(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】プリプレグ成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 70/34 20060101AFI20221114BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
B29C70/34
C08J5/24 CEZ
(21)【出願番号】P 2019058970
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2021-07-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】北澤 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】清水 正彦
(72)【発明者】
【氏名】真能 翔也
(72)【発明者】
【氏名】秋山 浩庸
(72)【発明者】
【氏名】村上 賢二
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-164539(JP,A)
【文献】国際公開第2019/031478(WO,A1)
【文献】特開2004-322501(JP,A)
【文献】特開2016-040116(JP,A)
【文献】国際公開第2010/134599(WO,A1)
【文献】特開2016-093934(JP,A)
【文献】特開2001-096613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維及び樹脂を含む一方向に長い長尺状の第1プリプレグの断面形状を下向き凸状のU字形に撓ませるステップと、
U字形に撓んだ前記第1プリプレグの下部を、断面凹型の成形型の底部に、又は、前記成形型に沿って成形され載置された第2プリプレグの上面に、接触させて、前記成形型の内部に前記第1プリプレグを載置するステップと、
押圧部を用いて、前記成形型の内部に載置された前記第1プリプレグを押圧し変形させるステップと、
を備え
、
前記第1プリプレグの断面形状がU字形となるように、長手方向の一端側から他端側に向けて前記第1プリプレグを順次変形し、
U字形に変形された前記第1プリプレグを、前記成形型の一端側から他端側に向けて前記成形型内に順次載置するプリプレグ成形方法。
【請求項2】
前記第1プリプレグは、
前記長手方向に対して繊維方向が所定の角度を有するように、前記成形型に向けて供給され、前記成形型に載置される請求項1に記載のプリプレグ成形方法。
【請求項3】
前記第1プリプレグは、前記成形型に向けて供給され、前記成形型の内部に載置される載置位置において向きが変更され、
前記載置位置では、前記第1プリプレグは、上向き凸状のU字形から下向き凸状のU字形に変更される、又は、下向き凸状のU字形の両側上部が内側に屈曲して配置される請求項
1又は2に記載のプリプレグ成形方法。
【請求項4】
剥離シートとともに前記第1プリプレグを前記成形型の内部に載置し、前記剥離シートと前記第1プリプレグを、前記押圧部を用いて押圧し変形させる請求項1から
3のいずれか1項に記載のプリプレグ成形方法。
【請求項5】
前記第1プリプレグを前記成形型の内部に載置するとき、前記第1プリプレグに対してスリットを形成する請求項1から
4のいずれか1項に記載のプリプレグ成形方法。
【請求項6】
前記第1プリプレグを前記成形型に載置する前、前記成形型又は前記第2プリプレグを加熱する請求項1から
5のいずれか1項に記載のプリプレグ成形方法。
【請求項7】
前記第1プリプレグを、前記押圧部を用いて変形させる前、前記第1プリプレグを加熱する請求項1から
6のいずれか1項に記載のプリプレグ成形方法。
【請求項8】
前記押圧部を加熱して又は発熱させて、前記押圧部を用いて前記第1プリプレグを変形させる請求項1から
7のいずれか1項に記載のプリプレグ成形方法。
【請求項9】
前記押圧部は、前記成形型の断面形状に対応した形状を有する断面凸型である請求項1から
8のいずれか1項に記載のプリプレグ成形方法。
【請求項10】
前記押圧部は、目標とする積層体の形状に応じて断面形状を変更することが可能な構成を有する請求項1から
9のいずれか1項に記載のプリプレグ成形方法。
【請求項11】
前記押圧部は、流体を噴射させる噴射ノズルであり、噴射された前記流体の圧力を用いて前記第1プリプレグを前記成形型に沿って変形させる請求項1から
10のいずれか1項に記載のプリプレグ成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリプレグ成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
航空機の構造部材(例えばストリンガなど)は、繊維強化プラスチック(FRP)(以下「複合材」という。)によって形成される場合がある。ストリンガは、一方向に長い長尺部品であり、長手方向に沿って断面形状が変化したり、航空機の適用場所に応じたねじれやコンタが形成されている場合がある。ストリンガの断面形状には、ハット型やZ型などがある。ハット型は、両端に形成されたフランジ部と、中心に形成されたハット部と、フランジ部とハット部を連結するウェブ部を有する。
