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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/20 20180101AFI20221114BHJP
   F21S 41/16 20180101ALI20221114BHJP
   F21S 41/125 20180101ALI20221114BHJP
   F21S 41/30 20180101ALI20221114BHJP
   F21S 43/20 20180101ALI20221114BHJP
   F21S 43/30 20180101ALI20221114BHJP
   F21V 9/40 20180101ALI20221114BHJP
   F21W 102/155 20180101ALN20221114BHJP
   F21W 102/18 20180101ALN20221114BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20221114BHJP
   F21Y 113/10 20160101ALN20221114BHJP
   F21W 103/60 20180101ALN20221114BHJP
【FI】
F21S41/20
F21S41/16
F21S41/125
F21S41/30
F21S43/20
F21S43/30
F21V9/40 200
F21V9/40 100
F21W102:155
F21W102:18
F21Y115:30
F21Y113:10
F21W103:60
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019559605
(86)(22)【出願日】2018-12-07
(86)【国際出願番号】 JP2018045147
(87)【国際公開番号】W WO2019117042
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2017239076
(32)【優先日】2017-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017239077
(32)【優先日】2017-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】内田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】藤井 穂菜美
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 壮宜
【審査官】上尾 敬彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/072505(WO,A1)
【文献】特開平10-232592(JP,A)
【文献】特開2015-132707(JP,A)
【文献】国際公開第2015/151283(WO,A1)
【文献】特開2016-135629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/20
F21S 41/16
F21S 41/125
F21S 41/30
F21S 43/20
F21S 43/30
F21V 9/40
F21W 102/155
F21W 102/18
F21Y 115/30
F21Y 113/10
F21W 103/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに波長の異なる複数のレーザ光を一つずつ順番に繰り返し出射する光源と、
それぞれの波長の前記レーザ光にそれぞれ対応する複数の回折格子と、
複数の前記回折格子を支持して回転する支持部材と、
を備え、
前記光源から出射するそれぞれの波長の前記レーザ光は、それぞれの前記レーザ光に対応する前記回折格子に入射し、それぞれの前記回折格子から出射する光が照射される領域が互いに重なり、
複数の前記回折格子は、前記支持部材の回転軸を中心とする円の円周上に、複数の前記レーザ光の前記光源からの出射の順番に対応する順に並んで配置され、
一つずつ順番に繰り返し出射される複数の前記レーザ光の出射と前記支持部材の回転とが同期され
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
それぞれの前記回折格子から出射する光が照射される領域の外形の少なくとも一部が一致する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記光源は、互いに波長の異なる少なくとも3つの前記レーザ光を出射する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
互いに波長の異なる複数のレーザ光を一つずつ順番に繰り返し出射する光源と、
複数の配光パターン形成部と、
複数の前記配光パターン形成部を支持して回転する支持部材と、
を備え、
それぞれの前記配光パターン形成部は、前記支持部材の回転軸を中心とする円周上に配置されて前記光源から出射する前記レーザ光が入射して所定の配光パターンの光を出射する少なくとも1つの回折格子から構成され、
少なくとも2つの前記配光パターン形成部の前記回折格子から出射する光の配光パターンは互いに異なり、
前記配光パターン形成部は、それぞれの波長の前記レーザ光にそれぞれ対応する複数の前記回折格子からなる組を少なくとも1つ含み、
前記組における複数の前記回折格子は、前記円の周方向に、複数の前記レーザ光が前記光源から出される順番に対応する順に並び、
一つずつ順番に繰り返し出射される複数の前記レーザ光の出射と前記支持部材の回転とが同期され、
それぞれの前記配光パターン形成部において、前記光源から出射するそれぞれの波長の前記レーザ光はそれぞれの前記レーザ光に対応する前記回折格子に入射す
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項5】
複数の前記回折格子から出射する光が照射される領域の外形の少なくとも一部が一致する
ことを特徴とする請求項に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記光源は、互いに異なる波長の少なくとも3つの前記レーザ光を出射する
ことを特徴とする請求項またはに記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関し、具体的には、回折格子を備える車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具として、自動車用ヘッドライトに代表される車両用前照灯や、路面等に画像を描画する描画装置等が知られている。ところで、車両用灯具における配光パターンを所定の配光パターンとするために様々な構成が検討されており、例えば、下記特許文献1には、回折格子の一種であるホログラム素子を用いて所定の配光パターンを形成することが記載されている。
【0003】
また、下記特許文献2には、レーザ光を照射するレーザヘッドと、レーザヘッドの照射角度を調節するギヤ及び駆動モータ等からなる駆動機構と、制御部とを備え、車両に取り付けられるレーザ描画装置が開示されている。特許文献2のレーザ描画装置では、制御部が車両のECU(電子制御装置)から入力される制御信号に基づいてレーザヘッドから出射するレーザ光の照射角度を制御して、所定形状のマークを路面に描画する。特許文献2のレーザ描画装置では、路面に描画されるマークの形状に関する情報はECUに記憶されるため、マークの形状に関する情報を変更することで路面に描画するマークの形状を変更し得る。
【0004】
【文献】特開2012-146621号公報
【文献】特開2008-45870号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明の車両用灯具は、互いに波長の異なる複数のレーザ光を時分割で出射する光源と、それぞれの波長の前記レーザ光にそれぞれ対応する複数の回折格子と、を備え、前記光源から出射するそれぞれの波長の前記レーザ光は、それぞれの前記レーザ光に対応する前記回折格子に入射し、それぞれの前記回折格子から出射する光が照射される領域が互いに重なることを特徴とする。
【0006】
本発明の車両用灯具では、光源から時分割で出射する互いに波長の異なる複数のレーザ光がそれぞれの波長のレーザ光に対応する回折格子によってそれぞれ回折されて回折格子から出射し、それぞれの回折格子から出射する光が照射される領域が互いに重なっている。このため、光が照射される領域には、順次異なる波長の光が照射される。ところで、人の視覚の時間分解能よりも短い周期で波長の異なる光つまり色の異なる光が繰り返し照射される場合、人は残像現象によってこの異なる色の光が合成された光が照射されていると認識し得る。従って、波長の異なる複数のレーザ光が人の視覚の時間分解能よりも短い周期で繰り返し出射される場合には、光源から出射される複数のレーザ光が合成された光を残像現象によって照射し得る。このようにして残像現象によって合成される光の色バランスは、光源から出射するそれぞれのレーザ光の強度やそれぞれのレーザ光の出射時間の長さを調節することにより調節し得る。従って、本発明の車両用灯具は、光源の交換等の対応をしなくても、色バランスを調節し得る。なお、色バランスの調整には、車両用灯具を使用する際の調整とともに、車両用灯具を製造する際等における調整も含まれる。
【0007】
ところで、回折格子は波長依存性を有しているため、互いに異なる波長の光は、回折格子により互いに異なる配光パターンとなる傾向にある。しかし、本発明の車両用灯具では、上記のように互いに波長の異なる複数のレーザ光はそれぞれの波長のレーザ光に対応する回折格子によってそれぞれ回折される。このため、それぞれの回折格子から出射する光が照射される領域が互いに重なるようにし易く、所望の配光パターンを残像現象によって形成し易い。
【0008】
また、それぞれの前記回折格子から出射する光が照射される領域の外形の少なくとも一部が一致することが好ましい。
【0009】
このような構成にすることで、残像現象によって形成される配光パターンの縁近傍で色のにじみが生じることを抑制することができる。
【0010】
また、前記光源は、互いに波長の異なる少なくとも3つの前記レーザ光を出射することが好ましい。
【0011】
この場合、三原色のレーザ光を用いることができる。従って、光源から出射するそれぞれのレーザ光の強度を調節することにより、所望の色の光を残像現象によって照射することができる。
【0012】
また、複数の前記回折格子を支持して回転する支持部材を更に備え、複数の前記回折格子は、前記支持部材の回転軸を中心とする円の円周上に配置され、複数の前記レーザ光の時分割での出射と前記支持部材の回転とが同期されても良い。
【0013】
このように構成することで、光源から出射するレーザ光の照射角度を調節しなくても、波長の異なる複数のレーザ光をそれぞれの波長のレーザ光に対応する回折格子に入射させ得る。一般的にレーザ光の照射角度を調節する駆動機構は複雑になる傾向にある。従って、光源から出射するレーザ光の照射角度を調節する駆動機構を備える場合と比べて、簡易な構成とし得る。
【0014】
また、複数の前記回折格子を支持して往復移動する支持部材を更に備え、複数の前記回折格子は、前記支持部材の往復方向と平行な直線上に配置され、複数の前記レーザ光の時分割での出射と前記支持部材の往復移動とが同期されても良い。
【0015】
このように構成することで、光源から出射するレーザ光の照射角度を調節しなくても、波長の異なる複数のレーザ光をそれぞれの波長のレーザ光に対応する回折格子に入射させ得る。従って、光源から出射するレーザ光の照射角度を調節する駆動機構を備える場合と比べて、簡易な構成とし得る。
【0016】
また、前記光源から出射するそれぞれの波長の前記レーザ光をそれぞれの前記レーザ光に対応する前記回折格子に導光する光路変更素子を更に備えても良い。
【0017】
このように構成することで、光路変更素子を備えない場合と比べて、光源と複数の回折格子との位置関係の自由度が向上して小型化し得る。また、光源から出射するレーザ光の照射角度を調節しなくても、波長の異なる複数のレーザ光をそれぞれの波長のレーザ光に対応する回折格子に入射させ得る。従って、光源から出射するレーザ光の照射角度を調節する駆動機構を備える場合と比べて、簡易な構成とし得る。
【0018】
また、本発明の車両用灯具は、光源と、複数の配光パターン形成部と、複数の前記配光パターン形成部を支持して回転する支持部材と、を備え、それぞれの前記配光パターン形成部は、前記支持部材の回転軸を中心とする円周上に配置されて前記光源から出射するレーザ光が入射して所定の配光パターンの光を出射する少なくとも1つの回折格子から構成され、少なくとも2つの前記配光パターン形成部の前記回折格子から出射する光の配光パターンは互いに異なることを特徴とする。
【0019】
この車両用灯具では、光源から出射するレーザ光が配光パターン形成部の回折格子に入射し、この回折格子から所定の配光パターンの光が出射される。このため、光源から出射するレーザ光の照射角度を調節しなくても路面等の被照射体に画像を描画することができ、上記特許文献2のように光源から出射する光の照射角度を調節して路面等に画像を描画する車両用灯具と比べて、簡易な構成で画像を路面等に描画し得る。ところで、それぞれの配光パターン形成部が光源から出射するレーザ光が入射して所定の配光パターンの光を出射する複数の回折格子から構成されている場合、例えばこれら回折格子に同時に光源からの光を入射させる等することで、これら回折格子から出射する光を当該光が互いに重なるように路面等の被照射体に照射させることができ、所定の画像を描画し得る。なお、配光パターン形成部が1つの回折格子から構成される場合には、当該回折格子が配光パターン形成部とされる。
【0020】
また、この車両用灯具では、それぞれの配光パターン形成部の回折格子は、支持部材の回転軸を中心とする円周上に配置されている。このため、支持部材を所定の角度回転することで光源から出射するレーザ光が入射する回折格子を別の配光パターン形成部の回折格子に変更できる。また、少なくとも2つの配光パターン形成部の回折格子から出射する光の配光パターンは互いに異なる。従って、支持部材を所定の角度回転することで、路面等に描画する画像を切替えることができる。また、支持部材を連続して回転させてこの画像の切替えを連続して行うことで、動画を路面等に描画し得る。ところで、一般的に部品を回転運動させる場合には、部品を往復運動させる場合と比べて動作音が発生し難い傾向がある。従って、支持部材を往復運動させることによって路面等に描画する画像を切替える場合よりも路面等に描画する画像を切替える際の作動音を抑制し得る。
【0021】
また、複数の配光パターン形成部を備える場合、前記光源は、互いに異なる波長の複数の前記レーザ光を時分割で出射し、複数の前記レーザ光の時分割での出射と前記支持部材の回転とが同期され、前記配光パターン形成部は、それぞれの波長の前記レーザ光にそれぞれ対応する複数の前記回折格子からなる組を少なくとも1つ含み、それぞれの前記配光パターン形成部において、前記光源から出射するそれぞれの波長の前記レーザ光はそれぞれの前記レーザ光に対応する前記回折格子に入射することが好ましい。
