(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】靴用インソールおよびその製法
(51)【国際特許分類】
A43B 17/00 20060101AFI20221114BHJP
【FI】
A43B17/00 Z
(21)【出願番号】P 2018134698
(22)【出願日】2018-07-18
【審査請求日】2021-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000114606
【氏名又は名称】モリト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087815
【氏名又は名称】岡本 昭二
(72)【発明者】
【氏名】山本 成利
(72)【発明者】
【氏名】中西 龍生
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-509142(JP,A)
【文献】登録実用新案第3103355(JP,U)
【文献】中国実用新案第2894333(CN,Y)
【文献】特開平11-099005(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01095581(EP,A2)
【文献】特開2001-149109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 1/00~23/30
A43C 1/00~19/00
A43D 1/00~999/00
B29D 35/00~35/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(2)と、この基板(2)上に貼り付けられ、この基板(2)とは異なる材質の上部生地(3)との2層からなる靴用インソール(1)の製法であって、
前記基板(2)と前記上部生地(3)を各原料板(20,30)からそれぞれ別に打ち抜き成形する工程と、その後、前記打ち抜いた前記基板(2)と前記上部生地(3)を接着剤で接着する工程を有し、
前記打ち抜き
成形工程において、
前記靴用インソール(1)の先端部分に設けられる切り落とし可能な目盛り(22,23,24)設定部分に前記上部生地(3)を設けないことにより、前記上部生地(3)を前記基板(2)よりも小さく打ち抜くことを特徴とする靴用インソールの製法。
【請求項2】
前記基板(2)がエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA樹脂)の基板であり、前記上部生地(3)がポリエステル三次元構造生地である請求項1記載の製法。
【請求項3】
前記基板(2)と前記上部生地(3)を接着剤で接着する工程が、ローラーを通過させることによるものである請求項1又は
2記載の製法。
【請求項4】
基板(2)と、この基板(2)上に貼り付けられ、この基板(2)とは異なる材質の上部生地(3)との2層からなる靴用インソール(1)であって、
前記靴用インソール(1)の先端部分に設けられた切り落とし可能な目盛り(22,23,24)設定部分に前記上部生地(3)が設けられていない
ことを特徴とする靴用インソール(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴用インソールおよびその製法に関する。特に比較的低廉な基板(例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA樹脂)の基板)と、その基板上に貼り付けられる、別素材の上部生地(通常、より高付加価値で高価な生地、例えば、ポリエステル三次元構造生地)からなる靴用インソールおよびその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような2種類の素材を貼りあわせてなるインソールを製造するには、両者を貼りつけた後で、連続的に打ち抜いて製造するのが普通である。例えば添付の
図4において実線で示したように切断する。特許文献1の特開2001―149109のインソールもそのようにして製造されているとみられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記方法では、
図4から容易に理解できるように、インソールの周囲において切り落とす生地が多いことが明らかである。この切り落とした生地は他に用途がなく産業廃棄物として処理される。基板上に高付加価値を有し、比較的高価な生地を貼りつける場合は特にその経済的な損失が大きく、それが製品価格に上乗せされてコスト高となる。
【0005】
本発明は、このような廃棄物、特に高付加価値を有し、比較的高価な上部生地部分の量を極力減らす靴用インソールの製法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明は、基板2と、この基板2上に貼り付けられ、この基板2とは異なる材質の上部生地3との2層からなる靴用インソール1の製法であって、前記基板2と前記上部生地3を各原料板20,30からそれぞれ別に打ち抜き成形する工程と、その後、前記打ち抜いた前記基板2と前記上部生地3を接着剤で接着する工程を有し、前記打ち抜き成形工程において、前記靴用インソール1の先端部分に設けられる切り落とし可能な目盛り22,23,24設定部分に前記上部生地3を設けないことにより、前記上部生地3を前記基板2よりも小さく打ち抜くことを特徴とする(請求項1)。
【0007】
好ましくは、前記上部生地3を前記基板2よりも小さく打ち抜く工程が、前記靴用インソール1の先端部分に設けられた切り落とし可能な目盛り22,23,24設定部分に前記上部生地3を設けないことにより得られるものである(請求項2)。
