(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】ベル型炉の冷却装置及び冷却方法
(51)【国際特許分類】
C21D 9/673 20060101AFI20221114BHJP
C21D 1/00 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
C21D9/673 Z
C21D1/00 118Z
(21)【出願番号】P 2020202582
(22)【出願日】2020-12-07
【審査請求日】2021-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【氏名又は名称】松川 克明
(72)【発明者】
【氏名】中井 真伍
【審査官】相澤 啓祐
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-055057(JP,U)
【文献】特開平06-271945(JP,A)
【文献】実開昭56-107865(JP,U)
【文献】実開昭54-142314(JP,U)
【文献】実開昭55-051303(JP,U)
【文献】特開昭53-087914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 9/52-9/70
C21D 1/00-1/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱処理された処理材をインナーカバー内において冷却させるベル型炉の冷却装置において、加熱処理された処理材が収容されたインナーカバーの外周側に、内側冷却用カバーと上部が開放された外側冷却用カバーとを有する2重の冷却用カバーを設けると共に、冷却用気体を前記のインナーカバーと内側冷却用カバーとの間を通して流す冷却用気体案内手段と、前記の内側冷却用カバーの外面に冷却液を散布させる第1冷却液散布手段と、前記のインナーカバーの外面に冷却液を散布させる第2冷却液散布手段とを設けたことを特徴とするベル型炉の冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載のベル型炉の冷却装置において、前記の冷却用気体案内手段として、冷却用気体を前記のインナーカバーと内側冷却用カバーとの間に吸引させて、インナーカバーと内側冷却用カバーとの間で加熱された冷却用気体を排気させる吸引ファンを設けたことを特徴とするベル型炉の冷却装置。
【請求項3】
請求項1に記載のベル型炉の冷却装置において、前記の冷却用気体案内手段として、冷却用気体を前記のインナーカバーと内側冷却用カバーとの間に送風させて、インナーカバーと内側冷却用カバーとの間で加熱された冷却用気体を排気させる送風ファンを設けたことを特徴とするベル型炉の冷却装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1項に記載のベル型炉の冷却装置において、前記の2重の冷却用カバーにおける外側冷却用カバーをなくしたことを特徴とするベル型炉の冷却装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか1項に記載のベル型炉の冷却装置を用い、前記の冷却用気体案内手段によって冷却用気体を前記のインナーカバーと内側冷却用カバーとの間を通して流すと共に、前記の第1冷却液散布手段から内側冷却用カバーの外面に冷却液を散布させて、インナーカバーを所定温度に冷却させた後、前記の第2冷却液散布手段からインナーカバーの外面に冷却液を散布させて、インナーカバー内における処理材を冷却させることを特徴とするベル型炉の冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル等の処理材をインナーカバー内において加熱させて処理した後、加熱処理された処理材をインナーカバー内において冷却させるようにしたベル型炉の冷却装置及び冷却方法に関するものである。特に、加熱処理された処理材をインナーカバー内において冷却させるにあたり、インナーカバーが急冷されることによる熱応力等でインナーカバーが損傷しないようにして、インナーカバー内における加熱処理された処理材を短時間で効率よく冷却できるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ベル型炉においては、コイル等の処理材をベースの上にスペーサーを介して複数段載置させ、これをインナーカバーで覆った後、さらにこのインナーカバーの外周側に加熱用カバーが被せ、この加熱用カバーに設けたバーナー等によって、インナーカバー内における処理材を加熱・均熱(焼鈍)させて加熱処理した後、インナーカバーの外周側における加熱用カバーを外して、加熱処理された処理材をインナーカバー内において冷却させることが行われている。
