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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】太陽電池付き時計
(51)【国際特許分類】
   G04B 19/06 20060101AFI20221114BHJP
【FI】
G04B19/06 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018140314
(22)【出願日】2018-07-26
(65)【公開番号】P2020016573
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蟻田 真里
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慎也
【審査官】後藤 順也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-134419(JP,A)
【文献】特開2012-127666(JP,A)
【文献】特開2015-155916(JP,A)
【文献】特開2005-189019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B19/06,G04C10/02,
G04G19/00,H01L31/02-078,H01L31/18,
H01L51/42-48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性の高い高透過領域と、前記高透過領域よりも光透過性の低い低透過領域とを含む文字板と、
前記文字板を透過した光が入射することにより発電する発電領域を少なくとも含む太陽電池と、
を有し、
前記低透過領域は、平面視において、少なくとも前記太陽電池のうち発電に寄与しない非発電領域又は前記太陽電池が設けられていない非配置領域に重なるように設けられており、
前記高透過領域は、平面視において、少なくとも前記発電領域と重なるように設けられており、
前記文字板のうち前記高透過領域及び前記低透過領域における下面は、前記文字板の上面側に窪む谷条部と、前記谷条部に隣接して前記下面側に突出する山条部とからなる凹凸を含み、
少なくとも前記谷条部の底部の断面形状は丸みを帯びた形状であり、
前記高透過領域における前記底部の断面形状の方が、前記低透過領域における前記底部の断面形状よりも大きく丸みを帯びた形状である、
太陽電池付き時計。
【請求項2】
前記山条部の頂部の断面形状は丸みを帯びた形状であり、
記高透過領域における前記頂部の断面形状の方が、前記低透過領域における前記頂部の断面形状よりも大きく丸みを帯びた形状である、
請求項に記載の太陽電池付き時計。
【請求項3】
前記谷条部の底部の曲率半径は、前記山条部の頂部の曲率半径よりも大きい、
請求項1又は2に記載の太陽電池付き時計。
【請求項4】
前記文字板は、前記高透過領域よりも光透過性が低く、前記低透過領域よりも光透過性が高い中透過領域を有しており、
前記中透過領域は、前記高透過領域と前記低透過領域との間に設けられる、
請求項1~のいずれか1項に記載の太陽電池付き時計。
【請求項5】
前記中透過領域において、前記低透過領域側から前記高透過領域側に向かうに従い、段階的又は連続的に光透過性が高くなっている、
請求項に記載の太陽電池付き時計。
【請求項6】
光透過性の高い高透過領域と、前記高透過領域よりも光透過性の低い低透過領域とを含む文字板と、
前記文字板を透過した光が入射することにより発電する発電領域を少なくとも含む太陽電池と、
を有し、
前記低透過領域は、平面視において、少なくとも前記太陽電池のうち発電に寄与しない非発電領域又は前記太陽電池が設けられていない非配置領域に重なるように設けられており、
前記高透過領域は、平面視において、少なくとも前記発電領域と重なるように設けられており、
前記文字板のうち前記高透過領域及び前記低透過領域における下面は、前記文字板の上面側に窪む谷条部と、前記谷条部に隣接して前記下面側に突出する山条部とからなる凹凸を含み、
少なくとも前記高透過領域において、少なくとも前記谷条部の底部の形状は平面である、
陽電池付き時計。
【請求項7】
前記文字板は、前記高透過領域よりも光透過性が低く、前記低透過領域よりも光透過性が高い中透過領域を有しており、
前記中透過領域は、前記高透過領域と前記低透過領域との間に設けられ、底部の形状が平面である前記谷条部を少なくとも含み、
前記中透過領域において、前記低透過領域側から前記高透過領域に向かうに従い、段階的に前記谷条部の底部の平面の面積は大きくなっている、
