(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
G05B 19/18 20060101AFI20221114BHJP
G05B 19/409 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
G05B19/18 X
G05B19/409 B
(21)【出願番号】P 2020114727
(22)【出願日】2020-07-02
【審査請求日】2020-07-06
【審判番号】
【審判請求日】2021-06-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【氏名又は名称】村上 智司
(72)【発明者】
【氏名】小林 広志
【合議体】
【審判長】見目 省二
【審判官】刈間 宏信
【審判官】田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-12471(JP,A)
【文献】特開2011-97172(JP,A)
【文献】特開2019-16260(JP,A)
【文献】特開2002-157659(JP,A)
【文献】特開平11-120466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18 G05B 19/409
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペレータが手動操作するための可搬性を有する手動操作器を備えた工作機械であって、
前記手動操作器から出力される
信号の一つである操作信号が手動操作器モードとなった手動操作中のものであるか否かを認識し、手動操作中のものである場合にのみ、前記手動操作器から出力される信号を監視して、この出力信号を基にオペレータに異常が生じたか否かを検出し、異常が検出されたとき、該異常を外部に報知するように構成されたオペレータ異常検出部を備えていることを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記手動操作器から出力される出力信号は前記操作信号であり、
前記オペレータ異常検出部は、
前記操作信号を監視し、該操作信号が予め定められた時間出力されない場合に、オペレータに異常が生じたと判定するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の工作機械。
【請求項3】
前記手動操作器は、モーションセンサ及び光検出センサから選ばれる少なくとも一つの検知センサを備え、
前記手動操作器から出力される出力信号は前記検知センサからの出力値であり、
前記オペレータ異常検出部は、前記検知センサからの出力値を監視し、該出力値が予め定められた時間、予め定められ範囲内にあるとき、または該出力値が予め定められた許容値を超えた後、予め定められた時間、予め定められた範囲内にあるとき、または該出力値が周期的に変動しているときにオペレータに異常が生じていると判定するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の工作機械。
【請求項4】
オペレータが手動操作するための可搬性を有する手動操作器を備えた工作機械であって、
オペレータに異常が生じたか否かを検出し、異常が検出されたとき、該異常を外部に報知するように構成されたオペレータ異常検出部を備え、
前記手動操作器及び前記オペレータ異常検出部の一方は、電波を出力する電波出力部を備え、他方は前記電波出力部から出力される電波を受信する電波受信部を備え、
前記オペレータ異常検出部は、
前記手動操作器から出力される信号の一つである操作信号が手動操作器モードとなった手動操作中のものであるか否かを認識し、手動操作中のものである場合にのみ、前記電波受信部によって受信される電波の受信強度を監視し、該受信強度の変動が予め定められた時間、予め定められた範囲内にあるとき、または該受信強度の変動が予め定められた許容値を超えた後、予め定められた時間、予め定められた範囲内にあるとき、または該受信強度が周期的に変動しているときにオペレータに異常が生じていると判定するように構成されていることを特徴とす
る工作機械。
【請求項5】
前記オペレータ異常検出部は、前記手動操作器に設けられていることを特徴とする請求項1乃至
4記載のいずれかの工作機械。
【請求項6】
