(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】仕切り部材及び床面仕切り構造
(51)【国際特許分類】
E04D 13/04 20060101AFI20221114BHJP
E04B 1/64 20060101ALI20221114BHJP
E04B 1/00 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
E04D13/04 J
E04B1/64 B
E04B1/00 502N
(21)【出願番号】P 2019058510
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2021-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000222495
【氏名又は名称】東リ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】特許業務法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松川 尭彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 菜摘
【審査官】清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】特許第6168441(JP,B2)
【文献】特開2014-201900(JP,A)
【文献】特開2018-062746(JP,A)
【文献】特開2018-003416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/04
E04B 1/64
E04B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面とパーティションの間に設置される仕切り部材において、
前記床面に取り付けられるベース板部と、前記ベース板部の横方向中途部位に
設けられ且つ縦方向に立ち上げられた起立壁部と、を有し、
前記起立壁部が、最小横長部と、前記最小横長部の上方において横方向に突設された返し部と、を有し、
前記最小横長部の上端が前記起立壁部の縦方向中間部よりも上方に配置されており、
前記起立壁部の側面が、第1凹曲面領域と、前記第1凹曲面領域よりも曲率半径が小さい第2凹曲面領域と、を有し、
前記第1凹曲面領域が、前記最小横長部の下方に形成され、前記第2凹曲面領域が、前記最小横長部の上方に形成されている、仕切り部材。
【請求項2】
前記第1凹曲面領域の上端と前記第2凹曲面領域の下端が連続し、前記第1凹曲面領域の上端と前記第2
凹曲面領域の下端の交点に前記最小横長部が配置されている、請求項1に記載の仕切り部材。
【請求項3】
前記最小横長部が、縦方向において所定の長さを有し、
前記第1凹曲面領域の上端が、前記最小横長部の下端に連続し、前記第2凹曲面領域の下端が、前記最小横長部の上端に連続している、請求項1に記載の仕切り部材。
【請求項4】
前記横方向に突設された返し部の突出長が、1.5mm~8mmである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の仕切り部材。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の仕切り部材
と、床シート材と、を有し、
前記仕切り部材のベース板部が、床面上に取り付けられ、且つ、前記仕切り部材のベース板部の両側端部に、床シート材の端部が接合されて
いる、床面仕切り構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンションやアパートなどの集合住宅、オフィスビル、商業施設ビルなどの集合建築物の、ベランダや共用廊下などの床面とパーティションの間に設置される仕切り部材及びそれを用いた床面仕切り構造に関する。
【背景技術】
【0002】
マンションやアパートなどの集合住宅、オフィスビル、商業施設ビルなどの集合建築物は、通常、隣接する部屋が一定の区画ごとに壁で仕切られている。また、集合建築物のベランダや共用廊下などの床面は、部屋の区画と一体的に区画されている場合が多い。そのような床面を区画ごとに区切るため、その境界部にパーティション(いわゆる仕切り板)が設置されることがある。かかるパーティションは、その下端がベランダなどの床面から離れた状態で、建築物の壁面に取り付けられる。従って、パーティションの下端と床面の間には、間隙が存在する。従来、かかる間隙から排水や雨水或いはゴミなどが、パーティションで区切られた隣の区画へ侵入することがあるので、これを防止するために、床面とパーティションの間に仕切り部材を設置することが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1の[0049]及び
図10には、排水溝2q,2qが形成された水平部2の中央部に、上端部に水返し部3q,3qの設けられた立ち上がり部3が嵌合されている仕切り部材が開示されている。
また、特許文献2の[0033]及び
図4には、排水溝4が形成された水平部2の中央部に、上端部に水返し部3q,3qの設けられた立ち上がり部3が一体的に成形されている仕切り部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-201900号公報
【文献】特許第6168441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2の仕切り部材にあっては、比較的弱く水が流れてきた場合には立ち上がり部によって水を阻止して排水溝で排水できるが、仕切り部材の側方からその中央部側に向かって比較的強い水流が立上り部に当たったときには、水が立ち上がり部を越えて隣の区画に侵入するおそれがある。特に、清掃時において、デッキブラシや箒などによって勢いを増した水やホースから排出される水などのような、流れの速い水が仕切り部材に当たる場合に、水が隣の区画に侵入し易い傾向にある。
このような点に鑑みて、仕切り部材の形状について更に検討する必要がある。
【0006】