請求項に記載の太陽電池付き時計。
【請求項8】
光透過性の高い高透過領域と、前記高透過領域よりも光透過性の低い低透過領域とを含む文字板と、
前記文字板を透過した光が入射することにより発電する発電領域を少なくとも含む太陽電池と、
を有し、
前記低透過領域は、平面視において、少なくとも前記太陽電池のうち発電に寄与しない非発電領域又は前記太陽電池が設けられていない非配置領域に重なるように設けられており、
前記高透過領域は、平面視において、少なくとも前記発電領域と重なるように設けられており、
前記文字板のうち前記高透過領域及び前記低透過領域における下面は、前記文字板の上面側に窪む谷条部と、前記谷条部に隣接して前記下面側に突出する山条部とからなる凹凸を含み、
前記高透過領域における前記谷条部の底部の断面形状、又は前記山条部の頂部の断面形状の少なくともいずれか一方は丸みを帯びた形状であり、
前記低透過領域における前記谷条部の底部の断面形状、又は前記山条部の頂部の断面形状の少なくともいずれか一方は角形である、
陽電池付き時計。
【請求項9】
前記文字板の下面のうち前記高透過領域と前記低透過領域の少なくともいずれか一方に塗料が塗布されている、
請求項1~のいずれか1項に記載の太陽電池付き時計。
【請求項10】
前記高透過領域は、断面形状がサインカーブを構成する面を含む、
請求項1に記載の太陽電池付き時計。
【請求項11】
前記谷条部及び前記山条部は、前記下面に同心円状又は渦巻き状に形成される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の太陽電池付き時計。
【請求項12】
前記文字板は、ポリカーボネート樹脂又はアクリル樹脂からなる、
請求項1~11のいずれか1項に記載の太陽電池付き時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池付き時計に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池付き時計においては、太陽電池に光を入射させるため、光透過性を有する文字板が用いられている。太陽電池は独特の濃紫色を有しており、文字板から太陽電池が透けて見えると美観を損なう可能性がある。そこで、例えば、特許文献1に開示される文字板においては、断面形状が略直角である山条部と谷条部とからなる凹凸を下面に形成することにより、光を分散、拡散させて太陽電池の色調を消す工夫を施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-174948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるように、文字板の下面に凹凸を形成した場合、文字板における光の反射率が高くなり、文字板の下側に設けられる時計の内部構造の視認性を下げることができる一方で、光の透過率が低くなることにより、太陽電池における発電量が低下してしまう可能性がある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、美観を損なうことなく、かつ発電量を確保可能な太陽電池付き時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく本出願において開示される発明は種々の側面を有しており、それら側面の代表的なものの概要は以下の通りである。
【0007】
(1)光透過性の高い高透過領域と、前記高透過領域よりも光透過性の低い低透過領域とを含む文字板と、前記文字板を透過した光が入射することにより発電する発電領域を少なくとも含む太陽電池と、を有し、前記低透過領域は、平面視において、少なくとも前記太陽電池のうち発電に寄与しない非発電領域又は前記太陽電池が設けられていない非配置領域に重なるように設けられており、前記高透過領域は、平面視において、少なくとも前記発電領域と重なるように設けられる、太陽電池付き時計。
【0008】
(2)(1)において、前記文字板のうち前記高透過領域及び前記低透過領域における下面は、前記文字板の上面側に窪む谷条部と、前記谷条部に隣接して前記下面側に突出する山条部とからなる凹凸を含み、少なくとも前記谷条部の底部の断面形状は丸みを帯びた形状であり、前記高透過領域における前記底部の断面形状の方が、前記低透過領域における前記底部の断面形状よりも大きく丸みを帯びた形状である、太陽電池付き時計。
【0009】
(3)(2)において、前記山条部の頂部の断面形状は丸みを帯びた形状であり、記高透過領域における前記頂部の断面形状の方が、前記低透過領域における前記頂部の断面形状よりも大きく丸みを帯びた形状である、太陽電池付き時計。
