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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】測距装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/894 20200101AFI20221114BHJP
   G01S 7/483 20060101ALI20221114BHJP
   G01S 17/14 20200101ALI20221114BHJP
   G01C 3/06 20060101ALN20221114BHJP
   G02B 7/40 20210101ALN20221114BHJP
   G03B 7/16 20210101ALN20221114BHJP
   G03B 15/02 20210101ALN20221114BHJP
   G03B 15/05 20210101ALN20221114BHJP
【FI】
G01S17/894
G01S7/483
G01S17/14
G01C3/06 120Q
G02B7/40
G03B7/16
G03B15/02 V
G03B15/05
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019206440
(22)【出願日】2019-11-14
(65)【公開番号】P2021081208
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2021-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】501009849
【氏名又は名称】株式会社日立エルジーデータストレージ
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】増田 浩三
【審査官】九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-101873(JP,A)
【文献】特開2001-275132(JP,A)
【文献】特開2012-215480(JP,A)
【文献】特開2006-060745(JP,A)
【文献】特開2006-300616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
G01S 17/00 -17/95
G01C 3/06
G03B 15/02
G03B 15/05
G03B 7/16
G02B 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体までの距離を光の飛行時間により測定する測距装置において、
光源で発光したパルス光を被写体に照射する発光部と、
被写体で反射したパルス光をイメージセンサで露光し電気信号に変換する受光部と、
前記受光部の出力信号から被写体までの距離を演算する距離演算部と、
前記距離演算部にて演算した距離から被写体の距離画像を生成する画像処理部と、を備え、
前記画像処理部は、画像処理を実行するのは前記発光部にて発光を停止している期間内とし、前記発光部にて発光している期間中は、画像処理を停止することを特徴とする測距装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測距装置において、
前記受光部が露光を開始したとき、所定の遅延時間後に前記画像処理部は画像処理を停止し、所定の遅延時間後に前記発光部の発光を開始するとともに、
前記受光部が露光を終了したとき、所定の遅延時間後に前記発光部の発光を停止し、所定の遅延時間後に前記画像処理部は画像処理を開始することを特徴とする測距装置。
【請求項3】
請求項1に記載の測距装置において、
前記画像処理部は画像処理を停止するとき、前記画像処理部を構成する集積回路のクロック周波数を画像処理時よりも低下させることを特徴とする測距装置。
【請求項4】
被写体までの距離を光の飛行時間により測定する測距装置において、
光源で発光したパルス光を被写体に照射する発光部と、
被写体で反射したパルス光をイメージセンサで露光し電気信号に変換する受光部と、
前記受光部の出力信号から被写体までの距離を演算する距離演算部と、
前記距離演算部にて演算した距離から被写体の距離画像を生成する画像処理部と、
前記距離演算部と前記画像処理部の動作モードを切り替える動作モード制御部と、を備え、
前記動作モード制御部は、
前記発光部にて発光している期間中は、前記距離演算部が演算処理を停止する低電力モードに、かつ前記画像処理部が画像処理を停止する低電力モードに設定するとともに、