【0003】
そして、このように加熱処理された処理材をインナーカバー内において冷却させるにあたっては、特許文献1、2等に示されるように、加熱用カバーを外した後のインナーカバーの外周側に冷却用カバーを設け、まず、この冷却用カバーと前記のインナーカバーとの間に冷却用気体を流して、インナーカバーが変形したり破損したりしない所定温度まで徐冷(ゆっくり冷却)させ、その後、前記のインナーカバーの外面に水などの冷却液を散布して、インナーカバー内における処理材を素早く目的の温度まで冷却させるようにしたものが提案されている。
【0004】
しかし、前記のように冷却用カバーとインナーカバーとの間に冷却用気体を流して、インナーカバーを所定温度まで徐冷させる場合、冷却用カバーとインナーカバーとの間を流れる冷却用気体によってインナーカバーから放熱される熱を奪い、これにより昇温された冷却用気体を外部に排出させるという気体の流れによる冷却が主体となるため、徐冷といえども、温度の下降速度が遅すぎて、インナーカバーを所定温度まで徐冷させるのに多くの時間がかかり、インナーカバー内における処理材を目的の温度まで冷却させるために要する全体の時間が長くなって、設備の生産性が大きく低下するという問題があった。
【0005】
また、インナーカバー内における処理材を短時間で冷却させるために、冷却用カバーとインナーカバーとの間に冷却用気体を流してインナーカバーを冷却させる時間を短くして、熱い状態にあるインナーカバーの外面に冷却液を散布、或いは、冷却用気体によるインナーカバーの冷却を行わずに、最初から熱い状態にあるインナーカバーの外面に冷却液を散布するようにした場合、高温状態のインナーカバーに冷却液が散布され、冷却液との温度差が大きくなりすぎて、インナーカバーに負荷が加わり、インナーカバーに局所的な変形や割れが発生するおそれがあるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-100948号公報
【文献】特開平6-271945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、コイル等の処理材をインナーカバー内において加熱させて処理した後、加熱処理された処理材をインナーカバー内において冷却させるようにしたベル型炉の冷却装置及び冷却方法における前記のような様々な問題を解決することを課題とするものである。
【0008】
そして、本発明においては、前記のようなベル型炉において、前記のインナーカバーの外周側に冷却用カバーを設けて、インナーカバー内における加熱処理された処理材を冷却させるにあたり、インナーカバーが損傷しないようにして、インナーカバー内における加熱処理された処理材を短時間で目的の温度まで冷却できるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るベル型炉の冷却装置においては、前記のような課題を解決するため、加熱処理された処理材をインナーカバー内において冷却させるベル型炉の冷却装置において、加熱処理された処理材が収容されたインナーカバーの外周側に、内側冷却用カバーと上部が開放された外側冷却用カバーとを有する2重の冷却用カバーを設けると共に、冷却用気体を前記のインナーカバーと内側冷却用カバーとの間を通して流す冷却用気体案内手段と、前記の内側冷却用カバーの外面に冷却液を散布させる第1冷却液散布手段と、前記のインナーカバーの外面に冷却液を散布させる第2冷却液散布手段とを設けた。
【0010】
そして、本発明におけるベル型炉の冷却装置においては、前記の冷却用気体案内手段として、冷却用気体を前記のインナーカバーと内側冷却用カバーとの間に吸引させて、インナーカバーと内側冷却用カバーとの間で加熱された冷却用気体を排気させる吸引ファンを設けるようにし、或いは冷却用気体を前記のインナーカバーと内側冷却用カバーとの間に送風させて、インナーカバーと内側冷却用カバーとの間で加熱された冷却用気体を排気させる送風ファンを設けるようにすることができる。
【0011】
また、本発明におけるベル型炉の冷却装置において、前記の内側冷却用カバーの外面に冷却液を散布させる第1冷却液散布手段と、インナーカバーの外面に冷却液を散布させる第2冷却液散布手段とに冷却液を供給するにあたっては、冷却液供給装置から冷却液を前記の第1冷却液散布手段と第2冷却液散布手段とに案内する冷却液案内管に切換手段を設け、この切換手段により冷却液案内管を通して導かれる冷却液を前記の第1冷却液散布手段と第2冷却液散布手段とに切り換えて供給させるようにすることができる。なお、冷却液供給装置から冷却液を、個別に設けた冷却液案内管により前記の第1冷却液散布手段と第2冷却液散布手段とに個別に供給させるようにすることもできる。
