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特許7175644基板研磨装置のための研磨パッドおよび当該研磨パッドを備える基板研磨装置
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  • 特許-基板研磨装置のための研磨パッドおよび当該研磨パッドを備える基板研磨装置 図1
  • 特許-基板研磨装置のための研磨パッドおよび当該研磨パッドを備える基板研磨装置 図2
  • 特許-基板研磨装置のための研磨パッドおよび当該研磨パッドを備える基板研磨装置 図3
  • 特許-基板研磨装置のための研磨パッドおよび当該研磨パッドを備える基板研磨装置 図4
  • 特許-基板研磨装置のための研磨パッドおよび当該研磨パッドを備える基板研磨装置 図5A
  • 特許-基板研磨装置のための研磨パッドおよび当該研磨パッドを備える基板研磨装置 図5B
  • 特許-基板研磨装置のための研磨パッドおよび当該研磨パッドを備える基板研磨装置 図6
  • 特許-基板研磨装置のための研磨パッドおよび当該研磨パッドを備える基板研磨装置 図7A
  • 特許-基板研磨装置のための研磨パッドおよび当該研磨パッドを備える基板研磨装置 図7B
  • 特許-基板研磨装置のための研磨パッドおよび当該研磨パッドを備える基板研磨装置 図8A
  • 特許-基板研磨装置のための研磨パッドおよび当該研磨パッドを備える基板研磨装置 図8B
  • 特許-基板研磨装置のための研磨パッドおよび当該研磨パッドを備える基板研磨装置 図9
  • 特許-基板研磨装置のための研磨パッドおよび当該研磨パッドを備える基板研磨装置 図10
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】基板研磨装置のための研磨パッドおよび当該研磨パッドを備える基板研磨装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/013 20120101AFI20221114BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20221114BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
B24B37/013
B24B49/12
H01L21/304 622S
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018122076
(22)【出願日】2018-06-27
(65)【公開番号】P2020001118
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2020-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100203611
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 大地
(72)【発明者】
【氏名】金馬 利文
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特許第3788533(JP,B2)
【文献】特開2003-197587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/013
B24B 49/12
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明窓を有する研磨パッドを取り付けるための研磨テーブルと、
前記研磨テーブルに設けられた、前記透明窓の劣化を確認するためのインジケータであって、前記透明窓を介して目視可能な位置に設けられた、インジケータと、
を備える、基板研磨装置。
【請求項2】
透明窓を有する研磨パッドを取り付けるための研磨テーブルと、
前記研磨テーブルに取り付けられた、基板の研磨の進行を測定するための光学センサと、
を備える、基板研磨装置であって、
前記研磨テーブルは、
前記光学センサの本体部から延びる光ファイバを通過させるための開口と、
前記透明窓の劣化を確認するためのインジケータであって、前記インジケータは前記研磨テーブルのうち前記研磨パッドが取り付けられる面における前記透明窓を介して目視可能な位置に設けられており、前記インジケータは前記開口の周囲に設けられている、インジケータと、
を備える、
基板研磨装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板研磨装置であって、前記透明窓を介して前記インジケータを撮像可能であるように構成された撮像機構をさらに備える、基板研磨装置。
【請求項4】
請求項3に記載の基板研磨装置であって、
前記基板研磨装置は制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記撮像機構により取得された画像および/または前記撮像機構により取得された画像から算出される特徴量から、前記透明窓の劣化度を算出する、
基板研磨装置。
【請求項5】
請求項4に記載の基板研磨装置であって、
前記制御部は、理想の画像および/または特徴量と、前記撮像機構により取得された前記インジケータの画像および/または特徴量との比較結果に基づいて前記透明窓の劣化度を算出する、基板研磨装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の基板研磨装置であって、
前記制御部は、算出された前記透明窓の劣化度が所定の値を超えていた場合、エラー処理を実行する、
基板研磨装置。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか一項に記載の基板研磨装置であって、
前記制御部は、算出された前記透明窓の劣化度に基づいて、前記研磨パッドの摩耗量を算出する、
基板研磨装置。
【請求項8】
基板研磨装置の研磨テーブルに取り付けられた研磨パッドに設けられた透明窓の劣化度を算出する方法であって、
前記透明窓および/または前記透明窓を介して目視可能な位置に設けられた前記研磨テーブル上のインジケータを、撮像機構を用いて撮像する段階と、
前記撮像機構により撮像された画像と理想の画像、および/または、前記撮像機構により撮像された画像から算出される特徴量と理想の特徴量とを比較する段階と、
前記比較する段階において得られた比較結果に基づいて前記透明窓の劣化度を算出する段階と、
を備える、方法。
【請求項9】