本発明の目的は、隣の区画に水が浸入することを効果的に防止できる仕切り部材及び床面仕切り構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、床面とパーティションの間に設置される仕切り部材において、前記床面に取り付けられるベース板部と、前記ベース板部の横方向中途部位に設けられ且つ縦方向に立ち上げられた起立壁部と、を有し、前記起立壁部が、最小横長部と、前記最小横長部の上方において横方向に突設された返し部と、を有し、前記最小横長部の上端が前記起立壁部の縦方向中間部よりも上方に配置されており、前記起立壁部の側面が、第1凹曲面領域と、前記第1凹曲面領域よりも曲率半径が小さい第2凹曲面領域と、を有し、前記第1凹曲面領域が、前記最小横長部の下方に形成され、前記第2凹曲面領域が、前記最小横長部の上方に形成されている。
【0008】
本発明の好ましい仕切り部材は、前記第1凹曲面領域の上端と前記第2凹曲面領域の下端が連続し、前記第1凹曲面領域の上端と前記第2凹曲面領域の下端の交点に前記最小横長部が配置されている。
本発明の好ましい仕切り部材は、
前記最小横長部が、縦方向において所定の長さを有し、前記第1凹曲面領域の上端が、前記最小横長部の下端に連続し、前記第2凹曲面領域の下端が、前記最小横長部の上端に連続している。
本発明の好ましい仕切り部材は、前記横方向に突設された返し部の突出長が、1.5mm~8mmである。
【0009】
本発明の別の局面によれば、床面仕切り構造を提供する。
本発明の床面仕切り構造は、上記いずれかの仕切り部材と、床シート材と、を有し、前記仕切り部材のベース板部が、床面上に取り付けられ、且つ、前記仕切り部材のベース板部の両側端部に、床シート材の端部が接合されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の仕切り部材を床面とパーティションの間に設置することにより、隣の区画に水が浸入することを効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図6】仕切り部材を床面に施工した床面仕切り構造を示す斜視図。
【
図7】
図6の矢印VII方向から見た左側面図。ただし、床面などの建築物を断面で示している。
【
図8】
図7のVIII-VIII線で切断した端面図。ただし、パーティションの上方を省略している。
【
図14】実施例1及び2で使用した仕切り部材の正面図。
【
図16】比較例1及び2で使用した仕切り部材の正面図。
【
図18】各実施例及び比較例の仕切り部材を用いた、水の戻り状態の試験方法の参考正面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について、適宜図面を参照しつつ説明する。
本明細書において、「正面視」は、仕切り部材を
図3などの正面図から見ることをいい、「正面視での形状又は正面視形状」は、
図3などの正面図から見たときの形状をいう。仕切り部材の横方向及び縦方向は、仕切り部材を
図3などの正面図から見たときを基準とする。奥行き方向は、前記横方向及び縦方向の双方に対して直交する方向をいう。また、「横長」は、横方向と平行な方向における直線長さをいい、「縦長」は、縦方向と平行な方向における直線長さをいう。
本明細書において、「下限値X~上限値Y」で表される数値範囲は、下限値X以上上限値Y以下を意味する。前記数値範囲が別個に複数記載されている場合、任意の下限値と任意の上限値を選択し、「任意の下限値~任意の上限値」を設定できるものとする。
また、各図における、厚み及び大きさなどの寸法及び曲線の曲率半径などは、実際のものとは異なっている場合があることに留意されたい。
なお、本発明の仕切り部材は、精密機器ではないので、実施上、厳密な精度は要求されない。本明細書の開示において許容できる範囲の仕切り部材は、本発明に包含されるものとする。
【0013】
[1つの実施形態]
図1は、第1実施形態の仕切り部材1の斜視図であり、
図2は、その平面図であり、
図3は、その正面図である。正面図には、仕切り部材1の端面が表れている。
図1乃至
図3において、仕切り部材1は、ベース板部2と、ベース板部2の横方向中途部位に連結された起立壁部3であって縦方向に立ち上げられた起立壁部3と、を有する。
ベース板部2は、仕切り部材1を床面に取り付ける際に、裏面2b側を床面に向けて床面に取り付けられる部分である。ベース板部2の裏面2bは、仕切り部材1の床面に対する取り付け面となる。前記裏面2bとは反対側であるベース板部2の表面2aは、起立壁部3が連結された部分を除いて、正面視で曲線に形成された凹曲面領域A2を有する。
また、起立壁部3は、最小横長部31と、前記最小横長部31の上方において横方向に突設された返し部32と、を有する。前記起立壁部3の側面3cは、正面視で曲線に形成された凹曲面領域B1を有する。そして、前記ベース板部2の凹曲面領域A2の端と起立壁部3の凹曲面領域B1の端が連続している。
なお、正面視で曲線に形成された凹曲面領域とは、その領域を立体的に見ると奥行き方向に延びる凹曲面であり、その領域を正面から見ると曲線であることを意味する。また、後述する水平面領域についても、立体的に見ると奥行き方向に延びる水平面であり、正面から見ると水平な直線であることを意味する。
【0014】
<仕切り部材の概要>
図1及び
図2を参照して、仕切り部材1は、奥行き方向に延びる長尺状であり、
図2の平面視では、仕切り部材1は、奥行き方向に延びる長尺帯状である。なお、
図1及び
図2においては、同じ形状が連続した仕切り部材1の中途部を省略している。
仕切り部材1は、奥行き方向において、
図3に示す正面視形状(仕切り部材1の端面形状)が連なって構成されている。このため、仕切り部材1は、奥行き方向のいずれの箇所で横方向に切断しても、同じ形状(
図3に示す正面視形状)が表れる。
仕切り部材1の奥行き方向長さは、特に限定されず、適宜設定でき、例えば、500mm~4000mmである。なお、比較的長い仕切り部材1は、施工場所に応じて、適宜裁断して使用される。
【0015】
ベース板部2と返し部32を有する起立壁部3は、一体的に形成されている。一体的に形成されたベース板部2及び起立壁部3は、同じ形成材料から形成される。もっとも、ベース板部2と起立壁部3が別体で形成され、両者が接着剤などで固着されている或いは嵌合構造で一体化されているものでもよい。
