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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】内装材及び内装材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/16 20060101AFI20221114BHJP
   A47G 27/02 20060101ALI20221114BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20221114BHJP
   B32B 17/04 20060101ALI20221114BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
E04F15/16 A
A47G27/02 103
A47G27/02 101A
E04F13/08 A
B32B17/04 Z
B32B5/18
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019066832
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020165207
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000222495
【氏名又は名称】東リ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】特許業務法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山元 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】上野 卓二
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-020248(JP,A)
【文献】特開2017-136289(JP,A)
【文献】特開2001-220839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/16
E04F 13/08
A47G 27/02
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のガラス繊維を含むガラス不織布と、
前記ガラス不織布の上側及び下側の少なくとも一方側に積層された樹脂層と、を有し、
前記ガラス不織布が、前記複数のガラス繊維の間に介在してガラス繊維を結合するバインダー樹脂を含み、前記バインダー樹脂の介在により複数のガラス繊維が層を成しており、前記バインダー樹脂が、発泡されており、
断面視において、前記ガラス不織布の少なくとも表層部に前記樹脂層の樹脂成分が入り込んでいると共に、前記ガラス不織布の内部に、第1及び第2空洞部が形成されており、
前記第1空洞部が、前記バインダー樹脂に包囲された空洞部を含み、前記第2空洞部が、前記バインダー樹脂と前記樹脂層の樹脂成分とに包囲された空洞部を含む、内装材。
【請求項2】
前記第1空洞部が、熱膨張性マイクロカプセルが膨張した外殻で囲われた空間を含む、請求項1に記載の内装材。
【請求項3】
発泡成分とバインダー樹脂を含むバインダー樹脂溶液を、ガラス繊維が厚み方向に重なったガラスウェブに塗布し又は含浸させた後、余分な前記バインダー樹脂溶液を除去した後、前記発泡成分を発泡させることにより、複数のガラス繊維の間に介在してガラス繊維を結合するバインダー樹脂であって発泡されているバインダー樹脂を含み、前記発泡されているバインダー樹脂により複数のガラス繊維が層を成しているガラス不織布を準備する工程、
その工程に続いて前記ガラス不織布の下側に、塩化ビニル樹脂ペースト層を積層し、且つ、前記ガラス不織布の上側に、塩化ビニル樹脂ペースト層を積層することにより、積層体を得る工程、
前記積層体を加熱して前記塩化ビニル樹脂ペースト層をゲル化させる工程、を有する内装材の製造方法。
【請求項4】
発泡成分とバインダー樹脂を含むバインダー樹脂溶液を、ガラス繊維が厚み方向に重なったガラスウェブに塗布し又は含浸させた後、余分な前記バインダー樹脂溶液を除去することにより、複数のガラス繊維と前記ガラス繊維の間に介在し且つ発泡成分を含む未発泡のバインダー樹脂とを有するガラス不織布前駆体を準備する工程、
前記ガラス不織布前駆体の下側に、塩化ビニル樹脂ペースト層を積層し、且つ、前記ガラス不織布前駆体の上側に、塩化ビニル樹脂ペースト層を積層することにより、積層体を得る工程、
前記積層体を加熱して前記塩化ビニル樹脂ペースト層をゲル化させると共に、前記バインダー樹脂溶液の発泡成分を発泡させる工程、を有する内装材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイルカーペットなどの床材、腰壁材などの壁装材などとして使用される内装材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オフィスビル、商業施設、マンション、一般家屋などには、樹脂層を有する内装材が使用されている。樹脂層を有する内装材としては、床面に敷設される床材、壁面に施工される壁装材、天井面に施工される天井材などが挙げられる。床材としては、例えば、タイルカーペット、ロールカーペット、ラグ、マットなどのカーペット(パイルを有する床材)、樹脂製の床シートなどのパイルを有さない床材などが挙げられる。壁装材としては、例えば、腰壁シートなどが挙げられ、天井材としては、例えば、天井用シートなどが挙げられる。
このような樹脂層を有する内装材の中で、樹脂層にガラス不織布が積層されているものが知られている。
例えば、特許文献1には、上側から順に、化粧層を有する表層と、床材本体と、を有する床材が開示されている。床材本体は、上方樹脂層と、形状安定化層と、下方樹脂層と、を有し、前記形状安定化層として、ガラス不織布が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-148083号公報
【発明の概要】
【0004】
一般に、特許文献1のような床材において、表層は、表面装飾や表面性質などの床材の表面の特性を決定する目的で設けられ、床材本体(上方樹脂層、ガラス不織布、下方樹脂層)は、強度や厚みなどの床材に基本的な性能を付与する目的で設けられている。具体的には、ガラス不織布は、床材の形状変化防止などの目的で設けられ、上方樹脂層及び下方樹脂層は、床材の厚み確保及び強度維持などの目的で設けられている。
ガラス不織布は、複数のガラス繊維がバインダー樹脂によって結合されることにより、薄肉状の層を成しているものである。ガラス不織布は、比較的薄い層であるため、適切な厚みの床材本体を作製するために、上方樹脂層や下方樹脂層のような樹脂層は、比較的厚肉状に形成されている。
【0005】
ところで、床材などの内装材は、通常、人力で施工されているので、軽量化することが求められ、製造コストの軽減も求められている。
上記樹脂層の厚みを比較的薄肉状に形成すれば、樹脂使用量を低減できるので、軽量化及び低コスト化できる可能性があるが、床材本体の厚みが小さくなり、望ましい厚みの床材を作製できない。また、樹脂層を発泡すれば軽量化を図ることができるが、発泡させすぎると、内装材に必要な強度などの物性を担保できなくなる。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、軽量であり且つ製造コストが低く、さらに、望ましい厚みに作製できる内装材及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の内装材は、複数のガラス繊維を含むガラス不織布と、前記ガラス不織布の上側及び下側の少なくとも一方側に積層された樹脂層と、を有し、前記ガラス不織布が、前記複数のガラス繊維の間に介在してガラス繊維を結合するバインダー樹脂を含み、前記バインダー樹脂の介在により複数のガラス繊維が層を成しており、前記バインダー樹脂が、発泡されており、断面視において、前記ガラス不織布の少なくとも表層部に前記樹脂層の樹脂成分が入り込んでいると共に、前記ガラス不織布の内部に、第1及び第2空洞部が形成されており、前記第1空洞部が、前記バインダー樹脂に包囲された空洞部を含み、前記第2空洞部が、前記バインダー樹脂と前記樹脂層の樹脂成分とに包囲された空洞部を含む
【0008】
本発明の好ましい内装材は、前記第1空洞部が、熱膨張性マイクロカプセルが膨張した外殻で囲われた空間を含む。
【0009】
本発明の別の局面によれば、内装材の製造方法を提供する。
第1の内装材の製造方法は、発泡成分とバインダー樹脂を含むバインダー樹脂溶液を、ガラス繊維が厚み方向に重なったガラスウェブに塗布し又は含浸させた後、余分な前記バインダー樹脂溶液を除去した後、前記発泡成分を発泡させることにより、複数のガラス繊維の間に介在してガラス繊維を結合するバインダー樹脂であって発泡されているバインダー樹脂を含み、前記発泡されているバインダー樹脂により複数のガラス繊維が層を成しているガラス不織布を準備する工程、その工程に続いて前記ガラス不織布の下側に、塩化ビニル樹脂ペースト層を積層し、且つ、前記ガラス不織布の上側に、塩化ビニル樹脂ペースト層を積層することにより、積層体を得る工程、前記積層体を加熱して前記塩化ビニル樹脂ペースト層をゲル化させる工程、を有する。
第2の内装材の製造方法は、発泡成分とバインダー樹脂を含むバインダー樹脂溶液を、ガラス繊維が厚み方向に重なったガラスウェブに塗布し又は含浸させた後、余分な前記バインダー樹脂溶液を除去することにより、複数のガラス繊維と前記ガラス繊維の間に介在し且つ発泡成分を含む未発泡のバインダー樹脂とを有するガラス不織布前駆体を準備する工程、前記ガラス不織布前駆体の下側に、塩化ビニル樹脂ペースト層を積層し、且つ、前記ガラス不織布前駆体の上側に、塩化ビニル樹脂ペースト層を積層することにより、積層体を得る工程、前記積層体を加熱して前記塩化ビニル樹脂ペースト層をゲル化させると共に、前記バインダー樹脂溶液の発泡成分を発泡させる工程、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、発泡されたバインダー樹脂を有するガラス不織布を用いるので、内装材を望ましい厚みに作製でき、さらに、軽量な内装材を提供できる上、製造コストを軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のカーペット(内装材)を表面側から見た平面図。ただし、パイルは図示していない。
