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特許7175961グリセリン高含有培養培地上での発酵による1,3-プロパンジオールの改良された生産を行うための微生物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】グリセリン高含有培養培地上での発酵による1,3-プロパンジオールの改良された生産を行うための微生物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 7/18 20060101AFI20221114BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20221114BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20221114BHJP
   C12N 15/53 20060101ALN20221114BHJP
【FI】
C12P7/18 ZNA
C12N1/21
C12N15/31
C12N15/53
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020505798
(86)(22)【出願日】2018-08-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-15
(86)【国際出願番号】 EP2018071104
(87)【国際公開番号】W WO2019025580
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-07-12
(31)【優先権主張番号】17306044.3
(32)【優先日】2017-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505311917
【氏名又は名称】メタボリック エクスプローラー
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】セリーヌ、レイノー
(72)【発明者】
【氏名】オリビエ、トゥラス
(72)【発明者】
【氏名】ナデージュ、デュムーラン
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-525827(JP,A)
【文献】特表2013-545461(JP,A)
【文献】Database UniProt[online], Accession No. Q97KN3, 2016-01-20 uploaded,[retrieved on 2022-05-13], <https://www.uniprot.org/uniprot/Q97KN3.txt?version=89>, Definition: SubName: Full=CAMP-binding domain (Catabolite gene activator) andregulatory subunit of cAMP-dependent protein kinase{ECO:0000313|EMBL:AAK78860.1}
【文献】Database UniProt[online], Accession No. Q97KN2, 2016-11-02 uploaded,[retrieved on 2022-05-13], <https://www.uniprot.org/uniprot/Q97KN2.txt?version=85>, Definition: SubName: Full=Ferredoxin 3 fused to uncharacterized domain,orthologous of AF0155 from Archaeoglobus fulgidus {ECO:0000313|EMBL:AAK78861.1}
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 7/18
C12N 1/21
C12N 15/31
C12N 15/53
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,3-プロパンジオールを発酵により製造する方法であって、グリセロールを1,3-プロパンジオールに変換し、かつ、hcpR遺伝子およびfrdX遺伝子を過剰発現する組換えクロストリジウム属微生物が、工業用グリセリンを含む培地で培養される、方法。
【請求項2】
前記hcpR遺伝子およびfrdX遺伝子が、組換えクロストリジウム属微生物において、遺伝子組換えによって過剰発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記hcpR遺伝子およびfrdX遺伝子が、hcpR遺伝子およびfrdX遺伝子の発現を調節するプロモーターを変異させること、hcpR遺伝子とfrdX遺伝子との間の遺伝子間領域を変異させること、遺伝子重複、ならびにプラスミドからhcpR遺伝子およびfrdX遺伝子を過剰発現させることから選択される遺伝子組換えによって、過剰発現する、請求項2に記載の方法
【請求項4】
前記遺伝子間変異が挿入である、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記挿入が単一ヌクレオチド挿入である、請求項4に記載の方法
【請求項6】
前記単一ヌクレオチド挿入が、「A」ヌクレオチドの挿入である、請求項5に記載の方法
【請求項7】
前記挿入が、繰り返しAヌクレオチドの領域で発生する、請求項4または5に記載の方法
【請求項8】
前記挿入が、少なくとも7つの「A」ヌクレオチドの領域で発生する、請求項4または5に記載の方法
【請求項9】
前記組換えクロストリジウム属微生物が、高濃度の工業用グリセリンの存在下で増殖するように適合されたものである、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工業用グリセリン中のグリセロールの濃度が90~120g/Lの間である、請求項に記載の方法。
【請求項11】
工業用グリセリン中のグリセロールの濃度が105g/Lである、請求項10に記載の方法
【請求項12】
前記工業用グリセリンが少なくとも5%の脂肪酸を含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記工業用グリセリンがバイオディーゼル生産の副産物である、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記組換えクロストリジウム属微生物が、クロストリジウム・アセトブチリカム、クロストリジウム・ブチリカムまたはクロストリジウム・パスツリアヌムである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記組換えクロストリジウム属微生物が、クロストリジウム・スポロゲネスおよびクロストリジウム・スフェノイドと共培養される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
1,3-プロパンジオールがさらに精製される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
グリセロールから1,3-プロパンジオールを製造するための組換えクロストリジウム属微生物であって、グリセロールを1,3-プロパンジオールに変換し、hcpR遺伝子およびfrdX遺伝子を過剰発現するものである、組換えクロストリジウム属微生物。
【請求項18】
前記hcpR遺伝子およびfrdX遺伝子が、遺伝子組換えによって過剰発現する、請求項17に記載の組換えクロストリジウム属微生物。
【請求項19】
前記hcpR遺伝子およびfrdX遺伝子が、hcpR遺伝子およびfrdX遺伝子の発現を調節するプロモーターを変異させること、hcpR遺伝子とfrdX遺伝子との間の遺伝子間領域を変異させること、遺伝子重複、またはプラスミドからhcpR遺伝子およびfrdX遺伝子を過剰発現させることから選択される遺伝子組換えによって、過剰発現する、請求項18に記載の組換えクロストリジウム属微生物
【請求項20】
高濃度の工業用グリセリンを有する培地上で増殖するように適合されている、請求項17~19のいずれか一項に記載の組換えクロストリジウム属微生物。
【請求項21】
工業用グリセリン中のグリセロール濃度が90~120g/Lであり、かつ/または工業用グリセリンが少なくとも5%の脂肪酸を含むものである、請求項20に記載の組換えクロストリジウム属微生物
【請求項22】
クロストリジウム・アセトブチリカム、クロストリジウム・ブチリカムおよびクロストリジウム・パスツリアヌムから選択され、場合によってクロストリジウム・スポロゲネスおよびクロストリジウム・スフェノイドと共培養される、請求項17~21のいずれか一項に記載の組換えクロストリジウム属微生物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリセロールを高含量で有する培養培地から1,3-プロパンジオールを製造するための新規の方法および微生物であって、好ましくは当該グリセロールが工業用グリセリンである、方法および微生物に関する。より具体的には、この微生物は、hcpR遺伝子および/またはfrdX遺伝子を過剰発現するものである。
【背景技術】
【0002】
