(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】粉砕機及び粉砕機の運転方法
(51)【国際特許分類】
B02C 15/04 20060101AFI20221114BHJP
B02C 25/00 20060101ALI20221114BHJP
B02C 23/12 20060101ALI20221114BHJP
B07B 7/083 20060101ALI20221114BHJP
F23K 3/02 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
B02C15/04
B02C25/00 C
B02C23/12
B07B7/083
F23K3/02 302
F23K3/02 D
(21)【出願番号】P 2017212873
(22)【出願日】2017-11-02
【審査請求日】2020-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】植田 優也
(72)【発明者】
【氏名】松本 慎治
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-068904(JP,A)
【文献】特開平07-308637(JP,A)
【文献】特開昭61-046285(JP,A)
【文献】特開平04-215875(JP,A)
【文献】特開平03-118850(JP,A)
【文献】特開平04-145957(JP,A)
【文献】特開2000-249331(JP,A)
【文献】特開平08-252476(JP,A)
【文献】特開2015-001347(JP,A)
【文献】特開2008-232466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 15/04
B02C 25/00
B07B 4/02、7/08-10
F23C 1/00
F23K 3/02
F23N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された固体燃料を
粉砕ローラと粉砕テーブルとの間で押圧することで粉砕する粉砕部と、
中心軸線の周りに所定の間隔で設けられた複数の羽根を具備する分級部を、該中心軸線を中心として回転することで、前記粉砕部で粉砕された微粉燃料を
微粒と粗粒とに分級する
とともに、前記粗粒を前記粉砕部へ戻す回転式分級機と、
前記分級部の内側に設けられ、前記分級部によって分級された前記微粉燃料を外部に排出する排出部と、
前記微粉燃料を前記粉砕部から前記排出部に搬送する搬送用ガスを供給する搬送用ガス供給部と、
前記分級部の前記中心軸線を中心とした回転方向を制御する回転方向変更手段と、
前記分級部を正回転させる正回転運転モード及び前記分級部を前記正回転とは反対方向である逆回転させる逆回転運転モードを有し、粉砕機の運転中と停止中の何れも前記正回転運転モードと前記逆回転運転モードとを切り換えられる制御装置と、を備え、
前記複数の羽根は、それぞれ、平面視したときに、半径方向外側端部の回転軌跡に対する接線に対して傾斜するように設けられている粉砕機。
【請求項2】
前記搬送用ガス供給部と前記排出部との差圧を計測する差圧計測手段と、を備え、
前記差圧計測手段が計測した差圧に基づいて、前記分級部の回転方向を決定する請求項1に記載の粉砕機。
【請求項3】
前記回転式分級機の前記分級部に対して駆動力を供給する駆動部と、
前記駆動部の駆動力を計測する駆動力計測手段と、を備え、
前記駆動力計測手段が計測した駆動力に基づいて、前記分級部の回転方向を決定する請求項1に記載の粉砕機。
【請求項4】
前記分級部の回転数を制御する回転数制御手段を備える請求項1に記載の粉砕機。
【請求項5】
前記回転式分級機の前記分級部に対して駆動力を供給する駆動部と、
前記回転式分級機を前記駆動部から駆動力が供給されない状態とする切り離し手段と、を備える請求項1から請求項4のいずれかに記載の粉砕機。
【請求項6】
供給された固体燃料を
粉砕ローラと粉砕テーブルとの間で押圧することで粉砕する粉砕部と、
中心軸線の周りに所定の間隔で設けられた複数の羽根を具備する分級部を、該中心軸線を中心として回転することで、前記粉砕部で粉砕された微粉燃料を
微粒と粗粒とに分級する
とともに、前記粗粒を前記粉砕部へ戻す回転式分級機と、
前記分級部の内側に設けられ、前記分級部によって分級された前記微粉燃料を外部に排出する排出部と、
前記微粉燃料を前記粉砕部から前記排出部に搬送する搬送用ガスを供給する搬送用ガス供給部と、
前記回転式分級機の前記分級部に対して駆動力を供給する駆動部と、
前記分級部を前記駆動部から駆動力が供給されない状態であって、前記分級部が自由に回転する状態とする切り離し手段と、を備え、
前記複数の羽根は、それぞれ、平面視したときに、半径方向外側端部の回転軌跡に対する接線に対して傾斜するように設けられている粉砕機。
【請求項7】
前記搬送用ガス供給部と前記排出部との差圧を計測する差圧計測手段と、を備え、
前記差圧計測手段が計測した差圧に基づいて、前記切り離し手段を作動させる請求項5または請求項6に記載の粉砕機。
【請求項8】
前記駆動部の駆動力を計測する駆動力計測手段を備え、
前記駆動力計測手段が計測した駆動力に基づいて、前記切り離し手段を作動させる請求項5または請求項6に記載の粉砕機。
【請求項9】
供給された固体燃料を
粉砕ローラと粉砕テーブルとの間で押圧することで粉砕する粉砕部と、
中心軸線の周りに所定の間隔で設けられた複数の羽根を具備する分級部を、該中心軸線を中心として回転することで、前記粉砕部で粉砕された微粉燃料を
微粒と粗粒とに分級する
とともに、前記粗粒を前記粉砕部へ戻す回転式分級機と、
前記分級部の内側に設けられ、前記分級部によって分級された前記微粉燃料を外部に排出する排出部と、
前記微粉燃料を前記粉砕部から前記排出部に搬送する搬送用ガスを供給する搬送用ガス供給部と、
前記分級部の前記中心軸線を中心とした回転方向を制御する回転方向変更手段と、
前記分級部を正回転させる正回転運転モード及び前記分級部を前記正回転とは反対方向である逆回転させる逆回転運転モードを有し、粉砕機の運転中と停止中の何れも前記正回転運転モードと前記逆回転運転モードとを切り換えられる制御装置と、を備え、
前記複数の羽根は、それぞれ、平面視したときに、半径方向外側端部の回転軌跡に対する接線に対して傾斜するように設けられている粉砕機の運転方法であって、
