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特許7175632シャント抵抗器およびシャント抵抗器の実装構造
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】シャント抵抗器およびシャント抵抗器の実装構造
(51)【国際特許分類】
   H01C 13/00 20060101AFI20221114BHJP
   H01C 1/01 20060101ALI20221114BHJP
   H01C 1/148 20060101ALI20221114BHJP
   G01R 15/00 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
H01C13/00 J
H01C1/01 Z
H01C1/148
G01R15/00 500
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018096178
(22)【出願日】2018-05-18
(65)【公開番号】P2019201170
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 保
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-212297(JP,A)
【文献】国際公開第2013/005824(WO,A1)
【文献】特開2015-017832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 13/00
H01C 1/01
H01C 1/148
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の金属材からなり、第1平面および第2平面と、その周囲の外周面を、それぞれ備える第1端子および第2端子と、
前記第1端子と前記第2端子とのそれぞれの第1平面が対向しており、それぞれの前記第1平面に接続されて、前記第1端子と前記第2端子とを接続した抵抗体と、
前記抵抗体と、それぞれの前記第1平面との接合面積は、前記第1平面の面積よりも小さく、かつ、前記第1端子と前記第2端子とには、前記第1平面から前記第2平面へ貫通する孔部が形成され、
前記第1端子と前記第2端子との対向面側に電圧検出端子接続され
前記第1端子と前記第2端子との対向面側にスリット部が形成され、
前記スリット部に、前記電圧検出端子が形成された基板が挿入されている
シャント抵抗器。
【請求項2】
請求項1に記載のシャント抵抗器の実装構造であって、
前記スリット部は、
前記第1端子及び前記第2端子の側端部からそれぞれに形成された前記孔部の方向に向けて延びているシャント抵抗器の実装構造。
【請求項3】
前記電圧検出端子は、前記スリット部内で前記第1端子または前記第2端子と接続される
請求項に記載のシャント抵抗器の実装構造。
【請求項4】
前記基板の表裏に前記電圧検出端子が形成される
請求項2または3に記載のシャント抵抗器の実装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャント抵抗器およびシャント抵抗器の実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気自動車に搭載されている半導体パワーモジュール等における電流を検出するため、シャント抵抗器が用いられる。
取付け作業が簡便で、過大な取付けスペースも必要とせず、高精度の電流検出が可能なシャント抵抗器として、特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1に記載のシャント抵抗器は、導電性の金属材からなり、第1平面および第2平面と、その周囲の外周面を、それぞれ備える第1端子および第2端子と、前記第1端子と前記第2端子とのそれぞれの第1平面が対向しており、それぞれの第1平面に接続されて、前記第1端子と前記第2端子とを接続した抵抗体と、前記抵抗体と、それぞれの前記第1平面との接合面積は、前記第1平面の面積よりも小さく、かつ、前記第1端子と前記第2端子とには、前記第1平面から前記第2平面へ貫通する孔部が形成されている。
以下において、このようなシャント抵抗器を、「ブッシングシャント(抵抗器)」とも称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-212297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のブッシングシャントにおいては、第1端子と第2端子とのそれぞれの側面から出力信号電圧の引き出し端子を引出す構造を用いている。
ところで、ブッシングシャントにおいて、磁束による起電力ノイズを抑制することが望まれている。
本発明は、磁束による起電力ノイズを抑制する出力信号電圧の引き出し端子構造を有するブッシングシャント抵抗器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によれば、導電性の金属材からなり、第1平面および第2平面と、その周囲の外周面を、それぞれ備える第1端子および第2端子と、前記第1端子と前記第2端子とのそれぞれの第1平面が対向しており、それぞれの前記第1平面に接続されて、前記第1端子と前記第2端子とを接続した抵抗体と、前記抵抗体と、それぞれの前記第1平面との接合面積は、前記第1平面の面積よりも小さく、かつ、前記第1端子と前記第2端子とには、前記第1平面から前記第2平面へ貫通する孔部が形成され、前記第1端子と前記第2端子との対向面側に電圧検出端子を接続した、シャント抵抗器が提供される。
