(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】サイナプラスティ手術におけるバルーン位置決め
(51)【国際特許分類】
A61B 17/24 20060101AFI20221114BHJP
A61B 34/20 20160101ALI20221114BHJP
【FI】
A61B17/24
A61B34/20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017150464
(22)【出願日】2017-08-03
【審査請求日】2020-08-03
(32)【優先日】2016-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アクラム・ゾアビ
(72)【発明者】
【氏名】ファディ・マサルウィ
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0208252(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0018732(US,A1)
【文献】特表2013-540502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
A61B 17/24
A61B 34/00
A61B 34/20
A61M 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
カテーテルであって、
患者の器官の中へと挿入するための挿入チューブと、
前記カテーテルの遠位端に取り付けられた位置センサであって、前記患者の器官内における前記遠位端の位置を知らせるように構成された位置センサと、
前記カテーテルに沿って移動するように構成されたデバイスと、
前記患者の器官内の目標ロケーションへと前記カテーテルに沿って前記デバイスをナビゲートするように構成された制御装置を備えるハンドルと、
前記ハンドル上の前記制御装置の目標位置をマークするマーカと、を備えるカテーテルと、
プロセッサであって、
前記位置センサのロケーションに基づいて、前記デバイスの前記目標ロケーションに対応する、前記目標位置を推定するように構成されたプロセッサと、を備え、
前記制御装置は、前記ハンドルの長手方向に沿って移動するように構成され、
前記マーカは、前記ハンドルの長手方向に沿って移動可能に構成され、
前記プロセッサは、前記デバイスを動かさずに前記マーカを前記目標位置に設定する、システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記制御装置が前記マーカの位置に達したことをユーザに通知する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記カテーテルを挿入する前に取得された前記器官の解剖学的画像を受信するように、かつ前記位置センサの前記ロケーションを前記解剖学的画像と見当合わせするように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記解剖学的画像に対する前記目標ロケーションの許容境界を決定するように、かつ前記目標位置を、
前記解剖学的画像上における見当合わせされた
前記位置センサの前記ロケーションと、
前記許容境界と、
前記デバイスの既定の寸法と、に基づいて推定するように構成されている、請求項
3に記載のシステム。
【請求項5】
前記マーカは、前記ハンドルと前記制御装置の双方に対して移動するように構成された調節式の機械的ストッパを備え、前記プロセッサは、前記機械的ストッパの調整された位置を前記ハンドル上の前記目標位置に表示するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記デバイスは、前記患者の
器官内に前記カテーテルの前記遠位端を係留するための係留デバイスを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記係留デバイスは膨張式バルーンを含み、前記システムは前記プロセッサと信号通信する表示装置を備え、前記膨張式バルーンは位置センサを備えず、前記表示装置上に画像化されない、請求項
6に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には侵襲的医療用デバイスに関し、具体的にはサイナプラスティ手術(sinuplasty procedures)におけるバルーン位置決めのための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
膨張式バルーンを備えるカテーテルが、サイナプラスティなどの様々な医療用途において使用され得る。