【0003】
ストリンガを複合材で製造する場合、自動積層装置では、例えば、凹部における曲率の大きい円弧(R)形状部分などを直接積層して形成できない。そのため、複合材は、複数枚のプリプレグを平坦に積層して積層体(チャージ)を形成し、積層体を目標形状に変形(成形)することによって、所望の構造部材として製造される。
【0004】
下記の特許文献1から3では、ローラを用いて平坦な積層体を成形型に押し込むことによって、積層体を変形させて(折り曲げて)、ハット型の成形品に形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5937894号公報
【文献】米国特許出願公開第2016/0082675号明細書
【文献】特表2007-501140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2において開示されているように、複数枚のプリプレグが積層された平坦又は緩やかな曲面の積層体をハット型の断面に成形する場合、積層体を折り曲げる必要がある。このとき、隣り合うプリプレグ間で適切に滑りを生じさせる必要がある。摩擦力によってプリプレグ間(層間)においてプリプレグが適切に滑らない場合、プリプレグが中間部分に余り、中間部分に生じた余剰のプリプレグによって、皺(リンクル)などが発生する可能性がある。
【0007】
また、特許文献3において開示されているように、プリプレグを1層ずつハット型の断面に成形し、順次プリプレグを積層する場合、既に成形されたプリプレグと新たに成形するプリプレグを滑らせながら、プリプレグを積層する必要がある。この場合も、摩擦力によってプリプレグが適切に滑らない場合、皺などが発生する可能性がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、プリプレグを1層ずつ成形し、順次プリプレグを積層する場合において、皺の発生を抑制することが可能なプリプレグ成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のプリプレグ成形方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係るプリプレグ成形方法は、繊維及び樹脂を含む一方向に長い長尺状の第1プリプレグの断面形状を下向き凸状のU字形に撓ませるステップと、U字形に撓んだ前記第1プリプレグの下部を、断面凹型の成形型の底部に、又は、前記成形型に沿って成形され載置された第2プリプレグの上面に、接触させて、前記成形型の内部に前記第1プリプレグを載置するステップと、押圧部を用いて、前記成形型の内部に載置された前記第1プリプレグを押圧し変形させるステップとを備える。
【0010】
この構成によれば、第1プリプレグの断面形状が下向き凸状のU字形となるように撓まされ、断面凹型の成形型の底部に、U字形に撓んだ第1プリプレグの下部を接触させるように、成形型の内部に第1プリプレグが載置される。そして、押圧部によって、成形型の内部に載置された第1プリプレグが押圧され変形される。
【0011】
1枚ずつ第1プリプレグが成形されるため、押圧部によって第1プリプレグが変形される際、複数枚のプリプレグを同時に滑らせる必要がない。そのため、複数枚のプリプレグ間においてプリプレグが適切に滑らないことによる皺の発生が抑制される。特に、凹部における曲率の大きい円弧(R)形状部分や、長手方向の立体形状(コンタ)部分の影響による皺の発生が抑制される。
【0012】
第1プリプレグの断面形状がU字形となるように変形され、その後、成形型の底部に第1プリプレグの下部を接触させるように、成形型の内部に第1プリプレグが載置される。そして、押圧部によって、成形型の内部に載置された第1プリプレグが押圧され変形される。
【0013】
押圧部を用いて成形される前、U字形に変形された第1プリプレグの下部は、断面凹型の成形型の底部に接触して載置される。これにより、押圧部を用いて成形されるとき、新たに成形される第1プリプレグは、成形型との間で滑りを発生させずに変形されるため、皺の発生が抑制される。
【0014】
また、成形型の内部に成形型に沿って変形された第2プリプレグが載置されている場合、第1プリプレグの断面形状がU字形となるように変形され、その後、成形型において成形された第2プリプレグの上面に第1プリプレグを接触させるように、成形型の内部に第1プリプレグが載置される。そして、押圧部によって、成形型の内部に載置された第1プリプレグが押圧され変形される。
【0015】
押圧部を用いて成形される前、U字形に変形された第1プリプレグの下部は、成形型に沿って成形され載置された第2プリプレグの上面に接触して載置される。これにより、押圧部を用いて成形されるとき、新たに成形される第1プリプレグは、第2プリプレグとの間で滑りを発生させずに変形されるため、皺の発生が抑制される。
【0016】
