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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】コンロバーナー
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/06 20060101AFI20221114BHJP
   F23N 5/24 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
F23D14/06 C
F23N5/24 106A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018201889
(22)【出願日】2018-10-26
(65)【公開番号】P2020067259
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【弁理士】
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】浅井 一浩
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕康
(72)【発明者】
【氏名】武田 和也
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-020705(JP,A)
【文献】実開平01-038433(JP,U)
【文献】特開2008-008596(JP,A)
【文献】特開平09-329308(JP,A)
【文献】特開2017-125637(JP,A)
【文献】特開昭62-272015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/06
F23N 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと燃焼用空気との混合ガスを燃焼させて調理容器内の調理物を加熱調理するコンロバーナーにおいて、
前記燃料ガスと前記燃焼用空気とを混合して前記混合ガスを形成する混合通路と、
前記混合通路の一端側の開口端から、前記混合通路内に前記燃料ガスを噴射する噴射ノズルと、
前記混合通路の前記開口端に対する他端側が接続されて、前記混合通路内で形成された前記混合ガスが流入するバーナーボディと、
前記バーナーボディに形成された円環形状の載置面の上に載置されて、前記混合ガスが流出する複数の炎口が開口するバーナーヘッドと、
前記炎口から流出する前記混合ガスに点火する点火手段と、
前記複数の炎口の中の一部の炎口に対して設けられ、前記一部の炎口で形成された前記混合ガスの炎を検知する炎検知手段と
を備え、
前記バーナーヘッドは、
前記載置面に載置される部分には、前記載置面に当接することによって前記複数の炎口を形成することとなる複数本の炎口溝が形成されており、
円環形状の前記載置面よりも内側の位置には、前記載置面の内径よりも小径の円筒部が下方に向けて突設されており、
記混合通路内の前記混合ガスは、前記円筒部と前記載置面との間に半径方向に形成された隙間を通過する導入通路によって、前記炎口まで導れており、
前記炎検知手段で前記混合ガスの炎が検知される前記炎口である炎検知炎口の前記導入通路は、前記円筒部の外側面から半径方向外側に向けて突設された凸部によって、前記円筒部と前記載置面との前記隙間の部分が他の前記炎口の前記導入通路に比べて狭く形成されており、
前記載置面には、前記バーナーヘッドが当接する箇所よりも外側の位置を一周し、且つ、周方向に向かって水平な外周部分が形成されている
ことを特徴とするコンロバーナー。
【請求項2】
請求項1に記載のコンロバーナーにおいて、
前記バーナーボディの前記載置面は、前記円環形状の内側に向かって下向きに傾斜しており、
前記炎検知炎口の前記導入通路は、前記載置面を延長した面よりも下方に位置する箇所の一部が、他の前記炎口の前記導入通路に比べて狭く形成されている
ことを特徴とするコンロバーナー。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のコンロバーナーにおいて、
前記バーナーヘッドの外周側面には、複数の前記炎口が水平方向に配列した状態で開口しており、
前記炎検知炎口が開口している部分の前記外周側面は、他の前記炎口が開口している部分の前記外周側面に対して凹形状に形成されている
ことを特徴とするコンロバーナー。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載のコンロバーナーにおいて、
前記導入通路の少なくとも一部は、前記バーナーヘッドと前記バーナーボディとに挟まれることによって形成されており、
前記炎検知炎口の前記導入通路は、他の前記炎口の前記導入通路に比べて、前記バーナーヘッドまたは前記バーナーボディの少なくとも一方が他方に向けて凸状に形成されることによって、狭く形成されている
ことを特徴とするコンロバーナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスと燃焼用空気との混合ガスを燃焼させて調理容器内の調理物を加熱調理するコンロバーナーに関する。
【背景技術】
【0002】
鍋などの調理容器を用いて調理物を加熱調理するためには、いわゆるガスコンロが広く使用されている。このガスコンロには、調理容器を載せるための五徳と、五徳の下方で燃料ガスを燃焼させるためのコンロバーナーが搭載されており、コンロバーナーで燃料ガスを燃焼させた時に生じる燃焼熱で調理容器を加熱することによって、調理容器内の調理物を加熱調理するようになっている。
【0003】
また、コンロバーナーには、燃料ガスと空気とを混合させる混合通路と、混合通路で混合した燃料ガスと空気との混合ガスを燃焼させるためのバーナーヘッドとが設けられている。混合通路の一端側は開口端となっており、この開口端に噴射ノズルから燃料ガスを噴射すると、噴射された燃料ガスが周囲の空気を巻き込みながら混合通路に流入する。そして、混合通路の中を流れる間に燃料ガスと空気とが混合して混合ガスが形成された後、バーナーヘッドに形成された複数の炎口から流出する。この炎口から流出する混合ガスに火花を飛ばして点火すると、コンロバーナーで混合ガスの燃焼が開始される。
【0004】
