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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】分離膜の安定性評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/18 20060101AFI20221114BHJP
   G01N 25/72 20060101ALI20221114BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20221114BHJP
   H01M 50/40 20210101ALI20221114BHJP
   H01M 50/409 20210101ALI20221114BHJP
【FI】
G01N3/18
G01N25/72 G
H01M10/04 Z
H01M50/40
H01M50/409
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020520277
(86)(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 KR2019003682
(87)【国際公開番号】W WO2019190253
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-04-09
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-10
(31)【優先権主張番号】10-2018-0035897
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン-スプ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン-ス・キム
(72)【発明者】
【氏名】サン-ウン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ドン-ウク・スン
(72)【発明者】
【氏名】テ-スン・チャン
(72)【発明者】
【氏名】ミョン-ハン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジェ-アン・イ
【合議体】
【審判長】石井 哲
【審判官】樋口 宗彦
【審判官】▲高▼見 重雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-139490(JP,A)
【文献】特表2012-529742(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2111909(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0012266(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/00
H01M2/14
G01M3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離膜を準備する段階と、
動的機械分析(DMA)を用いて前記分離膜の延伸物性を測定する段階と、
前記測定された値を前記延伸物性の安定性基準と比較する段階と、
前記比較の結果、前記測定された結果値が安定性基準を満す場合には、これと同じ分離膜を装着した二次電池の釘刺し試験において安定性合格の分離膜であると予測し、前記安定性基準を満さない場合には、これと同じ分離膜を装着した二次電池の釘刺し試験において安定性不合格の分離膜であると予測する段階と、を含み
記延伸物性が前記分離膜の破断荷重及び破断伸び率であり、かつ、安定性基準が0.02N以上の破断荷重及び1%以上の破断伸び率と定義され
前記分離膜の破断荷重及び破断伸び率が、動的機械分析を用いて、幅6.1mm及び長さ10mm規格の分離膜試料を200℃の温度で、0.002Nから1分当たり0.001Nずつ増加させながら破断発生時の荷重及び伸び率を測定する方法によって得られたものである分離膜の安定性評価方法。
【請求項2】
前記安定性合格の分離膜及び前記安定性不合格の分離膜が、これと同じ分離膜を装着した二次電池の釘刺し試験を行う場合に各々合格及び不合格評価を受け、
前記釘刺し試験が前記二次電池を25℃で4.25Vの電圧で満充電し、直径3mmの釘を用いて電池の中央を貫通させた後、発火する場合は不合格、発火しない場合は合格と評価する方法である、請求項1に記載の分離膜の安定性評価方法。
【請求項3】
前記分離膜が、多孔性高分子基材の分離膜と、多孔性高分子基材の少なくとも一面の上に位置し、多数の無機物粒子及び前記無機物粒子の表面の一部または全部に位置して前記無機物粒子同士を連結及び固定するバインダー高分子を含む多孔性コーティング層を備える有機/無機複合分離膜と、またはこれらの混合分離膜を含む、請求項1または2に記載の分離膜の安定性評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離膜の安定性評価方法に関し、より詳しくは、電池の釘刺し試験の前に分離膜の爆発安全性を予め予測可能な分離膜の安定性評価方法に関する。
【0002】
本出願は、2018年3月28日出願の韓国特許出願第10-2018-0035897号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
最近、エネルギー貯蔵技術に関する関心が高まりつつある。携帯電話、カムコーダー及びノートブックPC、延いては、電気自動車のエネルギーにまで適用分野が拡がり、電気化学素子の研究及び開発に対する努力が徐々に具体化している。電気化学素子は、このような面から最も注目されている分野であって、その中でも、充放電が可能な二次電池の開発は、関心の焦点となっている。最近は、このような電池の開発に際し、容量密度及び比エネルギーを向上させるために、新しい電極と電池の設計に関する研究開発へ進みつつある。