図2】同カーペットの一部省略斜視図。
図3図2のIII-III線で切断した概略断面図。ただし、パイルを、便宜上、1本線で表している。
図4】1つの実施形態に係る本体部の概略拡大断面図。
図5図4のA-B部の更なる拡大断面図であって、各構成要素を詳細に表した拡大断面図。
図6】樹脂層を積層する前の発泡済みガラス不織布の拡大断面図であって、各構成要素を詳細に表した拡大断面図。
図7】本発明の床シート(内装材)を表面側から見た平面図。
図8図6のVIII-VIII線で切断した概略断面図。
図9】第1変形例に係る本体部の概略拡大断面図。
図10図9のC-D部の更なる拡大断面図であって、各構成要素を詳細に表した拡大断面図。
図11】実施例及び比較例のタイルカーペットの各層の厚みの計測方法を示す参考図。
図12】製造例2の発泡済みガラス不織布の断面拡大写真図。
図13】製造例3のガラス不織布前駆体の断面拡大写真図。
図14】製造例4の非発泡ガラス不織布の断面拡大写真図。
図15】実施例2のタイルカーペット(内装材)のガラス不織布の断面拡大写真図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について、適宜図面を参照しつつ説明する。
本明細書において、上方、上側などの「上」や表面などの「表」は、何れも、内装材を施工するときの施工面とは反対側を指し、下方、下側などの「下」や裏面などの「裏」は、何れも、内装材を施工するときの施工面側を指す。
本明細書において、「~」で表される数値範囲は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。複数の下限値と複数の上限値が別個に記載されている場合、任意の下限値と任意の上限値を選択し、「~」で結んだ範囲とすることができるものとする。「複数」は、2以上を意味する。
【0013】
[内装材の概要]
本発明の内装材は、オフィスビル、商業施設、マンション、一般家屋などの各種の建築構造物の床材、壁装材、天井材などに使用される。
本発明の内装材の一種である床材は、前記建築構造物の床面(施工面)に施工される。前記床材は、表面にパイルを有する床材、表面にパイルを有さない床材に大別できる。パイルを有する床材としては、タイルカーペット、ロールカーペット、ラグ、マットなどが挙げられ、表面にパイルを有さない床材としては、床シート、床タイルなどが挙げられる。
本発明の内装材の一種である壁装材は、建築構造物の壁面(施工面)に施工される。本発明の内装材の一種である壁装材は、主として樹脂から形成される。前記壁装材としては、腰壁材、壁面被覆シートなどが挙げられる。
本発明の内装材の一種である天井材は、前記建築構造物の天井面(施工面)に施工される。本発明の内装材の一種である天井材は、主として樹脂から形成される。前記天井材としては、天井被覆シートなどが挙げられる。
【0014】
本発明の内装材は、枚葉状でもよく、或いは、長尺帯状でもよい。
枚葉状の内装材は、平面視略正方形状に形成される他、例えば、略長方形状、略三角形状や略六角形状などの平面視略多角形状、平面視略円形状、平面視略楕円形状などの任意の平面視形状に形成されていてもよい。本明細書において、形状を表す際の「略」は、本発明の属する技術分野において許容される形状を意味する。平面視略正方形状、略長方形状、略三角形状などの略多角形状の「略」は、例えば、角部が面取りされている形状、辺の一部が僅かに膨らむ又は窪んでいる形状、辺が若干湾曲している形状などが含まれる。また、平面視略円形状及び略楕円形状の「略」は、例えば、周の一部が僅かに膨らむ又は窪んでいる形状、周の一部が若干直線又は斜線とされた形状などが含まれる。
枚葉状の内装材の寸法は、特に限定されないが、例えば、平面視略正方形状又は略長方形状を基準にして、[縦]×[横]=[200mm~1000mm]×[200mm~1000mm]などを例示できる。
長尺帯状の内装材は、長手方向の長さが短手方向よりも十分に長い平面視略長方形状の内装材である。例えば、長手方向長さが短手方向の長さの5倍以上、好ましくは10倍以上である。
【0015】
本発明の内装材は、後述するように、化粧部2と、化粧部2の下側に積層された本体部3と、を有する。
化粧部2は、表面装飾や表面性質などの内装材の表面特性を決定する。本体部3は、強度や厚みなどの内装材に基本的な性能を付与する。
化粧部2と本体部3は、任意の適切な接着手段によって接着され且つ積層されている。
本体部3は、複数のガラス繊維を含むガラス不織布と、前記ガラス不織布の少なくとも一方側に積層された樹脂層と、を有し、ガラス繊維を結合するバインダー樹脂が発泡されている。バインダー樹脂が発泡されていることにより、ガラス繊維の間に複数の空洞部が点在されている。
前記本体部3は、柔軟性を有する。ここで、本明細書において、「柔軟性」は、標準状態下(23℃、1気圧、50%RH)で、表面側又は裏面側の何れか一方側を直径20cmの芯材に当て、その芯材の周囲に沿ってロール状に巻き付けることができる程度に柔軟であることをいう。前記柔軟性を有する本体部3は、前記に従い、表面側又は裏面側の何れか一方側を直径20cmの芯材に当て、その芯材の周囲に沿って巻き付けることができる。
【0016】
[パイルを有する床材の態様]
図1乃至図3は、本発明の内装材1が、パイルを有する床材である場合の構成例を示す。図示例では、パイルを有する床材として、タイルカーペットを例示している。
本発明のカーペット1Aは、パイル21を有する生機2Aと、生機2Aの下側に積層された本体部3と、を有する。前記生機2Aは、化粧部2に相当する。
【0017】
<化粧部>
本実施形態の化粧部2である生機2Aは、基布22と、前記基布22にタフトされたパイル21と、を有する。生機2Aは、従来公知のものを適宜選択して用いることができる。
生機2Aについて、簡単に説明する。パイル21は、所望の色彩に着色された1本又は複数本の糸からなる。パイル21は、基布22の所定方向にタフトされ、1つのパイル21列を構成している。このパイル21列がゲージ方向に並んで配設されている。
パイル形状は特に限定されず、図示のようなループパイルでもよいし、或いは、カットパイル(図示せず)でもよい。パイル高も特に限定されず、例えば、2mm~10mmであり、好ましくは3mm~8mmである。パイル高は、タフト方向及びゲージ方向において同じ高さでもよく、或いは、タフト方向及び/又はゲージ方向において異なっていてもよい(図示せず)。
前記基布22は、特に限定されず、例えば、織布、不織布、編み布などのシート状のものが挙げられる。基布22を構成する繊維の素材としては、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミドなどの合成繊維;セルロース、ウールなどの天然繊維;レーヨンなどの半合成繊維などが挙げられる。耐久性及び耐へたり性に優れていることから、基布22として、ポリエステル、ポリアミド及び/又はポリプロピレンの合成繊維を含む織布、不織布又は編み布を用いることが好ましい。
基布22の裏面側に、パイル21の解れを防止する目止めが設けられていてもよい(図示せず)。
【0018】
<本体部>
本体部3は、例えば、複数のガラス繊維41を含むガラス不織布4と、前記ガラス不織布4の上側及び下側に積層された樹脂層5,6と、を有する。以下、ガラス不織布4の上側に積層された樹脂層5を「上方樹脂層5」といい、ガラス不織布4の下側に積層された樹脂層6を「下方樹脂層6」といい、上方樹脂層5及び下方樹脂層6の何れか一方を又は両層を総称して[樹脂層」という。
必要に応じて、本体部3の下側に、滑り止め層などの任意の層(図示せず)が設けられていてもよい。
【0019】
<本体部の樹脂層(上方樹脂層及び下方樹脂層を含む樹脂層)>
図4は、図3の概略断面図のうち、本体部3のみを一部分拡大して参考的に表した概略拡大断面図である。図5は、図4のガラス不織布4の部分詳細部であって、ガラス繊維、バインダー樹脂、樹脂層の樹脂成分及び空洞部の状態を表した更なる拡大断面図である。各断面図において、無数のドットはバインダー樹脂を表している。図5の細斜線は、樹脂層を構成する樹脂を表している。
【0020】
図3乃至図5を参照して、上方樹脂層5及び下方樹脂層6は、内装材1の強度及び重量を構成する主たる部分である。
上方樹脂層5及び下方樹脂層6の厚みは、特に限定されず、適宜設定できる。上方樹脂層5の厚みと下方樹脂層6の厚みは、同じでもよいし、又は、何れか一方が小さくてもよい。例えば、上方樹脂層5の厚みは、0.5mm~3.5mmであり、好ましくは1.0mm~2.0mmである。下方樹脂層6の厚みは、例えば、0.5mm~3.5mmであり、好ましくは1.0mm~2.0mmである。
ただし、上方樹脂層5の厚みは、断面視において、ガラス不織布4の上端から上方樹脂層5の上端までの長さであり、下方樹脂層6の厚みは、ガラス不織布4の下端から下方樹脂層6の下端までの長さである。ガラス不織布4の上端は、最も上側にあるガラス繊維41によって画成され、ガラス不織布4の下端は、最も下側にあるガラス繊維41によって画成される。また、前記上方樹脂層5の上端については、生機2Aが積層されている場合、その生機2Aの基布22の裏面を前記上方樹脂層5の上端とみなすものとする。
【0021】
樹脂層(上方樹脂層5及び下方樹脂層6)の樹脂成分としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、一般的には、熱可塑性樹脂が用いられる。また、上方樹脂層5と下方樹脂層6の樹脂成分は、同種でもよいし、同じでもよいし、又は、異なっていてもよい。樹脂成分が同種とは、その樹脂成分の主たる繰り返し単位を構成するモノマーが同一であることを意味し、共重合モノマーを有する場合にはその共重合モノマーが異なる場合、及び/又は、重合度が異なる場合を含む。樹脂成分が同じとは、繰り返し単位(及び共重合モノマーを有する場合には、その共重合モノマーを含む)が同一であることを意味し、重合度が異なる場合を含む。
【0022】
