(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】リッド取付構造
(51)【国際特許分類】
B60R 7/06 20060101AFI20221114BHJP
B60K 37/00 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
B60R7/06 G
B60K37/00 Z
(21)【出願番号】P 2020189248
(22)【出願日】2020-11-13
【審査請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】武本 健児
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-065451(JP,A)
【文献】特開2000-198380(JP,A)
【文献】実開昭63-016942(JP,U)
【文献】実開平04-023537(JP,U)
【文献】特開2000-211425(JP,A)
【文献】特開2014-125042(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0296304(US,A1)
【文献】米国特許第08562058(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 7/06
B60K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インストルメントパネルに設けられて車室側に収納品を出し入れする開口を有する収納部を備え、前記収納部の上面にリッドを取り付ける構造であって、
前記リッドは、前記収納部の上面に対して、前記収納部の外側から車両後方に向けてスライドさせて取り付けられて
おり、
前記リッドは、スライド方向と直交する方向の両側に、上方に向かって隆起する隆起部をそれぞれ有し、
前記リッドが取り付けられる前記収納部の上面の上方には、前記隆起部を受け入れるためのアーム部材が設けられ、
前記リッドの隆起部は、前記アーム部材と前記収納部の上面との間で挟持される、
ことを特徴とするリッド取付構造。
【請求項2】
請求項1記載のリッド取付構造において、
前記隆起部は、スライド方向の先端が後端と比較して上下方向に小さく
なっており、
前記アーム部材は、前記収納部の上外面と前記アーム部材との間隔が前記隆起部と合致するように、前記アーム部材の後端側と比較して前記アーム部材の先端側の離間間隔が大きく構成されていることを特徴とするリッド取付構造。
【請求項3】
請求項2記載のリッド取付構造において、
前記アーム部材の先端下部、又は、前記隆起部の先端上部の少なくとも一方は、面取りされたラウンド形状からなることを特徴とするリッド取付構造。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のリッド取付構造において、
前記リッドは、本体部を有し、
前記収納部は、側壁部を有し、
前記リッドは、前記本体部から前記収納部の前記側壁部に沿って垂下する垂下部を有し、
前記リッドを車両後方に向けてスライドさせた際、前記垂下部には、前記収納部の前記側壁部から突設された爪部が係止される係止部が設けられていることを特徴とするリッド取付構造。
【請求項5】
請求項4記載のリッド取付構造において、
前記収納部の前記側壁部には、位置決め用突起部が設けられ、
前記リッドの前記垂下部には、前記位置決め用突起部を受け入れる開口部が設けられていることを特徴とするリッド取付構造。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載のリッド取付構造において、
前記リッドには、光源を取り付けるための光源取付部が設けられ、
前記光源取付部は、前記収納部の上面よりも上方へ膨出していることを特徴とするリッド取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インストルメントパネルに設けられて車室側に収納品を出し入れする開口を有するトレーを備え、このトレーの上面にリッドを取り付けるリッド取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、例えば、特許文献1には、収納部(トレー)の内側開口から収納部の上面に照明装置を取り付け、レンズを介して収納部内に収納された収納物を照らす構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された取付構造では、収納部の内側開口から照明装置を収納部の上面に取り付けているため、照明装置の板厚分の段差が発生する。このため、意匠パネルとの関係で見栄えが悪くなり意匠性を低下させるおそれがある。また、収納部の商品性を低下させるおそれがある。
