(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】モータステータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/28 20060101AFI20221114BHJP
H02K 3/04 20060101ALI20221114BHJP
H02K 3/34 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
H02K3/28 Z
H02K3/04 J
H02K3/34 D
(21)【出願番号】P 2019223626
(22)【出願日】2019-12-11
【審査請求日】2019-12-11
【審判番号】
【審判請求日】2021-06-16
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】201910504040.2
(32)【優先日】2019-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】596039187
【氏名又は名称】台達電子工業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】DELTA ELECTRONICS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】許 宏成
(72)【発明者】
【氏名】林 俊志
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】長馬 望
【審判官】田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-93714(JP,A)
【文献】特開2005-341656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/28
H02K 3/04
H02K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄心の径方向に対して外から内へ第1層、第2層、第3層、第4層、第5層、第6層が各々定義される複数のスロットを有し、挿入側及び前記挿入側に対向する延在側を有する鉄心と、
前記挿入側から前記スロットの前記第3層に挿入されて前記延在側から突出して第1の方向へ折れ曲がる第1のピンと、前記挿入側から前記スロットの前記第6層に挿入されて前記延在側から突出して第2の方向へ折れ曲がる第2のピンと、を各々有する複数の第1のヘアピン形状のリードと、
前記挿入側から前記スロットの前記第4層に挿入されて前記延在側から突出して第3の方向へ折れ曲がる第3のピンと、前記挿入側から前記スロットの前記第5層に挿入されて前記延在側から突出して第4の方向へ折れ曲がる第4のピンと、を各々有する複数の第2のヘアピン形状のリードと、
それぞれ前記スロットの前記第1層と前記第2層に挿入される第5のピン及び第6のピンを各々有する複数の第3のヘアピン形状のリードと、
を備え、
各々の
前記第1のピンの一端は
隣接する前記第3のピンの一端に接続され、各々の前記第3のピンの一端は隣接する前記第4のピンの一端に接続され、各々の前記第4のピンの一端は隣接する前記第2のピンの一端に接続され、これにより第1の巻線を形成し、
各々の
前記第5のピンの一端は
隣接する前記第6のピンの一端に接続され、これにより第2の巻線を形成し、
各々の前記第1のヘアピン形状のリード及び各々の前記第2のヘアピン形状のリードの両方は前記鉄心の前記挿入側において転向セクションを有し、
前記第1の方向と前記第3の方向とは同じ円周方向であり、前記第2の方向と前記第4の方向とは同じ円周方向であり
、前記第1の方向と前記第2の方向とは
前記転向セクションから離れる反対の円周方向である、モータステータ。
【請求項2】
各々の前記第1のヘアピン形状のリードと各々の前記第2のヘアピン形状のリードとは前記鉄心の前記挿入側において何れも転向セクションを有し、前記転向セクションにおいて、前記第1のヘアピン形状のリードの折り曲げ角度は前記第2のヘアピン形状のリードの折り曲げ角度と異なる請求項1に記載のモータステータ。
【請求項3】
