(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】進歩した多孔性炭素質材料およびそれらの調製方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/00 20170101AFI20221114BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20221114BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20221114BHJP
B01J 20/20 20060101ALI20221114BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20221114BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20221114BHJP
C08L 27/08 20060101ALI20221114BHJP
C08K 7/24 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
C01B32/00
B01J20/28 Z
B01J20/30
B01J20/20 A
B01D53/04 110
C01B32/50
C08L27/08
C08K7/24
(21)【出願番号】P 2019528496
(86)(22)【出願日】2017-11-17
(86)【国際出願番号】 EP2017079648
(87)【国際公開番号】W WO2018099739
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-10-16
(32)【優先日】2016-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591001248
【氏名又は名称】ソルヴェイ(ソシエテ アノニム)
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】フィンシー, ヴァンセント
(72)【発明者】
【氏名】デュボワ, エリック ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンデルヴェーケン, イヴ
(72)【発明者】
【氏名】シャポト, アグネス
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-145017(JP,A)
【文献】特開平06-063397(JP,A)
【文献】特表2004-529747(JP,A)
【文献】特開2001-089119(JP,A)
【文献】特開2010-095706(JP,A)
【文献】特開2001-058807(JP,A)
【文献】特開2001-110689(JP,A)
【文献】特開2001-114505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/991
B01J 20/00-20/28
B01J 20/30-20/34
B01D 53/04
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小孔およびマクロ孔を含む細孔を有する多孔性炭素質粒子(I)であって、15~100μmの範囲の、レーザー回折によって測定される平均径及び最大でも2.5のスパンを有する、多孔性炭素質粒子(I)。
【請求項2】
最大でも2.2のスパンを有する請求項1に記載の粒子(I)。
【請求項3】
少なくとも0.05cm
3/gの、Hgポロシメトリーによって測定される、マクロ孔容積および少なくとも800m
2/gのBET表面積を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の粒子(I)。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の粒子(I)の製造方法であって
、
- 粒子(II)を極低温凍結させる工程、
- 前記凍結粒子をすり潰し、それによって縮小サイズの粒子を得る工程
を含む、方法。
【請求項5】
130℃~210℃の範囲の融点を有する少なくとも1つの塩化ビニリデンポリマーを含む多孔性粒子(III)であって
、マクロ孔、20~140μmの範囲の、レーザー回折分析によって測定される平均径、および最大でも2のスパンを有し
、好ましくは、少なくとも0.05cm
3/gのHgポロシメトリーによって測定されるマクロ孔容積を有する粒子(III)。
【請求項6】
前記塩化ビニリデンポリマーがホモポリマーである、請求項5に記載の粒子(III)。
【請求項7】
請求項5または6に記載の粒子(III)の製造方法であって
、
- 塩化ビニリデンポリマーの粒子(IV)を極低温凍結させる工程、
- 前記凍結粒子(IV)をすり潰し、それによって縮小サイズの粒子を得る工程を含む、方法。
【請求項8】
請求項5または6に記載の粒子(III)の製造方法であって
、塩化ビニリデンを含む少なくとも1つのモノマーの、前記モノマーの総重量を基準として0.13重量%~1.50重量%の少なくとも1つのセルロース系分散剤の存在下でのフリーラジカル懸濁重合の工程を含む、方法。
【請求項9】
請求項5または6に記載の多孔性粒子(III)中に含まれる前記塩化ビニリデンポリマーの熱分解をもたらすことによる多孔性炭素質粒子の製造方法。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか一項に記載の粒子(I)の製造方法であって
、
- 請求項7または8に記載の方法によって多孔性粒子を製造する工程、
- 前記そのようにして製造された多孔性粒子中に含まれ
る塩化ビニリデンポリマー
の熱分解をもたらす工程
を含む、方法。
【請求項11】
多孔性炭素質モノリスの製造方法であって、
i - 請求項5または6に記載の粒子(III)を含む前駆体材料を調製する工程、
ii - 粒子(III)の凝集体を含む成形体(S)を形成する工程、
iii - 前記成形体を炉に導入する工程、
iv - 前記多孔性炭素質モノリスが得られるまで、前記炉中で前記塩化ビニリデンポリマー
の熱分解をもたらす工程
を含む方法。
【請求項12】
工程iiが、前記塩化ビニリデンポリマーがホモポリマーである場合、10~300バール、好ましくは10~150バール、前記塩化ビニリデンポリマーがコポリマーである場合、10~150バールの範囲の圧力Pと、T
1,min=20℃~T
1,max=T
m-50℃(ここで、T
mは、前記塩化ビニリデンポリマーの融点である)の範囲の温度T
1とを、金型に前もって導入された、前記前駆体材料に同時に加えることによって、成形体を形成することからなる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程ivが、
iv
a - 前記成形体の温度を、厳密にT
2,min=T
m-50℃よりも上の、かつ厳密にT
2,max=T
m(ここで、T
mは、先に定義されたとおりである)よりも下の温度T
2までにすること、
iv
b - 前記成形体を、不活性ガスフロー下に前記温度T
2に維持して、前記塩化ビニリデンポリマー
の熱分解および不溶融性チャーの形成をもたらすこと、
iv
c - 前記不溶融性チャーの温度を、厳密にT
3,min=T
m(ここで、T
mは、先に定義されたとおりである)よりも上の、かつ厳密にT
3,max=1300℃よりも下の温度T
3までにすること、
iv
d - 前記不溶融性チャーを、不活性ガスフロー下に、温度T
3に維持して、前記塩化ビニリデンポリマー
の熱分解をもたらし、それによっ
て多孔性炭素質モノリス構造体を得ること
を含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
請求項5または6に記載の粒子(III)の凝集体を含む成形体(S)であって、前記成形体がマクロ孔を有する成形体(S)。
【請求項15】
請求項1、2または3に記載の炭素質粒子(I)の凝集体を含む多孔性炭素モノリス。
【請求項16】
少なくとも0.12cm
3/gのHgポロシメトリーによって測定される全マクロ孔容積を有し、少なくとも800m
2/gのBET表面積を有することを特徴とする、請求項15に記載の多孔性炭素質モノリス。
【請求項17】
ハニカム構造を有することを特徴とする、請求項15または16に記載の多孔性炭素質モノリス。
【請求項18】
CO
2ガスを選択的に吸着することによってガス組成物からCO
2を抽出するための請求項15~17のいずれか一項に記載の多孔性炭素質モノリスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年11月30日出願の欧州特許出願第16201571.3号に対する優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、多孔性炭素質粒子および塩化ビニリデンポリマーを含む多孔性粒子ならびにそのような粒子の製造方法に関する。それはまた、微小孔およびマクロ孔を含む細孔を有する、ハニカム構造を有しても有さなくてもよい、多孔性炭素質モノリスならびにそのようなモノリスの製造方法にも関する。本発明は、塩化ビニリデンポリマーを含む粒子の凝集体を含む成形体の製造に関する。それは最後に、CO2ガスを選択的に吸着することによってガス組成物からCO2を抽出するための多孔性炭素質モノリスの使用に関する。
【0003】
精製のための固体吸着剤の使用が、蒸留、液体ベースの吸収プロセスまたは抽出プロセスなどの従来プロセスよりも経済的、エネルギー的および生態学的利点を提供し得ることは一般に認められている。分離技術の2~3の例としては、圧力スイング吸着(PSA)、温度スイング吸着(TSA)、真空スイング吸着(VSA)、電気スイング吸着(ESA)ならびに真空および温度スイング吸着の組み合わせ(VTSA)または真空および圧力スイング吸着の組み合わせ(VPSA)が挙げられる。PSAおよびTSAは両方とも商業的に利用可能な技術であり、工業界において広く用いられているけれども、非常に大量のフィード流れ容積が処理される必要があるプロセスでの吸着技術の適用は、依然として困難だがやりがいのあるままである。これは、煙道ガスおよび天然ガスなどのCO2含有フィード流れからのCO2の捕獲および精製について特に当てはまる。
【0004】
TSAは、低温での一成分の選択的吸着のための第1工程と、吸着剤の温度上昇が気相中の吸着成分のモル分率の増加、それ故に生成物流れの精製に関与する第2工程とを含む。TSAプロセスを実行可能にするために、吸着、再生、および冷却工程によって吸着剤を迅速にサイクルすることができる、高速温度スイング吸着(RTSA)プロセスが必要とされている。
【0005】
薄壁寸法が迅速な加熱および物質移行を可能にする、中空繊維、ラミネートおよびハニカムなどの高アスペクト比構造体への吸着剤の組み立てが、前途有望である。一般に、相互接続したおよび分岐したマクロ多孔性流路を持った、モノリスのような、構造化吸着剤は、従来のビーズおよび顆粒と比べて性能の点で優れている。
【0006】
多孔性炭素は、水処理、大気浄化またはガス貯蔵などの多くの用途に吸着剤として使用されてきた。
【0007】
ガス吸着用の、より具体的にはCO2吸着用の多孔性炭素質材料の分野において、吸着されるCO2の量が、高い割合に関して、微小孔の存在のためであることはよく知られている。
【0008】
別の重要なパラメータは、粒子の多孔性ネットワークを通ってのCO2拡散である。
【0009】
さらに、高速サイクリングプロセスにおける高い吸着および脱着速度論のための重要なパラメータである、ガスの効率的な物質移行を確実にするために、高度に結び付いたマクロ多孔性ネットワークが、微小孔性ネットワークを供給するために必要とされる。実際に、これまで、多くの努力が、階層的な多孔性材料を創出するために充てられてきた。一般に、メソ細孔のみが微小孔性材料中へ導入されてきており、これらのメソ細孔の存在が、材料を高速吸着/脱着プロセスに使用するのに十分に吸着および脱着速度論を増加させなかったことが実証されている。