【0022】
この場合、それぞれの配光パターン形成部において、光源から時分割で出射する互いに異なる波長の複数のレーザ光がそれぞれの波長のレーザ光に対応する回折格子によってそれぞれ回折されてこれら回折格子から出射する。このため、それぞれの配光パターン形成部からは、順次異なる波長の光が出射し、これら光が路面等の被照射体に順次照射される。上記のように、人の視覚の時間分解能よりも短い周期で波長の異なる光つまり色の異なる光が繰り返し照射される場合、人は残像現象によってこの異なる色の光が合成された光が照射されていると認識し得る。従って、例えば異なる波長の複数のレーザ光が人の視覚の時間分解能よりも短い周期で繰り返し出射される場合には、それぞれの配光パターン形成部は、光源から出射される複数のレーザ光が合成された光を残像現象によって照射でき、画像を路面等に描画し得る。このようにして残像現象によって描画される画像の色バランスは、光源から出射するそれぞれのレーザ光の強度やそれぞれのレーザ光の出射時間の長さを調節することにより調節し得る。従って、この車両用灯具では、描画する画像の色バランスを調節し得る。なお、色バランスの調整には、車両用灯具を使用する際の調整と共に、車両用灯具を製造する際等における調整も含まれる。
【0023】
上記のように、回折格子は波長依存性を有しているため、互いに異なる波長の光は、回折格子により互いに異なる配光パターンとなる傾向にある。しかし、この車両用灯具では、上記のようにそれぞれの配光パターン形成部において、互いに異なる波長の複数のレーザ光はそれぞれの波長のレーザ光に対応する回折格子によってそれぞれ回折される。このため、複数の回折格子から出射する光が照射される領域が互いに重なるようにし易く、所望の画像を残像現象によって描画し易い。
【0024】
また、複数の配光パターン形成部を備え、光源が互いに異なる波長の複数の前記レーザ光を時分割で出射する場合、複数の前記回折格子から出射する光が照射される領域の外形の少なくとも一部が一致することが好ましい。
【0025】
このような構成にすることで、残像現象によって描画される画像の縁近傍での色のにじみが生じることを抑制することができる。
【0026】
また、複数の配光パターン形成部を備え、光源が互いに異なる波長の複数の前記レーザ光を時分割で出射する場合、前記光源は、互いに異なる波長の少なくとも3つの前記レーザ光を出射することが好ましい。
【0027】
この場合、三原色のレーザ光を用いることができる。従って、光源から出射するそれぞれのレーザ光の強度を調節することにより、所望の色の光を残像現象によって照射することができ、所望の色の画像を路面等に描画できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1実施形態に係る車両用灯具の一例を示す図である。
図2】回折格子ユニットを概略的に示す正面図である。
図3】配光パターンを示す図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る車両用灯具の回折格子ユニットを概略的に示す正面図である。
図5】本発明の第3実施形態に係る車両用灯具を図1と同じ視点で示す図である。
図6】本発明の第4実施形態に係る車両用灯具の一例を示す図である。
図7図6の回折格子ユニットを概略的に示す正面図である。
図8】描画される画像の一例を概略的に示す図である。
図9】本発明の第5実施形態に係る車両用灯具の回折格子ユニットを概略的に示す正面図である。
図10】本発明の第6実施形態に係る車両用灯具の回折格子ユニットを概略的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る車両用灯具を実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。
【0030】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る車両用灯具の一例を示す図であり、車両用灯具の鉛直方向の断面を概略的に示す図である。本実施形態では車両用灯具1は車両用前照灯とされ、図1に示すように、本実施形態の車両用灯具1は、筐体10と、灯具ユニット20とを主な構成として備える。
【0031】
筐体10は、ランプハウジング11、フロントカバー12及びバックカバー13を主な構成として備える。ランプハウジング11の前方は開口しており、当該開口を塞ぐようにフロントカバー12がランプハウジング11に固定されている。また、ランプハウジング11の後方には前方よりも小さな開口が形成されており、当該開口を塞ぐようにバックカバー13がランプハウジング11に固定されている。
【0032】
ランプハウジング11と、当該ランプハウジング11の前方の開口を塞ぐフロントカバー12と、当該ランプハウジング11の後方の開口を塞ぐバックカバー13とによって形成される空間は灯室Rであり、この灯室R内に灯具ユニット20が収容されている。
【0033】
本実施形態の灯具ユニット20は、光源30と、回折格子ユニット40と、モータ50と、モータドライバ51と、制御部60と、入力部61とを主な構成として備える。なお、灯具ユニット20は、不図示の構成により筐体10に固定されている。
【0034】
本実施形態の光源30は、互いに波長の異なる複数のレーザ光を時分割で出射する。本実施形態の光源30は、透過するレーザ光のファスト軸方向、スロー軸方向をコリメートする不図示のコリメートレンズを有しており、光源30からはコリメートレンズを透過したレーザ光が出射される。また、光源30は、パワーのピーク波長が例えば638nmの赤色のレーザ光LRを出射する不図示の発光素子と、パワーのピーク波長が例えば515nmの緑色のレーザ光LGを出射する不図示の発光素子と、パワーのピーク波長が例えば445nmの青色のレーザ光LBを出射する不図示の発光素子と、不図示の駆動回路とを有している。これらの発光素子には駆動回路を介して電力が供給される。このような光源30は、それぞれの発光素子に供給される電力を調節することで、赤色のレーザ光LRと緑色のレーザ光LGと青色のレーザ光LBとを時分割で出射でき、光源30から出射するそれぞれのレーザ光は概ね同じ領域に出射される。つまり、本実施形態の光源30は、赤色のレーザ光LRと緑色のレーザ光LGと青色のレーザ光LBとを切り換え、いずれかの色のレーザ光LR,LG,LBを所望のタイミングで所望の時間出射できるように構成されている。また、光源30は、それぞれの発光素子に供給される電力を調節することで、出射するそれぞれのレーザ光LR,LG,LBの強度を調節することができる。本実施形態では、初期状態としてこれらレーザ光LR,LG,LBが合成された光の色が白色となるように、それぞれのレーザ光LR,LG,LBの強度が調節されている。光源30として、例えば発光素子がレーザ光を出射するレーザ素子とされる半導体レーザ等を用いることができる。
【0035】
本実施形態のモータ50は、出力シャフト52の回転位置を検知するエンコーダ53を有する電動モータとされ、出力シャフト52には回折格子ユニット40の支持部材42が固定されている。モータ50には、モータドライバ51が電気的に接続されており、モータドライバ51を介してモータ50に電力が供給され、モータドライバ51から供給される電力に応じて出力シャフト52が回転する。モータ50として、例えばステッピングモータやAC(Alternating Current)サーボモータ等を用いることができ、エンコーダ53として、例えばロータリアブソリュートエンコーダ等を用いることができる。
【0036】
図2は、図1に示す回折格子ユニット40を概略的に示す正面図である。本実施形態の回折格子ユニット40は、3つの回折格子43R,43G,43Bと支持部材42とを主な構成として備え、回折格子ユニット40には光源30から出射するレーザ光が入射する。なお、図2には光源30から出射するレーザ光LR,LG,LBが入射する領域31が破線で示されている。
【0037】
本実施形態の支持部材42は正面視の外形が概ね円形の板状部材とされ、支持部材42の中心部にはモータ50の出力シャフト52の一端部が固定されており、支持部材42はモータ50によって出力シャフト52の回転軸52Aを回転軸として回転し得る。なお、この回転軸52Aは図2において紙面に対して垂直方向に延びている。本実施形態の支持部材42には、当該支持部材42の板厚方向に貫通する3つの貫通孔が形成されており、当該貫通孔に3つの回折格子43R,43G,43Bがそれぞれ嵌め込まれ、3つの回折格子43R,43G,43Bは支持部材42に固定されている。このため、支持部材42が出力シャフト52の回転軸52Aを回転軸として回転することで回折格子43R,43G,43Bは回転軸52Aを中心に回転する。このようにして支持部材42に支持される3つの回折格子43R,43G,43Bは、出力シャフト52の回転軸52Aの方向から見て、当該回転軸52Aを中心とする円Cの円周上に配置されている。この円Cの円周は、光源30から出射するレーザ光が入射する領域31を横切っている。このため、回折格子43R,43G,43Bのそれぞれに対して支持部材42が所定の回転位置まで回転することにより、回折格子43R,43G,43Bと光源30から出射するレーザ光が入射する領域31とがそれぞれ重なり、回折格子43R,43G,43Bには光源30から出射するレーザ光LR,LG、LBが入射され得る。また、本実施形態では、回折格子43R,43G,43Bは、円Cの円周の全周において概ね等間隔で配置され、回転軸52Aを基準とした回転対称となるように位置している。
【0038】
本実施形態では、回折格子43R,43G,43Bは透過型の回折格子とされ、一方の面から入射する光を回折し、この回折光を他方の面から出射する。本実施形態の回折格子43R,43G,43Bのそれぞれは、回転軸52Aを中心とする円Cの径方向及び周方向に区分けされて形成される不図示の格子領域のそれぞれに不図示の回折格子パターンを有する。この格子領域は、回折格子43R,43G,43Bと光源30から出射するレーザ光が入射する領域31とがそれぞれ重なった際に、この領域31内に一つ以上位置するように形成される。
【0039】
本実施形態では、回折格子43Rは、光源30から出射する赤色のレーザ光LRに対応しており、この赤色のレーザ光LRが当該回折格子43Rに入射して回折される。また、回折格子43Gは、光源30から出射する緑色のレーザ光LGに対応しており、この緑色のレーザ光LGが当該回折格子43Gに入射して回折される。また、回折格子43Bは、光源30から出射する青色のレーザ光LBに対応しており、この青色のレーザ光LBが当該回折格子43Bに入射して回折される。
【0040】
赤色のレーザ光LRが回折格子43Rによって回折されて当該回折格子43Rから出射する光DLRは赤色であり、緑色のレーザ光LGが回折格子43Gによって回折されて当該回折格子43Gから出射する光DLGは緑色であり、青色のレーザ光LBが回折格子43Bによって回折されて当該回折格子43Bから出射する光DLBは青色である。この光DLR,DLG,DLBは、照射される領域が互いに重なるように、それぞれ回折格子43R,43G,43Bから出射される。言い換えると、回折格子43R,43G,43Bは、回折格子43Rから出射する光DLRの配光パターンと、回折格子43Gから出射する光DLGの配光パターンと、回折格子43Bから出射する光DLBの配光パターンとが互いに重なるように、それぞれ光DLR,DLG,DLBを出射する。なお、上述したように回折格子43R,43G,43Bは、区分けされた複数の格子領域のそれぞれに回折格子パターンを有しており、それぞれの回折格子パターンがこのような配光パターンとなるように入射するレーザ光LR,LG,LBをそれぞれ回折する。つまり、回折格子43R,43G,43Bは、同じ回折格子パターンの複数の回折格子の集合体とされている。
【0041】
具体的には、回折格子43R,43G,43Bは、当該回折格子43R,43G,43Bから出射するそれぞれの光DLR,DLG,DLBが合成された光がロービームの配光パターンとなるように、光源30から出射する赤色のレーザ光LRと緑色のレーザ光LGと青色のレーザ光LBとをそれぞれ回折する。このそれぞれの配光パターンには強度分布も含まれる。このため、本実施形態の回折格子43R,43G,43Bは、それぞれの回折格子43R,43G,43Bから出射する光DLR,DLG,DLBがそれぞれロービームの配光パターンと重なると共にロービームの配光パターンの強度分布に基づいた強度分布となるように、光源30から出射して回折格子43R,43G,43Bに入射する赤色のレーザ光LRと緑色のレーザ光LGと青色のレーザ光LBをそれぞれ回折する。こうして、回折格子43Rからはロービームの配光パターンの赤色成分の光DLRが出射し、回折格子43Gからはロービームの配光パターンの緑色成分の光DLGが出射し、回折格子43Bからはロービームの配光パターンの青色成分の光DLBが出射する。
【0042】
なお、上記のロービームの配光パターンの強度分布に基づいた強度分布とは、ロービームの配光パターンにおける強度が高い部位では、回折格子43R,43G,43Bから出射するそれぞれの強度も高いという意味である。
【0043】
本実施形態の入力部61は、ユーザの操作に応じて入力される命令や設定値等の情報を電気信号によって出力する。本実施形態では、入力部61に入力される情報は、光源30から出射するレーザ光LR,LG,LBのそれぞれの強度と、当該レーザ光LR,LG,LBのそれぞれの出射時間の長さとされる。入力部61として、例えば、複数のロータリスイッチが回路基板に実装されたスイッチ群が挙げられる。
【0044】
本実施形態の制御部60は、車両のECU(電子制御装置)等の制御装置54と、光源30と、モータドライバ51と、モータ50のエンコーダ53と、入力部61とに電気的に接続される。制御部60は、光源30のレーザ光の出射の状態とモータ50の出力シャフト52の回転状態とを制御する。制御部60は、この制御を車両の制御装置54から制御部60に入力する信号とモータ50のエンコーダ53から制御部60に入力する信号と入力部61から制御部60に入力する信号とに基づいて行う。
【0045】
次に車両用灯具1による光の出射について説明する。
【0046】
前述の制御部60は、例えば車両の制御装置54からのロービームの照射を示す信号を検知して、ロービームの照射を示す信号が制御部60に入力している入力状態の場合には、光源30のレーザ光の出射の状態とモータ50の出力シャフト52の回転状態とを制御して、車両用灯具1から光を出射する。
【0047】
具体的には、本実施形態の制御部60は、前述のモータドライバ51を駆動させ、モータ50に印加する電圧を調整してモータ50の出力シャフト52を回転させる。上述したように出力シャフト52には支持部材42が固定されているため、出力シャフト52が回転することで支持部材42及び回折格子43R,43G,43B(回折格子ユニット40)は出力シャフト52の回転軸52Aを回転軸として回転する。この際、制御部60は、モータ50のエンコーダ53から制御部60に入力する信号に基づいてモータドライバ51を駆動する。なお、本実施形態では、図2において時計回りに回折格子ユニット40を回転する。