トリメチレングリコールまたはプロピレングリコールとも呼ばれる1,3-プロパンジオール(PDO)は、最も古くから知られている発酵産物の一つである。それは、当初早くも1881年にAugust Freundによってクロストリジウム・パスツリアヌム(Clostridium pasteurianum)を含有しているグリセロール発酵培養物中で同定された。PDOは、グリセロール発酵の典型的な生成物であるが、他の有機基質の嫌気性変換において見出されている。PDOを形成することができる生物は非常に少なく、その全てが細菌である。これらには、クレブシエラ(Klebsiella(肺炎桿菌(K.pneumoniae)))、エンテロバクター(EnterobacterE.agglomerans))ならびにシトロバクター(CitrobacterC.freundii))、ラクトバシラス(LactobacilliL.brevisおよびL.buchneri))ならびにクロストリジウム網(Clostridia(C.ブチリカム(C.butyricum)、C.パスツリアヌム))属の腸内細菌が含まれる。これらのうち、C.ブチリカムが収率および力価の両方の点で、PDOの最良の「天然の生産者」であると考えられている。
【0003】
二官能性有機化合物としてのPDOは、ポリエステル、ポリエーテルおよびポリウレタン、とりわけポリトリメチレンテレフタレート(PTT)を生成するための重縮合のためのモノマーとしての使用を含め、多くの異なる合成反応において潜在的に使用し得る。PDOの構造および反応性を考慮すると、PDOはまた、溶媒、接着剤、洗剤、化粧品、織物(例えば、衣類繊維またはフローリング)およびプラスチック類(例えば、自動車産業、梱包中、またはコーティングとして)における成分として使用し得る。
【0004】
様々な化学的方法を用いてPDOを製造することができる一方、それらは極めて汚染性である物質を含有している廃棄物流を生成するため、それによって化学的に製造されたPDOの、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、および1,4-ブタンジオールなどの石油化学的に入手可能なジオールに対するコスト競争力が失われてしまう。D-グルコースをPDOに生物学的に変換するため、大腸菌(Escherichia coli)を用いた、より環境に優しい方法が報告されているものの、この方法にはいくつかの大きな欠点がある。特に、培養は生成菌株の不安定性の理由から不連続であり、高価な補因子ビタミンB12の添加をさらに必要とする。実際、PDOは大腸菌においてビタミンB12依存性の経路を介して生成され得る一方、大腸菌自体はこの補因子を生成しない。
【0005】
バイオディーゼル産業によって生成されるグリセロールを含む工業用グリセリンは大量に入手可能であるため、基質として工業用グリセリンを使用した、より高い炭素収率を有する、連続的なビタミンB12を含まない方法が有利であろう。
【0006】
純粋なグリセロールは多種多様な用途(例えば、食物、医薬品、または化粧品添加剤としての用途)を有する一方、バイオディーゼル合成の間に生成される工業用グリセリンは、一般に、80~85%の塩および水分と混合したグリセロールを含有するため、添加剤として使用可能となる前に追加の精製工程が必要となる。その結果、工業用グリセリンは、価値のある商品というよりも廃棄物として処理されるため、グルコースまたは純粋なグリセロールなどの他の炭素源と比較した場合に、PDOにとって豊富で安価な発酵基質となる。
【0007】
クロストリジウムは、PDOの生成のために非常に有望な菌株である。実際に、C.ブチリカムは、バッチ式および2段階式の連続発酵において、B12非依存性経路を介し、PDOを生成するための唯一の炭素供給源として、純粋なグリセリンだけでなく、工業用のグリセリンも使用することができる(Papanikolaouら、2000)。しかしながら、最も高いグリセロール濃度では、得られた最大PDO力価は、0.02h-1の希釈率で48.1g/Lであり、これは0.96g/L/hの生成率に相当する。この培養は、最大グリセロール濃度として流加培地(fed medium)中90g/Lで、細菌バイオマスを増加させることが知られている有機窒素を含有する高価な化合物である酵母抽出物の存在下で行われたものである。
【0008】
WO2006/128381は、クレブシエラ・ニュウモニエ(Klebsiella pneumoniae)、C.ブチリカムまたはC. pasteuricumなどのPDOの「天然の生産者」を使用して、バッチ培養および流加バッチ培養でPDOを生成するための工業用グリセリンの使用を開示している。しかしながら、WO2006/128381で使用される培地も酵母抽出物を含有している。また、達成された最大生成率も、Papanikolaouら、2000によって見出されたものと同様で、0.8~1.1g/L/hである。
【0009】
C.ブチリカムからのビタミンB12非依存性グリセロールデヒドラターゼおよびPDOデヒドロゲナーゼを含有している、C.アセトブチリカム(C.acetobutyricum) DG1pSPD5と呼ばれる組換えC.アセトブチリカム菌株の性能は、Gonzalez-Pajueloら、2005に記載されている。この菌株は、もともと、最大120g/Lの純粋グリセロールを含有している流加培地中で増殖し、PDOを生成する。さらに、60g/Lの純粋グリセリンまたは工業用グリセリンを含有する流加培地を用いた分析ではいかなる差異も示されなかった。これらの結果は、酵母抽出物の存在下でも得られた。しかしながら、60g/Lより高いグリセロール濃度を含む工業用グリセリンの試験は行われなかった。
【0010】
より最近では、WO2010/128070には、C.アセトブチリカムDG1pSPD5株をさらに適応させて、高濃度工業用グリセリン上で、酵母抽出物の存在なく増殖させることが開示されている。得られたC.アセトブチリカムDG1pSPD5適応菌株の集団は、Novance(フランス、コンピエーヌ)から供給された比較的高品質の工業用グリセリンを含有する培養培地中で、最大120g/Lのグリセロール濃度、最大53.5g/LのPDO力価、最大0.53g/gの収率および最大2.86g/L/hの生成率でPDOを生成することができた。
【0011】
特許出願WO2012/062832において、発明者らは、WO2010/128070に記載されているプロセスと同じプロセスによって得られるC.アセトブチリカムDG1pSPD5適応菌株の集団からのクローン「c08」の単離を記載している。このクローンは、約105g/Lのグリセロール濃度を有する、Novance(フランス、コンピエーヌ)から供給された比較的高品質の工業用グリセリンを含む培養培地中でPDOを生成することができた。最初の集団について最大50.45g/LのPDO力価、最大0.53g/gの収率および最大3.18g/L/hの生成率を観察した一方で、単離されたクローンc08では、同じ条件下で最大51.30g/LのPDO力価、最大0.50g/gの収率および最大3.05g/L/hの生成率でPDOの生成が増加したことを示した。
【0012】
これらの改善にもかかわらず、グリセロール、特に工業用グリセリンからのPDO生成の増加(例えば、収率、力価、および/または生成率)が依然として必要とされている。また、PDOの生成を阻害し得る、より不純物を多量に有する工業用グリセリンから、および/または異なる供給源から得られる工業用グリセリンから、PDOを生成する方法および微生物が必要とされている。実際に、工業用グリセリンの組成は、製造業者によって異なり得る上、バッチ間でさえも異なり得る。さらに、工業用グリセリンの汚染はますます加速しており、増殖および/またはPDO生成を阻害し得る、脂肪酸(例えば、オレイン酸、リノール酸)、アルコール、塩および金属を含む非グリセロール有機物質(MONG)と呼ばれる不純物のレベルが増加している。最後に、残留グリセロールのレベルが減少した方法および微生物に対する必要性が存在する。実際、残留グリセロールのレベルが低下することにより、下流のPDO精製が容易になる。
【0013】
本発明は、特に工業用グリセリン基質からの、PDOの改良された製造を行うための方法および微生物を提供する。実際、本発明者らは、驚くべきことに、hcpR遺伝子および/またはfrdX遺伝子の過剰発現が、hcpR遺伝子および/またはfrdX遺伝子が過剰発現されていない未変性の菌株の性能と比較した場合、PDOの力価がより高く、かつ収率がより良好であったことが観察されたために、PDOの製造がさらに改善されることを見出した。さらに、本発明者らは、驚くべきことに、連続培養中の残留グリセロールがより少ないことを見出した。本発明者らはまた、hcpR遺伝子および/またはfrdX遺伝子を過剰発現する菌株によって、工業用グリセリンに含まれる高濃度のグリセロール(例えば、約105g/Lまで)の存在下にて、より不純な工業用グリセリンから、および種々の供給源の工業用グリセリンから、PDOをこの改善されたレベルで製造し得ることを見出した。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、グリセロールを含む培地上で、グリセロールをPDOに変換し、かつ、一酸化窒素応答性転写調節因子および/またはフェレドキシン3様タンパク質(a ferredoxin-3 like protein)を過剰発現する組換え微生物を培養することを含む、PDOの発酵生産法に関する。好ましくは、前記タンパク質をコードする遺伝子は、それぞれ、hcpRおよびfrdX遺伝子である。hcpR遺伝子および/またはfrdX遺伝子が過剰発現されることが好ましい。
【0015】
本発明の好ましい実施態様において、hcpR遺伝子および/またはfrdX遺伝子の過剰発現は遺伝子組み換えによってなされ、その例としては、限定されるものではないが、hcpR遺伝子および/またはfrdX遺伝子の発現を調節するプロモーターを変異させることによって過剰発現し、hcpRとfrdX遺伝子との間の遺伝子間領域を変異させることによって過剰発現し、遺伝子重複によって過剰発現し、またはプラスミドからhcpR遺伝子および/またはfrdX遺伝子が過剰発現することによって過剰発現する。
【0016】
