(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】トナー
(51)【国際特許分類】
G03G 9/097 20060101AFI20221114BHJP
【FI】
G03G9/097 374
(21)【出願番号】P 2018125866
(22)【出願日】2018-07-02
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】堀田 洋二朗
(72)【発明者】
【氏名】中山 憲一
(72)【発明者】
【氏名】川口 新太郎
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/152525(WO,A1)
【文献】特開2006-201562(JP,A)
【文献】特開2007-147979(JP,A)
【文献】特開2010-078931(JP,A)
【文献】特開2001-242659(JP,A)
【文献】特開2001-318487(JP,A)
【文献】特開2007-017654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂と着色剤を含有するトナー粒子とアルミナ微粒子を有するトナーであって、
該アルミナ微粒子は、トナー表面において、一次粒子が凝集した凝集粒子として存在し、該一次粒子の個数平均粒径が200nm以上400nm以下であり、
該トナー表面における該アルミナ微粒子の平均投影面積が0.17μm
2以上0.30μm
2以下であり、かつ該アルミナ微粒子の投影像の周囲長を投影面積で除した値の平均値が7.5以上であり、
該トナーは、ポリカーボネート薄膜付着測定法において、ポリカーボネート薄膜に付着するアルミナ微粒子の量が、ポリカーボネート薄膜の面積を基準として、0.40面積%以上1.00面積%以下であることを特徴とするトナー。
【請求項2】
該ポリカーボネート薄膜に付着する該アルミナ微粒子に関し、平均投影面積が0.17μm
2以上0.30μm
2以下であり、かつ投影像の周囲長を投影面積で除した値の平均値が7.5以上である請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
該アルミナ微粒子の含有量が、該トナー粒子100質量部あたり、0.02質量部以上1.50質量部以下である請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
該アルミナ微粒子の酸化アルミニウムの純度が99.99%以上100.00%以下である請求項1から3のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項5】
該トナー粒子の平均円形度が0.960以上である請求項1から4のいずれか1項に記載のトナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法のような画像形成方法に使用されるトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真画像形成装置には、より高速化、長寿命化、省エネルギー化が求められている。特にトナーに対しては、長寿命化の観点から、より一層の品質安定性の向上が要求されている。
【0003】
この様な要求に応えるために、アルミナ微粒子を外添剤として使用する試みがなされている。
【0004】
特許文献1、2では、アルミナの形状や粒度分布を規定して、感光体ドラムに対するフィルミングを防止する技術を提案している。
【0005】
特許文献3では、アルミナの純度を規定し、不定形のアルミナ微粒子を用いることで、トナー粒子への埋め込みを防止する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平10-326028号公報
【文献】特開2000-250251号公報
【文献】特開2007-17654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らの検討の結果、従来用いられていたようなアルミナ微粒子を用いた場合、トナー粒子表面への埋め込みが未だ生じていた。アルミナ微粒子は、帯電特性が正極性(ポジ)側によっているため、埋め込みが生じたトナーは、正極性側の帯電特性を示すこととなり、現像剤中において、マイクロキャリアとして作用することとなる。その結果、多数枚の画像形成を行った際には、帯電量が過剰となった一部のトナーが現像ローラなどに強固に付着してしまい、それに起因する画像不良を引き起こすことがあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の問題点を解消したトナーを提供するものである。
【0009】
本発明は、
結着樹脂と着色剤を含有するトナー粒子とアルミナ微粒子を有するトナーであって、
該トナー表面における該アルミナ微粒子の平均投影面積が0.17μm2以上0.30μm2以下であり、かつ該アルミナ微粒子の投影像の周囲長を投影面積で除した値の平均値が7.5以上であり、
該トナーは、ポリカーボネート薄膜付着測定法において、ポリカーボネート薄膜に付着するアルミナ微粒子の量が、ポリカーボネート薄膜の面積を基準として、0.40面積%以上1.00面積%以下であることを特徴とするトナー
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、長期間使用した場合においても、安定した画像濃度が得られ、カブリやスジが良好に抑制された画像を形成することができるトナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】ポリカーボネート薄膜付着測定方法を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、数値範囲を表す「○○以上××以下」や「○○~××」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
【0013】
本発明者らは、トナー粒子表面にアルミナ微粒子が埋没することを抑制するために、アルミナ微粒子を凝集することを試みた。
【0014】
その結果、トナー粒子表面において、アルミナ微粒子が、
(1)平均投影面積が0.17μm2以上0.30μm2以下
(2)投影像の周囲長を投影面積で除した値(=周囲長/投影面積)の平均値が7.5以上
を満たす状態で存在する場合に、トナー粒子表面への埋め込みが抑制されるとの知見が得られた。また、上記の規定を満たす場合には、トナー粒子の表面にアルミナ微粒子が適度に留まるため、帯電制御効果や研磨効果も良好に得ることができる。
【0015】
平均投影面積は0.17μm2以上0.25μm2以下であることが好ましく、平均投影面積は、アルミナ微粒子の製法や外添条件によって制御することができる。
【0016】
周囲長/投影面積の平均値が7.5以上であるということは、凝集したアルミナ粒子の表面に多くの凹凸が存在することをしめしている。さらにアルミナは、シリカ等に比べて硬い材料であるために、凝集した状態を維持し易く耐久安定性が良い。凹凸が存在することによって、アルミナ微粒子が安定してトナー粒子表面に存在しやすくなり、移行したアルミナ微粒子に起因するチャージアップの発生が抑制される。移行とは、外添剤がトナー粒子から別のトナー粒子や別の部材へ移動する現象を指す。つまり、外添剤がトナー粒子上に留まっていない現象を意味する。好ましい周囲長/投影面積の平均値は7.5以上11.0以下であり、さらに好ましい範囲としては7.5以上、10.0以下、より好ましくは7.5以上、9.0以下である。周囲長/投影面積の平均値は、アルミナ微粒子の種類と添加量によって制御することができる。
【0017】
本発明のトナーにおいては、アルミナ微粒子の付着状態も重要である。本発明においては、アルミナ微粒子の付着状態の指標として、後述のポリカーボネート薄膜付着測定法で測定される値を用いた。ポリカーボネート薄膜付着測定法は、感光体を代用する部材としてポリカーボネート薄膜を用いたものであって、実際の電子写真システムにおける感光体へのアルミナ微粒子の付着を模擬的に再現する測定である。
【0018】
本発明のトナーは、ポリカーボネート薄膜付着測定法において、ポリカーボネート薄膜全面を100面積%としたときに、付着するアルミナ微粒子の量が0.40面積%以上1.00面積%以下である。アルミナ微粒子がこのような付着状態にあるとき、トナーとしての帯電が安定し、画像不良の発生を抑制できる。付着するアルミナ微粒子の量はアルミナ微粒子の添加量やトナー粒子の物性によって決まる。
【0019】