前記オペレータ異常検出部は、工作機械の制御装置に設けられていることを特徴とする請求項1乃至4記載のいずれかの工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オペレータが手動操作するための可搬性を有する手動操作器を備えた工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
上述した手動操作器を備えた工作機械として、従来、特開2007-160449号公報(下記特許文献1)に開示された工作機械が知られている。この手動操作器は、同公報に開示されるように、旋盤やマシニングセンタなどの工作機械の運動機構部、例えば、複数の送り軸を備えた送り機構によって駆動される刃物台や主軸頭などを手動で操作するためのもので、通常、工作機械の操作盤を介して数値制御装置に接続されており、また、オペレータが運動機構部の動作状態を直接目視しながら操作できるように、当該オペレータが持ち運びできるようになっている。
【0003】
尚、一般的に、前記手動操作器には、前記運動機構部を動作させるためのパルス信号を生成する手動パルス発生器、及びパルス信号の倍率を選択する倍率選択スイッチや、駆動する送り軸を選択する軸選択スイッチなどが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、前記手動操作器は、オペレータが携帯した状態で、運動機構部を直接目視しながら操作することができるようになっている。したがって、この手動操作器の操作状態は、オペレータの作業状態を反映するものと捉えることができる。
【0006】
即ち、手動操作器からの操作信号(前記パルス信号)の入力が有れば、オペレータが手動操作器を用いて前記運動機構部を操作していると認識することができ、逆に、操作信号の入力が無ければ、オペレータが手動操作機器を用いた前記運動機構部の操作をしていないと認識することができる。
【0007】
ところで、工作機械には様々な大きさものがあり、中には、オペレータが工作機械の中に入り込んで段取り作業をしなければならないほどの大型のものもある。そして、このような大きな工作機械の場合には、オペレータが当該工作機械内に入り込んで作業している際に、当該オペレータを外部(機外)から確認できないことがあり、このため、例えば、オペレータが急病等の体調不良によって動けなくなった場合に、当該オペレータの様子を外部から確認することができないと、このオペレータを救助するなどの適切な措置を採ることができない虞がある。
【0008】
そこで、このような場合に、前記手動操作器から入力される操作信号を監視することで、オペレータの作業状態を認識することができれば、オペレータが急病等の体調不良によって動けなくなった場合に、これを適切に察知することができ、当該オペレータを救助するなどの適切な措置を講じることができて有益である。
【0009】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、工作機械に設けられる手動操作器を介してオペレータの作業状態を認識することを可能にした工作機械の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明は、
オペレータが手動操作するための可搬性を有する手動操作器を備えた工作機械であって、
前記手動操作器を用いた手動操作時に、前記手動操作器から出力される信号を監視して、この出力信号を基にオペレータに異常が生じたか否かを検出し、異常が検出されたとき、該異常を外部に報知するオペレータ異常検出部を備えた工作機械に係る。
【0011】
本発明に係る工作機械によれば、手動操作器を用いた手動操作時に、オペレータ異常検出部により、前記手動操作器から出力される信号が監視され、この出力信号を基にオペレータに異常が生じたか否かが検出され、異常が検出されたとき、当該異常が外部に報知される。
【0012】
したがって、オペレータが急病等の体調不良によって動けなくなった場合に、オペレータに異常が発生したことが報知されるので、この異常を外部の人間、例えば他のオペレータや管理者が認識することができ、これにより、当該オペレータを救助するなどの適切な措置を迅速に講じることができる。
【0013】
本発明において、前記オペレータ異常検出部は、前記手動操作器から出力される操作信号を監視し、該操作信号が予め定められた時間、出力されない場合に、オペレータに異常が生じたと判定するように構成された態様を採ることができる。