ベース板部2と起立壁部3の形成材料は、特に限定されず、軟質樹脂などの軟質材料;硬質樹脂、木材、アルミニウムなどの金属などの硬質材料;が挙げられる。成形容易であることから、ベース板部2及び起立壁部3は合成樹脂で形成することが好ましく、容易に切断でき、施工性にも優れていることから、ベース板部2及び起立壁部3は軟質樹脂で形成されていることが好ましい。軟質樹脂としては、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂などの合成樹脂、各種エラストマーなどが挙げられる。なお、本明細書において、軟質樹脂及び硬質樹脂は、JIS K6900(1994)のプラスチック-用語に記載の軟質プラスチック及び硬質プラスチックを意味する。
【0016】
軟質樹脂で一体成形された仕切り部材1(ベース板部2及び起立壁部3)は、柔らかく、人力で容易に湾曲させることができる。
例えば、仕切り部材1は、例えば、軟質の塩化ビニル系樹脂で形成される。軟質の塩化ビニル系樹脂の具体的な組成は、特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル100重量部に対し、フタル酸エステルなどの可塑剤を40重量部~80重量部、炭酸カルシウムなどの充填剤を20質量部~50質量部、安定剤を1重量部~5重量部、滑剤を5重量部~3重量部、必要に応じてその他の添加剤を微量含む。前記ポリ塩化ビニルは、例えば、平均重合度が700~1200、好ましくは800~1000のサスペンション塩化ビニルを用いることが好ましい。かかる塩化ビニル系樹脂を用いることにより、適度な硬度の仕切り部材1を形成でき、0℃の環境下においてもカッターナイフで容易に切断することが可能な仕切り部材1を提供できる。
また、仕切り部材1の形成材料には、必要に応じて、耐候性改善剤、紫外線吸収剤、防汚剤、抗菌剤、防カビ剤、静電気防止剤などの各種添加物を加えてもよい。或いは、仕切り部材1の表面に、紫外線吸収コーティング、汚れが付着しにくい塗装、抗菌処理、防カビ処理、静電気防止処理などの表面処理を施してもよい。
【0017】
前記形成材料を押出し成形することにより、ベース板部2と返し部32を含む起立壁部3が同時に成形された仕切り部材1を得ることができる。
押出し成形品は、通常、非常に長いので、適宜な寸法に裁断することにより、
図1及び
図2に示すような奥行きの仕切り部材1が得られる。
【0018】
図1乃至
図3に示す仕切り部材1は、中実状に形成されている。中実状とは、内部に大きな閉鎖空洞を有さないことを意味する。中実状の仕切り部材1は、剛性が高く、経時的に変形し難く、また、虫やゴミが内部に入り込むこともない。
なお、仕切り部材1は、
図4に示すように、中空状に形成されていてもよい。中空状は、内部に比較的大きな閉鎖空洞部61を有することを意味する。この閉鎖空洞部61は、仕切り部材1の奥行き方向に連続して設けられる。中空状の仕切り部材1は、カッターなどで切断し易く、さらに、軽量化でき且つ材料コストを下げることができる。
図4では、閉鎖空洞部61が、起立壁部3の上方内部及び下方内部の2箇所に独立して形成されているが、閉鎖空洞部61は、1箇所でもよく、或いは、3箇所以上形成されていてもよい(図示せず)。
なお、
図4の仕切り部材1は、内部に閉鎖空洞部61が形成されていることを除いて、
図1乃至
図3の仕切り部材1と同様である。
【0019】
<仕切り部材の詳細>
上述のように、仕切り部材1は、ベース板部2と、ベース板部2に連結されて縦方向に立ち上げられ且つ返し部32を有する起立壁部3と、を有する。
ベース板部2は、略板状である。本明細書において、「略」は、本発明の属する技術分野において許容される範囲を意味する。
起立壁部3は、ベース板部2の横方向中途部に連結され、好ましくは、ベース板部2の横方向中間部に連結されている。横方向中間部は、横方向において真ん中を意味する点で、横方向の何れかの箇所を意味する横方向中途部とは異なる。
以下、説明上、起立壁部3を基準にして、その横方向一方側を「右」といい、横方向反対側を「左」という。
【0020】
ベース板部2と起立壁部3は、一体的に形成されているため、その境界が明確に定まらないが、本明細書では、概念上、概ねベース板部2が略板状となる箇所で、ベース板部2と起立壁部3を区分けするものとする。
図3に、ベース板部2と起立壁部3の概念上の境界線Sを一点鎖線で示している。
図3を参照して、略板状のベース板部2の裏面2bは、水平面に形成されている。もっとも、
図5に示すように、ベース板部2の裏面2bに、1つ又は複数の凹部62が形成されていてもよい。仕切り部材1が押出し成形品からなる場合には、前記凹部62は、通常、奥行き方向に延びて形成される長状凹部62である。
【0021】
ベース板部2の表面2aは、凹曲面領域A2を有する。凹曲面領域A2は、滑らかな面である。本明細書において、滑らかな面とは、凹凸を有さない面をいう。前記凹凸を有さないとは、顕微鏡などで拡大した状態のような微視的に見て凹凸を有さないという意味ではなく、例えば、触指で判別したときに凹凸が認められないことをいう。
凹曲面領域A2は、ベース板部2の表面2aの全体に亘っていてもよく、或いは、ベース板部2の表面2aの一部分を占めていてもよい。凹曲面領域A2がベース板部2の表面2aの一部分を成している場合、ベース板部2の表面2aのうち、凹曲面領域A2以外の領域は、滑らかな面であってもよく、或いは、部分的に上方に突出する凸部又は下方に凹む凹部を有していてもよい。
【0022】
好ましくは、ベース板部2の表面2aは、その横方向両側端から中央側に向かって延びる左右一対の水平面領域A1,A1と、その水平面領域A1,A1の端(前記側端とは反対側の端)に連続して中央側に延び且つ極めて僅かに湾曲した左右一対の凹曲面領域A2,A2と、その左右一対の凹曲面領域A2,A2の間の水平面領域A3と、からなる。なお、前記左右一対の凹曲面領域A2,A2の間の水平面領域A3は、一点鎖線で示す概念上の境界線Sによって観念される概念上のものである。その水平面領域A3には一体的に形成された起立壁部3が連結されているので、その水平面領域A3が実際に表出されているわけではないことに留意されたい。
前記水平面領域A1,A1及び前記概念上の水平面領域A3は、正面視で水平な直線に形成されており、凹曲面領域A2,A2は、正面視で曲線に形成されている。凹曲面領域A2は、任意の1つの曲率半径の曲面となっている。凹曲面領域A2の曲率半径は、正面視でその曲線の曲率半径をいう。
