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特許7175901冷媒回路内へ組み込むための膨張ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】冷媒回路内へ組み込むための膨張ユニット
(51)【国際特許分類】
   F25B 11/02 20060101AFI20221114BHJP
   F25B 41/30 20210101ALI20221114BHJP
   F25B 43/00 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
F25B11/02 A
F25B41/30
F25B43/00 B
F25B43/00 K
【請求項の数】 53
(21)【出願番号】P 2019541114
(86)(22)【出願日】2017-01-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 EP2017051943
(87)【国際公開番号】W WO2018137783
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2019-12-18
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】506174360
【氏名又は名称】ビツァー キュエールマシーネンバウ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】ユリアン カービナー
(72)【発明者】
【氏名】オリバー ヤーフェルシェク
(72)【発明者】
【氏名】イェルク ニックル
【合議体】
【審判長】平城 俊雅
【審判官】間中 耕治
【審判官】松下 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-242491(JP,A)
【文献】特表2006-527836(JP,A)
【文献】特開2011-153738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒回路(10)内へ組み込むための膨張ユニット(32)であって、膨張システム(30)を有し、前記膨張システムが、
膨張ユニット(32)へ供給される冷媒の質量流を過冷却するための過冷却ユニット(102)を有し、
互いに連結された膨張器段(86)と圧縮器段(88)とを備えた膨張圧縮ユニット(84)を有し、
分岐部(116)を有し、前記分岐部が膨張ユニット(32)へ供給された全質量流(G)から過冷却質量流(U)を分岐し、かつ供給導管(126)と接続されており、前記供給導管が過冷却質量流を過冷却ユニット(102)の入口(112)へ案内し、
前記供給導管(126)内に設けられた膨張機構(122、124)を有し、前記膨張機構が過冷却質量流(U)を過冷却圧力(PU)へ膨張させ、
前記過冷却ユニット(102)から流出する過冷却質量流(U)を圧縮器段(88)へ供給する接続導管(128)であって、前記圧縮器段(88)は、過冷却質量流(U)還流高圧(PR)に圧縮し、前記圧縮器段(88)によって、還流高圧(PR)に圧縮された過冷却質量流(U)は、冷媒圧縮器ユニット(12)の吐出側の圧力接続端(16)と高圧側熱交換器(22)の入口(24)との間の圧縮質量流(V)に供給される、接続導管(128)を有し、
周囲温度、及び/又は、膨張ユニット(32)及び/又は膨張器段(86)へ供給される冷媒の質量流の温度を検出する、電気的に作動される制御装置(132)であって、この温度に応じて、前記制御装置(132)によって電気的に制御される膨張機構(122)を使用して過冷却質量流(U)を制御することによって、膨張ユニット(32)又は膨張圧縮ユニット(84)の入口圧力を調整する、制御装置(132)を有する、
膨張ユニット。
【請求項2】
分岐部(116)が過冷却ユニット(102)と膨張圧縮ユニット(84)の間に配置されており、かつ過冷却ユニット(102)の下流で全質量流(G)から過冷却質量流(U)を分岐させる、ことを特徴とする請求項1に記載の膨張ユニット。
【請求項3】
過冷却ユニット(102)が熱交換器ユニットとして形成されており、かつ膨張器段(86)へ流れる冷媒の質量流を、これを通して向流で案内される過冷却質量流Uによって冷却する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の膨張ユニット。
【請求項4】
過冷却ユニット(102')が収集容器(262)として形成されており、その中に過冷却質量流(U)の液状の冷媒からなる液槽(264)が形成され、前記液槽が膨張器段(86)へ流れる冷媒の質量流を液槽(264)を通して案内される部材(268)によって冷却し、その場合に液槽(264)の上方にガス体積(266)が形成され、前記ガス体積からガス状の過冷却質量流(U)が除去される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の膨張ユニット。
【請求項5】
制御装置(132)が、周囲温度、及び/又は、過冷却ユニット(102)の入口(104)の上流の、かつ/又は膨張器入口(92)の上流の冷媒の質量流の温度をセンサ(134)によって測定する、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の膨張ユニット。
【請求項6】
制御装置(132)が、プロセッサを有する電子的な制御装置であって、前記制御装置が制御プログラムを用いて膨張機構(122)を電気的に駆動する、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の膨張ユニット。
【請求項7】
膨張圧縮ユニット(84)の膨張器段(86)と圧縮器段(88)が機械的機能的に結合されている、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の膨張ユニット。
【請求項8】
膨張器段(86)と圧縮器段(88)がフリーピストン機械によって形成されており、前記フリーピストン機械内で少なくとも1つのフリーピストン(152、154)がピストンチャンバ(144、146)内で自由に移動可能である、ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の膨張ユニット。
【請求項9】
膨張圧縮ユニット(84)が2つのピストンチャンバ(144、146)を有し、前記ピストンチャンバ内でそれぞれフリーピストン(152、154)が移動可能である、ことを特徴とする請求項8に記載の膨張ユニット。
【請求項10】
フリーピストン(152、154)が互いに結合されて移動可能である、ことを特徴とする請求項8又は9に記載の膨張ユニット。
【請求項11】
各ピストンチャンバ(144)内の第1のフリーピストン(152)が、第1の膨張チャンバ(162)と第1の圧縮チャンバ(166)を互いに分離している、ことを特徴とする請求項8から10のいずれか1項に記載の膨張ユニット。
【請求項12】
各ピストンチャンバ(146)内の第2のフリーピストン(154)が、第2の膨張チャンバ(164)を第2の圧縮チャンバ(168)から分離している、ことを特徴とする請求項8から11のいずれか1項に記載の膨張ユニット。
【請求項13】
2つのフリーピストン(152、154)がピストンチャンバ(144、146)内で互いに対して同軸に配置され、かつ移動可能である、ことを特徴とする請求項8から12のいずれか1項に記載の膨張ユニット。
【請求項14】
第1のピストンチャンバ(144)が第2のピストンチャンバ((146)から分離ボディ(148)によって分離されている、ことを特徴とする請求項8から13のいずれか1項に記載の膨張ユニット。
【請求項15】
2つの膨張チャンバ(162、164)が、分離ボディ(148)に隣接してピストンチャンバ(144、146)内に配置されている、ことを特徴とする請求項8から14のいずれか1項に記載の膨張ユニット。
【請求項16】
2つの圧縮チャンバ(166、168)が、それぞれのフリーピストン(152、154)の膨張チャンバ(162、164)とは逆の側に配置されている、ことを特徴とする請求項8から15のいずれか1項に記載の膨張ユニット。
【請求項17】
フリーピストン(152、154)を連結するカップリング部材(172)が、分離ボディ(148)を通って延びて、かつその分離ボディに対して移動可能である、ことを特徴とする請求項8から16のいずれか1項に記載の膨張ユニット。