各々の前記第1のヘアピン形状のリードは対向する第1の表面及び第2の表面を有し、各々の前記第2のヘアピン形状のリードは対向する第3の表面及び第4の表面を有し、前記第2の表面が前記第3の表面に接触する請求項1又は2に記載のモータステータ。
【請求項4】
前記第1の表面は前記転向セクションにおいて前記第3の表面よりも前記転向セクションにおいて前記鉄心の前記挿入側の表面から離れる請求項3に記載のモータステータ。
【請求項5】
前記第1のピンの前記第1の表面は前記挿入側において前記鉄心の外側に対向し、且つ前記第2のピンの前記第1の表面は前記挿入側において前記鉄心の内側に対向する請求項3に記載のモータステータ。
【請求項6】
前記第3のピンの前記第4の表面は前記挿入側において前記鉄心の内側に対向し、且つ前記第4のピンの前記第4の表面は前記挿入側において前記鉄心の外側に対向する請求項3に記載のモータステータ。
【請求項7】
各々の前記第3のヘアピン形状のリードの断面積は、各々の前記第1のヘアピン形状のリード又は各々の前記第2のヘアピン形状のリードの断面積よりも大きい請求項1~6の何れか1項に記載のモータステータ。
【請求項8】
前記スロットの前記第1層と前記第2層から前記延在側を突出する前記第5のピンと前記第6のピンとの間に位置する絶縁シートを更に備える請求項1~7の何れか1項に記載のモータステータ。
【請求項9】
前記スロットの前記第4層と前記第5層から前記延在側を突出する前記第3のピンと前記第4のピンとの間に位置する絶縁シートを更に備える請求項1~8の何れか1項に記載のモータステータ。
【請求項10】
前記第1のピンが前記延在側から突出して第1の跨溝距離で折れ曲がり、及び前記第2のピンが前記延在側から突出して第2の跨溝距離で折れ曲がり、前記第1の跨溝距離と前記第2の跨溝距離とは同じである請求項1~9の何れか1項に記載のモータステータ。
【請求項11】
各々の前記第1のヘアピン形状のリードの全長は、各々の前記第2のヘアピン形状のリードの全長よりも大きい請求項1~10の何れか1項に記載のモータステータ。
【請求項12】
各々の前記第1のヘアピン形状のリードの断面積と各々の前記第2のヘアピン形状のリードの断面積とは、同じである請求項1~11の何れか1項に記載のモータステータ。
【請求項13】
各々の前記第1のヘアピン形状のリードと各々の前記第2のヘアピン形状のリードの断面積との合計は、各々の前記第3のヘアピン形状のリードの断面積以下である請求項1~12の何れか1項に記載のモータステータ。
【請求項14】
鉄心の径方向に対して外から内へ第1層、第2層、第3層、第4層、第5層、第6層が各々定義される複数のスロットを有し、挿入側及び前記挿入側に対向する延在側を有する鉄心と、
前記挿入側から前記スロットの前記第3層に挿入されて前記延在側から突出して第1の方向へ折れ曲がる第1のピンと、前記挿入側から前記スロットの前記第6層に挿入されて前記延在側から突出して第2の方向へ折れ曲がる第2のピンと、を各々有する複数の第1のヘアピン形状のリードと、
前記挿入側から前記スロットの前記第4層に挿入されて前記延在側から突出して第3の方向へ折れ曲がる第3のピンと、前記挿入側から前記スロットの前記第5層に挿入されて前記延在側から突出して第4の方向へ折れ曲がる第4のピンと、を各々有する複数の第2のヘアピン形状のリードと、
それぞれ前記スロットの前記第1層と前記第2層に挿入される第5のピン及び第6のピンを各々有する複数の第3のヘアピン形状のリードと、
を備え、
前記延在側において、
前記第1のピンの一端が前記第3のピンの一端に隣接し、前記第3のピンの一端が前記第4のピンの一端に隣接し、前記第4のピンの一端が前記第2のピンの一端に隣接して、第1の巻線を形成するように、隣接する全ての前記第1のピンから前記第4のピンの一端は接続され、前記第5のピンの一端が前記第6のピンの一端に隣接して、第2の巻線を形成するように、隣接する全ての前記第5のピン及び前記第6のピンの一端は接続され、
各々の前記第1のヘアピン形状のリード及び各々の前記第2のヘアピン形状のリードの両方は前記鉄心の前記挿入側において転向セクションを有し、
前記第1の方向と前記第3の方向とは同じ円周方向であり、前記第2の方向と前記第4の方向とは同じ円周方向であり
、前記第1の方向と前記第2の方向とは
前記転向セクションから離れる反対の円周方向である、モータステータ。
【請求項15】