ここで、調理容器内の調理物を加熱調理していると、煮汁が噴きこぼれてコンロバーナーに掛かり、固化した煮汁によってバーナーヘッドの炎口が閉塞されることがある。バーナーヘッドには複数の炎口が形成されているため、全ての炎口が閉塞することは無いが、閉塞された炎口が多くなる程、混合ガスは流出しにくくなる。このため、閉塞された炎口が多くなると、噴射ノズルから燃料ガスを噴射して、混合通路内で混合ガスを形成しても、全ての混合ガスを炎口から流出させることができなくなって、一部の混合ガスが混合通路内を逆流し、その結果、上流側の開口端から炎が溢れ出る「逆火」と呼ばれる現象を生じさせることがある。そこで、混合通路の開口端側に感熱素子を設けておき、開口端から溢れ出た炎による温度上昇を検知することによって、逆火の発生を検知する技術が提案されている。更には、開口端から炎が溢れ出た状態の逆火に加えて、開口端から炎が溢れ出る前の軽度の逆火も検知できるようにした技術も提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-125637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した提案の技術では、逆火の発生を未然に防止することができないという問題があった。すなわち、逆火は炎の侵入が想定されていない混合通路の内部を炎が逆流する現象であるため、たとえ軽度の逆火であっても好ましい現象ではない。ところが、上述した提案の技術では、逆火が発生した後でなければ、逆火の発生を検知することができないという問題があった。
【0007】
この発明は、従来の技術における上述した課題を解決するためになされたものであり、逆火が発生する前の段階で、逆火が発生する予兆を検知することが可能なコンロバーナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明のコンロバーナーは次の構成を採用した。すなわち、
燃料ガスと燃焼用空気との混合ガスを燃焼させて調理容器内の調理物を加熱調理するコンロバーナーにおいて、
前記燃料ガスと前記燃焼用空気とを混合して前記混合ガスを形成する混合通路と、
前記混合通路の一端側の開口端から、前記混合通路内に前記燃料ガスを噴射する噴射ノズルと、
前記混合通路の前記開口端に対する他端側が接続されて、前記混合通路内で形成された前記混合ガスが流入するバーナーボディと、
前記バーナーボディに形成された円環形状の載置面の上に載置されて、前記混合ガスが流出する複数の炎口が開口するバーナーヘッドと、
前記炎口から流出する前記混合ガスに点火する点火手段と、
前記複数の炎口の中の一部の炎口に対して設けられ、前記一部の炎口で形成された前記混合ガスの炎を検知する炎検知手段と
を備え、
前記バーナーヘッドは、
前記載置面に載置される部分には、前記載置面に当接することによって前記複数の炎口を形成することとなる複数本の炎口溝が形成されており、
円環形状の前記載置面よりも内側の位置には、前記載置面の内径よりも小径の円筒部が下方に向けて突設されており、
記混合通路内の前記混合ガスは、前記円筒部と前記載置面との間に半径方向に形成された隙間を通過する導入通路によって、前記炎口まで導れており、
前記炎検知手段で前記混合ガスの炎が検知される前記炎口である炎検知炎口の前記導入通路は、前記円筒部の外側面から半径方向外側に向けて突設された凸部によって、前記円筒部と前記載置面との前記隙間の部分が他の前記炎口の前記導入通路に比べて狭く形成されており、
前記載置面には、前記バーナーヘッドが当接する箇所よりも外側の位置を一周し、且つ、周方向に向かって水平な外周部分が形成されている
ことを特徴とする。
【0009】
かかる本発明のコンロバーナーにおいては、混合通路の開口端の反対側がバーナーボディに接続されていると共に、バーナーボディにはバーナーヘッドが載置される円環形状の載置面が形成されている。また、バーナーヘッドには、バーナーボディの載置面に載置される部分に、複数本の炎口溝が形成されてお、バーナーボディの載置面にバーナーヘッドを載置することによって、バーナーヘッドに複数の炎口が形成されている。更に、バーナーヘッドには、円環形状の載置面よりも内側の位置に、載置面の内径よりも小径の円筒部が下方に向けて突設されており、バーナーヘッドを載置面に載置すると円筒部と載置面との間に半径方向の隙間が形成される。混合通路内で形成された混合ガスは、この隙間を通過する導入通路によって、複数の炎口まで導かれるようになっている。そして、混合ガスを複数の炎口から流出させて、炎口の外側で燃焼させることによって調理容器内の調理物を加熱調理する。また、複数の炎口の一部の炎口については、炎口の外側で燃料する混合ガスの炎を検知する炎検知手段が設けられている。そして、この炎検知手段が設けられた炎口(炎検知炎口)に混合ガスを導く導入通路は、バーナーヘッドの円筒部の外側面から半径方向外側に向けて突設された凸部によって、円筒部と載置面との隙間の部分が他の炎口の導入通路よりも狭く形成されている。更に、載置面には、バーナーヘッドが当接する箇所よりも外側の位置を一周し、且つ、周方向に向かって水平な外周部分が形成されている。
【0010】
こうすれば、混合通路内で形成された混合ガスは、導入通路によって複数の炎口まで導かれ、点火手段で点火されることによって燃焼を開始する。また、バーナーヘッドに掛かった煮零れ汁の一部が載置面に達すると、載置面の外周部分を伝わって水平方向に流れていく。このため、バーナーヘッドに煮零れ汁が掛かった位置に拘わらず、炎検知炎口の位置にも確実に煮零れ汁が伝わるようになる。そして、炎検知手段で炎が検知される炎検知炎口の導入通路は、バーナーヘッドの円筒部の外側面から半径方向外側に向けて突設された凸部によって、円筒部と載置面との隙間の部分が他の炎口の導入通路よりも狭く形成されているため、他の炎口に比べて、煮零れ汁によって閉塞し易くなっている。このため、加熱調理中の煮零れによってバーナーヘッドに煮零れ汁が掛かると、他の炎口が閉塞する前に炎検知炎口が閉塞して、炎検知手段で炎が検知できなくなる。この状態、すなわち、炎検知手段で炎が検知できなくなった状態は、煮零れ汁によって炎検知炎口が閉塞しているが、他の炎口は未だ閉塞していないので、逆火には到らない状態となっている。従って、このような状態を検知することで、逆火が発生する前に、逆火の予兆を検知することが可能となる。また、炎検知炎口の導入通路は、円筒部の外側面から半径方向外側に向けて凸部を突設させることによって、円筒部と載置面との隙間の部分が狭くなっている。このため、煮零れが発生する前の状態では、炎検知炎口の導入通路が狭くなった位置を通過した混合ガスが炎検知炎口に達するまでの間に、隣の炎口に供給される混合ガスが合流して炎検知炎口に供給されるので、炎検知炎口でも他の炎口と同程度の大きさの炎を形成することができ、炎検知炎口で確実に炎を検知することができる。その一方で、煮零れが発生すると、炎検知炎口の導入通路は隙間の部分が狭くなっているため、炎検知炎口は他の炎口よりも早く炎が検知できなくなる。その結果、炎検知炎口の炎を検知することで、逆火が発生する前の予兆の段階で逆火を検知することが可能となる。
