IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 安形 雄三の特許一覧

特許7175486発電機能付きタイヤ及びそれを装着した車両
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】発電機能付きタイヤ及びそれを装着した車両
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20221114BHJP
   H02N 2/18 20060101ALI20221114BHJP
   H02K 35/00 20060101ALI20221114BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20221114BHJP
   B60L 53/00 20190101ALI20221114BHJP
【FI】
B60C19/00 F
H02N2/18
H02K35/00
B60L50/60
B60L53/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022094062
(22)【出願日】2022-06-10
【審査請求日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2022068664
(32)【優先日】2022-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501204868
【氏名又は名称】安形 雄三
(74)【代理人】
【識別番号】100078776
【弁理士】
【氏名又は名称】安形 雄三
(74)【代理人】
【識別番号】100121887
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 好章
(72)【発明者】
【氏名】安形 雄三
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-047625(JP,A)
【文献】特開2014-108772(JP,A)
【文献】特開2011-084123(JP,A)
【文献】特表2011-517396(JP,A)
【文献】特開2015-081018(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0347215(US,A1)
【文献】特開2017-051024(JP,A)
【文献】特開2015-180126(JP,A)
【文献】中国実用新案第210669843(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第106026776(CN,A)
【文献】特表2013-539339(JP,A)
【文献】特開2008-087512(JP,A)
【文献】特開2006-151372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 19/00
B60C 23/04
B60L 50/60
B60L 53/00
H02N 2/18
H02K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の曲率を有するリング形状であって、車両に装着されるタイヤにおいて、
前記タイヤの回転軸の円周面に沿った、前記タイヤのトレッド部とインナー部との間のスペースに、薄型板状構造の複数の圧電素子アレイと、長形の立体形状の複数の電磁誘導式振動発電機とが交互に配設されており、
前記複数の電磁誘導式振動発電機のそれぞれの移動体の移動方向は前記円周面に沿った方向であり、前記複数の圧電素子アレイのそれぞれの外部面のタイヤ密接面及び前記複数の電磁誘導式振動発電機の外部筐体のそれぞれのタイヤ密接面が、前記曲率に対応して、前記円周面に沿って湾曲しており、
前記複数の圧電素子アレイの各出力を全波整流する第1の整流回路群と、
前記複数の電磁誘導式振動発電機の各出力を全波整流する第2の整流回路群と、
前記第1の整流回路群からの各直流出力、前記第2の整流回路群からの各直流出力が干渉しないようにする合成回路と、
前記合成回路から出力される直流電力を蓄電する蓄電部と、
を具備していることを特徴とする発電機能付きタイヤ。
【請求項2】
所定の曲率を有するリング形状であって、車両に装着されるタイヤにおいて、
前記タイヤの回転軸の円周面に沿った、前記タイヤのトレッド部とインナー部との間のスペースに、薄型板状構造の複数の圧電素子アレイと、複数の磁歪式振動発電機とが交互に配設されており、
前記複数の磁歪式振動発電機のそれぞれの固定部と可動部を接続する長形状ヨークの長軸方向が前記円周面に沿った方向であり、前記複数の圧電素子アレイのそれぞれの外部面のタイヤ密接面が、前記曲率に対応して、前記円周面に沿って湾曲しており、
前記複数の磁歪式振動発電機のそれぞれは、前記固定部の上下面が前記トレッド部の内面とインナー部の表面とに接し、前記可動部の一面が前記前記トレッド部の内面に接して配設されており、
前記複数の圧電素子アレイの各出力を全波整流する第1の整流回路群と、
前記複数の磁歪式振動発電機の各出力を全波整流する第3の整流回路群と、
前記第1の整流回路群からの各直流出力、前記第3の整流回路群からの各直流出力が干渉しないようにする合成回路と、
前記合成回路から出力される直流電力を蓄電する蓄電部と、
を具備していることを特徴とする発電機能付きタイヤ。
【請求項3】
所定の曲率を有するリング形状であって、車両に装着されるタイヤにおいて、
前記タイヤの回転軸の円周面に沿った、前記タイヤのトレッド部とインナー部との間のスペースに、長形の立体形状の複数の電磁誘導式振動発電機と、長形の立体形状の複数の磁歪式振動発電機とが交互に配設されており、
