(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】窒化ホウ素粒子凝集体、その製造方法、組成物及び樹脂シート
(51)【国際特許分類】
C01B 21/064 20060101AFI20221114BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20221114BHJP
C08K 3/38 20060101ALI20221114BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
C01B21/064 Z
C01B21/064 M
C08J5/18 CFC
C08K3/38
C08L101/00
(21)【出願番号】P 2016163745
(22)【出願日】2016-08-24
【審査請求日】2019-06-18
【審判番号】
【審判請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】染谷 昌男
(72)【発明者】
【氏名】萩谷 朋佳
【合議体】
【審判長】宮澤 尚之
【審判官】原 和秀
【審判官】後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-543834(JP,A)
【文献】特開2013-220971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B15/00-23/00
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
C08J5/00-5/02,5/12-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
六方晶窒化ホウ素一次粒子を含む窒化ホウ素粒子凝集体であって、
前記六方晶窒化ホウ素一次粒子の(0001)面同士が重なってなり、
前記窒化ホウ素粒子凝集体の1層あたりの、前記六方晶窒化ホウ素一次粒子の粒子数が、2以下であり、
柱状の形状を有し、
前記窒化ホウ素粒子凝集体の積層方向の最長径Rと、前記窒化ホウ素粒子凝集体の幅方向の最長径rとの関係が、下記式(1)で表される、窒化ホウ素粒子凝集体。
r<R (1)
【請求項2】
請求項1に記載の窒化ホウ素粒子凝集体の製造方法であって、
前記六方晶窒化ホウ素一次粒子にカップリング剤を付加する工程(A)と、
前記工程(A)により得られたカップリング剤が付加した六方晶窒化ホウ素一次粒子を、溶媒中で分散する工程(B)と、
を含む、窒化ホウ素粒子凝集体の製造方法。
【請求項3】
前記カップリング剤が、アリール基、アミノ基、エポキシ基、シアネート基、メルカプト基及びハロゲンからなる群より選ばれるいずれか一種以上を有する、請求項2に記載の窒化ホウ素粒子凝集体の製造方法。
【請求項4】
前記カップリング剤が、架橋構造を有するシランカップリング剤、又はアリール基を有するシランカップリング剤を含む、請求項3に記載の窒化ホウ素粒子凝集体の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の窒化ホウ素粒子凝集体を含むフィラーと、樹脂とを含む、組成物。
【請求項6】
前記樹脂が熱硬化性樹脂である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の組成物と、支持体とを含む、樹脂シート。
【請求項8】
<002>X線回析の強度と<100>X線回析との強度比(I<002>/I<100>)が30以下である、請求項7に記載の樹脂シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化ホウ素粒子凝集体、その製造方法、組成物及び樹脂シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気機器あるいは電子機器の回路の高速・高集積化、及び発熱性電子部品のプリント配線板への実装密度の増加に伴って、電子機器内部の発熱密度は年々増加している。そのため、電子部品などにて発生する熱を効率よく放散させる高い熱伝導率と電気絶縁性を有する部材が求められている。
【0003】
六方晶構造を有する窒化ホウ素粒子は、合成が比較的容易でかつ熱伝導性、固体潤滑性、化学的安定性、耐熱性に優れるという特徴を有することから、熱伝導性絶縁シート、高柔軟性熱伝導性ゴム、放熱性グリース、放熱性シーラント、半導体封止樹脂等の充填剤の用途、あるいは、溶融金属や溶融ガラス成形型の離型剤、固体潤滑剤、化粧品原料等の多くの用途に利用されている。
【0004】
近年、高性能な電子機器においては、高集積化、高速化、小型化及び軽量化に伴い、各種電子部品等にて発生する発熱量が増大しており、従来にも増してより一層高い熱伝導性を有する熱伝導性シートが要望されている。そのため、熱伝導性及び電気絶縁性に優れる窒化ホウ素を、熱伝導性充填剤として有機マトリックス材料中に分散配合した種々の熱伝導性シートが提案されている。
【0005】
