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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】海上構造物のためのソフト-ソフト基礎
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/52 20060101AFI20221114BHJP
   E02D 27/32 20060101ALI20221114BHJP
   F03D 13/25 20160101ALI20221114BHJP
【FI】
E02D27/52 Z
E02D27/32 Z
F03D13/25
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020521531
(86)(22)【出願日】2018-09-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 EP2018075888
(87)【国際公開番号】W WO2019076586
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-06-09
(31)【優先権主張番号】102017124412.3
(32)【優先日】2017-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516243777
【氏名又は名称】イノジー ソシエタス ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】innogy SE
【住所又は居所原語表記】Opernplatz 1, D-45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル バルトミン
(72)【発明者】
【氏名】ベルナデット ツィプフェル
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-094929(JP,A)
【文献】特開2014-111924(JP,A)
【文献】特開2016-199874(JP,A)
【文献】特開2016-156381(JP,A)
【文献】特開2016-022783(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2522850(EP,A2)
【文献】特開2014-101792(JP,A)
【文献】特開2013-160109(JP,A)
【文献】特開2001-241374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/52
E02D 27/32
F03D 13/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海上構造物の基礎であって、
海底(M)内に固定されうるアンカリング部分(3)と、反対の端に設けられた接続部分とを有するタワー(2)であって、水面(S)より上に設けられうる発電システムが前記タワー(2)の前記接続部分に接続されることができる、タワー(2)を含み、前記基礎は、少なくとも一つの復原要素を含み、前記少なくとも一つの復原要素は、直接または一つ以上の移行ピースを介して間接的に前記タワー(2)に接続されることができる、
海上構造物の基礎において、
前記海上構造物の固有振動数が、前記発電システムに接続される少なくとも一つの回転する加振構成要素の回転数の一倍の加振成分1Pより小さく、
前記海上構造物の前記固有振動数は、0.15Hzの振動数より小さく
記少なくとも一つの復原要素は、前記タワー(2)の長手方向に延びる軸の方向が垂直方向に延びる軸(V)を外れて延びる前記タワー(2)の傾斜位置が生じた場合に、前記タワー(2)がまっすぐにされうるように前記少なくとも一つの復原要素によって前記タワー(2)に張力および/または圧縮力が伝達されうるように設計される、
ことを特徴とする、基礎。
【請求項2】
海底(M)内に固定されうる前記タワー(2)の前記アンカリング部分(3)は、海底(M)内に係合し、前記タワー(2)の前記傾斜位置において、海底(M)内に係合する前記タワー(2)の前記アンカリング部分(3)が海底(M)内で移動されうることを特徴とする、請求項1に記載の基礎。
【請求項3】
基礎の荷重支持能力の限界状態で生じる海底(M)に対する前記タワー(2)の前記傾斜位置は、0.10°より大きく、周期的荷重後の前記傾斜位置は、0.05°より大きいことを特徴とする、請求項2に記載の基礎。
【請求項4】
前記タワー(2)の上側部分(4)が前記タワー(2)の前記アンカリング部分(3)に対して移動可能であり、前記タワー(2)の傾斜位置が生じた場合に、海底(M)内の前記アンカリング部分(3)は実質的にその位置にとどまることを特徴とする、請求項1に記載の基礎。
【請求項5】
前記タワー(2)の前記アンカリング部分(3)は、基本的に中空円筒状であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の基礎。
【請求項6】
前記タワー(2)の上側部分(4)は、少なくとも部分的に前記タワー(2)の前記アンカリング部分(3)の中および受け入れエリア内に移動可能に備え付けられ、前記受け入れエリア内の前記タワー(2)の前記アンカリング部分(3)は充填材料で満たされることを特徴とする、請求項4または請求項5に記載の基礎。
【請求項7】
前記タワー(2)の前記上側部分(4)は、前記アンカリング部分(3)の前記受け入れエリア内の前記タワー(2)から円錐状に延びることを特徴とする、請求項に記載の基礎。
【請求項8】
前記タワー(2)の前記アンカリング部分(3)の前記受け入れエリアは、前記タワー(2)の前記上側部分(4)が前記タワー(2)の前記アンカリング部分(3)に対して移動したときに前記タワー(2)の前記上側部分(4)が弾発および/または制動されうるように、少なくとも一つのスプリングおよび/または制動要素を有することを特徴とする、請求項6または7に記載の基礎。
【請求項9】
前記少なくとも一つの復原要素は、少なくとも一つの浮力体(6)を含むかまたは少なくとも一つの浮力体(6)として設計され、前記少なくとも一つの浮力体(6)は、実質的に円錐形状または湾曲形状を有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の基礎。
【請求項10】
前記少なくとも一つの浮力体(6)は、水面(S)より下に設けられ、水平平面内で前記タワー(2)を少なくとも部分的に取り囲む、請求項9に記載の基礎。
【請求項11】
前記少なくとも一つの復原要素は、一つ以上のアンカーを含み、前記一つ以上のアンカーは、海底(M)に接続可能であり、それぞれ可撓性接続部によって前記タワー(2)に接続されており、前記可撓性接続部は、前記タワー(2)が傾斜位置にあるときに前記可撓性接続部を張ることにより前記傾斜位置とは反対方向に復原張力および/または圧縮力を生成することを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の基礎。
