(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】ゴム組成物、タイヤ、ゴム用添加剤、及び化合物
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20221114BHJP
C08K 5/46 20060101ALI20221114BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20221114BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20221114BHJP
B60C 11/00 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K5/46
C08K3/04
B60C1/00 A
B60C11/00 B
(21)【出願番号】P 2018243182
(22)【出願日】2018-12-26
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000206901
【氏名又は名称】大塚化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青▲柳▼ 誠一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 晃之
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-189911(JP,A)
【文献】特開平06-157823(JP,A)
【文献】特開2018-177935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K,B60C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分、並びに式(1)により表される化合物及び該化合物の塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含むゴム組成物。
【化1】
(式(1)中、R
1は水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、ハロゲン原子、アミノ基、アルコキシ基、又はニトロ基であり、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。nは1~5の整数であり、Xは以下の式(1-1)又は(1-2)により示される基である。)
【化2】
(式(1-1)中、R
a及びR
bは同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示し、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。)
【化3】
(式(1-2)中、R
c及びR
eは同一又は異なって、水素原子、アミノ基、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示し、R
dはアルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい)
【請求項2】
前記式(1)中、Xが式(1-1)により表される基である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
更にカーボンブラックを含む、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のゴム組成物を用いて作製された防振ゴム、ベルト、又はタイヤ。
【請求項5】
ゴム成分、並びに式(1)により表される化合物及び該化合物の塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含む原料成分を混合する工程(A)を含む、ゴム組成物の製造方法。
【化4】
(式(1)中、R
1
は水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、ハロゲン原子、アミノ基、アルコキシ基、又はニトロ基であり、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。nは1~5の整数であり、Xは以下の式(1-1)又は(1-2)により示される基である。)
【化5】
(式(1-1)中、R
a
及びR
b
は同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示し、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。)
【化6】
(式(1-2)中、R
c
及びR
e
は同一又は異なって、水素原子、アミノ基、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示し、R
d
はアルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい)
【請求項6】
前記工程(A)において、更にカーボンブラックを混合する、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記工程(A)が、ゴム成分、並びに式(1)により表される化合物及び該化合物の塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を混合する工程(A-1)、並びに該工程(A-1)で得られた混合物及びカーボンブラックを混合する工程(A-2)からなる、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
式(1)により表される化合物、及び該化合物の塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでなるゴム用添加剤。
【化7】
(式(1)中、R
1は水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、ハロゲン原子、アミノ基、アルコキシ基、又はニトロ基であり、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。nは1~5の整数であり、Xは以下の式(1-1)又は(1-2)により示される基である。)
【化8】
(式(1-1)中、R
a及びR
bは同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示し、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。)
【化9】
(式(1-2)中、R
c及びR
eは同一又は異なって、水素原子、アミノ基、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示し、R
dはアルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、タイヤ、ゴム用添加剤、及び化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に対する配慮から、世界的に二酸化炭素の排出規制が厳しくなっており、自
動車の低燃費化に対する要求が非常に高まっている。低燃費化は、エンジン等の駆動系及
び伝達系の効率の寄与が大きいが、タイヤの転がり抵抗も大きく関与しており、自動車の
低燃費化には、転がり抵抗を小さくすることが重要である。
【0003】
タイヤの転がり抵抗を低減する手法として、発熱性の低いゴム組成物をタイヤに適用することが知られている。このような低発熱性のゴム組成物としては、例えば、(1)充填材であるカーボンブラック及びシリカとの親和性を高めた官能化重合体を含むゴム組成物(特許文献1);(2)末端変性ポリマー及び無機フィラーを含むゴム組成物(特許文献2及び3)等が挙げられる。
【0004】
これら特許文献1~3によれば、充填材とゴム成分との親和性を高めることにより、ゴム組成物の発熱性を低くすることができ、その結果、ヒステリシスロス(転がり抵抗性)の低いタイヤを得ることができるとされている。
【0005】
しかしながら、これら特許文献1~3のゴム組成物を用いても、低発熱性の改良は不十
分である。
【0006】
自動車の低燃費化の要望は、一段と高まっており、低発熱性に極めて優れたタイヤの開
発が熱望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-514079号公報
【文献】特開2000-169631号公報
【文献】特開2005-220323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、優れた低発熱性を有するゴム組成物を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的の一つは、優れた低発熱性を発現するタイヤを提供することである。
【0010】
本発明の他の目的の一つは、優れた低発熱性を付与するゴム用添加剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の化合物を用いることによって、ゴム成分に優れた低発熱性を付与させることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は、以下に示すゴム組成物、該ゴム組成物の製造方法、タイヤ、ゴム用添加剤、及び化合物を提供する。
項1.
ゴム成分、並びに式(1)により表される化合物及び該化合物の塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含むゴム組成物。
【化1】
(式(1)中、R
1は水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、ハロゲン原子、アミノ基、アルコキシ基、又はニトロ基であり、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。nは1~5の整数であり、Xは以下の式(1-1)又は(1-2)により示される基である。)
【0013】
【化2】
(式(1-1)中、R
a及びR
bは同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示し、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。)
【0014】
【化3】
(式(1-2)中、R
c及びR
eは同一又は異なって、水素原子、アミノ基、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示し、R
dはアルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい)
項2.
前記式(1)中、Xが式(1-1)により表される基である項1に記載のゴム組成物。
項3.
更にカーボンブラックを含む、項1又は2に記載のゴム組成物。
項4.
項1~3のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製された防振ゴム、ベルト、又はタイヤ。
項5.
ゴム成分、並びに式(1)により表される化合物及び該化合物の塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含む原料成分を混合する工程(A)を含む、ゴム組成物の製造方法。
項6.
前記工程(A)において、更にカーボンブラックを混合する、項5に記載の製造方法。
項7.
前記工程(A)が、ゴム成分、並びに式(1)により表される化合物及び該化合物の塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を混合する工程(A-1)、並びに該工程(A-1)で得られた混合物及びカーボンブラックを混合する工程(A-2)からなる、項6に記載の製造方法。
項8.
式(1)により表される化合物、及び該化合物の塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでなるゴム用添加剤。
【0015】
【化4】
(式(1)中、R
1は水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、ハロゲン原子、アミノ基、アルコキシ基、又はニトロ基であり、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。nは1~5の整数であり、Xは以下の式(1-1)又は(1-2)により示される基である。)
【0016】
【化5】
(式(1-1)中、R
a及びR
bは同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示し、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。)
【0017】
【化6】
(式(1-2)中、R
c及びR
eは同一又は異なって、水素原子、アミノ基、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示し、R
dはアルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい)
項9.