前記回転方向変更手段によって前記分級部の回転方向を変更するステップを備える粉砕機の運転方法。
【請求項10】
供給された固体燃料を
粉砕ローラと粉砕テーブルとの間で押圧することで粉砕する粉砕部と、
中心軸線の周りに所定の間隔で設けられた複数の羽根を具備する分級部を、該中心軸線を中心として回転することで、前記粉砕部で粉砕された微粉燃料を
微粒と粗粒とに分級する
とともに、前記粗粒を前記粉砕部へ戻す回転式分級機と、
前記分級部の内側に設けられ、前記分級部によって分級された前記微粉燃料を外部に排出する排出部と、
前記微粉燃料を前記粉砕部から前記排出部に搬送する搬送用ガスを供給する搬送用ガス供給部と、
前記回転式分級機の前記分級部に対して駆動力を供給する駆動部と、
前記分級部を前記駆動部から駆動力が供給されない状態であって、前記分級部が自由に回転する状態とする切り離し手段と、を備え、
前記複数の羽根は、それぞれ、平面視したときに、半径方向外側端部の回転軌跡に対する接線に対して傾斜するように設けられている粉砕機の運転方法であって、
前記切り離し手段によって、前記分級部を前記駆動部から駆動力が供給されない状態とするステップを備える粉砕機の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粉砕機及び粉砕機の運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボイラなどに供給される炭素含有の固体燃料として、木質系などのバイオマス燃料を使用する場合がある。バイオマス燃料は、細かく粉砕し難く、かつ、燃焼性が高く比較的大きな粒径であっても好適に燃焼させることができる性質である。また、バイオマス燃料を固体燃料として使用する場合、粉砕性から石炭と比較して約5~10倍程度大きい粒径の状態でボイラに設けられたバーナに供給される。
【0003】
このように、石炭とバイオマス燃料とでは、バーナに供給する粒径が異なるので、固体燃料の粉砕及び分級を行う粉砕機は、バイオマス燃料粉砕用途と石炭粉砕用途は異なる設計(例えばハウジング形状、粉砕テーブルの回転速度や回転式分級機の回転速度など)とし、個別設計することが本来好ましい。しかしながら、設備コストや設置スペース等の観点から同一の粉砕機でバイオマス燃料と石炭の両方の固体燃料に対して改造を伴わずに対応することができ、石炭とバイオマス燃料とを共用することができる粉砕機を使用してバイオマス燃料へ適用できることが望まれている。
【0004】
石炭とバイオマス燃料とを共用するものに特許文献1がある。特許文献1では、石炭専砕モードとバイオマス専砕モードを有し、バイオマス専砕のモードの場合には分級機はほぼ停止とし、粉砕機内の差圧を安定させる装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、粉砕されにくいバイオマス燃料を粉砕機で粉砕した場合には、回転式分級機で分級された粗粒が粉砕部に戻されて再度粉砕されることで、粉砕機内部を循環するバイオマス燃料の量が増加し、増加に伴って粉砕機内の差圧が上昇する可能性がある。粉砕機内の差圧が上昇すると、粉砕機の運転に際して種々の問題が生じるため、好ましくない。このため、粉砕機内の差圧の上昇を抑制するために、回転式分級機の回転を調整することで分級性能の調整を行い、バイオマス燃料の粗粒が回転式分級機を通過してボイラに供給され易くすることで、粉砕機内を循環するバイオマス燃料の量を低減することが考えられている。
特許文献1に記載の装置では、バイオマス専砕モードでは、回転式分級機をほぼ停止させている。しかしながら、回転式分級機の回転を停止させるだけでは、粉砕機内を循環するバイオマス燃料を好適に低減することができず、粉砕機内の差圧を好適に抑制できない可能性があった。
【0007】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、供給される固体燃料の性質に依らずに、粉砕機内部の差圧を所定の差圧以下とし、好適に処理することができる粉砕機及び粉砕機の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の粉砕機及び粉砕機の運転方法は以下の手段を採用する。
本発明の幾つかの実施形態に係る粉砕機は、供給された固体燃料を粉砕する粉砕部と、中心軸線周りに所定の間隔で設けられた複数の羽根を具備する分級部を、該中心軸線回りに回転することで、前記粉砕部で粉砕された微粉燃料を分級する回転式分級機と、前記分級部の内側に設けられ、前記分級部によって分級された前記微粉燃料を外部に排出する排出部と、前記分級部の前記中心軸線回りの回転方向を制御する回転方向変更手段と、前記分級部を正回転させる正回転運転モード及び前記分級部を前記正回転とは反対方向である逆回転させる逆回転運転モードを有し、粉砕機の運転中と停止中の何れも前記正回転運転モードと前記逆回転運転モードとを切り換えられる制御装置と、を備え、前記複数の羽根は、それぞれ、平面視したときに、半径方向外側端部の回転軌跡に対する接線に対して傾斜するように設けられている。
【0009】
上記構成では、複数の羽根の回転軌跡に対する接線に対して傾斜するように設けられているので、接線と羽根とが為す角度には、鈍角(90度よりも大きい角度)と鋭角(90度よりも小さい角度)とが存在する。
【0010】
鋭角となる角度が回転方向の前方となるように分級部が回転した場合(すなわち、羽根の外周端部よりも内周端部が回転方向の前方となるように分級部が回転した場合。以下、この回転方向を「第1方向」という。)、羽根の回転方向の前面は、分級部の外側方向を向いている。これにより、粉砕された固体燃料である微粉燃料が羽根に衝突し易くなるとともに、羽根に衝突した微粉燃料には、遠心力が強く作用するので、分級部の外側方向に弾かれる。微粉燃料のうち特に、質量及び慣性力が大きく直線性が高い粗粒は、微粒と比較して、衝突による遠心力が強く作用するので、より顕著に外側方向に弾かれ易くなり、より粉砕部に戻され易くなる。一方、微粉燃料のうち微粒は、質量及び慣性力が小さくて直進性が低いので、羽根に衝突し難く、また衝突した場合であっても作用する遠心力が小さいので、粗粒と比較して、分級部の内部に入り込み易い。このように、分級部が第1方向に回転している場合には、粗粒が粉砕部に戻され易く、微粒が分級部の内部に入り込み易いので、比較的分級性能が高くなる。
【0011】