【請求項12】
前記少なくとも一つの復原要素は、一つ以上の安定化装備を含むかまたは一つ以上の安定化装備として設計され、好ましくは前記一つ以上の安定化装備は、前記タワー(2)から延長可能であるかまたは好ましくは一体化されたジャイロ安定化部であることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の基礎。
【請求項13】
前記海上構造物の重心は、上回らなければならない海底(M)の地盤の自重および地盤の摩擦力の部分が基礎により変位される液体の重心より下にあるように設計されることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の基礎。
【請求項14】
前記発電システムは風力タービンのタービンであり、前記加振構成要素は前記風力タービンの少なくとも一つのロータブレードであることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の基礎。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の基礎を含む海上構造物。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか一項に記載の海上構造物の基礎を設計する方法であって、
目的の基礎を含む前記海上構造物の固有振動数を、前記固有振動数が少なくとも一つの前記加振構成要素の回転数の一倍の加振成分1Pより小さいように決定するステップ、
を含み、
前記固有振動数を決定するステップは、前記基礎の変化するパラメータに少なくとも部分的に反復的に基づく、
方法。
【請求項17】
少なくとも一つのプロセッサとコンピュータプログラムコードを備えた少なくとも一つのメモリとを含む装置であって、前記少なくとも一つのメモリおよび前記コンピュータプログラムコードは、前記少なくとも一つのプロセッサとともに、請求項16に記載の少なくとも一つの方法を行うようにおよび/または制御するように設けられる、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海上構造物の基礎およびそのような海上構造物の基礎の設計の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海上構造物、特に海上風力タービンのための基礎または基礎構造物は、一般に、それらの固有振動数に関して、他の振動数の加振成分の帯域と、例えば発電システムとして使用されるタービンのロータの振動数の帯域と、可能な限り重ならないように設計される。一般に、そのような風力タービンのタワーとしてのいわゆるモノパイルの場合には、1P振動数帯域と3P振動数帯域との間にある固有振動数fが選択され、1P振動数帯域は、回転数の一倍の加振成分に対応し、3P振動数は、タービンのロータの回転数の三倍の加振成分に対応する。特に、共鳴振動を回避するために、海上構造物の固有振動数を、例えば1P振動数帯域より少なくとも10%大きく3P振動数帯域より10%小さく設計するよう試みられる。海上構造物のそのような「スティフ」タワーまたはパイルの設計は、「ソフト-スティフ」とも呼ばれる。
【0003】
特に海上風力タービンのために、1P振動数帯域より大きい固有振動数が達成されうる地盤基礎がこれまで使用されている。海上電力システムの固有振動数の他の振動数帯域は、
(i)生じうる動波加振成分およびその結果生じる海上構造物のタワー構造物の疲労荷重または共鳴、
(ii)特に、海上風力タービンのタービンは通常、(例えば海上エリアに広がる海の状態の潮差によって引き起こされる)長期的傾斜に関してわずかな許容差しか認容しない、
(iii)軟弱基礎地盤は、地盤工学の標準化された検証基準と相反することが多い、
という理由によりこれまで回避されている。
【0004】
さらに、海上風力タービンからのタワー構造物を収容するための浮体式基礎が知られており、これらの基礎は通常20mを超える、または好ましくは40mをも超える水深を必要とする。海上風力タービン用のこのタイプの浮体式基礎は、複雑なアンカリングシステムおよび可撓性浮体式ケーブルガイドも必要とする。
【0005】
沿岸水域では、約40mの水深を超えないことが多く、例えば海上風力タービンのタワーのための浮体式基礎も軟弱地盤および水深不足のために不可能であることから、海上風力発電施設のタワーのための浮体式基礎が非常に高コストのソリューションによってのみ可能になりうるかまたはこの理由で用いられていないこともある。
欧州特許第2 522 850(A2)号から、吊り下げ振り子として設計された第一振り子長さと第一質量とを備えた第一振り子を有する、タワーまたは風力タービンのためのタワー振動吸収器が知られている。タワー振動吸収器の共鳴振動数の柔軟な調整のため、および低い全高での低い固有振動数の達成のために、タワー振動吸収器は、自立振り子として設計された第二振り子長さと第二質量とを備えた第二振り子を有し、質量は少なくとも一つの連結要素を介して作用方向に互いに連結される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
約40mの水深を超えないことが多い沿岸水域において、特に大きな偏位に耐え、その高い変形能により極度の荷重に持ちこたえうる、海上構造物、特に海上風力タービンのための基礎のための費用効果の高いソリューションを提供できることが望ましいであろう。
【0007】
したがって、説明された先行技術の背景に基づき、説明された問題を少なくとも部分的に減少または回避すること、すなわち、特に大きな偏位に耐え、その高い変形能により極度の荷重に持ちこたえうる海上構造物の基礎のための低コストの選択肢を提供することが目的である。
【0008】
この目的は、請求項1の特徴を備えた基礎によって解決される。
【0009】
以下では、いくつかの例示的な実施形態をより詳細に説明する。
【0010】
海上構造物は、例えば海上に設置される風力タービンである。さらに、海上構造物は、例えば変電所、または掘削もしくは生産プラットフォームでありうる。
【0011】
ある海上構造物、特に風力タービンは通常、基礎により海底に定着される。風力タービンのための一般的なタイプの基礎は、例えば、いわゆるモノパイルであり、風力タービンのタワーが海底まで延び、アンカリング部分が海底内に固定される。これによりタワーは、その固定具またはアンカリング部分によって海底内に完全に保持される。
【0012】
大きな偏位に耐え、高度の変形能によって極度の荷重も逃れることができるために、基礎は海上構造物の大きな移動を許容しなければならない。固有振動数が1P振動数帯域より大きい海上構造物は、これを許容しない。
【0013】