前記式(1)中、Xが式(1-1)により表される基であり、R
bが水素原子である化合物、又は該化合物の塩。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、優れた低発熱性を有するゴム組成物及び該ゴム組成物の製造方法を提供することができる。
【0019】
本発明は、優れた低発熱性を発現するタイヤを提供することができる。
【0020】
本発明は、ゴム成分に優れた低発熱性を付与することができるゴム用添加剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0022】
(1.ゴム組成物)
本発明のゴム組成物は、ゴム成分、並びに下記式(1)により表される化合物及び該化合物の塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物(以下、「化合物(1)」ということがある。)を含む。
【0023】
【化7】
(式(1)中、R
1は水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、ハロゲン原子、アミノ基、アルコキシ基、又はニトロ基であり、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。nは1~5の整数であり、Xは以下の式(1-1)又は(1-2)により示される基である。)
【0024】
【化8】
(式(1-1)中、R
a及びR
bは同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示し、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。)
【化9】
(式(1-2)中、R
c及びR
eは同一又は異なって、水素原子、アミノ基、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示し、R
dはアルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい)
【0025】
(1.1.ゴム成分)
ゴム成分としては、特に制限はなく、公知のゴム成分を広く使用することが可能である。例えば、天然ゴム(NR)、合成ジエン系ゴム、及び天然ゴムと合成ジエン系ゴムとの混合物、並びにこれら以外の非ジエン系ゴムが挙げられる。
【0026】
天然ゴムとしては天然ゴムラテックス、技術的格付けゴム(TSR)、スモークドシート(RSS)、ガタパーチャ、杜仲由来天然ゴム、グアユール由来天然ゴム、ロシアンタンポポ由来天然ゴム、樹脂成分発酵ゴムなどが挙げられ、さらにこれら天然ゴムを変性した、エポキシ化天然ゴム、メタクリル酸変性天然ゴム、ハロゲン変性天然ゴム、脱蛋白天然ゴム、マレイン酸変性天然ゴム、スルホン酸変性天然ゴム、スチレン変性天然ゴムなどの変性天然ゴムなども、本発明の天然ゴムに含まれる。
【0027】
合成ジエン系ゴムとしては、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)、スチレン-イソプレン-スチレン三元ブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレン三元ブロック共重合体(SBS)、エチレン-α―オレフィン共重合ゴム(SPO)、エチレン-α-オレフィン-ジエン共重合ゴム等、及びこれらの変性合成ジエン系ゴムが挙げられる。変性合成ジエン系ゴムには、主鎖変性、片末端変性、両末端変性などの変性手法によるジエン系ゴムが包含される。ここで、変性合成ジエン系ゴムの変性官能基としては、エポキシ基、アミノ基、アルコキシシリル基、水酸基、アルコキシシリル基、ポリエーテル基、カルボキシル基などの各種官能基が挙げられ、これら官能基は1種又は2種以上が変性合成ジエン系ゴムに含まれていてもよい。
【0028】
合成ジエン系ゴムの製造方法は、特に制限はなく、乳化重合、溶液重合、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などが挙げられる。また、合成ジエン系ゴムのガラス転移点においても、特に制限はない。
【0029】
また、天然ゴム及び合成ジエン系ゴムの二重結合部のシス/トランス/ビニルの比率については、特に制限はなく、いずれの比率においても好適に用いることができる。また、ジエン系ゴムの数平均分子量および分子量分布は、特に制限はないが、数平均分子量500~3000000、分子量分布1.5~15が好ましい。非ジエン系ゴムとしては、公知のものを広く使用することができる。
【0030】
ゴム成分は、1種単独で、又は2種以上を混合(ブレンド)して用いることができる。中でも、好ましいゴム成分としては、天然ゴム、IR、SBR、BR又はこれらから選ばれる2種以上の混合物であり、より好ましくは天然ゴム、SBR、BR又はこれらから選ばれる2種以上の混合物である。
【0031】
ゴム組成物中のゴム成分の含有量は、ゴム組成物100質量%中に、50~99.9質量%であることが好ましく、60~99.8質量%であることがより好ましい。ゴム組成物中のゴム成分の含有量が50質量%以上であることにより、ゴムの弾性を低下させず、維持させることができる。
【0032】
(1.2.式(1)により表される化合物、及び該化合物の塩)
本発明のゴム組成物は、下記式(1)により表される化合物及び/又は該化合物の塩を含む。
【化10】
(式(1)中、R
1は水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、ハロゲン原子、アミノ基、アルコキシ基、又はニトロ基であり、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。nは1~5の整数であり、Xは以下の式(1-1)又は(1-2)により示される基である。)
【化11】
(式(1-1)中、R
a及びR
bは同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示し、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。)
【化12】
(式(1-2)中、R
c及びR
eは同一又は異なって、水素原子、アミノ基、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示し、R
dはアルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい)
【0033】
式(1)中、Xが式(1-1)により表される基である化合物及び該化合物の塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を「化合物(1-1)」、Xが式(1-2)により表される基である化合物及び該化合物の塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を「化合物(1-2)」ということがある。
【0034】
式(1)中、R1は水素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、アラルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アミノ基、アルコキシ基、又はニトロ基であることが好ましく、R1は水素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、ハロゲン原子、アミノ基、又はアルコキシ基であることがより好ましく、R1は水素原子であることがさらに好ましい。
【0035】
式(1)中、nは1~3であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることがさらに好ましい。
【0036】
式(1)中、Xは式(1-1)により表される基であることが好ましい。
【0037】
式(1)中、Xが式(1-1)により表される基であり、Raが水素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、又はアラルキル基であることが好ましく、Xが式(1-1)により表される基であり、Raが水素原子、又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基であることがより好ましく、Xが式(1-1)により表される基であり、Raが炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基であることがさらに好ましい。
【0038】
式(1)中、Xが式(1-1)により表される基であり、Rbが水素原子、炭素数1~4の直鎖状及び分岐鎖状アルキル基、アラルキル基である化合物が好ましく、Xが式(1-1)により表される基であり、Rbが水素原子、又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基であることがより好ましく、Xが式(1-1)により表される基であり、Rbが水素原子であることがさらに好ましい。
【0039】
式(1)中、R1が水素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、アラルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アミノ基、アルコキシ基、又はニトロ基であり、Xが式(1-1)により表される基であり、Ra及びRbが同一又は異なって水素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、又はアラルキル基であり、nが1~3であることが好ましく、R1が水素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、ハロゲン原子、アミノ基、アルコキシ基、又はニトロ基であり、Xが式(1-1)により表される基であり、Ra及びRbが同一又は異なって水素原子、又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基であり、nが1又は2であることがより好ましく、R1が水素原子であり、Xが式(1-1)により表される基であり、Raが炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基であり、Rbが水素原子であり、nが1である化合物が更に好ましく、R1が水素原子であり、Xが式(1-1)により表される基であり、Raがメチル基であり、Rbが水素原子であり、nが1である化合物が特に好ましい。
【0040】