【0010】
高い物質移行のための別の重要な態様は、高アスペクト比構造体への吸着剤の組み立てである。この理由により、モノリスおよびハニカムが非常に望ましい。低い壁厚を有するモノリスおよび/またはハニカム構造体がさらにより望ましい。実際に、低い壁厚は、高い物質移行および伝熱にとって明らかな利点を与えるはずである。
【0011】
炭素モノリスは、多孔性炭素粉末をバインダーと混合することによって、および結果として生じた混合物をプレスして適切な形状にすることによって一般に製造される。例として、米国特許第6,284,705号明細書は、活性炭粒子と有機バインダーとセラミック形成材料との混合物の押出によって製造される炭素質ハニカムモノリスに関する。これらの混合物に、安定剤、加工助剤が任意選択的に添加される。押出後に、モノリスは、有機バインダーの炭化と、多孔性炭素粒子を封入するセラミックコーティングの形成とを誘導するために高温にされる。この経路に使用されるバインディング成分は、ポロシティへのアクセスを阻止し得、結果として生じるモノリス中の炭素含有量の希釈に関与する。とりわけセラミック材料の場合には、分離用途に不可欠である、ガスを吸収する容量が、それによって希薄化される。
【0012】
様々な前駆体の不活性雰囲気下での炭化が、効率的な炭素質材料を生成すると考えられてきた。一般に、材料を多孔性炭素として使用できるように表面積を高めるために、炭化に、酸化雰囲気での活性化工程が続く。
【0013】
塩化またはフッ化ビニリデンポリマーの炭化は、そのようなポリマーの熱分解が、触媒投入のいかなる必要もなしに引き起こされるので、そして結果として生じた炭素質材料が所望の孔隙率を生成するためのいかなる活性化工程をも必要としないので有利なプロセスである。塩化およびフッ化ビニリデンポリマーは両方とも、多孔性炭素質構造体の前駆体としての良好な候補であり得るが、塩化ビニリデンが、その分解がフッ化ビニリデンほど厳しい温度を必要としないので、かつ、その熱分解が、フッ化水素よりも取り扱うのが容易である塩酸を生成するので一般に好ましい。
【0014】
多孔性炭素質材料の前駆体としての塩化ビニリデンポリマーは、文書で十分に裏付けされている。しかしながら、少ない公文書が、そのようなポリマーから出発する炭素モノリスの製造を取り扱っているにすぎない。それらの中で、国際公開第2015/109381号パンフレットは、PVDC粒子とPVDCラテックスとを混合することによる、引き続き比較的低い温度で真空下に乾燥させることによるポリ塩化ビニリデン(PVDC)モノリスの製造を開示している。結果として、乾燥ラテックスは、粒子用のバインダーとして働くモノリスにおけるPVDC粒子の凝集力を確実にする。PVDCモノリスは次に、ゆっくりした速度で温度を上げることによって加熱され、こうして炭素質材料を与えるために金型中で不活性雰囲気下に段階的に熱分解される。この方法は、バインダーと粒子とが同じ化学的性質のものであるという、かつ、その結果として、それらが炭素質材料を与えるために同じ分解経路に当然従うだろうという利点を有する。しかしながら、前記バインダーが結果として生じる炭素質モノリスのポロシティへのアクセスを阻止する良いチャンスがある。さらに、粒子の直径は、薄壁のモノリスの製造を可能にするには余りにも大きい。
【0015】
米国特許出願公開第2013/0298769号明細書は、選択的CO2捕獲に好適なデバイスを製造するためのPVDCから得られる炭素質材料の使用を開示している。この発明について、PVDCは、ばらばらの粒子の形態下でまたはモノリスの形態で熱分解される。任意選択的に、活性化工程が、所望の多孔性構造体を得るために行われる。多孔性炭素質材料を調製するために用いられる正確な手順は、明らかに記載されておらず、モノリスのマクロ多孔性に関してこの公文書には何も言われていない。その上、ばらばらの粒子の直径に関して、またはモノリスの壁の厚さに関して何も言われていない。
【0016】
米国特許出願公開第2004/0107838号明細書において、PVDC粒子は、ガス/流体貯蔵ができるデバイスの製造に有用な多孔性モノリスを与えるために炭化される前にプレス成形される。この手順によれば、用いられる圧力は、最終多孔性炭素質モノリスのマクロ多孔性に害を及ぼす、600バールを超えている。さらに、米国特許出願公開第2004/0107838号明細書は、モノリスな壁の厚さに関して沈黙している。
【0017】
低い壁厚を有する炭素質モノリスの製造は、前記壁厚よりも下の平均径を有する、塩化ビニリデンポリマーを含む多孔性粒子の製造を必要とする。
【0018】
米国特許第2,609,150号明細書は、PVDCがそれらの中の1つである、冷凍プラスチックの機械的微粉化方法を記載している。材料片は、液体冷媒の噴霧によって冷却され、それらのサイズは、衝撃型微粉化ミルによって縮小される。この方法は、これらの片の孔隙率を記載していないし、この公文書は、結果として生じた粉末の孔隙率に関して沈黙している。PVDC粒子の、多孔性炭素質材料への変換に関して何も言われていない。
【0019】
米国特許第2,968,651号明細書は、制御された粒径の塩化ビニリデンコポリマーの水性調製方法を記載している。少量の、モノマーの重量を基準として典型的には0.01重量%~0.06重量%のメチルヒドロキシプロピルセルロースの場合に、大部分は150μmよりも上の直径の粒子が得られる。より小さい粒径を得るための方法に関して何も言われていない。この公文書は、粒子の孔隙率に関して沈黙しており;それはまた、塩化ビニリデンポリマー粒子の、多孔性炭素質材料への変換に関しても沈黙している。
【0020】
最後に、米国特許出願公開第2002/0025290号明細書および米国特許第6,294,501号明細書は、塩化ビニリデンの懸濁液でのフリーラジカル重合によるPVDC粒子の合成を記載している。これらの粒子の氷の存在下でのすり潰しは、ペレットへさらに造形される新しい粒子を与える。前記ペレットは次に、数ミリメートルの範囲の寸法を有する多孔性炭素質物体を与えるために熱分解される。重合後に得られたPVDCの粒径は、反応条件に応じて20~400μmまたは200~800μmの範囲にある。これらの粒径は、低い壁厚を有する炭素質モノリスの製造などのいくつかの用途向けには余りにも大きい。すり潰し後に得られたPVDCの粒径は、明らかに縮小している。しかしながら、米国特許出願公開第2002/0025290号明細書に提供される粒度分布図によれば、すり潰されたPVDCは、サイズの観点から粒子の幾つかの集団を含む。余りにも大きい粒子のおよび、同時にまたは同時にではなく、余りにも細かい粒子の存在は、いくつかの用途に害を及ぼし得る。さらに、PVDC粒子の大きい粒度分布は、それらの熱分解から生じた炭素質粒子の大きい粒度分布に間違いなく関与するはずである。両公文書とも、炭素質粒子のサイズ、ミクロ多孔性およびマクロ多孔性に関して、ならびに炭素質物体のマクロ多孔性に関して沈黙している。
【0021】
上記全てに従って、本出願人は、精製のための固体炭素質吸着剤のドメインにおけるいくつかのニーズを特定した。
【0022】
高速サイクルで動作する吸着および脱着プロセスの開発が必要とされている。
【0023】
これらのプロセスに好適な吸着剤粒子の、およびモノリス吸着剤構造体の開発が必要とされている。
【0024】
粒子を含む炭素質モノリス構造体であって、前記粒子が、ガスの改善された選択的吸着のためのミクロ多孔性と、前記ガスのおよび/または前記ガスを含むガス混合物の高められた物質移行のためのマクロ多孔性とを示す構造体が必要とされている。
【0025】
これらの構造体のアスペクト比を改善するための薄壁を有する、それによって分離用途において迅速な加熱および物質移行を可能にする多孔性炭素質モノリスおよびハニカムモノリスが必要とされている。
【0026】
全てのこれらのニーズおよびその他を満たすための前提条件は、低い平均径を有し、高いCO2拡散容量を有し、かつ、選択的CO2容量を有する多孔性炭素質粒子であって、低い壁厚およびCO2に対して類似の挙動を有するモノリスを調製するのに好適である炭素質粒子の開発である。
【0027】
この前提条件は、微小孔およびマクロ孔を含む細孔を有する多孔性炭素質粒子(I)であって、前記多孔性炭素質粒子(I)が、15~100μmの範囲の、レーザー回折によって測定される、平均径を有する炭素質粒子によって有利に満たされる。
【0028】
当業者に早期に知られているように、本発明の背景である、ポリマーの熱分解によって得られた材料を使用するガス吸着との、より具体的にはCO2吸着との関連で、炭素質材料は、本質的にまたは完全に炭素からなる材料として、すなわち、炭素以外のいかなる他の元素をも実質的に含まないまたは完全に含まない材料として理解される。
【0029】
したがって、本発明による炭素質粒子は、一般に少なくとも90重量%の、好ましくは少なくとも95重量%の、より好ましくは少なくとも98重量%の、さらにより好ましくは少なくとも99重量%の炭素からなる。
【0030】
有利には、前記粒子(I)の少なくとも80容積%、好ましくは少なくとも85容積%、より好ましくは少なくとも90容積%は、5~150μmの範囲の、レーザー回折分析によって測定される、直径を有する。
【0031】
一般に、前記粒子(I)の少なくとも65容積%、好ましくは少なくとも70容積%、より好ましくは少なくとも75容積%、さらにより好ましくは少なくとも80容積%は、5~120μmの範囲の直径を有する。
【0032】
その上、粒子(I)のスパンは有利には最大でも2.5のものである。好ましくは、それは最大でも2.2のものであり;より好ましくは、それは最大でも1.5のものであり;さらにより好ましくは、それは最大でも1のものである。
【0033】
炭素(C)試料の粒度分布は、Beckman Coulter LS230機器でのレーザー回折によって測定される。この機器は、0.04~2000μmの液体中の懸濁粒子のサイズ分布の測定を可能にする。C試料のために使用される液体は2-プロパノールである。粉末は、機器へ供給される前に2-プロパノール中に懸濁され、手動により振盪される。レーザー回折は、レーザービーム(波長=750nm)が分散微粒子試料を通過するときに散乱される光の強度の角度変動を測定することによって粒度分布を提供する。大きい粒子は、レーザービームに対して小さい角度で光を散乱させ、小さい粒子は、より大きい角度で光を散乱させる。角散乱強度データは次に、C試料の場合にはFraunhofer(フラウンホーファー)回折理論を用いて、散乱パターンを生み出すことに関与する粒子のサイズを計算するために解析される。粒径は、等体積球対応径として報告される。3つの測定結果(90秒)が、連続して記録され、これらの3つの測定結果の間に大きな変化が全くない場合には、第3解析の結果が報告される。報告される結果は、容積加重粒度分布(容積%、ヒストグラムおよび累積曲線)、平均および中央(D50)径である。平均径D(50)は、試料の50%がそれよりも小さく、50%がそれよりも大きいミクロン単位でのサイズである。必要ならば、粒子のいくつかの凝集体を壊すために、内部超音波処理(1分)が、機器への懸濁液に適用される。各試料について、スパンは、
(式中、D(10)は、分布の容積単位での累積曲線上で、粒子の10%がそれよりも小さいサイズであり、D(90)は、粒子の90%がそれよりも小さいサイズである)
を適用して計算され得る。
【0034】
分布が狭ければ狭いほど、スパンはより小さくなる。ガス吸着のために、微小孔の存在が必要とされることはよく知られているが、高度に結び付いたマクロ多孔性ネットワークが、微小孔性ネットワークを供給するために、およびガスの効率的な物質を移行確実にするために非常に望ましい。International Union of Pure and Applied Chemistry(国際純正応用化学連合)(IUPAC)によって提供される定義によれば、微小孔は、2nmよりも下の幅を有し、そして一方、メゾ細孔は2nm~50nmの範囲の幅を有し、マクロ孔は、50nmよりも上の幅を有する。