これに対して、本主題によるタワーのアンカリング部分は海底内にそれほど深く延びず、追加の固締要素および/または安定化要素なしでは、タワーは傾倒に対して安定しない、すなわち傾倒しうるであろう。これに対応して、本基礎は少なくとも一つの復原要素を含み、少なくとも一つの復原要素は、タワーの長手方向に延びる軸が垂直方向に延びる軸から外れて終わるタワーの傾斜位置が生じた場合に、タワーがまっすぐにされうるように少なくとも一つの復原要素によって張力および/または圧縮力がタワーに伝達されうるように(例えば幾何学的に)設計される。このようにして、タワーは傾きに対して抵抗力をもつ。
【0014】
本基礎は、タワーの強い偏位を許容し、対応する海上構造物は1P振動数帯域より小さい固有振動数を有する。
【0015】
例えば、タワーは、タワーの少なくとも一つの下側端(例えばアンカリング部分の一部)が海底と係合するような長さを有する。例えば、下側端は、(例えばモノパイルの底部だけが使用される場合に)剛基礎(独:steifen Bodengruendung,英:stiff foundation)で必要であるほど深く海底を貫通しない。
【0016】
例えば、タワーは鉄筋コンクリートからなる、および/または鋼鉄基礎(独:Stahlfundament,英:steel foundation)を含む。さらに、タワーは、いくつかの非限定的な例を挙げれば、ガラス繊維複合材料または炭素複合材料で作られるかまたはこれらを少なくとも部分的に含みうる。
【0017】
全ての態様による例示的な実施形態では、海上構造物は、発電システムおよび基礎を含み、固有振動数は、発電システムに接続されうる少なくとも一つの回転する加振構成要素の回転数の一倍の加振成分1Pより小さい。
【0018】
加振構成要素は、例えば発電システムに接続されうる風力タービンの少なくとも一つのロータブレードである。この場合、発電システムは、例えば風力タービンのタービンである。
【0019】
海上構造物の固有振動数の制限は、例えば海底内のタワーの少なくとも一部をクランプすることによって達成されうる。基本的に、固有振動数は、(最初に1P振動数帯域内へさらにシフトし、その後3P振動数帯域(少なくとも一つの加振構成要素、例えば風力タービンの少なくとも一つのロータブレードの回転数の三倍の加振成分に対応する)の方向に、その後3P振動数帯域を超えて)増加する。
【0020】
海上構造物の固有振動数のさらなる制限は、例えば、タワーの直径を変更することによって達成でき、タワーの直径が大きいほど固有振動数が増加し、その結果海上構造物の固有振動数がより高くなる(海上構造物の固有振動数を3P振動数帯域に向かっておよび3P振動数帯域を超えてシフトする)。
【0021】
したがって、基礎は、モノパイル基礎タイプ(地盤ベースの基礎)と浮体式基礎との組み合わせであり、例えば、「セミ浮体式ベース」または「セミ浮体式基礎」の用語で表されうる。
【0022】
全ての態様による目的の実施形態では、海上構造物の固有振動数は0.1Hzより小さい。
【0023】
海上構造物の固有振動数が1P振動数帯域より小さい場合には、本質的に軟弱構造物が設計される。したがって海上構造物の固有振動数は、1P振動数帯域と3P振動数帯域との間にある通常目標とされる振動数帯域より意図的に小さい。目的の基礎は、特に高い構造物(海上構造物の高さ)および深海中の海上構造物の配設の場合に、1P未満およびJONSWAP未満の固有振動数(<1P<JONSWAP=0.1Hz)を目指す。JONSWAPは、広がる海の状態および任意に潮差にもよる海上構造物の加振成分をさす。
【0024】
極端な傾斜位置が短期的および長期的に回避または補正されうるように、基礎は、非限定的な例をいくつか挙げると、浮力体、(幾何学的、例えば膨らんだ)スプリング要素、可撓性固定具(例えばロープ固定具)またはそれらの組み合わせなどの少なくとも一つの復原要素を含む。
【0025】
全ての態様による例示的な実施形態は、海底内に固定されうるタワーのアンカリング部分が海底内に係合し、タワーが傾斜位置にあるときに、海底内に係合するタワーのアンカリング部分が海底内で移動されうるものとする。
【0026】
したがって、アンカリング部分は、例えば海底内で二自由度の方向に移動しうる。二自由度の方向の移動は、例えば基本的に水平な平面内で生じる。例えばタワーが、タワーの傾きによって引き起こされる傾斜位置にある場合には、タワーのアンカリング部分のこのような移動が、これらの二自由度内の少なくとも一つの方向に生じうる。加えて、タワーのアンカリング部分は、例えば、アンカリング部分が海底内で移動するときに海底の少なくとも一部が流れるかまたは通過することができる一つ以上の穴を有しうる。この場合には、海底は(例えば水飽和のために)軟弱構造を有し、したがって海底の少なくとも一部がアンカリング部分に形成された一つまたは複数の穴を通過できるものと理解される。
【0027】
全ての態様による実施形態は、基礎の荷重支持能力の限界状態で生じる海底に対するタワーの傾斜位置が0.10°より大きく、特に0.20°より大きく、特に0.5°より大きく、周期的荷重後の傾斜位置が0.05°より大きいものとする。
【0028】
終局限界状態は、ULS荷重(終局限界状態)とも呼ばれる。海底に対する傾斜位置および周期的荷重後の傾斜位置は理論的考察に関連し、この理論的考察においては、例えば少なくとも一つの復原要素は考慮されない。
【0029】
さらに、終局限界状態は、海底に対するタワーの傾斜位置が0.10°より大きく、特に0.20°より大きく、特に0.5°より大きく、周期的荷重後の傾斜位置が0.05°より大きい反復計算で収束しない。また、これらの反復計算は、生じている可能性があるタワーの任意の傾きに対抗する少なくとも一つの復原要素を考慮せずに行われる。
【0030】
全ての態様による実施形態では、タワーの上側部分はタワーのアンカリング部分に対して移動可能であり、タワーの傾斜位置が生じた場合に、海底内のアンカリング部分は実質的にその位置にとどまる。
【0031】
例えば、タワーの上側部分とアンカリング部分との間に基礎ジョイントが形成される。この基礎ジョイントは、例えば適切に設けられるかまたは基礎ジョイントに含まれるスプリングおよび/または制動要素によって弾発および/または制動され得、これによりタワーの傾き安定性が強化される。
【0032】
タワーの上側部分は、タワーのアンカリング部分に対して、例えば少なくとも二自由度の方向に、例えばタワーを実質的に垂直方向に設けられたタワーの水平平面の方向に傾けるために移動可能である。
【0033】
全ての態様による例示的な実施形態は、タワーのアンカリング部分が基本的に中空円筒状であるものとする。
【0034】
したがって、タワーのアンカリング部分は、海底の一部がアンカリング部分の中空円筒状エリアを満たすように海底内に固定される。これにより、海底内のアンカリング部分の、したがって海上構造物のより良好な固定が可能になる。
【0035】
全ての態様によるさらなる実施形態では、タワーの上側部分は少なくとも部分的にタワーのアンカリング部分の中および受け入れエリア内に移動可能に備え付けられ、特に、受け入れエリア内のタワーのアンカリング部分は、充填材料で満たされる。
【0036】