具体的に、化合物(1-1)としては、例えば、4-(1,3-ベンゾチアゾール-2-イルスルファニル)-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、4-(1,3-ベンゾチアゾール-2-イルスルファニル)-3-フェニル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、4-(1,3-ベンゾチアゾール-2-イルスルファニル)-3-プロピル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、4-(1,3-ベンゾチアゾール-2-イルスルファニル)-3-ナフチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、4-[(5-クロロ-1,3-ベンゾチアゾール-2-イル)スルファニル]-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、4-[(5-メトキシ-1,3-ベンゾチアゾール-2-イル)スルファニル]-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、3-メチル-4-[(6-ニトロ-1,3-ベンゾチアゾール-2-イル)スルファニル]-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、4-[(6-アミノ-1,3-ベンゾチアゾール-2-イル)スルファニル]-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン等が挙げられ、その中でも、4-(1,3-ベンゾチアゾール-2-イルスルファニル)-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オンが好ましい。
【0041】
同様に、化合物(1-2)の具体例としては、4-(1,3-ベンゾチアゾール-2-イルスルファニル)-1,5-ジメチル-2-フェニル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン、4-(1,3-ベンゾチアゾール-2-イルスルファニル)-1-メチル-2-フェニル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン、4-(1,3-ベンゾチアゾール-2-イルスルファニル)-1-メチル-2,5-ジフェニル-1H-ピラゾール-3(2H)-オンが好ましい。
【0042】
化合物(1)の中には、互変異性体を生じるものがある。互変異性体が可能である(例えば溶液中である)場合に、互変異性体の化学平衡に達し得る。化合物(1)は、例えば、式(2)~(7)により表されるような互変異性体として存在することができる。
【0043】
前記化合物(1)で、Xが式(1-1)により表される基であり、Rbが水素原子である化合物(化合物(1)-A)には、以下の式(2)~(4)により表される互変異性体が存在する。
【0044】
【化13】
(式中、R
1、n、及びR
aは、前記に同じ。)
【0045】
前記化合物(1)で、Xが式(1-1)により表される化合物(化合物(1)-B)には、以下の式(5)及び(6)により表される互変異性体が存在する。
【0046】
【化14】
(式中、R
1、n、R
a及びR
bは、前記に同じ。)
【0047】
前記化合物(1)で、Xが式(1-2)であり、Reが水素原子である化合物(化合物(1)-C)には、以下の式(7)により表される互変異性体が存在する。
【0048】
【0049】
上記式(2)~(7)により表されるような互変異性体と、化合物(1)とは、どちらの異性体も共存する平衡状態に達している。よって、別段の記載がない限り、本明細書において、化合物(1)のすべての互変異性体の形態は、本発明の範囲内であるものとする。
【0050】
また、化合物(1)の塩としては、特に限定はなく、任意の塩を使用することができる。このような塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、メタンスルホン酸塩等の有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;ジメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム等のアンモニウム塩等が挙げられる。
【0051】
本発明のゴム組成物中に含まれる化合物(1)の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、通常0.1~50質量部であることが好ましく0.1~20質量部であることがより好ましく、0.1~10質量部であることが更に好ましい。ゴム成分100質量部に対して化合物(1)が0.1質量部以上含まれることにより、低発熱性が向上する。一方、ゴム成分100質量部に対して化合物(1)が50質量部以下であることにより、ゴム組成物のコストを低減させ、その結果、経済性を向上させることが可能である。
【0052】
ゴム組成物中の化合物(1)の含有量は、ゴム組成物100質量%中に、0.01~50質量%であることが好ましく、0.05~40質量%であることがより好ましい。ゴム組成物中の化合物(1)の含有量が0.01質量%以上であることにより、低発熱性が向上する。一方、ゴム組成物中の化合物(1)の含有量が50質量%以下であることにより、補強性の低下を防ぐことができる。
【0053】
本明細書において、「アルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル等の炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、更に、1-エチルプロピル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、3-メチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、5-プロピルノニル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル等を加えた炭素数5~18の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等の炭素数3~8の環状アルキル基等が挙げられる。
【0054】
本明細書において、「アラルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、ベンジル、フェネチル、トリチル、1-ナフチルメチル、2-(1-ナフチル)エチル、2-(2-ナフチル)エチル基等が挙げられる。
【0055】
本明細書において、「アリール基」としては、特に限定はなく、例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、ジヒドロインデニル、9H-フルオレニル基等が挙げられる。
【0056】
本明細書において、「複素環基」としては、特に限定はなく、例えば、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピラジニル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ピリミジル、3-ピリダジル、4-ピリダジル、4-(1,2,3-トリアジル)、5-(1,2,3-トリアジル)、2-(1,3,5-トリアジル)、3-(1,2,4-トリアジル)、5-(1,2,4-トリアジル)、6-(1,2,4-トリアジル)、2-キノリル、3-キノリル、4-キノリル、5-キノリル、6-キノリル、7-キノリル、8-キノリル、1-イソキノリル、3-イソキノリル、4-イソキノリル、5-イソキノリル、6-イソキノリル、7-イソキノリル、8-イソキノリル、2-キノキサリル、3-キノキサリル、5-キノキサリル、6-キノキサリル、7-キノキサリル、8-キノキサリル、3-シンノリル、4-シンノリル、5-シンノリル、6-シンノリル、7-シンノリル、8-シンノリル、2-キナゾリル、4-キナゾリル、5-キナゾリル、6-キナゾリル、7-キナゾリル、8-キナゾリル、1-フタラジル、4-フタラジル、5-フタラジル、6-フタラジル、7-フタラジル、8-フタラジル、1-テトラヒドロキノリル、2-テトラヒドロキノリル、3-テトラヒドロキノリル、4-テトラヒドロキノリル、5-テトラヒドロキノリル、6-テトラヒドロキノリル、7-テトラヒドロキノリル、8-テトラヒドロキノリル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、1-イミダゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、5-イミダゾリル、1-ピラゾリル、3-ピラゾリル、4-ピラゾリル、5-ピラゾリル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、3-イソチアゾリル、4-イソチアゾリル、5-イソチアゾリル、4-(1,2,3-チアジアゾリル)、5-(1,2,3-チアジアゾリル)、3-(1,2,5-チアジアゾリル)、2-(1,3,4-チアジアゾリル)、4-(1,2,3-オキサジアゾリル)、5-(1,2,3-オキサジアゾリル)、3-(1,2,4-オキサジアゾリル)、5-(1,2,4-オキサジアゾリル)、3-(1,2,5-オキサジアゾリル)、2-(1,3,4-オキサジアゾリル)、1-(1,2,3-トリアゾリル)、4-(1,2,3-トリアゾリル)、5-(1,2,3-トリアゾリル)、1-(1,2,4-トリアゾリル)、3-(1,2,4-トリアゾリル)、5-(1,2,4-トリアゾリル)、1-テトラゾリル、5-テトラゾリル、1-インドリル、2-インドリル、3-インドリル、4-インドリル、5-インドリル、6-インドリル、7-インドリル、1-イソインドリル、2-イソインドリル、3-イソインドリル、4-イソインドリル、5-イソインドリル、6-イソインドリル、7-イソインドリル、1-ベンゾイミダゾリル、2-ベンゾイミダゾリル、4-ベンゾイミダゾリル、5-ベンゾイミダゾリル、6-ベンゾイミダゾリル、7-ベンゾイミダゾリル、2-ベンゾフラニル、3-ベンゾフラニル、4-ベンゾフラニル、5-ベンゾフラニル、6-ベンゾフラニル、7-ベンゾフラニル、1-イソベンゾフラニル、3-イソベンゾフラニル、4-イソベンゾフラニル、5-イソベンゾフラニル、6-イソベンゾフラニル、7-イソベンゾフニル、2-ベンゾチエニル、3-ベンゾチエニル、4-ベンゾチエニル、5-ベンゾチエニル、6-ベンゾチエニル、7-ベンゾチエニル、2-ベンゾオキサゾリル、4-ベンゾオキサゾリル、5-ベンゾオキサゾリル、6-ベンゾオキサゾリル、7-ベンゾオキサゾリル、2-ベンゾチアゾリル、4-ベンゾチアゾリル、5-ベンゾチアゾリル、6-ベンゾチアゾリル、7-ベンゾチアゾリル、1-インダゾリル、3-インダゾリル、4-インダゾリル、5-インダゾリル、6-インダゾリル、7-インダゾリル、2-モルホリル、3-モルホリル、4-モルホリル、1-ピペラジル、2-ピペラジル、1-ピペリジル、2-ピペリジル、3-ピペリジル、4-ピペリジル、2-テトラヒドロピラニル、3-テトラヒドロピラニル、4-テトラヒドロピラニル、2-テトラヒドロチオピラニル、3-テトラヒドロチオピラニル、4-テトラヒドロチオピラニル、1-ピロリジル、2-ピロリジル、3-ピロリジル、フラニル、2-テトラヒドロフラニル、3-テトラヒドロフラニル、2-テトラヒドロチエニル、3-テトラヒドロチエニル、5-メチル-3-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾール-4-イル基、モルホリノ基等が挙げられる。