【0004】
現在、適用されている二次電池のうち、1990年代初めに開発されたリチウム二次電池は、水溶性電解液を使用するNi-MH、Ni-Cd、硫酸-鉛電池などの在来式電池に比べ、作動電圧が高く、エネルギー密度が遥かに高いという長所から脚光を浴びている。しかし、このようなリチウムイオン電池は、有機電解液を用いるに伴う発火及び爆発などの安全問題が存在し、製造が複雑であるという短所がある。
【0005】
最近のリチウムイオン高分子電池は、このようなリチウムイオン電池の弱点を改善して次世代電池の一つとして挙げられているが、未だに電池の容量がリチウムイオン電池に比べ相対的に低く、特に、低温における放電容量が不十分であり、これに対する改善が至急に求められている。
【0006】
このような電気化学素子は、多くのメーカで生産されているが、それらの安全性特性はそれぞれ異なる様相を示す。このような電気化学素子の安全性の評価及び確保は、非常に重要である。最も重要な考慮事項は、電気化学素子の誤作動時、使用者に傷害を加えてはいけないという点であり、かかる目的から安全規格において電池内の発火及び発煙などを厳格に規制している。電気化学素子の安全性特性において、電気化学素子が過熱して熱暴走するか、分離膜が貫通される場合は、爆発を起こす恐れが大きい。
【0007】
このような問題を解決するために、分離膜に対する安定性評価を行う必要があるが、既存の分離膜の爆発安全性の評価方法は、実際のバッテリーを組み立てて行われるため、相当な時間及び費用が消費された。
【0008】
そこで、分離膜が安全性の基準を満すか否かを迅速に評価することができる方法についての開発が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、簡単なレオロジー(Rheology)特性評価によって爆発安定性を予測できる分離膜の安全性評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を達成するため、本発明の一面によれば、下記の具現例の分離膜の安定性評価方法が提供される。
【0011】
第1具現例は、
分離膜を準備する段階と、
動的機械分析(Dynamic Mechanical Analysis,DMA)を用いて前記分離膜の延伸物性を測定する段階と、
前記測定された値を前記延伸物性の安定性基準と比較する段階と、
前記比較の結果、前記測定された結果値が安定性基準を満す場合には、安定性合格の分離膜に分類し、前記安定性基準を満さない場合には、安定性不合格の分離膜に分類する段階と、を含み、
前記延伸物性が前記分離膜の破断温度及び収縮率であり、かつ、安定性基準が200℃以上の破断温度及び59%以下の収縮率と定義されるか、または、
前記延伸物性が前記分離膜の破断荷重及び破断伸び率であり、かつ、安定性基準が0.02N以上の破断荷重及び1%以上の破断伸び率と定義される分離膜の安定性評価方法に関する。
【0012】
第2具現例は、第1具現例において、
前記安定性合格の分離膜及び前記安定性不合格の分離膜が、これと同じ分離膜を装着した二次電池の釘刺し試験を行う場合に各々合格及び不合格評価を受け、
前記釘刺し試験が前記二次電池を25℃で4.25Vの電圧で満充電し、直径3mmの釘を用いて電池の中央を貫通させた後、発火する場合は不合格、発火しない場合は合格と評価する方法である、第1具現例に記載の分離膜の安定性評価方法に関する。
【0013】
第3具現例は、第1具現例または第2具現例において、
前記分離膜が、多孔性高分子基材の分離膜と、多孔性高分子基材の少なくとも一面の上に位置し、多数の無機物粒子及び前記無機物粒子の表面の一部または全部に位置して前記無機物粒子同士を連結及び固定するバインダー高分子を含む多孔性コーティング層を備える有機/無機複合分離膜と、またはこれらの混合分離膜を含む分離膜の安定性評価方法に関する。
【0014】
第4具現例は、第1具現例から第3具現例のいずれか一具現例において、
前記分離膜の破断温度の測定方法が、動的機械分析を用いて、幅6.1mm規格の分離膜試料を25~350℃の温度範囲で5℃/minの昇温速度で0.005Nの荷重によって分離膜試料が切れるか、または伸びる温度を測定する方式で施す分離膜の安定性評価方法に関する。
【0015】
第5具現例は、第1具現例から第4具現例のいずれか一具現例において、
前記分離膜の収縮率測定方法が、動的機械分析を用いて、幅6.1mm規格の分離膜試料を25~350℃の温度範囲で5℃/minの昇温速度で0.005Nの荷重による収縮率を測定し、この際、収縮率は[(分離膜試料の最初長さ)-(分離膜試料の最小長さ)/(分離膜試料の最初長さ)×100]で計算される分離膜の安定性評価方法に関する。
【0016】
第6具現例は、第1具現例から第5具現例のいずれか一具現例において、
前記分離膜の破断荷重及び破断伸び率の測定方法が、動的機械分析を用いて、幅6.1mm及び長さ10mm規格の分離膜試料を200℃の温度で、0.002Nから1分当たり0.001Nずつ増加させながら破断発生時の荷重及び伸び率を測定する分離膜の安定性評価方法に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一具現例によれば、爆発安全性に優れた分離膜の選定のために、安全性に影響を与えるレオロジー特性有意因子を導出し、これによって分離膜の安定性を簡単かつ迅速に予測することができる。
【0018】
本発明の分離膜の安定性評価方法は、同じ分離膜を備えた二次電池の釘刺し試験とマッチされる結果を提供するため、二次電池を別に組み立てて安定性評価を行わなくてもよい。
【0019】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】分離膜の破断実験時における変形率及び静荷重を示したグラフである。
図2】サンプルA~Fの分離膜の温度による変形率の変化を示したグラフである。
