IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大塚化学株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】ゴム組成物、及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20221114BHJP
   C08K 5/3445 20060101ALI20221114BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20221114BHJP
   C08L 45/00 20060101ALI20221114BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K5/3445
C08K3/36
C08L45/00
B60C1/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018240987
(22)【出願日】2018-12-25
(65)【公開番号】P2020100765
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000206901
【氏名又は名称】大塚化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青▲柳▼ 誠一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 晃之
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-189911(JP,A)
【文献】特開昭53-36539(JP,A)
【文献】特開昭50-155549(JP,A)
【文献】米国特許第06605658(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(a)、(b)及び(c)を含み、
前記成分(c)100質量部に対する前記成分(b)の配合量は0.2~10質量部である、タイヤ用ゴム組成物:
成分(a) ゴム成分、
成分(b) 式(1)により表される化合物、式(2)により表される化合物、及び該化合物の塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物、
成分(c) シリカ。
【化1】
(式(1)中、R、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。RとRとは互いに結合してアルキリデン基を形成してもよく、R、R及びRのいずれか2つが互いに結合してアルキレン基を形成してもよい。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。)
【化2】
(式(2)中、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、アミノ基、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示し、Rはアルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。)
【請求項2】
前記成分(b)が式(1)により表される化合物である、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記成分(a)100質量部に対して、前記成分(c)を5~120質量部含む、請求項1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
更に成分(d)炭化水素系ポリマーを含む請求項1~3のいずれか一項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のタイヤ用ゴム組成物を用いて作製されたタイヤ。
【請求項6】
前記成分(a)、(b)及び(c)を含む原料成分を混合する工程(A)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のタイヤ用ゴム組成物の製造方法。
【請求項7】
前記工程(A)において更に前記成分(d)を混合する、請求項6に記載のタイヤ用ゴム組成物の製造方法。
【請求項8】
前記工程(A)が、前記成分(a)及び(b)を混合する工程(A-1)、並びに工程(A-1)で得られた混合物及び前記成分(c)を混合する工程(A-2)からなる、請求項6に記載のタイヤ用ゴム組成物の製造方法。
【請求項9】
前記工程(A-1)において更に前記成分(d)を混合する、請求項8に記載のタイヤ用ゴム組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両走行時の安全性の面から、ウェットグリップ性能(雨天時等で濡れた路面でのグリップ性能を指す)の向上が求められている。
【0003】
ウェットグリップ性能を向上させる方法として、タイヤのトレッド部のゴム成分にシリカを配合する方法が挙げられる。しかし、シリカとゴム成分との親和性が低く、またシリカ同士が凝集するため、ゴム成分内にシリカが均一に分散されないという課題がある。
【0004】
特許文献1には、芳香族ビニル-ジエン共重合ポリマーを含むゴム成分、シリカ、芳香族ビニル単量体、低分子量芳香族ビニル-ジエン系ゴム、及び酸化セリウムを含むタイヤ用ゴム組成物が、優れたウェットグリップ性能を有することが示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1のゴム組成物を用いても、タイヤのウェットグリップ性能の改良は必ずしも十分であるとは言えず、また、ゴム成分の種類が制限されるという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-75245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、優れたウェットグリップ性能を有するタイヤ用のゴム組成物を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的の一つは、優れたウェットグリップ性能を発現するタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、シリカを含むゴム組成物に特定のピラゾロン系化合物を配合することによって、得られるタイヤのウェットグリップ性能が向上することを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下に示すゴム組成物、該ゴム組成物の製造方法、及びタイヤを提供する。
項1.
下記成分(a)、(b)及び(c)を含むゴム組成物:
成分(a) ゴム成分、
成分(b) 式(1)により表される化合物、式(2)により表される化合物、及び該化合物の塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物、
成分(c) シリカ。
【0011】
【化1】
(式(1)中、R、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。RとRとは互いに結合してアルキリデン基を形成してもよく、R、R及びRのいずれか2つが互いに結合してアルキレン基を形成してもよい。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。)
【0012】
【化2】
(式(2)中、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、アミノ基、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示し、Rはアルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。)
項2.
前記成分(b)が式(1)により表される化合物である、項1に記載のゴム組成物。
項3.
前記成分(a)100質量部に対して、前記成分(c)を5~120質量部含む、項1又は2に記載のゴム組成物。
項4.
更に成分(d)炭化水素系ポリマーを含む項1~3のいずれかに記載のゴム組成物。
項5.
項1~4のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製されたタイヤ。
項6.
前記成分(a)、(b)及び(c)を含む原料成分を混合する工程(A)を含む、ゴム組成物の製造方法。
項7.
前記工程(A)において更に前記成分(d)を混合する、項6に記載のゴム組成物の製造方法。
項8.
前記工程(A)が、前記成分(a)、及び(b)を混合する工程(A-1)、並びに工程(A-1)で得られた混合物及び前記成分(c)を混合する工程(A-2)からなる、項6に記載の製造方法。
項9.
前記工程(A-1)において更に前記成分(d)を混合する、項8に記載のゴム組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、優れたウェットグリップ性能を有するタイヤ用のゴム組成物及び該ゴム組成物の製造方法を提供することができる。
【0014】
本発明は、優れたウェットグリップ性能を発現するタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0016】
(1.ゴム組成物)
本発明のゴム組成物は、下記成分(a)、(b)、及び(c)を含む。
成分(a) ゴム成分、
成分(b) 式(1)により表される化合物、式(2)により表される化合物、及び該化合物の塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物、
成分(c) シリカ。
【0017】
【化3】
(式(1)中、R、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。RとRとは互いに結合してアルキリデン基を形成してもよく、R、R及びRのいずれか2つが互いに結合してアルキレン基を形成してもよい。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。)
【0018】
【化4】
(式(2)中、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、アミノ基、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示し、Rはアルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。)
【0019】
(1.1.成分(a):ゴム成分)
本発明のゴム組成物のゴム成分としては、特に制限はなく、例えば、天然ゴム(NR)、合成ジエン系ゴム、及び天然ゴムと合成ジエン系ゴムとの混合物、並びにこれら以外の非ジエン系ゴムが挙げられる。
【0020】
天然ゴムとしては天然ゴムラテックス、技術的格付けゴム(TSR)、スモークドシート(RSS)、ガタパーチャ、杜仲由来天然ゴム、グアユール由来天然ゴム、ロシアンタンポポ由来天然ゴムなどが挙げられ、さらにこれら天然ゴムを変性した、エポキシ化天然ゴム、メタクリル酸変性天然ゴム、ハロゲン変性天然ゴム、脱蛋白天然ゴム、マレイン酸変性天然ゴム、スルホン酸変性天然ゴム、スチレン変性天然ゴムなどの変性天然ゴムなども、本発明の天然ゴムに含まれる。