【0014】
通常の手動操作においては、経験的に決定される所定の時間内にオペレータの操作によって手動操作器から操作信号が出力される。したがって、手動操作器から出力される操作信号を監視して、当該操作信号が予め定められた時間出力されない場合には、オペレータに何らかの異常が発生したと判断することができる。
【0015】
また、本発明において、前記手動操作器は、モーションセンサ及び光検出センサから選ばれる少なくとも一つの検知センサを備え、
前記オペレータ異常検出部は、前記検知センサからの出力値を監視し、該出力値が予め定められた時間、予め定められ範囲内にあるとき、または該出力値が予め定められた許容値を超えた後、予め定められた時間、予め定められた範囲内にあるとき、または該出力値が周期的に変動しているときにオペレータに異常が生じていると判定するように構成された態様を採ることができる。
【0016】
通常の手動操作において、オペレータが手動操作器を携帯して作業をしている場合、経験的に決定される所定の時間内に、オペレータの操作に伴って手動操作器に動きがあり、この手動操作器の動きによって前記モーションセンサや光検出センサから出力される出力値が変動する。また、オペレータに異常が発生して手動操作器を落とした場合には、前記出力値が予め定められた許容値を超えて大きく変動した後、ほぼ一定の値となる。或いは、オペレータに異常が発生して手動操作器を落とした場合に、手動操作器のケーブルが何処かに引っかかって、当該手動操作器が振り子のように触れている場合には、前記出力値が周期的に変動する。
【0017】
したがって、前記モーションセンサや光検出センサから出力される出力値を監視して、この出力値が予め定められた時間、予め定められ範囲内にあるとき、または出力値が予め定められた許容値を超えた後、予め定められた時間、予め定められた範囲内にあるとき、または出力値が周期的に変動しているときに、オペレータに何らかの異常が発生したと判断することができる。
【0018】
尚、前記モーションセンサの一例としては、加速度センサやジャイロセンサなどを例示することができ、光検出センサとしては照度計などを例示することができる。
【0019】
また、本発明において、前記手動操作器及び前記オペレータ異常検出部の一方は、電波を出力する電波出力部を備え、他方は前記電波出力部から出力される電波を受信する電波受信部を備え、
前記オペレータ異常検出部は、前記電波受信部によって受信される電波の受信強度を監視し、該受信強度の変動が予め定められた時間、予め定められた範囲内にあるとき、または該受信強度の変動が予め定められた許容値を超えた後、予め定められた時間、予め定められた範囲内にあるとき、または、該受信強度が周期的に変動しているときにオペレータに異常が生じていると判定するように構成された態様を採ることができる。
【0020】
通常の手動操作において、オペレータが手動操作器を携帯して作業をしている場合、経験的に決定される所定の時間内に、オペレータの操作に伴って手動操作器に動きがあり、この手動操作器の動きによって、前記電波受信部により受信される電波の受信強度が変動する。また、オペレータに異常が発生して手動操作器を落とした場合には、前記受信強度の変動が予め定められた許容値を超えた後、ほぼ一定の値となる。或いは、オペレータに異常が発生して手動操作器を落とした場合に、手動操作器のケーブルが何処かに引っかかって、当該手動操作器が振り子のように触れている場合には、前記受信強度が周期的に変動する。
【0021】
したがって、前記電波受信部によって受信される電波の受信強度を監視して、この受信強度の変動が予め定められた時間、予め定められた範囲内にあるとき、または受信強度の変動が予め定められた許容値を超えた後、予め定められた時間、予め定められた範囲内にあるとき、または受信強度が周期的に変動しているときに、オペレータに何らかの異常が発生したと判断することができる。
【0022】
また、本発明では、前記オペレータ異常検出部は、前記手動操作器に設けることができ、或いは、工作機械の制御装置に設けることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、オペレータが急病等の体調不良によって動けなくなった場合に、オペレータに異常が発生したことが報知されるので、この異常を外部の人間、例えば他のオペレータや管理者が認識することができ、これにより、当該オペレータを救助するなどの適切な措置を迅速に講じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係る工作機械の概要を示した斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る工作機械の主要な構成を一部ブロック図で示した説明図である。
