(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20221114BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20221114BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
H01L29/78 652H
H01L29/06 301D
H01L29/06 301V
H01L29/78 652F
H01L29/78 652K
H01L29/78 652M
H01L29/78 652Q
H01L29/78 653A
H01L29/78 658A
(21)【出願番号】P 2019020340
(22)【出願日】2019-02-07
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼田 悟
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-093430(JP,A)
【文献】特開2011-216847(JP,A)
【文献】特開2010-016309(JP,A)
【文献】特開2008-016518(JP,A)
【文献】特開2006-165441(JP,A)
【文献】特開2017-045911(JP,A)
【文献】特開2006-196518(JP,A)
【文献】特開2007-042954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/06
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成された第1導電型の第1不純物領域と、
前記第1不純物領域の表面から内部に亘って形成され、且つ、平面視において第1方向に延在する複数のトレンチと、
前記複数のトレンチの各々の内部に、ゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、
前記複数のトレンチの各々の間において前記第1不純物領域の内部に形成され、その底部の深さが前記複数のトレンチの底部の深さよりも深く、且つ、前記第1導電型と反対の第2導電型である複数のコラム領域と、
を有し、
前記複数のトレンチは、第1トレンチと、前記第1方向と直交する第2方向において前記第1トレンチを挟むように前記第1トレンチに隣接する第2トレンチおよび第3トレンチとを含み、
前記複数のコラム領域は、前記第1トレンチと前記第2トレンチとの間に形成されている第1コラム領域と、前記第1トレンチと前記第3トレンチとの間に形成されている第2コラム領域および第3コラム領域とを含み、
前記第2コラム領域および前記第3コラム領域は、前記第1方向で互いに隣接するように設けられ、
前記第1トレンチと前記第2トレンチとの間に形成されている前記複数のコラム領域のうち、前記第1コラム領域は、前記第2コラム領域および前記第3コラム領域から最も近くに設けられ、
前記第1コラム領域および前記第2コラム領域の各々の中心を結ぶ線と、前記第1コラム領域および前記第3コラム領域の各々の中心を結ぶ線とが成す角度θ1は、
60度より大きく、90度以下であり、
前記第1コラム領域および前記第2コラム領域の各々の中心を結ぶ線と、前記第2コラム領域および前記第3コラム領域の各々の中心を結ぶ線とが成す角度θ2は、45度以上、60度より小さく、
前記第1コラム領域および前記第3コラム領域の各々の中心を結ぶ線と、前記第2コラム領域および前記第3コラム領域の各々の中心を結ぶ線とが成す角度θ3は、45度以上、60度より小さい、半導体装置。
【請求項2】
請求項
1記載の半導体装置において、
前記第2方向において、前記第1トレンチの内部に形成されている前記ゲート電極の中心と、前記第2トレンチの内部または前記第3トレンチの内部に形成されている前記ゲート電極の中心との間の距離をLAとした場合、前記第1コラム領域の中心から前記第2コラム領域の中心までの距離、および、前記第1コラム領域の中心から前記第3コラム領域の中心までの距離は、(2/√3)×LAより大きく、√2×LA以下であり、前記第2コラム領域の中心から前記第3コラム領域の中心までの距離は、(2/√3)×LAより大きく、2×LA以下である、半導体装置。
【請求項3】
請求項1記載の半導体装置において、
前記複数のトレンチは、前記第2方向に延在し、且つ、前記第1トレンチおよび前記第2トレンチを接続するトレンチ接続部を更に含み、
前記トレンチ接続部の内部には、前記ゲート電極と一体化しているゲート引き出し部が、前記ゲート絶縁膜を介して形成され、
前記第1方向における前記トレンチ接続部の幅は、前記第2方向における前記第1トレンチの幅よりも大きく、
前記ゲート引き出し部上に、ゲート配線に接続するための第1プラグが形成されている、半導体装置。
【請求項4】
請求項
3記載の半導体装置において、
前記複数のコラム領域は、前記第1方向において前記ゲート引き出し部を挟むように前記第1コラム領域と隣接する第4コラム領域を更に有し、
前記第1コラム領域および前記第4コラム領域は、前記トレンチ接続部と平面視において重ならない位置に形成されている、半導体装置。
【請求項5】
請求項1記載の半導体装置において、
前記第1不純物領域の内部に形成され、且つ、その底部の深さが前記複数のトレンチの底部の深さよりも浅い前記第2導電型の第2不純物領域と、
前記第2不純物領域内に形成された前記第1導電型の第3不純物領域と、
前記第3不純物領域を貫通し、且つ、前記第2不純物領域に達するコンタクトホールと、
前記コンタクトホールの内部に形成され、且つ、前記第2不純物領域および前記第3不純物領域に電気的に接続された第2プラグと、
前記第2プラグに電気的に接続されたソース電極と、
を更に有し、
前記複数のコラム領域は、前記第2不純物領域に接している、半導体装置。
【請求項6】
請求項1記載の半導体装置において、
前記複数のコラム領域は、前記第1方向において等間隔になるように設けられている、半導体装置。
【請求項7】
請求項1記載の半導体装置において、
前記第1導電型は、n型であり、
前記第2導電型は、p型である、半導体装置。
【請求項8】
(a)半導体基板を準備する工程、
(b)前記半導体基板上に、エピタキシャル成長法によって、第1導電型の第1不純物領域を形成する工程、
(c)平面視において第1方向に延在するように、前記第1不純物領域の表面から内部に亘って複数のトレンチを形成する工程、
