(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)および肝線維症のための併用療法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/46 20060101AFI20221114BHJP
A61K 31/4375 20060101ALI20221114BHJP
A61K 31/575 20060101ALI20221114BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221114BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20221114BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
A61K31/46 ZMD
A61K31/4375
A61K31/575
A61P43/00 111
A61P1/16
A61P29/00
(21)【出願番号】P 2019536198
(86)(22)【出願日】2017-12-28
(86)【国際出願番号】 US2017068728
(87)【国際公開番号】W WO2018126016
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-11-26
(32)【優先日】2016-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519234349
【氏名又は名称】モデュネクス・バイオ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100128750
【氏名又は名称】廣瀬 しのぶ
(72)【発明者】
【氏名】ラウ,ウォルター
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ショー,ショーナン
【審査官】春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/040860(WO,A1)
【文献】Perez-Martinez, L. et al.,Maraviroc, a CCR5 antagonist, ameliorates the development of hepatic steatosis in a mouse model of non-alcoholic fatty liver disease (NAFLD),The Journal of Antimicrobial Chemotherapy,2014年,Vol.69, No.7,p.1903-1910,doi:10.1093/jac/dku071
【文献】荒瀬 康司,NASHの治療はどこまで進歩したか FXRアゴニスト治療薬の可能性,Mebio,2016年01月,第33巻,第1号,p.80-84
【文献】Kramer, W.,Antilipidemic Drug Therapy Today and in the Future,Handbook of Experimental Pharmacology,2015年,Vol.233,p.373-435,doi:10.1007/164_2015_15
【文献】Akarna Therapeutics Ltd acquired by Allergan plc,[online],BusinessWire,2016年09月20日,[retrieved on 2022.06.13] ,Retrieved from the Internet: <URL: https://www.businesswire.com/news/home/20160920006848/en/Akarna-Therapeutics-Ltd-acquired-by-Allergan-plc>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00-45/08
A61K 31/00-31/80
PubMed
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
C-Cケモカイン受容体5(CCR5)/CCR2仲介性炎症性疾患またはFXR仲介性疾患を有するヒト患者を治療するために、ファルネソイドX受容体(FXR)アゴニストと併用するためのCCR5/CCR2アンタゴニストを含む薬学的組成物であって;
前記FXR仲介性疾患またはC-Cケモカイン受容体5(CCR5)/CCR2仲介性炎症性疾患が
肝線維症、または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)であり;
前記CCR5/CCR2アンタゴニストがマラビロク、