【
図3】本実施形態の操作信号監視部における処理を示したフローチャートである。
【
図4】本実施形態の検知信号監視部における処理を示したフローチャートである。
【
図5】本実施形態の検知信号監視部における処理を示したフローチャートである。
【
図6】本実施形態の検知信号監視部における処理を示したフローチャートである。
【
図7】本実施形態の受信電波監視部における処理を示したフローチャートである。
【
図8】本実施形態の受信電波監視部における処理を示したフローチャートである。
【
図9】本実施形態の受信電波監視部における処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る工作機械の概要を示した斜視図であり、
図2は、本実施形態に係る工作機械の主要な構成を一部ブロック図で示した説明図である。
【0026】
図1及び
図2に示すように、本例の工作機械1は、運動機構などを備えた加工部2、数値制御装置(NC制御装置)4及び操作盤5を含む広義の制御装置3、並びに手動操作器20などを備えて構成される。本例の前記加工部2は、複数の送り軸を備えた送り機構により駆動される刃物台など(運動機構)を備えた旋盤であるが、当然のことながら、これに限られるものではなく、マシニングセンタなどの各種の工作機械が適用される。
【0027】
前記手動操作器20は、筐体状をした本体21と、この本体21に設けられるパルス発生器22、軸選択スイッチ23、倍率選択スイッチ24、検知センサ25、電波出力部26及び前記操作盤5に接続されるケーブル27などから構成される。前記パルス発生器22は、前記運動機構を動作させるためのパルス信号を生成する機器であり、また、倍率選択スイッチはパルス信号の1パルスに対する動作量を設定するための倍率を選択するスイッチであり、軸選択スイッチ23は、駆動する送り軸を選択するためのスイッチである。
【0028】
また、前記検知センサ25は、モーションセンサ及び光検出センサから選ばれる少なくとも一つのセンサから構成され、モーションセンサとしては加速度センサやジャイロセンサなどを例示することができ、光検出センサとしては照度計などを例示することができる。尚、本例では、上記から選択される一つのセンサを検知センサ25として適用している。
【0029】
そして、これらパルス発生器22、軸選択スイッチ23、倍率選択スイッチ24及び検知センサ25から出力される信号は、前記ケーブル27を介して、前記操作盤5に入力される。
【0030】
また、前記電波出力部26は、所定周波数の電波を出力する機器であり、この電波出力部26から出力された電波は、詳しくは後述する前記操作盤5に設けられた電波受信部13によって受信される。
【0031】
この手動操作器20は、工作機械1の運動機構を手動で操作するためのもので、工作機械1の操作盤5を介して前記NC制御装置4に接続されており、また、オペレータが運動機構の動作状態を直接目視しながら操作することができるように、持ち運び可能となっている。
【0032】
前記制御装置3は、上述したように、NC制御装置4及び操作盤5から構成され、NC制御装置4は、従来周知であるので、その詳しい説明は省略するが、CPU、RAM、ROMなどを含むコンピュータから構成され、前記運動機構を数値制御する。
【0033】
前記操作盤5は、監視部9及び電波受信部13から構成されるオペレータ異常検出部8、入出力制御部7、タッチパネル14及び信号入力部15などから構成され、前記入出力制御部7及び監視部9は、CPU、RAM、ROMなどを含むコンピュータから構成される処理部6として機能する。
【0034】
また、前記タッチパネル14は、前記入出力制御部7による制御の下で、前記NC制御装置4から送信される加工や制御に関する情報を表示するとともに、前記監視部9から送信されるアラームなどを表示し、また、画面に表示したソフトキーを介して入力される操作信号を前記入出力制御部7に送信する。また、前記信号入力部15は、各種データを前記入出力制御部7に入力するための操作キーやキーボードなどから構成され、例えば、操作キーには、NCプログラムに基づいた自動運転モード、MDI機能によるMDI運転モード、手動操作器20からの操作信号に基づいた手動操作器モードなどに切り換えるための運転モード選択スイッチが含まれる。