【0013】
また、バーナーボディの載置面にバーナーヘッドを載置する上述した本発明のコンロバーナーにおいては、炎検知炎口の導入通路の中の次のような箇所を、他の炎口の導入通路に比べて狭く形成することとしても良い。すなわち、バーナーボディの載置面を、円環形状の内側に向かって下向きに傾斜した形状に形成しておき、炎検知炎口の導入通路の中で、載置面を延長した面よりも下方に位置する箇所の一部を、他の炎口の導入通路に比べて狭く形成するようにしても良い。
【0014】
バーナーボディの載置面を、円環形状の内側に向かって下向きに傾斜した形状に形成しておけば、炎検知炎口から流入した煮零れ汁は載置面の上を流下することとなり、その結果、載置面を延長した面よりも下方の導入通路に煮零れ汁が掛かるようになる。従って、炎検知炎口の導入通路の中で、載置面を延長した面よりも下方に位置する箇所の一部を、他の炎口の導入通路に比べて狭く形成するようにしておけば、煮零れが生じたときに、他の炎口よりも先に、炎検知炎口を確実に閉塞させることが可能となる。
【0015】
また、上述した本発明のコンロバーナーにおいては、円環形状に形成されたバーナーヘッドの外周側面に、複数の炎口が水平方向に配列した状態で開口するようにしてもよい。そして、複数の炎口の中の炎検知炎口が開口している部分では、外周側面を凹形状に形成してもよい。
【0016】
こうすれば、バーナーヘッドの外周側面を流下する煮零れ汁が凹形状の部分に集まり易くなる。そして、炎検知炎口は凹形状の部分に形成されているので、凹形状の部分に集まった煮零れ汁の多くが炎検知炎口から内部に流入する結果、炎検知炎口は他の炎口よりも煮零れ汁で閉塞され易くなる。このため、他の炎口が煮零れ汁で閉塞される前に、より確実に炎検知炎口が閉塞されるようにすることができるので、逆火の予兆をより確実に検知することが可能となる。
【0017】
また、バーナーヘッドの炎口溝とバーナーボディの載置面との間に炎口を形成する上述した本発明のコンロバーナーにおいては、炎検知炎口に混合ガスを導く導入通路の一部を、次のような方法によって、狭くなるようにしても良い。先ず、炎口溝よりも上流側の導入通路の少なくとも一部を、バーナーヘッドとバーナーボディとに挟まれた通路としておく。そして、炎検知炎口に混合ガスを導く導入通路は、他の導入通路に比べて、バーナーヘッドまたはバーナーボディの少なくとも一方を他方に向けて凸状に形成することによって、導入通路が狭くなるようにしても良い。
【0018】
複数の炎口溝が形成されたバーナーヘッドを、バーナーボディの載置面に載置することによって、バーナーヘッドに開口する複数の炎口を形成する場合、炎口溝と載置面との間に形成される通路の入口側(すなわち炎口が形成される側とは反対側)では、隣り合う通路が互いに連通する状態となっている。また、導入通路から流れてきた混合ガスが炎口溝と載置面との間の通路を通過する際には通路抵抗が発生するから、炎口溝の入口側では、通路抵抗の分だけ混合ガスの圧力が高くなる。このため、炎検知炎口の炎口溝よりも上流で導入通路の一部を狭くして、炎検知炎口の炎口溝の入口側での混合ガスの圧力を低くしようとしても、隣の炎口溝の入口側では混合ガスの圧力が高いままなので、隣の炎口溝の入口側から混合ガスが回り込んで炎検知炎口の炎口溝にも流入しようとする。その結果、炎検知炎口から流出する混合ガスの流量は大きく減少することが無いので、炎検知炎口に形成される炎があまり小さくなることが無く、炎検知手段で炎を確実に検知することができる。これに対して、煮零れが生じると、炎検知炎口の導入通路だけでなく、他の炎口の導入通路でも混合ガスが流れにくくなるため、他の炎口の炎口溝の入口側でも混合ガスの圧力上昇が小さくなる。このため、炎検知炎口の炎口溝に流入する混合ガスの流量が絞られても、隣の炎口溝の入口側から混合ガスが回り込んで流入しにくくなって、炎検知炎口から流出する混合ガスの流量が大きく減少する。その一方で、他の炎口の炎口溝については、それまで炎検知炎口の炎口溝に回り込んでいた混合ガスが回り込まなくなるので、炎検知炎口の炎口溝ほどには、混合ガスの流量が大きく減少することがない。このため、炎検知炎口に形成される炎が小さくなっても、他の炎口では炎の大きさを保っておくことができる。以上のような理由から、煮零れが生じる前は、炎検知手段で炎を確実に検知することが可能でありながら、煮零れが生じると逆火の発生に到る前の段階で、炎検知手段で炎が検知できない状態に確実に移行させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施例のコンロバーナー1の大まかな形状を示した説明図である。
図2】本実施例のコンロバーナー1の分解組立図である。
図3】本実施例のコンロバーナー1の親バーナー1aおよび子バーナー1bに燃料ガスが供給される経路についての説明図である。
図4】炎センサー50に面した側のバーナーヘッド部10の詳細な形状についての説明図である。
図5】炎センサー50を通る位置でのコンロバーナー1の断面形状を示した説明図である。
図6】煮零れ汁が外ボディ部26aの載置面26hの上を伝わって流れる様子を示した説明図である。
図7】炎センサー50に面した側の小炎口10c(炎検知炎口)から浸入した煮零れ汁の流れと、凸部12tとの位置関係についての説明図である。
図8】本実施例のコンロバーナー1が逆火発生の予兆を検知可能な理由についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本実施例のコンロバーナー1の大まかな形状を示した説明図である。図1(a)に示されるように、本実施例のコンロバーナー1は、板金製のバーナー本体部20と、鋳物あるいはダイカストによって形成されて、バーナー本体部20の上に載置されたバーナーヘッド部10とを備えている。また、バーナー本体部20は、バーナーヘッド部10が載置されるバーナーボディ部21と、バーナーボディ部21に接続された通路部22と、同じくバーナーボディ部21に接続された通路部23とを備えている。詳細には後述するが、バーナーボディ部21の内部には、後述する親バーナー用のバーナーボディ21aと、後述する子バーナー用のバーナーボディ21bとが形成されている。更に、通路部22の内部には、親バーナー用のバーナーボディ21aに燃料ガスを供給するための後述する混合通路22aが形成されており、通路部23の内部には、子バーナー用のバーナーボディ21bに燃料ガスを供給するための後述する混合通路23aが形成されている。また、通路部22の一端側は開口端22oとなっており、通路部23の一端側も開口端23oとなっている。そして、通路部22の開口端22oおよび通路部23の開口端23oを臨む位置には、それぞれガス管30a、30bが取り付けられている。