前記熱可塑性樹脂としては、塩化ビニルや塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体などの塩化ビニル系樹脂;ポリオレフィン系樹脂;ウレタン系樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニル系樹脂;エチレン-メタクリレート樹脂などのアクリル系樹脂;ポリアミド系樹脂;エステル系樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーなどの各種エラストマー;ゴムなどが挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上を併用できる。優れた可撓性を有し、さらに、樹脂付きガラスシート6と接合し易いことから、上方樹脂層5及び下方樹脂層6の少なくとも何れか一方は、塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂とする樹脂層であることが好ましく、上方樹脂層5及び下方樹脂層6の双方が、塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂とすることがより好ましい。塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂とする樹脂層を有する本体部3は、柔軟性に優れているので、歩行感が良好であり、さらに、湾曲させながら施工できる。また、塩化ビニル系樹脂は、安価である上、これを用いると、本体部3の製造も簡易となる。
上方樹脂層5及び下方樹脂層6が何れも塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂とする場合、上方樹脂層5及び下方樹脂層6の塩化ビニル系樹脂は、モノマーの種類及び重合度が同じでもよく、そのいずれかが異なっていてもよい。
【0023】
なお、本明細書において、主成分樹脂は、その層を構成する樹脂成分(ただし、添加剤を除く)の中で最も多い成分(重量比)をいう。主成分樹脂の量は、その層を構成する樹脂成分全体を100重量%とした場合、50重量%を超え、好ましくは、70重量%以上であり、より好ましくは80重量%以上である。主成分樹脂の量の上限は、100重量%である。主成分樹脂の量が100重量%未満である場合において、その層に含まれる主成分樹脂以外の樹脂は、特に限定されず、公知の樹脂成分を用いることができる。
【0024】
前記塩化ビニル系樹脂としては、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法などで製造されたものを用いることができる。これらの塩化ビニル系樹脂は、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
加工し易く且つ取り扱い易いことから、乳化重合法で得られる塩化ビニル系樹脂が好ましい。
好ましくは、上方樹脂層5及び下方樹脂層6の少なくとも一方は、主成分樹脂としてペースト塩化ビニル樹脂を含み、より好ましくは、上方樹脂層5及び下方樹脂層6の双方が、主成分樹脂としてペースト塩化ビニル樹脂を含む。上方樹脂層5及び下方樹脂層6をペースト塩化ビニル樹脂で形成することにより、本体部3の強度を確保しつつ比較的厚みの小さい樹脂層を形成できる。
【0025】
ペースト塩化ビニル樹脂は、例えば、乳化重合法で得られるペースト状の塩化ビニル系樹脂であり、可塑剤により、適宜粘度を調整できる。ペースト塩化ビニル樹脂は、多数の微粒子集合体からなる粒子径が0.1μm~10μm(好ましくは0.2μm~3μm)の微細粉末であり、好ましくは、前記微細粉末の表面に界面活性剤がコーティングされている。ペースト塩化ビニル樹脂の平均重合度は、500~2000程度が好ましく、700~1800程度がより好ましい。
サスペンション塩化ビニル樹脂は、例えば、懸濁重合法で得られる塩化ビニル系樹脂である。サスペンション塩化ビニル樹脂は、粒子径が好ましくは20μm~100μmの微細粉末である。サスペンション塩化ビニル樹脂の平均重合度は、600~2000程度が好ましく、700~1800程度がより好ましい。
ただし、前記粒子径は、体積基準の粒度分布におけるメディアン径(D50)である。
【0026】
前記各塩化ビニル系樹脂は、K値50~95程度のものが好ましく、K値60~80程度のものがより好ましい。
前記上方樹脂層5及び下方樹脂層6には、通常、上記樹脂成分以外に各種添加剤が含まれる。添加剤としては、従来公知のものを使用でき、例えば、充填剤、可塑剤、難燃剤、安定剤、吸湿剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、発泡剤、防黴剤などが挙げられる。
前記上方樹脂層5が塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂とする場合には、上方樹脂層5は、上方樹脂層5の全体を100重量%として、塩化ビニル系樹脂を15重量%~70重量%、炭酸カルシウムなどの充填剤を0重量%~80重量%、DOPなどの可塑剤を10重量%~60重量%含むことが好ましい。
前記下方樹脂層6が塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂とする場合には、下方樹脂層6は、下方樹脂層6の全体を100重量%として、塩化ビニル系樹脂を15重量%~70重量%、炭酸カルシウムなどの充填剤を0重量%~80重量%、DOPなどの可塑剤を10重量%~60重量%含むことが好ましい。
なお、上方樹脂層5及び下方樹脂層6は、それぞれ独立して、充填剤を含んでいなくてもよく、前記「充填剤を0重量%」は、充填剤を含まない場合を意味する。
【0027】
前記上方樹脂層5及び下方樹脂層6がいずれも塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂とする場合には、上方樹脂層5は、下方樹脂層6よりも充填剤が少なく且つ可塑剤が多く配合されていることが好ましい。かかる充填剤及び可塑剤の相違によって、下方樹脂層6よりも柔軟性に優れた上方樹脂層5を構成でき、生機2Aのパイル21の抜糸強度を向上させることができる。
【0028】
前記上方樹脂層5及び下方樹脂層6は、それぞれ独立して、非発泡でもよいし、或いは、発泡されていてもよい。例えば、上方樹脂層5及び下方樹脂層6の何れか一方が発泡樹脂層で且つ他方が非発泡樹脂層で構成されていてもよいし、又は、双方が非発泡樹脂層若しくは発泡樹脂層で構成されていてもよい。好ましくは、上方樹脂層5及び下方樹脂層6の双方が非発泡樹脂層、又は、上方樹脂層5が発泡樹脂層で且つ下方樹脂層6が非発泡樹脂層である。下方樹脂層6が非発泡であれば、強度が低下することがないので、粘着剤などで施工されたタイルカーペットを引き剥がしたときに、下方樹脂層6が材料破壊することを防止できる。
前記樹脂層が発泡樹脂の場合、その発泡倍率は特に限定されないが、好ましくは1.05倍~3倍であり、より好ましくは1.05倍~1.5倍である。発泡倍率が余りに低いと、軽量化の効果が得られ難くなり、一方、発泡倍率が余りに高いと、タイルカーペットとして必要な物性を担保できなくなるおそれがある。この物性とは、パイルの抜糸強度や、タイルカーペットを引き剥がしたときに材料破壊を起こさないことなどを含む。
【0029】
<本体部のガラス不織布>
ガラス不織布4は、内装材1の寸法変化を抑制し、反りを防止するための層である。本発明においては、ガラス不織布4は、本体部3の厚みを大きくすることに貢献し、さらに、機械的強度を維持するために貢献する層でもある。
本発明のガラス不織布4は、ガラス繊維をバインダー樹脂で結合したシート状の不織布である。前記ガラス不織布4は、複数のガラス繊維41と、前記複数のガラス繊維41の間に介在してガラス繊維41を結合するバインダー樹脂42と、を含む。前記ガラス不織布4は、複数のガラス繊維41が厚み方向に重なり合いつつ、その間に発泡されたバインダー樹脂42が介在することにより、複数のガラス繊維41が層を成しているものである。
前記発泡されたバインダー樹脂42を含むガラス不織布は、本体部3の厚みを確保できる上、引張り強度、層間強度及び柔軟性に優れるという特性を有する。
【0030】
ガラス繊維41の太さは、特に限定されず、例えば、直径5μm~30μmであり、好ましくは、直径8μm~20μmである。
ガラス繊維41は、短繊維でもよく、或いは、長繊維でもよく、短繊維と長繊維の混合物であってもよい。短繊維の平均繊維長は、特に限定されないが、例えば、3mm~40mmであり、好ましくは、20mm~30mmである。長繊維の長さは、特に限定されないが、例えば、40mmよりも長い。
ガラス不織布4に使用されるガラス繊維41が、短繊維と長繊維の混合物である場合、その混合割合は、特に限定されず、例えば、短繊維:長繊維(重量比)=9:1~1:9である。
繊維斑がなく、品質が安定することから、短繊維のガラス繊維41のみを用いることが好ましい。
なお、本発明のガラス不織布4は、繊維質としてガラス繊維41を含むが、本発明の効果を損なわない範囲でガラス繊維41以外の繊維を若干含んでいてもよい。ガラス繊維41以外の繊維としては、ガラス以外の無機繊維、ポリエステル繊維などの合成繊維、パルプなどの天然繊維などが挙げられる。
【0031】
ガラス不織布4におけるガラス繊維41の目付量は、特に限定されず、例えば、20g/m~70g/mであり、好ましくは、25g/m~50g/mである。ガラス繊維41の目付量が前記の範囲であることにより、ガラス不織布4が最適な厚みとなる。すなわち、ガラス繊維41の交点間をバインダー樹脂42が介在し、このバインダー樹脂42が発泡されていることにより、ガラス繊維41の間隔が比較的大きくなり、軽量化を図ることができる。また、バインダー樹脂42によって架橋されたガラス繊維41の間が大きくなることにより、後述する製法において、ガラス不織布4に樹脂層(上方樹脂層5及び下方樹脂層6)の形成材料を積層したときに、ガラス不織布4内の空隙に樹脂層の形成材料が入り込むようになる。このため、ガラス不織布4と樹脂層(上方樹脂層5及び下方樹脂層6)の接合強度に優れ、ガラス不織布4と樹脂層の層間剥離が生じ難い本体部3を構成できる。
【0032】
バインダー樹脂42は、前記複数のガラス繊維41の間に介在してガラス繊維41を結合する樹脂である。バインダー樹脂42は、主として複数のガラス繊維41の交点間に介在してガラス繊維41を架橋する。直状の無機繊維であるガラス繊維41に、バインダー樹脂42を介在させることにより、ガラス繊維41が層(シート状)を成したガラス不織布4が得られる。バインダー樹脂42は、ガラス繊維41の表面に直接付着している。ここで、バインダー樹脂42を介在させることによりガラス繊維41が層を成しているとは、仮にバインダー樹脂42が無かった場合には、ガラス繊維41が層を成さずにバラバラとなってしまうことを意味する。
【0033】
複数のガラス繊維41の間に介在されたバインダー樹脂42は、発泡されており、内部に複数の空洞部43,45が存在する。前記複数の空洞部43,45は、独立しており、従って、バインダー樹脂42は、内部に独立した空洞部を有する発泡体である。