【0003】
例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2014/0107427号には、副鼻腔開口部の治療及び灌注のための医療用デバイスについて記載されている。装置は、副鼻腔開口にアクセスし、その副鼻腔開口を拡張及び灌注する片手操作を可能にする。このデバイスは、副鼻腔案内カテーテルと、案内要素と、バルーン拡大カテーテルと、バルーンカテーテル移動メカニズムと、案内要素移動メカニズムとを備える。副鼻腔開口を治療し、副鼻腔を灌注するための方法も記載されている。
【0004】
その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2013/0184683号には、副鼻腔開口部の治療のための医療用デバイスについて記載されている。医療装置は、近位端と、遠位端と、膨張内腔及び灌注内腔を有するシャフトシステムと、を含む。シャフトシステムは、近位シャフト区分及び遠位シャフト区分を有する。膨張式バルーンは、前述の遠位端に近位の位置において、遠位シャフト区分に取り付けられる。
【0005】
その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2012/0259217号には、患者の副鼻腔小孔を拡大する方法について記載されている。この方法は、小孔壁を有する副鼻腔小孔の中に少なくとも1つのバルーンを有するカテーテルを挿入することと、バルーンが小孔壁に対して力を及ぼすようにバルーンに流体を供給することによってバルーンを膨張させることと、バルーンの少なくとも1つのパラメータを決定することと、バルーンの決定されたパラメータに少なくとも部分的に基づいて副鼻腔小孔を破損することなくバルーンが膨張され得る量を確立することと、確立された量を超えない量にバルーンを膨張させることによって副鼻腔小孔を拡大させることと、を含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で説明する本発明の実施形態は、患者の器官の中に、位置センサとデバイスとハンドルとを備えるカテーテルを挿入することを含む方法を提供する。位置センサは、カテーテルの遠位端に取り付けられる。デバイスは、カテーテルに沿って移動可能である。ハンドルは、患者の器官内の目標ロケーションへとカテーテルに沿ってデバイスをナビゲートするための制御装置を含む。位置センサのロケーションに基づいて、デバイスの目標ロケーションに対応する、ハンドル上の制御装置の目標位置が推定される。ハンドル上の制御装置の目標位置をマークするようにマーカが設定され、デバイスは、制御装置をそのマーカに設定することによって目標ロケーションへとナビゲートされる。
【0007】
いくつかの実施形態では、本方法は、カテーテルを挿入する前に器官の解剖学的画像を取得し、位置センサのロケーションを解剖学的画像と見当合わせすることを含む。他の実施形態では、解剖学的画像に対する目標ロケーションの許容境界が決定され、目標位置は、解剖学的画像上における位置センサのロケーションと、許容境界と、デバイスの既定の寸法とに基づいて推定される。更に他の実施形態では、マーカは調節式の機械的ストッパを含む。機械的ストッパの位置は、ハンドル上の目標位置に調整され、制御装置はストッパに達するまでスライドされる。
【0008】
一実施形態では、デバイスは、患者の体内にカテーテルの遠位端を係留するための係留デバイスを含む。別の実施形態では、係留デバイスは膨張式バルーンを含む。
【0009】
本発明の実施形態によれば、カテーテルとプロセッサとを備えるシステムが更に提供される。カテーテルは、患者の器官の中へと挿入するための挿入チューブと、位置センサと、デバイスと、ハンドルとを含む。位置センサは、カテーテルの遠位端に取り付けられ、患者の器官内における遠位端の位置を知らせるように構成されている。デバイスは、カテーテルに沿って移動するように構成されている。ハンドルは、患者の器官内の目標ロケーションへとカテーテルに沿ってデバイスをナビゲートするように構成された制御装置を備える。プロセッサは、位置センサのロケーションに基づいて、デバイスの目標ロケーションに対応する、ハンドル上の制御装置の目標位置を推定し、かつハンドル上の制御装置の目標位置をマークするようにマーカを設定するように構成されている。
【0010】
本発明は、図面と総合すれば、以下の発明を実施するための形態からより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態による、サイナプラスティ外科用システムの概略的な絵画図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、サイナプラスティカテーテルの概略的な絵画図である。
