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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】顆粒剤を調製する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/16 20060101AFI20221114BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20221114BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20221114BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20221114BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20221114BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20221114BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20221114BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20221114BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20221114BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20221114BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20221114BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20221114BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
A61K9/16
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/26
A61K47/38
A61K47/12
A61K47/32
A61K47/02
A61K31/192
A61K31/137
A61K31/506
A61K9/20
A61K9/48
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020511782
(86)(22)【出願日】2018-08-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 IB2018056629
(87)【国際公開番号】W WO2019043614
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-06-21
(31)【優先権主張番号】17188800.1
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】デ ワード,ハンス
(72)【発明者】
【氏名】クラム,マーカス
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,エィドリアン
(72)【発明者】
【氏名】テイルマイト,ジュリエン
(72)【発明者】
【氏名】モール,クラウス-ピーター
【審査官】山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02540400(GB,A)
【文献】特表2016-508124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00
A61K 47/00
A61K 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顆粒剤を調製する方法であって、
- 液体中に分散させた固体API粉末粒子を含有するスラリーを調製することと、
- 前記スラリーを連続造粒機(16)に供給することと、
- 前記造粒機(16)内で前記スラリーを乾燥原料粉末と混合し、スラリー/原料粉末混合物を生成することと、
- 前記造粒機(16)内で生成した前記スラリー/原料粉末混合物を乾燥させ、前記固体API粒子と前記原料粉末とを含有する顆粒剤を得ることと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記乾燥原料粉末は第1の供給ポート(18)において前記造粒機(16)に供給され、前記スラリーは、前記第1の供給ポート(18)の下流に配置された第2の供給ポート(26)において前記造粒機(16)に供給され、前記第2の供給ポート(26)は供給ノズル(41)を特に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記造粒機(16)は押出機の形態、より好ましくは二軸押出機の形態で設計されている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの押出機スクリュー(24)は、
- 前記乾燥原料粉末を押出機ハウジング(36)内に搬送するための原料粉末供給領域(34)であって、前記押出機スクリュー(24)の前記原料粉末供給領域(34)は第1のピッチ(P1)を有する、原料粉末供給領域(34)、
- 前記乾燥原料粉末を搬送し、且つ高密度化するための第1の圧縮領域(38)であって、前記第1の圧縮領域(38)は特に、前記原料粉末供給領域(34)の下流に配置されており、前記第1のピッチ(P1)よりも小さい第2のピッチ(P2)を有する、第1の圧縮領域(38)、
- 前記スラリーを前記乾燥原料粉末と混練するための第1の造粒領域(40)であって、前記第1の造粒領域(40)は特に、前記第1の圧縮領域(38)の下流に配置されている、第1の造粒領域(40)、
- 前記スラリー/原料粉末混合物を搬送し、且つ高密度化するための第2の圧縮領域(42)であって、前記第2の圧縮領域(42)は特に、前記第1の造粒領域(40)の下流に配置されている、第2の圧縮領域(42)、
- 前記スラリーを前記乾燥原料粉末と混練するための第2の造粒領域(44)であって、前記第2の造粒領域(44)は特に、前記第2の圧縮領域(42)の下流に配置されている、第2の造粒領域(44)、