(d)前記複数のトレンチの各々の内壁上に、ゲート絶縁膜を形成する工程、
(e)前記複数のトレンチの各々の内部に、前記ゲート絶縁膜を介してゲート電極を埋め込む工程、
(f)前記(e)工程後、前記複数のトレンチの各々の間における前記第1不純物領域の内部に、イオン注入によって、その底部の深さが前記複数のトレンチの底部の深さよりも深く、且つ、前記第1導電型と反対の第2導電型である複数のコラム領域を形成する工程、
を有し、
前記複数のトレンチは、第1トレンチと、前記第1方向と直交する第2方向において前記第1トレンチを挟むように前記第1トレンチに隣接する第2トレンチおよび第3トレンチとを含み、
前記複数のコラム領域は、前記第1トレンチと前記第2トレンチとの間に形成されている第1コラム領域と、前記第1トレンチと前記第3トレンチとの間に形成されている第2コラム領域および第3コラム領域とを含み、
前記第2コラム領域および前記第3コラム領域は、前記第1方向で互いに隣接するように設けられ、
前記第1トレンチと前記第2トレンチとの間に形成されている前記複数のコラム領域のうち、前記第1コラム領域は、前記第2コラム領域および前記第3コラム領域から最も近くに設けられ、
前記第1コラム領域および前記第2コラム領域の各々の中心を結ぶ線と、前記第1コラム領域および前記第3コラム領域の各々の中心を結ぶ線とが成す角度θ1は、
60度より大きく、90度以下であり、
前記第1コラム領域および前記第2コラム領域の各々の中心を結ぶ線と、前記第2コラム領域および前記第3コラム領域の各々の中心を結ぶ線とが成す角度θ2は、45度以上、60度より小さく、
前記第1コラム領域および前記第3コラム領域の各々の中心を結ぶ線と、前記第2コラム領域および前記第3コラム領域の各々の中心を結ぶ線とが成す角度θ3は、45度以上、60度より小さい、半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項
8記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2方向において、前記第1トレンチの内部に形成されている前記ゲート電極の中心と、前記第2トレンチの内部または前記第3トレンチの内部に形成されている前記ゲート電極の中心との間の距離をLAとした場合、前記第1コラム領域の中心から前記第2コラム領域の中心までの距離、および、前記第1コラム領域の中心から前記第3コラム領域の中心までの距離は、(2/√3)×LAより大きく、√2×LA以下であり、前記第2コラム領域の中心から前記第3コラム領域の中心までの距離は、(2/√3)×LAより大きく、2×LA以下である、半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項
8記載の半導体装置の製造方法において、
前記(c)工程において、前記第2方向に延在し、且つ、前記第1トレンチおよび前記第2トレンチを接続するトレンチ接続部が形成され、
前記(d)工程において、前記トレンチ接続部の内壁にも前記ゲート絶縁膜が形成され、
前記(e)工程において、前記トレンチ接続部の内部に、前記ゲート電極と一体化しているゲート引き出し部が、前記ゲート絶縁膜を介して形成され、
前記第1方向における前記トレンチ接続部の幅は、前記第2方向における前記第1トレンチの幅よりも大きく、
前記(f)工程後、前記ゲート引き出し部上に第1プラグを形成する工程と、前記第1プラグ上にゲート配線を形成する工程とを更に有する、半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項
10記載の半導体装置の製造方法において、
前記複数のコラム領域は、前記第1方向において前記ゲート引き出し部を挟むように前記第1コラム領域と隣接する第4コラム領域を更に有し、
前記第1コラム領域および前記第4コラム領域は、前記トレンチ接続部と平面視において重ならない位置に形成されている、半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項
8記載の半導体装置の製造方法において、
(g)前記(e)工程後、前記第1不純物領域の内部に、その底部の深さが前記複数のトレンチの底部の深さよりも浅い前記第2導電型の第2不純物領域を形成する工程、
(h)前記(g)工程後、前記第2不純物領域内に、前記第1導電型の第3不純物領域を形成する工程、
(i)前記(f)、(g)および(h)工程後、前記複数のコラム領域、前記第2不純物領域および前記第3不純物領域に対して、熱処理を施す工程、
(j)前記(i)工程後、前記第1不純物領域上に、層間絶縁膜を形成する工程、
(k)前記層間絶縁膜および前記第3不純物領域を貫通し、且つ、前記第2不純物領域に達するコンタクトホールを形成する工程、
(l)前記第2不純物領域および前記第3不純物領域に接続するように、前記コンタクトホールの内部に、第2プラグを形成する工程、
(m)前記第2プラグに接続するように、前記第2プラグ上および前記層間絶縁膜上に、ソース電極を形成する工程、
を更に有し、
前記(f)工程において、前記第2不純物領域に接するように、前記複数のコラム領域を形成する、半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項
8記載の半導体装置の製造方法において、
前記(f)工程において、前記第1方向において等間隔になるように、前記複数のコラム領域を形成する、半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項
8記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1導電型は、n型であり、
前記第2導電型は、p型である、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、特に、パワーMOSFETを備えた半導体装置に好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などの半導体素子において、耐圧を向上させるための構造として、スーパージャンクション構造と称されるPN接合の構造がある。例えばn型のMOSFETの場合、n型のドリフト領域内にp型のコラム領域を2次元的に配置することで、p型のコラム領域の周囲を空乏化させ、耐圧を向上させることができる。
