(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】感染検知装置及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20221114BHJP
A61B 18/20 20060101ALI20221114BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20221114BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
A61B10/00 E
A61B18/20
G01N21/17 A
G01N21/64 Z
(21)【出願番号】P 2018086075
(22)【出願日】2018-04-27
【審査請求日】2021-03-15
(32)【優先日】2017-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512269650
【氏名又は名称】コヴィディエン リミテッド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー スグロイ
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106178279(CN,A)
【文献】特開2005-324032(JP,A)
【文献】特開2000-342590(JP,A)
【文献】特表平11-514849(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0059070(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106308727(CN,A)
【文献】特開平10-308114(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0136670(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0022185(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00
A61B 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感染検知装置であって、
外科手術部位での感染のレベルを出力するように構成されたディスプレイを有するハウジングと、
前記ハウジングに取り付けられた近位端部分、及び外科手術部位内に挿入するように構成された遠位端部分を有するプローブと、
前記プローブに沿って一体化された検知装置であって、
前記検知装置は、外科手術部位での感染のレベルを測定するように構成されており、かつ外科手術部位で所定の感染のレベルが検知されたときにユーザに警告するように構成されて
おり、前記検知装置は、前記プローブの遠位端部分に選択的に取り付け可能である無菌塗布具を含み、前記無菌塗布具が、外科手術部位から組織試料を取り出すように構成されている、検知装置と、
前記無菌塗布具により取り出された組織試料から感染のレベルを測定するように構成された光度計であって、前記光度計は、組織試料の感染のレベルを試験するために前記無菌塗布具を受容するように構成された読み取りチャンバを含み、前記光度計は、前記ハウジング内に位置している、光度計と
を備える、感染検知装置。
【請求項2】
前記検知装置が、前記プローブの遠位端部分に配設されたカメラを含み、前記カメラが、外科手術視野を画定する、請求項1に記載の感染検知装置。
【請求項3】
前記検知装置が、前記プローブの前記遠位端部分に配設された光源を含み、前記光源が、前記カメラにより画定された前記外科手術視野を照明するように構成されており、前記光源が、外科手術部位での感染を治療するように構成されている、請求項2に記載の感染検知装置。
【請求項4】
前記検知装置が、前記感染検知装置の少なくとも1つの動作を行うように構成された処理装置及びメモリを含む演算装置を含む、請求項1に記載の感染検知装置。
【請求項5】
前記ディスプレイが、前記演算装置の少なくとも1つの出力を表示するように構成されている、請求項
4に記載の感染検知装置。
【請求項6】
前記演算装置が、前記外科手術部位での前記所定の感染のレベルを判定するように構成されている、請求項
5に記載の感染検知装置。
【請求項7】
前記ディスプレイが、前記カメラにより画定された前記外科手術視野を表示するように構成されている、請求項2に記載の感染検知装置。
【請求項8】
前記ハウジング上に配設されており、かつ前記プローブに動作可能に接続された目盛り盤をさらに備え、前記目盛り盤が、前記ハウジングに対して前記プローブを選択的に回転させ、かつ関節運動させるように構成されている、請求項1に記載の感染検知装置。
【請求項9】
前記光源が、紫外線を放射して、外科手術部位での細菌感染を視覚化するように構成されている、請求項3に記載の感染検知装置。
【請求項10】
前記光源が、約260ナノメートル~約280ナノメートルの波長を有する紫外線を放射して、組織を治療するように構成されている、請求項3に記載の感染検知装置。
