(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】インサート芯出し表面を有する回転ドリル工具
(51)【国際特許分類】
B23B 51/00 20060101AFI20221114BHJP
【FI】
B23B51/00 T
(21)【出願番号】P 2020500126
(86)(22)【出願日】2018-07-04
(86)【国際出願番号】 EP2018068029
(87)【国際公開番号】W WO2019011734
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-05-06
(32)【優先日】2017-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507226695
【氏名又は名称】サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンソン, パトリック
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-511028(JP,A)
【文献】特開2000-084718(JP,A)
【文献】特開2004-268154(JP,A)
【文献】特開2001-277011(JP,A)
【文献】特表2002-522233(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0003072(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0135888(US,A1)
【文献】国際公開第2002/002263(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 51/00
B23C 5/10、20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を切削するための回転ドリル工具のための切削インサート(10)であって、
軸方向に前方に向く切削領域(13)および軸方向に後方に向くマウント領域(14)と;
前記切削領域と前記マウント領域との間で軸方向に延在する少なくとも2つの角領域(40)であって
、第1の接触表面(23)と第2の接触表面(24)との交差部によって画定され、支持体(11)の各接触表面(25,26)と当接するために構成される少なくとも2つの角領域(40)と;
前記角領域の間で前記インサートを貫通して半径方向に延在するボア(20)であって、それにより、前記ボアの各開放端(20a)は、前記角領域において前記第1の接触表面と前記第2の接触表面との前記交差部に配置され、前記ボアは、前記支持体において前記インサートを軸方向に固定するために取り付け要素(15)を受け取るように構成される、ボア(20)と
を備え、
前記第1および第2の接触表面の少なくとも表面エリア部分(23a,24a)は、軸方向に、前記ボアの前記開放
端と前記軸方向に前方に向く切削領域との間に配置され
、
前記軸方向に垂直な平面において、前記第1の接触表面と第2の接触表面とが互いに対して延在する角度(θ)は88°~130°の範囲内であり、
前記ボアの各開放端は、前記第1の接触表面と第2の接触表面との両方と交差するように位置決めされ、
長手方向軸に垂直な平面において、前記ボアの各開放端の直径は、前記第1の接触表面の半径方向幅の一部にわたって延在し、かつ前記第2の接触表面の全半径方向幅にわたって延在する、インサート。
【請求項2】
前記範囲は88°~120°である、請求項
1に記載のインサート。
【請求項3】
前記範囲は90°~100°である、請求項
1に記載のインサート。
【請求項4】
前記
軸方向に垂直な平面において、前記インサートを貫通して半径方向に延在する前記ボアの軸(38)と、前記第1または第2の接触表面の位置と、の間の角度(αまたはβ)は35°~55°の範囲内である、請求項1から
3のいずれか一項に記載のインサート。
【請求項5】
前記範囲は40°~50°である、請求項
4に記載のインサート。
【請求項6】
前記第1および第2の接触表面は
平面である、請求項1から
5のいずれか一項に記載のインサート。
【請求項7】
2つの直径方向に対向するローブ(34)と、前記ローブと
前記角度(θ)で交わる方向に、前記軸から半径方向に外方に延在する2つの直径方向に対向するウィング(35)と、を備え、前記第1の接触表面は各ローブに設けられ、前記第2の接触表面は各ウィングに設けられる、請求項1から