【0005】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、車室内側前部の意匠性及び商品性を向上させることが可能なリッド取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するために、本発明は、インストルメントパネルに設けられて車室側に収納品を出し入れする開口を有する収納部を備え、前記収納部の上面にリッドを取り付ける構造であって、前記リッドは、前記収納部の上面に対して、前記収納部の外側から車両後方に向けてスライドさせて取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、車室内側前部の意匠性及び商品性を向上させることが可能なリッド取付構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係るリッド取付構造が適用されたトレーを車室内側から見た車室前部の斜視図である。
【
図2】
図1に示すトレー及びリッドを、パワープラント室側から見た拡大分解斜視図である。
【
図3】
図2に示すリッドを車両前方側からみた正面図である。
【
図4】
図2に示すリッドを上方からみた平面図である。
【
図5】
図2に示すリッドを車幅方向右側からみた側面図である。
【
図6】
図1のVI-VI線に沿った縦断面図である。
【
図7】
図3のVII-VII線に沿った縦断面図である。
【
図8】
図3のVIII-VIII線に沿った縦断面図である。
【
図9】
図4のIX-IX線に沿った縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、「前後」は、車両前後方向、「左右」は、車幅方向(左右方向)、「上下」は、車両上下方向(鉛直上下方向)をそれぞれ示している。
【0010】
図1に示されるように、車室10内の車両前方には、車幅方向に沿って延出するインストルメントパネル12が配置されている。車室10内の左側前席(図示せず)の車両前方に臨むインストルメントパネル12の下方には、車室10側に収納品を出し入れすることが可能な開口14を有するトレー(収納部)16が設けられている。
図2に示されるように、このトレー16の外側上面(上面)18には、平面視して矩形状を呈する矩形状開口部20が設けられている。
【0011】
この矩形状開口部20は、トレー16の外側上面18に取り付けられるリッド22によって閉塞されている(
図1参照)。このリッド22は、後記で詳細に説明するように、トレー16の外側上面18に対して、トレー16の車両前方の外側(図示しないエンジンやモータ等が設置されるパワープラント室24側)から車両後方に向けてスライドさせて取り付けられている(
図2参照)。
【0012】
矩形状開口部20の車両後方に位置するトレー16の上部には、断面コ字状を呈するリブ26が設けられている(
図7、
図2参照)。このリブ26は、トレー16の外側上面18に取り付けられたリッド22のスライド方向先端部(車両後方端部)を上下方向で挟み込んでリッド22の高さ方向の位置決めをするものである(
図2参照)。
【0013】
図2に示されるように、トレー16は、パワープラント室24に臨む外側上面18を有する天井部28と、天井部28の左右両側でそれぞれ連続する左右側壁部30、30と、車室10内の図示しない左側前席からみてトレー16の奥側車両前方に位置し、天井部28の車両前方端部及び左右側壁部の車両前方端部をそれぞれ繋ぐ車両前端側壁部(収納部の側壁部)32とを備えて構成されている。この車両前端側壁部32の左右中央の上端部には、平板状のプレート体からなり、車両前方に向けて水平方向に沿って突出する位置決め用突起部34が設けられている。
【0014】
位置決め用突起部34の左右両側には、例えば、車両前方に向かって突出するクリップ部材38からなり、リッド22の後記する係止部40を係止する爪部42が設けられている。この爪部42は、弾性変形可能に支持され、リッド22の係止部40の押圧力によって車幅方向内側に弾性変形した後、その弾性力によって原位置に復帰してリッド22の後記する垂下部44をトレー16に固定するものである(
図8参照)。
【0015】
リッド22が取り付けられるトレー16の外側上面18の上方には、リッド22の後記する隆起部46、46を受け入れるための左右一組のアーム部材48、48が設けられている。各アーム部材48は、インストルメントパネル12のパワープラント室24側に臨む裏面から車両前方に向けて突出するアーム50を有する。このアーム50の下部は、リッド22の隆起部46を案内するガイド面52を有する。
