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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】指標値特定装置および指標値特定方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20221114BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
E02F9/20 N
E02F9/26 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018144089
(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公開番号】P2020020145
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】杉村 みなみ
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-190114(JP,A)
【文献】特開2000-204606(JP,A)
【文献】特開2017-222004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の時刻における作業機械の状態を示す状態データを取得する状態データ取得部と、
前記取得した状態データに基づいて前記作業機械の複数の作業の区分それぞれの尤度の時系列を特定する作業特定部と、
特定された尤度の時系列を平滑化する平滑化部と、
前記平滑化された尤度の時系列に基づいて、前記作業の区分のうち、所定の区分に係る尤度が支配的な期間の始点および終点を特定する期間特定部と、
前記始点から前記終点までの前記作業機械の状態の指標値を求める指標値特定部と
を備える指標値特定装置。
【請求項2】
前記作業特定部は、目的別に区分される一連の動作または作業を示す要素作業の区分を特定し、
前記期間特定部は、前記要素作業の区分に係る尤度が支配的な期間の前記始点および前記終点を特定する
請求項1に記載の指標値特定装置。
【請求項3】
前記作業特定部は、前記作業機械の一の作業目的を遂行する作業を示す単位作業の区分をさらに特定し、
前記期間特定部は、所定の単位作業を構成する所定の要素作業の区分に係る尤度が支配的な期間の前記始点および前記終点を特定し、
前記指標値特定部は、前記期間の前記始点から前記終点までの前記指標値を求める
請求項2に記載の指標値特定装置。
【請求項4】
前記期間特定部は、前記要素作業の区分に係る尤度が支配的な複数の期間の前記始点および前記終点を特定し、
前記指標値特定部は、前記複数の期間それぞれの前記始点から前記終点までの前記指標値に基づいて、前記指標値の統計量を求める
請求項3に記載の指標値特定装置。
【請求項5】
前記指標値特定部は、前記期間に係る異なる種類の前記指標値を求める
請求項3または請求項4に記載の指標値特定装置。
【請求項6】
前記期間特定部は、前記作業機械の積荷旋回または空荷旋回に係る尤度が支配的な期間の前記始点および前記終点を特定し、
前記指標値特定部は、前記積荷旋回または前記空荷旋回における前記作業機械の旋回角を求める
請求項2から請求項5の何れか1項に記載の指標値特定装置。
【請求項7】
前記指標値特定部が特定した前記指標値を出力する出力部を備え、
前記期間特定部は、所定の要素作業の区分に係る尤度が支配的な複数の期間の前記始点および前記終点を特定し、
前記指標値特定部は、前記複数の期間それぞれの前記始点から前記終点までの前記指標値を求め、
前記出力部は、前記複数の期間それぞれに係る前記指標値の推移を示すグラフを出力する
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の指標値特定装置。
【請求項8】
前記出力部は、前記複数の期間それぞれに係る異なる種類の前記指標値の推移を示すグラフを出力する
請求項7に記載の指標値特定装置。
【請求項9】
複数の時刻における作業機械の状態を示す状態データを取得するステップと、
前記取得した状態データに基づいて前記作業機械の複数の作業の区分それぞれの尤度の時系列を特定するステップと、
特定された尤度の時系列を平滑化するステップと、
前記平滑化された尤度の時系列に基づいて、前記作業の区分のうち、所定の区分に係る尤度が支配的な期間の始点および終点を特定するステップと、
前記期間における前記作業機械の状態の指標値を求めるステップと
を備える指標値特定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指標値特定装置および指標値特定方法に係る。
【背景技術】
【0002】
作業機械の動作に関する動作情報を収集し、作業機械の作業を推定する技術が知られている。特許文献1には、作業機械の稼働状態に依存する複数の運転変数の時間変化に基づいて、作業機械の作業内容を推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-214566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、オペレータの技量判定および評価、ならびに作業の解析を行うために、様々な視点に係る評価材料が求められている。
本発明の目的は、ある状況における作業機械の状態を表す指標値を求めることができる指標値特定装置および指標値特定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、指標値特定装置は、複数の時刻における作業機械の状態を示す状態データを取得する状態データ取得部と、前記取得した状態データに基づいて前記作業機械の複数の作業の区分それぞれの尤度の時系列を特定する作業特定部と、特定された尤度の時系列を平滑化する平滑化部と、前記平滑化された尤度の時系列に基づいて、前記作業の区分のうち、所定の区分に係る尤度が支配的な期間の始点および終点を特定する期間特定部と、前記始点から前記終点までの前記作業機械の状態の指標値を求める指標値特定部とを備える。
【発明の効果】
【0006】
上記態様のうち少なくとも1つの態様によれば、指標値特定装置は、オペレータの評価または作業の解析に用いることができる評価材料を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係る作業分析システムの構成を示す概略図である。
図2】第1の実施形態に係る油圧ショベルの構成を示す斜視図である。
図3】第1の実施形態に係るラベリング装置の構成を示す概略ブロック図である。
図4】第1の実施形態に係る作業分析装置の構成を示す概略ブロック図である。
図5】掘削積込ごとの平均旋回角および平均燃費を表すグラフの例を示す図である。
図6】掘削積込に係る積込回ごとの旋回角および燃費を表すグラフの例を示す図である。
