(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】新規なIGFR様レセプター及びその使用
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20221114BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221114BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20221114BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20221114BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20221114BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20221114BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20221114BHJP
C12N 15/115 20100101ALN20221114BHJP
A61K 48/00 20060101ALN20221114BHJP
A61K 31/7105 20060101ALN20221114BHJP
A61P 5/50 20060101ALN20221114BHJP
A61K 31/713 20060101ALN20221114BHJP
A61P 43/00 20060101ALN20221114BHJP
A61K 38/02 20060101ALN20221114BHJP
【FI】
G01N33/53 D
A61K39/395 N
A61P3/10
C07K16/28 ZNA
G01N33/50 Z
C12P21/08
C12N15/113 140Z
C12N15/115 Z
A61K48/00
A61K31/7105
A61P5/50
A61K31/713
A61P43/00 111
A61K38/02
(21)【出願番号】P 2018512274
(86)(22)【出願日】2016-09-07
(86)【国際出願番号】 EP2016071126
(87)【国際公開番号】W WO2017042242
(87)【国際公開日】2017-03-16
【審査請求日】2019-08-08
(32)【優先日】2015-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(73)【特許権者】
【識別番号】501357201
【氏名又は名称】ヘルムホルツ ツェントゥルム ミュンヘン ドイチェス フォルシュングスツェントゥルム フューア ゲズントハイト ウント ウムヴェルト (ゲーエムベーハー)
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】リッケルト,ハイコ
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/005987(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0017563(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61K 31/7105
A61K 31/713
A61P 3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖尿病又は糖尿病の進行リスクを診断する方法に使用するための、IGFR様レセプターに特異的に結合可能な診断用結合剤であり、前記IGFR様レセプターは、配列番号:1の配列に対応する配列を含み、前記診断用結合剤が、モノクローナル抗体である、診断用結合剤。
【請求項2】
下記工程:
i)対象から得られたサンプルを、IGFR様レセプターに特異的に結合する診断用結合剤と接触させる工程、及び
ii)該結合剤の結合を検出する工程、
を含む対象における膵島細胞の変性を検出するためのin vitro診断のためのデータの提供方法であって、
ここで、前記診断用結合剤の検出可能な結合は、対象における膵島細胞の脱分化を示し、
ここで、IGFR様レセプターは、配列番号:1に対応する配列を含み、
膵島細胞の脱分化が、糖尿病又は糖尿病の進行リスクを示し、前記診断用結合剤が、モノクローナル抗体である、
in vitro診断のためのデータの提供方法。
【請求項3】
サンプルが、血漿サンプルである、請求項
2記載のin vitro診断のためのデータの提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[背景]
インスリン/インスリン様成長因子(IGF)は、複数の生理学的及び病理学的プロセスのレギュレーションに関与する、リガンド、細胞表面レセプター、及び結合タンパク質のネットワークを構築している。インスリン/IGFは、生命の全ての段階において、重要な発達的及び代謝的役割を果たしている。インスリン/IGFシグナル伝達は、寿命のレギュレーションにも寄与しているが、シグナル伝達の調節不全は、腫瘍に関与している。インスリンレセプター(InsR)及びIGF-1レセプター(IGF1R)は、それらの下流の細胞質メディエーターの大部分を共有しているが、実験的及び臨床的証拠のほとんどが、(主にインスリンによる)InsR活性化が代謝活性を主にもたらし、一方で、(主にIGF-1又はIGF-2による)IGF1R活性化が増殖及び分化イベントをもたらすという概念と一致している(Sarfstein R and Werner H Endocrinology. 2013 May;154(5):1672-9;Siddle K J Mol Endocrinol. 2011 Jun 17;47(1):R1-10)。
【0002】
InsR及びIGF1Rは、膜貫通チロシンキナーゼ含有レセプターのファミリーに属する。それらの成熟型において、それらは、2つの細胞外α-サブユニットと、チロシンキナーゼ活性を有する2つの膜貫通βサブユニットとから構成されるヘテロ四量体として存在する。IGF-及びインスリンレセプターは、高度な相同性(チロシンキナーゼドメインにおいて84%、リガンド結合ドメインにおいて45%~65%、及び、アミノ酸配列全体において50%超)を示す。加えて、これらのレセプターは、ゲノム構築において顕著な類似性を表わす(Sarfstein R and Werner H, loc. cit.; Arnalez F and Helman L. Hematol Oncol Clin North Am. 2012 Jun;26(3):527-42)。
【0003】
また、インスリンレセプターの半分とIGFレセプターの半分とから構成される「ハイブリッド」レセプター(IGF1Rαβに結合しているIRαβ)も存在する。ハイブリッドは、IGFRに対してと同様の親和性で、IGFに結合するが、InsRより実質的に低い親和性でインスリンに結合する。ハイブリッドレセプターが別個の生理学的役割を有するかどうかは不明である(Sarfstein R and Werner H, loc. cit.; Arnalez F and Helman L., loc. cit)。
【0004】
インスリンレセプターは、エクソン11によりコードされる配列の選択的スプライシングの結果として、2つのスプライシング変異アイソフォームで存在する。「B」アイソフォームは、インスリンのみを認識するが、「A」アイソフォームは、腫瘍により最も一般的に発現されるアイソフォームであり、インスリンならびにIGF1及び2の両方を認識する。両アイソフォームは、発達中に差動的に発現される。ここで、InsR-Aは、胎児組織において優先的に発現され、InsR-Bは、成体組織、特に、肝臓、筋肉、及び脂肪細胞において優先的に発現される。IGF1Rは、逆パターンの発現を表わし、肝臓には存在せず、脂肪組織には低レベルで存在し、脳には高レベルで存在する。加えて、その強力な抗アポトーシス性で生存促進性の役割と一致して、IGF1Rは、ほとんどの腫瘍及び悪性細胞において過剰発現される(Pollak M Nat Rev Cancer. 2012 Feb 16;12(3):159-69、Sarfstein R and Werner H, loc. cit.; Siddle K, loc cit)。
【0005】
IGF1及びIGF2は、内分泌、パラクライン、又はオートクライン様式で発現される場合がある。後者は、トランスフォーメーションされた細胞において一般的である。肝臓は、それらの主な生成部位である。対照的に、インスリン生成は、膵臓β細胞に限定されている。インスリン及びIGFは、それらの特異的なレセプターに高い親和性で結合し、IGF2を除いて、非同種のレセプターに低い親和性で結合する。IGF2は、InsR-Aにも、高い親和性で結合する(Pollak M, loc cit.; Siddle K, loc. cit.)。
【0006】
リガンド結合により、InsR及びIGF1Rの構造におけるコンホーメーション変化が誘引され、それらに固有のチロシンキナーゼ活性が活性化される。インスリン及びIGFは、別個の生理学的役割を果たしているが、それらは、同じシグナル伝達経路を利用している。InsR及びIGF1Rの下流シグナル伝達はほとんど、MAPK/Ras-Raf-Erk経路、ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ/AKT/mTOR(PI3K/AKT)経路、及びヤーヌスキナーゼ/シグナルトランスデューサー及びアクチベーターの転写(JAK/STAT)経路により伝えられる。最終的に、IGF1Rの活性化により、細胞増殖の増大及びアポトーシスの減少がもたらされる。一方、インスリン結合によるInsRの活性化により、脂質、タンパク質、及び炭水化物の貯蔵及び合成が促進され、その破壊及び循環内への放出が阻害される。インスリンがエネルギー貯蔵又は利用を増大させる第1工程は、促進性グルコーストランスポーターGlut4により媒介される、細胞内へのグルコースのレギュレーションされた輸送による(Chang et al. Mol Med. 2004 Jul-Dec; 10(7-12): 65-71.)。インスリン発現は、特殊化された膵臓β細胞に限定されており、正常な環境下では、循環グルコースレベルにより厳密にレギュレーションされている。古典的なインスリン感受性臓器(肝臓、筋肉、及び脂肪組織)によるインスリン刺激グルコース取込みにより、循環グルコースレベルは低下する。このため、β細胞は、グルコースを感知し、生理学的グルコースレベルを比較的狭い範囲で維持するためにインスリンを放出する、グルコース「サーモスタット」である。繊細に釣り合っているInsRシグナル伝達経路の破壊により、制御されていない又は損なわれたインスリン分泌、調節不全の血中グルコースレベル、及び最終的には、膵臓β細胞の破壊又は機能喪失(糖尿病として一般に公知な症状)がもたらされる(Pollak M, loc cit.;Siddle K, loc. cit.; Sarfstein R and Werner H, loc. cit;Arnalez F and Helman L., loc. cit)。
【0007】
世界中の成人人口の8.3%が患っており、大変な率で増大している糖尿病は、現代の最も一般的な疾患の1つである。糖尿病患者数は、2013年の3億8200万人から、2035年までに5億9200万人に増大すると予測されている。これは、55%の正味の増加を意味する。主な形態は、2型糖尿病(T2D)であり、全ての糖尿病症例の90%近くを占めている(Hameed et al. World J Diabetes. 2015 May 15; 6(4): 598-612)。
【0008】
1型糖尿病(T1D)は、世界中で数百万人が患っている自己免疫障害であり、膵臓内のランゲルハンス膵島におけるインスリン生成β細胞の臓器特異的免疫破壊の結果として生じる。それらの細胞が一旦破壊されると、1型糖尿病を有する患者は、血中グルコースの制御を失い、同喪失により、急性症状(例えば、ケトアシドーシス及び重度の低血糖)及び二次合併症(心疾患、盲目、及び腎不全を含む)がもたらされるおそれがある。1型糖尿病は、遺伝的素因、大部分は、未知の環境要因及び確率的イベントの組み合わせの結果として進行すると考えられる。ただし、疾患の開始及び進行を制御する正確な免疫学的、遺伝的、及び生理学的イベントは、解明が続けられている。
【0009】
初期の2型糖尿病(T2D)は、古典的なインスリンターゲット臓器のインスリン抵抗性(すなわち、正常なインスリンターゲット細胞によるグルコース取込みの低下、多くの場合、過剰なカロリー摂取により誘引される)により生じ、高インスリン血症をもたらす。最初の内は、インスリンレベルのこれらの上昇は、インスリン抵抗性を克服し、高血糖を避けるのに十分である。しかしながら、最終的には、インスリン抵抗性の増大によるのみではなく、膵臓β細胞によるインスリン分泌の減少によっても、高血糖が生じる。
【0010】
血中グルコースレベルを制御することが、糖尿病処置の主な目的である。T1Dは、一般的には、インスリン投与ならびに食事変化及び運動により管理されている。しかしながら、栄養摂取後のインスリン注射を一生必要とすることは、患者のクオリティ・オブ・ライフを酷く低下させるおそれがある。さらに、インスリン注射の適切な用量及びタイミングを証明するのは難しい。T1Dの治癒又は予防は、発症プロセスに確かに関連するバイオマーカーが存在していないことにより重度に損なわれ、診断時には、β細胞数の著しい減少がもたらされる。今日において、1型糖尿病におけるほとんどの臨床試験の目的は、残存している機能的なβ細胞の塊を、免疫寛容を最適に誘引し、一方で、保護的な免疫応答を保存することにより改善することである。定義上は、処置に先立つ著しいβ細胞破壊のために、これは、疾患が治癒するのは稀であろう。したがって、疾患開始時に好ましく発現された信頼性のあるバイオマーカーは、非常に望ましいであろう。他の方法は、インスリン分泌機能を再構成するために、膵臓又は膵臓β細胞のいずれかの移植に焦点を当てている。しかしながら、この技術は、ドナー臓器の不足により妨害される。T2Dについては、インスリン以外に、合成血糖低下剤を含む他の非インスリン治療剤が利用可能である。しかしながら、同合成血糖低下剤は、多くの場合、その実際上の効果、投与の都合に関して限定的であり、有害な反応を引き起こすおそれがある。
【0011】
利用可能な糖尿病治療剤の安全性の懸念及び有害な作用、ならびに、今日試験されたいずれかの作用物質によっても疾患が持続的に軽減されないために、疾患をモデュレーションすることができる特定の介在について関心が高まっている。
【0012】
本発明の目的は、従来技術における必要性に応じることである。
【発明の概要】
【0013】
本発明者らにより、ヒトKIAA1324遺伝子によりコードされるタンパク質(エストロゲン誘引遺伝子121タンパク質(Q6UXG2)としても公知)が、特に、膵臓において、IGF-1R、IGF-2R、及びInsRと共存していることが観察された。エストロゲン誘引遺伝子121タンパク質には、オートファジーのレギュレーション及びストレス下での細胞の生存促進の機能が与えられた。エストロゲン誘引遺伝子121によりコードされる変異タンパク質も、当技術分野において公知であり、MABA-1(国際公開公報第2007/005987号)と指定された。MABA-1は、エストロゲン誘引遺伝子121によりコードされるタンパク質とは、1つの位置において異なっている。MABA-1は、ガンにおいて役割を果たすと考えられる。このタンパク質をブロックすることにより、ガン細胞の増殖阻害がもたらされるためである。しかしながら、代謝における前記タンパク質の役割については、単独で推測されることはもちろん、何も知られていなかった。この役割は、本発明者らによって、はじめて前記タンパク質に帰するものとされた。
【0014】
IGFRのドメイン構造に類似するそのドメイン構造のために、本発明者らは、このタンパク質に、レセプターの機能を与え、このため、このタンパク質をIGFR様レセプターと呼んだ。本発明者らにより、脳下垂体、視床下部、及び膵島細胞におけるそのIGFR様レセプターの最も高い発現も観察された。これらは、食物摂取及び代謝を制御する内分泌系を構成している。
【0015】
さらに、本発明者らは、IGFR様レセプターのノックダウン又はノックアウトのいずれかにより、InsR及びIGFR1のリン酸化の増大がもたらされ、AMPKのリン酸化の増大ももたらされ、IGFRもしくはInsRのいずれか又は両方が、シグナル、例えば、インスリンの結合を伝達した場合に、下流シグナル伝達コンポーネントが活性になることを解明した。したがって、IGFR様は、InsR及び/又はIGFR媒介性シグナル伝達を、負にレギュレーションすると考えられる。また、本発明からの知見、すなわち、KIAA1324遺伝子によりコードされるタンパク質が実際にIGFR様レセプターとして作用することに関して、本発明者らは、ゲノムワイド関連解析(GWAS)を詳細に調べることにより、KIAA1324遺伝子におけるSNPと、2型糖尿病、LDLコレステロール、及び/又は冠動脈疾患との強力な関連性を見出した。
【0016】
要するに、本発明者らによりIGFR2及び/又はInsRのモデュレーターの機能が与えられた、ヒトKIAA1324遺伝子によりコードされるタンパク質は、代謝における、特に、インスリンシグナル伝達における、及び同様に、LDLコレステロール代謝における、ならびに、冠動脈心疾患等の疾患に伴う役割を果たす。この知見は、非常に重要なものである。IGFR及びInsRとは別に、インスリンシグナル伝達における更なるプレーヤーが存在する可能性があるとは考えられていなかったためである。IGFR及び/又はInsRにおけるその想定される負のレギュレーション機能のために、本発明のIGFR様レセプターは、モデュレーターとして魅力的なターゲットであると考えられ、このため、例えば、糖尿病、LDLコレステロール関連障害、及び冠動脈疾患、ただし、特に、II型糖尿病を処置するための医薬の開発についての新たな道を開くことができる。
【0017】
したがって、前記レセプターのアンタゴニストは、例えば、II型糖尿病の発病に一般的に見られるインスリン抵抗性を反転させる、新規で、緊急に必要とされる可能性を開く。一方、アゴニストは、インスリンシグナル伝達をブロックするのに使用することができる。際立ったことに、本発明者らは、IGFR様レセプターが膵臓におけるβ細胞の脱分化に関連することも示すことができた。同脱分化は、最終的に、β細胞の破壊又は機能喪失をもたらす疾患開始における初期イベントである。したがって、IGFR様レセプターは、元に戻せないβ細胞の喪失の前に、糖尿病の早期診断及び処置を可能にする促進性診断ツールでもあり、このため、I型糖尿病の処置のための道を開く可能性がある
【0018】
したがって、本発明は、配列番号:1のIGFR様レセプターに対して生じた抗体と反応可能なIGFレセプター(IGFR)様レセプターをコードする単離されたDNA配列を提供する。ここで、前記抗体は、配列
(i)TSKRTPDGFDSVPLKT(配列番号:2)及び/又は
(ii)CHQCDPDKYSE(配列番号:3)及び/又は
(iii)MYKWAKPKICSEDLEG(配列番号:4)及び/又は
(iv)FQRTTFHEASRKYTN(配列番号:5)及び/又は
(v)CTFSRNTPTRTFNY(配列番号:6)
の少なくとも1つのエピトープに特異的に結合する。
【0019】
特に、前記単離されたDNA配列は、配列番号:1に対応する配列を含むIGFR様レセプターをコードすることができる。
【0020】
単離されたDNA配列は、特に、配列番号:7に対応する配列(NM_0200775.4)を含むことができる。
【0021】
さらに、本明細書において、本明細書で記載されたDNA配列を含むベクターが提供される。前記ベクターは、前記IGFR様レセプターをコードするDNA配列に操作可能に結合している遺伝子調節エレメントをさらに含むことができる。前記ベクターを含むホスト細胞も想定される。
【0022】
さらに、本明細書において、糖尿病又は糖尿病の進行リスクについての診断マーカーとして使用するための、IGFR様レセプターに特異的に結合可能であり、前記IGFR様レセプターは、配列番号:1の配列に対応する配列を含む、結合剤が提供される。
【0023】
本発明のIGFR様レセプター(前記IGFR様レセプターは、例えば、配列番号:1に対応する配列を含む)のアンタゴニスト及びアゴニストも、本明細書において提供される。前記アンタゴニスト及びアゴニストは、一般的には、医薬としての使用が想定される。具体的には、本明細書で提供されたアンタゴニスト及びアゴニストは、糖尿病の予防的及び/又は治療的処置の方法に使用するのを意図している。ただし、アンタゴニストが好ましい。
【0024】
本アンタゴニスト及びアゴニストは、前記IGFR様レセプターに特異的に結合するのが想定され、特に、抗体、siRNA、核酸、アプタマー、ペプチド、タンパク質、又は小分子有機化合物等から選択することができる。抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であることができる。
【0025】
特に、前記抗体、好ましくは、モノクローナル抗体は、前記IGFR様レセプターのエピトープに特異的に結合する抗体(例えば、モノクローナル抗体)であることができる。該エピトープは、配列:
(i)TSKRTPDGFDSVPLKT(配列番号:2)及び/又は
(ii)CHQCDPDKYSE(配列番号:3)及び/又は
(iii)MYKWAKPKICSEDLEG(配列番号:4)及び/又は
(iv)FQRTTFHEASRKYTN(配列番号:5)及び/又は
(v)CTFSRNTPTRTFNY(配列番号:6)
を含むか、又は、これらからなる。
【0026】
本明細書で提供された診断的及び/又は治療的使用において、糖尿病は、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病、前糖尿病、インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム、及び耐糖能障害を含むことが想定される。
【0027】
IGFR様レセプターのアンタゴニストもしくはアゴニスト(アンタゴニストが好ましい)による処置は、インスリン抵抗性を予防し、もしくは、反転させることができ、ならびに/又は、膵臓β細胞の脱分化及び/もしくは機能喪失を反転させることができる。
【0028】
