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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】安全帯
(51)【国際特許分類】
   A62B 35/00 20060101AFI20221114BHJP
   A44B 11/00 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
A62B35/00 A
A44B11/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018154851
(22)【出願日】2018-08-21
(65)【公開番号】P2020028385
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000149930
【氏名又は名称】株式会社谷沢製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中澤 雅一
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-148352(JP,A)
【文献】特開2011-115644(JP,A)
【文献】特開2004-275581(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0291046(US,A1)
【文献】登録実用新案第3010580(JP,U)
【文献】特開2005-342308(JP,A)
【文献】特開2016-077572(JP,A)
【文献】特開2016-077571(JP,A)
【文献】特開2015-223292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 1/00 - 5/00
A62B 35/00 - 99/00
F16B 45/00
B64D 17/30
E04G 21/32
A44B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の肩に掛け回される肩帯と、
装着者の腿に巻き回される腿帯と、
前記腿帯に接続される脚帯と、
前記肩帯と前記脚帯との少なくとも一方が挿通される環状接続部材と、
を備える安全帯であって、
前記肩帯と前記脚帯との少なくとも一方は、
前記環状接続部材に挿入されて折り返され、前記環状接続部材に挿入された折り返し部分を軸にV字形状に開かれた第1帯体と、
前記第1帯体の折り返された内側に配置されると共に、前記環状接続部材に折り返されるように挿入されて、前記環状接続部材に挿入された折返し部分を軸にV字形状に開かれた第2帯体と、
を備え、
前記環状接続部材を通って前記環状接続部材の一方から延びる前記第1帯体の第1一方部分には、前記環状接続部材を通って前記環状接続部材の他方から延びる前記第2帯体の第2他方部分が、前記環状接続部材から所定の長さだけ離隔した位置で固定され、
前記環状接続部材を通って前記環状接続部材の前記他方から延びる前記第1帯体の第1他方部分には、前記環状接続部材を通って前記環状接続部材の前記一方から延びる前記第2帯体の第2一方部分が、前記環状接続部材から所定の長さだけ離隔した位置で固定されていることを特徴とする安全帯。
【請求項2】
請求項1に記載の安全帯であって、
前記第1帯体は、前記肩帯又は前記脚帯を全体的に構成する帯本体であり、
前記第2帯体は、前記第1帯体よりも短く、且つ、前記第2帯体の前記第2他方部分の端部で前記第1一方部分に固定され、前記第2一方部分の端部で前記第1他方部分に固定されていることを特徴とする安全帯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全帯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高い場所で作業する作業員(装着者)に命綱を付けて装着される所謂フルハーネス型の安全帯であり、装着者の両肩に夫々掛け回される一対の肩帯と、装着者の両腿に夫々巻き回される一対の腿帯とを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
所謂フルハーネス型の安全帯では、装着者の右肩に掛け回される右肩帯は、装着者の左腿に巻き回される左腿帯に連結される。反対に装着者の左肩に掛け回される左肩帯は、装着者の右腿に巻き回される右腿帯に連結される。特許文献1の安全帯は、装着者の背中で両肩帯をX字状に交差させるパッドを備える所謂X型安全帯である。
【0004】
また、装着者の動き易さを向上させるべく、両腿帯から延びる2つの肩帯を装着者の腰のあたりに設けられた結束具で一度まとめるように重ね合わせて、その後、装着者の背中のあたりに位置する分岐部材を用いて対応する装着者の肩に向かうように肩帯をY字状に分岐させる安全帯(Y型安全帯)も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
