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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】出力血圧信号を得る方法および装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/022 20060101AFI20221114BHJP
【FI】
A61B5/022 400F
A61B5/022 100B
A61B5/022 400M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019517988
(86)(22)【出願日】2017-10-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 US2017058197
(87)【国際公開番号】W WO2018081208
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-10-26
(31)【優先権主張番号】62/415,003
(32)【優先日】2016-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/401,432
(32)【優先日】2017-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519112508
【氏名又は名称】ライブメトリック (メディカル) エス.エー.
【氏名又は名称原語表記】LIVEMETRIC (MEDICAL) S.A.
【住所又は居所原語表記】40, rue Glesener, 1630 LUXEMBOURG, LUXEMBOURG
(74)【代理人】
【識別番号】100120662
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 桂子
(74)【代理人】
【識別番号】100140327
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 千秋
(72)【発明者】
【氏名】タル、 ニア エフライム、 ヨセフ
(72)【発明者】
【氏名】ベンシオン、 トマー
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0262695(US,A1)
【文献】特開平05-176900(JP,A)
【文献】特開2008-245943(JP,A)
【文献】特開2004-113368(JP,A)
【文献】特開2015-165886(JP,A)
【文献】特表2012-500033(JP,A)
【文献】特開2010-057817(JP,A)
【文献】特開2015-123300(JP,A)
【文献】特表平06-505886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02-5/0245
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力血圧信号を得る方法であって、
複数のN個の圧力センサを備えた装置が、前記複数のN個の圧力センサにより、複数のN個の血圧波形信号を同時に取得することと、
前記装置が、前記複数のN個の血圧波形信号のそれぞれの品質として、信号対雑音比(SNR)および受信信号強度表示(RSSI)を含むグループから選択される品質に基づいて、前記複数の圧力センサのうち、1つ以上の相対的に正確な圧力センサと、1つ以上の相対的に正確でない圧力センサとを特定することと、
前記装置が、前記複数の圧力センサのうち、前記1つ以上の相対的に正確な圧力センサからの1つ以上の血圧波形信号を利用して、前記複数の圧力センサのうち、前記1つ以上の相対的に正確でない圧力センサからの1つ以上の血圧波形信号を較正することと、
前記装置が、1つ以上の較正された血圧波形信号を含む前記N個の血圧波形信号を結合して、そこから前記出力血圧信号を生成することと、を含み、
前記血圧波形信号のそれぞれは、前記圧力センサの一つから取得され、
前記1つ以上の相対的に正確でない圧力センサからの1つ以上の血圧波形信号を較正することは、前記1つ以上の相対的に正確な圧力センサから、前記1つ以上の相対的に正確でない圧力センサについてのスケールファクタを推定し、前記1つ以上の較正された血圧波形信号を生成するために、前記1つ以上の相対的に正確でない圧力センサからの1つ以上の血圧波形信号に前記スケールファクタを乗算することを含み、
前記出力血圧信号は、前記N個の血圧波形信号のそれぞれの係数を利用する加重和を含み、
前記係数は、前記出力血圧信号が前記N個の圧力センサ信号のうちの1つまたは複数よりも高い信号対雑音比(SNR)を有するように、適応アルゴリズムを使用して推定される、方法。
【請求項2】
前記複数のN個の圧力センサは、橈骨動脈、尺骨動脈、および上腕動脈のうちの少なくとも1つからの血圧を感知する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
出力血圧信号を得る装置であって、
複数のN個の圧力センサと、
複数のN個の血圧波形信号を同時に取得するように動作する取得回路であって、各波形信号は前記圧力センサのうちの1つから取得される、取得回路と、
プロセッサとを含み、
前記プロセッサは、
前記複数のN個の血圧波形信号のそれぞれの品質として、信号対雑音比(SNR)および受信信号強度表示(RSSI)を含むグループから選択される品質に基づいて、前記複数の圧力センサのうち、1つ以上の相対的に正確な圧力センサと、1つ以上の相対的に正確でない圧力センサとを特定し、
前記複数の圧力センサ内の前記1つ以上の相対的に正確な圧力センサからの1つ以上の血圧波形信号を利用して、前記複数の圧力センサ内の前記1つ以上の相対的に正確でない圧力センサからの1つ以上の血圧波形信号を較正し、
1つ以上の較正された血圧波形信号を含む前記N個の血圧波形信号を結合して、それから前記出力血圧信号を生成する、ようにプログラムされており、
前記1つ以上の相対的に正確でない圧力センサからの1つ以上の血圧波形信号を較正することは、前記1つ以上の相対的に正確な圧力センサから、前記1つ以上の相対的に正確でない圧力センサについてのスケールファクタを推定し、前記1つ以上の較正された血圧波形信号を生成するために、前記1つ以上の相対的に正確でない圧力センサからの1つ以上の血圧波形信号に前記スケールファクタを乗算することを含み、
