IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ミツバの特許一覧

<>
  • 特許-ロボット 図1
  • 特許-ロボット 図2
  • 特許-ロボット 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/06 20060101AFI20221114BHJP
   B25J 17/00 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
B25J9/06 B
B25J17/00 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019035834
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020138281
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 均
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-157195(JP,U)
【文献】特開2001-113488(JP,A)
【文献】特開2017-080859(JP,A)
【文献】特開2012-056037(JP,A)
【文献】特開2001-121467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部と、
前記ベース部に回転可能に連結され、前記ベース部に設けられた第1モータによって回転駆動される第1アームと、
前記第1アームに回転可能に連結され、前記第1アームに設けられた第2モータによって回転駆動される第2アームと、
前記第2アームに回転可能に連結され、前記第2アームに設けられた第3モータによって回転駆動される第3アームと、
前記第3モータから出力される回転駆動力を前記第3アームに伝達する動力伝達機構と、を有し、
前記第3モータは、前記第1アームと前記第2アームとの連結部と、前記第2アームと前記第3アームとの連結部との間に設けられた取付け穴を貫通して、前記第2アームの長手方向と交差する左右方向において前記第2アームの両側に亘って配置されている、
ロボット。
【請求項2】
請求項1に記載のロボットにおいて、
前記第1アーム,前記第2アームおよび前記第3アームのうち、前記第2アームが最も長い、
ロボット。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のロボットにおいて、
前記左右方向において前記第2アームの一側に前記動力伝達機構が配置され、前記左右方向において前記第2アームの他側に前記第3アームが配置されている、
ロボット。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のロボットにおいて、
前記動力伝達機構は、前記第3モータから出力される回転駆動力を前記第3アームに伝達するベルト部材を含み、
前記ベルト部材は、前記第2アームの前記長手方向に沿って延びている、
ロボット。
【請求項5】
請求項4に記載のロボットにおいて、
前記動力伝達機構は、前記ベルト部材が掛け回された駆動プーリおよび従動プーリを含み、
前記駆動プーリは、前記第3モータの出力軸に固定され、
前記従動プーリは、前記第2アームと前記第3アームとの間に介在する減速機構の入力軸に固定され、
前記減速機構の出力軸は、前記第3アームに結合されている、
ロボット。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のロボットにおいて、
前記ベース部および前記第1モータは、一体化されてベースユニットを構成し、
前記第1アームおよび前記第2モータは、一体化されて第1アームユニットを構成し、
前記第2アーム,前記第3モータおよび前記動力伝達機構は、一体化されて第2アームユニットを構成し、
前記第3アームは、当該第3アームに設けられた第4モータと一体化されて第3アームユニットを構成している、
ロボット。
【請求項7】
請求項6に記載のロボットにおいて、
前記第1アーム,前記第2アームおよび前記第3アームの全てを鉛直に立てたとき、前記第1アームユニットおよび前記第3アームユニットの重心は、前記第1アームの回転軸の中心を通る仮想直線の一側に位置し、前記第2アームユニットの重心は、前記仮想直線の他側に位置する、
ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータによって回転駆動される複数のアームを備えるロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