【0003】
特許文献1には、スーパージャンクション構造のパワーMOSFETが開示されており、互いに離間するようにドット状に配置された複数のp型のコラム領域を用いる技術が開示されている。
【0004】
一方で、特許文献2および特許文献3には、パワーMOSFETの外周領域において、ゲート電極へのコンタクトホールを形成する技術が開示されている。特許文献2では、トレンチ内に埋め込まれたゲート電極の一部が半導体基板上に引き出され、この引き出し部上にコンタクトホールが形成されている。特許文献3では、トレンチ内に埋め込まれたゲート電極上に、コンタクトホールが直接形成されている。ゲート電極を半導体基板上に引き出さないことで、ゲート電極の引き出し部を形成するためのマスクが不要となり、フォトリソグラフィ工程が不要となる。従って、特許文献3の技術は、特許文献2の技術と比較して、チップの微細化を図れ、製造コストを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-16309号公報
【文献】特開2008-16518号公報
【文献】特開2014-150148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コラム領域をゲート電極の延在方向と平行なストライプ状に配置するのではなく、コラム領域をドット状に配置する場合、コラム領域の占有率が少ないため、オン抵抗が改善される。そして、コラム領域をドット状に配置する場合において、ゲート電極の一方の側面側に形成される複数のコラム領域と、ゲート電極の他方の側面側に形成される複数のコラム領域とを、千鳥状に配置することで、コラム領域から伸びる空乏層の占有率を効率的に増やすことができる。
【0007】
しかしながら、千鳥状に配置された複数のコラム領域の形成位置によっては、空乏化し難い領域が発生する場合がある。これに対して、コラム領域の幅を太くするなどの対策を施すこともできるが、そうすると、コラム領域の占有率が大きくなりすぎて、オン抵抗が上昇する不具合が発生する。従って、複数のコラム領域の形成位置を最適化し、オン抵抗の上昇を抑制することで、半導体装置の性能を向上させることが望まれる。
【0008】
その他の課題および新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0010】
一実施の形態である半導体装置は、半導体基板と、半導体基板上に形成された第1導電型の第1不純物領域と、第1不純物領域の表面から内部に亘って形成され、且つ、平面視において第1方向に延在する複数のトレンチと、複数のトレンチの各々の内部に、ゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極とを有する。また、半導体装置は、複数のトレンチの各々の間において第1不純物領域の内部に形成され、その底部の深さが複数のトレンチの底部の深さよりも深く、且つ、第1導電型と反対の第2導電型である複数のコラム領域を有する。ここで、複数のトレンチは、第1トレンチと、第1方向と直交する第2方向において第1トレンチを挟むように第1トレンチに隣接する第2トレンチおよび第3トレンチとを含み、複数のコラム領域は、第1トレンチと第2トレンチとの間に形成されている第1コラム領域と、第1トレンチと第3トレンチとの間に形成されている第2コラム領域および第3コラム領域とを含む。また、第2コラム領域および第3コラム領域は、第1方向で互いに隣接するように設けられ、第1トレンチと第2トレンチとの間に形成されている複数のコラム領域のうち、第1コラム領域は、第2コラム領域および第3コラム領域から最も近くに設けられている。また、第1コラム領域および第2コラム領域の各々の中心を結ぶ線と、第1コラム領域および第3コラム領域の各々の中心を結ぶ線とが成す角度θ1は、60度以上、90度以下である。
【発明の効果】
【0011】
一実施の形態によれば、半導体装置の性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1の半導体装置である半導体チップを示す平面図である。
【
図2】実施の形態1の半導体装置を示す要部平面図である。
【
図3】実施の形態1の半導体装置を示す断面図である。
【
図4】比較例の半導体装置を示す要部平面図である。
【
図5】本願発明者が実験した結果を示すグラフである。
【
図6】変形例の半導体装置を示す要部平面図である。
【
図7】実施の形態1の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0014】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0015】
また、実施の形態で用いる図面においては、図面を見易くするために、断面図であってもハッチングを省略する場合もあるし、平面図であってもハッチングを付す場合もある。
【0016】
(実施の形態1)
以下に、図面を参照しながら本実施の形態の半導体装置について詳細に説明する。本実施の形態の半導体装置は、高電圧および高電流を制御するパワーMOSFETを備え、耐圧向上のために、n型のドリフト領域NDの内部に複数のp型のコラム領域PCが形成されたスーパージャンクション構造を備えている。
【0017】
<半導体装置の構造>
図1は、本実施の形態の半導体装置である半導体チップCHPの平面図である。
図1は平面図であるが、図面を見易くするため、ゲート配線GEおよびソース電極(ソース配線)SEにハッチングを付している。
【0018】
図1に示すように、半導体チップCHPの大部分はソース電極SEで覆われており、ソース電極SEの下方にパワーMOSFETなどの主要な半導体素子が形成されている。また、ソース電極SEの外周には、ゲート配線GEが形成されている。ソース電極SE上およびゲート配線GE上に、ワイヤボンディングまたは銅クリップ(銅板)などの外部接続用端子が接続されることで、半導体チップCHPを、他のチップまたは配線基板などに電気的に接続させることが可能となる。
【0019】
図2は、半導体チップCHPの要部平面図であり、
図1に破線で示される領域1Aの詳細を示している。なお、
図2は平面図であるが、ゲート電極G1にハッチングを付している。
図3は、
図2に示されるA-A線およびB-B線に沿った断面図を示している。また、
図3のA-A断面では、各コラム領域PCの相対的な位置を示すため、図面の奥行き方向(Y方向)に存在するコラム領域PCが破線で示されている。