図7】第1の実施形態に係る作業分析装置の学習処理を示すフローチャートである。
図8】第1の実施形態に係る作業分析装置による作業分析方法を示すフローチャートである。
図9】単位作業に係る尤度の時系列および要素作業に係る尤度の時系列を表すヒートマップの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
《全体構成》
図1は、一実施形態に係る作業分析システムの構成を示す概略図である。
作業分析システム1は、作業機械100とラベリング装置200と作業分析装置300を備える。作業分析装置300は、指標値特定装置の一例である。
【0009】
作業機械100は、作業分析装置300による作業分析の対象である。作業機械100の例としては、油圧ショベルやホイルローダなどが挙げられる。なお、第1の実施形態においては、作業機械100の例として油圧ショベルを挙げて説明する。作業機械100には、複数のセンサおよび撮像装置が設けられ、各センサの計測値に係る情報および動画像が作業分析装置300に送信される。
ラベリング装置200は、作業分析装置300に記憶された動画像に、そのときの作業機械100の作業の区分を示すラベルを付したラベルデータを生成する。
【0010】
作業分析装置300は、作業機械100から受信する情報とラベリング装置200から受信するラベルデータとに基づいて学習されたモデルに基づいて、作業機械100の作業の区分に係るパラメータを表示する画面を出力する。利用者は、作業分析装置300が出力するパラメータを認識することで、オペレータの評価または作業の解析を行うことができる。
【0011】
《油圧ショベル》
図2は、第1の実施形態に係る油圧ショベルの構成を示す斜視図である。
作業機械100は、走行体110と、走行体110に支持される旋回体120と、油圧により作動し旋回体120に支持される作業機130とを備える。旋回体120は、旋回中心を中心として走行体110に旋回自在に支持される。
【0012】
走行体110は、左右に設けられた無限軌道111と、各無限軌道111を駆動するための2つの走行モータ112を備える。
【0013】
作業機130は、ブーム131と、アーム132と、バケット133と、ブームシリンダ134と、アームシリンダ135と、バケットシリンダ136とを備える。
【0014】
ブーム131の基端部は、旋回体120にブームピンP1を介して取り付けられる。
アーム132は、ブーム131とバケット133とを連結する。アーム132の基端部は、ブーム131の先端部にアームピンP2を介して取り付けられる。
バケット133は、土砂などを掘削するための刃先と掘削した土砂を収容するための収容部とを備える。バケット133の基端部は、アーム132の先端部にバケットピンP3を介して取り付けられる。なお、バケット133は、例えば法面バケットのように整地を目的としたバケットでもよいし、収容部を備えないバケットでもよい。また、作業機130は、バケット133に代えて、打突によって粉砕力を与えるためのブレーカや、対象物を把持するグラップルなどの他のアタッチメントを備えてもよい。
【0015】
ブームシリンダ134は、ブーム131を作動させるための油圧シリンダである。ブームシリンダ134の基端部は、旋回体120に取り付けられる。ブームシリンダ134の先端部は、ブーム131に取り付けられる。
アームシリンダ135は、アーム132を駆動するための油圧シリンダである。アームシリンダ135の基端部は、ブーム131に取り付けられる。アームシリンダ135の先端部は、アーム132に取り付けられる。
バケットシリンダ136は、バケット133を駆動するための油圧シリンダである。バケットシリンダ136の基端部は、アーム132に取り付けられる。バケットシリンダ136の先端部は、バケット133に取り付けられる。
【0016】
旋回体120には、オペレータが搭乗する運転室121が備えられる。運転室121は、旋回体120の前方かつ作業機130の左側に備えられる。
旋回体120は、エンジン122、油圧ポンプ123、コントロールバルブ124、旋回モータ125、操作装置126、撮像装置127、データ集約装置128を備える。なお、他の実施形態においては、作業機械100がネットワークを介した遠隔操作によって動作してもよいし、自動運転によって動作してもよい。この場合、作業機械100は、運転室121および操作装置126を備えなくてもよい。
【0017】
エンジン122は、油圧ポンプ123を駆動する原動機である。
油圧ポンプ123は、エンジン122により駆動され、コントロールバルブ124を介して各アクチュエータ(ブームシリンダ134、アームシリンダ135、バケットシリンダ136、走行モータ112、および旋回モータ125)に作動油を供給する。
コントロールバルブ124は、油圧ポンプ123から供給される作動油の流量を制御する。
旋回モータ125は、コントロールバルブ124を介して油圧ポンプ123から供給される作動油によって駆動し、旋回体120を旋回させる。
【0018】
操作装置126は、運転室121の内部に設けられる2つのレバーである。操作装置126は、ブーム131の上げ操作および下げ操作、アーム132の押し操作および引き操作、バケット133の掘削操作およびダンプ操作、旋回体120の右旋回操作および左旋回操作、ならびに走行体110の前進操作および後退操作の指令を受け付ける。具体的には、右側操作レバーの前方向の操作は、ブーム131の下げ操作の指令に対応する。右側操作レバーの後方向の操作は、ブーム131の上げ操作の指令に対応する。右側操作レバーの右方向の操作は、バケット133のダンプ操作の指令に対応する。右側操作レバーの左方向の操作は、バケット133の掘削操作の指令に対応する。左側操作レバーの前方向の操作は、アーム132の引き操作の指令に対応する。左側操作レバーの後方向の操作は、アーム132の押し操作の指令に対応する。左側操作レバーの右方向の操作は、旋回体120の右旋回操作の指令に対応する。左側操作レバーの左方向の操作は、旋回体120の左旋回操作の指令に対応する。
操作装置126の傾きに応じて、コントロールバルブ124の各アクチュエータへつながる流路の開度が制御される。操作装置126は、例えば傾きに応じてパイロット作動油の流量を変化させるバルブを有し、パイロット作動油がコントロールバルブ124のスプールを作動させることで、コントロールバルブ124の開度を制御する。
【0019】
撮像装置127は、運転室121の上部に設けられる。撮像装置127は、運転室121の前方の画像であって作業機130が写る動画像を撮像する。撮像装置127が撮像した動画像は、タイムスタンプと共にデータ集約装置128に記憶される。
【0020】