請求項8の方法により算出された前記透明窓の劣化度に基づいて、前記研磨パッドの摩耗量を算出する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板研磨装置のための研磨パッドおよび当該研磨パッドを備える基板研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、研磨テーブルに取り付けた研磨パッドにより基板を研磨する装置が知られている。たとえば特許文献1(特開2003-197587号公報)には、回転可能な定盤と、定盤上に取り付けられた研磨パッド(特許文献1の「研磨材」)を備える基板研磨装置が開示されている(図1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-197587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的な基板研磨装置においては、研磨パッドは消耗品である。従来の基板研磨装置においては、事前に測定または算出された摩耗量などに基づいて、研磨パッドの最大使用回数または最長使用時間が設定されていた。すなわち、従来の基板研磨装置においては、研磨パッドが所定の回数または所定の時間(以下では単に「所定の回数」という)使用された場合、研磨パッドの寿命が尽きたと判定されていた。しかし、研磨パッドが所定の回数使用されたそのときに、研磨パッドの寿命がちょうど尽きるとは限らない。所定の回数使用される前に研磨パッドの寿命が尽きてしまった場合、基板は、寿命が尽きた後の研磨パッドにより研磨される。したがって、基板研磨装置が所定の研磨性能を発揮できない可能性がある。一方で、所定の回数使用されていても研磨パッドの寿命が尽きていない場合、いまだ使用可能な研磨パッドを交換することとなる。いまだ使用可能な研磨パッドを交換することにより、研磨パッドの交換周期が短くなり、交換に必要なコストが増大する。
【0005】
そこで本願は、上記の課題のうち少なくとも一部を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は、一実施形態として、透明窓を有する研磨パッドを取り付けるための研磨テーブルと、研磨テーブルに設けられた、透明窓の劣化を確認するためのインジケータであって、透明窓を介して目視可能な位置に設けられた、インジケータと、を備える、基板研磨装置を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】基板研磨装置の正面断面図である。
図2】研磨パッドが取り付けられた研磨テーブルの上面図である。
図3】研磨テーブルの上面図である。
図4】アライメントマークの拡大図である。
図5A図5は、研磨パッドが張り付けられた研磨テーブルの一部分の上面図である。図5Aは研磨パッド150が正しく位置合わせされていない場合の図である。
図5B図5は、研磨パッドが張り付けられた研磨テーブルの一部分の上面図である。図5Bは研磨パッド150が正しく位置合わせされている場合の図である。
図6】インジケータを有する研磨テーブルの上面図である。
図7A図7は、透明窓を介して、図6の左側に位置するインジケータを観察した様子を示す図である。図7Aは透明窓が劣化していない場合の図である。
図7B図7は、透明窓を介して、図6の左側に位置するインジケータを観察した様子を示す図である。図7Bは透明窓が劣化している場合の図である。
図8A図8は、透明窓を介して、図6の右側に位置するインジケータを観察した様子を示す図である。図8Aは透明窓が劣化していない場合の図である。
図8B図8は、透明窓を介して、図6の右側に位置するインジケータを観察した様子を示す図である。図8Bは透明窓が劣化している場合の図である。
図9】撮像機構を備える基板研磨装置の正面断面図である。
図10】光源を備える基板研磨装置の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<<第1実施形態>>
<第1実施形態の背景技術と課題について>
特許文献1(特開2003-197587号公報)の基板研磨装置は、研磨テーブル(定盤とも称される)の下方に設けられた液封式のセンサにより研磨の進行を測定することができるように構成されている。センサから照射される照射光および封止液体が定盤の内部を通過できるように、特許文献1の定盤には給液孔が設けられている。給液孔と同様に、特許文献1の研磨パッドには貫通孔が設けられている。
【0009】
特許文献1の装置において、給液孔と貫通孔の位置がずれている場合、基板の近くにおける封止液体の流れが乱され得る。封止液体の流れが乱されると、センサ部の性能が悪化し得ると考えられる。したがって、特許文献1では、研磨パッドが定盤に対して精度よく位置合わせされることが好ましい。
【0010】
一般的に、研磨パッドは非透明な材質から形成されている。非透明な研磨パッドを定盤に取り付けると、貫通孔を介して露出している部分を除き、定盤のほとんどの部分が研磨パッドによって覆い隠されることになる。したがって、給液孔の位置を目視しながら研磨パッドを位置合わせすることは困難であった。さらに、近年では、基板の大型化が進行している。基板の大型化に伴い、定盤および研磨パッドも大型化する傾向にある。大型の定盤に大型の研磨パッドを取り付けること、および、大型の研磨パッドを位置合わせすることは困難である。また、特許文献1ではセンサ部が1つのみ設けられている構成を前提としている。しかし、研磨装置の中には、センサ部を複数有する装置が存在する。センサ部が複数存在する場合、研磨パッドの位置合わせに多大な労力が必要であった。よって、研磨パッドの位置合わせを容易にすることが求められている。
【0011】
<基板研磨装置100の概要について>
図1は第1実施形態にかかる基板研磨装置100の正面断面図である。図2は研磨パッド150が取り付けられた研磨テーブル110の上面図である。ただし、本願において用いられる図面は模式図である。各図面に表わされた要素の寸法、形状、位置などは、実際の装置の寸法、形状、位置などと必ずしも一致しない。いくつかの図面に示されている「PAD」および「TABLE」という文字は研磨パッド150の上面と研磨テーブル110の上面を区別するための文字である。すなわち、図面中の「PAD」および「TABLE」という文字は基板研磨装置100の要素ではない。また、本明細書に添付される図面においては、上面図によって示される構成と、断面図によって示される構成とに差異がある場合がある。たとえば図2では封止液体供給路111と封止液体排出路112は研磨テーブル110の周方向(研磨パッド150の周方向)に並んでいるが、図1では封止液体供給路111と封止液体排出路112は研磨テーブル110の径方向に並んでいる。この差異は図示の都合によって生じた差異に過ぎない。本明細書によって開示される思想を具現化するとき、封止液体供給路111と封止液体排出路112は研磨テーブル110の周
方向に並んでいてもよく、径方向に並んでいてもよい。なお、封止液体供給路111と封止液体排出路112の位置関係は、図示された位置関係に限られないことに留意されたい。
【0012】
本実施形態にかかる基板研磨装置100はCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学機械研磨)装置である。研磨テーブルの下面から検出器により研磨の進行を測定する装置であれば、基板研磨装置100はCMP装置以外の装置であってもよい。基板研磨装置100は、研磨テーブル110と、液封式の光学センサ120と、研磨ヘッド130と、研磨液供給機構140とを備える。研磨テーブル110の上面には研磨パッド150が着脱可能に取り付けられている。研磨ヘッド130の下面には基板131が着脱可能に取り付けられている。
【0013】
<研磨テーブル110について>
研磨テーブル110はモータ(図示せず)などによって少なくとも一方向に回転可能に構成される。基板研磨装置100の形式によっては、研磨テーブル110は回転可能でなくともよい。研磨テーブル110には封止液体供給路111と封止液体排出路112が設けられている。封止液体供給路111は、研磨テーブル110の上面に配置される研磨パッド150の貫通孔151に封止液体を供給するために設けられている(貫通孔151については後述)。封止液体排出路112は、貫通孔151から封止液体を排出するために設けられている。
【0014】