【0012】
また、本発明におけるベル型炉の冷却装置においては、前記の2重の冷却用カバーにおける外側冷却用カバーをなくした構造にすることもできる。
【0013】
また、本発明におけるベル型炉の冷却方法においては、前記のような課題を解決するため、前記のようなベル型炉の冷却装置を用い、前記の冷却用気体案内手段によって冷却用気体を前記のインナーカバーと内側冷却用カバーとの間を通して流すと共に、前記の第1冷却液散布手段から内側冷却用カバーの外面に冷却液を散布させて、インナーカバーを所定温度に冷却させた後、前記の第2冷却液散布手段からインナーカバーの外面に冷却液を散布させて、インナーカバー内における処理材を冷却させるようにした。
【0014】
そして、本発明におけるベル型炉の冷却方法のように、冷却用気体案内手段によって冷却用気体を前記のインナーカバーと内側冷却用カバーとの間を通して流すと共に、前記の第1冷却液散布手段により内側冷却用カバーの外面に冷却液を散布させるようにすると、インナーカバーの外周に設けられた内側冷却用カバーが第1冷却液散布手段から散布された冷却液によって冷却され、インナーカバーと内側冷却用カバーとの温度差が大きくなって、インナーカバーからの放射冷却が促進されると共に、インナーカバーと内側冷却用カバーとの間を流れる冷却用気体が内側冷却用カバーの熱を奪うことで、冷却用気体によるインナーカバーの冷却が効率よく行えるようになり、従来に比べて、インナーカバーを短い時間で所定温度まで徐冷することができ、前記の第2冷却液散布手段からインナーカバーの外面に冷却液を散布させて、インナーカバー内における処理材を目的の温度まで冷却させるのに要する時間を短縮できるようになる。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、加熱処理された処理材をインナーカバー内において冷却させるベル型炉の冷却装置において、加熱処理された処理材が収容されたインナーカバーの外周側に、内側冷却用カバーと上部が開放された外側冷却用カバーとを有する2重の冷却用カバーを設けると共に、冷却用気体を前記のインナーカバーと内側冷却用カバーとの間を通して流す冷却用気体案内手段と、前記の内側冷却用カバーの外面に冷却液を散布させる第1冷却液散布手段と、前記のインナーカバーの外面に冷却液を散布させる第2冷却液散布手段とを設け、前記の冷却用気体案内手段によって冷却用気体を前記のインナーカバーと内側冷却用カバーとの間を通して流すと共に、前記の第1冷却液散布手段から内側冷却用カバーの外面に冷却液を散布させて、インナーカバーを所定温度まで徐冷させた後、前記の第2冷却液散布手段からインナーカバーの外面に冷却液を散布させて、インナーカバー内における処理材を目的の温度まで冷却させるようにした。
【0016】
そして、本発明のように、冷却用気体案内手段によって冷却用気体をインナーカバーと内側冷却用カバーとの間を通して流すと共に、インナーカバーの外周に設けた内側冷却用カバーの外面に第1冷却液散布手段から冷却液を散布させると、第1冷却液散布手段から散布された冷却液によって内側冷却用カバーが速やかに冷却され、インナーカバーと内側冷却用カバーとの温度差が大きくなって、インナーカバーからの放熱が促進されると共に、インナーカバーと内側冷却用カバーとの間を流れる冷却用気体が内側冷却用カバーの熱を奪うことで、冷却用気体によるインナーカバーの徐冷が効率よく行えるようになる。
【0017】
この結果、本発明におけるベル型炉の冷却装置及び冷却方法においては、従来に比べて、インナーカバーを短い時間で所定温度まで徐冷できるようになり、またこのようにインナーカバーを所定温度に徐冷させた後、第2冷却液散布手段によりインナーカバーの外面に冷却液を散布させて、インナーカバー内における処理材を冷却させるため、高温状態のインナーカバーの外面に最初から冷却液を散布させる場合のように、冷却液との温度差からインナーカバーに負荷が加わって、インナーカバーに局所的な変形や割れが発生するということもなく、インナーカバーが損傷しないようにして、加熱処理された処理材をインナーカバー内において短時間で目的の温度まで冷却できるようになり、設備の生産性が大きく向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係るベル型炉の冷却装置において、加熱処理された処理材が収容されたインナーカバーの外周側に、内側冷却用カバーと上部が開放された外側冷却用カバーとを有する2重の冷却用カバーと、冷却用気体案内手段と、第1冷却液散布手段と、第2冷却液散布手段とを設けた状態を示した概略断面説明図である。