上記発明において、前記第1プリプレグは、長手方向に対して繊維方向が所定の角度を有するように、前記成形型に向けて供給され、前記成形型に載置されてもよい。
【0017】
この構成によれば、長手方向に対して繊維方向が所定の角度を有するように、第1プリプレグが成形型に向けて供給されるため、積層効率が向上する。また、成形型に載置される第1プリプレグは、長手方向に対して繊維方向が所定の角度を有するため、形成される積層体は目標強度を満たすように形成される。
【0018】
上記発明において、前記第1プリプレグの断面形状がU字形となるように、長手方向の一端側から他端側に向けて前記第1プリプレグを順次変形し、U字形に変形された前記第1プリプレグを、前記成形型の一端側から他端側に向けて前記成形型内に順次載置してもよい。
【0019】
この構成によれば、長手方向の一端側から他端側に向けて第1プリプレグが、断面形状がU字形となるように、順次変形され、U字形に変形された第1プリプレグが、成形型の一端側から他端側に向けて成形型内に順次載置される。
【0020】
上記発明において、前記第1プリプレグは、前記成形型に向けて供給され、前記成形型の内部に載置される載置位置において向きが変更され、前記載置位置では、前記第1プリプレグは、上向き凸状のU字形から下向き凸状のU字形に変更される、又は、下向き凸状のU字形の両側上部が内側に屈曲して配置されてもよい。
【0021】
この構成によれば、第1プリプレグが、成形型に向けて供給されるとき、成形型の内部に載置される載置位置において、第1プリプレグの向きが変更される。このとき、第1プリプレグに折れ曲がり部分(キンク)が生じないように、載置位置では、第1プリプレグが、上向き凸状のU字形から下向き凸状のU字形に変更される、又は、下向き凸状のU字形の両側上部が内側に屈曲して配置される。これにより、載置位置では、第1プリプレグが安定して下向き凸状のU字形に変更される。
【0022】
上記発明において、前記第1プリプレグの断面形状がU字形となるように、長手方向の一端側から他端側にわたって前記第1プリプレグを同時に変形し、U字形に変形された前記第1プリプレグを、前記成形型の一端側から他端側にわたって前記成形型内に同時に載置してもよい。
【0023】
この構成によれば、長手方向の一端側から他端側にわたって第1プリプレグが、断面形状がU字形となるように、同時に変形され、U字形に変形された第1プリプレグが、成形型の一端側から他端側にわたって成形型内に同時に載置される。
【0024】
上記発明において、剥離シートとともに前記第1プリプレグを前記成形型の内部に載置し、前記剥離シートと前記第1プリプレグを、前記押圧部を用いて押圧し変形させてもよい。
【0025】
この構成によれば、剥離シートとともに第1プリプレグが成形型の内部に載置され、剥離シートと第1プリプレグが押圧部を用いて押圧され変形される。これにより、剥離シートがない場合と比べて、第1プリプレグと押圧部の間に生じる摩擦が低減される。
【0026】
上記発明において、前記第1プリプレグを前記成形型の内部に載置するとき、前記第1プリプレグに対してスリットを形成してもよい。
【0027】
この構成によれば、第1プリプレグを成形型の内部に載置するとき、第1プリプレグに対してスリットが形成されるため、第1プリプレグが成形型及び押圧部によって変形されやすくなる。形成されるスリットは、例えば、長手方向に対して直角方向(90°方向)である。
【0028】
上記発明において、前記第1プリプレグを前記成形型に載置する前、前記成形型又は前記第2プリプレグを加熱してもよい。
【0029】
この構成によれば、第1プリプレグを成形型に載置する前、成形型又は第2プリプレグが加熱されるため、第1プリプレグが成形型及び押圧部によって変形されやすくなる。また、温度上昇によって、第1プリプレグの粘着性が向上するため、プリプレグ間同士の接着性が高まる。
【0030】
上記発明において、前記第1プリプレグを、前記押圧部を用いて変形させる前、前記第1プリプレグを加熱してもよい。
【0031】
この構成によれば、押圧部を用いて第1プリプレグを変形させる前、第1プリプレグが加熱されるため、第1プリプレグが成形型及び押圧部によって変形されやすくなる。また、温度上昇によって、第1プリプレグの粘着性が向上するため、プリプレグ間同士の接着性が高まる。
【0032】
上記発明において、前記押圧部を加熱して又は発熱させて、前記押圧部を用いて前記第1プリプレグを変形させてもよい。
【0033】
この構成によれば、押圧部を用いて第1プリプレグを変形させる際、押圧部が加熱されて又は押圧部が発熱するため、第1プリプレグが成形型及び押圧部によって変形されやすくなる。また、温度上昇によって、第1プリプレグの粘着性が向上するため、プリプレグ間同士の接着性が高まる。
【0034】
上記発明において、前記押圧部は、前記成形型の断面形状に対応した形状を有する断面凸型でもよい。
【0035】
この構成によれば、成形型の断面形状に対応した形状を有する断面凸型の押圧部によって、成形型の内部に載置された第1プリプレグが押圧され変形される。
【0036】