窒化ホウ素粒子は、六方晶の結晶形に由来して概して鱗片状を成しており、その熱伝導性に方向異方性があることが知られている。通常の鱗片状の窒化ホウ素粒子は、その面方向(a軸方向)の方が厚み方向(c軸方向)よりも熱伝導性が高い。このような鱗片状の窒化ホウ素粒子を配合した熱伝導性シートにおいては、窒化ホウ素粒子のc軸方向が絶縁放熱シートの厚み方向に配向しやすくなるので、熱伝導性シートの面方向に比べて厚み方向の熱伝導性が劣る問題がある。
【0006】
例えば、特許文献1では、このような窒化ホウ素粒子の熱異方性を改良するため、窒化ホウ素一次粒子をランダムに集合させた窒化ホウ素粒子凝集体が提案されている。
【0007】
また、特許文献2では、窒化ホウ素一次粒子を放射状に集合させた窒化ホウ素粒子凝集体が提案されている。
【0008】
さらに特許文献3では、ビニル基を有するシランカップリング剤を付加した窒化ホウ素一次粒子がランダムに配向するように集合させた窒化ホウ素粒子凝集体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平9-202663号公報
【文献】特開2015-6980号公報
【文献】特開2012-56818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1~3に記載の窒化ホウ素凝集粒子は窒化ホウ素一次粒子をランダムに集合させた凝集体(二次粒子)であるため、樹脂との混錬の際など、樹脂シートの作製過程で当該二次粒子が崩壊する場合があり、樹脂シートの厚み方向の熱伝導性については未だに改善の余地がある。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、樹脂シートの厚み方向の熱伝導性を改善することができる新規な窒化ホウ素粒子凝集体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、窒化ホウ素一次粒子の(0001)面同士が重なって凝集する新規な窒化ホウ素粒子凝集体により、上記課題が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明は以下の通りである。
<1>
六方晶窒化ホウ素一次粒子を含む窒化ホウ素粒子凝集体であって、
前記六方晶窒化ホウ素一次粒子の(0001)面同士が重なってなる、窒化ホウ素粒子凝集体。
<2>
柱状の形状を有する、<1>に記載の窒化ホウ素粒子凝集体。
<3>
前記窒化ホウ素粒子凝集体の積層方向の最長径Rと、前記窒化ホウ素粒子凝集体の幅方向の最長径rとの関係が、下記式(1)で表される、<1>又は<2>に記載の窒化ホウ素粒子凝集体。
0.3r<R (1)
<4>
<1>~<3>のいずれか1項に記載の窒化ホウ素粒子凝集体の製造方法であって、
前記六方晶窒化ホウ素一次粒子にカップリング剤を付加する工程(A)と、
前記工程(A)により得られたカップリング剤が付加した六方晶窒化ホウ素一次粒子を、溶媒中で分散する工程(B)と、
を含む、窒化ホウ素粒子凝集体の製造方法。
<5>
前記カップリング剤が、アリール基、アミノ基、エポキシ基、シアネート基、メルカプト基及びハロゲンからなる群より選ばれるいずれか一種以上を有する、<4>に記載の窒化ホウ素粒子凝集体の製造方法。
<6>
前記カップリング剤が、架橋構造を有するシランカップリング剤、又はアリール基を有するシランカップリング剤を含む、<4>又は<4>に記載の窒化ホウ素粒子凝集体の製造方法。
<7>
<1>~<3>のいずれか1項に記載の窒化ホウ素粒子凝集体を含むフィラーと、樹脂とを含む、組成物。
<8>
前記樹脂が熱硬化性樹脂である、<7>に記載の組成物。
<9>
<7>又は<8>に記載の組成物と、支持体とを含む、樹脂シート。
<10>
<002>X線回析の強度と<100>X線回析との強度比(I<002>/I<100>)が30以下である、<9>に記載の樹脂シート。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、樹脂シートとした際に、その厚み方向の熱伝導性を向上させる新規な窒化ホウ素粒子凝集体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本実施形態におけるR及びrを説明するための説明図である。
【
図2】
図2(a)は、実施例1に係る窒化ホウ素粒子凝集体の倍率120000倍のSEM像である。
図2(b)は、実施例1に係る窒化ホウ素粒子凝集体の倍率50000倍のSEM像である。
【
図3】
図3(a)は、六方晶窒化ホウ素一次粒子が凝集していない、すなわち、従来の六方晶窒化ホウ素一次粒子の倍率25000倍のSEM像である。
図3(b)は、六方晶窒化ホウ素一次粒子が凝集していない六方晶窒化ホウ素一次粒子のSEM像において、端面側が観測された部分を示すものである。
【
図4】
図4は、ランダムに凝集している従来の窒化ホウ素粒子凝集体の倍率1000倍のSEM像である。
【
図5】
図5は、
図2(a)において観察された窒化ホウ素粒子凝集体のスケールを示すための図である。
【
図6】
図6は、
