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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】真空遮断器
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/664 20060101AFI20221114BHJP
   H01H 1/06 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
H01H33/664 C
H01H1/06 J
H01H1/06 K
H01H1/06 M
H01H33/664 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019043602
(22)【出願日】2019-03-11
(65)【公開番号】P2020149780
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120444
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】山城 啓輔
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-289652(JP,A)
【文献】特開平11-250782(JP,A)
【文献】特開2003-092050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/664
H01H 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器の内部で接離可能に設けられて接触状態で通電し、離間状態で通電を遮断する可動接触子及び固定接触子を備えた真空遮断器であって、
前記可動接触子及び前記固定接触子の電極部は、相互に対向する対向面が形成された接点部を備え、
前記対向面の少なくとも一方は、前記接触状態で他方の前記対向面に接触する接触領域と、他方の前記対向面からの距離が前記接触領域よりも大きい凹部と備え、
前記凹部の底部は、前記接触領域に比べて最大表面粗さ(Rmax)が小さく形成されていることを特徴とする真空遮断器。
【請求項2】
前記接点部は、前記対向面に縦磁界を発生させるためのスリットを備えていることを特徴とする請求項1に記載の真空遮断器。
【請求項3】
前記スリットは、前記接点部の外縁から前記凹部の前記底部に延出していることを特徴とする請求項2に記載の真空遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空となる空間内で接触子を離間して電流を遮断する真空遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真空容器内に接離可能な一対の電極を設け、電流遮断時に電極間に発生したアークを真空中で消弧する真空遮断器が利用されている(特許文献1参照)。真空遮断器は、変電機器や受配電機器での高電圧大電流を遮断できるよう遮断性能を向上することが要求される。また、地球温暖化係数の大きな絶縁ガスを使うことなく運用できるクリーンな機器として真空遮断器のニーズがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-92050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
真空遮断器の電流遮断時における電極間の絶縁破壊(アークの発生)については、パッシェン曲線に基づいて説明できる。図12は、パッシェン曲線のグラフである。図12のパッシェン曲線のグラフでは、横軸を気圧×ギャップ長、縦軸を絶縁破壊電圧(絶縁強さ)とする。パッシェン曲線では、絶縁破壊電圧の極小値Vminが得られる横軸のギャップ長×気圧をさらに小さくすると、絶縁破壊電圧は急激に立ち上がることがわかっている。
【0005】
真空遮断器で扱う真空圧力下(例えば10-4Pa以下程度)では、図12のグラフにおいて、絶縁破壊電圧が極小値Vminとなる横軸の値より小さい値での条件下で絶縁破壊が発生する。また、気圧が真空となって略一定なので、横軸の気圧×ギャップ長の値は、ギャップ長に応じて変化し、ギャップ長が大きくなる程、絶縁破壊電圧が小さくなる。従って、ギャップ長が小さくなる領域に比べて大きくなる領域の方が、絶縁破壊が発生し易い条件となる。
【0006】
本発明者は、このようなギャップ長による絶縁破壊の発生条件について研究し、接点部に凹部を形成する電極を用いることを検討した。
【0007】