【0020】
図2に示されるように、n型のドリフト領域(不純物領域)NDの一部の表面には、n型のソース領域(不純物領域)NSおよびp型のウェル領域(不純物領域)PWが形成されている。ソース領域NSおよびウェル領域PWを含むドリフト領域NDには、Y方向に延在する複数のトレンチTRが形成され、複数のトレンチTRの内部には、それぞれ複数のゲート電極G1が形成されている。
【0021】
複数のトレンチTRの端部は、Y方向と直交するX方向に延在するトレンチ接続部TRaによって接続されており、トレンチ接続部TRaの内部には、ゲート電極G1と一体化しているゲート引き出し部G1aが形成されている。ゲート引き出し部G1aの上方には、コンタクトホールCHgが配置され、コンタクトホールCHgの内部に形成されているプラグPGgによって、ゲート電極G1は、
図1に示されるゲート配線GEに電気的に接続される。
【0022】
また、Y方向におけるゲート引き出し部G1aの幅W2(トレンチ接続部TRaの幅W2)は、X方向におけるゲート電極G1の幅W1(トレンチTRの幅W1)よりも大きい。これは、ゲート引き出し部G1aの上方に配置されるコンタクトホールCHgの合わせずれを考慮して、ゲート引き出し部G1aにおいては、その幅W2を広く設定することが好ましいからである。なお、本実施の形態では、幅W1は0.5μm程度であり、幅W2は0.65μm程度である。
【0023】
本実施の形態では、ゲート引き出し部G1aよりも内側(図面の上側)の領域が、パワーMOSFETなどの半導体素子が形成される素子形成領域であり、ゲート引き出し部G1aよりも外側(図面の下側)の領域が、半導体チップCHPの外周領域(ターミネーション領域)である。
【0024】
このような素子形成領域において、ボディ領域(不純物領域)PBの表面にはソース領域NSが形成されており、ソース領域NSの上方には、Y方向に延在するコンタクトホールCHsが配置され、コンタクトホールCHsの内部に形成されているプラグPGsによって、ソース領域NSおよびボディ領域PBは、
図1に示されるソース電極SEに電気的に接続される。
【0025】
ドリフト領域NDの内部には、複数のコラム領域PCが形成されている。ゲート電極G1が延在する方向(Y方向)において、複数のコラム領域PCは、互いに距離L2の間隔で離間するように、等間隔に設けられている。また、ゲート電極G1を挟むように位置している複数のコラム領域PCは、千鳥状に配置されている。言い換えれば、トレンチTRの第1側面側に配置されている複数のコラム領域PCと、第1側面側と反対側であるトレンチTRの第2側面側に配置されている複数のコラム領域PCとは、X方向において隣り合っておらず、Y方向にずれて位置し、千鳥状に配置されている。
【0026】
また、本実施の形態では、本願発明の特徴の説明を判り易くするため、複数のコラム領域PCのうちの幾つかにPC1~PC4のような符号を付している。トレンチTRの第1側面側に形成されている複数のコラム領域PCのうち、コラム領域PC1は、X方向において、第1側面側と反対側であるトレンチTRの第2側面側に形成されているコラム領域PC2およびコラム領域PC3から最も近くに設けられている。また、コラム領域PC2およびコラム領域PC3は、Y方向で互いに隣接しており、コラム領域PC4は、Y方向においてゲート引き出し部G1aを挟むように、コラム領域PC1と隣接している。
【0027】
そして、Y方向において、コラム領域PC1およびコラム領域PC4の形成位置は、それぞれ、コラム領域PC2およびコラム領域PC3の形成位置と距離L2の半分だけずれている。言い換えれば、Y方向において、コラム領域PC1およびコラム領域PC4の各々の中心は、コラム領域PC2およびコラム領域PC3の各々の中心の間に位置し、コラム領域PC2およびコラム領域PC3の各々の中心から距離L2の半分だけ離れている。また、コラム領域PC1からコラム領域PC2までの距離は距離L1であり、コラム領域PC1からコラム領域PC3までの距離は距離L3である。
【0028】
より具体的には、距離L1は、コラム領域PC1の中心からコラム領域PC2の中心までの距離であり、距離L2は、コラム領域PC2の中心からコラム領域PC3の中心までの距離であり、距離L3は、コラム領域PC1の中心からコラム領域PC3の中心までの距離である。また、ゲート引き出し部G1aを挟んで互いに隣接するコラム領域PC1およびPC4の各々の中心を結ぶ距離も、距離L2となっている。なお、本実施の形態では、距離L1~L3の値は、それぞれ同じである。
【0029】
ここで、X方向において、複数のゲート電極G1の互いのピッチを距離LAとした場合、言い換えれば、X方向において、2つのゲート電極G1の各々の中心を結ぶ距離をLAとした場合、距離L1~L3の値は(2/√3)×LAとなる。なお、本実施の形態では、距離LAは1.2μm程度である。
【0030】
以上の関係から判るように、本実施の形態では、コラム領域PC1~PC3の各々の中心を結ぶ線によって、正三角形が構成されている。すなわち、コラム領域PC1およびコラム領域PC2の各々の中心を結ぶ線と、コラム領域PC1およびコラム領域PC3の各々の中心を結ぶ線とが成す角度θ1は60度である。また、コラム領域PC1およびコラム領域PC2の各々の中心を結ぶ線と、コラム領域PC2およびコラム領域PC3の各々の中心を結ぶ線とが成す角度θ2は60度である。また、コラム領域PC1およびコラム領域PC3の各々の中心を結ぶ線と、コラム領域PC2およびコラム領域PC3の各々の中心を結ぶ線とが成す角度θ3は60度である。
【0031】
このように、コラム領域PC1~PC3の各々の中心を結ぶ線によって正三角形を構成することが、本実施の形態の主な特徴であるが、この特徴については、後で比較例などを用いながら詳細に説明する。
【0032】
なお、本実施の形態では、コラム領域PCを四角形で表しているが、実際にはフォトリソグラフィの解像度などの関係上、コラム領域PCの形状は、円または円に近い多角形となる場合が多い。しかしながら、コラム領域PCがそのような形状であったとしても、上記の各関係(コラム領域PC1およびコラム領域PC2の各々の中心を結ぶ線など)は、同様に成り立つ。
【0033】
次に、
図3を用いて、本実施の形態の半導体装置の断面構造を説明する。
【0034】