モータによって回転駆動される複数のアームを備えるロボットが知られている。この種のロボットの多くは、工業製品の製造ラインに配置され、所定の作業を実行する。ロボットは、例えば、部品の搬送,ねじの締め込み,半田付け,溶接,塗装などの作業を実行する。
【0003】
上記のようなロボットの一例が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されているロボットは、固定ベースと、固定ベースに回転可能に取付けられた旋回ヘッドと、旋回ヘッドに回動可能に取付けられた下部アームと、下部アームに回転可能に取付けられた上部アームと、を備える垂直多関節型の産業ロボットである。
【0004】
特許文献1に記載されているロボットでは、下部アームの一端(下端)が旋回ヘッドに回転可能に連結され、下部アームの他端(上端)が上部アームの一端(下端)に回転可能に連結されており、上部アームの他端(上端)に、ハンドピースなどのエンドエフェクタが取付けられる。また、旋回ヘッドと下部アームとの連結部に、下部アームを回転駆動する第1のモータが設けられ、下部アームと上部アームとの連結部に、上部アームを回転駆動する第2のモータが設けられている。さらに、第1のモータの出力部は、下部アームの下端に結合されており、第2のモータの出力部は、上部アームの下端に結合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-121467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているロボットでは、下部アームの回転支点である当該下部アームの下端とは反対側(下部アームの上端)に、重量物である第2のモータが設けられている。よって、下部アームの下端を支点として当該下部アームを回動させると、大きな慣性力が働く。この結果、下部アームの応答性が悪くなったり、下部アームの振れ幅が大きくなったりする。さらに、下部アームの応答性が悪くなったり、下部アームの振れ幅が大きくなったりすると、上部アームの応答性も悪くなり、振れ幅も大きくなる。
【0007】
本発明の目的は、応答性が良く、振れ幅の小さいアームを備えたロボットを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るロボットは、ベース部と、前記ベース部に回転可能に連結され、前記ベース部に設けられた第1モータによって回転駆動される第1アームと、前記第1アームに回転可能に連結され、前記第1アームに設けられた第2モータによって回転駆動される第2アームと、前記第2アームに回転可能に連結され、前記第2アームに設けられた第3モータによって回転駆動される第3アームと、前記第3モータから出力される回転駆動力を前記第3アームに伝達する動力伝達機構と、を有する。前記第3モータは、前記第1アームと前記第2アームとの連結部と、前記第2アームと前記第3アームとの連結部と、の間に配置される。
【0009】
本発明の一態様では、前記第1アーム,前記第2アームおよび前記第3アームのうち、前記第2アームが最も長い。
【0010】
本発明の他の一態様では、前記第2アームの一側に前記動力伝達機構が配置され、前記第2アームの他側に前記第3アームが配置される。
【0011】
本発明の他の一態様では、前記動力伝達機構は、前記第3モータから出力される回転駆動力を前記第3アームに伝達するベルト部材を含み、前記ベルト部材は、前記第2アームの長手方向に沿って延びる。
【0012】
本発明の他の一態様では、前記動力伝達機構は、前記ベルト部材が掛け回された駆動プーリおよび従動プーリを含む。前記駆動プーリは、前記第3モータの出力軸に固定され、前記従動プーリは、前記第2アームと前記第3アームとの間に介在する減速機構の入力軸に固定され、前記減速機構の出力軸は、前記第3アームに結合される。
【0013】
本発明の他の一態様では、前記ベース部および前記第1モータは、一体化されてベースユニットを構成し、前記第1アームおよび前記第2モータは、一体化されて第1アームユニットを構成し、前記第2アーム,前記第3モータおよび前記動力伝達機構は、一体化されて第2アームユニットを構成する。また、前記第3アームは、当該第3アームに設けられた第4モータと一体化されて第3アームユニットを構成する。
【0014】