【0048】
上述したようにエンコーダ53は、出力シャフト52の回転位置を検知でき、光源30から出射するレーザ光が入射する前述の領域31の位置は、回折格子ユニット40が回転しても殆ど変動しない。このため、制御部60は、エンコーダ53から制御部60に入力する信号に基づいて回折格子ユニット40におけるどの位置が領域31と重なっているかを検知できる。このような制御部60は、モータドライバ51を駆動して、赤色のレーザ光LRに対応する回折格子43Rが領域31の全体と重なる位置まで、例えば回折格子ユニット40の回転方向における回折格子43Rの中心と領域31の中心とが一致するまで回折格子ユニット40を回転させる。
【0049】
次に、制御部60は、回折格子ユニット40の回転方向における回折格子43Rの中心と領域31の中心とが一致する際に、光源30の駆動回路を駆動して光源30から赤色のレーザ光LRを所定の時間出射させる。光源30から出射する赤色のレーザ光LRは回折格子43Rに入射し上記のように回折格子43Rで回折され、回折格子43Rからロービームの配光パターンの赤色成分の光DLRが所定の時間出射する。このロービームの配光パターンの赤色成分の光DLRは、フロントカバー12を介して車両用灯具1から所定の時間出射する。
【0050】
次に、制御部60は、モータドライバ51を駆動して、緑色のレーザ光LGに対応する回折格子43Gが領域31の全体と重なる位置まで、例えば回折格子ユニット40の回転方向における回折格子43Gの中心と領域31の中心とが一致するまで回折格子ユニット40を回転させる。次に、制御部60は、回折格子ユニット40の回転方向における回折格子43Gの中心と領域31の中心とが一致する際に、光源30から緑色のレーザ光LGを所定の時間出射させる。本実施形態では、緑色のレーザ光LGの出射時間の長さは上記の赤色のレーザ光LRの出射時間の長さと概ね同じとされる。光源30から出射する緑色のレーザ光LGは回折格子43Gに入射し上記のように回折格子43Gで回折され、回折格子43Gからロービームの配光パターンの緑色成分の光DLGが所定の時間出射する。このロービームの配光パターンの緑色成分の光DLGは、フロントカバー12を介して車両用灯具1から所定の時間出射する。
【0051】
次に、制御部60は、モータドライバ51を駆動して、青色のレーザ光LBに対応する回折格子43Bが領域31の全体と重なる位置まで、例えば回折格子ユニット40の回転方向における回折格子43Bの中心と領域31の中心とが一致するまで回折格子ユニット40を回転させる。次に、制御部60は、回折格子ユニット40の回転方向における回折格子43Bの中心と領域31の中心とが一致する際に、光源30から青色のレーザ光LBを所定の時間出射させる。本実施形態では、青色のレーザ光LBの出射時間の長さは上記の赤色のレーザ光LRの出射時間の長さと概ね同じとされる。光源30から出射する青色のレーザ光LBは回折格子43Bに入射し上記のように回折格子43Bで回折され、回折格子43Bからロービームの配光パターンの青色成分の光DLBが所定の時間出射する。このロービームの配光パターンの青色成分の光DLBは、フロントカバー12を介して車両用灯具1から所定の時間出射する。
【0052】
制御部60は、上記の回折格子ユニット40の回転、光源30からの赤色のレーザ光LRの出射、回折格子ユニット40の回転、光源30からの緑色のレーザ光LGの出射、回折格子ユニット40の回転、光源30からの青色のレーザ光LBの出射が順次繰り返されるように、光源30のレーザ光の出射の状態とモータ50の出力シャフト52の回転状態とを制御する。つまり、光源30の時分割での赤色のレーザ光LRと緑色のレーザ光LGと青色のレーザ光LBの出射と、回折格子ユニット40の回転とが同期されている。そして、車両用灯具1からは、ロービームの配光パターンの赤色成分の光DLRとロービームの配光パターンの緑色成分の光DLGとロービームの配光パターンの青色成分の光DLBとが順次繰り返して出射される。本実施形態では、レーザ光LR,LG,LBのそれぞれの出射時間の長さは概ね同じとされるため、光DLR,DLG,DLBのそれぞれの出射時間の長さも概ね同じとなる。
【0053】
ところで、人の視覚の時間分解能よりも短い周期で色の異なる光が繰り返し照射される場合、人は残像現象によってこの異なる色の光が合成された光が照射されていると認識し得る。本実施形態において、所定の色のレーザ光を出射してから当該所定の色のレーザ光を再度出射するまでの時間が人の視覚の時間分解能よりも短くされた場合、人の視覚の時間分解能よりも短い周期で回折格子43R,43G,43Bから出射する光DLR,DLG,DLBが繰り返し照射され、赤色の光DLRと緑色の光DLGと青色の光DLBとが残像現象によって合成される。この光DLR,DLG,DLBのそれぞれの出射時間の長さは概ね同じである。また、上記のように初期状態としてそれぞれのレーザ光LR,LG,LBの強度は、これらレーザ光LR,LG,LBが合成された光の色が白色となるように調節されている。このため、残像現象によって合成される光の色は白色となる。このとき、光DLR,DLG,DLBのそれぞれは、上述のようにロービームの配光パターンと重なると共にロービームの配光パターンの強度分布に基づいた強度分布となるようにされるため、光DLR,DLG,DLBが残像現象によって合成された光の配光パターンはロービームの配光パターンとなる。なお、上記のレーザ光LR,LG,LBを繰り返し出射する周期は、残像現象によって合成される光のちらつきを感じることを抑制する観点から、1/15s以下とされることが好ましい。人の視覚の時間分解能は概ね1/30sである。車両用灯具であれば、光の出射の周期が2倍程度であれば光のちらつきを感じることを抑制できる。この周期が1/30s以下であれば、人の視覚の時間分解能を概ね超える。従って、光のちらつきを感じることをより抑制できる。また更に、この周期が1/60s以下であれば、光のちらつきを感じることをより抑制できる観点から好ましい。
【0054】
なお、回折格子43R,43G,43Bは、光DLR,DLG,DLBが照射される領域の外形の少なくとも一部が互いに一致するように、つまり光DLR,DLG,DLBの配光パターンの外形の少なくとも一部が互いに一致するように、それぞれレーザ光LR,LG,LBを回折して光DLR,DLG,DLBを出射することが好ましい。このような構成にすることで、上記のように残像現象によって形成される配光パターンの縁近傍で色のにじみが生じることを抑制することができる。また更に、これら外形の全体が互いに一致するようにすることが、配光パターンの縁近傍で色のにじみが生じることをより抑制できる観点からより好ましい。
【0055】
こうして、車両用灯具1はロービームの配光パターンを有する光を残像現象によって照射し得る。
【0056】
図3は夜間照明用の配光パターンを示す図であり、具体的には、図3(A)はロービームの配光パターンを示す図であり、図3(B)はハイビームの配光パターンを示す図である。図3においてSは水平線を示し、配光パターンが太線で示される。図3(A)に示される夜間照明用の配光パターンであるロービームLの配光パターンのうち、領域LA1は最も強度が高い領域であり、領域LA2、領域LA3の順に強度が低くなる。つまり、それぞれの回折格子43R,43G,43Bは、残像現象によって合成された光がロービームLの強度分布を含む配光パターンを形成するように光を回折するのである。なお、図3において破線で示すように、ロービームLが残像現象によって照射される位置よりも上方にロービームよりも強度の低い光が車両用灯具1から照射されても良い。この光は、標識視認用の光OHSとされる。この場合、それぞれの回折格子43R,43G,43Bから出射される光DLR,DLG,DLBの配光パターンには、当該標識視認用の光OHSが照射される領域と重なり標識視認用の光OHSの強度分布を含む配光パターンが含まれていることが好ましく、外形が標識視認用の光OHSが照射される領域の外形の少なくとも一部と一致して標識視認用の光OHSの強度分布を含む配光パターンが含まれていることがより好ましい。更に、この外形が標識視認用の光OHSが照射される領域の外形の全体と一致していることがより好ましい。また、この場合、ロービームLと標識視認用の光OHSとで、夜間照明用の配光パターンが形成されると理解することができる。なお、夜間照明用の配光パターンは、夜間のみに用いられるものではなく、トンネル等の暗所においても使用される。
【0057】
次に車両用灯具1における光の色バランスの調整について説明する。
【0058】
上述したように制御部60には、入力部61が電気的に接続されており、制御部60には、光源30から出射するレーザ光LR,LG,LBのそれぞれの強度と、当該レーザ光LR,LG,LBのそれぞれの出射時間の長さとが電気信号によって入力部61から入力される。
【0059】
ところで、上記のように残像現象によって合成された光では、合成される光の強度や合成される光の出射時間の長さが変わることで、その光の色バランスが変更される。本実施形態では、入力部61によって、光源30から出射するレーザ光LR,LG,LBのそれぞれの強度と、当該レーザ光LR,LG,LBのそれぞれの出射時間の長さとを調節することができる。このため、光源30を交換する等の対応をしなくても、照射する光の色バランスを調節できる。
【0060】
具体的には、本実施形態において、例えば、赤色のレーザ光LGの強度を、車両用灯具1からロービームLの配光パターンを有する光が残像現象によって照射される状態における強度よりも高くした場合には、車両用灯具1から照射されるロービームLの配光パターンを有する白色の光の色は、赤色が強められた色に変更される。同様にして、緑色のレーザ光LGの強度を高くした場合には、白色の光の色は緑色が強められた色に変更され、青色のレーザ光LGの強度を高くした場合には、白色の光の色は青色が強められた色に変更される。一方、赤色のレーザ光LRの強度を低くした場合には、白色の光の色は青緑色が強められた色に変更され、緑色のレーザ光LGの強度を低くした場合には、白色の光の色は赤紫色が強められた色に変更され、青色のレーザ光LBの強度を低くした場合には、白色の光の色は黄色が強められた色に変更される。
【0061】
また、本実施形態において、赤色のレーザ光LGの出射時間の長さを、車両用灯具1からロービームLの配光パターンを有する光が残像現象によって照射される状態における出射時間の長さよりも長くした場合には、車両用灯具1から照射されるロービームLの配光パターンを有する白色の光の色は、赤色が強められた色に変更される。同様にして、緑色のレーザ光LGの出射時間を長くした場合には、白色の光の色は緑色が強められた色に変更され、青色のレーザ光LGの出射時間を長くした場合には、白色の光の色は青色が強められた色に変更される。一方、赤色のレーザ光LRの出射時間を短くした場合には、白色の光の色は青緑色が強められた色に変更され、緑色のレーザ光LGの出射時間を短くした場合には、白色の光の色は赤紫色が強められた色に変更され、青色のレーザ光LBの出射時間を短くした場合には、白色の光の色は黄色が強められた色に変更される。
【0062】
ところで、上記特許文献1の車両用灯具のホログラム素子には、光源から白色の参照光が入射して、その回折光によりロービームやハイビーム等の所定の配光パターンが形成される。特許文献1の車両用灯具では、形成される所定の配光パターンの色は白色であり、その色バランスは光源から照射される参照光の色バランスに大きく依存する傾向にある。このため、形成される所定の配光パターンの色バランスを調節するためには、光源の交換等の対応が必要となると考えられる。従って、特許文献1の車両用灯具では、照射する光の色バランスの調節がしにくい。
【0063】
そこで、本実施形態の車両用灯具1は、赤色のレーザ光LRと緑色のレーザ光LGと青色のレーザ光LBを時分割で出射する光源30と、赤色のレーザ光LRに対応する回折格子43Rと緑色のレーザ光LGに対応する回折格子43Gと青色のレーザ光LBに対応する回折格子43Bとを備える。光源30から出射するレーザ光LR,LG,LBは、それぞれのレーザ光LR,LG,LBに対応する回折格子43R,43G,43Bに入射し、回折格子43R,43G,43Bから出射する光DLR,DLG,DLBが照射される領域が互いに重なる。
【0064】
上述したように、人の視覚の時間分解能よりも短い周期で色の異なる光が繰り返し照射される場合、人は残像現象によってこの異なる色の光が合成された光が照射されていると認識し得る。従って、人の視覚の時間分解能よりも短い周期で赤色のレーザ光LRと緑色のレーザ光LGと青色のレーザ光LBが繰り返し出射される場合には、光源30から出射される赤色のレーザ光LRと緑色のレーザ光LGと青色のレーザ光LBとが合成された白色の光を残像現象によって照射し得る。また、このようにして残像現象によって照射される光の色バランスは、光源30から出射するそれぞれのレーザ光LR,LG,LBの強度やそれぞれのレーザ光LR,LG,LBの出射時間の長さを調節することにより調節し得る。従って、本実施形態の車両用灯具1は、光源30を交換する等の対応をしなくても、色バランスを調節し得る。
【0065】
ところで、回折格子43R,43G,43Bは波長依存性を有しているため、互いに異なる波長の光は、回折格子43R,43G,43Bにより互いに異なる配光パターンとなる傾向にある。しかし、本実施形態の車両用灯具1では、上記のように互いに波長の異なる複数のレーザ光LR,LG,LBは、それぞれの波長のレーザ光に対応する回折格子43R,43G,43Bによってそれぞれ回折される。このため、それぞれの回折格子43R,43G,43Bから出射する光DLR,DLG,DLBが照射される領域が互いに重なるようにし易く、所望の配光パターンを残像現象によって形成し易い。
【0066】
また、本実施形態の光源30は、互いに波長の異なる赤色のレーザ光LRと緑色のレーザ光LGと青色のレーザ光LBを出射する。このため、光源30から出射するそれぞれのレーザ光LR,LG,LBの強度を調節することにより、所望の色の光を残像現象によって照射することができる。
【0067】
また、本実施形態の車両用灯具1は、3つの回折格子43R,43G,43Bを支持して回転する支持部材42を備え、これら回折格子43R,43G,43Bは、支持部材42の回転軸である出力シャフト52の回転軸52Aを中心とする円Cの円周上に配置され、光源30の時分割での赤色のレーザ光LRと緑色のレーザ光LGと青色のレーザ光LBの出射と、回折格子ユニット40(支持部材42)の回転とが同期されている。このような構成とされることで、この車両用灯具1は、光源30から出射するレーザ光LR,LG,LBの照射角度を調節しなくても、これらレーザ光LR,LG,LBをそれぞれのレーザ光LR,LG,LBに対応する回折格子43R,43G,43Bに入射させ得る。一般的にレーザ光の照射角度を調節する駆動機構は複雑になる傾向にある。従って、光源から出射するレーザ光の照射角度を調節する駆動機構を備える場合と比べて、簡易な構成とし得る。