半導体基板SUBは、高濃度のn型の不純物が導入されたシリコンからなる。半導体基板SUB上には、半導体基板SUBよりも低濃度の不純物領域であるn型のドリフト領域NDが形成されている。ドリフト領域NDは、例えばエピタキシャル成長法によって形成され、例えばシリコンからなる半導体層である。半導体基板SUBの裏面側には、ドレイン電極(ドレイン配線)DEが形成されている。ドレイン電極DEは、例えばチタン、ニッケルおよび銀を含む金属膜からなる。
【0035】
A-A断面に示される素子形成領域において、ドリフト領域NDにはp型のボディ領域PBが形成され、B-B断面に示される外周領域において、ドリフト領域NDにはp型のウェル領域PWが形成されている。ウェル領域PWは外周領域における耐圧を向上させるために設けられており、ウェル領域PWの不純物濃度はボディ領域PBの不純物濃度よりも低く、ウェル領域PWの深さはボディ領域PBの深さよりも深くなっている。また、ウェル領域PWは、素子形成領域の一部に跨るように形成されていてもよい。また、外周領域の耐圧が十分に確保できるならば、ウェル領域PWの形成を省略し、ウェル領域PWの代わりにボディ領域PBが形成されていてもよい。
【0036】
ドリフト領域NDの表面から内部に亘って、複数のトレンチTRが形成されている。トレンチTRの深さは、ボディ領域PBおよびウェル領域PWの各々の深さよりも深く、例えば2~5μmである。トレンチTRの内部には、ゲート絶縁膜GFを介して、ゲート電極G1が埋め込まれている。
【0037】
B-B断面に示されるように、トレンチTRの一部は、Y方向に延在する複数のトレンチTRを接続するためのトレンチ接続部TRaとなっている。そして、トレンチ接続部TRaの内部には、ゲート絶縁膜GFを介して、ゲート電極G1と一体化しているゲート引き出し部G1aが埋め込まれている。また、ゲート絶縁膜GFは、例えば酸化シリコン膜であり、ゲート電極G1およびゲート引き出し部G1aは、例えばn型の不純物が導入された多結晶シリコン膜である。
【0038】
A-A断面に示されるように、ボディ領域PBの表面側には、n型の不純物領域であるソース領域NSが形成されている。ソース領域NSの不純物濃度は、ドリフト領域NDの不純物濃度よりも高い。ソース領域NS、ボディ領域PBおよびゲート電極G1の各々の表面上には、例えば酸化シリコン膜からなる層間絶縁膜ILが形成されている。層間絶縁膜ILには、コンタクトホールCHsおよびコンタクトホールCHgが形成されている。
【0039】
コンタクトホールCHsは、層間絶縁膜ILおよびソース領域NSを貫通し、且つ、ボディ領域PBの内部に達している。コンタクトホールCHsの内部には、バリアメタル膜および導電性膜を有するプラグPGsが埋め込まれている。上記バリアメタル膜は、例えば、チタン膜および窒化チタン膜の積層膜であり、上記導電性膜は、例えばタングステン膜である。
【0040】
また、コンタクトホールCHsの底部のボディ領域PBには、ボディ領域PBよりも高い不純物濃度を有するp型のコンタクト領域(不純物領域)PRが形成されている。コンタクト領域PRは、ボディ領域PBの一部として設けられ、プラグPGsとボディ領域PBとの接触抵抗を低くするため、および、ラッチアップを防止するために設けられている。このため、製品の仕様によっては、コンタクト領域PRは必須ではなく、ボディ領域PBにコンタクト領域PRが設けられていない場合もある。
【0041】
層間絶縁膜IL上には、プラグPGsに接続されるように、例えばアルミニウム膜からなるソース電極SEが形成されている。従って、ソース領域NS、コンタクト領域PRおよびボディ領域PBは、プラグPGsを介してソース電極SEに電気的に接続されている。
【0042】
B-B断面に示されるように、コンタクトホールCHgは、層間絶縁膜ILを貫通し、且つ、ゲート引き出し部G1aに達している。コンタクトホールCHgの内部には、プラグPGsと同じ構造からなるプラグPGgが埋め込まれている。層間絶縁膜IL上には、プラグPGgに接続されるように、例えばアルミニウム膜からなるゲート配線GEが形成されている。従って、ゲート電極G1は、プラグPGgを介してゲート配線GEに電気的に接続されている。
【0043】
ドリフト領域NDの内部には、p型の不純物領域である複数のコラム領域PC(PC1~PC4)が形成されている。複数のコラム領域PCは、各トレンチTRの間に位置するように、トレンチTRの直下には形成されていない。言い換えれば、複数のコラム領域PCは、トレンチTRと平面視で重ならない位置に形成されている。また、コラム領域PCの底部は、トレンチTR、ボディ領域PBおよびウェル領域PWの各々の底部よりも深い位置に形成され、ボディ領域PBおよびウェル領域PWに接するように形成されている。従って、素子形成領域のコラム領域PCは、ボディ領域PBを介して、ソース電極SEに電気的に接続されている。このため、ソース電極SEからボディ領域PBにソース電位が印加された際に、コラム領域PCにもソース電位が印加される。
【0044】
<比較例について>
以下に、
図4を用いて、比較例の半導体装置を説明する。比較例の半導体装置は、本実施の形態の半導体装置とほぼ同様の構造を有しているため、ここでは、重複する構造の説明を省略し、本実施の形態の半導体装置と異なる点について説明する。
【0045】
図4に示されるように、比較例では、距離L1は、本実施の形態と同様に距離L3と等しいが、距離L2は、本実施の形態と異なり、距離L1および距離L3よりも短い。すなわち、角度θ1が、60度未満であり、ここでは約40度となっている。なお、比較例における角度θ2および角度θ3は、それぞれ約70度である。
【0046】
このため、比較例では、コラム領域PC2とコラム領域PC3との間において、空乏化が十分であったとしても、距離L1および距離L3が距離L2よりも長いため、コラム領域PC1とコラム領域PC2との間、または、コラム領域PC1とコラム領域PC3との間において、空乏化が不十分となる問題がある。この問題を解決するために、コラム領域PC1~PC3の各々のサイズを太くすることが考えられるが、そうすると、コラム領域PCの占有率が増加しすぎて、オン抵抗が上昇してしまうという問題がある。
【0047】
また、比較例では、特許文献3のようにチップの微細化および製造コストの抑制を図るため、トレンチ接続部TRaの内部に埋め込まれたゲート引き出し部G1a上に、コンタクトホールCHgを直接形成している。このため、比較例においても、本実施の形態と同様にコンタクトホールCHgの合わせずれを考慮して、トレンチ接続部TRaの幅W2を、トレンチTRの幅W1よりも大きく設定することが好ましい。