図2(b)において観察された3つの窒化ホウ素粒子凝集体のスケールを示すための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について説明する。なお、本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
【0017】
(窒化ホウ素粒子凝集体)
本実施形態の窒化ホウ素粒子凝集体は、六方晶窒化ホウ素一次粒子を含む窒化ホウ素粒子凝集体であって、前記六方晶窒化ホウ素一次粒子の(0001)面同士が重なってなる。このように構成されているため、本実施形態の窒化ホウ素粒子凝集体は、樹脂シートとした際に、当該樹脂シートの厚み方向の熱伝導性を向上させることができる。樹脂シートの詳細については後述する。
【0018】
本実施形態における六方晶窒化ホウ素一次粒子の粒子形状としては、特に限定されないが、例えば、鱗片状、偏平状、顆粒状、球状、繊維状、ウィスカー状などが挙げられ、中でも鱗片状が好ましい。
【0019】
上記六方晶窒化ホウ素一次粒子の平均粒径としては、特に限定されないが、メディアン径として、0.1~50μmが好ましく、0.1~5μmがより好ましく、0.1~1μmが特に好ましい。平均粒径が上記範囲内であることにより、六方晶窒化ホウ素一次粒子の(0001)面同士が重なって凝集しやすく、その結果、樹脂シートの厚み方向の熱伝導性が向上する傾向にある。
ここで、六方晶窒化ホウ素一次粒子の平均粒径は、例えば、湿式レーザー回折・散乱法により測定することができる。
【0020】
六方晶窒化ホウ素一次粒子の(0001)面同士が重なって凝集する窒化ホウ素粒子凝集体の凝集形態としては、特に限定されるものではないが、自然凝集、凝集剤による凝集、物理的凝集などが挙げられる。自然凝集としては、以下に限定されないが、例えば、ファンデルワールス力、静電気力、吸着水分等に起因する凝集が挙げられる。凝集剤による凝集としては、以下に限定されないが、例えば、カップリング剤、無機塩、高分子物質等の凝集剤による凝集が挙げられる。例えば、カップリング剤を凝集剤として使用する場合、六方晶窒化ホウ素一次粒子の表面状態を表面エネルギーが高い状態、即ち凝集しやすい状態に変化させて凝集するのが好ましい。物理的凝集としては、混合造粒、押出造粒、噴霧乾燥などの操作により凝集する方法が挙げられる。中でも、凝集力の観点から、カップリング剤による凝集が好ましい。
【0021】
本明細書において、「窒化ホウ素粒子凝集体」とは、六方晶窒化ホウ素一次粒子を含む無機フィラーが凝集して形成された二次粒子の集合単位であり、種々の形状をとりうる。すなわち、窒化ホウ素粒子凝集体の形状は、六方晶窒化ホウ素一次粒子の(0001)面同士が重なって凝集していれば特に限定されることなく、例えば、柱状、偏平状、顆粒状、塊状、球状、繊維状等のいずれであっても構わない。
【0022】
本実施形態において、窒化ホウ素粒子凝集体が柱状の形状を有する場合、樹脂シートとした際、六方晶窒化ホウ素一次粒子のa軸方向が当該樹脂シートの厚み方向と一致する可能性(以下、単に「配向性」ともいう。)が高まる傾向にあるため好ましい。本明細書において、「柱状」とは、六方晶窒化ホウ素一次粒子の凝集態様に由来する形状を表すものであり、角柱状、円柱状、棒状等を含む形状を意味し、球状とは相違する。さらに、柱状は、鉛直方向に真っ直ぐに伸びるもの、傾斜状に伸びるもの、湾曲しながら伸びるもの、枝状に分岐して伸びるもの等も含む。窒化ホウ素粒子凝集体が柱状を有することは、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、容易に確認することができる。
【0023】
本実施形態の窒化ホウ素粒子凝集体が柱状の形状を有することの確認方法の典型例としては、以下に限定されないが、窒化ホウ素粒子凝集体の積層方向の最長径Rと、窒化ホウ素粒子凝集体の幅方向の最長径rとをSEM観察により特定し、これらの大小関係を確認する方法等が挙げられる。なお、本実施形態においては、配向性がより高まる観点から、窒化ホウ素粒子凝集体が、R>0.3rを満たすことが好ましい。また、本実施形態において、配向性がさらに高まる観点から、R>rを満たすことがより好ましい。ここでいう「積層方向」とは、すなわち、六方晶窒化ホウ素一次粒子のc軸方向に略平行となる方向である。また、「幅方向」とは、すなわち、積層方向に対して略垂直となる方向である。換言すると、幅方向は、少なくとも1つの六方晶窒化ホウ素一次粒子における(0001)面の面方向(a軸方向)に略平行となる方向である。本実施形態において、上記幅方向の最長径は、例えば、窒化ホウ素粒子凝集体が鉛直方向に真っ直ぐに伸びた柱状である場合、六方晶窒化ホウ素一次粒子の(0001)面の面方向の最長径とよく一致する傾向にあるが、このような関係に限定されず、幅方向の最長径は六方晶窒化ホウ素一次粒子の(0001)面の面方向の最長径よりも大きい値をとりうる。ここで、略平行とは、平行方向から±10°以内の状態をいうものとし、略垂直とは、垂直方向から±10°以内の状態をいうものとする。
R及びrについて、
図1を参照して具体的に説明する。
