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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】改善された結合剤組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C08L 5/00 20060101AFI20221114BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20221114BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20221114BHJP
   B27N 3/00 20060101ALI20221114BHJP
   C07H 3/02 20060101ALI20221114BHJP
   C07H 3/04 20060101ALI20221114BHJP
   C08B 37/00 20060101ALI20221114BHJP
   D04H 1/587 20120101ALI20221114BHJP
【FI】
C08L5/00
C08K5/54
C08K7/02
B27N3/00 D
C07H3/02
C07H3/04
C08B37/00
D04H1/587
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019541234
(86)(22)【出願日】2018-01-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 EP2018052279
(87)【国際公開番号】W WO2018141746
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2020-11-11
(31)【優先権主張番号】1701569.4
(32)【優先日】2017-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】510028648
【氏名又は名称】ナフ インサレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ハンプソン, カール
(72)【発明者】
【氏名】キャラハン, オリバー
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-525488(JP,A)
【文献】国際公開第2016/009062(WO,A1)
【文献】特表2014-520915(JP,A)
【文献】特開2014-173085(JP,A)
【文献】特開2016-060913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C07H 3/00-3/10
C08B 1/00-37/18
C08H 8/00
B27N 3/00
D04H 1/587
A23L 5/40-5/49
A23L 31/00-33/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭水化物成分およびアンモニアとの無機酸の塩を含む硬化性結合剤組成物であって、前記炭水化物成分が、デキストロースおよびキシロースを含む単糖、ならびに多糖を含むセルロース加水分解物の糖であるか、またはデキストロースおよびキシロースを含む単糖、ならびに多糖を含むセルロース加水分解物の糖を含む、硬化性結合剤組成物。
【請求項2】
前記セルロース加水分解物の糖が、前記炭水化物成分の10~100重量%を構成する、請求項1に記載の硬化性結合剤組成物。
【請求項3】
前記組成物が水性であり、全水性結合剤組成物の重量に基づき、5~95重量%、好ましくは8~90重量%、より好ましくは10~85重量%の、より詳細には、全水性結合剤組成物の重量に基づき、5~25重量%、好ましくは8~20重量%、より好ましくは10~20重量%、もしくはさらには12~18重量%の範囲の、または全水性結合剤組成物の重量に基づき、50~95重量%、好ましくは50~90重量%、より好ましくは55~85重量%、もしくはさらには60~80重量%の範囲の固形分を含む、請求項1または2に記載の硬化性結合剤組成物。
【請求項4】