また、下記ポリカーボネート薄膜付着測定法で付着するアルミナ微粒子は、トナー上で観察される平均投影面積と周囲長/投影面積の平均値とに関して、同様の値を示すことが好ましい。このことは、トナー表面において観察されたアルミナ微粒子が、観察されたサイズのままで挙動することを表している。
【0020】
ポリカーボネート薄膜付着測定法の詳細について以下に示す。
【0021】
<ポリカーボネート薄膜付着測定法>
ポリカーボネート薄膜付着測定法の各過程を
図1に示す。
【0022】
(1)
図1の1番目の図は、基板12にトナーTを配置する方法を示すものである。基板12としては、感光体の表層を模擬するため、一辺が約3mmの正方形で、厚み50μmのアルミシートに、ポリカーボネート(ユーピロンZ-400、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)、粘度平均分子量(Mv)40,000)を積層したものを用いる。具体的には、上記ポリカーボネートをトルエンに10質量%となる様に溶解して塗工液を調製し、この塗工液を50番手のワイヤーバーを用いて上記アルミシートに塗工する。次いで、100℃で10分間乾燥し、アルミシート上に膜厚10μmのポリカーボネート膜を形成する。
【0023】
先ず、目開き75μmのステンレスメッシュのふるい11に、トナー約10mgを載せ、基板ホルダ13上に置かれた基板12の上方20mmの位置に設置する。落下したトナーが効率よく基板に堆積されるように、開口部の直径が10mmの篩を用いることが好適である。次いで、ふるいを保持する枠体に、加速度5G相当となる、振幅1mm、デューティー比33%ののこぎり波形振動を5Hzでふるい面内方向に30秒印加し、基板にトナーをふるい落とす。
【0024】
次に、トナーを堆積した基板に加速度0.5G相当となる、振幅1mm、デューティー比33%ののこぎり波形振動を3Hzで基板の面内方向に20秒印加し、基板とトナーの接触を促進させる。
【0025】
(2)
図1の2番目の図は、基板上のトナーを除去する方法を示すものである。振動印加後の基板に吸引手段14として、掃除機のノズル先端に接続した内径約5mmのエラストマー製の吸引口をトナー配置面と垂直となるように近づけ、基板に付着したトナーを除去する。吸引は、吸引圧6kPaで行い、トナーの残留程度を目視で確認しながら行う。この操作により、3番目、4番目に示されるような、アルミナ微粒子が付着した基板が得られる。
【0026】
(3)トナー除去後に基板に残留するアルミナ微粒子の量と形状を数値化する際には走査型電子顕微鏡による観察と画像計測を用いる。
【0027】
まず、トナー除去後の基板に、スパッタリング(電流20mA、60秒間)によりプラチナの薄膜を形成し、観察用試料を作成する。次に、走査型電子顕微鏡としては、日立超高分解能電界放出走査電子顕微鏡S-4800((株)日立ハイテクノロジーズ)を用い、S-4800の反射電子像にて観察を行う。観察倍率としては、アルミナ微粒子の粒径によるが、例えば100nm前後であれば20000倍、加速電圧10kV、作動距離3mmの条件にて観察できる。20000倍における観察領域は約30μm×20μmの領域である。尚、アルミナ微粒子かどうかの判断は、EDAXを用いて組成分析により行った。
【0028】
観察により得られた画像はアルミナ微粒子が高輝度に、基板が低輝度に表されているので、二値化により、視野内のアルミナ微粒子の量を定量化することができる。二値化の条件は観察装置やスパッタ条件により適切に選択することができる。例えば、二値化には画像解析ソフトウェアImage J(開発元Wayne Rasband)を用いることができる。実施例においては、背景輝度分布をSubtract Backgroundメニューから平坦化半径40ピクセルで除去した後、輝度閾値50で二値化した。
【0029】
得られた二値化画像から、画像解析ソフトウェアImage Jの粒子解析を用いて、アルミナ微粒子の付着量、投影面積、周囲長を算出した。尚、アルミナ微粒子の周囲長は、凝集状態のアルミナを二値化した画像から、凝集粒子を1粒子として、その輪郭をたどるように周囲長を算出する。アルミナ微粒子の付着量は、観察領域の面積を100%としたときの、アルミナ微粒子が占める面積の割合(面積%)である。上記測定を二値化画像100枚について行い、その算術平均値をアルミナ微粒子の付着量とした。また、アルミナ微粒子の平均投影面積および(周囲長/投影面積)の平均値は、微粒子100個における相加平均値である。
【0030】
[アルミナ微粒子]
続いて、アルミナ微粒子に関して説明する。上記特性を達成できるものであれば特に限定されるものではない。アルミナの製造方法としては、アンモニウムアルミニウム炭酸塩の熱分解法、気相酸化法、爆燃法、バイヤー法、アルミニウムアルコキシドの加水分解法等で、遷移アルミナまたは熱処理により遷移アルミナとなるアルミナ原料を用いて製造される。遷移アルミナとは、Al2-O3として表される多形を有するアルミナのうち、α形以外の全てのアルミナを意味する。具体的には、γ-アルミナ、δ-アルミナ、θ-アルミナ等を例示することができる。
【0031】
その遷移アルミナとなるアルミナ原料を、焼成工程を経由して目的とする粉末状のα-アルミナを得る。焼成の際に熱に加えて特殊なガス雰囲気下のもの得るアルミナ微粒子の製造方法が好ましい。
【0032】
アルミニウムアルコキシドの加水分解法とは、金属アルミニウムとアルコールとの反応から高純度のアルミニウムアルコキシドを合成し、加水分解してアルミナ水和物を得た後、これを焼成して高純度アルミナを得る方法である。この方法では、生成したアルミニウムアルコキシドを蒸留等の操作により精製でき、高純度のアルミニウムアルコキシドを得ることができる。また、アルミニウムアルコキシドの加水分解速度は非常に速く、微粒のアルミナ水和物が生成しやすいことから、加水分解および乾燥時の条件を適切に制御して、強固な凝集粒子を生成させないことが重要である。高温安定相のα-Al2O3以外のアルミナは、遷移アルミナと呼ばれ、一次粒子が数十nmの超微粒子である。
【0033】
上記の遷移アルミナまたは熱処理により遷移アルミナとなるアルミナ原料を、雰囲気ガスの全体積に対して塩化水素ガス1体積%以上、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上の雰囲気ガス中にて焼成する。雰囲気ガスである塩化水素ガスの希釈ガスとしては、窒素、水素あるいはアルゴン等の不活性ガスおよび空気を用いることができる。塩化水素ガスを含む雰囲気ガスの圧力は特に限定されず、工業的に用いられる範囲において任意に選ぶことができる。このような雰囲気ガス中で焼成することにより、後述するように比較的に低い焼成温度で、目的とする粉末状のα-アルミナを得ることができる。
【0034】
塩化水素ガスの代わりに塩素ガスおよび水蒸気の混合ガスを用いることもできる。遷移アルミナまたは熱処理により遷移アルミナとなるアルミナ原料を塩素ガスおよび水蒸気を導入した雰囲気ガス中、雰囲気ガスの全体積に対して、塩素ガス1体積%以上、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上と水蒸気0.1体積%以上、好ましくは1体積%以上、より好ましくは5体積%以上とを導入して焼成する。導入する塩素ガスおよび水蒸気の希釈ガスとしては、窒素、水素あるいはアルゴン等の不活性ガスおよび空気を用いることができる。塩素ガスおよび水蒸気を含む雰囲気ガスの圧力は特に限定されず、工業的に用いられる範囲において任意に選ぶことができる。このような雰囲気ガス中で焼成することにより、後述するように比較的に低い焼成温度で、目的とする粉末状のα-アルミナを得ることができる。
【0035】
焼成温度は600℃以上、好ましくは600℃以上1400℃以下、より好ましくは700℃以上1300℃以下、さらに好ましくは800℃以上1200℃以下である。この温度範囲に制御して焼成することにより、工業的に有利な生成速度で、生成するα-アルミナ粒子が外添したトナー表面で適度に凝集した粒子を得やすい。
【0036】
適切な焼成の時間は雰囲気ガスの濃度や焼成の温度にも依存するので必ずしも限定されないが、好ましくは1分以上、より好ましくは10分以上である。アルミナ原料がα-アルミナに結晶成長するまで焼成すれば十分である。従来の方法の焼成時間に比べて短い時間で目的とするα-アルミナを得ることができる。
【0037】
雰囲気ガスの供給源や供給方法は特に限定されない。遷移アルミナ等の原料が存在する反応系に上記の雰囲気ガスを導入することができればよい。例えば、供給源としては通常はボンベガスを用いることができる。塩酸溶液や塩化アンモニウム等の塩素化合物あるいは塩素含有高分子化合物等を塩素ガス等の原料として用いる場合には、それらの蒸気圧または分解により上記した所定のガス組成になるようにして用いることもできる。塩化アンモニウム等の分解ガスを用いる場合は、焼成炉内に固体物質が析出することによる操業の障害が生じることがある。また、塩化水素ガス濃度が高いほど低温度、短時間の焼成、さらには高純度のアルミナを得ることが可能になるため、塩化水素あるいは塩素は、それらをボンベ等から直接に焼成炉内に供給する方が好ましい。ガスの供給方法としては連続方式または回分方式のいずれでも用いることができる。