6のいずれか一項に記載のインサート。
【請求項8】
長手方向軸に垂直な平面において、各角領域における前記接触表面は、互いに対し
て直交している、請求項1から
7のいずれか一項に記載のインサート。
【請求項9】
金属を切削するための回転ドリル工具であって、
請求項1から
8のいずれか一項に記載のインサート(10)と;
支持体(11)であって、長手方向軸(12)に沿って延在し、前記軸を中心として離間した少なくとも2つの軸方向に突出するアーム(19)によって軸方向前方端で終端して、前記少なくとも2つの軸方向に突出するアーム(19)の間で顎部(18)を画定する支持体(11)とを備え、前記インサートは前記顎部(18)内に着脱可能に搭載可能であり;
各アームは
、第1の接触表面(25)と第2の接触表面(26)との交差部によって画定される半径方向内側係合角領域(41)を備え、前記インサートの前記角領域(40)は、前記支持体の各前記角領域に当接するために構成され;
各アームは、半径方向に延在する同軸ボア(21)を有し、前記アームの前記同軸ボアおよび前記インサートの前記ボア(20)は、前記インサートを前記支持体において軸方向に保持するために、前記アームを前記インサートに対して半径方向に内方に押し付けるように位置付け可能な細長い取り付け要素(15)を全体的に位置決めし受け取るように構成され
、
前記長手方向軸(12)に垂直な平面において、前記第1の接触表面(25)と第2の接触表面(26)とが互いに対して延在する角度は、前記角度(θ)とほぼ同じである、工具。
【請求項10】
前記インサートと前記アームの接触表面の間の接触は、
前記長手方向軸(12)に沿って前記
取り付け要素より前方の軸方向位置で起こる、請求項
9に記載の工具。
【請求項11】
前記インサートと前記アームの接触表面の間の接触は、
前記長手方向軸(12)に沿って前記
取り付け要素より前方
の前記軸方向位置でのみ起こる、請求項
10に記載の工具。
【請求項12】
前記インサートおよび前記アームの前記接触表面
は平面である、請求項
9から
11のいずれか一項に記載の工具。
【請求項13】
前記ローブの少なくとも一部の表面(28)は、前記支持体の軸方向に延在する切り屑フルートの軸方向に前方の領域を部分的に画定する、
請求項7に従属する、請求項
9から
12のいずれか一項に記載の工具。
【請求項14】
前記取り付け要素が、前記インサートを前記支持体において保持するために、前記アームおよび前記インサートの前記ボア内に位置付け可能なねじ(15)
である、請求項
9から
13のいずれか一項に記載の工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転ドリル工具インサートに関係し、ドリル工具組み立て体であって、インサートの保持を最大化し、緊密かつ安定した嵌合を提供するためにインサートが支持体に搭載可能である、ドリル工具組み立て体に関係する。
【背景技術】
【0002】
マルチコンポーネント穿孔工具組み立て体が開発されており、その組み立て体において、硬質で高価な材料(超硬合金、セラミック、または同様なものなど)から形成されるインサートは、硬質性が低くかつより安価な材料から形成される工具またはキャリア本体において着脱可能に軸方向にかつ半径方向にロックされる。インサートは、通常、摩耗部品と見なされ、一連の切削刃および切削表面を通常含む、軸方向に前方に向く切削領域を備える。
【0003】
インサートからドリル本体への軸方向負荷力およびトルクの伝達の制御および管理は、一旦摩耗した場合のインサート置換を可能にしながら、使用中にインサートをしっかり搭載するために必要とされる。タイン型ロッキングインタフェースは、そのような負荷力を適切に伝えようと試みて開発された。
【0004】
米国特許第7,311,480号は、マルチコンポーネントドリル工具を開示し、その工具において、比較的硬質の材料のインサートは、硬質性が低くかつグレードが低い材料から形成される支持体の軸方向に前方の顎部において搭載ねじによって着脱可能に搭載される。芯出しフィンは、普通なら「スペード(spade)」状インサートから半径方向に外方に延在して、インサートの芯出しを容易にする。半径方向に架橋する搭載ねじによる顎部内でのインサートの締め付けは、顎部から軸方向に後方に延在するスロットによって容易にされて、対向する顎部部材が、搭載位置でのねじの締め付けに応答して半径方向に撓むことを可能にする。
【0005】