本発明の他の一態様では、前記第1アーム,前記第2アームおよび前記第3アームの全てを鉛直に立てたとき、前記第1アームユニットおよび前記第3アームユニットの重心は、前記第1アームの回転軸の中心を通る仮想直線の一側に位置し、前記第2アームユニットの重心は、前記仮想直線の他側に位置する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、応答性が良く、振れ幅の小さいアームを備えたロボットが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明が適用されたロボットの一例を示す斜視図である。
図2】本発明が適用されたロボットの一例を示す他の斜視図である。
図3】本発明が適用されたロボットの一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のロボットの実施形態の一例について図面を参照しながら詳細に説明する。図1図2に示されるように、本実施形態に係るロボット1は、ベース部2,第1アーム10,第2アーム20,第3アーム30,第4アーム40および第5アーム50を有する垂直多関節型ロボットである。第1アーム10の基端は、ベース部2に回転可能に連結されている。第1アーム10の先端と第2アーム20の基端、第2アーム20の先端と第3アーム30の基端、第3アーム30の先端と第4アーム40の基端、第4アーム40の先端と第5アーム50の基端は、それぞれ回転可能に連結されている。以下の説明では、第1アーム10,第2アーム20,第3アーム30,第4アーム40および第5アーム50を「アーム」と総称する場合がある。
【0018】
図2に示されるように、複数本のアームのうち、第2アーム20が最も長く、第5アーム50が最も短い。全長が最も長い第2アーム20とその前後の第1アーム10および第3アーム30に着目すると、第2アーム20は第1アーム10よりも長い。また、第3アーム30は、第2アーム20よりも短く、第1アーム10よりも長い。
【0019】
図1に示されるように、ベース部2は、対向する底板3および天井板4と、対向する一対の側板5,6と、を有し、全体として略箱型の外観を呈している。もっとも、本実施形態における天井板4と側板5,6とは一体成形されている。底板3は天井板4よりも一回り大きく、底板3の四隅には、当該ロボット1を設置面に固定するためのアンカーボルトが挿通されるボルト穴が設けられている。それぞれの側板5,6には略矩形の開口部7が設けられている。言い換えれば、それぞれの側板5,6には肉抜きが施されている。
【0020】
底板3と側板5との接合部および底板3と側板6との接合部には、略三角形の下側補強部材8aが設けられている。それぞれの下側補強部材8aは、ボルトによって底板3に固定されている。つまり、ベース部2には、合計4つの下側補強部材8aが設けられている。2つの下側補強部材8aの一辺は底板3の上面に当接し、他の一辺は側板5の内面に当接している。残りの2つの下側補強部材8aの一辺は底板3の上面に当接し、他の一辺は側板6の内面に当接している。
【0021】
同様に、天井板4と側板5との接合部および天井板4と側板6との接合部には、略三角形の上側補強部材8bが設けられている。それぞれの上側補強部材8bは、ボルトによって天井板4に固定されている。つまり、ベース部2には、合計4つの上側補強部材8bが設けられている。2つの上側補強部材8bの一辺は天井板4の下面に当接し、他の一辺は側板5の内面に当接している。残りの2つの上側補強部材8bの一辺は天井板4の下面に当接し、他の一辺は側板6の内面に当接している。
【0022】
以下の説明では、図1における底板3と天井板4との対向方向を「上下方向」、一対の側板5,6の対向方向を「左右方向」、上下方向および左右方向の両方向と直交する方向を「前後方向」とする。
【0023】
図1に示されるように、ベース部2には第1モータ100が設けられている。第1モータ100は、モータ本体と波動歯車減速機構とを備える減速機構付サーボモータである。第1モータ100のモータ本体はベース部2の内側に配置されており、第1モータ100の波動歯車減速機構(以下、「第1減速機構」という。)はベース部2の外側に配置されている。具体的には、モータ本体は、ベース部2の天井板4の下面に固定されており、モータ本体の出力軸は、天井板4を貫通して天井板4の上方に突出している。一方、第1減速機構は、天井板4の上面に設けられている筒形の第1連結部材101に収容されている。つまり、ベース部2,第1モータ100および第1連結部材101は、一体化(ユニット化)されている。以下の説明では、一体化(ユニット化)されたベース部2,第1モータ100および第1連結部材101を「ベースユニット」と総称する場合がある。
【0024】