前記発光部にて発光を停止している期間内において、前記距離演算部が演算処理を実行する通常モードの期間と、前記画像処理部が画像処理を実行する通常モードの期間とを、互いに重ならないように設定することを特徴とする測距装置。
【請求項5】
請求項4に記載の測距装置において、
前記距離演算部を低電力モードに切り替えるために、前記距離演算部を構成する集積回路のクロック信号を停止し、
前記画像処理部を低電力モードに切り替えるために、前記画像処理部を構成する集積回路のクロック周波数を通常動作時よりも低下させることを特徴とする測距装置。
【請求項6】
請求項4に記載の測距装置において、
前記動作モード制御部は、
前記受光部が露光を終了したとき、所定の遅延時間後に前記発光部の発光を停止し、所定の遅延時間後に前記距離演算部の動作モードを通常モードに切り替えるとともに、
前記画像処理部の動作モードが低電力モードに切り替わったとき、所定の遅延時間後に前記受光部が露光を開始し、所定の遅延時間後に前記発光部の発光を開始することを特徴とする測距装置。
【請求項7】
請求項4に記載の測距装置において、
前記動作モード制御部は、前記距離演算部の通常モードの期間と、前記画像処理部の通常モードの期間とを、それぞれの処理が終了したことを判定して低電力モードに切り替えることで設定することを特徴とする測距装置。
【請求項8】
請求項1または4に記載の測距装置において、
前記発光部と前記受光部とを複数組有し、各組で順に発光/露光を実行し、
前記距離演算部は各組からの出力信号を合成し、前記画像処理部は合成された距離画像を生成することを特徴とする測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体までの距離を光の飛行時間により測定する測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被写体までの距離を測定して距離画像を得るために、照射光が被写体で反射して戻ってくるまでの飛行時間により距離を測定する方式(TOF=Time Of Flight)を用いた測距撮像装置(以下、測距装置)が実用化されている。測距装置では距離測定のため、照射光の発光と反射光の露光を周期的に繰り返し、所定の露光期間に蓄積された露光量から照射光に対する反射光の時間遅れを算出して距離を求める。その後、距離データに基づき被写体までの距離値をカラー化する画像処理を行い、2次元状の距離画像として出力するものである。
【0003】
測距装置の使用環境の条件として、電源の規格が定められている。よって、所定の性能を所定のピーク電力以下で実行するため、装置の低電力化が要求される。これに関連する技術として、例えば特許文献1には、カメラの発光装置におけるピーク電力を低減する構成が開示されている。この装置では、電荷を充電した大容量コンデンサから発光部に電力を供給することで電源(電池)のピーク電力の増加を抑える構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-121755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
測距装置に電力を供給する電源には、規格に応じたピーク電力が定められている。よってシステムコスト低減のため、ピーク電力以下で動作するようさらなる低電力化が要請される。特許文献1における低電力化の技術では、大容量コンデンサを追加するため実装スペースを確保する必要があり、また装置のコストアップを招くことになる。
【0006】
また一般の低電力化技術として、装置内の複数の部品(回路)の動作期間をずらすことでピーク電力を低減することが考えられる。しかしながらTOF方式による測距装置では、発光動作、露光動作だけでなく、距離演算や画像処理の開始/終了タイミングも含めて、トータル性能を維持しながら電力低減を図る必要がある。このような要請に対して、従来技術では考慮されていなかった。
【0007】
以上の課題を鑑み本発明の目的は、新たな部品を追加せずに、消費電流のピーク値を低減する測距装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の測距装置は、光源で発光したパルス光を被写体に照射する発光部と、被写体で反射したパルス光をイメージセンサで露光し電気信号に変換する受光部と、前記受光部の出力信号から被写体までの距離を演算する距離演算部と、前記距離演算部にて演算した距離から被写体の距離画像を生成する画像処理部と、を備え、前記画像処理部は、画像処理を実行するのは前記発光部にて発光を停止している期間内とし、前記発光部にて発光している期間中は、画像処理を停止する構成とする。