封止液体供給路111は封止液体源113に接続されている。封止液体源113の個数に限定は無い。封止液体源113は基板研磨装置100の一要素であってもよい。基板研磨装置100とは別個独立した封止液体源113が用いられてもよい。封止液体は例えば純水である。しかし、封止液体は他の液体であってもよい。光学センサ120のセンシング光は封止液体の中を進む。したがって、封止液体は、少なくともセンシング光の波長領域において実質的に透明であることが好ましい。なお、「センシング光」とは「光学センサ120から基板131に向かって進む照射光」および「基板131から光学センサ120に向かって進む反射光」を指す。
【0015】
封止液体は、センシング光の光路に供給された後、封止液体排出路112を介して研磨テーブル110の外部へ排出される。研磨テーブル110の外部へ排出された封止液体は、図1に示されるように封止液体源113に戻されてもよい。封止液体は、封止液体源113に戻されることなく廃棄されてもよい。封止液体供給路111および封止液体排出路112と、封止液体源113とは、ロータリジョイント114により接続されてよい。
【0016】
後述するように、本実施形態では光学センサ120が二つ設けられている。したがって、図1の封止液体供給路111は2本の経路に分岐するように構成されており、光学センサ120のそれぞれに封止液体を供給する。同様に、図1の封止液体排出路112は2本の経路が合流するように構成されている。ただし、図示した構成以外の構成を採用することも可能である。たとえば、2つの光学センサ120のそれぞれのために、2つの独立した封止液体供給路111および2つの独立した封止液体排出路112が設けられていてもよい。
【0017】
<光学センサ120について>
光学センサ120は、基板131の研磨の進行を測定するセンサである。具体的には、光学センサ120は、光を基板131の研磨面に照射し、反射光の光学的特性を測定する。反射光の光学的特性は基板131の研磨面の状態によって変化し得るので、反射光の光学的特性を測定することによって研磨の進行を測定することができる。光学センサ120は基板131の研磨量を測定するセンサであってよい。光学センサ120は基板131の
研磨の終点を検知するセンサであってもよい。
【0018】
本実施形態にかかる基板研磨装置100は2つの光学センサ120を有する。より具体的には、1つの光学センサ120は研磨テーブル110の中央付近に設けられており、他の光学センサ120は研磨テーブル110のエッジ付近に設けられている。光学センサ120と研磨テーブル110の回転軸との距離により、基板131のどの領域が測定されるかが決定される。換言すれば、基板131の測定される領域は、光学センサ120と研磨テーブル110の回転軸との距離に依存する。光学センサ120の個数および配置は例示であり、他の構成が採用されてもよい。たとえば、同心円上に複数の光学センサ120を設けることで、ある特定の領域における基板131の測定頻度を増加させることも可能である。
【0019】
光学センサ120は、センサ本体121と、照射光用光ファイバ122と、反射光用光ファイバ123とを備える。図示の便宜のため、図2では照射光用光ファイバ122および反射光用光ファイバ123が黒く塗りつぶされて示されている。本実施形態では、研磨テーブル110の下部にセンサ本体121が設けられている。センサ本体121は、照射光用光ファイバ122に向かって光を照射するための光源(図示せず)と、反射光用光ファイバ123を通過した反射光を測定するためのフォトディテクタ(図示せず)を備える。
【0020】
照射光用光ファイバ122および反射光用光ファイバ123は、センサ本体121から延びている。照射光用光ファイバ122および反射光用光ファイバ123は、研磨テーブル110の下部から研磨テーブル110の上方に向かって延び、封止液体供給路111の内部に達している。封止液体供給路111はセンサ本体121から延びる光ファイバ(照射光用光ファイバ122および反射光用光ファイバ123)を通過させるための開口であると表現することもできる。照射光用光ファイバ122および反射光用光ファイバ123が研磨パッド150の上面から突出しない限り、かつ、光学センサ120による測定が可能である限り、照射光用光ファイバ122および反射光用光ファイバ123の上端の位置は任意であってよい。典型的には、照射光用光ファイバ122および反射光用光ファイバ123の上端の位置は、研磨テーブル110の上面よりわずかに低い位置である。
【0021】
センサ本体121に電力を供給するため、および、センサ本体121からの信号を伝送するために、配線(図示せず)が設けられていてもよい。配線はロータリジョイント(ロータリジョイント114であってもよく、他のロータリジョイントであってもよい)を介してセンサ本体121に接続されていてもよい。センサ本体121からの信号は制御部(図示せず)により受け取られてもよい。無線伝送技術などを採用することにより、配線を設けることを省略することもできる。センサ本体121から「基板131が所定量研磨された」または「基板131の研磨が終点に達した」という信号を受け取った制御部は、以下の(1)~(4)の少なくとも1つのステップを実行するよう基板研磨装置100を制御することにより、基板131の研磨を中止してよい。(1)研磨ヘッド130を上昇する、(2)研磨ヘッド130の回転を停止する、(3)研磨テーブル110の回転を停止する、および(4)研磨液供給機構140からの研磨液の供給を停止する。
【0022】
<研磨ヘッド130について>
研磨ヘッド130は研磨テーブル110に対向するように、研磨テーブル110の上方に設けられている。研磨ヘッド130の下面には基板131が着脱可能に取り付けられている。研磨ヘッド130はモータ(図示せず)などによって少なくとも一方向、好ましくは研磨テーブル110の回転方向と同一方向に回転可能に構成される。研磨ヘッド130は上下動機構(図示せず)などによって上下動可能に構成される。上下動機構により研磨ヘッド130が下降させられると、基板131が研磨パッド150に押し付けられる。基
板131が研磨パッド150に押し付けられた状態で研磨ヘッド130および研磨テーブル110のどちらか一方、好ましくは双方が回転すると、基板131が研磨される。
【0023】
<研磨液供給機構140について>
研磨液供給機構140は研磨テーブル110の上方に設けられている。研磨液供給機構140の先端はノズル状になっており、研磨液(スラリ)などを研磨パッド150に向けて供給することが可能である。研磨液供給機構140は研磨液に限らず、洗浄液および/または薬液を供給可能であってもよい。本実施形態の構成とは異なり、研磨テーブル110の下面から研磨液を供給する構成または研磨ヘッド130の内部から研磨液を供給する構成などが採用されてもよい。
【0024】
<研磨パッド150について>
研磨パッド150は研磨テーブル110の上面に取り付けられた板状の部材である。なお、研磨パッド150の材質および厚みなどによっては、研磨パッド150は「布状の部材」と表現される場合もある。一般的には、研磨パッド150は不透明な材質(たとえば発泡ポリウレタン)から形成される。
【0025】
センシング光および封止液体を通過させるため、研磨パッド150には貫通孔151が必要になる。研磨パッド150に開口が設けられている場合、開口が封止液体供給路111などの上部に位置するよう、研磨パッド150の位置決めが必要になる。しかし、一般的には研磨パッド150は非透明であるので、封止液体供給路111および封止液体排出路112の位置を目視しながら研磨パッド150を位置合わせすることは困難であった。なお、「研磨パッド150を位置合わせすること」は「研磨パッド150の取り付け位置および/または取り付け角度を調整すること」と読み替えられてもよい。