タワーの上側部分が受け入れられうるタワーのアンカリング部分の受け入れエリア内のタワーの上側部分の移動可能な支持は、例えば成形基礎ジョイントによって実現される。既に上述したように、この基礎ジョイントは、例えば適切に設けられるかまたは基礎ジョイントに含まれる一つ以上のスプリングおよび/または制動要素によって、弾発および/または制動されうる。
【0037】
全ての態様による例示的な実施形態は、タワーの上側部分が、アンカリング部分の受け入れエリア内のタワーから円錐状に延びるものとする。
【0038】
タワーのアンカリング部分は、例えば、タワーの上側部分がタワーのアンカリング部分と係合できるように、中空または中空円筒状である。タワーの上側部分は、例えば、アンカリング部分内へと下方へ先細になる円筒形状を有する。
【0039】
例えば、タワーのアンカリング部分は、少なくとも部分的に海底内へ貫通または突出し、タワーの上側部分は、海底より上に位置する。あるいは、タワーのアンカリング部分は、海底を完全に貫通するように設けられ、タワーの上側部分は、アンカリング部分内のタワーの上側部分の少なくとも一部もアンカリング部分に取り囲まれて海底を貫通するように、アンカリング部分内に設けられる。
【0040】
全ての態様による実施形態では、タワーのアンカリング部分の受け入れエリアは、タワーの上側部分がタワーのアンカリング部分に対して移動したときにタワーの上側部分が弾発および/または制動されうるように、少なくとも一つのスプリングおよび/または制動要素を有する。
【0041】
少なくとも一つのスプリングおよび/または制動要素は、例えば基礎ジョイントを弾発および/または制動しうる。少なくとも一つのスプリングおよび/または制動要素によって、例えばタワーの傾き安定性が強化されうる。
【0042】
全ての態様による目的の例示的な設計は、少なくとも一つの復原要素が少なくとも一つの浮力体を含むかまたは少なくとも一つの浮力体として設計され、特に少なくとも一つの浮力体は実質的に円錐形状または湾曲形状を有するものとする。
【0043】
海上構造物が1P振動数帯域より小さい固有振動数を有するような基礎の設計に起因して、特に海上構造物が低下または沈下するのを防ぐために基礎に少なくとも一つの浮力体が含まれることが必要でありうる。全体として、基礎を海底内および少なくとも一つの浮力体に固定する結果生じる力は、海上構造物の重量に対抗しなければならない。
【0044】
タワーのアンカリング部分が海底内により深く係合するほど、例えば海上構造物が低下または沈下するのを防ぐために必要な少なくとも一つの浮力体からの浮力が小さくなる。
【0045】
さらに、少なくとも一つの浮力体によって引き起こされる浮力の結果、海上構造物のより低い固有振動数が生じ、これにより固有振動数の制限が可能になる。これは、特に海上構造物のセミ浮体式基礎に起因する。
【0046】
全ての態様によるさらなる実施形態では、少なくとも一つの浮力体は水面より下に設けられ、水平平面内でタワーを少なくとも部分的に取り囲む。
【0047】
あるいは、タワーが直立位置にあるときに、少なくとも一つの浮力体が水位線上に載って設けられる。例えば、少なくとも一つの浮力体は、タワーの外側壁から延びる少なくとも一つのアームに設けられうる。
【0048】
全ての態様による例示的な実施形態は、少なくとも一つの復原要素が一つ以上のアンカーを含み、一つ以上のアンカーは海底に接続可能であり、それぞれ可撓性接続部によってタワーに接続されており、これによりタワーが傾斜位置にあるときに可撓性接続部が締められることにより傾斜位置とは反対方向に復原張力および/または圧縮力が生成されるものとする。
【0049】
可撓性接続部は、例えば、いわゆるチェーンラインを形成するチェーンまたはロープである。タワーが傾斜位置にあるときには、可撓性接続部により、このチェーンラインが張られることにより、傾斜位置とは反対方向に、例えば復原張力および/または圧縮力、例えばケーブルおよび/またはチェーン力が引き起こされる。
【0050】
例えば、一つ以上のアンカーは、それぞれの可撓性接続部と一緒にアンカーシステムを形成する。
【0051】
全ての態様による実施形態では、少なくとも一つの復原要素は、一つ以上の安定化装備を含むかまたは一つ以上の安定化装備として設計され、好ましくは一つ以上の安定化装備は、タワーから延長可能であるかまたは好ましくは一体化されたジャイロ安定化部である。
【0052】
あるいは、一つ以上の安定化装備がタワーに永続的に設置される。
【0053】
さらなる実施形態では、少なくとも一つの復原要素は、機械的アンカリングシステムである。このような機械的アンカリングシステムは、例えば一つ以上のアンカーロープを含み、一つ以上のアンカーロープは、例えばいわゆる吸引バケットおよび/またはパイルに接続される。吸引バケットおよび/またはパイルは、海底への(追加の)固定を可能にする。
【0054】
全ての態様による例示的な実施形態は、海上構造物の重心が、上回らなければならない海底の地盤の自重および地盤の摩擦力の部分が基礎により変位される液体の重心より下にあるように設計されるものとする。
【0055】
海上構造物の重心をこのように設けることにより、海上構造物は、海上構造物を傾けるために海上構造物に作用する力に影響されにくくなる。重心がより低くに位置しうるほど、海上構造物の傾倒に対する安定性が大きくなる。しかし、特に海上風力タービンとして設計される海上構造物の場合には、タワーの上部に位置する例えばタービンといくつかのロータブレードとを含む発電ユニットおよび発電ユニットの大きな重量が重心を上方に垂直方向にシフトさせるため、重心の低い配設が困難なこともある。
【0056】
例えば重心を回転中心より下に置くことによって、リセット効果が生み出される。したがって、さらなる可能な実施形態においては、全体的な重心を下方に、例えばアンカリング部分を表す例えば地盤内に置かれた中空プロファイルの下側部内にシフトすることが有利である。これは後で、例えば基礎が既に海底内に設けられた後に、例えば中空部分内のセメント懸濁物および/またはグラウトにより実施されることもできる。
【0057】
全ての態様によるさらなる例示的な設計は、結果として生じる海上構造物の重心が、例えば表面摩擦により動員される地盤の反力および地盤の自重を考慮して、フォームの重心または浮力の中心(独:Formschwerpunktes bzw. Auftriebsschwerpunktes,英:center of gravity of form or buoyancy)より下にあることを特徴とする。
【0058】
全ての態様によるさらなる例示的な設計は、例えばシェル摩擦により動員される地盤の反力および地盤の自重を考慮して、結果として生じる海上構造物の重心が回転中心より下にあることを特徴とする。
【0059】
全ての態様によるさらなる例示的な実施形態は、例えばシェル摩擦により動員される地盤の反力および地盤の自重を考慮して、結果として生じる海上構造物の重心がメタセンターより下にあることを特徴とする。
【0060】
例えば、基礎は、少なくとも部分的に浮体でありうる、すなわち完全には浮体ではない。例えば、メタセンターは、二つの隣接する角度位置に属する浮力ベクトルのインターポーションである。(タワーが傾いたときの)各回転軸および各角度位置につきメタセンターが存在する。