【0068】
また、本実施形態の車両用灯具1では、回折格子43R,43G,43Bは、円Cの円周の全周において概ね等間隔で配置され、回転軸52Aを基準とした回転対称となるように位置している。このように構成することで、支持部材42を順次所定の角度回転させることで、光源30から出射するレーザ光が入射する領域31と重なる回折格子を順次変更し得る。このため、複数の回折格子が円周の全周に概ね等間隔で配置されていない場合と比べて、制御部60によるモータ50の出力シャフト52の回転状態の制御が簡略化でき、光源30の時分割での赤色のレーザ光LRと緑色のレーザ光LGと青色のレーザ光LBの出射と、回折格子ユニット40(支持部材42)の回転との同期を容易にし得る。
【0069】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図4を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0070】
図4は、本実施形態に係る車両用灯具としての車両用灯具の回折格子ユニットを概略的に示す正面図である。本実施形態の車両用灯具の灯具ユニットは、モータ50及びモータドライバ51を備えない点、不図示の駆動装置を備える点、及び図4に示すように回折格子ユニット40において回折格子43R,43G,43Bが一つの直線上に並んで支持部材42に配置されている点において、第1実施形態における灯具ユニット20と異なる。本実施形態の灯具ユニット20は、光源30と、回折格子ユニット40と、駆動装置と、制御部60と、入力部61とを主な構成として備える。なお、灯具ユニット20は、不図示の構成により筐体10に固定されている。
【0071】
本実施形態の回折格子ユニット40における支持部材42は、正面視の外形が概ね四角形の板状部材とされ、当該支持部材42は板厚方向と垂直な方向に延びる二つのレール45によって挟み込まれるように支持されている。本実施形態の支持部材42には不図示の駆動装置が連結されており、支持部材42は二つのレール45に沿って往復移動できるように構成されている。また、本実施形態の支持部材42には、レール45に対する位置を検知する不図示のエンコーダが取り付けられている。駆動装置の構成として、例えばモータと当該モータで回転するプーリと当該プーリと支持部材42とを連結するロッドとを備える構成、レール45に取り付けられる電磁石と支持部材42に取り付けられる永久磁石とを備える構成、モータと当該モータで回転するピニオンと当該ピニオンと噛み合い支持部材42に取り付けられるラックとを備える構成等が挙げられる。エンコーダとして、例えばリニアアブソリュートエンコーダ等を用いることができる。
【0072】
本実施形態の支持部材42には、当該支持部材42の板厚方向に貫通する3つの貫通孔が形成されており、当該貫通孔に3つの回折格子43R,43G,43Bがそれぞれ嵌め込まれ、3つの回折格子43R,43G,43Bは支持部材42に固定されている。このため、支持部材42がレール45に沿って往復移動することで回折格子43R,43G,43Bはレール45に沿って往復移動する。このようにして支持部材42に支持される3つの回折格子43R,43G,43Bは、支持部材42の往復方向と平行な直線L1上に配置されている。この直線L1は、光源30から出射するレーザ光が入射する領域31を横切っている。このため、回折格子43R,43G,43Bのそれぞれに対して支持部材42がレール45に沿って所定の位置まで移動することにより、回折格子43R,43G,43Bと光源30から出射するレーザ光が入射する領域31とがそれぞれ重なり、回折格子43R,43G,43Bには光源30から出射するレーザ光が入射され得る。
【0073】
本実施形態の回折格子43R,43G,43Bのそれぞれは、正面視において支持部材42の往復方向及び当該往復方向と垂直な方向に区分けされて形成される不図示の格子領域のそれぞれに不図示の回折格子パターンを有する。この格子領域は、回折格子43R,43G,43Bと光源30から出射するレーザ光が入射する領域31とがそれぞれ重なった際に、この領域31内に一つ以上位置するように形成される。そして、本実施形態においても、第1実施形態と同様にして、回折格子43R,43G,43Bは、それぞれの回折格子43R,43G,43Bから出射する光がそれぞれロービームLの配光パターンと重なると共にロービームの配光パターンの強度分布に基づいた強度分布となるように、光源30から出射して回折格子43R,43G,43Bに入射する赤色のレーザ光LRと緑色のレーザ光LGと青色のレーザ光LBをそれぞれ回折する。
【0074】
本実施形態では、前述の制御部60は、光源30のレーザ光の出射の状態と不図示の駆動装置の駆動状態とを制御して、車両用灯具1から光を出射する。具体的には、本実施形態の制御部60は、駆動装置を駆動して、赤色のレーザ光LRに対応する回折格子43Rが領域31の全体と重なる位置まで回折格子ユニット40をレール45に沿って移動させ、回折格子43Rと領域31の全体とが重なる際に、光源30から赤色のレーザ光LRを所定の時間出射させる。光源30から出射する赤色のレーザ光LRは回折格子43Rに入射し上記のように回折格子43Rで回折され、回折格子43Rからロービームの配光パターンの赤色成分の光DLRが所定の時間出射する。このロービームLの配光パターンの赤色成分の光DLRは、フロントカバー12を介して車両用灯具1から所定の時間出射する。
【0075】
次に、制御部60は、緑色のレーザ光LGに対応する回折格子43Gが領域31の全体と重なる位置まで回折格子ユニット40をレール45に沿って移動させ、回折格子43Gと領域31の全体とが重なる際に、光源30から緑色のレーザ光LGを所定の時間出射させる。本実施形態では、緑色のレーザ光LGの出射時間の長さは上記の赤色のレーザ光LRの出射時間の長さと概ね同じとされる。光源30から出射する緑色のレーザ光LGは回折格子43Gに入射し上記のように回折格子43Gで回折され、回折格子43GからロービームLの配光パターンの緑色成分の光DLGが所定の時間出射する。このロービームLの配光パターンの緑色成分の光DLGは、フロントカバー12を介して車両用灯具1から所定の時間出射する。
【0076】
次に、制御部60は、青色のレーザ光LBに対応する回折格子43Bが領域31の全体と重なる位置まで回折格子43Bをレール45に沿って移動させ、回折格子43Bと領域31の全体とが重なる際に、光源30から青色のレーザ光LBを所定の時間出射させる。本実施形態では、青色のレーザ光LBの出射時間の長さは上記の赤色のレーザ光LRの出射時間の長さと概ね同じとされる。光源30から出射する青色のレーザ光LBは回折格子43Bに入射し上記のように回折格子43Bで回折され、回折格子43BからロービームLの配光パターンの青色成分の光DLBが所定の時間出射する。このロービームLの配光パターンの青色成分の光DLBは、フロントカバー12を介して車両用灯具1から所定の時間出射する。
【0077】
制御部60は、上記の回折格子ユニット40の移動、光源30からの赤色のレーザ光LRの出射、回折格子ユニット40の移動、光源30からの緑色のレーザ光LGの出射、回折格子ユニット40の移動、光源30からの青色のレーザ光LBの出射が順次繰り返されるように、光源30のレーザ光の出射の状態と駆動装置の駆動状態とを制御する。つまり、光源30の時分割での赤色のレーザ光LRと緑色のレーザ光LGと青色のレーザ光LBの出射と、回折格子ユニット40の往復移動とが同期されている。そして、車両用灯具1からは、ロービームLの配光パターンの赤色成分の光DLRとロービームLの配光パターンの緑色成分の光DLGとロービームLの配光パターンの青色成分の光DLBとが順次繰り返して出射される。このような構成であっても、人の視覚の時間分解能よりも短い周期で赤色のレーザ光LRと緑色のレーザ光LGと青色のレーザ光LBが繰り返し出射される場合には、車両用灯具1はロービームLの配光パターンを有する光を残像現象によって照射し得る。また、残像現象によって照射される光の色バランスは、光源30から出射するそれぞれのレーザ光LR,LG,LBの強度やそれぞれのレーザ光LR,LG,LBの出射時間の長さを調節することにより調節し得る。従って、本実施形態の車両用灯具1は、光源30を交換する等の対応をしなくても、色バランスを調節し得る。また、上記のように互いに波長の異なる複数のレーザ光LR,LG,LBはそれぞれの波長のレーザ光に対応する回折格子43R,43G,43Bによってそれぞれ回折されるので、それぞれの回折格子43R,43G,43Bから出射する光DLR,DLG,DLBが照射される領域が互いに重なるようにし易く、所望の配光パターンを残像現象によって形成し易い。
【0078】
また、本実施形態の車両用灯具1は、3つの回折格子43R,43G,43Bを支持して往復移動する支持部材42を備え、これら回折格子43R,43G,43Bは、支持部材42の往復方向と平行な直線L1上に配置され、光源30の時分割での赤色のレーザ光LRと緑色のレーザ光LGと青色のレーザ光LBの出射と、回折格子ユニット40(支持部材42)の往復移動とが同期されている。このような構成とされることで、この車両用灯具1は、光源30から出射するレーザ光LR,LG,LBの照射角度を調節しなくても、これらレーザ光LR,LG,LBをそれぞれのレーザ光LR,LG,LBに対応する回折格子43R,43G,43Bに入射させ得る。従って、上記第1実施形態と同様にして、光源から出射するレーザ光の照射角度を調節する駆動機構を備える場合と比べて、簡易な構成とし得る。
【0079】
なお、本実施形態においても、図3において破線で示すように、標識視認用の光OHSが出射されても良い。この場合、それぞれの回折格子43R,43G,43Bから出射される光DLR,DLG,DLBの配光パターンには、当該標識視認用の光OHSが照射される領域と重なり標識視認用の光OHSの強度分布を含む配光パターンが含まれていることが好ましく、外形が標識視認用の光OHSが照射される領域の外形の少なくとも一部と一致して標識視認用の光OHSの強度分布を含む配光パターンが含まれていることがより好ましい。更に、この外形が標識視認用の光OHSが照射される領域の外形の全体と一致していることがより好ましい。
【0080】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図5を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0081】
図5は、本実施形態に係る車両用灯具としての車両用灯具を図1と同じ視点で示す図である。図5に示すように本実施形態の車両用灯具1の灯具ユニット20は、光路変更素子55を備える点、及びモータ50とモータドライバ51と支持部材42とを備えない点において、第1実施形態における灯具ユニット20と異なる。本実施形態の灯具ユニット20は、光源30と、三つの回折格子43R,43G,43Bと、光路変更素子55と、制御部60と、入力部61とを主な構成として備える。なお、灯具ユニット20は、不図示の構成により筐体10に固定されている。
【0082】
本実施形態の回折格子43R,43G,43Bのそれぞれは、車両から所定の距離離れた焦点位置において、それぞれの回折格子43R,43G,43Bから出射する光がそれぞれロービームLの配光パターンと重なると共にロービームの配光パターンの強度分布に基づいた強度分布となるように、光源30から出射して回折格子43R,43G,43Bに入射する赤色のレーザ光LRと緑色のレーザ光LGと青色のレーザ光LBをそれぞれ回折する。つまり、車両から所定の距離離れた焦点位置において、回折格子43R,43G,43Bから出射する光が照射される領域が互いに重なっている。この焦点位置は、例えば車両から25m離れた位置とされる。なお、上述の第1実施形態や第2実施形態と同様に、回折格子43R,43G,43Bは、区分けされた複数の格子領域のそれぞれに回折格子パターンを有しており、それぞれの回折格子パターンがこのような配光パターンとなるように入射するレーザ光LR,LG,LBをそれぞれ回折する。
【0083】
本実施形態の光路変更素子55は、光源30から出射する赤色のレーザ光LGと緑色のレーザ光LGと青色のレーザ光LBとを、それぞれのレーザ光LR,LG,LBに対応する回折格子43R,43G,43Bにそれぞれ導光する。光路変更素子55として、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー、ポリゴンミラー等を用いることができる。
【0084】
本実施形態では、制御部60は、光源30のレーザ光の出射の状態と光路変更素子55の駆動状態とを制御して、車両用灯具1から光を出射する。具体的には、本実施形態の制御部60は、光路変更素子55に入射する赤色のレーザ光LRが回折格子43Rに入射するように光路変更素子55を駆動し、光源30から赤色のレーザ光LRを所定の時間出射させる。光源30から出射する赤色のレーザ光LRは回折格子43Rに入射し上記のように回折格子43Rで回折され、回折格子43RからロービームLの配光パターンの赤色成分の光DLRが所定の時間出射する。このロービームLの配光パターンの赤色成分の光DLRは、フロントカバー12を介して車両用灯具1から所定の時間出射する。
【0085】
次に、制御部60は、光路変更素子55に入射する緑色のレーザ光LGが回折格子43Gに入射するように光路変更素子55を駆動し、光源30から緑色のレーザ光LGを所定の時間出射させる。本実施形態では、緑色のレーザ光LGの出射時間の長さは上記の赤色のレーザ光LRの出射時間の長さと概ね同じとされる。光源30から出射する緑色のレーザ光LGは回折格子43Gに入射し上記のように回折格子43Gで回折され、回折格子43GからロービームLの配光パターンの緑色成分の光DLGが所定の時間出射する。このロービームLの配光パターンの緑色成分の光DLGは、フロントカバー12を介して車両用灯具1から所定の時間出射する。
【0086】
次に、制御部60は、光路変更素子55に入射する青色のレーザ光LBが回折格子43Bに入射するように光路変更素子55を駆動し、光源30から青色のレーザ光LGを所定の時間出射させる。本実施形態では、青色のレーザ光LBの出射時間の長さは上記の赤色のレーザ光LRの出射時間の長さと概ね同じとされる。光源30から出射する青色のレーザ光LBは回折格子43Bに入射し上記のように回折格子43Bで回折され、回折格子43BからロービームLの配光パターンの青色成分の光DLBが所定の時間出射する。このロービームLの配光パターンの青色成分の光DLBは、フロントカバー12を介して車両用灯具1から所定の時間出射する。
【0087】