【請求項11】
前記プローブの前記遠位端部分が、前記無菌塗布具を受容するように構成された凹部を含む、請求項
1に記載の感染検知装置。
【請求項12】
外部装置とインターフェースするように構成されたデータインターフェース装置をさらに備え、前記データインターフェース装置が、前記演算装置からのデータを前記外部装置上にアップロードするように構成されており、前記データインターフェース装置が、前記外部装置からのデータを前記演算装置上にダウンロードするように構成されている、請求項
4に記載の感染検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2017年5月2日に出願された、米国仮特許出願第62/500,206号の利益及びこれに対する優先権を主張し、その全体的な開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、外科手術装置に関し、より具体的には、外科手術部位での感染を検知し、かつ任意に治療するように構成された装置に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
外科手術部位の感染は、外科手術が行われる体の一部での外科手術後に生じる感染である。外科手術部位の感染は、皮膚のみを侵す表在性感染であり得る場合がある。他の外科手術部位の感染は、より深刻であり、皮膚、器官、または埋め込まれた材料下での組織を侵し得る。外科手術が行われた時間と感染の兆候または症状の発現との間に時間差があり得る。これにより、その検知及び適切な治療を始める前の状態が重症化し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示による装置は、最小侵襲性実時間感染検知、及び任意に治療を提供する。
【0005】
本開示の一態様によると、感染検知装置は、外科手術部位での感染のレベルを出力するように構成されたディスプレイを有するハウジングと、ハウジングに取り付けられた近位端部分、及び外科手術部位内に挿入するように構成された遠位端部分を有するプローブと、を含む。検知装置は、プローブの遠位端部分に沿って一体化され得る。検知装置は、外科手術部位での感染のレベルを測定し、かつ外科手術部位で所定の感染のレベルが検知されたときにユーザに警告するように構成され得る。
【0006】
実施形態において、検知装置は、プローブの遠位端部分に配設されたカメラを含む。カメラは、外科手術視野を画定する。
【0007】
いくつかの実施形態において、検知装置は、プローブの遠位端部分に配設された光源を含む。光源は、カメラにより画定された外科手術視野を照明するように構成されている。光源は、外科手術部位での感染を治療するように構成されている。
【0008】
一定の実施形態において、検知装置は、プローブの遠位端部分に選択的に取り付け可能である無菌塗布具を含む。無菌塗布具は、外科手術部位から組織試料を取り出すように構成されている。
【0009】
実施形態において、感染検知装置は、無菌塗布具により取り出された組織試料から感染のレベルを測定するように構成された光度計を含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、感染検知装置は、感染検知装置の少なくとも1つの動作を行うように構成された処理装置及びメモリを含む演算装置を含む。
【0011】
一定の実施形態において、ディスプレイは、演算装置の少なくとも1つの出力を表示するように構成されている。
【0012】
実施形態において、演算装置は、外科手術部位での所定の感染のレベルを判定するように構成されている。
【0013】
いくつかの実施形態において、ディスプレイは、カメラにより画定された外科手術視野を表示するように構成されている。
【0014】
一定の実施形態において、目盛り盤は、ハウジング上に配設されており、かつプローブに動作可能に接続されている。目盛り盤は、ハウジングに対してプローブを選択的に回転させ、かつ関節運動させるように構成されている。
【0015】
実施形態において、光源は、紫外線を放出して、外科手術部位での細菌感染を視覚化するように構成されている。
【0016】
いくつかの実施形態において、光源は、約260ナノメートル~約280ナノメートルの波長を有する紫外線を放射して、組織を治療するように構成されている。
【0017】
一定の実施形態において、プローブの遠位端部分は、無菌塗布具を受容するように構成された凹部を含む。
【0018】
実施形態において、光度計は、組織試料の感染のレベルを試験するための無菌塗布具を受容するように構成された読み取りチャンバを含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、感染検知装置は、外部装置とインターフェースするように構成されたデータインターフェース装置を含む。データインターフェース装置は、演算装置からのデータを外部装置上にアップロードするように構成されている。データインターフェース装置は、外部装置からのデータを演算装置上にダウンロードするように構成されている。