図1(a)に例示された六方晶窒化ホウ素一次粒子は、その典型例として、二次元的に長方形として示したものであり、長辺側(r)が(0001)面に対応しており、短辺側(R)が端面に対応している。
図1(b)に例示された窒化ホウ素粒子凝集体は、長方形状の六方晶窒化ホウ素一次粒子が、その長辺側、すなわち、(0001)面側同士を重ねるように凝集したものである。この凝集体の短辺側がr(すなわち、窒化ホウ素粒子凝集体の幅方向の最長径)に対応しており、長辺側がR(すなわち、窒化ホウ素粒子凝集体の積層方向の最長径)に対応している。
【0024】
本実施形態の窒化ホウ素粒子凝集体は、上述のとおり、六方晶窒化ホウ素一次粒子が積層した構造を有するものであり、その積層構造については特に限定されないが、1層あたりの六方晶窒化ホウ素一次粒子の粒子数が2以下であることが好ましく、より好ましくは1である。このような積層構造を有する場合、配向性が高まる傾向にあるため好ましい。
【0025】
上記のとおり、窒化ホウ素粒子凝集体の積層方向の最長径は、特に限定されず、また、窒化ホウ素粒子凝集体の幅方向の最長径も特に限定されない。本実施形態において、六方晶窒化ホウ素一次粒子の平均粒径をA(μm)とするとき、R=0.3×A~10×A(μm)かつr=0.3×A~3×A(μm)を満たすことが好ましい。具体的には、六方晶窒化ホウ素一次粒子の平均粒径が0.5μmの場合を例にすると、R=0.15~5μm程度の値をとることが典型的であり、r=0.15~1.5μm程度の値をとることが典型的である。上記最長径の測定方法の具体例としては、以下に限定されないが、撮影されたSEM画像において、窒化ホウ素粒子凝集体が柱状であれば、その形状を長方形に近似し、かかる長方形の長辺及び短辺の長さを計測する等が挙げられる。
【0026】
なお、本実施形態において、窒化ホウ素粒子凝集体として柱状形状を形成するように六方晶窒化ホウ素一次粒子が積層されている限り、「六方晶窒化ホウ素一次粒子の(0001)面同士が重なって」いる状態は、完全に重なっている態様に限定されるものではなく、幅方向にずれて重なっている態様も包含される。
【0027】
また、窒化ホウ素粒子凝集体の幅方向の最長径rは、六方晶窒化ホウ素一次粒子の粒径や凝集度合いなどにも依存する傾向があり、特に限定されるものではないが、樹脂シートなどの成形物の厚さT未満である(r<T)ことが好ましく、より好ましくはr<0.9×T、さらに好ましくはr<0.5×Tである。上記範囲を満たす場合、成形物表面の凹凸に起因する平滑性の低下を防止できる傾向にあり、また、より薄い樹脂シートの原料に用いることができる観点から、rはTよりも十分に小さいことが好ましい。
【0028】
本実施形態の窒化ホウ素粒子凝集体は、六方晶窒化ホウ素一次粒子以外の無機フィラーを含んでいてもよく、そのような無機フィラーとしては、以下に限定されないが、例えば、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭化ケイ素、水酸化アルミニウムなどの金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物などの金属や合金、炭素、グラファイト、ダイヤモンドからなる球状、粉状、繊維状、針状、鱗片状、ウィスカー状などの充填剤が挙げられる。これらは単独で含まれていてもよいし、複数種類を含んでいてもよい。
【0029】
本実施形態の窒化ホウ素粒子凝集体は、窒化ホウ素粒子凝集体の頑強性を上げる観点から、バインダーを含んでもよい。ここでいう「頑強性」とは、本実施形態における六方晶ホウ素一次粒子同士が結合する際の結合の強さを示す性質である。バインダーは、元来、一次粒子同士間を強固に結びつけ、凝集体の形状を安定化するために作用する。
【0030】
このようなバインダーとしては金属酸化物が好ましく、具体的には、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化カルシウム、酸化珪素、酸化ホウ素、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化チタンなどが好ましく用いられる。これらの中でも、酸化物としての熱伝導性と耐熱性、六方晶窒化ホウ素一次粒子同士を結合する結合力などの観点から、酸化アルミニウム、酸化イットリウムが好適である。なお、バインダーはアルミナゾルのような液状バインダーであってもよく、有機金属化合物のように焼成により金属酸化物に変換されるものを用いてもよい。これらのバインダーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
【0031】
(窒化ホウ素粒子凝集体の製造方法)
本実施形態の窒化ホウ素粒子凝集体は、上述した構成が得られる限り特に限定されないが、好ましくは、次の方法により製造される。すなわち、本実施形態において好ましい窒化ホウ素粒子凝集体の製造方法は、六方晶窒化ホウ素一次粒子にカップリング剤を付加する工程(A)と、工程(A)により得られたカップリング剤が付加した窒化ホウ素一次粒子を、溶媒中で分散する工程(B)と、を含むものである。また、工程(B)より得られた分散液から窒化ホウ素粒子凝集体を分離する工程(C)をさらに含むことがより好ましい。