【0057】
本明細書において、「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられ、好ましくは塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子である。
【0058】
本明細書において、「アミノ基」としては、-NH2で表されるアミノ基だけでなく、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、n-プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、n-ブチルアミノ、イソブチルアミノ、s-ブチルアミノ、t-ブチルアミノ、1-エチルプロピルアミノ、n-ペンチルアミノ、ネオペンチルアミノ、n-ヘキシルアミノ、イソヘキシルアミノ、3-メチルペンチルアミノ基等の直鎖状又は分岐鎖状のモノアルキルアミノ基;ジメチルアミノ、エチルメチルアミノ、ジエチルアミノ基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を2つ有するジアルキルアミノ基等の置換アミノ基も含まれる。
【0059】
本明細書において、「アルコキシ基」としては、特に限定はなく、例えば、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、t-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシ基の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基;シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロヘプチルオキシ、シクロオクチルオキシ基等の環状アルコキシ基等が挙げられる。
【0060】
これらアルキル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、アミノ基、及びアルコキシ基は、置換可能な任意の位置にそれぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。該「置換基」としては、特に限定はなく、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、アミノアルキル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルボキシル基、カルボキシアルキル基、ホルミル基、ニトリル基、ニトロ基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、水酸基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基等が挙げられる。該置換基は、好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個有していてもよい。
【0061】
本明細書において、「アミノアルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、アミノメチル、メチルアミノメチル、エチルアミノメチル、ジメチルアミノメチル、エチルメチルアミノメチル、ジエチルアミノメチル、2-アミノエチル、2-(メチルアミノ)エチル、2-(エチルアミノ)エチル、2-(ジメチルアミノ)エチル、2-(エチルメチルアミノ)エチル、2-(ジエチルアミノ)エチル、3-アミノプロピル、3-(メチルアミノ)プロピル、3-(エチルアミノ)プロピル、3-(ジメチルアミノ)プロピル、3-(エチルメチルアミノ)プロピル、3-(ジエチルアミノ)プロピル基等のアミノアルキル基、モノアルキル置換アミノアルキル基又はジアルキル置換アミノアルキル基等が挙げられる。
【0062】
本明細書において、「アルコキシカルボニル基」としては、特に限定はなく、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0063】
本明細書において、「アシル基」としては、特に限定はなく、例えば、アセチル、プロピオニル、ピバロイル基等の炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状アルキルカルボニル基が挙げられる。
【0064】
本明細書において、「アシルオキシ基」としては、特に限定はなく、例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、n-ブチリルオキシ基等が挙げられる。
【0065】
本明細書において、「アミド基」としては、特に限定はなく、例えば、アセトアミド、ベンズアミド基等のカルボン酸アミド基;チオアセトアミド、チオベンズアミド基等のチオアミド基;N-メチルアセトアミド、N-ベンジルアセトアミド基等のN-置換アミド基;等が挙げられる。
【0066】
本明細書において、「カルボキシアルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、カルボキシメチル、カルボキシエチル、カルボキシ-n-プロピル、カルボキシ-n-ブチル、カルボキシ-n-ペンチル、カルボキシ-n-ヘキシル基等のカルボキシアルキル基が挙げられる。
【0067】
本明細書において、「ヒドロキシアルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシ-n-プロピル、ヒドロキシ-n-ブチル基等のヒドロキシアルキル基が挙げられる。
【0068】
本明細書において、「アリールオキシ基」としては、特に限定はなく、例えば、フェノキシ、ビフェニルオキシ、ナフトキシ基等が挙げられる。
【0069】
本明細書において、「アルキルチオ基」としては、特に限定はなく、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、及びn-プロピルチオ基等が挙げられる。
【0070】
本明細書において、「アリールチオ基」としては、特に限定はなく、例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ビフェニルチオ基等が挙げられる。
【0071】
本発明のゴム組成物は、式(1)により表される化合物及び/又は該化合物の塩は、式(1)により表される化合物又は該化合物の塩を一種のみ単独で含んでもよいし、二種以上を混合して含んでもよい。
【0072】
(1.3.カーボンブラック)
本発明のゴム組成物は、更にカーボンブラックを含んでもよい。
【0073】
カーボンブラックは、通常ゴムの靱性を向上させるために用いられる。なお、本明細書
において、無機充填材にカーボンブラックは含まれないと定義される。
【0074】
カーボンブラックとしては、特に制限はなく公知のものを広く使用することができる。例えば、市販品のカーボンブラック、Carbon-Silica Dual phase filler等が挙げられる。ゴム成分にカーボンブラックを含有することにより、ゴムの電気抵抗を下げて、帯電を抑止する効果、さらにゴムの強度を向上させる効果を享受できる。
【0075】
具体的に、カーボンブラックとしては、例えば、高、中又は低ストラクチャーのSAF、ISAF、IISAF、N110、N134、N220、N234、N330、N339、N375、N550、HAF、FEF、GPF、SRFグレードのカーボンブラック等が挙げられる。中でも、好ましいカーボンブラックとしては、SAF、ISAF、IISAF、N134、N234、N330、N339、N375、HAF、又はFEFグレードのカーボンブラックである。
【0076】
カーボンブラックのDBP吸収量としては、特に制限はなく、好ましくは60~200cm3/100g、より好ましくは70~180cm3/100g以上、特に好ましくは80~160cm3/100gである。
【0077】
また、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA、JISK6217-2:2001に準拠して測定する)は、好ましくは30~200m2/g、より好ましくは40~180m2/g、特に好ましくは50~160m2/gである。
【0078】
カーボンブラックの配合量としては、ゴム成分100質量部に対して、通常2~200質量部であることが好ましく、30~130質量部であることがより好ましく、35~100質量部であることが更に好ましい。
【0079】
静電気防止性能及びゴム強度性能を確保する観点から、ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの配合量は2質量部以上であることが好ましい。また、転がり抵抗低減の観点から、ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの配合量は200質量部以下であることが好ましい。
【0080】
(1.4.その他配合剤)
本発明のゴム組成物には、ゴム成分、式(1)により表される化合物及び/又は該化合物の塩、並びにカーボンブラック以外にも、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、無機充填材、老化防止剤、オゾン防止剤、軟化剤、加工助剤、ワックス、樹脂、液状ゴム、発泡剤、オイル、ステアリン酸等の炭素数8~30の脂肪酸、酸化亜鉛(ZnO)、加硫促進剤、加硫遅延剤、加硫剤(硫黄)等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
【0081】