分岐部材には、右肩帯を装着者の右肩へ向けて分岐させる第1挿通孔と、左腿帯を装着者の左肩へ向けて分岐させる第2挿通孔とが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-223639号公報
【文献】特開2013-81597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の安全帯は、装着者が一方の肩を上方に上げるような動作を行う場合、安全帯の肩帯が邪魔となり、一方の肩を上げるような動作を行い難いという問題がある。
【0008】
本発明は、以上の点に鑑み、装着者が動き易い安全帯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]上記目的を達成するため、本発明は、
装着者の肩に掛け回される肩帯と、
装着者の腿に巻き回される腿帯と、
前記腿帯に接続される脚帯と、
前記肩帯と前記脚帯との少なくとも一方が挿通される環状接続部材と、
を備える安全帯であって、
前記肩帯と前記脚帯との少なくとも一方は、
前記環状接続部材に挿入されて折り返され、前記環状接続部材に挿入された折り返し部分を軸にV字形状に開かれた第1帯体と、
前記第1帯体の折り返された内側に配置されると共に、前記環状接続部材に折り返されるように挿入されて、前記環状接続部材に挿入された折返し部分を軸にV字形状に開かれた第2帯体と、
を備え、
前記環状接続部材を通って前記環状接続部材の一方から延びる前記第1帯体の第1一方部分には、前記環状接続部材を通って前記環状接続部材の他方から延びる前記第2帯体の第2他方部分が、前記環状接続部材から所定の長さだけ離隔した位置で固定され、
前記環状接続部材を通って前記環状接続部材の前記他方から延びる前記第1帯体の第1他方部分には、前記環状接続部材を通って前記環状接続部材の前記一方から延びる前記第2帯体の第2一方部分が、前記環状接続部材から所定の長さだけ離隔した位置で固定されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、肩帯と脚帯との少なくとも一方が挿通される環状接続部材において、第1一方部分に第2他方部分が環状接続部材から所定の長さだけ離隔した位置で固定され、第1他方部分に第2一方部分が環状接続部材から所定の長さだけ離隔した位置で固定されている。このように構成することにより、装着者が、一方の肩を上方に上げるような姿勢をとったり、または一方の腿を上方に上げるような姿勢をとることにより脚帯が下方に引っ張られたとしても、肩帯又は脚帯の構成要素としての第1帯体と第2帯体との固定部分が環状接続部材から離隔させた長さの分だけ、肩帯又は脚帯が当該姿勢を許容するように位置をずらす事ができる。これにより、装着者が動き易い安全帯を提供することができる。
【0011】
[2]また、本発明においては、前記第1帯体は、前記肩帯又は前記脚帯を全体的に構成する帯本体であり、前記第2帯体は、前記第1帯体よりも短く、且つ、前記第2帯体の前記第2他方部分の端部で前記第1一方部分に固定され、前記第2一方部分の端部で前記第1他方部分に固定されていることが好ましい。
【0012】
本発明によれば、第1帯体よりも短い第2帯体は、環状接続部材で折り返される第1帯体の折り返された内側に位置することとなり、第2帯体の先端と第1帯体とで形成される段差部分も第1帯体の内側に位置することとなる。これにより、当該段差部分が装着者に接触し難くなり、装着者への不快感を与え難い安全帯を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の安全帯の実施形態を示す説明図。
図2】本実施形態の安全帯の背面側を示す説明図。
図3】本実施形態の安全帯の環状接続部材と、その周辺の肩帯と腿帯を示す拡大図。
図4】本実施形態の肩帯が一方にずれた状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1から図4を参照して、本発明の安全帯の実施形態を説明する。図1及び図2示すように、本実施形態の安全帯1は、高い場所で作業する作業員(装着者)に命綱を付けて装着される所謂フルハーネス型のものであり、装着者の両肩に夫々掛け回される一対の肩帯2,3と、装着者の両腿に夫々巻き回される一対の腿帯4,5と、装着者の腰に巻き回される腰帯6とを備える。
【0015】
一対の肩帯2,3は、同一の帯状の帯状体で構成されており、帯状体の中央部を装着者の背中に位置する環状接続部材7に通してV字状に折り返して構成される。環状接続部材7はD環8(アンカーリング)が一体に設けられて8字形状となっており、環状接続部材7がD環8の位置決めとしてのD環止めとしての機能を兼ね備えている。
【0016】
一対の腿帯4,5の前方部には、肩帯2,3が前方側で下方に向かって延びて、その下端が夫々固定されている。
【0017】
また、腿帯4,5は同一の帯状体で2つの輪を作れるように構成される。環状接続部材7には、一対の腿帯4,5の後方部に両端が夫々摺動自在に連結される脚帯11が設けられている。脚帯11は、肩帯2,3と同様に、その中央部で環状接続部材7に挿通されて下方へV字状に折り返されている。