本発明の好ましい実施態様において、hcpR遺伝子および/またはfrdX遺伝子は、好ましくは挿入によって、より好ましくは少なくとも1つのヌクレオチドを含む挿入によって、2つの遺伝子間の遺伝子間領域を変異させることによって組換え微生物中に過剰発現し、ここで、当該少なくとも1つのヌクレオチドは好ましくは「A」ヌクレオチドである。特に好ましい実施態様において、遺伝子間領域は、単一の塩基挿入、好ましくは「A」ヌクレオチドによって変異される。好ましい実施態様によれば、その挿入は、繰り返し「A」ヌクレオチド、好ましくは少なくとも7つの「A」ヌクレオチドを含む領域において生じる。好ましくは、少なくとも1つの「A」ヌクレオチドの挿入は、C.アセトブチリカムATCC824ゲノム(NCBI参照配列:NC_003030.1)の1014234位と1014240位との間に組み込まれる。
【0017】
本発明の方法の特定の実施態様において、組換え微生物は、(特に工業用グリセリンの)グリセロールの高濃度での存在下で増殖するように適合される。好ましくは、工業用グリセリン中のグリセロール濃度は、90~120g/L、好ましくは約105g/Lである。好ましくは、工業用グリセリンは、少なくとも5%の脂肪酸を含んでいる。工業用グリセリンは、好ましくはバイオディーゼル生産の副産物である。最終的にPDOは精製されることが好ましい。
【0018】
本発明の方法のさらなる実施態様において、組換え微生物は細菌であり、好ましくは、クロストリジウム属またはクレブシエラ属の種から選択され、より好ましくは、クロストリジウム・アセトブチリカム、クロストリジウム・ブチリカム、クロストリジウム・パスツリアヌム、およびクレブシエラ・ニュウモニエから選択される。
【0019】
本発明の特定の実施態様によれば、組換え微生物は、微生物共同体中で少なくとも1種の他の微生物、好ましくは少なくとも他の1種のクロストリジウム属の微生物、より好ましくはクロストリジウム・スポロゲネス(Clostridium sporogenes)またはクロストリジウム・スフェノイド(Clostridium sphenoides)、一層より好ましくはクロストリジウム・スポロゲネスおよびクロストリジウム・スフェノイドの両方と共培養される。
【0020】
本発明はまた、グリセロールからPDOを製造するための組換え微生物に関し、ここで、この微生物はグリセロールをPDOに変換し、かつ、一酸化窒素応答性転写調節因子および/またはフェレドキシン3様タンパク質を過剰発現する。好ましくは、当該組換え微生物において当該タンパク質をコードする遺伝子は、それぞれhcpR遺伝子およびfrdX遺伝子である。好ましくは、hcpR遺伝子および/またはfrdX遺伝子が過剰発現している。好ましくは、hcpR遺伝子および/またはfrdX遺伝子は、遺伝子組換えによって、例えば、限定されるものではないが、hcpR遺伝子および/またはfrdX遺伝子の発現を調節するプロモーターを変異させることによって、hcpRとfrdX遺伝子との間の遺伝子間領域を変異させることによって、遺伝子重複によって、またはプラスミドからhcpR遺伝子および/またはfrdX遺伝子を過剰発現させることによって、過剰発現させる。
【0021】
好ましい実施態様において、hcpR遺伝子および/またはfrdX遺伝子は、好ましくは挿入によって、より好ましくは少なくとも1つのヌクレオチドを含む挿入によって、2つの遺伝子間の遺伝子間領域を変異させることによって組換え微生物中に過剰発現し、ここで、当該少なくとも1つのヌクレオチドは、好ましくは「A」ヌクレオチドである。特に好ましい実施態様において、遺伝子間領域は、単一の塩基挿入、好ましくは「A」ヌクレオチドによって変異される。好ましい実施態様によれば、当該挿入は、繰り返し「A」ヌクレオチド、好ましくは少なくとも7つの「A」ヌクレオチドを含む領域において生じる。好ましくは、少なくとも1つの「A」ヌクレオチド挿入は、C.アセトブチリカムATCC824ゲノム(NCBI参照配列:NC_003030.1)の1014234位と1014240位との間に組み込まれる。
【0022】
特に、本発明は、工業用グリセリンを高濃度で有する培養培地上で増殖するように適合させた組換え微生物に関し、好ましくは工業用グリセリン中のグリセロール濃度は90~120g/Lである。工業用グリセリンは不純物を含んでいてもよい。一実施態様において、工業用グリセリンは少なくとも5%の脂肪酸を含む。
【0023】
さらなる実施態様において、本発明の組換え微生物は、好ましくはクロストリジウム属またはクレブシエラ属の種から選択される細菌であり、より好ましくはクロストリジウム・アセトブチリカム、クロストリジウム・ブチリカム、クロストリジウム・パスツリアヌム、およびクレブシエラ・ニュウモニエから選択される細菌である。特定の実施態様において本発明の菌は、微生物共同体中で好ましくは少なくとも他の1種のクロストリジウム属の微生物、より好ましくはクロストリジウム・スポロゲネスまたはクロストリジウム・スフェノイド、一層より好ましくはクロストリジウム・スポロゲネスおよびクロストリジウム・スフェノイドの両方と共培養する。
【0024】
本発明はさらに、本明細書に記載の方法による組換え微生物に関する。
【発明の具体的説明】
【0025】
本発明を詳細に説明する前に、本発明は、とりわけ例示された方法に限定されず、当然ながら変化し得ることを理解するべきである。また、本明細書で使用される用語は、本発明の特定の実施態様を説明することのみを目的としたものであり、限定することを意図するものではなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることを理解されたい。
【0026】
上記のものであろうと下記のものであろうと、本明細書中で引用されている全ての刊行物、特許および特許出願は、その全体が本明細書中に参照することにより組み込まれる。しかしながら、本明細書中に言及された刊行物は、刊行物で報告されていて、かつ本発明に関連して使用され得るプロトコル、試薬およびベクターを記載および開示する目的で引用されている。いかなる本明細書の開示内容も、本発明が先行技術を理由にこのような開示に対して先行する権利を与えられていないことを認めるものではない。
【0027】
さらに、本発明の実施は、反対の指示がない限り、当分野の範囲内の従来の微生物学的技術および分子生物学的技術を採用する。このような技術は当業者に周知であり、文献において十分に説明されている。例えば、Prescottら(1999)およびSambrookら(1989)(2001)を参照のこと。
【0028】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」には、内容から明白な反対の指示がない限り、複数の言及を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「1つの微生物(a microorganism)」という言及には、複数のそのような微生物が含まれ、「1つの内因性遺伝子(an endogenous gene)」という言及には、1つまたは複数の内因性遺伝子が言及され、また以下同様である。反対の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野における当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。本発明を実施または試験するために、本明細書に記載のものと類似または同等の任意の材料および方法を使用することができるが、好ましい材料および方法を以下に記載する。本明細書中で使用する場合、以下の用語は、特許請求の範囲および明細書の解釈のために使用し得る。
【0029】
以下の特許請求の範囲および前述の本発明の説明において、内容が表現する言語または必要な暗示のために反対を指す場合を除いて、「含む(comprise)」という用語または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変形は、包括的な意味で、すなわち述べられた特徴の存在を特定するために使用されるが、本発明の様々な実施態様におけるさらなる特徴の存在または追加を排除するために使用されるものではない。
【0030】
本発明は、PDOを発酵により製造するための新規の方法および微生物に関する。
【0031】
本明細書中で使用される場合、「微生物」という用語は、一般に自然界において見出し得る、細菌のような原核生物、ならびに酵母および真菌のような真核生物を含む全ての種類の単細胞生物をいう。本発明において、微生物は、好ましくは細菌であり、より好ましくは腸内細菌科、バチルス科、クロストリジウム科、ストレプトミセス科およびコリネバクテリウム科からなる群から選択される。「エシェリキア(Escherichia)」、「クレブシエラ」、「バチルス」、「クロストリジウム族(Clostridium)」、「クロストリジウム網」および「コリネバクテリウム」という用語は、これらの科または属に属する全ての細菌種を指す。非限定的な例として、細菌種はエシェリキア種(好ましくは、大腸菌)、クレブシエラ種(好ましくは、クレブシエラ・ニュウモニエ)、バチルス種(好ましくは、枯草菌)、クロストリジウム種(好ましくは、クロストリジウム・アセトブチリカム、クロストリジウム・ブチリカム、およびクロストリジウム・パスツリアヌム)、ならびにコリネバクテリウム種(好ましくは、コリネバクテリウム・グルタミクム)からなる群より選択され得る。
【0032】
本明細書中で使用される場合、「組換え微生物」または「遺伝子組換え微生物」は、例えば、適合により遺伝子組換えが行われたかまたは遺伝子操作が行われた微生物または微生物の菌株をいう。このことは、これらの用語の通常の意味によれば、本発明の微生物はその由来とする「親」微生物と比較した場合、自然界において見出されず、遺伝子組換えが行われたものであることを意味する。「親」微生物は、自然界で発生してもよく(すなわち、野生型微生物)、または以前に組換え操作が行われたものでもよいが、本発明の1種以上のタンパク質(すなわち、hCDRおよび/またはFrdX)を発現または過剰発現しない。したがって、本発明の組換え微生物には、少なくとも親微生物において発現または過剰発現されなかったhCDRおよび/またはFrdXタンパク質が発現または過剰発現するように組換え操作が行われている。