【0021】
合成ジエン系ゴムとしては、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)、スチレン-イソプレン-スチレン三元ブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレン三元ブロック共重合体(SBS)等、及びこれらの変性合成ジエン系ゴムが挙げられる。変性合成ジエン系ゴムには、主鎖変性、片末端変性、両末端変性などの変性手法によるジエン系ゴムが包含される。ここで、変性合成ジエン系ゴムの変性官能基としては、エポキシ基、アミノ基、アルコキシシリル基、水酸基などの各種官能基が挙げられ、これら官能基は1種又は2種以上が変性合成ジエン系ゴムに含まれていてもよい。
【0022】
合成ジエン系ゴムの製造方法は、特に制限はなく、乳化重合、溶液重合、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などが挙げられる。また、合成ジエン系ゴムのガラス転移点においても、特に制限はない。
【0023】
また、天然ゴム及び合成ジエン系ゴムの二重結合部のシス/トランス/ビニルの比率については、特に制限はなく、いずれの比率においても好適に用いることができる。また、ジエン系ゴムの数平均分子量および分子量分布は、特に制限はないが、数平均分子量500~3000000、分子量分布1.5~15が好ましい。非ジエン系ゴムとしては、公知のものを広く使用することができる。
【0024】
ゴム成分は、1種単独で、又は2種以上を混合(ブレンド)して用いることができる。中でも、好ましいゴム成分としては、天然ゴム、IR、SBR、BR又はこれらから選ばれる2種以上の混合物であり、より好ましくは天然ゴム、SBR、BR又はこれらから選ばれる2種以上の混合物である。
【0025】
タイヤ用ゴム組成物中の成分(a)、(b)、(c)、及び(d)の合計100質量%中における成分(a)の含有量は、30~99質量%であることが好ましく、35~98質量%であることがより好ましい。成分(a)が30質量%以上含まれることにより、ゴム組成物に弾性を付与することができる。一方、タイヤ用ゴム組成物中に含まれる成分(a)が99質量%以下であることにより、ゴム組成物のコストを低減させ、その結果、経済性を向上させることが可能である。
【0026】
天然ゴム、SBR、及びBRを混合して用いる場合、ゴム成分の混合割合は、ゴム成分100質量%のうち、天然ゴムが40~100質量%、SBRが10~80質量%、BRが5~40質量%が好ましく、ゴム成分100質量%のうち、天然ゴムが60~90質量%、SBRが20~60質量%、BRが10~25質量%が特に好ましい。
【0027】
(1.2.成分(b):式(1)又は(2)により表される化合物又は該化合物の塩)
本発明のゴム組成物は、下記式(1)により表される化合物、その塩(化合物(1))、下記式(2)により表される化合物、及びその塩(化合物(2))からなる群より選択される1種以上を含む。
【0028】
【化5】
(式(1)中、R、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。RとRとは互いに結合してアルキリデン基を形成してもよく、R、R及びRのいずれか2つが互いに結合してアルキレン基を形成してもよい。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。)
【0029】
【化6】
(式(2)中、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、アミノ基、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示し、Rはアルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。)
【0030】
式(1)中、R、R及びRが、同一又は異なって、水素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基であることが好ましい。
【0031】
式(1)中、Rが水素原子であることが好ましい。
【0032】
式(1)中、Rが、水素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基であることが好ましく、水素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、ベンジル基、フェニル基、ナフチル基、又はフリル基であることがより好ましく、水素原子、又は炭素数1~4の直鎖状アルキル基であることが更に好ましい。
【0033】
式(1)中、R及びRの少なくとも一方が水素原子であることが好ましく、R及びRが共に水素原子であることがより好ましい。
【0034】
式(1)中、Rが水素原子であり、Rが水素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基であり、R及びRが共に水素原子であること、及び、Rが水素原子であり、Rが水素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基であり、RとRとが一緒になってアルキリデン基を形成していることがさらに好ましく、Rが水素原子であり、Rが水素原子若しくは炭素数1~4の直鎖状アルキル基であり、R及びRが共に水素原子であることが特に好ましい。
【0035】
式(2)中、Rは水素原子であり、Rは炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、アラルキル基、又はアリール基であり、R及びRは同一又は異なって、水素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、アラルキル基、アリール基、アミノ基又は複素環基であることが好ましい。
【0036】
式(2)の中でも、Rが炭素数1~4の直鎖状アルキル基、アラルキル基、又はアリール基であることが好ましく、炭素数1~4の直鎖状アルキル基、又はアリール基であることがより好ましい。
【0037】
式(2)中、R及びRが同一又は異なって、水素原子、炭素数1~4の直鎖状アルキル基、又はアミノ基であることが好ましい。
【0038】
式(2)の中でも、Rは水素原子であり、Rが炭素数1~4の直鎖状アルキル基、又はアリール基であり、R及びRが同一又は異なって、水素原子、炭素数1~4の直鎖状アルキル基、又はアミノ基であることが好ましい。
【0039】
化合物(1)及び化合物(2)の中でも、化合物(1)が特に好ましい。
【0040】
化合物(1)としては、例えば、5-ピラゾロン、3-メチル-5-ピラゾロン、3-(ナフタレン-2-イル)-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、3-(フラン-2-イル)-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、3-フェニル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、3-プロピル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、3-ウンデシル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、4-(2-ヒドロキシエチル)-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、4-ベンジル-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)オン、4,4’-(フェニルメチレン)ビス(5-メチル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン)、4-[(ジメチルアミノ)メチリデン]-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、4-メチル-2,3-ジアゾスピロ[4.4]ノン-3エン-1-オン、5-メチル-2-(4-ニトロフェニル)-1H-ピラゾール-3(2H)-オン、5-メチル-2-フェニル-2,4-ジヒドロ-3H-ピラゾール-3-オン、4,5,6,7-テトラヒドロ-2H-インダゾール-3(3aH)-オン、4-{[4-ジメチルアミノ]フェニル}メチリデン}-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、4,4’-(4-ヒドロキシフェニルメチレン)ビス(5-メチル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン)、及び1,3-ジフェニル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、4,4’-(4-ニトロフェニルメチレン)ビス(5-メチル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン)等が挙げられる。
【0041】
化合物(2)としては、例えば、1,5-ジメチル-2-フェニル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン、1-フェニル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン、4-アミノ-1,5-ジメチル-2-フェニル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン等が挙げられる。
【0042】
中でも、好ましい化合物は、化合物(1)であり、その中でも、5-ピラゾロン、3-メチル-5-ピラゾロン、3-(ナフタレン-2-イル)-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、3-(フラン-2-イル)-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、3-フェニル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、及び3-プロピル-1H-ピラゾール-5(4H)-オンがより好ましい。
【0043】
本発明のゴム組成物における成分(b)は、これら化合物(1)及び(2)として上記した化合物を一種のみ単独で含んでもよいし、二種以上を混合して含んでもよい。
【0044】
化合物(1)又は(2)の中には、互変異性体を生じるものがある。互変異性化が可能である(例えば、溶液中である)場合に、互変異性体の化学平衡に達し得る。化合物(1)又は(2)は、例えば、式(3)~(9)により表されるような互変異性体として存在することができる。
【0045】
前記式(1)において、R及びRが水素原子である化合物(化合物(1)-A)には、以下の式(3)~(5)により表される互変異性体が存在する。
【0046】
【化7】
(式中、R及びRは、前記に同じ。)
【0047】
前記式(1)において、Rが水素原子である化合物(化合物(1)-B)には、以下の式(6)~(7)により表される互変異性体が存在する。