さらに、本明細書において、IGFR様レセプターのアンタゴニスト又はアゴニスト(アンタゴニストが好ましい)を含む、医薬又は医薬組成物が提供される。好ましい実施態様では、前記IGFR様レセプターは、配列番号:1に対応する配列を含むか、又は、同配列からなる。前記アンタゴニスト又はアゴニストは、好ましい実施態様では、前記IGFR様レセプターに特異的に結合するモノクローナル抗体である。
【0029】
前記好ましいモノクローナル抗体は、特に、前記IGFR様レセプターのエピトープに結合することが想定される。該エピトープは、配列
(i)TSKRTPDGFDSVPLKT(配列番号:2)及び/又は
(ii)CHQCDPDKYSE(配列番号:3)及び/又は
(iii)MYKWAKPKICSEDLEG(配列番号:4)及び/又は
(iv)FQRTTFHEASRKYTN(配列番号:5)及び/又は
(v)CTFSRNTPTRTFNY(配列番号:6)
を含むか、又は、同配列からなる。
【0030】
さらに、本明細書において、配列
(i)TSKRTPDGFDSVPLKT(配列番号:2)及び/又は
(ii)CHQCDPDKYSE(配列番号:3)及び/又は
(iii)MYKWAKPKICSEDLEG(配列番号:4)及び/又は
(iv)FQRTTFHEASRKYTN(配列番号:5)及び/又は
(v)CTFSRNTPTRTFNY(配列番号:6)
の、IGFR様レセプターのエピトープに特異的に結合する、モノクローナル抗体が提供される。
【0031】
さらに、本明細書において、IGFR様レセプターのアンタゴニスト又はアゴニストについてのin vitroスクリーニングアッセイ法であり、
(a)前記IGFR様レセプターを発現している安定した細胞系統を提供する工程と、
(b)前記(a)の細胞系統を、候補アンタゴニスト又はアゴニストと接触させる工程と、
(c)IGFR様レセプターの下流シグナル伝達イベントを測定し、又は、検出する工程であって、アンタゴニストは、前記IGFR様レセプターの下流シグナル伝達イベントをサプレッションすることにより特定され、アゴニストは、前記IGFR様レセプターの下流シグナル伝達イベントを促進することにより特定される測定又は検出工程とを含み、
ここで、前記IGFR様レセプターは、好ましい実施態様では、配列番号:1の配列に対応する配列を含む、方法が提供される。
【0032】
また、本明細書において、in vitroスクリーニングアッセイ法により得ることができるIGFR様レセプターのアンタゴニスト又はアゴニストであり、前記IGFR様レセプターのアンタゴニスト又はアゴニストは、抗体、siRNA、核酸、アプタマー、ペプチド、タンパク質、又は小分子有機化合物から選択される、アンタゴニスト又はアゴニストが提供される。
【0033】
さらに、本発明は、対象における膵島細胞の変性を検出するためのin vitro診断アッセイ法であって、
i)前記対象のサンプル、例えば、血漿サンプルを、IGFR様レセプターに特異的に結合する診断用結合剤、例えば、モノクローナル抗体と接触させる工程と、
ii)該結合剤の結合を検出する工程とを含み、
ここで、前記結合剤の検出可能な結合は、対象における膵島細胞の脱分化を示し、ここで、IGFR様レセプターは、配列番号:1に対応する配列を含む、in vitro診断アッセイ法を提供する。
【0034】
該診断用結合剤(特に、本発明の抗体、例えば、モノクローナル抗体であることができる)は、例えば、配列
(i)TSKRTPDGFDSVPLKT(配列番号:2)及び/又は
(ii)CHQCDPDKYSE(配列番号:3)及び/又は
(iii)MYKWAKPKICSEDLEG(配列番号:4)及び/又は
(iv)FQRTTFHEASRKYTN(配列番号:5)及び/又は
(v)CTFSRNTPTRTFNY(配列番号:6)
の、IGFR様レセプターのエピトープに特異的に結合することが想定される。
【0035】
膵島細胞の脱分化は、糖尿病又は糖尿病の進行リスクを示すことが想定される。
【0036】
該診断用結合剤は、好ましくは、組成物、例えば、診断用組成物の形態であることができる。したがって、本発明は、本明細書で記載された診断用結合剤を含み、場合によりさらに、前記診断用結合剤がそのターゲット、すなわち、本明細書で記載されたIGFR様レセプターに結合するのを検出するための手段を含む、診断用組成物も提供する。
【0037】
また、本発明は、膵島細胞の変性のin vitro検出のための、本発明の結合剤、及び特に、本発明の抗体の使用に関する。治療用又は診断用組成物の製造のためのこれらの抗体の使用も企図される。
【0038】
さらに、本明細書において、糖尿病を処置する方法であって、IGFR様レセプターのアンタゴニスト又はアゴニストを、対象に投与することを含み、前記IGFR様レセプターは、配列番号:1に対応する配列を含む、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明は、非限定的な実施例及び添付の図面と合わせて検討することで、詳細な説明を参照して、より良好に理解されるであろう。図は、本発明の方法の実施態様を例証する。
【
図1】本明細書全体を通して列記された配列の図示。配列番号:1は、IGFR様レセプターの長い転写物を表わす。予想される成長因子ドメインには、赤で下線が引かれている。マンノース-6-リン酸レセプター結合ドメインには、緑で下線が引かれている。膜貫通領域には、黒で下線が引かれている。細胞質領域には、青で下線が引かれている。抗体が作成された配列番号:2~6に対応する5つのエピトープは、下線が引かれた太字の文字で強調されている。
【
図2】IGF-1、IGF-2、及びインスリンリガンドに隣接するIGFR様レセプターの膵臓における発現。E14.5マウス胚のGenepaint.org in situハイブリダイゼーションにより、膵臓におけるIGFR様レセプター mRNAの特異的な発現が示される(B)。IGF1及びIGF2 mRNAは、膵臓上皮に隣接する組織において発現される(A、C)。一方、インスリン mRNAは、膵臓の内分泌区画に存在する(D)。
【
図3】IGFR様レセプターノックアウトマウスは、正常な体重で生まれた後早期に死亡する。EUCOMMアレルの模式図(A)。EUCOMMアレルは、条件付き可能性を有するノックアウト第1レポータータグ付きインサート(プロモーター駆動カセット)である(Skarnes WC et al. 2011; Nature)。L1L2_Bact_Pカセットを、第3番染色体の位置108489484(重要なエクソンの上流)に挿入した(Build GRCm38)。このカセットは、FRT部位、続けて、lacZ配列及びloxP部位から構成される。この第1loxP部位に続けて、ヒトベータ-アクチンプロモーターの制御下にある、ネオマイシン、SV40 ポリA、第2FRT部位、及び第2loxP部位である。第3loxP部位は、位置108488602におけるターゲットエクソンの下流に挿入される。重要なエクソンは、loxP部位に隣接している。「条件付きレディ」(loxP導入)アレルを、このアレルを有するマウスにおいて、flpリコンビナーゼ発現により形成することができる。後のcre発現により、ノックアウトマウスがもたらされる。cre発現がflp発現なしに生じる場合、レポーターノックアウトマウスが生じるであろう(http://www.informatics.jax.org/allele/MGI:4436415)。IGFR様レセプターノックアウトマウスは、誕生時に正常な外観を示すが、その胃にミルクが無かったことにより示されるように授乳しない(B、スター)。同マウスは、活発でなく、代謝機能不全のサインである呼吸困難を表わす。種々の段階におけるメンデル比は、誕生まで3つの遺伝子型の正常な分布を示すが、生存しているノックアウトマウスの確率は、誕生後から離乳齢までに有意に低下する。おそらく、補償メカニズム及び/又は、不完全なノックアウトをもたらす挿入カセット付近でのスプライシングにより、離乳齢において、ごくわずかな生存が認められる(C)。ヒストグラムは、P0での野生型及びヘテロ接合性同腹子対照と比較した、ノックアウトマウスの正常な体重を示す(D)。
【
図4】IGFR様レセプターKOマウスの膵臓における、成長、増殖、及び内分泌分化。膵臓切片の共焦点画像から、インスリン抗体(緑色)を使用する、免疫蛍光ラベルβ細胞により示されるように、E16.5における正常な内分泌分化が示される(同様の結果を、E14.5及びE18.5において得た。図示せず)。膵臓上皮の正常な増殖が、EdU(赤色)の包含により示される。E14.5、E16.5、及びE18.5における総細胞数(DAPIにより染色)に対するEdU陽性細胞の定量から、ノックアウトと野生型の膵臓との間での増殖における有意差は示されない(1つの膵臓/段階の異なる領域から少なくとも3つの切片をカウントした。エラーバーは、平均の標準誤差(SEM)を表わす)。
【
図5】誕生前のIGFR様レセプターKOマウスにおける膵臓遺伝子発現。リアルタイムqPCRから、内分泌β細胞分化、成熟、増殖、及びノックアウト膵臓における機能に重要な選択遺伝子の相対的なmRNA発現において、E18.5における野生型対照と比較して、中程度の変化が示される。この段階では、胚は、未だに母性栄養に頼っている(N=4、エラーバーは、SEMを表わす)。アクチンを、正規化のためのハウスキーピング遺伝子として使用した。
【
図6】胎盤栄養供給が中断され、InsR-AがInsR-Bに切り替わった時点での、誕生後のIGFR様レセプターKOマウスにおける膵臓遺伝子発現の変化。内分泌β細胞分化(Foxa2、Pdx1、Pax6、Neurod1、Nkx2-2、Nkx6-1)、成熟(MafA、MafB、Ucn3)、増殖(Ccnd1、Ccnd2、Cdk4、Cdkn1a、Cdkn1b)、及び機能(Slc2a2、Slc30a8、Gjd3、Kcnj11、Smarca1、Abcc8)に重要な選択遺伝子の相対的なmRNA発現は、リアルタイムqPCRにより示されたように、ノックアウト膵臓において、誕生直後の野生型対照と比較して有意に変化している(N=2、エラーバーは、SEMを表わす)。
【
図7】IGFR様レセプターにより、膵臓及びMin6マウスインスリノーマ細胞における、Akt及びAMPKシグナル伝達が媒介された。膵臓組織全体のライゼートのウェスタンブロットから、ホスホ特異的抗体を使用して、Akt及びAMPKのリン酸化が示される(A)。かなりの数の変異胚から、Akt(mt2、3、5、6)及びAMPKリン酸化(mt1、2、3)における増大が示される(A)。同様に、(B)において、Min6細胞におけるIGFR様レセプターのノックダウンにより、ウェスタンブロットにより示されたように、Aktリン酸化の増大がもたらされる。Min6細胞を、IGFR様レセプターmRNAをターゲットするsiRNA又は対照としてのスクランブルsiRNAによりトランスフェクションした。
【
図8】Min6細胞におけるインスリン/IGFシグナル伝達についての、IGFR様レセプターのノックダウンの影響。Min6マウスインスリノーマ細胞におけるIGFR様レセプターのノックダウンにより、IR/IGF1Rに対するホスホ特異的抗体を使用するウェスタンブロットにより示されたように、正常な増殖条件下でのIR/IGF1Rのリン酸化の増大がもたらされ、飢餓条件とは独立していると考えられる。IR及びIGF1RならびにIRS-2(IRシグナル伝達の下流のアダプター分子)の総レベルは変わらない。一方、IGFR様レセプターは、ノックダウンサンプルにおいて強力に低下する。このことから、siRNAノックダウンの有効性が確認される(A)。下流シグナル伝達分子、例えば、AKT及びmTORのウェスタンブロット分析。同AKT及びmTORは、IR活性化の結果として共通してリン酸化される重要な分子である。Min6細胞におけるIGFR様レセプターノックダウンにより、AKT及びmTORのリン酸化の増大がもたらされるが、ERK及びS6RPのリン酸化の増大はもたらされない。ホスホS6RPの時間依存的減少により示されたように、飢餓条件は、その同じタイミングでの対照と比較して、IGFR様レセプターノックダウンサンプルにおいて、Akt、mTOR、及びERKリン酸化に影響を有さないと考えられる(B)。
【
図9】膵臓の内分泌、管、及び外分泌細胞におけるIGFR様レセプターの局在。IGFR様レセプター(緑色)、インスリン(赤色)、及びE-カドヘリン(シアン)に対する抗体により染色されたE18.5膵臓切片の共焦点画像から、外分泌及び内分泌区画の両方におけるIGFR様レセプターの免疫局在性が示される。同区画では、IGFR様レセプターは、インスリンと部分的に共存している。核を、DAPIにより染色した。
【
図10】Min6細胞におけるIGFR様レセプターの細胞内局在。IGFR様レセプター及びゴルジマーカーであるGM130に対する抗体により染色されたMin6細胞の免疫蛍光画像から、IGF2Rと同様に、ゴルジ複合体におけるIGFR様レセプターの部分的な局在が示される。
【
図11】飢餓によるIGFR様レセプターの局在。IGFR様レセプター(赤色)及びGM130(緑色)により免疫蛍光ラベルされたMin6細胞の共焦点画像から、正常な増殖条件と比較して、飢餓の2時間後に、cis-ゴルジ領域に濃縮されたIGFR様レセプターの再分布が示される。
【
図12】IGFR様レセプターのAP-2結合及び分取シグナルの局在。図に、配列番号:11、配列番号:12、及び配列番号:1の一部のアミノ酸配列を示す。
【
図13】飢餓条件下でのIGFR様レセプターとAP2との相互作用。ウェスタンブロット分析から、IGFR様レセプター及びアダプチンbに対する抗体を使用する免疫沈降により証明されたように、飢餓によるMin6細胞におけるアダプチンbサブユニット(AP2複合体の一部)とIGFR様レセプターとの共免疫沈降が示される。実質的には、正常な条件下では、アダプチンbは、共沈降しなかった。
【
図14】IGFR様レセプターは、栄養欠乏により細胞内に輸送されるが、InsRは輸送されない。表面ビオチン化、続けて、ニュートラビジンプルダウン及びウェスタンブロットから、飢餓条件下でのMin6細胞における、IGFR様レセプターの表面発現の減少の時間依存的減少が証明されるが、IRの減少は証明されない。
【
図15】IGFR様レセプターノックダウンは、基本的な条件において、オートファジー関連タンパク質のタンパク質発現を変化させない可能性が高い。オートファジー関連分子のウェスタンブロット分析により、正常な増殖条件下でのMin6細胞におけるIGFR様レセプターノックダウンによる発現において、見掛けの変化は示されない。
【
図16】マウス糖尿病膵島及び外分泌組織におけるIGFR様レセプターの発現。IGFR様レセプター(赤色)、インスリン(シアン)、及びE-カドヘリン(緑色)(A)、ならびに、IGFR様レセプター(赤色)、グルカゴン(シアン)、及びウロコルチン3(緑色)(B)に対する抗体により染色された野生型(<120mg/dL グルコース)及び糖尿病(>500mg/dL グルコース)成体膵臓のLSM画像から、内分泌及び外分泌区画の両方において、糖尿病膵臓におけるIGFR様レセプター抗体の免疫反応性の増大が示される。糖尿病状態は、糖尿病膵臓において染色されているインスリン及びウロコルチン3の減少により証明された。右側の画像は、白四角で印を付けられた領域を、より高倍率で表わす。
【
図17】IGFR様レセプターの細胞内及び細胞外ドメインに対する抗体を使用する、膵島細胞におけるIGFR様レセプターの検出。ウェスタンブロット実験から、膵島細胞ライゼートにおける約130kDaのタンパク質バンドの特異的な認識が示される。同認識は、配列番号:4及び6の細胞外ドメインに対する抗体による、HEK細胞ライゼートには存在しない。比較により、同じバンドは、配列番号:2の細胞内ドメインに対する抗体により、野生型及びヘテロ接合性の総膵臓ライゼートにおいて、特異的に認識されるが、変異胚及び膵島では認識されず、HEK細胞では認識されない。
【
図18】ヒトランゲルハンス膵島におけるIGF3R発現。IGFR様レセプター(赤色)、IGF2R(M6PR)(緑色)、及びインスリン(シアン)に対する抗体により免疫蛍光ラベルされた、ヒトドナーからのランゲルハンス膵島の共焦点画像から、ゴルジ区画における典型的なIGFR様レセプター分布ならびにIGF2R及びインスリンとの部分的な共存が示される。
【
図19】細胞外ドメインであるCRD及びCTDにおけるSNPをコードするKIAA1324/IGFR様。
【
図20】SNP付きKIAA1324とインスリン感受性(A)、アディポカイン及び炎症(B)、ならびにプロインスリン変換(C)との関連。
【
図21】インスリン経路におけるIGFR様レセプター機能の仮説モデル。IGFR様レセプターがその機能を遂行する可能性がある提唱メカニズムの模式図。1つの仮説において、IGFR様レセプターは、IRシグナル伝達及び再利用のモデュレーターとして作用する可能性がある。IRへのインスリンの結合に基づいて、複合体の会合が、IGFR様レセプターのリクルートをトリガーし、次に、時間及び用量依存的様式において、IGFR様レセプターが、この複合体を、初期エンドソーム/リソソーム区画にターゲットするであろう。リガンドが分解され、IRは、IGFR様レセプターと共に細胞膜に別経路で輸送されるであろう。別の仮説は、インスリンリガンドのIGFR様レセプターへの結合が、複合体の内部移行及びインスリンのリソソームにおける分解をトリガーし、これにより、IGFR様レセプターが、特定の環境下で放出された過剰な細胞周辺量のインスリンを除去させるスカベンジャー分子として作用する可能性があることに向けられる。最後に、IGFR様レセプターは、分泌胞の正確なガイド及び輸送により、インスリン顆粒の生合成及び成熟に関与する可能性がある。
【
図22】IGFR様レセプターは、ヒトにおける膵臓β細胞の機能不全を示す。IGFR様レセプター(赤色)及びインスリン(緑色)に対する抗体により染色されたヒト膵臓切片のLSM画像。核のDAPI(青色)による染色から、非糖尿病(4.6% HbA1c値)患者と比較して、糖尿病(6.9% HbA1c値)患者における、インスリンの減少及びIGFR様レセプター発現の増大が示される(糖尿病状態の指標として使用されるHbA1cは、血漿中における糖化ヘモグロビンHbA1cのパーセントとして定義される。正常範囲:5.9%未満)。
【
図23】細胞培養物及びマウスにおけるレセプター機能を研究するためのIGFR様レセプターノックアウト及びノックイン戦略。(1)コアプロモーター及び転写開始側をターゲットするCRISPR/Cas9媒介性ノックアウト戦略の模式図。(2)翻訳停止配列を除去し、VenusをインフレームにIGFR-Iオープンリーディングフレームに融合することによる、Venus蛍光レポーターのCRISPR/Cas9媒介性ノックイン融合の模式図。IGFR-I遺伝子は、マウスの第3番染色体108455694-108536536に存在している。
【
図24】野生型及びノックアウトMin6細胞におけるIGFR様レセプターの細胞内局在。IGFR様レセプター(赤色)及びインスリン(緑色)に対する抗体により染色されたMin6細胞の免疫蛍光画像。核を、DAPIにより染色した(青色)。
【
図25】Min6細胞におけるIGFR様レセプターノックアウトの確認。(A)IGFR-Iの転写開始側周辺のゲノムPCRから、大きなフラグメントのホモ接合性の内部欠失が示される。(B)ウェスタンブロットから、IGFR-Iヌル変異が確認され、IGFR-Iタンパク質が、ノックアウトMin6クローンにおいて完全に存在しないことが示される。このことから、免疫細胞化学的結果が確認される。
【
図26】Min6細胞におけるIGFR様レセプターノックアウト。リン酸化インスリンレセプター(IR)及び下流シグナル伝達分子、例えば、AMPK、AKT、及びmTORのウェスタンブロット分析。同分子は、IR活性化の結果として共通してリン酸化される重要な分子である。Min6細胞におけるIGFR様レセプターノックアウトにより、IRのリン酸化増大、及びその結果として、AMPKリン酸化の増大がもたらされるが、Akt又はmTorリン酸化の増大はもたらされない。Min6対照及びノックアウトクローンを、増殖条件(10% FCS及び高濃度グルコース)下において培養した。
【
図27】IGFR様Venus融合ノックインMin6細胞系統。IGFR-Iを、Venus蛍光レポーターに対して、インフレームにN末端融合した。内在性IGFR-I(抗IGFR-I、赤色)及びIGFR-I-Venus(抗GFPによりVenusを検出、緑色)の共存が、ゴルジ及びtrans-ゴルジ領域において示される。ホモ二量体化及び、膜貫通ドメイン(TM)又は成長因子レセプターのシステインリッチドメイン(CRD)(IPR009030)を介したヘテロ二量体化を阻害するか、又は、trans-ゴルジ、ゴルジ、リソソーム、及び細胞膜区画における細胞内局在を変化させる小分子化合物及び生物製剤を、このノックインMin6細胞系統を使用した高コンテンツスクリーニングアプローチを使用して特定することができる。
【
図28】IGFR-Iは、ヒト誘導多能性幹細胞(iPSC)から分化させたPDX1
+/NKX6.1
+内分泌前駆細胞において、強力にアップレギュレーションされる。
【
図29】IGFR様レセプターの細胞外ドメインに対する抗体を使用する、マウスMin6インスリノーマ細胞及びヒトMCF7乳ガン細胞におけるIGFR様レセプターの検出。ウェスタンブロット実験から、配列番号:4(EIG-B 18B2及び10D9)及び配列番号:6(EIG-D 26D7)の細胞外ドメインに対する抗体による、Min6(弱)及びMCF7(強)細胞ライゼートにおける、約130kDaのタンパク質バンドの特異的認識が示される。EIG-Bクローンは、ラットにおいて、配列番号:4のペプチドに対して生成されたモノクローナル抗体である。一方、EIG-Dクローンは、マウスにおいて、配列番号:6に対して生成されたモノクローナル抗体である。
【
図30】IGFR様レセプターは、ゲノムワイド関連メタ研究において、2型糖尿病と関連した。第1番染色体に位置し、2型糖尿病に関連する、IGFR様レセプターをコードするヒトKIAA1324遺伝子。図は、参照www.type2diabetesgenetics.comから示される。
【
図31】IGFR様レセプターのSNPは、ゲノムワイド関連メタ研究において、冠動脈疾患、LDLコレステロール、及び2型糖尿病に高度に関連している。ヒト第1番染色体内の109.55~109.85Mbの拡大図。ドットによりマークされた青色のバーは、疾患との陽性の関連を意味する。代わりに、ドットを伴わない赤色のバーは、陰性の関連を意味する。バーのサイズ(なし、小さい、中程度、及び大きい)は、有意差を意味する。図は、参照www.type2diabetesgenetics.comから示される。
【0040】
[詳細な説明]