しかしながら、上記型の既存のドリル工具組み立て体は、早期故障を受け易く、インサートと支持体との間で伝達されるかなりの負荷力に起因する支持体における応力および疲労によって、全体的に短い動作寿命と見なされるものを示す。特に、搭載表面およびコンポーネントは、トルク力に加えて、軸方向および半径方向のかなりの負荷力に耐えることを必要とされ、そのような力は、切削/穿孔中に動的にかつ突然変化する。したがって、必要とされるものは、これらの問題に対処するドリル工具である。
【発明の概要】
【0006】
ドリル工具インサート、および、ドリル工具組み立て体であって、安定した嵌合を提供し、適切に芯出しし、インサートを搭載位置に保持するために、インサートと支持体との間の負荷力の伝達を制御し管理するための、ドリル工具組み立て体を提供することが本発明の全体的な目的である。
【0007】
インサート、および、組み立て体であって、普通なら、インサートおよび/または支持体の亀裂伝播および/または疲労誘発変形につながる場合がある応力集中の核生成についての領域(または部位)を最小にするまたはなくす、組み立て体を提供することが特定の目的である。組み立て体、特に、インサートであって、ドリル工具を通して延在する長手方向軸に対して支持体におけるインサートの集中化を達成するために、力が加えられる方向および大きさに無関係に、使用中に半径方向力に耐えることが可能である適切なインタフェースを有する、インサートを提供することがさらなる特定の目的である。
【0008】
目的は、インサート、および、ドリル工具組み立て体であって、インサートおよび支持体がそれぞれ、接触表面を有するそれぞれの角領域を備える、ドリル工具組み立て体によって達成され、接触表面を有するそれぞれの角領域は、支持体においてインサートの芯出しされた位置ロッキングを最大化するように適合されることに加えて、インサートと支持体との間の半径方向負荷力を伝達するように適合される。インサートの確実な芯出しは、与えられるトルクならびに軸方向および半径方向の負荷力に対する高い耐性を示す、頑健かつ信頼性のあるマルチコンポーネントドリル工具組み立て体を提供するために有利である。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、金属を切削するための長手方向軸に沿って延在する回転ドリル工具のための切削インサートが提供され、インサートは、軸方向に前方に向く切削領域および軸方向に後方に向くマウント領域と;切削領域とマウント領域との間で軸方向に延在する少なくとも2つの角領域であって、互いに交わりまたは全体的に直交する位置関係に定められた第1の接触表面と第2の接触表面との交差部によって画定され、支持体の各接触表面に当接するために構成される少なくとも2つの角領域と;角領域の間でインサートを貫通して半径方向に延在するボアであって、それにより、ボアの各開放端は、角領域において第1の接触表面と第2の接触表面との交差部に配置され、ボアは、支持体においてインサートを軸方向に固定するために取り付け要素を受け取るように構成される、ボアとを備え、第1および第2の接触表面の少なくとも表面エリア部分は、軸方向に、ボアの開放端の軸方向位置と軸方向に前方に向く切削領域との間に配置される。
【0010】
ボアの開放端と軸方向に前方に向く切削領域との間で軸方向に位置決めされる第1および第2の接触表面の表面エリア部分は、支持体アームからインサートへの半径方向締め付けレバレジを最大化するために有利である。特に、この配置構成は、支持体の顎部のベース領域におけるスロットまたはスリットについての要件を取り除き、なぜならば、アームの軸方向に一番端の部分が、インサートと締め付け係合状態になるように半径方向に内方に適切に変形することが可能であるからである。
【0011】
好ましくは、インサートの角領域は、支持体の保持アームのそれぞれの角領域の内部に半径方向に搭載するために適合される。好ましくは、インサートの半径方向に内側の角領域は、長手方向軸に垂直な平面において、保持アームの相補的な形状の受け取り角領域内に着座するように適合される。
【0012】
好ましくは、長手方向軸に垂直な平面において、第1の接触表面と第2の接触表面が互いに対して延在する角度は、88°~130°、88°~120°、88°~110°、88°~100°、90°~130°、90°~120°、90°~110°、90°~100°の範囲内である。そのような構成は、取り付け要素によって加えられる力が、各角領域において、第1および第2の接触表面の間で均等に分配されることを可能にする。さらに、第1および第2の接触表面の相対的位置は、切削プロセスにおける外乱/擾乱に起因する、インサートと支持体のアームとの間で伝達される半径方向力の所望の伝達経路を提供する。その半径方向力は、普通なら、取り付け要素を通して伝達され、次に、アームを半径方向に外方に強制的に押しやり、インサートは、その搭載位置から外れる。