図3】サンプルA~Lの分離膜の収縮率及び破断温度を示したグラフである。
図4】サンプルA~Lの分離膜の破断荷重及び破断伸び率を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び請求範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0022】
通常、二次電池に使われる分離膜には、多孔性高分子基材が適用され、例えば、通常のポリオレフィン系多孔性高分子基材の場合、高温で粘度が低くなり、多孔性高分子基材が液体のような(liquid like)挙動を示し、電池に適用された分離膜は、釘刺し試験で損傷してしまい、これは二次電池の爆発安全性を大幅に低下させる問題となる。
【0023】
そこで、本発明の分離膜を構成する多孔性高分子基材のレオロジー特性値のうち、二次電池の安全性の予測に密接な連関性を有するレオロジー特性有意因子を導き出し、これを評価することで、最終の二次電池の安定性を予測することを目的とする。
【0024】
本発明の一面による分離膜の安定性評価方法は、
分離膜を準備する段階と、
動的機械分析(DMA)を用いて前記分離膜の延伸物性を測定し、前記測定された値を前記延伸物性の安定性基準と比較する段階と、
前記比較結果、前記測定された結果値が安定性基準を満す場合には、安定性合格の分離膜に分類し、前記安定性基準を満さない場合には、安定性不合格の分離膜に分類する段階と、を含み、
前記延伸物性が前記分離膜の破断温度及び収縮率であり、かつ、安定性基準が200℃以上の破断温度及び59%以下の収縮率と定義されるか、または、
前記延伸物性が前記分離膜の破断荷重及び破断伸び率であり、かつ、安定性基準が0.02N以上の破断荷重及び1%以上の破断伸び率と定義される。
先ず、安定性評価の対象になる分離膜を準備する。
【0025】
前記分離膜は、多孔性高分子基材分離膜、多孔性高分子基材の少なくとも一面の上に位置した多孔性コーティング層を備えた有機/無機複合分離膜、またはこれらの混合分離膜を含み得る。
【0026】
前記多孔性高分子基材を構成する高分子は、前述の溶融特性を示すものであれば、制限なく適用可能であり、このような高分子の非制限的な例には、ポリオレフィン、変性ポリオレフィンなどを単独でまたはこれらの二種以上の混合物を含み得る。また、前記高分子が二種以上使用される場合には、単一層に混合されて多孔性高分子基材を形成してもよく、相異なる高分子が別の層をなす二層以上の複合層であってもよく、この際、複合層のうち少なくとも一層に二種以上の高分子混合物が含まれることも可能である。
【0027】
この際、ポリオレフィンは、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンのようなポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテンなどのポリオレフィン系高分子を各々単独でまたはこれらの二種以上を混合して高分子に形成することができる。
【0028】
前記変性ポリオレフィンとしては、オレフィン(例えば、エチレン、プロピレンなど)及び炭素数2~20のα-オレフィンの共重合体であり得る。前記α-オレフィンは、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン及び1-エイコセンから構成される群より選択されるいずれか一つ以上であるか、高分子鎖に、ビニル基、ケトン基、エステル基、酸性基(acid group)などを一種以上含む構造であり得る。前記エチレン/α-オレフィン共重合体において、α-オレフィンの含量は、約0.5~10重量%、望ましくは、約1~5重量%であり得るが、これに限定されない。
【0029】
本発明の一具現例によれば、前記ポリエチレンには、超高分子量ポリエチレン;高分子量ポリエチレンを除いたポリエチレン;60万以上の重量平均分子量(例えば、60~300万)を有する超高分子量ポリエチレンであり得る。この際、超高分子量ポリエチレンは、エチレンホモポリマーまたは少量のα-オレフィンを含むコポリマーであり得る。α-オレフィンとしては、高分子主鎖に、ビニル基、ケトン基、メチル基、エステル基、酸性基などのうち単独または二種以上の分枝を有する形態であり得る。
【0030】
前記高分子量ポリエチレンを除いたポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、分枝状低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンのいずれか一種であり得る。
【0031】
また、本発明の一具現例によれば、前記ポリプロピレンは、プロピレンホモポリマーまたはα-オレフィンを含むコポリマーであり得る。α-オレフィンは、前述したようなものである。
【0032】
本発明の一具現例によれば、前記高分子は、ポリエチレンとポリプロピレンとの混合物であり得、この際、ポリプロピレンが全体高分子含量の5重量%以内で含まれ得る。この際、使用されるポリエチレン及びポリプロピレンは、前述したようなものである。
【0033】
また、前記多孔性高分子基材は、ポリオレフィンの外に、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate)、ポリエステル(polyester)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリアミド(polyamide)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリイミド(polyimide)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリフェニレンオキシド(polyphenyleneoxide)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylenesulfide)、ポリエチレンナフタレン(polyethylenenaphthalene)などを各々単独でまたはこれらを混合した高分子で形成し得る。