【請求項18】
カップリング部材(172)が、それぞれ膨張チャンバ(162、164)を通ってそれぞれのフリーピストン(152、154)まで延びている、ことを特徴とする請求項17に記載の膨張ユニット。
【請求項19】
膨張チャンバ(162、164)への冷媒の供給流がスライダシステム(202)によって制御可能である、ことを特徴とする請求項8から18のいずれか1項に記載の膨張ユニット。
【請求項20】
スライダシステム(202)が、スライダ駆動装置(207)によって制御可能である、ことを特徴とする請求項19に記載の膨張ユニット。
【請求項21】
スライダ駆動装置(207)が電気的な制御装置(203)によって制御されており、前記制御装置がフリーピストン(152、154)の少なくとも1つの位置を、それらに対応づけられた少なくとも1つの位置センサ(204、206)を用いて検出する、ことを特徴とする請求項20に記載の膨張ユニット。
【請求項22】
スライダ駆動装置(207')が、膨張器入口(92)と膨張器出口(94)の間の圧力差によって制御可能である、ことを特徴とする請求項8から20のいずれか1項に記載の膨張ユニット。
【請求項23】
スライダ駆動装置(207')がダブル作用する操作シリンダとして形成されており、その操作シリンダのピストン(205)に、一方で膨張器入口(92)における圧力が供給され、他方では膨張器出口(94)における圧力が供給される、ことを特徴とする請求項22に記載の膨張ユニット。
【請求項24】
スライダ駆動装置(207')が制御スライダ(209)によって制御可能であって、前記制御スライダがピストン(205)への膨張器入口(92)における圧力の供給と膨張器出口(94)における圧力の供給を制御する、ことを特徴とする請求項23に記載の膨張ユニット。
【請求項25】
制御スライダ(209)が、フリーピストン(152、154)の位置を検出する、ことを特徴とする請求項24に記載の膨張ユニット。
【請求項26】
制御スライダ(209)が、フリーピストン(152、154)によって移動可能である、ことを特徴とする請求項25に記載の膨張ユニット。
【請求項27】
膨張ユニット(32)が装置ベース(82)を有し、前記装置ベースに過冷却ユニット(102)と膨張圧縮ユニット(84)が配置されている、ことを特徴とする請求項1から26のいずれか1項に記載の膨張ユニット。
【請求項28】
装置ベース(82)に制御装置(132)が配置されている、ことを特徴とする請求項27に記載の膨張ユニット。
【請求項29】
装置ベース(82)に、高圧入口接続端(34)と膨張圧力出口接続端(36)が配置されている、ことを特徴とする請求項27又は28に記載の膨張ユニット。
【請求項30】
装置ベースに、高圧出口接続端(38)が配置されている、ことを特徴とする請求項27から29のいずれか1項に記載の膨張ユニット。
【請求項31】
装置ベース(82)に、熱交換器接続ユニット(362、372、382)が設けられている、ことを特徴とする請求項27から30のいずれか1項に記載の膨張ユニット。
【請求項32】
熱交換器接続ユニット(362、372、382)の各々が、それぞれの熱交換器のためにそれぞれ三方弁(332、342、352)とそれぞれバイパス(334、344、345)を有している、ことを特徴とする請求項31に記載の膨張ユニット。
【請求項33】
熱交換器接続ユニット(362、372、382)の少なくとも1つが、高圧側の、熱を周囲へ放出する熱交換器(22)と接続されている、ことを特徴とする請求項31又は32に記載の膨張ユニット。
【請求項34】
膨張ユニット(32')が、膨張チャンバ(162、164)の体積に対する圧縮チャンバ(166、168)の体積の商によって定められる第1の体積比を備えた膨張システム(30)を有し、
第1の膨張システム(30a)に第2の膨張システム(30b)が並列接続されており、前記第2の膨張システムの体積比が第1の膨張システム(30a)の体積比よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1から33のいずれか1項に記載の膨張ユニット。
【請求項35】
膨張システム(30a、30b)が、膨張システムの一方(30a)がトランスクリティカル領域内で、膨張システムの他方(30b)がサブクリティカル領域内で作動するようにして、駆動される、ことを特徴とする請求項34に記載の膨張ユニット。
【請求項36】
より大きい体積比を有する膨張システム(30a)がトランスクリティカル領域内で、より小さい体積比を有する膨張システム(30b)がサブクリティカル領域内で作動する、ことを特徴とする請求項35に記載の膨張ユニット。
【請求項37】
膨張システム(30a、30b)の制御装置(132a、132b)が、互いに結合されている、ことを特徴とする請求項34から36のいずれか1項に記載の膨張ユニット。
【請求項38】
膨張ユニット(32")が2つの膨張圧縮ユニット(84a、84b)を有し、そのうちの一方(84a)が、膨張チャンバ(162、164)の体積に対する圧縮チャンバ(166、168)の体積の商によって定められる第1の体積比を有し、かつ他方(84b)が、前記第1の体積比とは異なる第2の体積比を有している、ことを特徴とする請求項1から33のいずれか1項に記載の膨張ユニット。
【請求項39】
第1の膨張圧縮ユニット(84a)の体積比が、第2の膨張圧縮ユニット(84b)の体積比よりも大きい、ことを特徴とする請求項38に記載の膨張ユニット。
【請求項40】
第1の膨張圧縮ユニット(84a)がトランスクリティカル領域内で作動し、第2の膨張圧縮ユニット(84b)がサブクリティカル領域内で作動する、ことを特徴とする請求項39に記載の膨張ユニット。
【請求項41】
前記制御装置が、それぞれの膨張圧縮ユニット(84a、84b)の使用を制御する、ことを特徴とする請求項39又は40に記載の膨張ユニット。
【請求項42】
制御装置(132)が、それぞれの過冷却質量流を介して、膨張器段(86a、86b)へ流れる部分質量流内への膨張質量流の分割を制御する、ことを特徴とする請求項41に記載の膨張ユニット。
【請求項43】
冷媒圧縮器ユニット(12)、該冷媒圧縮器ユニット(12)の圧力側で冷媒回路(10)内に配置された熱を放出する熱交換器(22)、膨張ユニット(32)及び少なくとも1つの熱を吸収する熱交換器(64)を備えた冷却段(62)を有する、冷媒回路(10)において、
膨張ユニット(32)が請求項1から42のいずれか1項に従って形成されている、ことを特徴とする冷媒回路。
【請求項44】
冷却段(62)の下流に相分離器(72)が配置されており、前記相分離器のガス相が吸い込み圧力導管(74)によって冷媒圧縮器(12)へ供給される、ことを特徴とする請求項43に記載の冷媒回路。
【請求項45】
冷却段(62)が、少なくとも1つの膨張機構(66)を有している、ことを特徴とする請求項43又は44に記載の冷媒回路。
【請求項46】
膨張ユニット(32)と冷却段(62)の間に中間圧力収集器(44)が配置されており、その液槽(46)内に冷媒の液体相が集まり、かつ、液槽(46)の上方にあるガス体積(52)内へ冷媒のガス相が集まる、ことを特徴とする請求項43又は44に記載の冷媒回路。
【請求項47】
中間圧力収集器(44)のガス体積(52)から付加質量流(Z)が除去される、ことを特徴とする請求項46に記載の冷媒回路。
【請求項48】
付加質量流(Z)が膨張機構(54)を介して吸い込み圧力導管(74)へ供給される、ことを特徴とする請求項47に記載の冷媒回路。
【請求項49】
膨張機構(54)によって膨張された付加質量流(Z)が、冷却段(62)へ案内されたメイン質量流(H)を熱交換器(58)内で冷却する、ことを特徴とする請求項48に記載の冷媒回路。
【請求項50】
冷却段(62)に冷凍段(212)が並列接続されている、ことを特徴とする請求項43から49のいずれか1項に記載の冷媒回路。
【請求項51】
冷凍段(212)へ供給された冷却質量流(T)が、冷凍段(212)に対応づけられた膨張機構(216)内で膨張する前に、熱交換器(226)を用いて冷凍段(212)内で膨張された質量流によって冷却される、ことを特徴とする請求項50に記載の冷媒回路。
【請求項52】
熱を放出する熱交換器(22)によって冷却された全質量流(G)が、熱交換器(232)を用いて、膨張機構(54)によって膨張された付加質量流(Z)によって冷却される、ことを特徴とする請求項43から51のいずれか1項に記載の冷媒回路。