上記発明において、前記押圧部は、目標とする積層体の形状に応じて断面形状を変更することが可能な構成を有してもよい。
【0037】
この構成によれば、押圧部が、目標とする積層体の形状に応じて断面形状を変更することができるため、複数種類の成形型を用意する必要がなく、様々な形状に対応して第1プリプレグを変形させることができる。
【0038】
上記発明において、前記押圧部は、流体を噴射させる噴射ノズルであり、噴射された前記流体の圧力を用いて前記第1プリプレグを前記成形型に沿って変形させてもよい。
【0039】
この構成によれば、押圧部は、流体を噴射させる噴射ノズルであり、噴射された流体の圧力を用いて第1プリプレグが成形型に沿って変形される。第1プリプレグが成形型に沿って変形されるとき、第1プリプレグは押圧部との接触がないため、プリプレグに皺などが発生しにくい。
【0040】
本発明の参考態様に係るプリプレグ成形方法は、第1プリプレグを、断面凹型又は断面凸型の成形型に載置するステップと、押圧部を用いて、前記成形型に載置された前記第1プリプレグを押圧し変形させるステップとを備え、前記押圧部は、流体を噴射させる噴射ノズルであり、噴射された前記流体の圧力を用いて前記第1プリプレグを前記成形型に沿って変形させる。
【0041】
この構成によれば、断面凹型又は断面凸型の成形型に第1プリプレグが載置され、押圧部によって、成形型に載置された第1プリプレグが押圧され変形される。このとき、押圧部は、流体を噴射させる噴射ノズルであり、噴射された流体の圧力を用いて第1プリプレグが成形型に沿って変形される。プリプレグと直接接触する押圧部を用いる場合、押圧部を直接第1プリプレグに接触させて、第1プリプレグを押圧し変形させるため、押圧部と第1プリプレグの間で摩擦が生じる。摩擦力によってプリプレグが適切に滑らない場合、プリプレグに皺などが発生する可能性がある。これに対し、噴射された流体の圧力を用いて第1プリプレグが成形型に沿って変形されるとき、第1プリプレグは押圧部との接触がないため、プリプレグに皺などが発生しにくい。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、プリプレグを1層ずつ成形し、順次プリプレグを積層する場合において、皺の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明の一実施形態に係るプリプレグ積層成形装置を示す概略構成図である。
【
図3】成形型、押圧部及びプリプレグを示す横断面図である。
【
図4】プリプレグ積層成形装置の押圧部を示す概略構成図である。
【
図5】プリプレグ積層成形装置の押圧部の噴射ノズルを示す概略構成図である。
【
図6】プリプレグ積層成形装置の押圧部の噴射ノズルを示す概略構成図であり、成形型の横断面を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るプリプレグ積層成形装置の変形例を示す概略構成図である。
【
図8】成形型及びプリプレグを示す縦断面図である。
【
図12】ローラ及びプリプレグを示す側面図である。
【
図13】ローラ及びプリプレグを示す平面図である。
【
図14】成形型及びプリプレグを示す縦断面図である。
【
図15】成形型及びプリプレグを示す横断面図である。
【
図16】把持部及び押し込み部を示す正面図である。
【
図18】成形型及び押圧部を示す横断面図であり、従来のプリプレグ成形方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下に、本発明に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
繊維強化プラスチック成形品は、繊維基材及び樹脂によって構成される繊維強化プラスチック(FRP)から形成される。繊維強化プラスチック成形品は、航空機を構成するFRP構造体、そのほかの各種の装置や構造を構成するFRP成形品などである。FRP構造体の一つであるストリンガは、一方向に長い長尺状の部材であり、長手方向の寸法が長手方向に交差する幅方向の寸法よりも長い。ストリンガの横断面は、例えばハット型である。
ハット型のストリンガは、両端に形成されたフランジ部と、中心に形成されたハット部と、フランジ部とハット部を連結するウェブ部を有する。
【0045】
プリプレグは、繊維基材に樹脂が含浸されたシート状部材である。繊維基材には、炭素繊維、ガラス繊維等の任意の繊維が用いられる。プリプレグは、ストリンガの厚みに応じて必要な枚数だけ積層され、複数枚のプリプレグが積層されることによって積層体が構成される。
【0046】
本実施形態に係るプリプレグ積層成形装置1を用いて、積層体が目標形状に成形(賦形)された後、オートクレーブなどによる加熱及び/又は加圧によって樹脂が硬化され、繊維強化プラスチック成形品が形成される。
【0047】
次に、本発明の第1実施形態に係るプリプレグ積層成形装置1について説明する。
本実施形態に係るプリプレグ積層成形装置1は、