【0034】
前記多孔性高分子基材が前述の改善したレオロジー特性を有するためには、多孔性高分子基材をなす高分子が所定のZ平均分子量、溶融流れ指数(Melt Index)及び分枝含量を有することが要求される。
【0035】
本発明の一実施例によれば、前記高分子のZ平均分子量Mzは、500,000~2,000,000、詳しくは、600,000~1,800,000、より詳しくは、800,000~1,300,000であり得る。
【0036】
前記多孔性高分子基材の厚さは特に制限されないが、詳しくは1~100μm、より詳しくは5~50μmであり、多孔性高分子基材に存在する気孔サイズ及び気孔度も特に制限されないが、各々0.01~50μm及び10~95%であることが望ましい。
【0037】
本発明の一具現例によれば、前記有機/無機複合分離膜は、前記多孔性高分子基材の少なくとも一面の上に位置し、複数の無機物粒子と、前記無機物粒子の表面の一部または全部に位置して前記無機物粒子同士を連結及び固定するバインダー高分子と、を含む多孔性コーティング層をさらに含み得る。
【0038】
前記多孔性コーティング層の形成に用いられるバインダー高分子としては、当業界で多孔性コーティング層の形成に通常使用される高分子を用い得る。特に、ガラス転移温度(glass transition temperature,Tg)が-200~200℃である高分子を用い得、これは、最終的に形成される多孔性コーティング層の柔軟性及び弾性などのような機械的物性を向上させることができるためである。このようなバインダー高分子は、無機物粒子同士を連結及び安定的に固定するバインダーの役割を果たすことで、多孔性コーティング層が導入された分離膜の機械的物性の低下防止に寄与する。
【0039】
また、前記バインダー高分子は、イオン伝導能力を必ずしも有さなくてもよいが、イオン伝導能力を有する高分子を用いる場合、電気化学素子の性能をさらに向上させることができる。したがって、前記バインダー高分子は、可能な限り誘電率定数が高いものを用いることが望ましい。実際に、電解液における塩の解離度は、電解液溶媒の誘電率定数によるため、前記バインダー高分子の誘電率定数が高いほど電解質における塩の解離度を向上させることができる。このようなバインダー高分子の誘電率定数は1.0~100(測定周波数=1kHz)の範囲のものが使用可能であり、特に、10以上であり得る。
【0040】
前述した機能の外に、前記バインダー高分子は、液体電解液の含浸時、ゲル化することで高い電解液膨潤度(degree of swelling)を示すことができる特徴を有する。これによって、前記バインダー高分子の溶解度指数、即ち、ヒルデブランド溶解パラメーター(Hildebrand solubility parameter)は、15~45MPa1/2または15~25MPa1/2及び30~45MPa1/2の範囲である。したがって、ポリオレフィン類のような疎水性高分子よりは多い極性基を有する親水性高分子がさらに使用可能である。前記溶解度指数が15MPa1/2未満または45MPa1/2を超過する場合、通常の電池用液体電解液によって膨潤(swelling)しにくいことがあるためである。
【0041】
このようなバインダー高分子の非制限的な例としては、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(polyvinylidene fluoride-co-hexafluoropropylene)、ビニリデンフルオライド-トリクロロエチレン共重合体(polyvinylidene fluoride-co-trichloroethylene)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリブチルアクリレート(polybutylacrylate)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリビニルアセテート(polyvinylacetate)、エチレン酢酸ビニル共重合体(polyethylene-co-vinyl acetate)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、ポリアリレート(polyarylate)、セルロースアセテート(cellulose acetate)、セルロースアセテートブチレート(cellulose acetate butyrate)セルロースアセテートプロピオネート(cellulose acetate propionate)、シアノエチルプルラン(cyanoethylpullulan)、シアノエチルポリビニルアルコール(cyanoethylpolyvinylalcohol)、シアノエチルセルロース(cyanoethylcellulose)、シアノエチルスクロース(cyanoethylsucrose)、プルラン(pullulan)及びカルボキシルメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
前記無機物粒子とバインダー高分子との重量比は、例えば、0:50~99:1、詳しくは70:30~95:5である。バインダー高分子に対する無機物粒子の含量比が前記範囲を満す場合、バインダー高分子の含量が多くなり、形成されるコーティング層の気孔サイズ及び気孔度が減少する問題を防止することができ、バインダー高分子の含量が少ないため、形成されるコーティング層の耐剥離性が弱くなる問題も解消することができる。
【0043】
本発明の一面による分離膜は、多孔性コーティング層の成分として前述した無機物粒子及び高分子に加え、その他の添加剤をさらに含み得る。
【0044】