【0048】
しかしながら、比較例の距離L2は、本実施の形態の距離L2よりも短くなっているため、トレンチ接続部TRaの幅W2が広い場合、トレンチ接続部TRaとコラム領域PCとが干渉する恐れがある。すなわち、トレンチ接続部TRaの底部に接するようにコラム領域PCが形成されることで、パワーMOSFETの耐圧が劣化するという問題が発生する。また、トレンチ接続部TRaの幅W2を狭くすると、コンタクトホールCHgの形成時にマージンが確保できない。
【0049】
以上のように、比較例の半導体装置では、トレンチ接続部TRaの幅W2の最適化が難しく、半導体素子の微細化と耐圧劣化の抑制とを両立させることが難しい。
【0050】
<本実施の形態の半導体装置の主な特徴>
以下に、本実施の形態の半導体装置の主な特徴について説明する。
【0051】
上述のように、本実施の形態では、距離L1~L3はそれぞれ同じであり、X方向において2つのゲート電極G1の各々の中心を結ぶ距離(複数のゲート電極G1の互いのピッチ)を距離LAとした場合、距離L1~L3の値は(2/√3)×LAとなる。また、角度θ1~θ3はそれぞれ60度であり、コラム領域PC1~PC3の各々の中心を結ぶ線によって、正三角形が構成されている。
【0052】
このため、コラム領域PC1~PC3の各々から伸びる空乏層が均一化されやすく、コラム領域PC1~PC3の間において、十分に空乏化が成され易い。従って、コラム領域PC1~PC3の各々のサイズを太くするなど、不要にコラム領域PCの占有率が増加し、オン抵抗が上昇するような不具合を抑制することができる。
【0053】
図5は、本願発明者が実験した結果を示すグラフである。
図5において、縦軸は規格化オン抵抗比を示しており、横軸は耐圧の値を示している。また、●印は本実施の形態の半導体装置のデータを示し、◆印は比較例の半導体装置のデータを示している。
図5の実験では、コラム領域PCのサイズ(太さ)を3通りに変更した測定結果が示されている。
【0054】
図5の測定結果から判るように、コラム領域PCのサイズが同じであれば、本実施の形態の半導体装置は、比較例の半導体装置と比較して、ほぼ同等の耐圧を確保しつつ、オン抵抗を低くすることができる。従って、本実施の形態によれば、半導体装置の性能を向上させることができる。
【0055】
また、本実施の形態のコラム領域PC1の中心とコラム領域PC4の中心との間の距離L2は、比較例の距離L2よりも長くなっている。このため、トレンチ接続部TRaとコラム領域PCとが干渉し、パワーMOSFETの耐圧が劣化しないように、コラム領域PC1とコラム領域PC4との間に、幅の広いトレンチ接続部TRaを設けることができる。そして、トレンチ接続部TRaの幅W2が広く設定できるので、ゲート引き出し部G1aの上方に設けられるコンタクトホールCHgの形成位置のマージンを大きくすることができる。すなわち、本実施の形態の半導体装置では、比較例の半導体装置と比較して、半導体素子の微細化と耐圧劣化の抑制とを両立させ易い。
【0056】
<変形例の半導体装置>
図6は、実施の形態1の変形例の半導体装置の要部平面図を示している。
【0057】
図6に示されるように、変形例では、Y方向で互いに隣接するコラム領域PC2とコラム領域PC3との間の距離L2が、実施の形態1と比較して長くなっている。このため、距離L1および距離L3はそれぞれ同じであるが、距離L2よりも短くなっている。この結果、コラム領域PC1~PC3の各々の中心を結ぶ線によって、60度よりも大きい角度θ1を有する二等辺三角形が構成されている。
【0058】
変形例においては、コラム領域PC1とコラム領域PC2との間、または、コラム領域PC1とコラム領域PC3との間において、空乏化が十分であったとしても、距離L2が距離L1および距離L3よりも長いため、コラム領域PC2とコラム領域PC3との間において、空乏化が不十分となる場合がある。これを解決するためには、コラム領域PC1~PC3の各々のサイズを太くすることが考えられる。しかし、その場合、変形例では実施の形態1と比較して、コラム領域PCの占有率が増加し、オン抵抗が上昇し易くなる。この点において、実施の形態1の半導体装置は、変形例の半導体装置よりも優れている。
【0059】
しかしながら、変形例では、コラム領域PC1の中心とコラム領域PC4の中心との間の距離L2が長くなっているので、コラム領域PC1とコラム領域PC4との間に、実施の形態1よりも幅の広いトレンチ接続部TRaを設けることができる。または、半導体素子の微細化が進んだ場合でも、トレンチ接続部TRaの幅W2の値を維持することができる。
【0060】
例えば、実施の形態1では、距離LAは1.2μm程度であり、幅W1は0.5μm程度であり、幅W2は0.65μm程度であったが、変形例では、幅W2の値を0.65μmよりも大きく設定することが可能となる。または、半導体素子の微細化により、距離LAおよび幅W1の各々の値が小さくなった場合でも、幅W2の値を維持することができる。
【0061】
このため、変形例では、トレンチ接続部TRaとコラム領域PCとが干渉し、パワーMOSFETの耐圧が劣化することを抑制でき、ゲート引き出し部G1aの上方に設けられるコンタクトホールCHgの形成位置のマージンを大きくすることができる。すなわち、変形例の半導体装置は、実施の形態1の半導体装置と比較して、半導体素子の微細化を更に促進し易いという効果、および、耐圧の劣化を更に抑制し易いという効果を有する。
【0062】
上述のように、角度θ1が大きく、距離L2が長くなり過ぎると、コラム領域PCのサイズを太くしたとしても、コラム領域PC2とコラム領域PC3との間を十分に空乏化することが困難となる。以下に、変形例の半導体装置における主要な構成の適正な数値について記す。
【0063】
変形例において、角度θ1は60度より大きく、90度以下であり、角度θ2および角度θ3はそれぞれ45度以上、60度より小さい。そして、複数のゲート電極G1の互いのピッチを距離LAとした場合、距離L1は距離L3と等しく、(2/√3)×LAより大きく、√2×LA以下であり、距離L2は距離L1および距離L3と異なり、(2/√3)×LAより大きく、2×LA以下である。
【0064】