前記炭水化物成分が、1~95重量%のグルコースおよび0.5~15重量%のキシロース、好ましくは1~10重量%のキシロースを含み、その残りが、フルクトース、マンノース、ガラクトースおよび/または多糖フラクションである、請求項1~3のいずれかに記載の硬化性結合剤組成物。
【請求項5】
前記多糖フラクションが、アラビナン、ガラクタンおよび/またはマンナンを含む、請求項4に記載の硬化性結合剤組成物。
【請求項6】
前記多糖の含有量が、1~90重量%の間、好ましくは3~20重量%の間、または3~15重量%の間、または3~10重量%の間で変動する、請求項5に記載の硬化性結合剤組成物。
【請求項7】
前記多糖フラクションが、2~20、好ましくは2~15で変動する、異なる重合度の多糖のブレンドであり、平均重合度が、3~7の間、好ましくは3~5の間を含む、請求項4から6のいずれかに記載の硬化性結合剤組成物。
【請求項8】
当技術分野で公知のカップリング剤、染料、抗真菌剤、抗細菌剤、疎水物質および他の添加剤をさらに含む、請求項1~7のいずれかに記載の硬化性結合剤組成物。
【請求項9】
ケイ素含有カップリング剤を、前記結合剤組成物中、固形分の重量に基づき、好ましくは約0.1~約1重量%の範囲で含む、請求項8に記載の硬化性結合剤組成物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の硬化性結合剤組成物によって、および/または請求項1から9のいずれかに記載の前記硬化性結合剤組成物の前記炭水化物成分と無機アンモニア塩との縮合から得られる反応生成物、または請求項1から9のいずれかに記載の水性硬化性結合剤組成物を硬化条件に供することにより得られた結合剤によって、一緒に結合された鉱物繊維、合成繊維または天然繊維、セルロース粒子もしくはシート材料を含む、物質のアセンブリ。
【請求項11】
繊維マットに組織化されて断熱製品に加工されるように一緒に結合された、例えばガラスウールまたは石綿に基づき70~99重量%の範囲の量で鉱物繊維を含む断熱製品である、請求項10に記載の物質のアセンブリ。
【請求項12】
不織繊維ベール、例えばガラス繊維ベールである請求項10に記載の物質のアセンブリであって、ここで、前記不織繊維ベールが、
(a)電池用セパレーターにおいて、
(b)ルーフィング膜もしくは屋根板などのルーフ製品用の基材として、または
(c)他の膜として
の使用のためのものである、物質のアセンブリ。
【請求項13】
請求項1から9のいずれかに記載の硬化性結合剤組成物によって、および/または請求項1から9のいずれかに記載の前記硬化性結合剤組成物の前記炭水化物成分と無機アンモニア塩との縮合から得られる反応生成物、または請求項1から9のいずれかに記載の水性硬化性結合剤組成物を硬化条件に供することにより得られた結合剤によって、一緒に結合された砂粒子、セルロース粒子、おが屑、木材層、木材シート、または木材パルプを含む、物質のアセンブリであって、ここで、結合剤含有量が、前記アセンブリの総重量に基づき、約5~30重量%、特に9~20重量%の範囲である、物質のアセンブリ。
【請求項14】
前記セルロース粒子が、セルロース系繊維である、請求項13に記載の物質のアセンブリ。
【請求項15】
請求項10から1のいずれかに記載の物質のアセンブリの調製方法であって、(i)(a)セルロース加水分解物の糖であるかまたはセルロース加水分解物の糖を含む炭水化物成分を提供するステップ、(ii)適量の(b)無機アンモニウム塩を提供するステップ、(iii)粒子状物、繊維状もしくはセルロース系粒子状材料、またはシート材料上に、(b)により架橋された(a)であり得る、(a)および(b)を含む水性組成物として、(a)および(b)を逐次的または同時に付与して、樹脂加工材料を生成するステップ、ならびに(v)得られた樹脂加工材料を硬化条件に供して、過剰な水を蒸発させるステップを含む、方法。
【請求項16】
硬化が、90~200℃の範囲、好ましくは140℃超、より好ましくは190℃未満、通常、160~180℃の間の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
炭水化物成分およびアンモニアとの無機酸の塩を含む硬化性結合剤組成物中の糖成分としてのセルロース加水分解物の糖の使用であって、ここで、前記セルロース加水分解物の糖が、デキストロースおよびキシロースを含む単糖、ならびに多糖を含み、