データ集約装置128は、作業機械100が備える複数のセンサから検出値を収集し、タイムスタンプに関連付けて記憶する。またデータ集約装置128は、複数のセンサから収集した検出値の時系列、および撮像装置127が撮像した動画像を作業分析装置300に送信する。センサの検出値および動画像は、作業機械100の状態を示す状態データの一例である。データ集約装置128は、図示しないプロセッサ、メインメモリ、ストレージ、インタフェースを備えるコンピュータである。データ集約装置128のストレージは、データ集約プログラムを記憶する。データ集約装置128のプロセッサは、データ集約プログラムをストレージから読み出してメインメモリに展開し、データ集約プログラムに従った検出値および動画像の収集処理、ならびに送信処理を実行する。なお、データ集約装置128は、作業機械100の内部に設けられてもよいし外部に設けられてもよい。
【0021】
作業機械100は、複数のセンサを備える。各センサは、計測値をデータ集約装置128に出力する。具体的には、作業機械100は、回転数センサ141、トルクセンサ142、燃料センサ143、パイロット圧センサ144、ブームシリンダヘッド圧センサ145、ブームシリンダボトム圧センサ146、ブームストロークセンサ147、アームストロークセンサ148、バケットストロークセンサ149を備える。
【0022】
回転数センサ141は、エンジン122に設けられ、エンジン122の回転数を計測する。
トルクセンサ142は、エンジン122に設けられ、エンジン122のトルクを計測する。
燃料センサ143は、エンジン122に設けられ、エンジンの消費燃料量(瞬時燃費)を計測する。
【0023】
パイロット圧センサ144は、コントロールバルブ124に設けられ、操作装置126からの各パイロット作動油の圧力(PPC圧)を計測する。具体的には、パイロット圧センサ144は、ブーム131の上げ操作に係るPPC圧(ブーム上げPPC圧)、ブーム131の下げ操作に係るPPC圧(ブーム下げPPC圧)、アーム132の押し操作に係るPPC圧(アーム押しPPC圧)、アーム132の引き操作に係るPPC圧(アーム引きPPC圧)、バケット133の掘削操作に係るPPC圧(バケット掘削PPC圧)、バケット133のダンプ操作に係るPPC圧(バケットダンプPPC圧力)、旋回体120の右旋回操作に係るPPC圧(右旋回PPC圧)、旋回体120の左旋回操作に係るPPC圧(左旋回PPC圧)、左側の無限軌道111の前進操作に係るPPC圧(左前進PPC圧)、左側の無限軌道111の後退操作に係るPPC圧(左後退PPC圧)、右側の無限軌道111の前進操作に係るPPC圧(右前進PPC圧)、および右側の無限軌道111の後退操作に係るPPC圧(右後退PPC圧)を計測する。なお、他の実施形態においては、パイロット圧センサ144に代えて、操作装置126が出力する操作信号を検出する検出器を備えてもよい。
【0024】
ブームシリンダヘッド圧センサ145は、ブームシリンダ134のヘッド側の油室の圧力を計測する。
ブームシリンダボトム圧センサ146は、ブームシリンダ134のボトム側の油室の圧力を計測する。
【0025】
ブームストロークセンサ147は、ブームシリンダ134のストローク量を計測する。
アームストロークセンサ148は、アームシリンダ135のストローク量を計測する。
バケットストロークセンサ149は、バケットシリンダ136のストローク量を計測する。なお、他の実施形態においては、各ストロークセンサに代えて、作業機130の角度を直接測る角度計を備えてもよいし、ブーム131、アーム132、およびバケット133のそれぞれに傾斜計またはIMUを備えてもよい。また他の実施形態においては、撮像装置127が撮像した作業機130が写る画像から作業機130の角度を算出してもよい。
【0026】
データ集約装置128は、各センサの計測値に基づいて、作業機械100の他の状態データを特定してもよい。例えば、データ集約装置128は、ブームシリンダボトム圧センサ146の計測値に基づいて、作業機130の実加重を算出してもよい。また例えばデータ集約装置128は、ブームストロークセンサ147、アームストロークセンサ148およびバケットストロークセンサ149に基づいて、作業機130の揚程を算出してもよい。
【0027】
《ラベリング装置の構成》
図3は、第1の実施形態に係るラベリング装置の構成を示す概略ブロック図である。
ラベリング装置200は、プロセッサ21、メインメモリ22、ストレージ23、インタフェース24を備えるコンピュータである。ラベリング装置200の例としては、PC、スマートフォン、およびタブレット端末などが挙げられる。ラベリング装置200は、どこに設置されてもよい。つまり、ラベリング装置200は、作業機械100に搭載されてもよいし、作業分析装置300に搭載されてもよいし、作業機械100および作業分析装置300と別個に設けられてもよい。ストレージ23は、ラベリングプログラムを記憶する。プロセッサ21は、ラベリングプログラムをストレージ23から読み出してメインメモリ33に展開し、ラベリングプログラムに従った処理を実行する。
【0028】
ストレージ23の例としては、半導体メモリ、ディスクメディアおよびテープメディア等が挙げられる。ストレージ23は、ラベリング装置200の共通通信線に直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース24を介してラベリング装置200に接続される外部メディアであってもよい。ストレージ23は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0029】
プロセッサ21は、ラベリングプログラムの実行により、動画像取得部211、動画像表示部212、ラベル入力部213、ラベルデータ生成部214、ラベルデータ送信部215を備える。
ラベリングプログラムは、ラベリング装置200に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、ラベリングプログラムは、ストレージ23に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、ラベリング装置200は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサによって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0030】
動画像取得部211は、作業分析装置300から動画像を受信する。動画像の各フレーム画像には、撮像時刻を示すタイムスタンプが関連付けられている。
動画像表示部212は、動画像取得部211が取得した動画像をディスプレイに表示させる。
ラベル入力部213は、動画像の再生中に、利用者から、再生タイミングにおいて作業機械100が実行している作業の区分を示すラベル値の入力を受け付ける。
ラベルデータ生成部214は、ラベル入力部213に入力されたラベル値を、入力された再生タイミングを示すタイムスタンプに関連付けたラベルデータを生成する。ラベルデータは、例えば、作業の区分を行とし、時刻を列とする行列であって、その時刻にその区分に係る作業がなされたか否かを表す値を要素に持つ行列であってよい。つまり、ラベルデータは、i列j行目の要素の値wijを、時刻tに区分aに係る作業がなされているときに1とし、時刻tに区分aに係る作業がなされていないときに0とする行列であってよい。