工程(A)及び工程(B)を含む場合、カップリング剤を付加した六方晶窒化ホウ素一次粒子が、分散液中で表面電荷によって(0001)面同士が凝集し、カップリング剤間で結合相を形成する傾向にあり、本実施形態の所望とする構成を有する窒化ホウ素粒子凝集体が得られやすくなるため好ましい。
【0032】
工程(A)において、六方晶窒化ホウ素一次粒子にカップリング剤を付加する方法は特に限定されないが、攪拌機によって高速攪拌している六方晶窒化ホウ素一次粒子にカップリング剤原液を均一に分散させて処理する乾式法、カップリング剤希薄溶液に六方晶窒化ホウ素一次粒子を浸漬し攪拌する湿式法等が好適である。
工程(A)の段階において、カップリング剤付加した六方晶窒化ホウ素一次粒子間で結合し、窒化ホウ素粒子凝集体が作製される場合もある。撹拌温度は特に限定されないが、加熱や冷却などの特別な温度コントロールは必要ない。通常、撹拌により温度が上昇するが、200℃以下であることが好ましい。撹拌速度も特に限定されないが、通常10~10000rpmで撹拌することが好ましく、より好ましくは100~3000rpmで撹拌される。撹拌時間は5分~180分が好ましく、有効な撹拌時間と生産性から10分~60分がより好ましい。
【0033】
上述のカップリング剤は、凝集力及び頑強性の観点から、アリール基、アミノ基、エポキシ基、シアネート基、メルカプト基及びハロゲンからなる群より選ばれるいずれか一種以上を有することが好ましい。このようなカップリング剤としては、以下に限定されないが、例えば、シラン系、チタネート系、ジルコネート系、アルミン酸ジルコニウム系、アルミネート系等のカップリング剤が挙げられる。中でもシラン系カップリング剤(以下、「シランカップリング剤」ともいう。)が凝集力の観点から好ましい。
【0034】
上述のシランカップリング剤としては、アリール基 、アミノ基、エポキシ基、シアネート基、メルカプト基及びハロゲンからなる群より選ばれるいずれか一種以上を有することが好ましい。中でもπ―π結合を有し、シランカップリング剤間の結合がより強くなることから、アリール基を有することがより好ましい。このようなカップリング剤としては、以下に限定されないが、例えば、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、ナフチルトリエトキシシラン、(トリメトキシシリル)アントラセン、(トリエトキシシリル)アントラセン等が挙げられる。
【0035】
また、上述のカップリング剤として、架橋構造を有するシランカップリング剤を用いることも好ましい。このようなシランカップリング剤の具体例としては、以下に限定されないが、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。
【0036】
また、上述の架橋構造を有するシランカップリング剤は、有機官能基間で反応させ、架橋することによっても得られる。この場合の有機官能基の組み合わせとしては、以下に限定されないが、例えば、アミノ基-エポキシ基、エポキシ基-シアネート基、アミノ基-シアネート基、アミノ基-スルホン酸基、アミノ基-ハロゲン、メルカプト基-シアネート基等のカップリング剤の有機官能基の組み合わせが挙げられる。
【0037】
上述した各種のカップリング剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせても用いてもよい。
【0038】
工程(A)における上記カップリング剤の添加量としては、無機フィラーの表面積、すなわち、六方晶窒化ホウ素一次粒子の表面積にもよるが、六方晶窒化ホウ素一次粒子に対して、0.01~10質量%添加することが好ましく、1~2質量%添加することがより好ましい。
【0039】
本実施形態の製造方法において、前記カップリング剤を付加する際に使用できる攪拌方法としては、特に限定されず、例えば、振動ミル、ビーズミル、ボールミル、ヘンシェルミキサー、ドラムミキサー、振動攪拌機、V字混合機等の一般的な攪拌機を使用して撹拌を行うことができる。
【0040】
工程(B)において、工程(A)より得られたカップリング剤が付加した六方晶窒化ホウ素一次粒子を溶媒中で分散する。カップリング剤が付加した六方晶窒化ホウ素一次粒子を溶媒中で分散する方法は特に限定されない。芳香族骨格を有するカップリング剤を付加した六方晶窒化ホウ素一次粒子は、(0001)面同士が凝集しやすい傾向があることから、溶媒中で超音波分散するのが好ましい。
【0041】
工程(B)で用いられる溶媒については特に限定されず、水及び/又は各種の有機溶媒を用いることができる。芳香環骨格を有する、すなわち、アリール基を有するカップリング剤を付加した六方晶窒化ホウ素一次粒子を用いる場合、極性が高い溶媒が好ましい。
溶媒の使用量は、工程(C)における分離時の負荷を低減する観点、及び工程(B)において均一に分散させる観点から、六方晶窒化ホウ素一次粒子に対して0.5~20質量倍とすることが好ましい。
【0042】