【
図2】前記の実施形態に係るベル型炉の冷却装置において、(A)は冷却用気体案内手段によって冷却用気体をインナーカバーと内側冷却用カバーとの間を通して流すと共に、第1冷却液散布手段によって内側冷却用カバーの外面に冷却液を散布させて、インナーカバーを所定温度まで冷却させる状態を示した概略断面説明図、(B)はインナーカバーを所定温度まで冷却させた後、第2冷却液散布手段によってインナーカバーの外面に冷却液を直接散布させて、インナーカバー内における処理材を冷却させる状態を示した概略断面説明図である。である。
【
図3】前記の実施形態に係るベル型炉の冷却装置における第1冷却液散布手段を変更させた第1の変更例を示した概略断面説明図である。
【
図4】前記の実施形態に係るベル型炉の冷却装置における第1冷却液散布手段を変更させた第2の変更例を示した概略断面説明図である。
【
図5】前記の実施形態に係るベル型炉の冷却装置における第1冷却液散布手段を変更させた第1の変更例において、前記の冷却用気体案内手段を変更させた第3の変更例を示した概略断面説明図である。
【
図6】前記の実施形態に係るベル型炉の冷却装置における第1冷却液散布手段を変更させた第1の変更例において、前記の冷却用気体案内手段を変更させた第4の変更例を示した概略断面説明図である。
【
図7】前記の実施形態に係るベル型炉の冷却装置において、2重の冷却用カバーにおける前記の外側冷却用カバーをなくした例を示した概略断面説明図である。
【
図8】前記の実施形態に係るベル型炉の冷却装置において、2重の冷却用カバーにおける前記の外側冷却用カバーを下まで延ばした例を示した概略断面説明図である。
【
図9】本発明におけるベル型炉の冷却方法を用いた場合に処理材の温度が下がる状態を、従来のものと比較したグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施形態に係るベル型炉の冷却装置及び冷却方法を、添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係るベル型炉の冷却装置及び冷却方法は、下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0020】
この実施形態に係るベル型炉の冷却装置においては、インナーカバー10内にスペーサーSを介して処理材Wを複数段積み重ねて収容させ、このインナーカバー10の外周側に設けた加熱カバー(図示せず)に設けたバーナー(図示せず)などによりインナーカバー10内に収容された処理材Wを加熱・均熱(焼鈍)させて加熱処理した後、前記の加熱カバー(図示せず)を取り外して、複数段積み重ねて収容された処理材Wをインナーカバー10内において冷却させるようにしている。
【0021】
そして、この実施形態におけるベル型炉の冷却装置においては、
図1及び
図2(A),(B)に示すように、加熱用カバー(図示せず)を外した後のインナーカバー10の外周側に、内側冷却用カバー21と上部が開放された外側冷却用カバー22とを有する2重の冷却用カバー20を設けている。
【0022】
また、冷却用気体をインナーカバー10と内側冷却用カバー21との間を通して流す冷却用気体案内手段30として、前記の外側冷却用カバー22上部の外周側に吸引ファン31を設けると共に、インナーカバー10と内側冷却用カバー21との間において加熱された冷却用気体を、前記の吸引ファン31を介して外部に案内する案内管32を設けている。
【0023】
そして、この実施形態においては、前記の吸引ファン31を回転させて、前記の内側冷却用カバー21と外側冷却用カバー22との下部における外気導入部23を通して冷却用気体となる外気をインナーカバー10と内側冷却用カバー21との間に吸引し、この外気をインナーカバー10と内側冷却用カバー21との間を流して、この外気により熱くなったインナーカバー10を冷却させ、インナーカバー10の熱によって加熱された外気を前記の案内管32を通して外部に排気させるようにしている。
【0024】
また、この実施形態においては、前記の内側冷却用カバー21の外面に冷却液xを散布させる第1冷却液散布手段40として、内側冷却用カバー21の上方の中央部に冷却液xを散布させる第1シャワー部材41を設けると共に、インナーカバー10の外面に冷却液xを散布させる第2冷却液散布手段50として、インナーカバー10の上方の中央部に冷却液xを散布させる第2シャワー部材51を設けている。
【0025】