【0010】
(4)(2)又は(3)において、前記谷条部の底部の曲率半径は、前記山条部の頂部の曲率半径よりも大きい、太陽電池付き時計。
【0011】
(5)(1)~(4)のいずれかにおいて、前記文字板は、前記高透過領域よりも光透過性が低く、前記低透過領域よりも光透過性が高い中透過領域を有しており、前記中透過領域は、前記高透過領域と前記低透過領域との間に設けられる、太陽電池付き時計。
【0012】
(6)(5)において、前記中透過領域において、前記低透過領域側から前記高透過領域側に向かうに従い、段階的又は連続的に光透過性が高くなっている、太陽電池付き時計。
【0013】
(7)(1)において、前記文字板のうち前記高透過領域及び前記低透過領域における下面は、前記文字板の上面側に窪む谷条部と、前記谷条部に隣接して前記下面側に突出する山条部とからなる凹凸を含み、少なくとも前記高透過領域において、少なくとも前記谷条部の底部の形状は平面である、太陽電池付き時計。
【0014】
(8)(7)において、前記文字板は、前記高透過領域よりも光透過性が低く、前記低透過領域よりも光透過性が高い中透過領域を有しており、前記中透過領域は、前記高透過領域と前記低透過領域との間に設けられ、底部の形状が平面である前記谷条部を少なくとも含み、前記中透過領域において、前記低透過領域側から前記高透過領域に向かうに従い、段階的に前記谷条部の底部の平面の面積は大きくなっている、太陽電池付き時計。
【0015】
(9)(1)において、前記文字板のうち前記高透過領域及び前記低透過領域における下面は、前記文字板の上面側に窪む谷条部と、前記谷条部に隣接して前記下面側に突出する山条部とからなる凹凸を含み、前記高透過領域における前記谷条部の底部の断面形状、又は前記山条部の頂部の断面形状の少なくともいずれか一方は丸みを帯びた形状であり、前記低透過領域における前記谷条部の底部の断面形状、又は前記山条部の頂部の断面形状の少なくともいずれか一方は角形である、太陽電池付き時計。
【0016】
(10)(1)~(9)のいずれかにおいて、前記文字板の下面のうち前記高透過領域と前記低透過領域の少なくともいずれか一方に塗料が塗布されている、太陽電池付き時計。
【0017】
(11)(1)又は(2)において、前記高透過領域は、断面形状がサインカーブを構成する面を含む、太陽電池付き時計。
【0018】
(12)(2)~(4)のいずれかにおいて、前記谷条部及び前記山条部は、前記下面に同心円状又は渦巻き状に形成される、太陽電池付き時計。
【0019】
(13)(1)~(12)のいずれかにおいて、前記文字板は、ポリカーボネート樹脂又はアクリル樹脂からなる、太陽電池付き時計。
【発明の効果】
【0020】
上記本発明の(1)~(13)の側面によれば、美観を損なうことなく、かつ発電量を確保可能な太陽電池付き時計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態に係る電子時計を示す平面図である。
図2図1のA-A切断線における断面図である。
図3】本実施形態の文字板及び太陽電池の概要を示す断面図である。
図4】本実施形態の文字板を下面側から見た平面図である。
図5】本実施形態の文字板に形成される凹凸の谷条部における光の透過について説明する模式図である。
図6】本実施形態における太陽電池を示す平面図である。
図7】本実施形態における文字板を模式的に示す平面図である。
図8図7のB-B切断線における断面図と、透過率及び反射率の関係について示す図である。
図9】本実施形態の第1変形例の文字板及び太陽電池の概要を示す断面図である。
図10】本実施形態の第2変形例の文字板及び太陽電池の概要を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態(以下、本実施形態という)について図面に基づき詳細に説明する。
【0023】
図1は、本実施形態に係る太陽電池付き時計を示す平面図である。図2は、図1のA-A切断線における断面図である。なお、図2においては、後述の竜頭13の図示は省略しており、また、指針の配置を分かりやすくするため、分針16が9時の方向を向いており、時針15及び秒針17が3時の方向を向いている状態を示している。
【0024】
図1には、太陽電池付き時計1の外装(時計ケース)である胴10、胴10内に配置された文字板14、時刻を示す指針である時針15、分針16、秒針17が示されている。また、文字板14には所定の位置に時字49が設けられている。また、胴10の12時側及び6時側の側面からは、バンドを固定するためのバンド固定部11が伸びている。また、胴10の3時側の側面にはユーザが種々の操作を行うためのボタン12、竜頭13が配置されている。
