(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】真空バルブの圧力監視装置、および、圧力監視方法
(51)【国際特許分類】
H01H 33/668 20060101AFI20221114BHJP
【FI】
H01H33/668 K
(21)【出願番号】P 2019038254
(22)【出願日】2019-03-04
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 深大
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 正典
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-060780(JP,A)
【文献】国際公開第2012/066792(WO,A1)
【文献】特開2012-156117(JP,A)
【文献】特開昭57-148830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空バルブと該真空バルブを覆う絶縁フレームを設けた主回路開閉部と、前記真空バルブの接点を開閉する操作機構部と、を具備する真空遮断器に設置した、真空バルブの圧力監視装置であって、
前記絶縁フレームの一側面に配置し、インピーダンスを介して接地した第一の電極と、
前記絶縁フレームの他側面に配置し、スイッチを介して接地した第二の電極と、
前記インピーダンスと前記第一の電極の間に接続した電位測定器と、
を具備することを特徴とする真空バルブの圧力監視装置。
【請求項2】
真空バルブと該真空バルブを覆う絶縁フレームを相毎に設けた主回路開閉部と、前記真空バルブの接点を開閉する操作機構部と、を具備する複数相真空遮断器に設置した、真空バルブの圧力監視装置であって、
相毎に設けた前記絶縁フレームの一側面に配置し、インピーダンスを介して接地した相毎に設けた第一の電極と、
隣接する前記絶縁フレーム同士の間に配置し、スイッチを介して接地した第二の電極と、
前記インピーダンスと前記第一の電極の間に接続した、相毎に設けた電位測定器と、
を具備することを特徴とする真空バルブの圧力監視装置。
【請求項3】
真空バルブと該真空バルブを覆う絶縁フレームを相毎に設けた主回路開閉部と、前記真空バルブの接点を開閉する操作機構部と、を具備する複数相真空遮断器を対象とした、真空バルブの圧力監視方法であって、
相毎に設けた前記絶縁フレームの一側面に配置され、インピーダンスを介して接地された相毎に設けた第一の電極と、
隣接する前記絶縁フレーム同士の間に配置され、スイッチを介して接地された第二の電極と、
の二電極間の電位を、前記スイッチをオンにした状態で測定することで、前記真空バルブの内部圧力の劣化を相毎に監視することを特徴とする真空バルブの圧力監視方法。
【請求項4】
請求項
3に記載の真空バルブの圧力監視方法において、
前記真空バルブ内で放電を開始したときの前記二電極間の電位が、所定の閾値以上の場合に、前記真空バルブの内部圧力が劣化したと判断することを特徴とする真空バルブの圧力監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空バルブの内部圧力の劣化を診断する、圧力診断装置、および、圧力監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真空バルブの圧力診断装置に関する従来技術として、特許文献1がある。
【0003】
この文献の要約書には、「真空バルブの真空度の低下によって発生する異常放電を高圧コンデンサを用いず、かつ精度よく検出でき、したがって構成が簡素で小型な真空度の低下検出装置を提供する」ための解決手段として、「絶縁容器の外周部側に金属シールドに対向するように絶縁支持された埋込形外部電極と、この埋込形外部電極と大地間に接続された分圧コンデンサとを備え、異常放電を分圧コンデンサの端子電圧により検出する」真空度低下検出装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の真空度低下検出装置によっても真空バルブの真空度低下を検出できるが、同文献の構成は、真空バルブを構成する絶縁容器の外側の器壁に外部電極が露出しているため、真空バルブ外部の絶縁性能が低下するという問題がある。具体的には、真空バルブの課電されている固定側端板、もしくは可動側端板、またはその両方と外部電極間で絶縁破壊が発生する恐れがある。これは、各端板と外部電極間の距離を長くして対策することもできるが、その場合は、真空バルブの全長が不要に長くなってしまうという別の問題が発生する。