【0048】
【化8】
(式中、R、R及びRは、前記に同じ。)
【0049】
前記式(1)において、Rが水素原子である化合物(化合物(1)-C)には、以下の式(8)により表される互変異性体が存在する。
【0050】
【化9】
(式中、R、R及びRは、前記に同じ。)
【0051】
前記式(2)において、Rが水素原子である化合物(化合物(2)-A)には、以下の式(9)により表される互変異性体が存在する。
【0052】
【化10】
(式中、R、R及びRは、前記に同じ。)
【0053】
上記式(3)~(9)により表されるような互変異性体と、化合物(1)又は(2)とは、どちらの異性体も共存する平衡状態に達している。よって、別段の記載がない限り、本明細書において、化合物(1)又は(2)のすべての互変異性体の形態は、本発明の範囲内であるものとする。
【0054】
また、式(1)又は(2)により表される化合物の塩としては、特に限定はなく、あらゆる種類の塩が含まれる。このような塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、メタンスルホン酸塩等の有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;ジメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム等のアンモニウム塩等が挙げられる。
【0055】
本発明のゴム組成物における成分(b)としては、化合物(1)及び/又は化合物(2)が任意の割合で含まれる混合物を含んでもよい。
【0056】
上記成分(b)の配合量は、ゴム組成物中の上記成分(a)100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましく、0.05~30質量部であることがより好ましく、0.1~10質量部であることが更に好ましい。
【0057】
タイヤ用ゴム組成物中の成分(a)、(b)、(c)、及び(d)の合計100質量%中における成分(b)の含有量は、0.001~40質量%であることが好ましく、0.005~30質量%であることがより好ましい。成分(b)が0.001質量%以上含まれることにより、ウェットグリップ性能を向上することができる。一方、タイヤ用ゴム組成物中に含まれる成分(b)が40質量%以下であることにより、ゴム組成物の耐久性を低下させず、維持することができる。
【0058】
本明細書において、「アルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル等の炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、更に、1-エチルプロピル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、3-メチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、5-プロピルノニル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル等を加えた炭素数5~18の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等の炭素数3~8の環状アルキル基等が挙げられる。
【0059】
本明細書において、「アラルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、ベンジル、フェネチル、トリチル、1-ナフチルメチル、2-(1-ナフチル)エチル、2-(2-ナフチル)エチル基等が挙げられる。
【0060】
本明細書において、「アリール基」としては、特に限定はなく、例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、ジヒドロインデニル、9H-フルオレニル基等が挙げられる。
【0061】
本明細書において、「複素環基」としては、特に限定はなく、例えば、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピラジニル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ピリミジル、3-ピリダジル、4-ピリダジル、4-(1,2,3-トリアジル)、5-(1,2,3-トリアジル)、2-(1,3,5-トリアジル)、3-(1,2,4-トリアジル)、5-(1,2,4-トリアジル)、6-(1,2,4-トリアジル)、2-キノリル、3-キノリル、4-キノリル、5-キノリル、6-キノリル、7-キノリル、8-キノリル、1-イソキノリル、3-イソキノリル、4-イソキノリル、5-イソキノリル、6-イソキノリル、7-イソキノリル、8-イソキノリル、2-キノキサリル、3-キノキサリル、5-キノキサリル、6-キノキサリル、7-キノキサリル、8-キノキサリル、3-シンノリル、4-シンノリル、5-シンノリル、6-シンノリル、7-シンノリル、8-シンノリル、2-キナゾリル、4-キナゾリル、5-キナゾリル、6-キナゾリル、7-キナゾリル、8-キナゾリル、1-フタラジル、4-フタラジル、5-フタラジル、6-フタラジル、7-フタラジル、8-フタラジル、1-テトラヒドロキノリル、2-テトラヒドロキノリル、3-テトラヒドロキノリル、4-テトラヒドロキノリル、5-テトラヒドロキノリル、6-テトラヒドロキノリル、7-テトラヒドロキノリル、8-テトラヒドロキノリル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、1-イミダゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、5-イミダゾリル、1-ピラゾリル、3-ピラゾリル、4-ピラゾリル、5-ピラゾリル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、3-イソチアゾリル、4-イソチアゾリル、5-イソチアゾリル、4-(1,2,3-チアジアゾリル)、5-(1,2,3-チアジアゾリル)、3-(1,2,5-チアジアゾリル)、2-(1,3,4-チアジアゾリル)、4-(1,2,3-オキサジアゾリル)、5-(1,2,3-オキサジアゾリル)、3-(1,2,4-オキサジアゾリル)、5-(1,2,4-オキサジアゾリル)、3-(1,2,5-オキサジアゾリル)、2-(1,3,4-オキサジアゾリル)、1-(1,2,3-トリアゾリル)、4-(1,2,3-トリアゾリル)、5-(1,2,3-トリアゾリル)、1-(1,2,4-トリアゾリル)、3-(1,2,4-トリアゾリル)、5-(1,2,4-トリアゾリル)、1-テトラゾリル、5-テトラゾリル、1-インドリル、2-インドリル、3-インドリル、4-インドリル、5-インドリル、6-インドリル、7-インドリル、1-イソインドリル、2-イソインドリル、3-イソインドリル、4-イソインドリル、5-イソインドリル、6-イソインドリル、7-イソインドリル、1-ベンゾイミダゾリル、2-ベンゾイミダゾリル、4-ベンゾイミダゾリル、5-ベンゾイミダゾリル、6-ベンゾイミダゾリル、7-ベンゾイミダゾリル、2-ベンゾフラニル、3-ベンゾフラニル、4-ベンゾフラニル、5-ベンゾフラニル、6-ベンゾフラニル、7-ベンゾフラニル、1-イソベンゾフラニル、3-イソベンゾフラニル、4-イソベンゾフラニル、5-イソベンゾフラニル、6-イソベンゾフラニル、7-イソベンゾフニル、2-ベンゾチエニル、3-ベンゾチエニル、4-ベンゾチエニル、5-ベンゾチエニル、6-ベンゾチエニル、7-ベンゾチエニル、2-ベンゾオキサゾリル、4-ベンゾオキサゾリル、5-ベンゾオキサゾリル、6-ベンゾオキサゾリル、7-ベンゾオキサゾリル、2-ベンゾチアゾリル、4-ベンゾチアゾリル、5-ベンゾチアゾリル、6-ベンゾチアゾリル、7-ベンゾチアゾリル、1-インダゾリル、3-インダゾリル、4-インダゾリル、5-インダゾリル、6-インダゾリル、7-インダゾリル、2-モルホリル、3-モルホリル、4-モルホリル、1-ピペラジル、2-ピペラジル、1-ピペリジル、2-ピペリジル、3-ピペリジル、4-ピペリジル、2-テトラヒドロピラニル、3-テトラヒドロピラニル、4-テトラヒドロピラニル、2-テトラヒドロチオピラニル、3-テトラヒドロチオピラニル、4-テトラヒドロチオピラニル、1-ピロリジル、2-ピロリジル、3-ピロリジル、フラニル、2-テトラヒドロフラニル、3-テトラヒドロフラニル、2-テトラヒドロチエニル、3-テトラヒドロチエニル、5-メチル-3-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾール-4-イル基、モルホリノ基等が挙げられる。
【0062】
本明細書において、「アルキレン基」としては、特に限定はなく、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基等を挙げることができる。これらアルキレン基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含んでいてもよく、フェニレン基を介していてもよい。このようなアルキレン基としては、例えば、-CHNHCH-、-CHNHCHCH-、-CHNHNHCH-、-CHCHNHCHCH-、-CHNHNHCHCH-、-CHNHCHNHCH-、-CHCHCHNHCHCHCH-、-CHOCHCH-、-CHCHOCHCH-、-CHSCHCH-、-CHCHSCHCH-、
【0063】
【化11】
等が挙げられる。
【0064】
本明細書において、「アルキリデン基」としては、特に限定はなく、例えば、メチリデン、エチリデン、プロピリデン、イソプロピリデン、ブチリデン基等が挙げられる。
【0065】
これらアルキル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、及びアルキレン基は、置換可能な任意の位置にそれぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。該「置換基」としては、特に限定はなく、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、アミノアルキル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルボキシル基、カルボキシアルキル基、ホルミル基、ニトリル基、ニトロ基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、水酸基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基等が挙げられる。該置換基は、好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個有していてもよい。
【0066】
本明細書において、「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられ、好ましくは塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子である。
【0067】