各々の前記第1のヘアピン形状のリードは対向する第1の表面及び第2の表面を有し、前記第1のピンの前記第1の表面と前記第2のピンの前記第1の表面とは前記挿入側においてそれぞれ径方向における反対方向に対向する請求項14に記載のモータステータ。
【請求項16】
各々の前記第2のヘアピン形状のリードは対向する第3の表面及び第4の表面を有し、前記第3のピンの前記第4の表面と前記第4のピンの前記第4の表面とは前記挿入側においてそれぞれ径方向における反対方向に対向し、前記第2の表面が前記第3の表面に接触する請求項15に記載のモータステータ。
【請求項17】
前記スロットの前記第4層と前記第5層から前記延在側を突出する前記第3のピンと前記第4のピンとの間に位置する第1の絶縁シートを更に備え、及び/又は、
前記スロットの前記第1層と前記第2層から前記延在側を突出する前記第5のピンと前記第6のピンとの間に位置する第2の絶縁シートを更に備える請求項14~16の何れか1項に記載のモータステータ。
【請求項18】
各々の前記第1のヘアピン形状のリードの断面積と各々の前記第2のヘアピン形状のリードの断面積とは、同じであり、及び/又は、各々の前記第1のヘアピン形状のリードと各々の前記第2のヘアピン形状のリードの断面積との合計は、各々の前記第3のヘアピン形状のリードの断面積以下である請求項14~16の何れか1項に記載のモータステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータステータに関し、特に、ヘアピン形状のリードを含むモータステータに関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータに適用されるステータにおいて、低電圧の適用又は大電力の要求により、その収容溝内に巻設されるリードは、大きな電流に耐えられるように、一般的に、十分な断面積を要求している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
大きな断面の単一銅コイルが高い占積率のメリットを有するが、表皮効果(skin effect)と近接効果(proximity effect)の影響により、大きな断面積の銅コイルは、A/C電力消費がモータの回転速度の増加により急速に上昇する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、従来技術の問題点を解決するために、モータステータを提出する。
【0005】
本発明の一実施例において、鉄心の径方向に対して外から内へ第1層、第2層、第3層、第4層、第5層、第6層が各々定義される複数のスロットを有し、挿入側及び挿入側に対向する延在側を有する鉄心と、挿入側から前記スロットの第3層に挿入されて延在側から突出して第1の方向へ折れ曲がる第1のピンと、挿入側から前記スロットの第6層に挿入されて延在側から突出して第2の方向へ折れ曲がる第2のピンと、を各々有する複数の第1のヘアピン形状のリードと、挿入側から前記スロットの第4層に挿入されて延在側から突出して第3の方向へ折れ曲がる第3のピンと、挿入側から前記スロットの第5層に挿入されて延在側から突出して第4の方向へ折れ曲がる第4のピンと、を各々有する複数の第2のヘアピン形状のリードと、それぞれ前記スロットの第1層と第2層に挿入される第5のピン及び第6のピンを各々有する複数の第3のヘアピン形状のリードと、を備え、各々のスロットの第1のピンの末端は、隣接する第2のピンの末端、隣接する第3のピンの末端及び隣接する第4のピンの末端に接続されて第1の巻線を形成するモータステータを提供する。
【0006】
本発明の一実施例において、鉄心の径方向に対して外から内へ第1層、第2層、第3層、第4層、第5層、第6層が各々定義される複数のスロットを有し、挿入側及び挿入側に対向する延在側を有する鉄心と、それぞれスロットの第3層と第6層に挿入される第1のピン及び第2のピンを各々有する複数の第1のヘアピン形状のリードと、それぞれスロットの第3層と第6層に挿入される第3のピン及び第4のピンを各々有する複数の第2のヘアピン形状のリードと、それぞれスロットの第1層と第2層に挿入される第5のピン及び第6のピンを各々有する複数の第3のヘアピン形状のリードと、を備え、各々のスロットの第1のピンの末端は、隣接する第2のピンの末端、隣接する第3のピンの末端及び隣接する第4のピンの末端に接続されて第1の巻線を形成し、各々の第5のピンの末端は隣接する第6のピンの末端に接続されて第2の巻線を形成するモータステータを提供する。
