(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】血友病を治療するためのプロテインSに対する特異的siRNAの使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20221114BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20221114BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20221114BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
C12N15/113 Z
A61K31/713 ZNA
A61P7/04
A61K48/00
(21)【出願番号】P 2020524136
(86)(22)【出願日】2017-11-02
(86)【国際出願番号】 EP2017078107
(87)【国際公開番号】W WO2019086117
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2020-09-14
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2017/077986
(32)【優先日】2017-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510239897
【氏名又は名称】ウニベルジテート ベルン
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】プリンス エル アドナニ、ラジャ
(72)【発明者】
【氏名】アンジェリッロ-シェラー、アンネ
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】Bologna, L. et al.,"Blocking Protein S Improves Hemostasis in Hemophilia a and B",Blood, [online],2016年,Vol. 128; Issue 22,p. 79,[retrieved on 2021.09.02], Internet, <URL: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0006497119300801>
【文献】Database: GenBank, [online], Accession number: NM_000313.3, Homo sapiens protein S (PROS1), transcript variant 2, mRNA, 03-OCT-2017 uploaded, Internet, [retrieved on 2022.04.07],<URL: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/223671900?sat=46&satkey=117780271>
【文献】Che Mat, M. F. et al.,"Silencing of PROS1 induces apoptosis and inhibits migration and invasion of glioblastoma multiforme cells",Int. J. Oncol.,2016年,Vol. 49,pp. 2359-2366
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
A61K 31/33-33/44
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血友病を予防または治療するための剤形であって、前記剤形は、プロテインSに対するsiRNAを含む分子を含み、
前記siRNAは、配列番号028、配列番号029、配列番号030、配列番号049、および配列番号056からなる群から選択される少なくとも1つの配列からなる配列、により特徴付けられる、血友病を予防または治療するための剤形。
【請求項2】
血友病を予防または治療するための剤形であって、前記剤形は、プロテインSに対するsiRNAを含む分子を含み、
前記siRNAは、配列番号028および配列番号030からなる群から選択される少なくとも1つの配列からなる配列、により特徴付けられる、血友病を予防または治療するための剤形。
【請求項3】
血友病を予防または治療するための剤形であって、前記剤形は、プロテインSに対するsiRNAを含む分子を含み、
前記siRNAは、配列番号028および配列番号030からなる群から選択される少なくとも1つの配列を含む配列
であって、19~24個のヌクレオチドを含み、プロテインSの発現を阻害する活性を備える配列、により特徴付けられる、血友病を予防または治療するための剤形。
【請求項4】
血友病Aを予防または治療するための、請求項1~3のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項5】
血友病Bを予防または治療するための、請求項1~4のいずれか一項に記載の剤形。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテインSに対して向けられるsiRNAを使用した血友病の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
血友病A(HA)および血友病B(HB)は、遺伝性X連鎖障害である。それらは、内因性凝固経路の必須成分であるコード化タンパク質の欠損に結び付く、それぞれ第VIII因子(FVIII)(F8)または第IX因子(FIX)遺伝子(F9)の突然変異により引き起こされる(
図1A)。
【0003】
重症血友病の患者は、関節血症などの筋骨格系内の特発性出血を患うことが多い。これは、治療しないでおくと若年年齢で身体障害をもたらす場合がある。
【0004】
現行の血友病治療は、因子補充療法を含む。この療法は、生活の質(QoL)を向上させるが、幾つかの欠点が残る。因子は、静脈内投与されるが、半減期が短いため反復して注入されなければならならず、これは、患者にとって非常に苦痛であり、感染および静脈損傷のリスクがある処置である。より重要なことには、因子補充療法下の患者は、阻害性同種抗体を発生させる場合がある。阻害物質は、補充療法の効果をなくし、安全で有効な標準治療への患者アクセスを制限し、患者の罹患および死亡リスクを増加させ易い。
【0005】
新しい療法は、予防的注入の頻度を減少させ、したがって療法への順守およびQoLを両方とも向上させることが可能な製品の開発に焦点を当てている。持続的なFVIIIおよびFIXの他に、新規手法は、血友病の患者における凝固のリバランス戦略として、内因性凝固因子の産生に必要な遺伝子の補充、欠失因子の凝固機能を模倣する二重特異性抗体技術、および組織因子経路阻害物質(TFPI)または抗トロンビンなどの凝固阻害物質の標的化を含む。最近、活性化プロテインC(APC)特異的セルピンは、in vitroでトロンビン生成をレスキューし、血友病マウスモデルにおいて止血を回復させることが示された。
【0006】
上記で言及した技術水準に基づき、本発明の目的は、血友病の新規治療を提供するための手段および方法を提供することである。この目的は、本明細書の請求項により達成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の第1の態様は、血友病の治療法に使用するためのプロテインSに対するsiRNAを提供する。
【0008】
用語「血友病」は、本明細書の状況では、血餅を作る身体の能力が損なわれている状態に関する。血友病の遺伝的形態としては、遺伝的障害血友病A、血友病B、および血友病Cが挙げられる。
【0009】
プロテインSは、本明細書の状況では、遺伝子PROS1(NCBI Gene ID:5627)によりコードされるヒト「ビタミンK依存性プロテインS」(UniProt ID P07225)に関する。
【0010】
ヒトプロテインSには、2つの転写バリアントが存在する。転写バリアント2は、転写バリアント1と比較して、5’コード領域の選択的インフレームエクソンを欠如する。コード化アイソフォーム2は、アイソフォーム1よりも短い。転写バリアント2は配列番号001により特徴付けられる。転写バリアント1は配列番号002により特徴付けられる。
【0011】
用語「siRNA(低分子/短鎖干渉RNA)」は、本明細書の状況では、RNA干渉と呼ばれるプロセスにおいて、siRNAの配列に相補的な核酸配列を含む遺伝子の発現に干渉する(言い換えれば、発現を防止する)ことが可能なRNA分子に関する。用語「siRNA」は、一本鎖siRNAおよび二本鎖siRNAを両方とも包含することが意図されている。SiRNAは、通常は、17~24bpの長さであることにより特徴付けられる。二本鎖siRNAは、より長鎖の二本鎖RNA分子(dsRNA)に由来する。長鎖dsRNAは、エンド-リボヌクレアーゼ(ダイサーと呼ばれる)により切断されて、二本鎖siRNAを形成する。二本鎖siRNAは、核タンパク質複合体(RISCと呼ばれる)で解かれて、一本鎖siRNAが形成される。RNA干渉は、siRNA分子が、相補的配列を有するmRNA分子に結合することにより作用して、mRNA分子の分解をもたらすことが多い。RNA干渉は、siRNA分子が、細胞の核内のmRNA前躯体(未成熟の未スプライスmRNA)のイントロン配列に結合し、mRNA前躯体の分解をもたらすことによっても可能である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、プロテインS(PS)の標的化が、凝固のリバランスにより血友病において止血を促進することができるか否かを調査した(
図1B)。PROS1遺伝子によりコードされるPSは、第Va因子(FVa)およびFVIIIaの不活化におけるAPCの、およびFXaの阻害におけるTFPIのコファクターとして作用する。この二重の役割により、PSは、トロンビン生成の重要な制御因子となる。
【0013】
ある実施形態では、siRNAは、17~24個のヌクレオチドを含む。
【0014】
ある実施形態では、siRNAは、18~22個のヌクレオチドを含む。
【0015】
ある実施形態では、siRNAは、19個のヌクレオチドを含む。
【0016】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0017】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号002に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0018】
ある実施形態では、配列番号003、配列番号004、配列番号005、配列番号006、配列番号007、配列番号008、配列番号009、配列番号010、配列番号011、配列番号012、配列番号013、配列番号014、配列番号015、配列番号016、配列番号017、および配列番号018を含む群から選択される配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0019】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号003に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0020】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号004に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0021】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号005に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0022】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号006に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0023】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号007に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0024】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号008に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