【0038】
焼成装置は必ずしも限定されず、いわゆる焼成炉を用いることができる。焼成炉は塩化水素ガス、塩素ガス等に腐食されない材質で構成されていることが望ましく、さらには雰囲気を調整できる機構を備えていることが望ましい。また、塩化水素ガスや塩素ガス等の酸性ガスを用いるので、焼成炉には気密性があることが好ましい。工業的には連続方式で焼成することが好ましく、例えば、トンネル炉、ロータリーキルンあるいはプッシャー炉等を用いることができる。
【0039】
アルミナ微粒子の酸化アルミニウムの純度が99.99%以上100.00%以下であることが好ましい。酸化アルミニウムの純度が99.99%より小さいと、アルミナ微粒子が不定形形状になりやすい。
【0040】
トナー上におけるアルミナ微粒子の一次粒子の個数平均粒径が200nm以上400nm以下であることが好ましい。
【0041】
アルミナ微粒子の体積抵抗値は1.0×106Ω・cm以上1.0×1012Ω・cm以下であることが好ましい。アルミナ微粒子の体積抵抗値が上記の範囲内であれば、電荷のリークを引き起こさずに、良好なチャージアップの抑制が可能となる。アルミナ微粒子の表面処理を行うことにより、体積抵抗を制御することができる。
【0042】
アルミナ微粒子は表面処理を行わないものであっても使用可能であるが、表面処理を行う場合は、疎水化作用のあるオイル、カップリング剤、及び、疎水化作用のある樹脂である。これらの中でも、シリコーン系のオイルやカップリング剤、有機酸系の樹脂等が好ましく使用される。使用可能なオイル類の一例としては、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等のシリコーンオイル、パラフィン、ミネラルオイル等がある。
【0043】
その処理量は処理前粒子100質量部に対して1~50質量部、粒子合一させずに均一に処理するためには3~40質量部とするのが好ましい。
【0044】
これらの疎水化処理剤でのアルミナ微粒子の表面処理方法は、公知の製造方法により行うことが可能である。たとえばアルミナ微粒子を流動させた状態とし、処理剤を噴霧する方法や、機械的に攪拌されているアルミナ微粒子に対して液滴を滴下する方法などの公知の方法が使用可能である。また、表面処理を行った後、反応促進や溶剤除去といった目的で加熱処理を行っても良い。
【0045】
尚、アルミナ微粒子の含有量は、トナー粒子100質量部に対して、0.02質量部以上1.50質量部以下であることが好ましい。
【0046】
[トナー粒子]
トナー粒子の製造方法は、例えば、懸濁重合法、界面重合法、又は分散重合法のような、水系媒体中で直接トナー粒子を製造する方法(以下、重合法とも称する)が挙げられる。また、粉砕法を用いてもよく、粉砕法により得られたトナーを熱球形化して平均円形度を調整してもよい。
【0047】
その中でも、懸濁重合法が好ましい。懸濁重合法を用いて製造されたトナー粒子は、個々の粒子がほぼ球形に揃っており、帯電量の分布も比較的均一となるため帯電性が安定して好ましい。
【0048】
尚、トナー粒子の平均円形度は0.960以上であることが好ましい。
【0049】
懸濁重合法では、結着樹脂を生成しうる重合性単量体、着色剤及びワックスなどを含有する重合性単量体組成物を水系媒体中に分散して、重合性単量体組成物の粒子を形成し、粒子中の重合性単量体を重合することでトナー粒子を製造する。
【0050】
トナー粒子は、コア部とコア部の表面にシェル部を有するトナー粒子としてもよい。コアシェル構造をとることにより、コア部がトナー粒子の表面へ滲出することによる帯電不良を防ぐことができる。
【0051】
シェル部は、ポリエステル、スチレン-アクリル共重合体、又はスチレン-メタクリル共重合体を含むことが好ましく、ポリエステルを含有することがより好ましい。
【0052】
シェル部を形成する樹脂量は、コア部を形成する樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上20.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量部以上10.0質量部以下である。
【0053】
シェルに含有されるポリエステルの重量平均分子量は、5000以上50000以下であることが好ましい。重量平均分子量が上記範囲である場合、トナーの帯電性が安定してより好ましい。
【0054】
結着樹脂を生成しうる重合性単量体としては、ビニル系重合性単量体を挙げることができる。具体的には以下のものを例示することができる。
【0055】
スチレン;α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレンのようなスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、iso-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、iso-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートのようなアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、iso-プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、iso-ブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレートのようなメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、蟻酸ビニルのようなビニルエステルが挙げられる。
【0056】
トナー粒子は、荷電制御剤を含有してもよい。荷電制御剤としては、トナー粒子を負帯電性に制御するものと、正帯電性に制御するものとが知られており、トナーの種類や用途に応じて種々のものを一種又は二種以上用いることができる。
【0057】
トナー粒子を負帯電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。
【0058】
有機金属錯体(モノアゾ金属錯体;アセチルアセトン金属錯体);芳香族ヒドロキシカルボン酸又は芳香族ジカルボン酸の金属錯体又は金属塩;芳香族モノ及びポリカルボン酸並びにそれらの金属塩、無水物及びエステル類;ビスフェノールなどのフェノール誘導体。これらは一種又は二種以上組み合わせて用いることができる。
【0059】
これらの中でも、安定な帯電性能が得られる芳香族ヒドロキシカルボン酸の金属錯体又は金属塩が好ましい。
【0060】
一方、トナー粒子を正帯電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。
【0061】
ニグロシン及び脂肪酸金属塩による変性物;トリブチルベンジルアンモニウム-1-ヒドロキシ-4-ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどの四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体;ホスホニウム塩のようなオニウム塩及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン酸、フェロシアン化合物など);高級脂肪酸の金属塩。これらは一種又は二種以上組み合わせて用いることができる。
【0062】
これらの中でもニグロシン系化合物、四級アンモニウム塩などが好ましい。
【0063】
アルミナ微粒子は正帯電性であるため、トナー粒子を負帯電性に制御する荷電制御剤を用いると、トナー粒子とアルミナ微粒子の静電的な付着力が高くなるためより好ましい。
【0064】
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂を生成しうる重合性単量体又は結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。
【0065】
また、荷電制御樹脂を用いることも好ましい態様である。トナー粒子が荷電制御樹脂を含有していると、トナー粒子表面の負帯電性が向上する。そのため正帯電性であるアルミナ微粒子と静電的な付着力が高くなるため、トナー粒子表面からアルミナ微粒子が適度に移行し難くなる。さらに、長期耐久使用において、アルミナ微粒子が存在することで電荷を漏えいする効果を発揮し、チャージアップが抑制されやすくなる。