【0021】
ガス管30aの先端に設けられた噴射ノズル31a(図2参照)から燃料ガスを噴射すると、噴射された燃料ガスが、通路部22の内部に形成された後述する混合通路22aを流れる間に空気と混合して混合ガスが形成される。そして、バーナーボディ部21内に形成された後述する親バーナー用のバーナーボディ21aを介してバーナーヘッド部10に供給される。ガス管30bについても同様に、ガス管30bの先端の噴射ノズル31b(図2参照)から燃料ガスを噴射すると、燃料ガスが通路部23の内部の後述する混合通路23aを流れる間に空気と混合して混合ガスが形成され、バーナーボディ部21内の後述する子バーナー用のバーナーボディ21bを介してバーナーヘッド部10に供給される。
【0022】
バーナーヘッド部10の外周側面には、複数の大炎口10aが形成されており、また、バーナーボディ部21に載置されるバーナーヘッド部10の下面側にも、複数の小炎口10bが形成されている。図1(b)には、図1(a)中に破線で囲った部分を拡大することによって、大炎口10aおよび小炎口10bが示されている。バーナーヘッド部10に供給された混合ガスは、これらの大炎口10aおよび小炎口10bから流出する。そして、点火プラグ40から火花を飛ばして、小炎口10bから流出した混合ガスに点火すると混合ガスが着火し、その炎が隣の小炎口10bから流出する混合ガスに火移りし、更に大炎口10aから流出する混合ガスに火移りすることによって、コンロバーナー1の燃焼が開始される。また、コンロバーナー1には炎センサー50が取り付けられており、混合ガスの燃焼によって炎が生じると、炎センサー50を用いて炎を検知することが可能となっている。尚、本実施例の点火プラグ40は、本発明における「点火手段」に対応し、また、本実施例の炎センサー50は、本発明における「炎検知手段」に対応する。
【0023】
図2には、本実施例のコンロバーナー1の分解組立図が示されている。図示されるように、バーナー本体部20は、ロアプレート24と、ミドルプレート25と、アッパープレート26とを重ねて組み付けることによって形成されている。ロアプレート24は、プレス成形された板金部材であり、バーナー本体部20の通路部22に対応する位置には、樋形状に凹ませた混合管ロア部24bが形成され、バーナー本体部20の通路部23に対応する位置には、樋形状に凹ませた混合管ロア部24cが形成されている。更に、バーナーボディ部21に対応する位置には、板金が円錐台形状に打ち出されたボディ底部24aが形成されている。ボディ底部24aの頂面部分は円形に打ち抜かれて二次空気取入窓24oが形成されており、二次空気取入窓24oには円筒形状の二次空気通路管27が取り付けられている。また、ボディ底部24aに隣接して、点火プラグ40や炎センサー50が取り付けられる位置には、平坦な頂面を有するロア凸部24fが形成されており、ロア凸部24fの頂面には、点火プラグ40を挿通させるための挿通穴24tと、炎センサー50を挿通させるための挿通穴24sとが形成されている。
【0024】
ミドルプレート25も、ロアプレート24と同様に、プレス成形された板金部材であり、バーナー本体部20の通路部22に対応する位置には、樋を裏返した形状に板金が打ち出されることによって混合管ミドル部25bが形成されており、バーナー本体部20の通路部23に対応する位置には、板金が切り欠かれることによって切欠部25cが形成されている。更に、バーナーボディ部21に対応する位置には、板金が円錐台形状に打ち出されることによって中ボディ部25aが形成されている。中ボディ部25aの頂面部分は円形に打ち抜かれて中央開口部25oが形成されており、中央開口部25oが打ち抜かれた中ボディ部25aの頂面部分には、中央開口部25oの周縁が下方に向けてバーリング加工されることによって、バーナーヘッド部10の挿入面25jが形成されている。また、前述した混合管ミドル部25bは、中ボディ部25aの側面部分に接続されている。更に、混合管ミドル部25bが接続された側の反対側(点火プラグ40や炎センサー50が設けられる側)では、中ボディ部25aの側面部分が膨出されることによって、ミドル凸部25fが形成されている。このミドル凸部25fも、前述したロアプレート24のロア凸部24fと同様に、頂面部分は平坦な形状に形成されると共に、点火プラグ40を挿通させるための挿通穴25tと、炎センサー50を挿通させるための挿通穴25sとが形成されている。
【0025】
アッパープレート26も、前述したロアプレート24やミドルプレート25と同様に、板金部材をプレス成形することによって形成されている。バーナー本体部20の通路部22に対応する位置には、樋を裏返した形状に板金が打ち出されることによって混合管アッパー部26bが形成されており、バーナー本体部20の通路部23に対応する位置にも、樋を裏返した形状に板金が打ち出されることによって混合管アッパー部26cが形成されている。尚、前述したように、バーナー本体部20の通路部22に対応する位置には、ミドルプレート25にも、樋を裏返した形状の混合管ミドル部25bが形成されているが、アッパープレート26に形成されている混合管アッパー部26bは、ミドルプレート25に形成されている混合管ミドル部25bよりも、樋の断面形状が大きく形成されており、このため、ミドルプレート25に形成された混合管ミドル部25bの上から、アッパープレート26に形成された混合管アッパー部26bを被せると、混合管アッパー部26b内に混合管ミドル部25bが収容された状態となる。
【0026】