すなわち、実施の形態1および変形例を纏めると、本願の半導体装置は、主要な構成の数値を以下の範囲内に設定することで、適切に利用することが可能である。角度θ1は60度以上、90度以下である。角度θ2および角度θ3はそれぞれ45度以上、60度以下である。なお、角度θ1~θ3を合計した値は180度となる。距離L1および距離L3はそれぞれ(2/√3)×LA以上、√2×LA以下である。距離L2は(2/√3)×LA以上、2×LA以下である。
【0065】
<半導体装置の製造方法>
以下に、
図7~
図15を用いて、実施の形態1の半導体装置の製造方法について説明する。
図7~
図15は、
図3に示されるA-A断面およびB-B断面の製造工程である。なお、上述の変形例の構造は、複数のコラム領域PCの平面レイアウト以外は実施の形態1の製造方法とほぼ同様であるので、以下では、実施の形態1の製造方法を代表例として説明する。
【0066】
図7は、ドリフト領域NDおよびウェル領域PWの形成工程を示している。
【0067】
まず、シリコンのような半導体からなるn型の半導体基板SUBを準備する。次に、半導体基板SUB上に、例えばエピタキシャル成長法によって、燐(P)を導入しながらシリコン層(半導体層)を形成する。これにより、半導体基板SUB上に、半導体基板SUBよりも低い不純物濃度を有するn型のドリフト領域NDが形成される。次に、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を用いて、外周領域におけるドリフト領域NDの表面にウェル領域PWを形成する。その後、各不純物の活性化および拡散のために、熱処理を施してもよい。
【0068】
図8は、トレンチTR、トレンチ接続部TRa、ゲート絶縁膜GF、ゲート電極G1およびゲート引き出し部G1aの形成工程を示している。
【0069】
まず、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング処理によって、ドリフト領域NDをエッチングすることで、ウェル領域PWの深さよりも深くなるように、ドリフト領域NDの表面から内部に亘ってトレンチTRおよびトレンチ接続部TRaを形成する。ここで、
図2に示されるように、トレンチTRは、平面視においてY方向に延在するように形成され、トレンチ接続部TRaは、複数のトレンチTRを接続し、且つ、X方向に延在するように形成される。
【0070】
次に、熱酸化処理によって、トレンチTRの内壁上、トレンチ接続部TRaの内壁上およびドリフト領域ND上に、例えば酸化シリコン膜からなるゲート絶縁膜GFを形成する。この熱酸化処理は、例えば800~950℃、1~3分の条件で行われる。
【0071】
次に、トレンチTRの内部およびトレンチ接続部TRaの内部を埋め込むように、ゲート絶縁膜GF上に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって、例えばn型の不純物が導入された多結晶シリコン膜からなる導電性膜を形成する。
【0072】
次に、ドリフト領域ND上に形成されているゲート絶縁膜GFをエッチングストッパとして、ドライエッチング処理を行うことで、上記導電性膜をエッチングする。これにより、トレンチTRの外部およびトレンチ接続部TRaの外部に形成されている上記導電性膜が除去され、トレンチTRの内部にゲート絶縁膜GFを介してゲート電極G1が形成され、トレンチ接続部TRaの内部にゲート絶縁膜GFを介してゲート引き出し部G1aが形成される。その後、ドリフト領域ND上に形成されているゲート絶縁膜GFは残されていても良いが、ここでは、ウェットエッチング処理などによって、ドリフト領域ND上のゲート絶縁膜GFを除去する。
【0073】
図9は、ボディ領域PBおよびソース領域NSの形成工程を示している。
【0074】
まず、フォトリソグラフィ技術およびボロン(B)を用いたイオン注入法によって、素子形成領域におけるドリフト領域NDの表面に、p型のボディ領域PBを形成する。ボディ領域PBは、ウェル領域PWよりも高い不純物濃度を有する不純物領域であり、ウェル領域PWよりも浅い位置に形成される。
【0075】
次に、フォトリソグラフィ技術および砒素(As)を用いたイオン注入法によって、ボディ領域PBの表面に、n型のソース領域NSを形成する。ソース領域NSは、ドリフト領域NDよりも高い不純物濃度を有する不純物領域である。
【0076】
図10は、コラム領域PC(PC1~PC4)の形成工程を示している。
【0077】
まず、ソース領域NS、ボディ領域PBおよびウェル領域PWを含むドリフト領域NDの表面上に、例えばCVD法によって、例えば酸化シリコン膜または窒化シリコン膜のような絶縁膜を形成する。次に、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング処理によって、上記絶縁膜をパターニングすることで、ドリフト領域NDの表面上に複数のマスク層MKを形成する。
【0078】
次に、複数のマスク層MKをマスクとし、且つ、ボロン(B)を用いたイオン注入法によって、ドリフト領域NDの内部に、複数のp型のコラム領域PCを形成する。また、複数のコラム領域PCは、トレンチTRおよびトレンチ接続部TRaに平面視で重ならない位置に形成され、ボディ領域PBまたはウェル領域PWに接するように形成される。また、コラム領域PCの不純物濃度は、ボディ領域PBの不純物濃度と同程度である。また、このイオン注入工程は、エネルギーおよびドーズ量を変更して複数回に分けて行われてもよい。
【0079】
このようなイオン注入工程の後、ウェットエッチング処理などによって、マスク層MKを除去する。その後、熱処理を施すことで、ボディ領域PB、ソース領域NSおよびコラム領域PCに含まれる不純物を活性化させる。この活性化の熱処理は、窒素ガスなどを用いた不活性ガス雰囲気中で行われ、例えば950~1050℃、0.1秒程度の条件で行われる。
【0080】
コラム領域PCを形成するためのイオン注入工程は、ウェル領域PWなどを形成する時に行うことも可能である。しかしながら、その後、ゲート絶縁膜GFの形成工程などのような高温で長時間の熱処理を伴う工程により、コラム領域PCが設計値以上に拡散し、太くなりすぎることもある。従って、
図10に示されるように、コラム領域PCの形成工程は、ゲート絶縁膜GFの形成工程よりも後に行うことが好ましい。
【0081】
【0082】
ソース領域NS、ボディ領域PBおよびウェル領域PWを含むドリフト領域NDの表面上に、例えばCVD法によって、例えば酸化シリコン膜からなる層間絶縁膜ILを形成する。