【請求項53】
膨張ユニット(32)の下流に熱交換器(242)が配置されており、その中で冷却設備の熱交換媒体が膨張質量流(E)によって冷却される、ことを特徴とする請求項43から52のいずれか1項に記載の冷媒回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒回路内へ組み込むための膨張ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の膨張ユニットは、知られている。
【0003】
通常、この種の膨張ユニットは膨張弁によって、あるいはエネルギを発生させる膨張機械によって形成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、エネルギ効率が高い膨張ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、冷媒回路内へ組み込むための、膨張システムを備えた膨張ユニットによって解決され、その膨張システムが、膨張ユニットへ供給される冷媒の質量流を過冷却するための過冷却ユニットを有し;膨張器段と圧縮器段とを備えた膨張圧縮ユニットを有し;分岐部を有し、その分岐部が膨張ユニットへ供給される全質量流から過冷却質量流を分岐させ、かつ供給導管と接続されており、その供給導管が過冷却質量流を過冷却ユニットの入口へ案内し;供給導管内に設けられた膨張機構を有し、その膨張機構が過冷却質量流を過冷却圧力に膨張させ;接続導管を有し、その接続導管が過冷却ユニットから流出した過冷却質量流を圧縮段へ供給し、その圧縮段が過冷却質量流を還流高圧に圧縮し、その還流高圧が、過冷却質量流を供給される圧縮器質量流の少なくとも1つの高圧に相当し;かつ電気的に作動する制御装置を有し、その制御装置が周囲温度及び/又は膨張ユニット及び/又は膨張器段へ供給された冷媒の質量流の温度を検出して、この温度に従って膨張ユニット又は膨張圧縮ユニットの入口圧力を、制御装置によって電気的に駆動される膨張機構を用いて過冷却質量流を制御することによって調節する。
【0006】
本発明に係る解決の利点は、それがエネルギ的に高効率で作動することに見られる。というのは、膨張器段へ流れる質量流を調節するために、膨張器段へ供給される質量流内に絞り機構が設けられないからである。
【0007】
むしろ膨張器段へ流れる、膨張ユニット又は膨張圧縮ユニットの入口圧力にとって重要な質量流の調節は、制御装置によって駆動される膨張機構を用いて過冷却質量流を制御することのみを介して行われるので、膨張器段内で質量流が膨張する際に最大のエネルギ回収が行われ、それを圧縮器段内で過冷却質量流を圧縮するために使用することができるので、それによって同時に、膨張される質量流の最適な過冷却がその膨張前に行われる。
【0008】
そのために特に、膨張機構は電気的に駆動可能なアクチュエータを有している。
【0009】
特に好ましい解決において、過冷却ユニットと膨張圧縮ユニットの間に分岐部が配置されており、かつ過冷却ユニットの後方で全質量流から過冷却質量流が分岐する。
【0010】
この解決は、分岐された過冷却質量流も同様に過冷却ユニット内で前もってすでに冷却されているので、エネルギ的に好ましい。
【0011】
この解決は、特にサブクリティカルな(subcritical、亜臨界の)熱除去において効果的であり、より強い過冷却を有している。
【0012】
さらにこの解決は、膨張圧縮ユニットに由来する脈動が、分岐から離れるように案内される、膨張機構を有する供給導管によって緩衝される、という利点を有している。
【0013】
過冷却ユニットの形成について、これまでは詳しい説明がなされていない。
【0014】
すなわち過冷却ユニットは、様々に形成することができる。
【0015】
1つの解決において、過冷却ユニットは熱交換ユニットとして形成されており、かつ膨張器段へ流れる冷媒の質量流を、それを通して向流で案内される過冷却質量流によって冷却する。
【0016】
他の好ましい解決においては、過冷却ユニットは収集容器として形成されており、その中に過冷却質量流の液状の冷媒からなる液槽が形成され、その液槽が膨張器段へ流れる冷媒の質量流を液槽を通して案内される部材によって冷却し、その場合に液槽の上方にガス体積が形成され、そのガス体積からガス状の過冷却質量流が除去される。
【0017】
この解決は、一方で部材を通して案内される質量流が最適に過冷却され、他方ではガス体積から過冷却質量流を搬出することによって、圧縮段へ液状の冷媒が圧縮のために供給されないことを、保証することができる、という利点を有している。
【0018】
冷媒の質量流の温度の測定に関して、様々な解決が考えられる。
【0019】
ある解決においては、制御装置がセンサを用いて周囲温度及び/又は過冷却ユニットの入口前の冷媒の質量流の温度及び/又はそれが膨張器段へ流入する前の温度を測定する。
【0020】
冷媒の質量流の温度を総括的に検出する他の解決において、冷媒の質量流が過冷却ユニットへ流入する前及び膨張器段へ流入する前のその温度が、それぞれセンサによって測定される。
【0021】
他の解決においては、制御装置がセンサを用いて周囲温度を検出し、それを単独で、あるいは冷媒の質量流が過冷却ユニットへ流入する前かつ/又は膨張段へ流入する前の温度と組み合わせて、膨張機構を制御するために考慮する。
【0022】
制御装置がプロセッサを有する電子的な制御装置であって、その制御装置が制御プログラムを用いて膨張機構を電気的に駆動すると、特に効果的である。というのは、プロセッサによって、測定された温度と、膨張機構によって制御すべき過冷却質量流との間の多様な相関を簡単なやり方で実現することができるからである。
【0023】
特に制御装置のこの形成においては、膨張機構を常に次のように、すなわち過冷却質量流が過熱された状態で過冷却ユニットから流出し、したがって過冷却質量流内の部分的に液化された冷媒が過冷却ユニットから流出して、膨張器段へ供給されることが回避されるように、制御する可能性が生じる。
【0024】
過冷却ユニットから流出する過冷却質量流の温度を監視するために、特に制御装置と接続されたセンサが、過冷却ユニットと膨張器段の間の接続導管内に設けられている。
【0025】
上述した解決において、制御プログラムは特に、膨張機構の駆動を定めるためのアルゴリズムを有するか、あるいは膨張機構の調節を供給された質量流の測定された温度と関連づける記憶された相関テーブルを有するように、形成されている。
【0026】
膨張器段と圧縮器段の接続に関しては、これまで詳しい説明がなされていない。
【0027】
原理的に、膨張器段と圧縮器段はたとえばジェネレータモータユニットによって結合することができる。
【0028】
しかし特に好ましい解決においては、膨張圧縮ユニットの膨張器段と圧縮器段は機械的機能的に結合されている。
【0029】
この種の機械的機能的結合は、膨張器段において生成されたエネルギが機械的結合を介して直接圧縮器段へ伝達されることを意味している。
【0030】
しかしこの解決は、他方で、本発明に係る解決、すなわち膨張器段によって膨張された質量流の制御が簡単なやり方で、圧縮器段によって圧縮された過冷却質量流を介して制御することができる、という利点も有している。
【0031】
原理的に、膨張器段と圧縮器段は、適切な種類の回転駆動される機械によって形成することができる。
【0032】
特に好ましい解決において、膨張器段と圧縮器段はフリーピストン機械によって形成されており、その機械内で少なくとも1つのフリーピストンがピストンチャンバ内で自由に移動可能である。
【0033】
その場合に好ましくは、膨張圧縮ユニットは、2つのピストンチャンバを有し、その中でそれぞれフリーピストンが移動可能であるように、形成されている。
【0034】
さらに好ましくは、フリーピストンは互いに結合されて移動することができる。
【0035】
本発明に係るフリーピストン機械において、好ましくは、それぞれのピストンチャンバ内で第1のフリーピストンが第1の膨張チャンバと第1の圧縮チャンバを互いに分離している。
【0036】
さらに好ましくは、それぞれのピストンチャンバ内で第2のフリーピストンが第2の膨張チャンバを第2の圧縮チャンバから分離している。
【0037】
2つのフリーピストンを好ましいやり方で駆動するために、好ましくは、ピストンチャンバ内で2つのフリーピストンが互いに対して同軸に配置され、かつ移動可能である。
【0038】