一方、第1方向とは逆の方向であって、鈍角となる角度が回転方向の前方となるように分級部が回転した場合(すなわち、羽根の外周端部よりも内周端部が回転方向の後方となるように分級機が回転した場合。以下、この回転方向を「第2方向」という。)、羽根の回転方向の前面は、分級部の内側方向を向いている。これにより、羽根に衝突した粉砕された固体燃料である微粉燃料は、分級部の内側方向に弾かれ易い。したがって、微粉燃料は、羽根の回転方向の前面が分級部の外側方向を向いている場合と比較して、分級部の内側に流入し易く、排出部から排出され易い。微粉燃料のうち質量及び慣性力が大きく直線性が高い粗粒であっても、分級部の内側に流入し易くなるので、分級部が第2方向に回転している場合には、第1方向に回転している場合に比べて、分級性能を抑制することができる。このように、分級部が第2方向に回転している場合には、分級性能が抑制され、排出部から粉砕機の外部へ微粉燃料の微粒だけでなく粗粒も排出され易くなるので、粉砕機内を循環する微粉燃料の量が減少する。粉砕機内を循環する微粉燃料の量が減少すると、粉砕機内の差圧の上昇が抑制される。これにより、粉砕機の内部に供給する固体燃料に例えば木質系などのバイオマス燃料を使用する場合であっても、循環する微粉燃料の量が減少するので、粉砕機内の差圧を所定の値以下とすることができる。したがって、分級部が第2方向に回転している場合には、粉砕機の内部に供給する固体燃料を増加させ、より多くの微粉燃料を排出部から排出させることができる。よって、微粉燃料の粒度がボイラ等の燃焼性に影響しない範囲で、排出部から排出された微粉燃料がボイラ等に供給される場合には、多くの微粉燃料をボイラ等に供給することができる。
【0012】
このように、上記構成では、分級部の回転方向によって、的確に、供給される固体燃料の性質に応じた分級性能とすることができる。したがって、例えば、石炭のように、粉砕し易く、また、燃焼性が特に高くなく細かい粒径まで粉砕する必要がある固体燃料を粉砕して微粉燃料とする場合には、駆動部が分級部を第1方向に回転させることで、所定の細かい粒径となるまで石炭を粉砕することができる。一方、例えば、バイオマス燃料のように、細かく粉砕し難く、かつ、燃焼性が高く細かい粒径まで粉砕する必要がない固体燃料を粉砕して微粉燃料とする場合には、駆動部が分級部を第2方向に回転させることで、粉砕機内の差圧の上昇を抑制できるので、粉砕機内の差圧を所定の値以下に維持した状態で、より多くのバイオマス燃料を粉砕機内に供給し、排出部から排出される微粉燃料を増加させることができる。
【0013】
以上から、上記構成では、分級部の回転方向を変更することで、回転式分級機の分級性能を調整可能となるので、供給された固体燃料の性質に応じた分級性能とすることができる。これにより、供給される固体燃料の性質に依らずに、粉砕機内部の差圧を所定の差圧以下とし、微粉燃料の粒度がボイラ等の燃焼性に影響しない範囲で、好適に処理することができる。したがって、粉砕機を複数の性質の異なる固体燃料に対して共用可能とすることができる。
また、複数の性質の異なる固体燃料に対して共用可能とすることができるので、性質の異なる固体燃料を処理するために、それぞれに対して粉砕機を設ける場合に比べて、設備コストを大幅に低減し設置スペースを削減することができる。
【0014】
本発明の幾つかの実施形態に係る粉砕機は、前記微粉燃料を前記粉砕部から前記排出部に搬送する搬送用ガスを供給する搬送用ガス供給部と、前記搬送用ガス供給部と前記排出部との差圧を計測する差圧計測手段と、を備え、前記差圧計測手段が計測した差圧に基づいて、前記分級部の回転方向を決定してもよい。
【0015】
粉砕機内の差圧が所定の値よりも高まると、搬送用ガスとして必要な供給流量が低下するなど粉砕機の運転に際して種々の問題が生じるため好ましくないが、上記構成では、差圧計測手段が計測した差圧に基づいて分級部の回転方向を決定している。このように、粉砕機の内部の差圧に基づいて、分級部の回転方向を決定することで、より確実に粉砕機内の差圧を所定の値以下とすることができる。
【0016】
本発明の幾つかの実施形態に係る粉砕機は、前記回転式分級機の前記分級部に対して駆動力を供給する駆動部と、前記駆動部の駆動力を計測する駆動力計測手段と、を備え、前記駆動力計測手段が計測した駆動力に基づいて、前記分級部の回転方向を決定してもよい。
【0017】
上記構成では、駆動部の駆動力が高くなっている場合には、粉砕機内を循環する微粉燃料が増加していると判断できるため、回転方向を変更することで、粉砕機内における微粉燃料の循環量を低減することができる。
【0018】
本発明の幾つかの実施形態に係る粉砕機は、前記分級部の回転数を制御する回転数制御手段を備えてもよい。
【0019】
上記構成では、分級部の回転数を制御することでも、分級部の分級性能を調整することができる。
【0020】
本発明の幾つかの実施形態に係る粉砕機は、前記回転式分級機の前記分級部に対して駆動力を供給する駆動部と、前記回転式分級機を前記駆動部から駆動力が供給されない状態とする切り離し手段と、を備えていてもよい。
【0021】
上記構成では、回転式分級機を駆動部から駆動力が供給されない状態とすると、分級部に駆動部からの負荷がかからない状態となるので、分級部が搬送用ガスの流れによって第2方向へと回転する。このように、搬送用ガスの流れのみによって分級部が回転するので、分級部の回転に起因した搬送用ガスの気流の乱れを可及的に抑制し、搬送用ガスの流れを整流化することができる。
また、搬送用ガスの流れのみによって分級部が第2方向へ回転するので、分級部の回転が、搬送用ガスと搬送用ガスによって搬送される微粉燃料とが最も通過し易い回転数となる。これにより、搬送用ガス及び微粉燃料が分級部を通過する際に生じる圧力損失を可及的に抑制することができる。したがって、好適に微粉燃料を粉砕機の外部に排出させて、粉砕機内の差圧の上昇を抑制することができる。
また、駆動部から分級部に対して駆動力が供給されない状態とするだけで、粉砕機内の差圧の上昇を抑制することができる。したがって、差圧の上昇を抑制するために特別な制御を継続的に行う場合や、装置を継続的に作動させる場合と比較して、コストを低減することができる。
【0022】