本明細書において、「アミノ基」としては、-NHで表されるアミノ基だけでなく、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、n-プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、n-ブチルアミノ、イソブチルアミノ、s-ブチルアミノ、t-ブチルアミノ、1-エチルプロピルアミノ、n-ペンチルアミノ、ネオペンチルアミノ、n-ヘキシルアミノ、イソヘキシルアミノ、3-メチルペンチルアミノ基等の直鎖状又は分岐鎖状のモノアルキルアミノ基;ジメチルアミノ、エチルメチルアミノ、ジエチルアミノ基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を2つ有するジアルキルアミノ基等の置換アミノ基も含まれる。
【0068】
本明細書において、「アミノアルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、アミノメチル、メチルアミノメチル、エチルアミノメチル、ジメチルアミノメチル、エチルメチルアミノメチル、ジエチルアミノメチル、2-アミノエチル、2-(メチルアミノ)エチル、2-(エチルアミノ)エチル、2-(ジメチルアミノ)エチル、2-(エチルメチルアミノ)エチル、2-(ジエチルアミノ)エチル、3-アミノプロピル、3-(メチルアミノ)プロピル、3-(エチルアミノ)プロピル、3-(ジメチルアミノ)プロピル、3-(エチルメチルアミノ)プロピル、3-(ジエチルアミノ)プロピル基等のアミノアルキル基、モノアルキル置換アミノアルキル基又はジアルキル置換アミノアルキル基等が挙げられる。
【0069】
本明細書において、「アルコキシカルボニル基」としては、特に限定はなく、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0070】
本明細書において、「アシル基」としては、特に限定はなく、例えば、アセチル、プロピオニル、ピバロイル基等の炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状アルキルカルボニル基が挙げられる。
【0071】
本明細書において、「アシルオキシ基」としては、特に限定はなく、例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、n-ブチリルオキシ基等が挙げられる。
【0072】
本明細書において、「アミド基」としては、特に限定はなく、例えば、アセトアミド、ベンズアミド基等のカルボン酸アミド基;チオアセトアミド、チオベンズアミド基等のチオアミド基;N-メチルアセトアミド、N-ベンジルアセトアミド基等のN-置換アミド基;等が挙げられる。
【0073】
本明細書において、「カルボキシアルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、カルボキシメチル、カルボキシエチル、カルボキシ-n-プロピル、カルボキシ-n-ブチル、カルボキシ-n-ペンチル、カルボキシ-n-ヘキシル基等のカルボキシアルキル基が挙げられる。
【0074】
本明細書において、「ヒドロキシアルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシ-n-プロピル、ヒドロキシ-n-ブチル基等のヒドロキシアルキル基が挙げられる。
【0075】
本明細書において、「アルコキシ基」としては、特に限定はなく、例えば、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、t-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシ基の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基;シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロヘプチルオキシ、シクロオクチルオキシ基等の環状アルコキシ基等が挙げられる。
【0076】
本明細書において、「アリールオキシ基」としては、特に限定はなく、例えば、フェノキシ、ビフェニルオキシ、ナフトキシ基等が挙げられる。
【0077】
本明細書において、「アルキルチオ基」としては、特に限定はなく、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、及びn-プロピルチオ基等が挙げられる。
【0078】
本明細書において、「アリールチオ基」としては、特に限定はなく、例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ビフェニルチオ基等が挙げられる。
【0079】
(1.3.成分(c):シリカ)
本発明のゴム組成物は、シリカを含む。
【0080】
使用するシリカとしては、特に限定はなく、例えば、市販品を好適に使用できる。中でも、好ましいシリカとしては、湿式シリカ、乾式シリカ、又はコロイダルシリカであり、より好ましくは湿式シリカである。これらのシリカは、ゴム成分との親和性を向上させるために、シリカの表面が有機処理されていてもよい。かかる有機処理としては特に限定はなく、例えばシランカップリング剤による処理を施したものを例示することができる。
【0081】
シリカのBET比表面積としては、特に制限はなく、例えば、40~350m/gであることが好ましい。シリカのBET比表面積がかかる範囲内であることにより、ゴム靱性及びゴム成分中への分散性を両立できるという利点がある。当該BET比表面積は、ISO5794/1に準拠して測定されるものとする。
【0082】
かかる観点から、好ましいシリカとしては、BET比表面積が80~300m/gの範囲にあるシリカであり、より好ましくは、BET比表面積100~270m/gであるシリカであり、更に好ましくは、BET比表面積110~270m/gの範囲にあるシリカである。
【0083】
かかるシリカの市販品としては、Quechen Silicon Chemical Co.,Ltd.製の商品名「HD165MP」(BET比表面積=165m/g)、「HD115MP」(BET比表面積=115m/g)、「HD200MP」(BET比表面積=200m/g)、「HD250MP」(BET比表面積=250m/g)、東ソー・シリカ株式会社製の商品名「ニップシールAQ」(BET比表面積=205m/g)、「ニップシールKQ」(BET比表面積=240m/g)、デグッサ社製の商品名「ウルトラジルVN3」(BET比表面積=175m/g)等が挙げられる。
【0084】
本発明のゴム組成物において、化合物(1)及び/又は化合物(2)を配合することにより、シリカの分散性が大幅に向上し、ゴム組成物のウェットグリップ性能が著しく改良できる。つまり、前記化合物(1)及び/又は化合物(2)は、シリカの分散剤として利用でき、好ましくは、ゴム用分散剤として利用できる。
【0085】
上記成分(c)の配合量は、ゴム組成物中の上記成分(a)100質量部に対して、10~100質量部であることが好ましく、20~80質量部であることがより好ましく、40~60質量部であることが更に好ましい。
【0086】
同様に、ゴム組成物中の成分(c)100質量部に対して、成分(b)の配合量は、0.2~10質量であることが好ましく、0.5~5質量部であることがより好ましく、1~3質量部であることが更に好ましい。成分(c)100質量部に対して成分(b)が0.2質量部以上であることにより、ウェットグリップ性が向上する。一方、成分(c)100質量部に対して成分(b)が10質量部以下であることにより、硬度を保持できる。
【0087】
タイヤ用ゴム組成物中の成分(a)、(b)、(c)、及び(d)の合計100質量%中における成分(c)の含有量は、1~70質量%であることが好ましく、1.5~60質量%であることがより好ましい。成分(c)が1質量%以上含まれることにより、ゴム組成物の耐摩耗性を低下させず、維持させることができる。一方、タイヤ用ゴム組成物中に含まれる成分(c)が70質量%以下であることにより、ゴム組成物に弾性を付与することができるという利点がある。
【0088】
(1.4.成分(d):炭化水素系ポリマー)
本発明のゴム組成物は、更に成分(d)として、炭化水素系ポリマーを含むことが好ましい。
【0089】
本明細書中において、「炭化水素系ポリマー」とは、ヘテロ原子を含む極性基(例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、及びケトン基等)を構造中に有さないポリマーであると定義される。
【0090】
炭化水素系ポリマーとしては、例えば、ジシクロペンタジエン樹脂、スチレンポリマー、クマロンインデン樹脂、及び水素添加ジシクロペンタジエン樹脂等が挙げられ、その中でも、ジシクロペンタジエン樹脂、及び水素添加ジシクロペンタジエン樹脂等が好ましい。
【0091】
上記成分(d)の配合量は、ゴム組成物中の上記成分(a)100質量部に対して、5~40質量部とすることが好ましく、10~30質量部とすることがより好ましく、15~25質量部とすることがさらに好ましい。
【0092】
タイヤ用ゴム組成物中の成分(a)、(b)、(c)、及び(d)の合計100質量%中における成分(d)の含有量は、1~20質量%であることが好ましく、1.5~10質量%であることがより好ましい。成分(d)が1質量%以上含まれることにより、ウェットグリップ性能を向上させることができる。一方、タイヤ用ゴム組成物中に含まれる成分(d)が20質量%以下であることにより、ゴム組成物の耐摩耗性を低下させず、維持させることができるという利点がある。
【0093】
(1.5.その他配合剤)
本発明のゴム組成物には、上記成分以外にも、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、老化防止剤、オゾン防止剤、軟化剤、加工助剤、ワックス、液状ゴム、発泡剤、オイル、ステアリン酸等の炭素数8~30の脂肪酸、酸化亜鉛(ZnO)、加硫促進剤、加硫遅延剤、及び加硫剤(硫黄)等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら配合剤としては、タイヤ用のゴム組成物に使用される公知のものを広く採用することが可能であり、例えば、市販品を好適に使用することができる。
【0094】
また、上記成分(c)が配合されたゴム組成物においては、シリカによるゴム組成物の靱性を高める目的、又はゴム組成物の引裂き強度と共に耐摩耗性を高める目的で、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、ジルコネートカップリング剤を配合してもよい。
【0095】
上記成分(c)と併用可能なシランカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなシランカップリング剤として、例えばスルフィド系、ポリスルフィド系、チオエステル系、チオール系、オレフィン系、エポキシ系、アミノ系、アルキル系のシランカップリング剤が挙げられる。
【0096】
