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  • 特許-化粧料用ジェル状組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】化粧料用ジェル状組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20221114BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20221114BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20221114BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20221114BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20221114BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/34
A61K8/365
A61K8/60
A61K8/81
A61Q19/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018111590
(22)【出願日】2018-06-12
(65)【公開番号】P2019214518
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202430
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 千香子
(72)【発明者】
【氏名】井岡 達也
(72)【発明者】
【氏名】奥川 秀子
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-201834(JP,A)
【文献】特開2010-254677(JP,A)
【文献】特表平06-503566(JP,A)
【文献】特開2011-001270(JP,A)
【文献】特開昭64-013016(JP,A)
【文献】特開2016-037453(JP,A)
【文献】特開2014-114252(JP,A)
【文献】特開2019-214515(JP,A)
【文献】特開2003-095985(JP,A)
【文献】特開2005-298831(JP,A)
【文献】特開2016-222577(JP,A)
【文献】Lifting Gel Face Mask with Indian Neem Extract, MINTEL GNPD [ONLINE], 2018.05,[検索日 2021.11.15]インターネット:<URL:https://www.gnpd.com/sinatra>(Database accessionno.5674729),全文(特に「Formats & Textures (Beauty &Personal Care)」、「成分」)
【文献】Fast Skin Maker, MINTEL GNPD [ONLINE], 2018.03,[検索日 2021.11.15]インターネット:<URL:https://www.gnpd.com/sinatra>(Database accessionno.5550029),全文(特に「Formats & Textures (Beauty &Personal Care)」、「成分」)
【文献】Meta Whitening Sleeping Mask, MINTEL GNPD [ONLINE], 2017.10,[検索日 2021.11.15]インターネット:<URL:https://www.gnpd.com/sinatra>(Database accessionno.5201065),全文(特に「Formats & Textures (Beauty &Personal Care)」、「成分」)
【文献】Gel,MINTEL GNPD [ONLINE], 2016.05,[検索日 2021.11.15]インターネット:<URL:https://www.gnpd.com/sinatra>(Databaseaccession no.4379329),全文(特に「Formats & Textures (Beauty& Personal Care)」、「成分」)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/02
A61K 8/34
A61K 8/365
A61K 8/60
A61K 8/81