【0026】
そこで、本実施形態にかかる研磨パッド150には透明窓152が設けられている。好ましくは、透明窓152は少なくとも可視光の波長領域において実質的に透明である。透明窓152の材質として、たとえばポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂およびポリエステル樹脂などが挙げられる。透明窓152の中央には貫通孔151が設けられている。「貫通孔151の周囲に環状の透明窓152が設けられている」と表現することもできる。ただし、ここでの「環状」という用語は円環のみならず角環などをも意味する用語である。図2に示されているとおり、貫通孔151の形状は楕円形である。しかし、貫通孔151は円形でもよく、角形でもよい。研磨パッド150が研磨テーブル110に正しく取り付けられた場合に、貫通孔151は封止液体供給路111および封止液体排出路112と連通する。前述のとおり、本実施形態の基板研磨装置100は光学センサ120を2つ有する。本実施形態では、光学センサ120の数に対応するよう、封止液体供給路111および封止液体排出路112の組の数は2組である。さらに、封止液体供給路111および封止液体排出路112の数に対応するよう、本実施形態の研磨パッド150には2つの貫通孔151が設けられている。より具体的には、1つの貫通孔151は研磨パッド150の中央付近に設けられており、他の貫通孔151は研磨パッド150のエッジ付近に設けられている。貫通孔151と研磨パッド150の中央との距離により、基板131のどの領域が測定されるかが決定される。換言すれば、基板131の測定される領域は、貫通孔151と研磨パッド150の中央との距離に依存する。
【0027】
本実施形態にかかる研磨パッド150を研磨テーブル110に取り付けた場合、研磨テーブル110のうち貫通孔151を介して露出している部分のみならず、研磨テーブル110のうち透明窓152の下部に位置する部分も目視することが可能である。したがって、本実施形態にかかる研磨パッド150を研磨テーブル110に取り付ける場合、封止液体供給路111および封止液体排出路112の位置を目視しながら研磨パッド150を位
置合わせすることが容易になる。
【0028】
なお、基板研磨装置100の構成は一例にすぎない。特に研磨テーブル110および光学センサ120の構成については、従来知られた任意の構成(たとえば特許文献1に開示されている構成)が採用されてよい。たとえば、一つのセンサ本体121に複数の照射光用光ファイバ122および反射光用光ファイバ123が接続されていてもよい。
【0029】
<<第2実施形態>>
<第2実施形態の概要>
第2実施形態では、研磨パッド150の位置合わせをより容易にするため、研磨テーブル110上にアライメントマーク300を有する基板研磨装置100について説明する。図3は本実施形態にかかる研磨テーブル110の上面図である。図4はアライメントマーク300の拡大図である。図5は研磨パッド150が張り付けられた研磨テーブル110の一部分の上面図であり、アライメントマーク300を用いた研磨パッド150の位置合わせの様子を示す図である。図5Aは研磨パッド150が正しく位置合わせされていない場合の図である。図5Bは研磨パッド150が正しく位置合わせされている場合の図である。
【0030】
<アライメントマーク300について>
アライメントマーク300は研磨テーブル110の上面に設けられたマークである。具体的には、アライメントマーク300は封止液体供給路111および封止液体排出路112の近傍に設けられている。より具体的には、アライメントマーク300の少なくとも一部は、研磨パッド150が研磨テーブル110に正しく取り付けられた際に透明窓152の直下に位置するように構成されている。アライメントマーク300は研磨パッド150を研磨テーブル110に対して位置合わせする際に用いられる。アライメントマーク300は基板研磨装置100のユーザにとって可視であるように構成される。ただし、ユーザに代わって何らかの撮像装置等がアライメントマーク300を観察する場合、アライメントマーク300は、当該撮像装置等にとって可視であれば、ユーザにとって不可視であってもよい。アライメントマーク300は、たとえばレーザマーキング、塗装、印刷およびけがきなどの任意の手法によって形成されてよい。アライメントマーク300と貫通孔151などを区別して図示するため、図3図4および図5ではアライメントマーク300は点線で描かれている。しかし、実際の装置におけるアライメントマーク300は点線状でなくともよい。
【0031】
好ましくは、アライメントマーク300は、透明窓152の外縁に対応する第1のマーク310を有する。具体的には、第1のマーク310は、研磨パッド150が研磨テーブル110に正しく取り付けられた場合に透明窓152の外縁に一致する。好ましくは、アライメントマーク300はさらに、貫通孔151の外縁に対応する第2のマーク320を有する。具体的には、第2のマーク320は、研磨パッド150が研磨テーブル110に正しく取り付けられた場合に貫通孔151の外縁に一致する。たとえば、第1のマーク310は円形であり、第2のマーク320は楕円形である。より好ましくは、アライメントマーク300は十字形の第3のマーク330を有する。貫通孔151が楕円形である場合、十字形の第3のマーク330は、貫通孔151の長軸および短軸に対応するように構成されていることが好ましい。具体的には、十字形の第3のマーク330は、研磨パッド150が研磨テーブル110に正しく取り付けられた場合に貫通孔151の長軸および短軸に一致する。なお、図4では第3のマーク330の一部が途切れている。第3のマーク330が途切れている部分には封止液体供給路111および封止液体排出路112が位置することとなる。アライメントマーク300は、第1のマーク310および第2のマーク320の間に、たとえば円形の第4のマーク340を備えてもよい。
【0032】
図5Aに示されているように、研磨パッド150が正しく位置合わせされていない場合、透明窓152または貫通孔151を介して第1のマーク310および第2のマーク320を目視することができる。透明窓152の外縁と第1のマーク310を比較することで、研磨パッド150の位置ずれ量を把握することができる。研磨パッド150の位置ずれ量は、貫通孔151の外縁と第2のマーク320を比較することによっても把握することができる。また、第2のマーク320および/または第3のマーク330の傾き具合により、研磨パッド150の回転量を把握することもできる。把握された位置ずれ量および/または回転量に基づいて研磨パッド150の取り付け位置および/または取り付け角度を調整することで、研磨パッド150を正しく位置合わせすることができる。
【0033】
図5Bに示されているように、研磨パッド150が正しく位置合わせされている場合、透明窓152の外縁と第1のマーク310が重なり、第1のマーク310はほとんど目視できなくなる。同様に、研磨パッド150が正しく位置合わせされている場合、貫通孔151の外縁と第2のマーク320が重なり、第2のマーク320もほとんど目視できなくなる。
【0034】