0025】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号009に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0026】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号010に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0027】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号011に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0028】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号012に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0029】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号013に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0030】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号014に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0031】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号015に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0032】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号016に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0033】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号017に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0034】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号018に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0035】
ある実施形態では、siRNAは、上記で画成される配列の任意の2つの連続配列を並置することにより形成される配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。非限定的な例では、siRNAは、配列番号014および配列番号015を並置することにより形成される配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0036】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号014(エクソン12)、配列番号011(エクソン9)、配列番号006(エクソン4)、配列番号012(エクソン10)、および配列番号013(エクソン11)で構成される群から選択される配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0037】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド1~100、101~200、201~300、301~400、301~400、401~500、501~600、601~700、701~800、801~900、901~1000、1001~1100、1101~1200、1201~1300、1301~1400、1501~1600、1701~1800、1801~1900、1901~2000、2001~2100、2101~2200、2201~2300、2301~2400、2501~2600、2701~2800、2801~2900、2901~3000、3001~3100、3101~3200、3201~3300、3301~3400、3401~3500、または3501~3580により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0038】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド1~100により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0039】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド101~200により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0040】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド201~300により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0041】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド301~400により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0042】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド401~500により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0043】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド501~600により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0044】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド601~700により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0045】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド701~800により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0046】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド801~900により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0047】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド901~1000により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0048】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド1001~1100により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0049】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド1100~1200により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0050】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド1201~1300により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0051】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド1301~1400により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0052】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド1401~1500により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0053】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド1501~1600により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0054】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド1601~1700により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0055】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド1701~1800により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0056】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド1801~1900により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0057】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド1901~2000により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0058】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド2001~2100により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0059】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド2100~2200により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0060】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド2201~2300により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0061】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド2301~2400により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0062】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド2401~2500により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0063】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド2501~2600により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0064】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド2601~2700により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0065】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド2701~2800により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0066】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド2801~2900により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0067】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド2901~3000により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0068】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド3001~3100により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0069】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド3100~3200により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0070】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド3201~3300により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0071】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド3301~3400により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0072】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド3401~3500により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0073】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号001のヌクレオチド3501~3580により特徴付けられる配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0074】