空洞部43,45の立体形状は、特に限定されず、中空の略楕円球状、中空の略球状、中空の略直方体状、中空の不定形状などが挙げられる。
【0034】
バインダー樹脂42の発泡方法は、特に限定されず、化学的発泡法、機械的発泡法、物理的発泡法の何れでもよく、また、中空ビーズなどの既発泡剤を用いた発泡、或いは、熱膨張性マイクロカプセルを用いた発泡でもよい。
空洞部43は、バインダー樹脂42に包囲されている。以下、ガラス不織布4の内部に形成された空洞部のうち、バインダー樹脂42で包囲されている空洞部43を「第1空洞部43」という。
独立した複数の第1空洞部43を容易に形成できることから、バインダー樹脂42は、熱膨張性マイクロカプセルを用いて発泡されていることが好ましい。熱膨張性マイクロカプセルによって形成される第1空洞部43は、中空の略楕円球状、中空の略球状であることが多い。
【0035】
図示例では、バインダー樹脂42は、熱膨張性マイクロカプセルによって発泡されている。熱膨張性マイクロカプセルを用いた発泡方法は、熱膨張性マイクロカプセルが熱によって膨張することによってバインダー樹脂42内に複数の第1空洞部43が形成される。この場合、第1空洞部43は、外殻7(外殻7は、熱膨張性マイクロカプセルの膨張したもの)で囲われた閉鎖空間である。従って、マイクロカプセルを用いて形成される第1空洞部43は、外殻7及びバインダー樹脂42に包囲された空洞部である。ただし、全ての第1空洞部43が、前記外殻7で画成されている場合に限定されず、例えば、一部の第1空洞部43は、バインダー樹脂42そのもので囲われた閉鎖空間である場合もある。また、全ての第1空洞部43が、バインダー樹脂42で包囲されているものに限定されず、一部の第1空洞部43は、バインダー樹脂42で未完全な状態で包囲されているものもある。例えば、外殻7で包囲されている第1空洞部43のうち、一部の第1空洞部は、バインダー樹脂42で未完全な状態で包囲、すなわち、外殻7の一部がバインダー樹脂42で覆われずに露出されているものもある。
【0036】
前記第1空洞部43の大きさは、例えば、20μm~400μmであり、好ましくは50μm~250μmである。前記第1空洞部43の大きさは、株式会社日立製作所製のミニスコープ「TM4000 Plus」にて測定できる。前記第1空洞部43の大きさは、任意の5点の空洞部の大きさを計測し、その5点の平均値を採用するものとする。なお、第1空洞部43が略球状でない場合は、第1空洞部の最も長い寸法と最も短い寸法の平均値を採用するものとする。
【0037】
熱膨張性マイクロカプセルを用いた場合、ガラス不織布4は、バインダー樹脂42と熱膨張後のマイクロカプセルとを含んで構成される。バインダー樹脂42は、ガラス不織布4の全体を100重量%としたときに、例えば、5重量%~35重量%であり、好ましくは、10重量%~25重量%であり、熱膨張性マイクロカプセルは、例えば、1重量%~15重量%であり、好ましくは、2重量%~10重量%であり、より好ましくは、3重量%~9重量%である。バインダー樹脂42の量が下限値以上であることにより、ガラス繊維41を適切に結合させることができ、また、発泡させたときにガラス不織布4の嵩増し効果が得られる。バインダー樹脂42の量が上限値以下であることにより、ガラス不織布4の内部に、十分な空隙が生じるようになる。熱膨張性マイクロカプセルの量が上記範囲内であれば、空洞による嵩増し効果が得られ、かつ、バインダー樹脂によるガラス繊維の結合を阻害し難くなる。
ガラス不織布4の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.3mm~3mmであり、好ましくは0.5mm~2mmである。
【0038】
前記バインダー樹脂42は、公知のものを用いることができ、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、熱水可溶性の有機樹脂、無機のバインダーなどが挙げられる。このようなバインダー樹脂42としては、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂などの熱硬化性樹脂;アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル共重合樹脂などの熱可塑性樹脂;ポリビニルアルコールなどの熱水可溶性樹脂;アルミナゾル、シリカゾルなどの無機系バインダー;などが挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上併用できる。これらの中でも、アクリル樹脂、ポリビニルアルコールが好適である。
ガラス不織布4は、例えば、分散剤や増粘剤などを配合した水中に、ガラス繊維を略均一に分散させ、抄造することにより、ガラス繊維をウェブ状に成形し、そのガラスウェブに、バインダー樹脂を塗布又は含浸させることにより、得ることができる。バインダー樹脂は、一定の厚みに塗布又は含浸されるが、過剰なバインダーは、必要に応じてバキュームナイフなどによって吸引除去される。
【0039】
また、親水性及び疎水性の観点で区別すると、バインダー樹脂42としては、例えば、親水性ポリマー及び疎水性ポリマーの少なくともいずれか一方を用いることができる。
前記親水性ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸系水溶性ポリマー、セルロース系樹脂(例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリビニルアセタール、カゼイン、ゼラチン、でんぷんなどが挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上併用できる。
前記疎水性ポリマーとしては、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系単量体との共重合体樹脂など)、アクリル系樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル-メチルアクリレート共重合体樹脂など)、エチレン-酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂(例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体樹脂など)、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ゴム(例えば、ポリイソプレン、ポリブタジエンなど)などが例示される。これらは、1種単独で又は2種以上併用できる。
【0040】
また、バインダー樹脂42としては、例えば、親水性ポリマー及び疎水性ポリマーの双方を用いてもよいが、好ましくは、親水性ポリマーのみ又は疎水性ポリマーのみ、より好ましくは、親水性ポリマーのみが用いられる。
上方樹脂層5及び下方樹脂層6が塩化ビニル系樹脂を主成分とする場合、親水性ポリマーとしてポリビニルアルコールを用いることができ、疎水性ポリマーとしてアクリル系樹脂を用いることができる。
親水性ポリマーは、塩化ビニル系樹脂との相溶性が悪いので、後述する製法において、ガラス不織布4に樹脂層(上方樹脂層5及び下方樹脂層6)の形成材料を積層したときに、樹脂層の形成材料であるペースト塩化ビニル樹脂が、ガラス不織布4の内部の空隙に入り込み難く、従って、樹脂層を積層した後のガラス不織布4の内部に比較的多くの空洞部45を生じさせる。
一方、疎水性ポリマーは、塩化ビニル系樹脂との相溶性が良いので、ガラス不織布4に樹脂層(上方樹脂層5及び下方樹脂層6)を積層したときに、ペースト塩化ビニル樹脂がガラス不織布4の内部の空隙に入り込み易くなり、ガラス不織布4と樹脂層(上方樹脂層5及び下方樹脂層6)の接合強度が増すようになる。
【0041】
親水性ポリマー及び疎水性ポリマーを含むバインダー樹脂42を用いた場合には、上記両者の利点を併有できる。すなわち、親水性ポリマー及び疎水性ポリマーを含むバインダー樹脂42を用いてガラス不織布4を構成することにより、樹脂層(上方樹脂層5及び下方樹脂層6)を積層したときに、ガラス不織布4の内部に適度な空洞部45を生じさせて軽量化を図りつつ、ガラス不織布4と樹脂層の層間剥離を防止できる本体部3を得ることができる。
親水性ポリマー及び疎水性ポリマーを含むバインダー樹脂42に関して、親水性ポリマー及び疎水性ポリマーの配合割合は、特に限定されない。親水性ポリマーの配合量を比較的多くすると、比較的多くの空洞部45が生じるようになり、疎水性ポリマーの配合量を比較的多くすると、ガラス不織布4と樹脂層の接合強度が増すようになり、両者の利点を考慮して、親水性ポリマー及び疎水性ポリマーの配合割合を設定すればよい。
【0042】
熱膨張性マイクロカプセルは、熱可塑性樹脂からなる未膨張の外殻と、前記外殻に内包され且つ加熱することによって気化する内包成分と、から構成される。前記外殻は、例えば、アクリロニトリルなどのニトリル系樹脂、アクリル系樹脂などで形成される。内包成分は、熱によって気化又は膨張する特性を有し、例えば、従来公知の炭化水素を用いることができる。内包成分としては、例えば、イソブタン、イソペンタン、2-メチルペンタン、2-メチルヘキサン、2,2,4-トリメチルペンタンなどのイソアルカン;n-ブタン、n-プロパン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタンなどのノルマルアルカン;などの炭化水素が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上併用できる。
熱膨張性マイクロカプセルの膨張温度は、外殻の材質や厚み及び内包成分に依存する。膨張開始温度が概ね90℃~180℃の熱膨張性マイクロカプセルを用いることが好ましい。
熱膨張性マイクロカプセルは、市販品を用いることができ、例えば、松本油脂製薬(株)製の商品名「マツモト マイクロスフェアー」(登録商標)などを使用できる。
バインダー樹脂42には、前記熱膨張性マイクロカプセル以外に、他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、可塑剤、充填剤、安定剤、加工助剤、防かび剤、難燃剤、紫外線吸収剤、顔料などの着色剤、酸化防止剤、滑剤などの各種添加剤が挙げられる。
【0043】
<本体部の層構成>
図3乃至図5を参照して、ガラス不織布4は、発泡されたバインダー樹脂42を繊維間の架橋マトリクス樹脂とし、点在された複数のガラス繊維41の交点にバインダー樹脂42が主として介在されている。
そのガラス不織布4の上側に上方樹脂層5が接着され、且つ、ガラス不織布4の下側に下方樹脂層6が接着されることによって、本体部3が構成されている。