前記硬化性結合剤組成物によって、ならびに/または前記硬化性結合剤組成物の前記炭水化物成分と無機アンモニア塩との縮合および/もしくは硬化から得られる反応生成物によって、一緒に結合された鉱物繊維、合成繊維もしくは天然繊維、セルロース粒子、またはシート材料を含む物質のアセンブリの乾燥および/または湿潤強度を改善するための、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の改善された結合剤組成物、より詳細には、アセンブルされていない、または緩くアセンブルされた物質(non or loosely assembled matter)の集合体(collection)から製品を製造する際に使用するための硬化性結合剤組成物に関する。例えば、これらの結合剤組成物は、織り繊維または不織繊維から作製され得る繊維製品を製作するために使用することができる。例示的な一実施形態では、本結合剤組成物は、ガラス繊維を結合させて繊維ガラスを作製するために使用される。別の例示的な実施形態では、本結合剤組成物は、断熱性製品などのマット化層中のガラスウールまたは石綿などの鉱物ウール繊維を結合させるために使用される。さらなる実施形態では、本結合剤は、例えば、望ましい物理的特性(例えば、機械的強度)を有する、木材ファイバーボード、パーティクルボードまたは配向性ストランドボード(OSB)を製作するために使用される。さらに、本結合剤は、合板を製造するための木材シートなどの、セルロース系材料シートをアセンブルするために使用され得る。本発明はさらに、前記結合剤組成物を使用して、緩くアセンブルされた物質を結合させるための方法、および本発明の結合剤によって結合された緩くアセンブルされた物質から作製される複合製品に及ぶ。
【背景技術】
【0002】
いくつかのホルムアルデヒド不含結合剤組成物が、近年開発されてきた。このような硬化性結合剤組成物の1つは、持続可能材料を含み、熱硬化体として、無機酸もしくはポリカルボン酸のアンモニウム塩、またはアミン、好ましくはポリアミンなどの窒素系化合物と還元糖との縮合生成物に基づいている。これらの化学品は、先行のホルムアルデヒドをベースとする化学品と比較して、いくつかの利点を示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、改善された機械的特性を示す、鉱物繊維、合成繊維および天然繊維、砂または天然もしくは合成粒子状材料などの粒子状物質、セルロース粒子またはシート材料を含む、物質のアセンブリを結合するために好適な硬化性結合剤組成物の改善をもたらすことを探求する。目的は、再生可能なおよび/または持続可能な資源に基づいた、改善された結合剤組成物を提供することである。さらに、本発明は、強力な結合剤へと迅速に硬化する、結合剤組成物を提供することを探求する。
【0004】
別の態様によれば、本発明は、上述の結合剤組成物の硬化から得られる結合剤によって結合された物質のアセンブリを含む複合製品を提供することを探求する。
【0005】
さらに別の態様によれば、本発明は、本明細書の上記で定義されている複合製品を調製するための方法の提供を探求する。本方法は、コスト効果が高く、かつ大量生産に好適であるはずである。
【0006】
添付図面を参照しながら、以下の実施例において本発明を一層詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、標準的なグルコースをベースとする結合剤組成物と比較した、本発明の試料1の引張強度を示すグラフである。
【0008】
図2図2は、標準的なグルコースをベースとする結合剤組成物と比較した、本発明の試料2、3および4に関する引張強度データを示すグラフである。
【0009】
図3図3は、グルコースをベースとする結合剤組成物と比較した、本発明の試料5に関する引張強度データを示すグラフである。
【0010】
図4図4は、標準的なグルコースをベースとする結合剤組成物と比較した、本発明の試料12に関する引張強度データを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、これより、添付の特許請求の範囲の通り、硬化性結合剤組成物、およびこれを作製するための製品および方法を提供する。
【0012】