- 前記スラリー/原料粉末混合物を搬送し、且つ高密度化するための第3の圧縮領域(46)であって、前記第3の圧縮領域(46)は特に、前記第2の造粒領域(44)の下流に配置されている、第3の圧縮領域(46)、
- 前記スラリー/原料粉末混合物を均質化するための均質化領域(48)であって、前記均質化用領域(48)は特に、前記第3の圧縮領域(46)の下流に配置されている、均質化領域(48)、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記スラリー中に含有される前記液体は、先行するAPI合成工程において前記固体API粉末粒子を合成するために使用された合成液、又は先行する洗浄工程において前記固体API粉末粒子を洗浄するために使用された洗浄液を含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記スラリー中に含有される前記液体は、水及び/又は少なくとも1種の有機溶媒、特に、エタノール、メタノール、イソプロパノール、若しくはエチルアセテートを含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記乾燥原料粉末は結合剤を含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記乾燥原料粉末は結合剤からなる、又は前記乾燥原料粉末は、結合剤を含有する粉末プレブレンドからなる、及び/又は前記乾燥原料粉末は固体API粉末粒子を含有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記乾燥原料粉末は、乳糖、セルロース、特に、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ポリビニルピロリドン、及びリン酸カルシウムのうちの少なくとも1つを含有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記スラリーは、定量ポンプ(28)を用いて前記造粒機(16)に供給される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記乾燥原料粉末は、前記粉末投入デバイス(20)のリザーバ(22)内に収容された前記乾燥原料粉末の予備量の重量変化に従って制御される粉末投入デバイス(20)を用いて前記造粒機(16)に供給される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記APIは、イブプロフェン、ルメファントリン、及びLDK378のうちの少なくとも1つを含有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記スラリー/原料粉末混合物は、連続又は半連続乾燥機(50)、特に、流動床乾燥機を用いて乾燥させる、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
固体経口投与形態を製造する方法であって、
- 請求項1~14のいずれか一項に記載の方法に従い顆粒剤を調製することと、
- 錠剤を形成するために前記顆粒剤を圧縮すること又は前記顆粒剤をカプセルに充填することと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顆粒剤を調製する方法に関する。更に、本発明は、この種の顆粒剤を含む固体経口投与形態を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
経口投与用の医薬品有効成分(API:active pharmaceutical ingredients)は、通常、液体中でいくつかの合成工程及び洗浄工程を経て、最後に、結晶化工程及び洗浄工程中に使用した補助液相から純粋APIを単離するために、例えば、蒸発分離によって乾燥させる。その後、一次API粉末粒子は更に処理され、直接経口投与、又は錠剤若しくはカプセルなどの経口投与形態を調製するための更なる加工のいずれかに適した顆粒剤、即ち多粒子状単位を形成する。乾燥純粋APIの湿式造粒は、粒径を拡大するために、作製される化合物の流れ、圧縮性、溶解、ゆえに生物学的曝露を高めるようAPIの性質を変換するために、及び/又は後の加工工程中におけるAPIの定量投入を可能にするよう純粋APIの濃度を希釈するために、広く適用されているプロセス工程である。
【0003】
例えば、乾燥純粋APIは、水若しくは水性結合剤溶液などの結合剤及び/又は造粒液と混合し、その後再び乾燥させてもよい。特に、後の流動床乾燥を伴う高剪断ミキサー、又は流動化した粉末床に造粒液が噴霧される流動床乾燥機を、結合剤によって結合された一次API粒子からなる乾燥顆粒剤を生成するために使用してもよい。これら乾燥顆粒剤は、経口投与に既に適したものであってもよい、又は所望の固体経口投与形態に更に加工することができる。或いは、API及び適切な賦形剤を乾燥固体粒子としてスクリュー造粒機に供給してもよい。造粒液は、造粒機に別々に加えてもよく、かなりの混合後、及び加えられた剪断力によって、湿式顆粒剤が得られる。これら湿式顆粒剤を乾燥させ、その後再び、経口投与に既に適したものとなってもよい、又は所望の固体経口投与形態に更に加工することができる。いずれの場合においても、造粒工程において更に加工される原薬は、例えば、造粒工程において結合剤及び/又は更なる賦形剤と混合される粉末の重量測定投入の際に、バッチ処理を必要とする乾燥固体粉末の形態で提供される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、顆粒剤の効率的な調製を可能にする方法を提供するという目的に向けられる。更に、本発明は、この種の顆粒剤を含む固体経口投与形態を製造する方法を提供するという目的に向けられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1に記載の顆粒剤を調製する方法、及び請求項15に記載の固体経口投与形態を製造する方法によって対処される。
【0006】