制御部60は、上記の光路変更素子55の駆動、光源30からの赤色のレーザ光LRの出射、光路変更素子55の駆動、光源30からの緑色のレーザ光LGの出射、光路変更素子55の駆動、光源30からの青色のレーザ光LBの出射が順次繰り返されるように、光源30のレーザ光の出射の状態と光路変更素子55の駆動状態とを制御する。つまり、複数のレーザ光LR,LG,LBの時分割での出射と光路変更素子55の駆動とが同期されている。そして、車両用灯具1からは、ロービームLの配光パターンの赤色成分の光DLRとロービームLの配光パターンの緑色成分の光DLGとロービームLの配光パターンの青色成分の光DLBとが順次繰り返して出射される。このような構成であっても、人の視覚の時間分解能よりも短い周期で赤色のレーザ光LRと緑色のレーザ光LGと青色のレーザ光LBが繰り返し出射される場合には、車両用灯具1はロービームLの配光パターンを有する光を残像現象によって照射し得る。また、残像現象によって照射される光の色バランスは、光源30から出射するそれぞれのレーザ光LR,LG,LBの強度やそれぞれのレーザ光LR,LG,LBの出射時間の長さを調節することにより調節し得る。従って、本実施形態の車両用灯具1は、光源30を交換する等の対応をしなくても、色バランスを調節し得る。また、上記のように互いに波長の異なる複数のレーザ光LR,LG,LBはそれぞれの波長のレーザ光に対応する回折格子43R,43G,43Bによってそれぞれ回折されるので、それぞれの回折格子43R,43G,43Bから出射する光DLR,DLG,DLBが照射される領域が互いに重なるようにし易く、所望の配光パターンを残像現象によって形成し易い。
【0088】
また、本実施形態の車両用灯具1は、光源30から出射する赤色のレーザ光LRと緑色のレーザ光LGと青色のレーザ光LBとをそれぞれのレーザ光LR,LG,LBに対応する回折格子43R,43G,43Bに導光する光路変更素子55を備える。このような構成とされることで、光路変更素子を備えない場合と比べて、光源30と回折格子43R,43G,43Bとの位置関係の自由度が向上して小型化し得る。また、この車両用灯具1は、光源30から出射するレーザ光LR,LG,LBの照射角度を調節しなくても、これらレーザ光LR,LG,LBをそれぞれのレーザ光LR,LG,LBに対応する回折格子43R,43G,43Bに入射し得る。従って、上記第1実施形態と同様にして、光源から出射するレーザ光の照射角度を調節する駆動機構を備える場合と比べて、簡易な構成とし得る。
【0089】
なお、本実施形態においても、図3において破線で示すように、標識視認用の光OHSが出射されても良い。この場合、それぞれの回折格子43R,43G,43Bから出射される光DLR,DLG,DLBの配光パターンには、当該標識視認用の光OHSが照射される領域と重なり標識視認用の光OHSの強度分布を含む配光パターンが含まれていることが好ましく、外形が標識視認用の光OHSが照射される領域の外形の少なくとも一部と一致して標識視認用の光OHSの強度分布を含む配光パターンが含まれていることがより好ましい。更に、この外形が標識視認用の光OHSが照射される領域の外形の全体と一致していることがより好ましい。
【0090】
なお、上記第1、第2、及び第3実施形態では、車両用灯具1は残像現象によってロービームLを照射する車両用前照灯とされたが、本発明は特に限定されない。例えば、車両用灯具は、残像現象によってハイビームHを照射するものとされても良く、画像を構成する光を残像現象によって照射するものとされても良い。車両用灯具が残像現象によってハイビームHを照射するものとされる場合、図3(B)に示される夜間照明用の配光パターンであるハイビームHの配光パターンの光が残像現象によって照射される。なお、図3(B)のハイビームHの配光パターンのうち、領域HA1は最も強度が高い領域であり、領域HA2は領域HA1よりも強度が低い領域である。つまり、それぞれの回折格子は、残像現象によって合成された光がハイビームHの強度分布を含む配光パターンを形成するように光を回折するものとされる。また、車両用灯具が画像を構成する光を残像現象によって照射するものとされる場合、車両用灯具が出射する光の方向や車両用灯具が車両に取り付けられる位置は特に限定されない。
【0091】
また、上記第1、第2、及び第3実施形態では、赤色のレーザ光LRと緑色のレーザ光LGと青色のレーザ光LBとを時分割で出射する光源30を例に説明した。しかし、上記第1、第2、及び第3実施形態では、光源は互いに波長の異なる複数のレーザ光を時分割で出射できれば良く、例えば、光源は互いに波長の異なる二つのレーザ光を時分割で出射するものであっても良く、互いに波長の異なる三つ以上のレーザ光を時分割で出射するものであっても良い。
【0092】
また、上記第1、第2、及び第3実施形態では、入力部61を備える車両用灯具1を例に説明した。しかし、上記第1、第2、及び第3実施形態では、車両用灯具は入力部61を備えなくても良い。このような場合には、例えば、制御部は、光源から出射するレーザ光の強度やレーザ光の出射時間の長さ等に関する予め定められた設定値等に基づいて、光源のレーザ光の出射の状態を制御する。車両用灯具の製造の際等にこの予め定められた設定値を調節することによって、光源から出射するレーザ光の強度やレーザ光の出射時間の長さを調節することができ、残像現象によって照射される光の色バランスを調節し得る。従って、このような構成の車両用灯具は、光源を交換する等の対応をしなくても、色バランスを調節し得る。
【0093】
また、上記第1、第2、及び第3実施形態では、透過型の回折格子43R,43G,43Bを例に説明したが、回折格子は反射型の回折格子とされても良い。また、上記第1、第2、及び第3実施形態では、光源30から出射するレーザ光LR,LG,LBに対応する回折格子43R,43G,43Bをそれぞれ一つずつ備える灯具ユニット20を例に説明した。しかし、上記第1、第2、及び第3実施形態では、灯具ユニット20は、レーザ光LR,LG,LBに対応する回折格子43R,43G,43Bを複数備えていても良い。
【0094】
また、上記第1実施形態では、正面視の外形が円形の支持部材42と、正面視の外形が概ね扇状の回折格子43R,43G,43Bとを例に説明したが、これらの外形は特に限定されない。また、上記第2実施形態では、正面視の外形が四角形の支持部材42と、正面視の外形が四角形の回折格子43R,43G,43Bとを例に説明したが、これらの外形は特に限定されない。
【0095】
また、上記第1実施形態では、回折格子43R,43G,43Bのそれぞれは、回転軸52Aを中心とする円Cの径方向及び周方向に区分けされて形成される不図示の格子領域のそれぞれに不図示の回折格子パターンを有するものとされた。また、上記第2実施形態では、回折格子43R,43G,43Bのそれぞれは、正面視において支持部材42の往復方向及び当該往復方向と垂直な方向に区分けされて形成される不図示の格子領域のそれぞれに不図示の回折格子パターンを有するものとされた。しかし、回折格子が有する格子領域を形成するための区分けの方向は特に限定されない。
【0096】
また、上記第1実施形態及び第2実施形態では、回折格子43R,43G,43Bと支持部材42とを備える回折格子ユニット40を例に説明した。しかし、回折格子ユニット40は、少なくとも回折格子43R,43G,43Bを備えれば良い。例えば、回折格子ユニット40は、回折格子43R,43G,43Bと支持部材42とが互いに一体とされて形成されても良く、このような場合には、回折格子43R,43G,43Bの一部が支持部材42を兼ねても良い。
【0097】
また、上記第1実施形態では、回折格子ユニット40の回転、光源30からの赤色のレーザ光LRの出射、回折格子ユニット40の回転、光源30からの緑色のレーザ光LGの出射、回折格子ユニット40の回転、光源30からの青色のレーザ光LBの出射が順次繰り返されるように、光源30のレーザ光の出射の状態とモータ50の出力シャフト52の回転状態とを制御する制御部60を例に説明した。しかし、制御部60は、光源30から時分割で出射するレーザ光LR,LG,LBが、それぞれのレーザ光LR,LG,LBに対応する回折格子43R,43G,43Bに入射するように、光源30のレーザ光の出射の状態とモータ50の出力シャフト52の回転状態とを制御すれば良い。例えば、制御部60は、光源30の時分割でのレーザ光の出射のタイミングと同期された一定の回転数で支持部材42が回転し続けるように、モータ50の出力シャフト52の回転状態を制御しても良い。このような場合には、回転している回折格子43R,43G,43Bにレーザ光LR,LG,LBが入射することになる。
【0098】
また、上記第2実施形態では、回折格子ユニット40の移動、光源30からの赤色のレーザ光LRの出射、回折格子ユニット40の移動、光源30からの緑色のレーザ光LGの出射、回折格子ユニット40の移動、光源30からの青色のレーザ光LBの出射が順次繰り返されるように、光源30のレーザ光の出射の状態と駆動装置の駆動状態とを制御する制御部60を例に説明した。しかし、制御部60は、光源30から時分割で出射するレーザ光LR,LG,LBが、それぞれのレーザ光LR,LG,LBに対応する回折格子43R,43G,43Bに入射するように、光源30のレーザ光の出射の状態と駆動装置の駆動状態とを制御すれば良い。例えば、制御部60は、光源30の時分割でのレーザ光の出射のタイミングと同期された一定の時間間隔で支持部材42が往復移動し続けるように、駆動装置の駆動状態を制御しても良い。このような場合には、往復移動している回折格子43R,43G,43Bにレーザ光LR,LG,LBが入射することになる。
【0099】
また、光源から出射するそれぞれの波長のレーザ光は、それぞれのレーザ光に対応する回折格子に入射すれば良く、例えば車両用灯具は、光源から出射するレーザ光の照射角度を調節する駆動機構を備え、この駆動機構によってレーザ光の照射角度を調節してレーザ光を対応する回折格子に入射させても良い。
【0100】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。なお、上記第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。図6は、本実施形態に係る車両用灯具の一例を示す図であり、車両用灯具の鉛直方向の断面を概略的に示す図である。図6に示すように、本実施形態の光源30から出射される光は、上記第1実施形態の光源30から出射される光と異なり、本実施形態の回折格子ユニット40から出射される光は、上記第1実施形態の回折格子ユニット40から出射される光と異なる。
【0101】
本実施形態の光源30は、パワーのピーク波長が例えば638nmの赤色のレーザ光を出射する不図示の発光素子と、パワーのピーク波長が例えば515nmの緑色のレーザ光を出射する不図示の発光素子と、パワーのピーク波長が例えば445nmの青色のレーザ光を出射する不図示の発光素子と、不図示の駆動回路とを有している。これらの発光素子には駆動回路を介して電力が供給される。このような光源30は、それぞれの発光素子に供給される電力を調節することで、それぞれの発光素子から出射するレーザ光の強度を調節することができ、これらレーザ光を合成させて所望の色のレーザ光を出射することができる。光源30として、例えば発光素子がレーザ光を出射するレーザ素子とされる半導体レーザ等を用いることができる。
【0102】
本実施形態では、コリメートレンズ32が光源30と別体に設けられる。コリメートレンズ32は、光源30から出射するレーザ光のファスト軸方向、スロー軸方向をコリメートするレンズである。コリメートレンズ32は光源30と一体に設けられても良く、コリメートレンズ32に替わって、レーザ光のファスト軸方向をコリメートするコリメートレンズとスロー軸方向をコリメートするコリメートレンズとが個別に設けられていても良い。
【0103】
図7は、図6に示す回折格子ユニットを概略的に示す正面図である。本実施形態の回折格子ユニット40は、4つの配光パターン形成部41A,41B,41C,41Dと支持部材42とを主な構成として備え、回折格子ユニット40には光源30から出射するレーザ光が入射する。なお、図7には光源30から出射するレーザ光が入射する領域31が破線で示されている。
【0104】
本実施形態では、4つの配光パターン形成部41A,41B,41C,41Dは、それぞれ透過型の回折格子43A,43B,43C,43Dから構成され、これら回折格子は、一方の面から入射する光を回折し、この回折光を他方の面から出射する。また、これら回折格子は、支持部材42に形成された4つの貫通孔にそれぞれ嵌め込まれて当該支持部材42に固定されている。このため、支持部材42が出力シャフト52の回転軸52Aを回転軸として回転することでこれら回折格子は回転軸52Aを中心に回転する。このようにして支持部材42に支持されるこれら回折格子は、出力シャフト52の回転軸52Aの方向から見て、当該回転軸52Aを中心とする円Cの円周上に配置されている。なお、これら回折格子の円Cの円周方向への並び順は、特に限定されない。この円周は、コリメートレンズ32から出射するレーザ光が入射する領域31を横切っている。このため、支持部材42が所定の角度回転することにより、回折格子43A,43B,43C,43Dとコリメートレンズ32から出射するレーザ光が入射する領域31とがそれぞれ重なり得るため、回折格子43A,43B,43C,43Dにはコリメートレンズ32から出射するレーザ光が入射され得る。従って、4つの配光パターン形成部41A,41B,41C,41Dは、支持部材42の回転軸である出力シャフト52の回転軸52Aを中心とする円Cの円周上に配置される回折格子43A,43B,43C,43Dからそれぞれ構成され、これら回折格子には、光源30から出射するレーザ光がコリメートレンズ32を介してそれぞれ入射し得る。
【0105】
本実施形態の回折格子43A,43B,43C,43Dは、回転軸52Aを中心とする円Cの径方向及び周方向に区分けされて形成される不図示の格子領域のそれぞれに不図示の回折格子パターンをそれぞれ有する。この格子領域は、回折格子43A,43B,43C,43Dとコリメートレンズ32から出射するレーザ光が入射する領域31とがそれぞれ重なった際に、この領域31内に1つ以上位置するように形成される。
【0106】
本実施形態の回折格子43A,43B,43C,43Dは、コリメートレンズ32から出射するレーザ光を回折し、互いに異なる所定の配光パターンの光を出射する。つまり、本実施形態の配光パターン形成部41A,41B,41C,41Dは、互いに異なる所定の配光パターンの光を出射する。具体的には、回折格子43A,43B,43C,43Dは、当該回折格子43A,43B,43C,43Dから出射する光が路面等の被照射体に照射された際に互いに異なる所定の画像が描画されるように、コリメートレンズ32から出射するレーザ光をそれぞれ回折する。このそれぞれの配光パターンには強度分布も含まれる。また、互いに異なる所定の画像には、大きさが異なる画像も含まれる。なお、上述したように回折格子43A,43B,43C,43Dは、区分けされた複数の格子領域のそれぞれに回折格子パターンを有しており、それぞれの回折格子パターンがこのような配光パターンとなるように入射する光をそれぞれ回折する。つまり、回折格子43A,43B,43C,43Dのそれぞれは、同じ回折格子パターンの複数の回折格子の集合体とされている。
【0107】