セルロース加水分解物の糖、およびアンモニアとの無機酸の塩を含む硬化性結合剤組成物は、硬化時に(upon curing)特に良好な機械的特性を示し、上述の物質のアセンブリを結合するために特に好適であることが今や見いだされた。硬化時に、このような結合剤組成物は、本発明による物質のアセンブリに結合強度の改善をもたらす、高度に架橋された樹脂を生成する。これらのポリマーは、分子量の決定を含む、一般に当技術分野で公知の技法、および他の公知の技法により分析することができる。
【0013】
本発明の複合製品は、上記の硬化性結合剤組成物を硬化条件に供することにより得られた結合剤によって一緒に結合された、鉱物繊維、合成繊維または天然繊維、セルロース系繊維、セルロース粒子またはシート材料、天然もしくは合成粒子状材料を含む、物質のアセンブリを含む。前記結合剤組成物はまた、セルロース加水分解物の糖と無機アンモニウム塩架橋剤との間の架橋に起因する、いくらかの反応生成物を含むことができる。
【0014】
本発明の複合製品は、本発明の結合剤組成物を繊維状または粒子状物質に付与して、得られた生成物を硬化条件に供することにより調製することができる。
【0015】
上記に定義される水性硬化性結合剤組成物が、ガラス繊維ベール上に付与される場合、この組成物は、硬化時、特に風化後に、高い結合強度を示すことが見いだされた。風化後の結合強度の喪失は、従来の熱硬化結合剤と比べて、著しく低減する。
【0016】
理論によって拘泥されないが、無機アンモニウム塩と一緒に、セルロース分解した後に得られる単糖とオリゴ糖との組合せは、それを含有する複合製品に、硬化時に高いまたは均一な改善された乾燥結合強度および著しく改善された湿潤結合強度を付与する硬化性結合剤組成物として特に適していると考えられる。
【0017】
本発明の結合剤組成物およびそれから生成した結合剤は、実質的に、ホルムアルデヒドを含まず(これは、本組成物の重量に基づき、約1ppm未満のホルムアルデヒドしか含まない)、ホルムアルデヒドをそれほど遊離しない。
【0018】
本発明の組成物は、適切となり得る場合、このような結合剤用途について、当技術分野で公知のカップリング剤、染料、抗真菌剤、抗細菌剤、疎水物質および他の添加剤をさらに含むことができることが明白であり得る。ケイ素含有カップリング剤は、本結合剤組成物中、固形分の重量に基づき、一般に約0.1~約1重量%の範囲で、このような結合剤中に通常存在する。これらの添加剤は、結合剤の接着特性も、このような結合剤組成物またはこれから生成する結合剤を含む最終製品の機械的特性および他の所望の特性のどちらも妨害(antagonise)しないように選択されるのは明白であり、有利には、厳格な環境要件および健康に関連する要件に適合する。
【0019】
本発明によれば、用語「結合剤組成物」は特に限定されず、このまままたは硬化時のどちらかに、緩くアセンブルされた物質を結合することが可能な任意の組成物を一般に含む。本結合剤組成物は、好ましくは、熱硬化結合剤樹脂、および可能性として、関連出発原料および恐らくは添加剤の少なくとも一部の反応または部分反応から得られる反応生成物を形成するための出発原料を含む、水性非硬化組成物である。しかし、本結合剤組成物はまた、固体であってもよく、縮合は熱の作用下で起こる。固体結合剤組成物は、水が硬化プロセスの経過中に蒸発するのが困難である一部の特定の用途において、または水の存在が、結合される粒子または繊維に悪影響を及ぼす恐れがある用途において好ましいことがある。
【0020】
本明細書で使用する場合、用語「水性」は特に限定されず、一般に、溶媒として水に基づく溶液および/または分散液に関する。前記用語は、水、および1種または複数の追加の溶媒を含有する、組成物または混合物をさらに含む。本発明の「水性結合剤組成物」は、1種または複数の前記結合剤成分からなる溶液もしくは部分溶液であってもよく、またはエマルションまたは懸濁液などの分散液であってもよい。
【0021】
用語「結合剤組成物」は、本明細書で使用する場合、セルロース加水分解物の糖、任意の無機アンモニウム塩架橋剤および任意の添加剤、ならびに可能性として溶媒(水を含む)を含む、特に硬化前に結合される物質、および/または結合される物質に存在する物質(物質、および物質内に含有されている任意の水分以外)に付与されるすべての成分を意味する。
【0022】
用語「結合剤」は、「結合剤組成物」から得られた熱硬化結合剤樹脂を指すよう、本明細書において使用される。
【0023】