図4及び図5に示すように、断面視において、上方樹脂層5を構成する樹脂成分がガラス不織布4の上側に入り込みつつ、上方樹脂層5とガラス不織布4が積層接着されている。同様に、下方樹脂層6を構成する樹脂成分がガラス不織布4の下側に入り込みつつ、下方樹脂層6とガラス不織布4が積層接着されている。
【0044】
この場合、ガラス不織布4の上側においては、ガラス不織布4を構成するガラス繊維41及び発泡されたバインダー樹脂42と、上方樹脂層5の樹脂成分とが混在しており、ガラス不織布4の下側においては、ガラス不織布4を構成するガラス繊維41及び発泡されたバインダー樹脂42と、下方樹脂層6の樹脂成分とが混在している。このため、上方樹脂層5とガラス不織布4の間及び下方樹脂層6とガラス不織布4の間には、明確な界面が存在しないが、便宜上、ガラス不織布4の上端(上述のように、ガラス不織布4の上端は最も上側にあるガラス繊維41によって画成される)及びガラス不織布4の下端(上述のように、ガラス不織布4の下端は最も下側にあるガラス繊維41によって画成される)を両者の境界とする。図4の二点鎖線は、ガラス不織布4の上端及び下端を表している。
図4において、上方樹脂層5の樹脂成分とガラス不織布4が混在した領域(上方樹脂層5の形成材料がガラス不織布4に含浸している領域)及び下方樹脂層6の樹脂成分とガラス不織布4が混在した領域(下方樹脂層6の形成材料がガラス不織布4に含浸している領域)に、斜線と無数のドットの双方を付している。
【0045】
樹脂層(上方樹脂層5及び下方樹脂層6)の樹脂成分は、ガラス不織布4の厚み方向全体に亘って入り込んでいてもよく、或いは、ガラス不織布4の上側の表層部及び下側の表層部のみに入り込んでいてもよい。樹脂層の樹脂成分が、ガラス不織布4の上側の表層部及び下側の表層部のみに入り込んでいる場合には、ガラス不織布4の厚み方向中途部には、前記樹脂層(上方樹脂層5及び下方樹脂層6)の樹脂成分を含まない帯領域層が存在する。
本実施形態では、樹脂層(上方樹脂層5及び下方樹脂層6)の樹脂成分が、ガラス不織布4の厚み方向全体に亘って入り込んでいる。
この場合、上方樹脂層5の樹脂成分と下方樹脂層6の樹脂成分は、ガラス不織布4の内部で接合されるが、上方樹脂層5の樹脂成分と下方樹脂層6の樹脂成分との境界は、平面的ではなく、任意に凹凸を成して面方向に延在している。前記上方樹脂層5の樹脂成分と下方樹脂層6の樹脂成分との境界は、ガラス不織布4の厚み方向中間点に略位置していてもよく、ガラス不織布4の厚み方向中間点よりも上側又は下側に位置していてもよい。図示例では、上方樹脂層5の樹脂成分と下方樹脂層6の樹脂成分との境界は、ガラス不織布4の厚み方向中間点よりも下側に位置している場合を例示している。後述する製法において、下方樹脂層6の形成材料の粘度よりも小さい粘度を有する上方樹脂層5の形成材料を用いることにより、図4及び図5に示すように上方樹脂層5が下方樹脂層6よりもガラス不織布4内に大きく入り込んだ本体部3が得られる。
【0046】
上方樹脂層5及び下方樹脂層6の樹脂成分が混在している領域において、ガラス不織布4の内部には、複数の空洞部45が形成されている。この空洞部45は、第1空洞部43とは別の空洞部である。以下、この空洞部45を「第2空洞部」という。第2空洞部45は、バインダー樹脂42と樹脂層(上方樹脂層5及び下方樹脂層6)の樹脂成分とに包囲された空洞部、又は/及び、前記樹脂層(上方樹脂層5及び下方樹脂層6)の樹脂成分に包囲された空洞部を含む。すなわち、第2空洞部45は、バインダー樹脂42と樹脂層の樹脂成分とに包囲された空洞部、及び、前記樹脂層の樹脂成分に包囲された空洞部の少なくとも何れか一方の空洞部を含む。なお、バインダー樹脂42と樹脂層の樹脂成分とに包囲、及び、樹脂層の樹脂成分に包囲は、部分的にガラス繊維41がその空洞部に露出している場合を含む意味である。
なお、第1空洞部43及び第2空洞部45は、いずれも、ガラス不織布4の内部に形成された微細な空間(空洞部)である。
【0047】
前記第2空洞部45は、図5に示すように、上方樹脂層5の樹脂成分(樹脂成分は、図5においては細斜線で表されている)で囲われて形成されているものが多い。もっとも、第2空洞部45は、上方樹脂層5の樹脂成分及びバインダー樹脂42によって囲われて形成されているもの、或いは、上方樹脂層5の樹脂成分に囲われているが部分的にガラス繊維41が空洞部に露出しているもの、或いは、上方樹脂層5の樹脂成分及びバインダー樹脂42によって囲われているが部分的にガラス繊維41が空洞部に露出しているものなども存在する。
下方樹脂層6においても同様に、第2空洞部45は、図5に示すように、下方樹脂層6の樹脂成分(樹脂成分は、図5においては細斜線で表されている)で囲われて形成されているものが多い。もっとも、前記第2空洞部45は、下方樹脂層6の樹脂成分及びバインダー樹脂42によって囲われて形成されているもの、或いは、下方樹脂層6の樹脂成分に囲われているが部分的にガラス繊維41が空洞部に露出しているもの、或いは、下方樹脂層6の樹脂成分及びバインダー樹脂42によって囲われているが部分的にガラス繊維41が空洞部に露出しているものなども存在する。
前記第2空洞部45の立体形状は、任意の不定形であり、様々な形状のものが存在する。また、前記第2空洞部45の大きさも、任意であり、様々な大きさのものが存在する。
【0048】
本発明のカーペット1A(内装材1)の本体部3においては、ガラス繊維41を結合するバインダー樹脂42が発泡されているガラス不織布4を用いている。ガラス不織布4が前記発泡されたバインダー樹脂42を含んでいるので、その厚みが比較的大きくなる。従って、相対的に樹脂層5,6の厚みを小さくしても、所定の厚みの本体部3を形成できる。
具体的には、本体部3は、強度面からある程度の厚みに形成する必要がある。特に、カーペット1Aにあっては、規定の厚みに形成することが求められる。この点、上方樹脂層5/ガラス不織布4/下方樹脂層6の層構成を有する本体部3のうち、ガラス繊維41を結合するバインダー樹脂42を発泡させることにより、ガラス不織布4の機能である形状変化防止機能を有したままでガラス不織布4の厚みを比較的大きくすることができる。ガラス不織布4の厚みが大きくなれば、相対的に樹脂層5,6の厚みを小さくしても、本体部3の厚みが小さくならず、望ましい厚みの本体部3を構成できる。そして、樹脂層5,6の厚みを小さくできれば、全体の樹脂使用量を低減できるので、カーペット1A(内装材1)の製造コストを低く抑えることができる。
また、ガラス不織布4が発泡されているので、カーペット1A(内装材1)を軽量化することもできる。
【0049】
また、図4及び図5に示すように、上方樹脂層5を構成する樹脂成分及び下方樹脂層6を構成する樹脂成分がガラス不織布4の厚み方向全体に亘って入り込んで混在していることにより、ガラス不織布4と上方樹脂層5及び下方樹脂層6との接合強度が向上し、ガラス不織布4と樹脂層の間で剥離し難くなる。
このように上方樹脂層5及び下方樹脂層6の各樹脂成分がガラス不織布4の厚み方向全体に亘って入り込んでいる場合でも、樹脂層の樹脂成分が混在している領域に第2空洞部45及び第1空洞部43が形成されているので、ガラス不織布4を軽量化できる、つまり、軽量な内装材1を構成できる。
ガラス不織布4の内部に第1空洞部43及び第2空洞部45が形成される構成では、軽量化の効果が得られつつ、強度の低下を抑制することができる。軽量化によって、内装材の持ち運びや施工などのハンドリングが容易となる上、輸送に必要な燃料も低減できるので環境にもよい効果をもたらす。本発明の内装材は、軽量でありながらも高い強度を合わせ持つので、ハンドリングや輸送も問題なくできる上、施工後も高い耐久性を有する。
【0050】
[内装材の製造方法]
次に、本発明の内装材の製造方法について説明する。
ただし、本発明の内装材は、次の製造方法によって製造されたものに限定されず、他の製造方法で製造することもできる。
【0051】
内装材の製造方法は、(1)予め発泡されているバインダー樹脂を含むガラス不織布を用いる場合、(2)未発泡のバインダー樹脂を含むガラス不織布を用い、樹脂層と積層する際に発泡させる場合、に大別できる。
すなわち、本発明の第1の製造方法は、複数のガラス繊維の間に介在してガラス繊維を結合するバインダー樹脂であって発泡されているバインダー樹脂を含み、前記発泡されているバインダー樹脂により複数のガラス繊維が層を成しているガラス不織布を準備する工程、前記ガラス不織布の下側に、塩化ビニル樹脂ペースト層を積層し、且つ、前記ガラス不織布の上側に、塩化ビニル樹脂ペースト層を積層することにより、積層体を得る工程、前記積層体を加熱して前記塩化ビニル樹脂ペースト層をゲル化させる工程、を有する。
本発明の第2の製造方法は、複数のガラス繊維と前記ガラス繊維の間に介在し且つ発泡成分を含むバインダー樹脂とを有するガラス不織布前駆体を準備する工程、前記ガラス不織布前駆体の下側に、塩化ビニル樹脂ペースト層を積層し、且つ、前記ガラス不織布前駆体の上側に、塩化ビニル樹脂ペースト層を積層することにより、積層体を得る工程、前記積層体を加熱して前記塩化ビニル樹脂ペースト層をゲル化させると共に、前記バインダー樹脂を発泡させる工程、を有する。
【0052】
本発明の内装材の製造方法は、前記各工程以外に、他の工程をさらに有していてもよい。
これら各工程を1つの製造ラインで一連に行ってもよいし、或いは、前記各工程から選ばれる1つ又は2つ以上の工程を、1つのラインで行い、且つ残る工程を他の1つ又は2つ以上のラインで行ってもよい。また、前記各工程の全てを一の実施者が行ってもよいし、或いは、前記各工程から選ばれる1つ又は2つ以上の工程を一の実施者が行い、且つ残る工程を他の実施者が行ってもよい。
【0053】
<第1の製造方法>
第1の製造方法は、予め発泡されているバインダー樹脂を含むガラス不織布を準備する工程、前記ガラス不織布の下側及び上側に、それぞれ塩化ビニル樹脂ペースト層を積層して積層体を得る工程、前記積層体を加熱して前記塩化ビニル樹脂ペースト層をゲル化させることにより、本体部を形成する工程、前記本体部の形成と同時に又は本体部の形成後に本体部の上側に化粧部を積層する工程、を有する。
【0054】
<発泡済みガラス不織布の準備工程>
バインダー樹脂溶液を準備する。バインダー樹脂溶液は、適切な溶媒にバインダー樹脂が溶解又は分散されているものである。
バインダー樹脂溶液は、上記バインダー樹脂、発泡成分、適切な溶媒及び必要に応じて添加される添加剤を含む。
バインダー樹脂は、上述のように、ポリビニルアルコールなどの親水性ポリマー、アクリル系樹脂などの疎水性ポリマーなどが用いられる。好ましくは、親水性ポリマーのみ又は疎水性ポリマーのみ、より好ましくは、親水性ポリマーのみが用いられる。