前記出力血圧信号は、前記N個の血圧波形信号のそれぞれの係数を利用する加重和を含み、
前記係数は、前記出力血圧信号が前記N個の圧力センサ信号のうちの1つまたは複数よりも高い信号対雑音比(SNR)を有するように、適応アルゴリズムを使用して推定される、装置。
【請求項4】
前記複数のN個の圧力センサは、橈骨動脈、尺骨動脈、および上腕動脈のうちの少なくとも1つからの血圧を感知する、請求項に記載の装置。
【請求項5】
出力血圧信号を得る装置であって、
複数のN個の圧力センサと、
複数のN個の血圧波形信号を同時に取得するように動作する取得回路であって、各波形信号は前記圧力センサのうちの1つから取得される、取得回路と、
プロセッサとを含み、
前記プロセッサは、
前記N個の血圧波形信号のうちの1つまたは複数を、信号対雑音比(SNR)および受信信号強度表示(RSSI)を含むグループから選択される1つ以上の品質メトリックに従って選択し、
前記選択された1つの信号または前記選択された複数の信号のそれぞれの係数を利用する加重和を含む信号を前記出力血圧信号として出力する、ようにプログラムされ
前記係数は、前記出力血圧信号が前記N個の圧力センサ信号のうちの1つまたは複数よりも高い信号対雑音比(SNR)を有するように、適応アルゴリズムを使用して推定される、装置。
【請求項6】
選択されていない圧力センサおよびそれらの関連回路が、電力消費を低減するために電源を切断される、請求項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される主題はユーザのバイタルサインを監視する分野に関し、より詳細には、圧力センサアレイを使用して血圧信号を取得するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高血圧はよくある状態であるが、動脈壁に対する血液の長期的な力が最終的に心臓病などの健康上の問題を引き起こし得るほどに高くなる。血圧は、心臓が押し出す血液の量と動脈の血流抵抗量との両方によって決まる。心臓からの血液の押し出し量が多くなればなるほど、また、動脈が狭くなればなるほど、血圧は高くなる。
【0003】
高血圧であっても何年も症状がないことがある。症状がなくても、血管および心臓への損傷は継続し、検出することができる。コントロールされていない高血圧は、心臓発作および脳卒中を含む重篤な健康問題のリスクを増大させる。高血圧は一般に、長年にわたって発症し、最終的には、ほとんどすべての人に影響を及ぼす。幸いなことに、高血圧の検出は容易である。
【0004】
現在、心臓血管疾患は、世界中で報告されている全ての死亡の大部分を占めている。これらの疾患は、重篤で共通のリスクと考えられ、低所得国および中所得国において顕著である。高血圧は、心不全または脳卒中の危険性を増大させ、血管の硬化を加速させ、平均余命を減少させる主な要因である。
【0005】
高血圧は、循環血液が血管壁に及ぼす圧力が上昇する慢性健康状態である。血管内の血液の適切な循環を確保するために、高血圧患者の心臓は、正常よりも激しく働かなければならず、心臓発作、卒中、および心不全のリスクが増大することとなる。しかしながら、健康的な食事をし、運動をすることは、血圧コントロールを有意に改善し、合併症のリスクを減少させることができる。効率的な薬物治療も利用可能である。したがって、血圧が上昇した人を見つけ出し、定期的に血圧情報を監視することが重要である。
【0006】
各心拍の間、血圧は最大(すなわち、収縮期)圧力と最小(すなわち、拡張期)圧力との間で変化する。血圧を測定する従来の非侵襲的な方法は加圧カフを使用し、血流が脈動し始める(すなわち、カフ圧が収縮期圧と拡張期圧との間にある)圧力レベルと、全く流れがない(すなわち、カフ圧が収縮期圧を超える)圧力レベルとを検出することであった。しかしながら、ユーザは特に長期間のモニタリングにおいて、退屈でストレスのかかる加圧カフと同様に、測定状況を考慮する傾向があることが分かっている。さらに、周知の白衣症候群は、測定中に血圧を上昇させる傾向があり、不正確な診断につながる。
【0007】
身体生理学的パラメータ(例えば、血圧、心拍数(HR)パルス、体温、血糖値、運動パターンなど)を非侵襲的に、連続的に、および/または断続的に長期間にわたって監視するための装着型デバイスの使用は、健康を監視および改善する方法として一般的になってきている。
【0008】
従来の血圧測定は膨張可能なカフを必要とし、このカフは機械的センサ(例えば、聴診器)を使用して、血管内の血流渦によって生成される音を聴きながら、完全な血管閉塞の状態からより低い圧力まで徐々に収縮される。この方法の利点は、動きに対するその相対的な安定性である。その反面、その大きなフォームファクタと、ユーザによる手動膨張または自動ポンプのいずれかを必要とするため大量のエネルギーを要する点とにおいて、不利である。エネルギー効率および小さいフォームファクタは、着用可能なデバイスにおける主要な要件であるので、膨張可能カフによる血圧感知は、ここでの有用なパラダイムではない。
【0009】
従来技術の血圧測定装置は、重大な欠点を有する。第1に、橈骨動脈上のセンサの位置決めまたは配置は、ユーザにとって困難である。第2に、センサは、通常、正確な読み取り値を得るために較正を必要とする。第3に、センサから得られる信号対雑音比(SNR)は、信頼性のある血圧測定値を得るのに十分ではないかもしれない。
【0010】
したがって、従来技術の装置および方法の欠点を克服する、血圧を連続的に測定および監視することができる機構が必要とされている。例えば、血圧を測定する機構は、関連する高エネルギー要件を有する膨張可能なカフの使用を必要とすべきではない。さらに、この機構は腕の動脈(すなわち、橈骨動脈および尺骨動脈)のうちの1つまたは複数の動脈上の血圧波形を感知する一方で、波形から運動アーチファクトを有意に低減または排除することができなければならない。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、圧力センサアレイを使用して血圧信号を取得するためのシステムおよび方法である。非膨張式、非侵襲的、連続的な血圧波形および血圧取得システムのための解決策が提供される。システムは、様々な検知素子からの信号を結合するように動作可能であり、より正確なセンサ素子を利用して、より正確でないセンサ素子が較正される。
【0012】