【0035】
前記入出力制御部7は、前記手動操作器20の本体21と前記ケーブル27を介して接続されており、前記手動操作器20から出力された操作信号を前記NC制御装置4及び前記監視部9に送信するとともに、前記手動操作器20から送信された前記検知センサ25の検知信号を前記監視部9に送信する。また、上述したように、前記NC制御装置4から送信される加工や制御に関する情報を前記タッチパネル14に表示させるとともに、前記監視部9から送信されるアラーム信号を受信したときに、タッチパネル14にアラームを表示させ、また、前記タッチパネル14や信号入力部15から入力される操作信号をNC制御装置4に転送する。
【0036】
前記オペレータ異常検出部8は、上述したように、電波受信部13及び監視部9から構成される。前記電波受信部13は、前記手動操作器20に設けられた電波出力部26から出力される電波を受信し、受信した電波の強度に係るデータを前記監視部9に送信する処理を行う。
【0037】
前記監視部9は、操作信号監視部10、検知信号監視部11及び受信電波監視部12から構成され、前記入出力制御部7を介して前記手動操作器20から入力される操作信号及び検知センサ25の検知信号、並びに前記電波受信部13から入力される受信強度に係るデータを基に、オペレータに異常が生じたか否かを検出する。具体的には、操作信号監視部10、検知信号監視部11及び受信電波監視部12は以下の処理を行う。尚、操作信号監視部10、検知信号監視部11及び受信電波監視部12において実行される各処理は、パラレルに実行される。
【0038】
A.操作信号監視部
前記操作信号監視部10は、
図3に示した処理を実行する。即ち、操作信号監視部10は、前記入出力制御部7から入力される操作信号が手動操作器モードである場合に(ステップS1)、前記入力制御部7を介して前記手動操作器20から入力される操作信号を受信して監視し(ステップS2、S3)、所定の基準時間(基準時間A)内に操作信号を受信しない場合には、前記入出力制御部7にアラームを出力して(ステップS5)、処理を終了し、基準時間A内に操作信号が入力される場合には、前記ステップS1~S4の処理を繰り返して実行し、処理終了信号を受信したときに処理を終了する。
【0039】
通常の手動操作では、経験的に決定される所定の基準時間(前記基準時間A)内に、オペレータの操作によって前記手動操作器20から操作信号が出力される。したがって、手動操作器20から基準時間A内に操作信号が出力されない場合には、オペレータに何らかの異常が発生したと判断することができる。そこで、操作信号監視部10は、前記手動操作器20から入力される操作信号を監視し(ステップS2、S3)、前記基準時間A内に操作信号を受信しない場合には、前記入出力制御部7にアラームを出力して(ステップS5)、前記タッチパネル14に、オペレータに異常が生じたことを示すアラームを表示させる。
【0040】
B.検知信号監視部
前記検知信号監視部11は、
図4~
図6に示した検知信号監視処理1、検知信号監視処理2及び検知信号監視処理3をパラレルに実行する。
【0041】
B1.検知信号監視処理1
図4に示すように、前記検知信号監視処理1では、前記検知信号監視部11は、前記入出力制御部7から入力される操作信号が手動操作器モードである場合に(ステップS11)、前記入力制御部7を介して前記手動操作器20から入力される検知信号を受信してその出力値を監視し(ステップS12~S14)、出力値が所定の基準時間(基準時間B
1)内において連続して基準値b
1以下である場合には、前記入出力制御部7にアラームを出力して(ステップS16)、処理を終了し、基準時間B
1内に入力される出力値が基準値b
1を超える場合には、前記ステップS11~S15の処理を繰り返して実行し、処理終了信号を受信したときに処理を終了する。
【0042】
通常の手動操作において、オペレータが手動操作器20を携帯して作業をしている場合には、経験的に決定される所定の時間内、即ち、前記基準時間B1内に、オペレータの操作に伴って手動操作器20に動きがあり、この手動操作器20の動きによって前記検知センサ25から出力される出力値が変動し、オペレータが作業をしていない場合には、手動操作器20に動きがないため、出力値が基準時間B1内において、連続して所定の基準値(基準値b1)以下となる。したがって、前記検知センサ25から出力される出力値を監視して、この出力値が予め定められた時間内(基準時間B1内)で、連続して基準値b1以下である場合には、オペレータに何らかの異常が発生したと判断することができる。