前記複数の電磁誘導式振動発電機のそれぞれの移動体の移動方向は前記円周面に沿った方向であり、前記複数の磁歪式振動発電機のそれぞれの固定部と可動部を接続する長形状ヨークの長軸方向が前記円周面に沿った方向であり、前記複数の電磁誘導式振動発電機のそれぞれの外部筐体のタイヤ密接面が、前記曲率に対応して、前記円周面に沿って湾曲しており、
前記複数の磁歪式振動発電機のそれぞれは、前記固定部の上下面が前記トレッド部の内面とインナー部の表面とに接し、前記可動部の一面が前記前記トレッド部の内面に接して配設されており、
前記複数の電磁誘導式振動発電機の各出力を全波整流する第2の整流回路群と、
前記複数の磁歪式振動発電機の各出力を全波整流する第3の整流回路群と、
前記第2の整流回路群からの各直流出力、前記第3の整流回路群からの各直流出力が干渉しないようにする合成回路と、
前記合成回路から出力される直流電力を蓄電する蓄電部と、
を具備していることを特徴とする発電機能付きタイヤ。
【請求項4】
所定の曲率を有するリング形状であって、車両に装着されるタイヤにおいて、
前記タイヤの回転軸の円周面に沿った、前記タイヤのトレッド部とインナー部との間のスペースに、薄型板状構造の複数の圧電素子アレイと、長形の立体形状の複数の電磁誘導式振動発電機と、長形の立体形状の複数の磁歪式振動発電機とが順次繰り返しの配列で配設されており、
前記複数の電磁誘導式振動発電機のそれぞれの移動体の移動方向は前記円周面に沿った方向であり、前記複数の磁歪式振動発電機のそれぞれの固定部と可動部を接続する長形状ヨークの長軸方向が前記円周面と同一の方向であり、
前記複数の圧電素子アレイのそれぞれの外部面のタイヤ密接面、前記複数の電磁誘導式振動発電機のそれぞれの外部筐体のタイヤ密接面が、前記曲率に対応して、前記円周面に沿って湾曲しており、
前記複数の磁歪式振動発電機のそれぞれは、前記固定部の上下面が前記トレッド部の内面とインナー部の表面とに接し、前記可動部の一面が前記前記トレッド部の内面に接して配設されており、
前記複数の圧電素子アレイの各出力を全波整流する第1の整流回路群と、
前記複数の電磁誘導式振動発電機の各出力を全波整流する第2の整流回路群と、
前記複数の磁歪式振動発電機の各出力を全波整流する第3の整流回路群と、
前記第1の整流回路群からの各直流出力、前記第2の整流回路群からの各直流出力、前記第3の整流回路群からの各直流出力が干渉しないようにする合成回路と、
前記合成回路から出力される直流電力を蓄電する蓄電部と、
を具備していることを特徴とする発電機能付きタイヤ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の発電機能付きタイヤを装着している車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、トラック、オートバイ等の車両に装着して利用することができる発電機能付きタイヤに関し、特に車両の走行に必要なエネルギーに全く影響を与えることなく、電気自動車等の蓄電器への電力供給や補充、車両搭載バッテリの充電電力の供給、タイヤ内蔵センサへの電力供給や補充等を効率良く、安定的に行い得る発電機能付きタイヤ及びそれを装着した車両に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車、トラック等の車両は、ガソリンや重油のような化石燃料を燃焼させる過程で発生する動力によって車輪を回転させ、走行動力を得ているが、化石燃料の燃焼過程で発生する二酸化炭素のような温室ガス、光化学スモッグの原因となる物質を生成する炭化水素、人体に有害とされる窒素酸化物などの汚染物質を排出するため、環境汚染の大きな原因とされている。このような問題のため、更にはカーボンニュートラルといった世界的な潮流のため、太陽電池を備えたソーラーカー、電気をエネルギー源とし、電動モータで走行する電気自動車(Electric Vehicle)、燃料電池を搭載する燃料電池自動車のように、汚染物質を排出しない、環境に優しい車両に関する研究が盛んに行われている。
【0003】
その中でも、内燃機関を持たないことから、排気ガスが発生しないゼロエミッション車であること、走行音や振動がほとんどないので乗り心地が快適などのことから、電気自動車が注目を集めている。電動モータを動力源とする電気自動車は、車載電池(バッテリ)から電力を得る電池式電気自動車と、走行中に電力を外部から供給される架線式電気自動車とに大きく分けられるが、架線などのインフラ整備を要しない電池式電気自動車が主流である。かかる電気自動車にあっては、バッテリ容量がなくなると走行できなくなるため、バッテリ切れとなる前にバッテリを充電して走行する必要がある。
【0004】
また、自動車等の車両にはタイヤが必須であり、タイヤ状態(例えば空気圧)を検知して安全性を確保するために、タイヤ内に加速度センサや振動センサ、マイクロコンピュータなどを内蔵している車種も多い。このような車種では、各種センサなどの電力を、タイヤに内蔵した内蔵バッテリ若しくは車体側に搭載のバッテリから供給している。そのため、特にタイヤ内蔵バッテリでは、バッテリ容量がなくなった時に、バッテリを取り換えなければならない煩雑さがあり、その管理も必要である。
【0005】
このように、電気自動車であっても、或いは内蔵バッテリタイヤを具備した車両であっても、バッテリ消耗の補充を行う電力の供給が問題となる。車両の走行に伴う運動を利用して発電を行うことは従来行われているが、発電動作自体が走行に必要なエネルギーを消費する場合には、エネルギー効率の良い発電とはいえない。一方、発電動作自体が車両の走行系に直接マイナス要素とならない発電も知られている。圧電素子を利用して、車両の重力方向の応力変化により発電を行うものなどである(例えば特許第4596240号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第4,504,761号明細書