【0035】
水銀ポロシメトリーが、粒子(I)のマクロ多孔性特性を測定するために用いられる。測定は、Micromeritics Autopore 9520ポロシメーターNo.10で行われる。測定は、2バール以下の真空で始まり、1から2000バールまでの測定がこれに続く。生成物の試料サイズは、膨張計の測定範囲を考慮して、および毛管容積の30~50%を消費するために選択される(約500~700mg)。Type CD3P 35ml容積粉末膨張計が用いられる。試料は、真空中150℃で乾燥させられ、素早く膨張計に移され、膨張計は次に閉じられる。その後、1h、1ミリバール未満まで真空に引かれる。計算は、接触角130°および485ダイン/cmの表面張力および約25℃での正確なHg温度依存密度を使って行われる。
【0036】
本出願人は、本発明による炭素質粒子(I)が、有利には0.1μm~10μm、より有利には0.5μm~8μm、さらにより有利には0.8μm~3μmの範囲の、Hgポロシメトリーによって測定される、平均径を有するマクロ孔を有することを見いだした。
【0037】
好ましくは、マクロ孔の少なくとも75容積%、より好ましくは少なくとも80容積%、さらにより好ましくは少なくとも85容積%は、0.1μm~10μmの範囲の直径を有する。
【0038】
良好な結果は、Hgポロシメトリーによって測定される、粒子(I)のマクロ孔容積が少なくとも0.05cm3/gの、好ましくは少なくとも0.10cm3/gの、より好ましくは少なくとも0.20cm3/gの、さらにより好ましくは少なくとも0.25cm3/gのものである場合に得ることができる。その上、粒子(I)のマクロ孔容積は、一般に0.5cm3/gを超えない。
【0039】
本発明による多孔性炭素質粒子(I)は、ミクロ多孔性を示している。ミクロ多孔性は、N2ポロシメトリーによって測定される。N2吸着等温線は、ASAP 2020 Micromeritics機器を用いて測定される。比表面積(SBET)は、ISO 9277:2010ノルム(Determination of the specific surface area of solids by gas adsorption-BET method-Annex C: Surface area of microporous materials)に従って測定される。BETモデルが適用されてきた相対圧力、P/P0領域は、C定数が正値を有するように選択される。細孔径および細孔径分布は、細孔のようなスリットを仮定する、Density Functional Theory(密度関数理論)を用いて計算される(DFTによる炭素スリット細孔、正則化0.003)。
【0040】
効率的なガス吸着を確実にするために、本出願人は、本発明による粒子(I)が少なくとも800m2/gのBET表面積を有することが有利であり、少なくとも900m2/gのものがより有利であり、少なくとも1000m2/gのものがさらにより有利であることを見いだした。
【0041】
好適な粒子(I)は、一般に少なくとも0.15cm3/gの、好ましくは少なくとも0.25cm3/gの、より好ましくは少なくとも0.30cm3/gの、さらにより好ましくは少なくとも0.35cm3/gの、N2吸着によって測定される、微小孔容積を有する。その上、粒子(I)は、0.8cm3/gを超えない微小孔容積を有する。
【0042】
本発明による粒子は、CO2を選択的に吸着するために好適である。多孔性炭素質粒子(I)の動的および選択的CO2容量は、CO2およびN2(容積で15/85)を含有するガス流れが一定流量で試料に供給される実験によって測定され得る。純ガス全ての流量は、マスフローコントローラーによって調節される。試料出口は、実験の全体継続時間にわたってArおよびCO2濃度をオンライン測定する、質量分析計に接続される。各実験の前に、試料は、周囲温度でまたは120℃で純N2流れ(分離実験の流量に等しい)中で活性化される。粒子は、実験セットアップでの据え付け前に110℃で真空下に一晩乾燥させられる。全ての分離実験は、室温(約21℃)および50Nml/分の全流量で行われる。システム無駄時間を測定するために、トレーサーガス流れ(5Nml/分のAr)が、CO2/N2ガス流れに添加される。粒子に関する実験は、0.5~0.9gの吸着剤を詰め込んだ、約10cmの長さおよび0.6cmの内径のカラムを用いて行われる。
【0043】
選択的CO
2容量、Q
CO2は、実験曲線の積分によって計算される。
【0044】
ここで、q0’およびqt’はそれぞれ、時間ゼロでのカラム入口および時間tでのカラム出口での質量流量である。時間ゼロは、非吸着トレーサーフロー(Ar)をフィード流れに注入することによって実験的に決定される。時間ゼロは、Ar実験曲線がその最大高さの半分に達する時間として選択される。
【0045】
本発明による炭素質粒子(I)は、一般に少なくとも25mg/gの、有利には少なくとも28mg/gの、より有利には少なくとも30mg/gの選択的CO2容量QCO2を有する。
【0046】
多孔性炭素質粒子上へのCO2拡散率は、Analysis and Interpretation of Zero Length Column Response Curve,Chemie Ingenieur Technik,2013.85(11):p.1714-1718にBandaniおよびRutvenによって記載される、ゼロ長さカラムクロマトグラフィー法で測定される。この方法では、多孔質媒体中のソルベートの拡散率は、前もって平衡化させた吸着剤の試料から不活性キャリア流れへのこのソルベートの脱着によって測定される。
【0047】
多孔性炭素質粒子の小試料(3~5mg、1/8インチのSwagelockユニオンの内部で2つの金属フリット間に固定された)が、室温および一定流量でHe中のCO2(12/88)の希薄ガス流れで飽和させられる。ガス混合物は、純CO2およびHeガス流れを混合することによってその場生成する。流量は、マスフローコントローラーによって制御される。飽和前に、試料は、He(15ml/分)中150℃で10分間活性化される。時間0で、カラムは、一定流量での不活性キャリアガス(He)でフラッシュされる。カラム出口で、CO2濃度が、質量分析計で測定される。
【0048】
有効粒子拡散率、D
e,pは、次の方程式を使って脱着曲線(ln c/co対t)の長期漸近線の線形フィッティングから計算することができる:
ここで、cおよびc
oは、それぞれ、時間tおよびゼロでのCO
2の濃度である。Rは粒子半径である。β
1
2およびLは定数である。
【0049】
Lは、システムのウォッシュアウト速度と、拡散時間定数との間の比である:
ここで、F、KおよびV
sはそれぞれ、パージ流量、無次元平衡定数および吸着剤容積である。
【0050】
Lは、脱着曲線(ln c/co対t)の切片で求められ、高いL(L>10)について、β1
2は常におよそπに等しい。長期漸近線のフィッティング状況は、-5および-7または-6および-8ln(C/Co)である。
【0051】
システムが速度支配下にあること、従って方程式(1)の妥当性を確実にするために、脱着曲線(ln(C/Co)対Ft(ここで、Ftは、瞬間tにおけるml単位での溶出体積である))が、異なる流量(64、118および202ml/分)で測定される。曲線が収束する場合、システムは平衡にある。曲線が発散する場合、システムは速度支配下にある。方程式(1)は、システムが速度支配下にある場合に妥当であるにすぎない。
【0052】
一般に、粒子(I)のCO2拡散率または拡散定数は、少なくとも1.10-12m2/秒、有利には少なくとも3.10-12m2/秒、より有利には5.10-12m2/秒、さらにより有利には7.10-12m2/秒である。その上、CO2拡散率は通常、最大でも5.10-10m2/秒である。
【0053】
いくつかの実施形態において、多孔性粒子(I)は、1.4~1、いくつかの好ましい実施形態において1.2~1、いくつかのより好ましい実施形態において1.1~1の範囲の平均アスペクト比を有する。アスペクト比は、当業者に周知の方法によって測定することができる。単に例のために、それは、SEM画像解析によって測定することができる。粒子のアスペクト比は、その最大Feret(フェレー)径対その垂直Feret径の比に対応し、したがって、粒子が球形である場合、それは1に等しい。
【0054】
微小孔およびマクロ孔を含む細孔を有する多孔性炭素質粒子(II)のサイズの縮小方法であって、前記粒子(II)が、150μm~800μmの範囲の、レーザー回折分析によって測定される、平均径を有し、前記方法が、
- 粒子(II)を極低温凍結させる工程、
- 凍結粒子をすり潰し、それによって縮小サイズの粒子を得る工程
を含む方法を提案することが本発明の別の目的である。
【0055】
例として、粒子(II)は、極低温流体の噴霧によって凍結させられ得る。極低温流体は、好ましくは液体ヘリウム、液体窒素またはそれらの混合物である。それは、より好ましくは液体窒素である。
【0056】
凍結粒子(II)のすり潰しは、媒体の存在下でまたは不在下で行われ得る。
【0057】
媒体の存在下での凍結粒子(II)のすり潰しは、好ましくはボールミルで行われるが、ビーズミル、磨砕機ミル、サンドミル、水平ミル、垂直ミルおよび振動ミルなどの媒体の存在下で動作する任意の他のすり潰しデバイスが用いられてもよい。
【0058】
凍結粒子(II)の媒体なしのすり潰しは、好ましくはハンマーで行われるが、ジョークラッシャー、ジェットミルまたはマイクロフルイダイザーなどの任意の他の媒体なしすり潰しデバイスが用いられてもよい。
【0059】
凍結粒子(II)のすり潰しは、好ましくは媒体の存在下で行われる。
【0060】
好ましい実施形態において、縮小サイズの得られる粒子は、前に記載されたような粒子(I)である。
【0061】
炭化による粒子(I)の製造のための前駆体粒子として使用され得る多孔性粒子(III)を開示することが本発明の目的である。
【0062】
いくつかの実施形態において、多孔性粒子(III)は、1.4~1、いくつかの好ましい実施形態において1.2~1、いくつかのより好ましい実施形態において1.1~1の範囲の平均アスペクト比を有する。したがって、本発明はまた、ある融点を有する少なくとも1つの塩化ビニリデンポリマーを含む多孔性粒子(III)であって、前記粒子が、マクロ孔、一般に20~140μmの範囲の、レーザー回折分析によって測定される、平均径および最大でも2のスパンを有する粒子にも関する。好ましくは、粒子(III)は、40~120μmの範囲の、より好ましくは50~100μmの範囲の平均径を有する。
【0063】
その上、粒子(III)のスパンは、有利には最大でも2のものである。好ましくは、それは、最大でも1.5のものであり;より好ましくは、それは最大でも1.2のものであり;さらにより好ましくは、それは最大でも1のものである。
【0064】
本出願人は、前記粒子(III)の少なくとも80容積%、好ましくは少なくとも85容積%、より好ましくは少なくとも90容積%が、5~200μmの範囲の、レーザー回折分析によって測定される、直径を有することが有利であることを見いだした。
【0065】
良好な結果は、前記粒子(III)の少なくとも65容積%、好ましくは少なくとも70容積%、より好ましくは少なくとも75容積%が、5~160μmの範囲の、レーザー回折分析によって測定される、直径を有する場合に得ることができる。
【0066】
本発明による粒子(III)のマクロ多孔性は、それらの炭化から生じるであろう炭素質粒子のマクロ多孔性を予測するための重要な特徴である。
【0067】