スルフィド系のシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(3-モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-モノエトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-モノエトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-モノメトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-モノメトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-モノメトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-モノエトキシジメチルシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-モノエトキシジメチルシリルエチル)トリスルフィド、ビス(2-モノエトキシジメチルシリルエチル)ジスルフィド等が挙げられる。これらの内、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが特に好ましい。
【0097】
チオエステル系のシランカップリング剤としては、例えば、3-ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0098】
チオール系のシランカップリング剤としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-[エトキシビス(3,6,9,12,15-ペンタオキサオクタコサン-1-イルオキシ)シリル]-1-プロパンチオール等を挙げることができる。
【0099】
オレフィン系のシランカップリング剤としては、例えば、ジメトキシメチルビニルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルエトキシビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-(メトキシジメトキシジメチルシリル)プロピルアクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート、3-[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、3-[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、3-(トリエトキシシリル)プロピルメタクリレート、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート等を挙げることができる。
【0100】
エポキシ系のシランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、ジエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、トリエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)シラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0101】
アミノ系のシランカップリング剤としては、例えば、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-エトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、3-アミノプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0102】
アルキル系のシランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、メチルトリエトキシシランが好ましい。
【0103】
これらシランカップリング剤の中でも、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドを特に好ましく使用することができる。
【0104】
上記成分(c)と併用可能なチタネートカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなチタネートカップリング剤として、例えばアルコキシド系、キレート系、アシレート系のチタネートカップリング剤が挙げられる。
【0105】
アルコキシド系のチタネートカップリング剤としては、例えば、テトライソプロピルチネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラオクチルチタネート、テトラターシャリーブチルチタネート、テトラステアリルチタネート等を挙げることができる。これらの内、テトライソプロピルチタネートが好ましい。
【0106】
キレート系のチタネートカップリング剤としては、例えば、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、ドデシルベンゼンスルホン酸チタン化合物、リン酸チタン化合物、チタンオクチレングリコレート、チタンエチルアセトアセテート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンエタノールアミネート、チタンオクチレングリコレート、チタンアミノエチルアミノエタノレート等を挙げることができる。これらの内、チタンアセチルアセトネートが好ましい。
【0107】
アシレート系のチタネートカップリング剤としては、例えば、チタンイソステアレート等を挙げることができる。
【0108】
上記成分(c)と併用可能なアルミネートカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなアルミネートカップリング剤として、9-オクタデセニルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムセカンダリーブトキシド、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート等が挙げることができる。これらの内、9-オクタデセニルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートが好ましい。
【0109】
上記成分(c)と併用可能なジルコネートカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなジルコネートカップリング剤として、例えばアルコキシド系、キレート系、アシレート系のジルコネートカップリング剤が挙げられる。
【0110】
アルコキシド系のジルコニウム系カップリング剤としては、例えば、ノルマルプロピルジルコネート、ノルマルブチルジルコネート等を挙げることができる。この内、ノルマルブチルジルコネートが好ましい。
【0111】
キレート系のジルコネートカップリング剤としては、例えば、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムエチルアセトアセテート、ジルコニウムラクテートアンモニウム塩等を挙げることができる。この内、ジルコニウムテトラアセチルアセトネートが好ましい。
【0112】
アシレート系のジルコネートカップリング剤としては、例えば、ステアリン酸ジルコニウム、オクチル酸ジルコニウム等を挙げることができる。この内、ステアリン酸ジルコニウムが好ましい。
【0113】
本発明においては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、ジルコネートカップリング剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0114】
本発明のゴム組成物のシランカップリング剤の配合量は、上記成分(c)100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、3~15質量部がより好ましい。0.1質量部以上とすることにより、ゴム組成物の引裂き強度向上の効果をより好適に発現することができ、20質量部以下とすることにより、ゴム組成物のコストを低減させ、その結果、経済性を向上させることが可能である。
【0115】
(2.ゴム組成物の製造方法)
本発明のゴム組成物の製造方法としては、上記成分(a)、(b)、及び(c)、必要に応じて(d)を混合すればよく、配合する順序は適宜設定されれば良い。例えば、上記成分(a)、(b)、及び(c)を含む原料成分を混合する工程(A)を含む方法、上記成分(a)、及び(b)を含む原料成分を混合する工程(A)、並びに、工程(A)で得られる混合物、及び成分(c)を混合する工程(B)を含む方法、上記成分(a)、及び(c)を含む原料成分を混合する工程(A)、並びに、工程(A)で得られる混合物、及び成分(b)を混合する工程(B)を含む方法、上記成分(a)、及び(b)を含む原料成分を混合する工程(A)、並びに、工程(A)で得られる混合物、及び成分(c)を混合する工程(B)を含む方法、上記成分(a)、及び(c)を含む原料成分を混合する工程(A)、並びに、工程(A)で得られる混合物、及び成分(b)を混合する工程(B)を含む方法等が挙げられる。
【0116】
上記成分(d)を加える場合は、上記の方法の工程(A)又は工程(B)のいずれかの工程において、添加すれば良い。
【0117】
その中でも好ましい製造方法としては、上記成分(a)、(b)、及び(c)を含む原料成分を混練する工程(A)を含む方法である。
【0118】
上記成分(d)を加える場合の好ましい製造方法としては、上記成分(a)、(b)、(c)及び(d)を含む原料成分を混練する工程(A)を含む方法である。
【0119】
(2.1.工程(A))
本発明の製造方法において、好ましい工程(A)は、上記成分(a)、(b)、及び(c)、必要に応じて(d)を含む原料成分を混合する工程である。
【0120】
本明細書において、「混合」には、単に混ぜ合わせるという態様のみならず、いわゆる「混練」という態様も含まれるものとする。
【0121】
工程(A)においては、上記成分(a)、(b)、及び(c)、必要に応じて(d)を含む原料成分を混合する。この混合方法においては、各成分の全量を一度に混合してもよく、粘度調整等の目的に応じて、各成分を分割投入して混合してもよい。また、上記成分(a)、及び(b)を混合した後、上記成分(c)を投入するか、上記成分(a)、及び(c)を混合した後、上記成分(b)を投入して混合してもよく、上記成分(d)を混合する場合、上記成分(a)、(b)及び(c)を混合した後、上記成分(d)を投入するか、上記成分(a)、(b)、及び(d)を混合した後、上記成分(c)を投入するか、上記成分(a)、(c)、及び(d)を混合した後、上記成分(b)を投入するか、上記成分(a)、及び(b)を混合した後、上記成分(c)、及び(d)を投入するか、上記成分(a)、及び(c)を混合した後、上記成分(b)、及び(d)を投入するか、上記成分(a)、及び(d)を混合した後、上記成分(b)、及び(c)を投入して混合してもよい。各成分を均一に分散させるために、混合操作を繰り返し行ってもよい。また、充填材を予め湿式方法および又は乾式混合方法によりゴムに添加した充填材マスターバッチゴムを使用しても良い。
【0122】