本発明者らは、驚くべきことに、膵臓において、IGF-1、IGF-2、及びインスリンリガンドに隣接して発現される新規なIGFR様レセプターを発見し、前記IGFR様レセプターが、InsR及び/又はIGF1R媒介性シグナル伝達を負にレギュレーションすることを証明した。したがって、前記レセプターのアンタゴニスト及びアゴニストは、糖尿病の発病において共通して見られるインスリン抵抗性を反転させるための新規で、緊急に必要とされる可能性を開く。一方、アゴニストは、インスリンシグナル伝達をブロックするのに使用することができた。際立ったことに、本発明者らは、IGFR様レセプターが、疾患開始の初期イベントである、膵臓におけるβ細胞の脱分化に関連していることを示すこともできた。同脱分化は、最終的に、β細胞の破壊又は機能喪失をもたらす。したがって、IGFR様レセプターは、元に戻せないβ細胞の喪失の前に、糖尿病の早期診断及び処置を可能にする有望な診断ツールでもある。
【0041】
本発明者らは、本明細書で記載されたIGFR様レセプターをコードするヒトKIAA1324遺伝子の機能の解明を切り開いた。以前は、UPF0577タンパク質KIAA1324又はエストロゲン誘引遺伝子121(EIG121)タンパク質と呼ばれていたKIAA1324のタンパク質生成物は、一般的には、ガンマーカーとして公知であった。一方、本発明者らは、このタンパク質に対して、代謝における中心的役割を初めて与えた。「IGFR様レセプター」、「IGF様レセプター」、「IGF3レセプター」、及び「IGF3R」という用語は、本明細書において、互換的に使用される。
【0042】
このため、第1態様では、本発明は、配列番号:1のIGFR様レセプターに対して生じる抗体と反応可能なIGFレセプター(IGFR)様レセプターをコードする単離されたDNA配列を提供する。ここで、前記抗体は、配列
(i)TSKRTPDGFDSVPLKT(配列番号:2)及び/又は
(ii)CHQCDPDKYSE(配列番号:3)及び/又は
(iii)MYKWAKPKICSEDLEG(配列番号:4)及び/又は
(iv)FQRTTFHEASRKYTN(配列番号:5)及び/又は
(v)CTFSRNTPTRTFNY(配列番号:6)
を含む、少なくとも1つのエピトープに特異的に結合する。
【0043】
特に、前記単離されたDNA配列は、Uniprot Acc.No.Q6UXG2、エントリーバージョン95(2015年7月22日)のUPF0577タンパク質KIAA1324(配列番号:1)又はその機能性変異体をコードすることが想定される。前記タンパク質は、本明細書において、「IGFR様レセプター」とも呼ばれる。
【0044】
重要なことに、「EIG121」遺伝子の発現は、従来技術において、エストロゲン過剰に関連する腫瘍増殖におけるその役割について専ら公知であった。該遺伝子のタンパク質生成物、すなわち、本明細書で記載されたIGFR様レセプターが、IGFR/IRシグナル伝達をレギュレーションし、配列番号:1、2、3、4、5、もしくは6から選択される配列を含むエピトープに結合する抗体により特異的に認識されるであろうか、又は、糖尿病処置のために、アンタゴニストもしくはアゴニストによりターゲットすることができるかは、予知されず、又は、予知することができなかったかのいずれかである。
【0045】
本明細書で開示されたIGFR様レセプターに対する閾値配列同一性又は配列相同性を有する、本明細書で開示されたIGFR様レセプターの機能性変異体も、「IGFR様レセプター」という用語に包含される。前記機能性変異体は、Uniprot Acc.No.Q6UXG2、エントリーバージョン95(2015年7月22日)のUPF0577タンパク質KIAA1324(配列番号:1)に対して、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、又は100%の配列同一性を有し、配列番号:1のIGFR様レセプターに対して生じた抗体と反応可能であることが想定される。ここで、前記抗体は、配列
(i)TSKRTPDGFDSVPLKT(配列番号:2)及び/又は
(ii)CHQCDPDKYSE(配列番号:3)及び/又は
(iii)MYKWAKPKICSEDLEG(配列番号:4)及び/又は
(iv)FQRTTFHEASRKYTN(配列番号:5)及び/又は
(v)CTFSRNTPTRTFNY(配列番号:6)
を含む、少なくとも1つのエピトープに特異的に結合する。
【0046】
前記機能性変異体は、好ましくは、UPF0577タンパク質KIAA1324と同じ特性を示す、すなわち、添付の実施例において示されたルーチンな方法によりアクセス可能な、InsR及び/又はIGF1R媒介性シグナル伝達、特に、(i)Aktリン酸化及び/又は(ii)AMPKリン酸化及び/又は(iii)mTORリン酸化を阻害し、又は、減少させることが、さらに想定される。本明細書で使用する場合、「%同一性」又は「%配列同一性」という用語は、本発明のポリペプチドの配列と対象となる配列との(相同)アライメントにより、これらの2つの配列のより長い方における残基数に関して、対となる同一な残基の%を意味する。%同一性は、同一な残基を残基総数で割り、これに100を掛けることにより決定される。「相同性」という用語は、本明細書において、その通常の意味で使用され、2つのタンパク質の直線アミノ酸配列における同等の位置における同一のアミノ酸及び保存的置換(例えば、グルタミン酸残基のアスパラギン酸残基による交換)であるとみなされるアミノ酸を含む。好ましくは、配列番号:1で示されるアミノ酸配列は、「参照配列」として好ましい。配列番号:1は、ヒトUPF0577タンパク質KIAA1324を示し、本明細書において、IGFR様レセプターとも呼ばれる。(IGFR様レセプターの)「参照配列」及び「野生型配列」という用語は、本明細書において互換的に使用される。あるいは、SWISS-PROT/UniProtデータバンクアクセッション番号Q6UXG2(2015年7月22日のエントリーバージョン95)のアミノ酸配列を、参照配列として使用することができる。
【0047】
%配列相同性又は配列同一性は、例えば、本明細書において、BLASTP、バージョンblastp2.2.5(2002年11月16日、参照Altschul, S. F. et al. (1997) Nucl. Acids Res. 25, 3389-3402)を使用して決定することができる。この実施態様では、%相同性は、好ましくは、参照として野生型タンパク質足場を使用し、対比較において、プロペプチド配列を含むポリペプチド配列全体のアライメント(マトリックス:BLOSUM62;ギャップコスト:11.1)に基づいている。アライメントについてのプラグラムにより選択されたアミノ酸の総数により割った、BLASTPプログラム出力の結果として示される「ポジティブ」(相同性アミノ酸)数の%として算出される。
【0048】
本発明の文脈において、「別の位置に対応する位置」という表現(例えば、領域、フラグメント、ヌクレオチド、又はアミノ酸位置等)は、ヌクレオチド又はアミノ酸位置番号に基づくナンバリングの変換、及びついで、%配列同一性を最大化する様式における配列のアライメントに基づいている。与えられた「対応する領域」内の全ての位置が同一である必要はなく、対応する領域の内でマッチしていない位置が、「対応する位置」とみなすことができるためである。したがって、本明細書で使用する場合、特定のタンパク質配列の「アミノ酸位置[X]に対応するアミノ酸位置」への言及は、特定のタンパク質配列のアミノ酸位置への言及に加えて、他の認識されたタンパク質、ならびに、構造的ホモログ及びファミリーにおいて同等の位置の集まりへの言及を表わす。同じことを、必要な変更を加えて、「配列に対応する配列」という表現に適用することができる。すなわち、特定のタンパク質配列[X]「に対応する」配列への言及は、特定のタンパク質配列の配列への言及に加えて、他の認識されたタンパク質、ならびに、構造的ホモログ及びファミリーにおいて同等の位置の集まりへの言及を表わす。
【0049】
「InsR」又は「IR」という用語は、インスリンレセプターを意味し、一般的には、IR-A(「ショートアイソフォーム」としても公知)及びIR-B(「ロングアイソフォーム」としても公知)アイソフォームの両方を含む。InsRは、インスリン結合領域を有する2つのα鎖と、キナーゼドメインを有する2つのβ鎖とがジスルフィド結合により結合している四量体として生じる。InsRは、インスリン、IGF-1、及びIGF-2の結合により活性化され、最終的に、MAPK/Ras-Raf-Erk経路、ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ/AKT/mTOR(PI3K/AKT)経路、及び/又はJanusキナーゼ/シグナルトランスデューサー及び転写活性化(JAK/STAT)経路によるシグナル伝達をもたらす、レセプターチロシンキナーゼである。より正確には、InsRエクトドメインのα鎖へのリガンド結合により、該レセプター内での構造変化が誘引され、β鎖の細胞内チロシンキナーゼドメイン内の種々のチロシン残基の自己リン酸化がもたらされ、インスリンレセプター基質(IRS1、2、3、4)、SHC、GAB1、CBL、及び他のシグナル伝達中間体を含む複数の細胞内基質のリクルート及びリン酸化がもたらされる。これらのリン酸化タンパク質はそれぞれ、PI3K及びSHP2のp85レギュラトリーサブユニットを含む、Src-ホモロジー-2ドメイン(SH2ドメイン)を含有する他のシグナル伝達タンパク質に対するドッキングタンパク質として機能する。IRSタンパク質のリン酸化により、2つの主なシグナル伝達経路:PI3K-AKT/PKB経路(同経路は、インスリンの代謝作用の大部分を担っている)及びRas-MAPK経路(同経路は、一部の遺伝子の発現をレギュレーションし、PI3K経路と協同して、細胞増殖及び分化を制御する)の活性化がもたらされる。IRS1におけるホスホチロシンへのPI3Kの結合及びその後のPI3Kの活性化により、代謝をレギュレーションし、インスリンからのシグナルを調和させるシグナル伝達経路である、AKT、AMPK、及びmTORのリン酸化及び活性化がもたらされる。リガンド結合によるInsR活性化により、IRS1のリン酸化及びGRB2/SOSのリクルートを介して、Ras/RAF/MAP2K/MAPK経路もトリガーされる。同経路は、インスリンの細胞増殖、生存、及び細胞分化の媒介に主に関与している。
【0050】
InsRの実例は、Uniprot Acc.No.P06213(2015年7月22日のエントリーバージョン216)のヒトInsR及びその変異体である。本発明の文脈におけるインスリンレセプターは、好ましくは、そのリガンド、特に、インスリンの結合に基づいて、(i)Aktリン酸化及び/又は(ii)AMPKリン酸化及び/又は(iii)mTORリン酸化を誘引可能である。
【0051】
「IGF-レセプター1」又は「IGF1R」もしくは「IGFRI」という用語は、本明細書において、インスリン様成長因子1レセプターチロシンキナーゼを意味するのに使用される。IGF1Rは、高い親和性でIGF1に結合し、より低い親和性でIGF2及びインスリン(INS)に結合する。リガンドの結合により、レセプターキナーゼが活性化され、レセプター自己リン酸化及び複数の基質(インスリンレセプター基質(IRS1/2)、Shc、及び14-3-3タンパク質を含む)のリン酸化がもたらされ、最終的に、3つの主なシグナル伝達経路:PI3K-AKT/PKB経路、Ras-MAPK経路、及びJAK/STAT経路の活性化がもたらされる。活性化されたIGF1Rは、細胞増殖及び生存制御に関与する。このため、InsR及びIGF1Rは、類似するシグナル伝達経路に繰り入れられるが、InsR媒介性シグナル伝達は、代謝を優先的にレギュレーションし、一方で、IGF1Rシグナル伝達は、細胞増殖及び生存に関与する。
【0052】
IGF1Rの実例は、Uniprot Acc.No.P08069(2015年7月22日のエントリーバージョン185)のヒトIGF1R及びその変異体である。本発明の文脈におけるIGF1Rは、好ましくは、そのリガンド、特に、IGF1の結合に基づいて、(i)Aktリン酸化及び/又は(ii)AMPKリン酸化及び/又は(iii)mTORリン酸化を誘引可能である。
【0053】
「IGF1」又は「IGFI」という用語は、インスリンに構造的及び機能的に関連するタンパク質であるが、より高い成長促進活性を有する、インスリン様成長因子Iを意味する。実例は、Uniprot Acc.No.P05019(2015年7月22日のエントリーバージョン186)のヒトIGF1である。本発明の文脈における「IGF1」は、好ましくは、IGF1レセプターに結合することができ、本明細書のどこかで記載されたIGF1Rシグナル伝達を引き起こすことができる。
【0054】
「IGF2R」もしくは「IGF2R」又は「IGFRII」という用語は、本明細書において、インスリン様成長因子2/マンノース-6-リン酸(IGF-2/M6P)レセプターを意味するのに使用される。IGF2Rは、大型の細胞質外(すなわち、細胞外)ドメイン、1つの膜貫通領域、及び、固有の触媒活性を欠いている短い細胞質テイルから構成される、1つの膜貫通型タンパク質である。該レセプターは、IGF-1より高い親和性でIGF-2に結合し、インスリンには結合しない。IGF2Rは、別個の部位を介して、リソソーム酵素及び各種の他のM6P含有リガンドと相互作用し、細胞外IGF-2濃度をレギュレーションすることにより、増殖刺激性IGF-1レセプター経路によるシグナル伝達をモデュレーションすることが報告されている。
【0055】
IGF2Rの実例は、Uniprot Acc.No.P11717(2015年7月22日のエントリーバージョン174)のヒトIGF2R及びその変異体である。
【0056】
「IGF2」又は「IGFII」という用語は、インスリン様成長因子IIを意味する。実例は、Uniprot Acc.No.P01344(2015年7月22日のエントリーバージョン199)のヒトIGF2及びその変異体である。本発明の文脈における「IGF2」は、好ましくは、IGF2レセプターに結合可能である。
【0057】
本明細書で提供された、単離されたDNA配列は、配列番号:7で示されたヒトKIAA1324遺伝子(NCBI遺伝子ID57535、2015年7月15日更新)又はその変異体の配列に対応する配列を含むことができる。ヒトKIAA1324遺伝子の変異体は、オルソログを含むことができる。オルソログ又はオルソロガス遺伝子は、公知の遺伝子の配列の一部に類似性を有する一部を有するが、公知の遺伝子とは異なる種に見出される配列を有する遺伝子である。オルソログ及び公知の遺伝子は、共通の祖先の1つの遺伝子から垂直遺伝により得られる。
【0058】
本明細書で使用する場合、ヒトKIAA1324遺伝子の変異体又はオルソログは、IGFR様レセプター又はその機能性変異体をコードする、すなわち、好ましくは、InsR及び/又はIGF1R媒介性シグナル伝達、特に、(i)Aktリン酸化及び/又は(ii)AMPKリン酸化及び/又は(iii)mTORリン酸化を阻害し、又は、減少させることができ、かつ、ヒトKIAA1324遺伝子(NCBI遺伝子ID57535、2015年7月15日更新)に対して、少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、又は100%の配列同一性、すなわち、配列番号:7で示されたヒトKIAA1324遺伝子のコード配列に対する配列同一性を有することが想定される。コード配列は、前記ヒトKIAA1324遺伝子(NG_032763.1)のヌクレオチド222..374、47932..48052、50537..50729、57904..58051、58526..58606、59512..59617、59726..59875、71083..71171、74215..74392、75104..75232、75630..75720、77404..77509、77764..77901、78649..78912、80459..80632、83512..83692、84017..84113、84611..84712、85892..86018、86097..86275、86773..86938、88982..89050を結合させることにより得られる。
【0059】
本明細書で使用する場合、「単離されたDNA配列」という用語は、DNA配列が得られる細胞及び/又は生物中に本来存在する他の核酸配列、タンパク質、ペプチド、脂質等を含む内在性物質から精製され又は実質的に精製されたDNA分子を意味し、標準的な精製技術により精製されたDNAならびにリコンビナント技術により調製されたDNA、及び化学合成されたDNAを含む。
【0060】
ベクター
本発明の核酸は、ベクターの形態であることもでき、ベクター中に存在することができ、及び/又は、ベクターの一部であることができる。
【0061】
「ベクター」という用語は、(外来性)遺伝子材料をホスト細胞内に輸送するための媒体として使用される核酸分子を意味し、プラスミド、ウイルス、コスミド、ならびに、人工染色体、例えば、細菌人工染色体(BAC)及び酵母人工染色体(YAC)を包含するが、これらに限定されない。一般的には、操作されたベクターは、複製起点、マルチクローニングサイト、及び選択マーカーを含む。ベクター自体は、一般的には、インサート(導入遺伝子)と、ベクターの「骨格」として機能するより大きな配列とを含むヌクレオチド配列、一般的には、DNA配列である。ベクターは、導入遺伝子インサートと骨格以外に、遺伝子調節エレメント、遺伝子マーカー、抗生物質抵抗性、レポーター遺伝子、ターゲット配列、又はタンパク質精製タグを含む更なるエレメントを包含することができる。導入遺伝子をホスト細胞内で発現させるための発現ベクター(発現構築物)が、本発明の文脈内において特に想定される。同発現ベクターは、一般的には、導入遺伝子に加えて、遺伝子調節配列を含む。
【0062】
発現ベクターは、一般的には、in vitro及び/又はin vivoにおいて(すなわち、適切なホスト細胞、ホスト生物、及び/又は発現系において)IGFR様レセプターの発現を提供することができるベクターである。当業者であれば、特定のベクターの選択は、例えば、ホスト細胞、意図したコピー数のベクター、IGFR様レセプターの一過性又は安定した発現が想定されるかどうか等への依存を含むことを、容易に理解するであろう。
【0063】
「一過性発現」は、レシピエントホスト細胞内で自律複製できない核酸(例えば、直線又は非直線DNA又はRNA分子)又はベクターの導入により生じる。導入遺伝子の発現は、導入された配列の一過性発現により生じる。
【0064】
ただし、本明細書で記載された核酸配列の「安定した発現」が、多くの場合、好ましいであろうし、核酸配列をホスト細胞のゲノム内に安定的に組み込むことにより、又は、本発明の核酸配列を含み、ホスト細胞内で自律複製可能なベクターを導入することによるかのいずれかにより達成することができる。
【0065】
本明細書で提供されたベクターは、前記IGFR様レセプターをコードするDNA配列に操作可能に結合している、遺伝子調節エレメントを含むことが特に想定される。
【0066】
「遺伝子調節エレメント」という用語は、操作可能に結合しているコード配列の特定のホスト生物中での発現に必須のDNA配列を意味する。「遺伝子調節エレメント」という用語は、制御性転写プロモーター、オペレーター、エンハンサー、サイレンサー、転写ターミネーター、転写及び翻訳を行うためにホスト細胞タンパク質と相互作用する5’及び3’非翻訳領域、ならびに、遺伝子発現を制御することができる他のエレメント(開始コドン及び終止コドンを含む)を含む。遺伝子発現に必要とされる調節領域の正確な性質は、生物間で変動する場合がある。原核生物の遺伝子調節エレメントは、例えば、プロモーター、場合により、オペレーター配列及びリボソーム結合部位(RBS)を含む。一方、真核生物細胞用の遺伝子調節エレメントは、プロモーター、ポリアデニル化(ポリA)シグナル、及びエンハンサーを含む。
【0067】
遺伝子調節エレメントは、発現される遺伝子に「操作可能に結合している」、すなわち、同遺伝子と機能的な関係にあることが想定される。例えば、プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼす場合に、コード核酸配列に「操作可能に結合している」。「操作可能に結合している」DNA配列は、連続的であることができ、又は、連続的でないことができる。結合は、典型的には、都合の良い制限部位でのライゲーション又は合成オリゴヌクレオチドアダプターもしくはリンカーにより達成される。
【0068】
ホスト細胞
さらに、本明細書において、本明細書で記載されたベクターを含む、ホスト細胞が提供される。
【0069】
さまざまなホスト細胞を、本明細書で記載されたIGFR様レセプターをコードする核酸配列を発現させるのに利用することができる。ホスト細胞は、当技術分野において公知の遺伝子操作法を使用して調製することができる。ベクターをレシピエントホスト細胞内に導入する方法は、以下、「トランスフォーメーション」又は「トランスフェクション」とも呼ばれる。これらの用語は、本明細書において、互換的に使用される。
【0070】
ホスト細胞のトランスフォーメーションは、典型的には、材料の取込みを可能にするための、細胞壁及び/又は細胞膜に一過性の細孔又は「孔」を開けることによる。トランスフォーメーションプロトコールの実例は、リン酸カルシウム、エレクトロポレーション、細胞圧搾、デンドリマー、リポソーム、カチオン性ポリマー、例えば、DEAE-デキストラン又はポリエチレンイミン、ソノポレーション、光学的トランスフェクション、インペールフェクション(impalefection)、ナノ粒子(遺伝子銃)、マグネトフェクション(magnetofection)、粒子衝突、アルカリカチオン(セシウム、リチウム)、酵素消化、ガラスビーズとの振とう、ウイルスベクター等の使用を含む。方法の選択は、一般的には、トランスフォーメーションされる細胞の種類、細胞内に導入されるベクター、及び、トランスフォーメーションが行われる条件により決まる。
【0071】
本明細書で使用する場合、「ホスト細胞」という用語は、本明細書で記載されたIGFR様レセプターをコードするベクター又は単離された核酸配列のためのレシピエントとして機能する、任意の細胞又は細胞培養物を意味する。適切なホスト細胞は、原核生物又は真核生物の細胞を含み、細菌、酵母細胞、真菌細胞、植物細胞、ならびに動物細胞、例えば、昆虫細胞及び哺乳類細胞、例えば、マウス、ラット、マカク、又はヒトも含むが、これらに限定されない。
【0072】