血圧を取得するための1つの技術は、感圧センサを使用して実施される非常に感度の高い圧力センサを使用することであり、これは、例えば、マイクロ電気機械システム(MEMS)において、容量性または抵抗性感知手段によって実施され得る。橈骨動脈または尺骨動脈に慎重に配置されたこのようなセンサは、皮膚を通るわずかな圧力変化を検出することができ、これを注意深くサンプリングし処理することで、血圧信号を生成することができる。次いで、血圧信号を処理して、実際の収縮期および拡張期の連続的および/または断続的な血圧読み取り値を生成することができる。
【0013】
本発明はこのようなシステムの3つの重要な技術的障壁、すなわち、(1)センサを標的動脈上に正確に配置する方法、(2)センサを較正する方法、および(3)血圧波形の信号対雑音比を改善する方法、を克服する。
【0014】
センサの配置に関して、典型的な橈骨動脈の直径はわずか数ミリメートルである。とりわけウェアラブルデバイスの場合、センサ圧力センサを、垂直に、橈骨動脈上の皮膚に接触するように位置合わせすることは、困難であり得る。本発明はセンサアレイ、例えば、直線状、二次元等のアレイ、を提供することによってこの困難を克服する。それによって、複数のセンサが手首の十分な領域をカバーすることで、少なくとも1つのセンサが、最適にまたはほぼ最適に、尺骨動脈上に配置され得るようにする。
【0015】
センサ較正に関しては、容量性MEMS圧力センサは、温度、バッチ、および他のパラメータに対して極端に依存するので、較正なしにmmHg精度で絶対圧力を測定するには本質的に適していない。本発明はセンサアレイに容量性(すなわち、より低い精度)センサと抵抗性(すなわち、高い精度)センサとの両方を含めることによって、この問題を克服する。より正確な抵抗型センサは、より正確でない容量型センサを較正するために使用される。
【0016】
信号対雑音比(SNR)に関しては、血圧測定値は良好な信号対雑音比を有することが必要であり、検知される実際の信号は血管境界および皮膚組織を通る送信圧力波形であるので、信号対雑音比の低減につながる著しい減衰がある。これは、患者内の生理学的変化と相まって、圧力波を一貫して感知することを非常に困難にする。本発明は、センサデータのSNRを改善する技術を提供することによって、この困難を克服する。複合血圧波形は、スケールファクタ(すなわち、重み)を推定し、センサデータに適用することによって、生成される。スケーリングされたデータは加算され、合成波形が出力される。あるいは、すべてのセンサからのデータが読み取られ、1つまたは複数の品質メトリックが計算され、首位のメトリックに対応するセンサデータがさらなる処理のために選択され、選択されなかったセンサからのデータを破棄する。
【0017】
したがって、本発明のシステムおよび方法は、上記の3つの設計上の問題をすべて軽減する、コンパクトな一群のセンサ素子を提供する。複数のセンサのために、精度の低いセンサ、すなわち容量性圧力MEMSセンサまたは力感知抵抗器(FSR)デバイスを較正することができるいくつかのセンサタイプを使用することができる。
【0018】
さらに、システムはセンサの各々において信号をサンプリングし、検出することができるので、どのセンサが標的動脈上に最も良く配置されているかを検出し、そのセンサからの信号を使用するか、または信号品質に基づいて様々な要素からの信号に重み付けすることができる。
【0019】
さらに、センサアレイはほぼ標的動脈上に配置されるので、複数の要素が動脈からシグナルを獲得する可能性が高い。複数のこのような相関信号を、補正されていない雑音と組み合わせることにより、信号対雑音比が向上し、はるかに正確な血圧測定値が得られる。
【0020】
したがって、本発明によれば、出力血圧(BP)信号を取得する方法であって、複数のN個の圧力センサを提供するステップと、複数のN個の血圧波形信号を取得するステップであって、各波形信号が圧力センサの1つから取得され、N個の血圧波形信号を組み合わせて、そこから出力血圧信号を生成するステップとを含む方法が提供される。
【0021】
また、本発明によれば、出力血圧(BP)信号を取得する方法であって、複数のN個の圧力センサを提供することと、複数のN個の血圧波形信号を取得することと、各波形信号が圧力センサのうちの1つから取得されることと、1つ以上の品質メトリックに従ってN個の血圧波形信号のうちの1つを出力血圧信号として選択することとを含む方法が提供される。
【0022】
本発明によれば、出力血圧(BP)信号を取得する方法であって、複数のN個の圧力センサを提供することと、複数のN個の血圧波形信号を取得することと、各波形信号が圧力センサのうちの1つから取得されることと、複数の圧力センサ内の1つまたは複数の比較的正確な圧力センサからの波形信号を利用して、複数の圧力センサ内の1つまたは複数の比較的正確でない圧力センサを較正することと、1つまたは複数の較正された血圧波形信号を含むN個の血圧波形信号を組み合わせて、そこから複合出力血圧信号を生成することとを含む方法、が提供される。
【0023】
また、本発明によれば、出力血圧(BP)信号を取得する方法であって、複数のN個の圧力センサを提供することと、複数のN個の血圧波形信号(各波形信号は圧力センサのうちの1つから取得される)を取得することと、複数の圧力センサ内の1つまたは複数の比較的正確な圧力センサからの波形信号を利用して複数の圧力センサ内の1つまたは複数のあまり正確でない圧力センサを較正することと、1つまたは複数のメトリックに従ってN個の血圧波形信号のうちの1つを選択することと、選択された信号を出力血圧信号として出力することとを含む方法、が提供される。
【0024】
本発明によれば、出力血圧(BP)信号を取得するための装置であって、複数のN個の圧力センサと、複数のN個の血圧波形信号を取得するように動作する取得回路であって、各波形信号が圧力センサのうちの1つから導出される取得回路と、プロセッサであって、N個の血圧波形信号を結合して出力血圧信号を生成するようにプログラムされたプロセッサとを備える装置がさらに提供される。
【0025】
また、本発明によれば、出力血圧(BP)信号を得るための装置であって、複数のN個の圧力センサと、複数のN個の血圧波形信号を取得するように動作する取得回路であって、各波形信号を圧力センサの1つから取得するように動作する取得回路と、プロセッサであって、複数の圧力センサ内の1つ以上の比較的正確な圧力センサからの波形信号を利用して、複数の圧力センサ内の1つ以上の比較的正確でない圧力センサを較正し、1つ以上の較正された血圧波形信号を含むN個の血圧波形信号を組み合わせて、そこから複合出力血圧信号を生成する装置、が提供される。
【0026】