【0020】
本開示の別の態様によると、患者内に標的部位に近接する切開を設けることと、切開内にプローブを挿入することと、カメラ及びプローブの光源により標的部位を視認することと、標的部位が漏出または感染を含むかどうかをプローブにより判定することと、光源により標的部位を治療することと、を含む、吻合部漏出を検知及び治療する方法を提供している。
【0021】
実施形態において、本方法は、プローブに選択的に取り付けられた無菌塗布具により標的部位から組織試料を取り出すことを含み得る。
【0022】
いくつかの実施形態において、本方法は、光度計を有する無菌塗布具により取り出された組織試料から感染のレベルを測定することを含み得る。
【0023】
一定の実施形態において、本方法は、標的部位にいつ感染が存在するかを、演算装置により判定することを含み得る。
【0024】
実施形態において、本方法は、カメラにより画定された外科手術視野を表示装置上に表示することを含み得る。
【0025】
いくつかの実施形態において、標的部位の治療は、標的部位を約260ナノメートル~約280ナノメートルの波長を有する光源からの紫外線に供することを含む。
【0026】
一定の実施形態において、本方法は、光源からの紫外線下で標的部位を視覚化して、標的部位での細菌感染を視認することを含む。
【0027】
実施形態において、本方法は、プローブを関節運動させて、標的部位まで誘導することを含む。
本願明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
感染検知装置であって、
外科手術部位での感染のレベルを出力するように構成されたディスプレイを有するハウジングと、
上記ハウジングに取り付けられた近位端部分、及び外科手術部位内に挿入するように構成された遠位端部分を有するプローブと、
上記プローブに沿って一体化された検知装置であって、外科手術部位での感染のレベルを測定するように構成されており、かつ外科手術部位で所定の感染のレベルが検知されたときにユーザに警告するように構成されている、検知装置と、を備える、感染検知装置。
(項目2)
上記検知装置が、上記プローブの遠位端部分に配設されたカメラを含み、上記カメラが、外科手術視野を画定する、上記項目に記載の感染検知装置。
(項目3)
上記検知装置が、上記プローブの上記遠位端部分に配設された光源を含み、上記光源が、上記カメラにより画定された上記外科手術視野を照明するように構成されており、上記光源が、外科手術部位での感染を治療するように構成されている、上記項目のいずれかに記載の感染検知装置。
(項目4)
上記検知装置が、上記プローブの遠位端部分に選択的に取り付け可能である無菌塗布具を含み、上記無菌塗布具が、外科手術部位から組織試料を取り出すように構成されている、上記項目のいずれかに記載の感染検知装置。
(項目5)
上記無菌塗布具により取り出された組織試料から感染のレベルを測定するように構成された光度計をさらに備える、上記項目のいずれかに記載の感染検知装置。
(項目6)
上記検知装置が、上記感染検知装置の少なくとも1つの動作を行うように構成された処理装置及びメモリを含む演算装置を含む、上記項目のいずれかに記載の感染検知装置。
(項目7)
上記ディスプレイが、上記演算装置の少なくとも1つの出力を表示するように構成されている、上記項目のいずれかに記載の感染検知装置。
(項目8)
上記演算装置が、上記外科手術部位での上記所定の感染のレベルを判定するように構成されている、上記項目のいずれかに記載の感染検知装置。
(項目9)
上記ディスプレイが、上記カメラにより画定された上記外科手術視野を表示するように構成されている、上記項目のいずれかに記載の感染検知装置。
(項目10)
上記ハウジング上に配設されており、かつ上記プローブに動作可能に接続された目盛り盤をさらに備え、上記目盛り盤が、上記ハウジングに対して上記プローブを選択的に回転させ、かつ関節運動させるように構成されている、上記項目のいずれかに記載の感染検知装置。
(項目11)
上記光源が、紫外線を放射して、外科手術部位での細菌感染を視覚化するように構成されている、上記項目のいずれかに記載の感染検知装置。
(項目12)
上記光源が、約260ナノメートル~約280ナノメートルの波長を有する紫外線を放射して、組織を治療するように構成されている、上記項目のいずれかに記載の感染検知装置。
(項目13)
上記プローブの上記遠位端部分が、上記無菌塗布具を受容するように構成された凹部を含む、上記項目のいずれかに記載の感染検知装置。
(項目14)
上記光度計が、組織試料の感染のレベルを試験するための上記無菌塗布具を受容するように構成された読み取りチャンバを含む、上記項目のいずれかに記載の感染検知装置。
(項目15)
外部装置とインターフェースするように構成されたデータインターフェース装置をさらに備え、上記データインターフェース装置が、上記演算装置からのデータを上記外部装置上にアップロードするように構成されており、上記データインターフェース装置が、上記外部装置からのデータを上記演算装置上にダウンロードするように構成されている、上記項目のいずれかに記載の感染検知装置。