【文献】特開2011-62065号公報
【文献】実開昭62-87187号公報
【文献】特開2008-30640号公報
【文献】特開2014-177234号公報
【文献】特開2013-223347号公報
【文献】WO2013/057897
【非特許文献】
【0007】
【文献】群馬大学大学院 理工学府 理工学専攻 平成26年度修士論文(淡路創介)「圧電デバイスを用いた振動発電システム実用化に関する研究」
【文献】精密工学会誌 Vol.179, No.4, 2013 「磁歪材料を用いた振動発電とアクチュエータの実用化、現状と展望」(上野敏幸)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
車両のタイヤの圧力変動を電気信号に変換して電力を得る手法として、圧電素子を使用する技術が米国特許第4,504,761号明細書(特許文献1)、特開2011-62065号公報(特許文献2)などに開示されているが、図1に示すように、圧電素子10はタイヤ20の回転軸に対する円周面に沿って、連続的にかつトレッド部21とインナー部22との間に層設された構成となっている。そのため、リング状の圧電素子10をタイヤ20に層設する工程が煩雑となると共に、縁石に乗り上げた時などの瞬間的な衝撃によって、圧電素子10の一部が変形若しくは切断されたときに、発電ができなくなる恐れがある。
【0009】
実開昭62-87187号公報(特許文献3)には、車体の機械的振動を電気信号に変換する車体振動発電装置が開示されているが、車体の上下振動をアームやギアなどを用いて回転運動に変換して発電しており、車両に新たな特別な機構を付加しなければならない。
【0010】
また、特開2008-30640号公報(特許文献4)には、振動発電装置を用いた車両用発電装置が開示されているが、車両走行時に生じる走行風を利用する手法であり、車体構造が限定される問題がある。
【0011】
特開2014-177234号公報(特許文献5)には、タイヤのトレッドに生じる振動を電気信号に変換するタイヤ装置が開示されているが、主として静電誘導式の振動発電機を用いた構造であり、出力電力が小さい問題ある(例えば特開2009-284664号公報の段落[0009])。
【0012】
特開2013-223347号公報(特許文献6)には、固定体により、回転体の回転運動を効率良く圧電素子の振動に変換して発電する発電装置が開示されているが、回転体の中心軸に機構を配設しなければならず、車両のタイヤに適用するには制限が多くなる。
【0013】
更に、WO2013/057897(特許文献7)には、回転体の回転運動を振動に変換して電気信号に変換する振動発電機が開示されているが、主として静電誘導式の振動発電機を用いた構造であり、出力電力が小さい問題ある(例えば特開2009-284664号公報の段落[0009])。
【0014】
本発明は上述のような事情よりなされたものであり、本発明の目的は、車両の走行時に、車両走行エネルギーには全く影響を与えることなく、自動的にかつ安定的に発電して、発電電力を蓄電したり、車両搭載バッテリの充電に供給したり、タイヤが内蔵するセンサ類の電力に使用することが可能な発電機能付きタイヤ及びそれを装着した車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は車両に装着されるタイヤに関し、本発明の上記目的は、前記タイヤの回転軸の円周面に沿って、トレッド部とインナー部との間に分離された複数の圧電素子アレイ、若しくは分離された複数の電磁誘導式振動発電機、若しくは磁歪式振動発電機、若しくはそれらが適宜組み合わされて層設されていることにより達成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る発電機能付きタイヤによれば、車両の走行時に、車両走行のエネルギーには全く影響を与えることなく、自動的にかつ安定的に発電して、発電交流電力を直流に変換し、その直流電力を蓄電したり、車両搭載バッテリの充電に供給することができる。また、タイヤ内で自動的に電力を発電するので、タイヤが内蔵するセンサ類の電力にそのまま使用することができ、タイヤにバッテリを内蔵させる必要がなくなる。
【0017】
タイヤのインナー部の内部に圧電素子アレイや振動発電機を設ける場合、それら設置のための特別な製造工程が付加され、タイヤ構造も複雑になる。しかしながら、本発明では、タイヤの回転軸の円周面に沿って、かつトレッド部とインナー部との間のスペースに圧電素子アレイ、若しくは電磁誘導式振動発電機、若しくは磁歪式振動発電機、若しくはそれらを適宜組み合わして層設しているので、容積や設置面などがほぼ同一であるため、タイヤ製造が比較的容易である。タイヤ構造は複雑になるが、反面、自動的にかつ安定して発電できることは、カーボンニュートラルを実現する上で、環境にも優しく、そのメリットの方がはるかに大きい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】従来の圧電素子付きタイヤの一例を示す側面図及び一部断面斜視図である。
図2】本発明に係る発電機能付きタイヤ(第1実施形態)の構造例を示す一部断面図である。
図3図2の一部上面図(図2のX方向)である。
図4】本発明で使用する圧電素子アレイの構造例を示す断面図である。
図5図3のY1-Y1’線の断面図である。
図6】タイヤが装着された自動車の一例を示す斜視図である。