用語「硬化した」は、結合剤組成物の成分が、硬化した生成物の耐久性および溶媒耐性を向上させて熱硬化材料をもたらし得る、共有結合形成、水素結合形成および化学架橋などの化学的変化をもたらす条件に供されたことを意味する。
【0024】
用語「結合剤組成物の乾燥重量」は、本明細書で使用する場合、存在する任意の水以外の結合剤組成物のすべての成分の重量を意味する(液状の水の形態、または結晶体の水の形態に関わらない)。
【0025】
用語「架橋剤」は、本明細書で使用する場合、セルロース加水分解物の炭水化物成分と反応して前記炭水化物成分の分枝化または網目状化を形成することができる化合物を含む。
【0026】
用語「無機アンモニウム塩」は、本明細書で使用する場合、アンモニアとの無機酸の塩を意味する。例は、硫酸アンモニウムおよびリン酸アンモニウム、より詳細には、リン酸二アンモニウムである。
【0027】
用語「セルロース加水分解物の糖」は、本明細書で使用する場合、セルロース系材料の加水分解によって得ることができる炭水化物組成物を意味する。セルロース系材料は、セルロースおよびヘミセルロースを含有する。セルロースは、植物の細胞壁の主要部分を構成する6炭糖単位からなる線状多糖であり、ワタおよびカポックとしてこのような繊維状生成物において天然に存在し、多数の製造製品(例えば、紙)の原材料である。ヘミセルロースは、5炭糖単位からなる多糖であり、植物細胞壁中のセルロースと共に存在する。セルロースは強固で、加水分解に対して抵抗性があるが、ヘミセルロースはそれほど安定ではなく、より容易に加水分解される。加水分解物の糖組成物は、セルロースとヘミセルロースとの間のバランスに基づく供給原料、ならびに酸加水分解および酵素加水分解を含む加水分解プロセス、ならびにプロセス条件に応じて変動することが理解される。このような加水分解物は、実質的に還元糖を含む。したがって、加水分解物の糖組成物は、単糖であるデキストロースおよびキシロース、二糖ならびに多糖を含む。組成物中のこれらの成分の各々の濃度は、加水分解目的に使用された供給原料、加水分解プロセスおよびプロセス条件に依存し得る。存在する炭水化物の例は、グルコース、フルクトース、スクロース、アラビノース、ガラクトース、マンノース、キシロース、アラビナン、ガラクタン、グルカン、マンナンおよびキシランである。
【0028】
有利には、加水分解用のセルロース供給原料は、サトウキビの搾りかす、ワタ繊維、植物性材料、木材、紙くずまたはそれらの混合物から選択することができる。他の供給源の中で、再利用不能の家庭廃棄物が、セルロース系材料の供給源として使用されてもよい。加水分解物の糖組成物は、使用される供給源または廃棄物の性質、および加水分解プロセスおよび適用されるプロセス条件に依存することは明白であろう。セルロース加水分解物の糖は、本発明の結合剤組成物の炭水化物成分の10~100重量%(乾燥重量基準)、好ましくは50~100重量%、または60~100重量%、より好ましくは70~100重量%、または80~100重量%、最も好ましくは、90~100重量の間、またはさらには95~100重量%の間を構成することができる。
【0029】
本発明の結合剤組成物の炭水化物成分は、1~95重量%のグルコースおよび0.5~15重量%のキシロース、好ましくは1~10重量%のキシロースを含むことができ、その残りは、例えば、フルクトース、マンノース、ガラクトースならびに/またはグルカンおよび/もしくはキシランなどの多糖フラクションである。存在してもよい他の多糖は、アラビナン、ガラクタンおよび/またはマンナンである。前記炭水化物成分では、多糖の含有量は、1~90重量%の間、好ましくは3~20重量%の間、または3~15重量%の間、または3~10重量%の間で変動し得る。供給原料および加工に応じて、多糖フラクションは、異なる重合度の多糖のブレンドであり、2~20、好ましくは2~15で変動し、平均重合度は、3~7の間、好ましくは3~5の間を含むことが理解され、このことは、より低い重合度の多糖ほど、より高い濃度を示すことを意味する。
【0030】
好ましくは、炭水化物成分は、1~90重量%のグルコースおよび/またはグルカン、0.5~15重量%のキシロース、好ましくは1~10重量%のキシロースを含み、その残りは、フルクトース、マンノース、ガラクトース、グルカン、キシラン、アラビナン、ガラクタンおよび/またはマンナンである。
【0031】