【0009】
また本発明の測距装置は、さらに、前記距離演算部と前記画像処理部の動作モードを切り替える動作モード制御部を備え、前記動作モード制御部は、前記発光部にて発光している期間中は、前記距離演算部が演算処理を停止する低電力モードに、かつ前記画像処理部が画像処理を停止する低電力モードに設定するとともに、前記発光部にて発光を停止している期間内において、前記距離演算部が演算処理を実行する通常モードの期間と、前記画像処理部が画像処理を実行する通常モードの期間とを、互いに重ならないように設定する構成とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、新たな部品を追加せずに、消費電流のピーク値を容易に低減する測距装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1に係る測距装置1の構成を示す図。
図2A】距離測定部(TOFカメラ)10の動作を説明する図。
図2B】距離測定時の演算法の一例を説明する図。
図3】距離画像の一例を示す図。
図4】従来の測距装置の各部の動作を示すタイムチャート。
図5】実施例1における測距装置の各部の動作を示すタイムチャート。
図6図5の動作切り替えを実行するためのフローチャート。
図7】実施例2に係る測距装置1’の構成を示す図。
図8】実施例2における測距装置の各部の動作を示すタイムチャート。
図9図8における各部の消費電流の大きさを比較して示した図。
図10図8の動作切り替えを実行するためのフローチャート。
図11】実施例3に係る測距装置1”の構成を示す図。
図12】実施例3における測距装置の各部の動作を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の測距装置の実施形態を説明する。消費電流のピーク値を抑えるため、実施例1では画像処理のタイミングを制御し、実施例2では画像処理と距離演算のタイミングを制御する構成について説明する。また実施例3では、2系統の発光部/受光部を備えた構成について説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、実施例1に係る測距装置の構成を示す図である。測距装置1では、人物や物体などの被写体までの距離をTOF方式で測定し、測定した被写体の各部までの距離を例えば色で表示し、距離画像として出力する。
【0014】
測距装置1は、TOF方式による距離データを取得する距離測定部10(以下、TOFカメラ)と、距離データから人物などの被写体の部分を抽出して距離画像を生成する画像処理部15とを備える。電源部16は、測距装置1内のTOFカメラ10と画像処理部15に電力を供給する。
【0015】
TOFカメラ10は、被写体にパルス光を照射する発光部11と、被写体から反射したパルス光を受光する受光部12と、発光部11の発光動作を制御する発光制御部13と、受光部12の検出信号(受光データ)から被写体までの距離を計算する距離演算部14を有する。
【0016】
画像処理部15は、例えばCPU(マイクロプロセッサ)で構成され、距離演算部14からの距離データに基づき、被写体画像の色相を変えるカラー化処理を行い、外部装置に出力またはディスプレイ等に表示する。画像処理は、明度、コントラスト等を変える処理でも構わない。ユーザはカラー化された距離画像を見ることで、人物等の被写体の位置(距離)と形状(姿勢)を容易に知ることができる。
【0017】
受光部12は、露光/非露光動作を示す露光信号(破線で示す)を出力する。発光制御部13は、露光信号に基づいて発光部11の発光期間/消灯期間を制御する。距離演算部14は、露光信号に基づいて受光データから距離を演算する。さらに本実施例では、画像処理部15は、露光信号に基づきその動作モードを、画像処理を実行する「通常モード」と画像処理を停止する「低電力モード」との間で切り替える構成としたことに特徴がある。
【0018】
図2Aは、距離測定部(TOFカメラ)10の動作を説明する図である。発光部11は、レーザダイオード(LD)などの光源から、レーザ等のパルス状の照射光31を被写体2に向けて出射する。受光部12は、照射光31が被写体2で反射して戻ってきたパルス状の反射光32を検出する。受光部12は、CCDセンサなどを2次元状に配列したイメージセンサ33で反射光32を露光し、各画素位置での露光量を電気信号(電荷量)に変換する。距離演算部14は、受光部12での受光データ(電荷量)から被写体2までの距離Lを演算し、2次元の距離データを生成する。