【0043】
そこで、検知信号監視部11は、前記検知センサ25から入力される検知信号の出力値を監視し(ステップS12~S14)、当該出力値が基準時間B
1内において、連続して基準値b
1以下である場合には、前記入出力制御部7にアラームを出力して(ステップS16)、前記タッチパネル14に、オペレータに異常が生じたことを示すアラームを表示させる。
B2.検知信号監視処理2
図5に示すように、前記検知信号監視処理2では、前記検知信号監視部11は、前記入出力制御部7から入力される操作信号が手動操作器モードである場合に(ステップS21)、前記入力制御部7を介して前記手動操作器20から入力される検知信号を受信してその出力値を監視し(ステップS22~S24)、出力値が許容値(基準値b
2)を超えて変動した後、所定の基準時間(基準時間B
2)内において連続して基準値b
3以下である場合には、前記入出力制御部7にアラームを出力して(ステップS26)、処理を終了し、出力値が基準値b
2を超えない場合には、前記ステップS21~S25の処理を繰り返して実行し、処理終了信号を受信したときに処理を終了する。
【0044】
通常の手動操作において、オペレータが手動操作器20を携帯して作業をしている場合に、オペレータに異常が生じて当該手動操作器20を落とした場合、前記検知センサ25からの出力値が予め定められた基準値b2を超えて大きく変動した後、一定の値(基準値b3)以下となる。したがって、前記検知センサ25から出力される出力値を監視して、この出力値が基準値b2を超えて大きく変動した後、基準値b3以下となる場合には、オペレータに何らかの異常が発生したと判断することができる。尚、オペレータが誤って手動操作器20を落下させることがあり得るが、この場合には、オペレータが手動操作器20を落下させた際に、検知センサ25からの出力値が基準値b2を超えて大きく変動するが、この後、オペレータが手動操作器20を正常に操作するようになると、検知センサ25からの出力値は基準値b3以上となる。
【0045】
そこで、検知信号監視部11は、前記検知センサ25から入力される検知信号の出力値を監視し(ステップS22~S24)、当該出力値が基準値b2を超えて大きく変動した後、基準値b3以下となる場合には、前記入出力制御部7にアラームを出力して(ステップS26)、前記タッチパネル14に、オペレータに異常が生じたことを示すアラームを表示させる。
【0046】
B3.検知信号監視処理3
図6に示すように、前記検知信号監視処理3では、前記検知信号監視部11は、前記入出力制御部7から入力される操作信号が手動操作器モードである場合に(ステップS31)、前記入力制御部7を介して前記手動操作器20から入力される検知信号を受信してその出力値を監視し(ステップS32~S34)、出力値が周期的に変動している場合には、前記入出力制御部7にアラームを出力して(ステップS36)、処理を終了し、出力値に周期的な変動が認められない場合には、前記ステップS31~S35の処理を繰り返して実行し、処理終了信号を受信したときに処理を終了する。
【0047】
オペレータが手動操作器20を携帯して手動操作を行っている間に、オペレータに異常が発生して手動操作器20を落とした場合に、当該手動操作器20のケーブル27が何処かに引っかかって、手動操作器20が振り子のように触れる状態になった場合には、前記検知センサ25からの出力値が周期的に変動することになる。したがって、前記検知センサ25から出力される出力値を監視して、この出力値が周期的に変動している場合には、オペレータに何らかの異常が発生したと判断することができる。
【0048】
そこで、検知信号監視部11は、前記検知センサ25から入力される検知信号の出力値を監視し(ステップS32~S34)、出力値が周期的に変動している場合には、前記入出力制御部7にアラームを出力して(ステップS36)、前記タッチパネル14に、オペレータに異常が生じたことを示すアラームを表示させる。
C.受信電波監視部
前記受信電波監視部12は、
図7~
図9に示した電波監視処理1、電波監視処理2及び電波監視処理3をパラレルに実行する。