【
図3】本発明の実施形態による、副鼻腔開口部内にバルーンを位置決めするための方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
概要
バルーンカテーテルは、様々な医療手技において、例えば副鼻腔炎などの耳鼻咽喉(ENT)疾病を治療する際に使用され得る。膨張式バルーンを備えるカテーテルをENT系の中に挿入することによって副鼻腔炎を治療するために用いられるサイナプラスティ手術では、副鼻腔の小孔内にバルーンを正確に位置決めすることが重要である。
【0013】
ENT系内におけるカテーテルのナビゲーションの間、医師は、副鼻腔の直視又は内部撮像を得られないことがあり、したがって、ENT系におけるバルーンの実際の位置を視認できないことがある。そのような場合、医師は、誤った場所で、例えば副鼻腔小孔から部分的に又は完全に外側でバルーンを位置決めし膨張させることがあり、バルーンが適切に位置決めされるまで、バルーンを収縮させ、ナビゲーションを再試行しなければならなくなり得る。複数回のナビゲーションサイクルを予定外に適用することは、手術を長引かせ、不必要な疼痛を引き起こし、また、患者のENT系に損傷を引き起こし得る。
【0014】
以下で説明する本発明の実施形態は、患者の副鼻腔小孔内又はENT系における任意の他の目標ロケーションにバルーンを正確に位置決めするための改善された技法を提供するものである。開示する方法及びシステムは、バルーンの正確な位置決めを必要とする様々な最小侵襲手技において用いられ得る。開示する技法は、様々なタイプの医療用デバイスに実装され得るものであり、また膨張式バルーンを使用する任意の好適なカテーテル法手術において用いられ得る。開示する技法は、患者の身体の中に挿入される他のデバイスを正確に位置決めするために、更に一般的に用いられ得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、手術を計画する際及びカテーテルを挿入する前に、医師は、患者のENT系の1つ又は2つ以上の解剖学的画像を取得する。医師は次いで、例えば鼻部を通じてENT系の中にカテーテルを挿入する。いくつかの実施形態では、カテーテル法システムは、カテーテルと、患者の体内におけるカテーテルの遠位端の位置を追跡するように構成された位置追跡システムと、プロセッサを備える操作コンソールとを備える。
【0016】
一実施形態では、カテーテルは、膨張式バルーンがそれに沿って位置決めされ得る案内ワイヤと、案内ワイヤの先端に取り付けられた位置センサとを備える。カテーテルは、案内ワイヤとバルーンをナビゲートするための制御装置を含むハンドルを更に備えている。医師は、バルーンの目標ロケーションへ案内ワイヤの遠位端をナビゲートする一方で、プロセッサは、解剖学的画像と位置センサとの間で見当合わせすることによって、先端の位置を追跡する。目標ロケーションに遠位先端を位置決めした後、プロセッサは、位置センサの追跡されたロケーションを用いて、目標ロケーションへバルーンを運ぶ、ハンドルの関連する制御装置の設定を推定する。
【0017】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、推定されたロケーションを医師に表示し、医師はハンドル上にマーカを設定する。マーカは、例えば、適切なロケーションでハンドル上のバルーン制御装置を停止させる調節式の機械的ストッパを備えてもよい。
【0018】
医師は、バルーン制御装置をマーカ/ストッパへ設定することによって目標ロケーションへバルーンをナビゲートし、サイナプラスティ手術を実行する(例えば、バルーンを膨張させてカテーテルの遠位端を係留し、副鼻腔炎を治療する)。
【0019】
提案する技法は、医師が1回の試行で目標ロケーションにバルーン又は任意の他の好適な医療用デバイスを正確に位置決めすることを可能にし、それによって、不必要な疼痛を低減し、患者に対する損傷の可能性を回避し、サイナプラスティ手術を短縮化するものである。
【0020】
システムの説明
図1は、本発明の1つの実施形態による外科手術システム20を用いたサイナプラスティ手術の概略的な絵画図である。システム20はカテーテル28を備え、医師24は、患者22の1つ又は2つ以上の副鼻腔における感染など、耳鼻咽喉(ENT)の疾患を治療するために、このカテーテル28を患者22の鼻部26の中に挿入する。
【0021】
システム20は、プロセッサ34を備えるコンソール33を更に備えるが、同プロセッサ34は典型的には、信号をケーブル32経由でカテーテル28から受信するため及び本明細書に説明されるシステム20の他の構成要素を制御するために好適なフロントエンド及びインターフェイス回路を有する汎用コンピュータである。コンソール33は、入力デバイス39と表示装置36とを更に備え、表示装置36は、プロセッサ34から受信されたデータ(例えば画像)又はユーザ(例えば医師24)によって挿入された入力を表示するように構成されている。