無機充填材としては、ゴム工業界において、通常使用される無機化合物であれば、特に制限はない。使用できる無機化合物としては、例えば、シリカ;γ-アルミナ、α-アルミナ等のアルミナ(Al2O3);ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al2O3・H2O);ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)3];炭酸アルミニウム[Al2(CO3)3]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイ(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al2O3)、クレー(Al2O3・2SiO2)、カオリン(Al2O3・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al2O3・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al2O3・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5、Al4・3SiO4・5H2O等)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3等)、ケイ酸カルシウム(Ca2・SiO4等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al2O3・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)2・nH2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO3)2]、酸化亜鉛(ZnO)、硫酸バリウム(BaSO4)、アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩等が挙げられる。これらの無機充填材は、ゴム成分との親和性を向上させるために、該無機充填材の表面が有機処理されていてもよい。これら無機充填材の中でも、ゴムに強度を付与する観点から、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、及び酸化チタンが好ましい。これらの白色系充填材を用いることにより、ホワイトゴム等をはじめとして、顔料と組み合わせることにより、強度に優れた着色ゴムへの展開が可能となる。これら無機充填材は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0082】
無機充填材の配合量としては、ゴム成分100質量部に対して、10~200質量部であることが好ましい。
【0083】
無機充填材としては、ゴム強度を付与する観点からシリカが好ましく、より好ましくはシリカ単独で、又はシリカとゴム工業界で通常使用される無機化合物の1種以上とを併用することができる。無機充填材として、シリカ及びシリカ以外の上記無機化合物を併用する場合には、無機充填材の全成分の合計量が上記範囲となるように適宜調整すればよい。
シリカは、ゴム強度を付与することができるため添加することが好ましい。
【0084】
シリカとしては、市販のあらゆるものが使用できる。中でも、好ましいシリカとしては、湿式シリカ、乾式シリカ、又はコロイダルシリカであり、より好ましくは湿式シリカである。これらのシリカは、ゴム成分との親和性を向上させるために、シリカの表面が有機処理されていてもよい。
【0085】
シリカのBET比表面積としては、特に制限はなく、例えば、40~350m2/gの範囲が挙げられる。BET比表面積がこの範囲であるシリカは、ゴム靱性及びゴム成分中への分散性を両立できるという利点がある。該BET比表面積は、ISO5794/1に準拠して測定される。
【0086】
この観点から、BET比表面積が80~300m2/gの範囲にあるシリカを使用することが好ましく、BET比表面積100~270m2/gであるシリカを使用することがより好ましく、BET比表面積110~270m2/gのシリカを使用することが更に好ましい。また、これらのBET比表面積の異なるシリカを組み合わせて用いてもよい。
【0087】
このようなシリカの市販品としては、Quechen Silicon Chemical Co.,Ltd.製の商品名「HD165MP」(BET比表面積=165m2/g)、「HD115MP」(BET比表面積=115m2/g)、「HD200MP」(BET比表面積=200m2/g)、「HD250MP」(BET比表面積=250m2/g)、東ソー・シリカ株式会社製の商品名「ニップシールAQ」(BET比表面積=205m2/g)、「ニップシールKQ」(BET比表面積=240m2/g)、デグッサ社製の商品名「ウルトラジルVN3」(BET比表面積=175m2/g)、ソルベイ社製の商品名「Z1085Gr」(BET比表面積=90m2/g)、「ZPremium200MP(BET比表面積=215m2/g)」、「Z HRS 1200MP」(BET比表面積=200m2/g)等が挙げられる。
【0088】
シリカの配合量としては、ゴム成分100質量部に対して、2~1200質量部であることが好ましく、30~130質量部であることがより好ましく、35~130質量部であることが更に好ましい。
【0089】
特に運動性能と低燃費性能との両立を図る場合のシリカの配合量としては、ゴム成分100質量部に対して、2~200質量部であることが好ましく、30~130質量部であることがより好ましく、35~130質量部であることが更に好ましい。
【0090】
カーボンブラック及び無機充填材の両方を配合する場合には、両成分の合計量が、ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、2~200質量部であることが好ましく、30~130質量部であることがより好ましく、35~110質量部であることが更に好ましい。
【0091】
また、カーボンブラック及び/又はシリカが配合されたゴム組成物においては、カーボンブラック及び/又はシリカによるゴム組成物の靱性を高める目的、又はゴム組成物の引裂き強度と共に耐摩耗性を高める目的で、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、ジルコネートカップリング剤を配合してもよい。
【0092】
シランカップリング剤としては特に制限されず、公知のシランカップリング剤を広く使用することが可能であり、例えば、市販品を好適に使用することができる。このようなシランカップリング剤として、例えばスルフィド系、ポリスルフィド系、チオエステル系、チオール系、オレフィン系、エポキシ系、アミノ系、アルキル系のシランカップリング剤が挙げられる。
【0093】
スルフィド系のシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(3-モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-モノエトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-モノエトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-モノメトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-モノメトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-モノメトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-モノエトキシジメチルシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-モノエトキシジメチルシリルエチル)トリスルフィド、ビス(2-モノエトキシジメチルシリルエチル)ジスルフィド等が挙げられる。これらの内、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが特に好ましい。
【0094】
チオエステル系のシランカップリング剤としては、例えば、3-ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0095】
チオール系のシランカップリング剤としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-[エトキシビス(3,6,9,12,15-ペンタオキサオクタコサン-1-イルオキシ)シリル]-1-プロパンチオール等を挙げることができる。
【0096】
オレフィン系のシランカップリング剤としては、例えば、ジメトキシメチルビニルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルエトキシビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-(メトキシジメトキシジメチルシリル)プロピルアクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート、3-[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、3-[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、3-(トリエトキシシリル)プロピルメタクリレート、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート等を挙げることができる。
【0097】
エポキシ系のシランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、ジエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、トリエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)シラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0098】
アミノ系のシランカップリング剤としては、例えば、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-エトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、3-アミノプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0099】
アルキル系のシランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、メチルトリエトキシシランが好ましい。
【0100】
これらシランカップリング剤の中でも、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドを特に好ましく使用することができる。
【0101】
カーボンブラック及び/又は無機充填材と併用可能なチタネートカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなチタネートカップリング剤として、例えばアルコキシド系、キレート系、アシレート系のチタネートカップリング剤が挙げられる。