そして、この実施形態においては、前記の第1シャワー部材41と第2シャワー部材51とに冷却液xを供給するにあたり、冷却液供給装置60から冷却液xを前記の第1シャワー部材41と第2シャワー部材51とに導く冷却液案内管61を設けると共に、この冷却液案内管61の途中に切換手段62として三方弁62を設け、この三方弁62により冷却液供給装置60から冷却液案内管61を通して案内される冷却液xを、前記の第1シャワー部材41と第2シャワー部材51との何れに供給するかを切り換えるようにしている。なお、この実施形態においては、前記の冷却液供給装置60から冷却液案内管61を通して導かれる冷却液xを、三方弁62により第1シャワー部材41と第2シャワー部材51との何れに供給させるかを切り換えるようにしたが、冷却液供給装置60から冷却液案内管61を通して冷却液xを第1シャワー部材41と第2シャワー部材51とに供給させる方法はこのようなものに限定されず、図示していないが、冷却液供給装置60から冷却液xを前記の第1シャワー部材41と第2シャワー部材51とに導く冷却液案内管61を個別に設けると共に、各冷却液案内管61にそれぞれ開閉調整弁(図示せず)を設け、各冷却液案内管61を通して冷却液xを第1シャワー部材41と第2シャワー部材51とに個別に供給させるようにすることもできる。なお、図示していないが、前記の冷却液案内管61は、前記の冷却用カバー20を取り外すために、切り離し可能な構造にしている。また、冷却液xの流れを点線で示している。
【0026】
また、前記のように第1シャワー部材41から内側冷却用カバー21の外面に散布させた後の冷却液xと、第2シャワー部材51からインナーカバー10の外面に散布させた後の冷却液xとを回収するにあたり、この実施形態においては、インナーカバー10の外周側における内側冷却用カバー21と外側冷却用カバー22の下部にリング状になった冷却液回収部63を設け、第1シャワー部材41から内側冷却用カバー21の外面に散布させた後の冷却液xと、第2シャワー部材51からインナーカバー10の外面に散布させた後の冷却液xとをこの冷却液回収部63内に回収させ、このように冷却液回収部63内に回収された冷却液xを、排水部(図示せず)を通して排水させるようにしている。
【0027】
そして、この実施形態において、前記のようにインナーカバー10の外周側に内側冷却用カバー21と上部が開放された外側冷却用カバー22とを有する2重の冷却用カバー20を設け、
図2(A)に示すように、前記の吸引ファン31を回転させて、前記の内側冷却用カバー21と外側冷却用カバー22との下部における外気導入部23を通して外気をインナーカバー10と内側冷却用カバー21との間に吸引し、この外気をインナーカバー10と内側冷却用カバー21との間を流して、高温のインナーカバー10を冷却させ、インナーカバー10の熱によって加熱された外気を前記の案内管32を通して外部に排気させるようにすると共に、前記の冷却液供給装置60から冷却液案内管61を通して案内される冷却液xを前記の三方弁62により第1シャワー部材41に供給し、この第1シャワー部材41により冷却液xを前記の内側冷却用カバー21の上部から散布させて、内側冷却用カバー21の外面を冷却液xによって冷却させ、このように内側冷却用カバー21を冷却させた後の冷却液xを前記の冷却液回収部63内に回収させるようにする。なお、図においては、前記の三方弁62の開いた部分を白抜きで示し、閉まった部分を黒塗りで示した。
【0028】
このように、吸引ファン31により外気導入部23を通して吸引させた外気を、インナーカバー10と内側冷却用カバー21との間を流して、高温のインナーカバー10を冷却させると共に、第1シャワー部材41により冷却液xを内側冷却用カバー21の上部から散布して、内側冷却用カバー21の外面を冷却させるようにすると、内側冷却用カバー21が冷却液xによって速やかに冷却されて、内側冷却用カバー21とインナーカバー10との温度差が大きくなり、インナーカバー10からの放射冷却が促進されると共に、インナーカバー10と内側冷却用カバー21との間を流れる外気が内側冷却用カバー21の熱を奪うことで、外気によるインナーカバー10の冷却が効率よく行えるようになる。
【0029】
次いで、このようにしてインナーカバー10が冷却され、インナーカバー10の温度が、冷却液xを直接散布しても損傷しない程度の温度まで徐冷されると、
図2(B)に示すように、前記のように吸引ファン31によりインナーカバー10と内側冷却用カバー21との間に吸引された外気を、インナーカバー10と内側冷却用カバー21との間を流してインナーカバー10を冷却させると共に、前記の冷却液供給装置60から冷却液案内管61を通して案内される冷却液xを、前記の三方弁62により前記の第1シャワー部材41から第2シャワー部材51に切り換えて第2シャワー部材51に供給し、この第2シャワー部材51から冷却液xを、前記のように所定温度まで冷却されたインナーカバー10の上部から散布し、この冷却液xにより直接インナーカバー10の外面を冷却させて、インナーカバー10内における処理材Wを所定温度まで冷却させるようにすると共に、このようにしてインナーカバー10を冷却させた後の冷却液xを、前記の冷却液回収部63内に回収させるようにする。