【0022】
ここで、患者22のENT系の前側の解剖学的画像を示す挿入
図40を参照する。ENT系は、前頭洞42と上顎洞46とを含んでいる。小孔44及び48は鼻部(図示せず)の空洞と副鼻腔42及び46との間をそれぞれ接続している。カテーテル28は、遠位端38を有する案内ワイヤ29を備えている。一実施形態では、遠位端38の先端は、案内ワイヤ29の残りの末端区分55の末端に取り付けられた位置センサ56を備える。カテーテル28は膨張式バルーン50を更に備え、この膨張式バルーン50は、2つの状態、例えば、展開(膨張)状態と圧縮状態とに構成され得る。バルーン50が圧縮状態にあるとき、カテーテルは目標ロケーションへとナビゲートされ得る。バルーンは次いで、患者22のENT系における目標ロケーション(例えば小孔44)にカテーテル28を係留するために、好適な流体(例えば食塩水)を用いて展開状態へと膨張される。
【0023】
カテーテル28はハンドル30を更に備え、ハンドル30はカテーテル28の近位端に配置される。ハンドル30は、案内ワイヤ29のナビゲーション及び案内ワイヤ29に沿ったバルーン50の運動を制御するように構成されている。ハンドル30について、以下の
図2で詳細に説明する。
【0024】
一実施形態では、位置センサ56の位置は典型的には、システム20に備えられたカテーテル追跡システムにおける磁気位置検知によって測定される。この場合、コンソール33は駆動回路(図示せず)を備え、その駆動回路は、テーブル31上に横たわった患者22の体外における既知の位置、例えば患者の頭部の下に定置された磁界発生器(図示せず)を駆動する。
【0025】
この位置検知の方法は、様々な医療用途で、例えば、Biosense Webster Inc.(Diamond Bar,Calif.)が製造するCARTO(商標)システムに実装されており、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号及び同第6,332,089号、PCT特許公開WO 96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455 A1号、同第2003/0120150 A1号及び同第2004/0068178 A1号に詳細に記述されており、それらの開示は全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
サイナプラスティ手術の間、医師24は、副鼻腔42の中へと案内ワイヤ29の先端をナビゲートする。場合によっては、例えば副鼻腔内の感染を治療するとき、医師が、例えば小孔44内でバルーン50を膨張させることによって、カテーテルの遠位先端を係留することが重要である。一実施形態では、バルーン50は、Acclarent Inc.(カタログ番号RSP0516MFS)によって製造されているサイナプラスティバルーンなどのように、16mm長であってよく、また5mmの直径を有してもよいが、他の寸法を有する更に他の任意の好適なバルーンが、開示される技法で使用されてもよい。
【0027】
ENT系の中に遠位端38を挿入した後、医師36は小孔44にバルーン50をナビゲートする。通常、バルーン50は位置センサを備えておらず、そうでなくても表示装置36上に撮像されないことに留意されたい。安全にかつ効率的に治療を実施するためには、小孔44内でバルーン50を正確に位置決めすることが重要である。例えば、鼻腔内で小孔44の手前にバルーン50を位置決めすると、医師が副鼻腔42内に末端区分55を係留できないことがあるのに対し、副鼻腔42内で小孔44より奥にバルーンを位置決めすると、医師がその中の感染を治療する妨げになり得る。
【0028】
図1の例では、バルーン50は、副鼻腔42内に末端区分55を係留するために使用されている。別の実施形態では、バルーン50の代わりに、任意の他の好適なデバイスが、開示する技法を用いて位置決めされ得る。そのようなデバイスは、例えば、末端区分を係留するための又は任意の他の診断若しくは治療を目的とした、代替的な係留デバイスを含んでもよい。例えば、バルーンは、肺静脈(PV)隔離術において肺静脈における心不整脈を治療するために使用されてもよい。他の用途では、上記で説明した技法を用いて、薬物分配デバイス又はステントがヒトの器官内の特定のロケーションにナビゲートされ得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、
図2及び