ある実施形態では、siRNAは、上記で画成される配列の任意の2つの連続配列を並置することにより形成される配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。非限定的な例では、siRNAは、配列番号001の1501~1600および配列番号001の1501~1600を並置することにより形成される配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0075】
ある実施形態では、siRNAは、プロテインSのイントロン配列に対して向けられる。
【0076】
ある実施形態では、配列番号014(エクソン12)、配列番号011(エクソン9)、配列番号006(エクソン4)、配列番号012(エクソン10)、および配列番号013(エクソン11)で構成される群から選択される配列に逆相補的な配列により特徴付けられる。
【0077】
ある実施形態では、siRNAは、配列番号019(siRNA_1)、配列番号020(siRNA_2)、配列番号021(siRNA_3)、配列番号022(siRNA_4)、配列番号023(siRNA_5)、配列番号024(siRNA_6)、配列番号025(siRNA_7)、配列番号026(siRNA_8)、配列番号027(siRNA_9)、配列番号028(siRNA_10)、配列番号029(siRNA_11)、配列番号030(siRNA_12)、配列番号031(siRNA_13)、配列番号032(siRNA_14)、配列番号033(siRNA_15)、配列番号034(siRNA_16)、配列番号035(siRNA_17)、配列番号036(siRNA_18)、配列番号037(siRNA_19)、配列番号038(siRNA_20)、配列番号039(siRNA_21)、配列番号040(siRNA_22)、配列番号041(siRNA_23)、配列番号042(siRNA_24)、配列番号043(siRNA_25)、配列番号044(siRNA_26)、配列番号045(siRNA_27)、配列番号046(siRNA_28)、配列番号047(siRNA_29)、配列番号048(siRNA_30)、配列番号049(siRNA_31)、配列番号050(siRNA_32)、配列番号051(siRNA_33)、配列番号052(siRNA_34)、配列番号053(siRNA_35)、配列番号054(siRNA_36)、配列番号055(siRNA_37)、配列番号056(siRNA_38)、配列番号057(siRNA_39)、配列番号058(siRNA_40)、配列番号059(siRNA_41)、配列番号060(siRNA_42)、配列番号061(siRNA_43)、配列番号062(siRNA_44)、配列番号063(siRNA_45)、配列番号064(siRNA_46)、配列番号065(siRNA_47)、配列番号066(siRNA_48)、配列番号067(siRNA_49)、および配列番号068(siRNA_50)を含む群から選択される配列を含むかまたはからなる配列により特徴付けられる。
【0078】
ある実施形態では、siRNAは、血友病Aの治療法で使用するために提供される。
【0079】
ある実施形態では、siRNAは、血友病Bの治療法で使用するために提供される。
【0080】
同様に、血友病を治療するための方法を必要とする患者の血友病を治療するための方法であって、本発明によるsiRNAを含む分子を患者に投与することを含む方法は、本発明の範囲内にある。
【0081】
同様に、血友病を予防または治療するための剤形であって、本発明によるsiRNAを含む分子を含む剤形が提供される。
【0082】
本明細書の状況では、表現「本発明によるsiRNAを含む分子」は、本発明によるsiRNA、および本発明によるsiRNAがRNA干渉経路により哺乳動物細胞内でそれから生成され得る分子、特にdsRNA分子を意味する。
【0083】
「ヌクレオチド」は、本発明の状況では、核酸または核酸類似体構造単位、塩基対合に基づいてRNAオリゴマーとの選択的ハイブリッドを形成することが可能なオリゴマーである。用語「ヌクレオチド」は、この状況では、古典的リボヌクレオチド構造単位であるアデノシン、グアノシン、ウリジン(およびリボシルチミン)、シチジン、古典的デオキシリボヌクレオチドであるデオキシアデノシン、デオキシグアノシン、チミジン、デオキシウリジン、およびデオキシシチジンを含む。それは、ホスホチオエート(phosphotioate)、2’O-メチルホスホチオエート、ペプチド核酸(PNA;グリシンのアルファ炭素に付着されている核酸塩基と、ペプチド連結により連結されているN-(2-アミノエチル)-グリシン単位)、またはロックド核酸(LNA;2’O、4’Cメチレン架橋RNA構造単位)などの核酸の類似体をさらに含む。ハイブリダイズ配列は、上記のヌクレオチドのいずれかまたはそれらの混合物で構成されてもよい。
【0084】
ある実施形態では、本発明によるsiRNAのハイブリダイズ配列は、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、または27個のヌクレオチドを含む。
【0085】
ある実施形態では、ハイブリダイズ配列は、配列番号001または配列番号002の逆相補的配列と少なくとも95%同一であり、より好ましくは96%、97%、98%、99%、または100%同一である。ある実施形態では、ハイブリダイズ配列は、デオキシヌクレオチド、ホスホチオエートデオキシヌクレオチド、LNAおよび/もしくはPNAヌクレオチド、またはそれらの混合物を含む。
【0086】
本明細書の状況では、「配列同一性」および「配列同一性のパーセンテージ」という用語は、2つのアラインされた配列を比較することにより決定される値を指す。比較のために配列をアラインメントするための方法は、当技術分野で周知である。比較のための配列アラインメントは、SmithおよびWaterman、Adv.Appl.Math.2巻:482頁(1981年)の局所相同性アルゴリズムにより、NeedlemanおよびWunsch、J.Mol.Biol.48巻:443頁(1970年)のグローバルアラインメントアルゴリズムにより、PearsonおよびLipman、Proc.Nat.Acad.Sci.85巻:2444頁(1988年)の類似性探索法により、またはこれらに限定されないが、CLUSTAL、GAP、BESTFIT、BLAST、FASTA、およびTFASTAを含む、こうしたアルゴリズムのコンピューター実装により実施することができる。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、例えば、国立バイオテクノロジー情報センター(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/)により公的に利用可能である。
【0087】
アミノ酸配列比較の1つの例は、初期設定:閾値期待値:10;ワードサイズ:3;クエリー範囲の最大一致:0;マトリックス:BLOSUM62;ギャップコスト:イグジスタンス11、エクステンション1;組成調整:条件付き組成スコアマトリックス調整を使用したBLASTPアルゴリズムである。核酸配列比較の1つのそのような例は、初期設定:閾値期待値:10;ワードサイズ:28;クエリー範囲の最大一致:0;マッチ/ミスマッチスコア:1.~2;ギャップコスト:線形を使用したBLASTNアルゴリズムである。別様の記載がない限り、本明細書中で提供される配列同一性値は、上記で特定されている初期設定パラメーターをそれぞれタンパク質および核酸の比較に使用したBLASTプログラムパッケージ(Altschulら、J.Mol.Biol.、215巻:403~410頁(1990年))を使用して得られる値を指す。
【0088】
一部の実施形態では、ハイブリダイズ配列は、リボヌクレオチド、ホスホチオエート、および/または2’-O-メチル-修飾ホスホチオエートリボヌクレオチドを含む。
【0089】
一部の実施形態では、ハイブリダイズ配列は、デオキシヌクレオチド、ホスホチオエートデオキシヌクレオチド、ホスホチオエートリボヌクレオチド、および/または2’-O-メチル-修飾ホスホチオエートリボヌクレオチドを含む。
【0090】
単一の分離可能な特徴の選択肢が「実施形態」として本明細書に提示されている場合はいずれも、そのような選択肢を自由に組み合わせて、本明細書で開示されている本発明の個別の実施形態を形成することができることが理解されるべきである。
【0091】
本発明は、以下の例および図面により更に説明される。さらなる実施形態および利点をそれらから導き出すことができる。こうした例は、本発明を説明するためのものであり、その範囲を限定しないことが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【
図1(a)】X-ase活性の喪失は、Pros1
-/-マウスをレスキューすることを示す図である。A、血友病状態におけるトロンビン生成の概略モデル。主な凝固複合体の1つは、内因性テナーゼ(X-ase)複合体である。X-aseは、プロテアーゼとしての活性化FIX(FIXa)、コファクターとしての活性化FVIII(FVIIIa)、および基質としての第X因子(FX)を含む。傷害部位での組織因子(TF)の生成または発露は、外因性経路を介した凝固開始の初期事象であるが、in vivoでは利用可能な活性TFの量が限定的であり、活性化FX(FXa)と複合体化するとTF/活性化第VII因子(FVIIa)複合体を阻害するTFPIが存在するため、内因性経路X-aseが重要である。したがって、持続的なトロンビン生成は、FIXおよびFVIIIの両方の活性化に依存する。FVIIIは、FXaおよびトロンビンの両方により、FVIIaおよび活性化第XI因子(FXIa)の両方により活性化され、後者の因子はトロンビンにより以前に活性化されているため、このプロセスは増幅される。結果的に、FXaおよびトロンビンが形成されると共に、FVIIIおよびFIX活性化の漸増が生じる。
【
図1(b)】B、Pros1を標的とすることにより、重度血友病AおよびBでのトロンビン生成を増強するための実験手法。
【
図1(c)】C~D、Pros1欠損を有するおよび有しない血友病成体マウスのDIC血液学的パラメーターのマウスモデル検証および評価:F8
-/-Pros1
+/+、F8
-/-Pros1
+/-、およびF8
-/-Pros1
-/-(C)、ならびにF9
-/-Pros1
+/+、F9
-/-Pros1
+/-、およびF9
-/-Pros1
-/-成体マウス(D)(n=5/群)におけるPS(抗原性)、FVIII(凝固活性)、またはFIX(凝固活性)の血漿レベル;血友病A群では血小板(n=7/群)、フィブリノゲン(n=8/群)、PT(n=6/群)、およびTAT(n=6/群)(c);ならびに血友病B群では血小板(n=5/群)、フィブリノゲン(n=4/群)、PT(n=4/群)、およびTAT(n=4/群)(D)。
【