【0007】
本発明は上記に記載のシャント抵抗器の実装構造であって、前記第1端子と前記第2端子との対向面側にスリット部が形成され、前記スリット部に、前記電圧検出端子が形成された基板が挿入されているシャント抵抗器の実装構造である。
前記スリット部は、前記第1端子及び前記第2端子の側端部からそれぞれに形成された前記孔部の方向に向けて延びているようにすると良い。
前記電圧検出端子は、前記スリット部内で前記第1端子または前記第2端子と接続されるようにすると良い。
前記基板の表裏に前記電圧検出端子が形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ブッシングシャント抵抗器において、磁束による起電力ノイズを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施の形態によるシャント抵抗器の一構成例を示す斜視図である。
図2A図1に示すシャント抵抗器に取り付ける電圧検出端子等を備えた基板の一例を示す図であり、基板の一面側(表面側)から見た図である。
図2B図1に示すシャント抵抗器に取り付ける電圧検出端子等を備えた基板の一例を示す図であり、基板の裏面側から見た図である。
図3A】シャント抵抗器のスリット部に、基板の対向する辺をそれぞれ挿入した状態を示す斜視図である。
図3B】シャント抵抗器のスリット部に、基板の対向する辺をそれぞれ挿入した状態を示す斜視図であり、図3Aとは反対側の方向から見た斜視図である。
図4】本発明の第2の実施の形態によるシャント抵抗器の一構成例を示す斜視図である。
図5】コネクタを備えた基板の一構成例を示す斜視図である。
図6A図4図5とに関連する図であり、L字状の端子と固定ネジにより、シャント抵抗器に基板を固定した状態を示す斜視図である。
図6B図4図5とに関連する図であり、L字状の端子と固定ネジにより、シャント抵抗器に基板を固定した状態を示す側面図である。
図7A】本実施の形態による固定部の固定方法の一例を示す図である。
図7B】本実施の形態による固定部材の固定方法の一例を示す図であり、図7Aに続く図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態によるシャント抵抗器およびその実装構造について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態によるシャント抵抗器の一構成例を示す斜視図である。
【0012】
本実施の形態によるシャント抵抗器Aは、Cuなどの導電性の金属材からなり、第1平面11aおよびその裏面側の第2平面11bと、その周囲の外周面(側面)11cを、それぞれ備える第1端子(電極)1と、Cuなどの導電性の金属材からなり、第1平面13aおよび第2平面13bと、その周囲の外周面(側面)13cを、それぞれ備える第2端子(電極)3と、を有する。
【0013】
さらに、第1端子1と第2端子3とには、第1平面11a、13aから第2平面11b、13bまで貫通する孔部1a、3aが形成されている。
【0014】
第1端子1と第2端子3のそれぞれの第1平面11a、13aは対向しており、それぞれの第1平面11a、13aにおいて、第1端子1と第2端子3とを並列して接続する複数の抵抗体5が設けられている。抵抗体5の材料としては、Cu-Ni系、Cu-Mn系、Ni-Cr系などの金属材料を用いることができる。
【0015】
抵抗体5の上面、下面と、それぞれの第1平面11a、13aとの接合面積は、第1平面11a、13aの面積よりも小さい。本実施例では、第1端子1、第2端子3のそれぞれに形成した孔部(中心穴)1a、3aを中心に、複数の抵抗体5を同心円状に、例えば周方向に沿って等間隔で配置した。
【0016】
尚、第1端子1および第2端子3は、四角形の他に、三角形等の多角形でもよく、また、円形でもよい。また孔部1a、3aは、円形の他に、四角形等の多角形にしてもよい。他の実施例においても同様である。
【0017】
図1において、第1端子1と第2端子3とのそれぞれの外周面(側面)11c,13cには、第1端子1と第2端子3の対向面側に対向する位置に設けられたスリット部(溝部)11s,13sが設けられている。スリット部は、第1端子1及び第2端子3の側端部から孔部1a,3aの方向(中心方向)に向けて延びている。
【0018】
図2A図2Bは、図1に示すシャント抵抗器Aに取り付ける電圧検出端子等を備えた基板の一例を示す基板の一面側(表面側)及びその裏面側から見た図である。基板は、プリント基板などを用いることができる。
【0019】
図2Aに示すように、基板21をその一面21a側から見ると、基板21の一面21aにコネクタ41が取り付けられている。コネクタ41には、図示しない信号ケーブルなどを接続するための接続孔43が設けられている。コネクタ41には、基板21の一面21aを這うように第1電圧検出端子31a,31b(そのうちの一方、例えば31bはノイズ除去用の端子)と、第2電圧検出端子33aとが形成されている。第1電圧検出端子31a,31bは、例えば基板21の隅の方の位置において電気的接続がなされ、第1のパッド31cが形成されている。
【0020】
図2Bに示すように、基板21をその一面21aの裏面側の一面21b側から見ると、一面21b上に第2電圧検出端子33bが設けられている。第2電圧検出端子33bにおいては、例えば基板21の隅の方の位置において第2のパッド33b-1が形成されている。