【0033】
好ましくは、親微生物は、本明細書に列挙される微生物から選択される。特定の実施態様において、親微生物はクロストリジウム種のC.アセトブチリカム、C.ブチリカム、クロストリジウム・パスツリアヌムおよび関連単離物から選択され、またはクレブシエラ・ニュウモニエおよび関連単離物などのクレブシエラ種から選択される。より好ましくは、親微生物はGonzalez-Pajueloら、2005またはPCT特許出願、国際公開第2010/128070号または国際公開第2012/062832号に記載されるC.アセトブチリカム菌株から選択される。さらにより好ましくは、親微生物はC.アセトブチリカムDG1pSPD5菌株、例えばDG1pSPD5PD0001VE05菌株から選択される。
【0034】
本発明の組換え微生物に対して種々の遺伝子組換えを行ってもよい。非限定的な例として、内因性遺伝子は組換え微生物において弱毒化、欠失、または過剰発現させてもよく、一方で外因性遺伝子は細胞内で発現させるために、導入、プラスミドによって担持されてもよいし、または菌株のゲノムに組み込まれてもよい。このような組換えは、例えば、遺伝子操作によって、適合によって行うことができ(ここで微生物は、微生物に対して特定のストレスをかけ、突然変異生成を誘発するような培地中で培養される)、または特定の選択圧下で指向性突然変異生成および進化を組み合わせることによって、新しい代謝経路の発生および進化を強制することによって、行われ得る。
【0035】
本発明において、PDOを発酵により製造するための方法は、グリセロールを含む培地上で、グリセロールをPDOに変換する微生物を培養すること、および一酸化窒素応答性転写調節因子および/またはフェレドキシン3様タンパク質を過剰発現させることを含む。
【0036】
HcpRとしても知られる、本明細書に記載される酸化窒素応答性転写調節因子は、Crpファミリーの転写調節因子としてデータベースhttp://regprecise.lbl.gov/RegPrecise/に記載される。それは、cAMP結合ドメインおよびcAMP依存性プロテインキナーゼの調節サブユニットを含む。好ましくは、C.アセトブチリカムの遺伝子CA_C0884によってコードされる。例示的な遺伝子およびアミノ酸配列を、それぞれ配列番号1および2に示す。
【0037】
FrdXとしても知られる、本明細書に記載のフェレドキシン3様タンパク質は、特に4Fe-4Sフェレドキシン鉄-硫黄結合ドメインを含む。好ましくは、C.アセトブチリカムの遺伝子CA_C0885によってコードされる。例示的な遺伝子およびアミノ酸配列を、それぞれ配列番号3および4に示す。
【0038】
上述の遺伝子のヌクレオチド配列、または当該遺伝子によってコードされるアミノ酸配列を、データベースにおけるそれらの受入番号およびバージョンに従って、および/またはそれらの配列同定に従って、以下の表1に記載する。
【0039】
【表1】
【0040】
本明細書中で使用される場合、「過剰発現する」、「過剰発現」などの用語は、同じ条件下での非組換えまたは「親」微生物におけるタンパク質の発現レベルと比較して、対応するタンパク質における発現の一切の増加を含むように広く解釈するべきである。タンパク質が任意の特定のレベルで発現されることを意味すると解釈するべきではない。本明細書で使用される「発現レベル」という用語は、qRT-PCR、ウェスタンブロット免疫ブロット、酵素結合免疫吸着アッセイ(例えば、ELISA)、定量的プロテオミクスアプローチなどの当技術分野で周知の方法によって測定可能な、微生物において発現された目的のタンパク質(または当該タンパク質をコードする遺伝子もしくはmRNA)の量(例えば、相対量、濃度)を指す。
【0041】
当業者であれば、微生物における目的のタンパク質の過剰発現を容易に誘発し得る。
【0042】
非限定的な例として、hcpR遺伝子および/またはfrdX遺伝子などの1つ以上の内因性遺伝子は、内因性調節エレメントに加えて上方制御を好む異種配列を導入することによって、またはこのような異種配列でこれらの内因性調節エレメントを置換することによって、または内因性遺伝子の1つ以上の補足コピーを染色体に(すなわち、染色体中に)または微生物内で染色体外に(例えば、プラスミドまたはベクター中に)導入することによって過剰発現され得る。この点に関して、いくつかの遺伝子のコピーは、当分野で周知の方法(例えば、遺伝子組換え)によって染色体上に導入し得る。とりわけC.アセトブチリカムには、例えばクロストリジウムについて特許出願WO2008/040387に記載されている相同組換え方法に従った染色体修飾の標準的な技術を使用し得る。本発明の好ましい実施態様において、遺伝子の第二コピーを染色体に導入する(すなわち、遺伝子複製)。代替的には、または追加的には、遺伝子はプラスミドまたはベクター上で微生物に導入され得、染色体外で発現され得る。非限定的な例として、遺伝子は、異なる種類のプラスミドであって、それらの複製起点が異なり得るプラスミドによって、複製し得る微生物および細胞におけるそれらのコピー数に依存して担持され得る。例えば、プラスミドによって形質転換された微生物は、選択されたプラスミドの複製起点の性質に依存して、1~5個のコピー、約20個のコピー、またはさらに最大500個のコピーのプラスミドを含み得る。細胞における複製起点およびコピー数に関して異なる種々のプラスミドは、当分野で周知であり、そしてこのような目的のために当業者によって容易に選択され得る。C.アセトブチリカム中で複製可能なプラスミドの例として、pSOSプラスミド(Tummalaら、1999)、pSYLシリーズのプラスミド(Lee、1992)、およびpMTLシリーズのプラスミド(Chambersら、1988)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
内因性遺伝子を過剰発現する別の方法は、そのプロモーター(すなわち、野生型プロモーター)をより強力なプロモーターと交換することである。そのような目的に適したプロモーターは、同種(同じ種に由来)または異種(異なる種に由来)であってもよく、当分野で周知である。実際、当業者であればhcpR遺伝子および/またはfrdX遺伝子などの内因性遺伝子の発現を誘発するための適切なプロモーターを容易に選択することができる。遺伝子発現レベルを増加させるのに最も便利なプロモーターは、当業者に知られている:これらには、とりわけプロモーターPtrc、Ptac、Plac、およびラムダプロモーターPおよびPが含まれる。これらのプロモーターは、特定の化合物によって、または温度または光などの特定の外部条件によって「誘発可能(inducible)」であり、かつ/または同種であっても異種であってもよい。遺伝子の高い過剰発現をもたらすC.アセトブチリカムプロモーターの具体例には、th1、adc、ptbプロモーターが挙げられる(Tummalaら、1999)。
【0044】
また、内因性遺伝子発現レベルは、遺伝子のコード配列または非コード配列に変異を導入することによって増加し得る。これらの変異は、対応するアミノ酸に組換えが生じない場合には同義であり得、対応するアミノ酸に組換えが生じる場合には非同義であり得る。同義の変異は、翻訳されたタンパク質の機能に一切影響を及ぼさないが、変異配列が制御因子の結合部位に位置する場合、対応する遺伝子または他の遺伝子の調節に影響を及ぼす可能性がある。非同義の変異は、翻訳されたタンパク質の機能、ならびに変異した配列の性質に依存する調節に影響を及ぼし得る。
【0045】
特に、非コード配列における変異は、コード配列の上流(すなわち、プロモーター領域中、エンハンサー、サイレンサー、またはインスレーターの領域中、特異的転写因子結合部位中)、あるいはコード配列の下流に位置し得る。プロモーター領域に導入される変異は、コアプロモーター、近位プロモーターまたは遠位プロモーターに存在し得る。変異は、例えば、突然変異生成剤(紫外線、またはニトロソグアニジン(NTG)もしくはエチルメタンスルホネート(EMS)のような化学薬剤)またはDNAシャッフリングもしくはエラープローンPCRを介したランダム突然変異生成技術によって、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用する部位特異的突然変異生成によって、あるいは微生物に特異的ストレスをかけて突然変異生成を誘発する培養条件を使用して導入し得る。遺伝子の上流に位置する領域における1つ以上の補助ヌクレオチドの挿入は、遺伝子発現を顕著に調節し得る。非限定的な例として、1つ以上の変異をhcpR遺伝子とfrdX遺伝子との間に位置する遺伝子間領域に導入し得る(hcpR遺伝子およびfrdX遺伝子ならびに親遺伝子間領域を含む全配列は、配列番号15に示される一方、遺伝子間領域の親配列のみが、配列番号16に示されている)。非限定的な例として、「A」ヌクレオチドの挿入は、遺伝子間領域に導入され得る。このような挿入の例を配列番号17に示す。
【0046】
本発明において、組換え微生物は、好ましくはhcpR遺伝子および/またはfrdX遺伝子を過剰発現する。好ましくはhcpR遺伝子および/またはfrdX遺伝子は、少なくとも1.5倍、より好ましくは少なくとも約2倍、一層より好ましくは少なくとも3倍または約4倍過剰発現する。
【0047】
第一の好ましい実施態様によれば、hcpR遺伝子および/またはfrdX遺伝子は、好ましくは挿入によって、2つの遺伝子間の遺伝子間領域を変異させることによって過剰発現する。好ましくは、当該遺伝子間変異は、hcpR遺伝子および/またはfrdX遺伝子の発現を調節するプロモーター領域を修飾して過剰発現を誘発する。好ましくは、当該遺伝子間変異は、hcpR遺伝子およびfrdX遺伝子の両方の過剰発現を誘発する。実際にhcpRおよびfrdX遺伝子は、C.アセトブチリカムにおいて両方向遺伝子対として配置される。しかしながら、遺伝子間変異の種類に従い、hcpR遺伝子およびfrdX遺伝子のうちたった1種しか過剰発現されないこともあり得る。好ましくは当該遺伝子間変異は、C.アセトブチリカムATCC824ゲノムの1014117位と1014239位との間に含まれる。