またはMK-0812であり、前記FXRアゴニストがオベチコール酸(OCA)
である、前記薬学的組成物。
【請求項2】
CCR5アンタゴニストがマラビロク
である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
CCR5アンタゴニストがMK-0812
である、請求項
1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
1日1回、2~10mgの間のOCAが患者に投与される、請求項
1~3のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
2~10mgの間のOCAを含む、請求項
1に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
1~5mgの間のOCAを含む、請求項
1に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
有効量のマラビロクを含む、請求項
1、5、または6に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
100~300mgの間のマラビロクを含む、請求項
1、5、または6に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
200~600mgの間のマラビロクを含む、請求項
1、5、または6に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
有効量のMK0812を含む、請求項
1、5、または6に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
2mg~50mgの間のMK0812を含む、請求項
1、5、または6に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
2~8mg、2~7mg、4~6mgの間または5mgのOCAを含む、請求項
1に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年12月28日出願の米国仮出願第62/439,666号の恩典を請求し、該出願の全解説は、本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、潜行性でそして緩慢に進行する疾患であり、生活の質に重大な影響を及ぼす。該疾患は、最終的に、肝硬変、非代償性肝疾患および/または肝細胞癌を生じうる。本質的な特徴は、脂肪肝、炎症性ケモカイン放出、炎症および線維症からの絶えず続く損傷である。炎症に関連する線維症は、疾患進行に関する重要な駆動因子である。臨床試験において、多様な機構を持つ多数の薬剤が試験されてきているが、有効な治療はいまだに認可されていない。
【0003】
現在、いくつかの新規分子が、NASHに関する臨床開発の異なる段階にあるが、最低限の/若干の効果しか報告されてきていない(1、2)。
CCR5アンタゴニストは、HIV治療のためのHIV進入阻害剤として最初に開発された。マラビロクは、この適応症に関して認可された最初の分子である。脂肪肝は、CCL5/ランテスおよびその受容体CCR5を含むケモカインの上昇と関連することが示されてきている(3)。CCR5の他のリガンドには、CCL3、CCL4、CCL7、CCL13、およびCCL16が含まれる。マラビロクによるCCR5の阻害は、動物モデルにおいて、NASスコアおよび線維症の減少に有効であることが示されてきている(4)。肝線維症の減少は、HCVに感染しながらマラビロク治療を受けているHIV患者で観察されてきている(5)。近年の研究によって、CCR5およびCCR2の両方をターゲティングするセニクリビロクがNASHに最低限の効果を有し、そして線維症に比較的より有意な効果を有することが示されてきている(2、6)。セニクリビロクは、NASHに関して臨床的開発下にある。別の臨床段階CCR5アンタゴニストはビクロビロク(vicroviroc)である。NASHに対するCCR5アンタゴニストの主要な効能は、主に、線維症に対する効果に反映され、NASスコアに対しては、より小さい効果を持つ(2)。CCR2もまた、肝線維症における重要な作用因子としても報告されてきている(7)。
【0004】
オベチコール酸(OCA)は、6α-エチル-ケモデオキシコール酸の化学構造を持つ半合成胆汁酸類似体である。作用機構は、ファルネソイドX受容体(FXR)を活性化することを通じる。該物質は、いくつかの肝疾患および関連障害に関する薬剤として臨床的開発を経ている。該物質は、2016年、US FDAによる原発性胆汁性胆管炎(primary biliary cholangitis)の治療に関して認可されてきている(8)。NASHに関する臨床プログラムは、第3相開発下にある。