図7】圧電素子アレイによる発電と蓄電の構成例を示す結線図である。
図8】タイヤに層設された圧電素子アレイの出力波形の一例を示す特性図である。
図9】本発明に係る発電機能付きタイヤ(第2実施形態)の構造例を示す一部断面図である。
図10図9の一部上面図(図9のX方向)である。
図11】電磁誘導式振動発電機の一例を示す模式的構造図である。
図12】電磁誘導式振動発電機の他の例を示す模式的構造図である。
図13図10のY2-Y2’線の断面図である。
図14】電磁誘導式振動発電機の動作例を説明するための機構図である。
図15】電磁誘導式振動発電機による発電と蓄電の構成例を示す結線図である。
図16】タイヤに層設された電磁誘導式振動発電機の出力波形の一例を示す特性図である。
図17】本発明に係る発電機能付きタイヤ(第3実施形態)の構造例を示す一部断面図である。
図18図17の一部下面図(図17のX方向)である。
図19】磁歪式振動発電機の一例を示す模式的構造図である。
図20】本発明で使用する磁歪式振動発電機とその装着例を示す断面機構図である。
図21】磁歪式振動発電機の動作例を説明するための動作図である。
図22】磁歪式振動発電機による発電と蓄電の構成例を示す結線図である。
図23】本発明に係る発電機能付きタイヤ(第4実施形態)の構造例を示す一部断面図である。
図24】圧電素子アレイと電磁誘導式振動発電機によるハイブリッド発電と蓄電の構成例を示す結線図である。
図25】本発明に係る発電機能付きタイヤ(第5実施形態)の構造例を示す一部断面図である。
図26】圧電素子アレイと電磁誘導式振動発電機によるハイブリッド発電と蓄電の構成例を示す結線図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、電気自動車などの蓄電器(capacitor)の蓄電、車両搭載バッテリ(二次電池)の充電、或いはタイヤに内蔵されたセンサ類や通信手段のための電力を、車両が具備するタイヤから自動的に発電して安定供給することが可能な発電機能付きタイヤである。車両が道路上を走行する時に、道路面からタイヤに印加される圧力変化ないしは振動を、外部電力を全く要することなく、自動的に電気エネルギーに変換することにより発電する発電機能付きタイヤである。振動発電には、圧電素子を用いた圧電式、磁石とコイルの電磁誘導作用による電磁誘導式、2枚の対向電極(電荷)板を用いた静電式、磁歪材料と、コイル、磁石とを用いた磁歪式、摩擦駆動振動による摩擦式の5種類が知られているが、本発明では比較的出力電力が大きい電磁誘導式、若しくは圧電式、若しくは磁歪式、若しくはそれら組み合わせたハイブリッド式を用いる。電磁誘導式、圧電式及び磁歪式の組み合わせを用いる場合には、いずれかが故障したとしても発電を継続できるので、特に安定的に電力を確保することができる。
【0020】
以下に、本発明の実施形態(第1実施形態~第5実施形態)を、図面を参照して順次説明する。
【0021】
図2は、本発明に係る発電機能付きタイヤ100(第1実施形態)の側面構成を、一部断面で示しており、圧電式振動発電機を用いた実施形態であり、タイヤ回転軸に対する回転方向(車両進行方向)に、タイヤ表面にトレッドを有するトレッド部101と、タイヤ内部のインナー部102との間のスペースに、ほぼ均等間隔に分離された複数(本例では8個)の圧電素子アレイ110~117が層設されている。圧電素子アレイ110~117は全て同一構成であり、例えば図2の上方(X方向)から見た配置例は図3であり、圧電素子アレイ110~117は、いずれもタイヤ100の幅方向(回転軸方向)にも広がりを有する平面方形状の薄型板状構造となっている。
【0022】
図4は、圧電素子アレイ110の断面構造を模式的に示しており、平面方形状の上部電極板110-2及び下部電極板110-3の間に圧電材110-1が挟持された構造であり、例えば上部電極板110-2に圧力が印加されると、圧電材110-1を介して上部電極板110-2及び下部電極板110-3の間に電力(電流i1)が発生される。
【0023】
図5は、図3におけるY1-Y1’線の断面図であり、圧電素子アレイ110は、トレッド部101の裏面(内側)に上部電極板110-2が密接し、インナー部102の表面(外側)に下部電極板110-3が密接して固定されており、タイヤ100に印加される圧力がロスなく、そのまま圧電素子アレイ110に瞬時に伝達されるように配置されている。なお、図5では便宜的に直線で表現しているが、タイヤ100の曲率に合わせて、上部電極板110-2及び下部電極板110-3の各密接面は湾曲した形状になっている。他の発電素子アレイについても同様である。
【0024】
図6は、発電機能付きタイヤ100を装着した自動車(乗用車)1の一例を示しており、自動車1が車速Vで走行する。自動車1が走行することによって、装着されたタイヤ100が回転(回転速度ω)すると共に、タイヤ100の接地面に自動車1の重力である圧力が印加される。また、自動車1が走行する路面の凹凸や砂利等に起因する圧力変化が、タイヤ100と路面の間に発生し、この圧力変化が振動として圧電素子アレイ110~117に伝達される。
【0025】
図7は、圧電素子アレイ110~117による発電と、車両側の蓄電(充電)の結線の構成例を示しており、本発明に係るタイヤ100はバッテリを内蔵しておらず、回転軸に対する回転方向に、トレッド部101とインナー部102との間のスペースに図5に示されるように密接して、かつ分離して配置された複数の圧電素子アレイ110~117を具備している。圧電素子アレイ110~117からの発生交流電力W110~W117は車両側に送電され、それぞれ全波整流の整流回路210~217で直流(DC)に変換される。整流回路210~217からの直流電力は相互に干渉しないように合成回路201に入力され、合成された直流電力が蓄電部200に蓄電される。蓄電部200に蓄電された電力が蓄電器に供給されたり、車両搭載バッテリの充電に利用される。合成された直流電力を、直接蓄電器に供給しても良い。また、タイヤがセンサ内蔵などの理由により電力を要する場合には、タイヤに直流電力を供給する。