A61Q 19/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(A)~(C)を含有するジェル状組成物であって、さらに水をジェル状組成物あたり40~98質量%含有するジェル状組成物。
(A)カルボキシビニルポリマーを、ジェル状組成物あたり0.1~0.7質量%
(B)クエン酸及び/又はその塩を、ジェル状組成物あたりクエン酸として0.005~0.03質量%
(C)グルコース、ラフィノース、トレハロース、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール及びグリセリンから選択される1以上の物質を、ジェル状組成物あたり1~10質量%
(ただし、1.(a)水溶性保温剤0.5~20重量%;(b)親水性ゲル化剤0.1~20重量%;及び(c)i)ジメチコノール、フルオロシリコーン及びジメチコン又はそれらの混合物からなる群より選択される200,000~540,000の分子量を有するシリコーンゴム;及びii)0.65~100cpsの粘度を有するシリコーンベースキャリアから本質的になるシリコーン成分1.0~10重量%(i)対ii)の比率は10:90~20:80である;上記成分は500~10,000cpsの最終粘度を有する);を含む実質上オイルフリーで水性ゲル形のスキンケア組成物、を除く)
【請求項2】
B型粘度計(25℃、4号ローターまたは3号ローター、12回転、30秒)で測定したときの粘度が5000~100000mPa・sであるジェル状組成物であって、該ジェル状組成物に対して、キセノンランプを用いて放射照度40W/m(照度測定波長域300~400nm)、ブラックパネル温度40℃の条件で光照射し、光照射時間24時間後の組成物の粘度を25℃で測定したとき、粘度維持率〔{(光照射後の粘度)/(光照射前の粘度)}×100〕が55%を超える請求項1に記載のジェル状組成物。
【請求項3】
化粧料用である請求項1又は2に記載のジェル状組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はジェル状の化粧料用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ジェル状を呈する化粧料が多数提供されている。ジェル(ゲル)を形成するために様々な技術が存在するが、水性化粧料やO/W型の化粧料には、一般的に多糖類や合成高分子化合物などの水性ゲル化剤を添加して、組成物をゲル化する手法が採用される。なかでもカルボキシビニルポリマーは、高い増粘性と、肌に塗布したときにみずみずしくさっぱりとした使用感を与えられること、さらに取り扱いの容易さなどから、化粧料用のゲル化剤として多用されている。
【0003】
カルボキシビニルポリマーは、主としてアクリル酸を重合した合成陰イオン性高分子化合物である。水に溶解してアルカリ剤で中和することで容易にゲル状を呈するので、化粧料組成物の増粘剤として第一に選択される。
しかしながら、カルボキシビニルポリマーにより形成されたゲル状組成物は、光(紫外線)や経時変化により組成物の粘度が低下するという問題が知られている。このため、カルボキシビニルポリマーにより形成されたゲル状組成物の粘度低下を抑制するための技術が多数提案されており、その代表的な技術として、無機酸や有機酸類を添加して粘度低下を抑制する方法や、他のゲル化剤を併用する方法などが提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、カルボキシビニルポリマーおよび/またはアルキル変性カルボキシビニルポリマーとN-アシル化アミノ酸を含む増粘組成物が記載されている。そして、この組成物は紫外線による粘度の低下が抑制されると記載されている。
特許文献2には、カルボキシビニルポリマーとキサンタンガムおよびカラギーナンからなる群から選ばれるガム質と、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースから選ばれるセルロース系高分子を含む増粘組成物が記載されている。この組成物は、紫外線や配合成分の影響を受けにくく、安定性の低下を引き起こさないことが記載されている。
【0005】
特許文献3には、アルキル変性カルボキシビニルポリマーと、メタリン酸を含有する乳化組成物が開示されている。この乳化組成物は、光安定性に優れていることが記載されている。