【0006】
そこで、本発明では、真空バルブを小形化でき、電気的絶縁の信頼性を向上させた真空バルブの圧力診断装置および圧力診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る真空バルブの圧力診断装置は、真空バルブと該真空バルブを覆う絶縁フレームを設けた主回路開閉部と、前記真空バルブの接点を開閉する操作機構部と、を具備する真空遮断器に設置したものであって、前記絶縁フレームの一側面に配置し、インピーダンスを介して接地した第一の電極と、前記絶縁フレームの他側面に配置し、スイッチを介して接地した第二の電極と、前記インピーダンスと前記第一の電極の間に接続した電位測定器と、を具備するものとした。
【0008】
また、本発明に係る真空バルブの圧力監視方法は、真空バルブと該真空バルブを覆う絶縁フレームを設けた主回路開閉部と、前記真空バルブの接点を開閉する操作機構部と、を具備する真空遮断器を対象としたものであって、前記絶縁フレームの一側面に配置され、インピーダンスを介して接地された第一の電極と、前記絶縁フレームの他側面に配置され、スイッチを介して接地された第二の電極と、の二電極間の電位を、前記スイッチをオンにした状態で測定することで、前記真空バルブの内部圧力の劣化を監視するものとした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、真空バルブを小形化でき、電気的絶縁の信頼性を向上させた真空バルブの圧力診断装置および圧力診断方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】本発明の実施例2の圧力監視装置の概略図である。
【
図5】接点間の長さが5mmのときの圧力と放電電圧との相関を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例に係る真空バルブの圧力監視装置と圧力監視方法について、図面を用いて説明する。尚、下記はあくまでも本発明の好適な実施例であり、本発明の適用対象を限定することを意図する趣旨ではない。
【実施例1】
【0012】
図1と
図2は、実施例1の圧力監視装置を設置した真空遮断器100を示すものであり、
図1は真空遮断器の入状態の平面図を示し、
図2は
図1のA-A’の断面図を示している。
【0013】
図1に示すように、本実施例の真空遮断器100は、図中左側の主回路開閉部1と、図中右側の操作機構部2と、図中下側のリンク機構部3で概略構成されている。
【0014】
主回路開閉部1は、接離自在の一対の接点(後述する、固定側電極4h、可動側電極4i)を有する真空バルブ4と、可動側接続導体5と、真空バルブ4と可動側接続導体5を電気的に接続する可撓導体5aと、固定側接続導体6と、これらの導体を操作機構部2やリンク機構部3から電気的に絶縁する絶縁フレーム7と、真空バルブ4の可動側を図中の上下方向に移動させる絶縁ロッド8と、真空バルブ内の接点に接触荷重を加える接圧ばね9と、接圧ばね9を押し上げるレバー接続金具10とで構成されている。
【0015】
真空バルブ4は、円筒絶縁材4aの一端に接合された固定側端板4bと、固定側端板4bを気密に貫通する固定側導体4cと、円筒絶縁材4aの他端に接合された可動側端板4dと、可動側端板4dに一端が接合され、可動部の駆動を許容する蛇腹形状のベローズ4eと、ベローズ4eを気密に貫通し真空を維持しながら軸方向に駆動する可動側導体4fとから構成され、その内部圧力はおよそ10-2Pa以下の真空に保たれている。さらに、この真空バルブ4の内部には、円筒絶縁材4aで支持された筒状の浮遊電位金属4gと、固定側導体4cの可動側導体4f側の端部に接続された固定側電極4hと、可動側導体4fの固定側導体4c側の端部に接続された可動側電極4iとが配置されている。