【0025】
なお、図1に示した時計のデザインは一例である。ここで示したもの以外にも、例えば、胴10を丸型でなく角型にしてもよいし、ボタン12や竜頭13の有無、数、配置は任意である。また、本実施形態では、指針を時針15、分針16、秒針17の3本としているが、これに限定されず、秒針17を省略してもよいし、あるいは、曜日、タイムゾーンやサマータイムの有無、電波の受信状態や電池の残量、各種の表示を行う指針や、日付表示等を追加したりしてもよい。
【0026】
なお、本明細書では、太陽電池付き時計1として、GPS(Global Positioning System)衛星などの日付や時刻に関する情報を含む衛星信号を送信する衛星から当該衛星信号を受信し、それに含まれる日付や時刻に関する情報に基づき、時計内部に保持される内部時刻を修正する機能を有している衛星電波腕時計を示す。ただし、これに限られるものではなく、一般的な標準電波を受信して内部時刻を修正する電波時計であってもよいし、こうした時刻修正機能を備えない時計であってもよい。
【0027】
図2に示すように、太陽電池付き時計1は、文字板14を覆うようにガラス等の透明材料により形成された風防32を有し、風防32は胴10に取り付けられている。また、風防32の反対側においては裏蓋36が胴10に取り付けられている。本明細書では、以降、時計の風防32が配置される側(図1における紙面手前側)を上側、裏蓋36が配置される側(図1における紙面奥側)を下側と呼ぶ。
【0028】
文字板14の下側には、太陽電池30が配置されており、文字板14を透過して上側から太陽電池30に入射される光により発電がなされる。そのため、文字板14はある程度光線を透過する材質で形成される。例えば、文字板14はポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂からなるとよい。また、それら樹脂に限らず、透明な樹脂であれば良く、例えば、フッ化樹脂やエチレン系樹脂等を使用しても良い。
【0029】
本実施形態においては、図1の破線で示すように、太陽電池30は概略円形をなし、10時方向から2時方向が扇状に切り欠かれている。そして、文字板14の下側において、この切り欠かれた部分(太陽電池30が存在しない領域)に衛星信号を受信するためのパッチアンテナ20が配置されている。このように、パッチアンテナ20を、平面視において太陽電池30と重ならないように配置することにより、太陽電池30に含まれる電極によるパッチアンテナ20の受信感度への影響を抑制することができる。
【0030】
図2に示すように、太陽電池付き時計1は、さらに、文字板14と太陽電池30の間に設けられる半透過反射板47、太陽電池30の下側に設けられるムーブメント38を有する。ムーブメント38は、指針を駆動するための輪列とモータ、時刻を計時する水晶振動子を含む時計回路、太陽電池付き時計1全体を制御するコントローラ等を地板と呼ばれる枠に一体に組み付けたものである。ムーブメント38は、ムーブメント38に取り付けられた蓄電池から電力を得て動作する。蓄電池は、ムーブメント38に電力を供給すると同時に、太陽電池30により発電された電力を蓄積するものであり、例えば、ボタン型のリチウム二次電池である。
【0031】
本実施形態においては、太陽電池30は、ムーブメント38に一体的に設けられている。また、ムーブメント38には指針軸が文字板14の上面から突出するように設けられており、その先端に秒針17、分針16、時針15が取り付けられている。そして、それらを覆うようにして風防32が胴10に固定されている。
【0032】
次に、図3図4を参照して、本実施形態の文字板14の構成について説明する。図3は、本実施形態の文字板及び太陽電池の概要を示す断面図である。図4は、本実施形態の文字板を下面側から見た平面図である。
【0033】
なお、文字板14と太陽電池30との間には、図2で示したように、入射光を適度に透過、反射させるために半透過性反射板47が設けられるとよいが、必須の構成ではないため、図3においては、半透過性反射版47の図示は省略する。また、図3においては、図が複雑になるのを避けるためハッチングを省略する。また、図3に示すように、文字板14の下面と太陽電池30との間の空間は空気層24となっている。文字板14と空気層24とでは屈折率が異なるため、文字板14の下面と空気層24との界面において、光は屈折又は反射することとなる。
【0034】