【発明の効果】
【0007】
以上をまとめると、本発明は、前記2つのヘアピン形状のリードの鉄心のスロットの第3層~第6層への挿入形態、折れ曲げ形態及び巻線の並列接続の設計を利用することで、モータステータの巻線の高周波で動作する場合の抵抗値を低減し、高周波動作の場合の動作損失エネルギーを減少し、近隣するリード同士の最大ピッチを大きくすることができる。
【0008】
以下、実施形態によって上記の説明を詳しく説明し、本発明の技術案に対して更なる解釈を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
下記添付図面についての説明は、本発明の上記及び他の目的、特徴、メリットと実施例をより分かりやすくするためのものである。
【
図1】本発明の一実施例によるモータステータをある視角から示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施例によるモータステータを別の視角から示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施例によるモータステータの鉄心を示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施例によるヘアピン形状のリードを示す斜視図である。
【
図5】
図4のヘアピン形状のリードの転向セクションを示す拡大図である。
【
図6】
図4のヘアピン形状のリードの一方のピンの末端を示す拡大図である。
【
図7A】本発明の一実施例によるヘアピン形状のリードが鉄心に挿入される様子を挿入側の視角から示す斜視図である。
【
図7C】
図7Aのヘアピン形状のリードを鉄心の延在側の視角から示す図面である。
【
図8A】本発明の一実施例による各ヘアピン形状のリードの延在側で巻線を形成する様子を示す模式図である。
【
図8B】本発明によるヘアピン形状のリードが鉄心の延在側で接続されて発生した磁界渦流相殺の模式図である。
【
図9】
図7のヘアピン形状のリードを別の視角から示す図面である。
【
図10】本発明の一実施例によるモータステータを鉄心の延在側の視角から示す拡大図面である。
【
図11】本発明の一実施例によるモータステータを鉄心の延在側の別の視角から示す拡大図面である。
【
図12】本発明の一実施例によるモータステータを鉄心の挿入側の視角から示す拡大図面である。
【
図13】本発明の別の実施例によるモータステータを鉄心の挿入側の視角から示す拡大図面である。
【
図14】本発明の2つの実施例によるモータステータの動作する場合の抵抗を示す比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の記述をより詳細化し充実させるためには、添付の図面及び下記に示す各種実施例を参照することができ、図面における同じ符号は同様または類似の素子を表す。一方、本発明に不要な制限を加えないように、周知の部品や工程は実施例に記述されていない。
【0011】
図1、
図2、
図3を同時に参照されたく、
図1、
図2はそれぞれ本発明の一実施例によるモータステータを2つの異なる視角から示す斜視図であり、
図3はモータステータの鉄心を示す斜視図である。モータステータ100は、基本的に、鉄心110及びそれに挿設される複数のヘアピン形状のリード(例えば、ヘアピン形状のリード120、130、140)等を備える。鉄心110は、ヘアピン形状のリードが挿入されて接続される複数のスロット112を有する。スロット112は、48個、60個又は120個であってよいが、本願はこれに限定されない。スロットの数は、モータステータの設計要求に応じて配置されてよく、設計の仕様限度内において、数多くのスロットを配置すれば、より高密度のリード配置が形成されて、リード同士の間の隙間が近くなるので、スロット数、スロット層、リードピンの折れ曲がる跨溝距離とリード同士の連結形態の何れもモータステータの設計に考慮しなければならない要素である。鉄心110は挿入側110a及びそれに対向する延在側110bを有し、つまり挿入側110aと延在側110bは鉄心110の2つの反対側である。各々のスロット112の鉄心110に対する径方向114において(例えば、鉄心の外側110dから内側110cへ)第1層112a、第2層112b、第3層112c、第4層112d、第5層112e及び第6層112fが定義される。鉄心110の径方向114は、実際的に、鉄心110の円周方向115に垂直である。