特許文献4には、(a)植物抽出物の1種または2種以上、(b)カルボキシビニルポリマー、(c)有機酸あるいは無機酸の水溶性アルカリ金属塩の1種または2種以上を含有し、且つ500~3000cpsの粘度を有する皮膚化粧料組成物が記載されている。そして有機酸あるいは無機酸の水溶性アルカリ金属塩として、クエン酸3ナトリウム、リン酸1ナトリウム、リン酸2ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸2カリウム、コハク酸ナトリウムが例示されている。この組成物は、高温保存による粘度低下が抑制されると記載されている。
【0006】
特許文献5には、水溶性カルボキシビニルポリマーと、塩基性物質と、デキストリンと、メチルセルロースと、エデト酸三ナトリウムまたはエチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸三ナトリウムとを含有するメーキャップ化粧料が記載されている。この化粧料は、長期間使用しても粘度安定性が良く、1ヶ月経過した化粧料も安定性に変化がないことが記載されている。
【0007】
また、本出願人は、クエルセチン又はクエルセチン配糖体が、カリボキシビニルポリマーで形成されたゲルの安定化剤として有用であることを見出し、これを有効成分として含有するゲル安定性の高い、水溶性高分子化合物含有化粧料の発明を特許出願している(特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2013-256472号公報
【文献】特開2007-246667号公報
【文献】特開平09-19632号公報
【文献】特開平09-52814号公報
【文献】特開平10-306015号公報
【文献】特開2001-226214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
カルボキシビニルポリマーを含むジェル状組成物は、従来技術に記載されているとおり、紫外線や長期保存により粘度が低下することに課題があり、それを解決するための提案も複数なされているが、いずれも十分に満足いくものではなかった。
本願発明者は、カルボキシビニルポリマーを含有するジェル状組成物にクエン酸及び/又はその塩と、糖及び/又は糖アルコールを含有させると、光照射による組成物の粘度低下が顕著に抑制されるという現象を見出した。
本発明は、この知見に基づきなされたものである。
すなわち本発明は、カルボキシビニルポリマーと、クエン酸及び/又はその塩と、糖及び/又は糖アルコールを組み合わせて得られる、粘度安定性に優れたジェル状組成物、ジェル状化粧料の提供を課題とする。さらにジェル状化粧料の新たな安定化技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の構成は、次のとおりである。
(1)次の(A)~(C)を含有するジェル状組成物。
(A)カルボキシビニルポリマー
(B)クエン酸及び/又はその塩
(C)糖及び/又は糖アルコールから選択される1以上の物質
(2)(B)クエン酸及び/又はその塩の含有量が、ジェル状組成物あたりクエン酸として0.001~0.03質量%である(1)に記載のジェル状組成物。
(3)糖がグルコース、ラフィノース及びトレハロースから選ばれる1以上を含むものであり、糖アルコールがソルビトール、マンニトール、エリスリトール及びグリセリンから選ばれる1以上を含むものである(1)又は(2)に記載のジェル状組成物。
(4)糖及び/又は糖アルコールの含有量が0.5~10質量%である(1)~(3)のいずれかに記載のジェル状組成物。
(5)化粧料用である(1)~(4)のいずれかに記載のジェル状組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明のジェル状組成物は、高い粘性と、塗布した時にみずみずしくさっぱりとした使用感が得られる。また光照射しても粘度が低下しにくいので、必ずしも遮光容器に充填しなくてもジェル状態が維持され、長期安定性に優れた状態で提供できる。本発明のジェル状組成物は使用感が良好であり、長期間保存しても光による粘度変化(粘度低下)が発生しにくく充填する容器を選ばない。加えて、本発明の構成成分であるクエン酸及び/又はその塩と糖及び/又は糖アルコールは、安全性の高い成分であり、かつ組成物自体に色や匂いを付加しない成分のため、これらで構成された本発明のジェル状組成物も透明~半透明でありほぼ無臭である。このため、化粧料用途として応用範囲が広く、さらに着色や賦香することもできる。本発明のジェル状組成物は化粧料とすることが最適である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】カルボキシビニルポリマーを含有するゲル状組成物が光照射によって粘度低下することを確認した予備試験1の結果を示すグラフである。
【0013】