前記凹曲面領域A2が1つの曲率半径の曲面とは、正面から凹曲面領域A2を見たときに、1つの曲率半径の曲線に概ね含まれているという意味であり、正面視で曲率半径が僅かに異なる2つ以上の曲線が連続し、全体として見ると概ね1つの曲率半径の曲線と認められる程度のものを含む意味である。
なお、前記極めて僅かに湾曲した凹曲面領域A2,A2は、それぞれ、正面視で非常に大きな1つの曲率半径の曲線である。
【0023】
詳しくは、水平面領域A1,A1は、ベース板部2の両側端から凹曲面領域A2,A2の端にまで延設され、凹曲面領域A2,A2は、その水平面領域A1,A1に連続して縦上側に僅かに湾曲しながら起立壁部3の凹曲面領域B1に連続している。従って、前記水平面領域A1及び凹曲面領域A2からなるベース板部2の左側の表面2aは、全体として滑らかな面(特に、水の流れを阻害する部分を有さない滑らかな面)となっている。水平面領域A1及び凹曲面領域A2からなるベース板部2の右側の表面2aも同様に全体として滑らかな面(特に、水の流れを阻害する部分を有さない滑らかな面)となっている。なお、このような水平面領域A1及び凹曲面領域A2からなるベース板部2は、全体として略板状となっている。
このようにベース板部2の表面2aが全体的に滑らかな面とされていることにより、水がベース板部2の側端から起立壁部3へと乱れること無く流れるようになる。
なお、水平面領域A1の端と凹曲面領域A2の端が連続して滑らかな面となっているベース板部2の表面2aには、前記水平面領域A1の端と凹曲面領域A2の端の交点(連続点)が明確に表れないことに留意されたい。
【0024】
凹曲面領域A2は、下側に膨らむ曲面である。左側の凹曲面領域A2は、ベース板部2の上側且つ起立壁部3よりも左側に中心点が位置している曲面(正面視で左側に中心点がある曲線)という意味であり、右側の凹曲面領域A2は、ベース板部2の上側且つ起立壁部3よりも右側に中心点が位置している曲面(正面視で右側に中心点がある曲線)という意味である。
【0025】
ベース板部2の横長は、特に限定されないが、余りに小さいと床面に対する接着面積が小さくなり、余りに大きいと仕切り部材1の取り扱い性が低下する。かかる観点から、ベース板部2の横長は、例えば、30mm~300mmであり、好ましくは50mm~200mmであり、より好ましくは70mm~180mmである。
ベース板部2の厚みは、特に限定されないが、余りに小さいと仕切り部材1の取り扱い性が低下し、余りに大きいと奥行き方向の長さ調整の際に仕切り部材1を切断することが困難となる上、材料コストが増加する。かかる観点から、ベース板部2の厚みは、1mm~5mmであり、好ましくは1.5mm~4mmである。なお、前記ベース板部2の厚みは、その横方向側端におけるベース板部2の厚みを意味する。
【0026】
起立壁部3は、横長が最小となった最小横長部31と、前記最小横長部31の上方において横方向に突設された返し部32と、を有する。
図示例の起立壁部3は、一部分に最小横長部31を有する。
最小横長部31の位置は、特に限定されず、起立壁部3の縦方向最下端部、縦方向中途部、縦方向最上端部などが挙げられる。本実施形態では、起立壁部3の縦方向中途部に配置され、好ましくは、図示例のように、起立壁部3の縦方向中間部よりも上方に配置される。なお、縦方向中間部は、縦方向において真ん中を意味する点で、縦方向の何れかの箇所を意味する縦方向中途部とは異なる。
最小横長部31の横長は、特に限定されないが、余りに小さいと強度が低くなり、余りに大きいと仕切り部材1を切断することが困難となる上、材料コストが増加する。最小横長部31の横長は、例えば、1mm~7mmであり、好ましくは2mm~6mmであり、より好ましくは2.5mm~5mmである。
また、起立壁部3の縦長は、特に限定されず、例えば、15mm~40mmであり、好ましくは20mm~30mmである。
【0027】
起立壁部3の側面3cは、凹曲面領域B1を有する。凹曲面領域B1は、滑らかな面である。凹曲面領域B1は、正面視で曲線に形成されている。なお、凹曲面領域B1は、任意の1つの曲率半径の曲面となっている。凹曲面領域B1の曲率半径は、正面視でその曲線の曲率半径をいう。前記凹曲面領域B1が1つの曲率半径の曲面とは、正面から凹曲面領域B1を見たときに、1つの曲率半径の曲線に概ね含まれているという意味であり、正面視で曲率半径が僅かに異なる2つ以上の曲線が連続し、全体として見ると概ね1つの曲率半径の曲線と認められる程度のものを含む意味である。
起立壁部3の凹曲面領域は、1つであってもよく(1つの曲率半径の凹曲面領域)又は複数であってもよい(曲率半径が異なる2つ以上の凹曲面領域)。例えば、起立壁部3のそれぞれの側面3cが1つの凹曲面領域を有する場合、その1つの凹曲面領域は、起立壁部3の側面3cの最下端部から最上端部に至るまで延在されていてもよく、或いは、起立壁部3の側面3cの一部分に形成されていてもよい。これらのいずれの形態においても、起立壁部3には、最小横長部31及び返し部32が形成されている。
ベース板部2の凹曲面領域A2に連続する凹曲面領域B1の向きは、特に限定されず、下側から内側(起立壁部3の中央側)に向かって凹湾曲して延びる曲面(正面視で下側から内側に向かって延びる曲線)でもよく、或いは、下側から外側(起立壁部3とは反対側)に向かって凹湾曲して延びる曲面(正面視で下側から外側に向かって延びる曲線)でもよい。好ましくは、凹曲面領域B1は、下側から内側に向かって凹湾曲して延びる曲面である。
下側から内側に向かって凹湾曲して延びる曲面は、換言すると、その曲面の下端から上端に凹状に湾曲した曲面(正面視で、その曲線の下端から上端に至る円弧)であり、上端が下端よりも横方向の内側に位置しているものである。また、下側から外側に向かって凹湾曲して延びる曲面は、換言すると、その曲面の下端から上端に凹状に湾曲した曲面(正面視で、その曲線の下端から上端に至る円弧)であり、上端が下端よりも横方向の外側に位置しているものである。
以下、下側から内側に向かって凹湾曲して延びる曲面を「下内曲面」といい、下側から外側に向かって凹湾曲して延びる曲面を「下外曲面」という。
【0028】
