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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】補強用締結構造
(51)【国際特許分類】
   F16B 5/02 20060101AFI20221114BHJP
   F16B 37/04 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
F16B5/02 U
F16B37/04 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018229031
(22)【出願日】2018-12-06
(65)【公開番号】P2020091005
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390001579
【氏名又は名称】プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【弁理士】
【氏名又は名称】柱山 啓之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 慎一
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-143399(JP,A)
【文献】実開昭58-025475(JP,U)
【文献】実開昭62-062574(JP,U)
【文献】実開昭50-103069(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/00-5/12
F16B 23/00-43/02
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブ、及び前記ウェブから交差方向に延びるフランジを有する母材と、
前記ウェブに重ねて配置される補強ウェブを有すると共に、前記フランジに重ねて配置される補強フランジを有する補強材と、
前記ウェブ及び前記補強ウェブを締結するボルト及びナットとを備え、
前記ナットは、前記補強ウェブに着座されるナット本体部と、ナット本体部からその軸方向に延びると共に前記ナットの中心軸に対して偏心して形成されるカム部とを備え、
前記ウェブには、前記ボルトを挿通させると共にその径方向の移動を規制するボルト孔が形成され、前記補強ウェブには、前記カム部を嵌入させるカム穴が形成され、
前記カム穴は、前記カム部から前記ボルトの締結方向の回転力を受けたとき、その回転力が前記補強フランジと前記フランジを圧着させる方向の力となるように配置され
前記ナット本体部は、六角柱状に形成され、
前記ボルト孔は、前記ボルトの雄ネジ部と略同径に形成され、
前記ボルト孔には、前記ナットが挿入されない
ことを特徴とする補強用締結構造。
【請求項2】
ウェブ、及び前記ウェブから交差方向に延びるフランジを有する母材と、
前記ウェブに重ねて配置される補強ウェブを有すると共に、前記フランジに重ねて配置される補強フランジを有する補強材と、
前記ウェブ及び前記補強ウェブを締結するボルト及びナットとを備え、
前記ナットは、前記ウェブに着座されるナット本体部と、ナット本体部からその軸方向に延びると共に前記ナットの中心軸に対して偏心して形成されるカム部とを備え、
前記補強ウェブには、前記ボルトを挿通させると共にその径方向の移動を規制するボルト孔が形成され、前記ウェブには、前記カム部を嵌入させるカム穴が形成され、
前記カム穴は、前記カム部から前記ボルトの締結方向の回転力を受けたとき、その回転力が前記補強フランジと前記フランジを圧着させる方向の力となるように配置され
前記ナット本体部は、六角柱状に形成され、
前記ボルト孔は、前記ボルトの雄ネジ部と略同径に形成され、
前記ボルト孔には、前記ナットが挿入されない
ことを特徴とする補強用締結構造。
【請求項3】
前記カム穴は、円形に形成され、
前記カム部は、前記カム穴に嵌入される円柱状に形成された
請求項1又は2に記載の補強用締結構造。
【請求項4】
前記補強フランジと前記フランジは、接着剤で接着された
請求項1から3のいずれか一項に記載の補強用締結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、母材に補強材を締結して補強する補強用締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