本発明の水性結合剤組成物の固形分は、全水性結合剤組成物の重量に基づき、5~95重量%、有利には8~90重量%、好ましくは10~85重量%の範囲となり得る。より詳細には、鉱物ウール断熱体向けの結合剤として使用する場合、本水性結合剤組成物の固形分は、全水性結合剤組成物の重量に基づき、5~25重量%、好ましくは8~20重量%、より好ましくは10~20重量%、またはさらには12~18重量%の範囲にあってもよい。合板、パーティクルボード、ファイバーボードなどの木材ボードにおいて結合剤として使用する場合、水性結合剤組成物の固形分は、全水性結合剤組成物の重量に基づき、50~95重量%、好ましくは50~90重量%、より好ましくは55~85重量%、またはさらには60~80重量%の範囲にあってもよい。
【0032】
本発明の結合剤組成物の成分は、個別に輸送されて、関連製造プラントにおいて、使用直前に合わされてもよい。恐らく、事前反応させた段階で、結合剤組成物をそのまま輸送することも可能である。
【0033】
本発明の結合剤は、アセンブルされていない、または緩くアセンブルされた物質の集合体を結合するために使用することができる。物質の集合体には、以下に限定されないが、スラグウール繊維、石綿繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、金属繊維、炭素繊維、ポリイミド繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維およびセルロース系繊維を含む、鉱物繊維から選択される繊維を含む任意の物質の集合体が含まれる。物質の集合体のさらなる例には、砂、石炭などの粒子状物、セルロース粒子、かんな屑、おが屑、木材パルプ、砕木、木材チップ、木材ストランド、木材層、他の天然繊維(黄麻、亜麻、大麻、わらなど)、ベニヤ板、表面仕上げ材、および他の粒子状材料、織り繊維材料または不織繊維材料が含まれる。本発明の具体的な実施形態によれば、物質の集合体は、木材粒子および鉱物繊維から選択される。
【0034】
例示的な一実施形態において、本発明の結合剤組成物は、鉱物繊維を含む断熱製品を作製するために使用されてもよい。このような用途では、繊維は互いに結合されて、こうして、繊維は繊維マット中で組織化され、その後、例えば、ガラスウールまたは石綿をベースとする断熱製品に加工され得る。このような用途では、繊維は一般に、70~99重量%の範囲の量で存在する。
【0035】
本発明の結合剤組成物は、その後に電池用セパレーターにおいて、ルーフィング膜もしくは屋根板などのルーフ製品用の基材または他のとして応用することができる、不織繊維ベール、例えばガラス繊維ベールを製造するために使用することもできる。
【0036】
本発明の別の実施形態によれば、本結合剤は、セルロース粒子、例えば、セルロース系繊維、かんな屑、木材層またはシート、木材パルプなど、およびファイバーボード、パーティクルボード、配向性ストランドボード、合板などを含む、複合木材ボードを製造するために一般に使用される他の材料を結合するために使用されてもよい。このような木材ボードは、6~30mmの範囲の公称厚さ、および少なくとも約1000N/mmの弾性率、少なくとも約5N/mmの屈曲強度、および/または少なくとも0.10N/mmの内部結合強度を示す。このような用途では、最終木材ボード中の結合剤含有量は、木材ボードの総重量に基づき、約5~30重量%、特に9~20%の範囲とすることができる。
【0037】
本発明の結合剤は、オイルフィルターなどのフィルターを作製するために使用される繊維マットにおいて、セルロース系繊維を結合するためにさらに使用することができる。
【0038】
本発明によれば、水性結合剤組成物は、それ自体で公知の様式で、繊維または粒子状材料またはシート材料上に付与されてもよい。結合剤組成物は、スプレー塗布により付与されるのが好ましいことがある。他の技法は、ロール塗布、または物質の集合体と結合剤組成物との混合および/もしくはタンブリングを含む。水が蒸発するにつれて、水性結合剤組成物は、本明細書の以下でさらに詳述する望ましいアセンブリに配列されると、粒子状材料を一緒に結合するゲルを形成する。硬化の際、反応性結合剤成分は、反応して、本質的に水不溶性のマクロ分子結合剤樹脂を形成する。したがって、硬化は、未硬化の結合剤と比較すると、付着性、耐久性および耐水性の増大をもたらす。硬化は、周囲温度(約10~25℃)と最大280℃との間の温度で行うことができる。