【0005】
前臨床毒性試験によって、OCAの毒性のターゲット系は、肝胆道系であることが示されてきている。ラットにおける26週経口毒性研究において、OCAでの治療は、臨床化学パラメータの変化(例えばALT、ASTおよびALPの増加)、肝重量増加および胆管過形成を生じた(9)。イヌにおける9ヶ月経口毒性研究において、OCAは、肝機能に関連しうる毒性の臨床徴候(皮膚、粘膜、および眼の黄変)およびALTレベル上昇を生じた。肝毒性はまた、臨床試験においても報告されており;100患者曝露年(PEY)あたりの、すべての深刻なおよびそうでなければ臨床的に重大な肝臓関連副作用および肝臓生化学試験における孤発性(isolated)上昇に関する曝露調整罹患率(exposure-adjusted incidence)は:プラセボ群での2.4%に比較して、10mg群では5.2%、25mg群では19.8%、そして50mg群では54.5%であった(10)。
【0006】
OCAは、掻痒およびHDL減少を含む、用量関連副作用を引き起こすことが示されてきている。掻痒は、OCAの最も一般的な副作用の1つであり;頻度は最高80%と報告されてきており;掻痒による用量関連中断もまた報告された。重度の掻痒は、OCAに関する米国添付文書の警告および注意の1つとして列挙され;ときには、投薬量減少および/または一時的投薬中断が必要であろう(8)。FXRをターゲティングするいくつかの他の新規分子実体が、開発の異なる段階下にある。
【0007】
CCR5またはCCR2/5アンタゴニスト、あるいはOCAをFXRアゴニストとして用いるFXR経路を通じたターゲティングによって、若干から中程度の効果が達成されることを、臨床および前臨床データの両方が示した(1、2)。これは、OCAが、18ヶ月の治療後の読み出し(readout)を伴う、2000人のNASH患者での臨床試験下にある(10)ことの理由の1つでありうる。前臨床的に、効果はやはり若干である。前臨床およびヒトのデータによって、CCR5またはCCR2/5アンタゴニストを用いたCCR5またはCCR2/5のターゲティングは、線維症を減少させる際に有効であるが、NASスコアまたは脂肪肝でははるかにより小さい効果しか観察されないことが示された(2)。NASHは慢性疾患であり、そして大部分の患者は、疾患の良性の原因を有し;このため、有効であることに加えて、非常に安全な治療オプションを有することが必須である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、全体の有効性が増加するようにNASH/肝線維症を治療し、そして安全性プロファイルを改善する、改善法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書において、ここで、CCR5もしくはCCR2阻害剤またはCCR2/5をターゲティングする分子(単数または複数)およびFXRアゴニストの併用は、FXRを完全用量よりも低い用量で投与した場合であっても、いずれかの剤単独よりも、より少ない副作用で、NASHの治療により有効であることが見出されてきている。
【0010】
特に、NASHのマウスモデルにおいて、CCR5阻害剤、マラビロクおよびFXRアゴニスト、オベチコール酸(OCA)を各々単独で、そして併用して投与した際、以下のことが観察された(実施例を参照されたい):
・併用療法は、NASスコアを減少させる際に、いずれかの単一剤単独よりも、より有効であった(
図1A)。
【0011】
・併用療法は、肝線維症を減少させる際に、いずれかの単一剤単独よりもより有効であった(
図3A)。
・併用療法は、肝臓炎症スコアを減少させる際に、いずれかの単一剤単独よりもより有効であった(
図4A)。
【0012】
・併用療法は、肝細胞膨張スコアを減少させる際に、いずれかの単一剤単独よりもより有効であり(
図5A)、そして膨張に対する相乗効果が示された。さらに、両剤の半分の用量を投与した際に、膨張が存在しないことが観察された。
【0013】
・併用療法は、脂肪肝スコアを減少させる際に、いずれかの単一剤単独よりもより有効であった(
図6A)。
・完全用量CCR5/CCR2アンタゴニストとOCAの用量減少(OCAの半分の用量またはさらにより大きい減少)は、長期慢性治療セッティングにおいて、適切な有効性を生じうるが、毒性を減少させうる。
【0014】
さらに、OCAで治療したマウスで観察されるASTおよびALP肝臓酵素の上昇は、MVCおよびOCAの両方で治療したマウスでは観察されず(