トラック用シャシフレーム等の車体フレームには、断面C字状に形成され前後方向に延びる左右一対のサイドメンバと、これらサイドメンバ間に掛け渡して設けられた複数のクロスメンバとを備えるものがある。
【0003】
かかる車体フレームにおいては、サイドメンバの内側に補強材をボルト、ナット等で締結する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-233293号公報
【文献】特開2018-48677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、サイドメンバの内側に補強材をボルト、ナットで締結する場合、ナットを工具等で固定しておかないと、ナットがボルトと供回りしてしまい、締結ができない。
【0006】
このため、通常はスパナ等の工具にてナットの回転を抑える工法が採用されるが、大きな回転トルクを工具で受けることとなり、作業者の安全対策が必要となる。また、締結位置によっては、ナットの位置に工具が入らない場合もある。このような場合、事前に補強材にナット又はナットを回転不能に保持するケージ等を溶接しておくことも可能だが、溶接費用が発生する。
【0007】
そこで本開示は、かかる事情に鑑みて創案され、その目的は、サイドメンバ等の母材に補強材を容易にボルト締結できる補強用締結構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一の態様によれば、
ウェブ、及び前記ウェブから交差方向に延びるフランジを有する母材と、
前記ウェブに重ねて配置される補強ウェブを有すると共に、前記フランジに重ねて配置される補強フランジを有する補強材と、
前記ウェブ及び前記補強ウェブを締結するボルト及びナットとを備え、
前記ナットは、前記補強ウェブに着座されるナット本体部と、ナット本体部からその軸方向に延びると共に前記ナットの中心軸に対して偏心して形成されるカム部とを備え、
前記ウェブには、前記ボルトを挿通させると共にその径方向の移動を規制するボルト孔が形成され、前記補強ウェブには、前記カム部を嵌入させるカム穴が形成され、
前記カム穴は、前記カム部から前記ボルトの締結方向の回転力を受けたとき、その回転力が前記補強フランジと前記フランジを圧着させる方向の力となるように配置された
ことを特徴とする補強用締結構造が提供される。
【0009】
また、本開示の他の態様によれば、
ウェブ、及び前記ウェブから交差方向に延びるフランジを有する母材と、
前記ウェブに重ねて配置される補強ウェブを有すると共に、前記フランジに重ねて配置される補強フランジを有する補強材と、
前記ウェブ及び前記補強ウェブを締結するボルト及びナットとを備え、
前記ナットは、前記ウェブに着座されるナット本体部と、ナット本体部からその軸方向に延びると共に前記ナットの中心軸に対して偏心して形成されるカム部とを備え、
前記補強ウェブには、前記ボルトを挿通させると共にその径方向の移動を規制するボルト孔が形成され、前記ウェブには、前記カム部を嵌入させるカム穴が形成され、
前記カム穴は、前記カム部から前記ボルトの締結方向の回転力を受けたとき、その回転力が前記補強フランジと前記フランジを圧着させる方向の力となるように配置された
ことを特徴とする補強用締結構造が提供される。
【0010】
好ましくは、前記カム穴は、円形に形成され、前記カム部は、前記カム穴に嵌入される円柱状に形成される。
【0011】
好ましくは、前記補強フランジと前記フランジは、接着剤で接着される。
【発明の効果】
【0012】
上記の態様によれば、母材に補強材を容易にボルト締結できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の一実施の形態に係る車体フレームの概略上面図である。
図2図1のA-A線矢視断面図である。
図3図2を左方から視た要部側面図である。
図4図3のB-B線矢視断面図である。
図5】ナットの斜視図である。
図6】他の実施の形態を示す車体フレームのサイドメンバを内側から視た要部側面図である。
図7】他の実施の形態を示す車体フレームのサイドメンバを後方から視た要部断面図である。
図8】他の実施の形態を示す車体フレームのサイドメンバを内側から視た要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態を説明する。なお、後述する実施の形態における前後左右上下の各方向は、車両の各方向をいうものとする。