【0055】
発泡成分としては、ペンタンなどの炭化水素などの蒸発型発泡剤、重炭酸ナトリウムやアゾ化合物などの分解型発泡剤、熱膨張性マイクロカプセルのような自己膨張型発泡剤などを用いることができる。独立した第1空洞部43を簡易に形成できることから、熱膨張性マイクロカプセルを用いることが好ましい。
溶媒としては、バインダー樹脂に応じて適宜設定されるが、上記親水性ポリマーを含むバインダー樹脂にあっては、水系溶媒を用いることが好ましい。水系溶媒としては、水又は水とアルコール類の混合溶媒などが挙げられる。
前記バインダー樹脂及び熱膨張性マイクロカプセルを、適切な溶媒に溶解又は分散させることにより、バインダー樹脂溶液を調製する。上述のように、最終製造物であるガラス不織布4におけるバインダー樹脂の量が5重量%~35重量%且つマイクロカプセルの量が1重量%~15重量%であり、好ましくは、2重量%~10重量%の量であるので、前記範囲を概ね目安にして、バインダー樹脂溶液を調製すればよい。
【0056】
ガラス繊維を厚み方向に積み重ねつつ面方向に拡げることにより、ガラス繊維のみからなる薄肉状のガラスウェブを形成する。前記ガラスウェブにおいて、ガラス繊維は、上述のように、短繊維、長繊維、又は、短繊維と長繊維の混合物のいずれかが用いられる。前記ガラスウェブにおいて、ガラス繊維の目付量は、上述のように、例えば、20g/m~70g/mであり、好ましくは、25g/m~50g/mである。
【0057】
前記バインダー樹脂溶液を処理槽に入れ、この処理槽に前記ガラスウェブを浸漬する。浸漬により、ガラスウェブの全体に隙間無くバインダー樹脂溶液が入り込む。その後、ガラスウェブを処理槽から引き出した後、前記ウェブの表面側又は裏面側から吸引して、余分なバインダー樹脂溶液を除去する。最終製造物であるガラス不織布4におけるバインダー樹脂の好ましい量が、上述のように、例えば5重量%~35重量%であるので、溶液を乾燥後の固形分(バインダー樹脂)が前記範囲となることを概ね目安にして、前記余分なバインダー樹脂溶液を除去すればよい。
次に、温風又は常温風などを用いて風乾することによって、溶媒を蒸発させることにより、バインダー樹脂によって複数のガラス繊維が結合されたガラス不織布前駆体が得られる。このガラス不織布前駆体は、未発泡である。
前記ガラス不織布前駆体の厚みは、例えば、0.1mm~2mmであり、好ましくは、0.15mm~1.5mmである。かかるガラス不織布前駆体は、柔軟性を有し、ロール状に巻き取って保管することも可能である。
【0058】
前記ガラス不織布前駆体を、熱膨張性マイクロカプセルの膨張開始温度以上に加熱することにより、熱膨張性マイクロカプセルを膨張させる。前記カプセル加熱温度は、熱膨張性マイクロカプセルの膨張開始温度以上であれば特に限定されないが、最大膨張温度よりも余りに大きいと、熱膨張性マイクロカプセルが収縮するおそれがある。従って、カプセル加熱温度は、例えば、熱膨張性マイクロカプセルの膨張開始温度以上且つ最大膨張温度+40℃以下の範囲が好ましく、熱膨張性マイクロカプセルの膨張開始温度+10℃以上且つ最大膨張温度+30℃以下の範囲がより好ましい。
なお、ガラス不織布前駆体の作製時の溶媒を風乾して蒸発させる際に、熱膨張性マイクロカプセルが上記温度範囲になるように加熱してもよい。これによって、溶媒の蒸発と、熱膨張性マイクロカプセルの膨張とを一工程で行うことができ、製造効率を向上できる。
このようにして、発泡済みガラス不織布(予め発泡されているバインダー樹脂を含むガラス不織布)が得られる。
発泡済みガラス不織布の厚み(熱膨張性マイクロカプセルを発泡させた後の厚み)は、ガラス不織布前駆体の厚み(熱膨張性マイクロカプセルを発泡させる前の厚み)に対して、1.5倍~3倍程度、好ましくは、1.7倍~2.5倍程度になる。
【0059】
図6は、前記発泡済みガラス不織布を厚み方向で切断し、ガラス繊維、バインダー樹脂、第1空洞部及び空隙の状態を表した拡大断面図である。
この発泡済みガラス不織布は、前記のようにバインダー樹脂内の熱膨張性マイクロカプセルを発泡させた後で且つ樹脂層の形成材料を積層する前の状態である。
図6を参照して、発泡済みガラス不織布は、ガラス繊維41の交点間をバインダー樹脂42が介在し、このバインダー樹脂42が発泡されていることにより、ガラス繊維41は嵩高くなっている。また、バインダー樹脂42には、発泡されたマイクロカプセルに起因する外殻7で囲われた第1空洞部43が複数形成されている。さらに、内部に空隙49が生じている。この空隙49は、不定形であり、ガラス不織布内で比較的大きな空間を占めている。前記空隙49は、上述のように、余分なバインダー樹脂溶液を除去することによって形成されている。さらに、バインダー樹脂を発泡させることによってガラス繊維41が厚み方向に離反して嵩高くなるので、その際にも空隙49が生じる又は既存の空隙49が大きくなる。
この発泡済みガラス不織布は、上記本体部のガラス不織布に相当する。発泡済みガラス不織布は、柔軟性を有し、ロール状に巻き取って保管することも可能である。
【0060】
<積層体の作製工程>
下方樹脂層の形成材料であるペースト塩化ビニル樹脂をコンベア上に塗工して、塩化ビニル樹脂ペースト層をコンベア上に形成する。この塩化ビニル樹脂ペースト層の上側に前記発泡済みガラス不織布を積層する。さらに、この発泡済みガラス不織布の上側に、上方樹脂層の形成材料である塩化ビニル樹脂ペースト層を積層することにより、下側の塩化ビニル樹脂ペースト層/発泡済みガラス不織布/上側の塩化ビニル樹脂ペースト層からなる積層体を作製する。
前記下方樹脂層及び上方樹脂層の形成材料である塩化ビニル樹脂ペースト層は、ペースト塩化ビニル樹脂及び可塑剤を含み、必要に応じて充填剤をさらに含む。具体的には、前記塩化ビニル樹脂ペースト層は、ペースト塩化ビニル樹脂を15~70重量%、可塑剤を10~60重量%及び必要に応じて充填剤を0を超え80重量%以下含むものが好ましい。さらに、前記可塑剤及び充填剤に加えて、可塑剤以外の添加剤を含んでいてもよい。
【0061】
下方樹脂層の形成材料と上方樹脂層の形成材料は、略同じ組成でもよく、異なっていてもよい。例えば、上方樹脂層の形成材料である塩化ビニル樹脂ペースト層の可塑剤の配合割合を下方樹脂層の形成材料よりも多くすることにより、上方樹脂層の形成材料の粘度が下方樹脂層の形成材料よりも小さくなる。かかる粘度差の形成材料を用いることにより、図4及び図5に示すように上方樹脂層5が下方樹脂層6よりもガラス不織布4内に大きく入り込んだ本体部3が得られる。反対に、下方樹脂層の形成材料である塩化ビニル樹脂ペースト層の可塑剤の配合割合を上方樹脂層の形成材料よりも多くすることにより、下方樹脂層が上方樹脂層よりもガラス不織布内に大きく入り込んだ本体部が得られる(図示せず)。下方樹脂層の形成材料と上方樹脂層の形成材料の粘度を略同じにすることにより、上方樹脂層と下方樹脂層がガラス不織布内に同程度入り込んだ本体部が得られる(図示せず)。
各塩化ビニル樹脂ペースト層の厚みは、形成する下方樹脂層及び上方樹脂層の厚みを考慮して、適宜設定される。
1つの実施形態では、前記積層体の上側の塩化ビニル樹脂ペースト層の上側に、化粧部(カーペット1Aの場合には、生機2A)を積層する。
【0062】
<ゲル化工程>
前記積層体を加熱することにより、上側及び下側の塩化ビニル樹脂ペースト層をゲル化させる。例えば、積層体の内部温度が120℃~200℃となるように加熱する。加熱時間は、例えば、2分~15分である。また、必要に応じて、加熱時に、積層体の上下から加圧してもよい。
上側及び下側の塩化ビニル樹脂ペースト層をゲル化させることにより、図3に示すような、化粧部2(生機2A)/上方樹脂層5/発泡されたガラス不織布4/下方樹脂層6、からなる内装材1(カーペット1A)が得られる。
【0063】
上側及び下側の塩化ビニル樹脂ペースト層をゲル化させる際に、ペースト塩化ビニル樹脂がガラス不織布の前記空隙49に入り込んでいく。バインダー樹脂が親水性ポリマーを含む場合、塩化ビニル系樹脂と親水性ポリマーは相溶性が悪いので、ペースト塩化ビニル樹脂は、ガラス不織布の内部の空隙49に入り込み難く、ペースト塩化ビニル樹脂が空隙49を埋め切れず、第2空洞部45が比較的多く生じるようになる。他方、バインダー樹脂が疎水性ポリマーを含む場合、塩化ビニル系樹脂と疎水性ポリマーは相溶性が良いので、ペースト塩化ビニル樹脂は、ガラス不織布の内部の空隙49に入り込み易く、ペースト塩化ビニル樹脂が空隙49を埋め尽し易く、第2空洞部45の発生量が少なくなる。
上側の塩化ビニル樹脂ペースト層と下側の塩化ビニル樹脂ペースト層は、ガラス不織布4の内部にて互いに接触するまで入り込み且つゲル化していることが好ましい。この好ましい形態により、図4及び図5に示すような、上方樹脂層5と下方樹脂層6がガラス不織布4の内部にて互いに接触した本体部が得られる。
製造過程で見ると、第2空洞部45は、樹脂層の形成材料が空隙49を埋め切れずに残存した空間とも言え、従って、各第2空洞部45の容積は、空隙49よりも小さい。
なお、前記方法では、ゲル化前の積層体に化粧部を積層して加熱したが、化粧部を積層せずに積層体を加熱してゲル化させた後、このゲル化後の積層体の上側に化粧部を積層接着してもよい。
【0064】
<第2の製造方法>
第2の製造方法は、複数のガラス繊維とガラス繊維の間に介在し且つ発泡成分を含むバインダー樹脂とを有するガラス不織布前駆体を準備する工程、前記ガラス不織布前駆体の下側及び上側に、それぞれ塩化ビニル樹脂ペースト層を積層して積層体を得る工程、前記積層体を加熱して前記塩化ビニル樹脂ペースト層をゲル化させると共に、前記バインダー樹脂を発泡させることにより、本体部を形成する工程、前記本体部の形成と同時に又は本体部の形成後に本体部の上側に化粧部を積層する工程、を有する。
【0065】
<ガラス不織布前駆体の準備工程>
ガラス不織布前駆体は、上記第1の製造方法の<発泡済みガラス不織布の準備工程>で説明した手順で得ることができる。
ガラス不織布前駆体は、発泡済みガラス不織布に比べて厚みが薄いので、ロール状に巻き取った状態で、より小さなロールとなり、保管・運搬に好適である。また、ガラス不織布前駆体は、熱膨張性マイクロカプセルが未発泡の状態なので、移送中の熱膨張性マイクロカプセルが破損することを抑制できる。
【0066】
<積層体の作製工程>