本発明の幾つかの実施形態に係る粉砕機は、供給された固体燃料を粉砕する粉砕部と、中心軸線周りに所定の間隔で設けられた複数の羽根を具備する分級部を、該中心軸線回りに回転することで、前記粉砕部で粉砕された微粉燃料を分級する回転式分級機と、前記分級部の内側に設けられ、前記分級部によって分級された前記微粉燃料を外部に排出する排出部と、前記回転式分級機の前記分級部に対して駆動力を供給する駆動部と、前記分級部を前記駆動部から駆動力が供給されない状態であって、前記分級部が自由に回転する状態とする切り離し手段と、を備え、前記複数の羽根は、それぞれ、平面視したときに、半径方向外側端部の回転軌跡に対する接線に対して傾斜するように設けられていてもよい。
【0023】
駆動部から駆動力が供給され、分級部が回転している場合には、分級部によって、微粒を排出部に導き、粗粒を粉砕部に戻すことで、固体燃料を分級することができる。
【0024】
一方、駆動部から分級部に対して駆動力が供給されない状態とした場合には、分級部に駆動部からの負荷がかからない状態となるので、分級部が搬送用ガスの流れによって第2方向へ回転する。このように、搬送用ガスの流れのみによって分級部が第2方向へ回転するので、分級部の回転に起因した搬送用ガスの気流の乱れを可及的に抑制し、搬送用ガスの流れを整流化することができる。
【0025】
また、搬送用ガスの流れのみによって分級部が回転するので、分級部の回転が、搬送用ガスと搬送用ガスによって搬送される微粉燃料とが最も通過し易い回転となる。これにより、搬送用ガス及び固体燃料が分級部を通過する際に生じる圧力損失を可及的に抑制することができる。したがって、好適に固体燃料を粉砕機の外部に排出させて、粉砕機内の差圧の上昇を抑制することができる。よって、粉砕機の内部に供給する固体燃料を増加させ、より多くの微粉燃料を排出部から排出させることができる。よって、微粉燃料の粒度がボイラ等の燃焼性に影響しない範囲で、排出部から排出された微粉燃料がボイラ等に供給される場合には、多くの微粉燃料をボイラ等に供給することができる。
【0026】
このように、上記構成では、分級機に駆動力を供給するか否かによって、的確に、供給される固体燃料の性質に応じた分級性能とすることができる。したがって、例えば、石炭のように、細かく粉砕し易く、また、燃焼性が特に高くなく細かい粒径まで粉砕する必要がある固体燃料を粉砕して微粉燃料とする場合には、分級部に駆動力を供給し、分級部を回転させることで、所定の細かい粒径となるまで石炭を粉砕することができる。一方、例えば、バイオマス燃料のように、細かく粉砕し難く、かつ、燃焼性が高く細かい粒径まで粉砕する必要がない固体燃料を粉砕して微粉燃料とする場合には、駆動部から分級部に対して駆動力が供給されない状態とすることで、粉砕機内の差圧の上昇を抑制できるので、粉砕機内の差圧を所定の値以下に維持した状態で、微粉燃料の粒度がボイラ等の燃焼性に影響しない範囲で、より多くのバイオマス燃料を粉砕機内に供給し、排出部から排出される固体燃料を増加させることができる。
【0027】
以上から、上記構成では、駆動部から分級部に対して駆動力が供給されない状態とすることで、粉砕機内の差圧の上昇を抑制することができる。これにより、供給される固体燃料の性質に依らずに、粉砕機内部の差圧を所定の差圧以下とし、好適に処理することができる。したがって、粉砕機を複数の性質の異なる固体燃料に対して共用可能とすることができる。
また、複数の性質の異なる固体燃料に対して共用可能とすることができるので、性質の異なる固体燃料を処理するために、それぞれに対して粉砕機を設ける場合に比べて、設備コストを大幅に低減し設置スペースを低減することができる。
【0028】
また、駆動部から分級部に対して駆動力が供給されない状態とするだけで、粉砕機内の差圧の上昇を抑制することができる。したがって、差圧の上昇を抑制するために特別な制御を継続的に行う場合や、装置を継続的に作動させる場合と比較して、コストを低減することができる。
【0029】
本発明の幾つかの実施形態に係る粉砕機は、前記微粉燃料を前記粉砕部から前記排出部に搬送する搬送用ガスを供給する搬送用ガス供給部と、前記搬送用ガス供給部と前記排出部との差圧を計測する差圧計測手段と、を備え、前記差圧計測手段が計測した差圧に基づいて、前記切り離し手段を作動させてもよい。
【0030】
粉砕機内の差圧が所定の値よりも高まると、搬送用ガスとして必要な供給流量が低下するなど粉砕機の運転に際して種々の問題が生じるため好ましくないが、上記構成では、差圧計測手段が計測した差圧に基づいて切り離し手段を作動させている。このように、粉砕機の内部の差圧を検出し、その差圧に基づいて切り離し手段を制御することで、確実に粉砕機内の差圧を所定の値以下とすることができる。
【0031】
本発明の幾つかの実施形態に係る粉砕機は、前記駆動部の駆動力を計測する駆動力計測手段を備え、前記駆動力計測手段が計測した駆動力に基づいて、前記切り離し手段を作動させてもよい。
【0032】
上記構成では、駆動部の駆動力が高くなっている場合には、粉砕機内を循環する微粉燃料が増加していると判断できるため、切り離し手段を作動させることで、粉砕機内における微粉燃料の循環量を低減することができる。
【0033】
本発明の幾つかの実施形態に係る粉砕機の運転方法は、供給された固体燃料を粉砕する粉砕部と、中心軸線周りに所定の間隔で設けられた複数の羽根を具備する分級部を、該中心軸線回りに回転することで、前記粉砕部で粉砕された微粉燃料を分級する回転式分級機と、前記分級部の内側に設けられ、前記分級部によって分級された前記微粉燃料を外部に排出する排出部と、前記分級部の前記中心軸線回りの回転方向を制御する回転方向変更手段と、前記分級部を正回転させる正回転運転モード及び前記分級部を前記正回転とは反対方向である逆回転させる逆回転運転モードを有し、粉砕機の運転中と停止中の何れも前記正回転運転モードと前記逆回転運転モードとを切り換えられる制御装置と、を備え、前記複数の羽根は、それぞれ、平面視したときに、半径方向外側端部の回転軌跡に対する接線に対して傾斜するように設けられている粉砕機の運転方法であって、前記回転方向変更手段によって前記分級部の回転方向を変更するステップを備える。
【0034】
また、本発明の幾つかの実施形態に係る粉砕機の運転方法は、供給された固体燃料を粉砕する粉砕部と、中心軸線周りに所定の間隔で設けられた複数の羽根を具備する分級部を、該中心軸線回りに回転することで、前記粉砕部で粉砕された微粉燃料を分級する回転式分級機と、前記分級部の内側に設けられ、前記分級部によって分級された前記微粉燃料を外部に排出する排出部と、前記回転式分級機の前記分級部に対して駆動力を供給する駆動部と、前記分級部を前記駆動部から駆動力が供給されない状態であって、前記分級部が自由に回転する状態とする切り離し手段と、を備え、前記複数の羽根は、それぞれ、平面視したときに、半径方向外側端部の回転軌跡に対する接線に対して傾斜するように設けられている粉砕機の運転方法であって、前記切り離し手段によって、前記分級部を前記駆動部から駆動力が供給されない状態とするステップを備える。