工程(B)において、窒化ホウ素粒子凝集体の凝集度を調整する観点から、種々の界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、特に限定されず、例えば、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、非イオン性界面活性剤等を用いることができ、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。工程(B)より得られる分散液中の界面活性剤濃度は、特に限定されないが、通常0.1質量%以上10質量%以下とすることができ、0.5質量%以上5質量%以下とすることが好ましい。
【0043】
工程(C)において、工程(B)より得られた分散液から窒化ホウ素粒子凝集体を分離する。工程(B)より得られた分散液から窒化ホウ素粒子凝集体を分離する方法は特に限定されず、例えば、静置分離、濾過、遠心分離機、加熱処理等が使用可能である。
【0044】
これらより得られた窒化ホウ素粒子凝集体に対して、更に別の処理を行ってもよい。例えば、酸素下で温度処理する表面酸化、水蒸気処理、室温で又は加温下においてキャリア又は反応ガスを用いた有機金属化合物やポリマーによる表面変性、ベーマイト又はSiO2を用いたゾルゲル法等が利用可能である。これらの処理は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
【0045】
さらに、以上によって作製された本実施形態の窒化ホウ素粒子凝集体に対し、必要に応じて精査、粉砕、分級、精製、洗浄及び乾燥などの典型的な後工程を実行してもよい。細粒分が含まれている場合は、それを最初に取り除いてもよい。ふるい分けに代わる方法として、窒化ホウ素粒子凝集体の前記粉砕は、ふるい網、分類ミル、構造化ローラークラッシャー又は切削ホイールを用いて行ってもよい。例えば、ボールミル内での乾燥ミリング処理することも可能である。
【0046】
本実施形態の窒化ホウ素粒子凝集体の用途は、特に限定されないが、当該窒化ホウ素粒子凝集体を含むフィラーと、樹脂とを含む組成物として用いるのが好ましい。すなわち、本実施形態の組成物は、本実施形態の窒化ホウ素粒子凝集体を含むフィラーと、樹脂とを含む。上記のとおり、本実施形態の窒化ホウ素粒子凝集体を充填して得られる組成物は、熱伝導性において異方性が低く抑えられ、高い熱伝導率を有すると共に、気泡の巻き込みも少なく、高い絶縁耐性を示す。更には、樹脂に高充填しても混練時の粘度の上昇が抑えられ、優れた成形性を発現することができる。なお、本実施形態におけるフィラーは、窒化ホウ素粒子凝集体以外に無機フィラーを含んでいてもよく、そのような無機フィラーの例としては、以下に限定されないが、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭化ケイ素、水酸化アルミニウムなどの金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物などの金属や合金、炭素、グラファイト、ダイヤモンドからなる球状、粉状、繊維状、針状、鱗片状、ウィスカー状などの充填剤が挙げられる。これらは単独で含まれていてもよいし、複数種類を含んでいてもよい。
上述の樹脂としては、以下に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂(ポリオレフィン、塩化ビニル樹脂、メタクリル酸メチル樹脂、ナイロン、フッ素樹脂)、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ケイ素樹脂)、合成ゴム、液状ゲルなどが挙げられる。上記した中でも熱硬化性樹脂であることが好ましい。
本実施形態の組成物の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、各成分を順次溶剤に配合し、十分に攪拌する方法が挙げられる。この際、各成分を均一に溶解或いは分散させるため、攪拌、混合、混練処理などの公知の処理を行うことができる。具体的には、適切な攪拌能力を有する攪拌機を付設した攪拌槽を用いて攪拌分散処理を行うことで、組成物に対する窒化ホウ素粒子凝集体等のフィラーの分散性を向上させることができる。上記の攪拌、混合、混練処理は、例えば、ボールミル、ビーズミルなどの混合を目的とした装置、又は、公転又は自転型の混合装置などの公知の装置を用いて適宜行うことができる。
また、本実施形態の組成物の調製時においては、必要に応じて有機溶剤を使用することができる。有機溶剤の種類は、組成物中の樹脂成分の一部又は全部を溶解可能なものであれば、特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセルソルブ、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;プロピレングリコールモノメチルエーテル及びそのアセテートなどが挙げられる。溶剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0047】