例えば、IGFR様レセプターは、細菌において生成することができる。原核生物に加えて、真核生物の微生物、例えば、糸状菌又は酵母が、本発明のIGFR様レセプターに適したクローニング又は発現ホストである。実例は、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromycesホスト、例えば、K. lactis、K. fragilis(ATCC 12424)、K. bulgaricus(ATCC 16045)、K. wickeramii(ATCC 24178)、K. waltii(ATCC 56500)、K. drosophilarum(ATCC 36906)、K. thermotolerans、及びK. marxianus;yarrowia(欧州特許第402226号);Pichia pastoris(欧州特許第183070号);Candida;Trichoderma reesia(欧州特許第244234号);Neurospora crassa;Schwanniomyces、例えば、Schwanniomyces occidentalis;ならびに糸状菌、例えば、Neurospora、Penicillium、Tolypocladium、及びAspergillusホスト、例えば、A. nidulans及びA. nigerを含む。
【0073】
本発明のグリコシル化抗体構築物の発現に適したホスト細胞を、多細胞生物からも得ることができる。無脊椎動物細胞の例は、植物及び昆虫細胞を含む。数多くのバキュロウイルス株及び変異体と、Spodoptera frugiperda(イモムシ)、Aedes aegypti(カ)、Aedes albopictus(カ)、Drosophila melanogaster(ショウジョウバエ)、及びBombyx mori等のホストからの対応する任意の昆虫ホスト細胞とが特定されている。トランスフェクション用の各種のウイルス株、例えば、Autographa californica NPVのL-1変異体及びBombyx mori NPVのBm-5株が、公衆に利用可能である。
【0074】
また、綿、トウモロコシ、ジャガイモ、ダイズ、ペチュニア、トマト、シロイヌナズナ、及びタバコの植物細胞培養物も、ホストとして使用することができる。植物細胞培養物におけるタンパク質生成に有用なクローニング及び発現ベクターは、当業者に公知である。
【0075】
有用な哺乳類細胞系統の例は、SV40によりトランスフォーメーションされるサル腎臓CV1系統(COS-7、ATCC CRL1651);ヒト胚性腎臓系統(293細胞又は懸濁培養における増殖用にサブクローニングされた293細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO)、マウスセルトリ細胞(TM4);サル腎臓細胞(CVI ATCC CCL70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL1587);ヒト子宮頸ガン細胞(HELA、ATCC CCL2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL34);Buffaloラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、1413 8065);マウス乳ガン(MMT 060562、ATCC CCL5 1);TRI細胞;MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝ガン細胞(Hep G2)である。
【0076】
リガンド
本発明者らは、本明細書で記載されたIGFR様レセプターにおける複数のドメインを特定してきた。同IGFR様レセプターは、可能性のあるリガンドに対する結合部位を有している場合がある。同結合部位は、特に、本発明の診断用結合剤及びアンタゴニスト又はアゴニストを提供するためのテンプレートとして機能することができる。前記ドメインは、2つのインスリン様成長因子結合ドメイン(ドメイン1:配列番号:1のアミノ酸273~413;ドメイン2:配列番号:1のアミノ酸579~659)、マンノース-6-リン酸レセプター結合ドメイン(M6Pドメイン、配列番号:1のアミノ酸655~857)、膜貫通ドメイン(配列番号:1のアミノ酸908~930)、及び細胞質ドメイン(配列番号:1のアミノ酸932~1013)を含む。前記ドメインは、
図1からも導くことができる。このため、また、本発明は、少なくとも1つの上記ドメインに特異的に結合する結合剤、例えば、抗体(モノクローナル抗体が好ましい)等に関する。
【0077】
インスリン様成長因子結合ドメインを含むタンパク質(InterPro Acc.No.IPR009030)は、インスリン様成長因子結合タンパク質(IGFBP1-6)、1型インスリン様成長因子レセプター(IGF-1R)、レセプタータンパク質チロシンキナーゼErbb-2、Erbb-3、及びErbb-4(ErbB2、-3、-4)、エフリン型A/Bレセプター、上皮成長因子レセプター(EGFR)、EGFR様結合タンパク質、CYR61、マトリリン-2、-3、及び-4、デルタ様タンパク質1、キュビリン、スリットホモログ1及び3タンパク質、複数の上皮成長因子様ドメインタンパク質6、低密度リポタンパク質レセプター関連タンパク質4、WNT1誘引性シグナル伝達経路タンパク質2、WNT1誘引性シグナル伝達経路タンパク質1、WNT1誘引性シグナル伝達経路タンパク質3、EGF含有フィブリン様細胞外マトリックスタンパク質2、低密度リポタンパク質レセプター、上皮成長促進因子、補体成分C9、トロンボモデュリン、ビタミンK依存性タンパク質S、補体成分C8アルファ鎖、ウロモデュリン、フューリン、骨形成タンパク質1、ニドゲン-1、インスリンレセプター関連タンパク質、フィブリン-1及び-2、プロタンパク質コンベルターゼサブチリシン/ケキシン6型、結合組織成長因子、フィブリリン-1、-2、及び-3、神経原性遺伝子座ノッチホモログタンパク質1、タンパク質NOVホモログ、CD97抗原、軟骨オリゴマー基質タンパク質、ケラチン、II型角質Hb3、タンパク質ジャギド-1、タンパク質クラムホモログ1、セリンプロテアーゼHTRA4、セリンプロテアーゼHTRA3、低密度リポタンパク質レセプター関連タンパク質2、神経原性遺伝子座ノッチホモログタンパク質2、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリーメンバー9、プロ低密度リポタンパク質レセプター関連タンパク質1、EGF含有フィブリン様細胞外マトリックスタンパク質1、ナイドジェン-2、スカベンジャーレセプタークラスFメンバー1、接着Gタンパク質結合レセプターE1、増殖停止特異的タンパク質6、ケラチン、I型角質Ha2、潜在型変換成長因子ベータ結合タンパク質1、潜在型変換成長因子ベータ結合タンパク質2、R-スポンディン-1、-2、及び-4、Sushi、フォンヴィルブランド因子A型、EGF及びペントラキシンドメイン含有タンパク質1、ウロモデュリン様1、メケリン、タンパク質アイシャットホモログ、プロタンパク質コンベルターゼサブチリシン/ケキシン4型、Sushiドメイン含有タンパク質1、システインリッチ含有EGF様ドメインタンパク質2、ネフロネクチン、プロトカドヘリンFat4、BMP/レチノイン酸誘引性神経特異的タンパク質3、細胞外マトリックスタンパク質FRAS1、上皮成長因子様タンパク質6、シグナルペプチドであるCUB及びEGF様ドメイン含有タンパク質1、シグナルペプチドであるCUB及びEGF様ドメイン含有タンパク質3、潜在型変換成長因子ベータ結合タンパク質4、ヘミセンチン-2、デルタ及びノッチ様上皮成長因子関連レセプター、インスリン様成長因子結合タンパク質様1、セリンプロテアーゼHTRA1、プロタンパク質コンベルターゼサブチリシン/ケキシン5型、タンパク質キナーゼC結合タンパク質NELL1、フォンヴィルブランド因子C、及びEGFドメイン含有タンパク質、スカベンジャーレセプタークラスFメンバー2、システインリッチ含有EGF様ドメインタンパク質1、Kazal型セリンプロテアーゼインヒビタードメイン含有タンパク質1、ヘミセンチン-1、タンパク質キナーゼC結合タンパク質NELL2、神経原性遺伝子座ノッチホモログタンパク質4、R-スポンディン-3、接着Gタンパク質結合レセプターE3、ムチン-13、エンドシアリン、カドヘリンEGF LAG7回膜貫通G型レセプター2、補体成分C1qレセプター、内皮細胞特異的分子1、シグナルペプチドであるCUB及びEGF様ドメイン含有タンパク質2、デルタ様タンパク質4、潜在型変換成長因子ベータ結合タンパク質3、デルタ様タンパク質3、カドヘリンEGF LAG7回膜貫通G型レセプター1、低密度リポタンパク質レセプター関連タンパク質1B、システインリッチモーターニューロン1タンパク質、フィブリン-5、上皮成長因子様タンパク質7、接着Gタンパク質結合レセプターE2、神経原性遺伝子座ノッチホモログタンパク質3、タンパク質ジャギド-2等を含むが、これらに限定されない。
【0078】
このため、本明細書で記載されたIGFR様レセプターの可能性あるリガンドは、前述のタンパク質のリガンド、例えば、IR、IGF1R、インスリン、IGF1、IGF2、エフリン-B1、エフリン-B2、EGF、EGFR、TGFA/TGF-アルファ、アンフィレギュリン、エピジェン/EPGN、BTC/ベータセルリン、エピレギュリン/EREG、HBEGF/ヘパリン結合EGF、GP30、ALB、MB、カッパ及びラムダ軽鎖、TF、ヘモグロビン、GC、SCGB1A1、APOA1、高密度リポタンパク質、GIF-コバラミン複合体、LRP2、LGALS3、AGRIN、IL-1、IL-2、TNF、コラーゲンI及びIV、パールカン、ラミニン、ヘパリン、インテグリン、フィブロネクチン、タンパク質C、EFNA5、EFNB1、EFNB2、EFNB3、ジャギド1、ジャギド2、及びデルタ1、ニューレグリン、NTAK、CSPG5、TNFSF9/4-1BBL、Ac-LDL、AXL、TYRO3 MER、NRG1、NRG2、NRG3、NRG4、BTC、EREG、HBEGF、GR4、LGR5、LGR6、C1q、マンノース結合レクチン(MBL2)、肺界面活性剤タンパク質A(SPA)、TGFBR2、ならびに、それらのフラグメント及び変異体を含む。
【0079】
マンノース-6-リン酸レセプター結合ドメインを含むタンパク質(InterPro Acc.No.IPR009011)は、カチオン独立性マンノース-6-リン酸レセプター、グルコシダーゼ2サブユニットβ、カチオン依存性マンノース-6-リン酸レセプター、タンパク質OS-9、小胞体レクチン1、及びN-アセチルグリコサミン-1-ホスホトランスフェラーゼサブユニットガンマを含むが、これらに限定されない。
【0080】
したがって、本明細書で提供されたIGFR様レセプターの可能性のあるリガンドは、前述のタンパク質のリガンド、例えば、IGF2、DPP4、ホスホマンノシル、TRPV4、IGF2、リソソーム酵素、TGFβ、白血病抑制因子(LIF)、プロリフェリン、チログロブリン、プロレニン、グランザイムB、及びレトン酸(Retonic Acid)を含む。
【0081】
本発明者らは、IGFR様レセプターのノックダウンにより、IGF1R及びIRのリン酸化、ならびに、下流シグナル伝達タンパク質であるAkt、mTOR、及びAMPKのリン酸化の増大がもたらされたことを見出した。このため、本発明者らは、IGFR様レセプターが、IGF1R及び/もしくはIRの活性化ならびに/又は下流シグナル伝達を阻害し、又は、減弱させることができることを、提唱している。特定の理論に拘束されるものではないが、IGFR様レセプターは、例えば、血液からインスリンを枯渇させ、インスリンをエンドソーム及びリソソーム区画(同区画において、インスリンは分解される可能性がある)に輸送する「インスリンスカベンジャー」レセプターとして機能する可能性があると考えられる。また、IGFR様レセプターは、インスリンレセプター(InsR)と会合して、InsRを細胞表面から除去する可能性があることも、推測される。いずれにしても、両シナリオにより、機能性IGFR様レセプターの存在下でのInsR活性化ならびにInsR及び/又はIGF1R媒介性シグナル伝達(InsR、Akt、mTOR、及び/又はAMPKのリン酸化を含む)の低下を説明することができる。したがって、インスリン、InsR、及び/又はインスリン-IR複合体が、本明細書で提供されたIGFR様レセプターについてのリガンドとして特に想定される。
【0082】
アンタゴニスト及びアゴニスト
さらに、本明細書で記載されたIGFR様レセプターのアゴニスト及びアンタゴニストが提供される。本明細書で記載され、添付の実施例で例証されたように、IGFR様レセプターは、InsR及び/又はIGF1R媒介性シグナル伝達、ならびに特に、(i)Aktリン酸化,(ii)AMPKリン酸化、及び(iii)mTORリン酸化を負にレギュレーションする、すなわち、これらを阻害し、又は、減少させることが見出されてきた。
【0083】
「アンタゴニスト」という用語は、レセプターへの結合に基づいて生物学的応答自体を引き起こすのではなく、アゴニスト媒介性生物学的応答を阻害し、又は、減少させるレセプターリガンドを意味する。アンタゴニストは、そのレセプターに対して、親和性を有するが、有効性を本質的に有さない。また、この用語は、そのレセプターの活性(オルトステリック)もしくはアロステリック部位に、及び/又は、レセプター機能に通常では関与しない他の結合部位に結合するアンタゴニストも含む。「アンタゴニスト」という用語は、一般的には、完全及び部分的なアンタゴニスト、可逆性及び不可逆性アンタゴニストを含む。本発明によれば、アンタゴニストは、好ましくは、IGFR様レセプターに特異的に結合する。ここで、UPF0577タンパク質KIAA1324の新規な機能が解明された。当業者であれば、IGFR様レセプターのアンタゴニストを、例えば、本明細書で記載されたスクリーニングアッセイ法を適用することにより、容易に特定することができるであろう。前述のように、IGFR様レセプターのアンタゴニストは、レセプター機能を無効にし、InsR及び/又はIGFRシグナル伝達と干渉する、すなわち、これらを阻害し、又は、減少させることが想定され、例えば、インスリン抵抗性を反転させるのに特に有用であることができる。具体的には、IGFR様レセプターのアンタゴニストは、InsR及び/又はIGF1R媒介性シグナル伝達、ならびに特に、当技術分野において公知であり、添付の実施例で記載されたルーチンな方法を使用して確認できる、IGF1R、InsR、Akt、mTOR、及び/又はAMPKのリン酸化を増大させることができることが想定される。
【0084】
本明細書で使用する場合、「アゴニスト」という用語は、一般的には、結合に基づいて、レセプターを活性化させて、生物学的応答を生じさせるレセプターリガンドを意味する。アンタゴニストとは対照的に、アゴニストは、そのレセプターに対する親和性及び有効性の両方を有する。「アゴニスト」という用語は、一般的には、完全及び部分的なアゴニスト、可逆的及び不可逆的アゴニストを含む。本発明によれば、アゴニストは、好ましくは、IGFR様レセプターに特異的に結合する。前述のように、IGFR様レセプターのアゴニストは、IGFR様レセプターの生物学的応答を引き起こし、又は、増大させる、すなわち、InsR活性化及び下流シグナル伝達を減少させ、及び/又は、阻害することが想定される。このため、IGFR様のアゴニストは、InsR及び/又はIGF1R媒介性シグナル伝達、ならびに特に、当技術分野において公知であり、添付の実施例で記載されたルーチンな方法を使用して確認できる、InsR、IGF1R、Akt、mTOR、及び/又はAMPKのリン酸化を減少させることができることが想定される。
【0085】
本発明の「アンタゴニスト」又は「アゴニスト」は、一般的には、任意の分子、例えば、抗体、siRNA、核酸、アプタマー、ペプチド、タンパク質、又は小分子有機化合物であることができる。これらは、本明細書で特定されたIGFR様レセプター又はその変異体もしくはフラグメントに結合し、又は、特異的に結合し、IGFR様レセプターにより媒介される生物学的応答をブロックし、又は、減少させるかのいずれかをする(すなわち、アンタゴニストとして作用する)か、あるいは、IGFR様レセプターにより媒介される生物学的応答を誘引し、又は、増大させる(すなわち、アゴニストとして作用する)。
【0086】
IGFR様レセプターのアゴニスト及びアンタゴニストは、例えば、本明細書で提供されたスクリーニングアッセイ法を使用して、容易に見出すことができる。当業者であれば、例えば、インスリン様成長因子結合ドメイン及び/又はマンノース-6-リン酸レセプター結合ドメインを含むタンパク質のリガンド(例示的なタンパク質及びリガンドは、上記「リガンド」セクションで記載されている)が、IGFR様レセプターに結合可能な作用物質を調製し、アゴニスト又はアンタゴニスト作用を示すためのテンプレートとして使用することができることを、容易に認識するであろう。例えば、タンパク質又はペプチドリガンドの場合、その変異体及びフラグメントを、遺伝子操作のルーチンな方法を使用して容易に調製することができる。例えば、IGFR様レセプターノックダウンホスト細胞(添付の実施例を参照のこと)における抗体結合性を評価することにより容易に試験することができるように、本発明のアゴニスト及びアンタゴニストは、本明細書で記載されたIGFR様レセプターに特異的に結合する(すなわち、好ましくは、IGFR様レセプター以外のターゲットに対して交叉反応性を示さない)ことが想定される。
【0087】
抗体
本明細書で提供されたアンタゴニスト又はアゴニストは、抗体であることができる。本明細書で提供された抗体は、好ましくは、所望の生物学的活性を示す、すなわち、本明細書で記載されたIGFR様レセプターに特異的に結合する。具体的には、本発明のアンタゴニスト性抗体は、InsR及び/又はIGF1R媒介性シグナル伝達、ならびに特に、当技術分野において公知であり、添付の実施例で記載されたルーチンな方法を使用して確認できる、IGF1R、InsR、Akt、mTOR、及び/又はAMPKのリン酸化を増大させることができることが想定される。また、本発明のアンタゴニスト性抗体は、該エピトープ(配列番号:2~6)に結合することも想定される。また、このため、本発明は、(a)少なくとも1つの配列番号:2~6で示されたエピトープに特異的に結合し、(b)IGF1R、InsR、Akt、mTOR、及び/又はAMPKのリン酸化を増大させる抗体に関する。このため、「増大させる」は、抗体の存在下における各シグナルが、抗体の不存在下と比較して、前記増大の検出及び/又は定量に使用される各検出法において増大することを示す。さらに、本発明は、(a)前述の成長因子結合ドメイン及び/又はマンノース-6-リン酸レセプター結合ドメイン(
図1に示す)の内の1つに結合し、(b)IGF1R、InsR、Akt、mTOR、及び/又はAMPKのリン酸化を増大させる抗体に関する。このため、「増大させる」は、抗体の存在下における各シグナルが、抗体の不存在下と比較して、前記増大の検出及び/又は定量に使用される各検出法において増大することを示す。際立ったことに、IGFR-Iは、HER2二量体化領域に高い類似性を示す細胞外ドメインを含有する。同領域は、抗体であるトラスツズマブ(Herceptin(登録商標))によりターゲットされる。HER2は、構成的に活性であり、リガンド独立的様式で作用し、トラスツズマブがその活性をブロックし、ガン増殖を阻害することによりHER2をターゲットする他のHERファミリーメンバーと二量体化することができる。さらに、IGFR-Iは、EGFRファミリーメンバーに見出される、その膜貫通ドメインにGxxxG二量体化モチーフを含有する。これは、IGFR-Iが、EGFR及びIRファミリーメンバーとホモ及びヘテロ二量体化して、細胞シグナル伝達アウトカムである代謝vs分裂促進をレギュレーションすることを示唆している。このため、IGFR様レセプターをターゲットする本発明の抗体は、レセプターホモ及びヘテロ二量体化ならびに/又はリガンド結合と干渉することも想定される。
【0088】
このような抗体を提供する方法は、当業者に周知であり(例えば、国際公開公報第2014/124020号)、以下に例示されている。IGFR-Iエクトドメイン及び全長レセプターを、完全にN-グリコシル化され、正確にフォールディングされた、ネイティブなコンホーメーションを有するレセプターを生成するための哺乳類発現系を使用して、高純度に精製することができる。合成膜におけるレセプター再構成は、脂質二重層内でのレセプターの二量体化を可能にするだけでなく、膜環境において、抗原としてのレセプターを提供することにより、本発明の抗体、及び特に、本発明の治療抗体を生成するのにも非常に適している。このため、IGFR-Iプロテオリポソームは、細胞膜の合成模倣物であるため、例えば、モノクローナル抗体を生成するのに理想的である。これらの抗体は、該レセプターの細胞外ドメインに対してのみ指向性を有し、レセプターのホモ及びヘテロ二量体化ならびに/又はリガンド結合と干渉することができる。このため、本発明の抗体は、グリコシル化IGFR様レセプター、好ましくは、そのグリコシル化エクトドメインに結合可能であることも想定される。
【0089】
当技術分野において周知であるように、抗体は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置している、少なくとも1つのエピトープ認識部位により、ターゲット(エピトープ)に特異的に結合可能な免疫グロブリン分子である。本明細書で使用する場合、「抗体」という用語は、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体ならびに(天然又は合成の)そのフラグメント又は変異体を含む。同フラグメント及び変異体は、必要とされる特異性の抗原結合フラグメントを含む抗体部分と、必要とされる特異性の抗原結合部位又はフラグメント(エピトープ認識部位)を含む抗体の任意の他の改変構成とを含む融合タンパク質を含む。実例は、dAb、ナノボディ、アフィボディ、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、一本鎖Fv(scFV)、ディアボディ、及び、CH3ドメインに結合しているscFvを含むミニボディを含む。「抗原結合部位」を含む他の抗体フレームワーク又は足場を、本発明に則して利用することができると、理解されるであろう。このため、「抗体」という用語は、これらの足場も含む。言及された足場は、例えば、抗体のCDRをグラフト化することができる非免疫グロブリン系抗体及び足場を含む。このような足場は、例えば、アンチカリン、アビマー、アフィリン等を含む。
【0090】