【0026】
圧電素子アレイ110~117はトレッド部101の裏面(内側)に配置されているので、車両1が走行すると、道路からの圧力がタイヤ100に印加され、道路に接している箇所の圧電素子アレイがトレッド部101を経て押圧され、当該圧電素子アレイが電力を発生する。車両1の走行に従ってタイヤ100は回転するので、圧電素子アレイ110~117は順次接地箇所に達して電力を発生し、接地箇所以外では圧力が印加されないので圧電素子アレイ110~117は電力を発生ぜず、圧電素子アレイ110~117の各発生電力W110~W117は全て交流(AC)となる。そのため、圧電素子アレイ110~117の各交流電力W110~W117を、それぞれダイオードのブリッジ回路で成る全波整流の整流回路210~217で、直流(DC)に変換している。
【0027】
図8は、圧電素子アレイ110~117の出力電力の波形例を示しており、車速が同一であれば、頂部が平坦なパルス状の同一波形として、各圧電素子アレイ110~117から出力される。
【0028】
本例では整流回路210~217を車両側に設置しているが、整流回路210~217には外部電力を要しないので、整流回路210~217をタイヤ100内に設置し、整流回路210~217で得られた直流出力を車両側に送電するようにしても良く、合成回路201もタイヤ内に設置しても良い。また、本例では圧電素子アレイを8個層設しているが、個数は任意に設置可能である。更に、説明の便宜上、圧電素子アレイ110~117は全て同一としているが、サイズ等が異なるものであっても良い。
【0029】
本発明で使用する圧電素子アレイは、タイヤ全周に亘って連続一連に配置されるのではなく、分離された形態の独立形式で配置されているので、石や縁石などでタイヤに急激に印加される衝撃により、圧電素子アレイの一部が破壊若しくは損傷しても、他の正常な圧電素子アレイにより継続して発電を行うことができる。
【0030】
図9は本発明に係る発電機能付きタイヤ100A(第2実施形態)の側面構成を、一部断面で示しており、電磁誘導式振動発電機を用いた実施形態であり、回転軸に対する回転方向に、タイヤ表面にトレッドを有するトレッド部101と、タイヤ内部のインナー部102との間のスペースに、ほぼ均等間隔に分離された8個の電磁誘導式振動発電機120~127が層設されている。振動発電機120~127は全て同一構成であり、例えば図9の上方(X方向)から見た配置は図10(A)であり、振動発電機120~127はいずれも長形の立体形状となっている。
【0031】
図11は、電磁誘導式振動発電機120の構造を模式的に示しており、同心円の2つの円形状の永久磁石120-1及び120-2、即ち中心に配設された円柱状のN極永久磁石120-1と、このN極永久磁石120-1の周りに配設されたドーナツ状同心円の円筒状のS極永久磁石120-2とを具備し、永久磁石120-1及び120-2の間を自在に移動(図では上下動であるが、この移動方向をZとする)可能な薄型円筒状の磁性体で成る移動体120-4が配設され、移動体120-4は弾性体のバネ120-5で上部を保持され、外部振動によって振動(Z方向)するようになっている。移動体120-4の外周にはコイル120-3が巻回されており、振動によって移動体120-4が永久磁石120-1及び120-2の間を往復動するので、コイル120-3と磁石120-1,120-2の電磁誘導作用に基づいて電力(交流の電流i2)を発生する。
【0032】
図11は模式的に示しているが、永久磁石120-1及び120-2の高さ(長さ)は十分な高さ(長さ)となっていると共に、外部は筐体となっている。また、当然に、永久磁石120-1及び120-2の磁界が強いほど、コイル120-3の巻き数が多いほど発生電力は大きくなる。更に、本実施形態の磁石とは逆に、円柱状永久磁石120-1がS極で、円筒状永久磁石120-2がN極であっても良い。図11では示していないが、外部全体は強固な筐体となっている。
【0033】
図11に示す電磁誘導式振動発電機120は、外形や磁石が断面円形となっているが、図12に示すように、外形や磁石を断面矩形とした構造であっても良い。即ち、中心に配設された矩形台状のN極永久磁石130-1と、この極永久磁石130-1の周りに配設された矩形筒状のS極永久磁石130-2とを具備し、永久磁石130-1及び130-2の間を自在に移動(図では上下動であるが、この移動方向をZとする)可能な矩形板状の磁性体で成る移動体130-4が配設され、移動体130-4は弾性体のバネ130-5で上部を保持され、外部振動によってZ方向に振動するようになっている。移動体130-4の外周にはコイル130-3が巻回されており、振動によって移動体130-4が永久磁石130-1及び130-2の間を往復動するので、コイル130-3と磁石130-1,130-2の電磁誘導作用に基づいて電力(交流の電流i3)を発生する。
【0034】
図13は、図10(A)におけるY2-Y2’線の断面図であり、電磁誘導式振動発電機120は、トレッド部101の裏面(内側)に筐体の上面が密接し、インナー部102の表面に筐体の底面が密接して固定されており、筐体はタイヤ100に圧力が印加されても破壊、変形しない強度で構成されている。なお、図13では便宜的に直線で表現しているが、タイヤ100の曲率に合わせて、電磁誘導式振動発電機120~127の各筐体の上面及び底面は湾曲した形状になっている。また、電磁誘導式振動発電機120~127のZ方向は、車輪100Aの回転方向と同一となるように配設されている。