(項目16)
吻合部漏出を検知及び治療するシステムであって、
患者内に標的部位に近接して設けられた切開内に挿入されるように構成されたプローブと、
上記標的部位を視認するために使用されるカメラ及び上記プローブの光源と、を含み、
上記プローブは、上記標的部位が漏出または感染を含むかどうかを判定するために使用され、
上記光源は、上記標的部位を治療するように構成される、システム。
(項目17)
上記標的部位から組織試料を取り出すために構成された上記プローブに選択的に取り付けられた無菌塗布具をさらに含む、上記項目のいずれかに記載のシステム。
(項目18)
無菌塗布具により取り出された組織試料から感染のレベルを測定するように構成された光度計をさらに含む、上記項目のいずれかに記載のシステム。
(項目19)
上記標的部位にいつ感染が存在するかを判定するために使用される、演算装置をさらに含む、上記項目のいずれかに記載のシステム。
(項目20)
上記カメラにより画定された外科手術視野を表示するように構成された表示装置をさらに含む、上記項目のいずれかに記載のシステム。
(項目21)
上記光源は、上記標的部位を、約260ナノメートル~約280ナノメートルの波長を有する紫外線に供することによって、上記標的部位を治療するために構成される、上記項目のいずれかに記載のシステム。
(項目22)
上記標的部位は、上記標的部位での細菌感染を視認するために、上記光源からの紫外線下で視覚化されるように構成される、上記項目のいずれかに記載のシステム。
(項目23)
上記プローブは、上記標的部位を誘導するために関節運動されるように構成される、上記項目のいずれかに記載のシステム。
(項目16A)
吻合部漏出を検知及び治療する方法であって、
患者内に標的部位に近接する切開を設けることと、
上記切開内にプローブを挿入することと、
カメラ及び上記プローブの光源により上記標的部位を視認することと、
上記標的部位が漏出または感染を含むかどうかを上記プローブにより判定することと、
上記光源により上記標的部位を治療することと、を含む、方法。
(項目17A)
上記プローブに選択的に取り付けられた無菌塗布具により上記標的部位から組織試料を取り出すことをさらに含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目18A)
光度計を有する上記無菌塗布具により取り出された組織試料から感染のレベルを測定することをさらに含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目19A)
上記標的部位にいつ感染が存在するかを、演算装置により判定することをさらに含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目20A)
上記カメラにより画定された外科手術視野を表示装置上に表示することをさらに含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目21A)
上記標的部位の治療が、上記標的部位を約260ナノメートル~約280ナノメートルの波長を有する上記光源からの紫外線に供することを含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目22A)
上記光源からの紫外線下で上記標的部位を視覚化して、上記標的部位での細菌感染を視認することをさらに含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目23A)
上記プローブを関節運動させて、上記標的部位まで誘導することをさらに含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(摘要)
感染検知装置は、外科手術部位での感染のレベルを出力するように構成されたディスプレイを有するハウジングと、ハウジングに取り付けられた近位端部分、及び外科手術部位内に挿入するように構成された遠位端部分を有するプローブと、を含む。検知装置は、プローブの遠位端部分に沿って一体化されており、かつ外科手術部位での感染のレベルを測定するように構成されている。検知装置は、外科手術部位で所定の感染のレベルが検知されたときにユーザに警告するように構成されている。
【0028】
本明細書の一部に組み込まれており、かつこれを構成している図面を参照して、本発明の感染検知装置の種々の態様を下に記載している。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本開示による感染検知装置の図示的実施形態の斜視図である。
【
図3】塗布具が取り付けられた状態での
図1の装置のプローブの側面図である。
【
図4】塗布具を受容する光度計の読み取りチャンバを図示している
図1の装置の正面部分的断面図である。
【
図5】外科手術部位または創傷部位での使用時の