以下の説明において、図3に示すように、文字板14のうち、平面視において太陽電池30と重ならない領域を領域c、平面視において太陽電池30と重なる領域のうち領域cと隣接しない領域を領域a、平面視において太陽電池30と重なる領域のうち領域cに隣接する領域を領域bと呼ぶこととする。本実施形態においては、領域aを光透過性の高い高透過領域とし、領域cを領域aよりも光透過性が低い低透過領域とし、領域bを領域aよりも光透過性が低く、領域cよりは光透過性が高い中透過領域とした。
【0035】
本実施形態においては、文字板14のうち領域aにおける下面には、上側に窪んだ谷条部141と、谷条部141に隣接して下側に突出した山条部142とからなる凹凸が形成されている。このように文字板14の下面に凹凸を形成する理由は、文字板14の下面と空気層24との界面において光を反射させることにより外部から見て太陽電池30等の文字板14の下側に設けられる内部構造を目立たないようにするためである。凹凸の高さやピッチは数十μm~百数十μm程度であるとよい。なお、本実施形態においては、文字板14の下面のうち、最も窪んだ箇所を底部と呼び、最も出っ張った箇所を頂部と呼ぶこととする。
【0036】
なお、本実施形態においては、谷条部141は、文字板14の厚み方向における底部141aと頂部142aとの中間よりも上側の部分であり、山条部142は、文字板14の厚み方向における底部141aと頂部142aとの中間よりも下側の部分であると定義する。すなわち、本実施形態においては、文字板14の厚み方向における、谷条部141の深さと山条部142の高さは等しい。後述の領域b、領域cの谷条部、山条部についても同様とする。
【0037】
また、本実施形態においては、文字板14のうち領域cにおける下面には、上側に窪んだ谷条部143と、谷条部143に隣接して下側に突出した山条部144とからなる凹凸が形成されている。
【0038】
また、本実施形態においては、文字板14のうち領域bにおける下面には、上側に窪んだ谷条部147と、谷条部147に隣接して下側に突出した山条部148とからなる凹凸が形成されている。
【0039】
また、本実施形態においては、図3に示すように、領域a~c毎に、断面視における谷条部の底部及び山条部の頂部の形状が異なるように凹凸を形成した。凹凸の形状の違いによる光透過性の差異についての詳細については、図5等を参照して後述する。
【0040】
凹凸は、文字板14の下面に、図4(a)に示すように同心円状に形成されてもよいし、図4(b)に示すように渦巻き状に形成されてもよい。なお、図4(a)、図4(b)においては、実線が山条部の頂部を示しており、実線の間の部分が谷条部の底部を示している。ただし、図4(a)、図4(b)に示す凹凸の形状は一例であり、例えばストライプ状や放射状に形成されてもよいし、また、一様な模様に限られるものでもなく、装飾的な模様が形成されるものであってもよい。
【0041】
さらに、図5を参照して、文字板14に形成される凹凸における光の透過の詳細について説明する。図5は、本実施形態の文字板に形成される凹凸の谷条部における光の透過について説明する図である。
【0042】
図5の一点鎖線は、断面形状が角形に形成される谷条部143の底部143aを示す。また、図5の破線矢印は、角形に形成される谷条部143の底部143aに入射された光の光路を示しており、文字板14の下面と空気層24との界面に入射される入射光l1と、その界面における透過光(屈折光)l2、反射光l3を示している。また、図5の実線矢印は、断面形状が丸みを帯びた谷条部141の底部141aに入射される光の光路を示しており、文字板14の下面と空気層24との界面に入射される入射光L1と、その界面における透過光(屈折光)L2を示している。
【0043】
ここで、光の反射率は、入射角に依存することが知られている(フレネルの式)。具体的には、界面に入射される光の入射角が大きい程、反射率が大きくなり、入射角が小さい程、反射率が小さくなることが知られている。言い換えると、界面に入射される光の入射角が大きい程、透過率が小さくなり、入射角が小さい程、透過率が大きくなることが知られている。すなわち、界面に垂直に入射される光(入射角0度)の透過率が最も高い。なお、ここで、反射率とは、屈折率が異なる物質間の界面に入射される光束に対する反射される光束の割合である。また、透過率とは、異なる物質間の界面に入射される光束に対する透過される光束の割合である。
【0044】
図5においては、説明を簡易にするため、文字板14の上面145に対して垂直(90度)に入射される光が、谷条部の底部における文字板と空気層との界面において反射、透過する例について示している。なお、本実施形態においては、文字板14の上面145を平面とした。
【0045】