ところで、真空遮断器における真空下の絶縁破壊は、大気中や高圧力下におけるガス雰囲気環境での気中絶縁破壊と異なる。ガス雰囲気環境下では、ガス分子と電圧によって加速された電子との衝突電離によって電子増倍が進み、電子雪崩となって絶縁破壊に至る。これに対し、真空遮断器で扱う真空圧力下では、ガス雰囲気が少ない条件であるため、電子がガス分子と衝突するために必要な平均自由工程が著しく長い、具体的には、陰極から出た電子が無衝突で電極に衝突する長さとなる。よって、絶縁破壊のきっかけとなるのは、最初に陰極から電界電子放出によって発生する電子である。
【0008】
本発明者は、かかる電界電子放出による初期電子の発生を抑制することが、真空遮断器の絶縁性能向上において重要なポイントと捉えた。更に、本発明者は、様々な試行錯誤の結果、電界電子放出による初期電子発生の抑制と接点部の表面粗さとの関係性について鋭意研究し、この研究にて上述の凹部を形成した接点部での絶縁性能を向上できる発明を案出した。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、接点部での絶縁性能向上を図ることができる真空遮断器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明における一態様の真空遮断器は、真空容器の内部で接離可能に設けられて接触状態で通電し、離間状態で通電を遮断する可動接触子及び固定接触子を備えた真空遮断器であって、前記可動接触子及び前記固定接触子の電極部は、相互に対向する対向面が形成された接点部を備え、前記対向面の少なくとも一方は、前記接触状態で他方の前記対向面に接触する接触領域と、他方の前記対向面からの距離が前記接触領域よりも大きい凹部と備え、前記凹部の底部は、前記接触領域に比べて最大表面粗さ(Rmax)が小さく形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電流遮断時に各接触子の接点部は真空下にて離間するので、接点部間の距離が長い方、つまり、凹部の底部の方に電界を集中でき、接触領域に比べて凹部を放電し易い状態にすることができる。更に、凹部の表面粗さが小さくなる、言い換えると放電し易い領域の表面粗さが小さくなるので、電界電子放出による初期電子の発生を抑制でき、結果として接点部での絶縁性能向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施の形態に係る真空遮断器を一部断面視した概略構成図である。
図2図2Aは、第1の実施の形態における固定接触子の電極部を上方から見た説明図である。図2Bは、接点部における図2AのA-A線の縦断面図である。
図3図3A及び図3Bは、第2の実施の形態に係る電極部の図2A及び図2Bと同様の説明図である。
図4図4A及び図4Bは、第3の実施の形態に係る電極部の図2A及び図2Bと同様の説明図である。
図5図5A及び図5Bは、第4の実施の形態に係る電極部の図2A及び図2Bと同様の説明図である。
図6】第5の実施の形態に係る接点部の説明用断面図である。
図7】第6の実施の形態に係る接点部の説明用断面図である。
図8図8A及び図8Bは、第7の実施の形態に係る電極部の図2A及び図2Bと同様の説明図である。
図9】第8の実施の形態に係る接点部の説明用断面図である。
図10】第9の実施の形態に係る接点部の説明用断面図である。
図11】第10の実施の形態に係る接点部の説明用断面図である。
図12】パッシェン曲線のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施することができるものである。以下の図においては、説明の便宜上、一部の構成を省略することがある。
【0014】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係る真空遮断器を一部断面視した概略構成図である。図1に示すように、真空遮断器10は、真空容器11と、真空容器11の内部で接離可能に設けられた可動接触子12及び固定接触子14を備えている。真空遮断器10では、可動接触子12及び固定接触子14が接触状態(図示省略)で通電(閉路)し、図1に示す離間状態で通電を遮断(開路)するものである。
【0015】
真空容器11は、セラミック等によって形成される絶縁筒15と、絶縁筒15の図1中上端側及び下端側を閉塞するように設けられた端板16、17とを備えている。上方の端板16には、可動接触子12が上下動可能に貫通して設けられている。下方の端板17には、固定接触子14が固定されている。
【0016】
可動接触子12は、可動側ロッド19を備え、可動側ロッド19は、ベローズ等の気密部材(不図示)を介して真空容器11内の真空状態を保ちながら軸方向(上下方向)に移動可能に設けられる。可動側ロッド19は、引張りばねとなる遮断ばね20に接続されており、遮断ばね20を引き伸ばした状態でラッチ等(不図示)を介して係止されつつ、可動接触子12及び固定接触子14が接触して通電される。この状態から、ラッチ等を動作させることで、遮断ばね20の復元力で可動側ロッド19を上方に移動させて固定接触子14から可動接触子12を離間動作して通電が遮断される。
【0017】