図1の装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、いくつかの図の各々において同様の符号が同一または対応する要素を指定している図面を参照して、本発明の感染検知装置の実施形態を詳細に記載する。本明細書で使用される場合、「臨床医」という用語は、医者、看護師、または他の医療提供者を指し、支援人員を含み得る。下記の説明において、不要な詳細で本開示を不明瞭にすることを避けるために、よく知られている機能または構造は、詳細に記載していない。本明細書で使用される場合、「遠位」という用語は、従来と同様に、ユーザからより遠いか、または患者により近い機器、器具、装置、またはその構成要素のそのような部分を指し、「近位」という用語は、ユーザにより近いか、または患者からより遠い機器、器具、装置、またはその構成要素のそのような部分を指すだろう。
【0031】
本開示は、感染検知装置に関する。具体的には、感染検知及び治療装置は、外科手術部位または創傷部位での外科手術または外科手術後の検査を行うように構成されたプローブを有する手持ち装置であり得る。本発明の装置は、例えば、外科手術部位または創傷部位での感染性病原体を低減または除去することにより、外科手術部位または創傷部位を治療するように構成され得る。
【0032】
図1を参照すると、本開示による感染検知装置100の実施形態は、概して、ハウジング102と、装置100とインターフェースし、かつ装置100の種々の動作を実行するように構成された中央処理装置104(CPU)と、ディスプレイ106と、外科手術部位または創傷部位の検査及び/または治療用プローブ108と、プローブ108を関節運動または操作するための目盛り盤110と、例えば、外科手術部位または創傷部位からの組織試料を分析するための照度計または光度計等の検知装置112と、を含む。実施形態において、装置100は、装置100に電力を提供するためのエネルギー源に接続され得る。追加的または代替的に、感染100は、携帯可能な電池式装置であり得る。
【0033】
ハウジング102は、装置100が手持ち装置として構成され得るように、感染検知装置100を把持するように構成されたハンドル部分102aを含む。ハウジング102は、ユーザ入力を受信し、かつ装置100の種々の機能を動作するように構成された複数の制御装置103を含む。
【0034】
CPU104は、本明細書に記載されている技術、動作、及び/または命令を行うか、または実行するように適合された任意の種類の好適な処理装置またはコンピュータであり得る。例えば、CPU104は、ファームウエア、メモリもしくは他の記憶装置、またはそれらの組み合わせにおける命令に従って、本明細書に記載されている技術を行うようにプログラムされたハードウエア処理装置であり得る。同様に、CPU104はまた、1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)、本明細書に記載されている技術または動作を行うように持続的にプログラムされたフィールドプログラム可能ゲートアレイ(FPGA)であり得る。CPU104はまた、デジタル信号処理装置(DSP)、マイクロプロセッサ、または本明細書に記載されている動作もしくは技術を行う配線論理もしくはプログラム論理または両方を組み込む任意の他の装置であり得る。
【0035】
CPU104は、データを保存するのに使用される任意の種類のハードウエア装置であり得るメモリ104aを含み得る。メモリ104aは、ランダムアクセスメモリ(RAM)(例えば、動的ランダムアクセスメモリ(DRAM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)等)等の揮発性メモリであり得る。メモリ104aは、読み取り専用メモリ(ROM)(例えば、プログラム可能な読み取り専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能なプログラム可能な読み取り専用メモリ(EEPROM)、非揮発性RAM(NVRAM)等)等の非揮発性メモリであり得る。メモリ104aは、磁気媒体、光学媒体、または電気媒体であり得る。
【0036】
ディスプレイ106は、CPU104に通信可能に接続され得る。ディスプレイ106は、CPU104の少なくとも1つの出力を表示するように構成された任意の装置(例えば、タッチスクリーン、LED、LCD、OLED、PDP等)であり得る。例えば、ディスプレイ106は、外科手術部位または創傷部位の画像及び映像、組織試料データ、治療情報等を表示するように構成され得る。例えば、外科手術部位または創傷部位に感染が存在する場合、ディスプレイ106は、「感染を検知せず」、「感染を検知」「合格」、「不合格」、「OK」、「RLU」、または同様のもの等、感染もしくはその不存在を示す組織試料情報を臨床医に提供し得る。ディスプレイ106はまた、「UV-C光の適用」、「外科手術の推奨」等の治療方針を推奨するテキストまたはグラフィックを表示し得る。実施形態において、複数の制御装置103は、装置100の種々の機能を行うために、臨床医がデジタルディスプレイ106上の複数の制御装置103にタッチすることができるように、ディスプレイ106上にデジタル的に表示され得る。
【0037】