好ましくは第1のピストンチャンバが第2のピストンチャンバから分離ボディによって分離されている。
【0039】
膨張圧縮ユニットの好ましい駆動は、2つの膨張チャンバが分離ボディに隣接してピストンチャンバ内に配置されている場合に実現される。
【0040】
さらに好ましくは、2つの圧縮チャンバは、それぞれのフリーピストンの、膨張チャンバに対向する側に配置されている。
【0041】
原理的に、フリーピストンは、互いに独立して作動することができる。
【0042】
しかし好ましい解決においては、フリーピストンを結合するカップリング部材が分離ボディを通って延びており、かつ分離ボディに対して、特に密閉されて、移動可能である。
【0043】
その場合に最も簡単なケースにおいては、カップリング部材は、それぞれ膨張チャンバを通ってそれぞれのフリーピストンまで延びるように、形成されている。
【0044】
膨張チャンバへの冷媒の供給流に関して、好ましくは、膨張チャンバはスライダシステムによって制御可能である。
【0045】
この種のスライダシステムは、たとえば切換スライダとして形成されているので、一方のスライダ位置において冷媒が1つの膨張チャンバ内へ流入して、他の膨張チャンバから流出し、他方のスライダ位置においては冷媒が他の膨張チャンバ内へ流入して、1つの膨張チャンバから流出する。
【0046】
スライダシステムを制御するために、スライダシステムはスライダ駆動装置によって制御可能であり、そのスライダ駆動装置によって2つのスライダ位置が調節可能である。
【0047】
この種のスライダ駆動は電気的な制御装置によって行うことができ、その制御装置がフリーピストンの少なくとも1つの位置を、それに対応づけられた少なくとも1つの位置センサを用いて検出する。
【0048】
その代わりに、好ましい解決においては、スライダ駆動装置は膨張器入口と膨張器出口の間の圧力差によって制御可能である。
【0049】
その場合に好ましくは、スライダ駆動装置はダブル作用する操作シリンダとして形成されており、そのピストンに一方で膨張器入口における圧力が供給され、他方では膨張器出口における圧力が供給される。
【0050】
この種の駆動ユニットを駆動するために、好ましくは、スライダ駆動装置が制御スライダによって駆動可能であって、その制御スライダがピストンへの膨張器入口における圧力の供給と膨張器出口における圧力の供給を制御する。
【0051】
制御スライダは、好ましくは、フリーピストンの位置を検出して、それに応じてフリーピストンを移動させるように、形成されている。
【0052】
特に制御スライダは、フリーピストンによって移動可能である。
【0053】
本発明に係る膨張ユニットを、好ましくは、組立てができた1つのユニットとして供給し、かつ冷媒回路内へ組み込むことができるようにするために、好ましくは、膨張ユニットが装置ベースを有し、その装置ベースに過冷却ユニットと膨張圧縮ユニットが配置されている。
【0054】
さらに、装置ベースに制御ユニットも配置されていると、効果的である。
【0055】
さらに、装置ベースに高圧入口接続端と膨張圧力出口接続端が配置されていると、組み込むために効果的である。
【0056】
さらに好ましい解決において、装置ベースに高圧出口接続端が配置されており、それを介して、膨張ユニットを組み込む場合に圧縮された過冷却質量流が流出する。
【0057】
他の好ましい解決において、装置ベースに熱交換器接続ユニットが設けられており、それに複数の高圧側の熱交換器を接続することができる。
【0058】
その場合に特に、熱交換器接続ユニットの各々は、それぞれ三方弁とそれぞれの熱交換器のためのそれぞれバイパスを有するように、形成されているので、三方弁によって、それぞれの熱交換器の貫流を制御する可能性が生じる。
【0059】
その場合に特に、熱交換器接続ユニットの少なくとも1つが高圧側の、周囲空気へ熱を放出する熱交換器と接続されている。
【0060】
膨張ユニットの他の好ましい実施形態においては、膨張ユニットが、膨張チャンバの体積に対する圧縮チャンバの体積の商によって定められる第1の体積比を備えた膨張システムを有し、かつ第1の膨張システムに対して並列に第2の膨張システムが接続されており、それの体積比は第1の膨張システムのそれとは異なる。
【0061】
この種の膨張ユニットは、異なる体積比を有する2つの膨張システムによって、冷媒の膨張をそれぞれの駆動状態に最適に適合させる可能性が生じるという、利点を有している。
【0062】
膨張システムが、膨張システムの1つがトランスクリティカル領域(transcritical range、遷臨界領域)内で、膨張システムの他のものがサブクリティカル領域(subcritical range、亜臨界領域)内で作動するように、駆動されると、特に効果的である。
【0063】
その場合に好ましくは、より大きい体積比を有する膨張システムがトランスクリティカル領域内で作動し、より小さい体積比を有する膨張システムがサブクリティカル領域内で作動する。
【0064】
これらの膨張システムが関連して作動するようにするために、好ましくは、膨張システムの制御装置が互いに結合されている。
【0065】
膨張圧縮ユニット内に2つの膨張システムを設ける代わりに、好ましくは、膨張ユニットが2つの膨張圧縮ユニットを有し、その一方が圧縮チャンバの体積に対する膨張チャンバの体積からなる商によって定められる第1の体積比を有し、他方は、第1の体積比とは異なる第2の体積比を有する。
【0066】
この場合においても、異なる体積比を有する2つの膨張圧縮ユニットを備えた膨張ユニットによって、種々の駆動条件への最適な適合が可能である。
【0067】
2つの膨張圧縮ユニットを有するこの種の膨張ユニットにおいて、好ましくは、過冷却ユニットは1つだけ設けられており、その1つの過冷却ユニットの後方で、過冷却質量流が一方の膨張圧縮ユニットへ供給されるか、他方の膨張圧縮ユニットへ供給されるか、あるいは両方の膨張圧縮ユニットへ供給される。
【0068】
好ましくはこのような2つの膨張圧縮ユニットにおいて、第1の膨張圧縮ユニットの体積比は第2の膨張圧縮ユニットの体積比よりも大きい。
【0069】
その場合に特に、第1の膨張圧縮ユニットはトランスクリティカル領域内で、そして第2の膨張圧縮ユニットはサブクリティカル領域内で作動する。
【0070】
その場合に制御装置は、第1の膨張圧縮ユニットを使用するか、第2の膨張圧縮ユニットを使用するかを定めることができ、そして場合によって、2つの膨張圧縮ユニットが使用される場合に、膨張質量流をそれぞれの膨張器段へ流れる、膨張圧縮ユニットへの部分質量流へ分割することを、制御することができる。
【0071】
第1又は第2の膨張圧縮ユニットへの膨張質量流Eの分配の制御あるいはそれを膨張圧縮ユニットへ分割することは、しかるべき制御機構による過冷却質量流の制御を介して、あるいはしかるべき制御機構を介して膨張すべき質量流を直接制御することを介して行うことができる。
【0072】
さらに本発明は、冷媒回路に関するものであり、その冷媒回路は冷媒圧縮器ユニット、冷媒圧縮器ユニットの圧力側において冷媒回路内に配置されている、熱を放出する熱交換器、膨張ユニット及び少なくとも1つの熱を吸収する熱交換器を備えた冷却段を有しており、その場合に本発明によれば、膨張ユニットは上述した特徴の1つ又は複数に従って形成されている。
【0073】
原理的に、冷却段を専用の膨張機構なしで駆動し、かつ冷却段内で膨張ユニットによって膨張された質量流によって作業することが、考えられる。
【0074】
この場合において、冷却段に続いて相分離器が配置されており、そのガス相が吸い込み圧力導管から冷媒圧縮器へ供給されると、効果的である。
【0075】
この種の相分離器は、それによって冷媒圧縮器へ液状の冷媒が圧縮のために供給されることが阻止される、という利点を有している。
【0076】
他の好ましい解決において、冷却段は少なくとも1つの膨張機構を有しているので、この膨張機構によって、冷却段内で望まれる圧力を定める可能性が生じる。
【0077】
本発明に係る冷媒回路の他の好ましい変形例においては、膨張ユニットと冷却段の間に中間圧力収集器が配置されており、その液槽内に冷媒の液体相が集まり、かつ液槽の上方にあるガス体積内に冷媒のガス相が集まる。
【0078】
この解決において好ましくは、冷却段の液体相は膨張機構内で膨張するために膨張機構へ供給される。
【0079】
この場合において、中間圧力収集器は、中間圧力収集器による冷媒の中間圧縮によって付加的な過冷却が実現可能である、という利点を有している。