また、工程(A)における別の混合方法としては、上記成分(a)及び(b)、必要に応じて(d)を混合する工程(A-1)、並びに工程(A-1)で得られた混合物と上記成分(c)を含む原料成分とを混合する工程(A-2)を含む二段階の混合方法を挙げることができる。
【0123】
工程(A)におけるゴム組成物を混合する際の温度としては、特に制限はなく、例えば、ゴム組成物の温度が100~190℃であることが好ましく、110~175℃であることがより好ましく、120~170℃であることがさらに好ましい。
【0124】
工程(A)における混合時間としては、特に制限はなく、例えば、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、1分間から8分間であることがさらに好ましい。
【0125】
また、あらかじめ上記成分(a)及び(b)を任意の割合で混合されたマスターバッチを用いてもよい。
【0126】
マスターバッチの成分(b)の配合量は、上記成分(a)100質量部に対して、0.01~200質量部が好ましく、0.1~100質量部が特に好ましい。
【0127】
工程(A-1)における上記成分(a)及び(b)、必要に応じて(d)を混合する際の温度としては、60~190℃であることが好ましく、70~160℃であることがより好ましく、80~150℃であることがさらに好ましい。該混合温度を60℃以上とすることにより反応をスムーズに進行させることが可能であり、また、混合温度を190℃以下とすることにより、ゴムの劣化を抑制することが可能となる。
【0128】
工程(A-1)における混合時間としては、10秒間~20分間が望ましく、30秒間~10分間であることがより好ましく、60秒間~7分間であることがさらに好ましい。該混合時間を10秒以上とすることにより反応を充分に進行させることが可能である。一方、混合時間を20分間以内とすることにより、生産性の面で優れる。
【0129】
工程(A-2)における工程(A-1)で得られた混合物と上記成分(c)とを混合する際の温度としては、特に制限はなく、例えば、混合物の温度が100~190℃であることが好ましく、110~175℃であることがより好ましく、130~170℃であることがさらに好ましい。
【0130】
工程(A-2)における混合時間としては、特に制限はなく、例えば、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、1分間から8分間であることがさらに好ましい。
【0131】
(2.2.工程(B))
本発明の製造方法において、好ましい工程(B)は、工程(A)で得られる混合物、更に必要に応じて、その他配合剤を混合する工程である。
【0132】
工程(B)は、加熱条件下で行うことができる。該工程の加熱温度としては、特に制限はなく、例えば、60~140℃であることが好ましく、80~120℃であることがより好ましく、90~120℃であることがさらに好ましい。
【0133】
混合時間としては、特に制限はなく、例えば、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、60秒間から5分間であることがさらに好ましい。
【0134】
工程(A)から工程(B)に進む際には、前段階の工程終了後の温度より、30℃以上低下させてから次の工程(B)へ進むことが好ましい。
【0135】
工程(A)においては、バンバリーミキサー、ロール、インテンシブミキサー、ニーダー、単軸押出機、二軸押出機等を用いて混合される。その後、押出工程において押出して加工され、例えば、トレッド用部材、又はサイドウォール用部材として成形される。続いて、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、タイヤが得られる。
【0136】
本発明のゴム組成物の製造方法において、通常、ゴム組成物に配合されるステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、加硫剤等のその他配合剤を、必要に応じて、工程(A)又は工程(B)において添加することができる。
【0137】
その他配合剤は、工程(A)又は工程(B)のどちらか一方で添加してもよいし、あるいは工程(A)及び工程(B)に分けて添加してもよい。なお、その他配合剤の中でも、加硫剤、又は加硫促進剤については、工程(B)で添加することが好ましい。
【0138】
(2.3.ゴム組成物の成形方法)
本発明におけるゴム組成物は、バンバリーミキサー、ロール、インテンシブミキサー、ニーダー、単軸押出機、二軸押出機等を用いて混合される。その後、押出工程において押出して加工され、例えば、トレッド用部材、又はサイドウォール用部材として成形される。続いて、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、タイヤが得られる。
【0139】
(3.タイヤ)
本発明のタイヤは、上記本発明のゴム組成物を用いて作製されたタイヤである。
【0140】
本発明のタイヤとしては、例えば、空気入りタイヤ(ラジアルタイヤ、バイアスタイヤ等)、ソリッドタイヤ等が挙げられる。
【0141】
タイヤの用途としては、特に制限はなく、例えば、乗用車用タイヤ、高荷重用タイヤ、モーターサイクル(自動二輪車)用タイヤ、スタッドレスタイヤ等が挙げられ、中でも、乗用車用タイヤに好適に使用できる。
【0142】
本発明のタイヤの形状、構造、大きさ及び材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0143】
本発明のタイヤにおいて、上記ゴム組成物は、特にトレッド部、サイドウォール部、ビードエリア部、ベルト部、カーカス部及びショルダー部から選ばれる少なくとも一つの部材に用いられる。
【0144】
中でも、空気入りタイヤのタイヤトレッド部、又はサイドウォール部を当該ゴム組成物で形成するのが好ましく、タイヤトレッド部を当該ゴム組成物で形成するのが特に好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0145】
トレッド部とは、トレッドパターンを有し、路面と直接接する部分で、カーカスを保護するとともに摩耗及び外傷を防ぐタイヤの外皮部分であり、タイヤの接地部を構成するキャップトレッド及び/又はキャップトレッドの内側に配設されるベーストレッドをいう。
【0146】
サイドウォール部とは、例えば、空気入りラジアルタイヤにおけるショルダー部の下側からビード部に至るまでの部分であり、カーカスを保護するとともに、走行する際に最も屈曲の激しい部分である。
【0147】
ビードエリア部とは、カーカスコードの両端を固定し、同時にタイヤをリムに固定させる役目を負っている部分である。ビードとは高炭素鋼を束ねた構造である。
【0148】
ベルト部とは、ラジアル構造のトレッドとカーカスとの間に円周方向に張られた補強帯である。カーカスを桶のたがの様に強く締付けトレッドの剛性を高めている。
【0149】
カーカス部とは、タイヤの骨格を形成するコード層の部分であり、タイヤの受ける荷重、衝撃、及び充填空気圧に耐える役割を果たしている。
【0150】
ショルダー部とは、タイヤの肩の部分で、カーカスを保護する役目を果たす。
【0151】
本発明のタイヤは、タイヤの分野において、これまでに知られている方法に従って製造することができる。また、タイヤに充填する気体としては、通常の又は酸素分圧を調整した空気;窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【0152】
本発明のタイヤは、優れたウェットグリップ性能を有するタイヤを提供することができる。
【0153】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【実施例
【0154】
以下、実施例に基づき、本発明の実施形態をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0155】
製造例1:3-(ナフタレン-2-イル)-1H-ピラゾール-5(4H)-オン(化合物(b)-2)の製造
100mLナスフラスコにカルボニルジイミダゾール8.5g(52.1mmol)、及び脱水テトラヒドロフラン60mLを加え、室温で撹拌した。次いでこの混合物に、2-ナフトエ酸7.5g(43.6mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。以下、この得られた反応液を「反応液1」とする。
【0156】
500mL四つ口フラスコにモノエチルマロン酸カリウム14.8g(87.0mmol)、脱水アセトニトリル210mL、及びトリエチルアミン18.3mL(132.4mmol)を加え、氷冷下で撹拌した。次いでこの混合物に、塩化マグネシウム10.4g(109.2mmol)を加え、室温で4時間撹拌した。この得られた反応液に上記反応液1を滴下し、室温で一晩撹拌した。
【0157】
この反応液を濃縮し、得られた残渣にトルエン125mLを加え、4M塩酸70mL、及び水70mLで洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウム上で乾燥した後、減圧濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=4:1(体積比))にて精製し、無色透明の液体を得た。
【0158】
この液体にヒドラジン一水和物2.2mL(44.8mmol)を加え、酢酸2.0mL(35.0mmol)を滴下し、4時間還流した。この反応液を室温に戻し、ジイソプロピルエーテル30mLを加え、析出した結晶をろ過して、白色固体の3-(ナフタレン-2-イル)-1H-ピラゾール-5(4H)-オン8.22gを得た。
融点:204℃
H-NMR(300MHz,d-DMSO,δppm):
11.94(1H,br),8.20~8.21(1H,J=1.2Hz,d),7.82~7.96(4H,m),7.47~7.56(2H,m),6.02(1H,s)
13C-NMR(500MHz,d-DMSO,δppm):
168.13,160.95,143.83,133.06,132.39,128.30,127.90,127.62,126.55,126.06,123.28,123.14,87.10
【0159】
製造例2:3-(フラン-2-イル)-1H-ピラゾール-5(4H)-オン(化合物(b)-3)の製造
100mLナスフラスコにカルボニルジイミダゾール8.7g(53.5mmol)、及び脱水テトラヒドロフラン60mLを加え、室温で撹拌した。次いでこの混合物に、2-フランカルボン酸5.0g(45.0mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。以下、この得られた反応液を「反応液2」とする。
【0160】
500mL四つ口フラスコにモノエチルマロン酸カリウム14.8g(87.0mmol)、脱水アセトニトリル200mL、及びトリエチルアミン18.3mL(132.4mmol)を加え、氷冷下で撹拌した。次いでこの混合物に、塩化マグネシウム10.4g(109.2mmol)を加え、室温で4時間撹拌した。この反応液に上記反応液2を滴下し、室温で一晩撹拌した。
【0161】
得られた反応液を濃縮し、クロロホルム120mLを加え、4M塩酸70mL、及び水70mLで洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウム上で乾燥した後、減圧濃縮し、無色透明の液体を得た。