図7A~8A)、OCAによって引き起こされる望ましくない肝臓毒性は、MVCとの同時治療によって軽減されうることを示した。これらの発見に基づいて、CCR5アンタゴニスト(および/またはCCR2アンタゴニスト)およびFXRアゴニスト(例えばOCA)で、NASHおよび他のC-Cケモカイン受容体5(CCR5)仲介性(および/またはCCR2仲介性)炎症性疾患を治療する方法を、本明細書に開示する。CCR5アンタゴニストMCVの代わりにCCR2アンタゴニストMK0812を投与した際(
図7Bおよび8B)、またはCCR5阻害剤マラビロクおよびCCR2アンタゴニストMK0812を併用したCCR2/5での治療(データ未提示)で、類似の観察が注目された。
【0015】
本発明の1つの態様は、C-Cケモカイン受容体5(CCR5)仲介性炎症性疾患;CCR2受容体仲介性炎症性疾患;またはCCR2/5受容体仲介性炎症性疾患を有するヒト患者の治療法である。該方法は、有効量のCCR5アンタゴニスト(例えばマラビロク、ビクリビロク、またはセニクリビロク);またはCCR2アンタゴニスト(例えばMLN-1202(AB)、CCX-140、PF-4136309、JNJ-17166864、AZD-2423、INCB-003284、BMS-741672、MK-0812、PF-04634817);あるいはCCR2/5アンタゴニスト(例えばセニクリビロク)、および有効量のファルネソイドX受容体(FXR)アゴニストを、該患者に投与する工程を含む。
【0016】
本発明の別の態様は、C-Cケモカイン受容体5(CCR5)仲介性炎症性疾患を有するヒト患者を治療する方法であって、有効量のCCR5アンタゴニストおよび有効量のファルネソイドX受容体アゴニストを、該患者に投与する工程を含む、前記方法である。本発明の別の態様は、C-Cケモカイン受容体2(CCR2)仲介性炎症性疾患を有するヒト患者を治療する方法であって、有効量のCCR2アンタゴニストおよび有効量のファルネソイドX受容体アゴニストを、該患者に投与する工程を含む、前記方法である。本発明の別の態様は、C-Cケモカイン受容体、CCR2/5仲介性炎症性疾患を有するヒト患者を治療する方法であって、有効量のCCR2/CCR5アンタゴニストおよび有効量のファルネソイドX受容体アゴニストを、該患者に投与する工程を含む、前記方法である。
【0017】
本発明の別の態様は、FXRアゴニストによって、FXR仲介性疾患、例えばNASHまたは胆汁性肝硬変(biliary cirrhosis)または適用可能な適応症を治療するための方法である。該方法は、有効量のファルネソイドX受容体(FXR)アゴニストを、有効量のCCR5アンタゴニストと併用投与して、FXRアゴニストの安全性プロファイルおよび/または有効性を改善する工程を含む。
【0018】
本発明の別の態様は、FXRアゴニストによって、FXR仲介性疾患、例えばNASHまたは胆汁性肝硬変または適用可能な適応症を治療するための方法である。該方法は、有効量のファルネソイドX受容体(FXR)アゴニストを、有効量のCCR2アンタゴニストと併用投与して、FXRアゴニストの安全性プロファイルおよび/または有効性を改善する工程を含む。
【0019】
本発明の別の態様は、FXRアゴニストによって、FXR仲介性疾患、例えばNASHまたは胆汁性肝硬変または適用可能な適応症を治療するための方法である。該方法は、有効量のファルネソイドX受容体(FXR)アゴニストを、有効量のCCR2/5アンタゴニストと併用投与して、FXRアゴニストの安全性プロファイルおよび/または有効性を改善する工程を含む。
【0020】
開示する併用療法は、CCR5および/またはCCR2仲介性炎症性疾患またはFXR仲介性疾患、例えばNASHを、(1)増進した有効性、および(2)副作用、特にOCAまたはその類似体の投与に関連する副作用の実質的な減少、すなわち肝臓酵素上昇に対するより少ない影響、ならびに掻痒のより低い重症度および頻度を伴って治療するために有効であり、そして(3)FXRアゴニストの完全用量を減少させて、副作用を減少させる一方、共同効果を達成することも可能である。開示する併用療法を用いると、OCAを単独で投与した際よりも、匹敵する有効性を達成するために、より少ない用量のOCAしか必要としないと予期される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1Aは、NASHのマウスモデルにおいて、単独で投与したOCAおよびMVCがNASスコアの若干の減少と関連するが、OCAおよびMCVの両方を併用して、例えば完全用量の併用および半分の用量の併用で投与すると、より実質的な効果が得られたことを示す棒グラフである。
図1Bは、NASHのマウスモデルにおいて、単独で投与したOCAおよびCCR2アンタゴニスト(MR0812)がNASスコアの若干の減少と関連するが、OCAおよびMK0812の両方を併用投与すると、より実質的な効果が得られたことを示す棒グラフである。CCR2アンタゴニスト単独またはOCAの半分の用量がほとんど効果を持たなかったことを考慮すると、30mg/kgの代わりに15mg/mgのOCAの半分の用量を、10mg、1日2回のMK0812とともに投与した際、特に特筆すべき効果が注目された。