本願は、(A)カルボキシビニルポリマー、(B)クエン酸及び/又はその塩、(C)糖及び/又は糖アルコールを含有するジェル状組成物及びジェル状化粧料に係る発明である。
なお、本願明細書においては、「ジェル」及び「ゲル」の用語が混在するがいずれも同義である。本発明のジェル状組成物は光を照射しても粘度が低下しにくいことが特徴である。したがって粘度の高い液体(ゼリー状液体)だけでなく、流動性のある中粘度であっても光照射前後での粘度維持率が55%を超えていれば本発明に含まれる。本発明のジェル状組成物は、光照射前の粘度が5000mPa・s以上であって、光照射後の粘度維持率が55%を超えるものである。より好ましくは、B型粘度計(25℃、4号ローターまたは3号ローター、12回転、30秒)で測定したときの粘度が10000~100000mPa・sであって、光照射後の粘度維持率が55%を超えるものである。
【0014】
(A)成分:カルボキシビニルポリマー
カルボキシビニルポリマーは、カルボキシル基を有する水溶性ポリマーであり、主にアクリル酸の重合体である。
カルボキシビニルポリマーは、白色の酸性粉末であり、その1%水溶液のpHは約3である。カルボキシビニルポリマーは、塩基性化合物を用いて中和することにより、粘性の異なる様々な粘液(ジェル)を調製することができる。中和に用いる塩基性化合物としては、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエチルアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルギニンなどを例示することができる。塩基性化合物の配合量は特に限定されず、ジェル状組成物や化粧料の粘度が好適な範囲内となるように適宜調整すればよい。
本発明で用いるカルボキシビニルポリマーは、増粘剤として汎用されている市販品を使用すれば良く、例えばNTC-CARBOMER380/381(日光ケミカルズ)、ハイビスワコー103/104/105(富士フイルム和光純薬)やカーボポール980/981(日本ルーブリゾール)などを例示できる。
カルボキシビニルポリマーの配合量は、組成物あたり、0.05~1質量%、より好ましくは0.1~0.7質量%とすることが好ましい。0.05質量%に満たないと、十分な粘度が得られない恐れがある。1質量%を超えて配合するとぬるつくなど使用感が悪くなる恐れがある。
【0015】
(B)成分:クエン酸及び/又はその塩
本発明のジェル状組成物にはクエン酸及び/又はクエン酸の塩を必須成分として含有する。クエン酸の塩は、ナトリウム塩又はカリウム塩が好ましい。本発明のジェル状組成物において、組成物あたりクエン酸またはクエン酸の塩は、クエン酸として0.001~0.03質量%含有することが好ましい。含有量が0.001質量%に満たないとジェル状組成物の粘度低下を防止する効果が低くなる恐れがある。また、0.03質量%を超えるとべたつきが生じる恐れがある。
クエン酸及び/又はその塩は(C)成分の糖及び/又は糖アルコールと共存することでカルボキシビニルポリマーによって形成されるジェル状組成物の安定性を維持し、粘度低下を防止する。
【0016】
(C)成分:糖及び/又は糖アルコール
本発明でいう糖とは、単糖またはオリゴ糖である。単糖とはアルデヒド基を有するアルドース、またはケトン基を有するケトースであって、三炭糖(トリオース)、四炭糖(テトロース)、五炭糖(ペントース)、六炭糖(ヘキソース)、七炭糖(ヘプトース)のいずれであっても良い。三炭糖としてはグリセルアルデヒド・ジヒドロキシアセトン、四炭糖としてはエリトロース・トレオース・エリトルロース、五炭糖としてはリボース・アラビノース・リキソース・キシロース・アピオース・リブロース・キシルロース、六炭糖としてはアロース・アルトロース・グルコース・マンノース・グロース・イドース・ガラクトース・タロース・プシコース・フルクトース・ソルボース・タガトース、七単糖としては、セドヘプツロース、コリオースを例示できる。
単糖の場合は、入手のしやすさなどからグルコース、マンノース、ガラクトースが好ましく、グルコースが特に好ましい。
オリゴ糖とは2個以上の単糖がグルコシド結合でつながったものである。二糖としては、グルコース二分子が結合したマルトース、トレハロース、イソマルトースなどが例示できる。また構成する単糖が異なったヘテロの二糖であるラクトースやスクロースも使用可能である。二糖としては、グルコースがα1-1結合したトレハロースが特に好ましい。また三糖としては、ラフィノース、マルトトリオースなどが例示でき、ラフィノースが特に好ましい。
【0017】