ここで、谷条部143の底部143aの断面形状は角形となっており、上面145に対して所定の角度で傾斜する斜面が形成される構成となっている。文字板14の上面145に対して垂直に入射される光l1は、底部143aを形成する斜面に対して、所定の入射角で入射し、その一部が反射される。
【0046】
一方、丸みを帯びた谷条部141の底部141aの断面形状は、角形の底部143aの構成と比較して、文字板14の上面に対する傾斜が小さくなっている。そのため、谷条部141の底部141aと空気層24との界面に入射される光の入射角が小さくなっている。したがって、断面形状が丸みを帯びた谷条部141の底部141aと空気層24との界面における光の反射率は小さく、透過率が大きい。そのため、文字板14の下側に配置される太陽電池30まで届く光の量が、断面形状が角形の底部143aに比較して多く、太陽電池30における発電量が多い。
【0047】
上記のように、谷条部141の底部141aを、丸みを帯びた形状にすることにより、光の透過率を向上させ、太陽電池30における発電量を向上することができるのと同様に、山条部142の頂部142aを、丸みを帯びた形状にすることにより、光の透過率を向上させ、太陽電池30における発電量を多くすることができる。なお、底部141aと頂部142aを同じ曲率半径で丸みを帯びさせた場合、底部141aに丸みを帯びさせたことによる透過率の向上の方が、頂部142aに丸みを帯びさせたことによる透過率の向上よりも大きい。これは、底部141aにおいては入射される全ての光に対して透過率の向上が見込まれる一方で、頂部142aにおいては、文字板14の外部から頂部142aへ入射される光に対しては丸みを帯びさせたことによる透過率の向上が見込めないためである。したがって、透過率を向上させるためには、底部の曲率半径を、頂部の曲率半径よりも大きくするのが好ましい。
【0048】
次に、図6図8を参照して、太陽電池30の構成と、文字板14の構成について説明する。図6は、本実施形態における太陽電池を示す平面図である。図7は、本実施形態における文字板を模式的に示す平面図である。なお、図7においては、凹凸の図示は省略している。図8は、図7のB-B切断線における断面図と、透過率及び反射率の関係について示す図である。
【0049】
図6に示すように、太陽電池30は、10時方向から2時方向を扇状に切り欠いた形状を有する基板30bを備えている。図6に示す例では、切り欠き部30cのなす角度は120°である。上述したように、切り欠き部30cの内側領域(太陽電池30が存在しない領域。以降、非配置領域Mと呼ぶ。)には、受信面が風防32側を向くようにしてパッチアンテナ20が配置される。切り欠き部30cのなす角度は、パッチアンテナ20が収容できる角度であればどのようなものであっても構わない。
【0050】
なお、本実施形態においては、太陽電池30が存在しない領域を非配置領域Mと呼ぶのに対して、太陽電池30が存在して発電が行われる領域を発電領域E、太陽電池30が存在して発電が行われない領域を非発電領域Nと呼ぶこととする。
【0051】
基板30bの周縁には互いに離間した位置に複数の係合部(凹凸形状)が設けられており、これら係合部が胴10自体或いは胴10の内部に収容される図示しない枠体であるソーラーセル支持枠に係合している。これにより、基板30bは太陽電池付き時計1内で回動不能に支持される。さらに、太陽電池30の中央には指針軸を挿通するための開口が形成されており、表面には半導体薄膜及び電極を備えた発電単位であるセル30aが複数形成されている。セル30aが設けられる領域が、上述の発電領域Eに対応する。また、開口が形成される領域、及びセル30aを分割する分割線が形成される領域が、上述の非発電領域Nに対応する。以下、開口が形成される領域を非発電領域N1、分割線が形成される領域を非発電領域N2と呼ぶこととする。
【0052】
本実施形態においては、平面視において発電領域Eと重なる領域と非配置領域Mに重なる領域とで、文字板14の下面に異なる形状の凹凸を形成した。すなわち、文字板14のうち、平面視において発電領域Eと重なる領域aにおいては透過率が高くなるような凹凸を形成し、非配置領域Mに重なる領域cにおいては透過率が低くなるように凹凸を形成した。さらに、発電領域Eと重なる領域のうち非配置領域Mと近接する領域に重なる領域bにおいては、領域aよりは透過率が低く、領域cよりは透過率が高くなるように凹凸を形成した。
【0053】
図8の上段に図示するように、文字板14における光の透過率と反射率とは、一方が高くなれば他方が低くなり、一方が低くなれば他方が高くなるような関係にある。すなわち、透過率が高いほど反射率は低くなり、文字板14を透過する光の量は多く、太陽電池30における発電量が多くなる。一方、透過率が低いほど反射率は高くなり、文字板14を透過する光の量は少なく、太陽電池30における発電量は少なくなる。