本発明によれば、出力血圧(BP)信号を取得するための装置であって、複数のN個の圧力センサと、複数のN個の血圧波形信号(各波形信号は圧力センサのうちの1つから取得される)を取得するように動作する取得回路と、複数の圧力センサ内の1つまたは複数の比較的正確な圧力センサからの波形信号を利用して複数の圧力センサ内の1つまたは複数の比較的正確でない圧力センサを較正し、1つまたは複数の品質メトリックに従ってN個の血圧波形信号のうちの1つを選択し、選択された信号を出力血圧信号として出力するようにプログラムされたプロセッサとを備える装置、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明は、添付の図面を参照して、単なる例として本明細書に記載される。
図1図1は、ユーザの血圧を測定するように動作可能な本発明の例示的な着用可能デバイスの第1の図を示す図である。
図2図2は、ユーザの血圧を測定するように動作可能な本発明の例示的な着用可能デバイスの第2の図を示す図である。
図3A図3Aは、血管、圧力センサ、およびデバイスハウジングの向きを示す、ユーザの手首の断面を示す図である。
図3B図3Bは、腕に配置され、ユーザの血圧を測定するように動作するように適合された、本発明の例示的な着用可能なデバイスを示す図である。
図4A図4Aは、本発明の例示的な血圧センサアレイの第1の実施形態を示す図である。
図4B図4Bは、本発明の例示的な血圧センサアレイの第2の実施形態を示す図である。
図4C図4Cは、本発明の例示的な血圧センサアレイの第3の実施形態を示す図である。
図5図5は複数の圧力センサの信号出力を表す複数の波形を示す図であり、各センサは、ユーザの手首上の異なる位置を有する。
図6図6は、本発明に従って構成された着用可能装置の一例を示すブロック図である。
図7図7は、本発明による複合血圧波形を生成するための例示的な回路を示すブロック図である。
図8図8は、本発明による血圧波形結合の例示的な方法を示す流れ図である。
図9図9は、本発明による、複数の圧力センサのうちの1つから血圧波形を選択するための例示的な回路を示すブロック図である。
図10図10は、本発明による血圧波形選択の例示的な方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下の詳細な説明では、本発明の完全な理解を提供するために多くの具体的な詳細について述べる。しかし、当業者であれば、本発明は、これらの特定の詳細なしに実施できることを理解するであろう。他の例では、周知の方法、手順、および構成要素は、本発明を不明瞭にしないように、詳細には説明されていない。
【0029】
本発明とみなされる主題は、本明細書の結論部分において特に指摘され、明確に請求される。しかし、本発明はその目的、特徴、および利点と共に、動作の構成および方法の両方に関して、添付の図面とともに読まれるときに、以下の詳細な説明を参照することによって最もよく理解され得る。
【0030】
説明を簡単かつ明確にするために、図面に示される要素は必ずしも一定の縮尺で描かれていないことが理解されるであろう。例えば、いくつかの要素の寸法は、明確にするために、他の要素に対して誇張されている場合がある。さらに、適切であると考えられる場合、参照番号は対応するまたは類似の要素を示すために、図面の間で繰り返されている。
【0031】
本発明の図示された実施形態はほとんどの場合、当業者に知られている電子構成要素および回路を使用して実施され得るので、本発明の基礎となる概念の理解および評価のために、および本発明の教示を不明瞭にしたり、または混乱させたりしないために、必要と考えられる以上の詳細は説明されていない。
【0032】
本明細書における方法へのいかなる言及も、方法を実行することができるシステムに準用されるべきである。本明細書におけるシステムへのいかなる言及も、システムによって実行され得る方法に準用されるべきである。
【0033】
当業者に理解されるように、本発明は、システム、方法、コンピュータプログラム製品、またはそれらの組合せとして実施することができる。したがって、本発明はハードウェアの実施形態、ソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)、または本明細書ではすべて一般に「回路」、「モジュール」、または「システム」と呼ぶことができるソフトウェアおよびハードウェアの態様を組み合わせた実施形態をとることができる。さらに、本発明の一部は、媒体に具現化されたコンピュータ使用可能プログラムコードを有する任意の有形表現媒体に具現化されたコンピュータプログラム製品の形態をとることができる。
【0034】
本発明は、コンピュータによって実行される、プログラムモジュールなどのコンピュータ実行可能命令の一般的な文脈で説明することができる。一般に、プログラムモジュールは特定のタスクを行ったり、特定の抽象的データ型を有するような、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造等を含む。本発明はまた、タスクが、通信ネットワークを通してリンクされた分散型理装置によって実行される、分散型計算環境において実行されてもよい。分散コンピューティング環境では、プログラムモジュールがメモリ記憶装置を含むローカルおよびリモートコンピュータ記憶媒体の両方に配置することができる。
【0035】
1つまたは複数のコンピュータ使用可能媒体またはコンピュータ可読媒体の任意の組合せを利用することができる。コンピュータ使用可能またはコンピュータ可読媒体は、例えば、電子、磁気、光学、電磁気、赤外線、または半導体のシステム、装置、デバイス、または伝播媒体であってもよいが、これらに限定されない。コンピュータ可読媒体のより具体的な例(非網羅的なリスト)には、1つまたは複数のワイヤを有する電気接続、ポータブルコンピュータディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読取り専用メモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、光ファイバ、ポータブルコンパクトディスク読取り専用メモリ(CDROM)、光記憶デバイス、インターネットまたはイントラネットをサポートするものなどの伝送媒体、または磁気記憶デバイスが含まれる。プログラムは例えば、紙または他の媒体の光学走査を介して電子的に取り込まれ、次いで、必要であれば、コンパイルされ、解釈され、または他の適切な方法で処理され、次いで、コンピュータメモリに記憶され得るので、コンピュータ使用可能媒体またはコンピュータ可読媒体は、プログラムが印刷される紙または他の適切な媒体でさえあり得ることに留意されたい。本文書の文脈において、コンピュータ使用可能またはコンピュータ読取り可能媒体は、命令実行システム、装置、または装置によって、またはそれに関連して使用するためのプログラムを含むか、または格納することができる任意の媒体であってもよい。