【0013】
好ましくは、長手方向軸に垂直な平面において、インサートを貫通して半径方向に延在するボアの軸と、第1または第2の接触表面の位置と、の間の角度は35°~55°または40°~50°の範囲内である。これは、インサートと支持体との間で半径方向力の伝達を方向付け、普通なら、保持アームのロッキング作用を低減することになる、取り付け要素に向けられるそのような半径方向力を低減するまたはなくすために有利である。
【0014】
好ましくは、ボアの各開放端は、第1接触表面と第2の接触表面との両方と交差するように位置決めされる。そのような構成は、切削中に遭遇する非対称半径方向負荷力に耐えながら、長手方向軸においてインサートの所望の芯出しを提供する。任意選択で、長手方向軸に垂直な平面において、ボアの各開放端の直径は、第1の接触表面の半径方向幅の一部にわたって延在し、かつ第2の接触表面の全半径方向幅にわたって延在する。
【0015】
好ましくは、第1および第2の接触表面は平面的である。この配置構成は、製造を容易にし、また、負荷力の所望の伝達経路およびインサートのその搭載位置での芯出しを達成しながら、特にインサートおよび支持体の角領域における利用可能な製造公差の増加に寄与する。
【0016】
好ましくは、インサートは、2つの直径方向に対向するローブと、ローブと交わる方向または全体的に直交する方向に、軸から半径方向に外方に延在する2つの直径方向に対向するウィングと、を備え、第1の接触表面は各ローブに設けられ、第2の接触表面は各ウィングに設けられる。好ましくは、ウィングは、ローブが半径方向に外方に延在する対応する距離より小さい距離だけ軸から半径方向に外方に延在する。特に、(各ローブに位置決めされる)外周エンベロープ表面の長手方向軸からの分離は、半径方向に外側のウィング側部表面の半径方向への対応する分離より大きい。各ローブおよび各ウィングの半径方向伸長部の相対的差は、第1および第2の接触表面の所望のそれぞれの表面エリアを提供することによってインサートのロッキングおよび芯出しを最大化する。そのような構成は、芯出し機能を達成しながら、使用中に支持体からインサートに伝達されるトルクに耐えるために効果的である。
【0017】
好ましくは、長手方向軸に垂直な平面において、各角領域における接触表面は、互いに対して全体的に直交している(すなわち、88~92°)。
【0018】
本発明の第2の態様によれば、金属を切削するための回転ドリル工具が提供され、回転ドリル工具は、本明細書で特許請求されるインサートと;支持体であって、長手方向軸に沿って延在し、軸を中心として離間した少なくとも2つの軸方向に突出するアームによって軸方向前方端で終端して、少なくとも2つの軸方向に突出するアームの間で顎部を画定する支持体とを備え、インサートは顎部内に着脱可能に搭載可能であり;各アームは、互いに交わりまたは全体的に直交する位置関係に定められた対応する第1の接触表面と第2の接触表面との交差部によって画定される半径方向内側の係合角領域を備え、インサートの角領域は、支持体の各角領域に当接または嵌合当接するために構成され;各アームは、半径方向に延在する同軸ボアを有し、アームの同軸ボアおよびインサートのボアは、インサートを支持体において軸方向に保持するために、アームをインサートに対して半径方向に内方に押し付けるように位置付け可能な細長い取り付け要素を全体的に位置決めし受け取るように構成される。
【0019】
好ましくは、インサートおよびアームの接触表面の間の接触は、取付け要素の軸方向に前方の軸方向位置で起こる。より好ましくは、インサートおよびアームの接触表面の間の接触は、概して、取付け要素の軸方向に前方でのみ起こる。示すように、そのような配置構成は、支持体アームからインサートへの半径方向締め付けレバレジを最大化することを可能にする。したがって、取り付け要素(搭載ねじ)が所定の位置に締め付けられるため、アームおよびインサートのそれぞれの接触表面の間の接触圧は最大化される。
【0020】
好ましくは、ローブの少なくとも一部の表面は、支持体の軸方向に延在する切り屑フルートの軸方向に前方の領域を部分的に画定する。本インサートおよび支持体は、サービス寿命および支持体におけるインサートの芯出しを損なうことなく切削領域における切り屑排出を容易にする。