本実施形態では、入力部61に入力される情報は、描画する所定の画像の選択の情報とされる。この所定の画像の選択は、配光パターン形成部41Aの回折格子43Aから出射する光が路面等の被照射体に照射された際に描画される画像、配光パターン形成部41Bの回折格子43Bから出射する光が路面等の被照射体に照射された際に描画される画像、配光パターン形成部41Cの回折格子43Cから出射する光が路面等の被照射体に照射された際に描画される画像、及び、配光パターン形成部41Dの回折格子43Dから出射する光が路面等の被照射体に照射された際に描画される画像からの選択とされる。本実施形態の入力部61として、例えば、回路基板に実装されたロータリスイッチが挙げられる。
【0108】
次に本実施形態の車両用灯具1による画像の描画について説明する。
【0109】
前述の制御部60は、例えば車両の制御装置54からの画像の描画を示す信号を検知して、画像の描画を示す信号が制御部60に入力している入力状態の場合には、光源30のレーザ光の出射の状態とモータ50の出力シャフト52の回転状態とを制御して、車両用灯具1から光を出射する。
【0110】
具体的には、本実施形態の制御部60は、エンコーダ53から制御部60に入力する信号と入力部61から制御部60に入力する信号とに基づいてモータドライバ51を駆動して、入力部61でユーザが選択した画像に対応する配光パターン形成部の回折格子が領域31の全体と重なる位置まで回折格子ユニット40を回転させ、当該位置から回折格子ユニット40が動かないように回折格子ユニット40を保持する。この回折格子ユニット40を保持する位置は、例えば回折格子ユニット40の回転方向における回折格子の中心と領域31の中心とが一致する位置とされる。なお、回折格子ユニット40の回転方向は特に限定されるものではなく、本実施形態では図7において時計回りとされ、図7では回折格子43Aの中心と領域31の中心とが一致する状態が例示されている。
【0111】
次に、制御部60は、入力部61でユーザが選択した画像に対応する配光パターン形成部の回折格子が領域31の全体と重なっている状態で、駆動回路を駆動して光源30からレーザ光を出射させる。光源30から出射するレーザ光は、コリメートレンズ32に入射して上記のようにコリメートレンズ32でコリメートされる。このコリメートされたレーザ光は、入力部61でユーザが選択した画像に対応する配光パターン形成部の回折格子に入射して上記のようにこの回折格子で回折され、この回折格子から所定の配光パターンの光が出射する。この所定の配光パターンの光は、フロントカバー12を介して車両用灯具1から出射する。こうして、車両用灯具1は、入力部61でユーザが選択した画像に対応する配光パターン形成部の回折格子から所定の配光パターンを有する光を出射し、この所定の配光パターンに基づく画像が路面等の被照射体に描画される。従って、入力部61において配光パターン形成部41Aに対応する画像が選択されている場合には、配光パターン形成部41Aの回折格子43Aから所定の配光パターンの光が出射し、この配光パターンに基づく画像が路面等の被照射体に描画される。また、配光パターン形成部41Bに対応する画像が選択されている場合には、配光パターン形成部41Bの回折格子43Bから所定の配光パターンの光が出射し、この配光パターンに基づく画像が路面等の被照射体に描画される。また、配光パターン形成部41Cに対応する画像が選択されている場合には、配光パターン形成部41Cの回折格子43Cから所定の配光パターンの光が出射し、この配光パターンに基づく画像が路面等の被照射体に描画される。また、配光パターン形成部41Dに対応する画像が選択されている場合には、配光パターン形成部41Dの回折格子43Dから所定の配光パターンの光が出射し、この配光パターンに基づく画像が路面等の被照射体に描画される。
【0112】
路面等の被照射体に描画される画像の色は光源30から出射する光の色であり、光源30から出射する光の色は特に限定されない。例えば、光源30から出射する光の色は、路面等の被照射体に描画する画像ごとに、つまり配光パターン形成部41A,41B,41C,41Dの回折格子43A,43B,43C,43Dごとに異なる色とされても良く、同じ色とされても良い。
【0113】
ところで、入力部61でユーザが選択した画像が路面等の被照射体に描画されている状態において、入力部61での画像の選択が変更されて入力部61から新たな画像の選択を示す信号が制御部60に入力される場合には、制御部60は、新たに選択された所定の画像が路面等の被照射体に描画されるように、光源30のレーザ光の出射の状態とモータ50の出力シャフト52の回転状態とを制御する。具体的には、本実施形態の制御部60は、駆動回路を駆動して光源30によるレーザ光の出射を停止する。次に、制御部60は、エンコーダ53から制御部60に入力する信号と入力部61から制御部60に入力する信号とに基づいてモータドライバ51を駆動して、入力部61でユーザが新たに選択した画像に対応する配光パターン形成部である回折格子が領域31の全体と重なる位置まで回折格子ユニット40を回転させ、当該位置から回折格子ユニット40が動かないように回折格子ユニット40を保持する。ところで、支持部材42に対するこれら回折格子の位置は変化しないため、支持部材42を所定の角度回転させることで、入力部61でユーザが新たに選択した画像に対応する配光パターン形成部の回折格子が領域31の全体と重なるようにすることができる。
【0114】
次に、制御部60は、入力部61でユーザが新たに選択した画像に対応する配光パターン形成部の回折格子が領域31の全体と重なっている状態で、駆動回路を駆動して光源30からレーザ光を出射させる。上述のように、光源30から出射するレーザ光は、コリメートレンズ32に入射してコリメートレンズ32でコリメートされる。このコリメートされたレーザ光は、入力部61でユーザが新たに選択した画像に対応する配光パターン形成部の回折格子に入射してこの回折格子で回折され、この回折格子から所定の配光パターンの光が出射する。この所定の配光パターンの光は、フロントカバー12を介して車両用灯具1から出射する。こうして、車両用灯具1は、入力部61でユーザが新たに選択した画像に対応する配光パターン形成部の回折格子から所定の配光パターンを有する光を出射し、この所定の配光パターンに基づく画像が路面等の被照射体に描画される。
【0115】
こうして、車両用灯具1は、画像を路面等の被照射体に描画し得ると共に、路面等に描画する画像を切替え得る。
【0116】
図8は路面等の被照射体に描画される画像の一例を概略的に示す図である。具体的には、図8(A)は本実施形態の配光パターン形成部41Aの回折格子43Aから出射する光によって描画される画像を示す図である。図8(B)は本実施形態の配光パターン形成部41Bの回折格子43Bから出射する光によって描画される画像を示す図である。図8(C)は本実施形態の配光パターン形成部41Cの回折格子43Cから出射する光によって描画される画像を示す図である。図8(D)は本実施形態の配光パターン形成部41Dの回折格子43Dから出射する光によって描画される画像を示す図である。図8では、画像の輪郭が太線で示される。車両の前方の路面にこれらの画像が描画される場合、図8(A)に示される画像は運転者から見て右に折れ曲がった矢印であり、図8(B)に示される画像は運転者から見て左に折れ曲がった矢印であり、図8(C)に示される画像は運転者から見て前方に延びる矢印である。また、図8(D)に示される画像は運転者から見て駐車禁止標識に類似するマークである。例えば、図8(A)に示される画像を車両の前方の路面に描画させることで、通行人や他の車両の乗員といった車外の人へ当該車両が右折することを表示し得る。また、図8(B)に示される画像を車両の前方の路面に描画させることで、車外の人へ当該車両が左折することを表示し得る。また、図8(C)に示される画像を車両の前方の路面に描画させることで、車外の人へ当該車両が直進することを表示し得る。また、図8(D)に示される画像を車両の前方の路面に描画させることで、車外の人へ画像が描画されている部位に駐車して欲しくないとのユーザの意思を表示し得る。なお、車両用灯具1が路面等に描画する画像や画像を描画させる車両に対する位置や車両用灯具1が車両に取り付けられる位置は特に限定されない。
【0117】
ところで、上記特許文献2のレーザ描画装置のようにレーザヘッドから出射するレーザ光の照射角度を制御して所定の画像を描画する場合には、レーザ光の照射角度を調節するギヤ及び駆動モータ等からなる駆動機構は複雑になる傾向にある。
【0118】
そこで、本実施形態の車両用灯具1は、光源30と、4つの配光パターン形成部41A,41B,41C,41Dと、4つの配光パターン形成部41A,41B,41C,41Dを支持して回転する支持部材42と、を備える。それぞれの配光パターン形成部41A,41B,41C,41Dは、支持部材42の回転軸である出力シャフト52の回転軸52Aを中心とする円Cの円周上に配置される回折格子43A,43B,43C,43Dから構成される。配光パターン形成部41Aの回折格子43Aから出射する光の配光パターンと、配光パターン形成部41Bの回折格子43Bから出射する光の配光パターンと、配光パターン形成部41Cの回折格子43Cから出射する光の配光パターンと、配光パターン形成部41Dの回折格子43Dから出射する光の配光パターンとは互いに異なっている。
【0119】
従って、本実施形態の車両用灯具1は、光源30から出射するレーザ光の照射角度を調節しなくても路面等に画像を描画することができ、光源から出射する光の照射角度を調節して路面等に画像を描画する車両用灯具と比べて、簡易な構成で画像を路面等に描画し得る。
【0120】
それぞれの配光パターン形成部41A,41B,41C,41Dの回折格子43A,43B,43C,43Dは、支持部材42の回転軸である出力シャフト52の回転軸52Aを中心とする円Cの円周上に配置されている。このため、支持部材42を所定の角度回転することで光源30から出射するレーザ光が入射する回折格子を別の配光パターン形成部の回折格子に変更できる。また、上記のように配光パターン形成部41Aの回折格子43Aから出射する光の配光パターンと、配光パターン形成部41Bの回折格子43Bから出射する光の配光パターンと、配光パターン形成部41Cの回折格子43Cから出射する光の配光パターンと、配光パターン形成部41Dの回折格子43Dから出射する光の配光パターンとは互いに異なっている。従って、支持部材42を所定の角度回転することで、路面等に描画する画像を切替えることができる。また、支持部材42を連続して回転させてこの画像の切替えを連続して行うことで、動画を路面等に描画し得る。上記のように、一般的に部品を回転運動させる場合には、部品を往復運動させる場合と比べて動作音が発生し難い傾向がある。従って、車両用灯具1は、支持部材を往復運動させることによって路面等に描画する画像を切替える場合よりも路面等に描画する画像を切替える際の作動音を抑制し得る。
【0121】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図9を参照して詳細に説明する。なお、第4実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0122】
図9は本実施形態に係る車両用灯具の回折格子ユニットを概略的に示す正面図である。図9に示すように本実施形態の回折格子ユニットは、支持部材42が3つの配光パターン形成部を支持する点、それぞれの配光パターン形成部が複数の回折格子から構成される点において、第4実施形態における回折格子ユニット40と異なる。また、本実施形態の灯具ユニットは、光源30が互いに異なる波長の複数のレーザ光を時分割で出射する点、入力部61に入力される情報が上記第4実施形態で説明した描画する所定の画像の選択の情報と共に、光源30から出射する互いに異なる波長の複数のレーザ光の強度と、当該レーザ光のそれぞれの出射時間の長さとされる点においても、第4実施形態における灯具ユニット20と異なる。本実施形態の灯具ユニット20は、光源30と、回折格子ユニット40と、モータ50と、モータドライバ51と、制御部60と、入力部61とを主な構成として備える。なお、灯具ユニット20は、不図示の構成により筐体10に固定されている。
【0123】
本実施形態の光源30は、互いに異なる波長の複数のレーザ光を時分割で出射する。本実施形態の光源30は、上記第4実施形態の光源30と同様にして、赤色のレーザ光を出射する発光素子と、緑色のレーザ光を出射する発光素子と、青色のレーザ光を出射する発光素子と駆動回路とを有する。光源30は、それぞれの発光素子に供給される電力を調節することで、赤色のレーザ光と緑色のレーザ光と青色のレーザ光とを時分割で出射でき、光源30から出射するそれぞれのレーザ光は概ね同じ領域に出射される。つまり、本実施形態の光源30は、赤色のレーザ光と緑色のレーザ光と青色のレーザ光とを切り換え、いずれかの色のレーザ光を所望のタイミングで所望の時間出射できるように構成されている。また、光源30は、それぞれの発光素子に供給される電力を調節することで、出射するそれぞれのレーザ光の強度を調節することができる。本実施形態では、初期状態としてこれらレーザ光が合成された光の色が白色となるように、それぞれのレーザ光の強度が調節されている。
【0124】
本実施形態の回折格子ユニット40は、3つの配光パターン形成部41A,41B,41Cと支持部材42とを主な構成として備え、回折格子ユニット40には光源30から出射するレーザ光が入射する。なお、図4には光源30から出射するレーザ光が入射する領域31が破線で示されている。
【0125】
本実施形態では、配光パターン形成部41Aは3つの回折格子43AR,43AG,43ABから構成され、配光パターン形成部41Bは3つの回折格子43BR,43BG,43BBから構成され、配光パターン形成部41Cは3つの回折格子43CR,43CG,43CBから構成される。これら回折格子は、支持部材42に形成された9つの貫通孔にそれぞれ嵌め込まれて当該支持部材42に固定されている。このため、支持部材42が出力シャフト52の回転軸52Aを回転軸として回転することでこれら回折格子は回転軸52Aを中心に回転する。このようにして支持部材42に支持されるこれら回折格子は、出力シャフト52の回転軸52Aの方向から見て、当該回転軸52Aを中心とする円Cの円周上に配置されている。また、これら回折格子は、円Cの円周方向において配光パターン形成部41A,41B,41Cごとに並んで配置されている。具体的には、配光パターン形成部41Aでは、円Cの円周方向において回折格子43AGの一方の隣には回折格子43ARが位置し、他方の隣に回折格子43ABが位置している。また、配光パターン形成部41Bでは、円Cの円周方向において回折格子43BGの一方の隣には回折格子43BRが位置し、他方の隣に回折格子43BBが位置している。また、配光パターン形成部41Cでは、円Cの円周方向において回折格子43CGの一方の隣には回折格子43CRが位置し、他方の隣に回折格子43CBが位置している。この円Cの円周は、光源30から出射するレーザ光が入射する領域31を横切っている。このため、支持部材42が所定の角度回転することにより、これら回折格子と光源30から出射するレーザ光が入射する領域31とがそれぞれ重なり得るため、これら回折格子には光源30から出射するレーザ光が入射され得る。従って、3つの配光パターン形成部41A,41B,41Cには、光源30から出射するレーザ光が入射し得る。