【発明の効果】
【0035】
本開示によれば、供給される固体燃料の性質に依らずに、粉砕機内部の差圧を所定の差圧以下とし、好適に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】幾つかの実施形態に係る粉砕機を示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、本発明の幾つかの実施形態に係る粉砕機及び粉砕機の運転方法について、図面を参照して説明する。
〔第1実施形態〕
以下、本開示の第1実施形態について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1には、本実施形態に係る粉砕機を備えたボイラ設備1が示されている。なお、本実施形態では上方とは鉛直上側方向を、下方とは鉛直下側方向を示している。
【0038】
本実施形態では、ボイラ設備1は、ボイラ本体3に供給する石炭やバイオマス燃料等の固体燃料を微粉状の固体燃料である微粉燃料へと粉砕する粉砕機5を備えている。
粉砕機5は、石炭のみを粉砕する形式であっても良いし、バイオマス燃料のみを粉砕する形式であっても良いし、石炭とともにバイオマス燃料を粉砕する形式であってもよい。ここで、バイオマス燃料とは、再生可能な生物由来の有機性資源であり、例えば、間伐材、廃材木、流木、草類、廃棄物、汚泥、タイヤ及びこれらを原料としたリサイクル燃料(ペレットやチップ)などであり、ここに提示したものに限定されることはない。バイオマス燃料は、バイオマスの成育過程において二酸化炭素を取り込むことから、地球温暖化ガスとなる二酸化炭素を排出しないカーボンニュートラルとされるため、その利用が種々検討されている。
【0039】
粉砕機5には微粉燃料供給管7が複数接続されており、粉砕機5で粉砕された微粉燃料が搬送ガスとなる熱空気とともに複数の微粉燃料供給管7を介してボイラ本体3に設けられたバーナ9へと導かれるようになっている。
粉砕機5には、ホッパ11に貯蔵された固体燃料が燃料搬送用コンベア13を介して導かれる。
【0040】
ボイラ本体3内の火炉にてバーナ9によって火炎が形成され、ボイラ本体3内の図示しない熱交換器によって蒸気が生成する。生成された蒸気は、図示しない蒸気タービンへと導かれて発電が行われる。
【0041】
次に、粉砕機5の詳細について説明する。粉砕機5は、石炭やバイオマス燃料などの固体燃料を粉砕して微粉にする。
【0042】
粉砕機5の外殻を構成するハウジング41は、竪型の略円筒中空形状をなし、天井部42の中央部に燃料供給管43が取り付けられている。この燃料供給管43は、ホッパ11から導かれた固体燃料をハウジング41内に供給するものであり、ハウジング41の中心位置に上下方向(鉛直方向)に沿って配置され、下端部がハウジング41内部まで延設されている。
【0043】
ハウジング41の底面部40の上には架台44が設置され、この架台44上に粉砕テーブル(粉砕部)45が回転自在に配置されている。粉砕テーブル45の中央に対して燃料供給管43の下端部が対向するように配置されている。燃料供給管43は、固体燃料を上方から下方の粉砕テーブル45に向けて供給する。
【0044】
粉砕テーブル45は、上下方向(鉛直方向)の中心軸線回りに回転自在であると共に、図示しない駆動装置により駆動されるようになっている。粉砕テーブル45の上面は、例えば、中心部が低く、外側に向けて高くなるような傾斜形状をなし、外周部が上方に曲折した形状をなしていてもよい。
【0045】
粉砕テーブル45の上方には、対向して複数(例えば、3つ)の粉砕ローラ46が配置されている。各粉砕ローラ46は、粉砕テーブル45の外周部の上方に、周方向に均等間隔で配置されている(なお、
図1では代表して1つの粉砕ローラ46とその周辺機器のみが示されている)。粉砕ローラ46は、ジャーナルヘッド47によって、上下に揺動可能となっており、粉砕テーブル45の上面に対して接近離間自在に支持されている。粉砕ローラ46は、外周面が粉砕テーブル45の上面に接触した状態でこの粉砕テーブル45が回転すると、粉砕テーブル45から回転力を受けて連れ回りするようになっている。燃料供給管43から固体燃料が供給されると、粉砕ローラ46と粉砕テーブル45との間で固体燃料が押圧されて粉砕されて、微粉燃料となる。
【0046】
ハウジング41の下部には、搬送用ガス供給部50が接続されている。搬送用ガス供給部50は、図示しない搬送用ガス供給装置から送られてくる搬送用ガスをハウジング41の内部に供給する。搬送用ガスは、例えば図示しない送風機などから送風される空気を用いる。なお、ボイラ本体3の燃焼ガスを熱源とする図示しない空気予熱器などの熱交換器(加熱器)を経由して供給される熱せられた空気を混合して、搬送用ガスの温度を調整してもよい。
【0047】
ハウジング41の上部には、ロータリセパレータ(回転式分級機)53が設けられている。ロータリセパレータ53は、燃料供給管43を取り囲むように配置され、駆動装置(駆動部)52からの駆動力によって、燃料供給管43の周りを回転する。
ロータリセパレータ53は、燃料供給管43の周りを囲むように、上下方向(鉛直方向)に沿って延在する円筒形状の回転軸部(図示省略)を有する。回転軸は、円筒形状の中心であって上下方向に延在する中心軸線Cの廻りに回転可能に支持されている。
【0048】
また、ロータリセパレータ53は、枠体54を有する。枠体54は、円形状をなす上部支持枠55と、上部支持枠55から下方に離間した位置に配置され、中空状の略逆円錐形状をなす下部支持枠56と、により構成される。上部支持枠55および下部支持枠56は、平面視したときの中心が回転軸の中心軸線C上に配置されて回転軸に支持されている。
枠体54は、上部支持枠55および下部支持枠56により上下を塞ぐように構成されている。そして、上部支持枠55は、中心軸線Cを中心として周方向に沿って等間隔に設けられた複数(例えば、4箇所)の排出孔(排出部)57が形成されている。各排出孔57は、上下方向に貫通する孔であり、それぞれが微粉燃料供給管7に連通している。
【0049】