ラベルデータ送信部215は、ラベルデータを作業分析装置300に送信する。
【0031】
《作業の区分の例》
ラベル入力部213に入力される作業の区分の例について説明する。
ラベル入力部213は、利用者から、単位作業に係るラベル値と要素作業に係るラベル値の入力を受け付ける。単位作業とは、一の作業目的を遂行する作業である。要素作業とは、単位作業を構成する要素であって目的別に区分される一連の動作または作業を示す作業である。
【0032】
要素作業の区分の例としては、「掘削」、「積荷旋回」、「排土」、「空荷旋回」、「排土待ち」、「荷台抑え」、「転圧」、「押しならし」、「ホウキ」が挙げられる。
掘削は、バケット133によって土砂または岩石を掘り、削り取る作業である。
積荷旋回は、削り取った土砂または岩石をバケット133に抱えたまま、旋回体120を旋回させる作業である。
排土は、削り取った土砂または岩石を、バケット133から運搬車両または所定の場所に下ろす作業である。
空荷旋回は、バケット133に土砂および岩石が無い状態で、旋回体120を旋回させる作業である。
排土待ちは、削り取った土砂または岩石をバケット133に抱えたまま、積み込むための運搬車両を待機している作業である。
荷台押えは、運搬車両の荷台に積み込んだ土砂を上からバケット133で押えて平らにする作業である。
転圧は、乱れた地盤に対してバケット133で土砂を押し込み、地盤を成形し、また強化する作業である。
押しならしは、バケット133の底面で土砂を払い均す作業である。
ホウキは、バケット133の側面で土砂を払い均す作業である。なお、ホウキは、作業機130に負荷がかかる作業であるが、後述する作業特定方法によって、作業機に負荷がかかる非推奨作業を特定することができる。
【0033】
単位作業の区分の例としては、「掘削積込」、「溝掘削」、「埋戻し」、「すき取り」、「法面(上から)」、「法面(下から)」、「積荷集め」、「走行」、「停車」が挙げられる。
掘削積込は、土砂または岩石を掘り、削り取り、削り取った土砂または岩石を運搬車両の荷台に積み込む作業である。掘削積込は、掘削、積荷旋回、排土、空荷旋回、排土待ちおよび荷台押えで構成される単位作業である。
溝掘削は、地盤を溝状に細長く掘り、削り取る作業である。溝掘削は、掘削、積荷旋回、排土、および空荷旋回で構成され、押しならしを含み得る単位作業である。
埋戻しは、地盤に既に空いている溝または穴に土砂を入れて平らに埋め戻す作業である。埋戻しは、掘削、積荷旋回、排土、転圧、および空荷旋回で構成され、押しならしおよびホウキを含み得る単位作業である。
すき取りは、地面の余分な起伏を所定の高さにするため平らに削り取る作業である。すき取りは、掘削および排土、または掘削、積荷旋回、排土、および空荷旋回で構成され、押しならしおよびホウキを含み得る単位作業である。
法面(上から)は、対象箇所の上方に位置する作業機械100によって斜面を作る作業である。法面(上から)は、転圧、掘削、積荷旋回、排土、空荷旋回で構成され、押しならしを含み得る単位作業である。
法面(下から)は、対象箇所の下方に位置する作業機械100によって斜面を作る作業である。法面(下から)は、転圧、掘削、積荷旋回、排土、空荷旋回で構成され、押しならしを含み得る単位作業である。
積荷集めは、掘削等によって出た土砂を、運搬車両に積む前に集めておく作業である。積荷集めは、掘削、積荷旋回、排土、空荷旋回で構成され、押しならしを含み得る単位作業である。
走行は、作業機械100を移動させる作業である。単位作業としての走行は、要素作業としての走行から構成される単位作業である。
停車は、バケット133に土砂および岩石が無く、かつ所定時間以上停止している状態である。単位作業としての停車は、要素作業としての停車から構成される単位作業である。
【0034】
なお、「掘削積込」、「溝掘削」、「埋戻し」、「すき取り」、「法面(上から)」、および「法面(下から)」、は、仕事の直接的な目的に寄与する作業である主体作業である。「積荷集め」、「走行」は、主体作業を行うために必要となる作業である付帯作業である。
【0035】
《作業分析装置の構成》
図4は、第1の実施形態に係る作業分析装置の構成を示す概略ブロック図である。
作業分析装置300は、プロセッサ31、メインメモリ33、ストレージ35、インタフェース37を備えるコンピュータである。ストレージ35は、作業分析プログラムを記憶する。プロセッサ31は、作業分析プログラムをストレージ35から読み出してメインメモリ33に展開し、作業分析プログラムに従った処理を実行する。なお、第1の実施形態に係る作業分析装置300は、作業機械100の外部に設けられるが、他の実施形態においては作業分析装置300は、機能の一部または全部が作業機械100の内部に設けられてもよい。
【0036】
ストレージ35の例としては、半導体メモリ、ディスクメディアおよびテープメディア等が挙げられる。ストレージ35は、作業分析装置300の共通通信線に直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース37を介して作業分析装置300に接続される外部メディアであってもよい。ストレージ35は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0037】
プロセッサ31は、作業分析プログラムの実行により、状態データ取得部311、動画像取得部312、ラベルデータ取得部313、学習部314、作業特定部315、平滑化部316、期間特定部317、指標値特定部318、掘削積込グラフ生成部319、出力部320を備える。またプロセッサ31は、作業分析プログラムの実行により、メインメモリ33に状態データ記憶部331、動画像記憶部332、ラベルデータ記憶部333、モデル記憶部334の記憶領域を確保する。
作業分析プログラムは、作業分析装置300に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、作業分析プログラムは、ストレージ35に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、作業分析装置300は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLDなどのカスタムLSIを備えてもよい。PLDの例としては、PAL、GAL、CPLD、FPGAが挙げられる。この場合、プロセッサによって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0038】
状態データ取得部311は、作業機械100のデータ集約装置128から作業機械100の状態を示す状態データの時系列を取得する。つまり、状態データ取得部311は、タイムスタンプと状態データの複数の組み合わせを取得する。状態データは、作業機械100の各センサの計測値および計測値に基づいてデータ集約装置128が求めた値を含んでよい。状態データ取得部311は、取得した状態データの時系列を、作業機械100のIDに関連付けて状態データ記憶部331に記憶させる。