抗体は、キメラ抗体(又は、その抗原結合変異体もしくはフラグメント)であることができる。「キメラ抗体」という用語は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種から得られた抗体における対応する配列と同一であり、もしくは、同配列に相同的であるか、又は、特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する一方で、鎖の残り部分が、別の種から得られた抗体における対応する配列と同一であり、もしくは、同配列に相同的であるか、又は、別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体、ならびに、このような抗体のフラグメントを意味する。
【0091】
抗体は、ヒト化抗体(又は、その抗原結合変異体もしくはフラグメント)であることができる。「ヒト化抗体」という用語は、非ヒト抗体から得られた最少配列を含有する抗体を意味する。一般的には、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(「レシピエント抗体」にグラフト化された、非ヒト種、例えば、マウス、ラット、ウサギ、又は非ヒト霊長類から得られた免疫グロブリン(ドナー抗体)の超可変領域からの残基を含むヒト免疫グロブリンである。一部の例では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基により置き換えられている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又はドナー抗体のいずれにも見出されない残基を含むことができる。これらの改変により、抗体の性能をさらに精錬される。一般的には、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、及び典型的には、2つ全ての可変ドメインを実質的に含むであろう。ここで、全ての又は実質的に全ての超可変ループが、非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、全ての又は実質的に全てのFRが、ヒト免疫グロブリン配列のFRである。ヒト化抗体は、場合により、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的には、ヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部も含むであろう。
【0092】
抗体は、ヒト抗体であることができる。「ヒト抗体」は、ヒトにより生成される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するものであり、及び/又は、ヒト抗体を調製するための任意の技術を使用して調製される。ヒト抗体のこの定義には、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体が、特別に除外される。ヒト抗体は、当技術分野において公知の種々の技術を使用して生成することができる。同技術は、ファージディスプレイライブラリ(Hoogenboom and Winter, J. MoI Biol, 227:381 (1991);Marks et al, J. MoI Biol, 222:581 (1991))を含む。また、ヒトモノクローナル抗体の調製について、Cole et al, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985)及びBoerner et al., J. Immunol, 147(l):86-95 (1991)で記載された方法も利用できる。van Dijk and van de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol, 5: 368-374 (2001)も参照のこと。ヒト抗体は、抗原を、抗原負荷に応答してこのような抗体を生成するように改変されているが、その内因性遺伝子座が無効になっているトランスジェニック動物、例えば、免疫化ゼノマウス(XENOMOUSE(商標)技術に関して、例えば、米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号を参照のこと)に投与することにより調製することができる。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により生成されるヒト抗体に関して、例えば、Li et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:3557-3562 (2006)も参照のこと。
【0093】
化学的改変
本発明に基づいて使用される抗体又はその抗原結合変異体もしくはフラグメントを改変させることができる。本発明の文脈において想定される典型的な改変は、例えば、以下に記載された化学的改変を含む。
【0094】
一般的には、全ての種類の改変が、IGFR様レセプターに特異的に結合する抗体又はその抗原結合変異体もしくはフラグメントの能力を無効にせず、本明細書のどこかで記載されたように、IGFR様レセプターのアンタゴニスト又はアゴニストとして作用する限り、想定される。
【0095】
抗体又はその抗原結合変異体もしくはフラグメントの可能性のある化学的改変は、アミノ末端のアシル化もしくはアセチル化、又は、カルボキシ末端のアミド化もしくはエステル化、またあるいは、両方を含む。また、改変は、リシンの側鎖におけるアミノ基又はスレオニンのヒドロキシル基に作用させることもできる。他の適切な改変は、例えば、可変長のポリペプチド鎖(例えば、XTEN技術又はPASylation(登録商標))によるアミノ基の伸張、N-グリコシル化、O-グリコシル化、及び炭水化物、例えば、ヒドロキシエチルデンプン(例えば、HESylation(登録商標))又はポリシアル酸(例えば、PolyXen(登録商標)技術)の化学的結合を含む。化学的改変、例えば、アルキル化(例えば、メチル化、プロピル化、ブチル化)、アリール化、及びエーテル化が可能である場合があり、これらも想定される。
【0096】
本明細書の他の部分で記載されたように、複数のドメインが、本発明のIGFR様レセプターにおいて特定されてきた。IGFR様レセプターのアンタゴニスト又はアゴニストとして作用する抗体は、原理的には、好ましくは、IGFR様レセプターの細胞外ドメイン(例えば、インスリン様成長因子結合ドメイン、マンノース-6-リン酸レセプター結合ドメイン)中のどこか、又は、同ドメイン間に結合することが想定される。また、1つ以上の前記ドメインを含むタンパク質(例示的なタンパク質は、上記「リガンド」セクションに列記されている)に結合し、及び特に、前記タンパク質のインスリン様成長因子結合ドメイン又はマンノース-6-リン酸レセプター結合ドメイン中のエピトープに結合する公知の抗体も、一般的には、アンタゴニスト又はアゴニストとして想定され、本明細書で提供されたスクリーニングアッセイ法において、そのアンタゴニスト性又はアゴニスト性挙動を容易にモニターすることができる。
【0097】
さらに、IGFR様レセプターに対する抗体を、添付の実施例で記載されたように調製することができ、本明細書で提供されたスクリーニングアッセイ法において、そのアゴニスト性又はアンタゴニスト性活性を試験することができる。
【0098】
本発明に従ってアンタゴニスト又はアゴニストとして提供された抗体は、特に、配列
(i)TSKRTPDGFDSVPLKT(配列番号:2)及び/又は
(ii)CHQCDPDKYSE(配列番号:3)及び/又は
(iii)MYKWAKPKICSEDLEG(配列番号:4)及び/又は
(iv)FQRTTFHEASRKYTN(配列番号:5)及び/又は
(v)CTFSRNTPTRTFNY(配列番号:6)
を含む、IGFR様レセプターのエピトープに結合可能であると想定される。
【0099】
抗体は、好ましくは、本明細書で記載されたIGFR様レセプターに特異的に結合する、すなわち、非ターゲット分子、例えば、InsR、IGF1R、及びIGF2Rに対する交叉反応性を示さない。配列番号:2、3、4、5、及び6を含むエピトープを認識する抗体の特異的結合は、添付の実施例において証明されている。例えば、抗体の結合が、IGFR様レセプターのノックダンにより無効にされることを証明することができた。このことは、非特異的結合が起こらなかったことを示している。
【0100】
「エピトープ」という用語は、一般的には、結合ドメイン、例えば、抗体もしくは免疫グロブリン、又は、抗体もしくは免疫グロブリンの誘導体もしくはフラグメントが特異的に結合する、抗原上の部位を意味する。「エピトープ」は、抗原性である。このため、エピトープという用語は、本明細書において、「抗原構造」又は「抗原決定基」と呼ばれる場合もある。このため、結合ドメインは、「抗原相互作用部位」である。前記結合/相互作用は、「特異的認識」を定義するとも理解される。「エピトープ」という用語は、直線エピトープ及びコンホーメーションエピトープを包含する。直線エピトープは、アミノ酸の一次配列に含まれる連続的なエピトープであり、典型的には、少なくとも3つ又は少なくとも4つ、及びより通常には、少なくとも5つ又は少なくとも6つ又は少なくとも7つ、例えば、約8~約10個のアミノ酸を固有の配列に含む。コンホーメーションエピトープは、タンパク質のフォールディングにより並置される非連続的なアミノ酸により形成される。エピトープのコンホーメーションを決定する方法は、x線結晶学、二次元核磁気共鳴(2D-NMR)分光法、ならびに部位特異的スピンラベル及び電子常磁性共鳴(EPR)分光法を含むが、これらに限定されない。
【0101】
他の分子も、IGFR様レセプターのアンタゴニスト又はアゴニストとして、本明細書において想定される。
【0102】
siRNA及び核酸は、ヒトKIAA1324遺伝子(又は、その変異体もしくはオルソログ)の発現を減少させ、又は、阻害する、IGFR様レセプターのアンタゴニストとして、特に有用である。「siRNA」という用語は、「低分子干渉RNA」又は「サイレンシングRNA」と互換的に使用される。siRNAは、典型的には、ターゲット核酸の配列、例えば、ヒトKIAA1324遺伝子のコード配列の相補鎖に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、少なくとも20個の連続的なヌクレオチドの配列を含む、二本鎖「アンチセンス」RNA分子であるが、前記遺伝子の調節配列(プロモーター配列ならびに転写終了及びポリアデニル化シグナルを含む)に指向性を有する場合もある。
【0103】
IGFR様レセプターの発現を減少させ、及び/又は、阻害することができる他の核酸は、アプタマー、Spiegelmers(登録商標)、nc-RNA(アンチセンスRNA、L-RNA Spiegelmer、サイレンサーRNA、マイクロRNA(miRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、小分子干渉RNA(siRNA)、リピート関連(repeat-associated)小分子干渉RNA(rasiRNA)、及びPiwiタンパク質と相互作用する分子又はRNA(piRNA)を含む。このような非コード核酸分子は、例えば、IGFR様レセプターのmRNAを分解に向かわせ、又は、IGFR様レセプターのmRNA翻訳を中断させるのに利用することができる。各反応物質、特に、siRNA分子は、原理的に、ホスト細胞内で直接合成することができ、又は、ホスト細胞内に導入することができる。
【0104】
ペプチド及びタンパク質を、一般的に、それらがIGFR様レセプターシグナル伝達により媒介される生物学的応答をサプレッションし(アンタゴニスト)、又は、引き起こす(アゴニスト)かどうかに応じて、IGFR様レセプターのアンタゴニスト又はアゴニストとして利用することができる。「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本明細書において互換的に使用される。タンパク質及びペプチドは、IGFR様レセプターに特異的に結合することが想定される。本明細書において先に示されたように、当業者であれば、IGFR様レセプターに特異的に結合可能なペプチド及びタンパク質のアンタゴニスト又はアゴニストを、例えば、インスリン様成長因子結合ドメイン及び/又はマンノース-6-リン酸レセプター結合ドメインを含むタンパク質(例示的なタンパク質は、上記「リガンド」セクションに列記されている)の公知のリガンドを使用して、容易に見出すことができるであろう。前記リガンドは、遺伝子操作の公知の方法を使用して、その変異体又はフラグメントを調製するためのテンプレートとして使用することができる。前記タンパク質又はペプチドを、その後に、そのアゴニスト性又はアンタゴニスト性活性について、例えば、本明細書で提供されたスクリーニングアッセイ法を使用して試験することができる。低分子量有機分子も、IGFR様レセプターのアンタゴニスト又はアゴニストのいずれかとして作用可能である。低分子量有機分子は、IGFR様レセプターに特異的に結合することが想定される。低分子量有機分子についての高スループットスクリーニングアッセイ法は、当技術分野において容易に利用可能であり、アゴニスト性又はアンタゴニスト性活性を示す場合がある、本明細書で提供されたIGFR様レセプターのリガンドを見出すのに利用することができる。
【0105】
特異的結合
本明細書で示されたように、IGFR様レセプターに対する結合剤、特に、本明細書で提供されたアンタゴニスト及びアゴニスト、例えば、抗体の特異的結合が好ましい。全ての文法的形式における「に結合する」及び「認識する」という用語は、本明細書において、互換的に使用される。
【0106】
「特異的に結合する」という用語は、一般的には、結合剤、特に、アンタゴニスト又はアゴニスト、例えば、抗体が、その意図したターゲット(すなわち、本明細書で記載されたIGFR様レセプター)に対して、その非ターゲット分子に対してより高い親和性で結合することを示している。非ターゲット分子は、IGFレセプター、特に、Uniprot Acc.No.P08069(2015年7月22日のエントリーバージョン185)のヒトIGF1R、Uniprot Acc.No.P11717(2015年7月22日のエントリーバージョン174)のヒトIGF2R、及び、Uniprot Acc.No.P06213(2015年7月22日のエントリーバージョン216)のヒトInsR、ならびに、それらの機能性変異体を含む。好ましくは、アゴニスト又はアンタゴニストの親和性は、非ターゲット分子に対するその親和性より、ターゲット分子に対して、少なくとも約5培、好ましくは10倍、より好ましくは25倍、さらにより好ましくは50倍、及び最も好ましくは100倍以上高いであろう。好ましい抗体は、少なくとも約107M-1、及び好ましくは、約108M-1~約109M-1、約109M-1~約1010M-1、又は、約1010M-1~約1012M-1の親和性で結合する。
【0107】
このため、好ましくは、「特異的に結合する」という用語は、アンタゴニスト及びアゴニスト、例えば、抗体が、その意図したターゲット(すなわち、IGFR様レセプター)に専ら結合することを示している。
【0108】
処置
IGFR様レセプターのアンタゴニスト及びアゴニストは、糖尿病の処置及び診断に特に有用であることが想定される。本明細書で使用する場合、「糖尿病」は、損なわれたインスリン生成及び耐糖能により特徴付けられる、広い分類の障害を意味し、一般的には、1型及び2型糖尿病(若年型及び成人型開始ともそれぞれ呼ばれる)、妊娠糖尿病、前糖尿病、インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム、及び耐糖能障害を含む。糖尿病は、インスリン生成β細胞の機能不全又は機能障害の単独で、又は、インスリン抵抗性との組み合わせにおいて生じる。
【0109】
「メタボリックシンドローム」という用語は、腹部(中心)肥満、血圧上昇、空腹時血糖の上昇、高血清トリグリセリド、低い高密度リポタンパク質(HDL)、及び/又は高い低密度リポタンパク質(LDL)レベルを含む。さらに、メタボリックシンドロームは、2型糖尿病及び/又は冠動脈心疾患を含む心血管疾患に進行するリスクに関連する。
【0110】
「β細胞」、「ベータ細胞」、及び「膵島細胞」という用語は、ランゲルハンス膵島に位置する膵臓β細胞を意味するのに、本明細書において互換的に使用される。その主な機能は、インスリンを貯蔵し、放出することである。
【0111】
インスリン分泌の欠陥は、全ての形態の糖尿病の基礎をなしている。一方、β細胞の破壊が、1型糖尿病(T1D)の原因であり、一方、β細胞量の減少および分泌機能の喪失の両方が、2型糖尿病(T2D)に関与している。現れた結果から、成熟β細胞のより前駆体様状態への脱分化による機能欠陥が、T2Dにおける分泌障害に重要なドライバーである可能性があることが示唆される。
【0112】
本発明のアンタゴニスト及びアゴニストは、β細胞の脱分化を予防し、及び/又は、β細胞の機能喪失を反転させるのに有利に利用することができることが企図される。したがって、本明細書で記載されたアンタゴニスト及びアゴニストは、医薬としての使用が想定される。特に、前記アンタゴニスト及びアゴニストは、糖尿病の予防的及び/又は治療的処置の方法における使用が意図される。
【0113】
1型糖尿病は、インスリン依存性糖尿病(IDDM)及び若年型糖尿病としても公知である。これらの用語は、本明細書において、互換的に使用される。この形態は、糖尿病の5~10%を占めており、膵臓β細胞の細胞媒介性自己免疫破壊により、インスリンをほとんど分泌しなくなるか、又は、インスリンを分泌しなくなると考えられる。本明細書で提供されたIGFR様レセプターのアンタゴニスト及びアゴニストは、β細胞の脱分化及び/又は機能喪失を予防し、又はさらに、反転させることができる。このため、本発明は、T1Dの予防的又は再生的治療の新たな可能性を開くことが想定される。
【0114】
2型糖尿病は、成人開始糖尿病とも呼ばれ、全糖尿病の約90~95%を占める。ターゲット組織におけるインスリン抵抗性及び膵臓β細胞からのインスリン分泌の相対的な欠損は、2型糖尿病(TD2)の主な特徴である。インスリン抵抗性は、本明細書において、ターゲット細胞がインスリンに応答することができず、高血糖をもたらすことにより特徴付けられる症状を示すのに使用される。膵臓における膵臓β細胞は、その後に、インスリンのその生成を増大させ、高インスリン血症をもたらす。特定の理論に拘束されるものではないが、本明細書で記載されたIGFR様レセプターは、インスリン又はインスリンレセプターのいずれかについてのスカベンジャーとして作用することが企図される。例えば、IGFR様レセプターは、インスリンレセプターに結合し、インスリンレセプターの内部移行をもたらす可能性がある(インスリンレセプターのスカベンジャー)。また、IGFR様レセプターは、インスリンにも結合して、その内部移行及び場合によりリソソーム分解をもたらす可能性もある(インスリンのスカベンジャー)。これらのIGFR様レセプター機能を、本明細書で記載されたアンタゴニストの助けにより阻害することにより、InsR及び/又はIGF1R媒介性シグナル伝達が増大し、これにより、インスリン感受性を回復させることができる。
【0115】
添付の実施例でさらに示されたように、本発明者らは、本明細書で記載されたIGFR様レセプターが、インスリンの下流シグナル伝達を負にレギュレーションすることを証明した。したがって、IGFR様レセプターのアンタゴニストは、InsRの下流シグナル伝達を促進し、又は、回復させることが想定される。一方、IGFR様レセプターのアゴニストは、InsRシグナル伝達を阻害し、又は、減弱させることが考えられる。
【0116】
したがって、IGFR様レセプターのアンタゴニストは、好ましくは、(i)InsR及び/もしくはIGF1R媒介性Aktリン酸化を増大させ、(ii)InsR及び/もしくはIGF1R媒介性AMPKリン酸化、ならびに/又は(iii)mTORリン酸化を増大させることにより、有利に、インスリン抵抗性細胞におけるインスリン感受性を向上させることができる。
【0117】
診断
本発明者らは、驚くべきことに、本明細書で特定されたIGFR様レセプターの発現が、膵臓β細胞の脱分化に関連していることを発見した。β細胞の脱分化は、β細胞が得られる多能性前駆細胞又は別の可逆性脱分化状態に戻るβ細胞表現型における変化を説明するのに使用される用語である。膵臓β細胞の脱分化は、インスリン分泌を含む、重要な機能の喪失をもたらすと考えられる。重要なβ細胞機能の喪失の結果として、調節不全のインスリン分泌が、糖尿病(T1D及びT2Dを含む)における発病の基礎的部分に見られる。グルコース毒性とも呼ばれるプロセスである高血糖は、機能不全のインスリン分泌をもたらす膵臓β細胞の脱分化の主因であると考えられる。
【0118】
本出願の出願まで、疾患の開始及び進行について信頼性を有するバイオマーカーは利用可能ではなかった。本発明者らは、本明細書で記載されたIGFR様レセプターが、糖尿病の処置に有用な可能性があり、かつ、強力なターゲットであるだけでなく、非常に初期段階において、発病に関与することも発見した。したがって、本明細書で提供されたIGFR様レセプターの発現をモニターすることにより、糖尿病の早期診断を可能にし、β細胞のその機能が失われ又は重度に損なわれる前に、(予防的)処置も可能にする可能性がある。
【0119】
したがって、本発明は、糖尿病又は糖尿病の進行リスクについての診断マーカーとして使用するための、本明細書で記載されたIGFR様レセプターに特異的に結合可能である、結合分子を提供する。好ましくは、前記IGFR様レセプターは、配列番号:1の配列に対応する配列を含む。ただし、前記IGFR様レセプターの変異体も想定される。
【0120】
前述を考慮して、患者における膵島細胞の脱分化を検出するためのin vitro診断アッセイ法(すなわち、診断法)も、本明細書において提供される。前記アッセイ法は、
i)記対象から得られたサンプルを、可溶性IGFR様レセプターに特異的に結合する診断用結合剤と接触させる工程と、
ii)該診断用結合剤の結合を検出する工程とを含み、
ここで、前記診断用結合剤の検出可能な結合は、対象における膵島細胞の脱分化を示し、ここで、IGFR様レセプターは、配列番号:1に対応する配列を含む。
【0121】
本明細書のどこかで示されたように、膵臓β細胞の脱分化は、糖尿病又は糖尿病の進行リスクを示すと考えられる。サンプルは、一般的には、任意のサンプル、特に、血漿サンプルであることができる。
【0122】