本発明でいう糖アルコールとは、アルドースやケトースのカルボニル基が還元されて生成した化合物である。本発明にあっては、通常食品や医薬品又は化粧料に用いられる化合物であればどのような物質であっても使用可能である。好ましい物質として、グリセリン、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトールを例示することができる。特に好ましくはソルビトールである。
また、糖と糖アルコールの反応生成物であるガラクトシルグリセロールやグルコシルグリセロールなどの誘導体も本発明に用いることができる。
本発明のジェル状組成物において、糖及び/又は糖アルコールを組成物あたり0.5~10質量%、好ましくは1~5質量%含有すると好ましい。糖及び/又は糖アルコールは、(B)成分のクエン酸及び/又はその塩と共存することでカルボキシビニルポリマーによって形成されるジェルの安定性を維持し、粘度低下を防止する。
【0018】
本発明のジェル状組成物は水を含むことが好ましい。水は、精製水が好ましい。本発明のジェル状組成物全量に対する水の含有量は特に限定されないが、使用感の観点から20~98質量%、より好ましくは40~98質量%含有すると好ましい。なお、水を含まなくてもカルボキシビニルポリマーで増粘した系、例えばカルボキシビニルポリマーとエタノールと塩基性物質による増粘組成物やカルボキシビニルポリマーとグリセリンと塩基性物質による増粘組成物に本発明を適用することも可能である。ただしこれらの非水系の系であっても、クエン酸及び/又はその塩を溶解させて組成物に配合するための水は必要である。
【0019】
本発明のジェル状組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、界面活性剤、油剤、美容成分、色素、香料などを任意で配合することができる。
【0020】
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエーテル変性シリコーンなどが挙げられる。
【0021】
油剤としては、例えば、オリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、アボカド油、カルナバロウ、キャンデリラロウ、ホホバ油、ミツロウ、ラノリン、流動パラフィン、パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワレン、スクワラン、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、2-エチルヘキサン酸セチル、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどが挙げられる。
【0022】
美容成分としては、ヒアルロン酸ナトリウム、PCA-Na、ソウハクヒエキスなどが挙げられる。
【0023】
本発明のジェル状組成物は、ジェル状(ゲル状)の剤型である。特に好ましくは、水性ジェルの剤型である。本発明のジェル状組成物の粘度は、B型粘度計(25℃、4号ローターまたは3号ローター、12回転、30秒)で測定したときの粘度が5000mPa・s以上であると好ましく、10000~100000mPa・sであると好ましく、10000~70000mPa・sであるとより一層好ましい。
本発明のジェル状組成物は光を照射しても粘度が低下しにくいことが特徴である。本発明のジェル状組成物は、光照射前の粘度が5000mPa・s以上であって、光照射後の粘度維持率が55%を超えるものである。
【0024】
本発明のジェル状組成物及びジェル状化粧料は、常法により製造することができる。カルボキシビニルポリマー水溶液を中和してからB成分(クエン酸及び/又はその塩)とC成分(糖及び/又は糖アルコール)を加えても良いし、すべての成分を容器に投入後、混合撹拌しても良い。
【実施例
【0025】
以下に予備試験例、実施例及び比較例のジェル状化粧料を調製し、これを用いた評価試験を示し、本発明を具体的に説明する。
<予備試験例>
0.3%カルボキシビニルポリマー水溶液を水酸化カリウムで中和してpH5.7に調整し、ゲルを形成させた。次にQ-Lab Corporation製Q-SUN Xe-1 Xenon Test Chamberを用いて放射照度40W/m(照度測定波長域300~400nm)、ブラックパネル温度40℃の条件で光照射を行った。光照射時間0h、4h、8h、24hの試料をサンプリングして試料温度を25℃に調整した後、B型粘度計(25℃、3号ローター、12回転、30秒、レンジ5)を用いて粘度を測定した。測定結果を図1に示す。
【0026】