図1に示すように、プリプレグ供給部2と、押圧部(コンパクションツール)3などを備える。プリプレグ積層成形装置1は、成形型(マンドレル)20に向けてプリプレグ30を1プライずつ供給し、成形型20内部に載置した後、載置されたプリプレグ30を、押圧部3を用いて押圧し変形させる。次に、変形されたプリプレグ30の上面に別のプリプレグ30を供給して載置し、押圧部3を用いて変形させる。この動作が1プライずつ繰り返されて、成形型20上に複数枚のプリプレグ30が積層されて、目標形状を有する積層体が形成される。
【0048】
プリプレグ30は、一方向に長いテープ状を有し、供給前はロール状に巻かれて、プリプレグ供給部2に収容されてもよい。プリプレグ30における繊維の方向は、プリプレグ30の長手方向に対して平行でもよいし、
図2に示すように、長手方向に対して所定の角度(例えば45°(
図2(a))、90°(
図2(b))など)となるように配置されてもよい。プリプレグ30は、例えば、プリプレグ製造装置(図示せず。)によって製造される。プリプレグ製造装置は、一方向に長いテープ状のプリプレグ30を形成する装置であり、繊維の方向を長手方向に対して所定の角度に吐出して、単層又は複数層に積層することによって、一方向に長いテープ状のプリプレグ30を形成する。その後、プリプレグ製造装置は、形成したテープ状のプリプレグ30をロール状に巻き取る。このロール状に巻き取られたプリプレグ30が、プリプレグ供給部2から供給される。
【0049】
プリプレグ供給部2は、プリプレグ30を一方向に吐出して、成形型20に供給する。プリプレグ供給部2は、成形型20の長手方向に沿って移動可能な構成を有してもよい。この場合、プリプレグ供給部2が移動しながらプリプレグ30を成形型20の一端20a側から他端20b側にわたって供給する。なお、後述するとおり、プリプレグ30は、成形型20の一端20a側から他端20b側に向けて順次載置されてもよいし、プリプレグ30が成形型20の一端20a側から他端20b側の長さとほぼ等しい長さで吐出された後、成形型20内に全長にわたって同時に載置されてもよい。
【0050】
プリプレグ供給部2は、プリプレグ30に剥離シート31(
図7参照)を貼り付けた状態で、プリプレグ30を一方向に吐出して、成形型20に供給してもよい。剥離シート31は、プリプレグ30に対して押圧部3側に貼付される。これにより、剥離シート31とともにプリプレグ30が成形型20の内部に載置され、剥離シート31とプリプレグ30が押圧部3を用いて押圧され変形される。したがって、剥離シート31がない場合と比べて、プリプレグ30と押圧部3の間に生じる摩擦が低減される。押圧された剥離シート31は、例えば、押圧部3よりも移動方向後方に設置された剥離シート回収部9によって回収される。
【0051】
成形型20は、一方向に長い長尺状を有する。形成する積層体の目標形状がハット型の場合、成形型20の断面形状は、
図3に示すように、溝状に窪んだ凹型である。成形型20は、形成する積層体の形状に応じて、長手方向に沿って断面形状が一定である場合、断面形状が変化する場合や、ねじれやコンタが形成されている場合がある。
【0052】
成形型20の溝状部分の内部には、成形前のプリプレグ30が載置され、その後、押圧部3によって押圧されることにより、成形型20及び押圧部3の形状に応じた形に成形される。
【0053】
押圧部3は、成形型20の内部に載置されたプリプレグ30を押圧し、プリプレグ30を成形型20に沿って変形させる。押圧部3は、成形型20やプリプレグ30に対して所定の押圧力が付与されるように駆動される。また、押圧部3は、成形型20の長手方向に沿って移動可能であり、押圧部3が移動しながらプリプレグ30を押圧することによって、長尺状のプリプレグ30を一端から他端にかけて変形させることができる。なお、押圧部3は、長手方向に沿って滑りながら連続的にプリプレグ30を押圧してもよいし、
図4に示すように、ある位置で押圧した後、押圧を解除して長手方向に沿って移動し、移動後の位置で押圧することを繰り返すというように断続的にプリプレグ30を押圧してもよい。
【0054】
押圧部3は、例えば、
図1及び
図3に示すように、成形型20の断面形状に対応した形状を有する断面凸型を有する型部4を有する。型部4は、ブロック状の一つの固体で構成されたものでもよい。型部4は、プリプレグ30を平板状から成形型20に沿った形状に一度で変形させるのではなく、長手方向に移動しながら徐々にプリプレグ30を変形するように構成されていることが望ましい。
【0055】
また、型部4は、複数の可動式の部品から構成されたものや、膜材など柔軟性を有する部材から構成されたものでもよい。複数の可動式の部品や柔軟性のある部材で型部4が構成される場合、目標とする積層体の形状(すなわち、成形型20の断面形状)に応じて、押圧に必要な断面形状を変更することができる。その結果、複数種類の型部4を用意する必要がなく、様々な形状に対応してプリプレグ30を変形させることができる。また、プリプレグ30を平板状から成形型20に沿った形状に一度で変形させるのではなく、長手方向に移動しながら徐々にプリプレグ30を変形させることができる。
【0056】
押圧部3は、上記実施例の場合、型部4をプリプレグ30に直接接触して、プリプレグ30を押圧する。本発明はこの例に限定されず、押圧部3は、