さらに上述の組成物と、支持体とを含む樹脂シートとして用いることが好ましい。すなわち、本実施形態の樹脂シートは、本実施形態の組成物と、支持体とを含む。なお、本実施形態の樹脂シートは、薄葉化の1つの手段として用いられるもので、例えば、金属箔やフィルムなどの支持体に、直接、組成物を塗布及び乾燥して製造することができる。
本実施形態における支持体としては、特に限定されないが、各種プリント配線板材料に用いられている公知の物もの使用することができる。支持体の具体例としては、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、アルミニウム箔、銅箔、金箔など挙げられる。その中でも電解銅箔、PETフィルムが好ましい。
塗布方法としては、例えば、本実施形態の組成物を溶剤に溶解させた溶液を、バーコーター、ダイコーター、ドクターブレード、ベーカーアプリケーター等で支持体上に塗布する方法が挙げられる。
樹脂シートは、本実施形態の組成物を支持体に塗布後、半硬化(Bステージ化)させたものであることが好ましい。具体的には、例えば、上記組成物を銅箔などの支持体に塗布した後、100~200℃の乾燥機中で、1~60分加熱させる方法などにより半硬化させ、樹脂シートを製造する方法などが挙げられる。支持体に対する樹脂組成物の付着量は、樹脂シートの樹脂厚で1~1000μmの範囲が好ましい。
【0048】
該樹脂シートは、<002>X線回析の強度と<100>X線回析との強度比(I<002>/I<100>)が30以下であることが好ましい。ここで、<002>X線回析の強度と<100>X線回析との強度比(I<002>/I<100>)とは、X線を樹脂組成物のシートの厚さ方向に、即ち、シートの長さ方向に対して90°の角度で照射して得られた<002>回析線の強度と<100>回析線のピーク強度比(I<002>/I<100>)である。本実施形態において、上記強度比が30以下であることは、配向性が十分に高いことを示唆しており、シート厚み方向の熱伝導率がより高くなる傾向にある。
【0049】
本実施形態の窒化ホウ素粒子凝集体はまた、他の用途、例えば焼結体を製造するために用いてもよい。
具体的には、窒化ホウ素粒子の用途として知られている種々の用途に使用可能である。特に好適な用途を例示すれば、樹脂に充填して電気絶縁性向上や熱伝導性付与等を目的とする樹脂用充填材としての用途が挙げられる。
【0050】
また、その他の用途として、立方晶窒化ホウ素や六方晶窒化ホウ素成型品等の六方晶窒化ホウ素加工品の原料、エンジニアリングプラスチックの核剤、フェーズチェンジマテリアル、固体状又は液体状のサーマルインターフェイスマテリアル、溶融金属や溶融ガラス成形型の離型剤、化粧品、複合セラミックス原料等が挙げられる。
【実施例】
【0051】
次に、本実施形態を実施例によりさらに詳細に説明するが、本実施形態は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
【0052】
<各特性の評価方法>
(1)熱伝導率
後述するプレス成形したシートから、試験片(10mm×10mm×厚さ1mm)を切り出した。この試験片に対し、NETZSCH製キセノンフラッシュアナライザーLFA447型熱伝導率計を用いて、レーザーフラッシュでシート厚み方向の熱伝導率を測定した。
(2)配向強度比
複合シート中の六方晶窒化ホウ素一次粒子の配向性は、X線回折法によるI(002)回析線(2θ=26.5°)の強度とI(100)回析線(2θ=41.5°)の強度との比(I(002)/I(100))により評価した。
なお、六方晶である窒化ホウ素一次粒子の厚み方向は結晶学的なI(002)回析線すなわちc軸方向、面内方向はI(100)回析線すなわちa軸方向にそれぞれ一致している。窒化ホウ素粒子凝集体を構成する六方晶窒化ホウ素一次粒子が、完全にランダムな配向(無配向)である場合、(I(002)/I(100))≒6.7になる(「JCPDS[粉末X線回折データベース]」No.34-0421[BN]の結晶密度値[Dx])。(I(002)/I(100))が小さいと、六方晶の窒化ホウ素粒子のa軸方向が複合シートの厚さ方向に配向する、すなわち、配向性が高くなる結果、厚さ方向の熱伝導率が増加する。
上述した測定においては、後述するプレス成形したシートから5mm×5mm×厚さ0.2mmの複合シートを切り出して測定用サンプルとした。また、「全自動水平型多目的X線回折装置 SmartLab」(リガク社製)を用いて、上記複合シートの5mm×5mmの平面に対して、当該複合シートの厚み方向にX線を照射した。測定時は、X線源はCuKα線を用い、管電圧は45kV、管電流は360mAとした。
【0053】
(実施例1)
平均粒径0.5μmの六方晶窒化ホウ素一次粒子(昭和電工製「UHP-S2」)に対して、カップリング剤としてフェニルトリメトキシラン(東京化成製)を1.5質量%滴下し、ミキサーで攪拌し、カップリング剤を付加した六方晶窒化ホウ素一次粒子を得た。続いて、メチルエチルケトンに上記カップリング剤を付加した六方晶窒化ホウ素一次粒子を加え、超音波分散機で十分に分散し、分散液を得た。この分散液を6時間静置し、上精を取り除き、窒化ホウ素粒子凝集体を得た。この窒化ホウ素粒子凝集体をさらにエタノール中で超音波分散し、アルミホイルに撒き、溶媒が蒸発した後、カーボンテープに押し付け、窒化ホウ素粒子凝集体のSEM像を観測した。その結果を