【0015】
図1は、本実施形態に係る車体フレーム1を鉛直上方から視た上面図である。図2図1のA-A線で示す部分を仮想的に切断して矢印方向に視た断面図である。
【0016】
図1に示すように、車体フレーム1は、ラダーフレーム2で構成される。ラダーフレーム2は、前後方向に延びる左右一対のサイドメンバ3と、左右のサイドメンバ3間に掛け渡して設けられる複数のクロスメンバ4とを備える。
【0017】
本実施の形態において、サイドメンバ3は、補強すべき母材である。
【0018】
図2に示すように、サイドメンバ3は、断面C字状の鋼材で構成される。具体的には、サイドメンバ3は、上下方向に延びるウェブ3aと、ウェブ3aの上下両端から車幅方向内方(水平方向)に延びる一対のフランジ3bとを備える。なお、サイドメンバ3はこれに限るものではない。サイドメンバ3は、ウェブ3aとフランジ3bを備えるものであればよく、例えば断面L字状の構造材(図示せず)で構成されてもよい。なお、本実施でいう構造材は、鋼材に限られない。構造材は、鋼材と同等又はそれ以上の強度を有する他の素材で構成されてもよい。
【0019】
また、サイドメンバ3には、補強材5がボルト6及びナット7で締結される。これによりサイドメンバ3は補強される。
【0020】
補強材5は、断面L字状の鋼材で構成される。具体的には、補強材5は、上下方向に延びる補強ウェブ5aと、補強ウェブ5aの下端から車幅方向内方(水平方向)に延びる補強フランジ5bとを備える。補強ウェブ5aは、サイドメンバ3のウェブ3aの車幅方向内側の側面3cに重ねて配置される。補強ウェブ5aは、ウェブ3aにボルト6及びナット7で締結される。補強フランジ5bは、サイドメンバ3の下側のフランジ3b上に重ねて配置される。なお、補強材5はこれに限るものではない。補強材5は補強ウェブ5aと補強フランジ5bを備えるものであればよく、例えば断面C字状の構造材(図示せず)で構成されてもよい。
【0021】
ボルト6は、頭部6aと、雄ネジ部6bとを備える。ボルト6は、右ネジで構成される。なお、右ネジとは、ボルト6を頭部6a側から視たとき、ボルト6を右回転させたとき雌ネジに螺入されるタイプのネジである。
【0022】
図3図4及び図5に示すように、ナット7は、補強ウェブ5aに着座されるナット本体部10と、ナット本体部10の一端からその軸方向に延びるカム部11とを備える。
【0023】
ナット本体部10は、六角柱状に形成される。
【0024】
カム部11は、円柱状に形成される。カム部11は、ナット7の中心軸Oに対して偏心して形成されると共に、中心軸O上に重なるように形成される。また、カム部11の軸方向の寸法hは、補強ウェブ5aの厚さ方向の寸法tよりも小さく設定される。これにより、カム部11は、後述するカム穴9に嵌入されたとき、ウェブ3aに当たることはなく、補強ウェブ5aに対するナット本体部10の着座を妨げない。
【0025】
また、カム部11は、ナット本体部10の六角形状の外周面10aに内接する内接円10bよりも小径に形成されると共に、内接円10b内に収まるように配置される。これにより、カム部11より径方向外方のナット本体部10が全周に亘って補強ウェブ5aに着座可能となっている。
【0026】
また、ナット本体部10及びカム部11には、ボルト6と螺合可能な雌ネジ部7aが軸方向に貫通して形成される。雌ネジ部7aは、ナット7の中心軸Oと同軸に形成される。
【0027】
サイドメンバ3のウェブ3aには、ボルト6を挿通させるボルト孔8が形成される。ボルト孔8は、ボルト6の雄ネジ部6bと略同径に形成される。これによりボルト孔8は、ボルト孔8に挿通されたボルト6の径方向の移動を規制する。
【0028】
図2図3及び図4に示すように、補強材5の補強ウェブ5aには、カム部11を嵌入させるカム穴9が形成される。カム穴9は、円形に形成され、補強ウェブ5aを板厚方向に貫通する。
【0029】