上部支持枠55と下部支持枠56との間には、その外周側に、上下方向に延在する複数の羽根59が中心軸線C周りに所定の間隔(均等間隔)で設けられている。この複数の羽根59によって分級部60が構成されている。複数の羽根59は、本実施形態では例えば平板形状に形成され、上端側が回転軸から離れ、下端側が回転軸に近づくように中心軸線Cに対して傾斜して設けられている。また、羽根59と隣接する羽根59との間には、分級部60の内側空間61(すなわち、上部支持枠55と下部支持枠56との間の空間であって、かつ、複数の羽根59の内周端部よりも回転軸側の空間)と分級部60の外側空間62とを連通する開口部58が形成されている。
【0050】
また、複数の羽根59は、
図2に示すように、それぞれ、平面視したときに、半径方向外側端部の回転軌跡に対する接線Aに対して傾斜するように設けられている。すなわち、接線Aと各羽根59とがなす角度として、鋭角(90度よりも小さい角度)であるθ1と、鈍角(90度よりも大きい角度)であるθ2とが存在するように設けられている。
【0051】
駆動装置52は、電動モータ(図示省略)やインバータ(図示省略)等と、反転ギア(回転方向変更手段)69を有する。
反転ギア69は、駆動装置52の電動モータと、ロータリセパレータ53との間に介在されている。反転ギア69は、制御装置64によって制御され、ロータリセパレータ53の分級部60の回転方向を正回転(ロータリセパレータ53を上方から見たときの時計回りの回転であり第1方向)と逆回転(ロータリセパレータ53を上方から見たときの反時計回りの回転であり第2方向)とを切替える。なお、電動モータが直流モータであれば、反転ギア69を用いずに電気的供給の変更で逆回転させてもよい。
【0052】
また、
図1に示されているように、本実施形態に係るボイラ設備1は、差圧センサ(差圧計測手段)65、駆動力計測装置(駆動力計測手段)66、燃焼状態検出装置67及び制御装置64を備えている。
差圧センサ65は、本実施形態では例えば、搬送用ガス供給部50及び排出孔57の近傍に設けられ、搬送用ガス供給部50と排出孔57との差圧を計測する。駆動力計測装置66は、ロータリセパレータ53の駆動装置52に設けられ、駆動装置52の駆動力を計測する。燃焼状態検出装置67は、バーナ9に設けられ、バーナ9の燃焼状態を検出する。差圧センサ65、駆動力計測装置66及び燃焼状態検出装置67は、計測または検出したデータを制御装置64に送信する。
【0053】
制御装置64は、差圧センサ65、駆動力計測装置66及び燃焼状態検出装置67で計測または検出したデータに基づいて、駆動装置52と駆動装置52に含まれる反転ギア69の制御を行う。また、制御装置64は、駆動装置52の駆動力がロータリセパレータ53に供給される状態と、駆動装置52の駆動力がロータリセパレータ53に供給されない状態とを切替える図示しない切替え制御部(切り離し手段)を有している。切替え制御部は、駆動装置52のインバータに対して、ロータリセパレータ53に負荷を加えない制御を行うことで、駆動装置52の駆動力がロータリセパレータ53に供給されない状態とする。
このとき、ロータリセパレータ53が搬送用ガスの流れによって、後述する逆回転方向(第2方向)へと回転する。
【0054】
制御装置64は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0055】
上記構成の粉砕機5は、以下のように動作する。
固体燃料が燃料供給管43から粉砕テーブル45の中央へ向けて投入されると、粉砕テーブル45の回転による遠心力によって固体燃料は粉砕テーブル45の外周側へと導かれ、粉砕ローラ46との間に挟み込まれて粉砕される。粉砕された固体燃料は微粉燃料となり、搬送用ガス供給部50から導かれた搬送用ガスによって上方へと巻き上げられ、ロータリセパレータ53へと導かれる。ロータリセパレータ53の分級部60を通過した微粉燃料は、搬送用ガスとともに微粉燃料供給管7へと導かれて、ボイラ本体3のバーナ9へ供給される。微粉燃料は、搬送用ガスを一次空気として混合されて、バーナ9で燃焼する。
【0056】
次に、ロータリセパレータ53の動作について詳細に説明する。
[正回転時]
ロータリセパレータ53の分級部60が、
図2の破線矢印で示すように、正回転方向(第1方向)に回転する場合を説明する。分級部60が正回転(すなわち、羽根59の外周端部よりも内周端部が回転方向の前方となるように回転)した場合には、羽根59の回転方向の前面が、分級部60の外側空間62側を向く。羽根59の回転方向前面が、外側空間62側を向いていると、微粉燃料が羽根59に衝突し易くなるとともに、衝突した微粉燃料には、遠心力が強く作用するので、微粉燃料が分級部60の外側空間62に弾かれ易い。特に、微粉燃料のうち質量及び慣性力が大きく直線性が高い粗粒は、微粒と比較して、衝突による遠心力が強く作用するので、より顕著に外側空間62側に弾かれ易くなり、より粉砕テーブル45に戻され易くなる。一方、微粉燃料のうち微粒は、質量及び慣性力が小さくて直進性が低いので、羽根59に衝突し難く、また衝突した場合であっても作用する遠心力が小さいので、粗粒と比較して、分級部60の内側空間61に入り込み易い。このように、分級部60が正回転している場合には、粗粒が羽根59によって弾かれて粉砕テーブル45に戻され易く、微粒が分級部60の内側空間61に入り込み易いので、分級性能を高くすることができる。
【0057】
[逆回転時]
ロータリセパレータ53の分級部60が、
図2の実線矢印で示すように、逆回転方向(第2方向)に回転する場合を説明する。分級部60が逆回転(すなわち、羽根59の内周端部よりも外周端部が回転方向の前方となるように回転)した場合には、羽根59の回転方向の前面が、分級部60の内側空間61側を向く。羽根59の回転方向前面が、内側空間61側に向いていると、微粉燃料が羽根59に衝突し難くなるとともに、衝突した微粉燃料は、分級部60の内側空間61内に弾かれ易い。したがって、粉砕された微粉燃料は、羽根59の回転方向前面が外側空間62側を向いている正回転の場合と比較して、分級部60の内側空間61に流入し易く、また、内側空間61に流入し易いので内側空間61に設けられた排出孔57から排出され易い。微粉燃料が質量及び慣性力が大きく直線性が高い粗粒であっても、分級部60の内側空間61に流入し易くなるので、分級部60が逆回転している場合には、正回転している場合に比べて、分級性能が抑制される。分級性能が抑制されるので、正回転時に比べて粉砕機内を循環する微粉燃料の量が低減する。したがって、逆回転時には、正回転時と比較して、粉砕機内の差圧の上昇が抑制される。なお、分級部60を逆回転させる場合には、正回転時の最大回転数の5%~30%の回転数で逆回転させるのが好ましい。またバイオマス燃料など固体燃料の種類に応じて、逆方向の回転数を、マイナス1rpm~マイナス50rpmから選定してもよい。