顆粒剤を調製する方法において、液体中に分散させた固体API粉末粒子を含有するスラリーが調製される。スラリーは造粒機に供給される。APIの種類、及び例えば、粒度、粒度分布、表面特性、濡れ性等などのAPI粉末の性質に基づいて、懸濁液中のAPIの濃度は10~70重量%であってもよい。例えば、イブプロフェンをAPIとして使用する場合、懸濁液中のAPIの濃度は29~53重量%であってもよく、ルメファントリンをAPIとして使用する場合、懸濁液中のAPIの濃度は25~35重量%であってもよく、Opadry yellowをモデルAPIとして使用する場合、懸濁液中のモデルAPIの濃度は10~20重量%であってもよい。いずれの場合においても、懸濁液の流動特性は、懸濁液中のAPI負荷及びスラリーを調製するために使用される液体の種類を、スラリーが所望の体積量及び所望の供給速度で造粒機に確実に供給され得るように適切に選択することによって調整すべきである。
【0007】
造粒機内において、スラリーは乾燥原料粉末と混合され、スラリー/原料粉末混合物を生成する。最終的に、造粒機内で生成したスラリー/原料粉末混合物を乾燥させ、固体API粒子と原料粉末とを含有する顆粒剤を得る。本出願の文脈では、「乾燥原料粉末」という表現は、10%を超える残留水分を含有しない粉末形態の固体材料を示す。スラリー/原料粉末混合物中の液体/固体比率は、主として最終組成物中のAPI濃度及び目標薬物負荷に依存し、0.4~2.0であってもよい。例えば、イブプロフェンをAPIとして使用する場合、スラリー/原料粉末混合物中の液体/固体比率は0.5~1.4であってもよく、ルメファントリンをAPIとして使用する場合、スラリー/原料粉末混合物中の液体/固体比率は約0.6であってもよく、Opadry yellowをモデルAPIとして使用する場合、スラリー/原料粉末混合物中の液体/固体比率は0.2~0.4であってもよい。基本的に、スラリー/原料粉末混合物中の固体含有量は、スラリー/原料粉末混合物の乾燥時間を低減させるためにできるだけ高くすべきである。他方では、スラリー/原料粉末混合物中の液体含有量は、得られた顆粒剤中におけるAPIの均質な分布を確実とするために、顆粒剤の形成及び原料粉末と固体API粒子の適切な混合を可能にするほど十分に高くすべきである。
【0008】
APIの種類及び所望の投与経路に基づいて、本明細書に記載される方法により得られる顆粒剤は、直接経口投与用であってもよい、又は所望の投与形態への更なる加工用であってもよい。特に、顆粒剤は、錠剤又はカプセルなどの固体経口投与形態への更なる加工に適している。乾燥顆粒剤は5%を超える残留水分を含有しない。典型的な乾燥顆粒剤のサイズは200から1000μmまで様々である。更に、乾燥顆粒剤は、APIの所望の生物学的曝露、即ち、患者の体内におけるAPIの所望の溶解を提供する。
【0009】
顆粒剤を調製する方法において、乾燥API粉末の精密重量測定投入を不要にできる。その代わりに、APIは、API含有量、即ちスラリー中のAPI濃度、及び造粒機へのスラリーの供給速度を単に調整することによって造粒機に所望の量で確実に供給され得る。したがって、API粉末の時間節約的且つコスト効率的な連続定量投入が可能にされる。加えて、APIを、液体中に分散させたAPI粒子を有する原料粉末と混合することで、混合中にAPI粒子に加えられる応力及び剪断力を低下させることができ、したがって、APIの品質にとって有益であり得る。
【0010】
顆粒剤を調製する方法の好ましい実施形態では、乾燥原料粉末とスラリーは、別々の供給ポートにおいて造粒機に供給される。例えば、乾燥原料粉末は第1の供給ポートにおいて造粒機に供給されてもよく、これに対して、スラリーは第2の供給ポートにおいて造粒機に供給されてもよい。第2の供給ポートは第1の供給ポートの下流に配置されていることが好ましい。これにより、スラリーが加えられる前に乾燥原料粉末を造粒機内で前処理することを可能にする。乾燥原料粉末の前処理は、例えば、スラリーの追加前に乾燥原料粉末を予圧縮することを含んでもよい。第2の供給ポートは、スラリーを造粒機に所望の供給速度で供給することを可能にする供給ノズルを含んでもよい。
【0011】
造粒機への乾燥原料粉末の供給速度、及び造粒機へのスラリーの供給速度は、造粒機の設計、特に寸法、乾燥原料粉末の流動特性、API負荷、即ちスラリー中の液体/固体比率、スラリーのレオロジー、特に粘性、スラリー/原料粉末混合物中の液体/固体比率、スラリー/原料粉末混合物のレオロジー、特に粘性、スラリー中に含有される液体による乾燥原料粉末の濡れ挙動、スラリー中に含有される液体中のAPI及び原料粉末の溶解度、固体の造粒挙動、即ち、好適な特性を備える顆粒剤を形成するために必要な液体量等に基づいて異なってもよい。直径11mmのスクリューを有する小型造粒機への乾燥原料粉末の典型的な供給速度は、例えば、140~500g/hで変化してもよく、これに対して、小型造粒機への典型的なスラリー供給速度は200~1000g/hで変化してもよい。直径16mmのスクリューを有する中型造粒機への典型的な供給速度はこれよりも最大10倍速くてもよく、直径47mmのスクリューを有する大型造粒機への典型的な供給速度は最大50kg/hであってもよい。
【0012】
造粒機は連続造粒機の形態で設計されてもよい。連続造粒機の使用は顆粒剤調製プロセスの効率を更に高める。造粒機は、スラリー/原料粉末混合物の信頼性の高い造粒を可能にする押出機の形態で設計されていることが好ましい。スクリューが互いに係合し、したがって、自己クリーニングする二軸押出機の形態で押出機が設計される場合、API含有スラリーとの乾燥原料粉末の特に効果的な混合が可能とされる。
【0013】
造粒機の少なくとも1つの押出機スクリューは、乾燥原料粉末を押出機ハウジング内に搬送するための原料粉末供給領域を含んでもよい。押出機スクリューの原料粉末供給領域は第1のピッチを有してもよい。好ましくは、押出機スクリューの原料粉末供給領域は第1の供給ポートと実質的に整列しており、押出機スクリューの回転によって引き起こされた吸引力により乾燥原料粉末を造粒機内に搬送するように、乾燥原料粉末は第1の供給ポートを通って造粒機に供給される。その代わりに又はそれに加えて、押出機スクリューは第1の圧縮領域を含んでもよい。好ましくは、押出機スクリューの第1の圧縮領域は、原料粉末供給領域の下流に配置されており、第1のピッチよりも小さい第2のピッチを有する。乾燥原料粉末は、第1の圧縮領域を通って搬送される際、スラリーの追加前に、高密度化されてもよい。本出願の文脈では、「下流」及び「上流」という用語は、造粒機内における乾燥原料粉末及びスラリー/原料粉末混合物それぞれの搬送方向を指す。
【0014】