アライメントマーク300を設けることにより、研磨パッド150を研磨テーブル110に対して容易にかつ高精度に位置合わせすることができるようになる。なお、アライメントマーク300の形状は一例に過ぎない。もっとも単純な場合、アライメントマーク300は単なる点でもよい。その他、位置合わせに用いられ得る任意のマークを使用することが可能である。何らかの撮像装置がアライメントマーク300を観察する場合、コンピュータなどの制御装置が研磨パッド150の位置ずれ量および/または回転量などを算出してもよい。
【0035】
<<第3実施形態>>
<第3実施形態の概要>
一般的な基板研磨装置においては、研磨パッドは消耗品である。従来の基板研磨装置においては、事前に測定または算出された摩耗量などに基づいて、研磨パッドの最大使用回数または最長使用時間が設定されていた。すなわち、従来の基板研磨装置においては、研磨パッドが所定の回数または所定の時間(以下では単に「所定の回数」という)使用された場合、研磨パッドの寿命が尽きたと判定されていた。しかし、研磨パッドが所定の回数使用されたそのときに、研磨パッドの寿命がちょうど尽きるとは限らない。所定の回数使用される前に研磨パッドの寿命が尽きてしまった場合、基板は、寿命が尽きた後の研磨パッドにより研磨される。したがって、基板研磨装置が所定の研磨性能を発揮できない可能性がある。一方で、所定の回数使用されていても研磨パッドの寿命が尽きていない場合、いまだ使用可能な研磨パッドを交換することとなる。いまだ使用可能な研磨パッドを交換することにより、研磨パッドの交換周期が短くなり、交換に必要なコストが増大する。
【0036】
上記の課題を解決すべく、第3実施形態では、研磨テーブル110上にインジケータを有する基板研磨装置100について説明する。図6はインジケータ600を有する研磨テーブル110の上面図である。
【0037】
<インジケータ600について>
インジケータ600の少なくとも一部は、研磨テーブル110のうち、研磨パッド150を正しく取り付けたときに研磨パッド150の透明窓152の直下となる領域に設けられている。換言すれば、インジケータ600は、研磨パッド150が研磨テーブル110に正しく取り付けられた場合に透明窓152を介して目視可能な位置に設けられている。さらに換言すれば、インジケータ600は、研磨テーブル110のうち研磨パッド150が取り付けられる面に設けられており、インジケータ600は光ファイバ(照射光用光ファイバ122および反射光用光ファイバ123)を通過させるための開口(封止液体供給
路111または開口610:開口610の詳細は後述)の周囲に設けられている。なお、これまでの実施形態と異なり、光学センサ120は液封式であってもよく、液封式でなくともよい。図6の例では、図中右側に位置する封止液体供給路111および反射光用光ファイバ123は液封式の光学センサ120に接続されている。液封式の光学センサ120についてはこれまでの実施形態で説明されているので、詳細な説明は省略する。一方で、図6の例では、図中左側に位置する照射光用光ファイバ122および反射光用光ファイバ123は液封式ではない光学センサ120に接続されている。したがって、研磨テーブル110のうち図中左側の部分には封止液体供給路111および封止液体排出路112が設けられていない。封止液体供給路111および封止液体排出路112の代替として、研磨テーブル110のうち図中左側の部分には、光ファイバを通過させ、センシング光を通すための開口610が設けられている。ただし、光学センサ120および付随する他の要素の構成は一例であり、図6に図示した構成以外の構成を採用することも可能である。
【0038】
図6では、4種類の模様(間隔の狭い縞模様、間隔の広い縞模様、間隔の狭い格子模様および間隔の広い格子模様)が1つのセットのインジケータ600を形成している。ただし、後述する透明窓152の劣化を確認することができる限り、インジケータ600の具体的な構成は図6に示した構成に限らない。たとえば、インジケータ600は任意の数の模様を備えてよい。もっとも単純な例では、インジケータ600は単なる点であってもよい。インジケータ600は基板研磨装置100のユーザにとって可視であるように構成される。ただし、ユーザに代わって何らかの撮像機構(例えば図9の撮像機構900)等がインジケータ600を撮像する場合、インジケータ600は、当該撮像機構等にとって可視であれば、ユーザにとって不可視であってもよい。インジケータ600はたとえばレーザマーキング、塗装、印刷およびけがきなどの任意の手法によって形成されてよい。
【0039】
新品の研磨パッド150が用いられている場合、透明窓152もまた新品である。したがって、透明窓152の透過率、屈折率、反射率および散乱度などの光学特性は変化していない。しかし、基板研磨装置100を駆動させると、基板131の研磨のみならず、透明窓152の摩耗が発生する。透明窓152の摩耗は、研磨パッド150のドレッシングの際に特に顕著である。透明窓152の摩耗が発生すると、透明窓152の光学特性が変化すると考えられる。以下では、摩耗によって透明窓の光学特性が変化することを「透明窓の劣化」という。劣化によりどのような光学特性がどのように変化するかは、具体的なプロセス、用いる研磨液の種類、基板131の材質、透明窓152の材質、ドレッサの材質等に依存すると考えられる。ここでは、透明窓152の透過率が低下しているものとして説明する。図7は、研磨パッド150の透明窓152を介して、図6の左側に位置するインジケータ600を観察した様子を示す図である。図7Aは透明窓152が劣化していない場合の図である。図7Bは透明窓152が劣化している場合の図である。図8は、研磨パッド150の透明窓152を介して、図6の右側に位置するインジケータ600を観察した様子を示す図である。図8Aは透明窓152が劣化していない場合の図である。図8Bは透明窓152が劣化している場合の図である。図7および図8では、透明窓152のハッチングの太さで透明窓152の透過率を示している。具体的には、ハッチングが太ければ太いほど透明窓152の透過率は低い。
【0040】
透明窓152が劣化することにより、透明窓152を介して観察した場合のインジケータ600の見え方も変化する。たとえば図7Bおよび図8Bでは透明窓152の透過率が低下しているので、インジケータ600が見えにくくなっている。インジケータ600の見え方の変化から、透明窓152の劣化を把握することが可能である。透明窓152の劣化は研磨パッド150の摩耗と同時に起こるので、透明窓152の劣化を把握することにより、研磨パッド150の摩耗量を間接的に把握することが可能になる。研磨パッド150の摩耗量を把握することにより、研磨パッド150を適切なタイミングで交換することが可能になる。
【0041】
研磨パッド150の交換のタイミングは、たとえば次のパラメータの少なくともひとつに基づいて判断されてよい。透明窓152を介してインジケータ600を観察した場合の(1)インジケータ600の明るさ、(2)インジケータ600のエッジ部分のシャープネス、(3)インジケータ600の所定の点と、他の点(インジケータ600の内外を問わない)とのコントラスト比、および(4)インジケータ600の色合い。インジケータ600が所定の形状の繰り返しからなる模様(縞模様または格子模様など)である場合、研磨パッド150の交換のタイミングは、(5)透明窓152を介してインジケータ600を観察した場合に、ある形状とその隣の形状を区別可能か否か、すなわちインジケータ600の模様を判別できるかによって判断されてもよい。なお、上記(1)~(5)は例示に過ぎない。上記(1)~(5)に基づいて判断する際に、閾値は適宜設定されてよい。たとえば、ユーザは、インジケータ600のうち1種の模様(たとえば間隔の狭い格子模様)を判別することができなくなった時点から、インジケータ600のうちすべての模様を判別することができなくなる時点の間の任意のタイミングで研磨パッド150を交換してもよい。研磨パッド150の交換のタイミングは、ユーザがインジケータ600を目視することによって判断されてよい。一方で、基板研磨装置100が何らかの撮像機構(例えば、後述する図9の撮像機構900)を備える場合、インジケータ600は撮像機構により観察されてよい。インジケータ600が撮像機構により観察される場合、従来知られた任意の画像処理技術によって研磨パッド150の交換タイミングが判断されてよい。