【0036】
本発明の動作を実行するためのコンピュータプログラムコードは、Java(登録商標)、Smalltalk(登録商標)、C++、C#などのオブジェクト指向プログラミング言語、「C」プログラミング言語などの従来の手続き型プログラミング言語、およびPrologおよびLispなどの機能プログラミング言語、マシンコード、アセンブラ、または任意の他の適切なプログラミング言語を含む、1つまたは複数のプログラミング言語の任意である。プログラムコードは、ウェアラブルデバイス上、ホストデバイス上、および/またはクラウド内で完全にまたは部分的に実行することができる。後者のシナリオではウェアラブルデバイス、ホスト、および/またはクラウドは例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)またはワイドエリアネットワーク(WAN)を含む任意のタイプのネットワークプロトコルを使用して任意のタイプのネットワークを介して接続されてもよく、または接続が(例えば、インターネットサービスプロバイダを使用するインターネットを介して)外部コンピュータに対して行われてもよい。
【0037】
本発明は、本発明の実施形態による方法、装置(システム)、およびコンピュータプログラム製品のフローチャート図および/またはブロック図を参照して以下に説明される。フローチャート図および/またはブロック図の各ブロック、ならびにフローチャート図および/またはブロック図におけるブロックの組合せは、コンピュータプログラム命令によって実装またはサポートされ得ることが理解されるであろう。これらのコンピュータプログラム命令は、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、または他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサに提供されて、コンピュータまたは他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサを介して実行される命令が流れ図および/またはブロック図の1つまたは複数のブロックで指定された機能/動作を実施するための手段を作成するように、マシンを生成することができる。
【0038】
これらのコンピュータプログラム命令はコンピュータまたは他のプログラマブルデータプロセッシング装置に特定の方法で機能するように指示することができるコンピュータ可読媒体に格納することもでき、その結果、コンピュータ可読媒体に格納された命令は、流れ図および/またはブロック図のブロックまたは複数のブロックに指定された機能/動作を実施する命令手段を含む製品を生成する。
【0039】
コンピュータプログラム命令はまた、コンピュータまたは他のプログラマブルデータ処理装置上にロードされて、一連の動作ステップがコンピュータまたは他のプログラマブル装置上で実行され、コンピュータまたは他のプログラマブル装置上で実行される命令がフローチャートおよび/またはブロック図の1つまたは複数のブロックで指定された機能/動作を実施するためのプロセスを提供するように、コンピュータ実施プロセスを生成することができる。
【0040】
本発明は、多数の汎用または専用コンピューティングシステム環境または構成で動作可能である。ウェアラブルデバイスプロセッサ、ホストデバイス、およびクラウドを含む、本発明と共に使用するのに適し得る周知のコンピューティングシステム、環境、および/または構成の例には、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、クラウドコンピューティング、ハンドヘルドまたはラップトップデバイス、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラまたはマイクロコンピュータベースのシステム、セットトップボックス、プログラマブルコンシューマエレクトロニクス、ASICまたはFPGAコア、DSPコア、ネットワークPC、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、上記のシステムまたはデバイスのいずれかを含む。
【0041】
図面のフローチャートおよびブロック図は、本発明の様々な実施形態によるシステム、方法、およびコンピュータプログラム製品の可能な実装のアーキテクチャ、機能、および動作を示す。この点に関して、フローチャートまたはブロック図の各ブロックは、指定された論理機能(複数可)を実装するための1つまたは複数の実行可能命令を含む、モジュール、セグメント、またはコードの一部を表すことができる。また、いくつかの代替実施形態では、ブロックに記載された機能が図に記載された順序とは異なる順序で行われてもよいことに留意されたい。例えば、連続して示される2つのブロックは実際には実質的に同時に実行されてもよく、またはブロックが含まれる機能に応じて、時々、逆の順序で実行されてもよい。また、ブロック図および/またはフローチャート図の各ブロック、ならびにブロック図および/またはフローチャート図のブロックの組合せは、指定された機能または動作を実行する専用ハードウェアベースのシステムによって、または専用ハードウェアとコンピュータ命令との組合せによって実施できることにも留意されたい。
【0042】
図2には、CPU、メモリ、有線および無線通信などを含むハウジング内に取り付けられたディスプレイ16(例えば、可視OLEDなど)、1つまたは複数のボタン22、圧力センサアレイ12を収容するリストバンド14、1つまたは複数の光学または他の非圧力センサ18、およびストラップ閉鎖、保持またはロック機構20を備える。リストバンドストラップはその上に埋め込まれた圧力センサを有し、センサアレイ12を少なくとも1つの橈骨動脈、尺骨動脈および上腕動脈に適用し、その上に中程度の圧力(すなわち、収縮期圧よりも有意に低いが、圧力波を感知するのに十分である)を加えながら、手首に対して閉じられるように構成される。
【0043】
図3Aには、血管、圧力センサ、および装置ハウジングの向きを示す、ユーザの手首の、全体として30で参照される、手が内側に向いている左手の手首の断面(すなわち、横断面)を示す図が示されている。ウェアラブルの主ハウジング42は、ストラップ14が手首の周りに配置された状態で、手首の頂部に配置される。この断面は、腕の橈骨40および尺骨38、橈骨34および尺骨36の動脈を示す。この例では、圧力センサアレイ12は、橈骨動脈34が位置する手首の領域に配置される。