図1(d)】C~D、Pros1欠損を有するおよび有しない血友病成体マウスのDIC血液学的パラメーターのマウスモデル検証および評価:F8
-/-Pros1
+/+、F8
-/-Pros1
+/-、およびF8
-/-Pros1
-/-(C)、ならびにF9
-/-Pros1
+/+、F9
-/-Pros1
+/-、およびF9
-/-Pros1
-/-成体マウス(D)(n=5/群)におけるPS(抗原性)、FVIII(凝固活性)、またはFIX(凝固活性)の血漿レベル;血友病A群では血小板(n=7/群)、フィブリノゲン(n=8/群)、PT(n=6/群)、およびTAT(n=6/群)(c);ならびに血友病B群では血小板(n=5/群)、フィブリノゲン(n=4/群)、PT(n=4/群)、およびTAT(n=4/群)(D)。
【
図1(e)】E~F、2U/gの組換えFVIII(Advate(登録商標))注入剤の単回静脈内注射の24時間後のF8
-/-Pros1
-/-マウスに由来する肺の微視的画像(E)、および肺切片におけるフィブリン塊の対応する微視的評価(F)。
【
図1(f)】G、F8
-/-Pros1
+/+およびF8
-/-Pros1
-/-における組換えFVIII(Advate(登録商標))投与:F8
-/-Pros1
-/-に0.3U/gのAdvate(登録商標)i.v.を5回注射した24時間後のフィブリノゲンおよびTATの血漿レベル(注射時点:カテーテル挿入の1時間前、ならびにカテーテル挿入の1時間、4時間、8時間、および16時間後)(n=3)(G、白色柱および黒色柱)および単回i.v.注射24時間後(n=3)(G、斜線柱)、ならびにAdvate(登録商標)の0.3U/g反復i.v.注射の24時間後の(H)および0.3U/g Advate(登録商標)i.v.の単回i.v.後(i)のF8
-/-Pros1
-/-の肺切片および肝臓切片におけるフィブリン塊の検出を可能にする代表的な免疫組織化学。データはすべて、平均±s.e.m.;ns、有意ではない;
*、P<0.05
**;P<0.005として表されている。
【
図1(g)】G、F8
-/-Pros1
+/+およびF8
-/-Pros1
-/-における組換えFVIII(Advate(登録商標))投与:F8
-/-Pros1
-/-に0.3U/gのAdvate(登録商標)i.v.を5回注射した24時間後のフィブリノゲンおよびTATの血漿レベル(注射時点:カテーテル挿入の1時間前、ならびにカテーテル挿入の1時間、4時間、8時間、および16時間後)(n=3)(G、白色柱および黒色柱)および単回i.v.注射24時間後(n=3)(G、斜線柱)、ならびにAdvate(登録商標)の0.3U/g反復i.v.注射の24時間後の(H)および0.3U/g Advate(登録商標)i.v.の単回i.v.後(i)のF8
-/-Pros1
-/-の肺切片および肝臓切片におけるフィブリン塊の検出を可能にする代表的な免疫組織化学。データはすべて、平均±s.e.m.;ns、有意ではない;
*、P<0.05
**;P<0.005として表されている。
【
図2(a)】血栓症のマウスモデルを示す図である。A~C、F8
+/+Pros1
+/+、F8
-/-Pros1
+/+、F8
-/-Pros1
+/-、およびF8
-/-Pros1
-/-マウスのTF誘導性静脈血栓塞栓症(n=10/遺伝子型)。麻酔したマウスに、異なる用量の組換えTF(イノビン)を下大静脈から静脈内注射した:Aでは1/2希釈(約4.3nM TF)およびB~Cでは1/4希釈(約2.1nM TF)。(A)では、F8
+/+Pros1
+/+マウスの1つの群は、低分子量ヘパリン(エノキサパリン 60μg/g s.c.)の注射を受けた。少なくとも2分続いた呼吸停止が発症するまでの時間を記録した。実験は20分で中止した。カプラン-マイヤー生存曲線(A~B)。C、呼吸停止発症の2分後にまたは20分間の観察期間の完了時に肺を切除し、フィブリン塊を調査した(不溶性フィブリンの免疫染色、mAbクローン102-10)。
【
図2(b)】血栓症のマウスモデルを示す図である。A~C、F8
+/+Pros1
+/+、F8
-/-Pros1
+/+、F8
-/-Pros1
+/-、およびF8
-/-Pros1
-/-マウスのTF誘導性静脈血栓塞栓症(n=10/遺伝子型)。麻酔したマウスに、異なる用量の組換えTF(イノビン)を下大静脈から静脈内注射した:Aでは1/2希釈(約4.3nM TF)およびB~Cでは1/4希釈(約2.1nM TF)。(A)では、F8
+/+Pros1
+/+マウスの1つの群は、低分子量ヘパリン(エノキサパリン 60μg/g s.c.)の注射を受けた。少なくとも2分続いた呼吸停止が発症するまでの時間を記録した。実験は20分で中止した。カプラン-マイヤー生存曲線(A~B)。C、呼吸停止発症の2分後にまたは20分間の観察期間の完了時に肺を切除し、フィブリン塊を調査した(不溶性フィブリンの免疫染色、mAbクローン102-10)。
【
図2(c)】血栓症のマウスモデルを示す図である。A~C、F8
+/+Pros1
+/+、F8
-/-Pros1
+/+、F8
-/-Pros1
+/-、およびF8
-/-Pros1
-/-マウスのTF誘導性静脈血栓塞栓症(n=10/遺伝子型)。麻酔したマウスに、異なる用量の組換えTF(イノビン)を下大静脈から静脈内注射した:Aでは1/2希釈(約4.3nM TF)およびB~Cでは1/4希釈(約2.1nM TF)。(A)では、F8
+/+Pros1
+/+マウスの1つの群は、低分子量ヘパリン(エノキサパリン 60μg/g s.c.)の注射を受けた。少なくとも2分続いた呼吸停止が発症するまでの時間を記録した。実験は20分で中止した。カプラン-マイヤー生存曲線(A~B)。C、呼吸停止発症の2分後にまたは20分間の観察期間の完了時に肺を切除し、フィブリン塊を調査した(不溶性フィブリンの免疫染色、mAbクローン102-10)。
【
図2(d)】D、F8
+/+Pros1
+/+、F8
-/-Pros1
+/+、およびF8
-/-Pros1
-/-マウスにおける、生体顕微鏡法により記録されたFeCl
3傷害性腸間膜動脈の血栓形成、代表的な実験(n=3/遺伝子型)。D、F8
+/+Pros1
+/+、F8
-/-Pros1
+/+、およびF8
-/-Pros1
-/-マウスにおける、生体顕微鏡法により記録されたFeCl
3傷害性腸間膜動脈の血栓形成、代表的な実験(n=3/遺伝子型)。
【
図3】尾部出血モデルを示す図である。30分間(A)および10分間(B)の2mm(A)および4mm(B)尾部離断後に、血液を新しい生理食塩水のチューブに収集した;その後、合計血液喪失(μl)を測定した。F8
+/-Pros1
+/+およびF8
+/+Pros1
+/+マウス(白色柱)は、対照としての役目を果たした(Aでは全群がn=5、Aでは全群がn=6)。C、抗ヒトPS抗体は、4mm離断後に尾部出血を変更した。
【
図4(a)】急性関節血症モデルを示す図である。A、F8
-/-Pros1
+/+、F8
-/-Pros1
+/-、F8
-/-Pros1
-/-、およびF8
+/+Pros1
+/+マウスにおける、傷害の72時間後および傷害前の膝直径間の差異。
【
図4(b)】B、F8
+/+Pros1
+/+、F8
-/-Pros1
+/+、およびF8
-/-Pros1
-/-マウスにおける、72時間後の代表的な非傷害肢および傷害肢の膝関節内腔の微視的評価(不溶性フィブリンのマッソン3色染色および免疫染色)。
【
図4(c)】C、特異的siRNAを使用したin vivo mPSサイレンシング:mPS siRNAまたは対照siRNAの単回i.p.注入で処置されたF8
-/-Pros
1+/-およびF8
-/-Pros1
+/+マウスにおける、傷害72時間後の関節直径の評価。D、mPS siRNAまたはCtrl siRNAで以前に処置されたF8
-/-Pros1
+/+マウスにおける、72時間後の代表的な傷害肢の膝関節内腔の微視的評価(マッソン3色染色)。測定は、平均±s.e.mとして示されている。
*、P<0.05;
**、P<0.005;
***、P<0.0005;
****、P<0.0001。
【
図5(a)】PSおよびTFPIは両方ともマウス滑膜で発現されることを示す図である。A、Ctrl-siRNAまたはmPS-siRNAで以前に処置されたF8
-/-Pros1
+/+マウスに由来する傷害膝の膝関節内腔におけるPSおよびTFPIの免疫染色。矢印頭は滑膜組織を指し、矢印は血管構造を指す。すべてPSおよびTFPIの両方に陽性。上段の図のボックス(縮尺バー:200μm)は、下段パネルで拡大されている領域を示す(縮尺バー:50μm)。B、F8
-/-Pros1
+/+およびF8
-/-Pros1
-/-マウスに由来する非傷害膝の膝関節内腔におけるTFPIの免疫染色。
【
図5(b)】C~E、抗PS抗体(c)および抗TFPI抗体(d)を使用した、一次マウス線維芽細胞様滑膜細胞(FLS)培養に由来する順化培地のウエスタンブロット分析。無血小板血漿(PFP)、血小板に由来するタンパク質ライセート(PLT)、マウスPS(mPS)を陽性対照として使用した(c)。脱グリコシル化TFPIおよび完全グリコシル化TFPIの分子量を比較することにより決定したTFPIアイソフォーム発現。マウス胎盤を、TFPIαの陽性対照として使用した。
【
図5(c)】E~F、抗PS抗体(f)および抗TFPI抗体(e)を使用した、トロンビン(Thr、+)または媒体(-)の存在下で培養した24時間後にFLSから単離した全タンパク質ライセートのウエスタンブロット分析。ヒト組換えTFPI全長を、TFPIαの陽性対照として使用した(hrTFPI)。ブロットは、3つの独立実験を示すものである。
【
図6(a)】ヒト滑膜中のPSおよびTFPIを示す図である。A、PSおよびTFPIは、要求時にまたは骨関節炎時(OA)に、HA患者(要求時および予防時)、HB患者の滑膜組織で発現される。矢印頭は滑膜内層を指し、矢印は下内層の血管構造を指す。すべてPSおよびTFPIの両方に陽性。縮尺バー:50μm。
【
図6(b)】B、抗TFPI抗体を使用した、脱グリコシル前後の健康な個体およびOA患者に由来する一次ヒトFLS(hFLS)培養の順化培地のウエスタンブロット分析。ヒト血小板ライセート(hPLT)を、TFPIαの陽性対照として使用した。ブロットは、3つの独立実験を示すものである。
【
図7(a)】TFPI依存性PS活性を示すF8
-/-Pros1
+/+およびF8
-/-Pros1
-/-マウスに由来するPRPにおける、血友病Aにおけるトロンビン生成およびフィブリンネットワーク、TF(1pM)誘導性トロンビン生成を示す図である。
【
図7(b)】B、F8
-/-Pros1
+/+およびF8
-/-Pros1
-/-マウスに由来するPRPおよびPFPにおけるAPC依存性PS活性。
【
図7(c)】C、F8
+/+Pros1
+/+、F8
-/-Pros1
+/+、およびF8
-/-Pros1
-/-フィブリン構造の、ならびにF9
+/+Pros1
+/+、F9
-/-Pros1
+/+、およびF9
-/-Pros1
-/-フィブリン構造の代表的な走査型電子顕微鏡画像。
【
図7(d)】D~G、高力価の阻害物質を有しない(D、F)および有する(E、G)重度HA患者(FVIII<1%)に由来するPFP(D~E)およびPRP(F~G)における低TF濃度(1pM)が引き金となって起きるトロンビン生成。測定は、平均±s.e.m.として示されている。
**、P<0.005;
***、P<0.0005。
【
図7(e)】D~G、高力価の阻害物質を有しない(D、F)および有する(E、G)重度HA患者(FVIII<1%)に由来するPFP(D~E)およびPRP(F~G)における低TF濃度(1pM)が引き金となって起きるトロンビン生成。測定は、平均±s.e.m.として示されている。
**、P<0.005;
***、P<0.0005。
【
図7(f)】D~G、高力価の阻害物質を有しない(D、F)および有する(E、G)重度HA患者(FVIII<1%)に由来するPFP(D~E)およびPRP(F~G)における低TF濃度(1pM)が引き金となって起きるトロンビン生成。測定は、平均±s.e.m.として示されている。
**、P<0.005;
***、P<0.0005。
【
図7(g)】D~G、高力価の阻害物質を有しない(D、F)および有する(E、G)重度HA患者(FVIII<1%)に由来するPFP(D~E)およびPRP(F~G)における低TF濃度(1pM)が引き金となって起きるトロンビン生成。測定は、平均±s.e.m.として示されている。
**、P<0.005;
***、P<0.0005。
【
図8】遺伝子型決定手法を示す図である。F8
-/-Pros1
+/-(a~c)およびF9
-/-Pros1