【0061】
全ての態様による別の例示的な実施形態は、海上構造物の重心が、重心が回転中心の下にあるようにおよび/またはメタセンターが重量の重心より上にあるように設計されることを特徴とする。
【0062】
全ての態様によるさらなる例示的な実施形態は、能動的ポンピングによってまたはバラスト水の能動的ポンピングによって任意に追加的に生成されうる、例えば基礎の移動によって地盤(海底)と基礎壁との間に生成される静水圧吸引力を考慮して、タワーが傾斜位置にあるときにリセットする力、ここでは例えば単数または複数の吸引力によりタワーがまっすぐになるように、基礎のタワーの重量変位が可能であることを特徴とする。
【0063】
全ての態様によるさらなる例示的な実施形態は、タワーのアンカリング部分が二重壁であるものとする。例えば、タワーのアンカリング部分が堅い海底内に固定される場合に、底部の横方向の移動(例えば旋回移動)によりタワーの外側壁が底部から離れて、吸引および/または吸引力を生み出し、これによりさらに復原力が引き起こされうる。これは、基礎のタワーの傾き安定性にもプラスの影響を有しうる。
【0064】
全ての態様による例示的な実施形態では、海上構造物は風力タービンであり、発電システムはタービンであり、回転構成要素は少なくとも一つのロータブレードであるかまたは複数のロータブレードを含み、少なくとも一つのロータブレードはタービンに接続されうる。
【0065】
本目的は、本基礎を含む海上構造物によってさらに解決される。
【0066】
本目的は、請求項16の特徴を備えた第二態様による方法によってさらに解決される。
【0067】
第二態様によれば、海上構造物の基礎を設計する方法であって、
請求項1~14のいずれか一項に記載の基礎を含む海上構造物の固有振動数を、固有振動数が少なくとも一つの加振構成要素の回転数の一倍の加振成分1Pより小さいように決定するステップ、
を含み、
固有振動数を決定するステップは、基礎の変化するパラメータに少なくとも部分的に反復的に基づく、方法。
【0068】
第二態様によるさらなる実施形態では、パラメータは、以下のパラメータ(i)~(viii)、
(i)海上構造物の現場での水深、
(ii)発電システム(例えばタービン(ゴンドラとも呼ばれる)および/またはロータブレードを含む)の重量、
(iii)タワーの重量(例えばタワーの長さ×使用材料)、
(iv)海上構造物の総重量、
(v)鉛直安定性(例えば現場(例えば海底)全体の侵食)、
(vi)安定浮力(例えば浮力体によって引き起こされる)、
(vii)復原力(例えば剛地盤、地盤の横方向の移動(旋回、ここで外側タワー壁が床から離れ、それにより吸引および/もしくは吸引力を生み出し、これによりさらに復原力が生み出されうる、または、少なくとも一つの復原要素によって引き起こされる張力および/もしくは圧縮力)、および
(viii)海上建設の費用、
のうちの一つ以上を含む。
【0069】
その結果、本方法は、例えば(+地盤)+(-浮揚力)=安定に必要な力の組み合わせの式にしたがって決定される、ある力の情報を決定しうる。したがって、力の情報は、そのような特定の力を表しうる。
【0070】
海上構造物の固有振動数を決定するために、タワー重量(例えばタワーの長さおよび剛性)および水位より上のタワーの部分に特に基づいて一次固有振動数が決定されうる。続いて、さらなるパラメータが、例えばそれらを変更することにより、反復的に使用されることができ、例えば基礎の可能な固定深さは変動し得、または例えば浮力体によって引き起こされる浮力は変動しうる。各反復から結果としての海上構造物の固有振動数が提供されるため、基礎に含まれる少なくとも一つの復原要素を通じて十分な傾き安定性を保証しながら1P振動数帯域より小さい海上構造物の固有振動数を達成するように設計が行われうる。
【0071】
本方法は、例えば反復方法である。
【0072】
さらに、この方法は、第一サイドで完全浮体式基礎を想定し、第二サイドで例えば少なくとも一つの浮力体によって浮力が十分に実現できないほど小さい水深を想定した計算を可能にする。第二サイドによる例示的な現場は、例えば約5mおよび10mの高さの砂州の潮差とともに与えられ、水(潮差)が存在しない場合には、海上構造物は地盤ベースの基礎によってのみ支持されうる。
【0073】
本方法は次に、例えば、海上構造物の固有振動数が1P振動数帯域より小さくても基礎が実現可能であるか否かを判断しうる。例えば、水飽和された地盤が傾倒に対する海上構造物の十分な安定性を保証できないということもありうる。本方法は、例えば、これを反映する一つ以上の対応するパラメータに基づいて、必要なさらなる安定性が、例えば一つ以上の復原要素(例えばアンカーチェーン)によって保証されうるか否かを判断しうる。
【0074】
さらに、海上構造物の傾き安定性も保証できる人工静水圧ソリューション、例えば上記の例では意図的に生成される吸引/吸引力を利用するパイルの二重壁が可能にされうる。
【0075】
本発明の第三態様によれば、第二態様による方法を実施および/または制御するように適合されるかまたは対応する手段を含む装置が開示される。第二態様で言及される方法の装置は、特に、第三態様で言及される一つ以上の装置である。
【0076】
本発明の第三態様によれば、少なくとも一つのプロセッサとコンピュータプログラムコードを含む少なくとも一つのメモリとを含む代替的装置も説明され、前記少なくとも一つのメモリおよび前記コンピュータプログラムコードは、前記少なくとも一つのプロセッサとともに、第二態様による少なくとも一つの方法を実施および/または制御するように適合される。プロセッサは、例えば制御ユニット、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)として理解されねばならない。
【0077】
例えば、例示的な装置は、プログラムメモリおよび/またはメインメモリなどの情報を記憶するための手段をさらに含む。例えば、本発明の例示的な装置は、ネットワークインタフェースなど、ネットワークを介して情報を受信および/または伝送するための手段をさらに含む。例えば、例示的な本発明の装置は、一つ以上のネットワークを介して相互接続され、および/または接続可能である。
【0078】
第三態様による例示的な装置は、例えば、第二態様による例示的な方法のそれぞれのステップを実施できるようにソフトウェアおよび/またはハードウェアに関して設定されるデータ処理システムであるかまたはそれを含む。データ処理システムの例は、コンピュータ、デスクトップコンピュータ、サーバ、シンクライアント、および/またはラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、ウェアラブル、個人情報端末もしくはスマートフォンなどのポータブルコンピュータ(モバイルデバイス)である。
【0079】