本発明の無機物粒子として、誘電率定数が5以上、詳しくは10以上である高誘電率無機物粒子、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子またはこれらの混合物が挙げられる。
【0045】
前記誘電率定数が5以上である無機物粒子の非制限的な例には、BaTiO、Pb(Zr,Ti)O(PZT)、Pb1-xLaZr1-yTi(PLZT)、P(Mg1/3Nb2/3)O-PbTiO(PMN-PT)、ハフニア(HfO)、SrTiO、SnO、CeO、MgO、NiO、CaO、ZnO、ZrO、Y、Al、AlO(OH)、Al・HO、TiO、SiCまたはこれらの混合物などが挙げられる。
【0046】
本明細書において、「リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子」とは、リチウム元素を含みながらもリチウムを保存せず、かつリチウムイオンを移動させる機能を有する無機物粒子をいい、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子の非制限的な例には、リチウムホスフェート(LiPO)、リチウムチタンホスフェート(LiTi(PO、0<x<2、0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(LiAlTi(PO、0<x<2、0<y<1、0<z<3)、14LiO-9Al-38TiO-39Pなどのような(LiAlTiP)系ガラス(0<x<4、0<y<13)、リチウムランタンチタネート(LiLaTiO、0<x<2、0<y<3)、Li3.25Ge0.250.75などのようなリチウムゲルマニウムチオホスフェート(LiGe、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、LiNなどのようなリチウムニトライド(Li、0<x<4、0<y<2)、LiPO-LiS-SiSなどのようなSiS系ガラス(LiSi、0<x<3、0<y<2、0<z<4)、LiI-LiS-PなどのようなP系ガラス(Li、0<x<3、0<y<3、0<z<7)またはこれらの混合物などがある。
【0047】
本発明の一実施例によれば、前記無機物粒子の平均粒径は、0.05~3μm、詳しくは0.1~2.7μm、より詳しくは0.5~2.5μmであり得る。
【0048】
前記多孔性コーティング層の厚さは特に制限されないが、詳しくは1~10μm、より詳しくは1.5~6μmであり、前記多孔性コーティング層の気孔度も特に制限されないが、35~65%であることが望ましい。
【0049】
次に、動的機械分析(Dynamic Mechanical Analysis,DMA)を用いて前記分離膜の延伸物性を測定する。
【0050】
前記分離膜の延伸物性は、動的機械分析装備を用いた標準的な方法によって測定することができ、具体的に、TA Instruments社(米国)のQ800 DMA装備を用いて測定することができる。
前記延伸物性は、前記分離膜の破断温度及び収縮率であり、かつ、安定性基準が200℃以上の破断温度及び59%以下の収縮率に定義されるか、または前記延伸物性が前記分離膜の破断荷重及び破断伸び率であり、かつ、安定性基準が0.02N以上の破断荷重及び1%以上の破断伸び率と定義される。
【0051】
先ず、前記延伸物性が前記分離膜の破断温度及び収縮率であり、かつ、安定性基準が200℃以上の破断温度及び59%以下の収縮率と定義される場合について説明する。
【0052】
本発明の一実施例によれば、前記分離膜の破断温度は、前記DMA装備のテンションモード(Tension mode)で、幅6.1mmの規格を有する分離膜試料を準備し、昇温速度は5℃/minに設定し、温度範囲は25~350℃にし、印加荷重は0.005Nにして測定した結果、分離膜試料が切れるか、または伸びる温度と定義することができる。
【0053】
前記試片の長さは、テスト装備に合わせて適切に調節でき、例えば、8~20mm、詳しくは10~11mm、より詳しくは10.3mmであり得る。また、前記試片の厚さは、テスト装備に合わせて適切に調節することができ、例えば、20μm以下、詳しくは7~20μmであり得る。
【0054】
また、前記「分離膜試料が伸びる温度」とは、動的機械分析(DMA)の温度変化による変形率グラフ(図2参照)で分離膜試料の温度変化5℃以内における変形率が+方向へ10%以上増加する時点における温度と定義される。
【0055】
前記分離膜の収縮率は、動的機械分析を用いて、幅6.1mm規格の分離膜試料を25~350℃の温度範囲で5℃/分の昇温速度で0.005Nの荷重で測定し、この際の収縮率は、[(分離膜試料の最初長さ)-(分離膜試料の最小長さ)/(分離膜試料の最初長さ)×100]で計算することができる。前記「分離膜試料の最小長さ」とは、分離膜試料を動的機械分析を用いて前記条件で昇温するとき、分離膜試料が熱によって収縮して最短長さを有するときの「長さ」を意味する。分離膜の安定性評価で安定性不合格判定を受ける場合、その最小長さは、分離膜試料が切れるか、またはその長さが伸びる直前の長さとなり得る。前記測定された結果値を200℃以上の破断温度及び59%以下の収縮率に定義された安定性基準と比較する。
【0056】
前記測定の結果、分離膜が200℃以上である破断温度と59%以下の収縮率とを共に満たすということは、正極と負極とが対面して発生する熱にも分離膜が変形しにくく、分離膜の収縮率が小さいため、分離膜の体積変化によって電池内部に生じ得る隙間や空間が小さいことから、より大きい熱の発生や爆発を防止することができ、その結果、分離膜の安定性及び電池の安定性が確保されるということを意味する。
【0057】
前記測定された結果値と200℃以上の破断温度及び59%以下の収縮率に定義された安定性基準とを比較した結果、前記測定された結果値が安定性基準を満たす場合には、安定性合格の分離膜に分類し、前記安定性基準を満たさない場合には、安定性不合格の分離膜に分類する。