【0066】
荷電制御樹脂としては、スルホン酸系官能基を有する重合体が好ましい。スルホン酸系官能基を有する重合体とは、スルホン酸基、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体である。これらのうち、好ましくは、スルホン酸基を有する重合体である。
【0067】
具体的には、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、メタクリルスルホン酸など単量体の単重合体、又は、該単量体と他の単量体との共重合体が挙げられる。また、該重合体のスルホン酸基をスルホン酸塩基にしたものやエステル化したものを用いることもできる。該荷電制御樹脂のガラス転移温度(Tg)は、40℃以上90℃以下であることが好ましい。
【0068】
荷電制御樹脂の含有量は、結着樹脂を生成しうる重合性単量体又は結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。また、該荷電制御樹脂は、水溶性重合開始剤との併用によって、トナー粒子の帯電状態を一層良好なものとすることができる。
【0069】
トナー粒子の表面に存在する炭素元素の存在量をAとし、表面に存在する硫黄元素の存在量をEとしたときに、Aに対するEの比であるE/Aが、下記式(1)を満たすことが好ましく、下記式(1)’を満たすことがより好ましい。
【0070】
E/Aは、例えば、トナー粒子に上記荷電制御樹脂を含有させることにより調整することができる。
【0071】
3×10-4≦E/A≦50×10-4 (1)
5×10-4≦E/A≦30×10-4 (1)’
E/Aを上記範囲にすることで、トナー粒子とアルミナ微粒子の静電的な付着力がさらに高くなる傾向がある。さらに、アルミナ微粒子がトナー表面にも存在することで、トナー粒子表面からアルミナ微粒子が適度に移行し難くなり、トナーのチャージアップが抑制する傾向がある。
【0072】
トナー粒子はワックスを含有してもよい。ワックスとしては、以下のものが挙げられる。
【0073】
パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス及びペトロラタムのような石油系ワックス及びその誘導体;モンタンワックス及びその誘導体;フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体;ポリエチレン及びポリプロピレンのようなポリオレフィンワックス及びその誘導体;カルナバワックス及びキャンデリラワックスのような天然ワックス及びその誘導体;高級脂肪族アルコール;ステアリン酸及びパルミチン酸などの脂肪酸;酸アミドワックス;エステルワックス。
【0074】
なお、誘導体には、酸化物、並びに、ビニル系モノマーとのブロック共重合物及びグラフト変性物が挙げられる。
【0075】
ワックスの含有量は、結着樹脂を生成しうる重合性単量体又は結着樹脂100.0質量部に対して、2.0質量部以上15.0質量部以下であることが好ましく、2.0質量部以上10.0質量部以下であることがより好ましい。
【0076】
トナー粒子は着色剤を含有してもよい。
【0077】
黒色着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、以下に示すイエロー、マゼンタ及びシアン着色剤を用い黒色に調色されたものが挙げられる。
【0078】
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及びアリルアミド化合物が挙げられる。
【0079】
具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、73、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、128、129、138、147、150、151、154、155、168、180、185、214が挙げられる。
【0080】
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及びペリレン化合物が挙げられる。
【0081】
具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、238、254、269、C.I.ピグメントバイオレッド19が挙げられる。
【0082】
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物が挙げられる。
【0083】
具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が挙げられる。
【0084】
着色剤は、単独又は混合し、さらには固溶体の状態で用いることができる。
【0085】
着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、トナー粒子中への分散性の観点から選択するとよい。
【0086】
着色剤の含有量は、結着樹脂を生成しうる重合性単量体又は結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
【0087】
トナー粒子は、磁性体を含有させて磁性トナー粒子とすることも可能である。磁性体としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライトのような酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属又はこれらの金属とアルミニウム、銅、マグネシウム、スズ、亜鉛、ベリリウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属との合金及びその混合物が挙げられる。
【0088】
磁性体は、その表面が改質された磁性体であることが好ましい。
【0089】
重合法により磁性トナーを調製する場合には、重合阻害のない物質である表面改質剤により、疎水化処理を施したものが好ましい。このような表面改質剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤を挙げることができる。
【0090】
磁性体の個数平均粒径は、2.0μm以下であることが好ましく、0.1μm以上0.5μm以下であることがより好ましい。
【0091】
磁性体の含有量は、結着樹脂を生成しうる重合性単量体又は結着樹脂100質量部に対して、20質量部以上200質量部以下であることが好ましく、40質量部以上150質量部以下であることがより好ましい。
【0092】
一方、粉砕法でトナー粒子を製造するための製造方法の一例を以下に説明する。
【0093】
原料混合工程では、トナー粒子を構成する材料として、結着樹脂、着色剤及びワックスなどを、所定量秤量して配合し、混合する。
【0094】
混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、FMミキサ、ナウターミキサー、及びメカノハイブリッド(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。
【0095】
次に、混合した材料を溶融混練して、結着樹脂中に着色剤及びワックスなどを分散させる。溶融混練工程では、加圧ニーダー、バンバリィミキサーのようなバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができる。連続生産できる優位性から、1軸又は2軸押出機が主流となっている。例えば、KTK型2軸押出機(神戸製鋼所社製)、TEM型2軸押出機(東芝機械社製)、PCM混練機(池貝製)、2軸押出機(ケイ・シー・ケイ社製)、コ・ニーダー(ブス社製)、及びニーデックス(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。さらに、溶融混練することによって得られる樹脂組成物は、2本ロールなどで圧延され、冷却工程で水などによって冷却してもよい。
【0096】
ついで、得られた冷却物は、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。
【0097】
粉砕工程では、例えば、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミルのような粉砕機で粗粉砕する。その後、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)、ターボ・ミル(フロイント・ターボ株式会社製)やエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕するとよい。
【0098】
その後、必要に応じて慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)のような分級機や篩分機を用いて分級し、トナー粒子を得る。
【0099】
また、トナー粒子を球形化してもよい。例えば、粉砕後にハイブリタイゼーションシステム(奈良機械製作所製)、メカノフージョンシステム(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)、メテオレインボー MR Type(日本ニューマチック工業社製)を用いて球形化を行うとよい。
【0100】
本発明のトナーは、トナー粒子にアルミナ微粒子が外添されたものであるが、必要に応じてほかの外添剤を混合することでトナーを得ることができる。外添剤を混合するための混合機としては、FMミキサ(日本コークス工業株式会社製)、高速流動化型混合機スーパーミキサー(カワタ社製)、ノビルタ(ホソカワミクロン社製)、及びハイブリダイザー(奈良機械社製)が挙げられる。外添工程において、羽根の回転数や時間を調整することや外添時のトナーの品温を制御することにより、アルミナ微粒子の固着状態を制御することができる。ちなみにトナーの品温を調整には、混合槽のジャケット部分に温水等を導入することによって行うことができる。
【0101】
また、外添剤の混合後に粗粒子をふるい分けてもよい。そのために用いられる篩い装置としては、以下のものが挙げられる。
【0102】
ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(フロイント・ターボ工業社製);ミクロシフター(槙野産業社製)。
【0103】
トナーは、アルミナ微粒子以外の他の外添剤を含んでいても構わない。特にトナーの流動性や帯電性を向上させるために、流動性向上剤を添加してもよい。
【0104】
流動性向上剤としては、以下のものを用いることができる。
【0105】
フッ化ビニリデン微粉末及びポリテトラフルオロエチレン微粉末のようなフッ素系樹脂粉末;湿式製法シリカ又は乾式製法シリカのようなシリカ微粒子、酸化チタン微粒子;該微粒子をシラン化合物、チタンカップリング剤、又はシリコーンオイルなどの疎水化処理剤で表面処理を施した疎水化処理微粒子;酸化亜鉛及び酸化スズのような酸化物;チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、ジルコン酸ストロンチウム及びジルコン酸カルシウムのような複酸化物;炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムのような炭酸塩化合物など。
【0106】
これらのうち、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された微粒子であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称される乾式製法シリカ微粒子が好ましい。乾式製法は、例えば、四塩化ケイ素ガスの酸水素焔中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次のようなものである。
【0107】
SiCl4+2H2+O2→SiO2+4HCl
この製造工程において、塩化アルミニウム又は塩化チタンなどの他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによってシリカと他の金属酸化物の複合微粒子を得ることも可能であり、シリカ微粒子としてはそれらも包含する。
【0108】
流動性向上剤は、一次粒子の個数平均粒径が5nm以上30nm以下であると、高い帯電性と流動性を持たせることができるので好ましい。
【0109】
さらには、シリカ微粒子は、上記疎水化処理剤で表面処理を施した疎水化処理シリカ微粒子がより好ましい。
【0110】
流動性向上剤は、BET法で測定した窒素吸着による比表面積が30m2/g以上300m2/g以下のものが好ましい。
【0111】
流動性向上剤の含有量は、トナー粒子100質量部に対して、流動性向上剤を総量で、0.01質量部以上3.0質量部以下であることが好ましい。
【0112】
[各物性の測定方法]
トナー及びその他材料に係る各種物性の測定方法を以下に説明する。
【0113】
アルミナ微粒子の物性は、トナーをサンプルとして測定する。
【0114】
アルミナ微粒子が外添されたトナーから、アルミナ微粒子やトナー粒子の物性を測定する場合は、以下のようにして、トナーからアルミナ微粒子や他の外添剤を分離して測定するとよい。
【0115】
トナーをメタノールに超音波分散させてアルミナ微粒子や他の外添剤を外して、24時間静置する。遠心分離によりトナー粒子とアルミナ微粒子や他の外添剤とを分離、回収し、十分に乾燥させることで、トナー粒子とアルミナ微粒子とを単離することができる。
【0116】
<トナー表面におけるアルミナ微粒子の平均投影面積や周囲長/投影面積の測定方法>
トナー表面を、日立超高分解能電界放出走査電子顕微鏡S-4800((株)日立ハイテクノロジーズ)を用いて観察し、反射電子像にて観察を行う。観察倍率としては、アルミナ微粒子の粒径によるが、例えば100nm前後であれば20000倍、加速電圧10kV、作動距離3mmの条件にて観察できる。20000倍における観察領域は約30μm×20μmの領域である。尚、アルミナ微粒子かどうかの判断は、EDAXを用いて組成分析により行った。
【0117】
観察条件としては、外添剤の大きさによって倍率を10万倍~20万倍に適宜調整する。また、無機微粒子の画像処理を行うために、観察時の加速電圧は高めに調整(例えば10kV)し、反射電子像で観察することで、無機微粒子が高輝度に、トナー粒子表面が低輝度に表わされるため好ましい。
【0118】
観察により得られた画像はアルミナ微粒子が高輝度に、トナー粒子表面が低輝度に表されているので、二値化により、視野内のアルミナ微粒子を抽出することができる。二値化の条件は観察装置やスパッタ条件により適切に選択することができる。例えば、二値化には画像解析ソフトウェアImage J(開発元Wayne Rasband)を用いることができる。実施例においては、背景輝度分布をSubtract Backgroundメニューから平坦化半径40ピクセルで除去した後、輝度閾値50で二値化した。
【0119】
得られた二値化画像から、画像解析ソフトウェアImage Jの粒子解析を用いて、アルミナ微粒子の投影面積、周囲長を算出した。アルミナ微粒子の平均投影面積および(周囲長/投影面積)の平均値は、微粒子100個における相加平均値である。
【0120】
<アルミナ微粒子の純度の測定方法>
アルミナ微粒子の純度を測定する装置の具体例としては、高感度で不純物レベルの定量が可能なICP発光分析や、AES、SIMSのごとき分析装置が使用可能である。本実施例のアルミナ微粒子中の不純物量測定はICP発光分析法による分析を行った。より具体的な装置としては、セイコーインスツルメンツ社製Vista-PROを用いた。なお、測定は、各金属酸化物について下記のJIS規格の測定方法に従って行った。
・Fe2O3(%):炭酸ナトリウム-ほう酸融解、0-フェナントロリン吸光光度法
(JIS H 1901)
・SiO2(%):炭酸ナトリウム-ほう酸融解、モリブデン青吸光光度法
(JIS H 1901)
・Na2O(%):ほう酸溶結抽出-フレーム光度測定法
(JIS H 1901)
また、アルミナ微粒子の純度は下記式より算出した。尚、少数点以下第3位を四捨五入した値と定義する。
【0121】
アルミナ微粒子の純度[Al2O3(%)]=
100(%)-[Fe2O3(%)]-[SiO2(%)]-[Na2O(%)]
<アルミナ微粒子の体積抵抗率の測定方法>
アルミナ微粒子の体積抵抗率は、以下のようにして測定する。
【0122】
装置としてはケースレーインスツルメンツ社製6517型 エレクトロメータ/高抵抗システムを用いる。上記の装置に直径25mmの電極を接続し、電極間にアルミナ微粒子を0.1g以上0.5g以下乗せて1.5Nの荷重をかけた状態で、電極間の距離を測定する。
【0123】
上記の装置でサンプルに1,000Vの電圧を1分間印加したときの抵抗値を測定し、以下の式を用いて体積抵抗率を算出する。
【0124】
体積抵抗率(Ω・cm)=R÷L
R:抵抗値(Ω)
L:電極間距離(cm)
<トナー粒子の平均円形度の測定>
トナー粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定及び解析条件で測定する。
【0125】
具体的な測定方法は、以下の通りである。
【0126】
まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2mL加える。さらに測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃~40℃となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(例えば「VS-150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2mL添加する。
【0127】
測定には、対物レンズとして「LUCPLFLN」(倍率20倍、開口数0.40)を搭載したフロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE-900A」(シスメックス社製)を使用する。前記手順に従い調製した分散液をフロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて2000個のトナー粒子を計測する。
【0128】
そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径1.977μm以上39.54μm未満に限定し、トナー粒子の平均円形度を求める。
【0129】
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えば、Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5100A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
【0130】
なお、実施例では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用した。解析粒子径を円相当径1.977μm以上39.54μm未満に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行う。
【0131】
<トナーの重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナーの重量平均粒径(D4)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
【0132】
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
【0133】
尚、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行った。
【0134】
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOMME)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
【0135】
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
【0136】
具体的な測定法は以下の通りである。
【0137】
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
【0138】
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに前記電解水溶液約30mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3mL加える。
【0139】
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetra150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2mL添加する。
【0140】
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
【0141】
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
【0142】
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
【0143】
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。尚、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【0144】
<トナー粒子表面のE/Aの測定>
トナー粒子表面に存在する炭素元素の含有量(A)に対する硫黄元素の含有量(E)の比(E/A)は、X線光電子分光装置(ESCA)「1600S型」(Physical Electronics Industries,Inc.社製)を用いて、トナー粒子表面の組成分析を行い、その分析結果に基づき算出する。
【0145】
測定条件は、X線源 MgKα(400W)、分光領域800μmφである。
【0146】
測定された各元素のピーク強度から、Physical Electronics Industries,Inc.社提供の相対感度因子を用いて表面原子濃度(原子%)を算出して、各元素の含有量とする。
【0147】
測定に用いる各元素の測定ピークトップの範囲としては、炭素元素:283~293eV、硫黄元素:166~172eVである。
【0148】
<微小粒子率の測定方法>
トナー粒子の微小粒子率は、フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定及び解析条件で測定した。
【0149】
具体的な測定方法は、以下の通りである。まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2mL加える。更に測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(例えば「VS-150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2mL添加する。
【0150】
測定には、対物レンズとして「LUCPLFLN」(倍率20倍、開口数0.40)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE-900A」(シスメックス社製)を使用した。前記手順に従い調製した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて2000個のトナー粒子を計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を粒子周囲長とし、6.332μm未満の粒子の存在比率を微小粒子とした。
【0151】
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えば、Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5100A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
【0152】
なお、本願実施例では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用した。
【実施例】
【0153】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は何らこれに制約されるものではない。なお、実施例及び比較例の部数及び%は特に断りが無い場合、すべて質量基準である。
【0154】
<アルミナ微粒子1の製造例>
アルミナ原料として水酸化アルミナAを用い、種晶としてΑ-アルミナCを0.02部(添加量は、アルミナ原料から得られるアルミナ量100部に対するもの、以下同様)添加し、雰囲気ガスとして塩化水素ガスを管状炉内に導入して実験した。雰囲気ガスの導入温度は900℃、保持温度(焼成温度)は1200℃であり、保持時間(焼成時間)は30分間であった。アルミナ微粒子の物性を表1に示す。
【0155】
<アルミナ微粒子2、3、6の製造例>
アルミナ微粒子1の製造条件を変更することで、アルミナ微粒子2、3、6を得た。アルミナ微粒子の物性を表1に示す。
【0156】
<アルミナ微粒子4の製造例>
アルミナ微粒子3にステアリン酸カルシウムによって表面処理を行ってアルミナ微粒子4を得た。アルミナ微粒子の物性を表1に示す。
【0157】
<アルミナ微粒子5>
住友化学社製のバイヤーアルミナ(AES-12)を使用した。アルミナ微粒子の物性を表1に示す。
【0158】
<アルミナ微粒子7>
アドマテックス社製の爆燃アルミナ(AO-502)を使用した。アルミナ微粒子の物性を表1に示す。
【0159】