【0054】
本実施形態においては、平面視において、発電領域Eと重なる領域aにおける文字板14の光透過率が高くなるよう、文字板14の下面に凹凸を形成した。具体的には、図3で示したように、底部141aと頂部142aの断面形状が丸みを帯びた形状となるように凹凸を形成した。このような構成とすることにより、文字板14を透過する光の量が増加し、太陽電池30における発電量を維持、向上することができる。なお、本出願の発明者の知見によると、凹凸の断面形状がサインカーブを構成すると光透過率が高くなる。そのため、図3に示すように、本実施形態においては、領域aにおける文字板14の下面の凹凸の断面形状を、サインカーブを描く形状とした。
【0055】
なお、図3においては、文字板14の下面のうち領域aにおいて、文字板14の厚み方向に直交(交差)する方向における、谷条部141の幅と山条部142の幅とを同じとしたが、これに限られるものではなく、文字板14の厚み方向に直交する方向における、谷条部141の幅を山条部の幅よりも大きくしてもよい。
【0056】
一方、平面視において、非配置領域Mと重なる領域cにおける文字板14の透過率が低くなるように、文字板14の下面に凹凸を形成した。具体的には、図3で示したように、底部143aと頂部144aの断面形状が角形となるように凹凸を形成した。領域cにおいては、文字板14の下側に太陽電池30が配置されていないため、領域cを透過した光は発電に寄与しないためである。また、透過率が高いと、その分、時計内部で反射して、文字板14を介して外部に出てくる光量が多くなる。それにより、文字板14を介して時計の内部構造が外部から視認されることとなり、美観上の観点から好ましくないためである。
【0057】
また、領域bにおいては、底部147aと頂部148aの断面形状が、領域aの底部141aと頂部142aよりも曲率半径の小さい丸みを帯びた形状となるように凹凸を形成した。また、領域bにおいては、領域c側から領域a側へ向かうに従い、光透過性が段階的又は連続的に高くなるように、凹凸を形成した。具体的には、図3に示すように、領域bのうち領域c側よりも領域a側の方が、底部147a及び頂部148aの断面形状が曲率半径の大きい丸みを帯びた形状となるように凹凸を形成した。このような構成にすることにより、太陽電池30が配置される領域と配置されない領域との境目が外部から分かりづらくなり、美観が損なわれることが抑制される。
【0058】
なお、本実施形態においては、文字板14のうち非配置領域Mと重なる領域cにおける文字板14の透過率が低くなるように、文字板14の下面に凹凸を形成したが、これに限られるものではなく、太陽電池30の開口が形成される非発電領域N1や分割線が形成される非発電領域N2と重なる領域においても、透過率が低くなるように文字板14の下面に凹凸を形成してもよい。これにより、太陽電池30の開口や分割線と重なる領域における反射率が高くなり、開口や分割線が外部から視認しづらくなり、美観が損なわれることが抑制される。
【0059】
なお、太陽電池の形状は図6に示すような扇形の切り欠きが形成されるものに限られるものではない。例えば、中央部が切りかかれたリング形状(ドーナツ形状)の太陽電池であってもよいし、リング形状の一部が切りかかれたC字形状の太陽電池であってもよい。また、リング状と逆に、文字板の中央部付近にのみ設けられ、文字板の外周付近が非配置領域Mとなる太陽電池であってもよい。さらに、外形が円状のものに限られるものでもなく、角型の外形を有する太陽電池であっても構わない。いずれの形状の太陽電池を採用する場合であっても、文字板14において、太陽電池の発電領域Eと重なる領域の光透過性を高くし、非発電領域Nや非配置領域Mと重なる領域の光透過性を低くするとよい。
【0060】
図9は、本実施形態の第1変形例の文字板及び太陽電池の概要を示す断面図である。図3等においては、断面形状が丸みを帯びた凹凸を文字板14の下面に形成する構成について示したが、これに限られるものではなく、例えば、図9に示す文字板140のように、発電領域Eと重なる領域aにおける底部141aの最も窪んだ箇所を上面145に対して平行な平面にしてもよい。同様に、頂部142aの最も出っ張った箇所を上面145に対して平行な平面にしてもよい。底部141aや頂部142aの断面形状を上面145に対して傾斜しない面とすることにより、透過率が向上するためである。そして、発電に寄与しない非配置領域Mに重なる領域cにおいては、底部141aと頂部142aの断面形状を角形にするとよい。