【0058】
次に、前記延伸物性が前記分離膜の破断荷重及び破断伸び率であり、かつ、安定性基準が0.02N以上の破断荷重及び1%以上の破断伸び率に定義される場合について説明する。
【0059】
本発明の一実施例によれば、前記分離膜の破断荷重及び破断伸び率の測定方法は、動的機械分析を用いて、幅6.1mm及び長さ10mm規格の分離膜試料を200℃の温度で0.002Nから1分当たり0.001Nずつ増加させながら破断発生時における荷重及び伸び率を測定することができる。
【0060】
図1は、分離膜の破断実験時における変形率及び静荷重を示したグラフである。図1を参照すれば、破断発生時における荷重及び伸び率とは、所定規格の分離膜の長さを変形させるために付加する荷重を増加させる過程で、分離膜がこれ以上変形せずに破断する時点における荷重及び変形率を意味する。
【0061】
前記試片の長さは、テスト装備に合わせて適切に調節でき、例えば、8~20mm、詳しくは10~11mm、より詳しくは10.3mmであり得る。また、前記試片の厚さは、テスト装備に合わせて適切に調節でき、例えば、20μm以下、詳しくは7~20μmであり得る。
【0062】
前記測定された結果値を0.02N以上の破断荷重及び1%以上の破断伸び率に定義された安定性基準と比較する。
【0063】
前記測定結果、分離膜が0.02N以上の破断荷重と1%以上の破断伸び率とを共に満たすということは、外部衝撃や熱に破損しにくく、バッテリーの爆発安定性が増加したことを意味する。
【0064】
前記測定された結果値と0.02N以上の破断荷重及び1%以上の破断伸び率と定義された安定性基準とを比較した結果、前記測定された結果値が安定性基準を満たす場合には、安定性合格の分離膜に分類し、前記安定性基準を満たさない場合には、安定性不合格の分離膜に分類する。
【0065】
前記安定性合格の分離膜及び前記安定性不合格の分離膜は、これと同じ分離膜を装着した二次電池の釘刺し試験を行う場合、各々合格及び不合格の評価を受ける。
【0066】
釘刺し試験時、正極と負極とが対面して発熱反応が発生し、この際の発熱温度がかなり高い。したがって、本発明の分離膜安定性の評価方法においてはこのような実際の釘刺し試験時に発生する熱環境を最大限に反映して模写するので、このような評価結果から、高温で破断が発生せず収縮率が小さいと判定された分離膜を適用した電池も、釘刺し試験時において同じ安定性評価を受けると予想される。
【0067】
これによって、本発明の分離膜安定性の評価方法は、前記分離膜を備えた二次電池の釘刺し試験の結果と整合するので、分離膜のレオロジー特性評価のみで、別の二次電池の組立てによるテストを行わなくても、二次電池の安全性を予測することができる。
【0068】
この際、前記釘刺し試験は、前記二次電池を25℃で4.25Vの電圧で満充電して、直径3mmの釘を用いて電池の中央を貫通させた後、発火する場合は不合格、発火しない場合は合格として評価する。
【0069】
前述の二次電池は、通常のカソードとアノードを両電極にし、これらの間に分離膜を挟んで電極組立体を構成し、これを電池ケースに収納して電解液を注入して製造することができる。
【0070】
この際、適用されるカソードとアノードは特に制限されず、当業界に知られた通常の方法によって電極活物質を電極電流集電体に結着して製造することができる。前記電極活物質のうちカソード活物質の非制限的な例には、従来の電気化学素子のカソードに使用される通常のカソード活物質が使用可能であり、特に、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウム鉄酸化物またはこれらを組み合わせたリチウム複合酸化物を用いることが望ましい。アノード活物質の非制限的な例には、従来の電気化学素子のアノードに使用される通常のアノード活物質が使用可能であり、特に、リチウム金属またはリチウム合金、炭素、石油コーク(petroleum coke)、活性化炭素(activated carbon)、グラファイト(graphite)またはその他の炭素類などのようなリチウム吸着物質などが望ましい。カソード電流集電体の非制限的な例には、アルミニウム、ニッケルまたはこれらの組合せによって製造されるホイルなどがあり、アノード電流集電体の非制限的な例には、銅、金、ニッケルまたは銅合金またはこれらの組合せによって製造されるホイルなどが挙げられる。
【0071】
前記二次電池において使用可能な電解液は、Aのような構造の塩であって、Aは、Li、Na、Kのようなアルカリ金属陽イオンまたはこれらの組合せからなるイオンを含み、Bは、PF 、BF 、Cl、Br、I、ClO 、AsF 、CHCO 、CFSO 、N(CFSO 、C(CFSO のような陰イオンまたはこれらの組合せからなるイオンを含む塩が、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、エチルメチルカーボネート(EMC)、γ-ブチロラクトンまたはこれらの混合物からなる有機溶媒に溶解または解離したものが挙げられるが、これらに限定されることではない。
【0072】
前記電解液の注入は、最終製品の製造工程及び要求物性に応じて、電池の製造工程における適切な段階で行われ得る。即ち、電池の組立ての前、または電池の組立ての最終段階などに適用することができる。
【0073】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0074】
サンプルA
サンプルAの分離膜として、下記の表1の物性を有するポリエチレン多孔膜を準備した。
【0075】
<カソード及びアノードの製造>
カソード活物質として機能するLi[Ni0.6Mn0.2Co0.2]Oを96.7重量部、導電材として機能するグラファイトを1.3重量部、結合剤として機能するポリビニリデンフルオライド(PVdF)を2.0重量部混合し、カソード合剤を調製した。得られたカソード合剤を溶媒として機能する1-メチル-2-ピロリドンに分散させることで、カソード合剤スラリーを調製した。このスラリーを厚さ20μmのアルミニウムホイルの両面に各々コーティング、乾燥及び圧着してカソードを製造した。