押出機スクリューはまた、スラリーを乾燥原料粉末と混練するための第1の造粒領域を含んでもよい。第1の造粒領域は第1の圧縮領域の下流に配置されてもよい。更に、第1の造粒領域は、第2の供給ポートと整列されてもよく又は第2の供給ポートのすぐ下流に配置されてもよく、スラリーは第2の供給ポートを通って造粒機に供給される。特に、スラリーが供給ノズルを通って造粒機に供給される場合、スラリーを造粒機内に搬送するための追加的な吸引力は必要なく、押出機スクリューはスラリー供給領域を備える必要はない。その代わりに、スラリーは、第1の圧縮領域の下流端の区域又は第1の造粒領域の上流端の区域のいずれかにおいて造粒機に供給され得る。
【0015】
押出機スクリューは更に、第2の圧縮領域を備えてもよい。第2の圧縮領域において、スラリー/原料粉末混合物は搬送され、且つ高密度化されてもよい。押出機スクリューの第2の圧縮領域は第1の造粒領域の下流に配置されてもよい。第2の圧縮領域において、押出機スクリューは、第1の圧縮領域内の押出機スクリューの第2のピッチに等しいピッチを有してもよい。しかしながら、第2の圧縮領域内の押出機スクリューのピッチはまた、スラリー/原料粉末混合物の性質、特に、スラリー/原料粉末混合物中の液体/固体比率及びスラリー/原料粉末混合物の粘性に基づき、第2のピッチよりも大きくなる又は小さくなるように適切に適応させてもよい。
【0016】
更に、押出機スクリューは、スラリーを乾燥原料粉末と混練するための第2の造粒領域を含んでもよい。第2の造粒領域は第2の圧縮領域の下流に配置されてもよい。所望する場合、スラリー/原料粉末混合物を更に搬送及び高密度化するための第3の圧縮領域が押出機スクリュー上に設けられてもよい。第3の圧縮領域は第2の造粒領域の下流に配置されてもよい。第3の圧縮領域において、押出機スクリューは、第1の圧縮領域内の押出機スクリューの第2のピッチに等しいピッチを有してもよい。しかしながら、第3の圧縮領域内の押出機スクリューのピッチはまた、スラリー/原料粉末混合物の性質、特に、スラリー/原料粉末混合物中の液体/固体比率及びスラリー/原料粉末混合物の粘性に基づき、第2のピッチよりも大きくなる又は小さくなるように適切に適応させてもよい。更に、第3の圧縮領域内の押出機スクリューのピッチは第2の圧縮領域内の押出機スクリューのピッチに等しくても異なってもよい。
【0017】
最後に、押出機スクリューは、スラリー/原料粉末混合物を均質化するための均質化領域を含んでもよい。均質化用領域は第3の圧縮領域の下流に配置されていることが好ましい。均質化用領域において、スクリューは、例えば、造粒機を出る前にスラリー/原料粉末混合物の最終均質化を行う分配供給スクリューの形態で設計されてもよい。
【0018】
基本的に、スラリー中に含有される液体は、予め乾燥させたAPI粉末に加えられる任意の所望の液体であってもよい。しかしながら、好ましくは、スラリー中に含有される液体は、先行するAPI合成工程において固体API粉末粒子を合成するために使用された合成液又は先行する洗浄工程において固体API粉末粒子を洗浄するために使用された洗浄液を含有する。先行するAPI合成工程又は先行する洗浄工程で使用した液体が顆粒剤調製プロセスにおいて造粒液として「再利用される」場合、造粒加工前のAPIの乾燥を不要にできる。換言すると、エネルギー及び時間集約的であり、したがって、コストの観点から魅力的ではない合成及び/又は洗浄後のAPI粉末の乾燥工程はもはや必要ない。更に、また、所望の粒子特性を維持するために及び/又は更なる加工に適した良好な流動性を有するAPI粉末を得るために、純粋API粉末の乾燥後に必要な可能性のある粉砕又は篩分などの追加的な事後処理工程が省略されてもよい。最終的に、純粋APIを乾燥の熱応力に曝すことを回避することができる。例えば、洗浄工程後のAPI含有洗浄液の濾過により得られる湿潤濾過ケークをスラリーとして又はスラリーの主成分として使用してもよく、スラリーは、必要であれば、更なる(洗浄)液体で希釈してもよい。湿潤濾過ケークは、例えば、約50%の固体API粉末粒子を含有してもよい。
【0019】
スラリーは、固体API粒子と、先行するAPI合成工程において固体API粉末粒子を合成するために使用された合成液及び/又は先行する洗浄工程において固体API粉末粒子を洗浄するために使用された洗浄液からなる液相のみを含有してもよい。しかしながら、例えば、液相中におけるAPI粒子の分散、液相によるAPI粒子の濡れ、スラリーの粘性等などのスラリーの特性を調整するために、スラリーに更なる液体成分又は固体成分を添加することも考えられる。例えば、ポリソルベート、ピロリン酸ナトリウム、又は別の界面活性剤を湿潤剤としてスラリーに添加してもよい。
【0020】
好ましくは、スラリー中に含有される液体は、水及び/又は少なくとも1つの有機溶媒、特に、エタノール、メタノール、イソプロパノール、及びエチルアセテートを含有する。水、及び有機溶媒、特に、エタノールは、二重目的液体(dual-purpose liquids)、即ち、例えば、結晶化後の純粋API洗浄時の洗浄剤としての使用、及びまた、造粒液としての使用に適した液体として好適である。
【0021】
顆粒剤を調製する方法の好ましい実施形態では、乾燥原料粉末は結合剤を含有する。結合剤の添加によって、一次API粒子から顆粒剤、即ち粉末凝集体の形成が可能になる。
【0022】
基本的に、乾燥原料粉末は賦形剤であってもよく、単一の結合剤又は結合剤混合物のみからなってもよい。しかしながら、乾燥原料粉末は、スラリー/原料粉末混合物及び/又は得られる顆粒剤の性質を所望のとおりに調整するために更なる添加剤を含有することも考えられる。例えば、乾燥原料粉末は、プレブレンド、即ち、調製された、即ち、造粒機に供給される前に混合された又はブレンドされた原料粉末混合物を含有する結合剤であってもよい。
【0023】
しかしながら、乾燥原料粉末はまた、固体API粉末粒子を含有してもよい又は固体API粉末粒子からなってもよい。特に、乾燥原料粉末は、造粒機に供給されるスラリー中にも含有されている同じAPIの粉末粒子を含有してもよい。その結果、ほぼ純粋なAPI顆粒剤を得ることができる。API含有スラリーをAPI含有原料粉末とともに造粒することにより調製されるAPI顆粒剤は、造粒機に一部再循環させ、API含有スラリーと混合される乾燥原料粉末として再利用してもよい。例えば、API含有スラリーをAPI含有原料粉末とともに造粒することにより調製される顆粒剤の50%は、更なるAPI含有スラリーと混合される乾燥原料粉末として機能するように、造粒機に連続的に再循環させてもよい。
【0024】