【0019】
図2Bは、距離測定時の演算法の一例を説明する図である。距離測定では、照射光31と反射光32の時間差Tdに基づいて、被写体2までの距離Lを、L=Td×c/2で求めることができる(ここにcは光速)。ここでは、1回の照射光31(パルス幅T)に対し、露光動作を例えば2つのゲートに分けて行う場合を示す。すなわち、反射光32の露光動作を、第1の露光ゲートSとこれに続く第2の露光ゲートSに分け、それぞれのゲート幅は照射光31のパルス幅Tに等しくする。イメージセンサ33に蓄積される電荷量Qのうち、第1、第2の露光ゲートS,Sにおいて蓄積される電荷量Q,Qと、照射光のパルス幅Tから、時間差Tdは、
Td=T×Q/(Q+Q
と求めることができる。これより距離Lは、
L=T×Q/(Q+Q)×c/2
により算出される。なお、ここでは簡単のために、背景光の電荷量を無視している。
【0020】
実際の距離測定では、照射光31としてパルス光を所定の間隔で複数回繰り返して照射し、その反射光を所定の間隔の露光ゲートで複数回繰り返して露光することで、測定精度を向上させている。
【0021】
距離演算部14は上記の演算を、プログラマブルロジックデバイス、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて行う。
【0022】
図3は、距離画像の一例を示す図である。距離演算部14から出力される2次元の距離データを基に、画像処理部15は2次元の距離画像4を生成する。この画像処理では、被写体の各部までの距離データを距離値に応じてカラー化し、2次元の色データの画像として出力する。その結果、例えば近距離の部分は「赤色」、遠距離の部分は「青色」で表示され、ユーザは、被写体2の形状(輪郭や凹凸)と被写体2までの距離を知ることができる。なお、添付の図3においては、距離値をカラーではなくグレースケール(明度)で表現している。
【0023】
画像処理部15は上記の処理の他に、受光信号に含まれるショットノイズを除去するノイズ除去処理や、背景となる物体を距離画像から除去する差分化処理などを行うことで、被写体をより明瞭に表示することができる。これらの処理は、CPU(マイクロプロセッサ)により行われる。
【0024】
以下、本実施例の測距装置の動作を詳細に説明するが、比較のために、従来の一般的な測距装置の動作から説明する。
【0025】
図4は、従来の測距装置の各部の動作を示すタイムチャートである。1フレームを周期として、発光部11は発光期間と消灯期間を交互に繰り返し、受光部12は露光期間と非露光期間を交互に繰り返す。なお、1つの発光期間および1つの露光期間の中では、前記図2Bに示した発光パルスとこれに続く露光ゲートが複数回繰り返して実行される。発光期間と露光期間、消灯期間と非露光期間は、それぞれ時間的にほぼ一致している。一方、距離演算部14と画像処理部15は、測距装置1が稼動中は常に距離演算動作と画像処理動作を継続して行う(通常動作状態)。
【0026】
発光部11では、その発光期間において光源の発光動作のために電力を消費する。距離演算部14や画像処理部15を構成する集積回路には、通常動作を行わせるためのクロック信号が供給され、各回路では処理動作のために電力を消費する。そのため、電源部16から供給されるトータル消費電流は、発光期間(露光期間)において最大となり、例えばピーク値が1200mAとなり、電源部16の定格値(目標値)900mAを超えてしまう。
【0027】
これに対し実施例1では、発光期間での画像処理部15の動作モードとして、画像処理を停止する「低電力モード」を設けてトータル消費電流を低減させる構成とした。
【0028】
図5は、実施例1における測距装置の各部の動作を示すタイムチャートである。距離測定はフレーム単位で実行し、例えば30フレーム/secのレートで測定する。このタイムチャートでは、受光部12の動作を最上段に掲げているが、以下で説明するように、受光部12の露光信号のタイミングを基準として各部の動作タイミングを決定しているからである。
【0029】
前記図4で示した従来の動作との違いは、画像処理部15の動作モードとして、通常の画像処理を行う「通常モード」の他に、画像処理を停止する「低電力モード」を設けたことである。そして、受光部12の非露光期間(発光部11の消灯期間)では画像処理部15を「通常モード」とするが、受光部12の露光期間(発光部11の発光期間)では画像処理部15を「低電力モード」に切り替える。動作モードの切替は、画像処理部15を構成するCPUのクロック周波数を切り替えることで行い、使用するCPUの規格に従い、例えば、「通常モード」ではf=1GHz、低電力モードではf=数100kHzとする。クロック周波数を低下させることで、画像処理部15はスタンバイモードに移行し、消費電力は大幅に低減する。