【0018】
図3に拡大して示すように、肩帯2,3及び脚帯11は、肩帯2,3及び脚帯11の大部分をそれぞれ構成する帯本体としての第1帯体100と、第1帯体100よりも短い第2帯体200と、でそれぞれ構成されている。図3では、第1帯体100と第2帯体200とを区別し易くすべく、第2帯体200にハッチングを施して示している。第1帯体100は、環状接続部材7に挿入されて折り返されている。第1帯体100は、環状接続部材7で折り返された部分を軸にV字形状に開かれるようにして折り返されている。第2帯体200は、折り返された第1帯体100の内側に配置されている。
【0019】
ここで、環状接続部材7を通って環状接続部材7の一方(例えば装着者の背中に向かう側)から延びる第1帯体100の部分を第1一方部分110、環状接続部材7を通って環状接続部材7の他方(例えば装着者の背中から離隔する側)から延びる第1帯体100の部分を第1他方部分120、環状接続部材7を通って環状接続部材7の一方(例えば装着者の背中に向かう側)から延びる第2帯体200の部分を第2一方部分210、環状接続部材7を通って環状接続部材7の他方(例えば装着者の背中から離隔する側)から延びる第2帯体200の部分を第2他方部分220、とする。
【0020】
第1一方部分110には、第2他方部分220の先端が、環状接続部材7から所定の長さだけ離隔した位置で固定されている。第1他方部分120には、第2一方部分210が、環状接続部材7から所定の長さだけ離隔した位置で固定されている。所定の長さは、安全帯1の安全性に問題がなく、且つ装着者が一方の肩を上方に上げたときに肩帯2,3の長さを微調整できる程度に設定されており、具体的な長さについては安全帯1のサイズ、種類によって異なっている。
【0021】
一対の腿帯4,5は、連結帯300によって連結されている。一対の腿帯4,5が連結帯300で連結されることにより、腿帯4,5同士が離れすぎることを防止できる。連結帯300には、連結帯300の外側(装着者に接触する側とは反対側)から上方に向かって折り返された折返し部310が設けられている。
【0022】
本実施形態の安全帯1によれば、肩帯2,3と脚帯11との少なくとも一方が挿通される環状接続部材7において、第1一方部分110に第2他方部分220が環状接続部材7から所定の長さだけ離隔した位置で固定され、第1他方部分120に第2一方部分210が環状接続部材7から所定の長さだけ離隔した位置で固定されている。このように構成することにより、装着者が、一方の肩を上方に上げるような姿勢をとったり、または一方の腿を上方に上げるような姿勢をとることにより脚帯が下方に引っ張られたとしても、図4に示すように、肩帯2,3又は脚帯11の構成要素としての第1帯体100と第2帯体200との固定部分が環状接続部材7から離隔させた長さの分だけ、肩帯2,3又は脚帯11が当該姿勢を許容するように位置をずらすことができる。これにより、装着者が動き易い安全帯1を提供することができる。
【0023】
また、第1帯体100よりも短い第2帯体200の先端部分は、段差部分を形成することとなる。しかしながら、第2帯体200は、環状接続部材7で折り返される第1帯体100の折り返された内側に位置することとなり、第2帯体200の先端と第1帯体100とで形成される段差部分も第1帯体100の内側に位置することとなる。これにより、当該段差部分が装着者に接触し難くなり、装着者への不快感を与え難い安全帯1を提供することができる。
【0024】
なお、本実施形態では、肩帯2,3と脚帯11とのいずれもが環状接続部材7に挿通されているものを説明したが、本発明の安全帯は、これに限らない。例えば、肩帯2,3と脚帯11の何れか一方のみが環状接続部材7に挿通されていても本発明の「装着者が動き易い」という作用効果を奏することができる。
【0025】
また、本実施形態においては、環状接続部材7が1つのみの安全帯1を用いて説明したが、本発明の安全帯はこれに限らず、例えば、環状接続部材が上下に間隔を存して配置されており、上方に位置する環状接続部材に肩帯を通し、下方に位置する環状接続部材に脚帯を通し、環状接続部材同士を接続帯で接続してもよい。
【0026】
また、本実施形態においては、脚帯11と腿帯4,5とを別々の帯で構成したものを説明した。しかしながら、本発明の脚帯と腿帯とはこれに限らず、例えば、脚帯と腿帯とが1つの帯で構成されていてもよい。例えば、環状接続部材から伸びる脚帯を装着者の腰の横を通過して前方から股に通して、後ろから上方に折り返して装着者の腰の横でクロスさせることにより腿帯となる環状帯部分を形成して、肩帯の前方の下端に接続することにより、1つの帯で脚帯と腿帯とを構成することとができる。
【符号の説明】
【0027】
1 安全帯
2 右肩帯(第1帯状体)
3 左肩帯(第1帯状体)
4 右腿帯
5 左腿帯
6 腰帯
7 環状接続部材
8 D環(アンカーリング)
11 脚帯
100 第1帯体
110 第1一方部分
120 第1他方部分
200 第2帯体
210 第2一方部分
220 第2他方部分
300 連結帯
310 折返し部
図1
図2
図3
図4