【0035】
電磁誘導式振動発電機は、磁石とコイルの電磁誘導作用によって電力を発生する構成であり、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems/微小電気機械システム)の技術を用いて、タイヤ内に埋設可能なサイズに作製可能である。
【0036】
図14は、タイヤ100Aに層設された振動発電機が電力を発生する原理を説明する機構図であり、タイヤ100Aは図6に示すような形態で車両に装着されて走行する。その際、車両速度をVとし、タイヤ100Aの回転速度をωとし、例えば振動発電機120が図9の位置P(タイヤ100Aの上部)にある時の状態は図14(A)であり、図9の位置Q(タイヤ100Aの下部)にある時の状態は図14(B)である。位置Pでは、車速Vの方向(走行方向)とタイヤ100Aの回転速度ωの方向が同一であり、回転速度ωを水平方向の速度に変換する変換係数を“k”として、下記数1の関数fにより、Z方向の圧力F1が生成される。
(数1)
F1=f(V+k・ω)

また、位置Qでは、車速Vの方向(走行方向)とタイヤ100Aの回転速度ωの方向が逆であり、下記数2の関数fにより圧力F2が生成される。
(数2)
F2=f(V-k・ω)

このように、電磁誘導式振動発電機のタイヤ上部とタイヤ下部(接地部)とで異なる圧力F1、F2が生じるドップラー効果により、振動発電機の移動体が図14の左右(Z方向)に往復動するので、車両の走行により振動が形成され、電磁誘導式振動発電機は交流電力(AC)を発生することができる。
【0037】
図15は、電磁誘導式振動発電機120~127による発電と、車両側の蓄電(充電)の結線の構成例を示しており、本発明に係るタイヤ100Aは図9に示されるようにバッテリを内蔵しておらず、回転軸に対する円周面に沿って、トレッド部101とインナー部102との間のスペースに、分離して配置された図11若しくは図12に示されるような電磁誘導式振動発電機120~127を具備している。電磁誘導式振動発電機120~127からの発生電力W120~W127は車両側に送電され、それぞれ整流回路220~227で直流(DC)に変換される。整流回路220~227からの直流電力は相互に干渉しないように合成回路201Aに入力され、合成された直流電力が蓄電部200Aに蓄電される。蓄電部200Aに蓄電された電力が蓄電器に供給されたり、車両搭載バッテリの充電に利用される。合成された直流電力は、直接蓄電器に供給されても良い。
【0038】
電磁誘導式振動発電機120~127は、車両進行方向に沿ってトレッド部101の下層(内側)に配置されているので、車両が走行すると、タイヤ上部とタイヤ底部の上下においてドップラー効果による圧力変化が生じ、その圧力変化がZ方向の振動として印加されるので、振動発電機120~127は交流電力W120~W127を発生する。車両の走行に従ってタイヤ100Aは回転するので、振動発電機120~127は順次交流電力W120~W127を発生し、整流回路220~227で直流(DC)に変換される。
【0039】
図16は、電磁誘導式振動発電機120~127の出力電力の波形例を示しており、車速Vが等速であれば、パルス状の同一波形として、各電磁誘導式振動発電機120~127から出力される。
【0040】
本例では整流回路220~227を車両側に設置しているが、整流回路220~227及び合成回路201Aには電力を要しないので、整流回路220~227、合成回路201Aをタイヤ100A内に設置し、直流出力を車両側に送電するようにしても良い。また、本例では電磁誘導式振動発電機を8個層設しているが、個数は任意に設置可能である。
【0041】
なお、上述では電磁誘導式振動発電機120~127を図10(A)に示すように、回転方向に1列で設けているが、図10(B)に示すように2列に設けても良い。また、振動発電機とタイヤの横幅サイズの関係によっては、3列以上の配置も可能である。更に、説明の便宜上、電磁誘導式振動発電機120~127は全て同一としているが、サイズ等が異なるものであっても良い。
【0042】
図17は本発明に係る発電機能付きタイヤ100B(第3実施形態)の側面構成を、一部断面で示しており、磁歪式振動発電機を用いた実施形態であり、回転軸に対する回転方向に、タイヤ表面にトレッドを有するトレッド部101と、タイヤ内部のインナー部102との間のスペースに、ほぼ均等間隔に分離された8個の磁歪式振動発電機140~147が層設されている。振動発電機140~147は全て同一構成であり、例えば図17の下方(X方向)から見た配置は図18(A)であり、振動発電機140~147はいずれもタイヤ回転方向に長形の立体形状となっている。
【0043】
図19は、磁歪式振動発電機140の原理的構造を模式的に示しており、図19(A)は側面図であり、図19(B)は平面図である。立体形状の固定部140-1に連接されたヨーク140-2の先端部には図示D方向に可動(上下動)する立体形状の可動部140-3が設けられており、ヨーク140-2と可動部140-3との間に、矩形板状の磁歪材料(Galfenol)140-4が懸架されると共に、コイル140-5が巻回されている。磁歪材料140-5の側面には、逆極性となるように1対の永久磁石140-6(本例ではS極)及び140-7(本例ではN極)が配設されている。可動部140-3が方向Dに往復動することにより、磁歪材料140-5もD方向に往復動、つまり振動して永久磁石140-6及び140-7の間の磁束が変化し、コイル140-5の電磁誘導により電力(交流の電流i4)が発生される。
【0044】