+/-(d~f)マウスを交配することにより得られた遺伝子型。a、Pros1対立遺伝子を、マルチプレックスPCRにより増幅した。その後PCR産物を電気泳動にかけた。wtバンドは、Sallerら、2009年によると、ヌルバンド(571bp)と比較してより低い分子量(234bp)を有する。b、マルチプレックスPCRを設定して、ゲノムDNAに由来するF8対立遺伝子のwtバンド(620bp)およびヌルバンド(420bp)を増幅した。c、(a)と同じ試料でのF8対立遺伝子増幅のPCR産物(ヌルバンド:420bp)。d、Pros1対立遺伝子を、マルチプレックスPCRにより増幅した。その後PCR産物を電気泳動にかけた。wtバンドは、Sallerら、2009年によると、ヌルバンド(571bp)と比較してより低い分子量(234bp)を有する。e、マルチプレックスPCRを設定して、ゲノムDNAに由来するF9対立遺伝子のwtバンド(320bp)およびヌルバンド(550bp)を増幅した。f、(d)と同じ試料でのF9対立遺伝子増幅のPCR産物(ヌルバンド:550bp)。
【
図9】生理学的状態における組織学的検査を示す図である。F8
-/-Pros1
-/-およびF8
-/-Pros1
+/+マウスならびにF9
-/-Pros1
+/+およびF9
-/-Pros1
-/-の肝臓切片、肺切片、腎臓切片、脳切片における不溶性フィブリンの免疫染色。縮尺バー:100μm。
【
図10(a)】Pros1の遺伝的喪失は、血友病Bを有するマウスの関節血症を防止することを示す図である。A、F9
-/-Pros1
+/+、F9
-/-Pros1
+/-、F9
-/-Pros1
-/-、およびF9
+/+Pros1
+/+マウスにおける、傷害の72時間後および傷害前の膝直径間の差異。
【
図10(b)】B、F9
+/+Pros1
+/+、F9
-/-Pros1
+/+、およびF9
-/-Pros1
-/-マウスにおける、72時間後の代表的な非傷害肢および傷害肢の膝関節内腔の微視的評価(不溶性フィブリンのマッソン3色染色および免疫染色、mAbクローン102-10)。縮尺バー:500μm。測定は、平均±s.e.m.として示されている。
***、P<0.0005。
【
図11(a)】フィブリンネットワーク密度および線維分岐の定量化を示す図である。a~b、F8
+/+Pros1
+/+、F8
-/-Pros1
+/+、およびF8
-/-Pros1
-/-マウスのフィブリンネットワーク。c~d、F9
+/+Pros1
+/+、F9
-/-Pros1
+/+、およびF9
-/-Pros1
-/-のフィブリンネットワーク。フィブリンネットワーク密度の定量化(aおよびc)。線維分岐の定量化(bおよびd)。測定は、平均±s.e.m.として示されている。
***、P<0.0005。
【
図11(b)】フィブリンネットワーク密度および線維分岐の定量化を示す図である。a~b、F8
+/+Pros1
+/+、F8
-/-Pros1
+/+、およびF8
-/-Pros1
-/-マウスのフィブリンネットワーク。c~d、F9
+/+Pros1
+/+、F9
-/-Pros1
+/+、およびF9
-/-Pros1
-/-のフィブリンネットワーク。フィブリンネットワーク密度の定量化(aおよびc)。線維分岐の定量化(bおよびd)。測定は、平均±s.e.m.として示されている。
***、P<0.0005。
【発明を実施するための形態】
【0093】
実施例
実施例1:X-ase活性の喪失はPros1
-/-マウスをレスキューする
F8
-/-雄と交配させたPros1
+/-雌は、25%のF8
+/-Pros1
+/-子孫をもたらした。F8
-/-雄と交配させたF8
+/-Pros1
+/-雌は、25%のF8
-/-Pros1
+/-子孫をもたらした(
図8A~8C)。同様の観察が、F9
-/-Pros1
+/-マウスでなされた(
図8D~8F)。予想通り、F8
-/-Pros1
-/-およびF9
-/-Pros1
-/-マウスは、それぞれFVIIIおよびFIX血漿活性を示さなかった。PSは、F8
-/-Pros1
-/-およびF9
-/-Pros1
-/-マウス血漿では検出されなかった(
図1C~1D)。報告されているように、F8
-/-Pros1
+/-およびF9
-/-Pros
1+/-のPSレベルは、F8
-/-Pros1
+/+およびF9
-/-Pros1
+/+マウスよりも約50~60%低かった(
図1C~1D)。
【0094】
F8-/-Pros1+/-繁殖対に由来する295匹の子犬のうち、72匹(24%)はF8-/-Pros1+/+であり、164匹(56%)はF8-/-Pros1+/-であり、59匹(20%)はF8-/-Pros1-/-だった(χ2=4.8、P=0.09)。したがって、F8-/-Pros1-/-マウスは、予想通りのメンデル比で存在した。対照的に、F9-/-Pros1+/-繁殖対に由来する219匹の子犬のうち、56匹(26%)はF9-/-Pros1+/+であり、132匹(60%)はF9-/-Pros1+/-であり、31匹(14%)はF9-/-Pros1-/-だった(χ2=14.95、P=0.001)。これは、F9+/+Pros1+/+マウスの交配の産仔数と比較した産仔数の減少と一致するF9-/-Pros1-/-マウスの遺伝比歪みと矛盾しない(5.2±0.7対9.8±1.8、n=4交配/3t世代にわたって、P=0.046)。
【0095】
F8-/-Pros1-/-およびF9-/-Pros1-/-マウスは、完全に正常であると思われた。それらの生存能を、それぞれ20か月(n=4)および16か月(n=2)までモニターしたところ、それぞれF8-/-Pros1+/+およびF9-/-Pros1+/+マウスと比較していかなる差異も示さなかった。
【0096】
マウスにおける完全なPros1欠損は、消費性凝固障害に結び付くため
15、本発明者らは、F8
-/-Pros1
-/-およびF9
-/-Pros1
-/-マウスがDICを発症したか否かを評価した。DICパラメーターは、F8
-/-Pros1
+/+、F8
-/-Pros1
+/-、およびF8
-/-Pros1
-/-マウス(
図1C)、ならびにF9
-/-Pros1
+/+、F9
-/-Pros1
+/-、およびF9
-/-Pros1
-/-マウス(
図1D)では同等だった。活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)は、FVIIIが存在しなかったため、F8
-/-Pros1
+/+(69±2秒)、F8
-/-Pros1
+/-(68±3秒)、およびF8
-/-Pros1
-/-(63±3秒)マウス(平均±s.e.m、1群当たりn=6、P=0.3)では等しく長期化した。同等のデータが、F9
-/-Pros1
+/+、F9
-/-Pros1
+/-、およびF9
-/-Pros1
-/-マウスで得られた。さらに、F8
-/-Pros1
-/-およびF9
-/-Pros1
-/-マウスの脳、肺、肝臓、および腎臓には、血栓症またはフィブリン沈着は見出されなかった(
図9)。
【0097】
このように、X-ase活性の喪失は、完全Pros1欠損の胚致死性をレスキューする。しかしながら、このレスキューは、部分的なものに過ぎず、FIX活性が喪失した。考え得る説明は、重度HBが、重度HAと比較してより低い重症状態であると考えられることである。結果的に、Pros1-/-マウスにおけるF9破壊は、F8破壊よりも凝固のリバランスがあまり効率的ではなかった。
【0098】
FVIII注入による内因性X-ase活性の回復が、F8
-/-Pros1
-/-マウスのDIC、血栓症、および電撃性紫斑病を誘導するか否かを探究するため、本発明者らは、組換えFVIII(rFVIII)を静脈内投与した。rFVIII注射後に死亡したマウスはなかった。多数の血管における血栓および肺における出血が、過剰用量のrFVIIIを単回注射した24時間後にF8
-/-Pros1
-/-マウスで見出された(
図1E~1F)。通常用量のrFVIIIを反復投与した24時間後、凝固分析は、顕性DICと同等の非凝固性プロトロンビン時間(PT)(非表示)、低フィブリノゲンレベル、および高トロンビン-抗トロンビン(TAT)レベルを示した(
図1G)。対照的に、通常用量のrFVIIIをF8
-/-Pros1
-/-マウスに単回注射した後のフィブリノゲンレベルおよびTATのレベルは、未処置F8
-/-Pros1
-/-マウスのレベルと同等だった(
図1G)。多数の血栓が肺および肝臓で視認可能だったが(
図1H~1I)、これらのマウスはいずれも、電撃性紫斑病を発症しなかった。
【0099】
実施例2:X-ase活性の喪失は、Pros1
-/-マウスのTF誘導性血栓塞栓症により引き起こされる致死性を防止しない
本発明者らは、以前に、TF誘導性血栓塞栓症モデルではPros1
+/+マウスの88%が生き残ったが、低TF用量注射(約1.1nM)後20分間依然として生存していたのはPros1
+/-マウスの25%に過ぎなかったことを示した。より高いTF投薬量(約4.3nM)を使用した場合、Pros1
+/+およびPros1
+/-マウスは両方とも20分以内に死亡した。しかしながら、Pros1
+/-は、Pros1
+/+よりも早期に死亡した。HAマウスおよびWTマウスは、この高TF用量に等しく感受性であり、それらの85%よりも多くが15分以内に病死した(
図2A)。対照的に、低分子量ヘパリン(LMWH)による血栓予防下のWTマウスは>75%が生き残った(
図2A)。したがって、LMWHとは対照的に、HAは、TF誘導性血栓塞栓症からマウスを保護しない。その後、本発明者らは、F8
-/-Pros1
+/+、F8
-/-Pros1
+/-、およびF8
-/-Pros1
-/-マウスを同じモデルで調査した。TF(約2.1nM)を注入した後、Pros1遺伝子型に関わらず、マウスの40~60%が死亡した(P>0.05)(
図2B)しかしながら、F8
-/-Pros1
-/-およびF8
-/-Pros1
+/-は、F8
-/-Pros1
+/+マウスよりも早期に病死し、F8
-/-Pros1
+/-は、F8
-/-Pros1
+/+マウスよりも早期に死亡する傾向があった(死亡までの平均時間:F8
-/-Pros1
+/+は12±4分、F8
-/-Pros1
+/-は7±2分、F8
-/-Pros1
-/-マウスは8±3分、n=4~6/群、P=0.43)。同様のデータが、F9
-/-Pros1
+/+、F9
-/-Pros1
+/-、およびF9
-/-Pros1
-/-マウスで得られた(データ非表示)。
【0100】
TF誘導血栓塞栓負荷中に死亡したF8
-/-Pros1
+/+およびF8
-/-Pros1
-/-マウスの肺動脈に、フィブリン塊が検出された(
図2C)。重要なことには、F8
-/-Pros1
+/+マウスよりもF8
-/-Pros1
-/-の肺により多くの血栓があった(それぞれ、n=48対26)。さらに、F8
-/-Pros1
-/-肺のほとんどの動脈は完全に閉塞されたが、F8
-/-Pros1
+/+肺では部分的にしか閉塞されなかった。
【0101】
TF誘導性血栓塞栓負荷中に病死したF8-/-Pros1-/-マウスはいずれも、電撃性紫斑病を発症しなかった。同様のデータが、F9-/-Pros1+/+、F9-/-Pros1+/-、およびF9-/-Pros1-/-マウスで得られた(データ非表示)。
【0102】
実施例3:FVIIIの喪失は、腸間膜細動脈の血栓症からPros1
-/-マウスを部分的に保護する
その後、本発明者らは、内因性凝固経路の欠損に感受性なモデルである腸間膜細動脈における血栓形成を記録した。F8
+/+Pros1
+/+マウスでは、血栓は、20分間で閉塞サイズに成長し、傷害細動脈はすべて閉塞された(
図2D)。予想通り、F8
-/-Pros1
+/+の細動脈はいずれも血栓症を示さなかったが、F8
-/-Pros1
-/-マウスは、部分的な血栓を示した(
図2D)。
【0103】
F8+/+Pros1+/+マウスでは血栓形成中に塞栓が生成されたが、F8-/-Pros1+/+マウスでは生成されなかった。F8-/-Pros1-/-マウスでは、部分的な血栓成長中に多発性微小塞栓が剥離し、閉塞性血栓の形成が防止された。
【0104】
実施例4:Pros1標的化は、HAを有するマウスの尾部出血を制限するが抑止はしない
軽度または重度出血モデルを使用して、尾部離断により出血表現型を評価した。
【0105】
両モデルにおいて、血液喪失は、F8
-/-Pros1
+/+マウスと比較して、F8
-/-Pros1
-/-で低減された(
図3A~3B)。軽度モデルで負荷すると、F8
-/-Pros1
+/-マウスは、F8
-/-Pros1
+/+マウスよりも出血が少なかった(
図3A)。対照的に、重度モデルに曝露されると、F8
-/-Pros1
-/-およびF8
-/-Pros1
+/-マウスは、同等の血液喪失を示した(