【0016】
リッド22を車両後方に向けてスライドして取り付ける際、リッド22の隆起部46は、アーム部材48とトレー16の外側上面18との間で挟持されながら、隆起部46の上面と摺接するアーム50のガイド面52に沿って案内される(
図6参照)。
【0017】
各アーム部材48は、トレー16の外側上面18(上外面)とアーム部材48との間隔が隆起部46と合致するように、アーム部材48の車両後端側と比較してアーム部材48の車両前方の先端側の離間間隔が大きくなるように構成されている。
図9において、トレー16の外側上面18(上外面)とアーム部材48の車両前方の先端側の離間間隔(D1)は、トレー16の外側上面18(上外面)とアーム部材48の車両後端側の離間間隔(D2)よりも大きくなっている(D1>D2)。
【0018】
アーム部材48の車両前方の先端下部には、面取りされたラウンド形状からなるラウンド形状部54が設けられている(
図2参照)。
【0019】
図2~
図5に示されるように、リッド22は、本体部56と、垂下部44と、光源取付部58とを備えて構成されている。本体部56上面のスライド方向と直交する方向の両側には、上方に向かって隆起すると共に、スライド方向の先端が後端と比較して上下方向に小さくなる左右一組の隆起部46、46が設けられている(
図2~
図4参照)。各隆起部46の上面には、該隆起部46の車両前方端から該隆起部46の車両後方端に向けて立ち下がる傾斜面を有する傾斜壁60が設けられている。
【0020】
また、各隆起部46の中間部には、傾斜壁60の下面から下方に向かって突出する支持片62が設けられている(
図2、
図5、
図9参照)。リッド22をスライドさせてトレー16に取り付けた際、この支持片62の下端は、トレー16の外側上面18に当接してリッド22を支持すると共に、隆起部46をアーム部材48側に押圧してトレー16の外側上面18とアーム部材48との間におけるリッド22の挟持状態を確保するものである(
図9参照)。
【0021】
さらに、各隆起部46の車両後方端に位置する先端上部には、面取りされたラウンド形状からなるラウンド形状部64が設けられている(
図2~
図5、
図9参照)。なお、本実施形態では、アーム部材48の先端下部、及び、隆起部の車両後方端に位置する先端上部の両方にそれぞれラウンド形状部54、64を設けているが、少なくともいずれか一方であってもよい。
【0022】
垂下部44は、本体部56の車両前端からトレー16の車両前端側壁部32に沿って垂下するように設けられている。
図2に示されるように、この垂下部44の車幅方向に沿った両側には、車両前方から見て矩形状の切欠部66が設けられている。この切欠部66の車幅方向外側の左右内壁は、リッド22を車両後方に向けてスライドさせた際、トレー16の車両前端側壁部32から突設された左右一対の爪部42(クリップ部材38)によって係止される係止部40として機能するものである。
【0023】
また、垂下部44には、トレー16の位置決め用突起部34を受け入れる開口部68が設けられている。この開口部68は、水平なプレート体からなる位置決め用突起部34に対応して、水平方向に沿って横長のスリット状に形成されている(
図2参照)。
【0024】
さらに、リッド22の本体部56の上面には、例えば、LED(light emitting diode)等の光源57(
図7参照)を取り付けるための光源取付部58が設けられている。この光源取付部58は、トレー16の外側上面18よりも上方へ膨出した膨出部70を有している。この膨出部70の中心には、光源57を取り付けるための取付口72が設けられている。
【0025】
本実施形態に係るリッドの取付構造が適用された車両前方は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
【0026】
本実施形態において、リッド22は、トレー16の外側上面18に対して、トレー16の外側(パワープラント室24側)から車両後方に向けてスライドさせて取り付けられている。換言すると、本実施形態では、従来技術のようにトレー16の車室内側の開口14からリッド22を取り付けるのではなく、従来技術とは反対方向であるパワープラント室24側からトレー16の外側上面18に対してリッド22をスライドさせて取り付けている。
【0027】