【0039】
得られた製品は、次に、以下に限定されないが、断熱製品または木材ボードを含む、中間製品または最終製品を作製するために、好適なプロセスステップでさらに加工されてもよい。より詳細には、繊維またはセルロース粒子またはシートのアセンブリの製造方法は、(i)(a)セルロース加水分解物を提供するステップ、(ii)適量の(b)無機アンモニウム塩を提供するステップ、(iii)繊維状またはセルロース系粒子状材料またはシート材料上に、(b)により架橋された(a)であり得る、(a)および(b)を含む水性組成物として、(a)および(b)を逐次的または同時に付与して、樹脂加工材料を生成するステップ、ならびに(v)得られた樹脂加工材料を硬化条件に供し、過剰な水を蒸発させるステップを含むことができる。
【0040】
硬化は、90~200℃の範囲、好ましくは140℃超、より好ましくは190℃未満、通常160~180℃の間の温度で行うことができる。木材ボードの製造では、材料をプレスに供しながら、硬化を行う。
【実施例
【0041】
(実施例1)
硫酸アンモニウム15部に対して、糖の全量が85部となる比で、セルロース加水分解物および硫酸アンモニウムを含む本発明の結合剤組成物を調製した。セルロース加水分解物は、家庭廃棄物に含まれているセルロース系材料の酵素消化により得て、以下の組成(重量部)を示す。
【0042】
【表1】
【0043】
比較目的のため、同じ比でデキストロースおよび硫酸アンモニウムを含む結合剤組成物を調製した。
【0044】
PF結合剤を燃焼し尽くすために、市販の尿素ホルムアルデヒドを含浸させた(A4サイズ)ガラス繊維ベールを、600℃のマッフル炉オーブンに30分間入れ、次に、30分間冷却した。得られたベール試料を秤量した。
【0045】
およそ400gの結合剤溶液(固形分2%)試料を浸漬用トレイに注ぎ入れ、得られたベール試料を、注意深く、適切な結合剤溶液に十分に浸漬した。浸漬したベールを、0~600秒の変動する示された時間の間、190℃で硬化した。次に、結合剤含有量を測定し、以下の通り引張強度を決定した。
【0046】
適切な、硬化した結合剤を浸漬させたベールの引張強度は、機械的試験機器(M350-10CT)によって決定した。各試験に関すると、硬化した結合剤を浸漬したA4ベールを8つの同じストリップ片に切断した。各ストリップ片を、winTest分析ソフトウェアにより制御した10mm/分の自動試験速度で、50kgの負荷セル(DBBMTCL-50kg)を使用して個別に試験した。プレート間に100mmの隙間を確保するため、ガラスベールの引張プレートを引張試験機に取り付けた。試料を把持部に垂直方向に置き、その力を0にした。ピーク時の最大負荷、ピーク時の応力およびピーク時の弾性率などの異なるパラメーターをソフトウェアにより評価し、データは、標準偏差と共に8つの試料の平均値として表した。ピーク時の平均最大負荷またはピーク時の応力を引張強度として定義した。
【0047】
図は、硬化が進むにつれて、強度が進行していることを示している。適切な試料に関して、図においてわかる通り、セルロース加水分解物をベースとする結合剤組成物は、同じ総糖量を含むグルコースをベースとする結合剤と比べて、同様の強度または強度の改善をもたらす。
【0048】
本発明の結合剤組成物に関する乾燥結合強度は、両組成物とも同じ総糖量を有する、標準的なグルコースをベースとする結合剤組成物と比べて、著しく改善していることがさらに見いだされた。
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
炭水化物成分およびアンモニアとの無機酸の塩を含む硬化性結合剤組成物であって、前記炭水化物成分が、少なくとも部分的にデキストロースおよびキシロースを含む単糖、二糖ならびに多糖を含むセルロース加水分解物の糖である、硬化性結合剤組成物。
(項2)
前記セルロース加水分解物の糖が、前記糖成分の10~100重量%を構成する、上記項1に記載の硬化性結合剤組成物。
(項3)
前記組成物が水性であり、全水性結合剤組成物の重量に基づき、5~95重量%、好ましくは8~90重量%、より好ましくは10~85重量%の、より詳細には、全水性結合剤組成物の重量に基づき、5~25重量%、好ましくは8~20重量%、より好ましくは10~20重量%、もしくはさらには12~18重量%の範囲の、または全水性結合剤組成物の重量に基づき、50~95重量%、好ましくは50~90重量%、より好ましくは55~85重量%、もしくはさらには60~80重量%の範囲の固形分を含む、上記項1または2に記載の硬化性結合剤組成物。