ディスプレイ106は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、1つ以上の発光ダイオード、発光ディスプレイ、多色ディスプレイ、アナログディスプレイ、パッシブディスプレイ、アクティブディスプレイ、「捻れネマチック」ディスプレイ、「超捻れネマチック」ディスプレイ、「デュアルスキャン」ディスプレイ、反射型ディスプレイ、バックライト付きディスプレイ、英数字ディスプレイ、モノクロディスプレイ、「低温ポリシリコン薄膜トランジスタ」もしくはLPTS TFTディスプレイ、または感染検知及び治療装置100の感染治療情報に関連するパラメータ、情報もしくはグラフィックを示す任意の他のディスプレイXであり得る。
【0038】
装置100は、外部装置、例えば、タブレット、スマート装置、コンピュータ等とインターフェースするように構成されたデータインターフェース装置106aを含み得る。データインターフェース装置106aは、CPU104からのデータを外部装置上にアップロードするように構成され得る。さらに、データインターフェース装置106aは、外部装置からのデータをCPU104上にダウンロードして、CPU104のプログラミングを変更及び/またはアップデート(例えば、ファームウエアのアップデート)するように構成され得る。データインターフェース装置106aは、USBケーブルを使用して外部装置とインターフェースするように構成された汎用シリアルバス(USB)コネクタであり得る。追加的または代替的に、データインターフェース装置106aは、USBフラッシュメディアドライブ、SDカード、またはCPU104及び/またはメモリ104aからデータをダウンロード/アップロードするための他の取り外し可能もしくは取り外し不可能な記憶装置媒体を受容するように構成され得る。データインターフェース装置106aは、1つ以上の外部装置もしくはシステムから、かつ/またはそこへとデータを受信及び/または伝達するように構成された無線技術(例えば、Bluetooth(登録商標))を含み得る。
【0039】
プローブ108は、装置100のハウジング102に動作可能に、通信可能に、かつ/または電気的に接続された近位端部分109a、及び患者の外科手術部位、創傷部位、または同様のもの内に挿入し、かつ/またはこれらを検査及び治療するように構成された遠位端部分109bを有する細長い管状本体部分108aを含む。プローブ108は、任意の好適な長さを有し得、かつ患者の任意のオリフィスもしくは開口、または患者内に設けられた任意の人工切開を通して患者内に挿入され得る。プローブ108は、プラスチック、ポリマー、合成物、金属、もしくは同様のもの等、任意の好適な(例えば、非侵襲性、生体適合性等)、可撓性、剛性、半可撓性、または半剛性材料から形成され得る。
【0040】
目盛り盤110は、目盛り盤110の回転(例えば、時計回りまたは反時計回りの)が外科手術部位または創傷部位を誘導するためのハウジング102に対するプローブ108の選択的な回転、関節運動及び/または操作を可能にするように、プローブ108に動作可能に連結されている。
【0041】
図2を参照すると、プローブ108は、その遠位端部分109bに配設されたカメラ120及び光源122を含む。プローブ108の遠位端部分109bは、液体または他の汚染物質がカメラ120及び/または光源122の動作を妨げるのを抑制するように構成された好適な透明カバー(図示せず)を含み得る。
【0042】
カメラ120は、外科手術視野「SF」(
図1)を画定し、外科手術部位または創傷部位の画像及び映像データを捕捉及び記録するように構成されている。外科手術視野「SF」は、外科手術部位または創傷部位を誘導するための最大360度の視野角「α」を提供し得る。外科手術部位または創傷部位の画像及び映像データは、臨床医が、患者内に大きい切開を設け、かつ/または外科手術部位または創傷部位を直接調べる必要なく、外科手術部位または創傷部位を実時間で視認または観察することができるように、装置100のディスプレイ106に伝達され、かつ/またはその上に表示される。カメラ120からの画像及び映像データは、後に視認するためにCPU104のメモリ104a及び/またはデータインターフェース装置106a内に記録され得る。画像及び映像データは、遠隔地からの画像及び映像データへのアクセスを可能にするために、例えば、セントラルサーバ、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、及び同様のものに伝達され得る。
【0043】
カメラ120は、高解像度映像(例えば、1080p、4K、8K等)及び/または画像(例えば、単一もしくはバーストモード、高速等での)を記録するように構成され得る。カメラ120は、広角レンズ、手振れ防止機構、画像センサ、オートズーム、及び全方向移動機能、または同様のものを含み得る。カメラ120は、電荷結合装置(CCD)、相補形金属酸化膜半導体(CMOS)、N型金属酸化膜半導体(NMOS)、または当該技術分野で知られている他の好適なカメラ等の可視光光学カメラであり得る。実施形態において、カメラ120は、強誘電体、シリコンマイクロボロメータ、もしくは非冷却焦点面アレイ(UFPA)等の赤外線カメラもしくはサーモグラフカメラであり得る。