さらなる装置には、例えばサーバ、および/または、例えば通信システムにおいて様々なユーザにデータ処理リソースを動的に提供するいわゆるコンピュータクラウドの一部もしくはコンポーネントが提供されうる。特に、コンピュータクラウドは、「アメリカ国立標準技術研究所」(NIST)の英用語「クラウドコンピューティング」の定義によるデータ処理インフラストラクチャである。コンピュータクラウドの例は、マイクロソフトウィンドウズアジュール(Microsoft Windows Azure)プラットフォームである。
【0080】
本発明の第三態様によれば、コンピュータプログラムがプロセッサによって実行されたときにプロセッサに第二態様による方法を実施および/または制御させるプログラム命令を含むコンピュータプログラムも説明される。本発明による例示的なプログラムは、一つ以上のプログラムを含むコンピュータ可読記憶媒体の中または上に記憶されうる。
【0081】
本発明の第三態様によれば、第三態様によるコンピュータプログラムを含むコンピュータ可読記憶媒体も説明される。コンピュータ可読記憶媒体は、磁気、電気、電磁、光および/または他の記憶媒体として設計されうる。そのようなコンピュータ可読記憶媒体は、表示式(すなわち「タッチ可能」)であるのが好ましく、例えばデータキャリアデバイスとして設計される。そのようなデータキャリアデバイスは、例えばポータブルであるかまたはデバイスに永続的にインストールされる。そのような記憶デバイスの例は、NORフラッシュメモリなどの揮発性もしくは不揮発性ランダムアクセスメモリ(RAM)、またはNANDフラッシュメモリなどの順次アクセスメモリ、および/または読み込み専用メモリ(ROM)もしくは読取り書込みメモリである。コンピュータ可読とは、例えば、記憶媒体が、コンピュータまたはデータ処理システムによって、例えばプロセッサによって、読み込みおよび/または書き込みされうることを意味すると理解されねばならない。
【0082】
本発明の第四態様によれば、第二態様による方法を一緒に行う複数の装置を含むシステムも説明される。
【0083】
第四態様による例示的なシステムは、第二態様による例示的な方法を実施するための電子デバイスまたはサーバなどの例示的な装置を含む。
【0084】
本説明で上述した本発明の例示的な実施形態は、互いとの全ての組み合わせで開示されるものとも理解されねばならない。特に、例示的な実施形態は、開示される様々な態様に関して理解されねばならない。
【0085】
特に、方法の好ましい実施形態による方法ステップの以上または以下での記載は、装置の好ましい実施形態によって方法ステップを実施するための対応する方法も開示すべきものである。同様に、方法ステップを実施するための装置の手段の開示は、対応する方法ステップも開示すべきものである。
【0086】
本発明のさらなる有利な例示的な実施形態は、本発明のいくつかの例示的な実施形態の以下の詳細な説明において、特に図面に関連して見出すことができる。しかし、図面は明確化の目的のみを果たすべきものであり、本発明の保護の範囲を決定するものではない。図面は縮尺通りではなく、単に本発明の全体的構想を例示的な様式で反映することを意図したものにすぎない。特に、図面に含まれる特徴は、決して本発明の必要な特徴と見なされてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0087】
図1】例示的な実施形態による基礎を含む海上構造物の概略図である。
図2】例示的な実施形態による基礎を含む海上構造物の概略詳細図である。
図3a】例示的な実施形態による基礎を含む海上構造物のさらなる概略詳細図である。
図3b】例示的な実施形態による基礎を含む海上構造物のさらなる概略詳細図である。
図3c】例示的な実施形態による基礎を含む海上構造物のさらなる概略詳細図である。
図3d】例示的な実施形態による基礎を含む海上構造物のさらなる概略詳細図である。
図4】振動数スペクトルの図である。
図5】特に第二態様による例示的な方法を実行できる装置500の例示的な実施形態のブロック図である。
図6】コンピュータプログラムの例示的な実施形態が記憶されうる記憶媒体の様々な例示的な実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0088】
図1は、本発明による基礎を用いて少なくとも部分的に海底(独:Meeresboden,英:seabed)2上に建てられた海上構造物1の概略図を示す。
【0089】
海上構造物1は風力タービンであり、タワー2を含み、その上側端に、三つの加振構成要素、ここでは三つのロータブレード5を備えた発電システム(例えばタービン、図1の概略図には示されない)が設けられる。
【0090】
タワー2は、アンカリング部分3とその上の上側部分4とに分割される。アンカリング部分3は、ここでは海底M内に固定される。さらに、タワーは、復原要素、ここでは円筒状のタワー2を取り囲む基本的に円錐形状の浮力体6を含む。
【0091】
浮力体6は、風力タービンに浮揚力を提供するその機能に加えて、タワー2の垂直方向に延びる軸Vを外れた傾斜配置が生じた場合に、タワー2が傾斜位置の後に再びまっすぐになり、その結果タワー2の長手方向に延びる軸の方向が再び基本的に垂直方向に延びる軸V上にくるように、浮力体6により張力および/または圧縮力がタワー2に伝達されうることも保証する。このために、浮力体6は、水面Sの下に位置する。
【0092】
タワー2は、部分的に海底M内に建てられ、部分的に浮力体6によって浮いているため、「半浮体式基礎」である。
【0093】
本発明による基礎により建てられた海上構造物1は、発電システムの三つのロータブレード5の回転数の一倍の加振成分1Pより小さい固有振動数を有する。
【0094】
海上構造物1の低い固有振動数の設計は、海上構造物1が低い一体化深さで海底Mに固定されることにより可能になる。それに対応して、アンカリング部分3の海底M内の固定だけでは、傾倒に対する海上構造物の安定性を完全に保証することはできない。アンカリング部分3が固定される海底Mが軟弱な場合、例えば(強く)水飽和された地盤である場合には、同じことが起こりうる。復原要素、ここではタワー2を取り囲む浮力体6によって傾き安定性が保証される。
【0095】
図2は、海上構造物1の詳細図を示し、これは図1とは対照的に少なくとも二つの浮力体6を含み、そのそれぞれが移行ピース10(例えばアーム)を介して海上構造物1のタワー2に接続される。浮力体6はいずれも、タワー2の長手方向が垂直に延びる軸Vに基本的に平行であるような配向で水面S上に浮いている。
【0096】
タワー2のアンカリング部分3は、図2においてタワー2の点線の傾きによって概略的に示されるように、タワーが傾いたときに海底M内で移動可能である。傾いた位置では、タワー2の長手方向は垂直に延びる軸Vから外れている。タワー2の傾斜位置が生じた場合には、手元の二つの浮力体の少なくとも一つがタワー2を取り囲む水に沈められる。ここで水没した浮力体6が、タワー2の傾斜位置の反対方向に作用する張力および/または圧縮力を生成する。その後、タワー2が再びまっすぐになる。
【0097】