【0030】
このようにすると、インナーカバー10の外面に冷却液xを直接散布しても損傷しない温度までインナーカバー10を短時間で徐冷させることができ、またこのようにインナーカバー10の外面に冷却液xを直接散布しても損傷しない程度の温度まで所定温度に冷却させた後、第2シャワー部材51から冷却液xをインナーカバー10の外面に散布させて、インナーカバー10内における処理材Wを冷却させるため、冷却液xとの温度差によってインナーカバー10に負荷が加わるのが防止されて、インナーカバー10に局所的な変形や割れが発生するということがなく、従来に比べて、インナーカバー10内における処理材Wを目的の温度まで短時間で効率よく冷却できるようになる。
【0031】
ここで、前記の実施形態においては、第1冷却液散布手段40として、前記のように内側冷却用カバー21の上方の中央部に冷却液xを散布させる第1シャワー部材41を設けるようにしたが、第1冷却液散布手段40はこのようなものに限定されない。
【0032】
例えば、第1冷却液散布手段40を変更させた第1の変更例においては、
図3に示すように、内側冷却用カバー21の上方の中央部にリング状になった第1シャワー部材42を設けるようにしている。
【0033】
そして、この第1の変更例においては、前記のように吸引ファン31を回転させて、前記の外気導入部23を通して外気をインナーカバー10と内側冷却用カバー21との間に吸引し、この外気をインナーカバー10と内側冷却用カバー21との間を流して、高温のインナーカバー10を冷却させ、これにより加熱された外気を、案内管32を通して外部に排気させると共に、冷却液供給装置60から冷却液案内管61を通して案内される冷却液xを三方弁62により前記のリング状になった第1シャワー部材42に供給し、この第1シャワー部材42により冷却液xを内側冷却用カバー21の上部からリング状に散布させるようにする。
【0034】
また、第1冷却液散布手段40を変更させた第2の変更例においては、
図4に示すように、内側冷却用カバー21の上部において、内側冷却用カバー21と外側冷却用カバー22との間にリング状になった第1シャワー部材43を設けるようにしている。
【0035】
そして、この第2の変更例においては、前記のように吸引ファン31を回転させて、前記の外気導入部23を通して外気をインナーカバー10と内側冷却用カバー21との間に吸引し、この外気をインナーカバー10と内側冷却用カバー21との間を流して、高温のインナーカバー10を冷却させ、これにより加熱された外気を、前記の案内管32を通して外部に排気させるようにすると共に、冷却液供給装置60から冷却液案内管61を通して案内される冷却液xを三方弁62により前記のリング状になった第1シャワー部材43に供給し、この第1シャワー部材43により冷却液xを内側冷却用カバー21の上部の外周に沿ってリング状に散布させるようにする。
【0036】
また、前記の実施形態においては、外気をインナーカバー10と内側冷却用カバー21との間を通して流す冷却用気体案内手段30として、前記の外側冷却用カバー22上部の外周側に吸引ファン31を設けると共に、インナーカバー10と内側冷却用カバー21との間において加熱された外気を、前記の吸引ファン31を介して外部に案内する案内管32を設けるようにしたが、冷却用気体案内手段30はこのようなものに限定されない。
【0037】
例えば、冷却用気体案内手段30を変更させた第4の変更例においては、
図5に示すように、冷却用気体案内手段30として、前記の内側冷却用カバー21の上方中央部に吸引ファン33を設けると共に、この吸引ファン33の下における内側冷却用カバー21の上部中央部に、インナーカバー10と内側冷却用カバー21との間において加熱された外気を前記の吸引ファン33により吸引して外部に案内する案内部21aを設け、また第1冷却液散布手段40としては、
図3に示した第1の変更例のように、内側冷却用カバー21の上方の中央部に、リング状になった第1シャワー部材42を前記の案内部21aの外周側に位置するように設けている。
【0038】