【0080】
中間圧力収集器の場合において、好ましくは、中間圧力収集器のガス体積から付加質量流が除去される。
【0081】
この種の付加質量流は、特に膨張機構を介して吸い込み圧力導管へ供給される。
【0082】
他の好ましい解決においては、膨張機構によって膨張された付加質量流が、熱交換器内で冷却段へ案内されたメイン質量流を冷却し、それによってメイン質量流内でさらに付加的な過冷却が得られる。
【0083】
本発明に係る冷媒回路の他の好ましい変形例においては、冷却段に並列に冷凍段が接続されている。
【0084】
冷凍段の場合において、好ましくは、冷凍段へ供給された冷凍質量流は、冷凍段に対応づけられた膨張機構内で膨張する前に、熱交換器を用いて冷凍段内で膨張した質量流によって冷却される。
【0085】
本発明に係る冷媒回路の他の好ましい変形例において、熱を放出する熱交換器によって冷却された全ガス流が熱交換器を用いて、膨張機構によって膨張された付加質量流によって冷却される。
【0086】
本発明に係る冷媒回路の他の好ましい変形例において、膨張ユニットの後段に熱交換器が配置されており、その中で冷却設備の熱交換媒体が膨張質量流によって冷却される。
【0087】
本発明の他の特徴と利点が、いくつかの実施例についての以下の説明及び図面表示の対象である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
図1】本発明に係る冷媒回路の第1の実施例の略図である。
図2】本発明に係る膨張ユニットの第1の実施例の略図である。
図3】本発明に係る膨張圧縮ユニットの第1の実施例の略図である。
図4】本発明に係る膨張圧縮ユニットの第2の実施例の、図3と同様の略図である。
図5】本発明に係る冷媒回路の第2の実施例の略図である。
図6】本発明に係る冷媒回路の第3の実施例の略図である。
図7】本発明に係る冷媒回路の第4の実施例の略図である。
図8】本発明に係る冷媒回路の第5の実施例の略図である。
図9】本発明に係る膨張ユニットの第2の実施例の略図である。
図10】本発明に係る膨張ユニットの第2の実施例の種々の駆動方法を示す略図である。
図11】本発明に係る膨張ユニットの第3の実施例の略図である。
図12】本発明に係る膨張ユニットの第4の実施例の略図である。
図13】本発明に係る膨張ユニットの第5の実施例の略図である。
図14】本発明に係る膨張ユニットの第6の実施例の略図である。
図15】本発明に係る膨張ユニットの第7の実施例の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0089】
図1に示す、本発明に係る冷凍設備の第1の実施例は、全体を符号10で示す冷媒回路を有しており、その中に全体を符号12で示す冷媒圧縮器ユニットが配置されており、それが、たとえば少なくとも1つの冷媒圧縮器を有している。
【0090】
冷媒圧縮器ユニット12は、吸い込み接続端14と圧力接続端16を有しており、その場合に圧力接続端16には、通常高圧HP1に圧縮された冷媒が存在する。
【0091】
その場合に、「高圧に圧縮された冷媒」というのは、冷媒が、冷媒回路内に存在する最大の圧力を有することである。
【0092】
圧力接続端16から高圧導管18が、冷媒圧縮器ユニット12によって高圧HP1に圧縮された圧縮器質量流Vを、全体を符号22で示す高圧側の熱を放出する熱交換器の入口24へ案内し、その熱交換器は特に周囲空気へ熱を放出し、したがって冷媒を冷却するので、高圧側の熱交換器22の出口26には、高圧側の熱交換器22によって冷却された冷媒の全質量流Gが存在し、それが、熱交換器22に基づいて高圧PH1よりも低い高圧PH2において冷媒を案内する高圧排出導管28によって、全体を符号32で示す高圧調整する膨張ユニット32の第1の実施例へ供給され、その膨張ユニットは、高圧排出導管28と接続された高圧入口接続端34、膨張圧力出口接続端36及び高圧出口接続端38を有している。
【0093】
その場合に膨張圧力PEにある膨張圧力出口接続端36は膨張導管42と接続されており、その膨張導管は、図1に示すもっとも簡単な実施例において冷却段62へ通じており、その冷却段はもっとも簡単な場合において、冷却するために熱を吸収する熱交換器64を有している。
【0094】
この簡略化された実施例において、熱を吸収する熱交換器64は膨張圧力PEにあるので、この熱交換器64の前段には別体の膨張弁は接続されていない。
【0095】
冷媒圧縮器ユニット12を保護するために、熱を吸収する熱交換器64の後段に相分離器72が接続されており、その相分離器は冷却段62から冷媒圧縮器ユニット12の吸い込み接続端14へ通じる吸い込み圧力導管74内に配置されており、かつ液状の冷媒が吸い込み接続端14において冷媒圧縮器ユニット12によって吸い込まれることを阻止する。
【0096】
したがって膨張圧力出口接続端36から膨張質量流Eが膨張導管42を通って冷却段62へ流れ、冷却段62からまた吸い込み圧力導管74を介して冷媒圧縮器ユニット12へ流れる。
【0097】
その場合に膨張質量流Eは、全質量流に相当せず、過冷却質量流Uだけ減少されており、その過冷却質量流は膨張ユニット32から高圧出口接続端38において還流圧力PRで放出されて、熱を放出する高圧側の熱交換器22へ流入する前の圧縮器質量流Vへ供給される。
【0098】
以下で説明する、本発明に係る冷媒回路10は、すべて好ましくは二酸化炭素、すなわちCO2用に考えられているので、一般的な周囲条件において、通常のようにトランスクリティカルサイクルが存在し、それにおいて膨張ユニット32によって冷媒の膨張を実施する前にだけ、たとえば熱交換器22を用いて冷媒を凝縮及び沸点曲線、又は飽和曲線の上方に延びる等温線に相当する温度に冷却することが行われるので、冷媒の液化は存在しない。
【0099】
ただ、高圧側の熱を放出する熱交換器の冷却のための温度がきわめて低い場合にのみ、サブクリティカルサイクルを実施する可能性が生じるので、この場合においては冷媒を、冷媒の凝縮及び沸点曲線、又は飽和曲線を通る等温線に相当する温度に凝縮することが行われる。
【0100】
本発明に基づいて形成された膨張ユニット32の第1の実施例は、図2に示すように、膨張システム30を有し、その膨張システムが全体を符号82で示す装置ベースを有し、その装置ベースに高圧入口接続端34、膨張圧力接続端36及び高圧出口接続端38が配置されている。
【0101】
さらに膨張システム30において、装置ベース82に膨張圧縮ユニット84が接続されており、それが膨張器86と圧縮器88を有しており、それらは膨張圧縮ユニット84内に統合され、かつ互いに堅固に結合されている。
【0102】
膨張圧縮ユニット84は、膨張器入口92、膨張圧力出口接続端36と接続された膨張器出口94及び圧縮器入口96と圧縮器出口98を有し、その圧縮器出口自体はまた高圧出口接続端38と接続されている。
【0103】
さらに、膨張システム30において、装置ベース82に過冷却ユニット102が配置されており、それは、第1の実施例において向流熱交換器として形成されており、冷却すべき質量流のための、特にこの場合においては全質量流のための、入口104と出口106を有し、かつ、熱交換器を通して向流として案内される過冷却質量流Uのための入口112と出口114を有している。
【0104】
膨張システム30において過冷却質量流Uは、分岐116において過冷却ユニット102の出口106で流出する過冷却された全質量流Gから分岐されるので、膨張質量流Eは分岐106から導管を通して膨張器入口92へ案内され、かつ過冷却質量流Uは遮断機構124及びアクチュエータ123によって駆動される膨張機構122を通して供給導管126内で案内され、その膨張機構内で過冷却質量流Uが圧力PUへ膨張されて、その後過冷却ユニット102の入口112へ供給され、その場合に過冷却質量流Uは過冷却ユニット102内で、入口104から出口106へ流れる全質量流Gを向流で過冷却し、かつ出口114から接続導管128によって圧縮器入口96へ供給される。
【0105】
膨張器段86において膨張質量流Eの膨張によって遊離した機械エネルギが膨張圧縮ユニット84内で直接圧縮器段88へ供給されて、その中で過冷却質量流Uを還流高圧PRへ圧縮し、その還流高圧は高圧導管18内の圧力水準HP1に相当し、あるいはそれより高いので、過冷却質量流Uは高圧出口接続端38から高圧還流導管78を介して圧縮器質量流Vへ供給することができる。
【0106】