【0076】
アノード活物質として機能する人造黒鉛と天然黒鉛(重量比90:10)を97.6重量部、結合剤として機能するスチレン-ブタジエンゴム(SBR)を1.2重量部、カルボキシルメチルセルロース(CMC)を1.2重量部混合し、アノード合剤を調製した。このアノード合剤を溶媒として機能するイオン交換水に分散させることで、アノード合剤スラリーを調製した。このスラリーを厚さ20μmの銅ホイルの両面にコーティング、乾燥及び圧着してアノードを製造した。
【0077】
<リチウム二次電池の製造>
エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)及びジエチルカーボネート(DEC)を3:3:4(体積比)の組成で混合した有機溶媒にLiPFを1.0Mの濃度になるように溶解して非水性電解液を製造した。
【0078】
前記製造されたカソードとアノードとの間にサンプルAの分離膜が介在されるように積層し、これをパウチに収納した後、前記電解液を注入してサンプルAのリチウム二次電池を製造した。
【0079】
サンプルB
サンプルBの分離膜として下記の表1の物性を有するポリエチレン多孔膜を準備した。
分離膜としてサンプルBの分離膜を用いたことを除いては、サンプルAと同様の方法でサンプルBの二次電池を製造した。
【0080】
サンプルC
サンプルCの分離膜として下記の表1の物性を有するポリエチレン多孔膜を準備した。
分離膜としてサンプルCの分離膜を用いたことを除いては、サンプルAと同様の方法でサンプルCの二次電池を製造した。
【0081】
サンプルD
サンプルDの分離膜として下記の表1の物性を有するポリエチレン多孔膜を準備した。
分離膜としてサンプルDの分離膜を用いたことを除いては、サンプルAと同様の方法でサンプルDの二次電池を製造した。
【0082】
サンプルE
サンプルEの分離膜として下記の表1の物性を有するポリエチレン多孔膜を準備した。
分離膜としてサンプルEの分離膜を用いたことを除いては、サンプルAと同様の方法でサンプルEの二次電池を製造した。
【0083】
サンプルF
サンプルFの分離膜として有機・無機多孔性コーティング層を備えたポリエチレン多孔膜を準備し、この際、ポリエチレン多孔膜としてサンプルAの分離膜を用いた。
分離膜としてサンプルFの分離膜を用いたことを除いては、サンプルAと同様の方法でサンプルFの二次電池を製造した。
【0084】
具体的にはサンプルFの分離膜は、次のように製造した。
【0085】
バインダー高分子としてPVdF-HFP(ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体)16重量部をアセトン184重量部に固形分8重量%の割合で添加し、50℃で約12時間以上溶解することでバインダー高分子溶液を準備した。準備されたバインダー高分子溶液にバインダー高分子と無機物粒子である平均粒径500nmのアルミナ(Al)との重量比が10:90になるようにアルミナを添加し、分散させることで多孔性分離膜用スラリーを製造した。
【0086】
このように製造されたスラリーをディップ(dip)コーティング法でサンプルAの分離膜の両面にコーティングし、コーティング厚さを各々約4μmに調節し、両面に多孔性コーティング層を各々備えたセパレータを製造した。
【0087】
サンプルG
サンプルGの分離膜として下記の表1の物性を有するポリエチレン多孔膜を準備した。
分離膜としてサンプルGの分離膜を用いたことを除いては、サンプルAと同様の方法でサンプルGの二次電池を製造した。
【0088】
サンプルH
サンプルHの分離膜として、有機・無機多孔性コーティング層を備えたポリエチレン多孔膜を準備し、この際、ポリエチレン多孔膜としてサンプルCの分離膜を用いた。
分離膜としてサンプルHの分離膜を用いたことを除いては、サンプルAと同様の方法でサンプルHの二次電池を製造した。
【0089】
具体的にサンプルHの分離膜は、次のように製造した。
【0090】
バインダー高分子としてPVdF-HFP(ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体)16重量部を、アセトン184重量部に固形分8重量%の割合で添加し、50℃で約12時間以上溶解することでバインダー高分子溶液を準備した。準備されたバインダー高分子溶液にバインダー高分子と無機物粒子である平均粒径500nmのアルミナ(Al)との重量比が10:90になるようにアルミナを添加し、分散させることで多孔性分離膜用スラリーを製造した。
【0091】
このように製造されたスラリーをディップコーティング法でサンプルCの分離膜の両面にコーティングし、コーティング厚さを各々約4μmに調節し、両面に多孔性コーティング層を各々備えたセパレータを製造した。
【0092】
サンプルI
サンプルIの分離膜として下記の表1の物性を有するポリエチレン多孔膜を準備した。
分離膜としてサンプルIの分離膜を用いたことを除いては、サンプルAと同様の方法でサンプルIの二次電池を製造した。
【0093】
サンプルJ
サンプルJの分離膜として下記の表1の物性を有するポリエチレン多孔膜を準備した。
分離膜としてサンプルJの分離膜を用いたことを除いては、サンプルAと同様の方法でサンプルJの二次電池を製造した。
【0094】
サンプルK
サンプルKの分離膜として下記の表1の物性を有するポリエチレン多孔膜を準備した。
分離膜としてサンプルKの分離膜を用いたことを除いては、サンプルAと同様の方法でサンプルKの二次電池を製造した。
【0095】
サンプルL
サンプルLの分離膜として下記の表1の物性を有するポリエチレン多孔膜を準備した。
分離膜としてサンプルLの分離膜を用いたことを除いては、サンプルAと同様の方法でサンプルKの二次電池を製造した。
【0096】
【表1】