第2電圧検出端子33a,33bは、基板21の厚さ方向を挟んで、第1の位置33a-1と第2の位置33a-2との面内の同じ位置において表から裏までビア(例えばはんだなどの金属材)により接続されている。
このようにして、基板21には、第1電圧検出端子31a,31bと、第2電圧検出端子33bと、コネクタ41と、が形成されている。
【0021】
図3Aは、シャント抵抗器Aのスリット部11s,13sに、基板21の対向する2辺をそれぞれ挿入した状態を示す斜視図である。図3Aにおいては、第2電圧検出端子33bが見えている。図3Bは、図3Aとは反対側の方向から見た斜視図である。図3Bにおいては、第1電圧検出端子31a,31bが見えている。そして、第1電圧検出端子31aと、第2電圧検出端子33bとの対の出力信号ラインは、基板の表裏で平行パターンとなっている。
そして、第1のパッド31cと第2のパッド33b-1とは、スリット11s,13s内において、それぞれ、第1端子1,第2端子3と電気的に接続される。ここで、磁束発生の少ないブッシングシャントの孔部(中心穴)1a、3aに近い箇所に電圧検出端子(電流端子)を接続できるようにした。
【0022】
以上に説明したように、本実施の形態によるシャント抵抗器およびシャント抵抗器の実装構造によれば、ブッシングシャント抵抗器において、出力信号電圧の引出し構造を磁束発生の少ないブッシングシャントの孔部(中心穴)1a、3aに近い箇所に電圧検出端子を接続できるようにしたことにより、磁束による起電力ノイズを抑制することができる。取り出した信号は、基板配線でコネクタまで接続されるが、第1電圧検出端子31a,31bと、第2電圧検出端子33bとの対の出力信号ラインは、基板の表裏で平行パターンとすることで、磁束ノイズの影響を抑制することができる。
【0023】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態では、第1端子と第2端子の対向面側にスリット部を形成して、電圧検出端子をシャント抵抗器に接続した。
本実施の形態では、ネジ等の固定部材で端子に固定した例えばL字状の端子を用いて電圧検出端子を形成した基板をシャント抵抗器に固定するものである。
【0024】
図4は、本実施の形態によるシャント抵抗器の一構成例を示す斜視図である。図5は、コネクタを備えた基板の一構成例を示す斜視図である。
ブッシングシャントに関しては、第1の実施の形態と同様のものを用いることができる。図4に示すように、本実施の形態によるシャント抵抗器Bは、ネジ等の固定部材53a,53bにより第1端子1,第2端子3のそれぞれの対向する第1平面11a、13aにそれぞれ相手側の面に向けて曲げられているL字状の端子51a,51bを設けている。図5では、シャント抵抗器Bを除き、L字状の端子51a,51bが基板21に固定されている状態を示す。基板21の一面側にL字状の端子が、他方の一面側にコネクタ41と外部端子48とが配置されている。
【0025】
図6A図6Bは、図4図5とに関連する図であり、L字状の端子51a,51bと固定ネジ53a,53bにより、シャント抵抗器Bに、基板21を固定した状態を示す斜視図と側面図である。図7A図7Bは、本実施の形態による固定部材53a,53bの固定方法の一例を示す図である。
図6A図6Bに示すように、固定部材53a,53bによりシャント抵抗器Bが固定されたL字状の端子51a,51bが、第1端子1,第2端子3のそれぞれの対向する第1平面11a,13aと、第1の実施の形態と同様に例えば図2Aに示すように、コネクタ41に接続される配線(電圧検出端子)31a,33aと接続される。
【0026】
次に、シャント抵抗器Bに、ネジ等の固定部材で端子に固定した例えばL字状の端子を固定する作業工程について説明する。
図7A図7Bに示すように、第2端子3側に形成された孔部71a,71bであって、組み立てた際にネジに例示される固定部材53a,53bを固定するためのドライバー81などの固定具を通して、ドライバー81でねじ込みが可能な固定部材53a,53bにより、L字状の端子51a,51bを第1端子1に固定することができる。
以上のように、本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の構成を異なる電圧検出端子の固定手段により得ることができ、また、同様の効果を得ることができる。
【0027】
上記の実施の形態において、添付図面に図示されている構成等については、これらに限定されるものではなく、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0028】
また、本発明の各構成要素は、任意に取捨選択することができ、取捨選択した構成を具備する発明も本発明に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、シャント抵抗器に利用可能である。
【符号の説明】
【0030】
A,B…シャント抵抗器(ブッシングシャント)
1…第1端子
1a…孔部
3…第2端子
3a…孔部
5…抵抗体
11a,13a…第1平面
11b,13b…第2平面
11s,13s …スリット
21…基板
31a,31b…第1電圧検出端子
33a,33b…第2電圧検出端子
41…コネクタ
43…接続孔
48…外部端子
51a,51b…L字状の端子
53a,53b…固定部材
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B