【0048】
好ましくは、遺伝子間領域は、「A」、「C」、「T」および「G」ヌクレオチドから選択される少なくとも1つのヌクレオチドの挿入によって変異する。好ましくは、遺伝子間領域は、少なくとも1つの「A」ヌクレオチド、より好ましくは1つの「A」ヌクレオチドの挿入によって変異する。好ましくは、少なくとも1つのヌクレオチドは、同じヌクレオチドが少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍以上繰り返される領域内に挿入される(例えば、「AAAAAA」を含むヌクレオチド・ストレッチ内への「A」ヌクレオチドの挿入)。当該挿入が「A」ヌクレオチドである場合、当該挿入は、C.アセトブチリカムATCC824ゲノムの1014240位にさらに位置し得る。好ましくは、当該少なくとも1つの「A」は、C.アセトブチリカムATCC824ゲノムの1014234位と1014240位との間に組み込まれる。
【0049】
第二の好ましい実施態様によれば、hcpR遺伝子および/またはfrdX遺伝子は、外因性ベクターまたはプラスミド上での微生物への当該遺伝子の導入によって、より好ましくは誘発性プロモーターの制御下で過剰発現する。
【0050】
第三の好ましい実施態様によれば、hcpR遺伝子および/またはfrdX遺伝子は、染色体中の当該遺伝子の少なくとも1つのさらなるコピーの導入(すなわち、遺伝子重複)によって過剰発現する。
【0051】
当業者であれば、本明細書中において提供される遺伝子およびアミノ酸配列を考慮して、そしてUniProt(タンパク質用)、GenBank(遺伝子用)、またはNCBI(タンパク質または遺伝子用)のようなデータベースにおける利用可能な情報を使用して、微生物の特定のタンパク質および/または遺伝子の配列を容易に決定し得、他の微生物における同等のタンパク質または遺伝子、あるいはそれらのホモログを同定し得る。このルーチン的作業は、例えば、微生物の特定の遺伝子(またはタンパク質)配列の、上述のデータベースにおいて見出し得る他の微生物の遺伝子(またはタンパク質)配列またはゲノム(またはプロテオーム)とのアラインメントによって行うことができる。このような配列アラインメントは、Altschulら(1990)が開発したBLASTアルゴリズムを使用して有利に実施し得る。一旦配列相同性が配列間で確立されると、コンセンサス配列を誘発して縮重プローブを設計するために使用し得、関連する微生物の対応するホモログ遺伝子(それ故にホモログタンパク質)がクローニングされる。これらの分子生物学の常法は当業者に周知である。
【0052】
本発明において、目的のタンパク質をコードする外因性遺伝子が特定の微生物において発現される場合、好ましくはこの遺伝子の合成バージョンは、好ましくないコドンまたはそれ程好ましくないコドンを、同一のアミノ酸をコードする当該微生物の好ましいコドンで置換することによって構築されることをさらに理解されよう。コドン使用頻度が微生物種間では異なり、これが目的のタンパク質の組換え発現レベルに影響を与え得ることは、実際に当分野で周知である。この問題を克服するために、コドン最適化法が開発されており、Grafら(2000)、Demlら(2001)ならびにDavisおよびOlsen(2011)によって広範に記載されている。特に、コドン最適化の決定のためにGeneOptimizer(商標)ソフトウェア(Lifetechnologies)またはOptimumGeneTMソフトウェア(GenScript)などのいくつかのソフトウェアプログラムが開発されている。換言すれば、目的のタンパク質をコードする外因性遺伝子は、好ましくは、特定の微生物中の発現のためにコドン最適化される。
【0053】
本発明の方法および微生物において、組換え微生物は、親菌株に関してさらなる組換えを含み得る。非限定的な例として、組換え微生物はグリセロールを含む培養培地からの増加したPDO生成に前もって適合させていてもよい。グリセロール代謝をPDO生成に向ける方法は、当技術分野で公知である(例えば、国際公開第2006/128381号、Gonzalez-Pajueloら、2006年を参照されたい)。
【0054】
好ましい実施態様において、組換え微生物がC.アセトブチリカムである場合、グリセロールを高含量で有する培養培地からPDOの増殖および生成を行うためには、前もって適合を行うこと、より好ましくは嫌気性連続プロセスによって適合を行うことが好ましく、PDO生成の流束が増加したことが示される。菌株C.アセトブチリカムの適合は、当業者に周知の技術である嫌気性連続プロセスによって実施されることが好ましい。当業者に知られたこの方法の詳細において、例えば流加培地を発酵槽に連続的に添加し、微生物を含む等量の変換された栄養溶液を同時にシステムから除去することを挙げることができる。栄養素交換の率は希釈率として表される。それ故に希釈率は、培養培地に適用され、微生物の最大増殖速度が考慮に入れられ、培養培地の摂取および回収の速度に影響を与えるものである。
【0055】
C.アセトブチリカム菌株は、ビタミンB12非依存性PDO経路に関与する酵素をコードする、C.ブチリカム由来のPDOオペロンの余分なコピーを導入することによって適合され得る。特に、C.ブチリカム由来のPDOオペロンは、プラスミドによって過剰発現され得るか、または適合される菌株C.アセトブチリカムの染色体に組み込まれ得る。例えば、pSPD5プラスミドは、C.アセトブチリカムにおけるPDOオペロンの過剰発現のために使用することができる(Gonzalez Pajueloら、2006)。
【0056】
代替的には、または追加的には、当該組換え微生物は、国際公開第2010/128070号に開示されるような選択圧培養プロセスによって、グリセロールを高含量で有する、具体的には工業用グリセリンに由来するグリセロールを高濃度で有する培養培地中で増殖するように適合され得る(特に、7頁、10行~8頁、23行ならびに実施例2、3および4を参照のこと)。
【0057】
唯一の炭素源としてグリセロールからPDOを生成するために遺伝子組換えが行われたC.アセトブチリカムの菌株は、当分野で公知であり、特に出願WO2001/04324およびWO2010/128070に開示されている。最後に、C.アセトブチリカム菌株は、国際公開第2012/062832号に記載されるプロセスによって前もって適合され得る。
【0058】
非限定的な例として、適合させる菌株C.アセトブチリカムは、90~120g/Lのグリセロール、好ましくは約105g/Lの原料グリセロールを含有する流加培地を用いて連続培養で培養することができる。生成微生物の当該「適合」は、工業用グリセリンを高含量で有する培養培地上で低い希釈率で微生物を培養し、工業用グリセリンに由来するグリセロールを高濃度で有する培養培地上で増殖し得るように適合させた微生物を選択することによって得られる。0.005~0.02h-1の希釈率は「低い希釈率」に相当し、0.02~0.1h-1の希釈率は一般的な希釈率に相当する。非限定的な例として、適合させる菌株C.アセトブチリカムは、24時間~10日、好ましくは2日超、より好ましくは約8日の範囲の期間にわたって低い希釈率で培養され得る。希釈率は一般に0.005~0.1h-1、好ましくは0.005~0.02h-1である。希釈速度は、適合法の間に、段階的に、0.005~0.02h-1の間に含まれる第一段階と、希釈速度が最大0.1h-1まで、より好ましくは最大0.06h-1まで、一層より好ましくは最大0.07h-1まで増加される第二段階とを用いて変更し得る。
【0059】
本発明の特定の実施態様において、適合させる菌株C.アセトブチリカムは、90~120g/Lのグリセロール、好ましくは約105g/Lの原料グリセロールを含有する流加培地を用いて、0.005~0.02h-1、好ましくは0.02h-1の低い希釈率にて連続培養で培養される。最大10日まで、好ましくは5~8日の期間にわたって、菌株C.アセトブチリカムは、流加培地中に存在する高いグリセリン濃度に適合され、希釈率は最大0.1h-1まで、好ましくは0.07h-1まで増加させることができる。
【0060】
「培養培地」とは、組換え微生物の増殖およびジオール生成に適切な培養培地をいい、この培養培地は、グリセロールを含み、このグリセロールは、培養培地中に存在する唯一の炭素源であってもよいし、そうでなくてもよい。培養培地は、有機窒素源を含んでいても、含んでいなくてもよい。窒素は、植物および動物の両方における成長および繁殖に必須である天然に発生する元素である。それはアミノ酸ならびに多くの他の有機化合物および無機化合物において見出される。「有機窒素」は、本発明によれば、生体から得られる有機化合物を含む窒素を意味する。細菌培養のための有機窒素の通常の供給源には、酵母抽出物が含まれる。
【0061】
グリセロールは、培養培地中に存在する唯一の炭素源であり得る。 あるいは、1つ以上のさらなる炭素源(例えば、グルコース)が、培養培地中に存在し得る。 培養培地中に存在するグリセロールは、純粋グリセリンまたは工業用グリセリンであってもよい。
【0062】
培養培地は酵母抽出物を含まないことが好ましい。一層より好ましくは、培養培地は有機窒素源を一切含まない。好ましくは、グリセロールは培養培地中に存在する唯一の炭素源である。
【0063】
「グリセロール」という用語は、本明細書では「グリセリン」という用語と互換して使用することができ、純粋グリセリンおよび/または工業用グリセリンを含み得る。工業用グリセリンは、バイオディーゼル生産から(例えば、短鎖アルコールによるグリセリドのエステル交換から)バイオ製品として得ることができる。あるいは、工業用グリセリンは例えば鹸化、エステル交換および/または加水分解反応によって、植物または動物の油脂から得てもよい。