更に、アッパープレート26には、バーナー本体部20のバーナーボディ部21に対応する位置に、ミドルプレート25の中ボディ部25aよりも一回り大きな形状の外ボディ部26aが、板金を打ち出すことによって形成されている。外ボディ部26aの頂面部分にも、板金が円形に打ち抜かれた中央開口部26oが形成されており、中央開口部26oの周囲の平坦部分は内側に向かって下方に緩やかに傾斜することによって、円環形状の載置面26hを形成しており、載置面26hの内周側は下方に向けてバーリング加工されることによって、垂下面26jが形成されている。また、前述した混合管アッパー部26bおよび混合管アッパー部26cは、それぞれに外ボディ部26aの側面部分に接続されている。更に、混合管アッパー部26bおよび混合管アッパー部26cが接続された側の反対側(点火プラグ40や炎センサー50が設けられる側)では、外ボディ部26aの側面部分が膨出されることによって、前述したミドル凸部25fよりも一回り大きな形状のアッパー凸部26fが形成されている。そして、このアッパー凸部26fの頂面部分にも、前述したミドル凸部25fと同様に、点火プラグ40を挿通させるための挿通穴26tと、炎センサー50を挿通させるための挿通穴26sとが形成されている。
【0027】
以上のような形状のロアプレート24の上に、ミドルプレート25を載せると、ロアプレート24に形成された樋形状の混合管ロア部24bの上に、ミドルプレート25に形成された樋を裏返した形状の混合管ミドル部25bが向かい合わされた状態となって、混合管ロア部24bと混合管ミドル部25bとの間に、親バーナー用の混合通路22a(図1(a)参照)が形成される。更に、ロアプレート24に形成されたボディ底部24aと、ボディ底部24aに取り付けられた二次空気通路管27と、ミドルプレート25の中ボディ部25aとの間に、親バーナー用のバーナーボディ21a(図1(a)参照)が形成される。
【0028】
また、ロアプレート24の上にミドルプレート25を載せて、更にその上にアッパープレート26を載せると、ロアプレート24に形成された樋形状の混合管ロア部24cと、アッパープレート26に形成された樋を裏返した形状の混合管アッパー部26bとが、ミドルプレート25の切欠部25cを介して向かい合わされた状態となって、混合管ロア部24cと混合管アッパー部26cとの間に、子バーナー用の混合通路23a(図1(a)参照)が形成される。更に、ミドルプレート25の中ボディ部25aと、アッパープレート26の外ボディ部26aとの間には、子バーナー用のバーナーボディ21b(図1(a)参照)が形成される。
【0029】
また、図2に示されるように、バーナーヘッド部10は、アッパーヘッド11と、ロアヘッド12とによって形成されている。アッパーヘッド11は、鋳物あるいはダイカストによって形成された略円環形状の部材であり、円環形状の上蓋部11aと、上蓋部11aの下面側の中央から下方に向けて立設された中空の円筒部11bと、円環形状の上蓋部11aの外縁部分から下方に向けて筒状に立設された筒状壁11cとを備えている。そして、円筒部11bの上端側は、円環形状の上蓋部11aの中央に開口することによって、円形の開口部11dを形成している。更に、筒状壁11cの下面側には、筒状壁11cの中心から外側に向かって、櫛状に複数本の炎口溝11fが穿設されており、炎口溝11fが筒状壁11cの外周面に開口する箇所には、図1(b)を用いて前述した大炎口10aが形成されている。
【0030】
ロアヘッド12は、鋳物あるいはダイカストによって形成された略円筒形状の部材であり、中空の円筒部12aの上部が拡径されて、拡径された後の円筒部12aの上端の外縁部分には、円筒部12aよりも大径の筒状壁12cが上方に向かって突設されている。そして、筒状壁12cの外周側面からは、点火プラグ40の方向に向かって点火ターゲット12bが突設されている。更に、筒状壁12cの上面には、筒状壁12cの中心から外側に向かって、櫛状に複数本の炎口溝12fが穿設されていると共に、円筒部12aが拡径した部分の下面側にも、複数本の炎口溝12gが形成されている。そして、炎口溝12fが筒状壁12cの外周面に開口する箇所にも、図1(b)を用いて前述した大炎口10aが形成されている。
【0031】
以上のような形状のロアヘッド12は、ミドルプレート25の中央開口部25oの周囲に形成された挿入面25jに対して、円筒部12aの外周面で位置決めしながら、アッパープレート26の載置面26hの上に載置される。こうすることによって、ロアヘッド12の円筒部12aが拡径した部分の下面側に形成された複数の炎口溝12gと、アッパープレート26の載置面26hとの間に、図1(b)を用いて前述した複数の小炎口10bが形成される。また、アッパーヘッド11は、ロアプレート24に取り付けられた二次空気通路管27の内周面に対して、円筒部11bの外周面で位置決めしながら、ロアヘッド12の上面側に突設された筒状壁12cの上に載置される。
【0032】
以上のようにして組み立てられた本実施例のコンロバーナー1には、大火力用の親バーナーと、小火力用の子バーナーとが、上下二段に組み込まれている。図3(a)は、本実施例のコンロバーナー1に組み込まれた親バーナー1aについての説明図である。尚、理解を容易にするために、図3(a)では、アッパープレート26(図2参照)については図示が省略されている。アッパープレート26の下側に組み付けられたミドルプレート25には、中ボディ部25aと混合管ミドル部25bとが形成されており、そのミドルプレート25の下側にはロアプレート24が組み付けられている。そして、混合管ミドル部25bは、ロアプレート24に形成された混合管ロア部24b(図2参照)との間に、混合通路22a(図1(a)参照)を形成し、中ボディ部25aは、ロアプレート24に形成されたボディ底部24a(図2参照)との間に、親バーナー用のバーナーボディ21a(図1(a)参照)を形成している。
【0033】
更に、混合通路22aの開口端22oにはガス管30aが設けられており、ガス管30aの先端には噴射ノズル31aが形成されている(図2参照)。このため、噴射ノズル31aから燃料ガスを噴射すると、燃料ガスは周囲の空気と混合しながら混合通路22aの内部を進行して、親バーナー用のバーナーボディ21a内に流入する。その後、ロアプレート24に取り付けられた二次空気通路管27と、ロアヘッド12の内側との空間を上昇して、アッパーヘッド11に形成された炎口溝11f(図2参照)、あるいはロアヘッド12に形成された炎口溝12f(図2参照)を通って、大炎口10a(図1(b)参照)から流出する。図3(a)中に太い破線で示した矢印は、噴射ノズル31aから噴射された燃料ガスが流れる様子を概念的に表している。尚、図3(a)では、燃料ガスが流れる経路を分かり易く表示する目的で、アッパーヘッド11をロアヘッド12から離間させた状態で表示されているが、実際には、図2を用いて前述したように、アッパーヘッド11はロアヘッド12の上に載置されている。こうして、アッパーヘッド11およびロアヘッド12から流出した燃料ガスと空気との混合ガスに、後述する子バーナー1bの炎を火移りさせることによって、親バーナー1aでの燃焼が開始される。