さらに、膨張システム30内に制御装置132が内蔵されており、その制御装置が一方で、センサ134、特に温度センサによって膨張器段86内の膨張前の冷媒の質量流の温度を検出して、この温度に従って膨張機構122を制御する。
【0107】
そのためにセンサ134は、たとえば分岐116と膨張段86の間にセンサ134として配置されている。
【0108】
その代わりに、あるいはそれを補って、センサ134は、センサ1342として高圧入口接続端34と過冷却ユニット102の間で使用することもできる。
【0109】
その代わりに、あるいはそれを補って特に、センサ134はセンサ1344として周囲温度を測定し、その周囲温度は特に熱交換器22を還流する周囲空気によって、熱交換器22の出口26における冷媒の質量流の温度に標準的に影響を与える。
【0110】
その場合に膨張機構122は、過冷却質量流Uを開ループ制御するため、かつそれによって高圧入口接続端34における高圧PH2とそれに伴って高圧排出導管28内の高圧PH2も、制御装置132内に設けられ、特にその中にデータベース又はアルゴリズムとして記憶されている関係に応じて、センサ134における冷媒の温度に従って、かつそれに伴って高圧PH2にある冷媒を冷却する可能性に従って、たとえば熱交換器22内に冷却するために存在している周囲温度に従って、閉ループ制御するために用いられる。
【0111】
制御装置132は、特にプロセッサ133とメモリ131を有しており、そのメモリ内にアルゴリズム又は相関テーブルが記憶されており、その相関テーブルによって膨張機構122の調節とセンサ134によって測定された温度との間の相関が記憶されているので、制御装置132によって駆動されるアクチュエータ123によって行われる膨張機構122の調節により、高圧入口接続端34に、かつ/又は過冷却ユニット102の入口104に、かつ/又は膨張器入口92に、温度に相当する高圧PH2が生じる。
【0112】
過冷却質量流Uの制御による高圧PH2の閉ループ制御は、可能である。というのは膨張器86を圧縮器88と機械的機能的に結合することによって、膨張質量流Eが固定の体積比に従って直接過冷却質量流Uと関連するので、過冷却質量流Uを設定することによって膨張質量流Eが設定可能となるからである。通常、過冷却質量流Uは全質量流Gの約15%から35%であるので、膨張質量流Eは全質量流Gの約85%から65%である。
【0113】
特に高圧PH2の閉ループ制御は、過冷却ユニット102内で熱い側における、したがって入口104における全質量流Gの温度が、過冷却ユニット102の出口114における過冷却質量流Uの温度をわずかなケルビンだけ、たとえば4ケルビン未満、さらに好ましくは3ケルビン未満、特に1から2ケルビンだけ上回るように行われ、それによって過冷却質量流U内の冷媒は実質的に完全に蒸発される。
【0114】
場合によっては、出口114における過冷却質量流Uの温度を確実に監視することができるようにするために、特に接続導管128内に、制御装置132と接続されたセンサ135が設けられている。
【0115】
装置ベース82に制御装置132、膨張機構122、過冷却ユニット102及び膨張圧縮ユニット84を配置することによって、この装置ベースは全体として冷媒回路10内に自動的に取り付け可能なユニットを形成し、そのユニットは熱を放出する熱交換器22の出口側に存在する高圧の閉ループ制御によって冷媒回路10の駆動状態を閉ループ制御する。
【0116】
図3に示すように、全体を符号84で示す膨脹圧縮ユニットがフリーピストン機械として形成されており、それがシリンダハウジング142を有し、その中に互いに分離された2つのピストンチャンバ144と146が配置されており、その場合に各ピストンチャンバ内に移動可能なフリーピストン152、154が配置されている。
【0117】
その場合にフリーピストン152、154は、それぞれのピストンチャンバ144と146を膨張チャンバ162と164及び圧縮チャンバ166と168に分割する。
【0118】
さらにフリーピストン152と154は好ましくは機械的に互いに結合されており、特に、第1のピストン152において第1の膨張チャンバ162の容積が最大である場合に、第1の圧縮チャンバ166は最小の容積を有し、同時に第2のフリーピストン154においては、その膨張チャンバ164が最小の容積を有する場合に、圧縮チャンバ168は最大の容積を有するように、あるいはその逆に、結合されている。
【0119】
したがって第1の膨張チャンバ162の容積増加は、それが膨張器入口92における高圧によって供給されている場合に、第1の圧縮チャンバ166内の過冷却質量流Uの冷媒の圧縮をもたらし、同時に第2の圧縮チャンバ168内の冷媒を膨張器出口94の方向へ移動させ、かつ圧縮器入口96を介して第2の圧縮チャンバ168内の冷媒の吸い込みをもたらす。
【0120】
逆に第2の膨張チャンバ164に膨張器入口92を介して供給された高圧にある冷媒が供給されることは、第2の圧縮チャンバ168内の冷媒の圧縮とそれに伴って圧縮器出口98へのその移動をもたらし、同時に第1の膨張チャンバ162内の冷媒が膨張器出口94の方向へ移動し、かつ圧縮器入口96を介して第1の圧縮チャンバ166内の冷媒の吸い込みが行われる。
【0121】
好ましくはその場合に第1のフリーピストン152と第2のフリーピストン154は、互いに対して同軸に配置されており、かつ同様に互いに対して同軸に配置されたピストンチャンバ144と146内で移動し、それらのピストンチャンバは分離ボディ148によって互いに分離されており、その場合に分離ボディ148は、2つのフリーピストン152と154の運動を結合するカップリング部材172によって密閉貫通されている。
【0122】
その場合に最も簡単なケースにおいては、カップリング部材172は、分離ボディ148を貫通し、かつフリーピストン152、154と共に移動するカップリングロッドとして形成することができ、そのカップリングロッドはそれぞれフリーピストン152及び154に自由に添接し、したがってそれと堅固に結合されていない。
【0123】
膨張器入口92を介して冷媒が流入する場合に、この膨張チャンバ162内の圧力がそれぞれのフリーピストン152もしくは154に作用し、かつ同時にそれぞれ他のフリーピストン154もしくは152のそれぞれの圧縮チャンバ168もしくは166内では、それぞれの膨張チャンバ164もしくは162内に存在する、膨張器出口94における圧力よりも高い圧力が作用することによって、フリーピストン152もしくは154によって供給される圧縮チャンバ166もしくは168内には、膨張器出口92に生じる高圧よりも高い圧力が発生するので、過冷却質量流Uは圧縮器出口98に生じる圧力に圧縮され、その圧力は、少なくとも、熱を放出する熱交換器の入口24における高圧PH1に、あるいは高圧導管18内の圧力に相当するが、しかし膨張器入口へ提供される高圧PH2は熱交換器22内の圧力損失に基づいて高圧PH1よりも幾分小さい。
【0124】
圧縮チャンバ166と168を圧縮器入口96と接続するために、圧縮器入口96から出る供給導管182が設けられており、その供給導管は圧縮チャンバ166と168に対応づけられた入口弁184と186へ通じており、さらに圧縮器出口98が圧力導管192と接続されており、その圧力導管は圧縮器チャンバ166もしくは168に対応づけられた出口弁194と196から圧縮器出口98へ通じている。
【0125】
膨張器入口92と膨張器出口94を膨張器チャンバ162及び164と交互に接続することは、ピストン位置制御されるスライダシステム202を介して行われる。
【0126】
たとえばスライダシステム202は制御装置203を有し、その制御装置は位置センサ204と206を用いてフリーピストン152もしくは154の位置を検出し、電気的な駆動装置207を用いて全体を符号208で示す切換スライダを制御し、その切換スライダはが2つのスライダ位置を有し、一方のスライダ位置においては膨張器入口92を膨張チャンバ162と、膨張器出口94を膨張チャンバ164と接続し、他方のスライダ位置においては膨張器入口を膨張チャンバ164と、そして膨脹器出口94を膨張チャンバ162と接続する。
【0127】
その代わりに、図4に示すように、スライダシステム202’において切換スライダ208の圧力制御が設けられており、その場合に駆動装置207’がピストン205を備えた圧力制御されるシリンダを有し、そのピストンが補助スライダ209によって制御されて交互に、一方で膨張器入口92における圧力を、そして他方では膨脹器出口94における圧力を、あるいはその逆に供給され、その場合に補助スライダ209は同様に切換スライダとして形成されており、そのスライダ位置は、フリーピストン152と154の、分離ボディ148へ向いた終端位置の位置を機械的に検出することによって行われる。