【0064】
「純粋グリセロール」とは、純度として95重量%を超えるグリセロールを有するグリセロール生成物をいう。場合によっては、純粋グリセロールは、97%を超える、さらには99%または99.2%を超える純度を有し得る。グリセロール生成物の残りは、好ましくは水(例えば、約3~5重量%)からなる。純粋なグリセロールは、残留不純物が非常に少ない。純粋なグリセロールは、特に1つ以上のプロセス(例えば、蒸留)を使用する精製によって得られ得る。
【0065】
「工業用グリセリン」とは、実質的に精製を行うことなく工業プロセスから得られたグリセロール生成物を指す。工業用グリセリンは、「原料グリセリン(raw glycerine)」、「原料グリセロール(raw glycerol)」、「粗グリセロール(crude glycerol)」、または「工業用グリセロール」とも示し得る。工業用グリセリンは、一般に5~95重量%のグリセロール、特に40~90重量%のグリセロール、より具体的には60~90重量%のグリセロール、一層より具体的には約65~85重量%のグリセロール、または約70~85重量%のグリセロールを含む。工業用グリセリンの残りの画分は、水分とも呼ばれる水、無機塩、および他の非グリセロール有機化合物およびグリセリドを含む有機物非グリセロール(MONG)を含み得る。特に、工業用グリセリンは、不純物、例えばアルコール(例えばメタノール)、無機塩、未反応のモノ-、ジ-およびトリ-アシルグリセロール、メチルエステルおよび1種以上の脂肪酸(例えばパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、リノール酸およびアラキジン酸)を更に含む。
【0066】
好ましい実施態様によれば、工業用グリセリンは、好ましくは、約60重量%、70重量%または80重量%を超えるグリセロールと、約15重量%未満の水および不純物とを含有する。好ましい実施態様によれば、無機塩の濃度は10%未満、好ましくは5%未満である。好ましい実施態様によれば、MONGに含まれる脂肪酸の濃度は、分析証明書において、20%未満、好ましくは10%未満、さらにより好ましくは5%未満である。別の好ましい実施態様によれば、脂肪酸またはMONGの濃度は、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、一層より好ましくは5~10%の間である。
【0067】
工業用グリセリンが副産物として得られる工業的方法は、とりわけ、脂肪および油、特に植物または動物由来の脂肪および油を、洗剤または潤滑剤などの工業製品に加工する生成方法である。このような生成方法においては、工業用グリセリンは副産物として考えられている。工業用グリセリンの正確な組成は、最初のグリセロール源(例えば、動物性脂肪または植物性油、例えば、ヒマワリ油、カノーラ油、ダイズ油、カラシナ種子など)、ならびにグリセロール抽出および下流の処理、例えば、バイオディーゼル生産において使用される方法および条件に依存する。
【0068】
特定の実施態様において、工業用グリセリンは、バイオディーゼル生産からの副産物である。好ましくは、工業用グリセリンは、バイオディーゼル生産から得られる既知のグリセリンの不純物を含み、これには約80~85%のグリセロールと、塩、水、およびいくつかの他の有機化合物(すなわち、MONG)が含まれ、これには、例えば、上記に列挙されるようなものの脂肪酸などの化合物が含まれる。バイオディーゼル生産から得られた工業用グリセリンは、さらなる精製工程に供されていない。
【0069】
本明細書で使用される「高いグリセロール含量」または「高いグリセロール濃度」という用語は、グリセロール濃度として培養培地中、90g/l以上のグリセロールを指す。好ましい実施態様において培養培地は、グリセロールを90~120g/L、好ましくは105~110g/L、より好ましくは約105g/Lまたは109g/Lの濃度で含む。
【0070】
いくつかの場合において、いわゆる微生物共同体において、少なくとも1つの他の微生物の存在下で組換え微生物を共培養することによって、PDO生成はさらに増加し得、かつ/または残留グリセロールレベルはさらに減少し得る。「微生物共同体」または「共培養」という用語は、発酵プロセスにおいて二種以上の微生物種の使用を示すために互換的に使用される。好ましくは、共培養に使用される1つ以上のさらなる菌株は、グリセロールを発酵しないか、またはPDOを生成しない。
【0071】
非限定的な例として、微生物共同体は、少なくとも二種のクロストリジウム菌株を含み得、例えば、一種のC.アセトブチリカム菌株およびC.スポロゲネスの菌株および/またはC.スフェノイドの菌株などのクロストリジウム属の菌株の中から選択した少なくとも一種の菌株を含み得る。さらなる例として、微生物共同体は、少なくとも三種のクロストリジウム菌株を含み得、例えば、少なくとも一種のC.アセトブチリカム菌株、少なくとも一種のC.スポロゲネスの菌株、および少なくとも一種のC.スフェノイドの菌株を含み得る。上記のいずれの場合においても、微生物共同体の大部分はC.アセトブチリカム種に属し得る。例えば、微生物共同体は、培養物中に含まれる細胞の全体が100%に相当すると見做して、85%超のC.アセトブチリカム、0.001%~0.2%のC.スポロゲネスおよび/または0.1%~15%のC.スフェノイドを含み得る。特に、微生物共同体は、85%~99.8%のC.アセトブチリカム、0.001%~0.15%のC.スポロゲネスおよび/または0.2%~15%のC.スフェノイド、または90%~99.8%のC.アセトブチリカム、0.002%~0.13%のC.スポロゲネスおよび/または0.2%~10%のC.スフェノイドを含み得る。
【0072】
従って、好ましい実施態様において、本発明の微生物は微生物共同体中で共培養されるものである。当該微生物共同体は、好ましくは、少なくとも一種、好ましくは二種の他の微生物と共培養された、本明細書に開示された、または本明細書に開示された本発明の方法に記載された組換え微生物を含む。特に好ましい実施態様によれば、組換え微生物は少なくとも一種のC.スフェノイド菌株、より好ましくは少なくとも一種のC.スフェノイド菌株および少なくとも一種のC.スポロゲネス菌株と共培養される。好ましくは、本発明の組換え微生物は、C.アセトブチリカム菌株、一層より好ましくは、工業用グリセリンに含まれるグリセロールを高含量で含む、特にグリセロールを高濃度で含む培養培地からのPDOの増殖および生成に適合されたものである。
【0073】
好ましい実施態様において、本発明の微生物共同体は、培養物中に含まれる細胞の全体が100%に相当すると見做して、85%超のC.アセトブチリカム、0.001%~0.2%のC.スポロゲネス、および/または0.1%~15%のC.スフェノイドを含む。より好ましい実施態様において、微生物共同体は85%~99.8%のC.アセトブチリカム、0.001%~0.15%のC.スポロゲネスおよび/または0.2%~15%のC.スフェノイドを含む。一層より好ましい実施態様において、微生物共同体は、90%~99.8%のC.アセトブチリカム、0.002%~0.13%のC.スポロゲネスおよび/または0.2%~10%のC.スフェノイドを含む。
【0074】
本発明の方法において、PDOの生成は上記の本発明の組換え微生物または微生物共同体を、唯一の炭素源としてグリセロールを含む培養培地中で培養することによる嫌気性連続発酵によって行われ、当該培養培地は、有機窒素を添加しない最小限の培養培地である。
【0075】
「最小限の培養培地」という用語は、有機体がグリセリン溶液とは別に増殖する、化学的に定義された組成物を含む、厳密に無機質の(mineral)培養培地を意味する。このような培養培地は、当分野において、特に国際公開第2010/128070号および国際公開第2011/042434号に開示されていて、これらの内容は、その全体を参照することにより本明細書中に組み込まれるものとする。
【0076】
好ましい実施態様においては、このようにして本発明による方法から得られたPDOをさらに精製する。発酵培養培地からPDOを回収し、最終的に精製する方法は当業者に公知である。PDOは蒸留によって単離することができる。 ほとんどの実施態様において、PDOは酢酸などの副産物と共に発酵培養培地から蒸留され、次いで公知の方法によってさらに精製される。特に好ましい精製方法は、特許出願、国際公開第2009/068110号および国際公開第2010/037843号に開示されており、その内容は、その全体を参照することにより本明細書中に組み込まれるものとする。
【0077】
連続発酵法は当業者に公知である。発酵プロセスは、一般に、少なくとも工業用グリセリン、バイオディーゼル生産からの副産物、および必要に応じて代謝産物の生成のための補基質を含有する、使用される細菌に適合された既知の規定された組成の無機培養培地を有する反応器中で行われる。
【0078】
本発明のこの方法は、好ましくは連続プロセスで実現される。当業者であれば、これらの実験条件のそれぞれを管理することができ、その一般的な知識に従って本発明の微生物の培養条件を定義することができる。特に、クロストリジウムとして、C.アセトブチリカムは、20℃~60℃、好ましくは25℃~40℃の温度で発酵する。
【0079】
本発明の特定の実施態様において、菌株C.アセトブチリカムDG1pSPD5 130P型または008P型を、約105g/Lまたは109g/Lの原料グリセロールを含む流加培地を用いて、0.035~0.08h-1、好ましくは0.07h-1の希釈率にて連続培養で培養する(実施例1および2を参照のこと)。当該方法は、その異なる実施態様において、少なくとも52g/LのPDOの生成をもたらし、収率は0.4~0.6g/gであり、生成率は0.7h-1の希釈率で2.9g/L/hより高い。好ましくは、収率は0.4~0.5g/gであり、生成率は3.6g/L/hより高く、さらに好ましくは3.65g/L/hより高い。本発明の方法は、特定の実施態様において、3.7g/L未満の残留グリセロールレベルをさらにもたらす。好ましくは、残留グリセロールレベルは約3.6g/Lである。