【0034】
図3(b)は、本実施例のコンロバーナー1に組み込まれた子バーナー1bについての説明図である。図示されるように、アッパープレート26には外ボディ部26aと混合管アッパー部26cとが形成されている。また、図2を用いて前述したように、アッパープレート26の下側にはミドルプレート25が組み付けられ、そのミドルプレート25の下側にはロアプレート24が組み付けられている。そして、アッパープレート26に形成された混合管アッパー部26cは、ロアプレート24の混合管ロア部24c(図2参照)との間に混合通路23a(図1(a)参照)を形成し、アッパープレート26に形成された外ボディ部26aは、ミドルプレート25の中ボディ部25a(図2参照)との間に、子バーナー用のバーナーボディ21b(図1(a)参照)を形成している。
【0035】
更に、混合通路23aの開口端23oにはガス管30bが設けられており、ガス管30bの先端には噴射ノズル31bが形成されている(図2参照)。このため、噴射ノズル31bから燃料ガスを噴射すると、燃料ガスは周囲の空気と混合しながら混合通路23aの内部を進行して、子バーナー用のバーナーボディ21b内に流入した後、ロアヘッド12の円筒部12aと、アッパープレート26の外ボディ部26aの内側との空間を上昇する。そして、ロアヘッド12の円筒部12aが拡径した部分の下面側に形成された炎口溝12g(図2参照)を通って、小炎口10b(図1(b)参照)から流出する。図3(b)中に太い一点鎖線で示した矢印は、噴射ノズル31bから噴射された燃料ガスが流れる様子を概念的に表している。尚、図3(b)では、燃料ガスが流れる経路を分かり易く表示する目的で、ロアヘッド12をアッパープレート26の載置面26hから離間させた状態で表示されているが、実際には、図2を用いて前述したように、ロアヘッド12はアッパープレート26の載置面26hの上に載置されている。こうして、ロアヘッド12から流出した燃料ガスと空気との混合ガスに、点火プラグ40から火花を飛ばして点火すると、子バーナー1bでの燃焼が開始される。また、子バーナー1bでの燃焼によって生じた炎は、炎センサー50によって検知される。
【0036】
尚、本実施例では、子バーナー1bのバーナーボディ21bが、本発明における「バーナーボディ」に対応し、子バーナー1bの混合通路23aが、本発明における「混合通路」に対応する。更に、子バーナー1bを構成するロアヘッド12が、本発明における「バーナーヘッド」に対応し、ロアヘッド12の下面側に形成された複数の小炎口10bが、本発明における「炎口」に対応する。
【0037】
図4は、炎センサー50の側から見て、ロアヘッド12の詳細な形状を示した説明図である。図4(a)には、ロアヘッド12(およびアッパーヘッド11)が外ボディ部26aの載置面26hの上に載置された状態が示されており、図4(b)には、載置面26hに載置されていない状態のロアヘッド12(およびアッパーヘッド11)が示されている。前述したようにロアヘッド12が載置面26hに載置される部分には、複数本の炎口溝12gが形成されており、炎口溝12gの外側には、図4(a)に示されるように、複数の小炎口10bが形成されている。また、ロアヘッド12の上面側には、背の低い円筒状の筒状壁12cが突設されている。図2を用いて前述したように、この筒状壁12cには、複数の大炎口10aが形成されているが、炎センサー50に面する側には大炎口10aは形成されておらず、筒状壁12cの外周面が凹形状に形成されることによって凹部12eが設けられている。この結果、図4(b)に示されるように、ロアヘッド12の下面側(載置面26hに載置される側)に形成された複数の炎口溝12gは、炎センサー50に面する側では、凹部12eが形成されている分だけ、溝の長さが短い炎口溝12hとなっている。尚、これらの炎口溝12hと、載置面26hとの間に形成される小炎口10c(図5参照)が、本発明における「炎検知炎口」に対応する。更に、炎口溝12hが形成されている部分では、円筒部12aの外周面が凸状に形成されることによって、凸部12tが形成されている。この結果、子バーナー用の混合通路23a内の混合ガスが、バーナーボディ21bおよび炎口溝12hを経由して、炎センサー50に面した側の小炎口10c(炎検知炎口)に導かれる経路(導入通路)では、他の炎口溝12gを経由して小炎口10bに導かれる経路(導入通路)に比べて、凸部12tが形成されている分だけ経路が狭くなっている。
【0038】
図5は、炎センサー50を通る位置でのコンロバーナー1の断面形状を示した説明図である。図2を用いて前述したように、ロアヘッド12は、ミドルプレート25の中ボディ部25aに形成された挿入面25jで円筒部12aが位置決めされた状態で、アッパープレート26の外ボディ部26aに形成された載置面26hの上に載置されている。その結果、ロアヘッド12の円筒部12aと、載置面26hの内側に形成された垂下面26jとの間には、炎口溝12gに向かって混合ガスが通過する隙間Laが形成されるが、炎センサー50に面する側の円筒部12aに凸部12tが形成されている。そして、この凸部12tは、垂下面26jの下端よりも下方の位置まで延設されている。このように円筒部12aから半径方向外側に向かって突設された凸部12tは、少なくとも一部分が垂下面26jと向き合った状態となるため、炎口溝12hに向かって混合ガスが通過する隙間Lbは、炎口溝12gに向かって混合ガスが通過する隙間Laよりも狭くなっている。更に、(詳細には後述するが)煮零れが発生すると、炎センサー50に面する側の小炎口10cから浸入して炎口溝12h内を流れる煮零れ汁が、凸部12tに掛かって隙間Lbが更に狭くなるようになっている。こうすることによって、逆火が発生する前の段階で、逆火が発生する予兆を検知することが可能となる。以下では、この理由について説明する。
【0039】
図6は、コンロバーナー1を用いて調理容器内の調理物を加熱調理している時に煮零れが発生した様子を示した説明図である。図中に太い破線で示した矢印は、煮零れ汁の流れを概念的に表している。煮零れが発生すると、煮零れ汁は、図中に矢印Aで示すように、アッパーヘッド11からロアヘッド12の外側を伝わって、載置面26hに到達した後、外ボディ部26aの上を流下していく。このとき、載置面26hに到達した煮零れ汁の一部は、ロアヘッド12が載置された部分の外側の載置面26h(すなわち、載置面26hの外周部分)を、水平方向に伝って流れていく。また、煮零れた時点での煮零れ汁は温度が高く、粘度が低いので、煮零れ汁は流れ易い状態にある。このため、水平方向に流れる煮零れ汁は、載置面26hの外周部分の全体に行き渡る。