【0102】
アルコキシド系のチタネートカップリング剤としては、例えば、テトライソプロピルチネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラオクチルチタネート、テトラターシャリーブチルチタネート、テトラステアリルチタネート等を挙げることができる。これらの内、テトライソプロピルチタネートが好ましい。
【0103】
キレート系のチタネートカップリング剤としては、例えば、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、ドデシルベンゼンスルホン酸チタン化合物、リン酸チタン化合物、チタンオクチレングリコレート、チタンエチルアセトアセテート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンエタノールアミネート、チタンオクチレングリコレート、チタンアミノエチルアミノエタノレート等を挙げることができる。これらの内、チタンアセチルアセトネートが好ましい。
【0104】
アシレート系のチタネートカップリング剤としては、例えば、チタンイソステアレート等を挙げることができる。
【0105】
カーボンブラック及び/又は無機充填材と併用可能なアルミネートカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなアルミネートカップリング剤として、9-オクタデセニルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムセカンダリーブトキシド、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート等が挙げることができる。これらの内、9-オクタデセニルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートが好ましい。カーボンブラック及び/又は無機充填材と併用可能なジルコネートカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなジルコネートカップリング剤として、例えばアルコキシド系、キレート系、アシレート系のジルコネートカップリング剤が挙げられる。
【0106】
アルコキシド系のジルコニウム系カップリング剤としては、例えば、ノルマルプロピルジルコネート、ノルマルブチルジルコネート等を挙げることができる。この内、ノルマルブチルジルコネートが好ましい。
【0107】
キレート系のジルコネートカップリング剤としては、例えば、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムエチルアセトアセテート、ジルコニウムラクテートアンモニウム塩等を挙げることができる。この内、ジルコニウムテトラアセチルアセトネートが好ましい。
【0108】
アシレート系のジルコネートカップリング剤としては、例えば、ステアリン酸ジルコニウム、オクチル酸ジルコニウム等を挙げることができる。この内、ステアリン酸ジルコニウムが好ましい。
【0109】
シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、ジルコネートカップリング剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0110】
シランカップリング剤の配合量は、カーボンブラック及び/又はシリカ100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、3~15質量部が特に好ましい。0.1質量部以上であれば、ゴム組成物の引裂き強度向上の効果をより好適に発現することができ、20質量部以下であれば、ゴム組成物のコストが低減し、経済性が向上するからである。
【0111】
(2.ゴム組成物の製造方法)
本発明のゴム組成物の製造方法は、ゴム成分、及び化合物(1)、必要に応じて、カーボンブラックを混合すればよく、配合する順序は適宜設定されれば良い。
【0112】
(2.1.工程(A))
本発明の製造方法において、ゴム成分、並びに化合物(1)及び/又は該化合物の塩、必要に応じてカーボンブラックを含む原料成分を混合する工程(A)を含む方法が好ましい。
【0113】
本明細書において、「混合」には、単に混ぜ合わせるという態様のみならず、いわゆる「混練」という態様も含まれるものとする。
【0114】
工程(A)においては、ゴム成分、及び化合物(1)、必要に応じてカーボンブラックを含む原料成分を混合する。この混合方法においては、各成分の全量を一度に混合してもよく、粘度調整等の目的に応じて、各成分を分割投入して混合してもよい。また、ゴム成分と化合物(1)とを混合した後、カーボンブラックを投入するか、ゴム成分とカーボンブラックとを混合した後、化合物(1)を投入して混合してもよい。各成分を均一に分散させるために、混合操作を繰り返し行ってもよい。また、充填材を予め湿式方法および又は乾式混合方法によりゴムに添加した充填材マスターバッチゴムを使用しても良い。
【0115】
また、工程(A)における別の混合方法としては、ゴム成分と化合物(1)とを混合する工程(A-1)、並びに工程(A-1)で得られた混合物とを含む原料成分とカーボンブラックを混合する工程(A-2)を含む二段階の混合方法を挙げることができる。
【0116】
工程(A)におけるゴム組成物を混合する際の温度としては、特に制限はなく、例えば、100~190℃であることが好ましく、110~175℃であることがより好ましく、120~170℃であることがさらに好ましい。
【0117】
工程(A)における混合時間としては、特に制限はなく、例えば、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、1分間から8分間であることがさらに好ましい。
【0118】
本発明のゴム組成物を製造するに際しては、あらかじめゴム成分、及び化合物(1)を任意の割合で混合されたマスターバッチを用いてもよい。
【0119】
本発明のゴム組成物のマスターバッチの化合物(1)の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、0.01~200質量部が好ましく、0.1~100質量部が特に好ましい。
【0120】
工程(A-1)におけるゴム成分と化合物(1)とを混合する際の温度としては、60~190℃であることが好ましく、70~160℃であることがより好ましく、80~150℃であることがさらに好ましい。該混合温度を60℃以上とすることにより反応が促進され、また、190℃以下とすることにより、ゴムの劣化の発生が抑制される。
【0121】
工程(A-1)における混合時間としては、10秒間~20分間が好ましく、30秒間~10分間であることがより好ましく、60秒間~7分間であることがさらに好ましい。該混合時間を10秒以上とすることにより反応を充分に進行させることが可能である。一方、混合時間を20分間以内とすることにより、生産性の面で優れる。
【0122】
工程(A-2)における工程(A-1)で得られた混合物とカーボンブラック及び/又は無機充填材とを混合する際の温度としては、特に制限はなく、例えば、混合物の温度が100~190℃であることが好ましく、110~175℃であることがより好ましく、130~170℃であることがさらに好ましい。
【0123】
工程(A-2)における混合時間としては、特に制限はなく、例えば、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、1分間から8分間であることがさらに好ましい。
【0124】
(2.2.工程(B))
本発明の製造方法において、好ましい工程(B)は、工程(A)で得られる混合物に更に必要に応じて、その他配合剤を混合する工程である。
【0125】
工程(B)は、加熱条件下で行うことが好ましい。該工程の加熱温度としては、特に制限はなく、例えば、60~140℃であることが好ましく、80~120℃であることがより好ましく、90~120℃であることがさらに好ましい。
【0126】
混合時間としては、特に制限はなく、例えば、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、60秒間から5分間であることがさらに好ましい。
【0127】
工程(A)から工程(B)に進む際には、前段階の工程終了後の温度より、30℃以上低下させてから次の工程(B)へ進むことが好ましい。
【0128】
工程(A)においては、バンバリーミキサー、ロール、インテンシブミキサー、ニーダー、単軸押出機、又は二軸押出機等を用いて混合される。その後、押出工程において押出して加工され、例えば、トレッド用部材、又はサイドウォール用部材として成形される。続いて、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、タイヤが得られる。
【0129】
本発明のタイヤ用ゴム組成物の製造方法において、通常、ゴム組成物に配合されるステアリン酸、酸化亜鉛、加硫剤、加硫促進剤、及び老化防止剤等からなる群より選択されるその他配合剤を、必要に応じて、工程(A)又は工程(B)において添加することができる。
【0130】
その他配合剤は、工程(A)又は工程(B)のどちらか一方で添加してもよいし、あるいは工程(A)及び工程(B)に分けて添加してもよい。
なお、その他配合剤の中でも、加硫剤、又は加硫促進剤については、工程(B)で添加することが好ましい。
【0131】
(2.3.ゴム組成物の成形方法)
本発明におけるゴム組成物は、バンバリーミキサー、ロール、インテンシブミキサー、ニーダー、単軸押出機、又は二軸押出機等を用いて混合される。その後、押出工程において押出して加工され、例えば、トレッド用部材、又はサイドウォール用部材として成形される。続いて、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、タイヤが得られる。
【0132】
(3.用途)
本発明のゴム組成物は、一般に使用されるゴム製品に使用することができる。中でも、防振ゴム、ベルト、及びタイヤ等に用いることができ、その中でもタイヤに用いることが好ましい。
【0133】
本発明の防振ゴムは、例えば、自動車のエンジンマウント、ストラットマウント、ボディマウント、サスペンションブッシュ等に使用する防振ゴム、制振ゴムや免震ゴムとして用いることができる。
【0134】
本発明のベルトとしては、例えば、伝動ベルト、コンベヤベルト等が挙げられる。
【0135】
本発明のタイヤとしては、例えば、空気入りタイヤ(ラジアルタイヤ、バイアスタイヤ等)、ソリッドタイヤ等が挙げられる。
【0136】