【0049】
C1.電波監視処理1
図7に示すように、前記電波監視処理1では、前記受信電波監視部12は、前記入出力制御部7から入力される操作信号が手動操作器モードである場合に(ステップS41)、前記電波受信部13から入力される受信強度を認識してその変動を監視し(ステップS42~S44)、受信強度の変動が所定の基準時間(基準時間C
1)内において連続して基準値c
1以下である場合には、前記入出力制御部7にアラームを出力して(ステップS46)、処理を終了し、基準時間C
1内において受信強度の変動が基準値c
1を超える場合には、前記ステップS41~S45の処理を繰り返して実行し、処理終了信号を受信したときに処理を終了する。
【0050】
通常の手動操作において、オペレータが手動操作器20を携帯して作業をしている場合には、経験的に決定される所定の時間内、即ち、前記基準時間C1内に、オペレータの操作に伴って手動操作器に動きがあり、この手動操作器の動きによって、前記電波受信部13により受信される電波の受信強度が変動し、オペレータが作業をしていない場合には、手動操作器に動きがないため、受信強度の変動が基準時間C1内において、連続して所定の基準値(基準値c1)以下となる。したがって、前記電波受信部13によって受信される電波の受信強度の変動を監視して、当該受信強度の変動が予め定められた時間内(基準時間C1内)で、連続して基準値c1以下である場合には、オペレータに何らかの異常が発生したと判断することができる。
【0051】
そこで、受信電波監視部12は、前記電波受信部13によって受信される電波の受信強度の変動を監視し(ステップS42~S44)、当該受信強度変動が基準時間C
1内において、連続して基準値c
1以下である場合には、前記入出力制御部7にアラームを出力して(ステップS46)、前記タッチパネル14に、オペレータに異常が生じたことを示すアラームを表示させる。
C2.電波監視処理2
図8に示すように、前記電波監視処理2では、前記受信電波監視部12は、前記入出力制御部7から入力される操作信号が手動操作器モードである場合に(ステップS51)、前記電波受信部13から入力される受信強度を認識してその変動を監視し(ステップS52~S54)、受信強度の変動が許容値(基準値c
2)を超えた後、所定の基準時間(基準時間C
2)内において連続して基準値c
3以下である場合には、前記入出力制御部7にアラームを出力して(ステップS56)、処理を終了し、受信強度の変動が基準値c
2を超えない場合には、前記ステップS51~S55の処理を繰り返して実行し、処理終了信号を受信したときに処理を終了する。
【0052】
通常の手動操作において、オペレータが手動操作器20を携帯して作業をしている場合に、オペレータに異常が生じて当該手動操作器20を落とした場合、前記電波受信部13によって受信される受信強度の変動値が予め定められた基準値c2を超えた後、一定の値(基準値c3)以下となる。したがって、前記電波受信部13によって受信される電波の受信強度を監視して、この受信強度の変動値が基準値c2を超えた後、基準値c3以下となる場合には、オペレータに何らかの異常が発生したと判断することができる。尚、オペレータが誤って手動操作器20を落下させることがあり得るが、この場合には、オペレータが手動操作器20を落下させた際に、電波受信部13によって受信される電波の受信強度の変動値が基準値c2を超えるが、この後、オペレータが手動操作器20を正常に操作するようになると、電波受信部13によって受信される電波の受信強度の変動値は基準値c3以上となる。
【0053】
そこで、受信電波監視部12は、前記電波受信部13によって受信される電波の受信強度の変動を監視し(ステップS52~S54)、当該受信強度の変動が基準値c
2を超えた後、基準値c
3以下となる場合には、前記入出力制御部7にアラームを出力して(ステップS26)、前記タッチパネル14に、オペレータに異常が生じたことを示すアラームを表示させる。
C3.電波監視処理3
図9に示すように、前記電波監視処理3では、前記受信電波監視部12は、前記入出力制御部7から入力される操作信号が手動操作器モードである場合に(ステップS61)、前記電波受信部13から入力される受信強度を監視し(ステップS62、S63)、受信強度が周期的に変動している場合には、前記入出力制御部7にアラームを出力して(ステップS65)、処理を終了し、受信強度に周期的な変動が認められない場合には、前記ステップS61~S64の処理を繰り返して実行し、処理終了信号を受信したときに処理を終了する。