図3で以下で詳細に説明するように、医師24が小孔44内に正確にバルーン50を位置決めするのを支援するように構成されている。図示を平易で明瞭なものとするため、
図1には開示されている技法に関連する要素のみを示している。システム20は典型的には、開示されている技法に直接には関連せず、したがって
図1及び対応する説明から意図的に省略されている付加的なモジュール及び要素を備える。
【0030】
プロセッサ34は、システムによって使用される機能を実行し、処理又はその他の方法でソフトウェアにより使用されるデータをメモリ(不図示)に記憶させるようにプログラムされ得る。このソフトウェアは、例えばネットワークを介して電子的形態でプロセッサにダウンロードするか、又は光学的、磁気的若しくは電子的記録媒体など、持続性の有形媒体上に提供されてもよい。あるいは、プロセッサ34の機能のうちの一部又は全てが、専用の又はプログラム可能なデジタルハードウェア構成要素によって実行されてもよい。
【0031】
図2は、本発明の一実施形態による、カテーテル28の概略的な絵画図である。遠位端38は、案内ワイヤ29の先端に位置センサ56を備えている。末端区分55の長さは、案内ワイヤに沿ったセンサ56とバルーン50の位置との間の距離を表している。代替的な実施形態では、案内ワイヤ29に沿ったバルーン50及びセンサ56の任意の好適な構成が用いられ得る。
【0032】
一実施形態では、バルーン50は、案内ワイヤ29に沿って移動可能であるが、案内ワイヤ自体のナビゲーションとは別にナビゲートされる。末端区分55の長さはこのようにして、ハンドル30によって調整可能かつ制御可能である。
【0033】
ここで、挿入
図58を参照するが、この挿入
図58は、ハンドル30の頂面図であり、案内ワイヤ29をナビゲートするために、また案内ワイヤに沿ってバルーン50を移動させるために使用される制御装置を示している。ハンドル30は、副鼻腔42の中へと案内ワイヤ29をスライドさせるように構成されたワイヤスライダ60と、例えば遠位端38のナビゲーションの間に遠位端38を回転させるように構成されたワイヤスピナ62とを備えている。ハンドル30は、バルーンスライダ66を更に備え、バルーンスライダ66は、小孔44にバルーンを位置決めするために、案内ワイヤ29に沿ってバルーン50を移動させるように構成されている。医師24は、サイナプラスティ手術の一部として、ワイヤスライダ60、ワイヤスピナ62及びバルーンスライダ66を操作する。
【0034】
いくつかの実施形態では、ハンドル30は、目盛り68と調節式マーカ64とを備える。マーカ64は、小孔44内の目標ロケーションにバルーン50を運ぶ位置スライダ66の位置を示す。一実施形態では、プロセッサ34は、目盛り68上のマーカ64の正しい位置を推定するように、またその推定されたマーカ位置を医師に表示するように構成されている。
【0035】
一実施形態では、プロセッサ34は、位置センサ56を追跡する位置追跡システムから遠位端のロケーションを受信する。プロセッサ34は、バルーン50の目標ロケーションを設定するために、CT画像に画像処理技法を適用して副鼻腔42の境界を決定するように構成されている。プロセッサは、CT画像に基づいて小孔44の長さを推定するように、またバルーン50の既定の長さを追加的に考慮して目盛り68上におけるマーカ64の位置を推定するように更に構成されている。
【0036】
プロセッサ34は、目盛り68上における調節式マーカ64の推定位置を表示するように更に構成され、その推定位置は、小孔44内におけるバルーン50の目標ロケーションに対応する。挿入
図58の例では、医師24は、マーカ64の位置が目盛り68上の数値7.5に達するまで約2.5cm前方にバルーンスライダ66をスライドさせることによって、バルーン50を目標ロケーション(例えば小孔44)に位置決めし得る。この技法を用いると、バルーンが位置センサを備えておらず、またそうでなくても表示装置36上に撮像されない場合でも、医師は高精度でバルーン50を位置決めすることが可能となる。
【0037】
いくつかの実施形態では、マーカ64は、操作者(例えば医師24)がプロセッサ34からの入力に基づいて手動で表示装置36上で設定する機械的ストッパであってもよい。代替的な実施形態では、マーカ64は、目盛り68上の光学的表示装置として実装される。更なる代替的な実施形態では、目盛り68及びマーカ64はそれぞれ、プロセッサ34が直接目盛り68上にマーカ64を表示し得るように、デジタル目盛り及びデジタルマーカとして実装されてもよい。プロセッサ34は更に、スライダ66がマーカ64の位置に達したという指示を医師24に与えてもよい。いくつかの実施形態では、マーカ64は暗黙的であり、例えば、スライダ66が位置決めされるべき目盛り68上の値の指示のみを含んでもよい。更に代替的には、ソフトウェア及び/又はハードウェアに形成された任意の他の好適なマーキング機器もまた使用されてもよい。