【
図2】
図2Aは、NASHマウスモデルにおいて、単独で投与したOCAおよびMVCが、コラーゲン染色によって明らかになるように、線維症の減少と関連するが、OCAおよびMCVの両方を併用投与した際に、より実質的な効果が観察されたことを示す肝臓組織像である。
図2Bは、NASHのマウスモデルにおいて、単独でまたは併用でのコラーゲン染色によって明らかになるように、単独で投与したOCAおよびMK0812が、線維症の減少と関連したことを示す肝臓組織像である。
【
図3】
図3Aは、NASHのマウスモデルにおいて、単独で投与したOCAおよびMVCが線維症スコアの減少と関連するが、OCAおよびMCVの両方を併用投与すると、より実質的な効果が観察されたことを示す棒グラフである。
図3Bは、NASHのマウスモデルにおいて、単独で投与したOCAおよびMK0812が線維症スコアの減少と関連するが、OCAおよびMK0812の両方を併用投与すると、より実質的な効果が観察されたことを示す棒グラフである。(30mg/kgの代わりに15mg/kgという)OCAの半分の用量を、(10mg、1日2回の)MK0812とともに投与したことは注目に値した。
【
図4】
図4Aは、NASHのマウスモデルにおいて、単独で投与したOCAおよびMVCが肝臓炎症の減少と関連するが、OCAおよびMCVの両方を併用投与すると、より実質的な効果が得られたことを示す棒グラフである。
図4Bは、NASHのマウスモデルにおいて、単独で投与したOCAおよびMK0812が肝臓炎症の減少と関連するが、OCAおよびMK0812の両方を併用投与すると、より実質的な効果が現れたことを示す棒グラフである。
【
図5】
図5Aは、NASHのマウスモデルにおいて、MVCが肝細胞膨張スコアの減少と関連するが、OCAおよびMCVの両方を併用投与すると、より実質的な効果が観察されたことを示す棒グラフである。肝細胞膨張に対するOCAの効果は最低限にしか見られなかった。MCVおよびOCAの両方を用いると、膨張に対する効果は、単一剤単独よりも大きい。さらに驚くべきことに、MCVおよびOCAの両方を半分の用量で投与すると、膨張はまったく検出されなかった。
図5Bは、NASHのマウスモデルにおいて、MK0812およびOCAの両方が、肝細胞膨張スコアの減少と関連したことを示す棒グラフである。
【
図6】
図6Aは、NASHのマウスモデルにおいて、OCAが脂肪肝の減少と関連する一方、MVC単独では脂肪肝に対して最低限の効果しか観察されなかったことを示す棒グラフである。OCAおよびMCVの両方を併用投与すると、脂肪肝に対してより実質的な効果が得られた。
図6Bは、NASHのマウスモデルにおいて、OCAが脂肪肝の減少に関連する一方、MK0812単独または半分の用量のOCAでは、脂肪肝に対して明らかな効果は観察されなかったことを示す棒グラフである。しかし、MK0812と半分の用量のOCAの併用は、OCAの完全用量と同程度に有効である。
【
図7】
図7Aは、NASHのマウスモデルにおいて、OCA単独の投与が、肝臓酵素ASTの上昇と関連したことを示す棒グラフである。この副作用は、MVC単独またはOCAおよびMVCで治療したマウスでは観察されなかった。OCAで治療したマウスおよびOCA/MVCで治療したマウスの間のASTの相違は、統計的に有意である。
図7Bは、NASHのマウスモデルにおいて、OCA単独の投与が、肝臓酵素ASTの上昇と関連したことを示す棒グラフである。この副作用は、MK0812単独またはOCAおよびMK0812で治療したマウスでは観察されなかった。OCAで治療したマウスおよびOCA/MK0812で治療したマウスの間のASTの相違は、統計的に有意である。
【
図8】
図8Aは、NASHのマウスモデルにおいて、単独で投与したOCAが、肝臓酵素ALPの上昇と関連するが、MVCまたはOCAおよびMVCで治療したマウスではこうした上昇は見られなかったことを示す棒グラフである。OCAで治療したマウスおよびOCA/MVCで治療したマウスの間のALPの相違は、統計的に有意である。
図8Bは、NASHのマウスモデルにおいて、単独で投与したOCAが肝臓酵素ALPの上昇と関連するが、MK0812で治療したマウスではこうした上昇は見られなかったことを示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