下方樹脂層の形成材料であるペースト塩化ビニル樹脂をコンベア上に塗工して、塩化ビニル樹脂ペースト層をコンベア上に形成する。この塩化ビニル樹脂ペースト層の上側に前記ガラス不織布前駆体を積層する。さらに、このガラス不織布前駆体の上側に、上方樹脂層の形成材料である塩化ビニル樹脂ペースト層を積層することにより、下側の塩化ビニル樹脂ペースト層/ガラス不織布前駆体/上側の塩化ビニル樹脂ペースト層からなる積層体を作製する。
前記下方樹脂層及び上方樹脂層の形成材料である塩化ビニル樹脂ペースト層は、上記第1の製造方法で説明したものと同様である。
また、必要に応じて、前記積層体の上側の塩化ビニル樹脂ペースト層の上側に、化粧部(カーペット1Aの場合には、生機2A)を積層する。
【0067】
<ゲル化及び発泡工程>
前記積層体を加熱することにより、上側及び下側の塩化ビニル樹脂ペースト層をゲル化させると共に、ガラス不織布前駆体のバインダー樹脂を発泡させる。
上述のように、塩化ビニル樹脂ペースト層をゲル化させる温度(積層体の内部温度)は120℃~200℃であるので、上記カプセル加熱温度が120℃~200℃の範囲になるような膨張開始温度を有する熱膨張性マイクロカプセルを用いることにより、塩化ビニル樹脂ペースト層がゲル化して上方樹脂層及び下方樹脂層が形成されると同時に、発泡されたガラス不織布が得られる。なお、必要に応じて、加熱時に、積層体の上下から加圧してもよいことは第1の製造方法と同様である。
【0068】
上側及び下側の塩化ビニル樹脂ペースト層のゲル化及び前駆体を発泡させることにより、図3に示すような、化粧部2(生機2A)/上方樹脂層5/発泡されたガラス不織布4/下方樹脂層6、からなる内装材1(カーペット1A)が得られる。
上側及び下側の塩化ビニル樹脂ペースト層をゲル化させる際に、ペースト塩化ビニル樹脂がガラス不織布の前記空隙49に入り込んでいく。上述のように、余分なバインダー樹脂溶液を除去して形成されたガラス不織布前駆体の内部には、空隙49が生じているが、この空隙49にペースト塩化ビニル樹脂が入り込むと共に、マイクロカプセルの膨張によるバインダー樹脂の発泡により、大きくなった空隙49又は新たに生じた空隙49にペースト塩化ビニル樹脂が入り込む。ペースト塩化ビニル樹脂が入り込んでいくことにより、ガラス不織布の内部に適度な第2空洞部を生じつつ、上方樹脂層及び下方樹脂層とガラス不織布が強固に接合することは、上記第1の製造方法で説明した通りである。
なお、第2の製造方法でも、化粧部を積層せずに積層体を加熱してゲル化させた後、このゲル化後の積層体の上側に化粧部を積層接着してもよい。
【0069】
本発明の第1及び第2の製造方法によれば、発泡されたガラス不織布を有する本体部を簡単に製造できる。
【0070】
[パイルを有さない床材の態様]
図7及び図8は、本発明の内装材1が、パイルを有さない床材である場合の構成例を示す。図示例では、パイルを有さない床材として、床シート1Bを例示している。
本発明の床シート1B(内装材1)は、図7に示すように、長尺帯状である。
床シート1Bは、化粧部2と、化粧部2の下側に積層された本体部3と、を有する。床シート1Bの本体部3は、上記カーペット1Aの欄で説明した本体部3と同様である。
床シート1Bの化粧部2は、例えば、化粧層21Bを有する。好ましくは、前記化粧層21Bの上側にさらに保護層22Bが積層される。
【0071】
化粧層21Bは、任意のデザインが表された層であり、例えば、転写層、意匠印刷層、意匠印刷シートなどから形成される。前記転写層は、印刷インキを剥離紙などの基材上に印刷して固化させた後に、固化した印刷インキを剥離して形成した転写フィルムから構成される。意匠印刷層は、上方樹脂層5の上面又は保護層22Bの下面に印刷インキを直接印刷して固化させた層から構成される。意匠印刷シートからなる化粧層21Bは、上方樹脂層5の上面又は保護層22Bの下面に、予め意匠印刷を施したシートを接合することによって形成される。
前記化粧層21Bの厚みは特に限定されないが、例えば、0.5μm~1mmであり、好ましくは0.01mm~0.8mmである。
【0072】
保護層22Bは、化粧層21Bの保護、汚れ付着防止などの目的で設けられた層である。保護層22Bは、必要に応じて設けられる。保護層22Bは、透明又は不透明でもよいが、保護層22Bの下側に設けられた化粧層21Bのデザインを視認できるようにするため、透明であることが好ましい。
保護層22Bは、樹脂材料で形成される。その樹脂材料としては、上記樹脂層で例示したようなものが挙げられ、塩化ビニル系樹脂を主成分とする樹脂が好ましい。
保護層22Bの厚みは、特に限定されず、例えば、0.03mm~1mmである。
本実施形態のパイル21を有さない床材は、化粧部2を生機2Aに代えて化粧層21Bを用いること以外は、上記パイル21を有する床材と同様な構成であり、その製造方法も化粧層21Bを用いること以外は上記と同様である。
【0073】
以下、本発明の変形例を説明するが、その説明に於いては、主として上述の実施形態と異なる構成及び効果について説明し、同様の構成などについては、用語又は符号をそのまま援用し、その構成の説明を省略する場合がある。
【0074】
[第1変形例]
上記実施形態では、本体部3は、断面視において、上方樹脂層5及び下方樹脂層6を構成する樹脂成分がガラス不織布4の厚み方向全体に入り込んで混在しているが、上方樹脂層5及び下方樹脂層6の樹脂成分が、ガラス不織布4の厚み方向において上側の表層部及び下側の表層部のみに入り込んでいるものでもよい。
図9は、第1変形例の本体部3のみを一部分拡大して参考的に表した概略拡大断面図である。図10は、図9のガラス不織布の部分詳細部であって、ガラス繊維、バインダー樹脂、樹脂層の樹脂成分及び空洞部の状態を表した更なる拡大断面図である。図9は、図4と対応しており、図10は、図5と対応している。図10の細斜線は、樹脂層を構成する樹脂を表している。
【0075】
本変形例のガラス不織布4においても、複数のガラス繊維41の間に発泡されたバインダー樹脂42が介在されており、内部に複数の空洞部43,45,47が存在する。本変形例では、空洞部は、上述のような第1空洞部43(バインダー樹脂42に包囲されている空洞部)及び第2空洞部45(樹脂層の樹脂成分で包囲されている空洞部など)以外に、さらに、別の空洞部47を有する。以下、この空洞部47を「第3空洞部47」という。
図9に示すように、断面視において、上方樹脂層5を構成する樹脂成分がガラス不織布4の上側の表層部Xに入り込みつつ、上方樹脂層5とガラス不織布4が積層接着されている。同様に、下方樹脂層6を構成する樹脂成分がガラス不織布4の下側の表層部Zに入り込みつつ、下方樹脂層6とガラス不織布4が積層接着されている。
この場合、ガラス不織布4の上側の表層部Xにおいては、ガラス不織布4を構成するガラス繊維41及び発泡されたバインダー樹脂42と、上方樹脂層5の樹脂成分とが混在しており、ガラス不織布4の下側の表層部Zにおいては、ガラス不織布4を構成するガラス繊維41及び発泡されたバインダー樹脂42と、下方樹脂層6の樹脂成分とが混在している。図9の二点鎖線は、ガラス不織布4の上端及び下端を表している。
【0076】
他方、断面視において、ガラス不織布4の厚み方向中途部には、前記樹脂層(上方樹脂層5及び下方樹脂層6)の樹脂成分を含まない帯領域層であって複数の第1空洞部43が点在した空洞帯領域層Yが面方向に延在されている。この空洞帯領域層Yは、外殻7で囲われた第1空洞部43を含む発泡されたバインダー樹脂42と、ガラス繊維41と、からなる。なお、空洞帯領域層Yと上側の表層部Xとの境界は、平面的ではなく、任意に凹凸を成して面方向に延在している。空洞帯領域層Yと下側の表層部Zとの境界も同様に、平面的ではなく、任意に凹凸を成して面方向に延在している。
前記空洞帯領域層Yの厚みは、特に限定されないが、例えば、ガラス不織布4の厚みの0.5倍~0.9倍であり、好ましくは、ガラス不織布4の厚みの0.6倍~0.8倍である。上側の表層部X及び下側の表層部Zの各厚みは、それぞれ、(ガラス不織布4の厚み-空洞帯領域層Yの厚み)×1/2で求められる。
なお、上述のように、空洞帯領域層Yと表層部X,Zの境界は、任意の凹凸を成しているので、前記空洞帯領域層Yの厚みの数値は、任意の5箇所の空洞帯領域層Yの厚みを計測し、その5箇所の平均値を採用するものとする。
【0077】
図10を参照して、下方樹脂層6の樹脂成分が入り込んでいるガラス不織布4の下側の表層部Zにおいては、上記実施形態と同様に、第1空洞部43及び第2空洞部45が存在する。なお、図10には表わされていないが、上方樹脂層5の樹脂成分が入り込んでいるガラス不織布4の上側の表層部Xも同様に第1空洞部43及び第2空洞部45が存在する。
他方、樹脂層(上方樹脂層5及び下方樹脂層6)の樹脂成分を含まない空洞帯領域層Yにおいては、図10に示すように、第1空洞部43及び第3空洞部47が存在する。この第3空洞部47は、その周囲に樹脂層の樹脂成分が実質的に存在しない空洞部である。この第3空洞部47は、上記実施形態の製法において説明したように、製造過程でガラス不織布内に生じる空隙49に相当する。上記製法で説明したように、空隙49に樹脂層の形成材料が入り込み第2空洞部45が生じるが、空隙49に樹脂層が入り込んでいない空洞帯領域層Yにあっては、空隙49が残存している。このため、最終製造物であるガラス不織布4の厚み方向中途部に、第3空洞部47が複数形成されている。
【0078】
第1変形例のように、上方樹脂層5を構成する樹脂成分がガラス不織布4の上側の表層部Xに入り込んで混在していることにより、上方樹脂層5がガラス不織布4に強固に接着される。同様に、下方樹脂層6を構成する樹脂成分がガラス不織布4の下側の表層部Zに入り込んで混在していることにより、下方樹脂層6がガラス不織布4に強固に接着される。このように樹脂層とガラス不織布4の接着強度が高められている一方で、ガラス不織布4の厚み方向中途部には、樹脂層5,6の樹脂成分を含まない空洞帯領域層Yが延在しているので、樹脂層の樹脂使用量が多量になることを防止できる。
【0079】
第1変形例のように、ガラス不織布4の厚み方向中途部に空洞帯領域層Yを有する本体部3は、樹脂層(上方樹脂層5及び下方樹脂層6)の形成材料として、サスペンション塩化ビニル樹脂を用いることにより、容易に形成できる。
すなわち、上記実施形態の第1の製造方法及び第2の製造方法においては、樹脂層(上方樹脂層5及び下方樹脂層6)の形成材料として、ペースト塩化ビニル樹脂を用いているが、これに代えて、サスペンション塩化ビニル樹脂を用いることにより、第1変形例の本体部3を形成できる。
樹脂層(上方樹脂層5及び下方樹脂層6)の形成材料としてのサスペンション塩化ビニル樹脂としては、例えば、株式会社カネカ製の商品名「カネビニール」(重合度:1050、K値:67)などを用いることができる。