【0044】
腕に配置され、ユーザの血圧を測定するように動作するように適合された、本発明の例示的な着用可能なデバイスを示す図が、図3Bに示される。代替の実施形態では、着用可能デバイスが肘の上または下においてユーザの腕に配置されるように構成される。ウェアラブル装置は、アームバンド33と、複数のセンサ素子37を含むセンサアレイ31と、電子機器、ディスプレイ、ボタン等を含むハウジング35とを備える。
【0045】
動作中、センサアレイ31は、アームバンドの底部に配置され、破線で示すように、上腕動脈39が橈骨動脈および尺骨動脈に分岐する前の、上腕動脈39の上に配置される。あるいはセンサアレイおよびアームバンドを、肘の下で腕に取り付けることもでき、橈骨動脈または尺骨動脈からの血圧を感知する。装置は、通信システムを備えてもよい。この場合、血圧データは、信号データを処理して血圧測定値を生成するように動作する外部ホスト装置に中継される。あるいは、装置は、センサ信号データ自体を処理し、連続的な血圧測定値を生成するように適合された、適切にプログラムされたプロセッサを備えてもよい。別の実施形態では装置が上述のような手首装着装置と組み合わせて動作するように構成されてもよく、それによって、アームバンド装置は手首装着装置と無線で通信する。例えば、未加工のセンサ信号データは、アームバンドデバイスから手首装着デバイスに無線で通信されてもよく、そこで、未加工のセンサ信号データは処理され、血圧測定値が手首装着デバイス上でユーザに表示される。
【0046】
圧力センサアレイは、多数の異なる構成を含むことができることに留意されたい。本発明は、多数の構成が想定され、任意の1つの構成に限定されない。ここで、いくつかの例示的な構成を提示する。
【0047】
本発明の例示的な血圧センサアレイの第1の実施形態を図4Aに示す。この例では、センサアレイ12が3つの圧力センサを含む。3つのセンサは、リストストラップ上に構成され、ユーザの手首に取り付けられると、それらはほぼ橈骨動脈上に配置される。装置は、3つのセンサすべてから同時に信号を受信するように構成される。これらの信号のうちの1つは、さらなる処理のために血圧波形として選択されてもよく、または、すべての信号の重み付けされた和から構成される複合信号が血圧波形を生成するために使用されてもよい。
【0048】
複数の圧力センサから複数の信号を取得することは、圧力センサアレイの正確な配置の問題を排除することに留意することが重要である。圧力センサのうちの少なくとも1つが、正しくまたは十分に正しく配置される限り、受信される信号は血圧波形から正しい血圧読み取り値を導出するのに十分であり得る。
【0049】
本発明の例示的な血圧センサアレイの第2の実施形態を図4Bに示す。この例では、リストバンド14上の圧力センサアレイ13が線形アレイに構成された複数のセンサ15を備える。装置は、すべてのセンサから同時に信号を受信するように構成される。これらの信号のうちの1つはさらなる処理のために血圧波形として選択されてもよく、または、すべての信号の重み付けされた和から構成される複合信号が血圧波形を生成するために使用されてもよい。リニアアレイに配置された複数の圧力センサから複数の信号を取得することは、圧力センサアレイの正確な配置の問題を排除する。圧力センサのうちの少なくとも1つが、正しくまたは十分に正しく配置される限り、受信される信号は血圧波形から正しい血圧読み取り値を導出するのに十分であり得る。センサの線形アレイは、図4Bに示されるように、リストストラップに対して垂直に構成されてもよく、またはリストストラップに対して任意の所望の角度で構成されてもよいことが理解される。
【0050】
本発明の例示的な血圧センサアレイの第3の実施形態を図4Cに示す。この例では、リストバンド14上の圧力センサアレイ17が2次元(2D)アレイに構成された複数のセンサ19を備える。装置は、すべてのセンサから同時に信号を受信するように構成される。これらの信号のうちの1つは、さらなる処理のために血圧波形として選択されてもよく、または、すべての信号の重み付けされた和から構成される複合信号が血圧波形を生成するために使用されてもよい。2Dアレイに配置された複数の圧力センサから複数の信号を取得することは、圧力センサアレイの正しい配置の問題を排除する。圧力センサのうちの少なくとも1つが、正しくまたは正しく十分に配置される限り、受信される信号は血圧波形から正しい血圧読み取り値を導出するのに十分であり得る。センサの2Dアレイは、図4Bに示されるように、リストストラップに対して垂直に構成されてもよく、またはリストストラップに対して任意の所望の角度で構成されてもよいことが理解される。
【0051】
図5は、複数の圧力センサの出力信号を表す複数の波形を示す図である。各センサは、ユーザの手首上で異なる位置にある。5つの波形、すなわち、波形150、152、154、156、158は、上述したようなセンサアレイに構成され、ユーザの手首上に配置された5つの異なる圧力センサからの出力信号を表す。x軸は時間を表し、y軸は、センサ出力信号の振幅に関連するmmHgを表す。
【0052】
予想されるように、いくつかの信号は、他の信号よりも高品質である。特に、波形152および156内の信号は、いずれの信号もほとんど反応せず、非常に弱く、それらが橈骨動脈からの圧力を感知するために適切でないことを示す。波形150および154内の信号はより強い信号を感知するが、それでもなおかなり弱く、それらがまた、橈骨動脈上の位置にないことを示す。しかしながら、波形158の信号は比較的強く、これが橈骨動脈上に良好に配置されていることを示し、後続の処理のための血圧波形として使用することができる。この例では5つの圧力センサ信号が示されているが、本発明の範囲から逸脱することなく、任意の数の2つ以上のセンサを使用することができることを理解されたい。
【0053】
別の実施形態では、アレイを構成する個々の圧力センサが、異なるタイプのセンサを含むことができる。例えば、センサの第1の部分は、典型的には低電力消費及び低精度を有する容量性圧力センサを含むことができる。センサの第2の部分は典型的には高い電力消費を有するが、より良好な精度を有する抵抗圧力センサを含むことができる。一実施形態では、1つまたは複数の抵抗圧力センサ(すなわち、比較的高精度のセンサ)から得られる信号を使用して、1つまたは複数の容量圧力センサ(すなわち、比較的低精度のセンサ)からの読取り値を較正し、それによって、著しく高い精度を有する血圧読取り値を得ることができる。