図2に示されるように、第1アーム10の基端は、第1連結部材101上に配置され、第1連結部材101に収容されている第1減速機構と接続されている。第1減速機構は、第1連結部材101に固定されたリング部材と、リング部材の内側に配置されたカップ部材と、カップ部材の内側に配置されたカム部材と、を含んでいる。リング部材の内周面にはギヤ歯が形成されており、カップ部材の外周面には、リング部材の内周面に形成されているギヤ歯と噛み合うギヤ歯が形成されている。カム部材は、楕円カムと、楕円カムを取り囲む内輪と、内輪を取り囲む外輪と、内輪と外輪の間に介在する転動体と、を備えている。内輪は楕円カムに固定されており、リング部材の内周面に形成されているギヤ歯の数は、カップ部材の外周面に形成されているギヤ歯の数よりも多い。
【0025】
上記構造を有する第1減速機構に回転力が入力されると、カップ部材の内側でカム部材が回転し、カム部材の回転に伴ってカップ部材が楕円状に弾性変形する。すると、長軸部分ではカップ部材の外周面に形成されているギヤ歯とリング部材の内周面に形成されているギヤ歯とが噛み合う一方、短軸部分では、カップ部材の外周面に形成されているギヤ歯とリング部材の内周面に形成されているギヤ歯とが離間する。よって、カム部材が時計方向に1回転すると、リング部材の内周面に形成されているギヤ歯とカップ部材の外周面に形成されているギヤ歯との歯数差分だけ、カップ部材が反時計方向に移動する。また、カム部材が反時計方向に1回転すると、リング部材の内周面に形成されているギヤ歯とカップ部材の外周面に形成されているギヤ歯との歯数差分だけ、カップ部材が時計方向に移動する。
【0026】
ベース部2の天井板4から突出しているモータ本体の出力軸は、第1減速機構の入力部であるかム部材に結合されている。一方、第1アーム10の基端は、第1減速機構の出力部であるカップ部材、より詳しくはカップ部材の底面に結合されている。よって、モータ本体の出力軸が回転すると、第1アーム10がカップ部材の中心軸を回転軸として回転する。このとき、モータ本体の出力軸の回転は、第1減速機構によって減速されて第1アーム10に伝達される。尚、カップ部材の中心軸は、第1減速機構全体の中心軸と同軸であり、第1モータ100のモータ本体の出力軸とも同軸である。
【0027】
上記のように、第1アーム10はベース部2に回転可能に連結されており、かつ、ベース部2に設けられている第1モータ100によって回転駆動される。また、ベース部2と第1アーム10との間に介在している第1連結部材101は、第1減速機構のリング部材が固定される当該第1減速機構のケーシングでもある。
【0028】
図1図2に示されるように、第2アーム20の基端が回転可能に連結されている第1アーム10の先端には、第2アーム20を回転駆動する第2モータ200が設けられている。第2モータ200は、モータ本体と波動歯車減速機構とを備える減速機構付サーボモータである。第2モータ200のモータ本体は、第1アーム10の一側(右側)に配置され、第2モータ200の波動歯車減速機構(以下、「第2減速機構」という。)は、第1アーム10の他側(左側)に配置されている。具体的には、モータ本体は第1アーム10の右側面に固定されており、モータ本体の出力軸は、第1アーム10を貫通して第1アーム10の左側面から突出している。一方、第2減速機構は、第1アーム10の左側面に設けられている筒形の第2連結部材201に収容されている。つまり、第1アーム10,第2モータ200および第2連結部材201は、一体化(ユニット化)されている。以下の説明では、一体化(ユニット化)された第1アーム10,第2モータ200および第2連結部材201を「第1アームユニット」と総称する場合がある。
【0029】
第2アーム20の基端は、第2連結部材201に隣接しており、第2連結部材201に収容されている第2減速機構と接続されている。言い換えれば、第2連結部材201は、第1アーム10の先端と第2アーム20の基端との間に挟まれている。より詳細には、第2連結部材201は、第1アーム10の先端の左側面と第2アーム20の基端の右側面との間に挟まれている。
【0030】
第2モータ200が備える第2減速機構は、第1モータ100が備える第1減速機構と実質的に同一の波動歯車減速機構である。第2モータ200のモータ本体の出力軸は、第1アーム10を貫通して第2減速機構の入力部であるかム部材に結合されている。一方、第2アーム20の基端は、第2減速機構の出力部であるカップ部材、より詳しくはカップ部材の底面に結合されている。よって、モータ本体の出力軸が回転すると、第2アーム20がカップ部材の中心軸を回転軸として回転する。このとき、モータ本体の出力軸の回転速度は、第2減速機構によって減速されて第2アーム20に伝達される。尚、カップ部材の中心軸は、第2減速機構全体の中心軸と同軸であり、第2モータ200のモータ本体の出力軸とも同軸である。