特に、乾燥原料粉末は、乳糖、セルロース、特に、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ポリビニルピロリドン、及びリン酸カルシウムのうちの少なくとも1つを含有してもよい。
【0025】
顆粒剤を調製する方法の好ましい実施形態では、スラリーは、定量ポンプを用いて造粒機に供給される。定量ポンプを使用することにより、造粒機へのスラリーの信頼性の高い連続定量投入が可能とされる。
【0026】
乾燥原料粉末は、粉末投入デバイスのリザーバ内に収容された乾燥原料粉末の予備量の重量変化に従って制御される粉末投入デバイスを用いて造粒機に供給されてもよい。投入される粉末が少量であるために不連続な精密重量測定投入を必要とする純粋乾燥API粉末に比べて、乾燥原料粉末は、重量変化制御式粉末投入デバイスを用いて、要求される精度で造粒機に投入され得る。したがって、少なくとも、粉末投入デバイスのリザーバ内に十分量の乾燥原料粉末が存在する限りは造粒機への乾燥原料粉末の連続供給も達成され得る。
【0027】
造粒プロセスは、粉末投入デバイスのリザーバに原料粉末を補充するために中断してもよい。しかしながら、重量変化制御を単に中断し、造粒機への原料粉末の供給速度を一定に維持すること、即ち、リザーバの補充中、粉末投入デバイスを「盲目的に」動作させることも考えられる。
【0028】
スラリー中に含有されるAPIは、イブプロフェン、ルメファントリン、及びLDK378のうちの少なくとも1つを含有してもよい。
【0029】
造粒機を出るスラリー/原料粉末混合物は、連続又は半連続乾燥機を用いて乾燥させてもよい。特に、造粒機を出るスラリー/原料粉末混合物を乾燥させるために、流動床乾燥機を使用してもよい。流動床乾燥機は、製薬業界において純粋API粉末及び顆粒剤の両方を乾燥させるために既に一般的に使用されており、顆粒剤を調製する方法においては、十分に確立された乾燥プロセスパラメータに頼ることができる。
【0030】
顆粒剤を調製する方法の好ましい実施形態では、スラリー/原料粉末混合物を乾燥させるための乾燥温度は、スラリー中に含有される液体の蒸発温度よりも高い。例えば、スラリー/原料粉末混合物を乾燥させるための乾燥温度は、50~75℃、特に、60~70℃であってもよい。このため、乾燥工程中にAPIに加えられる熱応力は限定される。造粒機を出る顆粒剤中に含有される液体の95%を除去するための乾燥時間は、好ましくは、35分を超えない、特に、20分を超えない、及び好ましくは、12分を超えない。乾燥時間を制限することで、顆粒剤調製プロセスの総合効率が高まる。
【0031】
固体経口投与形態を製造する方法において、顆粒剤は、上記の方法に従い調製される。得られた顆粒剤は圧縮され、錠剤が形成される。或いは、得られた顆粒剤はカプセルに充填される。
【0032】
ここで、本発明の好適な実施形態を、添付の概略図及び例を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】顆粒剤を調製する方法を示す流れ図を示す。
図2図1の方法による、顆粒剤を調製するためのシステムの配置を示す。
図3図2による、顆粒剤を調製するためのシステムで使用される造粒機の詳細図を示す。
図4a図4図4aは、図1の方法に従い調製した顆粒剤の成形挙動を、従来調製された顆粒剤と比較したものを表すグラフを示す。図4bは、図1の方法に従い調製した顆粒剤の成形挙動を、従来調製された顆粒剤と比較したものを表す更なるグラフを示す。
図4b】(上記のとおり。)
図5図1の方法に従い調製した顆粒剤から作製した成形体の機械的特性を、従来調製された顆粒剤から作製した成形体と比較したものを表すグラフを示す。
図6図1の方法に従い調製した顆粒剤から作製した成形体の溶解挙動を、従来調製された顆粒剤から作製した成形体と比較したものを表すグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、顆粒剤を調製する方法の主な工程を示す流れ図を示す。図1に示される方法に従い顆粒剤を調製するためのシステム10の配置を図2に示す。顆粒剤を調製する方法は、液体中に分散させた固体API粉末粒子を含有するスラリー12を調整する工程を含む。基本的に、スラリー12は、予め乾燥させたAPI粉末を液体に添加することにより調整されてもよい。しかしながら、図1に示される方法の好ましい実施形態では、スラリー12中に含有される液体は、先行する洗浄工程において、液相中で合成した後の固体API粉末粒子を洗浄するために使用された洗浄液である。したがって、洗浄後、固体API粉末粒子は洗浄液中に分散したままである。例えば、洗浄工程後のAPI含有洗浄液の濾過により得られる湿潤濾過ケークをスラリーとして又はスラリーの主成分として使用してもよく、スラリーは、必要であれば、更なる(洗浄)液体で希釈してもよい。スラリー12中に含有される洗浄液は、水、及び/又は有機溶媒、特に、エタノールを含有する。必要であれば、例えば、液相中におけるAPI粒子の分散、液相によるAPI粒子の濡れ、スラリーの粘性等などのスラリーの特性を調整するために、液体又は固体添加剤をスラリー12に添加してもよい。
【0035】
更に、乾燥原料粉末14が供給される。原料粉末14は粉末凝集(agglomaration)用の結合剤、例えば、ポリビニルピロリドンを含有する。選択される結合剤は、原料粉末14の唯一の成分を構成してもよい。しかしながら、原料粉末14が結合剤混合物又は粉末プレブレンドを含有する結合剤、即ち、結合剤混合物又は先行する混合工程で調製された粉末混合物を含有する結合剤であることも考えられる。錠剤結合剤/希釈剤として機能するように、乳糖及び/又はセルロース、特に、微結晶セルロースを添加してもよい。ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸マグネシウム、及び/又はフマル酸ステアリルナトリウムを潤滑剤として添加してもよい。カルボキシメチルセルロースナトリウムを崩壊剤として添加してもよい。更に、乾燥原料粉末は、固体API粉末粒子を含有してもよい又は固体API粉末粒子からなってもよい。特に、乾燥原料粉末は、造粒機に供給されるスラリー中にも含有されている同じAPIの粉末粒子を含有してもよい。
【0036】