【0039】
動画像取得部312は、作業機械100のデータ集約装置128から撮像装置127が撮像した動画像を取得する。動画像取得部312は、取得した動画像を作業機械100のIDに関連付けて動画像記憶部332に記憶させる。
【0040】
ラベルデータ取得部313は、ラベリング装置200から単位作業のラベルデータと要素作業のラベルデータとを取得する。ラベルデータ取得部313は、撮像装置127のフレーム周期と各センサの検出周期とが異なる場合、ラベルデータのタイムスタンプと状態データのタイムスタンプとを一致させる。例えば、ラベルデータ取得部313は、ラベルデータのタイムスタンプが、状態データのタイムスタンプに一致するように、ラベルデータの時系列を再構成する。ラベルデータ取得部313は、取得したラベルデータの時系列を作業機械100のIDに関連付けてラベルデータ記憶部333に記憶させる。つまり、ラベルデータ取得部313は、タイムスタンプとラベルデータの複数の組み合わせを、それぞれ作業機械100のIDに関連付けてラベルデータ記憶部333に記憶させる。
【0041】
学習部314は、状態データ記憶部331が記憶する状態データの時系列と、ラベルデータ記憶部333が記憶するラベルデータの時系列との組み合わせを教師データとして、状態データの時系列を入力して、作業の区分の時系列を出力するように予測モデルを学習させる。予測モデルの例としては、ニューラルネットワークモデル、決定木モデル、サポートベクターマシンモデルなどが挙げられる。学習部314は、学習済みの予測モデルをモデル記憶部334に記憶させる。
【0042】
作業特定部315は、状態データ取得部311が取得した新たな状態データの時系列と、モデル記憶部334が記憶する予測モデルとに基づいて、作業の区分に係る尤度の時系列を得る。例えば、作業特定部315は、以下の手順で作業の区分に係る尤度の時系列を得る。作業特定部315は、状態データの時系列から、作業を特定する時点の状態データを取得する。次に作業特定部315は、取得した状態データに基づいて各作業の区分の尤度を特定し結果を取得する。作業特定部315は、各時点について特定した作業の区分の尤度を時系列として集計する。
具体的には、作業特定部315は、作業の区分を行とし、時刻を列とする行列であって、その時刻にその区分に係る作業の尤度を要素に持つ行列を得る。つまり、尤度の時系列は、i列j行目の要素の値wijを、時刻tにおける作業が区分aに係る作業である尤度とする行列であってよい。作業特定部315は、単位作業に係る尤度の時系列を得ることで、作業機械100による単位作業の区分を特定する。作業特定部315は、要素作業に係る尤度の時系列を得ることで、作業機械100による要素作業の区分を特定する。
【0043】
平滑化部316は、作業特定部315が得た作業の区分ごとの尤度の時系列の平滑化処理を行う。例えば、平滑化部316は、尤度の時系列を時間平均フィルタに掛けることで、尤度の時系列を平滑化する。つまり、平滑化部316は、単位作業の尤度の時系列および要素作業の尤度の時系列のそれぞれについて、単位時間当たりの代表値を特定する。
このとき、要素作業に係る時間平均フィルタの窓関数の大きさ(単位時間の長さ)は、単位作業に係る時間平均フィルタの窓関数の大きさより小さい。なお、平滑化の方法は時間平均に限られないが、要素作業に係る窓関数の大きさは単位作業に係る窓関数の大きさより小さいことが好ましい。これは、単位作業が要素作業によって構成されているように、一の要素作業が継続する時間は一の単位作業が継続する時間より短いためである。
【0044】
期間特定部317は、単位作業に係る尤度の時系列および要素作業に係る尤度の時系列に基づいて、「掘削積込」の始点と終点とを特定する。例えば、掘削積込グラフ生成部319は、「掘削積込」に係る期間における「排土待ち」の終了時刻を掘削積込の始点として特定する。また例えば、掘削積込グラフ生成部319は、「掘削積込」に係る期間における「荷台押え」の開始時刻を掘削積込の終点として特定する。
また期間特定部317は、要素作業に係る尤度の時系列に基づいて、「積荷旋回」の始点と終点とを特定する。
【0045】
なお、単位作業の「掘削積込」は、複数の積込作業によって構成される。1回の「掘削積込」は、例えば「排土」または「荷台押え」に基づいて判定される。例えば、指標値特定部318は、掘削積込に係る期間において「積荷旋回」が支配的な期間における旋回角および燃費を特定する。
【0046】
指標値特定部318は、状態データ取得部311が取得した状態データの時系列に基づいて、期間特定部317によって特定された一の「掘削積込」について、「積荷旋回」に関する作業機械100の状態の指標値を求める。状態の指標値の例としては、要素作業の開始時に旋回体120が向く方位から終了時に旋回体120が向く方位までの旋回角、開始時から終了時までの燃費などが挙げられる。
また、指標値特定部318は、状態データ取得部311が取得した状態データの時系列に基づいて、特定された「掘削積込」ごとに、「積荷旋回」に関する作業機械100の状態の指標値の統計量を求め、運搬車両ごとの掘削積込について、当該指標値を表すグラフを生成する。指標値の統計量の例としては、要素作業における平均旋回角および平均燃費などが挙げられる。
【0047】
図5は、掘削積込ごとの平均旋回角および平均燃費を表すグラフの例を示す図である。
図6は、掘削積込に係る積込回ごとの旋回角および燃費を表すグラフの例を示す図である。
掘削積込グラフ生成部319は、指標値特定部318が特定した指標値および指標値の統計量に基づいて、1サイクルの「掘削積込」ごとの作業機械100の状態の指標値の統計量を示すグラフを生成する。掘削積込における1サイクルとは、作業機械100が運搬車両へ土砂の積込を開始してから、複数回の積荷旋回を経て、土砂の積込を終了するまでの作業をいう。例えば、掘削積込グラフ生成部319は、図5に示すような1サイクルの掘削積込ごとの平均旋回角および平均燃費を表すグラフを生成する。図5の縦軸は、1サイクルの掘削積込の完了時刻を表し、横軸は、平均旋回角および平均燃費を表す。
