数の装置や複数の手段等より構成される全体的な装置を意味するものとする。
【0063】
以上を換言すると、本発明が適用される情報処理装置は、次のような構成を有していれば足り、各種各様な実施の形態を取ることができる。
即ち、本発明が適用される情報処理システムは、
インターネットを介した利用者及び前記利用者の行動の解析を希望する追跡者に係る情報処理装置を含む情報処理システムであって、
前記利用者毎に一時的に付与される前記利用者を一意に識別する第1符号(例えば、一時ID)又は単一のドメインでのみ前記利用者を一意に識別する第2符号(例えば、ローカルID)に基づいて計算された前記利用者を複数のドメインに共通して一意に識別する第3符号(例えば、グローバルID)と、前記利用者が利用する前記インターネットの識別に関する識別情報(例えば、識別要素)とを関連付けて記憶する記憶手段(例えば、
図3の一時ID登録部101やグローバルID登録部102)と、
新たな前記第1符号を取得した場合に、取得した前記第1符号に関連付けられている前記識別情報に関連付けられている前記第3符号を検索する検索手段(例えば、
図3のグローバルID検索部122)と、
前記検索手段の検索の結果、該当する前記第3符号が存在する場合に、前記第3符号と紐づけられている前記識別情報の内容を更新する更新手段(例えば、
図3のグローバルID更新部123)と、
前記追跡者からの要望に応じて、前記第2符号に基づいて、前記第3符号とは異なる所定のドメインでのみ前記利用者を一意に識別する第4符号(例えば、仮名化グローバルID)を生成する第4符号生成手段(例えば、
図3の仮名化グローバルID提供部142)と、
を備える。
【0064】
また、前記情報処理システムは、新たな前記第2符号を取得した場合に、新たな前記第2符号を生成する第2符号生成手段をさらに備えることができる。
【0065】
また、前記情報処理システムは、前記検索手段の検索の結果、該当する前記第3符号が存在しない場合、新たな前記第3符号を生成し、生成した当該第3符号に、取得された新たな前記1符号と関連付けられている前記識別情報を関連付ける第3符号生成手段をさらに備えることができる。
【0066】
また、前記第3符号生成手段は、前記追跡者が前記第4符号の取得を許可されているか否かを判定して、許可されている場合にのみ前記第4符号を生成することができる。
【0067】
また、前記更新手段は、該当する前記第3符号に基づいて前記第2符号を生成し、生成した前記第2符号を送信することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 サーバ
11 制御部
60 登録処理部
100 ID受信部
101 一時ID登録部
102 グローバルID登録部
70 ローカルID更新処理部
120 ID受信部
121 更新ローカルID生成部
122 グローバルID検索部
123 グローバルID更新部
124 ローカルID生成部
80 仮名化処理部
140 ローカルID取得部
141 権限確認部
142 仮名化グローバルID提供部
300 一時IDDB
400 グローバルIDDB