図2から明らかとなるように、乾燥原料粉末14は、造粒機16の第1の供給ポート18において造粒機16に供給される。特に、乾燥原料粉末14は、粉末投入デバイス20のリザーバ22内に収容された乾燥原料粉末14の予備量の重量変化に従って制御される粉末投入デバイス20を用いて造粒機16に連続的に供給される。基本的に、乾燥原料粉末14の供給は、粉末投入20デバイスのリザーバ22に原料粉末14を補充するために中断されると考えられる。しかしながら、造粒機16への原料粉末14の連続供給を維持するために、重量変化制御を単に中断し、造粒機16への原料粉末14の定量供給速度を一定に維持すること、即ち、リザーバの補充中、粉末投入デバイス20を「盲目的に」動作させることが好ましい。
【0037】
図2に示される構成において、造粒機16は、二軸押出機の形態で、即ち、一対の噛合式押出機スクリュー24を備える連続動作式押出機デバイスの形態で設計されている。一対の押出機スクリュー24は、造粒機16内において押出物を図2に矢印Cで示される搬送方向に搬送するために、対応する中心軸の周りを回転するように動作可能である。
【0038】
スラリー12は、搬送方向Cを基準にして第1の供給ポート18の下流に配置されている第2の供給ポート26において造粒機16に供給される。特に、スラリー12は、定量ポンプ28を用いて造粒機16に供給される。APIの種類、及び例えば、粒度、粒度分布、表面特性、濡れ性等などのAPI粉末の性質に基づいて、懸濁液中のAPIの濃度は10~70重量%であってもよい。例えば、イブプロフェンをAPIとして使用する場合、懸濁液中のAPIの濃度は29~53重量%であってもよく、ルメファントリンをAPIとして使用する場合、懸濁液中のAPIの濃度は25~35重量%であってもよく、Opadry yellowをモデルAPIとして使用する場合、懸濁液中のモデルAPIの濃度は10~20重量%であってもよい。いずれの場合においても、造粒機16へのスラリー12の信頼性の高い連続定量投入を確実とするために、懸濁液中のAPIの濃度、即ち、スラリー12中の液体/固体比率、及びスラリー12の粘性は、必要であれば、造粒機16へのスラリー12の妨げのない圧送を可能にするために、スラリー12への固体又は液体添加剤の添加によって適切に調整されるべきである。
【0039】
造粒機16への乾燥原料粉末14の供給速度は、粉末状乾燥原料粉末14の流動特性、スラリー12のAPI負荷、即ち、スラリー12中の液体/固体比率、スラリー12の粘性、スラリー/原料粉末混合物30中の液体/固体比率、スラリー/原料粉末混合物30の粘性、スラリー12中に含有される液体による乾燥原料粉末14の濡れ挙動等に基づいて異なってもよい。小型造粒機16への乾燥原料粉末14の典型的な供給速度は140~500g/hで変化してもよく、これに対して、小型造粒機16への典型的なスラリー供給速度は200~1000g/hで変化してもよい。直径16mmのスクリューを有する中型造粒機への典型的な供給速度はこれよりも最大10倍速くてもよく、直径47mmのスクリューを有する大型造粒機への典型的な供給速度は最大50kg/hであってもよい。
【0040】
造粒機16内において、スラリー12は乾燥原料粉末14と混合され、出口ポート32において造粒機16を出るスラリー/原料粉末混合物30を生成する。造粒機16の詳細図が図3に示される。図3から明らかとなるように、造粒機16の押出機スクリュー24は、乾燥原料粉末を押出機ハウジング36内に搬送するための原料粉末供給領域34を含む。押出機スクリュー24の原料粉末供給領域34は、第1の供給ポート18と実質的に整列しており、乾燥原料粉末14は第1の供給ポート18を通って造粒機16に供給される。原料粉末供給領域34においては、押出機スクリュー24の対のそれぞれが第1のピッチP1を有し、乾燥原料粉末14を押出機ハウジング36内に搬送するように、押出機スクリュー24の回転による吸引力の生成を可能にする。原料粉末供給領域34内の押出機スクリュー24の設計の詳細図、即ち、詳細側面図及び断面図は、図3aに示される。
【0041】
更に、押出機スクリュー24は、第1の供給ポート18を通って押出機ハウジング36内に供給される乾燥原料粉末を搬送し、且つ高密度化するための第1の圧縮領域38を含む。押出機スクリュー24の第1の圧縮領域38は、原料粉末供給領域34の下流に配置されており、第2の供給ポート26の領域において終端し、第1のピッチP1よりも小さい第2のピッチP2を有する。第1の圧縮領域38内の押出機スクリュー24の設計の詳細図、即ち、詳細側面図及び断面図は、図3bに示される。第1の圧縮領域38を通って搬送される際、第2の供給ポート26を通してスラリーが加えられる前に、乾燥原料粉末は高密度化される。第2の供給ポート26は、所望の供給速度における造粒機16へのスラリーの供給を可能にする供給ノズル41を含む。
【0042】
押出機スクリュー24は、第1の圧縮領域38の下流且つ第2の供給ポート26のほぼすぐ下流に、スラリーを乾燥原料粉末と混練するための第1の造粒領域40を含む。第1の造粒領域40内の押出機スクリュー24の設計の詳細図、即ち、詳細側面図及び断面図は、図3cに示される。
【0043】
加えて、第1の造粒領域40の下流の押出機スクリュー24は第2の圧縮領域42を備え、図に示される造粒機16の例示的実施形態の押出機スクリュー24は、第1の圧縮領域38内の押出機スクリュー24の第2のピッチP2に等しいピッチを有し、押出機スクリュー24の設計は、図3bに示す第1の圧縮領域38内の押出機スクリュー24の設計に対応する。第2の圧縮領域42において、スラリーは更に搬送され、高密度化される。しかしながら、第2の圧縮領域42内の押出機スクリュー24のピッチ及び更なる設計は、スラリー/原料粉末混合物の性質、特に、スラリー/原料粉末混合物中の液体/固体比率、及びスラリー/原料粉末混合物の粘性に基づき必要に応じて調整してもよい。
【0044】
更に、押出機スクリュー24は、スラリーを乾燥原料粉末と更に混練するための第2の造粒領域44を含む。第2の造粒領域44は第2の圧縮領域42の下流に配置されている。第2の造粒領域44内の押出機スクリュー24の設計の詳細図、即ち、詳細側面図及び断面図は、図3dに示される。
【0045】
スラリー/原料粉末混合物を更に搬送し、高密度化するための第3の圧縮領域46が第2の造粒領域44の下流の押出機スクリュー24上に設けられる。第3の圧縮領域46において、押出機スクリュー24は、第1の圧縮領域38内の押出機スクリュー24の第2のピッチP2に等しいピッチを有し、押出機スクリュー24の設計は、図3bに示す第1の圧縮領域38内の押出機スクリュー24の設計に対応する。第2の圧縮領域42内の押出機スクリュー24のピッチ及び設計と同様に、第3の圧縮領域46内の押出機スクリュー24のピッチ及び更なる設計もまた、スラリー/原料粉末混合物の性質、特に、スラリー/原料粉末混合物中の液体/固体比率、及びスラリー/原料粉末混合物の粘性に基づき必要に応じて調整してもよい。