【0030】
また、各部の動作の切り替えタイミング(t0,t1,・・・)を次のようにする。
[1]受光部12の露光開始(t0)→画像処理部15を「低電力モード」に切り替え(t1)→発光部11の発光開始(t2)、
[2]受光部12の露光終了(t3)→発光部11の発光停止(t4)→画像処理部15を「通常モード」に切り替え(t5)、
の順序で行い、各部の動作切り替えではわずかの遅延時間(数msec)を設ける。
【0031】
以上のように動作モードを設定することで、発光部11の発光期間(t2~t4)と画像処理部15の通常モード期間(t5~t7)は重なることがなくなる。その結果、電源部16のトータル消費電流は、例えば発光期間(t2~t4)のピーク値は800mAに下がり、定格値の900mA未満に抑えることができる。また、各部の動作切り替えに遅延時間を設けたので、動作切り替え時に各部の動作が重なることにより消費電流が瞬間的に定格値を超えることもなくなる。
【0032】
上記の動作モードによれば、図4の従来例と比較し、画像処理部15が画像処理可能となるのは通常モードの期間(t5~t7)に短縮される。よって、この期間に直前の露光期間(t0~t3)に得られた距離データの画像処理が完了するように、非露光期間(t3~t6)の長さを設定する。
【0033】
図6は、図5の動作切り替えを実行するためのフローチャートである。
S101:受光部12からの露光信号により、現在受光部12が露光中か否かを判定する。露光中(Yes)であれば、S102へ進み、非露光中(No)であれば、S104へ進む。
【0034】
S102:画像処理部15はその動作モードを低電力モードに設定する(タイミングt1)。具体的には、CPUのクロック周波数を例えば数100kHzに切り替える。
S103:発光制御部13は発光部11に対し発光を開始させる(タイミングt2)。その後S101へ戻る。
【0035】
S104:発光制御部13は発光部11に対し発光を停止させる(タイミングt4)。
S105:画像処理部15はその動作モードを通常モードに設定する(タイミングt5)。具体的には、CPUのクロック周波数を例えば1GHzに切り替える。その後S101へ戻る。
【0036】
実施例1によれば、発光部11の発光期間と画像処理部15の画像処理期間が重なることがなくなる。その結果、特許文献1に記載されるような大容量コンデンサ等の新たな部品を追加することなく、電源部16のトータル消費電流を、定格値未満に抑えることができる。また、非露光期間(t3~t6)の長さを適切に設定することで、画像処理性能が低下することがない。
【実施例2】
【0037】
実施例2では、電源部16のトータル消費電流をさらに低減するため、距離演算部14の動作モードとして距離演算を停止する「低電力モード」を設ける構成とした。
【0038】
図7は、実施例2に係る測距装置1’の構成を示す図である。実施例1(図1)の測距装置1との相違点は、距離演算部14および画像処理部15の動作モードを切り替える動作モード制御部17を設けたことである。動作モード制御部17は、受光部12からの露光/非露光動作を示す露光信号に基づき、画像処理部15にモード切替信号(M1)を送るとともに、距離演算部14にモード切替信号(M2)を送る。これにより画像処理部15の動作モードを、画像処理を実行する「通常モード」と画像処理を停止する「低電力モード」との間で切り替えるようにした。また、距離演算部14の動作モードを、距離演算を実行する「通常モード」と距離演算を停止する「低電力モード」との間で切り替えるようにした。電源部16は、動作モード制御部17を含め、測距装置1’内の各部に電力を供給する。
【0039】
図8は、実施例2における測距装置の各部の動作を示すタイムチャートである。実施例1(図5)の動作との違いは、距離演算部14の動作モードとして、通常の距離演算を行う「通常モード」と、距離演算を停止する「低電力モード」を設けたことである。そして、受光部12の非露光期間(発光部11の消灯期間)において、距離演算部14を「通常モード」とする期間と、画像処理部15を「通常モード」とする期間とを設け、両者が重ならないように設定する。具体的には、距離演算の処理が終了してから画像処理を開始するように切り替える。一方、受光部12の露光期間(発光部11の発光期間)では、距離演算部14と画像処理部15の両方を「低電力モード」に切り替える。