起立壁部3の側面3cは、前記凹曲面領域B1を有することを条件として、曲率半径の異なる2つ以上の凹曲面領域を有していてもよい。好ましくは、起立壁部3の側面3cは、曲率半径の異なる少なくとも凹曲面領域を有し、そのうちの1つが、ベース板部2の凹曲面領域A2に連続する凹曲面領域B1である。
また、起立壁部3の側面3cは、前記凹曲面領域B1を有することを条件として、縦方向と平行な平面(以下、平行平面という)及び/又は縦方向に対して傾斜して延びる傾斜平面(以下、傾斜平面という)を有していてもよい。
なお、前記平行平面は、正面視で縦方向と平行に延びる直線に形成されており、前記傾斜平面は、正面視で縦方向に対して傾斜した直線に形成されている。
【0029】
図示例では、起立壁部3の左右一対の側面3c,3cは、いずれも、曲率半径が異なる2つの凹曲面領域B1,B2を有する。図示例では、下方から上側に向かって順に凹曲面領域B1及び凹曲面領域B2が形成されている。以下、2つの凹曲面領域のうち、ベース板部2の凹曲面領域A2に連続しているものを「第1凹曲面領域B1」といい、もう一方を「第2凹曲面領域B2」という。
詳しくは、第1凹曲面領域B1は、上述のように、正面視で曲線に形成され、任意の1つの曲率半径の曲面となっている。
第2凹曲面領域B2は、正面視で曲線に形成され、任意の1つの曲率半径の曲面となっている。前記第2凹曲面領域B2が1つの曲率半径の曲面とは、正面から第2凹曲面領域B2を見たときに、1つの曲率半径の曲線に概ね含まれているという意味であり、正面視で曲率半径が僅かに異なる2つ以上の曲線が連続し、全体として見ると概ね1つの曲率半径の曲線と認められる程度のものを含む意味である。
【0030】
曲率半径が異なる第1凹曲面領域B1と第2凹曲面領域B2は、第1凹曲面領域B1の曲率半径が大きくてもよく、或いは、第1凹曲面領域B1の曲率半径が小さくてもよい。
好ましくは、第1凹曲面領域B1の曲率半径が第2凹曲面領域B2の曲率半径よりも大きくなるように、各領域B1,B2が形成されている。
ベース板部2の凹曲面領域A2の端に連続している第1凹曲面領域B1の端(前記端とは反対側の端)と第2凹曲面領域B2の端は、連続していてもよく、或いは、前記第1凹曲面領域B1の端(前記端とは反対側の端)と第2凹曲面領域B2の端の間に、平行平面又は傾斜平面が連続して介在されていてもよい。
図示例では、第1凹曲面領域B1の端と第2凹曲面領域B2の端は、連続している。
起立壁部3の凹曲面領域(第1凹曲面領域B1及び第2凹曲面領域B2など)は、起立壁部3の中央部側に膨らむ曲面(正面視で起立壁部3の中央部側に膨らむ曲線)である。起立壁部3の中央部側に膨らむ曲面とは、例えば、左側の側面3cの凹曲面領域(第1及び第2凹曲面領域B1,B2)を例に採ると、起立壁部3よりも左側に中心点が位置している曲面(正面視で左側に中心点がある曲線)という意味であり、右側の側面3cの凹曲面領域(第1及び第2凹曲面領域B1,B2)を例に採ると、起立壁部3よりも右側に中心点が位置している曲面(正面視で右側に中心点がある曲線)という意味である。
【0031】
図示例では、ベース板部2の凹曲面領域A2の端に連続した第1凹曲面領域B1の端と第2凹曲面領域B2の端は連続している。この第1凹曲面領域B1の端と第2凹曲面領域B2の端の交点(連続点)は、最小横長部31に一致している。つまり、
図3に示す例では、最小横長部31の側部は、連続して形成される第1凹曲面領域B1と第2凹曲面領域B2との境界部分であって、第1凹曲面領域B1と第2凹曲面領域B2の交点で画成されている。
また、第2凹曲面領域B2の端(第1凹曲面領域B1と連続した端とは反対側の端)は、返し部32の突出端32aと一致している。つまり、返し部32の側部である突出端32aは、第2凹曲面領域B2で画成されている。
従って、起立壁部3の側面3cは、連続した第1凹曲面領域B1及び第2凹曲面領域B2から形成されており、全体として滑らかな面とされている。
特に、第1凹曲面領域B1と第2凹曲面領域B2は、角点を有することなく連続した曲面とされている(正面視で角点を有することなく連続した曲線を成している)。前記角点とは、2つの線の交点であって、一方の線側から引いた接線の傾きと、もう一方の線側から引いた接線の傾きとが一致しない点をいう。
また、ベース板部2の凹曲面領域A2と起立壁部3の第1凹曲面領域B1は、角点を有することなく連続した曲面とされている。
従って、ベース板部2の左側の表面2aから起立壁部3の左側の側面3cにかけて、全体的に滑らかな面とされ、ベース板部2の右側の表面2aから起立壁部3の右側の側面3cにかけて、全体的に滑らかな面とされている。
【0032】
図3に示すように、ベース板部2の凹曲面領域A2に連続する第1凹曲面領域B1の向きは、下内曲面とされていることが好ましい。
第2凹曲面領域B2の向きは、特に限定されず、下内曲面でもよく、或いは、下外曲面でもよい。好ましくは、
図3に示すように、第2凹曲面領域B2は、下外曲面とされている。
第1凹曲面領域B1の曲率半径は、第2凹曲面領域B2の曲率半径よりも大きく、第1凹曲面領域B1の曲率半径>第2凹曲面領域B2の曲率半径の関係を満たしている。
また、第1凹曲面領域B1の曲率半径は、ベース板部2の凹曲面領域A2の曲率半径よりも小さく、ベース板部2の凹曲面領域A2の曲率半径>第1凹曲面領域B1の曲率半径の関係を満たしている。
上述のように、ベース板部2の凹曲面領域A2、第1凹曲面領域B1及び第2凹曲面領域B2の各曲率半径は、それぞれ独立して、任意の1つに設定されるが、その具体的数値は、特に限定されず適宜設計できる。
例えば、ベース板部2の凹曲面領域A2は、正面視でその曲線の曲率半径が100mm~200mm、好ましくは120mm~180mmとされる。第1凹曲面領域B1は、正面視でその曲線の曲率半径が10mm~20mm、好ましくは、12mm~18mmとされる。第2凹曲面領域B2は、正面視でその曲線の曲率半径が2mm~15mm、好ましくは、5mm~10mmとされる。
【0033】
なお、起立壁部3の側面3cが、第1凹曲面領域B1及び第2凹曲面領域B2以外に、これらとは曲率半径の異なる別の凹曲面領域をさらに有していてもよい。この場合、その別の凹曲面領域の曲率半径は、適宜設定できるが、ベース板部2に連続する第1凹曲面領域B1から返し部32に向かって順に曲率半径が小さくなるように複数の凹曲面領域が配置されていることが好ましい。
【0034】