【0046】
最終的に、スラリー/原料粉末混合物は第2の造粒領域44を出る際に既に均質化されているべきだが、押出機スクリュー24は、スラリー/原料粉末混合物を更に均質化するための均質化領域48を備える。特に、均質化用領域48は、第3の圧縮領域46の下流に配置されており、均質化用領域48内の押出機スクリュー24は、造粒機16を出る前にスラリー/原料粉末混合物の最終均質化を行う分配供給スクリューの形態で設計されている。均質化領域48内の押出機スクリュー24の設計の詳細図、即ち、詳細側面図及び断面図は、図3eに示される。
【0047】
押出機スクリュー24の異なる領域34、38、40、42、44、46、48の寸法、即ち長さ、並びに押出機スクリュー24の異なる領域34、38、40、42、44、46、48の設計は、乾燥原料粉末、スラリー、及びスラリー/原料粉末混合物の性質に基づき必要に応じて変化させてもよいことを認識すべきである。更に、押出機スクリュー24は、例えば、造粒機16のハウジング内に設けられた冷却チャネルを用いて、少なくとも、第1及び第2の造粒領域40、44の区域内において冷却されてもよい。
【0048】
出口ポート32を通って造粒機16を出るスラリー/原料粉末混合物は、連続又は半連続乾燥機50を用いて乾燥させる。特に、乾燥機15は流動床乾燥機の形態で設計されている。スラリー/原料粉末混合物を乾燥させるための乾燥温度は、スラリー中に含有される液体の蒸発温度よりも高く、50~75℃、特に、60~70℃であってもよい。造粒機16を出る顆粒剤中に含有される液体の95%を除去するための乾燥時間は、35分を超えない、特に、20分を超えない、好ましくは、12分を超えない。典型的な乾燥顆粒剤のサイズは200から1000μmまで様々である。
【0049】
上記の方法により得られる顆粒剤は、直接経口投与に好適であってもよい、又はカプセルへの充填用であってもよい。しかしながら、好ましくは、顆粒剤は、錠剤を形成するために成形される。
【実施例
【0050】
実施例1
着色剤「Opadry Basic Lack Yellow」を原薬の代替として用いる造粒プロセスを、表1にまとめるプロセスパラメータを使用して実施した。
【0051】
【表1】
【0052】
着色剤を含有するスラリーを調製するために、懸濁剤の水を、表1に示される所望の濃度が得られるまで着色剤と混合した。スラリーは、4ブレード撹拌器を備えたオーバーヘッドスターラを使用し、調製のために、その後、均一な溶液/懸濁液を維持するために少なくとも更に30分間、絶えず攪拌した。
【0053】
二軸スクリュー湿式造粒を、同時回転式Pharma 16mm二軸スクリュー造粒機(Thermo Scientific Pharma 16、Thermo Fisher Scientific、Karlsruhe、Germany)で実施した。二軸スクリュー造粒機は、200rpmの一定のスクリュー速度で動作させた。温度は、全領域内で13~15℃に、一定に維持した。粉末成分を、連続ブレンダから二軸スクリュー造粒機に直接供給した。蠕動ポンプ(NM003BY11S12B、Netzsch Group、Selb、Germany)を使用し、造粒液を二軸スクリュー造粒機に投入した。
【0054】
乾燥及び成形による更なる加工に適した満足な湿式顆粒剤が得られた。
【0055】
実施例2
API LDK378を用いる造粒プロセスを、表2にまとめるプロセスパラメータを使用して実施した。
【0056】
【表2】
【0057】
APIを含有するスラリーを調製するために、表2に示される所望の濃度が得られるまでAPIを懸濁液中に分配した。懸濁剤は関与しなかった。スラリーは、均一な溶液/懸濁液を維持するために、4ブレード撹拌器を備えたオーバーヘッドスターラを使用し、絶えず攪拌した。
【0058】
二軸スクリュー湿式造粒を、同時回転式Pharma 11mm二軸スクリュー造粒機(Thermo Scientific Pharma 11、Thermo Fisher Scientific、Karlsruhe、Germany)で実施した。二軸スクリュー造粒機は、250rpmの一定のスクリュー速度で動作させた。温度は、全領域内で20℃に、一定に維持した。粉末成分を、Brabender重量式フィーダ(DDW-MD0-MT-1、Brabender、Duisburg、Germany)を使用し、二軸スクリュー造粒機に供給した。フィーダの質量流量は、内部校正モードにより校正した。次いで、粉末流の不安定さによるプロセス変動を排除するために、固体質量流量を動的つり合いによって検証した(K-Sampler K-SFS-24、Coperion K-Tron、Pitman、USA)。造粒液をプログレッシングキャビティポンプ(NM003BY11S12B、Netzsch Group、Selb、Germany)を使用して二軸スクリュー造粒機に投入した。
【0059】
乾燥及び成形による更なる加工に適した満足な湿式顆粒剤が得られた。
【0060】
実施例3~5
APIイブプロフェンを用いる造粒プロセスを、表3~表5にまとめる各種プロセスパラメータを使用して実施した。
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】
【表5】
【0064】
APIを含有するスラリーを調製するために、懸濁液(水)を予め計量した。懸濁剤のピロリン酸ナトリウム又はポリソルベートを懸濁液中に溶解させた。実施例5においては、次いで、PVP K30を液体中に溶解させた。その後、乾燥API粉末を、表3~表5に示される所望の濃度が得られるまで少しずつ添加した。スラリーは、均一な溶液/懸濁液を維持するために、4ブレード撹拌器を備えたオーバーヘッドスターラを使用し、絶えず攪拌した。
【0065】