また掘削積込グラフ生成部319は、指標値特定部318が特定した指標値および指標値の統計量に基づいて、ある1サイクルの「掘削積込」における積込回ごとの作業機械100の状態の指標値を示すグラフを生成する。例えば、掘削積込グラフ生成部319は、図6に示すような1サイクルの掘削積込に係る積込回ごとの旋回角および燃費を表すグラフを生成する。図6に示す例は、図5の複数の「掘削積込」のうち、10:31に係る「掘削積込」における積込回ごとの作業機械100の状態の指標値を示す。また、図6に示す例においては、掘削積込を開始してから5回の積荷旋回で運搬車両の積載量が最大積載量に達し、掘削積込を終了している。たとえば、図6に示す例においては、2回目の積込における旋回角が123.5度、3回目の積込における旋回角が106.5度、4回目の積込における旋回角が96.5度、5回目の積込における旋回角が101.5度であることから、平均旋回角は、107.0度となる。つまり、10:31に係る「掘削積込」における平均旋回角は、図5に示すように107.0度である。同様に、図6に示す例においては、1回目の積込における燃費が8.75L/H、2回目の積込における燃費が15.55L/H、3回目の積込における燃費が14.35L/H、4回目の積込における燃費が13.25L/H、5回目の積込における燃費が13.25L/Hであることから、平均燃費は、13.0L/Hとなる。つまり、10:31に係る「掘削積込」における平均燃費は、図5に示すように13.0L/Hである。
なお、第1の実施形態に係る掘削積込グラフ生成部319は、積込回ごとの指標値を表すグラフとして、旋回角および燃費を表すグラフを生成するが、これに限られず、旋回角および燃費のいずれか一方の指標値を表してもよい。また掘削積込グラフ生成部319は、掘削積込に係る時間などの他の指標値を表すグラフを生成してもよい。また、掘削積込グラフ生成部319は、複数種類の指標値の組み合わせを適宜組み合わせてグラフを生成してもよい。組み合わせの数も2種類に限られず、掘削積込グラフ生成部319は、3種類以上を組み合わせたグラフを生成してもよい。
【0048】
出力部320は、掘削積込グラフ生成部319が生成した掘削積込に係る作業機械100の指標値を表すグラフを出力する。出力部320による出力は、例えば、ディスプレイへの表示、プリンタによる紙等のシートへの印刷、ネットワークを介して接続される外部サーバへの送信、インタフェース37に接続された外部記憶媒体への書き込みなどが挙げられる。これにより、解析者等は、作業された時刻と異なる時刻に、別の場所で、俯瞰的に作業内容の解析を行うことができる。
【0049】
《学習方法》
作業分析装置300は、一の作業機械100の作業分析を実行する前に、予め、予測モデルを生成しておく。
図7は、第1の実施形態に係る作業分析装置の学習処理を示すフローチャートである。
【0050】
作業分析装置300の状態データ取得部311は、複数の作業機械100のそれぞれから、当該作業機械100の状態データの時系列を受信する(ステップS1)。状態データ取得部311は、受信した状態データの時系列を、作業機械100のIDに関連付けて状態データ記憶部331に記憶させる(ステップS2)。また動画像取得部312は、複数の作業機械100のそれぞれから、当該作業機械100の撮像装置127が撮像した動画像を受信する(ステップS3)。動画像取得部312は、受信した動画像を、作業機械100のIDに関連付けて動画像記憶部332に記憶させる(ステップS4)。
【0051】
ラベリング装置200は、動画像記憶部332に記憶された動画像を取得し、利用者の操作によってラベルデータを生成する。ラベリング装置200は、生成したラベルデータを作業機械100のIDに関連付けて作業分析装置300に送信する。ラベリング装置200は、上記処理により複数の動画像それぞれについて、単位作業のラベルデータおよび要素作業のラベルデータを生成する。
【0052】
作業分析装置300のラベルデータ取得部313は、ラベリング装置200から複数のラベルデータを受信する(ステップS5)。ラベルデータ取得部313は、複数のラベルデータを、それぞれ作業機械100のIDに関連付けてラベルデータ記憶部333に記憶させる(ステップS6)。
【0053】
次に、学習部314は、状態データ記憶部331が記憶する複数の状態データの時系列と、ラベルデータ記憶部333が記憶する複数の単位作業のラベルデータとを教師データとして単位作業予測モデルを学習させ(ステップS7)、学習された単位作業予測モデルをモデル記憶部334に記憶させる(ステップS8)。また、学習部314は、状態データ記憶部331が記憶する複数の状態データの時系列と、ラベルデータ記憶部333が記憶する複数の要素作業のラベルデータとを教師データとして要素作業予測モデルを学習させ(ステップS9)、学習された要素作業予測モデルをモデル記憶部334に記憶させる(ステップS10)。なお、他の実施形態においては、学習部314は、単位作業と要素作業のうちいずれか一方に係る予測モデルのみを学習するものであってもよい。
このとき、学習部314は、状態データの時系列を入力とし、ラベルデータ(作業の区分ごとの時系列を示す行列)を出力とするように予測モデルを学習させる。
【0054】
《作業分析方法》
作業分析装置300は、上記の準備が完了すると、任意の作業機械100の作業を分析することができる。
図8は、第1の実施形態に係る作業分析装置による作業分析方法を示すフローチャートである。
【0055】
作業分析装置300の状態データ取得部311は、一の作業機械100から状態データの時系列を受信する(ステップS51)。次に、作業特定部315は、受信した状態データの時系列を、モデル記憶部334が記憶する単位作業予測モデルに入力することで、単位作業に係る尤度の時系列を得る(ステップS52)。これにより作業特定部315は、時系列に係る各時刻における単位作業を特定する。また作業特定部315は、受信した状態データの時系列を、モデル記憶部334が記憶する要素作業予測モデルに入力することで、要素作業に係る尤度の時系列を得る(ステップS53)。平滑化部316は、単位作業に係る尤度の時系列および要素作業に係る尤度の時系列を、それぞれ時間平均フィルタに掛けることで、尤度の時系列を平滑化する(ステップS54)。
【0056】
図9は、単位作業に係る尤度の時系列および要素作業に係る尤度の時系列を表すヒートマップの例を示す図である。
図9のヒートマップH1は、単位作業に係る尤度の時系列を表す。図9のヒートマップH2は、要素作業に係る尤度の時系列を表す。図9に示すように、単位作業に係る尤度の時系列および、要素作業に係る尤度の時系列によれば、複数の単位作業または複数の要素作業を複合的に行う作業状態や、異なる作業の区分へシームレスに移る作業状態は、同時刻において複数の作業の区分の尤度が高い状態として表れる。
【0057】
次に、期間特定部317は、平滑化された単位作業に係る尤度の時系列に基づいて、「掘削積込」の尤度が支配的な期間を特定する(ステップS55)。次に、期間特定部317は、特定した期間において、「排土待ち」の尤度が支配的な複数の期間および「荷台押え」の尤度が支配的な複数の期間を特定する(ステップS56)。期間特定部317は、「排土待ち」の尤度が支配的な期間の終了時刻から、「荷台押え」の尤度が支配的な期間の開始時刻までの期間を、それぞれ一の運搬車両について掘削積込を行っている期間と特定する(ステップS57)。つまり、期間特定部317は、「排土待ち」の尤度が支配的な期間の終了時刻を、一の運搬車両について掘削積込を行っている期間の始点と特定し、「荷台押え」の尤度が支配的な期間の開始時刻を、一の運搬車両について掘削積込を行っている期間の終点と特定する。