海底Mを貫通するタワー2のアンカリング部分3は、海底M内で二自由度の方向に移動しうる。例えば、タワー2が、例えばタワー2が傾くことによってまたはタワーの上部に位置する発電システムの少なくとも一つのロータブレード(図2には示されない)の海および/もしくは風荷重によって引き起こされた傾斜位置にある場合には、タワー2のアンカリング部分3のそのような移動がこれらの二自由度内の少なくとも一つの方向に生じうる。
【0098】
図3aは、海上構造物1のさらなる概略詳細図を示し、海上構造物のタワー2の上側部分4は、タワー2のアンカリング部分3内で少なくとも二自由度の方向に移動されうる。
【0099】
加えて、タワー2の上側部分4は、タワー2のアンカリング部分3に対して回転可能である。これは、両方向の矢印Dによって概略的に示される。
【0100】
タワー2の上側部分4は、タワー2のアンカリング部分3の受け入れエリアに含まれるテーパ端9と係合する。この受け入れエリアは、例えば、いくつかの非限定的な例を挙げるとエラストマー、ポリマー、砂粘土、砂粘土混合物などの弾性充填材料7で満たされうる。
【0101】
加えて、タワー2のアンカリング部分3は、上側部分4が例えばアンカリング部分3に対して傾けられるタワー2の傾斜位置を弾発または制動することができる任意のスプリングおよび/または制動要素8を含む。加えて、任意のスプリングおよび/または制動要素8を用いて、タワー2の上側部分4が傾いたときに復原張力および/または圧縮力が生み出されることができ、これによりタワーの上側部分4が傾いた後にタワー2の上側部分4がまっすぐになりうる。
【0102】
ここに示すように、タワー2のアンカリング部分3は、アンカリング部分3が海底M内に安全に固定されうるように底部が開放されうる。
【0103】
図3bは、本状況において少なくとも一つの復原要素として使用されるアンカーデバイス11を示す。重り要素11aが、海底M内のアンカリング部分3の下に位置する。アンカーロープ11cが、重り要素11aをタワー2の上側部分4内に位置する接続要素11bと接続する。タワー2の上側部分4の傾斜位置が生じた場合には、アンカリングデバイス11は、タワー2の上側部分4をまっすぐにさせる復原張力および/または圧縮力を生成する。点線の傾いたタワー2によって、傾斜位置が概略的に示される。
【0104】
図3cでは、アンカリング部分3は、充填量またはグラウト量で満たされる。これは例えば、いくつかの非限定的な例を挙げれば、例えば重量骨材で強化された、および/またはスチールチップなどを含むセメント懸濁物である。
【0105】
図3dでは、タワー2のアンカリング部分3は、一つ以上の開口部12aを含む。例えば海底M内のアンカリング部分3を取り囲む分離されたエリアに位置するこれらの開口部12aを通して、静水圧吸引力によって一つ以上の復原張力および/または圧縮力が生成されうる。これらは、例えば、ここではポンプ13による能動的ポンピングにより、生成および/または増幅されうる。ポンプ13は、一つ以上のポンプ配管13aを介して開口部12aに接続される。
【0106】
能動的ポンピングまたはバラスト水の能動的ポンピングにより、重量のシフトが生成されることができ、その結果、タワー2が傾けられた場合に対応する復原力が生成されることができる。アンカリング部分3は、例えば一定の間隔でアンカリング部分3を取り囲む開口部12aを有する。傾斜位置に応じて、例えばバラスト水が一つ以上の開口部12aを通して(同時に)ポンピングされることができ、その結果、それに続く方向力によって、タワー2の傾斜位置に対抗する対応する復原力が生成されうる。
【0107】
図4は、振動数スペクトルの図を示し、風力タービンの運転中の加振成分の振動数が示される。
【0108】
既に説明したように、タワーと発電システム(例えば一つ以上のロータブレードを備える)とを含む基礎を含むシステム全体(海上構造物、特に風力タービン)の固有振動数の決定のために、固有振動数があるべき振動数スペクトル内のエリアが事前に定義されうる。
【0109】
例えば、風力タービンは、運転中に、特に風荷重から、回転数の一倍の周期的加振成分(例えばロータブレードの回転中に生じる不均衡によって引き起こされるロータ振動数、1P加振成分)から、ならびに回転数の三倍のロータブレードの通過によるさらなる周期的加振成分(例えばロータブレードがタワーの正面に位置する場合に風によるロータブレードの流入によって引き起こされる3P加振成分)から、(動的)加振成分を受ける。
【0110】
さらに、図4は、海上構造物の場合に海の状態によって引き起こされる波エネルギースペクトルを表し、海上構造物が対応しなければならない加振成分も引き起こしうる、いわゆるJONSWAPスペクトルを示す。
【0111】
風力タービンの固有振動数がこれらの加振成分の振動数に近いほど、機械構成要素およびタワーへの応力が高くなりうる。
【0112】
海上構造物の一次固有振動数が回転数の三倍の振動数3Pより小さい場合には、海上構造物の設計は「ソフト-スティフ」と呼ばれる(図4の「目標振動数」の範囲)。海上構造物の設計が回転数の三倍の振動数3Pも上回る場合には、その設計は「スティフ-スティフ」とも呼ばれる。一方で、海上構造物の一次固有振動数が回転数の一倍の振動数1Pより小さい場合には、設計は「ソフト-ソフト」と呼ばれる。
【0113】
海上構造物の固有振動数を設計するときには、材料の早期疲労および摩耗を避けるために、1Pおよび/または3P振動数帯域内にある固有振動数の設計が避けられねばならないものと理解される。
【0114】
図5は、特に第二態様による例示的な方法を実行できる装置500の例示的な実施形態のブロック図を示す。例えば、装置500は、第三態様による装置または第四態様によるシステムである。
【0115】
したがって、装置500は、例えばコンピュータ、デスクトップコンピュータ、サーバ、シンクライアント、または、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、個人情報端末(PDA)もしくはスマートフォンなどのポータブルコンピュータ(モバイルデバイス)でありうる。例えば、装置は、サーバまたはクライアントの機能を行いうる。
【0116】
装置500のプロセッサ510は、特に、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラユニット、マイクロコントローラ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)として設計される。
【0117】
プロセッサ510は、プログラムメモリ512に記憶されたプログラム命令を実行し、例えば中間結果などをメインメモリまたはワーキングメモリ511に記憶する。例えば、プログラムメモリ512は、フラッシュメモリ、磁気メモリ、EEPROM(電気的消去可能プログラム可能読み取り専用メモリ)および/または光メモリなどの不揮発性メモリである。メインメモリ511は、例えば揮発性または不揮発性メモリ、特にスタティックRAMメモリ(SRAM)、ダイナミックRAMメモリ(DRAM)、強誘電体RAMメモリ(FeRAM)および/または磁気RAMメモリ(MRAM)などのランダムアクセスメモリ(RAM)である。