図3B)。しかしながら、F8
-/-Pros1
-/-マウスは、両モデルにおいて、F8
+/-Pros1
+/+およびF8
+/+Pros1
+/+マウスよりも出血が多く(
図3A~3B)、F8
-/-マウスにおけるPros1の喪失は、F8
-/-マウスの出血表現型を部分的に修正したに過ぎなかったことを示した。
【0106】
その後、PS中和抗体を使用して、PS活性の阻害がF8
-/-Pros1
+/-マウスにおける尾部出血をどのように変更するかを調査した。この抗体は、Pros1の完全な遺伝的喪失(
図3B)と同じ程度に、F8
-/-Pros1
+/-マウスの血液喪失を制限した(
図3C)。
【0107】
実施例5:Pros1標的化またはPS阻害は、急性関節血症(AH)からHAマウスまたはHBマウスを完全に保護する
出血は血友病患者のどの箇所でも起こり得るが、ほとんどの出血は、関節で生じる。Pros1喪失が血友病マウスの関節血症を防止するか否かを決定するために、本発明者らは、AHモデルをF8
-/-Pros1
+/+、F8
-/-Pros1
+/-、F8
-/-Pros1
-/-、およびF8
+/+Pros1
+/+マウスに適用した。傷害後の膝腫脹は、F8
-/-Pros1
+/+およびF8
-/-Pros1
+/-マウスと比較してF8
-/-Pros1
-/-およびF8
+/+Pros1
+/+マウスで低減された(
図4A)。また、F8
-/-Pros1
-/-マウスとF8
+/+Pros1
+/+マウスとの間に膝腫脹の差異はなかった(
図4A)。出血は、F8
-/-Pros1
+/+(IBS=2、n=5)の関節腔および滑膜では観察されたが、F8
-/-Pros1
-/-(IBS=0、n=5)およびF8
+/+Pros1
+/+マウス(IBS=0、n=5)では観察されなかった(
図4B)。F8
-/-Pros1
+/+の関節腔および滑膜には、F8
-/-Pros1
-/-およびF8
+/+Pros1
+/+マウスよりも多くのフィブリンが存在した(
図4B)。同様のデータが、F9
-/-Pros1
+/+およびF9
-/-Pros1
-/-マウス(それぞれ、IBS=0、n=3、およびIBS=2、n=3)で得られた(
図9A~9B)。
【0108】
こうした結果は、PS中和抗体または対照抗体をF8
-/-Pros1
+/-マウスに4日間の間に連続して皮下注入することにより(AH誘導の1日前から開始して)確認された(PS中和抗体群の膝腫脹は、対照群の0.69±0.09mmに対して0.43±0.07だった。n=9、P=0.04)。PS中和抗体群のPS血漿レベルは、対照の45±3%に対して26±6%だった(n=5、P=0.017)。加えて、PS阻害は、その代わりに、F8
-/-Pros1
+/-およびF8
-/-Pros1
+/+マウスにおけるAH負荷の前に、マウスPS(mPS)siRNAを静脈内注射することにより達成された(
図4C~4D)。IBS評価により、対照siRNAで処置したものと比較して(IBS=2、n=3)、mPS siRNAで処置したF8
-/-Pros1
+/+マウス(IBS=0.5、n=3)では関節内出血が欠如したことが確認された(
図4C)。重要なことには、血漿(対照での84±11%に対して26±3%、n=3、P=0.006)および滑膜におけるPS発現は両方とも、mPS siRNAにより低減された(
図5A)。
【0109】
実施例6:PSおよびTFPIは両方ともマウスの滑膜で発現される
血友病マウスにおけるPros1の遺伝的喪失およびPS阻害の顕著な関節内止血効果を理解するために、膝切片をPSおよびTFPIについて免疫染色した。PSは、対照siRNAで処置したAHを有するF8
-/-Pros1
+/+マウスでは主に滑膜組織の内層に存在したが、mPS siRNAを受け取ったAHを有するF8
-/-Pros1
+/+マウスではPSの滑膜染色が顕著に低減された(
図5A)。対照的に、TFPI染色は、対照siRNAで処置したものよりも、mPS siRNAを受け取った血友病マウスの滑膜組織でより顕著だった(
図5A)。しかしながら、TFPI発現は、F8
-/-Pros1
+/+およびF8
-/-Pros1
-/-マウスの両方の滑膜内層で同等だった(
図5B)。
【0110】
PSが線維芽細胞様滑膜細胞(FLS)により発現されることをさらに示すために、本発明者らは、F8
+/+Pros1
+/+、F8
-/-Pros1
+/+、およびF8
-/-Pros1
-/- FLSから収集された順化培地に対するウエスタンブロットを実施した。
図5C示されているように、F8
+/+Pros1
+/+およびF8
-/-Pros1
+/+ FLSの培地は、PSと同等であり、血漿および血小板で観察されたものと同様の分子量約75kDaにバンドを示した。予想通り、F8
+/+Pros1
-/- FLSから得られた培地では、染色は検出されなかった(
図5C)。
【0111】
また、本発明者らは、F8
-/-Pros1
+/+およびF8
-/-Pros1
-/- FLS順化培地でのTFPI発現を研究した(
図5D)。培地はすべて、胎盤ライセートで観察されたものと同様の約50kDaにバンドを示した。TFPIアイソフォーム発現は、完全グリコシル化TFPIαおよびTFPIβが同じ分子量で移動するため
30、タンパク質脱グリコシル化の後で調査した。FLS培地に由来する脱グリコシル化TFPIは、胎盤TFPI(TFPIαの陽性対照)と同様のTFPIαの分子量に単一バンドとして移動した(
図5D)。これは、FLSはTFPIαを発現するが、TFPIβを発現しないことを示す。さらに、F8
-/-Pros1
+/+ FLSでは、トロンビンによる刺激後にPSおよびTFPI発現が増加した(
図5E~5F)。
【0112】
実施例7:PSおよびTFPIは両方とも、HAまたはHBを有する患者の滑膜で発現される
その後、ヒトHA、HB、および骨関節炎膝滑膜組織を、PSおよびTFPIの両方について分析した(
図6A)。要求時のHA患者(n=7)の滑膜内層および下内層に、TFPIおよびPSの強力なシグナルが見出された。対照的に、予防下のHA患者(n=5)では、PSおよびTFPIの免疫染色は両方とも減少した。要求時のHB患者は、滑膜内層および下内層中のPSおよびTFPIの両方について、要求時のHA患者よりも低いシグナルを示した(n=4)。骨関節炎患者(n=7)に由来する切片は、予防下の血友病患者と同様に、TFPIおよびPSの強い染色を示さなかった。どのアイソフォームのTFPIがヒトFLSにより発現されるかを評価するために、健康対象および骨関節炎患者から単離されたヒトFLSの順化培地に対してウエスタンブロッティングを実施した。マウスFLSと同様に、ヒトFLSは、TFPIαを発現するが、TFPIβを発現しない(
図6B)。
【0113】
実施例8:Pros1の喪失は、HAマウスにおけるTFPI依存性PS活性の欠如およびAPCに対する耐性の原因である
Pros1を欠如するかまたはPSが阻害されたHAマウスまたはHBマウスにおけるAHからの十分な保護は、関節でのAPCおよびTFPIに対するPSコファクター活性の欠如により、少なくとも部分的には説明することができた。しかしながら、尾部出血モデルで負荷されたHAマウスにおいて、Pros1の欠如またはPS阻害の止血効果が部分的だった理由は、さらに調査する必要がある。
【0114】
ex vivoのTF誘発性トロンビン生成試験は、トロンビンを生成する血漿の能力と血友病の臨床重症度との間に相関性があることを示している。したがって、本発明者らは、トロンビン生成に対するPros1喪失の影響をHAマウスの血漿で調査した。マウス血漿ではトロンビン生成試験を使用してPSのTFPIコファクター活性を示すことができないため、無血小板血漿(PFP)ではなく多血小板血漿(PRP)でTFPI依存性PS活性を評価した。これは、マウス血漿にはTFPIαが欠如し、マウス血小板には存在することにより説明される。
【0115】
1pMのTFに応答したトロンビンピークおよび内在性トロンビン能力(ETP)は両方とも、F8
-/-Pros1
+/+ PRPよりもF8
-/-Pros1
-/-で有意により高く(1072±160対590±10nmol/L.分、n=3/群、P=0.04)、F8
-/-Pros1
-/- PRPには、PS TFPIコファクター活性が欠如していることが示唆された(
図7A)。以前の研究と一致して、1、2.5、または5pMのTFの存在下のF8
-/-Pros1
+/+およびF8
-/-Pros1
-/-マウスのPFPでは、トロンビンピークおよびETPは両方とも同等だった(データ非表示)。
【0116】
F8
-/-Pros1
-/-マウスが機能欠損APC依存性PS活性を示したか否かを評価するため、本発明者らは、APCの非存在下、野生型(WT)組換えAPCの存在下、または突然変異(L38D)組替えマウスAPC(L38D APC、PSコファクター活性が除去されたバリアント)の存在下で、Ca
2+イオノフォア活性化PRP中でのトロンビン生成試験を使用した。このアッセイでは、APC滴定により、8nMのWT APCの添加は、WTマウスの活性化PRPにてETPを90%低減することができたが、同じ濃度のL38D APCは、ETPを30%減少させたに過ぎなかったことが示された(データ非表示)。こうしたデータに基づき、活性化PRPのトロンビン生成曲線を記録した(3匹マウス/アッセイ)。算出されたAPC比(ETP
+APC WT/ETP
+APC L38D)は、F8
-/-Pros1
-/-血漿ではAPC耐性を示したが、F8
-/-Pros1
+/+血漿では示さなかった(それぞれ、0.87±0.13対0.23±0.08、P=0.01)(
図7B)。
【0117】
また、F8
-/-Pros1
+/+およびF8
-/-Pros1
-/-マウス(2匹マウス/アッセイ)に由来するPFPにおけるAPC依存性PS活性を、2nM WT APCおよびL38D APCの存在下で試験した。算出されたAPC比は、F8
-/-Pros1
-/-ではAPC耐性を示したが、F8
-/-Pros1
+/+マウスでは示さなかった(それぞれ、1.08±0.04対0.25±0.09、P=0.0003)(
図7B)。
【0118】
実施例9:Pros1マウスを欠如するHAマウスにおけるフィブリンネットワークの改善
尾部出血マウスモデルは、血小板機能異常だけでなく、凝固および繊維素溶解の変更にも感受性である。尾部出血に関する研究された遺伝子型間の差異を理解するために、本発明者らは、走査型電子顕微鏡画像法を使用して、フィブリン構造を調査した(
図7C)。F8
+/+Pros1
+/+およびF8
-/-Pros1
-/-血漿の血餅は、F8
-/-Pros1
+/+血漿血餅と比較して、高度に分岐したフィブリン線維のより高密度のネットワークを示した(
図11a~11b)。対照的に、F9
+/+Pros1
+/+およびF9
-/-Pros1
-/-血漿の血餅は、F9
-/-Pros1
+/+血漿血餅よりも高密度のネットワークを示さなかったが、線維分岐増大の傾向を示した(
図11c~11d)。
【0119】
F8
-/-Pros1
-/-およびF8
-/-Pros1
+/+マウスのフィブリン線維、およびF9
-/-Pros1
-/-およびF9
-/-Pros1
+/+マウスのフィブリン線維は、それぞれF8
+/+Pros1
+/+マウスまたはF9
+/+Pros1
+/+マウスの線維と比較して、より大きな直径を示した。にも関わらず、F8
-/-Pros1
-/-およびF9
-/-Pros1
-/-マウスの繊維表面は、それぞれF8
-/-Pros1
+/+またはF9
-/-Pros1
+/+マウスと比較してより少ない多孔性を示し、F8
-/-Pros1
-/-およびF9
-/-Pros1
-/―由来の線維は、F8
-/-Pros1
+/+またはF9
-/-Pros1
+/+由来の線維よりも、透過性がより低く、そのため繊維素溶解に対してより耐性であり得ることが示唆された
38。こうしたデータは、TFPIおよびAPC両コファクター活性の結果(
図7A~7B)を補完するものであり、F8
-/-Pros1
-/-での尾部出血が、F8
-/-Pros1
+/+マウスと比較して改善されたが、F8
+/+Pros1
+/+マウスほど完全には修正されなかった理由の説明を支援する。
【0120】
実施例10:血漿でのPS阻害は、HAを有する患者のトロンビン生成を回復させる
その後、本発明者らは、ヒトHA血漿でのトロンビン生成に対するPS阻害の効果を検討した。PFP中のETPは、PS中和抗体の存在下では2~4倍増加した。効率的にFXaを阻害するために、C末端ドメインに対する抗ヒトTFPI抗体を使用したところ、FVIII阻害物質の存在下でさえ同様の結果が得られた(
図7D~7E)。PRP試料でのPS阻害は、著しい効果を示し、ETPを10倍超増加させた(1912±37および1872±64nM