固定接触子14は、固定側ロッド22を備え、固定側ロッド22は、下方の端板17に装着された固定ブロック23を介して固定されている。
【0018】
可動接触子12は、可動側ロッド19の一端部(図1中下端部)に電極部30を備えている。固定接触子14は、固定側ロッド22の一端部(図1中上端部)に電極部40を備えている。本実施の形態では、各電極部30、40は、上下対称となる向きに設けられて対向するように配置されている。各電極部30、40の外側には絶縁筒15の内周面を保護するシールド25が設けられている。
【0019】
電極部30、40は、円柱状の外形をなす電極本体部31、41と、電極本体部31、41の端部にろう付け等によって連結された円板状の接点部32、42とを備えている。固定接触子14の接点部42にあっては上面が対向面43として形成され、可動接触子12の接点部32の下面となる対向面33と相互に対向するようになる。
【0020】
電極本体部31、41には、その軸線に対して傾斜しつつ螺旋状に延びる傾斜スリット34、44が複数本(本実施の形態では6本)形成されている。傾斜スリット34、44は、電極本体部31、41の外周面から所定深さで形成されている。接点部32、42には、その外周縁に一端が形成されるスリット35、45が形成され、スリット35、45の一端と傾斜スリット34、44の上端とが連続するように形成される。
【0021】
図2Aは、第1の実施の形態における固定接触子の電極部を上方から見た図である。図2Bは、固定接触子の接点部における図2AのA-A線の縦断面図である。図2A及び図2Bに示すように、固定接触子14における接点部42の対向面43には、その外周縁に沿う所定幅で円環状に形成される接触領域47と、接触領域47より面内中心側に形成される凹部48とが形成される。かかる接触領域47及び凹部48の形成によって、対向面43では、接触領域47より凹部48の方が可動接触子12の対向面33(図1参照)に対する距離が長くなる。また、対向面43において、通電(閉路)時に可動接触子12の対向面33と接触する領域が接触領域47となる。
【0022】
ここで、凹部48の内部における底部48a(図2Aで網点を付した領域)は、接触領域47より最大表面粗さ(Rmax)が小さく滑らかな面として形成されている。一例を挙げると、底部48aの最大表面粗さRmaxが0.25μm、接触領域47の最大表面粗さRmaxが8μmに形成される。
【0023】
接点部42におけるスリット45は、複数本(本実施の形態では6本)形成され、接点部42外周縁の一端から内方となる凹部48の底部48aに延出している。そして、スリット45の他端(内方端)は、接触領域47と凹部48との境界より内方となる底部48aに位置するように形成される。なお、図示省略したが、可動接触子12における接点部32においては、対向面33に凹部が形成されていないものの、スリット35がスリット45と同様の形状をなしている。スリット35、45及び傾斜スリット34、44によって、電極部30、40の通電路がコイル状となって縦磁界(図1中上下方向に平行な方向の磁界)が発生し、遮断特性を向上できるようになる。
【0024】
なお、本実施の形態では、可動接触子12における接点部32の対向面33は、スリット35の形成領域以外は平坦な面として形成され、対向面33全体が接触領域とされる。
【0025】
真空遮断器10において、可動接触子12及び固定接触子14が接触する通電状態では、固定接触子14の接触領域47と、これに対向する位置の可動接触子12の対向面33とが接触する。一方、遮断状態において、可動接触子12の対向面33と、固定接触子14における接触領域47及び凹部48の底部48aとは所定距離離れた非接触状態で対向することとなる。
【0026】
真空遮断器10にて通電状態から電流を遮断すべく、固定接触子14及び可動接触子12の各接点部32、42が離間されると、各接点部32、42の間にアークが発生する。
【0027】
電流遮断時の各接点部32、42にて、相互に接触する対向面33と接触領域47とが離間された直後には、対向面33と接触領域47との離間距離に対し、対向面33と凹部48の底部48aとの離間距離の方が大きくなる。上述のパッシェン曲線(図12参照)の説明に基づき、対向面33に対して離間距離が大きい凹部48の底部48aの方が放電し易い状態となり、アークが選択的に発生する。つまり、接触領域47でアークが発生することを抑制し、凹部48の底部48aで安定して絶縁破壊可能な状態にすることができる。
【0028】
また、凹部48の底部48aにおける表面粗さを小さくしたので、絶縁破壊が発生する部位の表面粗さを小さくでき、底部48aにて、上述した電界電子放出による初期電子の発生を抑制することができる。これにより、絶縁破壊のきっかけが生じ難くなり、絶縁破壊電圧を高い値に保持して対向面33と凹部48の底部48aとの間の絶縁性能を向上でき、ひいては、真空遮断器10の遮断性能を向上することができる。
【0029】