粒子(III)のマクロ孔の少なくとも70容積%、好ましくは少なくとも75容積%、より好ましくは少なくとも80容積%は、0.01μm~10μmの範囲の、Hgポロシメトリーによって測定される、直径を有する。
【0068】
良好な結果は、Hgポロシメトリーによって測定される粒子(III)のマクロ孔容積が、少なくとも0.05cm3/gの、好ましくは少なくとも0.08cm3/gの、より好ましくは少なくとも0.15cm3/gの、さらにより好ましくは少なくとも0.2cm3/gのものである場合に得られる。その上、粒子(III)のマクロ孔容積は、一般に0.5cm3/gを超えない。
【0069】
塩化ビニリデンポリマーを含む、粒子(III)の孔隙率はまた、前記ポリマーによって吸収される可塑剤の量で特徴付けられ得る。塩化ビニリデンポリマーを含む粒子については、孔隙率は、重量%単位で表される吸収されたジ-イソ-ノニルフタレート(DINP)の量で特徴付けられ得る。この目的のために、粒子は、底部に0.8mm開口部を含有する、円錐底部(90°)のステンレス鋼遠心分離管に移され、大過剰(試料の質量の約2倍)のジ-イソノニルフタレート(DINP)が添加される。室温で15分の吸収後に、過剰のDINPが、30分間3200gでの遠心分離によって除去される。粒子によって吸収されたDINPの量は、遠心分離管に導入された粒子の総重量の重量パーセント単位で表される。
【0070】
一般に、粒子(III)によるDINP吸収は、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも8重量%、より好ましくは少なくとも10重量%、さらにより好ましくは少なくとも14重量%である。その上、粒子(III)によるDINP吸収は、一般に26重量%を超えない。
【0071】
本発明者らは、粒子(III)において前記少なくとも1つの塩化ビニリデンポリマーが塩化ビニリデンホモポリマー、または塩化ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸、アルキルアクリレート、メタクリル酸およびアルキルメタクリレートからなる群から一般に選択される少なくとも1つのモノマーに由来する繰り返し単位を含む塩化ビニリデンコポリマーであり得ることが有利であることを見いだした。
【0072】
塩化ビニリデンポリマーがコポリマーである場合;それは有利には、塩化ビニルまたはアルキルアクリレートに由来する繰り返し単位を含むコポリマーである。
【0073】
塩化ビニリデンコポリマーが、アルキルアクリレートに由来する繰り返し単位を含む場合、このアルキルアクリレートは、好ましくはブチルアクリレートまたはメチルアクリレートであり;より好ましくはそれはメチルアクリレートである。
【0074】
本発明に好適な上述の塩化ビニリデンポリマーは好ましくは、対応する(コ)モノマーのフリーラジカル(共)重合によって得られる。
【0075】
本著者は、好適な塩化ビニリデンコポリマーが、繰り返し単位の合計に関して、少なくとも55%の塩化ビニリデンに由来する(好ましくは塩化ビニリデンのフリーラジカル重合から生じる)繰り返し単位を含むことが有利であり、少なくとも65%がより有利であり、少なくとも75%がさらにより有利であることを見いだした。当業者が理解するであろうように、百分率(%)はモル百分率である。
【0076】
最も好ましくは、塩化ビニリデンポリマーは、塩化ビニリデンホモポリマーである。
【0077】
ポリマーの融点は、吸熱のピーク温度を用いる示差走査熱量測定法によって測定され得る。
【0078】
塩化ビニリデンポリマーの融点は、前記ポリマーの組成に依存する。一般に融点は、130℃~210℃の範囲である。
【0079】
塩化ビニリデンポリマーが塩化ビニリデンホモポリマーである場合、融点は、一般に165℃~210℃の範囲である。
【0080】
本発明による粒子(III)は、塩化ビニリデンポリマーは別として、分散剤、充填材、可塑剤…などの任意の他の成分を含んでもよい。
【0081】
一般に、粒子(III)の総重量に関して塩化ビニリデンポリマーの含有量は、少なくとも65重量%である。それは、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、さらにより好ましくは少なくとも95重量%である。その上、本著者らは、塩化ビニリデンポリマーから本質的になる粒子(III)を使用することが有利であり、塩化ビニリデンポリマーからなる粒子を使用することがより有利であることを見いだした。
【0082】
本発明の別の態様は、炭化による粒子(I)の製造に好適な前駆体粒子(III)の調製からなる。したがって、本発明の目的は、マクロ孔を有する多孔性粒子(IV)のサイズの縮小方法であって、前記粒子(IV)が、ある融点および170μm~800μmの範囲の、レーザー回折分析によって測定される、平均径を有する少なくとも1つの塩化ビニリデンポリマーを含み、前記方法が、
- 塩化ビニリデンポリマーの粒子(IV)を極低温凍結させる工程、
- 凍結粒子(IV)をすり潰し、それによって縮小サイズの粒子を得る工程
を含む方法である。
【0083】
塩化ビニリデンポリマーは、塩化ビニリデンホモポリマーであっても、前に記載されたような塩化ビニリデンコポリマーであってもよい。
【0084】
本発明による粒子(IV)は、塩化ビニリデンポリマーは別として、分散剤、充填材、可塑剤…などの任意の他の成分を含んでもよい。
【0085】
一般に、粒子(IV)の総重量に関して塩化ビニリデンポリマーの含有量は、少なくとも65重量%である。それは、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、さらにより好ましくは少なくとも95重量%である。その上、本著者らは、塩化ビニリデンポリマーから本質的になる粒子(IV)を使用することが有利であり、塩化ビニリデンポリマーからなる粒子を使用することがより有利であることを見いだした。
【0086】
塩化ビニリデンポリマーの粒子(IV)の極低温凍結は、一般に塩化ビニリデンポリマーの延性-脆性遷移温度よりも下の温度で行われる。延性-脆性遷移温度は有利には、示差走査熱量測定法によって測定される。
【0087】
例として、粒子(IV)は、極低温流体の噴霧によって凍結させられ得る。極低温流体は、好ましくは液体ヘリウム、液体窒素またはそれらの混合物である。それは、より好ましくは液体窒素である。
【0088】
凍結粒子(IV)のすり潰しは、粒子(II)のすり潰しについて前に記載されたように媒体の存在下でまたは不在下で行われ得る。
【0089】
凍結粒子(IV)のすり潰しは、好ましくは媒体の存在下で、より好ましくはボールミルで行われる。
【0090】
単に例として、良好な結果は、Solvay Specialty Polymersによって商業化されている、塩化ビニルまたはメチルアクリレート部分を含む、IXAN(登録商標)PV708、IXAN(登録商標)PV919およびIXAN(登録商標)PV925塩化ビニリデンコポリマーが多孔性粒子(IV)として使用された場合に得られた。
【0091】
好ましい実施形態において、縮小サイズの得られた多孔性粒子は、前に記載されたような粒子(III)である。
【0092】
本発明の別の目的は、炭化による粒子(I)の製造のための前駆体粒子の調製を考慮して、マクロ孔を有する多孔性粒子の製造方法であって、前記粒子が、ある融点を有する塩化ビニリデンポリマーを含み、前記方法が、塩化ビニリデンを含む少なくとも1つのモノマーの、前記モノマーの総重量を基準として0.13重量%~1.50重量%の少なくとも1つのセルロース系分散剤の存在下でのフリーラジカル懸濁重合の工程を含む方法である。いくつかの好ましい実施形態において、フリーラジカル懸濁重合は、前記モノマーの総重量を基準として、0.15重量%~1.00重量%の、セルロース系分散剤の存在下で、いくつかのより好ましい実施形態において、0.2重量%~0.8重量%のセルロース系分散剤の存在下で行われる。
【0093】
重合媒体は、好ましくは、モノマーの全モル数に関して、少なくとも55モル%、より好ましくは少なくとも65%、さらにより好ましくは少なくとも75%の塩化ビニリデンモノマーを含む。
【0094】
本著者らは、重合媒体が、モノマーとして塩化ビニリデンを本質的に含むことが有利であり、重合媒体がモノマーとして塩化ビニリデンのみを含むことがより有利であることを見いだした。
【0095】
一般に、セルロース系分散剤は、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むリストから選択される。好ましくは、それは、ヒドロキシエチルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択され、より好ましくはそれは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0096】
重合は、有利には過酸化物またはアゾ開始剤である少なくとも1つの有機可溶性フリーラジカル開始剤によって一般に開始される。それは、好ましくはジアルキルペルオキシド、ジアシルペルオキシドおよびペルオキシジカーボネートを含むリストから選択される過酸化物開始剤である。それは、より好ましくはペルオキシジカーボネートであり、さらにより好ましくはジミリスチルペルオキシジカーボネートである。
【0097】
重合媒体中のフリーラジカル開始剤含有量は、モノマーの総重量を基準として一般に0.10重量%~4.00重量%の範囲である。それは、好ましくは0.15重量%~2.00重量%の範囲、より好ましくは0.20重量%~1.00重量%の範囲である。
【0098】
重合温度は、一般に30℃~85℃の範囲、好ましくは40℃~75℃、より好ましくは50℃~65℃の範囲である。
【0099】
重合媒体中に存在する重量水とモノマーの量との間の比は、一般に1~4の範囲であり;好ましくはそれは、1.2~2の範囲である。
【0100】
結果として生じた粒子は、通常50ppm未満、好ましくは30ppm未満、さらにより好ましくは20ppm未満の残存モノマーを含有している。この低い残存モノマー含有量は、例えば、スラリーのストリッピングプロセスによってか、または当業者に周知の任意のプロセスによって得ることができる。粒子は通常、濾過によってスラリーから回収され、乾燥前に洗浄されてもよい。乾燥は、例として、流動床で成し遂げられるが、任意の他の方法を用いることができる。
【0101】
フリーラジカル懸濁重合によって得られた粒子は、一般に1.4~1、好ましくは1.2~1、さらにより好ましくは1.1~1の範囲の平均アスペクト比を有する。好ましい実施形態において、フリーラジカル懸濁重合の工程を含む方法によって得られた塩化ビニリデンポリマーを含む粒子は、前に記載されたような粒子(III)である。
【0102】
別の好ましい実施形態において、フリーラジカル懸濁重合の工程を含む方法によって得られた塩化ビニリデンポリマーを含む粒子は、最大でも1の、好ましくは最大でも0.9の、より好ましくは最大でも0.8のスパンを有する前に記載されたような粒子(III)である。
【0103】
多孔性炭素質粒子の製造方法であって、前記方法が、
- 上に記載された方法によって多孔性粒子を製造する工程、
- そのようにして製造された多孔性粒子中に含まれる塩化ビニリデンポリマーの熱分解をもたらす工程
を含む方法を提案することが本発明の別の目的である。
【0104】
したがって、前に記載されたような多孔性粒子(III)中に含まれる塩化ビニリデンポリマーの熱分解をもたらすことによる多孔性炭素質粒子の製造方法を開示することが本発明の目的である。
【0105】
この目的のために、粒子(III)は、炉に導入され、乾燥のための不活性ガスフロー下で水の沸点に近い温度T1に維持される。
【0106】
塩化ビニリデンホモポリマーの場合には、乾燥のための温度T1は、一般に少なくとも60℃のものである。それは、好ましくは少なくとも70℃の、より好ましくは少なくとも80℃の、さらにより好ましくは少なくとも90℃のものである。その上、乾燥のための温度は、一般に最高でも140℃の、好ましくは最高でも135℃の、より好ましくは最高でも130℃のものである。