図5及び
図6に示すように、噴射ノズル5を有し、噴射ノズル5が流体(例えば空気、又は、不活性ガスなど)を噴射してもよい。噴射ノズル5から噴射された流体の圧力を用いてプリプレグ30が成形型20に沿って変形される。
【0057】
噴射ノズル5は、プリプレグ30の幅方向両側にそれぞれ設けられ、成形型20の長手方向に沿って複数設置されてもよい。成形型20の長手方向に沿って複数設置される場合、それぞれの噴射ノズル5の噴射方向が異なるようにするとよい。すなわち、プリプレグ30が平板状から成形型20に沿った形状に変更される変形状態に応じて、噴射の向きを異ならせる。例えば、成形開始直後のプリプレグ30に噴射する噴射ノズル5は、下向きに流体を噴射させる。また、成形がほぼ完了したプリプレグ30に噴射する噴射ノズル5は、水平方向に流体を噴射する。
【0058】
型部4を用いる場合、型部4を直接プリプレグ30に接触させて、プリプレグ30を押圧し変形させるため、成形型20とプリプレグ30の間で摩擦が生じる。摩擦力によってプリプレグ30が適切に滑らない場合、プリプレグ30に皺などが発生する可能性がある。これに対し、噴射された流体の圧力を用いてプリプレグ30が成形型20に沿って変形される場合、プリプレグ30は型部4との接触がないため、プリプレグ30に皺などが発生しにくい。
【0059】
なお、噴射ノズル5を用いた成形方法は、成形型20が断面凹部の場合だけでなく、成形型(図示せず。)が断面凸型である場合にも適用できる。この場合、断面凸型の成形型にプリプレグが載置され、噴射ノズル5から噴射された流体によって、成形型に載置されたプリプレグが押圧され変形される。
【0060】
プリプレグ積層成形装置1は、
図7に示すように、上記構成要素以外に、スリット付与部6、加熱部7,8や、剥離シート回収部9などを備えてもよい。
【0061】
スリット付与部6は、プリプレグ30が成形型20の内部に載置されるとき、プリプレグ30を部分的に切断してプリプレグ30に対してスリットを形成する。スリット付与部6は、例えばカッター等の刃、レーザー光を照射するレーザー装置などである。形成されるスリットは、例えば、プリプレグ30の長手方向に対して直角方向(90°方向)である。プリプレグ30に対してスリットが形成され、プリプレグ30の可塑性が高まるため、プリプレグ30が成形型20及び押圧部3によって変形されやすくなる。
【0062】
加熱部7,8は、プリプレグ30又は成形型20を加熱する。加熱部7,8は、例えば、赤外線、温風、又は、レーザー光などによって、対象物を加熱する。
【0063】
加熱部7は、プリプレグ供給部2よりも移動方向前方に設置され、成形型20、又は、成形型20において既に成形されているプリプレグ30を加熱する。加熱部8は、プリプレグ供給部2よりも移動方向後方に設置され、成形型20に載置される前のプリプレグ30を加熱する。これにより、プリプレグ30が成形型20に載置される前、又は、押圧部3を用いてプリプレグ30を変形する前において、プリプレグ30又は成形型20が加熱される。これにより、プリプレグ30の可塑性が高まるため、プリプレグ30が成形型20及び押圧部3によって変形されやすくなる。また、温度上昇によって、プリプレグ30の粘着性が向上するため、プリプレグ30間同士の接着性が高まる。
【0064】
また、加熱部(図示せず。)は、押圧部3を外部から加熱してもよい。または、押圧部3の内部に加熱部(図示せず。)を設け、押圧部3を発熱させてもよい。これにより、押圧部3を用いてプリプレグ30を変形させる際、押圧部3が加熱されて又は押圧部3が発熱するため、プリプレグ30の可塑性が高まり、プリプレグ30が成形型20及び押圧部3によって変形されやすくなる。また、温度上昇によって、プリプレグ30の粘着性が向上するため、プリプレグ30間同士の接着性が高まる。
【0065】
次に本実施形態に係るプリプレグ30の積層成形方法について説明する。
まず、プリプレグ供給部2がプリプレグ30を吐出し、プリプレグ30を成形型20に供給する。プリプレグ供給部2は、成形型20の長手方向に沿って一端20a側から他端20b側へ移動しつつ、プリプレグ30を供給する。
【0066】
プリプレグ供給部2から供給されたプリプレグ30は、幅方向中央部を下方に位置させて、断面形状が下向き凸状のU字形に撓まされる。そして、
図3(a)に示すように、断面凹型の成形型20の底部にU字形に撓んだプリプレグ30の下部を接触させるように、成形型20の内部にプリプレグ30が載置される。
【0067】
そして、押圧部3は、成形型20の長手方向に沿って一端20a側から他端20b側へ移動しつつ、プリプレグ30を押圧する。
図3(b)~
図3(d)に示すように、押圧部3によって、成形型20の内部に載置されたプリプレグ30が押圧され変形される。
【0068】
成形型20上で一端20a側から他端20b側にかけて、押圧部3によってプリプレグ30が変形されると、1層目のプリプレグ30の成形が完了する。
【0069】