【図面の簡単な説明】
【0080】
図1図1は、原料グリセリンに008P型菌株を適合させることによるクロストリジウム・アセトブチリカムDG1pSPD5 130P型菌株の取得を示す図である。連続培養のOD620nm(OD単位またはODU、四角)、残留グリセロール(g/L;斜線)、PDO濃度(g/L;三角)および流加流速(mL/h;丸)の動態を、培養期間(日数;d)の関数として示す。
図2図2は、C.アセトブチリカムにおけるhcpRおよびfrdX遺伝子の染色体構成を示す図である。遺伝子hcpRおよびfrdXは、2つの遺伝子の間に位置する123bpの遺伝子間領域を有する二方向性遺伝子対として組織化される。C.アセトブチリカムATCC824ゲノム(NCBI参照配列:NC_003030.1)内のヌクレオチド位置を示す。
図3図3は定量的PCRによるhcpRおよびfrdX遺伝子の過剰発現を示す図である。hcpRおよびfrdXの両方が、qRT-PCRによって決定されるように、130P菌株において親菌株008P型と比較して過剰発現した。黒色バー:008P型;灰色バー:130P型。
【実施例
【0081】
本発明は、以下の実施例においてさらに定義される。これらの実施例は、本発明の好ましい実施態様を示す一方で、例示のためにのみ与えられていることを理解するべきである。当業者であれば上記の開示およびこれらの実施例から、本発明の本質的な手段を修正することなく、種々の使用および条件に適合させるために本発明に種々の変更を加えることができる。
【0082】
実施例1:クロストリジウム・アセトブチリカムDG1(pSPD5)の原料工業用グリセロール上での連続培養および130P型微生物の取得
細菌株:
-008P型:特許出願国際公開第2010/128070号に記載されているように、高い原料グリセリン濃度に適合させたC.アセトブチリカム菌株DG1pSPD5。
-タイプ130P型:連続培養形態Cから生成されたC.アセトブチリカム菌株DG1pSPD5は、本明細書中に記載されるように、高い原料工業グリセリン濃度でC.アセトブチリカム菌株DG1pSPD5 008P型を生成し、かつhcpRおよびfrdX遺伝子を過剰発現する。
【0083】
クロストリジウムバッチ培養に使用した合成培地は、水道水1リットル当たりに、グリセロール、30g;KHPO、0.5g;KHPO、0.5g;MgSO、7HO、0.2g;CoCl、6HO、0.01g;HSO、0.1ml;NHCl、1.5g;ビオチン、0.16mg;p-アミノ安息香酸、32mg;FeSO、7HO、0.028g含有していた。NHOH 3Nで培地のpHを6.3に調整した。SDS Carlo_Erbaから購入した市販のグリセロール(純度99%)をバッチ培養に使用した。連続培養のための流加培地は、水道水1リットルあたりに次を含有していた:原料グリセリン由来のグリセロール、105g;KHPO、0.50g;KHPO、0.50g;MgSO、7HO、0.2g;NHCl、1.5g;CoCl、6HO、0.026g;ビオチン、0.16mg;p-アミノ安息香酸、32mg;FeSO、7HO、0.04g;消泡剤、0.05ml;ZnSO、7HO、8mg;CuCl、2HO、4mg、MnSO、HO、0.04mg;HBO、2mg;NaMoO、2HO、0.8mg。HSO 96%で培地のpHを3.5~4に調節した。
【0084】
バイオディーゼルをエステル交換するためのプロセスからの原料グリセリンは、二社の異なる供給業者によって提供され、以下の組成を有していた:
-ADM(スイス、ロール)製(植物油を使用;純度80.9%;水分12.6%;MONG0.39%;灰分6.2%);
-Greenergy(英国、ロンドン)製(調理油を使用;精製76.5%;水分10.2%;MONG7.1%;灰分6.3%)。
【0085】
場合により、これらのグリセリンには酸性化による前処理が行われた。
【0086】
純度およびMONG組成物は、微生物上のグリセリンに対して毒性を発生させる。Greenergy(英国、ロンドン)のグリセリンは、MONGの濃度が高いために、ADM(スイス、ロール)のグリセリンよりも純度も低く、より汚染されているので微生物に対して毒性が高い。実際、Greenergy(英国、ロンドン)のグリセリン中のMONG濃度は5%を超える。
【0087】
以下の実施例は、より粗粒のグリセリン(ADMからGreenergyまで)に008P型菌株を適合させて、130P型と命名された新たな菌株を得ることを示し、これは、あまり精製されていない工業用グリセリンで増殖し、PDOを生成することができる。あまり精製されていない工業用グリセリンは発酵プロセスにとってより安価な原料であるため、この適合は非常に有利である。
【0088】
実験設定:
許容容量(working volume)が2000mlである5lのTrytonバイオリアクター(フランス、Pierre Guerin)中で連続培養を行った。培養容量を、培養レベルの自動調節により2000mlで一定に保った。培養物を200RPMで撹拌し、温度を35℃に設定し、5.5NのNHOHを自動添加することによりpHを6.5で一定に維持した。嫌気性条件を作り出すために、容器中の滅菌培地を、無菌のO非含有窒素で60℃にて1時間フラッシュし、35℃に達するまで(2時間フラッシュする)再度フラッシュした。バイオリアクターのガス出口は、ピロガロール配置によって酸素から保護した(Vasdenlosら、1994)。滅菌後、流加培地をまた、室温に達するまで滅菌O非含有窒素でフラッシュし、Oの進入を回避するために窒素下で保持した。
【0089】
分析手順:
細胞濃度を620nm(OD620nm)で濁度測定し、細胞乾燥重量と相関させ、これを直接測定した。グリセロール、PDO、エタノール、ラクテート、酢酸および酪酸の濃度を、HPLC分析によって決定した。分離はBiorad Aminex HPX-87Hカラムで行い、検出は屈折率により行った。操作条件は以下の通りであった:移動相硫酸0.5mM;流速0.5ml/分、温度、25℃。
【0090】
バッチ培養および連続培養のプロセスおよび結果
100mlフラスコ中で合成培地(バッチ培養について上述したものと同じであるが、2.2g/Lの酢酸および23.03g/LのMOPSを添加したもの)上で増殖させた培養物であって、指数増殖期の終わりに採取したものを接種物(5%v/v)として使用した。
【0091】
まず培養物をバッチモードで増殖させた。本発明者らは、指数増殖期の初期に、グリセロールのパルスを流加培地(feed medium)で行った(流加培養について記載したのと同じ)。原料グリセリンからのグリセロールを3時間静的流速で添加した(すなわち、グリセロールを18g/L添加)。次いで、バッチモードで増殖を継続し、対数増殖期の終了前に、ADM(スイス、ロール)のみによって提供された原料グリセリン由来のグリセロール105g/Lを含有する流加培地の0.035h-1の希釈速度で連続流加を開始した。図1に見られるように、0.035h-1の希釈率にて3日後グリセロールの蓄積が開始し、6.5の滞留時間(RT、以下に示される式に従って計算される)で46.6g/Lに達し、これは残留グリセリンの最初のピークに対応するものであった。この蓄積は、PDO生成(52g/Lの代わりに最大31g/L)およびバイオマス生成(5.6ODUの代わりに1.8ODU)の減少と結びついた。この蓄積に続いて、D=0.035h-1の希釈率にて9RT後の急速な再消費が行われ、残留グリセロールは2.9g/Lで低下した。この時点(接種から12日後)で、希釈率は5日で0.035h-1から0.070h-1に増加した。D=0.070h-1の希釈率で9RT後、5.5±1.1g/Lのグリセロールおよび51.6±0.7g/LのPDOで性能が安定した。
【0092】
この安定化後(接種から28日後(図1参照))、フィードの原料グリセリンを、ADM(50%;スイス、ロール)およびGreenergy(50%;英国、ロンドン)が提供する原料グリセリンの混合物に変更したことてMONGのレベルおよび微生物に対するグリセリン毒性が増加した。
【0093】
このフィード組成の変更は、13日間にわたってグリセロールの蓄積(最大35.1g/L)およびPDO生成の低下(最小37.4g/L)のサイクルを誘発した。重要な因子(OD、残留グリセロールおよびPDO濃度)によってこの培養物の安定化をモニタリングし、そして45日目に新たに適合させた菌株130Pが保存されていることを同定した(図1を参照のこと)。
【0094】
この段階で、新しい菌株を配列決定し、008Pの配列と比較した。本発明者らは、以下の実施例3に記載される遺伝子間変異を同定した。
【0095】
得られた130P型菌株の性能を以下の表2に示す。
【0096】
希釈率からの滞留時間の計算式
【数1】
【0097】
【表2】
【0098】
実施例2:高い原料グリセリン濃度を用いた連続培養によるケモスタットでのC.アセトブチリカムDG1pSPD5 008P型および130P型菌株のPDO生成率能
クロストリジウムのバッチ培養に使用した合成培地には、水道水1リットルあたりに、グリセロール、30g;KHPO、0.5g;KHPO、0.5g;MgSO、7HO、0.2g;CoCl、6HO、0.01g;HSO、0.1ml;NHCl、1.5g;ビオチン、0.16mg;p-アミノ安息香酸、32mg;およびFeSO、7HO、0.028gが含まれていた。3N NHOHで培地のpHを6.3に調節した。SDS Carlo_Erbaから購入した市販のグリセロール(純度99%)をバッチ培養に使用した。連続培養のための流加培地には、水道水1リットルあたりに、以下が含まれていた:原料グリセリン由来のグリセロール、105g;KHPO、0.50g;KHPO、0.50g;MgSO、7HO、0.2g;NHCl、0~1.5g;CoCl、6HO、0.013~0.026g;ビオチン、0.08~0.16mg;p-アミノ安息香酸、16~32mg;FeSO、7HO、0.04g;消泡剤、0.05ml;ZnSO、7HO、8mg;Cucl、2HO、4mg、MnSO、HO、0.02g~0.04g;HBO、0~2mg;NaMoO、2HO、0~0.8mg。96%HSOで培地のpHを3.5~4に調節した。