本発明では、このような磁歪式振動発電機140を図20に示すように、固定部140-1の高さh1と、可動部140-3の高さh2とを相違させると共に、高さh2を高さh1より小さくする。そして、トレッド部101の内面とインナー部102の表面との間のスペース間隔をHとした場合、固定部140-1の高さh1をスペース間隔Hとほぼ等しくする。従って、下記関係がある。
(数3)
h1>h2
(数4)
h1≒H

そして、トレッド部101の内面とインナー部102の表面との間のスペースに磁歪式振動発電機140を層設する際、図20に示すように、固定部140-1の上面をインナー部102の表面に固定すると共に、固定部140-1の底面をトレッド部101の内面に固定し、可動部140-3の底面をトレッド部101の内面に固定する。固定部140-1と可動部140-3を結ぶ向きは、車輪100Bの回転方向となっている。これにより、可動部140-3の上面とインナー部102の表面との間に下記数5で示される空間h3が形成され、可動部140-3が図20の上方に移動可能な空間を形成する。
(数5)
h3=H(≒h1)-h2

可動部140-3の上面とインナー部102の表面との間に空間h3が形成されているので、可動部140-3がインナー部102の表面側(上方向)に移動することができる。可動部140-3が上方(D方向)に移動することは、磁歪材料140-5もD方向に移動することであり、それに従って磁歪材料140-5が変形(撓む)し、これにより磁歪式振動発電機140は磁歪作用によって発電することになる。
【0045】
図21は、磁歪作用による発電の様子を模式的に示しており、磁歪式振動発電機140が層設されたタイヤ位置が接地していない状態では、トレッド部101の裏面は図21(A)に示すように圧力で変形しておらず、可動部140-3は上方(D方向)に移動していない。つまり、可動部140-3の上面とインナー部102との間には高さh3の空間が確保されている。そして、タイヤが回転し、磁歪式振動発電機140が層設されたタイヤ位置が接地状態になると、トレッド部101の裏面が図21(B)に示すように圧力で変形し、固定されている可動部140-3が上方(D方向)に押し上げられるが、接地面を過ぎると元の位置に復帰する。このような動作が各磁歪式振動発電機140~147について繰り返されるので、磁歪材料140-5が振動(変形)して交流電力を発生することができる。
【0046】
図22は、磁歪式振動発電機140~147による発電と、車両側の蓄電(充電)の結線の構成例を示しており、本発明に係るタイヤ100Bはバッテリを内蔵しておらず、回転軸に対する円周面に沿って、トレッド部101とインナー部102との間のスペースに、図20に示されるような磁歪式振動発電機140~147が設けられている。磁歪式振動発電機140~147からの発生電力W140~W147は車両側に送電され、それぞれ整流回路240~247で直流(DC)に変換される。整流回路240~247からの直流電力は相互に干渉しないように合成回路201Bに入力され、合成された直流電力が蓄電部200Bに蓄電される。蓄電部200Bに蓄電された電力が蓄電器に供給されたり、車両搭載バッテリの充電に利用される。合成された直流電力は、直接蓄電器に供給されても良い。
【0047】
なお、上述では磁歪式振動発電機140~147を図18(A)に示すように、回転方向に1列で設けているが、図18(B)に示すように2列に設けても良い。また、振動発電機とタイヤの横幅サイズの関係によっては、3列以上の配置も可能である。更に、説明の便宜上、磁歪式振動発電機140~147は全て同一としているが、サイズ等が異なるものであっても良い。
【0048】
上述では圧電素子アレイを用いた発電機能付きタイヤ(第1実施形態)、電磁誘導式振動発電機を用いた発電機能付きタイヤ(第2実施形態)、磁歪式振動発電機を用いた発電機能付きタイヤ(第3実施形態)について説明したが、これらを組み合わせたハイブリッド式の発電機能付きタイヤを実現することもできる。
【0049】
図23は本発明の第4実施形態を示しており、第1実施形態の圧電素子アレイと第2実施形態の電磁誘導式振動発電機を組み合わせたハイブリッド発電形式である。即ち、回転軸に対する円周面に沿って、タイヤ表面にトレッドを有するトレッド部101と、タイヤ内部のインナー部102との間のスペースに、ほぼ均等間隔に分離された圧電素子アレイ110~117と、電磁誘導式振動発電機120~127とが交互に層設されている。圧電素子アレイ110~117は全て同一構成であり、第1実施形態で説明した構成であり、また、電磁誘導式振動発電機120~127は全て同一構成であり、第2実施形態で説明した構成である。交互に層設することにより、両者の平均的な電力を得ることができる。
【0050】
なお、ここでは、圧電素子アレイ110~117と電磁誘導式振動発電機120~127とを交互に設置しているが、これに限定されず、例えば2つ置きに設置するようにしても良い。
【0051】
図24は、圧電素子アレイ110~117及び電磁誘導式振動発電機120~127による発電と、車両側の蓄電の構成例を示しており、本発明に係るタイヤ100Cはバッテリを内蔵しておらず、回転軸に対する円周面に沿って、トレッド部101とインナー部102との間のスペースに、分離して配置された図4に示されるような圧電素子アレイ110~117と、図11若しくは図12に示されるような電磁誘導式振動発電機120~127とを具備している。圧電素子アレイ110~117からの発生電力W110~W117は車両側に送電され、それぞれ整流回路210~217で直流(DC)に変換され、また、電磁誘導式振動発電機120~127からの発生電力W120~W127も車両側に送電され、それぞれ整流回路220~227で直流(DC)に変換される。整流回路210~217からの直流電力は相互に干渉しないように合成回路201に入力され、合成された直流電力が蓄電部200Cに蓄電され、整流回路220~227からの直流電力は相互に干渉しないように合成回路201Aに入力され、合成された直流電力が蓄電部200Cに蓄電される。蓄電部200Cに蓄電された電力が蓄電器に供給されたり、車両搭載バッテリの充電に利用される。