【0021】
好ましくは、工具は、インサートを支持体において保持するために、アームおよびインサートのボア内に位置付け可能なねじをさらに備える。
【0022】
本発明の特定の実装態様が、ここで、単に例として、また、添付図面を参照して述べられる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の特定の実装態様による、一方の軸方向端に切削インサートを着脱可能に搭載する細長い支持体を有するドリル工具の斜視図である。
【
図2】特定の実装態様による、インサートが、搭載ねじを介して支持体に軸方向にかつ回転式にロックされる
図1のドリル工具組み立て体の分解拡大図である。
【
図4】
図1のドリル工具組み立て体の前方切削端の側面斜視図であり、ねじは例証のために取り除かれている。
【
図5】切削端における
図1の切削組み立て体の軸方向端面図である。
【
図7】
図6のインサートの平面図であり、搭載ねじはインサートを貫通して延在するように挿入されている。
【
図9】
図1のドリル工具組み立て体の前方軸方向切削端の斜視図であり、インサートは例証のために取り除かれている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1を参照すると、ドリル工具として実装される切削工具は、中心長手方向軸12に沿って延在する細長い支持体11を備える。切削インサート10は、支持体11の軸方向前方端に着脱可能に搭載される。インサート10は、支持体11の軸方向前方端内に受け取られる、軸方向に前方に向く切削領域13および軸方向後方マウント領域14を備える。
【0025】
マウント領域14および支持体11の軸方向前方端は、以下で詳細に述べるように、軸方向と半径方向の両方で互いに相補的に形作られて、使用中に、インサート10と支持体11との間の負荷力の伝達の制御および管理を提供する。搭載ねじ15は、支持体11の軸方向前方端およびインサート10を貫通して半径方向に延在して、支持体11に対してインサート10を軸方向にかつ回転式にロックする。
【0026】
図2および
図6を参照すると、インサート10は、半径方向に延在する長さが対応する垂直幅より大きい、全体的に「スペード(spade)」構成と見なすことができるものを備える。インサート10は、前方に向く切削領域13に対して、対向する軸方向端に軸方向に後方を向くベース表面17を備える。領域13は、少なくとも部分的に同軸である領域であって、インサート10を通して同様に延在する長手方向軸12において切削先端16が芯出しされる、領域を備える。インサート10の半径方向外側外周は、インサート10の各長さ方向端に位置決めされる部分円柱エンベロープ表面29aによって画定される。インサート10の各長さ方向側部は、全体的に平面的な第1の接触表面23および全体的に湾曲した凹状表面28によって部分的に画定される。(各長さ方向側部において)対向する表面23、28の間で画定されるインサート10の本体セグメントは、インサート10の(半径方向の)それぞれの第1および第2の長さ方向端領域を示すローブ34と考えることができる。インサート10は、インサート10の中心領域から各第1の接触表面23と直交する方向に側方に(laterally)外方に突出する一対の直径方向に対向するウィング35をさらに備える。各ウィング35は、(第1の接触表面23と直交する位置関係に定められた)平面的な第2の接触表面24、側部表面37、および湾曲した凹状表面28の一部分によって部分的に画定される。したがって、インサート10は、一対の長さ方向に延在する直径方向に対向するローブ34および一対の側方にまたは幅方向に延在する直径方向に対向する直径方向に対向するウィング35を備えて、軸12に垂直な平面において「+」形状プロファイルを有する本体を画定する。以下でさらに詳述するように、各ローブ34の長さは、ウィング35の対応する幅より大きい。特に、インサート10は、軸12に垂直な平面において、(ウィング側部表面37の間の)対応する幅より大きい(エンベロープ表面29aの間の)長さを含む。
【0027】