【0012】
本実施例において、ヘアピン形状のリード140の2つのピンがそれぞれこれらのスロット112の第1層112aと第2層112bに挿入され、ヘアピン形状のリード(120、130)がこれらのスロット112の第3層~第6層112c~112fに挿入される。鉄心110の延在側110bにおいて、ヘアピン形状のリード140のこれらのスロット112の第1層112a、第2層112bから突出した隣接するピンの末端が互いに接続して巻線を形成する。ヘアピン形状のリード(120、130)のこれらのスロット112の第3層~第6層(112c~112f)から突出した隣接するピンの末端が互いに接続して別の巻線を形成し、つまり複数のヘアピン形状のリード(120、130)の形成した巻線が互いに接続し、この部分については後で詳しく説明される。
【0013】
本実施例において、各々のスロットに6層のリードが収納されることを例としたが、本願は各々のスロットのリード収納層数を制限しない。
【0014】
図4、
図5、
図6を同時に参照されたく、
図4は本発明の一実施例によるヘアピン形状のリードを示す斜視図であり、
図5は
図4のヘアピン形状のリードの転向セクションUを示す拡大図であり、
図6は
図4のヘアピン形状のリードの一方のピンの末端を示す拡大図である。
【0015】
図4に2つのヘアピン形状のリード(120、130)が示され、ヘアピン形状のリード120がヘアピン形状のリード130の外側に貼り付けられ、2つのヘアピン形状のリード(120、130)が鉄心110に挿入される状態にもある。各々のヘアピン形状のリード120又は130の何れも、転向セクションUと、転向セクションUの両側に接続される2つのピンと、を含む。各々のピンは、傾斜セクションS、垂直セクションV及び末端セクションTを含む。各々のヘアピン形状のリードが前記の鉄心110のスロットに挿入される場合、垂直セクションVは鉄心110のスロット112内に没入し、傾斜セクションSは鉄心110の挿入側110aから露出し、末端セクションTは鉄心110の延在側110bから突出して露出する。
【0016】
図5を参照すると、ヘアピン形状のリード120は、対向する表面120a及び表面120bを有する。ヘアピン形状のリード130は、対向する表面130a及び表面130bを有する。ヘアピン形状のリード120がヘアピン形状のリード130の外側に貼り付けられ、つまり、ヘアピン形状のリード120の表面120bがヘアピン形状のリード130の表面130aに部分的に又は完全に接触する。
【0017】
各々のヘアピン形状のリード120又は130の何れも被覆する絶縁層を有し、例えば、
図6に示すように、ヘアピン形状のリード120は被覆する絶縁層120fを有し、ヘアピン形状のリード130は被覆する絶縁層130fを有する。各々のヘアピン形状のリードの2つのピンの末端が絶縁層から露出し、これにより、互いに電気的に接続し、例えば、ヘアピン形状のリード120のピンの末端120eが絶縁層120fから露出し、ヘアピン形状のリード130のピンの末端130eが絶縁層130fから露出し、これにより、互いの末端(120e、130e)を半田付けして電気的接続を形成する。各々のヘアピン形状のリード120又は130は、2つのピンの末端が絶縁層から露出する以外、他の何れの部分も絶縁層により被覆されるため、前記の表面120a、120b、130a、130bの何れも絶縁層の表面であり、表面120bと表面130aとの接触も絶縁層の表面同士の接触である。
【0018】
本実施例において(
図4参照)、ヘアピン形状のリード120がヘアピン形状のリード130の外側に貼り付けられるため、ヘアピン形状のリード120の2つのピンの末端の端面120hがそれぞれヘアピン形状のリード130の2つのピンの末端の端面130hに揃える場合、ヘアピン形状のリード120の全長は、実際的に、ヘアピン形状のリード130の全長よりも大きいが、本願はリードの全長を制限しない。
【0019】