これにより、本実施形態では、左側前席側から見て、トレー16の内側上面とリッド22との間の段差や見切りが小さくなり、トレー16に対してリッド22を見た目よく取り付けることができる。この結果、本実施形態では、車室内側前部の意匠性及び商品性を向上させることが可能なリッド取付構造を得ることができる。
【0028】
また、本実施形態において、リッド22のスライド方向と直交する方向の両側には、上方に向かって隆起すると共に、スライド方向の先端が後端と比較して上下方向に小さくなる隆起部46がそれぞれ設けられている。また、本実施形態において、リッド22が取り付けられるトレー16の外側上面18の上方には、隆起部46を受け入れるための左右一対のアーム部材48が設けられている。このアーム部材48は、トレー16の外側上面18とアーム部材48との間隔が隆起部46と合致するように、アーム部材48の車両後端側の離間間隔と比較してアーム部材48の車両前方の先端側の離間間隔が大きく構成されている。例えば、
図9に示されるように、トレー16の外側上面18(上外面)とアーム部材48の車両前方の先端側の離間間隔(D1)は、トレー16の外側上面18(上外面)とアーム部材48の車両後端側の離間間隔(D2)よりも大きくなっている(D1>D2)。
【0029】
これにより、本実施形態では、トレー16の外側上面18とアーム部材48との間にリッド22の隆起部46を確実にガイドすることができる。また、本実施形態では、リッド22の隆起部46がトレー16の外側上面18とアーム部材48との間で挟持されるため、リッド22をガタつきなくトレー16の外側上面18に固定することができる。
【0030】
さらに、本実施形態において、アーム部材48の先端下部、及び、隆起部46の先端上部は、それぞれ、面取りされたラウンド形状からなるラウンド形状部54、64を有している。
【0031】
これにより、本実施形態では、ラウンド形状部54、64を設けることで、リッド22をスライドさせる際、円滑にガイドすることができる。なお、ラウンド形状部は、アーム部材48の先端下部、または、隆起部46の先端上部の少なくとも一方であってもよい。
【0032】
さらにまた、本実施形態において、リッド22は、本体部56を有し、トレー16は、車両前端側壁部32を有している。リッド22は、この本体部56からトレー16の車両前端側壁部32に沿って垂下する垂下部44を有している。リッド22を車両後方に向けてスライドさせた際、この垂下部44には、トレー16の車両前端側壁部32から車両前方に突設されたクリップ部材38の爪部42が係止される係止部40が設けられている。この係止部40は、本実施形態において、クリップ部材38の爪部42と係合する、切欠部66の車幅方向外側の左右内壁によって構成されている。
【0033】
これにより、本実施形態では、垂下部44の係止部40が、トレー16の車両前端側壁部32から突設されたクリップ部材38の爪部42によって確実に係止され、リッド22を容易にトレー16の外側上面18に取り付けることができる。また、リッド22の係止部40がトレー16の爪部42によって係止されるため、リッド22がトレー16の外側上面18から離脱しにくくなる。
【0034】
さらにまた、本実施形態において、トレー16の車両前端側壁部32には、位置決め用突起部34が設けられている。リッド22の垂下部44には、この位置決め用突起部34を受け入れる開口部68が設けられている。
【0035】
本実施形態では、位置決め用突起部34及びこれを受け入れる開口部68を設けることで、トレー16の外側上面18に対してリッド22を精度よく位置決めした状態で容易に取り付けることができる。
【0036】
さらにまた、本実施形態において、リッド22には、光源57を取り付けるための光源取付部58が設けられている。この光源取付部58は、トレー16の外側上面18よりも上方へ膨出した膨出部70を有している。
【0037】
これにより、本実施形態では、車室10内から見えないように光源57を隠すことができると共に、膨出部70を押圧して容易にスライド取付を遂行することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 車室
12 インストルメントパネル
14 開口
16 トレー(収納部)
18 外側上面(トレーの上面)
22 リッド
32 車両前端側壁部(収納部の側壁部)
34 位置決め用突起部
40 係止部
42 爪部
44 垂下部
46 隆起部
48 アーム部材
54、64 ラウンド形状部
56 (リッドの)本体部
57 光源
58 光源取付部
68 開口部
70 膨出部
D1 トレーの外側上面(上外面)とアーム部材の車両前方の先端側の離間間隔
D2 トレーの外側上面(上外面)とアーム部材の車両後端側の離間間隔