「C-Cケモカイン受容体5(CCR5)仲介性炎症性疾患」は、少なくとも部分的に、CCR5軸(CCR5のリガンド、例えばCCL3、CCL4、CCL5、CCL XおよびCCR5受容体を含む)の異常な活性によって引き起こされる炎症により特徴付けられるか、またはその症状が少なくとも部分的にCCR5の阻害によって軽減されうる、疾患または状態を指す。CCR5仲介性炎症性障害の例には、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、線維性疾患(例えば肝線維症、腎線維症および肺線維症)および原発性硬化性胆管炎(primary biliary sclerosis)が含まれる。「C-Cケモカイン受容体2(CCR2)仲介性炎症性疾患」は、少なくとも部分的に、CCR2軸の異常な活性によって引き起こされる炎症により特徴付けられる、疾患または状態を指す。「CCR5/CCR2仲介性炎症性疾患」は、少なくとも部分的に、CCR5軸および/またはCCR2軸の異常な活性によって引き起こされる炎症により特徴付けられる、疾患または状態を指す。
【0023】
FXR仲介性疾患は、少なくとも部分的に、FXRの異常な活性によって引き起こされる疾患、例えばNASHまたは原発性硬化性胆管炎を指す。
「CCR5/CCR2アンタゴニスト」は、CCR5および/またはCCR2を阻害する化合物を意味する。
【0024】
「CCR5アンタゴニスト」は、CCR5を阻害する、マラビロク(MVC)、ビクリビロクおよびセンチビロク(centiviroc)を含む、高度に類似した種特異的アンタゴニストのファミリーを意味する。
【0025】
マラビロクは、現在、HIV適応症の治療のため、Selentryの商標の下に、ファイザー、ニューヨーク州ニューヨークが認可を受けている。
ビクリビロクは、旧シェリング・プラウによって開発され、現在、Merck/MSD、ニュージャージー州ケニルワースによって市販されている、CCR5アンタゴニストである。
【0026】
セニクリビロクは、Tobira、サウスサンフランシスコ、CA94080によって、NASHおよびHIVの治療のために開発中である、CCR5およびCCR2二重アンタゴニストである。
【0027】
CCR2アンタゴニストは:MLN-1202(AB)、CCX-140、PF-4136309、JNJ-17166864、AZD-2423、INCB-003284、BMS-741672、MK-0812またはPF-04634817を含む、CCR2を阻害する、高度に類似した種特異的アンタゴニストのファミリーを意味する。
【0028】
FXRアゴニストには、オベチコール酸(OCA)が含まれ、これは、Intercept Pharmaceuticals、450 W 15th street, Suite 505, floor 5, New York, NY 10011によって原発性胆汁性胆管炎に関して認可された臨床段階化合物であり、OCAは、NASHに関して第3相臨床開発中である。やはり含まれるのは、Phenex、ドイツ・ルートヴィヒスハーフェンによって開発下にあり、Gilead、カリフォルニア州フォレストシティが共同出資している、FXRアゴニストであるPX104;およびAkama Therapeuticsによって開発され、Allergan、カリフォルニア州アーバインが取得するはずのAKN-083である。
【0029】
本特許はまた、CCR5、CCR2またはCCR2/5アンタゴニスト、例えばマラビロクおよびビクリビロクおよびセニクリビロクの重水素化型も含む。これらの重水素化CCR5、CCR2またはCCR2/5アンタゴニストは、それぞれ、CCR5、CCR2またはCCR2/5アンタゴニストの対応する非重水素化型と類似の、CCR5、CCR2またはCCR2/5拮抗作用を通じた作用機構を有する。
【0030】
「有効量」は、CCR5/CCR2仲介性炎症性疾患またはFXR仲介性疾患を有するヒト患者に投与した際に、望ましい療法効果を達成する、CCR5アンタゴニストの量、CCR2アンタゴニストの量またはCCR2/5アンタゴニストの量、およびFXRアゴニストの量を指し、例えば異なるCCR5アンタゴニストが異なる用量で投与され:マラビロクに関しては、用量は、100~300mgを1日2回、または200~600mgを1日1回であり、ビクリビロクに関しては、用量は、5~50mgを1日1回であり、そしてセニクリビロクは、50mg~400mgを1日1回であり、そしてMK0812は2mg~50mgを1日1回または2回である。あるいは、有効量を決定するため、当業者は、認可された薬剤各々の製品ラベルを参照することも可能であり、すなわち、CCR5アンタゴニストは、臨床的に認可された用量またはより低い用量で、例えば1日1回経口で、OCAと併用投与される。CCR5アンタゴニスト、例えばマラビロクまたはビクリビロクを、単独で、またはOCAとの固定用量併用で投与してもよい。また、CCR2またはCCR2/5をターゲティングする剤を、単独で、またはOCAとの固定用量併用で投与してもよい。
【0031】