一般的には、診断用結合剤を提供するために、当業者は、IGFR様レセプターのアンタゴニスト及びアゴニストを提供する文脈において示されたのと同じ原理に従うことができる。同様に、本明細書で提供された診断用結合剤は、本明細書で提供されたIGFR様レセプターに特異的に結合することが想定される。診断用結合剤は、アンタゴニスト性又はアゴニスト性活性を示すことができ(これにより、例えば、刺激性診断及び(予防的)処置が可能である)、又は、IGFR様レセプターのシグナル伝達における効果を全く有していなくてもよい。診断用結合剤を調製する際に、当業者であれば、本明細書のどこかで記載されたように、例えば、インスリン様成長因子結合ドメイン及び/又はマンノース-6-リン酸レセプター結合ドメインを含むリガンド及びタンパク質を使用し、そのリガンドを、IGFR様レセプターに特異的に結合可能な診断用結合剤を生成するための「テンプレート」として使用することができる。例示的なタンパク質及びリガンドは、本明細書における「リガンド」セクションに記載されている。このアプローチは、IGFR様レセプターのアンタゴニスト及びアゴニストを調製する文脈において記載されており、このような結合剤がアゴニスト性及び/又はアンタゴニスト性の特性を必ずしも示す必要がないことを除いて、診断用結合剤にも完全に適用可能である。
【0123】
in vitro診断結合アッセイ法に使用するのに特に有用な結合剤は、モノクローナル抗体、例えば、配列
(i)TSKRTPDGFDSVPLKT(配列番号:2)及び/又は
(ii)CHQCDPDKYSE(配列番号:3)及び/又は
(iii)MYKWAKPKICSEDLEG(配列番号:4)及び/又は
(iv)FQRTTFHEASRKYTN(配列番号:5)及び/又は
(v)CTFSRNTPTRTFNY(配列番号:6)
を含む、IGFR様レセプターのエピトープを特異的に認識する抗体を含む。
【0124】
本発明の方法に利用される診断用結合剤は、診断結合剤に付着させた検出ラベルをさらに含む。検出ラベルは、診断用結合剤に、直接、又は、可能性のある立体障害を減少させるための種々の長さのスペーサーを介してのいずれかで、(好ましくは、共有)結合させることができる。タンパク質をラベルするための種々の方法が、当技術分野において公知であり、本発明を実施するのに使用することができる。
【0125】
「ラベル」又は「ラベル基」という用語は、任意の検出ラベルを意味する。診断用結合剤と共に使用するのに適したラベルは、(i)同位体ラベル(放射性同位元素又は重同位元素であることができる)、例えば、放射性同位体又は放射性核種(例えば、3H、14C、15N、35S、89Zr、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、(ii)磁性ラベル(例えば、磁性粒子)、(iii)酸化還元活性部分、(iv)光学染料(発色団、蛍光体、及び発蛍光団を含むが、これらに限定されない)、例えば、蛍光ラベル(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、化学発光ラベル、及び、蛍光体(「小分子」発蛍光団又はタンパク質性発蛍光団のいずれかであることができる)、(v)酵素基(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、βガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、(vi)ビオチン化基、(vii)二次レポーターにより認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパーペア配列、二次抗体用の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ等)を含むが、これらに限定されない。
【0126】
「蛍光ラベル」は、その固有の蛍光特性により検出することができる、任意の分子を意味する。適切な蛍光ラベルは、フルオロセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン、エリスロシン、クマリン、メチルクマリン、ピレン、マラカイトグリーン、スチルベン、Lucifer Yellow、Cascade BlueJ、Texas Red、IAEDANS、EDANS、BODIPY FL、LC Red 640、Cy 5、Cy 5.5、LC Red 705、Oregon green、Alexa-Fluor dyes(Alexa Fluor 350、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680)、Cascade Blue、Cascade Yellow、及びR-フィコエリスリン(PE)(Molecular Probes, Eugene, OR)、FITC、ローダミン、及びTexas Red(Pierce, Rockford, IL)、Cy5、Cy5.5、Cy7(Amersham Life Science, Pittsburgh, PA)を含むが、これらに限定されない。発蛍光団を含む適切な光学染料は、Molecular Probes Handbook by Richard P. Hauglandに記載されている。例示的なタンパク質性発蛍光団ラベルは、緑色蛍光タンパク質(Renilla、Ptilosarcus、又はAequorea種のGFP、EGFPを含む)、青色蛍光タンパク質(BFP)、高感度黄色蛍光タンパク質(EYFP)、ルシフェラーゼ、及びβガラクトシダーゼも含むが、これらに限定されない。
【0127】
適切なラベルを、診断用結合剤の種類、その化学的特性、及び意図した検出法に応じて選択することは、当業者の知識の範囲内である。本発明の方法に使用するのに特に適した診断用結合剤は、好ましくは、本明細書で記載されたIGFR様レセプターを特異的に認識するモノクローナル抗体である。
【0128】
有利に、膵臓β細胞の脱分化は、本明細書で記載されたIGFR様レセプターを特異的に認識可能な診断用結合剤を利用することにより可視化することができる。前記β細胞の脱分化は、糖尿病又は糖尿病の進行のリスクを示し、β細胞機能不全を先導すると考えられる。したがって、本発明は、最初に、疾患開始のごく初期段階において、糖尿病(1型、2型、妊娠糖尿病、メタボリックシンドローム、及び前糖尿病を含む)の診断を可能にする診断アッセイ法を提供するため、β細胞機能不全及びインスリン生成の喪失又は欠損をもたらす破壊メカニズムを初期に妨害するための新たな可能性を開く。
【0129】
ヒトKIAA1324遺伝子の遺伝子産物が糖尿病において役割を果たすことが見出されたことによって、本発明は、KIAA1324遺伝子における公知のSNPのいずれかを、1つ以上のSNPが、実際に、糖尿病、特に、II型糖尿病を進行させる傾向に関連する可能性があるのか、又は、同進行のリスクにある可能性があるのかどうかについて割り当てることができる。
【0130】
また、本発明は、対象が、糖尿病、特に、II型糖尿病を進行させる傾向を有する可能性があるのか、又は、同進行のリスクにある可能性があるのかどうかを判定するために、ヒトKIAA1324遺伝子(エクソン、イントロン、5’-及び3’-非翻訳領域を含む)において公知のSNPの使用を可能にする。このような判定に好ましいSNPは、以下の表に列記されている。
【0131】
【0132】
対象が上記表に列記された位置において、野生型ヒトKIAA1324遺伝子と比較して、別のヌクレオチド有する可能性がある場合、前記対象は、糖尿病、特に、II型糖尿病を進行させる傾向を有する可能性があるのか、又は、同進行のリスクにある可能性がある。すなわち、上記表に列記された位置におけるSNPは、糖尿病、特に、II型糖尿病を進行させる傾向、又は、同進行のリスクにあることを示す可能性がある。
【0133】
野生型ヒトKIAA1324遺伝子は、GenBankアクセッション番号NG_032763.1のヌクレオチド配列として示された、NCBI GeneID 57535(2015年7月15日更新)のものである。
【0134】
上記表において言及された位置は、KIAA1324についてのGeneID 57535(2016年8月27日更新)、アノテーションリリース108、アッセンブリGRCh37.p13(GCF_000001405.25)、第1番染色体、Location NC_000001.10(109656585..109749403)から得られる。
【0135】
患者
本明細書で使用する場合、「患者」又は「対象」という用語は、ヒト又は非ヒト動物、一般的には、哺乳類を意味する。哺乳類、例えば、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、サル、類人猿、又は好ましくは、ヒトが特に想定される。このため、本文書で記載された方法、使用、及び化合物は、一般的には、ヒト及び脊椎動物両方の疾患に適用可能である。
【0136】
処置
全てのその文法的形式における「処置」という用語は、治療的又は予防的処置を含む。「治療的又は予防的処置」は、臨床的及び/もしくは病理的兆候の完全な予防を目的とする予防的処置、又は、疾患の臨床的及び/もしくは病理的兆候の緩和もしくは軽減を目的とする治療的処置を含む。このため、「処置」という用語は、糖尿病の緩和又は予防も含む。
【0137】
本発明の文脈において、「治療効果」という用語は、一般的には、処置の望ましい又は有益な影響、例えば、疾患兆候の緩和又は軽減を意味する。疾患の「兆候」という用語は、本明細書において、その知覚できる表現を説明するのに使用され、臨床的兆候(健康診断中に検出することができ、及び/又は、患者により知覚できる疾患の兆候(すなわち、症候)として以下で定義される)と病理的兆候(細胞及び分子レベルでの疾患の表現を意味する)との両方を含む。IGFR様アンタゴニスト及びアゴニストによる処置の治療効果を、当技術分野においてルーチンな方法を使用して、例えば、患者の血液サンプル中のインスリンレベル及び/又はグルコースレベルを測定して、評価することができる。加えて又は代替的に、各患者の一般外観(例えば、運動、健康)を評価することも可能であり、そのことは専門家が、治療効果が現れているかどうかを評価するのにも役立つ。当業者であれば、本発明の化合物の治療効果を観察するのに適した数多くの他の方法を知っている。
【0138】
用量
好ましくは、治療上有効量の、本明細書で記載された化合物が投与される。「治療上有効量」は、治療効果を引き起こす本明細書で記載された化合物の量を意味する。IGFR様レセプターのアンタゴニスト又はアゴニストの正確な用量は、処置の目的(例えば、疾患の軽減維持vs急性症状の処置)により決まるであろうし、当業者により公知の技術を使用して確認することができるであろう。投与経路、年齢、体重、健康全般、性別、食事、投与のタイミング、薬剤の相互作用、及び症状の重症度について、調節が必要となる場合があり、当業者による通常の試行錯誤により確認することができるであろう。
【0139】
投与
各種の経路が、本発明の化合物の投与に適用可能である。同経路は、経口、局所、経皮、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、又は眼内を含むが、これらに限定されない。ただし、任意の他の経路を、必要に応じて、当業者により容易に選択することができる。
【0140】
組成物
IGFR様アンタゴニスト又はアゴニストを、医薬組成物の形態で投与することが想定される。好ましくは、前記アンタゴニスト又はアゴニストは、医薬組成物中に、治療上有効量で存在する、本明細書で提供された医薬組成物に使用するのに特に好ましいアンタゴニスト又はアゴニストは、本明細書で記載されたIGFR様レセプターに特異的に結合するモノクローナル抗体である。前記抗体は、配列
(i)TSKRTPDGFDSVPLKT(配列番号:2)及び/又は
(ii)CHQCDPDKYSE(配列番号:3)及び/又は
(iii)MYKWAKPKICSEDLEG(配列番号:4)及び/又は
(iv)FQRTTFHEASRKYTN(配列番号:5)及び/又は
(v)CTFSRNTPTRTFNY(配列番号:6)
を含む、IGFR様レセプターのエピトープに特異的に結合することが想定される。
【0141】
「医薬組成物」という用語は、ヒトに投与するのに適した組成物、すなわち、好ましくは、無菌であり、及び/又は、薬学的に許容し得る成分を含有する組成物を特に意味する。ただし、非ヒト動物への投与に適した組成物も、本明細書において想定される。好ましくは、医薬組成物は、IGFR様レセプターのアンタゴニスト又はアゴニストを、1つ以上の薬学的な賦形剤と共に含む。「賦形剤」という用語は、充填材、バインダー、崩壊剤、コーティング、吸着剤、粘着防止剤、滑剤、保存剤、酸化防止剤、香料、着色剤、甘味料、溶媒、共溶媒、緩衝剤、キレート剤、粘性付与剤、界面活性剤、希釈剤、湿潤剤、担体、希釈剤、保存剤、乳化剤、安定化剤、又は浸透張力調節剤を含む。本発明の医薬組成物は、種々の形態、例えば、固体、液体、気体、又は凍結乾燥の形態で配合することができ、特に、軟膏剤、クリーム剤、経皮パッチ剤、ゲル剤、粉末剤、錠剤、液剤、エアロゾル剤、顆粒剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、エリキシル剤、抽出物、チンキもしくは流体抽出物の形態、又は、所望の方法の投与に特に適した形態であることができる。
【0142】
本発明の医薬組成物は、1つ以上の更なる作用剤をさらに含むことができる。好ましくは、前記作用剤は、本明細書で記載された疾患の処置に治療上有効であり、組成物中に治療上有効量で存在する。例は、メトホルミン、スルホニルウレア、メグリチニド、チアゾリジンジオン、DPP-4阻害剤、GLP-1レセプターアゴニスト、SGLT2阻害剤、インスリン及びインスリン誘導体(インスリングルリジン、インスリンリスプロ、インスリンアスパルト、インスリングラルギン、インスリンデテミル、インスリンイソファン)、ならびにこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0143】
したがって、上記を考慮して、本発明は、IGFR様アンタゴニスト又はアゴニストを含む、医薬組成物も提供する。前記医薬組成物は、糖尿病の治療的及び/又は予防的処置の方法における使用を、特に意図している。
【0144】
キット
本明細書において、キットも提供される。キットは、2つ以上の部品のキットであることができ、IGFR様レセプターのアンタゴニスト又はアゴニストを、好ましくは、治療上有効量で、かつ、薬学的に許容し得る形態で含む。キットの成分は、容器又はバイアルに収容することができる。キットは、本明細書のどこかで記載されたように、糖尿病を処置するのに有用な更なる作用剤を含むことが想定される。例示的な更なる作用剤は、メトホルミン、スルホニルウレア、メグリチニド、チアゾリジンジオン、DPP-4阻害剤、GLP-1レセプターアゴニスト、SGLT2阻害剤、インスリン及びインスリン誘導体(インスリングルリジン、インスリンリスプロ、インスリンアスパルト、インスリングラルギン、インスリンデテミル、インスリンイソファン)、ならびにこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0145】
IGFR様アンタゴニスト又はアゴニスト及び更なる作用剤は、同時に又は連続的に、患者に投与することができる。
【0146】
スクリーニングアッセイ法
本明細書で使用する場合、「スクリーニングアッセイ法」という用語は、「スクリーニング法」という用語と同等に使用される。このようなアッセイ法又は方法は、好ましくは、「in vitro」において行われる。ただし、「in vivo」で行うこともできる。
【0147】
IGFR様レセプターのアンタゴニスト及びアゴニストを、本明細書で提供されたin vitroスクリーニングアッセイ法を使用して特定することができる。前記アッセイ法は、下記工程:(a)前記IGFR様レセプターを発現している安定した細胞系統を提供する工程と、(b)前記(a)の細胞系統を、候補アンタゴニスト又はアゴニストと接触させる工程と、(c)IGFR様レセプターの下流シグナル伝達イベントを測定する工程であって、アンタゴニストは、前記IGFR様レセプターの下流シグナル伝達イベントを増大させることにより特定され、アゴニストは、前記IGFR様レセプターの下流シグナル伝達イベントを減少させることにより特定される測定工程とを含み、ここで、前記IGFR様レセプターは、配列番号:1の配列に対応する配列を含む。
【0148】
好ましい下流シグナル伝達イベントは、InsRリン酸化、AMPKリン酸化、mTORリン酸化、AKTリン酸化、ERKリン酸化、及び/又はS6Kリン酸化である。
【0149】
場合により、本明細書で記載されたスクリーニング法において、前記IGFR様レセプターを発現している細胞系統、好ましくは、本発明のスクリーニング法に適用されたのと同じ細胞系統は、候補アンタゴニスト又はアゴニストそれぞれと接触させない。このような細胞系統は、対照として機能する。このような対照細胞系統において、IGFR様レセプターの下流シグナル伝達イベントが測定され、候補アンタゴニスト又はアゴニストと接触している(又は、接触させた)細胞系統において測定されたIGFR様レセプターの下流シグナル伝達イベントと比較される。
【0150】
前記IGFR様レセプターを発現している細胞系統の好ましい例は、Min6又はPDDX1+/NKX6.1+iPSCである。
【0151】
本明細書で記載されたように、IGFR様レセプターの下流シグナル伝達イベントは、InsR及び/又はIGF1R媒介性シグナル伝達の負のレギュレーション、及び特に、(i)Aktリン酸化、(ii)AMPKリン酸化、及び/又は(iii)mTORリン酸化の阻害又は減少をもたらすと考えられる。また、本明細書で提供されたスクリーニングアッセイ法において、(i)Aktリン酸化、(ii)AMPKリン酸化、及び/又は(iii)mTORリン酸化を促進し、又は、増大させる結合剤は、おそらく、IGFR様レセプターのアンタゴニストである。本明細書で提供されたスクリーニングアッセイ法において、何ら効果を有さないか、又はさらに、(i)Aktリン酸化、(ii)AMPKリン酸化、及び/又は(iii)mTORリン酸化を減少させる結合剤は、おそらく、IGFR様レセプターのアゴニストである。
【0152】
安定した細胞系統は、機能性IGFR様レセプターを発現するのに適した任意の細胞系統であることができる。ここで、「機能性IGFR様レセプター」は、(i)Aktリン酸化、(ii)AMPKリン酸化、及び/又は(iii)mTORリン酸化を減少させ、又は、阻害することにより確認することができる、InsR及び/又はIGF1R媒介性シグナル伝達を、負にレギュレーションするのが特に想定される。
【0153】
また、本発明は、本スクリーニング法により得ることができるアンタゴニスト又はアゴニストに関する。
【0154】
また、本発明では、IGFR様レセプターが、ホモ二量体化し、又は、IGFR-1、IGFR-2、及び/又はInsRとヘテロ二量体化するかどうかを検出するための方法が企図される。前記方法は、タグ付きIGFR様レセプターがホモ二量体化し、又は、ヘテロ二量体化するかどうかを検出することを含む。ヘテロ二量体は、IGFR様レセプターと、InsR、IGFR-1、及び/又はIGF-R2とを含む場合がある。
【0155】
好ましいタグは、蛍光タンパク質、例えば、GFP又はVenus、527nmの発光ピークを有する緑色蛍光タンパク質(GFP)の遺伝子変異体である。
【0156】
IGFR様レセプターをタグ付けすることは、好ましくは、前記IGFR様レセプターに、インフレームにタグを融合させることにより達成される。これは、当技術分野において公知の技術により、例えば、前記IGFR様レセプターをコードするヌクレオチド配列に、タグをコードするヌクレオチド配列を、例えば、ゲノム編集により、例えば、CRISPR/Cas系を使用してノックインすることにより達成することができる。
【0157】
また、本発明は、下記項によっても特徴付けられる。
1.配列番号:1のIGFR様レセプターに対して生じた抗体と反応可能なIGFレセプター(IGFR)様レセプターをコードする単離されたDNA配列であり、ここで、前記抗体は、配列
(i)TSKRTPDGFDSVPLKT(配列番号:2)及び/又は
(ii)CHQCDPDKYSE(配列番号:3)及び/又は
(iii)MYKWAKPKICSEDLEG(配列番号:4)及び/又は
(iv)FQRTTFHEASRKYTN(配列番号:5)及び/又は
(v)CTFSRNTPTRTFNY(配列番号:6)
を含む、少なくとも1つのエピトープに特異的に結合する、
単離されたDNA配列。
【0158】
2.配列番号:1に対応する配列を含むIGFR様レセプターをコードする、
単離されたDNA配列。
【0159】
3.項1又は2記載のDNA配列を含む、
ベクター。
【0160】
4.前記IGFR様レセプターをコードするDNA配列の上流に位置している遺伝子調節エレメントをさらに含む、項3記載のベクター。
【0161】
5.項3又は4記載のベクターを含む、
ホスト細胞。
【0162】
6.糖尿病又は糖尿病の進行リスクを診断する方法に使用するための、IGFR様レセプターに特異的に結合可能な診断用結合剤であり、前記IGFR様レセプターは、配列番号:1の配列に対応する配列を含む、
診断用結合剤。
【0163】
7.医薬として使用するための、IGFR様レセプターのアンタゴニスト又はアゴニストであり、前記IGFR様レセプターは、配列番号:1に対応する配列を含む、
アンタゴニスト又はアゴニスト。
【0164】
8.IGFR様レセプターのアンタゴニスト又はアゴニストであって、前記IGFR様レセプターは、配列番号:1に対応する配列を含み、糖尿病の予防的及び/又は治療的処置の方法において用いられる、
アンタゴニスト又はアゴニスト。
【0165】
9.アンタゴニストが、前記IGFR様レセプターに特異的に結合する、項7又は8記載のアンタゴニスト又はアゴニスト。
【0166】
10.アンタゴニスト又はアゴニストが、抗体、siRNA、核酸、アプタマー、ペプチド、タンパク質、又は小分子有機化合物から選択される、項7~9のいずれか一項記載のアンタゴニスト又はアゴニスト。
【0167】
11.抗体が、抗体、抗体変異体、及び抗体フラグメントを含む、項10記載のアンタゴニスト又はアゴニスト。
【0168】
12.前記抗体が、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体である、項10又は11記載のアンタゴニスト又はアゴニスト。
【0169】
13.前記抗体が、前記IGFR様レセプターのエピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体であり、該エピトープが、配列:
(i)TSKRTPDGFDSVPLKT(配列番号:2)及び/又は
(ii)CHQCDPDKYSE(配列番号:3)及び/又は
(iii)MYKWAKPKICSEDLEG(配列番号:4)及び/又は
(iv)FQRTTFHEASRKYTN(配列番号:5)及び/又は
(v)CTFSRNTPTRTFNY(配列番号:6)
を含む、項12記載のアンタゴニスト又はアゴニスト。
【0170】
14.糖尿病が、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病、前糖尿病、インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム、及び耐糖能障害を含む、項7~13のいずれか一項記載のアンタゴニスト又はアゴニスト。
【0171】
15.処置が、インスリン抵抗性を予防し、又は、反転させる、項8~15のいずれか一項記載のアンタゴニスト又はアゴニスト。
【0172】
16.処置が、膵島細胞の脱分化を予防し、又は、反転させる、項8~16のいずれか一項記載のアンタゴニスト又はアゴニスト。
【0173】
17.配列番号:1に対応する配列を含むIGFR様レセプターのアンタゴニスト又はアゴニストを含み、ここで、前記アンタゴニストは、前記IGFR様レセプターに特異的に結合するモノクローナル抗体である、
医薬組成物。
【0174】
18.前記抗体が、前記IGFR様レセプターのエピトープに特異的に結合し、該エピトープが、配列:
(i)TSKRTPDGFDSVPLKT(配列番号:2)及び/又は
(ii)CHQCDPDKYSE(配列番号:3)及び/又は
(iii)MYKWAKPKICSEDLEG(配列番号:4)及び/又は
(iv)FQRTTFHEASRKYTN(配列番号:5)及び/又は
(v)CTFSRNTPTRTFNY(配列番号:6)
を含む、項17記載の医薬組成物。
【0175】
19.配列
(i)TSKRTPDGFDSVPLKT(配列番号:2)及び/又は
(ii)CHQCDPDKYSE(配列番号:3)及び/又は
(iii)MYKWAKPKICSEDLEG(配列番号:4)及び/又は
(iv)FQRTTFHEASRKYTN(配列番号:5)及び/又は
(v)CTFSRNTPTRTFNY(配列番号:6)
を含む、IGFR様レセプターのエピトープに特異的に結合する、
モノクローナル抗体。
【0176】
20.IGFR様レセプターのアンタゴニスト又はアゴニストについてのin vitroスクリーニングアッセイ法であり、
(a)前記IGFR様レセプターを発現している安定した細胞系統を提供する工程と、
(b)前記(a)の細胞系統を、候補アンタゴニスト又はアゴニストと接触させる工程と、
(c)IGFR様レセプターの下流シグナル伝達イベントを測定する工程であって、アンタゴニストは、前記IGFR様レセプターの下流シグナル伝達イベントをサプレッションすることにより特定され、アゴニストは、前記IGFR様レセプターの下流シグナル伝達イベントを促進することにより特定される測定工程とを含み、
ここで、前記IGFR様レセプターは、配列番号:1の配列に対応する配列を含む、
方法。
【0177】
21.前記IGFRアンタゴニストが、抗体、siRNA、核酸、アプタマー、ペプチド、タンパク質、又は小分子有機化合物から選択される、項20記載の方法により得ることができるIGFR様レセプターのアンタゴニスト又はアゴニスト。
【0178】
22.対象における膵島細胞の変性を検出するためのin vitro診断アッセイ法であって、
i)前記対象から得られたサンプルを、IGFR様レセプターに特異的に結合する診断用結合剤と接触させる工程と、
ii)該結合剤の結合を検出する工程とを含み、
ここで、前記診断用結合剤の検出可能な結合は、対象における膵島細胞の脱分化を示し、
ここで、IGFR様レセプターは、配列番号:1に対応する配列を含む、
in vitro診断アッセイ法。
【0179】
23.膵島細胞の脱分化が、糖尿病又は糖尿病の進行リスクを示す、項22記載のin vitro診断アッセイ法。
【0180】
24.サンプルが、血漿サンプルである、項22又は23記載のin vitro診断アッセイ法。
【0181】
25.診断用結合剤が、モノクローナル抗体である、項22~24のいずれか一項記載のin vitro診断アッセイ法。
【0182】
26.糖尿病を処置する方法であって、IGFRアンタゴニストを、対象に投与することを含み、前記IGFR様レセプターは、配列番号:1の配列に対応する配列を含む、
方法。
【0183】
27.糖尿病を処置する方法におけるIGFR様レセプターのアンタゴニスト又はアゴニストの使用であり、前記IGFR様レセプターは、配列番号:1の配列に対応する配列を含む、
使用。
【0184】
本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈において他に明確に示さない限り、複数の指示対象を含むことが留意される。このため、例えば、「試薬(a reagent)」への言及は、1つ以上のこのような種々の試薬を含む。「方法(the method)」への言及は、本明細書で記載された方法を改変し、又は、置換することができる、当業者に公知の同等の工程及び方法への言及を含む。
【0185】
特に断りない限り、一連の要素に先立つ「少なくとも」という用語は、該一連における全ての要素を意味すると理解されたい。当業者であれば、過度の試行錯誤をすることなく、本明細書で記載された本発明の特定の実施態様に対する多くの同等物を認識し、又は、確認することができるであろう。このような同等物は、本発明に包含されることが意図される。
【0186】
本明細書におけるあらゆる箇所で使用される「及び/又は」という用語は、「及び」、「又は」、及び「前記用語により結び付けられた要素の全て又は任意の他の組み合わせ」の意味を含む。
【0187】
本明細書で使用する場合、「約」又は「およそ」という用語は、所定の値又は範囲の20%以内、好ましくは10%以内、及びより好ましくは5%以内を意味する。ただし、同用語は、名数も含む。例えば、「約20」は、20を含む。
【0188】
「未満」又は「超」という用語は、名数を含む。例えば、20未満は、以下を意味する。同様に、超(more than)又は超(greater than)は、以上(more than or equal to)又は以上(greater than ot equal to)をそれぞれ意味する。
【0189】
本明細書及びそれに続く特許請求の範囲全体を通して、文脈において他に必要とされない限り、「含む(comprise)」という語及び変位語、例えば、「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」は、記載された整数もしくは工程、又は、整数もしくは工程の群の包含を含み、任意の他の整数もしくは工程又は整数もしくは工程の群を除外しないと理解されるであろう。本明細書で使用する場合、「含む(comprising)」という用語は、「含有する(containig)」もしくは「含む(including)」、又は、場合により本明細書で使用する場合、「有する(having)」という用語により置換することができる。
【0190】
本明細書で使用する場合、「からなる」は、特許請求の範囲の要素において特定されていない、任意の要素、工程、又は成分を除外する。本明細書で使用する場合、「から本質的になる」は、特許請求の範囲の基礎的及び新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない材料又は工程を除外しない。
【0191】
本発明は、本明細書で記載された特定の方法論、プロトコール、材料、試薬、及び物質等に限定されず、変動することもできることを理解されたい。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施態様を説明するためだけの目的のものであり、本発明の範囲を限定することを意図していない。同範囲は、特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0192】
本明細書のテキスト全体を通して引用された全ての刊行物および特許(全ての特許、特許出願、科学刊行物、製造仕様書、説明書等を含む)は、前述又は後述に関わらず、その全体が参照により組み入れられる。本明細書中のいかなるものも、本発明が、先行発明によるそのような開示よりも先行する資格がないと認めるものとして解釈されるべきではない。参照により組み入れられる情報が、本明細書と矛盾する、又は、一致しない程度において、本明細書が、任意のこのような情報に対して優先されるであろう。
【0193】
本発明及びその利点のより良好な理解が、下記実施例から得られるであろう。同実施例は、例証の目的を提供するのみである。本実施例は、本発明の範囲を何ら限定することを意図していない。
【実施例】
【0194】
実施例1:材料及び方法
IGFR様レセプターノックアウトマウスの発生
全てのマウスを、ドイツ動物愛護法ならびに、Society of Laboratory Animals(GV-SOLAS)及びFederation of Laboratory Animal Science Associations(FELASA)の認められたガイドラインに従って、HMGUの中央施設に収容した。胚段階でのマウスの殺処分は、規制認可を受ける必要がなかった。
【0195】
C57BL/6N親細胞系統JM8.N4から得られたターゲットES細胞クローンを、EUCOMM細胞寄託(EuMMCR)から取得し(Helmholtz Zentrum Muenchen GmbH, Alleles produced for the EUCOMM and EUCOMMTools projects by the Helmholtz Zentrum Muenchen GmbH (Hmgu). MGI Direct Data Submission. 2010-2015)、キメラ発生のために、CD1胚盤胞に注入した。得られたキメラを、CD1又はC57BL/6Jマウスと交配させた。生殖系伝達を確認するために、子孫を、PCRによりスクリーニングした。ターゲット変異を有するヘテロ接合性マウスを交雑させて、CD1又はC57BL/6Jのいずれかのバックグラウンドにおいて、ホモ接合性変異マウスを発生させた。
【0196】
遺伝子型を、対照及びノックアウトマウスの尾から抽出されたゲノムDNAを使用して、PCRにより確認した。PCRに使用されたプライマーは、下記のとおりとした。フォワードプライマー:5’TGGGTAGCCTTTCTGTATGG-3’(配列番号:8)及びリバースプライマー:5’ GACATAGGGCAGATTTGTGG-3’(配列番号:9)。
【0197】
増殖アッセイ法
変異胚における細胞増殖を評価するために、妊娠しているメスの皮下に、0.1mg EdU/グラム 体重を注入した。2時間後、動物を殺処分し、E14.5、E16.5、及びE18.5の胚からの膵臓を切除し、PBS pH7.4中の4% PFA中において、4℃で一晩固定した。翌日、臓器を、7.5%、15%、30% スクロース勾配に供して、Tissue Freezing Medium(Leica, Germany)中に包埋し、-80℃で保存した。20マイクロメートルの凍結切片を、Click-iT(登録商標)EdU画像化キット(Life Technology)を使用し、製造メーカーの説明に従って染色した。同キットには、インスリンに対する抗体(1:250 モルモット、Thermo Schientific;PA1-26938)が含まれる。画像を、20×対物レンズを備えるLeica SP5共焦点顕微鏡を使用して取得した。データ分析を、IMARISソフトウェア(Bitplane, Switzerland)を使用して行った。
【0198】
RT-qPCR
遺伝子発現分析について、リアルタイム定量PCRにより、mRNAを、ノックアウト及び対照胚の膵臓から、miRNeasy miniキット(Qiagen, Germany)を使用して単離した。cDNAを、GoScriptTM Reverse Transcription System(Promega)を使用して合成し、その後に、TaqMan(登録商標) Low Density Arraysを使用するqPCRに使用し、ViiA 7 system(Applied Biosystems)においてランした。使用されたプローブを、表1に列記する。
【0199】
【0200】
エストロゲン誘引遺伝子121タンパク質(EIG)に対するモノクローナル抗体の生成
【0201】
ヒトEIGタンパク質からのペプチドを合成し、OVA(Peps4LS, Heidelberg, Germany)に結合させた。Lou/cラット又はC57BL/6マウスを、皮下及び腹腔内において、50μg ペプチド-OVA、5nmol CPGオリゴヌクレオチド(Tib Molbiol, Berlin)、PBS 500μl(マウス 100μl)、及び不完全フロイントアジュバント 500μl(マウス 100μl)の混合物により免疫化した。アジュバントを含まないブーストを、初回の注入後6週間で与えた。融合を、標準的な手法を使用して行った。上清を、アビジンコートELISAプレート上でのビオチン化EIGペプチド及び無関係のビオチン化ペプチドによるディファレンシャルELISAにおいて試験した。EIGペプチドと特異的に反応したMAbを、ウェスタンブロットにおいてさらに分析した。
【0202】
ウサギポリクローナル抗体を、Pineda Antikorper Service, Berlin, Germanyから購入した。
【0203】
細胞培養
Min6は、グルコース刺激に基づいて、インスリンを分泌するその能力について十分特徴付けられている膵臓β細胞系統である。この細胞系統は、Susumu Seino’s Labからのものであった。
【0204】
Min6細胞を、10% ウシ胎児血清(FBS)、1% ペニシリン/ストレプトマイシン、及び2-メルカプトエタノールを加えた、Gibcoの高濃度グルコースダルベッコ改変イーグル培地(41966-052)において維持した。
【0205】
HEK293細胞を、global biosource center ATCCから購入した。
【0206】
IGFR様レセプターノックダウン
Min6細胞を、細胞密度5×104個/cm2で播種し、高濃度グルコースDMEM培地中で培養した。2日目及び3日目でのIGFR様レセプターsiRNAの1回のトランスフェクション後、細胞を、4日目に細胞密度50~60%で、RIPAバッファー中において、氷上で溶解させた。リポフェクタミン(リポフェクタミン2000、Life Technologies, #11668019)系トランスフェクションを、Life Technologiesのプロトコールに従って行った。200pmol 下記siRNA(Dharmacon GE Healthcare)を使用した。On-Target plus mouse 5330417C22Rik (229722) siRNA-SMARTpool L-048745-01-0020及び対照siRNA On-target plus non-targeting siRNA #1 D-001810-01-20。
【0207】
IGFR様レセプターノックアウト
コアプロモーター及び転写開始側をターゲットする、Min6細胞でのCRISPR/Cas9媒介性IGFR-Iノックアウト戦略(
図23)
【0208】
IGFR様レセプターノックインVenus融合
翻訳停止配列を除去し、VenusをインフレームにIGFR-Iオープンリーディングフレームに融合することによる、Venus蛍光レポーターのCRISPR/Cas9媒介性ノックイン融合(
図23)。Venus蛍光レポーターにインフレームに融合されたCas9を、IGFR-Iの転写開始側に隣接するガイダンスRNA(gRNA)と共に、Min6細胞に共トランスフェクションした。2日後、蛍光細胞をフローソートした。限界希釈物を、10cmデッシュに撒く。10~14日後、単一クローンを、96ウェルプレートにピックし、IGFR-I発現(染色及びWB)及びゲノムPCRによる内部欠失を分析した。
【0209】
Min6の飢餓アッセイ法
Min6細胞を、細胞密度5×104個/cm2で播種し、高濃度グルコースDMEM培地中で培養した。IGFR様レセプターノックダウンを行った後、Min6細胞を、1×PBSで6回洗浄した。0.2% BSAを含有するHBSSバッファーを、15分、30分、60分、及び120分間加えて、細胞を飢餓状態にした。その後に、細胞を、RIPAバッファー中において、氷上で溶解させた。
【0210】
ウェスタンブロット(半乾燥免疫ブロット)
細胞及び組織を、プロテアーゼ阻害剤(1:100、Sigma, P8340)及びホスファターゼ阻害剤(1:100、Sigma Aldrich, #2 P0044及び#3 P5726)のカクテルを含有するRIPAバッファー(50mM Tris pH7.5、150mM NaCl、1mM EDTA、1% IGEPAL、0.1% SDS、0.1% デオキシコール酸Na)中において溶解させた。細胞又は組織のライゼートを、13000rpmでの10~30分間の遠心分離により洗浄した。タンパク質(10~20μg)を、検出されるタンパク質のサイズに基づいて、6.5~15% SDS-PAGEにおいて分離し、PVDFメンブランにトランスファーした。一次抗体を、5% ミルク中において、メンブランに加え、4℃で一晩インキュベーションした。タンパク質のバンドを、Hyperfilms(GE healthcare, 28906837)又はBlaufilme CEA-RP(Ernst Christiansen GmbH, EC84A)上において、化学発光検出(ECL, Millipore, WBKLS0500)により可視化した。
【0211】
下記抗体を、対応する希釈で使用した。
【0212】
IGFR様レセプター 配列番号:2(1:5000、ウサギ、Pineda, Berlin, Germany)、IGFR様レセプター 配列番号:2(1:100、ラット及びマウス)、IGFR様レセプター 配列番号:4及び6(1:10、ラット及びマウス)、Akt(1:5000、Cell Signaling, 4691)、P-Akt(1:5000、Cell Signaling, 4060)、Erk(1:5000、Cell Signaling, 4695)、P-Erk(1:5000、Cell Signaling, 4370)、m-Tor(1:1000、Cell Signaling, 2972)、P-mTor(1:1000、Cell Signaling, 5536)、Ampk(1:1000、Cell Signaling, 2532)、P-Ampk(1:2500、Cell Signaling, 2535)、IRS-2(1:1000、Cell Signaling, 4502)、IRβ(1:1000、Cell Signaling, 3025)、S6rp(1:5000、Cell Signaling, 2217S)、P-S6RP(1:5000、Cell Signaling, 2211S)、P-IR/IGFR(1:1000、Millipore, 07-841)、α-チューブリン(1:5000、Sigma, T7451)、マウスアダプチンベータクローン74(1:5000、BD Bioscience 610382)。オートファジー関連タンパク質の検出のために、Cell SignalingのAutophagy Antibody Samplerキット(#4445、1:1000)を使用した。
【0213】
免疫蛍光及び画像化
免疫細胞化学について、Min6細胞を、Ibidi(Munich, Germany)8ウェルチャンバーディッシュ(処理済み)に、細胞密度5×104個/ウェルで撒いた。播種後3日で、細胞を、4% PFAにより、10分間直接固定し、続けて、透過溶液(1×PBS中の0.1M グリシン、0.2% Triton-X100)中において10分間インキュベーションした。1時間のブロッキング後(1×PBS中の10% ロバ血清、1% BSA及び5% FCS、0.5% Tween-20)、細胞を、一次抗体:IGFR様レセプター 配列番号:2(ラット及びマウス 1:10)、GM130(1:300、BD, 610822)、IGF2R(1:100、ThermoScientific, PA3-850)を含有するブロッキング溶液中において、4℃で一晩インキュベーションした。下記二次抗体を、ブロッキング溶液中において、室温で2時間加えた。ロバ抗ウサギIgG-555(1:800、Invitrogen, A31572)、ロバ抗マウスIgG-488(1:800、Invitrogen, A21202)、及びロバ抗ラットIgG647(1:400、Dianova, 712-605-150)。DAPI染色(50ng/ml)後、サンプルを、elvanolによりマウントした。画像を、63×対物レンズを備えるLeica laser-scanning SP5共焦点顕微鏡において取得した。
【0214】
マウス組織における免疫細胞化学について、膵臓を切除し、PBS中の4% PFA中において、4℃で2時間固定し、スクロース溶液の勾配系列(PBS中の7.5、15、及び30% スクロース)において、各溶液中で少なくとも2時間凍結保護した。最後に、臓器を、Tissue Freezing Medium(Leica 14020108926)中に包埋し、-80℃で保存した。20μmの切片を、免疫染色に使用した。簡潔に、この切片を、PBS中において洗浄し、PBS中の0.1% Triton X-100、0.1M グリシン中において、15分間透過させ、ついで、ブロッキング溶液(PBS中の10% FCS、3% ロバ血清、0.1% BSA、及び0.1% Tween-20)中において、室温で1時間ブロッキングした。一次抗体を、ブロッキング溶液中において希釈し、4℃で一晩インキュベーションした。翌日、切片を、PBST(PBS中の0.1% Tween-20)中において、各5分で3回洗浄し、ブロッキング溶液中に希釈した二次抗体と共に、室温において3~5時間インキュベーションし、DAPI(4’,6-ジアミジン-2-フェニルリンドール)により染色し、包埋培地(ProLong Gold antifade embedding medium, Life Technologies)中においてマウントした。
【0215】
ヒト膵島の全マウント染色について、膵島を、PBS中の4% PFA中において、RTで15分間固定し、ブロッキング溶液中に希釈した一次抗体と共に、4℃で一晩直接インキュベーションし、続けて、PBST中において、3回洗浄し、ついで、上記のように、二次抗体と共に、RTで3~5時間インキュベーションした。