別の観点では、起立壁部3は、最小横長部31を基準にして、返し部32から最小横長部31に向かうに従って横長が徐々に小さくなる頂部33と、最小横長部31からベース板部2に向かうに従って横長が徐々に大きくなる裾部34と、を有する。この頂部33は、左右一対の第2凹曲面領域B2,B2によって挟まれた部分であり、裾部34は、左右一対の第1凹曲面領域B1,B1によって挟まれた部分である。前記裾部34を有する起立壁部3は、経時的に傾き難くなる。
また、仕切り部材1へと掃き寄せられた水は、水勢が十分に強い場合には、凹曲面領域A2から裾部34に沿って次第に上向きに流れ、第1凹曲面領域B1及び第2凹曲面領域B2に沿って返し部32に至るので、水が頂部33から反対側に行くことがない。水勢が比較的弱い場合には、前記水の流れ経路のどこかの箇所で重力に従って水が戻る。いずれにしても、水が起立壁部3を越えて反対側に行くことを効果的に防止できる。なお、戻された水は、後述するように、床面の水勾配に従い、仕切り部材1の奥行き方向の一方側へ排水されていく。
頂部33の縦長と裾部34の縦長は、同じでもよく、或いは、何れか一方が他方よりも大きくてもよい。立ち上がった起立壁部3が経時的に傾き難くなることから、裾部34の縦長が頂部33の縦長よりも大きいことが好ましい。
頂部33の縦長と裾部34の縦長の比率は、特に限定されないが、頂部33の縦長:裾部34の縦長は、例えば、2:8~8:2とされ、好ましくは2:8~5:5とされ、より好ましくは、2:8~4:6とされている。頂部33を裾部34よりも短い縦長とすることにより、返し部32によって水が隣の区画に侵入することを防止できる。
【0035】
頂部33の最大横長は、特に限定されないが、例えば、4.5mm~37mmであり、好ましくは、6mm~12mmである。なお、頂部33の最大横長は、後述する左右一対の返し部32の突出端32aの間の横方向長さと同じである。
裾部34の最大横長は、特に限定されないが、例えば、10mm~30mmであり、好ましくは、15mm~25mmである。なお、裾部34の最大横長は、ベース板部2の境界における起立壁部3の横長に相当する。
仕切り部材1を床面に設置したときに安定することから、裾部34の最大横長は、頂部33の最大横長よりも大きいことが好ましい。
【0036】
返し部32は、起立壁部3の上方に設けられ、図示例では、起立壁部3の上端部に設けられている。
返し部32は、左右一対形成される。左右の返し部32,32の突出長W,Wは、それぞれ独立して、1.5mm~15mmであり、好ましくは、2mm~8mmであり、より好ましくは、2mm~4mmである。2mm以上の突出長を有する左右の返し部32,32を起立壁部3の上方に形成することにより、右側から来る水が起立壁部3を乗り越えて左側に侵入すること、及び、左側から来る水が起立壁部3を乗り越えて右側に侵入することを効果的に防止できる。
前記返し部32の突出長Wは、
図3に示すように、最小横長部31の側面と返し部32の突出端32aまでの横長を意味する。
【0037】
なお、起立壁部3の上面(左右の返し部32,32の突出端32a間の上面)は、外側に膨らむ曲面(正面視で、上側に膨らむ曲線)に形成されている。このように起立壁部3の上面が凸曲面に形成されていることにより、ゴミが溜まり難く、また、返し部32の厚みを大きくすることができ、返し部32の強度が向上する。
また、起立壁部3の側面3c及び返し部32は、左右対称形に形成されているが、左右非対称形であってもよい。
【0038】
<仕切り部材の使用及び床面仕切り構造>
本発明の仕切り部材1は、集合建築物の隣接する区画の床面に施工される。集合建築物としては、マンション、アパートなどの集合住宅、オフィスビル、商業施設ビルなどが挙げられる。集合建築物には、隣接する区画を仕切るため、隣接する区画の床面上にパーティションが設置されている。このパーティションは、通常時には、防音及び目隠しとして機能し、火災発生時等の非常時には、居住者が突き破って互いに隣接する区画へ抜け出ることができるように構成されている。具体的には、パーティションは、上下横枠及び左右縦枠を含む金属製の枠体に、非常時に居住者が破壊し易い材料で形成されたボードが取り付けられて構成されている。かかるパーティションは、その金属製の枠体の下端は、床面から離れているため、パーティションの下端と床面の間には、間隙が設けられている。このような間隙を塞ぐためにも、本発明の仕切り部材1が、パーティションの下方に設置される。
【0039】
図6乃至
図8は、本発明の仕切り部材1が集合建築物の隣接する区画の床面上に施工された床面仕切り構造10を示している。
床面仕切り構造10は、ベランダなどの隣接する区画の床面91と、前記床面91の上方に間隙を有して設置されたパーティション92と、前記間隙に介在され且つ床面91上に取り付けられた仕切り部材1と、前記仕切り部材1が取り付けられた部分を除く床面91上に取り付けられた床シート材82と、を有する。パーティション92は、例えば、金属製の枠体921と、その枠体921に取り付けられたボード922と、からなる。
前記床面91は、例えば、半屋外又は屋外に存在する。かかる床面91には、その端部に形成された排水溝93に水を導くため勾配が付けられている。つまり、床面91は、排水溝93に向かって徐々に低くなった傾斜平面とされている。かかる床面91の傾斜は、水勾配とも呼ばれており、通常、1/50~1/100であり、好ましくは1/50~1/70である。なお、1/50は、長さ50cmに対して1cm下がる勾配を意味する。
【0040】
パーティション92は、金属などからなる支持材やステイなどを介して、建築物の壁面94に固定されている。
仕切り部材1の奥行き方向がパーティション92の下端と略平行となり且つパーティション92の下方延長線上に起立壁部3が略位置するようにして仕切り部材1が配置され、ベース板部2が床面に取り付けられている。
【0041】
仕切り部材1のベース板部2の裏面2bは、接着手段81を介して床面91に固定されている。接着手段81は、特に限定されず、例えば、接着剤、両面粘着テープなどを用いることが挙げられる。図示例では、接着手段として接着剤を表している。
仕切り部材1のベース板部2の両側端部には、床シート材82の端部が接合されている。床シート材82は、接着剤や両面粘着テープなどの接着手段81を介して床面に固定されている。なお、必要に応じて、ベース板部2の両側端と床シート材82の側端とを樹脂製の溶接棒で接合してもよく、或いは、前記側端間にシール剤83などを充填して水密性を高めてもよい。