【0128】
図5に示す、本発明に係る冷媒回路10’の第2の実施例において、第1の実施例におけるのと同一の部材には、同一の参照符号が設けられているので、説明に関しては、第1の実施例に関連した部材についての説明をすべての内容において参照することができる。
【0129】
第1の実施例とは異なり、第2の実施例においては膨張導管42は直接冷却段62へ通じておらず、中間圧力収集器44へ通じており、その中で膨張圧PEにおいて液状の冷媒からなる液槽46が形成されており、その液槽から液状の冷媒が液体導管48を介して冷却第62’へ供給され、その冷却段はこの場合において熱を吸収する熱交換器64だけでなく、さらに遮断機構68と膨張機構66も有している。
【0130】
さらに、液槽46の上方にガス体積52が形成され、そのガス体積から付加質量流Zが膨張機構54を介して吸い込み導管74へ供給される。
【0131】
中間圧力収集器44によって、膨張圧力PEにおいて膨張質量流Eを、液体導管を介して冷却段62’へ供給されるメイン質量流Hと、膨張機構54を介して吸い込み圧力導管74へ供給されるガス状の付加質量流Zに分割する可能性が生じる。
【0132】
図6に示す、本発明に係る冷媒回路10”の第3の実施例において、第1及び第2の実施例の部材と同一の部材には同一の参照符号が設けられるので、その説明に関しては第1及び第2の実施例についての説明をすべての内容において参照することができる。
【0133】
第2の実施例とは異なり、ガス体積52からの付加質量流Zは膨張機構54を介して直接吸い込み圧力導管74へ供給されるのではなく、再度液体導管48内に設けられた過冷却器58を通して案内され、その過冷却器が液体導管48内を流れるメイン質量流Hを再度過冷却する。
【0134】
付加的に冷却段62’は、たとえばノーマル冷却段として形成されており、かつ付加的にさらに冷凍段212が設けられており、それが熱を吸収する熱交換器214及び遮断機構218と膨張機構216を有している。
【0135】
冷凍段212内で膨張した冷媒は、吸い込み導管224を介して冷凍圧縮器ユニット222へ供給され、その冷凍圧縮器ユニットが冷媒を再び、高圧に圧縮するための冷凍圧縮器ユニット12用の吸い込み圧力導管74へ供給することができる程度に、圧縮する。
【0136】
さらに、好ましくは冷凍圧縮器ユニット212の吸い込み圧力導管224内に、さらに過冷却器226が設けられており、それが液体導管48を介して冷凍段212へ供給される冷媒を、冷凍段212内へ流入する前に再度、特に冷凍段212から流出して吸い込み圧力導管224内で案内される膨張した冷媒によって、過冷却する。
【0137】
図7に示す、本発明に係る冷媒回路10’”の第4の実施例において、先行する実施例の部材と、特に第3の実施例と同一の部材には、同一の参照符号が設けられているので、説明に関しては先行する実施例についての説明をすべての内容において参照することができる。
【0138】
特に第3の実施例とは異なり、第4の実施例においては、ガス体積52から流出し、膨張機構54によって膨張した付加質量流Zは熱交換器232を通して案内され、その熱交換器が熱を放出する熱交換器22から流出し高圧排出導管28内で案内されるガス流G(これも同様にこの熱交換器232を通して案内されている)を、それが高圧入口接続端34を介して膨張ユニット32内へ流入する前に、さらに付加的に過冷却する。
【0139】
したがって付加質量流Zはさらに、全質量流Gを膨張ユニット32の高圧入口接続端34内へ流入する前にさらに過冷却するために、利用することができる。
【0140】
図8に示す、本発明に係る冷媒回路10””の第5の実施例において、同様に、先行する実施例の部材と同じ部材には同一の参照符号が設けられているので、その説明に関しては、先行する実施例に、特に第4の実施例に関連したその説明を参照することができる。
【0141】
この第5の実施例において、膨張圧力出口接続端36と中間圧力収集器44の間にさらに熱交換器242が配置されており、その熱交換器は、空調設備244の冷媒回路を冷却するために用いられる。
【0142】
この場合において好ましくは、導管56は冷媒圧縮器ユニット12の吸い込み導管74内へ連通しておらず、付加圧縮器246と接続されており、その付加圧縮器は、熱交換器242を通って付加質量流が増大した場合にそれを高圧に圧縮する。
【0143】
さらに導管56は膨張機構248を介して吸い込み圧力導管74と接続することもできる。
【0144】
特に付加圧縮器246の駆動が必要でない場合のために、膨張機構248が設けられており、その膨張機構が導管56を冷媒圧縮器ユニット12の吸い込み圧力導管74と接続する。
【0145】
これまで説明した実施例において、膨張ユニット32のみが使用されている。
【0146】
各膨張ユニット32は、膨脹器段86が圧縮器段88と機能的に堅固に結合されていることに基づいて、圧縮器段に対する膨張器段の定められた体積比を有している。すなわちそれぞれの圧縮器段88内で圧縮された体積は、それぞれの膨張器段86内で膨張された体積に対して厳しく相関する。
【0147】
この厳しい相関が、過冷却質量流Uの制御を介して、膨張質量流Eを過冷却質量流Uに比例して制御することも可能にし、したがってまず第1に高圧側の圧力、特に高圧排出導管28内の圧力及び特に高圧入口接続端34における圧力にとって重要な、膨張質量流Eを維持するために、高圧側の熱を放出する熱交換器22と膨張段86の間、及び特に過冷却ユニット102と膨張段86との間にも、圧力を減少させる絞り機構は不要である。
【0148】
むしろ膨張質量流Eの制御は、過冷却質量流Uを調節する膨張機構122を介して行われ、その膨張機構が過冷却質量流Uを定め、その過冷却質量流はもちろん、圧縮段88と膨張段86の間の堅固な機能的結合を介して膨張質量流Eも定める。
【0149】
もちろん高圧PH2に従って、特にそれぞれの高圧水準に従って、膨張ユニット32の体積比が変化することが、その効率をできる限り最適に維持するためには、好ましい。
【0150】
しかし体積比の変化は、本発明に基づいて使用される膨張圧縮ユニット84においては、実現は不可能である。
【0151】
この理由から、図9に示される膨張ユニット32’の第2の実施例においては、並列に接続された膨張システム30aと30bが使用される。
【0152】
たとえば第1の膨張システム30aはその体積比に関して、それが高圧水準のために最適化されるように設計されており、第2の膨張システム30bは、より低い高圧水準のためにその体積比に関して最適化されている。
【0153】
この場合においては、もちろんそれらの制御装置132は互いに結合され、その場合にたとえば制御装置132aは高い高圧水準を有する領域内で有効であり、制御装置132bは低い高圧水準を有する領域内で有効であって、その場合に2つの領域は、図10に示すように互いに接続し、あるいは重なり合うこともできる。
【0154】
たとえば、第1の膨張システム30aは圧力領域PBa内で作動し、第2の膨張システム30bは圧力領域PBb内で作動し、その場合に圧力領域PBaとPBbは、たとえば、重なり合うように選択されているので、重なり領域UB内では2つの膨張システム30aと30bが有効である。
【0155】
したがってこの実施例においては、たとえばトランスクリティカルな駆動に従って、上方の高圧水準においても、たとえばサブクリティカルな駆動に従って、低い高圧水準においても、膨張システム30aと30bによって冷媒のできる限り効率的な膨張が実施される。
【0156】
その場合に第2の膨張システム30bの体積比は、第1の膨張システム30aの体積比の0.7倍と0.9倍の間の領域内に、好ましくは第1の膨張システム30aの体積比の0.8倍と0.9倍の間の領域内にある。
【0157】
図11に示される、本発明に係る膨張ユニット32”の第の実施例において、同じ膨張ユニット32”内の、特にその装置ベース82に、2つの膨張圧縮ユニット84aと84bが設けられており、それらにおいて膨張器段86aもしくは86bと圧縮器段88aもしくは88bとの間の体積比は、異なる大きさである。
【0158】
もちろん、膨張ユニット32”内には1つの過冷却ユニット102のみが設けられており、全質量流Gがそれを貫流し、かつ2つの膨張圧縮ユニット84aと84bは分岐116と膨張圧力出口接続端36との間に並列に接続されている。