【0054】
オペレータが手動操作器20を携帯して手動操作を行っている間に、オペレータに異常が発生して手動操作器20を落とした場合に、当該手動操作器20のケーブル27が何処かに引っかかって、手動操作器20が振り子のように触れる状態になった場合には、前記電波受信部13から入力される受信強度が周期的に変動することになる。したがって、前記電波受信部13から入力される受信強度を監視して、この受信強度が周期的に変動している場合には、オペレータに何らかの異常が発生したと判断することができる。
【0055】
そこで、受信電波監視部12は、前記電波受信部13から入力される受信強度を監視して(ステップS62、S63)、受信強度が周期的に変動している場合には、前記入出力制御部7にアラームを出力して(ステップS65)、前記タッチパネル14に、オペレータに異常が生じたことを示すアラームを表示させる。
【0056】
以上の構成を備えた本例の工作機械1によれば、前記手動操作器20を用いた手動操作時に、前記操作信号監視部10、検知信号監視部11及び受信電波監視部12によって、それぞれオペレータに異常が生じたか否かが検出され、異常が検出されたとき、当該異常が生じたことを示すアラームがタッチパネル14に表示される。
【0057】
斯くして、本例の工作機械1によれば、オペレータが急病等の体調不良によって動けなくなった場合には、オペレータに異常が生じたことを示すアラームがタッチパネル14に表示されるので、このアラームを外部の人間、例えば他のオペレータや管理者が認識することができ、これにより、当該オペレータを救助するなどの適切な措置を迅速に講じることができる。
【0058】
尚、本例において、前記基準時間A、B1、B2、C1、C2は、経験的に設定される時間であり、それぞれ同じ時間に設定することができ、或いは、逆にそれぞれで異なる時間に設定することができ、更には、これらの内で一部の基準時間を同じ時間に設定することができる。
【0059】
また、基準値b1、b2、b3、c1、c2、c3はそれぞれ経験的に設定される値である。また、基準値b1とb3は同じ値に設定することができ、或いは、異なる値に設定することができる。同様に、基準値c1とc3は同じ値に設定することができ、或いは、異なる値に設定することができる。
【0060】
また、上例において複数の検知センサを用いる場合には、それぞれの検知センサに対して、基準値b1、b2、b3、c1、c2、c3が設定されるとともに、それぞれについてオペレータに異常が生じたか否かが判断され、いずれか一つにいて異常が生じたと判定される場合には、アラームが出力される。
【0061】
以上、本発明の具体的な実施の形態ついて説明したが、本発明が採り得る態様は、何ら上例のものに限定されるものではない。
【0062】
例えば、上述した例では、前記オペレータ異常検出部8を前記操作盤5内に組み込んだ構成としたが、このような構成に限られるものではなく、オペレータ異常検出部8を手動操作器20内に組み込んだ構成としても良い。この場合、前記電波出力部26は、操作盤5に設けるのが好ましい。前記監視部9によってオペレータに異常が生じたことが検出された場合には、ケーブル27を介して前記入出力制御部7にアラームが出力される。
【0063】
また、上例では、オペレータに異常が生じたと判断された場合に、このことを示すアラームをタッチパネル14上に表示するようにしたが、異常を報知する態様は、これに限られるものではなく、アラームを表す警告灯や、警告音を発するスピーカなどを用いた報知態様としても良い。
【0064】
また、上例では、操作盤5にタッチパネル14を設けた例を示したが、当然のことながら、操作盤5に設けられるディスプレイは、このようなタッチ入力機能を有しないものであっても良い。
【0065】
繰り返しになるが、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【符号の説明】
【0066】
1 工作機械
2 加工部
3 制御装置
4 NC制御装置
5 操作盤
6 処理部
7 入出力制御部
8 オペレータ異常検出部
9 監視部
10 操作信号監視部
11 検知信号監視部
12 受信電波監視部
13 電波受信部
14 タッチパネル
15 信号入力部
20 手動操作器
21 本体
25 検知センサ
26 電波出力部