【0162】
この得られた液体にヒドラジン一水和物2.5mL(50.7mmol)を加え、酢酸2.0mL(35.0mmol)を滴下し、4時間還流した。この得られた反応液を室温に戻し、ジイソプロピルエーテル30mLを加え、析出した結晶をろ過して、白色固体の3-(フラン-2-イル)-1H-ピラゾール-5(4H)-オン5.47gを得た。
融点:231℃
H-NMR(300MHz,d-DMSO,δppm):
11.79(2H,br),7.68~7.69(1H,m),6.69(1H,J=3.3Hz,d),6.55(1H,J=1.8,1.5,1.8Hz,dd),5.69(1H,s)
13C-NMR(500MHz,d-DMSO,δppm):
160.23,146.16,142.24,135.84,111.50,105.77,85.88
【0163】
製造例3:3-フェニル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン(化合物(b)-4)の製造
100mL四つ口フラスコにベンゾイル酢酸エチル25g(0.13mol)及びエタノール25mLを加えて撹拌した。これを水浴で冷却しながら、ヒドラジン一水和物6.5mL(0.13mol)を滴下した。室温で4時間撹拌した後、析出した固体をろ過し、水:メタノール=1:1(体積比)の混合液50mLで洗浄、乾燥することで、白色固体の3-フェニル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン18.8gを得た。
融点:236℃
H-NMR(500MHz,d-DMSO,δppm):
12.03(1H,br)、9.69(1H,br)、7.66(2H,m)、7.39(2H,m)、7.30(1H,m)、5.88(1H,s)
13C-NMR(500MHz,d-DMSO,δppm):
161.00、143.48、130.48、128.73、127.71、124.73、86.87
【0164】
製造例4:3-プロピル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン(化合物(b)-5)の製造
500mL四つ口フラスコに3-オキソヘキサン酸メチル24.8g(0.16mol)、及びエタノール260mLを加えて撹拌した。これを氷浴で冷却しながらヒドラジン一水和物8.6mL(0.18mol)を滴下し、氷冷下で2時間撹拌した後、2時間加熱還流し、反応液を室温まで冷却した。析出した固体をろ過し、水:メタノール=1:1(体積比)の混合液50mLで洗浄し、乾燥することで、白色固体の3-プロピル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン13.2gを得た。
融点:205-206℃
H-NMR(500MHz,d-DMSO,δppm):
11.11(1H,br)、9.42(1H,br)、5.23(1H,s)、2.41(2H,J=7.5Hz,t)、1.54(2H,m)、0.88(3H,J=7.3Hz,t)
13C-NMR(500MHz,d-DMSO,δppm):
160.87、144.04、87.93、27.67、21.93、13.57
【0165】
製造例5:4,4’-(フェニルメチレン)ビス(5-メチル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン)(化合物(b)-6)の製造
2L四つ口フラスコに、水1L、3-メチル-5-ピラゾロン10g(0.10mol)、ベンズアルデヒド5.4g(0.05mol)、及びドデシル硫酸ナトリウム0.73g(2.5mmol)を加えて室温で30分間撹拌した後、1時間還流した。この反応液を氷浴で冷却しながら、30分間撹拌した後、析出した固体をろ過し、水500mLで洗浄し、乾燥することで淡黄色固体の4,4’-(フェニルメチレン)ビス(5-メチル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン)12.1gを得た。
融点:230-232℃
H-NMR(500MHz,d-DMSO,δppm):
11.31(4H,br)、7.20(2H,m)、7.12(3H,m)、4.81(1H,s)、2.07(6H,s)
13C-NMR(500MHz,d-DMSO,δppm):
161.24、143.33、139.73、127.67、127.47、125.35、104.21、32.72、10.34
【0166】
製造例6:4,4’-(4-ヒドロキシフェニルメチレン)ビス(5-メチル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン)(化合物(b)-7)の製造
3L四つ口フラスコに、水2.5L、3-メチル-5-ピラゾロン25.0g(0.26mol)、4-ヒドロキシベンズアルデヒド15.6g(0.13mol)、及びドデシル硫酸ナトリウム1.84g(6.4mmol)を加えて室温で30分間撹拌した後、1時間還流した。この反応液を氷浴で冷却しながら、30分間撹拌した後、析出した固体をろ過し、水2.5Lで洗浄し、乾燥することで淡黄色固体の4,4’-(4-ヒドロキシフェニルメチレン)ビス(5-メチル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン)33.5gを得た。
融点:262-264℃
H-NMR(500MHz,d-DMSO,δppm):
11.22(4H,br)、9.03(1H,s)、6.91(2H,J=8.5Hz,d)、6.59(2H,J=8.5Hz,d)、4.71(1H,s)、2.06(6H,s)
13C-NMR(500MHz,d-DMSO,δppm):
161.12、155.03、139.67、133.44、128.27、114.42、104.84、31.91、10.35
【0167】
製造例7:4,4’-(4-ニトロフェニルメチレン)ビス(5-メチル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン)(化合物(b)-8)の製造
3L四つ口フラスコに、水2.5L、3-メチル-5-ピラゾロン25.0g(0.26mol)、4-ニトロベンズアルデヒド19.3g(0.13mol)、及びドデシル硫酸ナトリウム1.84g(6.4mmol)を加えて室温で30分間撹拌した後、1時間還流した。この反応液を氷浴で冷却しながら、30分間撹拌した後、析出した固体をろ過し、メタノール500mLで洗浄し、乾燥することで淡黄色固体の4,4’-(4-ニトロフェニルメチレン)ビス(5-メチル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン)37.8gを得た。
融点:300-302℃
H-NMR(500MHz,d-DMSO,δppm):
11.40(4H,br)、8.12(2H,J=8.8Hz,d)、7.38(2H,J=8.8Hz,d)、4.98(1H,s)、2.10(6H,s)
13C-NMR(500MHz,d-DMSO,δppm):
160.82、151.71、145.56、139.71、128.76、122.94、103.24、32.95、10.28
【0168】
製造例8:4-[(ジメチルアミノ)メチリデン)-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン(化合物(b)-9)の製造
500mL四つ口フラスコに、キシレン300mL、3-メチル-5-ピラゾロン14.7g(0.15mol)、及びN,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール21.6g(0.18mol)を加えて110℃で一晩撹拌した。反応液を室温まで冷却した後、析出した固体をろ過し、トルエン300mLで洗浄し、乾燥することで黄色固体の4-[(ジメチルアミノ)メチリデン]-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン 20.3gを得た。
融点:158-159℃
H-NMR(500MHz,d-DMSO,δppm):
10.30(1H,br)、7.27(1H,s)、3.75(3H,s)、3.26(3H,s)、1.97(3H,s)
13C-NMR(500MHz,d-DMSO,δppm):
164.77、152.66、149.66、97.13、46.74、42.44、13.35
【0169】
製造例9:4-{[4-ジメチルアミノ]フェニル}メチリデン}-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン(化合物(b)-10)の製造
3L四つ口フラスコに、エタノール2.7L、3-メチル-5-ピラゾロン27.0g(0.28mol)、4-ジメチルアミノベンズアルデヒド44.4g(0.30mol)、及びピペリジン4.7g(55mmol)を加えて、3時間還流した。この反応液を一晩室温で撹拌した後、析出した固体をろ過し、乾燥することで淡黄色固体の4-{[4-ジメチルアミノ]フェニル}メチリデン}-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン46.3gを得た。
融点:164℃
H-NMR(500MHz,d-DMF,δppm):
10.91(1H,br)、8.70(2H,J=9.3Hz,d)、7.45(1H,s)、6.83(2H,J=9.3Hz,d)、3.15(6H,s)、2.18(3H,s)
13C-NMR(500MHz,d-DMF,δppm):
166.74、153.84、150.55、146.23、136.92、122.49、120.74、111.43、39.58、12.98
【0170】
製造例10:3-ウンデシル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン(化合物(b)-11)の製造
50mLナスフラスコに、カルボニルジイミダゾール2.8g(17.4mmol)、及びクロロホルム20mLを加え、室温で撹拌した。次いでこの混合物に、ラウリン酸2.9g(14.5mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。以下、この得られた反応液を「反応液3」とする。
【0171】
200mL四つ口フラスコに、モノエチルマロン酸カリウム4.9g(30.0mmol)、脱水アセトニトリル70mL、及びトリエチルアミン6.1mL(44.1mmol)を加え、氷冷下で撹拌した。次いでこの得られた混合物に、塩化マグネシウム3.5g(36.4mmol)を加え、室温で4時間撹拌した。この反応液に上記反応液3を滴下し、室温で一晩撹拌した。この得られた反応液を濃縮し、クロロホルム42mLを加え、2M塩酸48mL、及び水48mLで洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウム上で乾燥した後、減圧濃縮し、目的物を得た。
【0172】
得られた目的物にエタノール20mL、ヒドラジン一水和物0.7mL(14.9mmol)を加え、酢酸0.7mL(11.7mmol)を滴下し、4時間還流した。この反応液を室温まで戻し、ジイソプロピルエーテル10mLを加え、析出した結晶をろ過することで、白色固体の3-ウンデシル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン2.83gを得た。