【0031】
図1図2に示されるように、第3アーム30の基端が回転可能に連結されている第2アーム20には、第3アーム30を回転駆動する第3モータ300が設けられている。第3モータ300は、サーボモータではあるが、減速機構は備えていない。図2に示されるように、第3モータ300は、第2アーム20の長手方向において、第1アーム10と第2アーム20との連結部と、第2アーム20と第3アーム30との連結部と、の間に配置されている。より具体的には、第3モータ300は、第2アーム20の長手方向中央または略中央に配置されている。
【0032】
図1図2に示されるように、第3モータ300の大部分は第2アーム20の一側(右側)に位置している一方、第3モータ300の先端部分は第2アーム20の他側(左側)に位置している。つまり、第3モータ300は、第2アーム20に設けられている取付け穴を貫通しており、第2アーム20の左右に亘っている。
【0033】
図2に示されるように、第2アーム20の一側(左側)には、第3モータ300から出力される回転駆動力を第3アーム30に伝達する動力伝達機構301(以下、「第1動力伝達機構301」という。)が設けられている。第1動力伝達機構301は、少なくとも駆動プーリ302,従動プーリ303およびベルト部材304を含んでいる。駆動プーリ302は、第3モータ300の出力軸に固定された歯付プーリである。従動プーリ303は、第2アーム20の先端に設けられている減速機構(以下、「第3減速機構」という。)の入力軸に固定された歯付プーリである。ベルト部材304は、第2アーム20の長手方向に沿って延び、駆動プーリ302と従動プーリ303とに掛け回された歯付ベルトである。尚、駆動プーリ302と従動プーリ303のプーリ比は、1:1である。
【0034】
このように、第2アーム20には、第3モータ300,当該第3モータ300から出力される回転駆動力を伝達する第1動力伝達機構301および第1動力伝達機構301を介して伝達される回転駆動力の速度を減速させる第3減速機構が一体的に設けられている。つまり、第2アーム20,第3モータ300,第1動力伝達機構301および第3減速機構は、一体化(ユニット化)されている。以下の説明では、一体化(ユニット化)された第2アーム20,第3モータ300,第1動力伝達機構301および第3減速機構を「第2アームユニット」と総称する場合がある。
【0035】
従動プーリ303が固定されている入力軸を備える第3減速機構の出力軸は、第3アーム30の基端に結合している。よって、第3モータ300の出力軸が回転すると、駆動プーリ302,ベルト部材304および従動プーリ303を介して第3減速機構に回転駆動力が入力される。第3減速機構に入力された回転駆動力は、当該第3減速機構によって減速された後、当該第3減速機構から出力され、第3アーム30に入力される。この結果、第3減速機構の出力軸を回転軸として第3アーム30が回転する。
【0036】
尚、第3減速機構は、第1連結部材101や第2連結部材201と実質的に同一の筒形のケーシングに収容されている。また、第3減速機構を収容しているケーシングは、第2アーム20の先端と第3アーム30の基端との間に介在する第3連結部材でもある。
【0037】
図2に示されるように、第4アーム40の基端が回転可能に連結されている第3アーム30には、第4アーム40を回転駆動する第4モータ400が設けられている。第4モータ400は、モータ本体と波動歯車減速機構とを備える減速機構付サーボモータである。第4モータ400のモータ本体は、第3アーム30の内側に配置され、第4モータ400の波動歯車減速機構(以下、「第4減速機構」という。)は、第3アーム30の外側に配置されている。具体的には、第4モータ400のモータ本体は、第3アーム30の先端部の下面に固定されており、モータ本体の出力軸は、第3アーム30の先端部を貫通して当該先端部の上面から突出している。一方、第4モータ400の第4減速機構は、第3アーム30の先端部上面に設けられている筒形の第4連結部材401に収容されている。つまり、第3アーム30,第4モータ400および第4連結部材401は、一体化(ユニット化)されている。以下の説明では、一体化(ユニット化)された第3アーム30,第4モータ400および第4連結部材401を「第3アームユニット」と総称する場合がある。
【0038】
図2に示されるように、第4アーム40の基端は、第4連結部材401の先に配置されており、第4連結部材401に収容されている第4減速機構と接続されている。つまり、第4連結部材401は、第3アーム30の先端と第4アーム40の基端との間に挟まれている。より詳細には、第4連結部材401は、第3アーム30の先端部上面と第4アーム40の基端部下面との間に挟まれている。