図2(a)及び
図2(b)に示す。
【0054】
図2(a)及び
図2(b)に示すSEM像では、六方晶窒化ホウ素一次粒子の端面の方が、六方晶窒化ホウ素一次粒子の(0001)面よりも多く観測され、殆どの窒化ホウ素一次粒子は、(0001)面が重なって凝集していることがわかった。すなわち、窒化ホウ素一次粒子の(0001)面が重なって凝集した窒化ホウ素粒子(窒化ホウ素粒子凝集体)が多く観測された。
図2(a)に示す窒化ホウ素粒子凝集体について、1層あたりの六方晶窒化ホウ素一次粒子の粒子数は1であり、この窒化ホウ素粒子凝集体の積層方向の最長径Rと、窒化ホウ素粒子凝集体の幅方向の最長径rとを測定したところ、R=0.66μm、r=0.49μm、R/r=1.35であった。なお、Rは
図5に示すように特定した。また、
図2(b)の中から、特に典型的な柱状形状を有していた3つの窒化ホウ素粒子凝集体(窒化ホウ素粒子凝集体1~3)を選び、後述する方法により粒子サイズを測定した。窒化ホウ素粒子凝集体1~3は、いずれも、1層あたりの六方晶窒化ホウ素一次粒子の粒子数は1であった。この窒化ホウ素粒子凝集体は帯電しており、SEM像は歪んでいた。窒化ホウ素粒子凝集体1~3において、r及びRを求めた結果を表1に示す。なお、これらのRは
図6に示すように特定した。
【0055】
(粒子サイズの測定)
窒化ホウ素粒子凝集体の形態は、2.5μm×1.8μm四方の複数のSEM観察像を電子顕微鏡(FE-SEM-EDX(SU8220):株式会社日立ハイテクノロジー社製)により解析した。上記観察範囲に存在する、窒化ホウ素一次粒子の(0001)面が重なって凝集した窒化ホウ素粒子(窒化ホウ素粒子凝集体)のRとrとを測定した。その際、SEM画像において観察された窒化ホウ素粒子を
図1(b)に示すような長方形に近似し、Rに相当する辺の長さ及びrに相当する辺の長さを計測した。
【0056】
【0057】
(比較例1)
六方晶窒化ホウ素一次粒子に対するカップリング剤による表面処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の窒化ホウ素粒子を得た。得られた窒化ホウ素粒子のSEM観測像を、
図3(a)に示す。
【0058】
図3(a)からわかるように、多くの六方晶窒化ホウ素一次粒子の(0001)面がサンプル上面に向いているのが観測された。すなわち、六方晶窒化ホウ素一次粒子の(0001)同士が重なった構造は観測されなかった。また、
図3(b)に示すように、一部、六方晶窒化ホウ素一次粒子の端面の面方向がサンプルの厚み方向と一致しているものも観測された。これらのSEM画像において観察された窒化ホウ素粒子を
図1(a)に示すような長方形に近似し、Rに相当する辺の長さ及びrに相当する辺の長さを計測した。六方晶窒化ホウ素一次粒子の幅方向の最長径r’は0.3~1.0μmであり、六方晶窒化ホウ素一次粒子の幅方向に対して垂直となる方向の最長径R’は0.01~0.05μmであった。すなわち、観察された六方晶窒化ホウ素一次粒子は、いずれもR’<0.3r’であった。
【0059】
(比較例2)
市販の窒化ホウ素粒子ランダム凝集体(電気化学工業製「SGPS」)を用いた以外は、実施例1と同様にして比較例2の窒化ホウ素粒子凝集体を得た。得られた窒化ホウ素粒子凝集体のSEM観測像を、
図4に示す。
図4からわかるように、六方晶窒化ホウ素一次粒子はランダムに凝集した構造が観測された。すなわち、六方晶窒化ホウ素一次粒子の(0001)同士が重なった構造は観測されなかった。なお、得られたランダム凝集体において、1層あたりの六方晶窒化ホウ素一次粒子の粒子数は3以上であり、かかるランダム凝集体の形状は球状であった。
【0060】
図2に示されたように、本実施形態の製造方法を用いることで、窒化ホウ素粒子の(0001)面が重なって凝集した窒化ホウ素粒子凝集体を実現できることが確認された。
【0061】
次に、実施例1の窒化ホウ素粒子凝集体((0001)面積層型)、比較例1の六方晶窒化ホウ素一次粒子、及び比較例2の窒化ホウ素粒子凝集体(ランダム凝集体)をフィラーとして用いて、樹脂との複合シートをそれぞれ作製した。
樹脂(基剤樹脂)としては、エポキシ樹脂(日本化薬製「EPPN-501H」)100質量部と硬化剤(フェノーノボラック系硬化剤、明和化成製「DL-92」)63質量部、硬化触媒(2フェニルイミダゾール、四国化成製)0.1質量部との混合物を用いた。
次に、各基剤樹脂40体積%と、実施例1、比較例1又は比較例2のフィラー60体積%とを、メチルエチルケトンを溶媒として混合した後、この混合液を銅箔に塗工し、130℃で乾燥させ半硬化シートを作製した。これを180℃、10MPaの条件で真空プレスを用いて硬化させ複合シートを作製した。
【0062】
実施例1、比較例1及び比較例2の複合シートの熱伝導率と、当該複合シート中の六方晶窒化ホウ素一次粒子の配向強度比を測定した結果を表2に示す。
【0063】