タイヤの用途としては、特に制限はなく、例えば、乗用車用タイヤ、高荷重用タイヤ、モーターサイクル(自動二輪車)用タイヤ、スタッドレスタイヤ等が挙げられ、中でも、乗用車用タイヤに好適に使用できる。
【0137】
本発明のタイヤの形状、構造、大きさ及び材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0138】
本発明のタイヤにおいて、上記ゴム組成物は、特にトレッド部、サイドウォール部、ビードエリア部、ベルト部、カーカス部及びショルダー部から選ばれる少なくとも一つの部材に用いられる。
【0139】
中でも、空気入りタイヤのタイヤトレッド部、又はサイドウォール部を当該ゴム組成物で形成するのが好ましく、タイヤトレッド部を当該ゴム組成物で形成するのが特に好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0140】
トレッド部とは、トレッドパターンを有し、路面と直接接する部分で、カーカスを保護するとともに摩耗及び外傷を防ぐタイヤの外皮部分であり、タイヤの接地部を構成するキャップトレッド及び/又はキャップトレッドの内側に配設されるベーストレッドをいう。
【0141】
サイドウォール部とは、例えば、空気入りラジアルタイヤにおけるショルダー部の下側からビード部に至るまでの部分であり、カーカスを保護するとともに、走行する際に最も屈曲の激しい部分である。
【0142】
ビードエリア部とは、カーカスコードの両端を固定し、同時にタイヤをリムに固定させる役目を負っている部分である。ビードとは高炭素鋼を束ねた構造である。
【0143】
ベルト部とは、ラジアル構造のトレッドとカーカスとの間に円周方向に張られた補強帯である。カーカスを桶のたがの様に強く締付けトレッドの剛性を高めている。
【0144】
カーカス部とは、タイヤの骨格を形成するコード層の部分であり、タイヤの受ける荷重、衝撃、及び充填空気圧に耐える役割を果たしている。
【0145】
ショルダー部とは、タイヤの肩の部分で、カーカスを保護する役目を果たす。
【0146】
本発明のタイヤは、タイヤの分野において、これまでに知られている方法に従って製造することができる。また、タイヤに充填する気体としては、通常の又は酸素分圧を調整した空気;窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【0147】
本発明のタイヤは、優れた低発熱性を有し、タイヤの転がり抵抗が小さくなることから、自動車の低燃費化を図ることができる。また、カーボンブラック及び/又は無機充填材が高充填されたゴム組成物においても高い低発熱性を示すことから、高い運動性能を有する低燃費タイヤを提供することができる。
【0148】
(4.ゴム用添加剤)
本発明のゴム用添加剤は、下記式(1)により表される化合物、及び該化合物の塩から選ばれる少なくとも一種を含む。
【0149】
【化16】
(式(1)中、R
1は水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、ハロゲン原子、アミノ基、アルコキシ基、又はニトロ基であり、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。nは1~5の整数であり、Xは以下の式(1-1)又は(1-2)により示される基である。)
【0150】
【化17】
(式(1-1)中、R
a及びR
bは同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示し、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。)
【0151】
【化18】
(式(1-2)中、R
c及びR
eは同一又は異なって、水素原子、アミノ基、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示し、R
dはアルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい)
【0152】
本発明のゴム用添加剤をゴム成分に添加することで、ゴム成分に優れた低発熱性を付与することができる。
【0153】
本発明のゴム用添加剤は、ゴム成分に低発熱性を付与するための添加剤(以下、「低発熱化剤」ということもある)であって、本発明のゴム用添加剤を含むゴム組成物から作製されたタイヤは、転がり抵抗が低減され、その結果、優れた低燃費性能を発現する。
【0154】
本発明のゴム用添加剤は、化合物(1)を含んでいればよく、化合物(1)のみを含んで構成されてもよいし、更にその他配合剤を含んでも良い。
【0155】
上記本発明のゴム用添加剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、通常0.1~50質量部であることが好ましく、0.1~20質量部であることがより好ましく、0.1~10質量部であることが更に好ましい。ゴム成分100質量部に対してゴム用添加剤が0.1質量部以上含まれることにより、低発熱性が向上する。一方、ゴム成分100質量部に対してゴム用添加剤が50質量部以下であることにより、ゴム組成物のコストが低減し、経済性が向上するため好ましい。
【0156】
(5.新規化合物)
本明細書中の上記式(1)により表される化合物及び該化合物の塩の中で、Xが式(1-1)により表される基であり、Rbが水素原子である化合物、又は該化合物の塩は、新規な化合物、又は該化合物の塩であり、具体的には、式(8)により表される化合物、又は該化合物の塩である。
【0157】
【化19】
(式(8)中、R
1、R
a、及びnは前記に同じ。)
【0158】
式(8)により表される化合物、又は該化合物の塩の中でも、R1が水素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、アラルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アミノ基、アルコキシ基、又はニトロ基である化合物が好ましく、R1が水素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、ハロゲン原子、アミノ基、アルコキシ基、又はニトロ基である化合物がより好ましく、R1が水素原子である化合物が特に好ましい。
【0159】
式(8)により表される化合物、又は該化合物の塩の中でも、Raが水素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、又はアラルキル基である化合物が好ましく、Raが水素原子、又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基である化合物がより好ましく、Raが炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基である化合物が更に好ましく、Raがメチル基である化合物が特に好ましい。
【0160】
式(8)により表される化合物、又は該化合物の塩の中でも、nが1~3である化合物が好ましく、nが1又は2である化合物がより好ましく、nが1である化合物が特に好ましい。
【0161】
式(8)により表される化合物、又は該化合物の塩の中でも、R1が水素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、アラルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アミノ基、アルコキシ基、又はニトロ基であり、Raが水素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、又はアラルキル基であり、nが1~3であることが好ましく、R1が水素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、ハロゲン原子、アミノ基、アルコキシ基、又はニトロ基であり、Raが水素原子、又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基であり、nが1又は2であることがより好ましく、R1が水素原子であり、Raが炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基であり、nが1であることが更に好ましく、R1が水素原子であり、Raがメチル基であり、nが1である化合物が特に好ましい。
【0162】
また、式(8)により表される化合物の塩としては、特に限定はなく、任意の塩を使用することができる。このような塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、メタンスルホン酸塩等の有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;ジメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム等のアンモニウム塩等が挙げられる。
【0163】
具体的には、例えば、4-(1,3-ベンゾチアゾール-2-イルスルファニル)-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、4-(1,3-ベンゾチアゾール-2-イルスルファニル)-3-フェニル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、4-(1,3-ベンゾチアゾール-2-イルスルファニル)-3-プロピル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、4-(1,3-ベンゾチアゾール-2-イルスルファニル)-3-ナフチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン等が挙げられ、その中でも、4-(1,3-ベンゾチアゾール-2-イルスルファニル)-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オンが好ましい。
【0164】
反応式-1
【化20】
(式中、R
a、R
1、及びnは前記に同じ。Yはハロゲン原子を示す。)
【0165】
反応式-1によれば、式(9)により表されるハロゲン化ピラゾロン化合物と式(10)により表されるベンゾチアゾール系化合物を溶媒中で塩基の存在下で反応させることで、式(8)により表される化合物を製造できる。
【0166】
反応式-1において使用する溶媒としては、反応に対して不活性な溶媒である限り公知の溶媒を広く使用することができる。具体的には、例えば、ピリジン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、メタノール、エタノール、及び酢酸等のプロトン性極性溶媒等が挙げられ、これらの中でも、非プロトン性極性溶媒が好ましい。