【0058】
作業分析装置300は、特定した「掘削積込」に係る期間を1つずつ選択し、選択した期間について以下のステップS59からステップS65の処理を実行する(ステップS58)。
期間特定部317は、選択された「掘削積込」に係る期間のうち、要素作業が「積荷旋回」に係る複数の期間、および要素作業が「空荷旋回」に係る複数の期間を特定する(ステップS59)。
【0059】
指標値特定部318は、状態データ取得部311が取得した状態データの時系列から、「積荷旋回」に係る期間の始点から、「空荷旋回」に係る期間の終点までの各期間におけるエンジン122の消費燃料量を特定する(ステップS60)。指標値特定部318は、特定した消費燃料量に基づいて、積込作業ごとの燃費を特定する(ステップS61)。
指標値特定部318は、状態データ取得部311が取得した状態データの時系列から、「積荷旋回」に係る各期間の始点および終点における旋回体120の方位を特定する(ステップS62)。旋回体の方位は、例えば作業機械100が備える2つのGNSSアンテナにおける測位情報の差によって、またはポテンショメータによる計測によって求めることができる。指標値特定部318は、各期間の始点に係る方位と終点に係る方位の差に基づいて、積込作業ごとの旋回角を特定する(ステップS63)。
掘削積込グラフ生成部319は、図6に示すように積込作業ごとの燃費および旋回角の変化を表すグラフを生成する(ステップS64)。
【0060】
また、指標値特定部318は、ステップS61で特定した積込作業ごとの消費燃料量およびステップS63で特定した積込作業ごとの旋回角に基づいて、選択した期間に係る「掘削積込」の平均旋回角および平均燃費を特定する(ステップS65)。
【0061】
作業分析装置300が、各「掘削積込」に係る期間について、ステップS59からステップS65の処理を実行すると、掘削積込グラフ生成部319は、図5に示すように掘削積込ごとの平均燃費および平均旋回角の変化を表すグラフを生成する(ステップS66)。出力部320は、掘削積込グラフ生成部319がステップS64およびステップS66で生成したグラフを出力する(ステップS67)。
【0062】
《作用・効果》
このように、第1の実施形態によれば、作業分析装置300は、作業機械100の状態を示す状態データに基づいて作業機械が実行した作業の区分を特定し、所定の区分に係る期間の始点から終点までの作業機械100の状態の指標値を特定する。これにより、利用者は、特定した作業機械100の状態の指標値を評価材料として、オペレータの評価または作業の解析に用いることができる。なお、第1の実施形態に係る作業分析装置300は、図7に示すステップS1からステップS10の処理、および図8に示すステップS51からステップS67の処理を実行するが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、ステップS1からステップS10の処理、ならびに、ステップS52からステップS56、ステップS58からステップS59、およびステップS64からステップS67の処理が実施されなくてもよい。また、作業分析装置300は、S60およびS61、またはS62およびS63のうち、いずれか一方の処理を実行するものであってもよい。また、作業機械100は、撮像装置127、回転数センサ141、トルクセンサ142、燃料センサ143、パイロット圧センサ144、ブームシリンダヘッド圧センサ145、ブームシリンダボトム圧センサ146、ブームストロークセンサ147、アームストロークセンサ148、バケットストロークセンサ149を備えなくてもよい。
【0063】
例えば、図5に示すグラフを参照すると、10時56分以降の平均旋回角のばらつきは、10時53分以前の間の平均旋回角のばらつきより大きくなっていることがわかる。このことから、10時53分までの掘削積込作業においては、予め積荷集めなどの付帯作業がなされており、所定の位置に運搬車両に積み込むべき土砂の山が十分に集められていたことが読み取れる。他方、10時56分以降の掘削積込作業においては、積荷集めによって集められた土砂がそれまでの掘削積込作業でなくなり、積み込むべき土砂をその場で掘削しながら積込を行うことで、効率が低下していることが読み取れる。したがって、積込掘削作業ごとの平均旋回角のばらつきにより、オペレータによる付帯作業の質を評価し、また必要となる付帯作業を検討することができる。
【0064】
また例えば、図6に示すグラフを参照すると、1回の積込作業における旋回角が大きいほど、燃費が悪いことが分かる。なお、図6のグラフにおいて1回目の積込作業において旋回角が記録されていないのは、掘削積込の始点において作業機械100が排土待ちの状態にあり、積荷旋回を行っていないためである。このことから、作業機械100の旋回角が大きいほど燃料効率が悪くなるという関係を読み取ることができる。なお、1回目の掘削積込の始点における作業機械100の状態が排土待ちでない場合には、1回目の積込作業の旋回角も記録され得る。
このように、利用者は、作業機械100の状態の指標値を評価材料とすることで、多角的に解析を行うことができる。
【0065】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。
【0066】
上述した実施形態においては、作業分析装置300は、単位作業の区分のうち「掘削積込」、および要素作業のうち「積荷旋回」について、作業機械100の状態の指標値を求めるが、これに限られない。他の実施形態に係る作業分析装置300は、他の作業の区分について作業機械100の状態の指標値を求めてもよい。
例えば、作業分析装置300は、溝掘削作業における掘削から排土までの作業機械100の状態の指標値を求めてもよい。これにより、利用者は、オペレータの溝掘削作業における評価または溝掘削作業の解析を行うことができる。
また例えば、作業分析装置300は、法面の転圧作業において作業機130の連続動作に係る距離を求めてもよい。作業機130の連続動作とは、ブーム131、アーム132、およびバケット133の少なくとも1つへの操作が無い状態から、ブーム131、アーム132、およびバケット133のすべてへの操作がなされている状態を経て、ブーム131、アーム132、およびバケット133の少なくとも1つへの操作が無くなるまでの状態をいう。法面の転圧作業において、オペレータは、バケット133の角度を法面の目標角度と一致させながら、法面に沿ってバケット133を移動させる必要がある。経験の少ないオペレータは、バケット133を少しずつ移動させ、都度バケット133の角度を調整するため、作業機130の連続動作の距離が短くなる傾向にある。他方、熟練のオペレータは、ブーム131、アーム132、およびバケット133を同時に調整して、法面に沿ってバケット133を移動させつつ、バケット133の角度を目標角度と一致させるため、作業機130の連続動作の距離が長くなる傾向にある。これにより、利用者は、オペレータの法面作業における評価または溝掘削作業の解析を行うことができる。