融点:188℃
H-NMR(300MHz,d-DMSO,δppm):
11.05(1H,br),9.45(1H,br),5.21(1H,s),2.39~2.44(2H,J=7.5Hz,t),1.48~1.53(2H,m),1.30(16H,s),0.83~0.88(3H,m)
13C-NMR(500MHz,d-DMSO,δppm):
160.85,144.20,87.84,31.27,29.01,28.98,28.95,28.71,28.68,28.62,28.57,25.60,22.06,13.90
【0173】
製造例11:4-(2-ヒドロキシエチル)-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン(化合物(b)-12)の製造
100mL四つ口フラスコに、α-アセチル-γ-ブチロラクトン24.3g(0.19mol)、及びエタノール24mLを加えて撹拌した。これを氷浴で冷却しながらヒドラジン一水和物9.7mL(0.20mol)を滴下し、室温で3時間撹拌した。析出した固体をろ過し、イソプロパノール50mLで洗浄し、乾燥することで、白色固体の4-(2-ヒドロキシエチル)-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン23.8gを得た。
融点:182 ℃
H-NMR(500MHz,d-DMF,δppm):
10.62(2H,br)、3.78(2H,J=7.0Hz,t)、3.66(1H,br)、2.69(2H,J=7.0Hz,t)、2.31(3H,s)
13C-NMR(500MHz,d-DMF,δppm):
160.88、137.87、98.61、62.29、26.18、9.66
【0174】
製造例12:4-ベンジル-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)オン(化合物(b)-13)の製造
100mL四つ口フラスコに、2-ベンジルアセト酢酸エチル24.5g(0.11mol)、及びエタノール25mLを加え、撹拌した。これを氷浴で冷却しながらヒドラジン一水和物5.7mL(0.12mol)を滴下した後、室温で3時間撹拌した。析出した固体をろ過し、水:メタノール=1:1(体積比)の混合液50mLで洗浄し、乾燥することで、白色固体の4-ベンジル-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)オン15.6gを得た。
融点:228-229℃
H-NMR(500MHz,d-DMSO,δppm):
11.08(1H,br)、9.46(1H,br)、7.24(2H,m)、7.14(3H,m)、3.55(2H,s)、2.01(3H,s)
13C-NMR(500MHz,d-DMSO,δppm):
159.58、141.90、136.82、128.06、127.96、125.37、99.94、27.28、9.94
【0175】
製造例13:1-フェニル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン (化合物(b)-14)の製造
1L四つ口フラスコに、1-フェニル-3-ピラゾリドン10g(62mmol)、及びN,N-ジメチルホルムアミド150mLを加えて撹拌した。これに塩化銅(I)317mg(3.2mmol)を加えて開放系で一晩撹拌した。反応液に水750mLを加え、氷浴で冷却しながら30分撹拌した後、析出した固体をろ過し、水750mLで洗浄し、乾燥することで淡茶色固体の1-フェニル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン6.1gを得た。
融点:152℃
H-NMR(500MHz,d-DMSO,δppm):
10.22(1H,br)、8.22(1H,s)、7.68(2H,m)、7.42(2H,m)、7.18(1H,m)、5.80(1H,s)
13C-NMR(500MHz,d-DMSO,δppm):
162.64、139.79、129.29、128.37、124.59、116.76、94.47
【0176】
製造例14:4-メチル-2,3-ジアゾスピロ[4.4]ノン-3エン-1-オン(化合物(b)-15)の製造
500mL四つ口フラスコにアセト酢酸メチル7.2g(62.0mmol)、1,4-ジヨードブタン23.1g(75mmol)、炭酸カリウム42.9g(310mmol)、及びジメチルスルホキシド220mLを加え、室温で一晩撹拌した。反応液に水220mLを加え、10分間撹拌した後に、イソプロピルエーテル300mLで抽出して得た有機層を水200mLで二回洗浄した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥した後、濃縮してカラム精製(ヘキサン:酢酸エチル=50:1(体積比))することで中間体6.5g(36mmol)を得た。
【0177】
得られた中間体とエタノール6mLとを混合し、氷浴上で冷やしながらヒドラジン一水和物1.8mL(39mmol)を加え、60℃で一晩撹拌した。反応液を濃縮して得られた固体をヘキサン:酢酸エチル=5:1(体積比)の混合液40mLで洗浄することで、白色固体の4-メチル-2,3-ジアゾスピロ[4.4]ノン-3エン-1-オン3.8gを得た。
融点:83-84℃
H-NMR(500MHz,d-DMSO,δppm):
10.77(1H,s)、1.92(3H,s)、1.86-1.66(8H,m)
13C-NMR(500MHz,d-DMSO,δppm):
181.64、163.37、55.78、33.53、26.48、13.34
【0178】
製造例15:4,5,6,7-テトラヒドロ-2H-インダゾール-3(3aH)-オン(化合物(b)-16)の製造
100mLの四つ口フラスコに2-オキソシクロヘキサンカルボン酸エチル 24.5g(0.14mol)、及びエタノール24mLを加え、混合した。これに氷浴で冷却しながらヒドラジン一水和物7.3mL(0.15mol)を滴下し、80℃で3時間撹拌した後、氷浴で冷却しながら30分間撹拌した。その後、析出した固体をろ過し、水:メタノール=1:1(体積比)の混合液50mLで洗浄し、乾燥することで白色固体の4,5,6,7-テトラヒドロ-2H-インダゾール-3(3aH)-オン17.3gを得た。
融点:286-288℃
H-NMR(500MHz,d-DMSO,δppm):
10.50(1H,br)、9.66(1H,br)、2.43(2H,J=5.7Hz,t)、2.22(2H,J=5.7Hz,t)、1.67-1.62(4H,m)
13C-NMR(500MHz,d-DMSO,δppm):
158.30、139.62、98.41、22.86、22.27、21.26、18.88
【0179】
製造例16:1,3-ジフェニル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン(化合物(b)-17)の製造
1Lの四つ口フラスコにベンゾイル酢酸エチル 50.0g(0.26mol)、フェニルヒドラジン28.1g(0.26mol)、酢酸4.5mL(0.08mol)、及び水500mLを加えて混合した。これを100℃で1時間撹拌した後、氷浴で冷却しながら30分間撹拌して、析出した固体をろ過し、水:メタノール=1:1(体積比)の混合液1Lで洗浄し、乾燥することで淡橙色固体の1,3-ジフェニル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン58.0gを得た。
融点:137-138℃
H-NMR(500MHz,d-DMSO,δppm):
11.81(1H,br)、7.83(4H,m)、7.49(2H,m)、7.42(2H,m)、7.35-7.28(2H,m)、6.02(1H,s)
13C-NMR(500MHz,d-DMSO,δppm):
153.73、149.52、138.85、133.41、128.87、128.51、127.78、125.65、125.04、121.11、85.05
【0180】
実施例1~2及び比較例1~3:ゴム組成物の製造
下記表1の工程(A)に記載の各成分をその割合(質量部)で混合し、バンバリーミキサーで混合した。混合物の温度が60℃以下になるまで養生させた後、表1の工程(B)に記載の各成分をその割合(質量部)で投入し、混合物の最高温度が70℃以下になるよう調整しながら混合して、ゴム組成物を製造した。
【0181】
【表1】
尚、表1における各成分の詳細は、下記の通りである。
※1:成分(a):NR(天然ゴム);GUANGKEN RUBBER社製、TSR-20
※2:成分(a):SBR(スチレンブタジエンゴム);JSR社製、SL563
※3:成分(a):BR(ブタジエンゴム);宇部興産社製、BR150B
※4:カーボンブラック;Cabot社製、N234
※5:成分(c):シリカ;東ソー・シリカ社製、Nipsil AQ
※6:シランカップリング剤:エボニック社製、Si69
※7:老化防止剤(N-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン);Kemai Chemical Co.,Ltd社製
※8:ワックス;Rhein Chemie Rheinau社製、Antilux 111
※9:酸化亜鉛;Dalian Zinc Oxide Co.,Ltd社製
※10:ステアリン酸;Sichuan Tianyu Grease社製
※11:成分(d):ジシクロペンタジエン樹脂:丸善石油社製、マルカレッツM-890A
※12:フェノール樹脂:旭有機材社製、SP1006N
※13:成分(b):化合物(b)-1;大塚化学株式会社製、3-メチル-5-ピラゾロン
※14:加硫促進剤:N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド;大内新興社製、ノクセラーCZ-G
※15:加硫促進剤:1,3-ジフェニルグアニジン;大内新興社製、ノクセラーD
※16:硫黄 ;Shanghai Jinghai Chemical Co.,Ltd社製
【0182】
実施例1~2及び比較例1~3:ウェットグリップ性能試験
下記実施例1~2及び比較例1~3のゴム組成物について、BPST摩擦試験器を使用し、路面として水で浸した研磨紙♯A200を用いて、室温条件下で、摩擦抵抗力を測定した。ここで得られた比較例1の値を100とした指数で表し、下記式に基づいてウェットグリップ性能指数を算出した。なお、ウェットグリップ性能指数の数値が高いほど、ウェットグリップ性能に優れていることを示す。
式:ウェットグリップ性能指数
= (各実施例1~2及び比較例2~3のゴム組成物の摩擦力値)/(比較例1の摩擦抵抗力値)×100
【産業上の利用可能性】
【0183】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分に優れたウェットグリップ性を付与することができる。よって、各種自動車の各種空気入りタイヤの各部材、特に空気入りラジアルタイヤのトレッド用部材、サイドウォール用部材、ビードエリア用部材、ベルト用部材、カーカス用部材、及びショルダー用部材として利用することができる。