【0040】
そして、図2を用いて前述したように、載置面26hは内側に向かって下方に傾斜しているので、載置面26hの外周部分の全体に行き渡った煮零れ汁は、載置面26hの上を流下して行く。その結果、載置面26hの内側から下向きに形成された垂下面26jの下端に溜まって、固化することになる。このように、煮零れ汁がアッパーヘッド11に掛かった位置に拘わらず、煮零れ汁の一部は載置面26hの上を水平方向に伝わる結果、垂下面26jの下端では、全周に亘って同じように煮零れ汁の固化が発生することになる。加えて、図5を用いて前述したように、垂下面26jの内側には、隙間Laを隔てた位置にロアヘッド12の円筒部12aが存在するが、炎センサー50に面する側の円筒部12aからは、径方向外側に向かって凸部12tが突設されているため、垂下面26jから凸部12tまでの距離が狭くなっている。このため、凸部12tが突設された部分では、その他の部分に比べて、垂下面26jで生じた煮零れ汁の固化による閉塞が発生し易くなっている。
【0041】
また、図4を用いて前述したように、ロアヘッド12の筒状壁12cの外周面には、炎センサー50に面する側に凹部12eが形成されている。このため、炎センサー50に面した側のアッパーヘッド11に掛かった煮零れ汁は、図6中の矢印Bで示したように、ロアヘッド12の筒状壁12cの外周面を流下する際に、容易に凹部12e内に流入する結果、凹部12e内に煮零れ汁が集められる。更に、凹部12eは筒状壁12cの外周面から凹んでいるため、凹部12e内に流入して載置面26hに達した煮零れ汁は、筒状壁12cの外周面を伝わって載置面26hに達した煮零れ汁に比べて、外ボディ部26aの外表面に流出しにくくなっている。
【0042】
加えて、凹部12eは筒状壁12cの外周面から凹んでいるので、凹部12e内に流入した煮零れ汁は、載置面26hの外周部分を水平方向にも伝わりにくくなっている。その結果、凹部12eの下方の載置面26hは、他の部分の載置面26hよりも多くの煮零れ汁が流下することになるため、その載置面26hに内側の垂下面26j(すなわち、凸部12tと向かい合う位置の垂下面26j)では、煮零れ汁の固化が発生し易くなる。このような理由からも、ロアヘッド12の円筒部12aから凸部12tが突設された部分と、垂下面26jとの間では、煮零れ汁の固化による閉塞が発生し易くなっている。
【0043】
更に加えて、本実施例のコンロバーナー1では、煮零れが発生して小炎口10cから煮零れ汁が浸入すると、その煮零れ汁が掛かりやすい位置に凸部12tが形成されている。図7は、図5中に破線の円形で示した部分を拡大することによって、小炎口10cから浸入した煮零れ汁の流れと、凸部12tとの位置関係についての説明図である。図中に示した太い破線の矢印は、煮零れ汁が流れる様子を概念的に表している。図示されるように、煮零れ汁は、炎センサー50に面した側の小炎口10cから炎口溝12h内に浸入すると、アッパープレート26に形成された載置面26hの上を、内向下方に向かって流下する。そして、ロアヘッド12の円筒部12aには、載置面26hを延長した延長面Pよりも下方の位置に、凸部12tが突設されている。このため、載置面26hを流下した煮零れ汁は、単に垂下面26jを伝って下方に流れるだけでなく、凸部12tにも掛かるようになっている。このため煮零れが発生すると、凸部12tの表面でも煮零れ汁が固化することとなって、凸部12tと垂下面26jとの間で、煮零れ汁の固化による閉塞が発生し易くなっている。
【0044】
また、本実施例のコンロバーナー1では、凸部12tと垂下面26jとの隙間Lb(図5参照)が十分に小さな寸法(代表的には2mm以下)に設定されているので、煮零れ汁が隙間Lbに入り込むと、表面張力によって自重を支えて隙間Lb内に留まるようになる。このため、凸部12tと垂下面26jとの間で、煮零れ汁の固化による閉塞が更に発生し易くなっている。
【0045】
そして、図3(b)および図4を用いて前述したように、ロアヘッド12の円筒部12aと垂下面26jとの間の隙間Laは、子バーナー1bの小炎口10bに混合ガスが導かれる導入通路の一部となっており、また、円筒部12aから突設した凸部12tと垂下面26jとの間の隙間Lbは、子バーナー1bの小炎口10c(炎検知炎口)に混合ガスが導かれる導入通路の一部となっている。そして、本実施例のコンロバーナー1では、小炎口10cから流出した混合ガスの燃焼による炎を検知する位置に、炎センサー50が設けられている。こうすることによって、コンロバーナー1で逆火が発生する前に、逆火の予兆を検知することが可能となる。
【0046】
図8は、本実施例のコンロバーナー1が逆火の予兆を検知可能な理由を示した説明図である。図8には、ロアヘッド12の下面側の炎口溝12gが形成されている部分でコンロバーナー1を水平方向に切断した状態を上方から見た断面図が示されている。図8(a)は、煮零れ汁の固化による閉塞が発生する前の状態を表しており、図8(b)は、煮零れ汁の固化による閉塞が発生した状態を表している。尚、図8では、点火プラグ40については図示が省略されている。
【0047】
図8(a)に示されるように、外ボディ部26aに形成された載置面26hの上には、ロアヘッド12の筒状壁12cが載置されており、筒状壁12cには複数本の炎口溝12gや炎口溝12hが形成されている。そして、筒状壁12cの外周面に炎口溝12gが開口する箇所には小炎口10bが形成され、炎口溝12hが開口する箇所には、小炎口10cが形成されている。また、載置面26hの内側には垂下面26jが形成されている。更に、垂下面26jの内側には、ロアヘッド12の円筒部12aが存在するが、円筒部12aの中で炎センサー50に面する側には凸部12tが突設されている。このため、炎口溝12gに供給される混合ガスは、円筒部12aと垂下面26jとの間の隙間La(図5参照)を通って、炎口溝12gに供給される。また、炎口溝12hに供給される混合ガスは、円筒部12aから突設された凸部12tと垂下面26jとの間の隙間Lb(図5参照)を通って、炎口溝12hに供給される。そして、図示しない点火プラグ40で、炎口溝12gを通って小炎口10bから流出する混合ガスに点火すると、その炎が火移りすることによって、小炎口10bおよび小炎口10cの周囲に炎が形成される。図8(a)では、こうして形成された炎が破線によって表されている。