【0054】
一実施形態では、アレイ内の圧力センサのうちの1つからの信号が血圧測定値を導出するために使用される血圧波形として選択される。他のすべての選択されていないセンサからの信号は、無視されるか、または破棄される。センサ信号は例えば、SNR、RSSIなどの任意の所望の1つ以上の品質メトリックについて分析されてもよい。
【0055】
別の実施形態では、アレイ内の圧力センサのすべてまたは一部からの信号が重み付けスキームを使用して結合され、改善された信号対雑音比(SNR)を有する複合血圧波形を生成する。次いで、複合血圧波形を使用して、より正確な血圧読取り値を生成する。
【0056】
別の実施形態では、上述の2つの技法を組み合わせることができ、1つまたは複数のセンサ信号が任意の所望の品質メトリックに基づいて選択され、これらの信号が重み付けされ、結合されて、複合血圧波形が生成される。
【0057】
本発明に従って構成された着用可能な装置の一例を示すブロック図を、図6に示す。着用可能な装置70は、リストバンドセンサユニット72と、デジタルバス84によって互いに通信する制御ユニット74とを備えている。リストバンドセンサユニット72は、各々がアナログ-デジタル変換器80に結合された複数の圧力センサ1~N(78)を含む。ADCの出力はマルチプレクサ82に入力され、マルチプレクサ82はデジタルバス84に多重化された全ての入力信号を送信するように構成されている。一実施形態では、すべてのセンサ78から出力される信号が制御ユニット74に入力される。
【0058】
制御ユニット74は、プロセッサ86(例えば、CPU、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ等)、ディスプレイサブシステム88、メモリ102(例えば、揮発性、不揮発性、フラッシュ等)、無線および有線通信サブシステム100、および1つ以上の他の非圧力センサ104(例えば、光学、フォトプレチスモグラフ、温度等)を備える。制御ユニット74は、無線LAN、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)、USB(Universal Serial Bus)接続などの無線および/または有線通信チャネルを介してホストデバイス76と通信する。プロセッサ86は、デジタルバス84を介してリストバンドセンサユニットとデータを送受信するように構成される。表示サブシステムは、血圧測定値を表示するように構成される。
【0059】
本発明による複合血圧波形を生成するための例示的な回路を示すブロック図を、図7に示す。回路110は、適応重みアルゴリズムブロック118と、乗算器1~N(114)と、加算器116とを備えている。動作中、N個のスケーリングファクタが、N個の圧力センサから受信された血圧波形データサンプル112に適用される。血圧波形データは、乗算器114および適応重みアルゴリズムブロック118に入力される。合成血圧波形119は、適応重みアルゴリズムにも入力される。このアルゴリズムは入力データから、N個のスケールファクタ113(すなわち係数)α~αを生成するように動作し、これらのスケールファクタは、N個の乗算器114にそれぞれ適用される。乗算器によって生成された積115は加算器116を介して加算されて、合成血圧波形119を生成し、次いで、この合成血圧波形119は、さらに処理されて、血圧読み取り値を生成する。
【0060】
適応重み付けアルゴリズム118は、N個の血圧波形信号ならびに複合出力波形119を受け取り、複合血圧波形119上のSNRが最大になるように係数α~αを推定するように構成される。
【0061】
例示的な実施形態では、重みは以下の式に従って、最小二乗最大比合成(MRC)法に基づいて、ブロック147を介して計算される。
【0062】
【数1】
【0063】
一実施形態では、信号の振幅を、二乗平均平方根(RMS)推定や分散などの任意の適切な周知の技法を使用して推定することができる。
【0064】
本発明による血圧波形結合(または較正)の例示的な方法を示すフローチャートが図8に示されていることに留意されたい。この例示的な方法では、N個のセンサの一部Pがより高い精度を有し(例えば、抵抗MEMS型圧力センサ)、N個のセンサの一部Rはより低い精度を有し(例えば、容量性MEMS型圧力センサ)、ここで、R+P=Nである。センサ1~センサPはより高い精度のセンサであり、センサP+1~センサNは、より低い精度のセンサである。
【0065】
図8を参照すると、まず、複数のN個の圧力センサからの信号が取得される(ステップ130)。次に、R個の圧力センサP+1~センサNからの血圧波形に対するスケーリングファクタ較正が推定される(ステップ132)。R個の圧力センサP+1~センサNからの血圧波形は、ステップ132で得られた推定スケーリングファクタによって乗算される(ステップ134)。次に、センサ1~センサNから得られたスケーリングされた血圧波形が組み合わされ(ステップ136)、複合血圧波形がさらなる処理のために出力され、そこから血圧読取り値が導出される(ステップ138)。この方法によれば、より高いSNRを有する合成血圧波形を得られる。
【0066】
本発明による複数の圧力センサの1つから血圧波形を選択するための例示的な回路を示すブロック図を、図9に示す。全体を120で示す回路は、複数のN個の圧力センサ入力モジュール122と、マルチプレクサ121と、電力管理ユニット127と、プロセッサブロック129とを備えている。各圧力センサ入力モジュール122は、圧力センサ124と、任意選択のフィルタ回路126と、アナログ-デジタル変換器(ADC)128とを含む。プロセッサ129は、特に、走査シーケンサ143および品質メトリック計算ブロック147を備える。
【0067】
上述のように、一実施形態では、着用可能デバイスが単一の圧力センサによって出力される信号を選択し、他のすべてのセンサからの信号を無視することによって、1つまたは複数の品質メトリックを最大化する。これは、プロセッサ86(図6)を介してソフトウェアを使用して達成することができ、それによって、すべてのセンサからの信号波形が受信され、1つを除くすべてが破棄される。
【0068】
この実施形態120では、1つの圧力センサ入力モジュールを除くすべての圧力センサ入力モジュールへの電力を無効にすることによって、電力消費が低減される。動作中、N個のセンサ入力モジュールすべてからの信号がプロセッサに入力され、ブロック147を介して1つまたは複数の品質メトリックが計算される。走査シーケンサは、N個のセンサ入力モジュールからの信号データの収集を制御する。計算されたメトリックに従って、先頭メトリックに基づいてセンサ入力モジュールの1つが選択される。