二軸スクリュー湿式造粒を、同時回転式Pharma 11mm二軸スクリュー造粒機(Thermo Scientific Pharma 11、Thermo Fisher Scientific、Karlsruhe、Germany)で実施した。二軸スクリュー造粒機は、250rpmの一定のスクリュー速度で動作させた。温度は、全領域内で20℃に、一定に維持した。粉末成分を、Brabender重量式フィーダ(DDW-MD0-MT-1、Brabender、Duisburg、Germany)を使用し、二軸スクリュー造粒機に供給した。フィーダの質量流量は、内部校正モードにより校正した。次いで、粉末流の不安定さによるプロセス変動を排除するために、固体質量流量を動的つり合いによって検証した(K-Sampler K-SFS-24、Coperion K-Tron、Pitman、USA)。造粒液を、プログレッシングキャビティポンプ(NM003BY11S12B、Netzsch Group、Selb、Germany)を使用して二軸スクリュー造粒機に投入した。
【0066】
湿式顆粒剤の乾燥は、流動床乾燥機(Mini Glatt 5、Glatt、Binzen、Germany)を使用して実施した。各実験において、流動床乾燥機の円錐部に、約120gの湿潤重量に相当する同一体積の湿式顆粒剤を充填した。顆粒剤の適切な流動化が認められるまで空気流を増加させた。顆粒剤を65℃の入口空気温度で乾燥させた。
【0067】
比較例
実施例5について、比較を詳細に実施した。従来のイブプロフェンブレンドを同時回転式Pharma 11mm二軸スクリュー造粒機(Thermo Scientific Pharma 11、Thermo Fisher Scientific、Karlsruhe、Germany)に供給した。したがって、全ての固体成分は、乾燥粉末ブレンドとして造粒機に供給した。造粒液として、水のみを添加した。イブプロフェンブレンド及びイブプロフェン懸濁液供給物の配合は、定量的(quanitatively)及び定性的にL/S 0.5に類似していた。総固体質量流量(イブプロフェンと賦形剤を合わせた)は、イブプロフェンがブレンドで又は懸濁液として投入されたかどうかとは無関係に、一定に、500g/hに維持した(即ち、ドライブレンドにより加工された固体と造粒液により加工された固体を足すと500g/hに等しい)。スクリュー速度は250rpm、全領域内の温度は20℃であった。
【0068】
顆粒剤の乾燥は、流動床乾燥機(Mini Glatt 5、Glatt、Binzen、Germany)を使用して実施した。各実験において、流動床乾燥機の円錐部に、約120gの湿潤重量に相当する同一体積の湿式顆粒剤を充填した。顆粒剤の適切な流動化が認められるまで空気流を増加させた。顆粒剤を65℃の入口空気温度で乾燥させた。
【0069】
顆粒剤の特性決定
顆粒剤の成形挙動及び成形体の特性に対する、適応させた造粒プロセスの影響を研究するために、実施例5に従って得られた顆粒剤、及び比較例に従って得られた顆粒剤を成形して錠剤を形成し、以下のように特性決定した。
【0070】
成形前に、顆粒剤を目開き1mmのふるいにかけた。ホッパー(Stylcam(登録商標)200R、Medelpharm、Beynost、France)を備えた完全機器搭載型の成形シミュレータを使用して、円形平坦面成形体(直径11.28mm、成形体質量500mg)を製造した。FETTE P1200を模した。様々な成形圧力(60MPa、100MPa、及び140MPa)を、13msの滞留時間を伴って適用した。
【0071】
成形体は、イブプロフェンの成形体高さ及び直径、型外気孔率(out-of-die porosity)、破砕力及び溶解時間を測定することにより特性決定した。成形体高さ及び直径は、カリパス(Traceable(登録商標)、VWR、Radnor、USA)を使用し、成形直後に評価した。各成形圧力にて作製した10個の成形体について、型外気孔率を、成形直後に評価した真密度、成形体高さ及び直径を使用することにより計算した。各成形圧力にて作製した10個の成形体について、破砕力を測定した(Pharmatron Multitest 50、Pharmatron、Thun、Switzerland)。イブプロフェン錠剤(n=3)について、100MPaで製造した成形体の溶解時間をUSPに従って測定した。パドル装置を使用した(AT7 Smart double bath、Sotax、Aesch、Switzerland)。60分後、パドル速度を50rpmから200rpmに増加し、75分後、最終測定サイクルを実施した。測定サイクル中、媒体を溶解容器からインラインUV分光計(Lambda 25、PerkinElmer instruments、Schwerzenbach、Switzerland)に圧送し、再び容器に戻した。UV測定を、1mmメジャーリングセルを使用して222nmの波長にて実施した。
【0072】
力変位曲線を使用し、API懸濁液供給物を用いた二軸スクリュー湿式造粒による乾燥顆粒剤の成形プロセスを、従来のAPIブレンド供給物による乾燥顆粒剤の成形プロセスと比較した。両プロセスの乾燥顆粒剤に関しては、成形による力変位曲線はほぼ重なっていた(図4aを参照)。このことは、錠剤ダイ内の粒子充填及び顆粒剤の圧密性(compactability)は同程度であることを示している。成形体の質量の相対標準偏差は0.5%未満であった。図4bに示すように、型外気孔率は、成形圧力が増加するにつれて減少することが認められた(それぞれ60MPa及び140MPaの成形圧力について、イブプロフェンスラリー供給物では15.86%から9.78%に、イブプロフェン乾燥粉末ブレンド供給物では17.28%から11.15%に)。型外気孔率は、各印加される成形圧力について、イブプロフェンスラリー供給物と比較するとイブプロフェン粉末ブレンド供給物においてわずかに高いことが判明した。
【0073】
この観測は、引張強さのデータで見られる傾向に合致するものである。引張強さは、イブプロフェン粉末ブレンド供給物よりもイブプロフェンスラリー供給物の方が一貫して高いことが認められた(イブプロフェンスラリー供給物対イブプロフェン粉末ブレンド供給物に関する60、100、及び140MPaの成形圧力において、1.1MPa対0.9MPa、1.8MPa対1.4MPa、1.9MPa対1.7MPa)。図5を参照されたい。
【0074】
イブプロフェンスラリー供給物手法による顆粒剤から製造されたイブプロフェン成形体の溶解速度は、イブプロフェン粉末ブレンド供給物手法による顆粒剤から製造された成形体よりもわずかに遅かった。図6を参照されたい。この現象は、イブプロフェンスラリー供給物による成形体の低い型外気孔率及び高い引張強さのせいであり得る。要するに、両二軸スクリュー湿式造粒手法においては、成形体は、同等の特性を有することが判明した。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6