【0048】
ここで、炎センサー50に面する側の小炎口10cは、他の小炎口10bに比べて、混合ガスが導かれる導入通路が狭くなっているが、小炎口10cに形成される炎の大きさは、小炎口10bに形成される炎の大きさと、ほぼ同程度の大きさとなっている。この理由は、凸部12tと垂下面26jとの隙間Lb(図5参照)が、小炎口10bや小炎口10cから流出する混合ガスが容易に通過し得る間隔に設定されているためである。また、小炎口10cを小さくしたり、炎口溝12hそのものを狭くしたりするのではなく、凸部12tを設けることによって、炎口溝12hよりも上流側の部分を狭くしている。このため、炎口溝12hには、凸部12tによって狭くなった部分を通ってきた混合ガスに加えて、炎口溝12hの入口の周囲に存在する混合ガス(すなわち、狭められていない通路を通過してきた混合ガス)も流入することになり、その結果、凸部12tで通路を狭くしても、炎口溝12hを流れる混合ガスの流量がそれほど減少することはない。これらの理由から、炎口溝12hの外側に形成されている小炎口10cでも、炎口溝12gの外側に形成されている小炎口10bとほぼ同様な大きさの炎が形成されるので、炎センサー50によって炎を確実に検知することが可能となっている。
【0049】
ところが、煮零れが生じると、図6を用いて前述したように、煮零れ汁は載置面26hの外周部分の全周に伝わる結果、垂下面26jの下端では全周に亘って煮零れ汁の固化が発生する。図8(b)中で垂下面26jの内側に細かい斜線を付した部分は、固化した煮零れ汁を表している。そして、凸部12tが突設されている部分では、元々、垂下面26jと凸部12tとの隙間Lb(図5参照)が狭くなっているので、固化した煮零れ汁によって閉塞されてしまい、炎口溝12h(図8(a)参照)に混合ガスが供給されなくなる。その結果、図8(b)に破線で示したように、炎口溝12hの外側に形成された小炎口10cの炎が小さくなって、炎センサー50で炎を検知できなくなる。また、小炎口10cの炎が小さくなっても、炎口溝12gの外側に形成されている小炎口10bの炎はほとんど小さくなることはない。この理由は、円筒部12aと垂下面26jとの隙間La(図5参照)は、小炎口10bに混合ガスを供給するためには十分な大きさに設定されているため、たとえ、煮零れ汁の固化によって小炎口10cに混合ガスが供給されなくなっても、小炎口10bには十分な混合ガスが供給されるためである。
【0050】
以上に説明したように、本実施例のコンロバーナー1では、煮零れが生じると、炎センサー50に面する側に形成された小炎口10cでは、他の小炎口10bよりも、混合ガスが供給されにくくなるようになっている。このため、煮零れによる影響で、小炎口10bに形成される炎が小さくなる前に、小炎口10cの炎が小さくなって炎センサー50で炎が検知されなくなる。従って、炎センサー50で炎が検知されるか否かを監視しておけば、逆火の発生には到らない軽微な閉塞であっても、閉塞の発生を検知することができる。その結果、逆火が発生する前に、逆火の予兆を検知することが可能となる。
【0051】
尚、コンロバーナーの中には、炎センサーに面する側の炎口が煮零れ汁で閉塞されることを防止する目的で、炎センサーに面する側の炎口には煮零れ汁が掛からない形状としているものが存在する。例えば、バーナーヘッドの周側面は大まかには円柱形状に形成されているが、炎センサーに面する側では、炎口が開口している周側面の下側部分を半径方向内側に大きく凹ませることがある。このようなコンロバーナーでは、炎センサーに面する側の炎口は大きく凹んだ部分の周側面に形成されることになるが、この炎口の上側ではバーナーヘッドの周側面が凹んでいないので、周側面の凹んでいない部分が庇のように機能して、下方に形成された炎口(炎センサーに面する側の炎口)に煮零れ汁が掛かることを防止する。このように、炎センサーに面する側の炎口には煮零れ汁が掛からない工夫が施されていた場合は、たとえ、本実施例のコンロバーナー1のように、小炎口10c(炎検知炎口)に混合ガスを導く導入通路の一部を、その他の小炎口10bの導入通路に比べて狭くしても、小炎口10cを小炎口10bに比べて閉塞し易くすることは困難になることが予想される。
【0052】
これに対して、本実施例のコンロバーナー1では、小炎口10c(炎検知炎口)も小炎口10bも、ほぼ同じ周側面上に形成されており、小炎口10cに対して庇のように機能して煮零れ汁が掛かり難くする部分は存在しない。このため、小炎口10c(炎検知炎口)に混合ガスを導く導入通路の一部を、その他の小炎口10bの導入通路に比べて狭くすることで、小炎口10cが小炎口10bに比べて確実に閉塞し易くすることができる。その結果、前述したメカニズムによって、逆火の予兆を確実に検知することが可能となる。
【0053】
以上、本実施例のコンロバーナー1について説明したが、本発明は上記の実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0054】
たとえば、上述した実施例では、炎センサー50は1箇所に設けられているものとして説明したが、複数箇所に炎センサー50を設けておき、それぞれの炎センサー50に面する側に凸部12tを設けても良い。また、上述した実施例では、ロアヘッド12の円筒部12aが垂下面26jに面する部分に、凸部12tを設けることによって、小炎口10cに混合ガスが供給される通路の一部を狭くするものとして説明した。しかし、垂下面26jの側に、円筒部12aに向けて凸状の凸部を設けることによって、小炎口10cに混合ガスが供給される通路の一部を狭くしても構わない。
【符号の説明】
【0055】
1…コンロバーナー、 1a…親バーナー、 1b…子バーナー、
10…バーナーヘッド部、 10a…大炎口、 10b,c…小炎口、
11…アッパーヘッド、 11c…筒状壁、 11f…炎口溝、
12…ロアヘッド、 12a…円筒部、 12c…筒状壁、 12e…凹部、
12f…炎口溝、 12g…炎口溝、 12h…炎口溝、 12t…凸部、
20…バーナー本体部、 21…バーナーボディ部、 22a…混合通路、
22o…開口端、 23a…混合通路、 23o…開口端、
24…ロアプレート、 25…ミドルプレート、 26…アッパープレート、
26a…外ボディ部、 26h…載置面、 26j…垂下面、
30a,b…ガス管、 31a,b…噴射ノズル、 40…点火プラグ、
50…炎センサー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8