【0042】
以上に説明した構成によれば、適切なタイミングで研磨パッド150を交換できるようになる。また、ひとたびインジケータ600を目視すれば研磨パッド150の摩耗量をほぼリアルタイムで把握することが可能である。なお、研磨パッド150はその全面において均一に摩耗するとは限らない。そこで、図6に示すようにインジケータ600を複数設けることで、研磨パッド150の摩耗量の位置依存性を把握することも可能となる。
【0043】
アライメントマーク300がインジケータ600を兼ねてもよい。逆に、インジケータ600がアライメントマーク300を兼ねてもよい。アライメントマーク300とインジケータ600の双方をそれぞれ設けてもよい。とある透明窓152の下部にはアライメントマーク300を、別の透明窓152の下部にはインジケータ600を設けることも可能である。
【0044】
透明窓152および/またはインジケータ600を観察するために、基板研磨装置100は撮像機構900を備えてもよい。図9は撮像機構900を備える基板研磨装置100の正面断面図である。インジケータ600の少なくとも一部は符号「600」から延びる矢印が指す場所に位置しているものとして説明する。ただし、図9のインジケータ600の高さ(厚み)はほぼゼロであるため、図9にはインジケータ600の断面が図示されていない。なお、この記載は、高さを有するインジケータ600を排除することを意図していない。たとえばインジケータ600が研磨テーブル110に埋め込まれた何らかの部材によって形成されている場合、インジケータ600は高さを有するであろう。
【0045】
撮像機構900は透明窓152を介してインジケータ600の画像および/または映像を取得することが可能であるように構成されている。すなわち、撮像機構900はインジケータ600を観察する。以下では「画像および/または映像」を単に「画像」という。また、以下では「画像の取得」を単に「撮像」という。各部品が適切に取り付けられている場合、透明窓152の下部にはインジケータ600が位置する。したがって、撮像機構900は透明窓152を介してインジケータ600の少なくとも一部を撮像可能である。好ましくは、撮像機構900は、透明窓152の全域をその視野に入れることが可能であるように構成される。他の例では、撮像機構900は、透明窓152の少なくとも一部をその視野に入れることが可能である。図9の例ではたとえばCCDカメラなどの撮像機構
900が研磨テーブル110に対向するように配置されている。撮像機構900と研磨テーブル110との間の光路にミラーやレンズなどの光学要素が配置されていてもよい。研磨テーブル110がハウジングに囲われている場合などは、撮像のための光量が不足する可能性がある。基板研磨装置100は、撮像を補助するための光源を有してもよい。後述する光源1000が撮像機構900による撮像を補助してもよい。好ましくは、撮像機構900は、センシング光と同一の波長の光を検知することができる。撮像を補助するための光源は、センシング光と同一の波長の光を照射可能であってよい。
【0046】
撮像機構900は制御部910により制御されてよい。撮像機構900と制御部910との接続方式は有線接続に限られず、無線接続であってもよい(図9の例では有線接続である)。制御部910は撮像機構900の内部に備えられていてもよく、撮像機構900とは別個の部品であってもよい。制御部910は、ストレージデバイス911、プロセッサ912およびディスプレイ913を備えてよい。制御部910はさらにその他の要素を備えてもよい。制御部910は撮像機構900のみならず、基板研磨装置100の他の部品に接続されていてもよい。
【0047】
撮像機構900は、撮像した画像を制御部910に転送する。撮像機構900から透明窓152および/またはインジケータ600の画像を取得した制御部910は、透明窓152および/またはインジケータ600の画像から透明窓152の劣化度を算出する。制御部910(より詳細にはプロセッサ912)は、たとえば前述の(1)~(5)(インジケータ600の明るさなど)に基づいて透明窓152の劣化度を判断してよい。他の例として、たとえば透明窓152の傷の個数または面積などに基づいて劣化度が算出されてもよい。
【0048】
具体的には、以下の方法に従って透明窓152の劣化度が算出されてもよい:
透明窓152および/またはインジケータ600を、撮像機構900を用いて撮像する段階と、
撮像機構900により撮像された画像と理想の画像、および/または、撮像機構900により撮像された画像から算出される特徴量と理想の特徴量とを比較する段階と、
比較する段階において得られた比較結果に基づいて透明窓152の劣化度を算出する段階と、
を備える方法。ただし、「理想の画像および/または理想の特徴量」とは「透明窓152が劣化していない場合に得られたまたは得られるであろう画像および/または特徴量」を指す。
【0049】
撮像する段階の前に、ストレージデバイス911に理想の画像および/または特徴量を記憶する段階が実行されてもよい。ストレージデバイス911に記憶された理想の画像および/または特徴量は、比較する段階において用いられてよい。
【0050】
比較する段階はプロセッサ912により制御されてよい。比較する段階において、従来知られた任意の画像処理技術が用いられてよい。ここで「特徴量」とは透明窓152の劣化度の判断に用いることができるパラメータ(またはパラメータの値)を差す。たとえば前述の(1)~(5)(インジケータ600の明るさなど)が特徴量となり得る。他の例として、透明窓152の傷の個数または面積もまた特徴量となり得る。各段階で用いられる特徴量の個数は1つでもよいし、複数でもよい。ストレージデバイス911に記録される理想の画像および/または特徴量は、全く劣化していない透明窓152を用いたときに実際に得られた画像および/または特徴量であってよい。ストレージデバイス911に記録される理想の画像および/または特徴量は、シミュレーションなどにより算出された画像および/または特徴量であってもよい。
【0051】
撮像する段階の前に、次の段階が実行されてもよい:
研磨パッド150の表面をクリーニングする段階。ここでいう「クリーニング」とは、透明窓152上の異物を除去するように研磨パッド150の表面を洗浄することを指す。したがって、ここでいう「クリーニング」は、当技術の属する業界における技術用語「ドレッシング」などとは異なった意味を有する。ただし、ドレッシングにより透明窓152の上部の異物の除去が可能であるならば、そのようなドレッシングはクリーニングに含まれ得る。また、ここでいう「透明窓上の異物」とは、透明窓152の撮像を阻害する物体、たとえば透明窓152に付着したにスラリを指す。クリーニングにより異物が除去されると、透明窓152および/またはインジケータ600を適切に撮像することができるようになる。クリーニングは、純水による洗浄により行われてもよく、ブロワからのガス噴射により行われてもよく、ワイパを用いた拭き取りにより行われてもよく、その他の手法により行われてもよい。クリーニングする段階はユーザにより行われてもよく、プロセッサ912の制御により自動で行われてもよい。