図5を参照すると、各々のヘアピン形状のリード120とその貼り付けるヘアピン形状のリード130の何れも転向セクションUを有し、転向セクションUの箇所で、ヘアピン形状のリード120の折り曲げ角度がヘアピン形状のリード130の折り曲げ角度と異なる。具体的には、ヘアピン形状のリード120の転向セクションUの箇所での折り曲げ角度μは、ヘアピン形状のリード130の転向セクションUの箇所での折り曲げ角度θよりも大きい。
【0020】
図7A、
図7B、
図7Cを同時に参照されたく、
図7Aは本発明の一実施例によるヘアピン形状のリードが鉄心に挿入される様子を挿入側の視角から示す斜視図であり、
図7Bは
図7Aの領域の一部を示す拡大図であり、
図7Cは
図7Aのヘアピン形状のリードを鉄心の延在側の視角から示す図面である。本発明の実施例において、鉄心110のこれらのスロット112の第3層~第6層112c~112fに複数のヘアピン形状のリード120、130が挿入されることができる。各々のヘアピン形状のリード120、130と鉄心110におけるスロット112との位置関係を明確に示すように、ヘアピン形状のリード120、130を一本ずつ示す。各々のヘアピン形状のリード120の何れも対応するヘアピン形状のリード130の外側に貼り付けられる。
【0021】
各々のヘアピン形状のリード120は2つのピン120c、120dを有する。各々のヘアピン形状のリード120の一つのピン120cが鉄心110の挿入側110aからこれらのスロット112の第3層112cに挿入して鉄心110の延在側110bから突出して方向115aへ跨溝距離D1で折れ曲がる。各々のヘアピン形状のリード120の別のピン120dが鉄心110の挿入側110aからこれらのスロット112の第6層112fに挿入されて鉄心110の延在側110bから突出して方向115bへ跨溝距離D2で折れ曲がる。方向115aと方向115bとは、互いに反対する円周方向115である。跨溝距離D1と跨溝距離D2とは同じである。
【0022】
各々のヘアピン形状のリード130は、2つのピン130c、130dを有する。各々のヘアピン形状のリード130の1つのピン130cが鉄心110の挿入側110aからこれらのスロットの第4層112dに挿入されて鉄心110の延在側110bから突出して方向115aへ跨溝距離D1で折れ曲がる。各々のヘアピン形状のリード130の別のピン130dが鉄心110の挿入側110aからこれらのスロットの第5層112eに挿入されて鉄心110の延在側110bから突出して方向115bへ跨溝距離D2で折れ曲がる。
【0023】
鉄心110の挿入側110aにおいて、各々のヘアピン形状のリード120は、一方のピン120cの表面120a(1)が鉄心の外側110dに対向し、且つ別のピン120dの表面120a(2)が鉄心の内側110cに対向する。つまり、各々のヘアピン形状のリード120について言えば、その2つのピン(120c、120d)の同一表面が挿入側110aにおいてそれぞれ径方向114の2つの反対方向に対向する。
【0024】
鉄心110の挿入側110aにおいて、各々のヘアピン形状のリード130の1つのピン130cの表面130b(1)が鉄心の内側110cに対向し、且つ別のピン130dの表面130b(2)が鉄心の外側110dに対向する。つまり、各々のヘアピン形状のリード130について言えば、その2つのピン(130c、130d)の同一表面が挿入側110aにおいてそれぞれ径方向114の2つの反対方向に対向する。
【0025】
本発明の一実施例による各ヘアピン形状のリードが延在側110bで巻線を形成する様子を示す模式図である
図8Aを参照されたい。説明の便宜上、本実施例は、幾つかのヘアピン形状のリードのみを示す。図に示すように、各々のヘアピン形状のリード(120、130)のスロット112の第3層112c及び第4層112dから突出したピン(120c及び130c)は、その隣接するピン(つまり、対応する別のヘアピン形状のリード(120、130)の前記スロット112の第6層112f及び第5層112eから突出したピン(120d及び130d))に末端で接続(例えば、半田付けによる形態)されて、更に第1の巻線を形成する。つまり、同一のスロット112については、このスロットに挿入されるピン(120c、130c、120d、130d)が末端で接続される(例えば、位置J1又はJ2で接続される)ので、最後に、(
図2に示すように)ヘアピン形状のリード120とヘアピン形状のリード130とが互いに接続されて1つの巻線を形成する。