【0016】
操作機構部2は、操作器2aと、操作器2aの駆動に連動して上下方向に動作する駆動ロッド2bと、これらを収納している操作器ケース2cとで構成されている。なお、操作器2aは、図示していないが、永久磁石とコイルと遮断ばねを使用した電磁操作式の操作器、または永久磁石とコイルに代えて投入ばねを用い、投入ばねと遮断ばねのそれぞれがラッチ機構で保持されるばね操作式の操作器などで構成されている。
【0017】
リンク機構部3は、リンク機構部ケース3aと、これに軸受されたシャフト3bと、レバーL1、L2で構成されている。レバーL1は、一端がシャフト3bに固定され、他端が主回路開閉部1のレバー接続金具10にピンP1で連結されたものである。また、レバーL2は、一端がシャフト3bに固定され、他端が操作機構部2の駆動ロッド2bにピンP2で連結されたものである。
【0018】
以上の構成により、操作機構部2の駆動ロッド2bの上下方向の運動がレバーL1、L2を介して真空バルブ4の可動側に伝わり、真空バルブ4の接点が開閉、すなわち、後述する固定側電極4hと可動側電極4iの接続状態が制御される。
【0019】
ここで、真空バルブ4の内部圧力の劣化、すなわち真空容器内部の圧力が上昇した場合について説明する。真空容器内部の圧力上昇は、一般的に真空容器外部からのガス透過、真空容器の内部部材からのガス放出、ベローズや接合部などに稀に発生するピンホールなどが主要因で発生し、例えば、接点間の長さが5mmのときであれば、
図5のパッシェンカーブに示されるように、圧力がおよそ10
-1Pa以上になると絶縁性能が急激に低下し始める。
【0020】
真空バルブ4を搭載した真空遮断器100が通常運転状態にあるときに真空バルブ4に圧力上昇が生じて絶縁性能が低下すると、真空バルブ4の内部の主回路(固定側導体4c、固定側電極4h、可動側導体4f、可動側電極4i)と、この主回路とは電気的に絶縁されている浮遊電位金属4gの間で放電が発生する。
【0021】
ここで真空バルブ4に圧力上昇が発生しない通常運転時の浮遊電位金属4gの電位は、運転電圧と、真空バルブ構造と、真空バルブ周囲の固定電位部材の配置などによりおよそ決定されるが、真空バルブ4の主回路と浮遊電位金属4g間で放電が発生した場合は、浮遊電位金属の電位は通常運転時の電位に放電パルスが重畳された電位となる。さらに圧力が上昇すると増加した放電パルスが重畳され、最終的に浮遊電位金属4gの電位は運転電圧に程近い状態まで上昇する。
【0022】
以上で説明した構成の真空遮断器100に対し、本実施例では、
図2の断面図に示すように、真空バルブ4を覆う絶縁フレーム7の二側面に、絶縁材11で覆われた電極12と、同じく絶縁材13で覆われた電極14を配置した。これらのうち、電極12は、インピーダンス15を介して接地(電位固定点である大地と接続)されており、電極12とインピーダンス15の間には電極12の電位を測定する電位測定器16が接続されている。また、電極14は、スイッチ17を介して接地されており、スイッチ17をオンすることで電極14を接地させることができる。このような構成により、スイッチ17をオンしたときに、接地された電極14に対する、電極12の電位を、電位測定器16で測定することができる。なお、
図2においては、電極12と電極14を絶縁フレーム7の対向関係にある二側面に配置(略二字状に配置)したが、両電極を垂直関係にある二側面に配置(略L字状に配置)しても良い。また、
図1、
図2では、電極12と電極14の形状を特定していないが、各電極は真空バルブ4を絶縁フレーム7の各側面に投影した形状よりも大きく、かつ、絶縁フレーム7の各側面よりも小さければ、任意の形状として良い。
【0023】
このように、本実施例の圧力監視装置は、電極12と電極14を絶縁フレーム7の外側に配置しているため、両電極間の絶縁距離を長くすることができ、かつ、電極12と電極14はそれぞれ絶縁材11、13で覆われているため、電極12と電極14の端部電界が緩和され、両電極を配置しても所定の絶縁性能を保持した状態にできる。
【0024】