【0040】
距離演算部14の動作モードを低電力モードに切り替えるときは、距離演算部14を構成するFPGAのクロック周波数を停止することで行う。クロックを停止することで、距離演算部14はスタンバイモードに移行し、消費電力は大幅に低減する。
【0041】
また、各部の動作の切り替えタイミング(t0,t1,・・・)を次のようにする。
[1]受光部12の露光終了(t2)→発光部11の発光停止(t3)→距離演算部14を「通常モード」に切り替え(t4)→所定時間継続したら距離演算部14を「低電力モード」に切り替え(t5)、
[2]画像処理部15を「通常モード」に切り替え(t6)→所定時間継続したら画像処理部15を「低電力モード」に切り替え(t7)→受光部12の露光開始(t8)→発光部11の発光開始(t9)、
の順序で行い、各部の動作切り替えではわずかの遅延時間(数msec)を設ける。
【0042】
以上のように距離演算部14と画像処理部15の両方の動作モードに低電力モードを設定することで、発光部11の発光期間(t1~t3)と、距離演算部14の通常モード期間(t4~t5)と、画像処理部15の通常モード期間(t7~t8)はいずれも重なることがなくなる。その結果、電源部16のトータル消費電流のピーク値は、例えば発光期間(t1~t3)は800mAに、距離演算期間(t4~t5)は400mAに、画像処理期間(t6~t7)は700mAに低下し、いずれも定格値の900mA未満に抑えることができる。また、各部の動作切り替えに遅延時間を設けたので、動作切り替え時に各部の動作が重なることで消費電流が瞬間的に定格値を超えることもなくなる。
【0043】
上記の動作モードによれば、実施例1(図5)と比較し、距離演算部14の通常モード期間(t4~t5)と、画像処理部15の通常モード期間(t6~t7)はいずれも短縮される。よって、この期間に直前の露光期間(t0~t2)に得られた受光データの距離演算とその画像処理が完了するように、非露光期間(t2~t8)の長さを設定する必要がある。そのため、距離演算の処理と画像処理がそれぞれ終了したことを判定して、次の動作モードへの切り替えを行うのが好ましい。
【0044】
図9は、図8における各部の消費電流の大きさを比較して示した図である。受光部12の露光期間において、発光部11の消費電流は600mAで最も大きい。非露光期間では、距離演算部14は200mA、画像処理部15は500mAで、互いに動作期間をずらしている。動作モード制御部17は常時使用するが、消費電流は200mAで小さい。これらの電流値を合計すると、図8に示した電源部16のトータル消費電流となる。
なお、前記実施例1(図1)には動作モード制御部17は存在しないので、前記図5にはその消費電流は含まれていない。
【0045】
図10は、図8の動作切り替えを実行するためのフローチャートである。以下の処理は、動作モード制御部17が主体となって実行する。
S201:動作モード制御部17は受光部12からの露光信号により、現在受光部12が露光中か否かを判定する。露光中(Yes)であれば、S202へ進み、非露光中(No)であれば、S205へ進む。
【0046】
S202:距離演算部14に対し動作モードを低電力モードに設定する。具体的には、FPGAのクロックを停止する。
S203:画像処理部15に対し動作モードを低電力モードに設定する。具体的には、CPUのクロック周波数を例えば数100kHzに切り替える。
S204:発光部11に対し発光を開始させる(タイミングt1)。その後S201へ戻る。
【0047】
S205:発光部11に対し発光を停止させる(タイミングt3)。
S206:距離演算部14は距離演算を終了したか否かを判定する。終了していなければ(No)、S207へ進み、終了していれば(Yes)、S208へ進む。
S207:距離演算部14に対し動作モードを通常モードに設定する(タイミングt4)。具体的には、FPGAのクロックを回復させる。その後S201へ戻る。
【0048】
S208:画像処理部15は画像処理を終了したか否かを判定する。終了していなければ(No)、S209へ進み、終了していれば(Yes)、S211へ進む。
S209:距離演算部14に対し動作モードを低電力モードに設定する(タイミングt5)。具体的には、FPGAのクロックを停止する。
S210:画像処理部15に対し動作モードを通常モードに設定する(タイミングt6)。具体的には、CPUのクロック周波数を例えば1GHzに切り替える。その後S201へ戻る。
【0049】