【0107】
塩化ビニリデンコポリマーの場合には、乾燥のための温度は、一般に少なくとも60℃のものである。それは、好ましくは少なくとも70℃の、より好ましくは少なくとも80℃の、さらにより好ましくは少なくとも90℃のものである。その上、乾燥のための温度は、一般に最高でも130℃の、好ましくは最高でも120℃の、より好ましくは最高でも110℃のものである。
【0108】
次に、温度は、厳密にT2,min=Tm-50℃よりも上の、かつ厳密にT2,max=Tm(ここで、Tmは、塩化ビニリデンポリマーの融点である)よりも下の温度T2までにされる。
【0109】
塩化ビニリデンホモポリマーの場合には、温度T2は、一般に少なくとも150℃の、好ましくは少なくとも155℃の、より好ましくは少なくとも160℃のものである。その上、温度T2は、一般に最高でも210℃の、好ましくは最高でも200℃の、より好ましくは最高でも190℃の、さらにより好ましくは最高でも180℃のものである。
【0110】
塩化ビニリデンコポリマーの場合には、温度T2は、一般に少なくとも110℃の、好ましくは少なくとも120℃の、より好ましくは少なくとも130℃のものである。その上、温度T2は、一般に最高でも170℃の、好ましくは最高でも160℃の、より好ましくは最高でも150℃のものである。
【0111】
粒子は、ハロゲン化ポリマーの熱分解をもたらすために、不活性ガスフロー下で温度T2に維持される。
【0112】
不活性ガスフローは、一般にアルゴン、ヘリウムまたはそれらの混合物を含む。
【0113】
最終炭化のために、粒子は、厳密にT3,min=Tm(ここで、Tmは、前に定義されたとおりである)よりも上の、かつ厳密にT3,max=1300℃よりも下の温度T3までにされる。
【0114】
温度T3は、一般に少なくとも400℃の、好ましくは少なくとも450℃の、より好ましくは少なくとも500℃のものである。その上、温度T3は、一般に最高でも1300℃の、好ましくは最高でも1100℃の、より好ましくは最高でも1000℃の、さらにより好ましくは最高でも900℃のものである。
【0115】
粒子は、ハロゲン化ポリマーの熱分解をもたらし、それによって多孔性炭素質粒子を得るために、不活性ガスフロー下で温度T3に維持される。
【0116】
別の実施形態において、塩化ビニリデンポリマーの熱分解の誘発は、異なる上昇温度θ1…~θn(ここで、θ1<...<θnであり、2≦n≦6である)で段階的に行われる。好ましい実施形態において、n=3である。
【0117】
したがって、粒子は、炉に導入され、前に記載されたように乾燥させられる。次に、炉の温度は、加熱速度H1で温度θ1まで上げられ、継続時間D1の間、不活性ガスフロー下で、この温度に保持される。その後、温度は、θ1から一連の温度θnまで一連の加熱速度Hnで任意選択的に上げられ、一連の継続時間Dnの間、不活性ガスフロー下で、これらの温度に維持される。
【0118】
ハロゲン化ポリマーが塩化ビニリデンホモポリマーである場合、θ1は、一般に110℃~190℃の範囲であり、θnは、一般に200℃~1300℃の範囲である。好ましくは、θ1は、120℃~170℃の範囲であり、θnは、250℃~900℃の範囲である。
【0119】
加熱速度H1は、一般に1℃/分~20℃/分の範囲である。加熱速度Hnは、一般に0.1℃/分~20℃/分の範囲である。
【0120】
継続時間D1は、一般に72hを超えず、好ましくは48hを超えず、より好ましくは24hを超えず、さらにより好ましくは20hを超えない。継続時間D1は、一般に少なくとも0.1h、好ましくは少なくとも0.2h、より好ましくは少なくとも0.5hである。継続時間Dnは、一般に30hを超えず、好ましくは25hを超えず、より好ましくは20hを超えない。継続時間Dnは、一般に少なくとも0.1h、好ましくは少なくとも0.2h、より好ましくは少なくとも0.5hである。
【0121】
好ましい実施形態において、製造された多孔性炭素質粒子は、前に記載されたような粒子(I)である。
【0122】
粒子(III)が本発明による条件下での懸濁重合によって調製される場合、製造された多孔性炭素質粒子は、最大でも1.5のスパンおよび1.4~1の範囲の平均アスペクト比を有する粒子(I)である。
【0123】
粒子(III)が、極低温凍結、引き続くより大きい粒子のすり潰しによって調製される場合、製造された多孔性炭素質粒子は、最大でも2.5の、好ましくは最大でも2.2のスパンを有する粒子(I)である。
【0124】
上に記載されたような多孔性炭素質粒子(I)は、それらの比較的低い平均径のため、低い壁厚の多孔性炭素質モノリスの製造に使用され得る。
【0125】
本発明の別の目的は、多孔性炭素質モノリスの製造方法であって、
i - 前に記載されたような粒子(III)を含む前駆体材料を調製する工程、
ii - 粒子(III)の凝集体を含む成形体(S)を形成する工程、
iii - 成形体を炉に導入する工程、
iv - 多孔性炭素質モノリスが得られるまで、炉中で塩化ビニリデンポリマーの熱分解をもたらす工程
を含む方法である。
【0126】
一般に、前駆体材料の総重量に関して塩化ビニリデンポリマーを含む粒子(III)の含有量は、少なくとも65重量%である。それは、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、さらにより好ましくは少なくとも95重量%である。その上、本著者らは、粒子(III)から本質的になる前駆体材料を使用することが有利であり、粒子(III)からなる前駆体材料を使用することがより有利であることを見いだした。
【0127】
好ましい実施形態において、工程iiは、塩化ビニリデンポリマーがホモポリマーである場合10~300バール、塩化ビニリデンポリマーがコポリマーである場合10~150バールの範囲の圧力と、T1,min=20℃~T1,max=Tm-50℃(ここで、Tmは、塩化ビニリデンポリマーの融点である)の範囲の温度T1とを、金型に前もって導入された、前駆体材料に同時に加えることによって成形体を形成することからなる。
【0128】
温度T1において、圧力Pは、少なくとも0.5分の、好ましくは少なくとも1分の、より好ましくは少なくとも3分の、さらにより好ましくは少なくとも5分の継続時間Dの間一般に加えられる。温度T1において、圧力Pは、15分を超えない、好ましくは12分を超えない、より好ましくは9分を超えない、さらにより好ましくは6分を超えない継続時間Dの間一般に加えられる。
【0129】
温度と圧力との組み合わせは、それにより成形体の凝集力を決まるので、重要なパラメータである。したがって、所与の塩化ビニリデンポリマーを含む粒子(III)について、閾値温度値よりも下の温度で、粒子の不十分な凝集力またはゼロの凝集力が観察される。同様に、閾値圧力値よりも下の圧力で、粒子の不十分な凝集力またはゼロの凝集力が観察される。
【0130】
さらに、温度と圧力との組み合わせは、成形体の粒子内マクロ多孔性を決定する。こうして、粒子内マクロ多孔性は、余りにも高い温度でのおよび/または余りにも高い圧力での処理が適用される場合、少なくとも部分的に崩壊する。したがって、温度と圧力との理想的な組み合わせは、ばらばらの粒子のマクロ多孔性に近いポリマーを含む粒子内部のマクロ多孔性を維持しながら、粒子間の良好な接着力、すなわち、成形体の良好な凝集力を確実にする。
【0131】
塩化ビニリデンホモポリマーの場合には、温度T1は、一般に少なくとも20℃の、好ましくは少なくとも30℃の、より好ましくは少なくとも40℃のものである。その上、温度T1は、一般に最高でも170℃の、好ましくは最高でも150℃の、より好ましくは最高でも140℃の、さらにより好ましくは最高でも130℃のものである。
【0132】
塩化ビニリデンコポリマーの場合には、温度T1は、一般に少なくとも20℃の、好ましくは少なくとも30℃の、より好ましくは少なくとも40℃のものである。その上、温度T1は、一般に最高でも120℃の、好ましくは最高でも110℃の、より好ましくは最高でも100℃のものである。
【0133】
圧力Pは、好ましくは少なくとも15バールの、より好ましくは少なくとも20バールのものである。
【0134】
その上、塩化ビニリデンポリマーがホモポリマーである場合には、圧力Pは、10~200バールの範囲であってもよく、好ましくは10~150バールである。全般的に見て、本発明のある種の必須のまたは好ましい実施形態において、ホモポリマーが使用されるか、コポリマーが使用されるかどうかに応じて、圧力Pは10~150バールである。より好ましくは、塩化ビニリデンポリマーがホモポリマーであるかコポリマーであるかに関係なく、圧力Pは、最大でも140バール、最大でも130バールまたは最大でも100バール、さらにより好ましくは最大でも50バール、最も好ましくは最大でも50バールのものである。
【0135】
室温まで冷却した後、成形体は、その後の熱分解工程に関与する前に任意選択的に型から取り出される。
【0136】
成形体は一般に、円柱、楕円柱および多角形プリズムからなるリストから選択される形状を有する固体である。好ましくは、成形体は、円柱または長方形プリズム、より好ましくは長方形プリズムである。一般に、成形体は、少なくとも4の、好ましくは少なくとも6の、より好ましくは少なくとも8の長さ対幅および/または長さ対厚さ比を有する。成形体の長さは一般に、少なくとも1cmの、好ましくは少なくとも8cmの、より好ましくは少なくとも10cmのものである。
【0137】
成形体が円柱である場合、厚さおよび幅は、円形基部の直径に等しい。多角形プリズムとは、その基部が多角形であるプリズムと理解される。単に例のために、三角形、四角形または六角形プリズムが有利に考えられ得る。
【0138】
多孔性炭素質モノリス(M)は、凝集粒子(III)中に含まれる塩化ビニリデンポリマーの熱分解をもたらすことによって製造される。この目的のために、工程iii中に、成形体(S)は、炉に導入される。
【0139】
次に、炉における塩化ビニリデンポリマーの熱分解の誘発は、
iva - 成形体の温度を、厳密にT2,min=Tm-50℃よりも上の、かつ厳密にT2,max=Tm(ここで、Tmは、前に定義されたとおりである)よりも下の温度T2までにすること、
ivb - 成形体を、不活性ガスフロー下で温度T2に維持して塩化ビニリデンポリマーの熱分解および不溶融性チャーの形成をもたらすこと、
ivc - 不溶融性チャーの温度を、厳密にT3,min=Tm(ここで、Tmは、前に定義されたとおりである)よりも上の、かつ厳密にT3,max=1300℃よりも下の温度T3までにすること、
ivd - 不溶融性チャーを、不活性ガスフロー下で温度T3に維持して塩化ビニリデンポリマーの熱分解をもたらし、それによって多孔性炭素質モノリス構造体を得ること
を含む工程ivにおいて行われ得る。
【0140】
塩化ビニリデンホモポリマーの場合には、温度T2は、一般に少なくとも150℃の、好ましくは少なくとも155℃の、より好ましくは少なくとも160℃のものである。その上、温度T2は、一般に最高でも210℃の、好ましくは最高でも200℃の、より好ましくは最高でも190℃の、さらにより好ましくは最高でも180℃のものである。
【0141】
塩化ビニリデンコポリマーの場合には、温度T2は、一般に少なくとも110℃の、好ましくは少なくとも120℃の、より好ましくは少なくとも130℃のものである。その上、温度T2は、一般に最高でも170℃の、好ましくは最高でも160℃の、より好ましくは最高でも150℃のものである。
【0142】
成形体(S)は、塩化ビニリデンポリマーの熱分解をもたらすために、不活性ガスフロー下で温度T2に維持される。
【0143】
不活性ガスフローは、一般にアルゴン、ヘリウムまたはそれらの混合物を含む。
【0144】