ベース板部2の表面2aにおいて両側端から延びる水平面領域と床シート材82の表面は、高低差を有していてもよいが、好ましくは、ベース板部2の表面2aの水平面領域と床シート材82の表面は、高低差を有さない同じ高さとされる。このように同じ高さとすることにより、ベース板部2の側端と床シート材82の側端とを溶接棒で熱風溶接する際、余分な樹脂である余盛をナイフなどでカットする作業が容易になり、仕上がりが綺麗になる。また、このように同じ高さとすることにより、ベース板部2の表面2aの水平面領域と床シート材82の表面が連続して略水平面を成している。
例えば、ベース板部2の厚み(側端における厚み)を2.5mmに設定し、床シート82として、厚み2.5mmの床シート材(東リ株式会社製の商品名「NS800」)を用いることにより、ベース板部2の表面2aの水平面領域と床シート材82の表面が略水平面を成した床面仕切り構造10を構築できる。
【0042】
本発明の仕切り部材1は、ベース板部2の表面2aが凹曲面領域A2を有し且つ、起立壁部3の側面3cが凹曲面領域B1(第1凹曲面領域B1)を有し、その凹曲面領域A2の端と凹曲面領域B1の端が連続しているので、例えば、
図8に示すように、パーティション92で仕切られた左側の区画から、排水や雨水などの水が床シート材82から仕切り部材1へと流れ込んできても、その水は、起立壁部3の左の側面3cに沿って上昇し、返し部32にて左側へ戻るようになる。右側の区画から仕切り部材1へと流れ込む水も同様に、起立壁部3によって右側へ戻るようになる。このため、本発明の仕切り部材1を用いることにより、隣の区画に水が浸入することを効果的に防止できる。
【0043】
また、起立壁部3の側面3cが、曲率半径の異なる第1凹曲面領域B1及び第2凹曲面領域B2を有する場合には、起立壁部3の側面3cに沿って流れる水が整流される。特に、ベース板部2の凹曲面領域A2の曲率半径>第1凹曲面領域B1の曲率半径>第2凹曲面領域B2の曲率半径の関係を満たすように、各領域A2,B1,B2が形成されているので、起立壁部3の側面3cに沿って流れる水は、ベース板部2の表面2aから起立壁部3の側面3cに沿って乱れること無く流れるようになる。さらに、第1凹曲面領域B1が下内曲面とされ且つ第2凹曲面領域B2が下外曲面とされていることにより、水が起立壁部3の左の側面3cを滑るように巻き上げられ、返し部32にて左側又は右側に確実に戻るようになる。また、第1凹曲面領域B1の端と第2凹曲面領域B2の端が連続していることにより、整流効果を高めることができる。すなわち、第1凹曲面領域B1によって上向きに流れた水が、第2凹曲面領域B2に沿って向きを変えて円滑に流れるようになる。
さらに、床シート材82とベース板部2の表面2aが略水平面とされていることにより、床シート材82の表面を伝って仕切り部材1へと流れ込む水は、跳ね上がることなく、ベース板部2の表面2aから起立壁部3の側面3cに沿って流れ、返し部32にて左側又は右側に戻るようになる。
また、最小横長部31が起立壁部3の縦方向中間部よりも上方に配置されることによって、より整流効果を高めることができる。すなわち、最小横長部31が起立壁部3の縦方向中間部よりも上方に配置されている場合、第1凹曲面領域B1の端が起立壁部3の縦方向中間部よりも上方に位置しているので、例えば、左側からの水が第1凹曲面領域B1に沿って上向きに流れるときの、水の流れる距離が大きくなり、滑らかに水を導くことができる。
【0044】
本発明は、上記実施形態に限られず、本発明の意図する範囲で様々に変更できる。以下、変形例を説明するが、その説明に於いては、主として上記実施形態と異なる構成及び効果について説明し、同様の構成などについては、その説明を省略する場合がある。
【0045】
[変形例]
上記実施形態の仕切り部材1において、起立壁部3の上面は、外側に膨らむ曲面に形成されているが、例えば、
図5に示すように、起立壁部3の上面が水平面に形成されていてもよい。
なお、
図5の仕切り部材1は、ベース板部2の裏面2bに凹部62が形成されていること及び起立壁部3の上面が水平面に形成されていることを除いて、
図1乃至
図4の仕切り部材1と同様である。
【0046】
上記実施形態の仕切り部材1において、第1凹曲面領域B1と第2凹曲面領域B2が角点を有することなく連続した曲面とされているが、例えば、
図9に示すように、左右の側面3c,3cが、正面視で角点を有する線形状であってもよい。図示例の第2変形例の仕切り部材1の起立壁部3の側面3cは、上記実施形態と同様に、第1凹曲面領域B1の端と第2凹曲面領域B2の端が連続しているが、その2つの凹曲面領域B1,B2の交点(連続点)において角点を有する。この交点で最小横長部31が画成されている。
【0047】
上記実施形態の仕切り部材1において、起立壁部3は、縦方向の一箇所(第1凹曲面領域B1と第2凹曲面領域B2の交点)に最小横長部31が形成されているが、例えば、
図10に示すように、返し部32を除く起立壁部3の縦方向においてある程度の長さを有した最小横長部31が形成されていてもよい。この第3変形例は、第1凹曲面領域B1と第2凹曲面領域B2の間に、平行平面C1が形成されている態様でもある。最小横長部31は、左側の平行平面C1と右側の平行平面C1の間で画成されている。その平行平面C1の縦方向全体に亘って、起立壁部3の横長が最小となっている(つまり、最小横長部31となっている)。縦方向においてある程度の長さを有する最小横長部31を形成することにより、仕切り部材1を全体的に大型化させることなく、横方向の寸法をそのままで、縦方向の寸法のみを大きくすることができる。これによって、大量の水が流れてきた場合であっても、水が隣の区画に侵入することを防止できる起立壁部3を構成できる。
【0048】
上記実施形態の仕切り部材1において、起立壁部3の側面3cは、第1凹曲面領域B1及び第2凹曲面領域B2などの複数の凹曲面領域を有するが、例えば、
図11に示すように、ベース板部2の凹曲面領域A2に連続した第1凹曲面領域B1のみを有していてもよい。
この場合、第1凹曲面領域B1の端と返し部32の間に、例えば、