【0067】
上述した実施形態においては、作業分析装置300は、指標値の統計量として、指標値の平均値を求めるが、これに限られない。他の実施形態に係る作業分析装置300は、中央値、最大値、最小値などの他の代表値を求めてもよいし、範囲および標準偏差などの散布度を求めてもよい。代表値および散布度は、統計量の一例である。
【0068】
上述した実施形態においては、作業機械100のデータ集約装置128が、各センサの計測値を作業分析装置300に送信し、作業分析装置300がこれに基づいて作業の区分を特定するが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、データ集約装置128が各センサの計測値に基づいて作業の区分を特定してもよい。例えば、他の実施形態においては、作業分析装置300によって生成された予測モデルをデータ集約装置128に記憶させ、データ集約装置128が当該予測モデルを用いて作業の区分を特定してもよい。つまり、他の実施形態においては、作業分析装置300がデータ集約装置128に実装されてもよい。この場合、データ集約装置128は、作業機械100に搭載されるディスプレイに、リアルタイムに現在の作業の区分の分析結果を表示させてもよい。これにより、オペレータは、作業の区分を認識しながら作業を行うことができる。
【0069】
上述した実施形態に係る作業分析装置300は、各作業の区分の尤度の時系列を特定するが、他の実施形態においてはこれに限られず、各作業の区分の真偽値の時系列を特定してもよい。この場合においても、作業分析装置300は、特定された時系列を平滑化することにより、作業の区分の尤度の時系列を得ることができる。
【0070】
また、上述した実施形態に係るラベリング装置200は、利用者の操作に基づいてラベルデータを生成するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係るラベリング装置200は、画像処理等によって自動的にラベルデータを生成してもよい。
【0071】
また、上述した実施形態に係る作業分析装置300は、学習済みの予測モデルに基づいて作業機械100の作業の区分を特定するがこれに限られない。例えば、他の実施形態に係る作業分析装置300は、機械学習によらないプログラムに基づいて作業機械100の作業の区分を特定してもよい。機械学習によらないプログラムとは、状態データの入力に基づき予め規定する操作の組み合わせから作業区分を特定するプログラムである。例えば、作業分析装置300は、ブーム131の上げ操作および下げ操作、アーム132の押し操作および引き操作、バケット133の掘削操作およびダンプ操作、旋回体120の右旋回操作および左旋回操作、ならびに走行体110の前進操作および後退操作の状態に基づいて作業区分を特定してもよい。具体的には、作業分析装置300は、アーム132の引き操作とバケット133の掘削操作が同時になされているときの要素作業を「掘削」と特定してよい。また作業分析装置300は、ブーム131の上げ操作と旋回体120の旋回操作が同時になされているときの要素作業を「積荷旋回」と特定してよい。また作業分析装置300は、「積荷旋回」の後にバケット133のダンプ操作がなされているときの要素作業を「排土」と特定してよい。また作業分析システム1は、ブーム131の下げ操作と旋回体120の旋回操作が同時になされているときの要素作業を「空荷旋回」と特定してよい。この場合、作業分析システム1は、撮像装置127、ラベリング装置200、動画像取得部312、ラベルデータ取得部313、学習部314、動画像記憶部332、およびラベルデータ記憶部333を備えなくてもよい。
【0072】
また、上述した実施形態に係る作業分析装置300は、複数のセンサの検出値、または検出値に基づいて計算された値に基づいて作業の区分を推定するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る作業分析装置300は、撮像装置127が撮像した動画像に基づいて、作業の区分を推定してもよい。つまり、撮像装置127が撮像した画像は、作業機械100の状態を表す状態データの一例となりうる。また、上述した実施形態に係る作業分析装置300は、単位作業に係る尤度の時系列および要素作業に係る尤度の時系列に基づいて、単位作業の始点と終点とを特定するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る作業分析装置300は、撮像装置127が撮像した動画像に基づいて、単位作業の始点と終点とを特定を特定してもよい。
【0073】
また、上述した実施形態に係るデータ集約装置128は、状態データをタイムスタンプに関連付けて記憶部に記憶しておき、状態データの時系列として作業分析装置300に送信するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係るデータ集約装置128は、収集した状態データを、逐次タイムスタンプに関連付けて作業分析装置300に送信してもよい。この場合、作業分析装置300は、状態データとタイムスタンプの組み合わせを逐次取得し、時系列として集計する。
【符号の説明】
【0074】
1…作業分析システム 100…作業機械 200…ラベリング装置 300…作業分析装置 110…走行体 120…旋回体 130…作業機 111…無限軌道 112…走行モータ 131…ブーム 132…アーム 133…バケット 134…ブームシリンダ 135…アームシリンダ 136…バケットシリンダ P1…ブームピン P2…アームピン P3…バケットピン 121…運転室 122…エンジン 123…油圧ポンプ 124…コントロールバルブ 125…旋回モータ 126…操作装置 127…撮像装置 128…データ集約装置 141…回転数センサ 142…トルクセンサ 143…燃料センサ 144…パイロット圧センサ 145…ブームシリンダヘッド圧センサ 146…ブームシリンダボトム圧センサ 147…ブームストロークセンサ 148…アームストロークセンサ 149…バケットストロークセンサ 21…プロセッサ 22…メインメモリ 23…ストレージ 24…インタフェース 211…動画像取得部 212…動画像表示部 213…ラベル入力部 214…ラベルデータ生成部 215…ラベルデータ送信部 31…プロセッサ 33…メインメモリ 35…ストレージ 37…インタフェース 311…状態データ取得部 312…動画像取得部 313…ラベルデータ取得部 314…学習部 315…作業特定部 316…平滑化部 317…期間特定部 318…指標値特定部 319…掘削積込グラフ生成部 320…出力部 331…状態データ記憶部 332…動画像記憶部 333…ラベルデータ記憶部 334…モデル記憶部
図1
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図9