【0160】
<荷電制御樹脂1の製造例>
還流管、撹拌機、温度計、窒素導入管、滴下装置及び減圧装置を備えた加圧可能な反応容器に、溶媒としてメタノール250部、2-ブタノン150部及び2-プロパノール100部、モノマーとしてスチレン83部、アクリル酸ブチル12部及び2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸5部を添加して撹拌しながら還流温度まで加熱した。
【0161】
これに、重合開始剤であるt-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート0.45部を2-ブタノン20部で希釈した溶液を30分かけて滴下して5時間撹拌を継続し、さらにt-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート0.28部を2-ブタノン20部で希釈した溶液を30分かけて滴下して、さらに5時間撹拌して重合を終了した。
【0162】
重合溶媒を減圧留去した後に得られた重合体を150メッシュのスクリーンを装着したカッターミルを用いて100μm以下に粗粉砕して、荷電制御樹脂1を得た。得られた重合体のガラス転移温度(Tg)は約70℃であった。
【0163】
<トナー粒子1の製造例>
四つ口容器中にイオン交換水710部と0.1モル/LのNa3PO4水溶液850部を添加し、高速撹拌装置T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて200s-1で撹拌しながら、60℃に保持した。ここに1.0モル/LのCaCl2水溶液68部を徐々に添加し、分散安定剤を含む水系分散媒体を調製した。
・スチレン 125部
・n-ブチルアクリレート 35部
・銅フタロシアニン顔料(ピグメントブルー15:3) 12部
・ポリエステル樹脂1 10部
(テレフタル酸-プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA(2モル付加物)共重合体、酸価:10mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg):70℃、重量平均分子量(Mw):10500)
・荷電制御樹脂1 1.85部
・フィッシャートロプシュワックス(融点:78℃) 15部
上記材料を、アトライタ(日本コークス工業株式会社製)を用いて3時間撹拌し、各成分を重合性単量体中に分散させ、単量体混合物を調製した。
【0164】
単量体混合物に重合開始剤である1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート20.0部(トルエン溶液50%)を添加し、重合性単量体組成物を調製した。
【0165】
重合性単量体組成物を水系分散媒体中に投入し、撹拌機の回転数を167s-1に維持しつつ5分間造粒した。その後、高速撹拌装置をプロペラ式撹拌器に変えて、内部温度を75℃に昇温させ、ゆっくり撹拌しながら6時間反応させた。
【0166】
次いで、容器内を温度85℃に昇温して5時間維持し、その後冷却し、スラリーを得た。スラリーを含む容器内に希塩酸を添加して分散安定剤を除去した。さらに、ろ別、洗浄、乾燥してトナー粒子1を得た。得られたトナー粒子1の物性を表2に示す。
【0167】
<トナー粒子2の製造例>
ポリエステル樹脂の種類を下記の樹脂に変更すること以外は、トナー粒子1の製造例と同様にして、トナー粒子2を作成した。
ポリエステル樹脂2(テレフタル酸-プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA(2モル付加物)共重合体、酸価:8mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg):71℃、重量平均分子量(Mw):10600)
【0168】
<トナー粒子3の製造例>
ポリエステル樹脂の部数を8部に変更すること以外は、トナー粒子1の製造例と同様にして、トナー粒子3を作成した。
【0169】
<トナー粒子4の製造例>
ポリエステル樹脂の部数を12部に変更すること以外は、トナー粒子1の製造例と同様にして、トナー粒子4を作成した。
【0170】
<トナー粒子5の製造例>
荷電制御樹脂1の部数を2.00部に変更すること以外は、トナー粒子4の製造例と同様にして、トナー粒子5を作成した。
【0171】
<トナー粒子6の製造例>
荷電制御樹脂1の部数を1.46部に変更すること以外は、トナー粒子4の製造例と同様にして、トナー粒子6を作成した。
【0172】
<トナー粒子7の製造例>
荷電制御樹脂1を添加しないこと以外は、トナー粒子3の製造例と同様にして、トナー粒子7を作成した。
【0173】
<トナー粒子8の製造例>
(樹脂微粒子分散体1の製造)
・スチレン: 350部
・n-ブチルアクリレート: 75部
・アクリル酸: 10部
・ドデカンチオール: 10部
上記の材料を混合した溶液420部と、非イオン性界面活性剤(三洋化成社製、ノニポール400)6部、及びアニオン性界面活性剤(第一製薬社製、ネオゲンR)10部をイオン交換水550部に溶解した溶液をフラスコ中に入れて分散、乳化した。10分間ゆっくりと攪拌・混合しながら、過硫酸アンモニウム4部を溶解したイオン交換水50部を投入した。その後、フラスコ内を窒素で充分に置換してから攪拌しながらオイルバスで系内が70℃になるまで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続し、樹脂粒子分散体1を得た。
【0174】
樹脂粒子分散体1中のラテックスは、レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA-700)で体積平均粒子径(D50)を測定したところ155nmであった。また、示差走査熱量計(島津制作所社製、DSC-50)を用いて昇温速度10℃/minで樹脂のガラス転移点を測定したところ54℃であり、分子量測定器(東ソー社製、HLC-8020)を用い、THFを溶媒として重量平均分子量(ポリスチレン換算)を測定したところ33000であった。
【0175】
(樹脂微粒子分散体2の製造)
・スチレン: 400部
・n-ブチルアクリレート: 100部
・アクリル酸: 4部
・n-ドデシルメルカプタン: 6部
上記の各成分を混合してモノマー溶液を調製し、アニオン性界面活性剤(第一工業製薬製:ネオゲンRK)10gをイオン交換水1,130gに溶解した界面活性剤水溶液と、前記モノマー溶液とを二口フラスコに投入し、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて、回転数10,000r/minにて撹拌し、乳化を行った。その後、フラスコ内を窒素置換し、ゆっくり撹拌しながらウォーターバス中で内容物が70℃になるまで加熱した後、過硫酸アンモニウム6.56gを溶解したイオン交換水350部を投入し、重合を開始した。7時間反応を継続した後,反応液を室温まで冷却し、樹脂微粒子分散体2を得た。
【0176】
樹脂微粒子分散体2中のラテックスは、レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA-700)で体積平均粒子径(D50)を測定したところ180nmであり、示差走査熱量計(島津制作所社製、DSC-50)を用いて昇温速度10℃/minで樹脂のガラス転移点を測定したところ65℃であり、分子量測定器(東ソー社製、HLC-8020)を用い、THFを溶媒として重量平均分子量(ポリスチレン換算)を測定したところ26000であった。
【0177】
(着色剤微粒子分散体の製造)
・シアン顔料 100.0部
(Pigment Blue 15:3、大日精化社製)
・アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK) 15.0部
・イオン交換水 885.0部
以上を混合及び溶解し、高圧衝撃式分散機ナノマイザー(吉田機械興業社製)を用いて約1時間分散して、着色剤を分散させてなる着色剤微粒子分散体(固形分濃度10質量%)を調製した。着色剤微粒子の体積基準のメジアン径は0.2μmであった。
【0178】
(ワックス微粒子分散体の製造例)
・エステルワックス(ベヘン酸ベヘニル、融点75℃) 100.0部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK) 10.0部
・イオン交換水 880.0部