次に、再度、プリプレグ供給部2は、成形型20の長手方向に沿って一端20a側から他端20b側へ移動しつつ、プリプレグ30を成形型20に供給する。プリプレグ供給部2から供給されたプリプレグ30は、先のプリプレグ30と同様に、断面形状が下向き凸状のU字形に撓まされる。そして、成形型20に沿って成形され載置されたプリプレグ30上にU字形に撓んだプリプレグ30の下部を接触させるように、成形型20の内部にプリプレグ30が載置される。
【0070】
そして、押圧部3は、成形型20の長手方向に沿って一端20a側から他端20b側へ移動しつつ、プリプレグ30を押圧する。押圧部3によって、成形型20の内部に載置されたプリプレグ30が押圧され変形される。1層目のプリプレグ30上で一端20a側から他端20b側にかけて、押圧部3によってプリプレグ30が変形されると、2層目のプリプレグ30の成形が完了する。
【0071】
上述した動作が繰り返されて必要層数のプリプレグ30が積層され成形されると、成形体が形成されて、プリプレグ30の積層成形が完了する。
【0072】
1枚ずつプリプレグ30が成形されるため、押圧部3によってプリプレグ30が変形される際、複数枚のプリプレグ30を同時に滑らせる必要がない。そのため、複数枚のプリプレグ30間においてプリプレグ30が適切に滑らないことによる皺の発生が抑制される。特に、凹部における曲率の大きい円弧(R)形状部分や、長手方向の立体形状(コンタ)部分の影響による皺の発生が抑制される。
【0073】
プリプレグ30の断面形状がU字形となるように変形され、
図3(a)に示すように、成形型20の底部にプリプレグ30の下部を接触させるように、成形型20の内部にプリプレグ30が載置される。そして、押圧部3によって、成形型20の内部に載置されたプリプレグ30が押圧され変形される。これにより、押圧部3を用いて成形されるとき、新たに成形されるプリプレグ30は、成形型20との間で滑りを発生させずに変形されるため、皺の発生が抑制される。
【0074】
成形型20の内部に成形型20に沿って変形されたプリプレグ30が載置されている場合、プリプレグ30の断面形状がU字形となるように変形され、
図3(a)に示すように、成形型20において成形されたプリプレグ30の上面にプリプレグ30の下部を接触させるように、成形型20の内部にプリプレグ30が載置される。そして、押圧部3によって、成形型20の内部に載置されたプリプレグ30が押圧され変形される。これにより、押圧部3を用いて成形されるとき、新たに成形されるプリプレグ30は、既に成形されているプリプレグ30との間で滑りを発生させずに変形されるため、皺の発生が抑制される。
【0075】
次に、プリプレグ30の供給方法について更に説明する。
まず、
図8、
図9(a)及び
図9(b)に示すように、プリプレグ30が成形型20に載置される前において、プリプレグ30の断面形状がU字形となるように、長手方向の一端側から他端側に向けてプリプレグ30を順次変形する。
そして、
図9(c)に示すように、U字形に変形されたプリプレグ30を、成形型20の一端20a側から他端20b側に向けて成形型20内に順次載置する。このとき、プリプレグ30は、成形型20に向けて斜め下方に供給され、成形型20の内部に載置される載置開始位置において向きが変更される。
【0076】
載置開始位置では、
図10及び
図11に示すように、プリプレグ30は、上向き凸状のU字形から下向き凸状のU字形に変更される。すなわち、プリプレグ30がプリプレグ供給部2から吐出されたときは、断面が上向き凸状のU字形とされており、幅方向中央部が上側に位置し、両端部が下側に位置する。そして、向きを変更するため、断面が上向き凸状のU字形となっているプリプレグ30の両端部を上側に向け、幅方向中央部の高さを下げる。成形型20に向かうにつれて、プリプレグ30の両端部の高さを上げつつ、幅方向中央部の高さを下げていくことによって、断面が下向き凸状のU字形に変更される。
【0077】
載置開始位置で、プリプレグ30が、上向き凸状のU字形から下向き凸状のU字形に変更されることにより、折れ曲がり部分においてプリプレグ30が成形型20の幅よりも外側に広がらず、載置開始位置では、プリプレグ30が安定して下向き凸状のU字形に変更されて、成形型20内にスムーズに収容される。
【0078】
上記方法ではなく、他の方法でプリプレグ30を成形型20に載置してもよい。載置開始位置では、
図12及び
図13に示すように、下向き凸状のU字形の両側上部が内側に屈曲して配置される。すなわち、載置開始位置には、円錐形状のローラ13が、プリプレグ30の両端にそれぞれ3本ずつ長手方向に沿って設置される。円錐形状のローラ13は、径の大きいほうが上側、すなわち、プリプレグ30の端部側に位置し、径の小さいほうが下側、すなわち、プリプレグ30の幅方向中央側に位置する。プリプレグ30は、1本目のローラ13の外側から中央(2本目)のローラ13よりも内側に送られ、その後、中央のローラ13の内側から3本目のローラ13の外側へ送られる。円錐形状のローラ13は、径の大きいほうがプリプレグ30の端部をより中央に位置させる。これより、折れ曲がり部分においてプリプレグ30が成形型20の幅よりも外側に広がらず、載置開始位置では、プリプレグ30が安定して成形型20内に収容される。