【0052】
このような第4実施形態によれば、圧電素子アレイ110~117による発電と、電磁誘導式振動発電機120~127による発電とで、それぞれの特徴を活かした電力を得ることができる。
【0053】
また、図25は本発明の第5実施形態を示しており、第1実施形態の圧電素子アレイと、第2実施形態の電磁誘導式振動発電機と、第3実施形態の磁歪式振動発電機とを組み合わせたハイブリッド発電形式である。即ち、回転軸に対する円周面に沿って、タイヤ表面にトレッドを有するトレッド部101と、タイヤ内部のインナー部102との間のスペースに、分離された圧電素子アレイ110~117と、電磁誘導式振動発電機120~127と、磁歪式振動発電機140~147とが交互に層設されている。圧電素子アレイ110~117は全て同一構成であり、第1実施形態で説明した構成であり、また、電磁誘導式振動発電機120~127は全て同一構成であり、第2実施形態で説明した構成であり、磁歪式振動発電機140~147は全て同一構成であり、第3実施形態で説明した構成である。
【0054】
なお、ここでは、圧電素子アレイ110~117と、電磁誘導式振動発電機120~127と、磁歪式振動発電機140~147とを交互に設置しているが、これに限定されず、例えば2つ置きに交互に設置するようにしても良い。
【0055】
図26は、圧電素子アレイ110~117、振動発電機120~127及び磁歪式振動発電機140~147による発電と、車両側の蓄電の構成例を示しており、本発明に係るタイヤ100Dはバッテリを内蔵しておらず、回転軸に対する円周面に沿って、トレッド部101とインナー部102との間のスペースに、分離して配置された図4に示されるような圧電素子アレイ110~117と、図11若しくは図12に示されるような電磁誘導式振動発電機120~127と、図20に示されるような磁歪式振動発電機140~147とを具備している。圧電素子アレイ110~117からの発生電力W110~W117は車両側に送電され、それぞれ整流回路210~217で直流(DC)に変換され、また、電磁誘導式振動発電機120~127からの発生電力W120~W127も車両側に送電され、それぞれ整流回路220~227で直流(DC)に変換され、磁歪式振動発電機140~147からの発生電力W140~W147も車両側に送電される。整流回路210~217からの直流電力は相互に干渉しないように合成回路201に入力され、合成された直流電力が蓄電部200Dに蓄電され、整流回路220~227からの直流電力は相互に干渉しないように合成回路201Aに入力され、合成された直流電力が蓄電部200Dに蓄電され、整流回路240~247からの直流電力は相互に干渉しないように合成回路201Bに入力され、合成された直流電力が蓄電部200Dに蓄電される。蓄電部200Dに蓄電された電力が蓄電器に供給されたり、車両搭載バッテリの充電に利用される。
【0056】
ハイブリッド形式として、圧電素子アレイと電磁誘導式振動発電機の組み合わせ、圧電素子アレイ、電磁誘導式振動発電機及び磁歪式振動発電機の組み合わせについて説明したが、圧電素子アレイと磁歪式振動発電機の組み合わせ、電磁誘導式振動発電機と磁歪式振動発電機の組み合わせであっても良い。
【0057】
なお、上述では車両として、自動車を挙げて説明したが、タイヤを具備して地上を走行するものであれば、トラック、ダンプカー、オートバイ、スクータ、農業機械などであっても良い。いずれの車両においても、本発明に係る発電機能付きタイヤを装着すれば、カーボンニュートラルの実現に寄与できる。
【符号の説明】
【0058】
1 自動車(乗用車)
10 圧電素子
20 タイヤ
21 トレッド部
22 インナー部
100,100A,100B、100C、100D 発電機能付きタイヤ
101 トレッド部
102 インナー部
110~117 圧電素子アレイ
110-1 圧電材
110-2 上部電極板
110-3 下部電極板
120~127 電磁誘導式振動発電機
120-1、130-1 N極永久磁石
120-2、130-2 S極永久磁石
120-3、130-3 コイル
120-4、130-4 移動体
120-5,130-5 バネ
140~147 磁歪式振動発電機
140-1 固定部
140-2 ヨーク
140-3 可動部
140-4 磁歪材料(Galfenol)
140-5 コイル
140-6、140-7 永久磁石
200、200A、200B、200C、200D 蓄電部
201、201A、201B、 合成回路
210~217、220~227、240~247 整流回路
【要約】
【課題】車両の走行時に、車両走行エネルギーには全く影響を与えることなく、自動的に発電して、発電電力を蓄電したり、車両搭載バッテリの充電に供給したり、タイヤが内蔵するセンサ類の電力に使用することが可能な発電機能付きタイヤ及びそれを装着した車両を提供する。
【解決手段】車両に装着されるタイヤであり、タイヤの回転軸の円周面に沿って、トレッド部とインナー部との間のスペースに複数の圧電素子アレイ、複数の電磁誘導式振動発電機、複数の磁歪式振動発電機が層設されている発電機能付きタイヤ及びそれを装着した車両である。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26