そして、この変更例4においては、前記の吸引ファン33を回転させて、前記の外気導入部23を通して外気をインナーカバー10と内側冷却用カバー21との間に吸引し、この外気をインナーカバー10と内側冷却用カバー21との間を流して、高温のインナーカバー10を冷却させ、これにより加熱された外気を吸引ファン33の下における内側冷却用カバー21の上部中央部における案内部21aを通して外部に排気させると共に、冷却液供給装置60から冷却液案内管61を通して案内される冷却液xを三方弁62により前記のリング状になった第1シャワー部材42に供給し、この第1シャワー部材42により冷却液xを内側冷却用カバー21の上部の外周に沿ってリング状に散布させるようにする。
【0039】
また、冷却用気体案内手段30を変更させた第5の変更例においては、
図6に示すように、冷却用気体案内手段30として、外側冷却用カバー22下部の外周側に送風ファン34を設け、この送風ファン34によって外気をインナーカバー10と内側冷却用カバー21との間に送る送風管35を設けると共に、内側冷却用カバー21の上部中央部に、インナーカバー10と内側冷却用カバー21の間において加熱された外気を外部に案内する案内部21aを設け、また第1冷却液散布手段40としては、
図3に示した第1の変更例のように、内側冷却用カバー21の上方の中央部に、リング状になった第1シャワー部材42を前記の案内部21aの外周側に位置するように設けている。
【0040】
そして、この変更例5においては、前記の送風ファン34を回転させ、前記の送風管35を通して外気をインナーカバー10と内側冷却用カバー21との間に送風し、この外気をインナーカバー10と内側冷却用カバー21との間を流して、高温のインナーカバー10を冷却させ、これにより加熱された外気を内側冷却用カバー21の上部中央部における案内部21aを通して外部に排気させると共に、冷却液供給装置60から冷却液案内管61を通して案内される冷却液xを三方弁62により前記のリング状になった第1シャワー部材42に供給し、この第1シャワー部材42により冷却液xを内側冷却用カバー21の上部の外周に沿ってリング状に散布させるようにする。
【0041】
なお、前記の実施形態においては、第1冷却液散布手段40における第1シャワー部材41、42、43を変更させた例を示したが、前記の第2冷却液散布手段50における第2シャワー部材51を、第1冷却液散布手段40における第1シャワー部材41、42、43と同様に変更させることもできる。
【0042】
また、前記の実施形態1においては、冷却用カバー20として、内側冷却用カバー21と上部が開放された外側冷却用カバー22とを設けたが、前記の外側冷却用カバー22は、内側冷却用カバー21の外面に散布した冷却液xが内側冷却用カバー21の外面を流れ落ちる際における、高温の水しぶきや水蒸気が装置の周囲に拡散しないようにする安全カバーとして機能するものであり、
図7に示すように、前記の外側冷却用カバー22を設けなくても、本来の機能を発揮することができる。
【0043】
また、前記の実施形態1において、
図8に示すように、前記の外側冷却用カバー22の下端を延ばして、外側冷却用カバー22の下部における外気導入部23閉じた状態にすることもできる。このようにすると、前記の吸引ファン31を回転させた場合、外側冷却用カバー22の開放された上部から外気が吸引され、前記の内側冷却用カバー21の下部における外気導入部23を通してインナーカバー10と内側冷却用カバー21との間に導かれて、このインナーカバー10と内側冷却用カバー21との間を流れるようになり、内側冷却用カバー21がその外周側からも外気によって冷却されるようになり、冷却効率が向上する。
【0044】
次に、加熱処理された処理材Wをインナーカバー10内において冷却させる場合に、処理材Wの温度が変化する状態を、本発明のものと従来例のものとを比較したグラフを
図9に示した。なお、本発明のものによる変化を実線で、従来例のものによる変化を点線で示した。
【0045】
この結果、本発明のものにおいては、処理材Wのものを所定温度まで徐冷させる徐冷時間が従来例のものに比べてT1短くなり、これに伴って、処理材Wを目的の温度まで冷却させる時間が、従来例のものはT3にあったのに対して、本発明のものはT2になって、処理材Wを目的の温度まで冷却させる時間を大きく短縮できるようになった。
【符号の説明】
【0046】
10 :インナーカバー
20 :冷却用カバー
21 :内側冷却用カバー
21a :案内部
22 :外側冷却用カバー
23 :外気導入部
30 :冷却用気体案内手段
31 :吸引ファン
32 :案内管
33 :吸引ファン
34 :送風ファン
35 :送風管
40 :第1冷却液散布手段
41 :第1シャワー部材
42 :第1シャワー部材
43 :第1シャワー部材
50 :第2冷却液散布手段
51 :第2シャワー部材
60 :冷却液供給装置
61 :冷却液案内管
62 :三方弁(切換手段)
63 :冷却液回収部
S :スペーサー
W :処理材
x :冷却液