ここで、電流遮断時にあっては、縦磁界を発生させるためのスリット35、45におけるエッヂ部分にマクロな電界集中が発生する。固定接触子14のスリット45は、凹部48の底部48aと接触領域47との両方に形成されるので、より放電し易い底部48a内に位置するスリット45のエッヂ部分で電界集中して絶縁破壊するようになる。これにより、接触領域47での絶縁破壊を防止して凹部48にて安定して絶縁破壊が可能となり、絶縁性能(絶縁破壊電圧)を向上させることができる。
【0030】
このような第1の実施の形態によれば、底部48aの最大表面粗さRmaxを小さく設定することで、到達耐電界強度を上昇することができる。かかる到達耐電界強度は、電極材料、到達真空度、コンディショニングの有無、加工条件によって大きく異なるものの、底部48aの最大表面粗さRmaxの変化(例えば、2.5μmと0.8μm)で約1.7倍程度上昇可能となる。
【0031】
ところで、真空遮断器10にあっては、保管や流通、施工時に、可動接触子12の対向面33に対して接触領域47が接触或いは圧接したり、実運転前の試験時に各接触子12、14を繰り返し開閉したりする場合がある。この場合であっても、凹部48の底部48aにあっては、可動接触子12の接点部32に対して非接触に保つことができ、最大表面粗さが小さい良好な表面状態を安定して確保でき、上述の絶縁性能を維持することができる。しかも、凹部48の底部48aに比べて接触領域47を粗い面とする関係性になり、実運転前の試験や運搬等を行ったとしても接触領域47の方が粗くなる傾向が強くなるので、かかる関係性を維持し易くすることができる。
【0032】
次に、本発明の前記以外の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、説明する実施の形態より前に記載された実施の形態と同一若しくは同等の構成部分については同一符号を用いる場合があり、説明を省略若しくは簡略にする場合がある。また、図3以降の図面にて、図2Aと同様の網点が付された領域は、第1の実施の形態の底部48aと同様の最大表面粗さに形成される。
【0033】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について図3を参照して説明する。図3A及び図3Bは、第1の実施の形態に係る電極部の図2A及び図2Bと同様の説明図である。図3A及び図3Bに示すように、第2の実施の形態では、第1の実施の形態に対し、凹部48の形状を変更している。
【0034】
第2の実施の形態において、凹部48は溝状に形成され、接点部42の外周縁と同一中心となる1つの円(閉ループ)の軌跡に沿って形成されている。第2の実施の形態においても、スリット45の他端(内方端)は、凹部48の底部48aに位置するように形成される。なお、接点部42の対向面43にて、凹部48の外側領域だけでなく内側領域も接触領域47として形成されるようになる。第2の実施の形態においても、底部48aは、接触領域47より最大表面粗さ(Rmax)が小さく滑らかな面として形成されている。
【0035】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について図4を参照して説明する。図4A及び図4Bは、第3の実施の形態に係る電極部の図2A及び図2Bと同様の説明図である。図4A及び図4Bに示すように、第3の実施の形態では、第2の実施の形態に対し、溝状の凹部48を同心円上に二重に形成した点を変更している。第3の実施の形態においては、スリット45の他端(内方端)は、二重の凹部48のうち、内側の凹部48の底部48aに位置するように形成される。
【0036】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について図5を参照して説明する。図5A及び図5Bは、第4の実施の形態に係る電極部の図2A及び図2Bと同様の説明図である。図5A及び図5Bに示すように、第4の実施の形態では、第2の実施の形態に対し、溝状の凹部48を同心円上に三重に形成した点を変更している。第4の実施の形態においては、スリット45の他端(内方端)は、三重の凹部48のうち、最も外側の凹部48の底部48aに位置するように形成される。第2~第4の実施の形態によれば、溝状に凹部48を形成しても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができ、加工容易性や材質等を考慮して凹部48の形成数を変更することで製造コストの削減効果と絶縁性能向上効果とがバランス良く得られるようになる。
【0037】
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態について図6を参照して説明する。図6は、第5の実施の形態に係る接点部の説明用断面図である。図6に示すように、第5の実施の形態では、第1の実施の形態に対し、可動接触子12の接点部32においても、固定接触子14の接点部42における凹部48と同様の凹部38を形成している。図6では、平面視した場合の各凹部38、48の大きさ及び形状を同一としたが、これに限られず、各凹部38、48の大きさ、形状、形成位置が異なっていてもよい。