【0069】
センサ入力モジュールが選択されると、N-1個の選択されていないセンサ入力モジュールへの電力は、電力管理ブロック127によって生成される電力イネーブル信号145を介して無効化される。プロセッサはまた、選択されたセンサ入力モジュールによって生成された信号を渡すために、マルチプレクサ121への適切な選択コマンド141を生成する。次いで、マルチプレクサから出力された血圧波形125は、血圧読取り値を生成するためにさらに処理される。一実施形態では、N個の圧力センサすべてからのデータを再評価し(すなわち、再スキャンし)、新しいセンサを選択することができる。再評価は定期的に(例えば10秒毎に)、または、センサデータから計算されたいずれかのメトリックが閾値を下回って(例えば、センサ出力が所定のSNRまたはRSSIを下回ったときに)走査が開始される動的ベースで、実行することができる。
【0070】
プロセッサブロック147によって計算された1つまたは複数の品質メトリックは、任意の所望のメトリックを含むことができることに留意されたい。メトリックの例には、SNRおよびRSSIが含まれる。しかし、本発明はこれらのメトリックに限定されないことが理解される。
【0071】
本発明による血圧波形選択の例示的な方法を示すフローチャートを図10に示す。最初に、複数のN個の圧力センサからの信号が取得され、プロセッサに入力される(ステップ140)。1つ以上の品質メトリック(例えば、SNR、RSSI等)が計算される(ステップ142)。メトリック計算が比較され、首位メトリックが決定される(ステップ144)。次に、首位の品質メトリックに対応するセンサ信号が選択される(ステップ146)。選択された血圧波形は、血圧判定処理に出力される(ステップ148)。任意選択で、電力消費を低減するために、選択されていないセンサに対応するセンサ入力モジュールへの電力は無効にされる。上述したように、N個の圧力センサすべてからのデータを再走査し、新しいセンサを選択することができる。
【0072】
当業者であれば、論理ブロックと回路ブロックとの間の境界は単に例示的なものであり、代替実施形態は、論理ブロックまたは回路要素を併合するか、または様々な論理ブロックまたは回路要素に機能を分散できることを理解するであろう。したがって、本明細書に示されるアーキテクチャは単に例示的なものであり、実際には、同じ機能を達成する多くの他のアーキテクチャを実装することができることを理解されたい。
【0073】
同じ機能性を達成するための構成要素の任意の配置は所望の機能が達成されるように、効果的に「関連付けられる」。したがって、特定の機能を達成するために本明細書で組み合わされる任意の2つのコンポーネントは、アーキテクチャまたは中間コンポーネントにかかわらず、所望の機能が達成されるように、互いに「関連付けられる」と見なされ得る。同様に、そのように関連する任意の2つの構成要素は所望の機能を達成するために、互いに「動作可能に接続される」、または「動作可能に結合される」と見なすこともできる。
【0074】
さらに、当業者は、上述の動作間の境界が単に例示的なものであることを認識するであろう。複数の演算は、単一の演算に組み合わされてもよい。単一のオペレーションは追加のオペレーションに分散されてもよく、オペレーションは少なくとも部分的に時間的に重複して実行されてもよい。さらに、代替の実施形態は特定の動作の複数のインスタンスを含むことができ、動作の順序は、様々な他の実施形態で変更することができる。
【0075】
本明細書で使用される用語は特定の実施形態を説明するためだけのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は文脈が明確にそうでないことを示さない限り、複数形も含むことが意図される。さらに、「comprises」および/または「comprising」という用語は本明細書で使用される場合、述べられた特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を指定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除しないことが理解されるであろう。
【0076】
特許請求の範囲において、括弧内に置かれたいずれの参照符号も、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。特許請求の範囲における「少なくとも1つ」および「1つ以上」などの導入語句の使用は、不定冠詞「a」または「an」による別の請求項要素の導入が同じ請求項が「1つ以上」または「少なくとも1つ」の導入語句および「a」または「an」などの不定冠詞を含む場合であっても、そのような導入された請求項要素を含む任意の特定の請求項を、そのような要素のみを含む発明に限定することを意味するものと理解されるべきでない。定冠詞についても同様である。特に断らない限り、「第1」、「第2」などの用語は、そのような用語が記述する要素を任意に区別するために使用される。従って、これらの語は必ずしも要素間の時間的又は他の優先順位を示すものではない。特定の手段が相互に異なる特許請求の範囲に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用できないことを示すものではない。
【0077】
以下の特許請求の範囲におけるすべての機能的手段または工程要素の対応する構造、材料、動作、および均等物は、具体的に記載された他の請求要素と組合せて機能を実行するための任意の構造、材料、または動作を含むことが意図される。本発明の説明は、例示および説明の目的のために提示されたものであり、網羅的であること、または開示された形態の本発明に限定されることを意図するものではない。当業者には多数の修正および変更が容易に想起されるので、本発明は、本明細書に記載される限定された数の実施形態に限定されないことが意図される。したがって、すべての適切な変形、修正、および均等物が、本発明の精神および範囲内に入るように頼ることができることが理解されるであろう。実施形態は本発明の原理および実際の用途を最もよく説明するために、また、他の当業者が企図する特定の用途に適した様々な修正を伴う様々な実施形態について本発明を理解することを可能にするために、選択され、説明された。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10