任意選択的に、炉に導入された後におよび温度T2にされる前に、成形体は、乾燥のために不活性ガスフロー下で水の沸点に近い温度に維持される。
【0145】
塩化ビニリデンホモポリマーの場合には、乾燥のための温度は、一般に少なくとも60℃のものである。それは、好ましくは少なくとも70℃の、より好ましくは少なくとも80℃の、さらにより好ましくは少なくとも90℃のものである。その上、乾燥のための温度は、一般に最高でも140℃の、好ましくは最高でも135℃の、より好ましくは最高でも130℃のものである。
【0146】
塩化ビニリデンコポリマーの場合には、乾燥のための温度は、一般に少なくとも60℃のものである。それは、好ましくは少なくとも70℃の、より好ましくは少なくとも80℃の、さらにより好ましくは少なくとも90℃のものである。その上、乾燥のための温度は、一般に最高でも130℃の、好ましくは最高でも120℃の、より好ましくは最高でも110℃のものである。
【0147】
T2,maxは、厳密に塩化ビニリデンポリマーの融点(Tm)よりも下であるので、脱ハロゲン化水素は、成形体の構造の崩壊も、粒子のマクロ多孔性の崩壊も観察することなく起こる。実際に、この温度での成形体の暴露は、より高温でさらなる熱分解に関与する不溶融性チャーの形成をもたらす。
【0148】
最終炭化のために、不溶融性チャーは、厳密にT3,min=Tm(ここで、Tmは、前に定義されたとおりである)よりも上の、かつ厳密にT3,max=1300℃よりも下の温度T3までにされる。
【0149】
塩化ビニリデンコポリマーの場合には、温度T3は、一般に少なくとも400℃の、好ましくは少なくとも450℃の、より好ましくは少なくとも500℃のものである。その上、温度T3は、一般に最高でも1300℃の、好ましくは最高でも1100℃の、より好ましくは最高でも1000℃の、さらにより好ましくは最高でも900℃のものである。
【0150】
不溶融性チャーは、塩化ビニリデンポリマーの熱分解をもたらし、それによって多孔性炭素質モノリス構造体を得るために、不活性ガスフロー下で温度T3に維持される。結果として生じた多孔性炭素質モノリスは、一緒に焼結され、こうして向上した機械的特性を構造体に与える個別の多孔性炭素質マイクロビーズからなる。
【0151】
多孔性炭素質モノリス(M)は一般に、円柱、楕円柱および多角形プリズムからなるリストから選択される形状を有する固体である。好ましくは、モノリスは、円柱または長方形プリズム、より好ましくは長方形プリズムである。一般に、多孔性炭素質モノリスは、少なくとも4の、好ましくは少なくとも6の、より好ましくは少なくとも8の長さ対幅および/または長さ対厚さ比を有する。
【0152】
炭素質モノリス(M)の長さは、一般に少なくとも1cmの、好ましくは少なくとも8cmの、より好ましくは少なくとも10cmのものである。
【0153】
本発明による炭素質モノリス(M)は、一般に少なくとも90重量%の、好ましくは少なくとも95重量%の、より好ましくは少なくとも98重量%の、さらにより好ましくは少なくとも99重量%の炭素からなる。
【0154】
別の実施形態において、塩化ビニリデンポリマーの熱分解の誘発は、異なる上昇温度θ1…~θn(ここで、θ1<…<θnであり、2≦n≦6である)で段階的に行われる。好ましい実施形態において、n=3である。
【0155】
こうして、成形体(S)は、炉に導入され、前に記載されたように任意選択的に乾燥させられる。次に、成形体の温度は、加熱速度H1で温度θ1まで上げられ、継続時間D1の間、不活性ガスフロー下で、この温度に維持される。その後、温度は、一連の加熱速度Hnでθ1から一連の温度θnまで任意選択的に上げられ、一連の継続時間Dnの間、不活性ガスフロー下で、これらの温度に維持される。
【0156】
ハロゲン化ポリマーが塩化ビニリデンホモポリマーである場合、θ1は、一般に110℃~190℃の範囲であり、θnは、一般に200℃~1300℃の範囲である。好ましくは、θ1は、120℃~170℃の範囲であり、θnは、250℃~900℃の範囲である。
【0157】
加熱速度H1は、一般に1℃/分~20℃/分の範囲である。加熱速度Hnは、一般に0.1℃/分~20℃/分の範囲である。
【0158】
継続時間D1は、一般に72hを超えず、好ましくは48hを超えず、より好ましくは24hを超えず、さらにより好ましくは20hを超えない。継続時間D1は、一般に少なくとも0.1h、好ましくは少なくとも0.2h、より好ましくは少なくとも0.5hである。継続時間Dnは、一般に30hを超えず、好ましくは25hを超えず、より好ましくは20hを超えない。継続時間Dnは、一般に少なくとも0.1h、好ましくは少なくとも0.2h、より好ましくは少なくとも0.5hである。
【0159】
好ましい実施形態において、工程ivにおいて得られる多孔性炭素質モノリスは、前に記載されたようなモノリス(M)である。
【0160】
前に記載されたような粒子(III)の凝集体を含み、そしてマクロ孔を有する成形体(S)を提供することもまた本発明の目的である。
【0161】
結果として生じた成形体は、ばらばらの粒子(III)の孔隙率に一般に近い孔隙率を示す凝集粒子(III)を含む。
【0162】
成形体の全体孔隙率は、重量%単位で表されるジ-イソ-ノニルフタレート(DINP)の吸収量で評価することができる。一般に、成形体によるDINP吸収は、少なくとも3重量%であり、好ましくは少なくとも6重量%、より好ましくは少なくとも9重量%である。一般に、DINP吸収は、最大でも24重量%であり、好ましくは最大でも20重量%である。
【0163】
成形体は一般に、円柱、楕円柱および多角形プリズムからなるリストから選択される形状を有する固体である。好ましくは、成形体は、円柱または長方形プリズム、より好ましくは長方形プリズムである。一般に、成形体は、少なくとも4の、好ましくは少なくとも6の、より好ましくは少なくとも8の長さ対幅および/または長さ対厚さ比を有する。
【0164】
成形体の長さは、一般に少なくとも1cmの、好ましくは少なくとも8cmの、より好ましくは少なくとも10cmのものである。
【0165】
前に記載されたような炭素質粒子(I)の凝集体を含む多孔性炭素質モノリス(M)を提案することもまた、本発明の目的である。
【0166】
多孔性炭素質モノリスは一般に、円柱、楕円柱および多角形プリズムからなるリストから選択される形状を有する固体である。好ましくは、モノリスは、円柱または長方形プリズム、より好ましくは長方形プリズムである。一般に、多孔性炭素質モノリスは、少なくとも4の、好ましくは少なくとも6の、より好ましくは少なくとも8の長さ対幅および/または長さ対厚さ比を有する。
【0167】
炭素質モノリスの長さは、一般に少なくとも1cmの、好ましくは少なくとも8cmの、より好ましくは少なくとも10cmのものである。
【0168】
本発明による炭素質モノリスは、一般に少なくとも90重量%の、好ましくは少なくとも95重量%の、より好ましくは少なくとも98重量%の、さらにより好ましくは少なくとも99重量%の炭素からなる。
【0169】
本発明による多孔性炭素質モノリス(M)は、有利には粒子内マクロ多孔性および粒子間マクロ多孔性を示す。
【0170】
水銀ポロシメトリーが、多孔性炭素試料のマクロ多孔性特性を測定するために用いられる。測定は、多孔性炭素質粒子(I)について前に記載されたように行われる。この目的のために、モノリスは、それらが膨張計に適合するために壊して1~2cmの小片にされる。
【0171】
測定曲線から、粒子内(a)および粒子間(b)細孔容積が、全(c)細孔容積から計算される(
図1を参照されたい)。細孔径の関数での漸増圧入容積を示す曲線が、粒子内および粒子間平均細孔径を計算するために用いられる。
【0172】
本発明に従って炭化による粒子(I)の製造のための少なくとも塩化ビニリデンポリマーを含む前駆体粒子(III)が、製造された方法、すなわち、懸濁重合によってか、または粒子(IV)の極低温すり潰しによって製造された方法に応じて、結果として生じた炭素質モノリス(M)のマクロ多孔性に関するいくつかの特徴は、わずかに異なり得る。
【0173】
前駆体粒子(III)が、本発明による条件下での懸濁重合によって調製される場合、Hgポロシティによって測定される、Mの粒子内マクロ孔容積は、一般に少なくとも0.02ml/g、有利には少なくとも0.03ml/g、より有利には少なくとも0.04ml/g、さらにより有利には少なくとも0.05ml/gのものである。その上、Mの粒子内マクロ孔容積は、一般に0.4ml/gを超えない。
【0174】
Hgポロシティによって測定される、Mの粒子間マクロ孔容積は、一般に少なくとも0.10ml/g、有利には少なくとも0.20ml/g、より有利には少なくとも0.25ml/g、さらにより有利には少なくとも0.35ml/gのものである。その上、Mの粒子間マクロ孔容積は、一般に0.9ml/gを超えない。
【0175】
Hgポロシティによって測定される、Mの累積粒子内および粒子間マクロ孔容積、つまり全マクロ孔容積は、一般に少なくとも0.12ml/g、有利には少なくとも0.20ml/g、より有利には少なくとも0.35ml/g、さらにより有利には少なくとも0.40ml/gのものである。その上、全マクロ孔容積は、一般に1.30ml/gを超えない。
【0176】
粒子内マクロ孔は、一般に少なくとも0.4μm、有利には少なくとも0.8μm、より有利には少なくとも1μmの、Hgポロシティによって測定される、平均径を有する。その上、粒子内マクロ孔は、一般に5μmを超えない平均径を有する。
【0177】
粒子間マクロ孔は、一般に少なくとも5μm、有利には少なくとも9μm、より有利には少なくとも12μmの、Hgポロシティによって測定される、平均径を有する。その上、粒子間マクロ孔は、一般に50μmを超えず、有利には45μmを超えず、より有利には40μmを超えない平均径を有する。
【0178】
粒子(III)が、より大きい粒子の極低温凍結、引き続くすり潰しによって調製される場合、Mの粒子内マクロ孔と粒子間マクロ孔とは、おそらくそれらが類似の平均径を有するために、Hgポロシメトリーによって区別することができない。
【0179】
それにもかかわらず、マクロ孔は、一般に少なくとも0.4μmの、有利には少なくとも0.6μmの、より有利には少なくとも0.8μmの、Hgポロシティによって測定される、平均径を有する。その上、マクロ孔は、8μmを超えない平均径を有する。
【0180】
さらに、全マクロ孔容積である累積粒子内および粒子間マクロ孔容積を測定することが可能である。全マクロ孔容積は、一般に少なくとも0.12ml/gの、有利には少なくとも0.20ml/gの、より有利には少なくとも0.30ml/gのものである。その上、全マクロ孔容積は、一般に1.0ml/gを超えない。
【0181】
本発明による多孔性炭素質モノリスの孔隙率は、当業者に周知の化学的または物理的活性化プロセスによって任意選択的にさらに変更されてもよい。
【0182】
粒子(I)の製造のための前駆体粒子が製造された方法が何であろうと、モノリス(M)は、少なくとも800m2/gの、好ましくは少なくとも900m2/gの、より好ましくは少なくとも1000m2/gのBET表面積を有し、少なくとも0.30cm3/gの、好ましくは少なくとも0.35cm3/gの、より好ましくは少なくとも0.38cm3/gの、N2吸着によって測定される、微小孔容積を有する。その上、モノリス(M)は、0.8cm3/gを超えない微小孔容積を有する。
【0183】
ミクロ多孔性と、粒子内マクロ多孔性および粒子間マクロ多孔性の少なくとも1つとを示し、ガスが高速で、そして層流で循環することができるカナルを有する溝付き炭素質モノリスを提供することもまた、本発明の目的である。溝付き炭素質モノリスは、本発明による炭素質モノリス構造体を彫刻することによって製造され得る。例えば、直線流路が、個別の溝付きモノリスを与えるために炭素質モノリスの長さに沿って切り取られてもよい。