【0118】
プログラムメモリ512は、装置500に永続的に接続されたローカルデータキャリアであるのが好ましい。装置500に取り付けられる媒体の例は、装置500に組み込まれるハードディスクである。あるいは、データキャリアは、例えばメモリスティック、リムーバブルデータキャリア、ポータブルハードディスク、CD、DVDおよび/またはフロッピーディスクなど、装置500に分離可能に接続されたデータキャリアであってもよい。
【0119】
例えば、プログラムメモリ512は、装置500が起動され、プロセッサ510によって実行されるときにメインメモリ511に少なくとも部分的にロードされる装置500のオペレーティングシステムを含む。特に、装置500が起動されると、オペレーティングシステムのコアの少なくとも一部がメインメモリ511にロードされ、プロセッサ510によって実行される。例えば、装置500のオペレーティングシステムは、Windows、UNIX、Linux、Android、Apple iOSおよび/またはMACオペレーティングシステムである。
【0120】
特に、オペレーティングシステムは、データ処理のための装置500の使用を可能にする。例えば、オペレーティングシステムは、メインメモリ511およびプログラムメモリ512などのリソース、通信インタフェース513、入力/出力デバイス514を管理し、プログラミングインタフェースを介して他のプログラムに基本的な機能を提供し、プログラムの実行を制御する。
【0121】
プロセッサ510は、例えばネットワークインタフェースでありうる、ネットワークカード、ネットワークモジュールおよび/またはモデムとして設計されうる通信インタフェース513を制御する。通信インタフェース513は、特にネットワークなどの(無線)通信システムを介して装置500を他のデバイスに接続し、それらと通信するように特に設計される。通信インタフェース513は、例えば、(通信システムを介して)データを受信し、それをプロセッサ510に転送し、および/またはプロセッサ510からデータを受信し、それを(通信システムを介して)送信することができる。通信システムの例は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、無線ネットワーク(例えばIEEE802.11規格、Bluetooth(登録商標)(LE)規格、および/またはNFC規格による)、有線ネットワーク、モバイルネットワーク、電話ネットワーク、および/またはインターネットである。
【0122】
さらに、プロセッサ510は、少なくとも一つの入力/出力デバイス514を制御しうる。例えば、入力/出力デバイス514は、キーボード、マウス、ディスプレイユニット、マイクロフォン、タッチセンサ式ディスプレイユニット、スピーカ、リーダ、ドライブおよび/またはカメラである。例えば、入力/出力デバイス514は、ユーザから入力を受信し、それをプロセッサ510に転送し、および/またはプロセッサ510からユーザのための情報を受信および出力することができる。
【0123】
最後に、図6は、コンピュータプログラムの例が記憶されうる記憶媒体の様々な例を示す。記憶媒体は、例えば磁気、電気、光および/または他のタイプの記憶媒体でありうる。記憶媒体は、プロセッサ(例えば図5のプロセッサ510)の一部、例えばプロセッサの(不揮発性または揮発性)プログラムメモリまたはその一部(図5のプログラムメモリ512など)であってもよい。記憶媒体の例は、フラッシュメモリ610、SSDハードディスク611、磁気ハードディスク612、メモリカード613、メモリスティック614(例えばUSBスティック)、CD-ROMもしくはDVD615またはフロッピーディスク616である。
【0124】
以下の例示的な実施形態も開示されるものと理解されねばならない。
【0125】
<実施形態1>
【0126】
海上構造物の基礎を設計する方法であって、
(例えば請求項1~14のいずれか一項に記載され、任意に例えば発電システムである)基礎を含む海上構造物の固有振動数を、固有振動数が少なくとも一つの加振構成要素の回転数の一倍の加振成分1Pより小さいように決定するステップ、
を含み、
固有振動数を決定するステップは、基礎の変化するパラメータに少なくとも部分的に反復的に基づく、方法。
【0127】
<実施形態2>
【0128】
実施形態1による方法であって、それぞれの変化するパラメータは、以下のパラメータ(i)~(viii)、
(i)海上構造物の現場での水深、
(ii)発電システムの重量、
(iii)タワーの重量、
(iv)海上構造物の総重量、
(v)鉛直安定性、
(vi)安定浮力、
(vii)復原力、および
(viii)海上建設の費用、
のうちの一つ以上を含む、方法。
【0129】
<実施形態3>
【0130】
実施形態1または実施形態2による方法であって、少なくとも一つの装置によって実施される方法。
【0131】
<実施形態4>
【0132】
実施形態1~3のいずれか一つによる方法を実施および/または制御するために設けられるかまたは対応する手段を含む装置。
【0133】
<実施形態5>
【0134】
コンピュータプログラムがプロセッサで実行されたときに、プロセッサに実施形態1~3のいずれか一つによる方法を実行および/または制御させるプログラム命令を含むコンピュータプログラム。
【0135】
<実施形態6>
【0136】
実施形態1~3のいずれか一つによる方法を一緒に行う複数の装置を含むシステム。
【0137】
本明細書に記載された本発明の例示的な実施形態、ならびにこの点で各場合に言及された任意の特徴および特性も、互いとの全ての組み合わせで開示されるものと理解されねばならない。特に、別段の明示がない限り、例示的な実施形態によってカバーされる特徴の説明は、この場合にその特徴が必須であるかまたは実施形態の機能に必須であることを意味すると理解されてはならない。本明細書に記載される方法ステップの順序は強制ではなく、方法ステップの代替的順序が考えられる。方法ステップは、例えばプロセスステップを実施するためのソフトウェア(プログラム命令によって)、ハードウェア、または両方の組み合わせでの実施など、様々なやり方で実施されうる。
【0138】
特許請求の範囲において使用される「備える」、「有する」、「含む」、「包含する」などの用語は、さらなる要素またはステップを排除しない。「少なくとも部分的に」という表現は、「部分的に」および「完全に」の両方のケースをカバーする。「および/または」という表現は、選択肢および組み合わせの両方が開示されるべきことを意味すると理解されねばならない。すなわち「Aおよび/またはB」は、「(A)もしくは(B)または(AおよびB)」を意味する。不定冠詞の使用は、複数形を排除しない。単一の装置が、特許請求の範囲に言及されるいくつかのユニットまたはデバイスの機能を行いうる。特許請求の範囲に示される参照符号は、使用される手段およびステップの制限と見なされてはならない。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図4
図5
図6