S211:画像処理部15に対し動作モードを低電力モードに設定する(タイミングt7)。具体的には、CPUのクロック周波数を例えば数100kHzに切り替える。その後S201へ戻る。
【0050】
実施例2によれば、実施例1の構成に加え、発光部11の発光期間と距離演算部14の距離演算期間と画像処理部15の画像処理期間とがいずれも重ならないように、動作モードを低電力モードに切り替えるようにしたので、電源部16のトータル消費電流をさらに低減させることができる。
【0051】
また、上記実施例2では、画像処理部15を低電力モードに設定する手段としてCPUのクロック周波数を低減する場合について説明したが、これに限るものではない。画像処理部15が複数のCPUコアを内蔵している場合は、画像処理を担当しているCPUコアの周波数を低減または停止させても良い。画像処理部15が複数のCPUチップで構成されている場合は、画像処理を担当しているCPUチップの周波数を低減または停止させても良い。
【実施例3】
【0052】
実施例3では、TOFカメラを複数個備えた測距装置におけるトータル消費電流の低減について述べる。ここでは実施例2の方式で消費電流の低減を図る場合について説明するが、実施例1の方式を適用しても有効であることは言うまでもない。
【0053】
図11は、実施例3に係る測距装置1”の構成を示す図である。この例では2つのTOFカメラ10a,10bを有し、それぞれの受光データを合成して距離画像として出力する構成である。複数のTOFカメラ10a,10bを用いることで、例えば被写体2に対して複数の方向から測定が可能となり、被写体2の陰になって見えない部分を低減することができる。
【0054】
TOFカメラ10a,10bで取得した各受光部12a,12bからの受光データは、共通の距離演算部14に入力されて距離データを合成し、画像処理部15は合成された距離画像を出力する。動作モード制御部17は、各発光部11a,11bを交互に発光させ、また各受光部12a,12bで交互に露光させることで、発光時の消費電流の増加を抑える。また動作モード制御部17は、距離演算部14と画像処理部15にそれぞれモード切替信号(M1,M2)を送り、それぞれの動作モードを通常モードと低電力モードの間で切り替える。その際のモード切替は、前記実施例2と同様に行う。
【0055】
図12は、実施例3における測距装置の各部の動作を示すタイムチャートである。2つのTOFカメラ10a,10bでは、露光/発光動作を交互に行う。そして、双方のTOFカメラ10a,10bが非露光となる期間において、距離演算部14の通常モード期間(t4~t5)と、画像処理部15の通常モード期間(t7~t8)を重ならないように設定する。各部の動作の切り替えタイミング(t0,t1,・・・)は、前記実施例2(図8)の説明と同様であり、各部の動作切り替えではわずかの遅延時間(数msec)を設けている。
【0056】
その結果、電源部16のトータル消費電流のピーク値は、実施例2(図8)と同様であり、例えば発光期間(t1~t3)は800mAに、距離演算期間(t4~t5)は400mAに、画像処理期間(t6~t7)は700mAに低下し、いずれも定格値の900mA未満に抑えることができる。
【0057】
上記の例では2台のTOFカメラ10a,10bを有する場合としたが、3台以上の複数のTOFカメラを有する構成でも同様に適用できる。
【0058】
実施例3によれば、TOFカメラを複数個備えた測距装置において、実施例2と同様に距離演算部14と画像処理部15の動作モードを低電力モードに切り替えるようにしたので、電源部16のトータル消費電流を低減させることができる。もちろん、実施例1と同様に、発光期間中は画像処理部15の処理を停止するようにしても良いことは言うまでもない。
【0059】
本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、距離演算部14と画像処理部15はFPGAとCPUで構成したが、要求性能に応じて適宜他の集積回路を用いてもよい。また、各実施例で述べた消費電流の値や規格値は一例であり、システムに応じて適宜設定されることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0060】
1,1’,1”:測距装置、
10:距離測定部(TOFカメラ)、
11:発光部、
12:受光部、
13:発光制御部、
14:距離演算部、
15:画像処理部、
16:電源部、
17:動作モード制御部、
31:照射光、
32:反射光、
33:イメージセンサ。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12