サスペンション塩化ビニル樹脂を用いること以外は、上記実施形態の第1の製造方法及び第2の製造方法と同様の手順により、第1変形例の本体部3を製造できる。
【0080】
[第2変形例]
また、上記実施形態では、本体部3は、上方樹脂層5及び下方樹脂層6を有するが、いずれか一方の樹脂層のみを有するものでもよい。例えば、本体部3は、上方樹脂層5と発泡されたガラス不織布4のみからなる場合、或いは、下方樹脂層6と発泡されたガラス不織布4のみからなる場合でもよい(図示せず)。
【実施例
【0081】
以下、実施例を示し、本発明を更に詳述する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0082】
[使用材料]
(1)ガラス繊維A
太さが直径約18μm、平均繊維長が約20mmのガラス短繊維。
(2)熱膨張性マイクロカプセルB
松本油脂製薬(株)製の商品名「マツモト マイクロスフェアー」(登録商標)。膨張開始温度:140℃。
(3)ペースト塩化ビニル樹脂C
(株)カネカ製の商品名「PCH175」。K値:76。
【0083】
[製造例1]
ガラス繊維Aを水中に略均一に分散させて抄造することにより、目付量29g/mのガラスウェブを作製した。このガラスウェブを、熱膨張性マイクロカプセルBとアクリル系樹脂を含むバインダー樹脂溶液に浸漬した後、バキュームナイフによって余分な樹脂溶液を除去し、さらに、溶媒を十分に乾燥させて除去することにより、アクリル系樹脂の目付量が6g/m、熱膨張性マイクロカプセルBの目付量が1g/mのガラス不織布前駆体を作製した。この前駆体の厚みは、約0.3mmであった。
この前駆体を、オーブンを用いて、180℃に加熱して熱膨張性マイクロカプセルBを発泡させることにより、縦×横=2010mm×4000mmの発泡済みガラス不織布を作製した。この発泡済みガラス不織布の厚みは、約0.45mmであった。
【0084】
[製造例2]
熱膨張性マイクロカプセルBの目付量が2g/mとなるようにしたこと以外(つまり、熱膨張性マイクロカプセルBの量を2倍にしたこと以外)は、製造例1と同様にして、ガラス不織布前駆体を作製し、さらに、この前駆体から発泡済みガラス不織布を作製した。
製造例2において、ガラス不織布前駆体の厚みは、約0.32mmであり、発泡済みガラス不織布の厚みは、約0.7mmであった。
図12は、製造例2で得られた発泡済みガラス不織布の断面写真図である。この写真図は、切断面を100倍に拡大した電子顕微鏡による写真(100倍のSEM写真)である。以下、他の写真図も同様に100倍のSEM写真である。
【0085】
[製造例3]
バインダー樹脂としてポリビニルアルコールを使用したこと以外は、製造例1と同様にして、ガラス不織布前駆体を作製し、さらに、この前駆体から発泡済みガラス不織布を作製した。
製造例3において、ガラス不織布前駆体の厚みは、約0.32mmであり、発泡済みガラス不織布の厚みは、約0.7mmであった。
図13は、最終製造物である発泡済みガラス不織布を得る過程で作製した、製造例3のガラス不織布前駆体の断面写真図である。
【0086】
[製造例4]
熱膨張性マイクロカプセルBを配合しなかったこと、及び、ガラス不織布前駆体を加熱しなかったこと以外は、製造例1と同様にして、非発泡ガラス不織布を作製した。
なお、製造例4の非発泡ガラス不織布は、製造例1のガラス不織布前駆体(ただし、熱膨張性マイクロカプセルBを含まない)と同様なものである。
製造例4の非発泡ガラス不織布の厚みは、約0.3mmであった。
図14は、製造例4で得られた非発泡ガラス不織布の断面写真図である。
【0087】
【表1】
【0088】
[実施例1]
ペースト塩化ビニル樹脂Cを作業台上にコーターにて塗布して、この下側の塩化ビニル樹脂ペースト層上に、製造例1で得られた発泡済みガラス不織布を載せ、その不織布上に、ペースト塩化ビニル樹脂Cをコーターにて塗布し、この上側の塩化ビニル樹脂ペースト層上にパイルが基布にタフトされた生機(厚み3mm)を載せた。なお、下側の塩化ビニル樹脂ペースト層及び上側の塩化ビニル樹脂ペースト層は、最終製造物であるタイルカーペットの全体厚みが6mmとなるように、コーターの高さを設定して塗布した。
このようにして、下から順に、下側の塩化ビニル樹脂ペースト層/発泡済みガラス不織布/上側の塩化ビニル樹脂ペースト層/生機からなる積層体を作製した。
この積層体の内部温度が約180℃となるように設定されたオーブンを用いて、前記積層体を、圧力を加えない状態で10分間加熱することにより、各塩化ビニル樹脂ペースト層をゲル化させた。
このようにして、下から順に、下方樹脂層/発泡済みガラス不織布/上方樹脂層/生機からなるタイルカーペットを作製した。
【0089】
このタイルカーペットの下方樹脂層の厚みは、約1.55mm、発泡済みガラス不織布の厚みは、約0.45mm、上方樹脂層の厚みは、約1mm、生機の厚みは、約3mm、全体の厚みは、約6mmであった。
各厚みは、タイルカーペットを厚み方向に切断し、マイクロスコープ(オムロン(株)製の商品名「VC7700」)によって計測した(他の実施例及び比較例も同様)。なお、前記計測において、図11の参考図に示すように、生機の厚みは、(パイルのバックステッチを含めず)基布の裏面からバイルの頂点までの長さとし、上方樹脂層の厚みは、ガラス不織布の中で最も上側にあるガラス繊維から基布の裏面までの長さとし、ガラス不織布の厚みは、ガラス不織布の中で最も下側にあるガラス繊維から最も上側にあるガラス繊維までの長さとし、下方樹脂層の厚みは、下方樹脂層の裏面からガラス不織布の中で最も下側にあるガラス繊維までの長さとした。
このタイルカーペットの単位面積当たりの重量を測定したところ、約4162.5g/mであった。
【0090】
[実施例2]
製造例2で得られた発泡済みガラス不織布を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、下から順に、下方樹脂層/発泡済みガラス不織布/上方樹脂層/生機からなるタイルカーペットを作製した。
このタイルカーペットの下方樹脂層の厚みは、約1.3mm、発泡済みガラス不織布の厚みは、約0.7mm、上方樹脂層の厚みは、約1mm、生機の厚みは、約3mm、全体の厚みは、約6mmであった。
このタイルカーペットの単位面積当たりの重量を測定したところ、約3700g/mであった。
図15は、実施例2で得られたタイルカーペットのガラス不織布の断面写真図である。
【0091】
[実施例3]
ペースト塩化ビニル樹脂Cを作業台上にコーターにて塗布して、この下側の塩化ビニル樹脂ペースト層上に、製造例3で得られたガラス不織布前駆体を載せ、その前駆体上に、ペースト塩化ビニル樹脂Cをコーターにて塗布し、この上側の塩化ビニル樹脂ペースト層上にパイルが基布にタフトされた生機を載せた。なお、下側の塩化ビニル樹脂ペースト層及び上側の塩化ビニル樹脂ペースト層は、最終製造物であるタイルカーペットの全体厚みが6mmとなるように、コーターの高さを設定して塗布した。
このようにして、下から順に、下側の塩化ビニル樹脂ペースト層/ガラス不織布前駆体/上側の塩化ビニル樹脂ペースト層/生機からなる積層体を作製した。
この積層体の内部温度が約180℃となるように設定されたオーブンを用いて、前記積層体を、圧力を加えない状態で10分間加熱することにより、前駆体を発泡させると共に塩化ビニル樹脂ペースト層をゲル化させた。
このようにして、下から順に、下方樹脂層/発泡済みガラス不織布/上方樹脂層/生機からなるタイルカーペットを作製した。
【0092】
このタイルカーペットの下方樹脂層の厚みは、約1.3mm、発泡済みガラス不織布の厚みは、約0.7mm、上方樹脂層の厚みは、約1mm、生機の厚みは、約3mm、全体の厚みは、約6mmであった。
このタイルカーペットの単位面積当たりの重量を測定したところ、約4037.5g/mであった。
【0093】
[比較例]
製造例4で得られた非発泡ガラス不織布を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、下から順に、下方樹脂層/非発泡ガラス不織布/上方樹脂層/生機からなるタイルカーペットを作製した。
【0094】
このタイルカーペットの下方樹脂層の厚みは、約1.7mm、非発泡ガラス不織布の厚みは、約0.3mm、上方樹脂層の厚みは、約1mm、生機の厚みは、約3mm、全体の厚みは、約6mmであった。
このタイルカーペットの単位面積当たりの重量を測定したところ、約4200g/mであった。
なお、表2の軽量化は、比較例の単位面積当たりの重量から各実施例の単位面積当たりの重量を減算した数値である。
【0095】
各実施例と比較例から明らかなように、実施例と比較例は、全体厚みが6mmという望ましい全厚のタイルカーペットである。望ましい厚みのタイルカーペットでありつつ各実施例では、下方樹脂層の厚みを比較例の下方樹脂層よりも小さく作製できた。このことから、実施例によれば、樹脂の使用量を少なくしても、望ましい厚みのタイルカーペットを作製できることが判る。
また、各実施例のタイルカーペットは、比較例よりも軽くなった。
【0096】
【表2】
【0097】
[強度及び寸法安定性試験]
実施例3で得られたタイルカーペットについて、下記強度試験及び寸法安定性試験を行った。
その結果、実施例3のタイルカーペットの強度は、43.9Nであった。このカーペットは層間剥離を生じ難いことが判る。また、実施例3のタイルカーペットの寸法安定性は、V方向の値及びH方向の値がいずれも±0.1%以内であった。このカーペットは、寸法安定性に優れていることが判る。
【0098】
<強度試験>
層間剥離強度は、JIS L 1021-9 第9部:はく離強さ試験方法のB法に準じて、層間剥離させたときの値を測定した。試験は、5つのサンプル片について同様にして行い、各測定値の平均値を採用した。
<寸法安定性試験(キャスターチェアーによる寸法変化率)>
JIS L 4406によるキャスターチェアー2000回転による寸法変化率を測定した。試験は、3つのサンプル片について同様にして行い、各測定値の平均値を採用した。V方向:パイル列のタフト方向。H方向:パイル列に直交する方向(ゲージ方向)。
【符号の説明】
【0099】
1 内装材
1A カーペット
1B 床シート
2 化粧部
2A 生機
3 本体部
4 ガラス不織布
41 ガラス繊維
42 バインダー樹脂
43 第1空洞部(空洞部)
45 第2空洞部(空洞部)
47 第3空洞部(空洞部)
5 上方樹脂層
6 下方樹脂層
X,Z 表層部
Y 空洞帯領域層
図1
図2
図3
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