図1に示すとおり、キセノンランプによる光照射で、カルボキシビニルポリマーによる増粘組成物(ジェル状組成物)の粘度が減少することを確認できた。光照射時間依存的に粘度が低下しており、24hの照射後には著しく粘度が低下していることを確認した。
【0027】
<実施例・比較例>
実施例、比較例のジェル状組成物を調製し、本発明のジェル状組成物の光照射によるゲルの粘度低下抑制効果を評価した。
1.試験方法
(1)ジェル状組成物の調製
表1及び表2(実施例)、表3(比較例)のジェル状組成物を調製した。
各成分を秤量して総重量で200gとした後、卓上ホモミキサーで5000rpm、3分間の撹拌を行った。その後、脱泡したジェル状化粧料をガラス瓶に100g充填した。これを以下に示す試験の試料とした。
【0028】
(2)光照射試験
Q-Lab Corporation製Q-SUN Xe-1 Xenon Test Chamberを用いて放射照度40W/m(照度測定波長域300~400nm)、ブラックパネル温度40℃、照射時間24hの条件で光照射試験を行った。
【0029】
(3)粘度測定試験
光照射試験前後の粘度を試料温度25℃にてB型粘度計(3号ローター、12回転、30秒、レンジ5)で測定した。粘度測定は各試料2回ずつ行い平均値を評価に用いた。
粘度維持率(%)={(光照射後の粘度)/(光照射前の粘度)}×100として粘度低下(減粘)の抑制効果を評価した。なお、表には計算値をそのまま載せたが、粘度維持率(%)を評価するときは、小数点以下は切り捨てた数値を下記基準により評価した。
粘度低下抑制効果(減粘抑制効果)の評価として、粘度維持率を評価する基準は下記の通りである。
◎:81%以上
○:71~80%
△:55~70%
×:55%未満
【0030】
(4)官能評価試験
光照射前後の試料を、ブラインドでそれぞれ手の甲に0.05gずつ取って塗り広げ、専門の官能評価員1名が、試料の粘度の差異を識別できるかどうかを評価した。この官能評価試験により、試料の粘度の違いがはっきりと識別できたものは、粘度の低下抑制効果(減粘抑制効果)が得られていないと判断した。
○:粘度の差異が全くわからない
△:粘度に違いがあることがややわかる
×:粘度の違いがはっきりとわかる
【0031】
2.試験結果
結果を表1~3の下段に示した。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
実施例1~28のジェル状組成物の粘度は光照射前で10000~70000mPa・sの範囲にあったが、光照射後の減粘抑制効果は粘度維持率の数値から、実施例1~7、9~11、13~15、17、19~21、23~25及び27が◎評価(粘度維持率が81%以上)、実施例8が○評価(粘度維持率が71~80%)、実施例12、16、18、22、26及び28が△評価(粘度維持率が55~70%)であった。また、実施例1~28のジェル状組成物は、光照射後の官能評価試験において、いずれも光照射による粘度低下が官能試験によりほとんど識別できないレベルであった。これらの試験結果から、本発明の構成をとるカルボキシビニルポリマーを含有した増粘組成物(ゲル)の粘度低下抑制効果(減粘抑制効果)は極めて高いと判断した。さらにまた、実施例1~28のいずれのジェル状組成物も、べたついたり、きしんだりせず、カルボキシビニルポリマーを用いたジェル状組成物特有のみずみずしくさっぱりとした使用感は全く損なわれず、優れた使用感であった。
一方、比較例1~17のジェル状組成物は、光照射による粘度低下が著しく、光照射後の粘度維持率は55%を下回り、粘度低下抑制効果(減粘抑制効果)は×と評価した。官能評価試験においても本発明の構成をとらない比較例1~15のジェル状組成物は、いずれも光照射による粘度低下が官能試験によりはっきりとわかるレベルで識別された。
比較例3~9に示したように、クエン酸単独(比較例3、4)ではその他の有機酸(比較例5~9)と比較して減粘抑制効果が高いわけではない。また、比較例10~13に示したようにソルビトールやマンニトール単独でも減粘抑制効果は低かった。また、比較例14~17に示したようにフィチン酸、乳酸、グルコン酸ナトリウム、アデノシン三リン酸とソルビトールを組み合わせた場合にも減粘抑制効果は低かった。これらの結果からクエン酸及び/又はその塩と、糖及び/又は糖アルコールを組み合わせて配合した場合にのみ、特異的に顕著な減粘抑制効果を示すことを見出した。
以上、実施例、比較例の評価結果から本発明のジェル状組成物は、光照射による粘度低下を抑制できることが確認できた。特に使用感は、カルボキシビニルポリマーによる肌に塗布したときのみずみずしいさっぱりした使用感を与えるものであり、化粧料に最適であることがわかった。
図1