【0026】
本発明によるヘアピン形状のリードが鉄心の延在側で接続されて発生した磁界渦流相殺を示す模式図である
図8Bを併せて参照されたい。ヘアピン形状のリード120の2つのピン(120c、120d)がそれぞれスロット112の第3層112c及び第6層112fに挿入され、ヘアピン形状のリード130の2つのピン(130c、130d)がそれぞれスロット112の第4層112d及び第5層112eに挿入されるため、ヘアピン形状のリード120及び130の第3層112c及び第4層112dに挿入されたピン(120c、130c)の末端の接続箇所(例えば、半田箇所)の形成した磁界渦流T1の方向と、ヘアピン形状のリード120及び130の第6層112f及び第5層112eに挿入されたピン(120d、130d)の末端の接続箇所(例えば、半田箇所)の形成した磁界渦流T2の方向とは、反対であり、磁界渦流の相殺効果を達成し、更に渦流損失を低減することができる。
【0027】
図8Aに戻すと、各々のヘアピン形状のリード140のスロット112の第1層112aから突出したピン140aは、その近隣するピン(つまり、対応する別のヘアピン形状のリード140の前記スロット112の第2層112bから突出したピン140b)と末端で接続され(例えば、位置J3又はJ4で接続される)、更に第2の巻線を形成する。
【0028】
図7のヘアピン形状のリードを鉄心の延在側の別の視角から示す図面である
図9を参照されたい。ヘアピン形状のリード120がヘアピン形状のリード130の外側に貼り付けられるため、ヘアピン形状のリード120の転向セクションUでの表面120aは、その貼り付けるヘアピン形状のリード130の転向セクションUでの表面130aよりも、鉄心110の挿入側110aの表面から離れる。
【0029】
本発明の一実施例によるモータステータを鉄心の延在側の視角から示す拡大図面である
図10を参照されたい。一実施例において、各々のヘアピン形状のリード120の断面積C2と各々のヘアピン形状のリード130の断面積C3とは、同じである。別の実施例において、各々のヘアピン形状のリード120と各々のヘアピン形状のリード130との断面積の合計(C2+C3)は、各々のヘアピン形状のリード140の断面積C1以下である。また別の実施例において、各々のヘアピン形状のリード140の断面積C1は各々のヘアピン形状のリード120の断面積C2又は各々のヘアピン形状のリード130の断面積C3よりも大きいが、本願は各種のリード同士の間の断面積の大小関係を制限しない。
【0030】
本発明の一実施例によるモータステータを鉄心の延在側の別の視角から示す拡大図面である
図11を参照されたい。一実施例において、モータステータ構造は、これらのスロットの第1層112aと第2層112bとの間に位置する絶縁シート170を備え、つまり絶縁シート170が鉄心110の延在側110bから突出したこれらのヘアピン形状のリード140の隣接するピン(140a、140b)の間に位置する。別の実施例において、モータステータ構造は、これらのスロットの第4層112dと第5層112eとの間に位置する絶縁シート180を備え、つまり絶縁シート180が鉄心110の延在側110bのこれらのヘアピン形状のリード130の隣接するピン(130c、130d)の間に位置し、絶縁シート170又は絶縁シート180は隣接するリード同士に必要な絶縁特性を改善する。他の実施例において、モータステータ構造には、前記の絶縁シート170又は絶縁シート180が設けられなくてもよく、或いは絶縁シート170及び絶縁シート180が同時に設けられてもよく、或いは絶縁シート170及び絶縁シート180の一方のみが設けられてもよい。
【0031】
図12、
図13を同時に参照されたく、
図12は本発明の一実施例によるモータステータを鉄心の挿入側の視角から示す拡大図面であり、
図13は本発明の別の実施例によるモータステータを鉄心の挿入側の視角から示す拡大図面である。
図12に示すモータステータ100のこれらのヘアピン形状のリード(120、130、140)の鉄心に挿入されるこれらのスロットの形態は、
図1~
図11の実施例で説明された通りである。