【0038】
図2に示すようなハンドル30及びその様々な制御装置の構成は、純粋に概念を明確にする目的で選ばれた例示的な構成である。代替的な実施形態では、開示する技法は任意の他の好適なハンドル構成と共に使用され得る。例えば、バルーン50の位置は、必ずしもスライダ66などの直線スライダを使用せずに、任意の他の好適なタイプの制御装置を使用して制御されてよい。例えば、バルーン50の位置は、回転ダイアル又はノブによって制御されてもよい。目盛り68の形状及びマーカ64の位置決めは通常、バルーン制御の形及び運動範囲によって決まる。
【0039】
図3は、本発明の実施形態による、小孔44内にバルーン50を位置決めするための方法を概略的に示すフローチャートである。この方法は、挿入工程100において、(
図2に示すように)医師24が患者22の鼻部26の中にカテーテル28の案内ワイヤ29を挿入することで始まる。
【0040】
一実施形態では、サイナプラスティ手術を開始する前に、医師24は、例えば
図1の挿入
図40に示すように、患者22の頭部の解剖学的画像を取得し得る。解剖学的画像は、コンピュータ断層撮影(CT)などの任意の好適な医用撮像技法を用いて得られてよい。
【0041】
先端ナビゲーション工程102において、医師24は末端区分55を副鼻腔42の中にナビゲートする。いくつかの実施形態では、医師24は、ワイヤスライダ60を使用して案内ワイヤをスライドさせ、ワイヤスピナ62を使用して案内ワイヤを回転させる。カテーテル28は、目標ロケーション、例えば小孔44においてバルーン50を膨張させることによって末端区分55を係留するように構成されている。医師24が手術を実施する(例えば、副鼻腔炎又は任意の他のENTの疾病を治療する)副鼻腔42は、小孔44と比べて、ENT系のより奥に位置している。したがって、医師24は、通常は区分55の遠位先端に取り付けられる位置センサ56を、小孔44よりも奥に副鼻腔42の中へとナビゲートする。
【0042】
代替的な実施形態では、位置センサは、案内ワイヤに沿ったバルーンの目的のロケーションに取り付けられ得るが、その場合、医師24は位置センサを副鼻腔42の中にナビゲートする代わりに小孔44にナビゲートし得る。
【0043】
位置推定工程104において、プロセッサ34は、位置センサ56のロケーション、CT画像、及びバルーン50の長さを受信し、これらの入力に基づいて、目盛り68上のマーカ64の位置を推定する。マーカ64の位置は、案内ワイヤに沿ったバルーンの位置に対応し、したがって小孔44におけるバルーンの位置にも対応する。
【0044】
マーカ設定工程106において、医師24は、プロセッサ36からマーカ位置推定値を(例えば、表示装置36にテキストとして)受信し、上記で説明したように、例えば機械的ストッパとして目盛り68上でマーカ64を手動で調整し得る。代替的な実施形態では、プロセッサ34は、例えば目盛り68上の光学的表示装置として、マーカ64を自動式で調整してもよい。
【0045】
バルーンナビゲーション工程108において、医師24は、目盛り68上のマーカ64によって指示された位置にバルーンスライダ66を移動させることによって、案内ワイヤ29に沿って小孔44内の目標ロケーションへとバルーン50をナビゲートする。このナビゲーション方法は、医師がバルーン50の実際のロケーションを見ることができず、上記で説明したように、プロセッサ34によるマーカ位置推定値に依存しているという意味で「盲検的」である。一実施形態では、小孔44の目標ロケーションにバルーン50を位置決めした後、医師24は、バルーン50が小孔44内に適切に位置決めされていることを確認するために、(例えば蛍光透視法を用いて)付加的な解剖学的画像を取得してもよい。開示する技法は、この確認の必要性を低減し、それによって、蛍光透視法のリソース、患者22に対する過剰な照射を節減し、サイナプラスティ手術の全体的なサイクル時間を低減するものである。
【0046】
バルーン膨張工程110において、医師24は、遠位端38を係留するために、またサイナプラスティ手術を実行するために、小孔44内でバルーン50を膨張させる。
【0047】
本明細書で説明した実施形態は主にサイナプラスティ手術においてカテーテル遠位端を係留することを扱うものであるが、本明細書で説明した方法及びシステムはまた、患者の体内の選択されたロケーションに好適な医療用デバイスを案内する電気生理学(EP)及び介入的心臓病学又は任意の他のカテーテル法手術など、他の用途でも用いられ得る。
【0048】