【0044】
プローブ108の光源122は、カメラ120により画定された外科手術視野「SF」(
図1)を照明するように構成されており、かつ感染性病原体を検知及び治療するように構成されている。例えば、光源122は、通常光(例えば、無色、白光等)を放射または放出して、外科手術視野「SF」を照明し得、カメラ120を使用して外科手術部位または創傷部位を検査及び/または文書化することができる。加えて、光源122は、紫外線(UV)光を放射して、感染性病原体を照明、視覚化、かつ/または治療するように構成され得る。プローブ108は、造影剤と組み合わせて機能するように構成され得る。造影剤は、任意の吻合部漏出が、漏出を通して造影剤を運搬し、装置100のプローブ108により容易に検知されるように、患者の消化管内に経口投与され得る。他の例において、光源122を使用して、別様に、通常光下で視認可能でない通常光下で感染性病原体(例えば、病原性細菌、内毒素、代謝物等)を照明し、かつ視覚化することができる。UV光を使用して、光源122により、感染性病原体が蛍光を発するか、または蛍光性を示し、これは、感染性病原体を露出させ、その結果、臨床医は、感染性病原体を容易に特定及び診断することができる。加えて、臨床医は、有害な細菌、ウイルス、及び他の微生物を破壊、死滅、または放射するために、光源122からのUV-C光(例えば、180ナノメートル(nm)~280nmの波長)を使用して、外科手術部位または創傷部位を治療することができる。実施形態において、光源122は、約260nm~約270nmの波長で紫外線を放出するように構成されている。例えば、GI管の吻合部漏出に関連付けられた細菌、もしくはヘルニアの修復から生じる感染に関連付けられた特定の範囲の波長等、感染または感染性病原体を標的にするように構成された任意の好適な波長を使用し得ることを理解するべきである。実施形態において、光源122は、1つ以上の発光ダイオード(LED)、電球、レーザ、ランプ、マイクロ波生成UVプラズマ装置、または同様のものを含み得る。
【0045】
図2、3、及び4を参照すると、プローブ108の遠位端部分109bは、無菌塗布具または綿棒130を受容し、これに取り付けるように構成された凹部124を含み得る。綿棒130が取り付けられた状態でのプローブ108は、外科手術部位または創傷部位内に挿入して、組織培養物もしくは試料を回収するように構成されている。実施形態において、綿棒130は、綿棒130がプローブ108に選択的に取り付けられるように、プローブ108の凹部124との押し込み、スナップ嵌合、及び/または締まり嵌め配置を有し得る。実施形態において、組織培養物または試料を回収するための任意の種類の無菌塗布具または綿棒を使用し得る。
【0046】
光度計112は、CPU104に通信可能に接続されている。光度計112は、外科手術部位または創傷部位から回収された組織試料に基づき実時間組織培養試験を行って、外科手術部位または創傷部位に存在する感染のレベル及び/または無菌の程度を特定するように構成されている。動作中に、ハウジング102のラッチ113を開いて、光度計112の読み取りチャンバ112aを露出させる。読み取りチャンバ112aは、綿棒130(
図4)を内部に受容して、綿棒130及びプローブ108により外科手術部位または創傷部位から回収された組織試料の試験を行うように構成されている。
【0047】
光度計112は、外科手術部位または創傷部位でのアデノシン三リン酸(ATP)のレベルを検知または測定し得る。光度計112の読み取りチャンバ112a内への綿棒130の挿入前または中に、綿棒130は、試薬(水、発光酵素、等、図示せず)に供されるか、またはこれと接触し得、その結果、綿棒130上に存在するATPが、もし存在するならば、試薬と相互作用して光を生成する。生成された光の量は、存在するATPの量に直接比例しており、外科手術部位または創傷部位での総合的な生物学的汚染レベル、例えば、無菌または感染のレベルの指標を提供する。光度計112及びCPU104は、存在するATPの量を検知するように協働して、外科手術部位での、またはその近くでの任意の感染または未決定の感染について臨床医に警告する。かかるATPレベルは、臨床医が、介入が必要かどうかを判定することを可能にし得る。
【0048】
読み取りは、関連する光ユニット(「RLU」)内に記録され、ディスプレイ106上に表示され、かつ/またはデータインターフェース装置106aを使用して1つ以上の外部装置に無線で伝達されて、例えば、外科手術部位または創傷部位での無菌または感染のレベルの評価を臨床医に提供し得る。実施形態において、光度計112は、外科手術部位または創傷部位での無菌または感染のレベルに近似する光出力を測定するように構成された1つ以上のフォトレジスタ、フォトダイオード、または光電子増倍管(図示せず)を含み得る。
【0049】
使用時に、臨床医は、