(項4)
前記炭水化物成分が、1~95重量%のグルコースおよび0.5~15重量%のキシロース、好ましくは1~10重量%のキシロースを含み、その残りが、フルクトース、マンノース、ガラクトースおよび/または多糖フラクションである、前記上記項のいずれかに記載の硬化性結合剤組成物。
(項5)
前記多糖フラクションが、アラビナン、ガラクタンおよび/またはマンナンを含む、上記項4に記載の硬化性結合剤組成物。
(項6)
前記多糖の含有量が、1~90重量%の間、好ましくは3~20重量%の間、または3~15重量%の間、または3~10重量%の間で変動する、上記項5に記載の硬化性結合剤組成物。
(項7)
前記多糖フラクションが、2~20、好ましくは2~15で変動する、異なる重合度の多糖のブレンドであり、平均重合度が、3~7の間、好ましくは3~5の間を含む、上記項4から6のいずれかに記載の硬化性結合剤組成物。
(項8)
当技術分野で公知のカップリング剤、染料、抗真菌剤、抗細菌剤、疎水物質および他の添加剤をさらに含む、前記上記項のいずれかに記載の硬化性結合剤組成物。
(項9)
ケイ素含有カップリング剤を、前記結合剤組成物中、固形分の重量に基づき、好ましくは約0.1~約1重量%の範囲で含む、上記項8に記載の硬化性結合剤組成物。
(項10)
上記項1から9のいずれかに記載の硬化性結合剤組成物によって、および/または上記項1から9のいずれかに記載の前記硬化性結合剤組成物の前記炭水化物成分と無機アンモニア塩との縮合から得られる反応生成物、または上記項1から9のいずれかに記載の水性硬化性結合剤組成物を硬化条件に供することにより得られた結合剤によって、一緒に結合された鉱物繊維、合成繊維または天然繊維、セルロース粒子もしくはシート材料を含む、物質のアセンブリ。
(項11)
繊維マットに組織化されて断熱製品に加工されるように一緒に結合された、例えばガラスウールまたは石綿に基づき70~99重量%の範囲の量で鉱物繊維を含む断熱製品である、上記項10に記載の物質のアセンブリ。
(項12)
電池用セパレーターにおいての、ルーフィング膜もしくは屋根板などのルーフ製品用の基材または他の膜としての使用のための、不織繊維ベール、例えばガラス繊維ベールである、上記項10に記載の物質のアセンブリ。
(項13)
結合粒子、例えば、砂粒子もしくはセルロース粒子、例えば、セルロース系繊維、おが屑、木材層もしくはシート、木材パルプ、およびファイバーボード、パーティクルボード、配向性ストランドボードもしくは合板を含む複合木材ボードを製造するために一般に使用される他の材料であり、結合剤含有量が、前記アセンブリの総重量に基づき、約5~30重量%、特に9~20重量%の範囲である、上記項10に記載の物質のアセンブリ。
(項14)
上記項10から13のいずれかに記載の物質のアセンブリの調製方法であって、(i)(a)少なくとも部分的にセルロース加水分解物の糖である炭水化物成分を提供するステップ、(ii)適量の(b)無機アンモニウム塩を提供するステップ、(iii)粒子状物、繊維状もしくはセルロース系粒子状材料、またはシート材料上に、(b)により架橋された(a)であり得る、(a)および(b)を含む水性組成物として、(a)および(b)を逐次的または同時に付与して、樹脂加工材料を生成するステップ、ならびに(v)得られた樹脂加工材料を硬化条件に供して、過剰な水を蒸発させるステップを含む、方法。
(項15)
硬化が、90~200℃の範囲、好ましくは140℃超、より好ましくは190℃未満、通常、160~180℃の間の温度で行われる、上記項14に記載の方法。
(項16)
炭水化物成分およびアンモニアとの無機酸の塩を含む硬化性結合剤組成物中の糖成分としてのセルロース加水分解物の糖の使用であって、前記硬化性結合剤組成物によって、ならびに/または前記硬化性結合剤組成物の前記炭水化物成分と無機アンモニア塩との縮合および/もしくは硬化から得られる反応生成物によって、一緒に結合された鉱物繊維、合成繊維もしくは天然繊維、セルロース粒子、またはシート材料を含む物質のアセンブリの乾燥および/または湿潤強度を改善するための、使用。
図1
図2
図3
図4