【0216】
ヒト組織切片の染色について、ヒトドナーからのスナップ凍結膵臓片を、Tissue Freezing medium(Leica 14020108926)中に包埋し、-80℃で保存した。10μm厚の切片を、PBS中の4% PFA中において、RTで20分間固定し、PBSで2回洗浄し、氷上で5分間透過させた。抗体染色手法を、上記されたように行った。
【0217】
使用された一次抗体は、抗IGFR様レセプター ウサギ、配列番号:2、1:100、抗IGFR様レセプター、配列番号:2及び配列番号:4 ラット、1:10、IGFR様レセプター、配列番号:2及び配列番号:6 マウス、1:10、抗インスリン(ウサギ、1:250、Cell Signaling; 3014)、抗インスリン(モルモット、1:250;Thermo Scientific; PA1-26938)、抗E-カドヘリン(ラット、1:500;DECMA Kremmer)、抗マンノース6Pレセプター(ウサギ、1:200;Thermo Scientific; PA3-850)、及び抗ウロコルチン3(ウサギ、1:300;Phoenix Pharmaceuticals; H-019-29)とした。使用された二次抗体を、抗ウサギAlexa-555(1:800;Invitrogen; A31572)、抗ウサギAlexa-488(1:800、Invitrogen; A21206)、抗ラットAlexa-488(1:800;life technologies, A-21208)、抗ラットAlexa-647(1:800;Dianova, 712-605-150)、及び抗モルモットAlexa647(1:800; Dianova; 706-495-148)、抗マウスAlexa-555(1:800;Invitrogen; A31570)とした。画像を、Leica DMI 6000顕微鏡において取得した。
【0218】
免疫沈降アッセイ法
免疫沈降アッセイ法について、Min6細胞を、0.2% BSAを含み、脂肪酸を含まないHBSS中において、15、30、60、及び120分間飢餓状態にし、プロテアーゼ阻害剤(1:100、Sigma, P8340)のカクテルを含有する免疫沈降バッファー(2% CHAPS、50mM HEPES pH7.5、200mM NaCl、2mM EDTA)中において、氷上で20分間溶解させた。ライゼートを、14000rpm及び4℃での30分間の遠心分離により洗浄した。約500μg 全細胞ライゼートを、ラットにおいて生成され、1:10希釈されたIGFR様レセプター 配列番号;2抗体と共に、4℃で1時間インキュベーションし、続けて、protein G Sepharose 4 Fast Flow(GE Healthcare)と共に、4℃で16時間インキュベーションした。沈殿物を、免疫沈降バッファーにより、5回洗浄し、100mM DTT及び5% 2-メルカプトエタノールを含有する2×SDSサンプルバファー(100mM Tris-HCl、4% SDS、20% グリセロール、0.2% ブロモフェノールブルー)中において、95℃で5分間変性させ、ウェスタンブロット分析に供した。
【0219】
表面ビオチン化アッセイ法
Min6細胞を、2mM EZ-Link(登録商標) Sulfo-NHS-LC-Biotin(Thermo Scientific)と共に、PBS pH8.0中において、室温で10分間インキュベーションした。その後、ビオチン化反応を、PBS中の100mM グリシンにより停止させた。ついで、細胞を、氷冷PBS中において洗浄し、プロテアーゼ阻害剤のカクテルを含有するRIPAバッファー中において溶解させた。14000rpm及び4℃での30分間の遠心分離による洗浄後、上清を、NeutrAvidin beads(Thermo Scientiic/Pierce)と共に、4℃で一晩インキュベーションした。翌日、RIPAバッファー中において、5回洗浄した後、ビオチンラベルタンパク質を、ビーズから、100mM DTT及び5% 2-メルカプトエタノールを含有する2×SDSサンプルバファー中においてボイルすることにより溶出し、ウェスタンブロット分析に供した。
【0220】
実施例2:IGF-1、IGF-2、及びインスリンリガンドに隣接するIGFR様レセプターの膵臓における発現
簡潔に、E14.5マウス胚を取得し、GenePaint(商標)(Tecan)を使用するin situハイブリダイゼーション(ISH)に供した。
【0221】
E14.5マウス胚のGene paint in situハイブリダイゼーションにより、膵臓におけるIGFR様レセプター mRNAの特異的な発現が示される(
図2B)。IGF1及びIGF2 mRNAは、膵臓上皮に隣接する組織において発現される(
図2A、C)。一方、インスリン mRNAは、膵臓の内分泌区画に存在する(
図2D)。
【0222】
実施例3:IGFR様レセプターノックアウトマウス
IGFR様レセプターノックアウトマウスを、実施例1で記載されたように発生させた。
【0223】
IGFR様レセプターKOマウスは、誕生時に正常な外観を示すが、その胃に乳が無かったことにより示されるように授乳しない(
図3B、スター)。同マウスは、活発でなく、呼吸困難を表わす。種々の段階におけるメンデル比は、誕生まで3つの遺伝子型の正常な分布を示すが、生存しているノックアウトマウスの確率は、誕生後から離乳齢までに有意に低下する。おそらく、補償メカニズム及び/又は、不完全なノックアウトをもたらす挿入カセット付近でのスプライシングにより、離乳齢において、ごくわずかな生存が認められる(
図3C)。ヒストグラムは、P0での野生型及びヘテロ接合性同腹子対照と比較した、ノックアウトマウスの正常な体重を示す(
図3D)。
【0224】
実施例4:IGFR様レセプターKOマウスの膵臓における、成長、増殖、及び内分泌分化
簡潔に、IGFR様レセプターノックアウトマウスを発生させ、膵臓を切除し、インスリンに対する抗体を使用する免疫組織化学に供した。細胞増殖を、EdUを使用して測定した。使用された材料及び方法の詳細な説明は、実施例1で提供される。
【0225】
膵臓切片の共焦点画像から、インスリン抗体を使用した、免疫蛍光ラベルβ細胞により示されるように、E16.5における正常な内分泌分化が示される(緑色)(同様の結果を、E14.5及びE18.5において得た。図示せず)。膵臓上皮の正常な増殖が、EdUの包含により示される(赤色)。E14.5、E16.5、及びE18.5における総細胞数(DAPIにより染色)に対するEdU陽性細胞の定量から、ノックアウトと野生型の膵臓との間での増殖における有意差は示されない(1つの膵臓/段階の異なる領域から少なくとも3つの切片をカウントした。エラーバーは、平均の標準誤差を表わす)(
図4)。
【0226】
実施例5:誕生前のIGFR様レセプターKOマウスにおける膵臓遺伝子発現
簡潔に、IGFR様レセプターノックアウトマウスを、先に記載されたように発生させた。誕生前後のKOマウス及び野生型対照の膵臓を切除し、mRNAを単離し、リアルタイム定量PCRを行った。使用された材料及び方法の詳細な説明は、実施例1で提供される。
【0227】
リアルタイムqPCRから、内分泌β細胞分化、成熟、増殖、及びノックアウト膵臓における機能に重要な選択遺伝子の相対的なmRNA発現において、E18.5における野生型対照と比較して、中程度の変化が示される。この段階では、胚は、未だに母性栄養に頼っている(
図5)。アクチンを、正規化のためのハウスキーピング遺伝子として使用した。内分泌β細胞分化(Foxa2、Pdx1、Pax6、Neurod1、Nkx2-2、Nkx6-1)、成熟(MafA、MafB、Ucn3)、増殖(Ccnd1、Ccnd2、Cdk4、Cdkn1a、Cdkn1b)、及び機能(Slc2a2、Slc30a8、Gjd3、Kcnj11、Smarca1、Abcc8)に重要な選択遺伝子の相対的なmRNA発現は、リアルタイムqPCRにより示されたように、ノックアウト膵臓において、誕生直後の野生型対照と比較して有意に変化している(
図6)。
【0228】
実施例7:IGFR様レセプターにより、膵臓及びMin6における、Akt及びAMPKシグナル伝達が媒介された
簡潔に、IGFR様レセプターノックアウトマウスを発生させ、膵臓を切除した。Min6細胞を、先に記載されたように、培養し、収集した。Min6細胞におけるIGFR様レセプターノックダウンを、IGFR様レセプター mRNAをターゲットするsiRNA又は対照としてのスクランブルsiRNAによるトランスフェクションにより達成した。細胞及び組織を、Akt及びAMPKに対するホスホ特異的抗体を使用するウェスタンブロットに供した。使用された材料及び方法の詳細な説明は、実施例1で提供される。
【0229】
膵臓組織全体のライゼートのウェスタンブロットから、ホスホ特異的抗体を使用して、Akt及びAMPKのリン酸化が示される(
図7A)。かなりの数の変異胚から、Akt(mt2、3、5、6)及びAMPKリン酸化(mt1、2、3)における増大が示される(
図7A)。同様に、(
図7B)において、Min6細胞におけるIGFR様レセプターのノックダウンにより、Aktリン酸化の増大がもたらされる。
【0230】
実施例8:Min6におけるインスリン/IGFシグナル伝達についての、IGFR様レセプターのノックダウンの影響
簡潔に、Min6細胞を培養し、IGFR様レセプターmRNAをターゲットするsiRNAによりトランスフェクションし、IR/IGF1Rに対するホスホ特異的抗体、ならびに、下流シグナル伝達分子であるAKT、mTOR、ERK、及びS6RPに対するホスホ特異的抗体を使用したウェスタンブロットにより研究した。使用された材料及び方法の詳細な説明が、実施例1で提供される。
【0231】
Min6細胞におけるIGFR様レセプターのノックダウンにより、正常な増殖条件下でのIR/IGF1Rのリン酸化の増大がもたらされ、飢餓条件とは独立していると考えられる。IR及びIGF1RならびにIRS-2(IRシグナル伝達の下流のアダプター分子)の総レベルは変わらない。一方、IGFR様レセプターは、ノックダウンサンプルにおいて強力に低下する。このことから、siRNAノックダウンの有効性が確認される(
図8A)。下流シグナル伝達分子、例えば、AKT及びmTORのウェスタンブロット分析。同AKT及びmTORは、IR活性化の結果として共通してリン酸化される重要な分子である。Min6細胞におけるIGFR様レセプターノックダウンにより、Akt及びmTORのリン酸化の増大がもたらされるが、ERK及びS6RPのリン酸化の増大はもたらされないことが示される。ホスホS6RPの時間依存的減少により示されたように、飢餓条件は、その同じタイミングでの対照と比較して、IGFR様レセプターノックダウンサンプルにおいて、Akt、mTOR、及びERKリン酸化に影響を有さないと考えられる(
図8B)。
【0232】
実施例9:膵臓の内分泌、管、及び外分泌細胞におけるIGFR様レセプターの局在
簡潔に、E18.5膵臓を切除し、IGFR様レセプター、インスリン、及びE-カドヘリンに対する抗体を使用する免疫組織化学に供した。使用された材料及び方法の詳細な説明が、実施例1で提供される。
【0233】
IGFR様レセプター(緑色)、インスリン抗体(赤色)、及びEカドヘリン(シアン)に対する抗体により染色されたE18.5膵臓切片の共焦点画像から、外分泌及び内分泌区画の両方におけるIGFR様レセプターの免疫局在性が示される。同区画では、IGFR様レセプターは、インスリンと部分的に共存している(
図9)。核を、DAPIにより染色した。
【0234】
実施例10:IGFR様レセプターの細胞内局在
簡潔に、Min6細胞を、先に記載されたように培養し、IGFR様レセプター及びGM130に対する抗体を使用する免疫細胞化学に供した。使用された材料及び方法の詳細な説明は、実施例1で提供される。
【0235】
実施例11:IGFR様レセプターの細胞内局在
簡潔に、免疫蛍光染色及び画像化を、実施例1で記載されたように行った。
【0236】
IGFR様レセプター及びゴルジマーカーであるGM130に対する免疫蛍光ラベル抗体により染色されたMin6細胞の免疫蛍光画像から、IGF2Rと同様に、ゴルジ複合体におけるIGFR様レセプターの部分的な局在が示される(
図10、
図11)。
【0237】
正常な増殖条件と比較して、飢餓の2時間後に、cis-ゴルジ領域に濃縮されたIGFR様レセプターの再分布を観察することができる(
図11)。
【0238】
実施例11:飢餓条件下でのIGFR様レセプターとAP-2との相互作用
簡潔に、Min6細胞を、先に記載されたように培養し、IGFR様レセプター及びアダプチンβ(AP2複合体のサブユニット)に対する抗体を使用する免疫沈降及びウェスタンブロットに供した。使用された材料及び方法の詳細な説明は、実施例1で提供される。
【0239】
ウェスタンブロット分析から、IGFR様レセプター及びアダプチンβに対する抗体を使用する免疫沈降により証明されたように、飢餓によるMin6細胞におけるアダプチンβサブユニット(AP2複合体の一部)とIGFR様レセプターとの共免疫沈降が示される。正常な飢餓条件下では、アダプチンβは、実質的に共沈降しなかった(
図13)。
【0240】
実施例12:IGF3Rは、栄養欠乏により細胞内に輸送されるが、InsRは輸送されない
簡潔に、Min6細胞を、先に記載されたように培養し、IGFR様レセプター及びアダプチンβ(AP2複合体のサブユニット)に対する抗体を使用する表面ビオチン化及びウェスタンブロットに供した。使用された材料及び方法の詳細な説明は、実施例1で提供される。
【0241】
表面ビオチン化、続けて、ニュートラビジンプルダウン及びウェスタンブロットから、飢餓条件下でのMin6細胞における、IGFR様レセプターの表面発現の減少の時間依存的減少が証明されたが、IRの減少は証明されない。
【0242】
実施例14:オートファジー関連タンパク質の発現におけるIGFR様レセプターノックダウンの効果
簡潔に、Min6細胞を、先に記載されたように培養し、トランスフェクションし、ATG16L1、ATG7、ATG3、べクリン-1、LC3A/B、及びATG5(すなわち、オートファジー関連タンパク質)に対する抗体を使用するウェスタンブロットに供した。使用された材料及び方法の詳細な説明は、実施例1で提供される。
【0243】
IGFR様レセプターノックダウンは、基本的な条件において、オートファジー関連タンパク質のタンパク質発現を変化させない可能性が高い。オートファジー関連分子のウェスタンブロット分析により、正常な増殖条件下において、Min6細胞におけるIGFR様レセプターノックダウンによる発現において、見掛けの変化は示されない(
図15)。
【0244】
実施例15:マウス糖尿病膵島及び外分泌組織におけるIGFR様レセプターの発現
簡潔に、wt及び糖尿病マウスの膵臓を切除し、IGFR様レセプター、インスリン、及びE-カドヘリンに対する抗体を使用する免疫細胞化学に供した。使用された材料及び方法の詳細な説明は、実施例1で提供される。
【0245】
IGFR様レセプター(赤色)、インスリン(シアン)、及びE-カドヘリン(緑色)(A)、ならびに、IGFR様レセプター(赤色)、グルカゴン(シアン)、及びウロコルチン3(緑色)(B)に対する抗体により染色された野生型(<120mg/dL グルコース)及び糖尿病(>500mg/dL グルコース)成体膵臓のLSM画像から、内分泌及び外分泌区画の両方において、糖尿病膵臓におけるIGFR様レセプター抗体の免疫反応性の増大が示される。糖尿病状態は、糖尿病膵臓において染色されているインスリン及びウロコルチン3の減少により証明された(
図16)。
【0246】
実施例16:IGFR様レセプターの細胞外ドメインに対する抗体を使用する、膵島細胞におけるIGFR様レセプターの検出
簡潔に、HEK293細胞を培養し、ヒト膵島を、先に記載されたように得た。wt、ヘテロ接合性、及び変異(IGFR様レセプターノックアウト)マウスからの膵臓を切除した。細胞及び組織を、配列番号:2、4、及び6を認識する抗IGFR様レセプター抗体を使用するウェスタンブロットに供した。
【0247】
ウェスタンブロット実験から、膵島細胞ライゼートにおける約130kDaのタンパク質バンドの特異的な認識が示される。同認識は、配列番号:4及び6に対する抗体による、HEK293細胞ライゼートには存在しない。比較により、同じバンドは、配列番号:2に対する抗体により、野生型及びヘテロ接合性の総膵臓ライゼートにおいて、特異的に認識されるが、変異胚及び膵島細胞では認識されず、HEK細胞では認識されない(
図17)。
【0248】
実施例17:ヒトランゲルハンス膵島におけるIGFR様レセプターの分布
簡潔に、ヒト膵島を取得し、IGFR様レセプター、IGF2R、及びインスリンに対する抗体を使用する免疫細胞化学に供した。使用された材料及び方法の詳細な説明は、実施例1で提供される。
【0249】
ヒトランゲルハンス膵島におけるIGFR様レセプターの発現。IGFR様レセプター(赤色)、IGF2R(M6PR)(緑色)、及びインスリン(シアン)に対する抗体により免疫蛍光ラベルされた、ヒトドナーからのランゲルハンス膵島の共焦点画像から、ゴルジ区画における典型的なIGFR様レセプター分布ならびにIGF2R及びインスリンとの部分的な共存が示される(
図18)。
【0250】
実施例18:IGFR様レセプターは、ヒトにおける膵臓β細胞の機能不全を示す
簡潔に、ヒト膵島を、健康なドナー及び糖尿病ドナーから取得し、IGFR様レセプター及びインスリンに対する抗体を使用する免疫細胞化学に供した。使用された材料及び方法の詳細な説明は、実施例1で提供される。
【0251】
IGFR様レセプター(赤色)及びインスリン(緑色)に対する抗体により染色されたヒト膵臓切片のLSM画像(核をDAPIにより染色(青色))から、非糖尿病(4.6% HbA1c値)患者と比較して、糖尿病(6.9% HbA1c値)患者における、インスリンの減少及びIGFR様レセプター発現の増大が示される(HbA1cを、血漿中における糖化ヘモグロビンHbA1cのパーセントとして定義される、糖尿病状態の指標として使用した。正常範囲:5.9%未満)(
図22)。
【0252】
実施例19:野生型及びノックアウトMin6細胞におけるIGFR様レセプターの細胞内局在。IGFR様レセプター及びインスリンに対する抗体により染色されたMin6細胞の免疫蛍光画像
簡潔に、野生型Min6クローン及びノックアウトMin6クローンを取得し、ゲノムPCR及びウェスタンブロットにより試験した。IGFR-Iタンパク質が、ノックアウトMin6クローンにおいて完全に存在しないことが示される(
図25A及びB)。ついで、WT及びKOを、IGFR様レセプター(赤色)及びインスリン(緑色)に対する抗体を使用する免疫細胞化学に供した。核を、DAPIにより染色した(青色)(
図24)。免疫細胞化学から、ゲノムPCR及びウェスタンブロットの結果が確認される。使用された材料及び方法の詳細な説明は、実施例1で提供される。
【0253】
実施例20:Min6(C22RIK)でのインスリン/IGFシグナル伝達におけるIGFR様レセプターノックアウトの影響
簡潔に、Min6ノックアウト細胞を、実施例1で記載されたCRISPR/Cas9媒介性ノックアウト戦略により発生させ、IR/IGF1Rに対するホスホ特異的抗体ならびに、下流シグナル伝達分子であるAmpk、AKT、及びmTORに対するホスホ特異的抗体を使用するウェスタンブロット分析により研究した。
【0254】
Min6細胞におけるIGFR様レセプターノックアウトにより、IRのリン酸化増大、及びその結果として、AMPKの増大がもたらされるが、Akt又はmTorリン酸化の増大はもたらされない(
図26)。Min6対照及びノックアウトクローンを、増殖条件(10% FCS及び高濃度グルコース)下において培養した。
【0255】
実施例21:IGFR様Venus融合ノックインMin6細胞系統
簡潔に、IGFR-I Venus融合ノックインMin6細胞系統を、実施例1で記載されたように発生させ、IGFR様レセプター及びVenus蛍光レポーターに対する抗体を使用する免疫組織化学に供した。
【0256】
IGFR-I Venus融合物(抗GFPによりVenusを検出、緑色)は、内在性IGFR-I(抗IGFR-I、赤色)と、ゴルジ及びtrans-ゴルジ領域において共存している。ホモ二量体化及び、膜貫通ドメイン(TM)又は成長因子レセプターのシステインリッチドメイン(CRD)(IPR009030)を介したホモ及びヘテロ二量体化を阻害するか、又は、trans-ゴルジ、ゴルジ、リソソーム、及び細胞膜区画における細胞内局在を変化させる小分子化合物及び生物製剤を、このノックインMin6細胞系統を使用した高コンテンツスクリーニングアプローチを使用して特定することができる(
図27)。
【0257】
実施例22:誘導多能性幹細胞(iPSC)から分化させた内分泌前駆細胞におけるIGFR様レセプターの局在。
簡潔に、PDX1+/NKX6.1+内分泌前駆細胞を取得し、PDX1、NKX6.1、及びIGFR様レセプターに対する抗体を使用する免疫組織化学に供した。
【0258】
PDX1(水色)、NKX6.1(赤色)、及びIGFR様レセプター(緑色)に対する抗体により染色された内分泌前駆細胞の共焦点画像から、IGFR様レセプターと、PDX1及びNKX6.1との免疫局在が示される(
図28)。核を、DAPIにより染色した(青色)。
【0259】
実施例23:抗体を、マウスMin6インスリノーマ細胞及びMCF7ヒト乳ガン細胞系統において、IGFR-IエクトドメインのペプチドB及びDに対して生成することができる
ラットモノクローナル抗体EIG-B 18B2及びEIG-B 10D9を生成し、配列番号:4のエピトープを意味するIGFR-IエクトドメインのペプチドBに対するウェスタンブロットに使用した。マウスモノクローナル抗体EIG-D 26D7を、配列番号:6のエピトープを意味するIGFR-IエクトドメインのペプチドDに対して生成した。
【0260】
それらの抗体(EIG-B及びEIG-D)により、Min6(弱)及びMCF7(強)細胞ライゼートにおける、約130kDaのタンパク質バンドの特異的認識が示される。
【0261】
実施例24:IGFR様レセプターのSNPは、ゲノムワイド関連メタ研究において、冠動脈疾患、LDLコレステロール、及び2型糖尿病と高度に関連している
第1番染色体上のIGFR-IをコードするヒトKIAA1324遺伝子及びIGFR-I SNPと、特定の疾患、例えば、冠動脈疾患、LDLコレステロール、及び2型糖尿病との関連(
図31)。それらの研究は、50万人の被験者によるゲノムワイド関連メタ研究を意味する。
【配列表】