【0097】
前記表1において、通気度、気孔度、重量及びERの測定方法は、下記のようである。
【0098】
通気度
「通気度(air permeability)とは、セパレータに対して100ccの空気が透過する時間を意味し、その単位として秒(second)/100ccを用いており、透過時間と相互交換して使用可能であり、通常ガーレー(Gurley)値などで表される。
【0099】
前記通気度は、ASTM D726-94方法によって測定した。ここで、使われたガーレーは、空気の流れに対する抵抗であって、ガーレーデンソメータ(densometer)によって測定される。ここで説明されたガーレー空気透過度の値は、100ccの空気が12.2inHOの圧力下で1inの断面を通過するのにかかる時間(秒)、即ち、通気時間で示す。
【0100】
気孔度
「気孔度(porosity)」は、分離膜の体積に対して気孔が占める体積の割合を意味し、気孔度は、ASTM D-2873によって測定した。
【0101】
重量
分離膜を横1m×縦1mの規格で分離膜を裁断して重量を測定した。
【0102】
分離膜抵抗(ER)
EC(エチレンカーボネート)/EMC(エチルメチルカーボネート)=1:2の体積比、1M LiPFを含む電解液を準備した分離膜に充分濡らし、このような分離膜のみを用いてコインセルを製造した。
【0103】
製造したコインセルを、常温で1日間放置して分離膜抵抗(ER)をインピーダンス測定法で測定した。
【0104】
評価結果
(1)破断温度評価
サンプルA~Lの分離膜に対する破断温度を評価し、その結果を表2に示した。また、サンプルA~Fの分離膜の温度増加による変形率のグラフを図2に示した。
この際、破断温度の評価方法は、下記のようであった。
-評価機器:TA社製のQ800装置
-評価温度範囲:25~350℃
-昇温速度:5℃/min
-負荷荷重:0.005N
-分離膜試料の規格:幅6.1mm
-分離膜試料の最初長さ:10.3mm
【0105】
(2)収縮率評価
サンプルA~Lの分離膜に対する収縮率を評価し、その結果を表2に示した。また、サンプルA~Lの分離膜の収縮率に対する破断温度のグラフを図3に示した。
【0106】
この際、収縮率の評価方法は、下記のようであった。
【0107】
動的機械分析(Dynamic Mechanical Analysis,DMA)を用いて、幅6.1mm規格の分離膜試料を25~350℃の温度範囲で5℃/minの昇温速度で0.005Nの荷重による収縮率を測定した。
【0108】
この際、収縮率は、[(分離膜試料の最初長さ)-(分離膜試料の最小長さ)/(分離膜試料の最初長さ)×100]で計算した。
【0109】
(3)破断荷重及び破断伸び率の評価
サンプルA~Lの分離膜に対する破断荷重及び破断伸び率を評価し、その結果を表2に示した。また、サンプルA~Lの分離膜の破断伸び率に対する破断荷重のグラフを図4に示した。
【0110】
この際、破断荷重及び破断伸び率の評価方法は、下記のようであった。
-評価機器:DMA引張ジオメトリ(製造社:TA,製品名:Q800)
-評価温度:200℃に維持
-分離膜試料の規格:幅6.1mm(固定)、
-分離膜試料の最初長さ:10mm
-分離膜試料をDMA引張ジオメトリにローディングし、荷重を0.002Nから1分当たり0.001Nずつ増加させて破断が発生するまでの荷重及び伸び率を測定
-分離膜試料の破断点における伸び率及び荷重を記録して物性を比較
【0111】
(4)二次電池の釘刺し試験による安定性の評価
サンプルA~Lの二次電池を25℃で4.25V電圧で満充電し、直径3mmの釘を用いて電池の中央を貫通させた後、発火有無を観察した。この際、釘の貫通速度は80mm/secにした。結果は、下記の表2に示した。
【0112】
【表2】
【0113】
前記表2を参照すれば、DMAを用いた分離膜の破断温度及び収縮率の評価結果において、破断温度200℃以上、収縮率59%以下の条件を共に満たす場合、このような分離膜を備えた二次電池も釘刺し試験で合格結果を示しており、これに対し、前記分離膜の破断温度及び収縮率の評価結果において、破断温度200℃以上、収縮率59%以下の条件を少なくとも一つ以上満さない場合、このような分離膜を備えた二次電池は、釘刺し試験で不合格結果を示した。
【0114】
また、DMAを用いた分離膜の破断荷重及び破断伸び率の評価結果において、0.02N以上の破断荷重及び1%以上の破断伸び率の条件を共に満たす場合、このような分離膜を備えた二次電池も釘刺し試験で合格結果を示しており、これに対し、分離膜の破断荷重及び破断伸び率の評価結果において、0.02N以上の破断荷重及び1%以上の破断伸び率の条件を少なくとも一つ以上満たさない場合、このような分離膜を備えた二次電池は、釘刺し試験で不合格結果を示した。
【0115】
前記サンプルF、H、Dが、破断温度の測定時、破断していないにも関わらず、図2で350℃と破断温度が表されたことは、実際の破断温度ではなく、破断温度の評価時における温度範囲が25~350℃であり、最大温度である350℃においても破断しなかったため、350℃で表されたのである。
【0116】
また、図4では、破断荷重及び破断伸び率の評価結果を示した。図4を参照すれば、サンプルB、J、D、H、Fが釘刺し試験に合格したが、このうちサンプルFのみが破断荷重及び破断伸び率の評価で破断しておらず、残りのサンプルB、J、D、Hは破断した。破断したサンプルB、J、D、Hに関して図4を参照すれば、破断荷重及び破断伸び率の面で、サンプルH>D>J>B順に高い破断荷重及び伸び率を示していることから、相対的に安定性に優れていることをより詳細に比較することができる。
【0117】
このことから、本発明による分離膜の安定性評価方法によれば、実際の二次電池を組み立てて釘刺し試験を行わなくても、分離膜そのもののDMAの破断温度及び収縮率の評価結果、または破断荷重及び破断伸び率の評価結果から正確に予測可能であるということが分かる。
図1
図2
図3
図4