【0052】
撮像する段階の前に、次の段階が実行されてもよい:
撮像機構900の視野に透明窓152の少なくとも一部または全域を入れる段階(以下では「視野調整段階」という)。視野調整段階は、研磨テーブル110を回転させ、所定の位置に透明窓152を移動することによって実行されてもよい。ここで、「所定の位置」とは「撮像機構900によって撮像されることができる位置」を指す。撮像機構900が移動可能に構成されている場合、視野調整段階は、撮像機構900を移動させることにより実行されてもよい。撮像機構900と透明窓152との間の光路に光学要素が配置されている場合、視野調整段階は、光学要素の移動、動作または調整により実行されてもよい。追加的に、撮像の際に研磨ヘッド130が撮像機構900の視野に入る場合、研磨ヘッド130を撮像機構900の視野外へ移動させる段階が実行されてもよい。各構成要素を移動させることなどはプロセッサ912により制御されてよい。
【0053】
比較する段階の前に、次の段階が実行されてもよい:
撮像機構900により取得された画像から特徴量を算出する段階。特徴量の算出はプロセッサ912により制御されてよい。
透明窓152の劣化度を算出する段階の後に、次の段階が実行されてもよい:
透明窓152の劣化度が所定の値を超えていた場合、エラー処理を実行する段階。エラー処理は、ディスプレイ913に研磨パッド150の交換を促すメッセージを表示することであってよい。透明窓152の劣化度が所定の値を超えているかどうかの判断はプロセッサ912により行われてよい。メッセージの表示はプロセッサ912により制御されてよい。エラー処理は、プロセッサ912が基板研磨装置100による基板131の研磨を停止させることであってもよい。基板研磨装置100が警告装置、たとえば赤色ランプやブザーなど、を備えている場合は、エラー処理は、警告装置を作動させることであってもよい。
【0054】
比較する段階の後に、次の段階が実行されてもよい:
比較結果に基づいて、透明窓152の残寿命を予測する段階。残寿命の予測はプロセッサ912により行われてよい。なお、「透明窓の残寿命」とは、予測する段階が実行された時点から、透明窓の劣化度が所定の値を超えるであろう時点までの研磨時間または研磨回数を指す。透明窓152の残寿命は、事前にストレージデバイス911に記録された計算式などによって予測されてもよい。これまでに撮像機構900により取得された画像および/または撮像機構900により取得された画像から得られた特徴量を学習データとして、透明窓152の残寿命を予測してもよい。学習データはストレージデバイス911に記録されてよい。予測された残寿命を示すメッセージがディスプレイ913に表示されてもよい。予測された残寿命が所定の値を下回った場合、寿命切れが近づいたことを警告するメッセージがディスプレイ913に表示されてよい。メッセージの表示はプロセッサ9
12により制御されてよい。
【0055】
透明窓152の劣化度が算出された後に、制御部910は、算出された透明窓152の劣化度に基づいて研磨パッド150の摩耗量を算出してよい。
【0056】
透明窓152の劣化度の算出の結果または透明窓152の残寿命の予測の結果と、実際にユーザが目視などで確認した劣化度または残寿命とを比較し、算出または予測プロセスに比較結果をフィードバックすることによって、劣化度の算出または残寿命の予測の正確性を向上させ、または、予測のずれを補償することも可能である。
【0057】
図9では貫通孔151を有する透明窓152が用いられているが、貫通孔151を有さない透明窓152(図7参照)が用いられてもよい。
【0058】
センシング光が透明窓152を通過する場合、インジケータ600を用いずに透明窓152の劣化具合を確認することも可能である。図10は、光源1000を備える基板研磨装置100の正面断面図である。図10の基板研磨装置100にはインジケータ600が設けられていない。それに伴い、図10の撮像機構900はインジケータ600ではなく透明窓152の少なくとも一部を撮像するように構成されている。図10では、図7に示された透明窓152、すなわち貫通孔151を有さない透明窓152が用いられている。それに伴い、研磨テーブル110および光学センサ120の構成も図9から変更されている(図7の説明を参照)。図10の基板研磨装置100は光源1000を備える。光源1000は、少なくとも透明窓152に向かって光を照射することができる。具体的には、光源1000は、透明窓152を介して反射光用光ファイバ123に光を入射することができるように構成される。好ましくは、光源1000は少なくともセンシング光と同一の波長の光を照射することが可能である。光源1000は例えば電球やレーザ装置などであってよい。光源1000と透明窓152との間の光路にレンズやミラーなどの光学要素が配置されていてもよい。
【0059】
以下では、透明窓152が劣化した場合に透明窓152の透過率が低下するものとして説明する。また、説明の便宜のため、以下では、光学センサ120が検知する光量の多寡に影響を与える要因は透明窓152の透過率のみであると仮定して説明する。光源1000が透明窓152に向かって光を照射すると、反射光用光ファイバ123に光が到達する。反射光用光ファイバ123に到達した光はセンサ本体121内部のフォトディテクタにより検知される。透明窓152が全く劣化していない場合、透明窓152の透過率は最大である。したがって、透明窓152が全く劣化していない場合、光学センサ120が検知する光量は最大値となる。透明窓152が劣化し透明窓152の透過率が低下していた場合、光学センサ120が検知する光量もまた低下する。したがって、光学センサ120が検知する光量の多寡を測定することによって、透明窓152の劣化度を算出することができる。透明窓152の劣化度は、光学センサ120が検知する光量の絶対値から算出されてもよい。透明窓152の劣化度は、光量の最大値と、現時点の光量との比較により算出されてもよい。「光量の最大値」とは、透明窓152が全く劣化していないときに検知される光量、すなわち理想的な光量をいう。光学センサ120が検知する光量の多寡に影響を与える他の要因が存在する場合、それらの要因が考慮されてもよい。
【0060】
透明窓152が劣化した場合に透明窓152の透過率以外の光学特性が変化する場合であっても、同様の手法により透明窓152の劣化度を算出することが可能である。透明窓152の光学特性の変化に伴い光学センサ120が検知する光量以外の光学特性が変化する場合、光学センサ120はその変化を測定できることが好ましい。たとえば、光学センサ120は光量の多寡以外にも光の偏光度、波長、入射角度などを測定できてよい。
【0061】