*分)(それぞれ、
図7Fおよび7G)。したがって、PS阻害は、血友病血漿中のETPを完全に回復させた(比較のため、正常血漿中のETPは、1495±2nM
*分)。同様の結果が、抗TFPI抗体を使用して得られた(
図7D~7G)。こうしたデータは、本発明者らがマウスで観察した、PS阻害により駆動されるHA PFPおよびPRPにおけるトロンビン生成の改善を確認する。
【0121】
実施例11:物質および方法
マウス
バックグラウンドがC57BL/6JであるF8-/-マウス(B6;129S4-F8tm1Kaz/J)およびF9-/-マウス(B6.129P2-F9tm1Dws/J)を、Jackson Laboratory社から得た。Pros1+/-マウスは、原集団の子孫だった15。実験は、スイス連邦獣医局(The Swiss Federal Veterinary Office)による認可を受けた。マウスを、記載の通りに遺伝子型決定した15~17。
【0122】
TF誘導性肺塞栓症
静脈血栓塞栓症のモデルは、Weissら18のものを多少改変して用いた15。麻酔した6~9週歳のマウスは、4.25nM(1:2希釈)または2.1nM(1:4希釈)のヒト組換えTF(hrTF、デイドイノビン、Siemens社)を静脈内に受け取った(2μL/g)。呼吸停止を発症した2分後にまたは20分間の観察期間の完了時に、肺を回収し、4%PFAで固定した。肺切片は、ヘマトキシリン-エオジンでフィブリンを染色した。肺におけるフィブリン塊の程度を、10個の無作為に選択した非重複視野(×10倍の拡大率)における血管内血栓の数として評価した。
【0123】
HAマウスの尾部クリップモデル(Tail clipping model)
出血表現型を評価するために、2つの異なる尾部クリップモデルを記載の通りに評価した14。手短に言えば、8~10週齢マウスの遠位尾部を2mmで離断し(軽度傷害)、出血は静脈だったか、または4mmで離断し(重度傷害)、出血は動脈および静脈だった19。出血を、30分後または10分後の血液喪失としてそれぞれ定量化した。重度傷害モデルでは、幾つかのF8-/-Pros1+/-マウスは、尾部離断の2分前に、2.1mg/kgの用量のウサギ抗ヒトPS-IgG(Dako社)またはウサギアイソタイプIgG(R&D Systems社)を静脈内に受け取った。
【0124】
急性関節血症モデル
麻酔した9~12週齢マウスにおける関節出血の誘導、膝直径測定、および無痛覚範囲を、Ovlisenらに従って実施した20。関節直径は、0時間および72時間の時点で、デジタルノギス(ミツトヨ社 547-301、神奈川県)を用いて測定した。72時間の時点で、マウスを犠牲にし、膝を単離し、4%PFAで固定し、脱灰し、パラフィンに包埋した。関節内出血スコア(IBS)を、記載の通りに評価した21。
【0125】
in vivo PS阻害
10週齢マウスは、皮下浸透圧ミニポンプ(モデル2001、Alzet)により1mg/kg/日のウサギ抗ヒトPS-IgG(Dako社、バーゼル、スイス)またはウサギアイソタイプIgG(R&D Systems社)の持続注入を受け取った。
【0126】
あるいは、10週齢マウスを、製造業者の使用説明書に従ってトランスフェクション剤(Invivofectamine3.0、Invitrogen社、Life Technologies社)を使用して、1mg/kgのマウス特異的siRNA(s72206、Life Technologies社)または対照siRNA(4459405、in vivo陰性対照#1 Ambion社、Life Technologies社)の単一用量で処置した。PS阻害の2.5日後に、急性関節血症モデルを適用した。
【0127】
統計的方法
値は、平均±semとして表された。非連結遺伝子座のカイ平方を使用して、メンデル対立遺伝子分離を評価した。カプラン-マイヤー法を使用して、TF誘導性静脈血栓塞栓症モデルにおける生存データをプロットした。ログランク検定を使用して、曲線を統計的に比較した(Prism6.0d;GraphPad社)。他のデータは、GraphPad社製Prism6.0dを用いて、t検定、一元配置および二元配置ANOVA検定により分析した。0.05未満のP値を統計的に有意であるとみなした。
【0128】
マウス血漿の調製
6~9週齢マウスをペントバルビタール(40mg/kg)で麻酔し、全血を下大静脈から3.13%クエン酸塩に採取した(1容積の抗凝血剤/9容積の血液)。血液を、26℃に予加温した遠心分離機で10分間1031gにて遠心分離し、多血小板血漿(PRP)を得た。あるいは、血液を、2400gで10分間室温(RT)にて遠心分離して、乏血小板血漿(PPP)を得た。無血小板血漿(PFP)を得るために、10000gで10分間の追加遠心分離を実施した。
【0129】
血小板の計数および凝固パラメーターの測定
血小板の計数を、自動細胞計数器(プロサイトDx血液学分析器、IDEXX社)で実施した。フィブリノゲン、FVIII、およびFIX活性を、自動化Sysmex CA-7000凝固分析器(Sysmex Digitana社)で測定した。プロトロンビン時間(PT)および活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)を、凝固計(MC4plus、Merlin Medical社)で測定した。
【0130】
ELISAによるマウスPS抗原およびTAT複合体の測定
96ウェルプレート(Maxisorb、Thermo社)のウェルを、1ウェル当たり50μLの10μg/mL ウサギポリクローナル抗ヒトPS(DAKO Cytomation社)でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。TBS緩衝液(0.05M tris(ヒドロキシメチル)アミノメタン、0.15M NaCl、pH7.5、0.05% Tween20)で3回洗浄した後、プレートを、2%のTBS-BSAでブロックキングした。希釈血漿試料(希釈範囲:1:300~1:600)をウェルに添加し、RTで2時間インキュベートした。3回洗浄した後、50μLの1μg/mLビオチン化ニワトリポリクローナル抗マウスプロテインSを添加し、RTで2時間インキュベートした。ストレプトアビジン-HRPコンジュゲート西洋ワサビペルオキシダーゼ(Thermo社)を添加することによりシグナルを増幅し、プレートを1時間インキュベートした。プレートを、3回洗浄し、100μLのTMB基質(KPL)を添加した。100μLのHCl(1M)を添加することにより反応を停止させた。450nmの吸光度を測定した。14匹の健康マウス(8匹の雄および6匹の雌、7~12週齢)から得た正常血漿プールの系列希釈を使用することにより標準曲線を設定した。結果は、正常血漿プールに対するパーセンテージとして表した。
【0131】
製造業者の使用説明書に従って市販のELISA(エンザイグノストTATマイクロ、Siemens社)を使用して、各血漿試料のTATレベルを重複して測定した。
【0132】
マウス組織処理および切片化、免疫組織化学法、ならびに顕微鏡検査
前処理していない組織切片(4μm)を、不溶性フィブリン、PS、またはTFPIについて、ヘマトキシリン/エオシンもしくはマッソン3色染色で染色したか、または免疫染色した。以下の抗体を使用した:フィブリン(mAbクローン102-10)1 終濃度15.6μg/mL、RTで30分間インキュベーション、二次抗体ウサギ抗ヒト(ab7155 Abcam社、ケンブリッジ、英国)1:200希釈、RTで30分間インキュベーション;PS(MAB 4976、R&D社、希釈1:50)RTで30分間インキュベーション、二次抗体ウサギ抗ラット(ab7155 Abcam社)1:200希釈、RTで30分間インキュベーション;TFPI(PAHTFPI-S、Hematological Technologies社)終濃度18.6μg/mL、RTで30分間インキュベーション、二次抗体ウサギ抗ヒツジIgG(ab7106、Abcam社)1:200希釈、RTで30分間インキュベーション。染色はすべて、製造業者の使用説明書に従って免疫染色器BOND RX(Leica Biosystems社、ムッテンツ、スイス)を用いて実施した。20×(NA0.8)、40×(NA0.95)空気対物レンズを有する3D HISTECH Panoramic 250 Flash IIを使用して、スライド全体を走査した。画像処理は、Panoramic Viewerソフトウェアを使用して実施した。
【0133】
F8の完全遺伝的喪失を有するマウスへのFVIIIのin vivo投与
6~9週齢のマウスをケタミン(80mg/kg)およびキシラジン(16mg/kg)で麻酔した。本発明者らは、1時間で100%のFVIIIレベルに到達するための0.3U/kgの組換えFVIII(Advate(登録商標)、Baxalta社)(通常用量)または1時間で>200%に到達するための過剰用量の組換えFVIII(2U/kg)のいずれかを静脈内投与した。通常用量または過剰用量のいずれかを、頚静脈カテーテルを導入する1時間前および1時間後(マウスJVC 2Fr PU 10cm、Instech社)ならびにその後中心線に留置した4時間、8時間、および16時間後に注射した。最初の注射の24時間後にマウスを犠牲にした。血液を採取し、臓器を回収した。FVIII、フィブリノゲン、およびトロンビン-抗トロンビン複合体(TAT)を、例に記載される通りに測定した。肺を単離し、4%パラホルムアルデヒド(PFA)で固定し、パラフィンに包埋した。
【0134】
腸間膜動脈のFeCl3傷害血栓症モデル
生体顕微鏡法を使用した腸間膜動脈における血栓症モデルを、参考文献2を多少改変したものに従って実施した。マウスを、ケタミン(80mg/kg)およびキシラジン(16mg/kg)の混合物を腹腔内注射することにより麻酔した。100μLローダミン6G(1.0mM)を注射することにより、血小板をin vivoで直接的に標識した。研究領域を選択した後、10%FeCl3を染み込ませたろ紙(1Mワットマン紙の直径1mmパッチ)を局所的に1分間適用することにより、血管壁傷害を生成した。血栓形成を、アフィニティ補正水浸型オプティクス(affinity corrected water-immesion optics)(Zeiss社、ドイツ)を備えた、FITCフィルターセット付きの蛍光顕微鏡(IV-500、Micron instruments社、サンディエゴ、カリフォルニア州)下にてリアルタイムでモニターした。光輝性蛍光標識血小板および白血球は、ビデオ起動型ストロボスコープ落射照明(Chadwick Helmuth社、エルモンテ、カリフォルニア州)による1355μm×965μm観察野の観察を可能にした。NA0.3.を有する対物10倍のZeiss社製Plan-Neofluarを使用した。場面はすべて、カスタマイズした低遅延シリコン強化ターゲットカメラ(Dage MTI社、ミシガン市、インディアナ州)、タイムベース生成装置、およびHi-8 VCR(EV、C-100、ソニー社、日本)を使用してビデオテープに記録した。血液細胞流の停止により決定された血管壁閉塞までの時間を測定した。
【0135】
線維芽細胞様滑膜細胞(FLS)単離、培養、およびフローサイトメトリー
8~10週齢マウスのマウスFLSを、3に従って単離および培養した。3回継代した後に、細胞の位相差画像を撮影し、細胞を、FITCコンジュゲートラット抗マウスCD11b抗体(M1/70、Pharmingen社、BD Biosciences社)、PEコンジュゲートラット抗マウスCD90.2抗体(30-H12、Pharmingen社、BD Biosciences社)、FITCコンジュゲートラット抗マウスCD106抗体(429MVCAM.A、Pharmingen社、BD Biosciences社)、PEコンジュゲートハムスター抗マウスCD54抗体(3E2、Pharmingen社、BD Biosciences社)、および蛍光色素コンジュゲートアイソタイプ対照抗体と共に、暗所で4℃にて30分間インキュベートした。最終洗浄および遠心分離ステップの後、インキュベートしたすべての細胞を、LSR IIフローサイトメーター(BD Biosciences社)およびFACS Diva7.0ソフトウェア(BD Biosciences社)で分析した。健康個体およびOA患者に由来するヒトFLSを、Asterand Bioscience社から購入し、製造使用説明書に従って培養した。
【0136】
ウエスタンブロッティング