【0126】
本実施形態では、それぞれの回折格子43AR,43AG,43AB,43BR,43BG,43BB,43CR,43CG,43CBは、上記第4実施形態の回折格子と同様にして、透過型の回折格子とされ、回転軸52Aを中心とする円の径方向及び周方向に区分けされて形成される不図示の格子領域のそれぞれに不図示の回折格子パターンを有する。この格子領域は、これら回折格子と光源30から出射するレーザ光が入射する領域31とがそれぞれ重なった際に、この領域31内に1つ以上位置するように形成される。
【0127】
本実施形態では、回折格子43AR,43BR,43CRは、光源30から出射する赤色のレーザ光に対応しており、この赤色のレーザ光が回折格子43AR,43BR,43CRにそれぞれ入射して回折される。また、回折格子43AG,43BG,43CGは、光源30から出射する緑色のレーザ光に対応しており、この緑色のレーザ光が回折格子43AG,43BG,43CGにそれぞれ入射して回折される。また、回折格子43AB,43BB,43CBは、光源30から出射する青色のレーザ光に対応しており、この青色のレーザ光が回折格子43AB,43BB,43CBにそれぞれ入射して回折される。従って、配光パターン形成部41A,41B,41Cは、赤色のレーザ光に対応する回折格子43AR,43BR,43CRと緑色のレーザ光に対応する回折格子43AG,43BG,43CGと青色のレーザ光に対応する回折格子43AB,43BB,43CBとの組をそれぞれ1つ含んでいる。
【0128】
赤色のレーザ光が回折格子43AR,43BR,43CRによって回折されて当該回折格子43AR,43BR,43CRから出射する光は赤色である。緑色のレーザ光が回折格子43AG,43BG,43CGによって回折されて当該回折格子43AG,43BG,43CGから出射する光は緑色である。青色のレーザ光が回折格子43AB,43BB,43CBによって回折されて当該回折格子43AB,43BB,43CBから出射する光は青色である。
【0129】
配光パターン形成部41Aの回折格子43AR,43AG,43ABに入射する光は、回折格子43AR,43AG,43ABから所定の配光パターンの光が出射するように、それぞれ回折格子43AR,43AG,43ABで回折される。また、配光パターン形成部41Bの回折格子43BR,43BG,43BBに入射する光は、回折格子43BR,43BG,43BBから所定の配光パターンの光が出射するように、それぞれ回折格子43BR,43BG,43BBで回折される。また、配光パターン形成部41Cの回折格子43CR,43CG,43CBに入射する光は、回折格子43CR,43CG,43CBから所定の配光パターンの光が出射するように、それぞれ回折格子43CR,43CG,43CBで回折される。これら回折格子43AR,43AG,43ABから出射する光の配光パターンと、回折格子43BR,43BG,43BBから出射する光の配光パターンと、回折格子43CR,43CG,43CBから出射する光の配光パターンとは互いに異なっている。つまり、本実施形態の配光パターン形成部41A,41B,41Cは、互いに異なる所定の配光パターンの光を出射する。なお、上述したようにこれら回折格子は、区分けされた複数の格子領域のそれぞれに回折格子パターンを有しており、それぞれの回折格子パターンがこのような配光パターンとなるように入射するレーザ光をそれぞれ回折する。つまり、これら回折格子のそれぞれは、同じ回折格子パターンの複数の回折格子の集合体とされている。
【0130】
具体的には、配光パターン形成部41Aの回折格子43AR,43AG,43ABは、当該回折格子43AR,43AG,43ABから出射する光が合成された光が図8(A)に示される画像を描画する配光パターンとなるように、光源30から出射する赤色のレーザ光と緑色のレーザ光と青色のレーザ光とをそれぞれ回折する。この配光パターンには強度分布も含まれる。このため、本実施形態の回折格子43AR,43AG,43ABは、それぞれの回折格子43AR,43AG,43ABから出射する光がこの画像を描画する配光パターンと重なると共にこの画像を描画する配光パターンの強度分布に基づいた強度分布となるように、光源30から出射して回折格子43AR,43AG,43ABに入射する赤色のレーザ光と緑色のレーザ光と青色のレーザ光をそれぞれ回折する。こうして、回折格子43ARからは図8(A)に示される画像を描画する配光パターンの赤色成分の光が出射し、回折格子43AGからはこの画像を描画する配光パターンの緑色成分の光が出射し、回折格子43ABからはこの画像を描画する配光パターンの青色成分の光が出射する。なお、上記の図8(A)に示される画像を描画する配光パターンの強度分布に基づいた強度分布とは、この配光パターンにおける強度が高い部位では、回折格子43AR,43AG,43ABから出射するそれぞれの強度も高いという意味である。
【0131】
配光パターン形成部41Bの回折格子43BR,43BG,43BBは、配光パターン形成部41Aの回折格子43AR,43AG,43ABと同様にして、それぞれの回折格子43AR,43AG,43ABから出射する光が図8(B)に示される画像を描画する配光パターンと重なると共にこの画像を描画する配光パターンの強度分布に基づいた強度分布となるように、光源30から出射して回折格子43BR,43BG,43BBに入射する赤色のレーザ光と緑色のレーザ光と青色のレーザ光をそれぞれ回折する。こうして、回折格子43BRからは図8(B)に示される画像を描画する配光パターンの赤色成分の光が出射し、回折格子43BGからはこの画像を描画する配光パターンの緑色成分の光が出射し、回折格子43BBからはこの画像を描画する配光パターンの青色成分の光が出射する。
【0132】
配光パターン形成部41Cの回折格子43CR,43CG,43CBは、配光パターン形成部41Aの回折格子43AR,43AG,43ABと同様にして、それぞれの回折格子43CR,43CG,43CBから出射する光が図8(C)に示される画像を描画する配光パターンと重なると共にこの画像を描画する配光パターンの強度分布に基づいた強度分布となるように、光源30から出射して回折格子43CR,43CG,43CBに入射する赤色のレーザ光と緑色のレーザ光と青色のレーザ光をそれぞれ回折する。こうして、回折格子43CRからは図8(C)に示される画像を描画する配光パターンの赤色成分の光が出射し、回折格子43CGからはこの画像を描画する配光パターンの緑色成分の光が出射し、回折格子43CBからはこの画像を描画する配光パターンの青色成分の光が出射する。
【0133】
そして、配光パターン形成部41Aの回折格子43AR,43AG,43ABから出射する光の配光パターンと、配光パターン形成部41Bの回折格子43BR,43BG,43BBから出射する光の配光パターンと、配光パターン形成部41Cの回折格子43CR,43CG,43CBから出射する光の配光パターンとは互いに異なっている。
【0134】
本実施形態の入力部61に入力される情報は、上記第4実施形態で説明した描画する所定の画像の選択の情報と、光源30から出射する互いに異なる波長のレーザ光のそれぞれの強度と、当該レーザ光のそれぞれの出射時間の長さとされる。本実施形態の入力部61として、例えば、複数のロータリスイッチが回路基板に実装されたスイッチ群が挙げられる。
【0135】
次に本実施形態の車両用灯具1による光の出射について説明する。
【0136】
前述の制御部60は、例えば車両の制御装置54からの画像の描画を示す信号を検知して、画像の描画を示す信号が制御部60に入力している入力状態の場合には、光源30のレーザ光の出射の状態とモータ50の出力シャフト52の回転状態とを制御して、車両用灯具1から光を出射させる。
【0137】
具体的には、制御部60は、エンコーダ53から制御部60に入力する信号と入力部61から制御部60に入力する信号とに基づいてモータドライバ51を駆動して、入力部61でユーザが選択した画像に対応する配光パターン形成部における回折格子のいずれかが領域31の全体と重なる位置まで回折格子ユニット40を回転させ、光源30から領域31の全体と重なっている回折格子に対応する色のレーザ光を所定の時間出射させる。例えば、入力部61で図8(A)に示される画像が選択されている場合には、制御部60は、配光パターン形成部41Aの赤色のレーザ光に対応する回折格子43ARが領域31の全体と重なる位置まで回折格子ユニット40を回転させる。次に、制御部60は、回折格子43ARが領域31の全体と重なっている状態で、光源30の駆動回路を駆動して光源30から赤色のレーザ光を所定の時間出射させる。光源30から出射する赤色のレーザ光は回折格子43ARに入射し上記のように回折格子43ARで回折される。回折格子43ARからは、図8(A)に示される画像を描画する配光パターンの赤色成分の光が所定の時間出射する。この配光パターンの赤色成分の光は、フロントカバー12を介して車両用灯具1から所定の時間出射する。
【0138】
次に、制御部60は、モータドライバ51を駆動して、配光パターン形成部41Aの緑色のレーザ光に対応する回折格子43AGが領域31の全体と重なる位置まで回転させ、回折格子43AGが領域31の全体と重なっている状態で、光源30から緑色のレーザ光を所定の時間出射させる。本実施形態では、緑色のレーザ光の出射時間の長さは上記の赤色のレーザ光の出射時間の長さと概ね同じとされる。光源30から出射する緑色のレーザ光は回折格子43AGに入射し上記のように回折格子43AGで回折される。回折格子43AGからは、図8(A)に示される画像を描画する配光パターンの緑色成分の光が所定の時間出射する。この配光パターンの緑色成分の光は、フロントカバー12を介して車両用灯具1から所定の時間出射する。
【0139】
次に、制御部60は、モータドライバ51を駆動して、配光パターン形成部41Aの青色のレーザ光に対応する回折格子43ABが領域31の全体と重なる位置まで回転させ、回折格子43ABが領域31の全体と重なっている状態で、光源30から青色のレーザ光を所定の時間出射させる。本実施形態では、青色のレーザ光の出射時間の長さは上記の赤色のレーザ光の出射時間の長さと概ね同じとされる。光源30から出射する青色のレーザ光は回折格子43ABに入射し上記のように回折格子43Bで回折される。回折格子43ABからは、図8(A)に示される画像を描画する配光パターンの青色成分の光が所定の時間出射する。この配光パターンの青色成分の光は、フロントカバー12を介して車両用灯具1から所定の時間出射する。
【0140】
制御部60は、上記の回折格子ユニット40の回転、光源30からの赤色のレーザ光の出射、回折格子ユニット40の回転、光源30からの緑色のレーザ光の出射、回折格子ユニット40の回転、光源30からの青色のレーザ光の出射が順次繰り返されるように、光源30のレーザ光の出射の状態とモータ50の出力シャフト52の回転状態とを制御する。つまり、光源30の時分割での赤色のレーザ光と緑色のレーザ光と青色のレーザ光の出射と、回折格子ユニット40の回転とが同期されている。そして、車両用灯具1からは、図8(A)に示される画像を描画する配光パターンの赤色成分の光と、この画像を描画する配光パターンの緑色成分の光と、この画像を描画する配光パターンの青色成分の光とが順次繰り返して出射される。本実施形態では、赤色のレーザ光と緑色のレーザ光と青色のレーザ光の出射時間の長さは互いに概ね同じとされるため、図8(A)に示される画像を描画する配光パターンの赤色成分の光と、この画像を描画する配光パターンの緑色成分の光と、この画像を描画する配光パターンの青色成分の光のそれぞれの出射時間の長さも互いに概ね同じとなる。
【0141】
なお、回折格子ユニット40の回転方向は、特に限定されない。また、回折格子ユニット40の回転方向は、一方の方向であっても良く、光源30から出射するレーザ光の色に応じて変更されても良い。つまり、赤色のレーザ光に対応する回折格子43ARが領域31の全体と重なる位置まで回転させる際の方向と、緑色のレーザ光に対応する回折格子43AGが領域31の全体と重なる位置まで回転させる際の方向と、青色のレーザ光に対応する回折格子43AGが領域31の全体と重なる位置まで回転させる際の方向のうち、1つの方向が他の2つの方向と異なっていても良い。また、制御部60は、回転している回折格子にレーザ光が入射するように光源30のレーザ光の出射の状態とモータ50の出力シャフト52の回転状態とを制御しても良い。
【0142】
前述のように、人の視覚の時間分解能よりも短い周期で色の異なる光が繰り返し照射される場合、人は残像現象によってこの異なる色の光が合成された光が照射されていると認識し得る。本実施形態において、所定の色のレーザ光を出射してから当該所定の色のレーザ光を再度出射するまでの時間が人の視覚の時間分解能よりも短くされた場合、人の視覚の時間分解能よりも短い周期で回折格子43AR,43AG,43ABから出射する光が繰り返し照射され、赤色の光と緑色の光と青色の光とが残像現象によって合成される。これら光のそれぞれの出射時間の長さは概ね同じである。また、上記のように初期状態としてそれぞれのレーザ光の強度は、これらレーザ光が合成された光の色が白色となるように調節されている。このため、残像現象によって合成される光の色は白色となる。このとき、これら赤色の光と緑色の光と青色の光の配光パターンは、上述のように図8(A)に示される画像を描画する配光パターンと同等とされる。これら赤色の光と緑色の光と青色の光の配光パターンの強度分布は、この画像を描画する配光パターンの強度分布に基づいた強度分布となるようにされる。このため、これら赤色の光と緑色の光と青色の光が残像現象によって合成された光の配光パターンは、図8(A)に示される画像を描画する配光パターンとなる。なお、上記の赤色のレーザ光と緑色のレーザ光と青色のレーザ光を繰り返し出射する周期は、残像現象によって合成される光のちらつきを感じることを抑制する観点から、前述のように、1/15s以下とされることが好ましく、1/30s以下であることがより好ましく、1/60s以下であることが更により好ましい。
【0143】
なお、回折格子43AR,43AG,43ABは、これら回折格子から出射する光が照射される領域の外形の少なくとも一部が互いに一致するように、それぞれ入射するレーザ光を回折して光を出射することが好ましく、これらの外形の全体が互いに一致するように、それぞれ入射するレーザ光を回折して光を出射することがより好ましい。このような構成にすることで、上記のように残像現象によって形成される配光パターンの縁近傍で色のにじみが生じることを抑制することができる。
【0144】