上に述べた実施形態は例として挙げたものであり、本発明は上記に具体的に示し、説明したものに限定されない点は理解されよう。むしろ本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及びその一部の組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者により想到されるであろう、従来技術において開示されていない変形及び修正を含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献においていずれかの用語が、本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0049】
〔実施の態様〕
(1) 方法であって、
患者の器官の中にカテーテルを挿入することであって、前記カテーテルは、
前記カテーテルの遠位端に取り付けられた位置センサと、
前記カテーテルに沿って移動可能であるデバイスと、
前記患者の器官内の目標ロケーションへと前記カテーテルに沿って前記デバイスをナビゲートするための制御装置を含むハンドルとを備える、ことと、
前記位置センサのロケーションに基づいて、前記デバイスの前記目標ロケーションに対応する、前記ハンドル上の前記制御装置の目標位置を推定することと、
前記ハンドル上の前記制御装置の前記目標位置をマークするようにマーカを設定することと、
前記制御装置を前記マーカに設定することによって前記デバイスを前記目標ロケーションへとナビゲートすることと、を含む、方法。
(2) 前記カテーテルを挿入する前に前記器官の解剖学的画像を取得し、前記位置センサの前記ロケーションを前記解剖学的画像と見当合わせすることを含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記目標位置を推定することは、前記解剖学的画像に対する前記目標ロケーションの許容境界を決定し、前記目標位置を、
前記解剖学的画像上における前記位置センサの前記ロケーションと、
前記許容境界と、
前記デバイスの既定の寸法と、に基づいて推定することを含む、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記マーカは調節式の機械的ストッパを備え、前記マーカを設定することは、前記機械的ストッパの位置を前記ハンドル上の前記目標位置に調整することを含み、前記制御装置を設定することは、前記ストッパに達するまで前記制御装置をスライドさせることを含む、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記デバイスは、前記患者の体内に前記カテーテルの前記遠位端を係留するための係留デバイスを含む、実施態様1に記載の方法。
【0050】
(6) 前記係留デバイスは膨張式バルーンを含む、実施態様5に記載の方法。
(7) システムであって、
カテーテルであって、
患者の器官の中へと挿入するための挿入チューブと、
前記カテーテルの遠位端に取り付けられた位置センサであって、前記患者の器官内における前記遠位端の位置を知らせるように構成された位置センサと、
前記カテーテルに沿って移動するように構成されたデバイスと、
前記患者の器官内の目標ロケーションへと前記カテーテルに沿って前記デバイスをナビゲートするように構成された制御装置を備えるハンドルとを備えるカテーテルと、
プロセッサであって、
前記位置センサのロケーションに基づいて、前記デバイスの前記目標ロケーションに対応する、前記ハンドル上の前記制御装置の目標位置を推定し、
前記ハンドル上の前記制御装置の前記目標位置をマークするようにマーカを設定するように構成されたプロセッサと、を備える、システム。
(8) 前記プロセッサは、前記カテーテルを挿入する前に取得された前記器官の解剖学的画像を受信するように、かつ前記位置センサの前記ロケーションを前記解剖学的画像と見当合わせするように構成されている、実施態様7に記載のシステム。
(9) 前記プロセッサは、前記解剖学的画像に対する前記目標ロケーションの許容境界を決定するように、かつ前記目標位置を、
前記解剖学的画像上における前記見当合わせされた位置センサの前記ロケーションと、
前記許容境界と、
前記デバイスの既定の寸法と、に基づいて推定するように構成されている、実施態様8に記載のシステム。
(10) 前記マーカは調節式の機械的ストッパを備え、前記プロセッサは、前記機械的ストッパの調整された位置を前記ハンドル上の前記目標位置に表示するように構成されている、実施態様7に記載のシステム。
【0051】
(11) 前記デバイスは、前記患者の体内に前記カテーテルの前記遠位端を係留するための係留デバイスを含む、実施態様7に記載のシステム。
(12) 前記係留デバイスは膨張式バルーンを含む、実施態様11に記載のシステム。