【0184】
溝付きモノリスの壁厚は、機械加工中にセットされる。多孔性炭素質モノリスは、一緒に焼結され、こうして向上した機械的特性を構造体に与える個別の多孔性炭素質粒子からなる。したがって、本発明による方法によって、本発明による粒子(III)から製造されたモノリスは、良好な機械的特性を有する低い壁厚の溝付きモノリスの機械加工を可能にする。
【0185】
より大きい粒子からの低い壁厚の溝付きモノリスの製造は、個別の多孔性炭素質粒子の不十分な凝集力を、こうして非常に低い機械的特性を与える。
【0186】
明らかに、溝付きモノリスの多孔性(ミクロ多孔性、粒子内および粒子間マクロ多孔性…)の特性は、本発明による炭素質モノリスの特性に似ている。
【0187】
好ましい実施形態において、個別の溝付きモノリスは、ミクロ多孔性と、粒子内マクロ多孔性および粒子間マクロ多孔性の少なくとも1つとを示すハニカム多孔性炭素質構造体を与えるために重ね合わせられ、組み立てられる。モノリスの組み立ては、接着剤で接着させることによってか、それともポリマーフィルムで包むことによって行われる。
【0188】
別の好ましい実施形態において、ミクロ多孔性と、粒子内マクロ多孔性および粒子間マクロ多孔性の少なくとも1つとを示す、ハニカム多孔性炭素質構造体は、本発明による炭素質モノリス構造体にドリルで穴を開けることによって製造される。
【0189】
明らかに、ハニカム多孔性炭素質構造体の多孔性(ミクロ多孔性、粒子内および粒子間マクロ多孔性…)の特性は、本発明による炭素質モノリスの特性に似ている。
【0190】
一般に、本発明によるハニカム構造体は、1000μmよりも下、好ましくは750μmよりも下、より好ましくは500μmよりも下の壁厚を有する。
【0191】
このハニカム構造体は、それが製造される方法とは無関係に、本発明の別の目的であり、特定の1平方インチ単位当たりのセルの数(cpsi)を有することを特徴とし得る。
【0192】
一般に、本発明によるハニカム構造体は、少なくとも50cpsi、好ましくは少なくとも100cpsi、より好ましくは少なくとも150cpsi、さらにより好ましくは少なくとも200cpsiを有する。その上、本発明によるハニカム構造体は、有利には最大でも1200cpsi、より有利には最大でも800cpsi、さらにより有利には最大でも600cpsiを有する。
【0193】
本発明の別の態様は、CO2ガスを選択的に吸着することによってCO2を含有する煙道ガスを精製するための多孔性炭素質モノリスの使用である。
【0194】
多孔性炭素モノリスの動的および選択的CO2容量は、前に記載されたような炭素質粒子について行われたものに類似の実験によって測定され得る。
【0195】
モノリスに関する実験は、8~12cmの長さおよび約1cm2の横断面のモノリスに関して行われる。モノリスは、入口および出口管材料に直接接続される。
【0196】
本発明による炭素質ハニカムモノリスは、一般に少なくとも15mg/gの、有利には少なくとも20mg/gの、より有利には少なくとも25mg/gの、さらにより有利には少なくとも27mg/gの、選択的CO2容量QCO2を有する。
【0197】
本発明による多孔性炭素質モノリス構造体は、任意のガス精製のために使用され得る。例えば、CO2は、煙道ガスから、または天然ガスおよびバイオガスを含むガス組成物から抽出され、精製され得る。多孔性炭素質モノリス構造体はまた、天然ガスおよびバイオガス精製のためにも使用され得る。それらはまた、空気および水処理用途向けにも使用され得る。最後に、それらは、触媒作用用途向けに使用され得る。しかしながら、用途分野は、これらの例に限定されない。
【0198】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願、および刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合は、本記載が優先するものとする。
【実施例】
【0199】
極低温粉砕によって得られる本発明による塩化ビニリデンポリマーを含む小多孔性粒子(FP1)
Solvay Specialty Polymersによって商業化されているIXAN(登録商標)PV925塩化ビニリデンコポリマーは、201.2μmの平均径および 0.6
5のスパンを有する粒子からなった。粒径およびスパンは、前に記載されたのと同じ機器および手順で測定した。粒径は、厳密に70μmと480μmとの間に含まれた(
図2を参照されたい)。前に記載されたように測定されたこのコポリマーの融点は、158℃であった。
【0200】
Solvay Specialty Polymersによって商業化されている前記コポリマーを、極低温粉砕プロセスで粉砕した。極低温粉砕プロセスは、冷媒としての液体窒素およびボールミルを使用することによって実施した。結果として生じた粉末は、55.1μmの平均径および1.4
5のスパンを有する粉砕粒子(FP1)を含有した。粒子径は、厳密に4μmと175μmとの間に含まれ、前記粒子の少なくとも98容積%は、5~150μmの範囲の、レーザー回折分析によって測定される、直径を有した(
図3を参照されたい)。両方ともHgポロシティによって測定される、全(高圧)細孔容積および平均細孔径は、それぞれ0.22cm
3/gおよび2.9
5μmであった。粒子(III)のマクロ孔の90容積%は、0.01μm~10μm範囲の、Hgポロシメトリーによって測定される、直径を有した。
【0201】
塩化ビニリデンポリマーを含み、本発明による懸濁重合によって得られる小多孔性粒子(PVDC1)
塩化ビニリデンホモポリマーは、懸濁プロセスで製造した。65リットルの、ガラスライニングオートクレーブに、36.9kgの脱塩水をロードし、機械撹拌を130rpm(1分当たりの回転数)で開始した。次に、230gのジミリスチルペルオキシジカーボネート(DPDC)と、懸濁剤としての4600cm3の10g/Lのメチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)の水溶液とを、攪拌下に導入した。その後、機械攪拌を停止し、反応器を真空下に置いた。次に、23000gの塩化ビニリデン(VDC)を反応器にロードし、機械攪拌を235rpmで開始した。オートクレーブを次に60℃で加熱し、所望の転化率に達するまで重合を進行させた。オートクレーブにおける圧力降下を監視することによってモノマー消費を追跡した。モノマーのポリマーへの転化がおよそ85%になった後に、残存モノマーを、形成されたスラリーのストリッピングによって除去した。この目的のために、ストリッピングを、80℃の温度で真空(-0.5バール)下に8時間実施した。オートクレーブを次に冷却し、空にした。残存モノマーから精製されたスラリーを回収し、洗浄し、濾過し、流動床で乾燥させた。得られた生成物(PVDC1)は、96μmの平均径D50および0.8のスパンを有する粒子(ここで、前記粒子の少なくとも90容積%は、5~150μmの範囲の、レーザー回折分析によって測定される、直径を有する)を含む、粉末であった。得られた生成物は、170.6℃の溶融温度、15.3%のDINPの吸収によって測定される孔隙率を有する。両方ともHgポロシティによって測定される、全細孔容積および平均細孔径は、それぞれ0.20cm3/gおよび1.3μmであった。粒子(PVDC1)のマクロ孔の90容積%は、0.01μm~10μmの範囲の、Hgポロシメトリーによって測定される、直径を有した。
【0202】
粉末は、20ppm(百万当たりの部)の残存塩化ビニリデンを有した。
【0203】
本発明による塩化ビニリデンポリマーを含む粒子の、多孔性炭素粒子(CP1およびCP2)への変換
本発明による極低温粉砕(FP)によってまたは懸濁重合(PVDC1)によって得られた塩化ビニリデンポリマーを含む粒子を、水平管状炉において不活性ガス(Ar)のフロー下に3段階で熱分解した:
・セラミック坩堝中の、約20gの粒子を、3ゾーン水平管状炉(carbolite HZS 12/900)中に取り付けられた、石英管に入れた。温度を10℃/分の速度で室温から130℃まで昇温し、その温度に1h保持した。
・第2段階において、温度を1℃/分の加熱速度で中間温度(150℃)までさらに上げ、この温度に17h保持した。
・最終段階において、温度を10℃/分の加熱速度で炭化温度(600℃)まで上げ、この温度に1h保持した。
【0204】
結果として生じた粒子の主要特徴を、表3に報告する(FP1から製造されたCP1およびPVDC1から製造されたCP2を参照されたい)。
【0205】
商業的に入手可能な材料の極低温粉砕によって得られる本発明による小多孔性炭素質粒子(CP3)
Entegris GmbHによって商業化されている炭素質粒子ATMI Brightblackを、極低温粉砕プロセスによって粉砕した。極低温粉砕プロセスは、冷媒としての液体窒素およびボールミルを使用することによって実施した。
【0206】
ATMI BB多孔性炭素マイクロビーズを、極低温粉砕し、篩い分けし、3つの異なる画分:100μmよりも大きい粒子、20μmと100μmとの間の粒子および20μmよりも下の粒子を集めた。
【0207】
20μmと100μmとの間に含まれる直径を有する粒子の画分、CP3は、極低温粉砕ATMI BB粒子の総重量の53重量%を表した。これらの粒子の平均径は67.8μmであり、それらの主要特徴を表1に報告する(CP3を参照されたい)。
【0208】
本発明による多孔性炭素粒子(CP1~CP3)のおよび比較多孔性炭素粒子(CP4~CP7)の主要特徴
前に記載されたように、多孔性炭素粒子物品のサイズは、レーザー回折によって測定し、マクロ多孔性は、Hg吸着によって評価し、ミクロ多孔性は、N2吸着によって評価した。
【0209】
本発明による多孔性炭素粒子は、商業的に入手可能な炭素粒子の、それぞれ熱分解によって(CP1およびCP2)ならびに極低温粉砕によって(CP3)、前に記載されたように、得られた。表1に報告される結果から、低い直径と、高いマクロ多孔性と、高いミクロ多孔性とを組み合わせた炭素質粒子が、本公文書に開示される方法によって得られたことは明らかである。
【0210】
【0211】
商業的に入手可能な炭素質粒子と、商業的に入手可能なPVDC粒子の熱分解によって調製された粒子CP4、CP5、CP6およびCP7とを、比較例として評価した。CP4は、FP1またはPVDC1の熱分解についてと同じ実験条件での201.2μmの平均径を有する粒子からなるIXAN(登録商標)PV925の熱分解によって得られた。CP5は、Entegris GmbHによって商業化されている商業的に入手可能な炭素粒子ATMI Brightblackであり、CP7は、株式会社クラレ、日本国によって商業化されている商業的に入手可能な炭素粒子YP50Fであった。CP5は、粒子を含む塩化ビニリデンポリマーの熱分解によって調製され、そして一方、CP7は、ココナツから調製されたスチーム活性化炭素粉末であった。最後に、CP6は、CP5のジェットミリングによって得られた。これらの比較例の主要特徴を表2に報告する。
【0212】
【0213】
CP1、CP6およびCP7について、Hgポロシメトリーは、マクロ多孔性を特徴付けるのに好適ではなかった。実際に、測定中に、低い平均径、典型的にはCP1について22μmならびに、もっと強い理由から、CP6およびCP7について5.1μmまたは5.5μmを有する粒子について、Hgは、同じ圧力範囲において粒子内部のマクロ孔および粒子間の空隙を満たした。その結果として、マクロ孔容積は、CP1について過大評価され(CP1について0.83cm3/g、表2を参照されたい)、そして一方、CP6およびCP7についていかなる測定をも実施することは不可能でさえあった(表2において、利用不可の結果、n.a.)。しかしながら、第1試料(CP1)について、マクロ孔は、顕微鏡によって明らかに観察された。
【0214】
本発明による成形体の調製