また、カム穴9は、カム部11からボルト6の締結方向の回転力を受けたとき、その回転力が補強フランジ5bとフランジ3bを圧着させる方向の力(下向きの力)Fとなるように配置される。この配置について具体的に説明する。カム穴9にカム部11を嵌入させた場合、カム穴9は、ナット7の中心軸Oに対して偏心される。このため、ナット7の雌ネジ部7aをボルト孔8の位置に合わせたとき、カム穴9は、ボルト孔8に対しても偏心されることとなる。このため、ボルト孔8にボルト6を挿通させてナット7に螺入させるとき、カム穴9はカム部11を介してボルト6から締結方向の回転力を受けることとなる。しかし、その回転力が補強ウェブ5aにいずれの方向の力として伝わるかは、カム穴9及びカム部11が中心軸Oに対していずれの方向に偏心しているかで違ってくる。そこで、本実施の形態においては、ボルト6の回転力がカム穴9に下向きの力Fとして伝わるよう、カム穴9の中心におけるボルト6の回転方向が下向き若しくは斜め下向きとなる偏心位置にカム穴9及びカム部11が配置されている。
【0030】
次に本実施の形態の作用について述べる。
【0031】
サイドメンバ3に補強材5を締結する場合、サイドメンバ3の内側に補強材5を配置し、カム穴9にナット7のカム部11を嵌合させる。このとき、補強材5は、中心軸Oをボルト6の雄ネジ部6b側から視たとき(図3参照)、見た目上、カム穴9を中心軸Oの左側に偏心させるように配置される。
【0032】
この後、ボルト孔8にボルト6を挿通させ、そのボルト6をナット7に螺入させる。このとき、一方の手でナット7を押さえながら他方の手でボルト6を回す等してボルト6とナット7を軽く螺合させる。そして、ボルト6の頭部6aがウェブ3aに軽く当接され、ナット本体部10が補強ウェブ5aに軽く当接される状態にする。これにより、カム部11はカム穴9に嵌合されてボルト6を軸とする回転を規制された状態となる。
【0033】
この後、動力式トルクレンチ等を用い、ボルト6の頭部6aを所定の締付トルクで締め付ける。このとき、カム部11はボルト6を軸とする回転(供回り)を規制されている。具体的には、ボルト6からカム部11に伝わる回転方向の力は、カム穴9に伝わる。しかし、カム穴9が形成された補強材5の補強フランジ5bは、サイドメンバ3のフランジ3bに当接されている。そして、カム部11を介してボルト6からカム穴9に伝わる回転方向の力は、下向きの力Fとなる。この下向きの力Fは、フランジ3bと補強フランジ5bとを圧着させる。よって、カム部11は、補強材5を介してフランジ3bから反力を受けることとなり、供回りを規制される。このため、ナット7はスパナ等の工具で押さえなくても回転することはなく、ボルト6及びナット7の締結作業を容易に行うことができる。そして、電動式トルクレンチ等の大きな回転トルクをスパナ等の工具で受ける必要がないため、締結作業を安全に行うことができる。このため、ナット7を工具で押さえるための安全対策を省略又は簡易なものにでき、ボルト6及びナット7の締結作業を安価に行うことができる。
【0034】
また従来、スパナ等の工具がナット7の位置に入らない場合、ナット7等を予め補強材5に溶接しておかなければならなかった。しかし、本実施の形態によれば、電動式トルクレンチ等の大きな回転トルクをスパナ等の工具で受ける必要がない。このため、予めナット7等を溶接しなければならない箇所を減らすことができ、溶接にかかる費用を抑制することができる。
【0035】
また、ボルト6の締付力により、補強フランジ5bはフランジ3bに押し付けられる。このため、その押付反力によってカム部11が補強材5に強固に押し付けられた状態となり、ナット7の緩みが防止される。
【0036】
また、ウェブ締結構造の剛性向上を目的としてフランジ3b及び補強フランジ5b間に接着剤(図示せず)を介在させてフランジ3b及び補強フランジ5bを接着する場合がある。この場合、従来の方法、すなわち、ナット(図示せず)を工具で押さえながらボルト6を締め付ける方法では、ボルト孔8及びボルト6間の寸法公差ゆえにボルト締結後、接着剤が硬化するまでフランジ3b及び補強フランジ5bをクランプ(図示せず)等で圧着させなければならなかった。しかし、本実施の形態に係る補強用締結構造によれば、ボルト6及びナット7を締結することで、フランジ3bに補強フランジ5bを圧着させることができる。このため、接着剤が硬化するまでフランジ3b及び補強フランジ5bをクランプなどで圧着させる必要がなく、フランジ3b及び補強フランジ5bを容易に接着できる。
【0037】