次に、センシング光が透明窓152を通過する場合にインジケータ600を用いずに透明窓152の劣化を算出する第2の手法を説明する。以下に説明する手法では、照射光用光ファイバ122から照射される照射光を用いる。透明窓152が基板131で覆われている場合(図10の左側に位置する透明窓152を参照のこと)、照射光用光ファイバ122からの照射光は基板131により反射される。反射光は反射光用光ファイバ123へ向かう。このとき、照射光及び反射光(センシング光)は透明窓152を通過する。したがって、センシング光は透明窓152の光学特性の変化の影響を受ける。たとえば透明窓152の劣化により透明窓152の透過率が低下する場合、透明窓152が劣化するとともにセンサ本体121のフォトディテクタが検出する反射光の光量は低下する。したがって、光学センサ120が検知するセンシング光の多寡などを測定することによって、透明窓152の劣化度を算出することができる。透明窓152の光学特性の変化に伴い光学センサ120が検知する光量以外の光学特性が変化する場合、光学センサ120はその変化を測定できることが好ましい。たとえば、光学センサ120は光量の多寡以外にも光の偏光度、波長、入射角度などを測定できてよい。センシング光の多寡を測定する際に用いられる基板131は、基板研磨装置100により研磨されるであろう/されている基板131でもよい。基板間の個体差の影響や基板の研磨の進行による影響を低減するため、基板131としてダミー基板を用いてもよい。
【0062】
次に、センシング光が透明窓152を通過する場合にインジケータ600を用いずに透明窓152の劣化を算出する第3の手法を説明する。以下に説明する手法においては、照射光用光ファイバ122から照射される照射光を用いる。透明窓152が基板131で覆われていない場合、照射光用光ファイバ122からの照射光は基板131により遮られない。撮像機構900の位置が適切であれば、照射光は透明窓152を通過して撮像機構900に達する。照射光は透明窓152の光学特性の変化の影響を受ける。たとえば透明窓152の劣化により透明窓152の透過率が低下する場合、透明窓152が劣化するとともに撮像機構900が検出する照射光の光量は低下する。したがって、撮像機構900が検知する照射光の多寡などを測定することによって、透明窓152の劣化度を算出することができる。透明窓152の光学特性の変化に伴い光学センサ120が検知する光量以外の光学特性が変化する場合、撮像機構900はその変化を測定できることが好ましい。たとえば、撮像機構900は光量の多寡以外にも光の偏光度、波長、入射角度などを測定できてよい。撮像機構900が取得した画像から透明窓152の光学特性の変化を算出してもよい。
【0063】
以上、いくつかの本発明の実施形態について説明してきた。上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【0064】
なお、本明細書において方向を表す用語は便宜的に用いられていることに留意されたい。本明細書では図1を基準に上下左右前後の方向が定められているが、図1の上方向が鉛直上方向と一致するとは限らない。
【0065】
本願は、一実施形態として、透明窓を有する研磨パッドを取り付けるための研磨テーブルと、研磨テーブルに設けられた、透明窓の劣化を確認するためのインジケータであって、透明窓を介して目視可能な位置に設けられた、インジケータと、を備える、基板研磨装置を開示する。
【0066】
また、本願は、一実施形態として、透明窓を有する研磨パッドを取り付けるための研磨
テーブルと、研磨テーブルに取り付けられた、基板の研磨の進行を測定するための光学センサと、を備える、基板研磨装置であって、研磨テーブルは、光学センサから延びる光ファイバを通過させるための開口と、透明窓の劣化を確認するためのインジケータであって、インジケータは研磨テーブルのうち研磨パッドが取り付けられる面に設けられており、インジケータは開口の周囲に設けられている、インジケータと、を備える、基板研磨装置を開示する。
【0067】
これらの基板研磨装置は、インジケータを目視することで透明窓の劣化度を判断することが可能であるという効果を一例として奏する。これらの基板研磨装置はさらに、インジケータの見え方から透明窓の劣化度を判断することにより、研磨パッドの摩耗量を判断することができ、研磨パッドの交換タイミングを判断することができるという効果を一例として奏する。
【0068】
さらに本願は、一実施形態として、基板研磨装置であって、透明窓を介してインジケータを撮像可能であるように構成された撮像機構をさらに備える、基板研磨装置を開示する。
【0069】
この基板研磨装置は、撮像機構がインジケータを撮像することができる、すなわちユーザの目視によらずにインジケータを観察することができるという効果を一例として奏する。
【0070】
さらに本願は、一実施形態として、基板研磨装置であって、基板研磨装置は制御部をさらに備え、制御部は、撮像機構により取得された画像および/または撮像機構により取得された画像から算出される特徴量から、透明窓の劣化度を算出する、基板研磨装置を開示する。
【0071】
さらに本願は、一実施形態として、基板研磨装置であって、制御部は、理想の画像および/または特徴量と、撮像機構により取得されたインジケータの画像および/または特徴量との比較結果に基づいて透明窓の劣化度を算出する、基板研磨装置を開示する。
【0072】
これらの開示内容により、劣化度の算出プロセスの詳細が明らかにされる。
【0073】
さらに本願は、一実施形態として、基板研磨装置であって、制御部は、算出された透明窓の劣化度が所定の値を超えていた場合、エラー処理を実行する、基板研磨装置を開示する。
【0074】
この基板研磨装置は、劣化した透明窓の使用を停止することができるという効果を一例として奏する。
【0075】
さらに本願は、一実施形態として、基板研磨装置であって、制御部は、算出された透明窓の劣化度に基づいて、研磨パッドの摩耗量を算出する、基板研磨装置を開示する。
【0076】
この開示内容により、透明窓の劣化度から研磨パッドの摩耗量を算出可能であることが明らかにされる。
【0077】
さらに本願は、一実施形態として、基板研磨装置の研磨テーブルに取り付けられた研磨パッドに設けられた透明窓の劣化度を算出する方法であって、透明窓および/または透明窓を介して目視可能な位置に設けられた研磨テーブル上のインジケータを、撮像機構を用いて撮像する段階と、撮像機構により撮像された画像と理想の画像、および/または、撮像機構により撮像された画像から算出される特徴量と理想の特徴量とを比較する段階と、
比較する段階において得られた比較結果に基づいて透明窓の劣化度を算出する段階と、を備える、方法を開示する。
【0078】
さらに本願は、一実施形態として、透明窓の劣化度を算出する上記方法により算出された透明窓の劣化度に基づいて、研磨パッドの摩耗量を算出する方法を開示する。
【0079】
これらの開示内容により、透明窓の劣化度の算出方法および研磨パッドの摩耗量の算出方法が明らかにされる。
【符号の説明】
【0080】
100…基板研磨装置
110…研磨テーブル
111…封止液体供給路
112…封止液体排出路
113…封止液体源
114…ロータリジョイント
120…光学センサ
121…センサ本体
122…照射光用光ファイバ
123…反射光用光ファイバ
130…研磨ヘッド
131…基板
140…研磨液供給機構
150…研磨パッド
151…貫通孔
152…透明窓
300…アライメントマーク
310…第1のマーク
320…第2のマーク
330…第3のマーク
340…第4のマーク
600…インジケータ
610…開口
900…撮像機構
910…制御部
911…ストレージデバイス
912…プロセッサ
913…ディスプレイ
1000…光源
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10