図5で示されているように、例えば、吻合部手技後等に、予防措置として外科手術後検診を行う場合がある。プローブ108は、例えば、吻合部漏出及び/または吻合部漏出から生じる任意の感染について試験するために、患者「P」の吻合の部位に近接する腹腔内に設けられた小切開(または、例えばトロカールを通して)内に直接挿入され得る。代替的に、プローブ108は、患者「P」(例えば、口、鼻、肛門等)の任意の天然オリフィスを通して挿入され得る。目盛り盤110を使用して、プローブ108を関節運動、操作、及び/または回転させて、外科手術部位または創傷部位まで誘導する。次に、プローブ108のカメラ120及び光源122を使用して、外科手術部位または創傷部位の外科手術視野「SF」を提供し、結果として生じた画像、映像、及び/またはデータは、臨床医がディスプレイ106を使用して外科手術部位または創傷部位を診断及び誘導することができるように、実時間でディスプレイ106上に表示される。例えば、カメラ120及び光源122を使用して、吻合の部位での吻合部漏出、または吻合部漏出から生じた感染(例えば、病原体、細菌等)を検知し得る。捕捉装置を使用して外科手術部位または創傷部位での視認検査を容易にすることができるように、患者内に第2の切開(図示せず)を設けてもよい。
【0050】
外科手術部位または創傷部位での感染の視覚化を向上させるために、100の光源122がUV光を放出するように、制御装置103を使用して、UVモードを選択することができる。UV光を使用して、通常光下で視認できない感染性病原体を照明し、かつ検知し得る。さらに、UV光(例えば、UV-C)を使用して、外科手術部位または創傷部位を治療(例えば、殺菌、消毒)し得る。外科手術部位または創傷部位(例えば、感染の部位)は、外科手術部位または創傷部位を適切に殺菌及び/または消毒するために必要な限り長くUV-C光で治療され得る。
【0051】
追加的または代替的に、綿棒130が試験用組織試料を回収することができるように、プローブ108の凹部124内に綿棒130を挿入してもよい。例えば、綿棒130をプローブ108に取り付けた後、目盛り盤110を作動させて、外科手術部位または創傷部位の適切な組織培養物を取得する。追加的または代替的に、臨床医は、適切な組織試料が綿棒130により受容されることを確実にするために、装置100を移動(例えば、上、下、左、右、中、外に等)させることができる。次に、綿棒130は、試薬と混合されるか、または試薬に供され、かつ光度計112のチャンバ112a内に配置され得る。光度計112及びCPU104は、協働して、外科手術部位または創傷部位のRLU読み取りを提供する。RLU読み取り及び/または他のプロンプトがディスプレイ106上に表示され得、外科手術部位または創傷部位での詳細な報告を提供し得る。外科手術部位または創傷部位での感染のレベルが閾値レベルを超えた場合、次に、装置100は、臨床医に警告(例えば、ディスプレイ106上でのプロンプトの点滅、聴覚音等を通して)するだろう。装置100は、光源122から外科手術部位または創傷部位にUV-C光を適用する、さらなる外科手術を行う等の治療方針を推奨し得る。
【0052】
装置100により取り出された画像、映像、及び/またはデータは、CPU104のメモリ104a内に文書化及び/または記録され得る。追加的または代替的に、ユーザは、データインターフェース装置106aを使用して、外部装置(例えば、タブレット、スマートフォン、コンピュータ等)上にデータをダウンロードすることができる。
【0053】
装置100は、任意の種類の外科手術手技の前、中、及び/または後に使用し得、かつ吻合部手技に限定されないことを理解するべきである。例えば、装置100のプローブ108は、手技中に挿入され得、次に、観察期間後に取り外され得る。観察期間は、十分な治癒に起因して外科手術後の感染期間が経過したことを示す、十分な時間が経過した時間枠として定義され得る。装置100を使用して、異物(例えば、ヘルニアメッシュ、縫合、インプラント等)及びそこから生じた感染を検知し得る。さらに、装置100を使用して、感染の存在を示す固形または可溶性物質(例えば、内毒素、代謝物)を検知し得る。装置100は、咽頭培養試験、血液培養試験、膣培養試験、皮膚及び創傷培養試験、子宮頸部細胞診、または同様のものを行うように構成され得る。実施形態において、例えば、外科手術部位または創傷部位の撮像を向上させるために、外科手術部位または創傷部位に造影剤を適用してもよい。
【0054】
本明細書に特に記載されており、かつ添付の図面に示されている構造及び方法は、非制限的で例示的な実施形態であり、かつ本説明、開示、及び図面は、特定の実施形態の単なる例示として解釈されるべきであることを、当業者であれば理解するだろう。したがって、本開示は、記載されている精確な実施形態に限定されるものではなく、かつ本開示の範囲または精神から逸脱することなく、種々の他の変更及び変形が当業者により行われ得ることを理解するべきである。さらに、一定の実施形態と関連して示されているか、または記載されている要素及び特徴は、本開示の範囲から逸脱することなく、一定の他の実施形態の要素及び特徴と組み合わされ得、かかる変形例及び変更例はまた、本開示の範囲内に含まれない。したがって、本開示の主題事項は、特に示されており、かつ記載されているものにより限定されない。