以上を撹拌装置付きの容器に投入した後、90℃に加熱し、クレアミックスWモーション(エム・テクニック社製)を用い、循環しながらローター外径が3cm、クリアランスが0.3mmの剪断撹拌部位にて、ローター回転数310s-1、スクリーン回転数310s-1の条件にて撹拌し、60分間分散処理した。その後、ローター回転数33.3s-1、スクリーン回転数33.3s-1、冷却速度10℃/minの冷却処理条件にて40℃まで冷却することで、ワックス微粒子分散体(固形分濃度10質量%)を得た。ワックス微粒子の体積基準のメジアン径は0.15μmであった。
【0179】
(トナー粒子の形成)
・樹脂微粒子分散体1 45.0部
・着色剤微粒子分散体 10.0部
・ワックス微粒子分散体 15.0部
・1質量%塩化カルシウム水溶液 20.0部
・イオン交換水 110.0部
ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて、上記の材料を混合及び分散させた後、ウォーターバス中で45℃まで撹拌翼にて撹拌しながら加熱した。45℃で1時間保持した後、光学顕微鏡にて観察すると、重量平均粒径(D4)が5.7μmである凝集粒子が形成されていることが確認された(凝集工程)。
【0180】
5質量%クエン酸三ナトリウム水溶液40.0部を加えた後、撹拌を継続しながら85℃まで昇温して120分間保持し、融合したコア粒子を含有する水系分散体を得た(一次融合工程)。コア粒子の粒径を測定したところ、重量平均粒径(D4)は6.4μmであった。
【0181】
次いで、撹拌を継続しながら、ウォーターバス内に水を入れ、コア粒子の水系分散体を25℃まで冷却した。
【0182】
次いで、12.1部の樹脂微粒子分散体2を添加した。その後、10分間撹拌を行い、さらに2質量%塩化カルシウム水溶液60.0部を滴下し、35℃に昇温した。この状態で、随時、液を少量抽出し、2μmのマイクロフィルターに通し、ろ液が透明になるまで、35℃で撹拌を継続した。
【0183】
ろ液が透明になり、コア粒子に樹脂微粒子が付着し、シェル付着体が形成されたことを確認後、シェル付着体の水系分散体を40℃に昇温して1時間撹拌した後、5質量%クエン酸三ナトリウム水溶液35.0部を添加し、65℃に昇温して3.0時間撹拌を行った(二次融合工程)。
【0184】
その後、得られた液を25℃まで冷却した後、ろ過・固液分離した後、800部のイオン交換水を固形分に加え30分間撹拌洗浄した。その後、再びろ過・固液分離を行った。
【0185】
以上のようにろ過と洗浄を、残留界面活性剤の影響を排除するため、ろ液の電気伝導度が150μS/cm以下となるまで繰り返し、得られた固形分を乾燥させることにより、トナー粒子8を得た。
【0186】
<トナー粒子9の製造例>
ポリエステル樹脂の部数を12部に変更することと荷電制御樹脂1を添加しないこと以外は、トナー粒子1の製造例と同様にして作成した。
【0187】
<トナー粒子10の製造例>
・シアン顔料 6部
(Pigment Blue 15:3、大日精化社製)
・スチレン-アクリル酸ブチル-マレイン酸ブチルハーフエステル共重合体
(ガラス転移点Tg=63℃) 100部
・モノアゾ染料の鉄錯体(ネガ帯電性荷電制御剤) 2部
・低分子量ポリエチレン
(DSC吸熱ピーク106.7℃、Mw/Mn=1.08) 4部
上記材料をブレンダーにて混合し、その後、110℃に加熱した二軸エクストルーダーで溶融混練し、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕し、粗粉砕物を機械式粉砕器で微粉砕し、得られた微粉砕物をコアンダ効果を用いた多分割分級機にて分級してトナー粒子10を得た。
【0188】
【0189】
<実施例1>
得られたトナー粒子1の100部に対して、
・アルミナ微粒子1 0.05部
・シリカ微粒子(一次粒子の個数平均粒径が10nm、BET比表面積が125m2/gのシリカ原体にヘキサメチルジシラザンとシリコーンオイルで表面処理を行ったもの)
1.0部
をFM10C(日本コークス工業株式会社製)によって外添混合した。
【0190】
外添条件は、トナー粒子の仕込み量:1.8kg、回転数:60s-1、外添時間:15分で行った。その後、目開き200μmのメッシュで篩い、トナー1を得た。外添条件を表3に、トナー1の物性を表4に示す。
【0191】
得られたトナー1を用いて、以下の評価を行った。評価結果を表5、6に示す。
【0192】
(評価)
レーザービームプリンタHP Color LaserJet Enterprise M651nを、1色のプロセスカートリッジだけの装着でも作動できるように改造して評価を行った。評価紙としては、キヤノンマーケティングジャパンが販売するCS-680を用いた。トナーは所定のプロセスカートリッジに充填した。
【0193】
長期使用としては、帯電性の影響を受けやすい低温低湿環境(温度10℃、相対湿度14%)と、高温高湿環境(温度30℃、相対湿度80%)で評価を行った。低温低湿環境であるとトナーの帯電性が高く、チャージアップしやすい条件で、高温高湿環境だと帯電が低下しやすくカブリが発生しやすい条件である。
【0194】
長期使用としては、印字率2%となる横線パターンを2枚/1ジョブとして、ジョブとジョブの間にマシンがいったん停止してから次のジョブが始まるように設定したモードで、合計15000枚の画像形成試験を実施した。初期と、15000枚の画像形成後で評価を行った。
【0195】
・画像濃度
画像濃度は、5mm丸のベタ画像を出力して、反射濃度計であるX-Rite 500シリーズ(ビデオジェット・エックスライト(株)製)で反射濃度を測定することにより測定した。高温高湿環境と低温低湿環境との両環境で、さらに初期と、15000枚の画像形成後の両方で画像濃度の測定を行った。
【0196】
初期と耐久後の濃度変化幅を計算し、下記の基準で評価を行った。
A:反射濃度差0.05未満
B:反射濃度差0.05以上0.10未満
C:反射濃度差0.10以上0.15未満
D:反射濃度差0.15以上
【0197】
・画像カブリ
べた白を通紙して、べた白画像における白地部反射濃度の最低値をDs、画像形成前の転写材の反射平均濃度をDrとし、Dr-Dsをかぶり値とした。評価紙としては、グロス紙(HP Laser Brochure Paper 200g紙 HP社製)を用いた。反射濃度の測定には、反射濃度計(リフレクトメーター モデル TC-6DS (有)東京電色製)を用い、フィルターにはアンバーライトフィルターを用いた。数値が小さいほどかぶりレベルが良いことを示す。高温高湿環境と低温低湿環境との両環境で、初期と、15000枚の画像形成後の両方で評価を行った。
【0198】
・ハーフトーンスジ
ハーフトーンスジの評価は、高温高湿環境で15000枚の画像形成後に評価を行った。
【0199】
反射濃度0.60のハーフトーン画像出力を行い、得られた画像を長手方向に沿って観察し、濃度が低い5点の画像濃度を測定する。全多胎の平均画像濃度と5点の濃度差の平均値を求めることで、ハーフトーンスジの評価を行った。評価基準を以下に示す。
A:反射濃度差0.05未満
B:反射濃度差0.05以上0.10未満
C:反射濃度差0.10以上0.15未満
D:反射濃度差0.15以上
【0200】
・規制不良
規制不良の評価は、低温低湿環境で15000枚の画像形成後に評価を行った。ハーフトーン画像上現れた斑点状スジ及びトナー塊の量で評価した。
A:未発生
B:斑点状のスジはないが、2、3個所の小さなトナー塊がある
C:端部に斑点状スジが若干ある、若しくは4、5個所の小さなトナー塊がある
D:全面に斑点状のスジある、若しくは5個所以上小さなトナー塊又は明らかなトナー塊がある。
【0201】
・定着性こすり試験
低温低湿環境下にて、上記評価で用いた評価機を用いて、トナーの、のり量が0.90mg/cm2である濃度測定用の10mm×10mmの3ドット3スペース(600dpi)画像を多数有する画像を出力した。得られた定着画像を、50g/cm2(0.49N/cm2)の加重をかけたシルボン紙で5回摺擦し、摺擦後の画像濃度の低下率を以下に基づいて評価した。なお、定着温度の設定は180℃とした。また、画像濃度の測定には、X-Rite 500シリーズ(ビデオジェット・エックスライト(株)製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定し、摺擦後の画像濃度の低下率を算出した。
A:5.0%未満
B:5.0%以上10.0%未満
C:10.0%以上15.0%未満
D:15.0%以上
【0202】
<実施例2~14、比較例1~8>
実施例1において、トナー粒子、アルミナ微粒子の種類と添加量を表3のように変更した以外は同様にして、トナー2~14、比較トナー1~8を得た。得られたトナーの物性を表4に示す。また、得られたトナーを用いて、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表5、6に示す。
【0203】
【0204】
【0205】
【0206】