【0058】
また、分級部60が逆回転している場合には、羽根59により微粉燃料を搬送する搬送用ガスの気流が整流化される。搬送用ガスが整流化されると、分級部60で生じる圧力損失を低減することができるので、粉砕機5内の差圧がさらに抑制される。また、搬送用ガスが整流化されると、搬送用ガスと微粉燃料とがより均一に混合される。
また、分級部60が逆回転している場合には、上述のように、分級部60で生じる圧力損失が低減するが、分級部60が存在している以上、ある程度の分級部60による圧力損失が確保される。すなわち、外側空間62と内側空間61との差圧がある程度確保される。このように、外側空間62と内側空間61との差圧をある程度確保することで、内側空間61に設けられた複数の排出孔57から排出される搬送用ガス及び微粉燃料の流量が均一化され、微粉燃料が混合した搬送用ガスを複数の微粉燃料供給管7へより均一に分配して搬送することができる。
【0059】
また、上述のように、分級部60が逆回転している場合には、粉砕機5内を循環する粉体燃料の量が減少し、差圧の上昇が抑制される。これにより、ホッパ11から粉砕機5内部に供給される固体燃料に例えば木質系などのバイオマス燃料を使用する場合であっても、循環する微粉燃料の量が減少するので、粉砕機5内の差圧を所定の値以下とすることができる。したがって、分級部60が逆回転している場合には、粉砕機5の内部に供給する固体燃料を増加させ、より多くの微粉燃料を排出孔57から排出させることができる。よって、微粉燃料の粒度がバーナ9の燃焼性に影響しない範囲で、多くの微粉燃料をボイラ本体3に設けられたバーナ9に供給することができる。
【0060】
[切り離し運転時]
駆動装置52の駆動力がロータリセパレータ53に供給されない状態、すなわちロータリセパレータ53に負荷を加えない状況となると、分級部60は、搬送用ガスの流れによって、自由に回転する。具体的には、羽根59に微粉燃料と搬送用ガスが衝突することで逆方向(第2方向)へ回転する。逆回転することで、上述の逆回転時と同様に、粉砕機5内の差圧の上昇が抑制される。
また、切り離し運転時には、分級部60は、微粉燃料と搬送用ガスが最も通過し易い(圧力損失が少ない)回転数で回転する。これにより、搬送用ガス及び微粉燃料が分級部60を通過する際に生じる圧力損失が可及的に抑制される。したがって、粉砕機5内の差圧の上昇は抑制される。
また、切り離し運転時においても、分級部60を逆回転させた場合と同様に、搬送用ガスが整流化されるので、搬送用ガスと微粉燃料とがより均一に混合される。また、分級部60が存在している以上、ある程度の分級部60による圧力損失が確保されるので、内側空間61に設けられた複数の排出孔57から排出される搬送用ガス及び微粉燃料の流量が均一化され、微粉燃料が混合した搬送用ガスを複数の微粉燃料供給管7へより均一に分配して搬送することができる。
【0061】
次に、本実施形態における運転方法について説明する。
制御装置64は、ロータリセパレータ53の分級部60を正回転させる正回転運転モードと、ロータリセパレータ53の分級部60を逆回転させる逆回転運転モードと、駆動装置52の駆動力がロータリセパレータ53に供給されない切り離し運転モードと、を有している。本実施形態の粉砕機5で例えば石炭を粉砕し、バーナ9に粉砕された石炭を供給する際には、正回転運転モードで運転を行う。石炭は細かく粉砕し易く、また、燃焼性が特に高くなく細かい粒径まで粉砕する必要があるので、分級性能が高い正回転運転モードで運転を行うことで、好適に石炭を粉砕した微粉燃料が粉砕機5から排出される。
【0062】
次に、本実施形態の粉砕機5で例えばバイオマス燃料を粉砕し、バーナ9に粉砕されたバイオマス燃料を供給する場合について説明する。バイオマス燃料は、繊維質が多いことから細かく粉砕し難い一方で、燃焼性が高く燃焼し易いという性質を有する。このようなバイオマス燃料では、粉砕機5内で細かい粒径まで粉砕する必要がない。また、細かく粉砕し難いので、ロータリセパレータ53の分級性能が高い状態であると、粉砕テーブル45に戻されるバイオマス燃料の微粉燃料が増加し、粉砕機5内を循環するバイオマス燃料の微粉燃料が増加する。循環量が増加すると、粉砕機5内の差圧が上昇する。このような理由から、バイオマス燃料を粉砕する場合には、差圧が上昇する傾向にある。
【0063】
以上から、例えばバイオマス燃料を粉砕する場合には、次のような運転方法を行う。
まず、正回転モードで運転を行うとともに、継続して差圧センサ65によって粉砕機5内の差圧を計測する。差圧センサ65は、例えば、搬送用ガス供給部50と排出孔57の近傍との圧力差を計測する。正回転モードで運転時に、差圧センサ65が計測する差圧が所定の値を超えたと制御装置64が判断すると、制御装置64は、図示しない回転数制御部(回転数制御手段)によって分級部60の回転数を低減させる。制御装置64は、分級部60の回転数を最低回転数(例えば、最大回転数の10%)にしても、粉砕機5内の差圧が所定の値以下とならない場合には、切替え制御部を作動させて、運転モードを正回転運転モードから切り離し運転モードに変更する。
【0064】
切り離し運転モードで運転を行っている間も、継続して差圧センサ65によって粉砕機5内の差圧を計測する。切り離し運転モード時に、差圧センサ65が計測する差圧が所定の値を超えたと制御装置64が判断すると、制御装置64は、切替え制御部によって駆動装置52の駆動力がロータリセパレータ53に供給される状態に変更するとともに、反転ギア69によって分級部60を逆回転させる。すなわち、運転モードを切り離し運転モードから逆回転運転モードに変更する。なお、電動モータが直流モータであれば、反転ギア69を用いずに電気的供給の変更で逆回転させてもよい。
【0065】
なお、上記運転方法は一例であり、本開示はこれに限定されない。
例えば、石炭を粉砕する場合に、粉砕機5から搬出する微粉燃料の粒径サイズが許容される範囲で、切り離し運転モードで運転を行ってもよく、逆回転運転モードで運転を行ってもよい。
また、バイオマス燃料を粉砕する場合に、切り離し運転モードで運転を開始し、その後差圧が所定の値を超えたときに、逆回転運転モードに運転モードを変更してもよい。