【0008】
また好ましくは、前記上部生地3を前記基板2よりも小さく打ち抜く工程が、前記靴用インソール1の左右及び後方部分に設けられた起立壁21部分に前記上部生地3を設けないことにより得られるものである(請求項3)。
【0009】
前記基板2は例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA樹脂)の基板であり、前記上部生地3がポリエステル三次元構造生地である(請求項4)。
【0010】
好ましくは、前記基板2と前記上部生地3を接着剤で接着する工程が、ローラーを通過させながら行うことによるものである(請求項5)。
【0011】
本発明はまた、基板2と、この基板2上に貼り付けられ、この基板2とは異なる材質の上部生地3との2層からなる靴用インソール1であって、前記靴用インソール1の先端部分に設けられた切り落とし可能な目盛り22,23,24設定部分に前記上部生地3が設けられていないことを特徴とする(請求項6)。
【0012】
同様に、本発明は、基板2と、この基板2上に貼り付けられ、この基板2とは異なる材質の上部生地3との2層からなる靴用インソール1であって、前記靴用インソール1の左右及び後方部分に設けられた起立壁21部分に前記上部生地3が設けられていないことを特徴とする(請求項7)。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基板2と、この基板2上に貼り付けられ、この基板2とは異なる、通常、より高付加価値でより高価な上部生地3からなる靴用インソール1であって、前記上部生地3が前記基板2よりも小さいものが得られる。比較的に高価な材料の使用量が減少するので、製造コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明実施例1の、(a)完成前の斜視図、(b)完成後の斜視図である。
【
図2】実施例1の、(a)平面図、(b)側面図、(c)底面図、(d)上記(a)の矢示断面図である。
【
図3】実施例1の上部生地部分の切り抜き裁断状態を示す平面図である。
【
図4】実施例1の下部基板の切り抜き裁断状態を示す平面図である。
【
図5】本発明実施例2の、(a)完成前の斜視図、(b)完成後の斜視図である。
【
図6】実施例2の、(a)平面図、(b)側面図、(c)底面図、(d)上記(a)の矢示断面図である。
【実施例1】
【0015】
図1~4に示す実施例1において、本発明実施例のインソール1は、比較的低廉な基板2(例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA樹脂)の基板)と、その基板上に貼り付けられる、別素材の上部生地3(通常、より高付加価値で高価な生地、例えば、ポリエステル三次元構造生地)からなる。
【0016】
基板2と上部生地3はそれぞれ別に原料板20,30から打ち抜き成形され、その後、接着剤(図示せず)で接着される。このとき、強く固着するためにローラーを通過させながら行うのが好ましい。
【0017】
基板2は、
図4に示すように原料板20から打ち抜き成形された後、加熱圧縮されて、左右及び後方の壁21が起立する。(このような壁21を有するインソールを「カップインソール」と呼び、それに対して、壁のない平らなものを「平インソール」と呼ぶことがある。)底面の先端には、
図2(c)に示すように、数段階の円弧22,23,24がプレスされる。この円弧は足の大きさに合わせて消費者側でハサミなどを使用して先端部を切り落とすための目盛りであり、円弧の位置に合わせて複数の足のサイズが刻印(図示せず)されている。
【0018】
図2の(a)の平面図と(c)の底面図を比べてみると分かるように、基板2の上に位置する上部生地3の長手方向長さは、基板2底面の一番内側の円弧22の位置までしか伸びていない。したがって、基板2底面の一番内側の円弧22の位置までインソール先端を切り落とす人(足の小さい人)にとっては、上部生地3がインソール先端まで存在するが、インソールを切り落とすことなく使用する人(足の大きい人)にとっては、インソール先端には上部生地3が存在しないことになる。
【0019】
上部生地3は
図3に示すように、基板2は
図4の実線に示すように、それぞれ原料板30,20から切り抜かれる。
図4においては
図3の対応位置も二点鎖線で重ねて示した。これから明瞭に分かるように、
図3においては、上部生地3が極めて効率よく打ち抜きが可能であり、切り落として廃棄する部分が少ない。すなわち、インソール先端は、基板底面の一番内側の円弧の位置までしか伸びていないので、長手方向長さは短くて済む。靴の先端まで足の指がぴったり入ることは通常ありえないので、これでも使用上は、全く差し障りはないのである。また、左右及び後方の壁の部分にも上部生地が存在しない。この部分は本来インソールの必要性は低いので、やはり使用上は、全く差し障りはない。
【0020】
このように本発明では使用上、あまり問題にならない部分について、上部生地を省略することにより、インソールの製造コストを大きく下げることが可能となる。
【実施例2】
【0021】
図5と
図6は実施例2のインソール1Aである。実施例1と異なるのは、基板2Aの前後左右に壁が起立していない、すなわち、「平インソール」であることだけである。実施例1と同様に、インソール先端は、基板2A底面の一番内側の円弧22Aの位置までしか伸びていないので、長手方向長さは短くて済むという利点がある。
【0022】
その他は、実施例1と同じなので、実施例1の符号「A」をつけて、その説明を省略する。
【符号の説明】
【0023】
1 靴用インソール
1A インソール
2 基板
20 原料板
21 起立壁
22,23,24 円弧
2A 基板
3 上部生地
30 原料板