バインダーなしの成形体(SB1)を、粒子FP1をそれらの融点よりも下で圧縮することによって製造した。3mm厚さの長方形フレームに樹脂を満たし、40℃の温度および28.8バールの圧力でプレスした。圧力を40℃の一定温度で28.8バールに6分間維持した。結果として生じた成形体は、一緒に凝集した個別のポリマー粒子からなった。冷却後に成形体を型から取り出した。バインダーなしの成形体(SB2)を、粒子PVDC1を120℃の温度および28.8バールの圧力で圧縮することによって同様に製造した。
【0215】
比較例のための成形体の調製
比較例として、バインダーなしの成形体(SB3)を、大きい直径(平均径=201.2μm)の粒子であるIXAN(登録商標)PV925の粒子を使用して、85℃の温度および19.2バールの圧力で、同様な方法で調製した。
【0216】
成形体の孔隙率
全体孔隙率は、本明細書の主要部において前に記載されたように室温でのDINP吸着によって測定した。表3に報告される結果は、本発明による成形体の孔隙率が比較例の成形体の孔隙率に似ていることを例証する。したがって、より小さい粒子を使用する場合に高い孔隙率の成形体を得ることは可能である。
【0217】
【0218】
本発明による多孔性炭素質モノリスの調製
極低温粉砕したIXAN(登録商標)PV925から製造された成形体(SB1)を、3ゾーン水平管状炉(carbolite HZS 12/900)中に配置された石英管に入れた。成形体を乾燥させるために温度を次に10℃/分の速度で室温から130℃まで昇温し、その温度に1h保持した。次に1℃/分の加熱速度で中間温度(すなわち、150℃)まで温度をさらに上げ、この温度に17h保持した。その後、1℃/分の加熱速度で300℃まで温度をさらに上げ、この温度に1h保持した。最後に、10℃/分の加熱速度で炭化温度(すなわち、600℃)まで温度を上げ、この温度に1h保持した。
【0219】
モノリスM1を冷却後に回収した。成形体SB2から製造されるモノリスM2を、中間温度が150℃の代わりに160℃にセットされることを除いて同じ方法で調製した。
【0220】
比較例のための多孔性炭素質モノリスの調製
IXAN(登録商標)PV925から製造された成形体(SB3)を、3ゾーン水平管状炉(carbolite HZS 12/900)中に配置された石英管に入れた。成形体を乾燥させるために温度を次に10℃/分の速度で室温から130℃まで昇温し、その温度に1h保持した。次に1℃/分の加熱速度で中間温度(すなわち、150℃)まで温度をさらに上げ、この温度に17h保持した。その後、1℃/分の加熱速度で300℃まで温度をさらに上げ、この温度に1h保持した。最後に、10℃/分の加熱速度で炭化温度(すなわち、600℃)まで温度を上げ、この温度に1h保持した。モノリスM3を冷却後に回収した。
【0221】
ハニカムモノリスの調製
0.8mm幅および0.8mm深さの、幾つかの直線流路を、CNC Milling Machine(Datron Electronics,CAT 3D-M5)を用いて多孔性炭素モノリスの長さに沿って彫刻した。それぞれ5~7つの流路を含有する、約1.2cm幅および8~12cm長さの個別のモノリスを、この溝付き多孔性炭素モノリスから切り取った。その後、個別のモノリスを重ね合わせ、組み立てて5または6つのレベルの多孔性炭素ハニカムモノリスを得た。
【0222】
モノリスの組み立ては、ポリマーフィルムで包むことによって行った。最後に、そのような方法で組み立てられた溝付きモノリスは、正方形流路および200cpsi(1平方インチ当たりのセル)セル密度のハニカムモノリスをもたらした。
【0223】
個別のモノリスの壁厚は、デジタルマイクロメーターを用いて測定し、溝付きモノリスの、したがってハニカムモノリスの壁厚は、ミリングカッターの0.8mm深さを差し引くことによって推測した。個別のモノリスの壁厚値は、互いに1cmの距離を置いた、前記モノリスの5つの異なる場所で行われた5つの測定の平均であった。
【0224】
図4は、PVDC1(平均径96μm)から調製された低い壁厚の溝付きモノリスの写真を示す。
【0225】
図5は、IXAN(登録商標)PV925(平均径201μm)から調製された大きい壁厚の溝付きモノリスの写真を示す。
【0226】
図4および
図5の写真の比較は、より薄い粒子から製造されたモノリスが他のものよりも平滑な表面を有したことを明らかにする。これらの写真は、個別のモノリスの機械加工による、良好な機械的特性および低い壁厚を有する、溝付きモノリスの製造に小さい粒子がより大きいものよりも好適であったことを例証する。
【0227】
160μmの平均径を有する粒子から出発して750μmよりも下の壁厚を有するモノリスを調製する試みは、不十分な凝集力、したがって非常に低い機械的特性を有するモノリスをもたらした。これらのモノリスは、いかなるガス吸着用途向けにも不適であった。
【0228】
多孔性炭素質モノリスの孔隙率
炭素質モノリスのミクロ多孔性は、両技術とも本明細書で前に記載された、N2ポロシメトリーによって測定し、そして一方、マクロ多孔性は、Hgポロシメトリーによって評価した。結果は、モノリスが3種類の孔隙率:ミクロ多孔性と、粒子内孔隙率である、マクロ多孔性と、粒子間に位置する、したがって粒子間マクロ多孔性と称されるマクロ多孔性とを示すことを裏付けた。
【0229】
表4に集められた結果は、本発明による粒子のおよびモノリスの微小孔容積および比表面積が、比較例のマイクロビーズのおよびモノリスの微小孔容積および比表面積に似ていたことを明らかに示す。したがって、小さい炭素質粒子の凝集体を含む炭素質モノリスの形成は、ミクロ多孔性に害を及ばさない。
【0230】
【0231】
さらに、表5に集められた結果は、本発明によるモノリスの全マクロ孔容積が、比較例からのモノリスの全マクロ孔容積に近かったことを示す。
本発明によるモノリスであるM1の場合には、Hgポロシティ測定によって粒子間マクロ孔から粒子内マクロ孔を識別することは不可能であった。しかしながら、それらの両方が、このモノリスM1について測定された高い全マクロ孔容積によって明らかにされるように存在する。
【0232】
【0233】
多孔性炭素質粒子およびモノリスの選択的CO2容量
粒子に関する実験は、0.5~0.9gの吸着剤を詰め込んだ、約10cmの長さおよび0.6cmの内径のカラムを使用して行った。モノリスに関する実験は、8~12cmの長さおよび約1cm2の横断面のモノリスに関して行った。モノリスを入口および出口管材料に直接接続した。
【0234】
選択的CO2容量、QCO2を表6に報告する。
【0235】
【0236】
意外にも、本発明による方法によって得られた粒子の選択的CO2容量、QCO2は、両方ともより高い平均径を有する、商業的に入手可能な炭素質粒子の容量に、または商業的に入手可能な塩化ビニリデンコポリマーの熱分解から生じる炭素質粒子の容量に似ていた。
【0237】
さらに、本発明のハニカムモノリスは、等価壁厚および等価セル密度で、CarboTech AC GmbH製のハニカムモノリスの性能に関して改善された性能を有した。これは、CarboTechモノリスが、多孔性炭素吸着剤の次に、全体吸着容量を低下させる不活性無機バインダーを含有したという事実のためである。
【0238】
実験セットアップが、研究される粒子を詰め込んだカラムを通しての窒素ガスフローを必要としたので、CP6の場合にもCP7の場合にもQCO2を側定することは不可能であった。CP6またはCP7のケースのように、粒子のサイズが非常に低い場合、本発明者らは、カラムの閉塞、したがっていかなる測定を実施するのも不可能であることに気付いた。最後に、この観察は、それらの詰められた微細粒子内の、粒子内かそれとも粒子間の、マクロ多孔性の存在の問題を疑問の余地があるものにした。
【0239】
一般に、モノリスの選択的CO2容量は、対応する粒子の選択的容量よりもわずかに低かった(それぞれ、CP1をM1と、CP2をM2と、CP4をM3と比較されたい)。モノリスM1の容量が、比較例M3の容量と似ており、そして一方、モノリスM2の容量がより高かったことは、注目に値する。
【0240】
これらの結果は、本発明による方法が、高い選択的CO2容量を維持しながら、低い平均径を有する多孔性炭素質粒子の、および低い壁厚、典型的には1000μmよりも下の壁厚を有するモノリスの製造を可能にしたという証拠を示した。
【0241】
有効粒子拡散率
有効粒子拡散率は、システムが、前に記載されたような速度支配下にあることを確実にしながら測定した。異なる粒子についての結果を表7に報告する。
【0242】
【0243】
結果は、有効粒子拡散率が、炭素質粒子のマクロ孔構造によって強く影響を受けたことを明らかにする。一方では、比較例から、最適化マクロ孔構造(150μmよりも大きい平均径)を有する粒子については、CO2拡散定数は5.10-10m2/秒の上の範囲にあった(CP4およびCP5を参照されたい)が、マクロ孔構造が縮小している粒子(5ミクロンに近い直径を有する粒子(CP6およびCP7を参照されたい))については、CO2拡散定数は3桁低かったことを理解することができる。他方では、本発明による実施例(CP1~CP3)は、中間平均径を有する粒子が意外にも、150μmよりも大きい平均径を有する粒子のCO2拡散定数よりも1桁または2桁低いにすぎないCO2拡散定数を有したことおよび、その結果として、それらが、サイズとCO2拡散との間の良好なトレードオフを示すことを明らかにする。
【0244】
異なる原材料、PVDC(CP6)またはココナツ(CP7:Kuraray YP50F)から出発して製造された類似の粒径を有する粒子が、類似のCO2拡散定数を有したことを指摘することもまた興味深い。
【0245】
拡散実験で、本出願人は、本発明による炭素質粒子が、低い壁厚および高いCO2拡散定数を有する炭素質モノリスの製造と相性がよい平均径を有したことを示している。
【0246】
さらに、本出願人は、本発明による方法が、高いCO2拡散定数を有する前記炭素質粒子を製造するのに特によく適していたことを示している。
【0247】
加えて、本出願人は、本発明による塩化ビニリデンポリマーを含む多孔性粒子が、高いCO2拡散定数および小さい直径を有する炭素質粒子の製造にならびに、低い壁厚および高いCO2拡散定数を有するモノリスの製造に特に好適であったことを示している。
【0248】
本出願人は、本発明による方法が、塩化ビニリデンポリマーを含む前記多孔性粒子を製造するのに特によく適していたことを示している。
【0249】
これらの方法の中で、塩化ビニリデンポリマーを含む粒子の極低温粉砕は、結果として生じた粒子のスパンが2.5よりも下に保たれていたという点において、先行技術に記載された氷の存在下での粉砕よりも利点を有した。その結果として、粒子分布は、いくらかの閉塞に関与する可能性がある微細粒子を含まなかったし、不十分な凝集力、したがって低い機械的特性を有するモノリスに関与する可能性がある大きい粒子を含まなかった。最後に、本出願人は、炭素質粒子の極低温粉砕が、炭素質粒子のジェットミリングよりも、適用されるエネルギーがより良好に制御されたという利点、およびその結果として粒子が非常に小さいサイズの物(CP3をCP6と比較されたい)として噴霧されなかったという利点を有したことを示している。粉砕プロセスのこのより良好な制御は、本発明による粒子の容易な製造を可能にした。
【図面の簡単な説明】
【0250】
【
図2】Solvay Specialty Polymersによって商業化されているIXAN(登録商標)PV925塩化ビニリデンコポリマーの粒度分布を示す。
【
図3】極低温粉砕プロセスで粉砕されたSolvay Specialty Polymersによって商業化されているIXAN(登録商標)PV925塩化ビニリデンコポリマーの粒度分布を示す。
【
図4】PVDC1(平均径96μm)から調製された低い壁厚の溝付きモノリスの写真を示す。
【
図5】IXAN(登録商標)PV925(平均径201μm)から調製された大きい壁厚の溝付きモノリスの写真を示す。