【0083】
図12は、コンタクトホールCHsおよびコンタクト領域PRの形成工程を示している。
【0084】
まず、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング処理によって、素子形成領域の層間絶縁膜ILおよびソース領域NSを貫通し、且つ、ボディ領域PBに達するコンタクトホールCHsを形成する。次に、コンタクトホールCHsの底部に対してボロン(B)を用いたイオン注入を行うことで、ボディ領域PBの内部に、ボディ領域PBよりも高い不純物濃度を有するコンタクト領域PRを形成する。
【0085】
図13は、コンタクトホールCHgの形成工程を示している。
【0086】
フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング処理によって、外周領域の層間絶縁膜ILを貫通し、且つ、ゲート引き出し部G1aに達するコンタクトホールCHgを形成する。
【0087】
なお、コンタクトホールCHsの形成工程と、コンタクトホールCHgの形成工程とを同時に行ってもよい。その場合、コンタクトホールCHgの形成工程で使用されるマスクを低減できるので、製造工程の簡略化を図ることができる。しかし、コンタクトホールCHsの形成工程後には、p型のコンタクト領域PR用のイオン注入工程が行われるため、コンタクトホールCHgの底部において、ゲート引き出し部G1aにp型の不純物が導入されてしまう。従って、コンタクトホールCHsおよびコンタクトホールCHgを同時に形成する場合には、ゲート引き出し部G1aに含まれるn型の不純物濃度が、十分に高濃度であることが好ましい。
【0088】
図14は、プラグPGsおよびプラグPGgの形成工程を示している。
【0089】
まず、コンタクトホールCHsの内部およびコンタクトホールCHgの内部を埋め込むように、層間絶縁膜IL上に、例えばCVD法またはスパッタリング法によって、チタン膜および窒化チタン膜の積層膜からなるバリアメタル膜を形成する。次に、上記バリアメタル膜上に、例えばCVD法によって、タングステン膜からなる導電性膜を形成する。次に、CMP法によって、層間絶縁膜IL上の上記バリアメタル膜および上記導電性膜を除去することで、コンタクトホールCHsの内部およびコンタクトホールCHgの内部に、それぞれ上記バリアメタル膜および上記導電性膜からなるプラグPGsおよびプラグPGgを形成する。
【0090】
図15は、ソース電極SEおよびゲート配線GEの形成工程を示している。
【0091】
まず、層間絶縁膜IL上に、例えばスパッタリング法によって、例えばアルミニウム膜を形成する。次に、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング処理を用いて、上記アルミニウム膜をパターニングする。これにより、層間絶縁膜IL上に、プラグPGsを介してソース領域NSおよびボディ領域PBに電気的に接続されるソース電極SEが形成され、プラグPGgを介してゲート引き出し部G1aに電気的に接続されるゲート配線GEが形成される。
【0092】
図15の工程後、必要に応じて、半導体基板SUBの裏面に対して研磨処理を実施し、半導体基板SUBの厚さを薄くしてもよい。次に、半導体基板SUBの裏面に、例えばスパッタリング法によって、例えばチタン、ニッケルおよび銀を含む金属膜からなるドレイン電極DEを形成する。
【0093】
以上により、
図3に示される本実施の形態の半導体装置が製造される。
【0094】
以上、本願発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0095】
例えば、上記実施の形態では、本発明をn型のパワーMOSFETに適用する例について説明したが、各構成の導電性を逆にし、本発明をp型のパワーMOSFETに適用してもよい。
その他、上記実施の形態に記載された内容の一部を以下に記載する。
【0096】
[付記1]
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成された第1導電型の第1不純物領域と、
前記第1不純物領域の表面から内部に亘って形成され、且つ、平面視において第1方向に延在する第1トレンチと、
前記第1トレンチの内部に、ゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、
前記第1不純物領域の内部に形成され、その底部の深さが前記第1トレンチの底部の深さよりも深く、且つ、前記第1導電型と反対の第2導電型である第1コラム領域、第2コラム領域および第3コラム領域と、
を有し、
前記第1コラム領域は、前記第1トレンチの第1側面側に形成され、
前記第2コラム領域および前記第3コラム領域は、前記第1側面側とは反対側の前記第1トレンチの第2側面側に形成され、且つ、前記第1方向で互いに隣接し、
前記第1方向において、前記第1コラム領域の中心は、前記第2コラム領域の中心と前記第3コラム領域の中心との間に位置し、
前記第1コラム領域および前記第2コラム領域の各々の中心を結ぶ線と、前記第1コラム領域および前記第3コラム領域の各々の中心を結ぶ線とが成す角度θ1は、60度以上、90度以下である、半導体装置。
【0097】
[付記2]
付記1記載の半導体装置において、
前記第1コラム領域、前記第2コラム領域および前記第3コラム領域の各々の中心を結ぶ線によって、正三角形が構成されている、半導体装置。
【0098】
[付記3]
付記1記載の半導体装置において、
前記第1コラム領域、前記第2コラム領域および前記第3コラム領域の各々の中心を結ぶ線によって、二等辺三角形が構成されている、半導体装置。
【符号の説明】
【0099】
1A 領域
CHg、CHs コンタクトホール
CHP 半導体チップ
DE ドレイン電極(ドレイン配線)
G1 ゲート電極
G1a ゲート引き出し部
GE ゲート配線
GF ゲート絶縁膜
IL 層間絶縁膜
L1~L4、LA 距離
MK マスク層
ND ドリフト領域(不純物領域)
NS ソース領域(不純物領域)
PB ボディ領域(不純物領域)
PC、PC1~PC4 コラム領域
PGs、PGg プラグ
PR コンタクト領域(不純物領域)
PW ウェル領域(不純物領域)
SE ソース電極(ソース配線)
SUB 半導体基板
TR トレンチ
TRa トレンチ接続部
W1、W2 幅
θ1~θ3 角度