【0039】
第4モータ400が備える第4減速機構は、第1モータ100が備える第1減速機構と実質的に同一の波動歯車減速機構である。第4モータ400のモータ本体の出力軸は、第3アーム30の先端部上面から突出し、第4減速機構の入力部であるかム部材に結合されている。一方、第4アーム40の基端部下面は、第4減速機構の出力部であるカップ部材、より詳しくはカップ部材の底面に結合されている。よって、モータ本体の出力軸が回転すると、第4アーム40がカップ部材の中心軸を回転軸として回転する。このとき、モータ本体の出力軸の回転は、第4減速機構によって減速されて第4アーム40に伝達される。尚、カップ部材の中心軸は、第4減速機構全体の中心軸と同軸であり、第4モータ400のモータ本体の出力軸とも同軸である。
【0040】
図1図2に示されるように、第5アーム50が回転可能に連結されている第4アーム40には、第5アーム50を回転駆動する第5モータ500が設けられている。第5モータ500は、サーボモータではあるが、減速機構は備えていない。言い換えれば、第5モータ500は、第3モータ300と実質的に同一のモータである。
【0041】
図2に示されるように、第4アーム40の一側(左側)には、第5モータ500から出力される回転駆動力を第5アーム50に伝達する動力伝達機構501(以下、「第2動力伝達機構501」という。)が設けられている。第2動力伝達機構501は、少なくとも駆動プーリ502,従動プーリ503およびベルト部材504を含んでいる。駆動プーリ502は、第5モータ500の出力軸に固定された歯付プーリである。従動プーリ503は、第4アーム40の先端に設けられている減速機構(以下、「第5減速機構」という。)の入力軸に固定された歯付プーリである。ベルト部材504は、第4アーム40の長手方向に沿って延び、駆動プーリ502と従動プーリ503とに掛け回された歯付ベルトである。尚、駆動プーリ502と従動プーリ503のプーリ比は、1:1である。
【0042】
このように、第4アーム40には、第5モータ500,当該第5モータ500から出力される回転駆動力を伝達する第2動力伝達機構501および第2動力伝達機構501を介して伝達される回転駆動力の速度を減速させる第5減速機構が一体的に設けられている。つまり、第4アーム40,第5モータ500,第2動力伝達機構501および第5減速機構は、一体化(ユニット化)されている。以下の説明では、一体化(ユニット化)された第4アーム40,第5モータ500,第2動力伝達機構501および第5減速機構を「第4アームユニット」と総称する場合がある。
【0043】
従動プーリ503が固定されている入力軸を備える第5減速機構の出力軸は、第5アーム50の基端に結合している。よって、第5モータ500の出力軸が回転すると、駆動プーリ502,ベルト部材504および従動プーリ503を介して第5減速機構に回転駆動力が入力される。第5減速機構に入力された回転駆動力は、当該第5減速機構によって減速された後、当該第5減速機構から出力され、第5アーム50に入力される。この結果、第5減速機構の出力軸を回転軸として第5アーム50が回転する。
【0044】
尚、第5減速機構は、第1連結部材101や第2連結部材201と実質的に同一の筒形のケーシングに収容されている。また、第5減速機構を収容しているケーシングは、第4アーム40の先端と第5アーム50の基端との間に介在する第5連結部材でもある。
【0045】
図2に示されるように、第5アーム50には第6モータ600が設けられている。第6モータ600は、モータ本体と波動歯車減速機構とを備える減速機構付サーボモータである。第6モータ600のモータ本体は、第5アーム50の内側に配置され、第6モータ600の波動歯車減速機構(以下、「第6減速機構」という。)は、第5アーム50の外側に配置されている。具体的には、モータ本体は第5アーム50の先端部の下面に固定されており、モータ本体の出力軸は、第5アーム50の先端部を貫通して当該先端部の上面から突出している。一方、第6減速機構は、第5アーム50の先端部上面に設けられている筒形の第6連結部材601に収容されている。つまり、第5アーム50,第6モータ600および第6連結部材601は、一体化(ユニット化)されている。以下の説明では、一体化(ユニット化)された第5アーム50,第6モータ600および第6連結部材601を「第5アームユニット」と総称する場合がある。
【0046】