【0099】
バイオディーゼルをエステル交換するためのプロセスからの原料グリセリンは、いくつかの異なる供給源から得られ、以下の組成を有していた:
-Novance(フランス、コンピエーヌ)(植物油を使用;純度82~85%;水分8~13%;MONG0.1~0.3%;灰分1.4%);
-Greenergyグリセリンとの混合物で使用するADM(スイス、ロール)(植物性油を使用;純度80.9%;水分12.6%;MONG0.39%;灰分6.2%);
-ADMグリセリンとの混合物で使用するGreenergy(英国、ロンドン)(調理油を使用;純度76.5%;水分10.2%;MONG7.1%;灰分6.3%)。
【0100】
場合により、これらのグリセリンには酸性化による前処理が行われた。
【0101】
上記実施例1で説明したように、純度およびMONG組成物は、微生物上のグリセリンに対して毒性を発生させる。
【0102】
実験の設定は、上記の実施例1に記載の通りである。
【0103】
バッチ培養および連続培養のプロセス
100mlフラスコ中で合成培地(バッチ培養について上述したものと同じであるが、酢酸、2.2g/LおよびMOPS、23.03g/Lを添加したもの)上で増殖させた培養物であって、対数増殖期の終わりに採取したものを接種物(5%v/v)として使用した。
【0104】
培養物をまずバッチモードで増殖させた。初期の指数増殖期において、本発明者らは、流加培地でグリセロールのパルスを行った(流加培養について記載したものと同一)。原料グリセリンからのグリセロールを静的流速で3時間添加した(すなわち、18g/Lのグリセロールの添加)。次いで、バッチモードで増殖を継続し、対数増殖期の終了前に、連続流加を0.035h-1の希釈率で開始した。バイオリアクターの接種から5~8日後に、5日間で希釈率を0.035h-1から0.070h-1に増加させた。その後、培養物の安定化に続いて、分析手順の実施例1に記載のHPLCプロトコルを使用してPDOの生成およびグリセロールの消費を行った。
【0105】
表3:連続培養におけるC.アセトブチリカム008P型および130P型菌株の性能
フィード培地には0.070h-1の希釈で原料グリセリンからのグリセロール105g/Lが含まれていた。それぞれ8および17ケモスタットから平均データをとった。培養に使用されるグリセリンの提供者は、各菌株について示される。 Novance(フランス、コンピエーヌ)は、比較的クリーンで純粋なグリセリンに相当するが、ADM(スイス、ロール)およびGreenergy(英国、ロンドン)は、より純度が低く、より多くの汚染物質を含むグリセリンを提供するので微生物に対してより毒性である。
【0106】
【表3】
【0107】
これらの結果から示されるのは、hcpRおよびfrdX遺伝子の過剰発現を誘発する遺伝子間変異(この場合、C.アセトブチリカムATCC824に従う染色体上の1014234~1014240位のヌクレオチド間)を有する130P型菌株が、驚くべきことにその親菌株である008P型よりも、より高い力価および収率、およびより低い残留グリセリンでより良好なPDO生成を示したことである。
【0108】
これらの結果はまた、遺伝子組換えを保有しない母菌株008P型よりもはるかに多くのPDOを増殖および生成した菌株130P型の大きな利点を示す(表3)。実際、全ての重要な工業的パラメータ(PDOのより高い力価および収率、ならびにより少ない残留グリセロール)は、008P型菌株で通常使用されるよりも毒性の高い工業用グリセリンを用いた培養条件での008Pと比較した場合、130P型に対して改善された。
【0109】
したがって、hcpRおよびfrdX遺伝子の過剰発現の際に、C.アセトブチリカムDG1pSPD5菌株は、より多くのPDOを生成し、より頑強であるため工業プロセスにより適している。
【0110】
実施例3:遺伝子間変異の説明
予期せぬことに、CA_C0884とCA_C0885遺伝子との間の遺伝子間領域における単一ヌクレオチドの挿入(図2、配列番号15に示される)は、PDOの生成およびグリセリン中に存在する不純物MONGに対する耐性を改善する効果を有していた。
【0111】
ヌクレオチド挿入の検出は、オリゴヌクレオチド遺伝子間領域フォワードプライマー(配列番号:18)および遺伝子間領域リバースプライマー(配列番号:19)を用いた、クロストリジウム・アセトブチリカムDG1pSPD5 130P型のDNAと比較した、クロストリジウム・アセトブチリカムDG1pSPD5 008P型のDNA上で増幅されたPCR断片の塩基配列決定により行われた。「A」挿入変異は、親型配列(配列番号:16)と比較して、配列番号17に記載の「A」ヌクレオチドの繰り返し領域におけるCA_C0884とCA_C0885遺伝子との間の遺伝子間領域において同定された。遺伝子CA_C0884hcpR(配列番号:1)は酸化窒素応答性転写調節因子(配列番号:2)をコードし、遺伝子CA_C0885frdX(配列番号:3)はフェレドキシン3様タンパク質(配列番号:4)をコードする。
【0112】
実施例4:遺伝子間ヌクレオチド挿入を伴うまたは伴わないCA_C0884およびCA_C0885遺伝子の発現
RNA単離
RNAを2mlのフラスコ培養物から抽出し、フェノール(5%)/エタノール(95%)の6ml混合物に移し、3000gで、4℃にて5分間遠心分離を行った。ペレットを100μLリゾチーム100mg/mL中で均一化し、37℃で30分間インキュベートを行い、Maxwell RSC装置(Promega)中でMaxwell RSC Simply RNA Tissueキット(Promega)を用いてRNAを抽出した。
【0113】
定量的逆転写PCR(qRT-PCR)による特定のリボ核酸配列の定量化
RNAはPCR鋳型としての機能を果たすことができないことから、qRT-PCRによる遺伝子発現プロファイリングの第一工程は、RNA鋳型のcDNAへの逆転写、続いてPCR反応におけるその指数関数的増幅を行うことである。
【0114】
0.2μgの全RNAを用いて逆転写を行い、ランダムプライマーおよびオリゴdTプライマーの存在においてSuperScript ViloIV(Invitrogen)を用いてcDNAに逆転写した。
【0115】
逆転写酵素反応は、総量20μlで行った。反応の完了後、混合物を85℃に保持した。
【0116】
試料中の相対的定量を、SsoAdvanced Universal SYBR Green Supermix(フランス、ミトリー=モリー、Bio-rad)を用いた定量的PCRによって決定した。CFX96TMリアルタイムシステム(Bio-Rad)を備えたBio-Rad C1000TMサーマルサイクラーで定量的PCRを行った。
【0117】
PCR反応混合物は、1×Sso Advanced Universal SYBR Green Supermix(Bio-Rad)、6μLのフォワード(F)およびリバース(R)プライマーの混合物(1μM)、2μLの希釈サンプルおよびヌクレアーゼを含まない水からなり、最終容量は20μLに達した。増幅を、以下の熱サイクルプログラムに従って達成した:98℃で2分間の最初の融解(1サイクル)、続いて98℃で10秒間の融解、プライマーのアニーリングおよび60℃で30秒間の伸長の40サイクル(融解曲線65~95℃、5秒ごとに0.5℃の増加)。各実験について、CFX ManagerTM3.1ソフトウェア(Bio-rad)を使用してqPCR反応の指数期の間に閾値レベル(Ct)を設定した。
【0118】
各遺伝子の発現レベルを、定量的逆転写PCR(qRT-PCR)によって決定した。使用したCA_C0884遺伝子に基づくプライマーは、CA_C0884遺伝子に基づくフォワードプライマー(配列番号:20)およびCA_C0884遺伝子に基づくリバースプライマー(配列番号:21)であり、使用したCA_C0885遺伝子に基づくプライマーは、CA_C0885遺伝子に基づくフォワードプライマー(配列番号:22)およびCA_C0885遺伝子に基づくリバースプライマー(配列番号:23)であった。ハウスキーピング遺伝子C1628ジャイレースサブユニットA(gyrA:CA_C1628、CA_DNA遺伝子に基づく順方向プライマー(配列番号:24)およびCA_C1628遺伝子に基づく逆方向プライマー(配列番号:25)を使用したプライマー)に対する各標的遺伝子の量を、比較閾値サイクル(Ct)法を使用して、各試料について決定した。比較Ct法を使用するために、ATCC824ゲノムDNA鋳型の連続希釈を使用して、ほぼ等しい効率のプライマーを確認した。
【0119】
両遺伝子CA_C0884およびCA_C0885の相対的発現レベルは、親型遺伝子間領域を有する菌株008Pと比較して、遺伝子間変異を有する菌株130Pにおいて顕著に高かった(図3)。
【0120】
これらのデータは、PDOを生成する組換えクロストリジウム・アセトブチリカムDG1pSPD5菌株のCA_C0884とCA_C0885との間の遺伝子間領域に生じるヌクレオチド挿入が、2つの前記遺伝子hcpRおよびfrdXの過剰発現を可能にすることを示す。この変異の存在下では、PDO生成率能の特徴が改善され、この菌株は、工業用グリセリン中に存在する汚れた高含量のMONG化合物に対してはるかに耐性である。
【0121】
【表4】
図1
図2
図3
【配列表】
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