【0079】
上述したプリプレグ30の供給方法では、プリプレグ30を一端側から他端側に向けて順次変形し、順次成形型20に載置する場合について説明したが、
図14及び
図15に示すように、必要な長さのプリプレグ30を用意してから、全長にわたって同時に成形型20にプリプレグ30を載置してもよい。
【0080】
この場合、プリプレグ30が成形型20に載置される前において、プリプレグ30の断面形状がU字形となるように、長手方向の一端30a側から他端30b側にわたってプリプレグ30を同時に変形する。そして、U字形に変形されたプリプレグ30を、成形型20の一端20a側から他端20b側にわたって成形型20内に同時に載置する。これにより、載置位置の全長にわたって、下向き凸状のU字形の両側上部が内側に屈曲して、載置位置では、プリプレグ30が安定して下向き凸状のU字形に変更される。
【0081】
プリプレグ30を全長にわたって下向き凸状のU字形に変形する方法は、例えば以下のとおりである。
図16に示すように、把持部10と、押し込み部11を備える。そして、把持部10が平板状のプリプレグ30の幅方向端部を把持し、押し込み部11がプリプレグ30の中央を下方に押し込む。これにより、プリプレグ30が平板状から下向き凸状のU字形に変形する。このとき、プリプレグ30の変形に伴って、把持部10の向きが横向きから下向きに変更される。
【0082】
または、
図17に示すように、折り曲げ部12を備える。そして、折り曲げ部12が平板状のプリプレグ30の幅方向端部を把持し、折り曲げ部12が駆動する。折り曲げ部12は、回転しつつ、プリプレグ30の中央側に移動する。その結果、折り曲げ部12の向きが横向きから下向きに変更され、プリプレグ30が平板状から下向き凸状のU字形に変形する。
【0083】
次に、プリプレグ30の成形方法について説明する。
図7に示すように、加熱部7が設置される場合、プリプレグ30が成形型20内に配置される前に、成形型20又は既に成形型20内で成形されているプリプレグ30を加熱してもよい。これにより、新たにプリプレグ30が配置される領域を温度上昇させることができる。また、スリット付与部6や加熱部8が設置される場合、プリプレグ30が成形型20内に配置される前に、プリプレグ30にスリットを形成したり、プリプレグ30を加熱してもよい。これにより、新たに成形されるプリプレグ30が変形されやすくなり、また、プリプレグ30同士の接着性が向上する。
【0084】
その後、押圧部3が成形型20内に配置されたプリプレグ30を押圧する。このとき、押圧部3が加熱されたり、押圧部3が発熱してもよい。これにより、新たに成形されるプリプレグ30が変形されやすくなり、また、プリプレグ30同士の接着性が向上する。
【0085】
押圧部3は、成形型20の一端20a側から他端20b側に移動する。このとき、押圧部3が型部4を有する場合、型部4は、長手方向に沿って滑りながら連続的にプリプレグ30を押圧してもよいし、
図4に示すように、長手方向に移動しながら断続的にプリプレグ30を押圧してもよい。
【0086】
また、
図5及び
図6に示すように、押圧部3が噴射ノズル5を有する場合、噴射ノズル5は、長手方向に移動しながらプリプレグ30に対して流体を噴射する。複数の噴射ノズル5が長手方向に沿って設置され、かつ、噴射方向が異なるように設けられていれば、プリプレグ30が平板状から成形型20に沿った形状に徐々に変更される。
【0087】
以上、本実施形態によれば、プリプレグ30の断面形状がU字形となるように変形され、
図3(a)に示すように、成形型20の底部に、又は、成形型20に沿って変形されたプリプレグ30の上面に、プリプレグ30の下部を接触させるように、成形型20の内部にプリプレグ30が載置される。そして、押圧部3によって、成形型20の内部に載置されたプリプレグ30が押圧され変形される。
【0088】
従来、
図18に示すように、成形型20の上面に、プリプレグ30が平板状のまま載置される。そして、押圧部40によって、プリプレグ30が押圧されながら、成形型20の内部に押し込まれる。このとき、成形型20、又は、成形型20に沿って載置されたプリプレグ30と摩擦を生じさせながら、プリプレグ30が押圧され変形される。そのため、摩擦力によってプリプレグ30間(層間)においてプリプレグ30が適切に滑らない場合、皺(リンクル)などが発生する可能性がある。
【0089】
一方、本実施形態によれば、
図3(a)に示すように、成形型20の底部に、又は、成形型20に沿って変形されたプリプレグ30の上面に、プリプレグ30の下部を接触させている。そのため、押圧部3を用いて成形されるとき、新たに成形されるプリプレグ30は、成形型20との間で滑りを発生させずに変形されるため、皺の発生が抑制される。
【符号の説明】
【0090】
1 :プリプレグ積層成形装置
2 :プリプレグ供給部
3 :押圧部
4 :型部
5 :噴射ノズル
6 :スリット付与部
7 :加熱部
8 :加熱部
9 :剥離シート回収部
10 :把持部
11 :押し込み部
12 :折り曲げ部
13 :ローラ
20 :成形型
30 :プリプレグ
40 :押圧部