したがって、インサート10は、表面23、24、28、29a、および37によって部分的に画定される、切削領域13とベース表面17との間に延在する軸方向の高さを含む。凹状表面28は、それぞれ、エンベロープ表面29aおよびウィング側部表面37との接合部を形成する軸方向に延在する縁28a、28bによって終端され、部分的に画定される。ボア20は、インサート10を貫通して半径方向に延在し、それにより、ボア20の軸方向長さは軸12を2分する。ボア20は、第1および第2の接触表面23、24に位置するそれぞれの軸方向端開口20aを備え、それにより、各接触表面23、24の有効表面エリアは減少する。ボア20は、(軸方向の)第1および第2の接触表面23、24のかなりの表面エリアが、ボア20の少なくとも一部から軸方向に前方に延在して、ボア20と軸方向前方切削領域13との間に位置決めされるように軸方向に位置決めされる。
【0028】
図2を参照すると、インサート10を搭載する支持体11の軸方向前方端は、軸12の周りに直径方向に離間する一対の保持アーム19を備える歯様取り付け具として形成されて、保持アームの間に顎部18を画定する。各アーム19は、各アーム19の外方に向くエンベロープ表面29bと半径方向に内側の領域との間で半径方向に延在するボア21を備える。特に、各アーム19の半径方向に内側の領域は、対応する平面的な第1の接触表面25、および、直交して配置された平面的な第2の接触表面26によって画定される。支持体11は、軸12のまわりにねじれ、軸方向に延在する螺旋切り屑フルートを画定する凹状表面27によって分離される2つの軸方向に延在する部材を備えると考えることができる。各表面27は、軸方向に延在する第1および第2の縁27a、27bによって部分的に画定され、境界付けられる。インサート10が支持体11の所定の位置に搭載された状態で、それぞれの湾曲した凹状表面28、27は、切り屑フルートが支持体11およびインサート10に沿って軸方向に延在するように配置され、前方に向く切削領域13に対応する工具の軸方向に一番前の領域で終端する。
【0029】
顎部18は、ベース表面22によってさらに画定され、ベース表面22は、アーム19の間で半径方向に延在し、インサートベース表面17に対向して位置決めするために構成される。示すように、表面17および22は、それぞれの第1の接触表面23、25および第2の接触表面24、26に垂直に配置される。
【0030】
図2および
図3を参照すると、搭載ねじ15は、全体的に細長く、シャフトの一方の軸方向端に位置決めされた拡大ヘッド30を備える。ねじシャフトは、少なくとも3つの領域に軸方向に分割され、少なくとも3つの領域は、ヘッド30から延在する第1の端領域33、中央部分32、および対向する第2の端領域31を含む。第1の領域33は全体的に円柱であり、第2の領域31は、雄ねじを備えて、アームボア21の一方のアームボア内で内部に形成された対応するねじ山と協働する。したがって、対向するアーム19のボア21は、ヘッド30を収容するために半径方向に拡大する。シャフト中央部分32は、全体的にバレル状であって、それぞれの端領域33、31に対して増加する直径を有する。
図4を参照すると、インサート10がアーム19の間で顎部18に搭載された状態で、インサート10および支持体11は、インサートボア20の軸方向中心がアームボア21を通って半径方向に延在する対応する軸方向中心に対して軸方向に(軸12の方向に)前方に位置決めされるように位置決めされる。したがって、インサート10が顎部18の所定の位置に搭載されているが、ねじがボア20および21の所定の位置に搭載されていない状態で、リップが、第1および第2の接触表面23、24の小さい表面エリアに対応するアームボア21の半径方向内側部分に存在する。そのような配置構成は、ねじ15が、全体的に位置関係が定められたボア20および21を通して挿入されるため、半径方向に拡大したねじ中央部分32が、インサートボア20に接触し、アームボア21との協働的当接によって、インサート10を、強制的に軸方向に後方に押しやって、アーム19の間でかつ顎部18内での完全嵌合接触状態にする点で有利である。したがって、そのよう構成において、搭載ねじ15は、軸方向に予張力を加えられて、軸方向に後方に向くバイアス力をインサート10に提供する。
【0031】
図5および
図6を参照すると、第1および第2の接触表面23、24の間の接合部は、インサート10の各長さ方向側部において、角領域40と見なすことができる。対応する第1および第2の接触表面25、26の間の接合部によって形成されるアーム19の半径方向内側部分は、同様に角領域41と見なすことができる。各インサート角領域40は、対向する第1の接触表面23、25および対向する第2の接触表面24、26がそれぞれ接触状態で位置決めされた状態で、支持体11のそれぞれの角領域41を受け取るように適合される。そのような構成は、使用中に遭遇する半径方向力とトルク力の両方に耐えるように構成される支持体11においてインサート10の所望の芯出しを提供する。特定の実装態様によれば、所望のまたは十分な芯出しは、それぞれの第1および第2の接触表面23、25、24、26の間の接触によって達成され、それにより、各アーム19において、ウィング側表面37と対応する半径方向に内方に向く表面36との間に小さい隙間が設けられる。