【0159】
接続導管128の、圧縮入口96aと96bへ通じる枝128aと128b内には、それぞれ制御装置132によって制御可能な遮断機構136aもしくは136bが設けられているので、膨張圧縮ユニット84aと84bは、圧縮器段88aと88bへ割合に応じて供給される過冷却質量流Uを介して制御可能である。たとえば高圧PH2の水準に応じて制御装置132は、高い高圧水準のために設けられている第1の膨張圧縮ユニット84aを使用することができ、あるいは低い高圧水準用に設けられている第2の膨張圧縮ユニット84bを使用することができるか、あるいは場合によっては2つの膨張圧縮ユニット84を割合に応じて膨張質量流Eを膨張させ、かつ過冷却質量流Uを圧縮するために使用することができる。
【0160】
図12に示される、本発明に係る膨張ユニット32’”の第4の実施例において、先行する実施例の部材と同一の部材には同一の参照符号が設けられているので、これに関してこれらの実施例についての説明をすべての内容において参照することができる。
【0161】
これらの実施例とは異なり、第4の実施例においては、過冷却ユニット10が収集容器262として形成されており、その収集容器に膨張機構122によって冷却された過冷却質量流Uが供給され、かつ液槽264が液状の冷媒とその上方にあるガス体積266とによって形成されており、そのガス体積が接続導管128から圧縮器段88へ供給される。
【0162】
液槽264内に、全ガス流Gを案内する部材268が延びており、その部材が全ガス流Gを、それが分岐116と膨張圧縮ユニット84へ流れる前に過冷却するので、液槽264の温度への全ガス流Gの過冷却が行われる。
【0163】
好ましくは収集容器262には、さらに、オイル分離とオイル還流が設けられている。
【0164】
図13に示される、本発明に係る膨張ユニット32””の第5の実施例において、同様に先行する実施例の部材と同一の部材には同一の参照符号が設けられているので、先行する実施例についての説明が参照される。
【0165】
第4の実施例とは異なり、高圧入口接続端34と収集容器262の間に分岐116’が存在しているので、分岐116’から収集容器262内へ通じる、膨張機構122を有する供給導管126’を介して、過冷却質量流Uはすでに部材268から分岐され、膨張前に部材268によって過冷却を受けない。
【0166】
この実施例において、温度測定は、たとえば分岐116’の前のセンサ134によって行われる。
【0167】
本発明に係る膨張ユニット32’””の第6の実施例において、先行する実施例の部材と同一の部材には同一の参照符号が設けられているので、それに関して先行する実施例に突いての説明を参照することができる。
【0168】
図14に示される、本発明に係る膨張ユニット32’””の第6の実施例において、高圧入口接続端34’””は、冷媒圧縮器ユニット12から来る高圧導管18と直接接続されている。
【0169】
さらに、装置ベースにおける高圧入口接続端34’””と過冷却ユニット102の入口104との間に、複数の接続端セット302、312及び322が設けられており、その場合に各接続端セット302、312、322が供給接続端304、314、324と還流接続端306、316、326を有しているので、これらの接続端セット302、312322の各々に、それぞれ図14に示されない熱交換器が接続可能である。
【0170】
さらに、装置ベース82に、接続端セット302、312、322の各々のために、さらにそれぞれ三方弁332、342、352とバイパス334、344、354が設けられており、その場合に三方弁332、342、352とそれぞれのバイパス334、344、354が、膨張ユニット32’””の内部でそれぞれの接続端セット302、312、322をバイパス接続することを、可能にする。
【0171】
したがってそれぞれの三方弁332、342、352によって、それぞれの接続端セット302、312、322を介してこの接続端セット302、312、322と接続されている熱交換器へ流れる圧縮器体積流Vの割合と、それぞれのバイパス334、344、354を通って流れる圧縮器体積流の割合を定める可能性が生じる。
【0172】
極端な場合においては、それぞれの三方弁332、342352によって、全圧縮機体積流Vをそれぞれの接続端セット302、312、322と接続された熱交換器へ流れさせ、あるいはそれぞれのバイパス334、344、354を通して流れさせる、可能性が生じる。
【0173】
それぞれの接続端セット302、312、322、それにそれぞれ対応づけられた三方弁332、342、352及びそれぞれの接続端セット302、312、322に対応づけられたバイパス334、344、354が、それぞれ全体として熱交換器接続ユニット362、372もしくは382形成し、その場合に熱交換器接続ユニット362、372、382は互いに連続して直列に配置されているので、たとえば高圧入口接続端34’””から始まってまず熱交換器接続ユニット362が、その後熱交換器接続ユニット372が、そしてその次に熱交換器接続ユニット382が貫流される。
【0174】
さらに、それぞれの熱交換器接続ユニット362、372、382の出口側にそれぞれセンサ364、374及び384が配置されており、それらは制御装置132’””と接続されているので、制御装置132’””は、たとえば、熱交換器接続ユニット362、372及び382の出口側でそれぞれ圧縮器質量流Vの温度を測定して、三方弁332、342、352の適切な制御を介して、接続端セット302、312、322と接続されているそれぞれの熱交換器がどのくらい貫流されるべきか、されてはならないかを制御することができる。
【0175】
高圧側の熱を放出する熱交換器22は、接続端セット302、312、322の各々と接続することができる。しかし好ましくは、熱を放出する高圧側の熱交換器22は、は、接続端セット322と接続されており、したがって過冷却ユニット102の入口104のすぐ前に位置し、その場合にこれに対応づけられたセンサ384が、好ましくは過冷却ユニット102の入口104における温度を検出する。
【0176】
さらに、膨張圧縮ユニット84の圧縮器出口98は、好ましくは、この実施例において装置ベース82に配置されている高圧還流導管78を介して熱交換器接続ユニット362、372又は382のいずれかのものの入口と接続されているので、下流側に配置されている熱交換器接続ユニット、図示される場合において、熱交換器接続ユニット372、382が同様に過冷却質量流Uによって還流され、それが圧縮器質量流Vに加わって、全質量流Gを形成する。
【0177】
したがって本発明に係る膨張ユニット32の第6の実施例は、この膨張ユニット32’””内に設けられている制御装置132’””によって制御されて、圧縮器質量流V内と過冷却質量流U内の熱を複数の、たとえば種々の温度水準で作業する熱を放出する熱交換器、特に熱を放出する熱交換器22へ最適に供給し、したがって過冷却ユニット102の入口104における温度を低下させ、それによって同時に過冷却ユニット102の制御によって、膨張ユニット32’””を最適に駆動する可能性を提供する。
【0178】
図15に示される、本発明に係る膨張ユニットの第7の実施例において、先行する実施例の部材と同一の部材には同一の参照符号が設けられているので、その説明に関しては、先行する実施例についての説明をすべての内容において参照することができる。
【0179】
第6の実施例とは異なり、膨張ユニット32”””において熱交換器接続ユニット362と372は、これに対応づけられた熱交換器366と376が装置ベース82”””に直接配置されるように形成されており、したがって三方弁332と342が熱交換器366、376の貫流を直接制御するので、装置ベース82における外部の接続端として、熱交換器366のために供給接続端368と排出接続端369が設けられており、熱交換器376のためには供給接続端378と排出接続端379が設けられている。
【0180】
そのほかにおいて、制御装置132”””によって同様に、過冷却ユニット102の入口104内へ流入する全質量流Gの温度に応じて、高圧HP2の最適化が行われる。
【0181】
膨張ユニット32’、32”、32’”、32””、32’””及び32”””は、膨張ユニット32の第1の実施例と同様に、冷媒回路の上述した実施例において使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15