図13に示すモータステータ101は、主に、これらのヘアピン形状のリード(121、131)の鉄心に挿入されるこれらのスロットの形態に、モータステータ100と異なり、ヘアピン形状のリード(121、131)も互いに貼り付けられるが、各々のヘアピン形状のリード121の1つのピンが鉄心のこれらのスロット112の第3層112cに挿入され、且つ別のピンが鉄心のこれらのスロット112の第5層112eに挿入され、各々のヘアピン形状のリード131の1つのピンが鉄心のこれらのスロット112の第4層112dに挿入され、且つ別のピンが鉄心のこれらのスロット112の第6層112fに挿入される。ヘアピン形状のリード141は、ヘアピン形状のリード140と類似しており、その2つのピンがそれぞれこれらのスロット112の第1層112aと第2層112bに挿入される。同様に、複数のヘアピン形状のリード141が互いに接続して第1の巻線となり、複数のヘアピン形状のリード121及び複数のヘアピン形状のリード131が互いに接続して第2の巻線となる。モータステータ101のこれらのヘアピン形状のリード(121、131)の鉄心に挿入されるこれらのスロットの形態がモータステータ100のこれらのヘアピン形状のリード(120、130)と異なるため、これらのヘアピン形状のリード(121、131)は、これらのヘアピン形状のリード(120、130)の大きな角度の転向セクションUを有しない。これらのヘアピン形状のリード(120、130)の大きな角度の転向セクションUにより、これらのヘアピン形状のリード(120、130)の最大リードピッチG1がこれらのヘアピン形状のリード(121、131)の最大リードピッチG2よりも大きくなり、モータステータ100全体の絶縁信頼性の改善に有利である。
【0032】
本発明の2つの実施例によるモータステータ100、101の動作する場合の抵抗を示す比較図である
図14を参照されたい。曲線L1は、モータステータ100が周波数400Hz~1200Hzの間で動作する場合の抵抗値の変化を表す。曲線L2は、モータステータ101が周波数400Hz~1200Hzの間で動作する場合の抵抗値の変化を表す。曲線L1、L2を比較すると、モータステータ100の高周波数での抵抗値がモータステータ101の抵抗値よりも著しく低いことが判明されるため、モータステータ100の高周波数での動作損失は、モータステータ101の動作損失より低い。更に言うと、モータステータ100の設計により、ヘアピン形状のリードが鉄心の延在側で接続して発生した磁界渦流を相殺することができる(
図8Bに示すように)ため、その等価インピーダンス値を効果的に低減させ、更にモータの動作する場合の損失を減少することができる。
【0033】
以上をまとめると、本発明は、前記2つのヘアピン形状のリードの鉄心のスロットの第3層~第6層への挿入形態、折れ曲げ形態及び巻線の並列接続の設計を利用することで、モータステータの巻線の高周波で動作する場合の抵抗値を低減し、高周波動作の場合の動作損失エネルギーを減少し、近隣するリード同士の最大ピッチを大きくすることができる。
【0034】
本発明は、実施形態として上記の通り開示したが、これは本発明を限定するものではない。当業者は、本発明の精神と範囲から逸脱しない限り、各種の変更や修正を加えることができる。従って、本発明の保護範囲は、添付する特許請求の範囲に限定されるものを基準とする。
【符号の説明】
【0035】
下記の添付の符号についての説明は、本発明の上記及び他の目的、特徴、メリットと実施例をより分かりやすくするためのものである。
100、101:モータステータ
110:鉄心
110a:挿入側
110b:延在側
110c:内側
110d:外側
112:スロット
112a:第1層
112b:第2層
112c:第3層
112d:第4層
112e:第5層
112f:第6層
114:径方向
115:円周方向
115a、115b:方向
120、121、130、131、140、141:ヘアピン形状のリード
U:転向セクション
120a、120b、120a(1)、120a(2)、130a、130b、130b(1)、130b(2):表面
120c、120d、130c、130d:ピン
120e、130e:末端
120f、130f:絶縁層
120h、130h:端面
170、180:絶縁シート
S:傾斜セクション
V:垂直セクション
T:末端セクション
D1、D2:跨溝距離
G1、G2:ピッチ
θ、μ:角度
C1、C2、C3:断面積
L1、L2:曲線
T1、T2:磁界渦流
J1、J2、J3、J4:位置