【0032】
図6を参照すると、軸12に垂直な平面において、第1および第2の接触表面23、24の間の角度θは90°~110°の範囲内である。そのような構成は、所望の芯出しを提供し、半径方向力およびトルクによるアーム19の間のインサート10のいずれの側方シフトをも回避するために有利である。特定の実装態様によれば、第1の接触表面23は、第2の接触表面24の対応する幅Bより大きい幅Aを(軸12に垂直な平面において)備える。特定の実装態様によれば、B/Aの商は0.2~0.3の範囲内である。軸12に垂直な平面において、インサート10は、商A/Cが0.22~0.34であるような最大長さCを備える。
【0033】
図7を参照すると、また、軸12に垂直な平面において、搭載ねじ15の軸38は、第1の接触表面23に対して直交して角度βで、また、第2の接触表面24に対して直交して角度αで配置される。特定の実装態様によれば、βは、35~55°の範囲内であり、特に、40~50°である。そのような構成は、ねじ15とそれぞれの接触表面23、25、24、および26との間の協働による所望の芯出し機能を達成するために有利である。
図5に示すように、各アーム19のそれぞれの第1および第2の接触表面25、26の相対的寸法およびアライメントは、述べた寸法A、B、Cならびに角度θ、α、およびβに関して、同一である、ほぼ同一である、または、インサート接触表面23、24の相対的寸法およびアライメントと少なくとも非常に類似する。
【0034】
図8および
図9を参照すると、インサートボア20は、中央高さ位置で第1および第2の接触表面23、24のそれぞれに交差する。したがって、第1の表面エリア部分23aおよび24aは、ボア20と前方に向く切削領域13との間で軸方向に位置決めされる。さらに、第2の表面エリア部分23bおよび24bは、ボア20とベース表面17との間で軸方向に後方に位置決めされる。同様に、各アーム19の第1および第2の接触表面25、26のそれぞれは、それぞれのボア21によって軸方向に分割されて、軸方向に前方の第1の表面エリア部分26a、25aおよび対応する軸方向に後方の第2の表面エリア部分26b、25bを提供すると考えることができる。そのような構成は、搭載ねじ15が(インサート10が顎部18内に位置する状態で)アーム19を架橋するために所定の位置で締め付けられるため、アーム19が軸12に向かって半径方向に内方に引っ張られるにつれて、軸方向に前方の第1の表面エリア部分23a、24a、25a、および26aが互いに当接するように構成される点で有利である。アーム19の軸方向に一番前の領域におけるアーム19とインサート10との間の接触は、ねじ15によって提供される締め付け作用を最大化するために有益であり、なぜならば、軸方向に前方の第1の表面エリア部分25a、25bの半径方向変位が、対応する第2の軸方向に後方の表面部分26a、26bより著しく大きいからである。支持体11がそれによって顎部18においてインサート10を摩擦的に保持する締め付け力の大きさは、相応して最大化される。それぞれの接触表面23、25、24、26の本構成は、表面エリア部分25a、26aによって提供されるロッキング作用に悪い影響を及ぼすことなく、支持体11においてインサート10の対応する芯出しを達成するために有利である。さらに、表面エリア部分25a、26bのロケーション、したがって、利用可能な半径方向移動によって、顎部ベース表面22の軸方向に後方の領域39は、ねじ15が所定の位置に留められると、普通なら、アーム19の所望の半径方向撓みを提供するために必要とされることになるスリットまたはスロットがないとすることができる。したがって、軸方向に延在するスロットがない支持体11の軸方向に前方の領域は、普通なら、切削組み立て体の亀裂伝播、そして次に、故障をもたらす場合がある、顎部18の領域における望ましくない応力集中をなくすために有利である。したがって、本組み立て体は、サービス寿命の増大および支持体11からのインサート10の早期分離の可能性の著しい低減を提供される。