このように、本実施の形態は、ラダーフレーム2のサイドメンバ3に補強材5をボルト6及びナット7で締結してサイドメンバ3を補強する車体フレーム構造において、ナット7は、補強ウェブ5aに着座されるナット本体部10と、ナット本体部10からその軸方向に延びると共にナット7の中心軸Oに対して偏心して形成されるカム部11とを備え、ウェブ3aには、ボルト6を挿通させると共にその径方向の移動を規制するボルト孔8が形成され、補強ウェブ5aには、カム部11を嵌入させるカム穴9が形成され、カム穴9は、カム部11からボルト6の締結方向の回転力を受けたとき、その回転力が補強フランジ5bとフランジ3bを圧着させる方向の力Fとなるように配置される補強用締結構造を採用する。このため、サイドメンバ3に補強材5を容易かつ安全にボルト締結できる。そして、ボルト締結のための安全対策を省略又は簡易なものにでき、安価にボルト締結できる。
【0038】
また、カム穴9は、円形に形成され、カム部11は、カム穴9に嵌入される円柱状に形成される。このため、カム穴9及びカム部11を単純な形状で構成でき、一般的な加工機械で容易かつ安価に形成できる。
【0039】
以上、本開示の実施形態を詳細に述べたが、本開示は以下のような他の実施形態も可能である。
【0040】
(1)補強材5のカム穴9は、円形に形成されるものとしたが、これに限るものではない。例えば図6に示すように、カム穴20は前後方向に長い長円形に形成されてもよい。この場合、カム穴20は、カム部11の中心軸O回りの回転を規制するように上下方向の寸法を前述のカム穴9の直径と同等に形成されるとよい。カム穴20が前後方向に長く形成されることでサイドメンバ3に対する補強材5の前後方向の位置をカム穴20の長さの範囲で自由に変更することができる。
【0041】
(2)サイドメンバ3のウェブ3aにはボルト孔8が形成され、補強材5の補強ウェブ5aにはカム穴9が形成されるものとしたが、これに限るものではない。図7に示すように、逆に、ボルト孔8が補強ウェブ5aに形成され、カム穴9がウェブ3aに形成されてもよい。この場合、ナット7はサイドメンバ3の外側に位置され、ボルト6の頭部6aは補強材5の内側に位置される。またこの場合、カム穴9は、カム部11からボルト6の締結方向の回転力を受けたとき、その回転力が補強フランジ5bとフランジ3bを圧着させる方向の力となるように配置されるのは上述の実施の形態と同じである。しかし、ボルト6の回転方向に対するカム穴9及びカム部11の偏心位置が上述の実施の形態とは異なり、作用も異なるので、説明する。
【0042】
図8に示すように、カム穴9及びカム部11は、ボルト6の締結方向の回転力がカム穴9に上向きの力F1として伝わるよう、カム穴9の中心におけるボルト6の回転方向が上向き若しくは斜め上向きとなる偏心位置に配置される。
【0043】
カム穴9は、カム部11からボルト締結方向の回転力(上向きの力F1)を受けたとき、その回転力に対する反力(下向きの力F2)をカム部11に及ぼす。この反力は、ボルト6を介して補強ウェブ5aに伝わる。よって、補強フランジ5bはフランジ3bに圧着され、カム部11は供回りを規制される。
【0044】
(3)カム部11は、円柱状に形成されるものとしたが、これに限るものではない。例えばカム部11は、断面多角形等の非円形の柱状に形成されてもよい。
【0045】
(4)ナット本体部10は六角柱状に形成されるものとしたがこれに限るものではない。例えばナット本体部10は円柱状等の他の形状に形成されてもよい。
【0046】
(5)母材は車体フレーム1のサイドメンバ3に限るものではない。例えば母材は、機械、建築物、船舶等のフレーム(図示せず)等であってもよい。母材は、ウェブ3a及びウェブ3aから交差方向に延びるフランジ3bを有するものであればよい。
【0047】
前述の各実施形態の構成は、特に矛盾が無い限り、部分的にまたは全体的に組み合わせることが可能である。本開示の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本開示の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本開示に含まれる。従って本開示は、限定的に解釈されるべきではなく、本開示の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 車体フレーム
2 ラダーフレーム
3 サイドメンバ(母材)
3a ウェブ
3b フランジ
3c 側面
4 クロスメンバ
5 補強材
5a 補強ウェブ
5b 補強フランジ
6 ボルト
6a 頭部
6b 雄ネジ部
7 ナット
7a 雌ネジ部
8 ボルト孔
9 カム穴
10 ナット本体部
10a 外周面
10b 内接円
11 カム部
20 カム穴
O 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8