【0167】
これらの溶媒は1種を単独で使用でき、又は必要に応じて2種以上を混合して使用することができる。
【0168】
これらの溶媒の使用量は、特に制限は無く、例えば、前記式(9)により表される化合物1質量部に対して、通常1~50質量部程度、好ましくは5~20質量部程度使用すれば良い。
【0169】
反応式-1は、-40℃から使用する溶媒の沸点温度までの範囲内で行うことができるが、通常、10~150℃程度で行うことが好ましく、使用する反応試薬、溶媒等に応じて調製すれば良い。
【0170】
反応式-1は、窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下で行うことができる。反応圧力は、特に制限はなく、常圧下、又は加圧下で実施できる。具体的には、1~100気圧の圧力下で実施することが好ましい。
【0171】
反応式-1の反応時間は、反応温度等により異なり、一概には言えないが、通常0.5~24時間程度で本反応は完結する。
【0172】
反応式-1において使用する塩基としては、ピリジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基を挙げられ、これらの中でも、ピリジンが好ましい。
【0173】
これらの塩基は1種を単独で使用でき、又は必要に応じて2種以上を混合して使用することができる。
【0174】
これらの塩基の使用量は、特に制限は無く、例えば、前記式(9)により表される化合物1モルに対して、0.5~50モルが好ましく、1.0~10モルがより好ましい。
【0175】
反応式-1において使用できる式(10)により表されるベンゾチアゾール系化合物としては、特に制限されないが、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、5-クロロ-2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプト-5-メトキシベンゾチアゾール、2-メルカプト-6-ニトロベンゾチアゾール等が挙げられる。
【0176】
式(10)により表されるベンゾチアゾール系の化合物の使用量としては、特に制限はなく、例えば、前記式(9)により表される化合物1モルに対して、1.0~5.0モルが好ましく、1.0~2.0モルがより好ましい。
【0177】
反応式-1において使用できる式(9)により表されるハロゲン化ピラゾロン化合物は、以下の反応式-2で表される方法によって製造することができる。
【0178】
反応式-2
【化21】
(反応式中、R
aは前記に同じ。Yはハロゲン原子を示す。)
【0179】
反応式-2によれば、前記式(11)により表される化合物とハロゲン化剤を溶媒中で作用させることで、前記式(9)により表されるピラゾロンハロゲン化物を製造できる。
【0180】
本反応において使用するハロゲン化剤としては、特に制限は無く、例えば、N-クロロスクシンイミド、N-ヨードスクシンイミド、N-ブロモスクシンイミド、塩素、ヨウ素、臭素、1,3-ジクロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、1,3-ジヨード-5,5-ジメチルヒダントイン、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン、テトラブチルアンモニウムトリブロミド、ジブロモイソシアヌル酸、トリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸、ジクロラミンB、クロラミンB、ジクロラミンT、クロラミンT、N-クロロサッカリン、N-ブロモサッカリン、N-ブロモフタルイミド、N-ヨードサッカリン等を挙げられ、これらの中でも、N-ブロモスクシンイミドが好ましい。
【0181】
これらのハロゲン化剤は1種を単独で使用でき、又は必要に応じて2種以上を混合して使用することができる。
【0182】
これらのハロゲン化剤の使用量は、特に制限は無く、例えば、前記式(11)により表される化合物1モルに対して、0.8~1.3モルが好ましく、0.9~1.1モルがより好ましい。
【0183】
本反応において使用する溶媒としては、反応に対して不活性な溶媒である限り公知の溶媒を広く使用することができる。具体的には、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、1、2-ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン等の炭化水素系溶媒等が挙げられ、これらの中でも、ハロゲン系溶媒が好ましい。
【0184】
これらの溶媒は1種を単独で使用でき、又は必要に応じて2種以上を混合して使用することができる。
【0185】
これらの溶媒の使用量は、特に制限は無く、例えば、前記式(11)により表される化合物1質量部に対して、1~30質量部が好ましく、5~15質量部がより好ましい。
【0186】
本反応は、-40℃から使用する溶媒の沸点温度までの範囲内で行うことができるが、通常、20~100℃程度で行うことが好ましく、使用する反応試薬、溶媒等に応じて調製すれば良い。
【0187】
本反応は、窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。反応圧力は、特に制限はなく、常圧下、又は加圧下で実施できる。
【0188】
本反応の反応時間は、反応温度等により異なり、一概には言えないが、例えば、0.5~24時間の反応時間を設けることが好ましい。
【0189】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【実施例】
【0190】
以下、実施例に基づき、本発明の実施形態をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0191】
実施例1:化合物A(4-(1,3-ベンゾチアゾール-2-イルスルファニル)-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン)
2L四つ口フラスコに3-メチル-5-ピラゾロン50g(0.51モル)、N-ブロモスクシンイミド 100g(0.56モル)、クロロホルム500mLを加えて2時間還流した。反応液を室温まで冷却し、メタノール500mLを加えて室温で1時間、氷浴上で1時間撹拌した後、反応物をろ別により取り出し、乾燥させることで白色固体の4-ブロモ-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン67.8gを得た。
【0192】
500mL四つ口フラスコに4-ブロモ-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン30g(0.17モル)、2-メルカプトベンゾチアゾール28.8g(0.17モル)、ピリジン330mLを加えて2時間還流した。反応液を室温まで冷却し、水3.3Lに少しずつ注ぎこんだ後、混合液を1時間氷浴上で撹拌した。反応物をろ別により取り出し、水1Lで洗浄した後、乾燥することで白色固体の4-(1,3-ベンゾチアゾール-2-イルスルファニル)-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン35.1gを得た。
1H-NMR(500MHz,d6-DMSO,δppm):
12.25(1H,bs)、10.41(1H,bs)、7.90(1H,J =7.9Hz,d)、7.78(1H,J =8.1Hz,d)、7.42(1H,m)、7.30(1H,m)、2.20(3H,s)
13C-NMR(500MHz,d6-DMSO,δppm):
173.59、161.71、154.45、145.32、134.79、126.14、123.91、121.57、121.04、86.11、10.20
融点:208℃
【0193】
実施例2~4及び比較例1~3:ゴム組成物の製造
下記表1の工程(A)に記載の各成分をその割合(質量部)で混合し、バンバリーミキサーで混合した。混合物の温度が60℃以下になるまで養生させた後、表1の工程(B)に記載の各成分をその割合(質量部)で投入し、混合物の最高温度が70℃以下になるよう調整しながら混合して、ゴム組成物を製造した。
【0194】
【表1】
尚、表1における各成分の詳細は、下記の通りである。
※1:NR(天然ゴム);GUANGKEN RUBBER社製、TSR-20
※2:カーボンブラック;Cabot社製、N234
※3:老化防止剤(N-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン);Kemai Chemical Co.,Ltd社製
※4:ワックス;Rhein Chemie Rheinau社製、Antilux 111
※5:酸化亜鉛;Dalian Zinc Oxide Co.,Ltd社製
※6:ステアリン酸;Sichuan Tianyu Grease社製
※7:化合物A;実施例1で合成した化合物
※8:加硫促進剤1:N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、三新化学工業株式会社製、サンセラーNS-G
※9:加硫促進剤2:テトラメチルチウラムモノスルフィド、東京化成工業株式会社製
※10:加硫促進剤3:1,3-ジフェニルグアニジン、大内新興化学工業株式会社製、ノクセラー D(D-P)
※11:硫黄 ;Shanghai Jinghai Chemical Co.,Ltd社製
【0195】
実施例2~4及び比較例1~3:低発熱性(Tanδ値)試験
下記実施例2~4及び比較例1~3のゴム組成物について、粘弾性測定装置(Metravib社製)を使用し、温度40℃、動歪5%、周波数15HzでTanδ値測定した。比較するために、上記化合物(1)を添加しない以外は、各実施例と同じ配合内容及び同じ製法でゴム組成物(比較例1~3)を作製し、そのTanδ値を100とした。下記式に基づいて、低発熱性指数を算出した。なお、低発熱性指数の値が小さい程、低発熱性であり、ヒステリシスロスが小さいことを示す。
式:低発熱性指数
= (各実施例2のゴム組成物のTanδ値)/(比較例1のTanδ値)×100
式:低発熱性指数
= (各実施例3のゴム組成物のTanδ値)/(比較例2のTanδ値)×100
式:低発熱性指数
= (各実施例4のゴム組成物のTanδ値)/(比較例3のTanδ値)×100
【産業上の利用可能性】
【0196】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分に優れた低発熱性を付与することができる。よって、各種自動車の各種空気入りタイヤの各部材、特に空気入りラジアルタイヤのトレッド用部材、サイドウォール用部材、ビードエリア用部材、ベルト用部材、カーカス用部材、及びショルダー用部材として利用することができる。