図11に示すように、傾斜平面C2が形成される。つまり、起立壁部3の側面3cは、ベース板部2の凹曲面領域A2に連続する第1凹曲面領域B1と、第1凹曲面領域B1の端に連続し且つ返し部32の突出端32aにまで延びる傾斜平面C2と、を有する。
なお、
図9及び
図10に示す仕切り部材1は、いずれも、ベース板部2の凹曲面領域A2の曲率半径>第1凹曲面領域B1の曲率半径>第2凹曲面領域B2の曲率半径の関係を満たしており、
図11に示す仕切り部材1は、ベース板部2の凹曲面領域A2の曲率半径>第1凹曲面領域B1の曲率半径の関係を満たしている。
【0049】
また、上記実施形態の仕切り部材1において、ベース板部2の凹曲面領域A2に連続した第1凹曲面領域B1は、下内曲面とされているが、例えば、
図12に示すように、下外曲面とされていてもよい。なお、図示例の第1凹曲面領域B1は、厳密には、下側から内側に僅かに湾曲した後、外側に湾曲した曲面となっているが、概ね下側から外側に向かって凹湾曲して延びる曲面(下外曲面)となっているものである。
さらに、上記実施形態の仕切り部材1において、ベース板部2の凹曲面領域A2と起立壁部3の第1凹曲面領域B1は、角点を有することなく連続しているが、例えば、
図12に示すように、凹曲面領域A2と第1凹曲面領域B1が角点を有して連続していてもよい。図示例では、概ね凹曲面領域A2と第1凹曲面領域B1の交点(角点)で最小横長部31が画成されている。
また、上記実施形態の仕切り部材1は、第1凹曲面領域B1の曲率半径>第2凹曲面領域B2の曲率半径の関係を満たしているが、例えば、
図12に示すように、第1凹曲面領域B1の曲率半径<第2凹曲面領域B2の曲率半径の関係を満たしていてもよい。
なお、
図12に示す仕切り部材1は、ベース板部2の凹曲面領域A2の曲率半径>第2凹曲面領域B2の曲率半径>第1凹曲面領域B1の曲率半径の関係を満たしている。また、
図12に示す仕切り部材1の起立壁部3は、最小横長部31が下端に形成されているので、ベース板部2に向かうに従って横長が徐々に大きくなる裾部を実質的に有さない。
【0050】
上記実施形態の仕切り部材1において、ベース板部2の表面2aのうち凹曲面領域A2以外の領域は、水平面領域A1のような水の流れを阻害する部分を有さない滑らかな面とされているが、例えば、
図13に示すように、表面2aのうち凹曲面領域A2以外の領域に、凹部63が形成されていてもよい。このような凹部63は奥行き方向に延設されており、排水溝として利用できるものである。また、特に図示しないが、凹曲面領域A2以外の領域に凸部(例えば、特許文献1に記載のような溝縁部)が形成されていてもよく、かかる凸部も同様に排水溝として機能する。
なお、
図13の仕切り部材1は、凹部63が形成されていることを除いて、
図1乃至
図4の仕切り部材1と同様である。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を示し、本発明を更に詳述する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0052】
[実施例1乃至3、比較例1乃至3]
図14乃至
図17に示す正面視形状の仕切り部材をそれぞれ準備した。
なお、
図14乃至
図17に表された長さの数値の単位は、mmであり、曲線のRは、曲率半径を意味し、その数値の単位は、mmである。これらの図は、設計図であり、正確な数値を記載している。
全ての仕切り部材の起立壁部及びベース板部の左右は、対称形である。
また、実施例1及び比較例1の仕切り部材は、軟質塩化ビニル樹脂の押出し成形品を用いた。実施例1及び比較例1以外の仕切り部材は、いずれも3Dプリンタを用いて作製した。
【0053】
各実施例及び比較例の仕切り部材を、奥行き方向長さ120mmに切断した。
この仕切り部材のベース板部の裏面を、公知の接着剤にてコンクリート床面に固定した。なお、実際のベランダを想定し、1/100の水勾配が付けられた床面を使用し、仕切り部材の奥行き方向をその勾配方向に沿って仕切り部材1を固定した。
図18に示すように、内径2mmの市販のホースの吐出口を仕切り部材の一方の側端から内側に約5mmとなるように位置させると共に、そのホースの吐出口近傍部をベース板部に載せた状態で、前記ホースを固定した。そのホースの吐出口から水道水を仕切り部材の左側のベース板部の表面に向かって当て(水の流速:800ミリリットル/分)、水の状態を目視にて観察した。その結果を表1に示す。ただし、表1の水の状態は、次の通りである。
〇:左側からの水が起立壁部を乗り越えることなく、水が起立壁部の側面に沿って上向きに流れた後、反転して左側に戻っていった。
△:左側からの水が殆ど起立壁部の側面に沿って上向きに流れた後、反転して左側に戻っていったが、ごく僅かな水が右側に侵入した。
×:左側からの水が殆ど起立壁部を乗り越えて右側に侵入した。
【0054】
【0055】
ベース板部の凹曲面領域と起立壁部の凹曲面領域が連続している実施例1乃至3の仕切り部材は、水が起立壁部を乗り越えない又は乗り越え難かった。他方、比較例1乃至3の仕切り部材は、水が起立壁部を乗り越えて右側(隣の区画)に侵入した。
比較例1の仕切り部材は、起立壁部の凹曲面領域に連続するベース板部の凹曲面領域を有さない点で実施例1乃至3の仕切り部材とは異なっている。比較例2の仕切り部材は、ベース板部及び起立壁部のいずれも曲面領域を有さない点で実施例1乃至3の仕切り部材とは異なっている。比較例3の仕切り部材は、ベース板部の曲面領域と仕切り部材の曲面領域が連続しているが、それらの曲面領域は、いずれも凸曲面である点、実施例1乃至3の仕切り部材とは異なっている。
また、実施例1及び2と実施例3とを対比すると、実施例1及び2の仕切り部材は水が起立壁部を乗り越え難かった。これは、実施例3の仕切り部材が、ベース板部の凹曲面領域と起立壁部の凹曲面領域が角点を有して連続していること、又は、起立壁部の凹曲面領域が下外曲面であることに起因すると推定される。
【符号の説明】
【0056】
1 仕切り部材
2 ベース板部
2a ベース板部の表面
3 起立壁部
3c 起立壁部の側面
31 最小横長部
32 返し部
33 頂部
34 裾部
82 床シート材
91 床面
10 床面仕切り構造
A1 ベース板部の表面の水平面領域
A2 ベース板部の表面の凹曲面領域
B1 起立壁部の側面の第1凹曲面領域
B2 起立壁部の側面の第2凹曲面領域