ヒト試料およびマウス試料におけるPSおよびTFPIを、還元条件下でのドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(12%勾配SDS-PAGE、Bio-Rad社)により検出した。タンパク質をニトロセルロース膜(Bio-Rad社)に移し、その後、以下のものを使用して視覚化した:マウスPSの場合は2ug/mLモノクローナルMAB-4976(R&D system社)、マウスTFPIの場合は1μg/mLポリクローナルAF2975(R&D system社)。組換えマウスPS4(30ng)、組換えヒトTFPI全長(T.Hamuro、Kaketsuken、日本により提供)、洗浄血小板のライセート、F8-/-Pros1+/+マウス由来のPFP、およびF8+/+Pros1+/+マウス由来の胎盤ライセートを、PS、TFPIα対照として使用した。コンフルエントマウスおよびヒトFLS順化培地に由来する試料を、無血清培地(OptiMem社)での24時間インキュベーション後に収集し、アミコンフィルターデバイス(Millipore社、10kDaカットオフ)を使用して40倍に濃縮した。TFPIウエスタンブロッティングでは、試料を、ゲルに負荷する前に、5つのタンパク質デグリコシダーゼ(deglycosidase)(PNGase F、O-グリコシダーゼ、ノイラミニダーゼ、β1-4ガラクトシダーゼ、β-N-アセチルグルコサミニダーゼ、脱グリコシル化キット、V4931、Promega社)の混合物で12時間37℃にて処理した。最終検出は、西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート二次抗体(Dako社)およびSupersignal West Dura Extended Duration Chemiluminescence Substrate(Pierce社)を使用し、Fuji LAS 3000IR CCDカメラでモニターすることにより完了した。
【0137】
ヒト膝滑膜の免疫組織化学
重度膝関節症の関節形成術を受けた12人のHA患者および4人のHB患者に由来する滑膜組織のパラフィン包埋検体を、フィレンツェ大学のDepartment of Experimental and Clinical MedicineのSection of Anatomy and Histologyのアーカイブにて別記のように収集した5、6。7人のHA患者を要求時に処置し、5人を二次予防で処置した。4人のHB患者はすべて、要求時に処置した。7人の骨関節炎(OA)患者に由来する滑膜試料を対照として使用した5、6。免疫組織化学分析では、滑膜組織切片(5μm厚)を、脱パラフィンし、再水和し、抗原回収のためにクエン酸ナトリウム緩衝液(10mM、pH6.0)中で10分間沸騰し、続いてメタノール中3%H2O2で15分間室温にて処理して、内在性ペルオキシダーゼ活性をブロッキングした。その後、切片をPBSで洗浄し、製造業者のプロトコールに従ってUltra Vブロック(UltraVision Large Volume Detection System Anti-Polyvalent、HRP、カタログ番号TP-125-HL、LabVision社)を用いてRTにて10分間インキュベートした。非特異的部位結合をブロッキングした後、スライドを、PBSで希釈したウサギポリクローナル抗ヒトプロテインS/PROS1抗体(1:50希釈、カタログ番号NBP1-87218、Novus Biologicals社)またはヒツジポリクローナル抗ヒト組織因子経路阻害物質(TFPI)抗体(1:500希釈、カタログ番号PAHTFPI-S、Haematologic Technologies社)と共に4℃で一晩インキュベートした。PS免疫染色では、その後、組織切片を、ビオチン化二次抗体と共に、続いてストレプトアビジンペルオキシダーゼ(UltraVision Large Volume Detection System Anti-Polyvalent、HRP;LabVision社)と共に製造業者のプロトコールに従ってインキュベートした。TFPI免疫染色では、その代りに、組織切片を、HRPコンジュゲートロバ抗ヒツジIgG(1:1000希釈;カタログ番号ab97125;Abcam社)で30分間インキュベートした。3-アミノ-9-エチルカルバゾール(AECキット、カタログ番号TA-125-SA;LabVision社)を色原体として使用して免疫反応性を発色させた。最後に、滑膜切片をマイヤーヘマトキシリン(Bio-Optica社)で対比染色し、洗浄し、水性封入剤でマウントし、Leica社製DM4000B顕微鏡(Leica Microsystems社)で観察した。一次抗体に接触しなかったか、またはアイソタイプ一致および濃度一致非免疫IgG(Sigma-Aldrich社)と共にインキュベートした切片が、抗体特異性の陰性対照として含まれていた。光顕微鏡画像を、Leica社製ソフトウェアアプリケーションパッケージLAS V3.8(Leica Microsystems社)を備えたLeica社製DFC310FX1.4メガピクセルデジタルカラーカメラで撮影した。
【0138】
フィブリン塊超微細構造調査
フィブリン塊を、約5nM TF(デイドイノビン、Siemens社)の添加によりPFPから37℃で調製した。その後、それらを2%グルタルアルデヒドで固定し、脱水し、走査型電子顕微鏡を使用した視覚化のために、Zubairovaら7に従って金パラジウムでスパッタコーティングした。STEPanizerソフトウェア(http://www.stepanizer.com)を使用して、ネットワーク密度および線維分岐の半定量的評価を実施した。
【0139】
マウス試料における較正された自動化トロンボグラフィーアッセイ(calibrated automated thrombography assay)
較正された自動化トロンボグラム(CAT、calibrated automated thrombogram)法を使用して、PFPおよびPRP中でのトロンビン生成を決定した。
【0140】
PRP(150G/L)におけるTFPI依存性PS活性を、以下の通りに評価した。手短かに言えば、10μLマウスPRP(150G/L)を、10μLのPRP試薬(Diagnostica Stago社)および30μLの緩衝液A(25mm Hepes、175mm NaCl、pH7.4、5mg/mL BSA)と混合した。10μLの蛍光発生基質/CaCl2混合物を用いて37℃にてトロンビン生成を開始させた。終濃度は以下の通りだった:16.6%マウス血漿、1pM hrTF、4μMリン脂質、16mM CaCl2、および0.42mM蛍光発生基質。
【0141】
マウスPFPおよびPRPにおけるAPC依存性PS活性を、Dargaud Yら8に従って、CATに基づくAPC耐性試験で評価した。PRP(150G/L)を、40μM Ca2+イオノフォア(A23187)を使用して5分間37Cで事前に活性化した。終濃度は以下の通りだった:16.6%マウス血漿、22μM A23187、1pM hrTF、4μMリン脂質、2nM(PFPの場合)もしくは8nM(PRPの場合)野生型組み替えマウスAPC(wt-rmAPC)5または突然変異組替えマウスAPC(rmAPC L38D)、16mM CaCl2、および0.42mM蛍光発生基質。rmAPC L38Dの生成および特徴付けをref9、10に従って実施し、精製をref11、12に従って実施した。
【0142】
PFPに対するTF滴定では、以下の試薬を使用した:PPP試薬およびMP試薬(Diagnostica Stago社)。
【0143】
ディスペンサーを備えたFluoroscan Ascent(登録商標)蛍光光度計を使用して、蛍光を測定した。390nm(励起フィルター)および460nm(発光フィルター)の波長での蛍光強度を検出した。専用ソフトウェアプログラムThrombinoscope(登録商標)バージョン3.0.0.29(Thrombinoscope bv社)は、較正物質(Thrombinoscope bv社)に対するトロンビン活性の計算を可能にし、トロンビン活性を経時的に表示した。経験はすべて、37℃にて重複して実施し、測定は通常60分間続いた。
【0144】
ヒト試料でのCATアッセイ
書面によるインフォームドコンセントを患者から得た。静脈血を、静脈穿刺により3.2%クエン酸ナトリウム(容積/容積)に採取し、2000gで5分間遠心分離した。その後、乏血小板血漿(PPP)を10000gで10分間遠心分離して、PFPを得た。PFPをアリコートし、瞬間凍結し、使用まで-80℃で保管した。PRPの場合、血液を、180g×10分間で遠心分離した。対象はすべて、参加へのインフォームドコンセントを与えた。ヒトPFPおよびPRPにおけるトロンビン生成を、多少変更したref13に従って評価した。手短かに言えば、68μLのPFPまたはPRP(150G/L)を、12μLのポリクローナルウサギ抗ヒトPS IgG抗体(0.42mg/mL、Dako社)またはTFPIに対するモノクローナル抗体(0.66μm、MW1848、Sanquin社)または緩衝液Aのいずれかと共に、37℃で15分間インキュベートした。PFP試料の場合は低PPPおよび5pm PPP試薬(Diagnostica stago社)の20μL 7:1混合物を用いて、PRP試料の場合はPRP試薬(Diagnostica Stago社)を用いて、凝固を開始させた。20μLのCaCl2および蛍光発生基質(I-1140;Bachem社)を添加した後、Fluoroskan Ascent測定器(Thermo Labsystems社)でトロンビン生成を追跡した。
【0145】
考察
PSの存在は、トロンビン生成の重要な制御因子である。本発明者らは、PSを標的とすることが、血友病の有望な治療を構成し得ると考えた。
【0146】
マウスにおける広範な研究は、血友病マウスにおける出血および重度関節損傷への寄与にPSおよびTFPIが中心的な役割を果たすことを支持する概念データの証拠を提供する。Pros1の標的化またはPSの阻害は、尾部出血アッセイにおける出血表現型のin vivo改善および関節血症からの完全な保護(
図3A~3Cおよび
図4)から判断して、マウスの血友病を寛解する能力を有する。関節は非常に弱いTFの発現を示し、滑膜細胞は大量のTFPIαおよびPSを産生するため(
図5)、外在性経路の活性は、関節内の血友病素因性関節の出血を大幅に低減する。さらに、トロンボモジュリン(TM)および内皮プロテインC受容体(EPCR)は両方ともFLSにより発現され、AHの状況では、TM-トロンビン複合体が、EPCR結合PCを活性化して非常に強力な抗凝血剤APCを生成することを示唆する。重要なことには、TFPIαの発現は、トロンビンにより上方制御される(
図5F)。したがって、通常は、数日から数週間にわたって続く場合がある著しい局所炎症および関節症状をもたらすAHは、複数の抗凝血剤、すなわちAPC、TFPIα、およびそれらのコファクターPSの局所生成および分泌も促進し、これは、血友病における関節損傷の病態生理の説明を支援することができる。
【0147】
血友病患者に由来する臨床試料を使用した観察は、マウス研究から学んだ教訓と一致する。ヒトでは、阻害物質を有するまたは有しないHA患者に由来する血漿のPSをブロッキングすることにより、ETPが正常化される(
図7D~7G)。HB患者は、HA患者よりも少ないTFPIおよびPSの関節内発現を示し、HB患者はHA患者よりも出血が少ないという現在の知識と一致する(
図6)。さらに、予防を受けているHA患者は、出血の状況でのみFVIII濃縮物を受ける、つまりいわゆる「要求時治療」を受ける患者よりも少ないTFPIおよびPS滑膜発現を示す(
図6A)。最後に、ヒトFLSは、マウスで観察されたようにTFPIαおよびPSを両方とも分泌し、したがってヒトに対するマウス血友病データの外挿が強化される。
【0148】
この報告書における広範な知見により、本発明者らは、PSの標的化が血友病に有用な療法へと橋渡しされ得る可能性があるという提案に導かれた。ヒト関節およびマウス関節におけるPSは、関節血症に対する新規の病態生理学的寄与因子であり、特に関節内のAPCおよびTFPIαの両方に対するその二重コファクター活性のため、魅力的で有望な治療標的を構成する。PSが存在すると、関節血症は、滑液でのTFPIα発現を増加させる。マウスにおけるPSの標的化は、マウスを関節血症から保護する。したがって、本発明者らは、TM-EPCR-PC経路と合わせてFLSにより生成されるTFPIαおよびそのコファクターPSは両方とも、関節血症に対して重要な病理学的効果を有する強力な関節内抗凝固系を構成することを提案する。本発明者らが血友病マウスでの使用に成功したマウスPSサイレンシングRNA(
図4H~4Iおよび
図5A)は、本発明者らが血友病患者のために開発することになる治療手法である。現行の因子補充療法に対するサイレンシングRNAの利点は、その半減期がより長く注射の頻度が低減されること、および皮下投与経路可能であることである。
【0149】
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【配列表】