こうして、車両用灯具1は、光の残像現象によって図8(A)に示される画像を白色の光で路面等に描画し得る。なお、光源30から出射する光を入射させる配光パターン形成部を変更することで、路面等に描画する画像を切替えることができる。路面等に描画する画像を切替えるには、制御部60は、光源30のレーザ光の出射の状態とモータ50の出力シャフト52の回転状態とを制御し、上述の図8(A)に示される画像を路面等に描画する場合と同様にして、配光パターン形成部41Bの回折格子43BR,43BG,43BBや配光パターン形成部41Cの回折格子43CR,43CG,43CBに光源30からのレーザ光を入射すれば良く、この説明については省略する。
【0145】
また、上述したように制御部60には、入力部61が電気的に接続されており、制御部60には、描画する所定の画像の選択の情報と共に、光源30から出射するレーザ光のそれぞれの強度と、当該レーザ光のそれぞれの出射時間の長さとが電気信号によって入力部61から入力される。
【0146】
本実施形態では、入力部61によって、光源30から出射するレーザ光のそれぞれの強度と、当該レーザ光のそれぞれの出射時間の長さとを調節することができる。このため、上記第1実施形態と同様にして、描画する画像の色バランスを調節し得る。
【0147】
ところで、回折格子43AR,43AG,43AB,43BR,43BG,43BB,43CR,43CG,43CBは波長依存性を有しているため、互いに異なる波長の光は、これら回折格子により互いに異なる配光パターンとなる傾向にある。本実施形態の車両用灯具では、上記のように配光パターン形成部41A,41B,41Cは、赤色のレーザ光に対応する回折格子43AR,43BR,43CRと緑色のレーザ光に対応する回折格子43AG,43BG,43CGと青色のレーザ光に対応する回折格子43AB,43BB,43CBとの組をそれぞれ1つ含んでいる。そして、それぞれの配光パターン形成部41A,41B,41Cにおいて、赤色のレーザ光は、回折格子43AR,43BR,43CRで回折され、緑色のレーザ光は、回折格子43AG,43BG,43CGで回折され、青色のレーザ光は、回折格子43AB,43BB,43CBで回折される。このため、配光パターン形成部41Aでは、回折格子43AR,43AG,43ABから出射する光が照射される領域が互いに重なるようにし易い。また、配光パターン形成部41Bでは、回折格子43BR,43BG,43BBから出射する光が照射される領域が互いに重なるようにし易い。また、配光パターン形成部41Cでは、回折格子43CR,43CG,43CBから出射する光が照射される領域が互いに重なるようにし易い。従って、これら配光パターン形成部に対応する画像を残像現象によって描画し易い。
【0148】
また、本実施形態の光源30は、互いに異なる波長の赤色のレーザ光と緑色のレーザ光と青色のレーザ光を出射する。このため、光源30から出射するこれらレーザ光の強度を調節することにより、所望の色の光を残像現象によって照射することができ、所望の色の画像を路面等に描画できる。
【0149】
また、本実施形態では、回折格子43AR,43AG,43AB,43BR,43BG,43BB,43CR,43CG,43CBは、支持部材42の回転軸である出力シャフト52の回転軸52Aを中心とする円Cの円周上に配置される。このため、支持部材42を所定の角度回転することで光源30から出射する光が入射する回折格子を切替えることができるので、光を出射する配光パターン形成部を切替えて路面等に描画する画像を切替えることができる。従って、上述したように光源から出射する光の照射角度を調節して路面等に画像を描画する車両用灯具と比べて、簡易な構成で画像を路面等に描画し得る。また、支持部材42を連続して回転させてこの画像の切替えを連続して行うことで、動画を路面等に描画し得る。また、支持部材を往復運動させることによって路面等に描画する画像を切替える場合よりも路面等に描画する画像を切替える際の作動音を抑制し得る。
【0150】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について図10を参照して詳細に説明する。なお、第5実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0151】
図10は本実施形態に係る車両用灯具の回折格子ユニットを概略的に示す正面図である。図10に示すように本実施形態の回折格子ユニットは、複数の配光パターン形成部を構成する複数の回折格子の配置が異なる点において、第5実施形態における回折格子ユニット40と異なる。本実施形態の回折格子ユニット40は、3つの配光パターン形成部41A,41B,41Cと支持部材42とを主な構成として備え、回折格子ユニット40には光源30から出射するレーザ光が入射する。本実施形態では、配光パターン形成部41Aは3つの回折格子43AR,43AG,43ABから構成され、配光パターン形成部41Bは3つの回折格子43BR,43BG,43BBから構成され、配光パターン形成部41Cは3つの回折格子43CR,43CG,43CBから構成される。なお、図10において、理解の容易のために配光パターン形成部の符号の記載は省略されている。
【0152】
本実施形態では、回折格子43AR,43AG,43AB,43BR,43BG,43BB,43CR,43CG,43CBは、第5実施形態の回折格子と同様にして、モータの出力シャフトの回転軸52Aの方向から見て、当該回転軸52Aを中心とする円Cの円周上に配置されているものの、円Cの円周方向におけるこれら回折格子の並び順が第5実施形態と異なっている。具体的には、これら回折格子は、円Cの円周方向において配光パターン形成部41A,41B,41Cごとに並んで配置されていない。円Cの円周方向において、配光パターン形成部41Aの回折格子43ARと回折格子43AGとの間には、配光パターン形成部41Bの回折格子43BRと配光パターン形成部41Cの回折格子43CRとが位置している。また、配光パターン形成部41Aの回折格子43AGと回折格子43ABとの間には、配光パターン形成部41Bの回折格子43BGと配光パターン形成部41Cの回折格子43CGとが位置している。また、配光パターン形成部41Aの回折格子43ABと回折格子43ARとの間には、配光パターン形成部41Bの回折格子43BBと配光パターン形成部41Cの回折格子43CBとが位置している。そして、配光パターン形成部41Aの3つの回折格子43AR,43AG,43ABは、円Cの円周の全周において概ね等間隔で配置され、回転軸52Aを基準とした回転対称となるように配置されている。また、配光パターン形成部41Bの3つの回折格子43BR,43BG,43BBは、配光パターン形成部41Aの3つの回折格子43AR,43AG,43ABと同様にして、円Cの円周の全周において概ね等間隔で配置され、回転軸52Aを基準とした回転対称となるように配置されている。また、配光パターン形成部41Cの3つの回折格子43CR,43CG,43CBは、配光パターン形成部41Aの3つの回折格子43AR,43AG,43ABと同様にして、円Cの円周の全周において概ね等間隔で配置され、回転軸52Aを基準とした回転対称となるように配置されている。
【0153】
このように構成することで、支持部材42を順次所定の角度回転させることで、それぞれの配光パターン形成部において、光源から出射するレーザ光が入射する領域と重なる回折格子を順次変更し得る。このため、支持部材42を回転させる速度を一定とした場合であっても、上記第5実施形態で説明した赤色の光と緑色の光と青色の光の照射の間隔を一定にすることができる。従って、残像現象によって合成される光のちらつきを感じることを抑制し得る。また、それぞれの配光パターン形成部において複数の回折格子が円周の全周に概ね等間隔で配置されていない場合と比べて、制御部60によるモータ50の出力シャフト52の回転状態の制御が簡略化でき、複数のレーザ光の時分割での出射と支持部材42の回転との同期を容易にし得る。
【0154】
なお、上記第4、第5、及び第6実施形態では、矢印や駐車禁止標識に類似するマークの画像を描画する車両用灯具1を例に説明したが、車両用灯具が描画する画像や画像の数は特に限定されない。
【0155】
また、上記第4実施形態では、配光パターン形成部41Aの回折格子43Aから出射する光の配光パターンと、配光パターン形成部41Bの回折格子43Bから出射する光の配光パターンと、配光パターン形成部41Cの回折格子43Cから出射する光の配光パターンと、配光パターン形成部41Dの回折格子43Dから出射する光の配光パターンとは互いに異なっていた。また、上記第5実施形態と第6実施形態では、配光パターン形成部41Aの回折格子43AR,43AG,43ABから出射する光の配光パターンと、配光パターン形成部41Bの回折格子43BR,43BG,43BBから出射する光の配光パターンと、配光パターン形成部41Cの回折格子43CR,43CG,43CBから出射する光の配光パターンとは互いに異なっていた。しかし、第4、第5、及び第6実施形態では、少なくとも2つの配光パターン形成部の回折格子から出射する光の配光パターンが互いに異なっていれば良い。例えば、回折格子ユニットは同じ配光パターン形成部を複数備えるものとされても良い。また、配光パターン形成部は、所定の配光パターンの光を出射する少なくとも1つの回折格子から構成されていれば良い。例えば、上記第4実施形態のように光源が光を時分割で出射しない車両用灯具であっても、配光パターン形成部は、所定の配光パターンの光を出射する複数の回折格子から構成されても良い。このように構成されても、例えばこれら回折格子に同時に光源からの光を入射させる等することで、出射する光を当該光が互いに重なるように路面等の被照射体に照射させることができ、所定の画像を描画し得る。
【0156】
また、上記第4実施形態では、3つの発光素子を有して所望の色のレーザ光を出射し得る光源30を例に説明した。しかし、上記第4実施形態のように光源が光を時分割で出射しない車両用灯具では、光源はレーザ光を出射できれば良い。例えば光源は1つの発光素子を有するものとされても良い。
【0157】
また、上記第5実施形態では、互いに異なる波長の3つのレーザ光を時分割で出射する光源30を例に説明した。しかし、上記第5及び第6実施形態のように光源が互いに異なる波長の複数のレーザ光を時分割で出射する車両用灯具では、例えば、光源は互いに異なる波長の2つのレーザ光を時分割で出射するものであっても良く、互いに異なる波長の3つ以上のレーザ光を時分割で出射するものであっても良い。
【0158】
また、上記第4実施形態では、描画する所定の画像の選択の情報が入力部61から入力される制御部60を例に説明した。また、上記第5実施形態では、描画する所定の画像の選択の情報と共に、光源30から出射する互いに異なる波長の複数のレーザ光の強度と、当該レーザ光のそれぞれの出射時間の長さとが入力部61から入力される制御部60を例に説明した。しかし、第4、第5、及び第6実施形態では、制御部60には、少なくとも描画する所定の画像の選択の情報が入力されれば良く、車両用灯具は入力部61を備えなくても良い。車両用灯具が入力部61を備えない場合には、例えば、車両の制御装置は左右のターン動作に係る信号やバック動作に係る信号等の車両の状態に関する信号に基づいて画像の選択の情報を示す信号を出力し、制御部にはこの車両の制御装置から画像の選択の情報を示す信号が入力されることとしても良い。更に、上記第5実施形態及び第6実施形態のように光源が互いに異なる波長の複数のレーザ光を時分割で出射する車両用灯具では、制御部は、光源から出射するレーザ光の強度やレーザ光の出射時間の長さ等に関する予め定められた設定値等に基づいて、光源のレーザ光の出射の状態を制御することとされても良い。このような構成の車両用灯具では、製造の際等にこの予め定められた設定値を調節することによって、光源から出射するレーザ光の強度やレーザ光の出射時間の長さを調節することができ、残像現象によって照射される光の色バランスを調節し得る。従って、このような構成の車両用灯具は、描画する画像を切替え得ることができると共に、色バランスを調節し得る。
【0159】
また、上記第4、第5、及び第6実施形態では、透過型の回折格子43A,43B,43C,43D,43AR,43AG,43AB,43BR,43BG,43BB,43CR,43CG,43CBを例に説明した。しかし、回折格子は反射型の回折格子とされても良い。また、上記第4実施形態では、正面視の外形が円形の支持部材42と、正面視の外形が概ね扇状の回折格子43A,43B,43C,43Dとを例に説明したが、これらの外形は特に限定されない。また、上記第5及び第6実施形態では、正面視の外形が円形の支持部材42と、正面視の外形が四角形の回折格子43AR,43AG,43AB,43BR,43BG,43BB,43CR,43CG,43CBとを例に説明したが、これらの外形は特に限定されない。
【0160】
また、上記第4、第5、及び第6実施形態では、回折格子43A,43B,43C,43D,43AR,43AG,43AB,43BR,43BG,43BB,43CR,43CG,43CBは、支持部材42の回転軸を中心とする円Cの径方向及び周方向に区分けされて形成される不図示の格子領域のそれぞれに不図示の同じ回折格子パターンを有するものとされた。しかし、回折格子が有する格子領域を形成するための区分けの方向は特に限定されない。
【0161】
また、上記第4、第5、及び第6実施形態では、支持部材と複数の回折格子とを備える回折格子ユニット40を例に説明した。しかし、回折格子ユニットは、支持部材を備えていなくても良く、例えば、回折格子ユニット40は、複数の回折格子と支持部材とが互いに一体とされて形成されても良い。このような場合には、これら回折格子の一部が支持部材を兼ねることとされても良い。
【0162】
また、上記第5実施形態と第6実施形態では、赤色のレーザ光に対応する回折格子43AR,43BR,43CRと緑色のレーザ光に対応する回折格子43AG,43BG,43CGと青色のレーザ光に対応する回折格子43AB,43BB,43CBとの組をそれぞれ1つ含む配光パターン形成部41A,41B,41Cを例に説明した。しかし、上記第5実施形態と第6実施形態のように光源が互いに異なる波長の複数のレーザ光を時分割で出射する車両用灯具では、配光パターン形成部は、光源から出射するそれぞれの波長のレーザ光にそれぞれ対応する複数の回折格子からなる組を複数有していても良い。
【0163】
以上のように、本発明によれば、色バランスを調節し得る車両用灯具、簡易な構成で画像を路面等に描画すると共に、描画する画像を切替え得る車両用灯具が提供され、自動車等の車両用灯具などの分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0164】
1・・・車両用灯具
10・・・筐体
20・・・灯具ユニット
30・・・光源
40・・・回折格子ユニット
41A,41B,41C,41D・・・配光パターン形成部
42・・・支持部材
43R,43G,43B,43A,43C,43D,43AR,43AG,43AB,43BR,43BG,43BB,43CR,43CG,43CB・・・回折格子
50・・・モータ
52・・・出力シャフト
52A・・・回転軸
53・・・エンコーダ
55・・・光路変更素子
60・・・制御部
C・・・円
L1・・・直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10