【0038】
第5の実施の形態によれば、凹部38、48の底部38a、48a間の距離(ギャップ長)を長くすることができ、高電界でも安定した絶縁性能を維持することができる。
【0039】
[第6の実施の形態]
次に、本発明の第6の実施の形態について図7を参照して説明する。図7は、第6の実施の形態に係る接点部の説明用断面図である。図7に示すように、第6の実施の形態では、第5の実施の形態に対し、可動接触子12の接点部32における凹部38を変更している。
【0040】
第6の実施の形態において、可動接触子12の凹部38は、第2の実施の形態の凹部48と同様に円の軌跡に沿う溝状に形成されている。図7では、固定接触子14の凹部48より可動接触子12の凹部38の方が大きい形寸法に形成され、上下に重ならない位置に設定されている。第6の実施の形態によれば、絶縁破壊する部位が同じになり難くなって当該部位の自由度を確保することができる。
【0041】
[第7の実施の形態]
次に、本発明の第7の実施の形態について図8を参照して説明する。図8A及び図8Bは、第7の実施の形態に係る電極部の図2A及び図2Bと同様の説明図である。図8A及び図8Bに示すように、第7の実施の形態では、第1の実施の形態に対し、凹部48の底部48aに段差を設けて2段の高さを有する形状に形成している。なお、かかる段差の段数は適宜増加させてもよい。
【0042】
[第8の実施の形態]
次に、本発明の第8の実施の形態について図9を参照して説明する。図9は、第8の実施の形態に係る接点部の説明用断面図である。図9に示すように、第8の実施の形態では、第5の実施の形態に対し、両方の凹部38、48の底部38a、48aに段差を設けて2段の高さを有する形状に形成している。
【0043】
[第9の実施の形態]
次に、本発明の第9の実施の形態について図10を参照して説明する。図10は、第9の実施の形態に係る接点部の説明用断面図である。図10に示すように、第9の実施の形態では、第6の実施の形態(図7参照)に対し、両方の凹部38、48の底部38a、48aに段差を設けて2段の高さを有する形状に形成している。
【0044】
[第10の実施の形態]
次に、本発明の第10の実施の形態について図11を参照して説明する。図11は、第10の実施の形態に係る接点部の説明用断面図である。図11に示すように、第10の実施の形態では、第5の実施の形態(図6参照)に対し、可動接触子12における凹部38の底部38aに段差を設けて2段の高さを有する形状に形成している。固定接触子14の凹部48については、第1及び第5の実施の形態と同様に、段差を有しない形状に形成している。
【0045】
第7~第10の実施の形態のように、底部38a、48aを2段の高さにすることによっても、ギャップ長となる底部38a、48a間の距離や、底部38a、48a及びこれに対向する対向面33、43間の距離を長くすることができ、高電界でも安定した絶縁性能を維持することができる。
【0046】
なお、本発明は上記各実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状、向きなどについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0047】
上記各実施の形態において、可動接触子12の接点部32と、固定接触子14の接点部42とで凹部38、48の形状、大きさ、形成位置、形成の有無が異なるものにあっては、各接点部32、42の形状等を逆にしてもよい。更に、平面視した場合の各凹部38、48の形状等は、円形及び円環状に限定されるものでなく、底部38a、48aの最大表面粗さRmaxが小さくなる限りにおいて、楕円形や多角形にする等、種々の変更が可能である。
【0048】
また、スリット35、45は、上記各実施の形態と同様の縦磁界を発生する限りにおいて、延出方向に対し不連続に形成してもよい。但し、電流遮断時にマクロな電界集中を発生させるべく、スリット35、45の一部が凹部38、48の底部38a、48aに形成されることが好ましい。
【0049】
また、電極部30、40において、接点部32、42と電極本体部31、41とを別体として固定した構成としたが、これらを一体に形成してもよい。
【符号の説明】
【0050】
10 真空遮断器
11 真空容器
12 可動接触子
14 固定接触子
30 電極部
32 接点部
33 対向面
35 スリット
37 接触領域
38 凹部
38a 底部
40 電極部
42 接点部
43 対向面
45 スリット
47 接触領域
48 凹部
48a 底部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12