また、バイオマス燃料を粉砕する場合に、逆回転運転モードで運転を開始してもよい。
また、バイオマス燃料を粉砕する場合に、正回転運転モードで運転を開始し、その後差圧が所定の値を超えたときに、切り離し運転モードを経ずに、逆回転運転モードに運転モードを変更してもよい。
【0066】
また、運転モードの切り替えを判断するデータとして、駆動力計測装置66が計測した駆動力を用いてもよい。駆動装置52の駆動力が高くなっている場合には、粉砕機5内を循環する粉体燃料が増加していると判断できるため、運転モードを変更することで、粉体燃料の循環量を低減することができる。また、運転モードの切り替えを判断するデータとして、バーナ9に設けられた燃焼状態検出装置67が検出した燃焼状態を用いてもよい。バーナ9における燃焼状態(失火していないかどうか等)や燃焼後に生成されるNOxやCO等の生成量から、バーナ9の燃焼状態を加味することで粉砕機5から搬出する微粉燃料の粒径サイズの許容範囲を適正にして、運転モードを変更してもよい。
【0067】
本実施形態では以下の作用効果を奏する。
石炭は、細かく粉砕し易く、また、燃焼性が特に高くなく細かい粒径まで粉砕する必要があるが、本実施形態では、石炭を粉砕する場合には、分級部60を正回転させているので、所定の粒径となるまで石炭を粉砕した微粉燃料とすることができる。
一方、バイオマス燃料は、細かく粉砕し難く、かつ、燃焼性が高く細かい粒径まで粉砕する必要がない。本実施形態では、バイオマス燃料を粉砕する場合には、分級部60を逆回転させているので、粉砕機5内の差圧の上昇を抑制できる。したがって、粉砕機5内の差圧を所定の値以下に維持した状態で、より多くのバイオマス燃料を粉砕機5内に供給し、排出孔57から排出される微粉燃料を増加させることができる。
【0068】
以上から、本実施形態では、分級部60の回転方向を変更することで、ロータリセパレータ53の分級性能を調整可能なので、供給された固体燃料の性質に応じた分級性能とすることができる。これにより、供給される固体燃料の性質に依らずに、粉砕機5内部の差圧を所定の差圧以下とし、好適に処理することができる。したがって、粉砕機5を複数の性質の異なる固体燃料に対して共用可能とすることができる。
また、粉砕機5を複数の性質の異なる固体燃料に対して共用可能とすることができるので、性質の異なる固体燃料を処理するために、それぞれに対して粉砕機5を設ける場合に比べて、設備コストを大幅に低減し、設置スペースを低減することができる。
【0069】
また、粉砕機5内の差圧が所定の値よりも高まると、粉砕機5の運転に際して種々の問題が生じるため好ましくないが、本実施形態では、差圧センサ65が計測した差圧に基づいて分級部60の回転方向を決定している。このように、粉砕機5の内部の差圧に基づいて、分級部60の回転方向を決定することで、より確実に粉砕機5内の差圧を所定の値以下とすることができる。
【0070】
また、分級部60が逆回転している場合(逆回転運転モード時)には、羽根59により微粉燃料を搬送する搬送用ガスの気流が整流化されるとともに、複数の排出孔57から排出される搬送用ガス及び微粉燃料の流量を均一化することができる。したがって、複数の微粉燃料供給管7を経由して複数のバーナ9に均一に搬送用ガス及び微粉燃料を供給することができるので、バーナ9での均一な燃焼が可能となり、ボイラ本体3での燃焼効率を向上させることができる。
【0071】
また、駆動装置52からロータリセパレータ53に対して駆動力が供給されない状態(切り離し運転モード)とすると、分級部60に駆動装置52からの負荷がかからない状態となるので、分級部60が搬送用ガスの流れによって自然に回転する。このように、搬送用ガスの流れのみによって分級部60が回転するので、分級部60の回転に起因した搬送用ガスの気流の乱れを可及的に抑制し、搬送用ガスの流れを整流化することができる。
【0072】
また、切り離し運転モードでは、搬送用ガスの流れのみによって分級部60が回転するので、分級部60の回転が、搬送用ガスと搬送用ガスによって搬送される微粉燃料とが最も通過し易い回転となる。これにより、搬送用ガス及び微粉燃料が分級部60を通過する際に生じる圧力損失を可及的に抑制することができる。したがって、好適に微粉燃料を粉砕機5の外部に排出させて、粉砕機5内の差圧の上昇を抑制することができる。
【0073】
また、切り離し運転モードでは、駆動装置52から分級部60に対して駆動力が供給されない状態とするだけで、粉砕機5内の差圧の上昇を抑制することができる。したがって、差圧の上昇を抑制するために特別な制御を継続的に行う場合や、装置を継続的に作動させる場合と比較して、コストを低減することができる。
【0074】
また、切り離し運転モードでは、分級部60は逆回転する。したがって、分級部60を逆回転させた場合と同様に、粉砕機5内の差圧の上昇を抑制することができる。
【0075】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、各運転モードを制御装置64によって切り替える例について説明したが、本開示はこれに限定されない。作業者が手動で運転モードを切り替えてもよい。作業者が手動で運転モードを切り替える際には、例えば、差圧センサ65が計測した差圧等を表示する表示手段を設けて、作業者がその表示手段に表示された差圧等に基づいて運転モードを切り替えるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、制御装置64が正回転運転モード、逆回転運転モード及び切り離し運転モードの3つの運転モードを有する場合について説明したが、本開示はこれに限定されない。制御装置64が、正回転運転モードと逆回転運転モードのみを有していてもよく、また、正回転運転モードと切り離し運転モードのみを有していてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 ボイラ設備
3 ボイラ本体
5 粉砕機
9 バーナ
11 ホッパ
41 ハウジング
43 燃料供給管
45 粉砕テーブル(粉砕部)
46 粉砕ローラ
50 搬送用ガス供給管(搬送用ガス供給部)
52 駆動装置(駆動部)
53 ロータリセパレータ(回転式分級機)
57 排出孔(排出部)
59 羽根
60 分級部
61 内側空間
62 外側空間
64 制御装置
65 差圧センサ(差圧計測手段)
66 駆動力計測装置(駆動力計測手段)
69 反転ギア(回転方向変更手段)