10mgの出発用量または用量設定(titration)用量のいずれかで投与される、臨床的に認可された10mgでのOCAは、用量関連副作用と関連する。最も重大な副作用事象は、掻痒およびHDL減少である。プラセボ群の38%に比較して、10mg、1日1回および用量設定措置では、それぞれ、56%および70%の掻痒が報告された。重度の掻痒は、OCAを投与された患者のおよそ19~23%で報告された(7)。HDLの用量関連減少もまた報告された。CCR5アンタゴニスト、またはCCR2アンタゴニストまたはCCR5/CCR2アンタゴニストと併用すると、OCAを単独で投与した際に匹敵する有効性を達成するために、より少ない用量のOCAしか必要とされないであろうと予期される。この場合、CCR5アンタゴニストまたはCCR2アンタゴニストまたはCCR2/5アゴニストと併用した、2~10mg、2~8mg、2~7mg、4~6mgまたは5mgまたは10mg未満の用量のOCAが、将来の臨床用量となるであろう。
【0032】
本明細書に引用されるすべての参考文献は、本明細書に援用される。
【実施例】
【0033】
本発明者らは、NASHおよび線維症が、真正糖尿病および高脂肪食餌の連続誘導によって誘導された、よく検証されたマウスモデルを利用している(14)。第2日、C57BL/6Jマウスにストレプトゾシンを注射し、次いで第4週から第9週まで、高脂肪食餌で処置した。介入治療は、第5週に開始し、第9週まで続けた。第9週にこれらのマウスを安楽死させた。NASHおよびその続く疾患プロセスへの介入を、45mg/kgの用量で1日1回経口でのCCR5アンタゴニスト、マラビロク、および30mg/kgのOCA、1日1回を、単独でまたは併用してのいずれかで4週間投与することによって行った。
【0034】
図1Aに示すように、CCR5アンタゴニスト、マラビロクは、単独で、NASスコアに限定された効果を有し、そしてOCAは、単独で、NASスコアの若干の減少のみを引き起こした。CCR5アンタゴニストとOCAの併用は、NASスコアの有意な減少を導き、そしてNASスコアを減少させる際にいずれかの単一剤単独よりもより有効であった。非アルコール性脂肪性肝炎臨床研究ネットワークによるコンセンサスにしたがって、NASスコアを決定した(13)。
【0035】
図2Aに示すように、CCR5アンタゴニスト、マラビロクおよびOCAの両方は、コラーゲン染色によって明らかであるように、線維症を減少させる際に有効であった(
図2A)。この証拠に基づき、マラビロクは、線維症を減少させる際に、OCAよりより有効である。CCR5アンタゴニストとOCAの併用は、線維症減少に対して、有意な効果を導いた。非アルコール性脂肪性肝炎臨床研究ネットワークによるコンセンサスにしたがって、線維症スコアを決定した(13)。
図3Aに示すように、線維症に対する影響をまた、線維症スコアによっても定量化し、そしてマラビロクおよびOCAの併用は、線維症スコアのおよそ80%の減少を導いた。
図4Aに示すように、OCAおよびMVC単独の併用は、肝臓炎症の減少に関連したが、OCAおよびMCVの両方を併用投与した際に、より実質的な効果が観察された。
図5Aに示すように、MVCは肝細胞膨張スコアの減少と関連したが、OCAおよびMCVの両方を併用投与した際に、より実質的な効果が観察された。肝細胞膨張に対するOCAの効果は最低限でしかないことが注目された。
図6Aに示すように、OCAは、脂肪肝の若干の減少と関連する一方、MVCでは脂肪肝に対して最低限の効果しか見られなかった。OCAおよびMCVの両方を併用投与した際に、脂肪肝に対するより実質的な効果が得られた。MK0812のようなCCR2アンタゴニストを用いた際に、匹敵する結果が得られた(
図3B~7B)。
【0036】
OCA単独での治療は、前臨床動物研究において、臨床化学パラメータの変化(例えばALT、ASTおよびALPの増加)、肝重量の増加および胆管過形成を生じ、そして推奨されるヒト用量に比較した安全性マージンはわずか2.3倍である(8)。肝臓毒性はまた、臨床試験でも報告され;100患者曝露年(PEY)あたりの、すべての深刻なおよびそうでなければ臨床的に重大な肝臓関連副作用および肝臓生化学試験における孤発性上昇に関する曝露調整罹患率は:プラセボ群での2.4%に比較して、10mg群では5.2%、25mg群では19.8%、そして50mg群では54.5%であった(9)。本研究において、OCAでの治療は、ASTおよびALP上昇を生じたが、この上昇は、MVCおよびOCAの両方で治療したマウスでは観察されず(
図7A~8A)、そしてCCR2アンタゴニストMK0812で類似の知見が注目され、OCAによる望ましくない肝臓毒性は、MVCまたはMK0812での同時治療によって、軽減されうることが示された。
【0037】
非特許引用
参考文献:
【0038】
【0039】