また、電極14に接続したスイッチ17をオンすることで、真空バルブ4の内部に配置した浮遊電位金属4gの電位を意図的に低下させることができ、スイッチ17のオフ時の放電圧力に比べて低い圧力で放電が発生する。つまり、スイッチ17をオンすることで、真空バルブ4の圧力劣化をより早く検知することができる。
【0025】
なお、真空バルブ4の開状態時に圧力監視すると、真空バルブ4に圧力上昇が生じている状態であったときは、真空バルブ4の電源側となる一方の主回路から負荷側となる他方の主回路に放電する問題があるため、真空バルブの圧力監視を真空バルブが閉状態のときにのみ圧力監視を実施することで、地絡事故を防止できる安全性と信頼性を向上させることができる。
【0026】
更に本実施例に係る圧力監視装置によれば、圧力監視精度が高まるので、特に真空圧力に関して高信頼性の真空遮断器の提供が可能になる。加えて、上述したように、電極12と電極14が絶縁フレーム7の外側に配置してあるため、絶縁距離を長くすることができ、かつ電極12と電極14は絶縁材11、13で覆われているため、電極12と電極14の端部の電界が緩和されるため、電極12と電極14を配置しても所定の絶縁性能の低下は生じさせない。この意味合いにおいても絶縁信頼性の向上が期待できる。
【実施例2】
【0027】
次に、本発明の実施例2に係る圧力監視装置を説明する。なお、実施例1と同様の部分については重複説明を省略する。
【0028】
図3と
図4は、実施例2の圧力監視装置を設置した真空遮断器200を示すものであり、
図3は真空遮断器の入状態の平面図を示し、
図4は
図3のB-B’の断面図を示している。なお、
図2と
図4の比較から明らかなように、実施例1の真空遮断器100は単相真空遮断器であるのに対し、本実施例の真空遮断器200はU相、V相、W相からなる三相電流に対応した三相真空遮断器である。なお、以下では、真空遮断器200を三相真空遮断器として説明するが、真空遮断器200は、三相以外の多相遮断器であっても良い。
【0029】
図3に示すように、本実施例の圧力監視装置は、絶縁フレーム7(7u~7w)と操作器ケース2c間に絶縁材11(11u~11w)で覆った電極12(12u~12w)を配置するとともに、各相の絶縁フレーム7間に絶縁材13で覆った電極14を配置したものである。
【0030】
そして、
図4に示すように、電極12(12u~12w)は、それぞれインピーダンス15(15u~15w)を介して接地されており、また、それぞれの電極12とインピーダンス15の間には電極12の電位を測定する電位測定器16(16u~16w)がそれぞれ接続されている。
【0031】
本実施例では、実施例1と同様に、スイッチ17をオンしたときに真空バルブ4の圧力監視を行うが、真空遮断器200の各相に圧力監視用の電極12(12u~12w)が配置されているので、例えば、U相の真空バルブ4の圧力に異常が生じた場合には、対応する電位測定器16uのみが異常を検出する。従って、本実施例の圧力監視装置では、三相複数存在する真空バルブ4のどれが圧力劣化したのかを判別することができる。
【0032】
なお、
図4では、絶縁フレーム7u、7vの間、および、絶縁フレーム7v、7wの間に電極14を配置したが、さらに、絶縁フレーム7uの他の側面(
図4中の上面)、または、絶縁フレーム7wの他の側面(
図4中の下面)にも電極14を配置しても良い。
【符号の説明】
【0033】
100、200 真空遮断器、
1 主回路開閉部、
2 操作機構部、
2a 操作器、
2b 駆動ロッド、
2c 操作器ケース、
3 リンク機構部、
3a リンク機構部ケース、
3b シャフト、
4、4u、4v、4w 真空バルブ、
4a 円筒絶縁材、
4b 固定側端板、
4c 固定側導体、
4d 可動側端板、
4e ベローズ、
4f 可動側導体、
4g 浮遊電位金属、
4h 固定側電極、
4i 可動側電極、
5 可動側接続導体、
5a 可撓導体、
6 固定側接続導体、
7、7u、7v、7w 絶縁フレーム、
8 絶縁ロッド、
9 接圧ばね、
10 レバー接続金具、
11、11u、11v、11w、13 絶縁材、
12、12u、12v、12w、14 電極、
15、15u、15v、15w インピーダンス、
16、16u、16v、16w 電位測定器、
17 スイッチ