第6連結部材601には、第1モータ100が備える第1減速機構と実質的に同一の波動歯車減速機構(以下、「第6減速機構」という。)が収容されている。第6モータ600のモータ本体の出力軸は、第5アーム50の先端部上面から突出し、第6減速機構の入力部であるかム部材に結合されている。第6連結部材601の先には、任意のエンドエフェクタを装着することができる。また、第6連結部材601の先に装着されたエンドエフェクタは、第6減速機構の出力部であるカップ部材、より詳しくはカップ部材の底面に結合される。よって、モータ本体の出力軸が回転すると、第6減速機構のカップ部材の中心軸を回転軸としてエンドエフェクタが回転する。このとき、モータ本体の出力軸の回転は、6減速機構によって減速されてエンドエフェクタに伝達される。尚、カップ部材の中心軸は、第6減速機構全体の中心軸と同軸であり、第6モータ600のモータ本体の出力軸とも同軸である。
【0047】
尚、これまでに説明した第1モータ100から第6モータ600は、不図示の制御装置によって統括的に制御される。制御装置は、例えば、CPU,制御プログラムが格納されたROM,制御プログラムが展開されるRAM等から構成される。
【0048】
以上のように、本実施形態に係るロボット1は、それぞれが独立して回転可能な5本のアームを有している。また、それぞれのアームには、当該アームに回転可能に連結されている次のアームの駆動源であるモータが設けられている。ここで、第2アーム20に設けられている第3モータ300は、当該第2アーム20の長手方向中央または略中央に配置されている。よって、重量物である第3モータ300が第2アーム20の先端寄りに配置されている場合に比べて、第2アーム20を回転させたときに発生する慣性力が小さく、第2アーム20の駆動源である第2モータ200に掛かる負荷が小さい。言い換えれば、第2アーム20をより小さな力で素早く回転させることができる。この結果、第2アーム20の応答性が向上し、第2アーム20の振れ幅も縮小される。さらに、第2アーム20の応答性が向上し、振れ幅が縮小されることにより、第2アーム20よりも先の複数のアームの応答性も向上し、振れ幅も縮小される。特に、第2アーム20は、本実施形態に係るロボット1が備える5本のアームのうちで最長のアームであり、上記作用効果がより顕著に現れる。
【0049】
図3を参照する。図3は、全てのアームを鉛直に立てた状態のロボット1の正面図である。図示されている状態において、第1アームユニット,第3アームユニットおよび第5アームユニットの重心は、第1アーム10の回転軸(第1モータ100のモータ本体の出力軸)の中心を通る仮想直線Xの一側(右側)に位置している。一方、第2アームユニットおよび第4アームユニットの重心は、仮想直線Xの他側(左側)に位置している。言い換えれば、仮想直線Xに沿って一列に並んでいる5つのアームユニットの重心が、当該仮想直線Xの両側に交互に配分されている。つまり、5つのアームユニットの重量が第1アーム10の回転軸を基準としてバランス良く配分されており、この点もアームの振れ幅の縮小に貢献している。
【0050】
本実施形態に係るロボット1では、各アームと当該アームに付属しているモータ等の構成要素が一体化(ユニット化)されている。よって、ユニット単位で交換作業やメンテナンス作業を行うことが可能であり、これら作業に要する時間が短縮され、また、作業効率が向上する。
【0051】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、アームの本数は必要に応じて3本や4本に減らしてもよく、6本以上に増やしてもよい。上記実施形態に係るロボット1は5本のアームを備えており、部品の組付け,グリス塗布,バフがけ,バリ取り等の比較的複雑な作業に適している。一方、ねじ締めや部品の軽圧入などの単純作業を行わせる場合には、アームの本数を3本に減らすことが好ましい。また、半田付け,溶接,部品供給などの作業を行わせる場合には、アームの本数を4本に減らすことが好ましい。
【符号の説明】
【0052】
1 ロボット
2 ベース部
3 底板
4 天井板
5,6 側板
7 開口部
8a 下側補強部材
8b 上側補強部材
10 第1アーム
20 第2アーム
30 第3アーム
40 第4アーム
50 第5アーム
100 第1モータ
101 第1連結部材
200 第2モータ
201 第2連結部材
300 第3モータ
301 動力伝達機構(第1動力伝達機構)
302,502 駆動プーリ
303,503 従動プーリ
304,504 ベルト部材
400 第4モータ
401 第4連結部材
500 第5モータ
501 動力伝達機構(第2動力伝達機構)
600 第6モータ
601 第6連結部材
X 仮想直線
図1
図2
図3