また、領域aと領域cの間の領域bにおいては、領域c側から領域a側へ向かうに従い、光透過性が段階的又は連続的に高くなるように、凹凸を形成した。具体的には、図9に示すように、領域bのうち領域c側においては、底部147aの断面形状を角形にし、頂部148aの最も出っ張った箇所を上面145に対して平行な平面にした。また、領域bのうち領域a側においては、頂部148aのうち最も出っ張った箇所を上面145に対して平行な面にするのに加えて、底部147aの最も窪んだ箇所を上面145に対して平行な平面にした。このように領域bにおいて凹凸の形状を段階的に変化させることにより、発電領域Eにおいて発電量を確保しつつ、太陽電池30が配置される領域と配置されない領域との境目が外部から分かりづらくなる。また、例えば、領域bにおいては、領域c側から領域a側に向かうに従い、段階的に谷条部147の底部147aの平面の面積と、山条部148の頂部148aの平面の面積が大きくなるように凹凸を形成してもよい。
【0061】
なお、底部と頂部のいずれの断面形状を角形にするか、丸みを帯びた形状にするか、又はどの程度丸みを帯びた形状にするかについては、適宜採用可能である。どこにどのような形状を採用するかに関わらず、少なくとも領域aにおける光透過性が高く、領域cにおける光透過性が低くなるように、文字板140の下面に凹凸を形成するとよい。
【0062】
図10は、本実施形態の第2変形例の文字板及び太陽電池の概要を示す断面図である。図3図9等で示した文字板においては、太陽電池30のいずれの領域と重なる領域かによって凹凸の形状を異ならせる構成を採用したが、第2変形例においては、文字板240の下面に凹凸を形成し、その凹凸上に塗料50を塗布することにより透過率を領域毎に異ならせる構成を採用する。
【0063】
具体的には、第2変形例においては、領域a~領域cのいずれにおいても同様に、断面形状が角形の凹凸を文字板240の下面に形成した。そして、平面視において発電領域Eと重なる領域aの凹凸に塗料50を塗布し、発電領域Eと重なる領域のうち発電領域Eと重ならない領域cと近接する領域bの凹凸に領域aよりも薄く塗料50を塗布した。また、発電領域Eと重ならない領域cにおいては、塗料50を塗布しないことにした。
【0064】
塗料50を塗布した領域においては、塗料50が空気層24との界面を構成することとなり、当該界面は緩やかな傾斜を形成することとなる。また、例えば、塗料50と文字板240の屈折率が略同等であって、かつ空気層24の屈折率よりも大きい場合、光の反射、屈折は、文字板240と塗料50との界面よりも、塗料50と空気層24との界面において支配的となる。したがって、塗料50が塗布されることにより、緩やかな傾斜が形成された領域aにおいては、光透過率が高くなる。
【0065】
なお、文字板14の下面のいずれの領域にも塗料50を塗布し、塗布される塗料50の量(膜厚)を領域毎に調整することにより、文字板14における光透過性を調整してもよい。また、塗料50の材質によっては、塗料50を塗布した領域の方が、塗布しない領域よりも光透過性が低くなる場合もある。そのような塗料50を塗布する場合は、領域aにおいて塗布される塗料50の量を少なくし、領域cにおいて塗布される塗料50の量を多くするとよい。
【0066】
また、文字板240の下面には必ずしも凹凸を形成する必要はなく、塗料50を塗布することのみにより、各領域における透過性を異ならせることとしてもよい。いずれにしても、発電領域Eと重なる領域aにおける光透過性が高く、発電領域Eと重ならない領域cにおける光透過性が低くなる構成であればよい。
【0067】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、この実施形態に示した具体的な構成は一例として示したものであり、本発明の技術的範囲をこれに限定することは意図されていない。当業者は、これら開示された実施形態を適宜変形してもよく、本明細書にて開示される発明の技術的範囲は、そのようになされた変形をも含むものと理解すべきである。
【符号の説明】
【0068】
1 太陽電池付き時計、10 胴、11 バンド固定部、12 ボタン、13 竜頭、14,140,240 文字板、141,143,147 谷条部、141a,143a,147a 底部、142,144,148 山条部、142a,144a,148a 頂部、145 上面、15 時針、16 分針、17 秒針、20 パッチアンテナ、30 太陽電池、30a セル、32 風防、36 裏蓋、38 ムーブメント、47 半透過反射板、49 時字、50 塗料。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10