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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】部品実装機および部品実装システム
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/00 20060101AFI20221114BHJP
【FI】
H05K13/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020524982
(86)(22)【出願日】2018-06-12
(86)【国際出願番号】 JP2018022421
(87)【国際公開番号】W WO2019239485
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2020-08-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】粟生 浩之
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/088266(WO,A1)
【文献】特開2007-335711(JP,A)
【文献】特開2004-070917(JP,A)
【文献】特開2017-220624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/30、13/00-13/08
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を基板に実装する部品実装機を複数備えた部品実装ラインと、
複数の部品実装機と通信可能に接続され、前記部品実装ラインを管理する管理装置と、を備え、
前記部品実装機は、
前記電子部品を前記基板に実装する実装処理を実行する部品実装部と、
作業者毎に、その作業者から取得した身体的特徴と、その作業者が実行可能な作業内容とを関連付けて記憶する作業内容記憶部と、
作業者から身体的特徴を取得する第1身体的特徴取得部と、
前記部品実装部に対して作業者から作業が行われる場合において、
当該作業者によって行われる作業が、前記第1身体的特徴取得部で取得された当該作業者の身体的特徴に関連付けられた作業内容として前記作業内容記憶部に記憶されているときに、当該作業者によって行われる作業を有効とする一方、
当該作業者によって行われる作業が、前記第1身体的特徴取得部で取得された当該作業者の身体的特徴に関連付けられた作業内容として前記作業内容記憶部に記憶されていないときに、当該作業者によって行われる作業を無効とする、作業内容判定部と、を備え、
前記管理装置は、
作業者から身体的特徴を取得する第2身体的特徴取得部と、
前記第2身体的特徴取得部で取得された身体的特徴を有する作業者に対して、当該作業者が実行可能な作業内容を設定する作業内容設定部と、
前記作業内容設定部で設定された身体的特徴と実行可能な作業内容とを関連付けた管理情報を前記複数の部品実装機に送信する送信部と、を備え、
前記複数の部品実装機は、前記管理装置の前記送信部から前記管理情報を受信したときに、当該部品実装機の前記作業内容記憶部に記憶されている情報を更新する、部品実装システム。
【請求項2】
前記作業内容記憶部は、
作業者毎に、その作業者から取得した身体的特徴と、その作業者に付与された作業権限の種類とを関連付けて記憶する第1記憶部分と、
前記作業権限の種類毎に、その作業権限の種類で実行可能な作業内容を記憶する第2記憶部分と、を備えており、
前記作業内容判定部は、前記部品実装部に対して作業者から作業が行われる場合に、
前記第1記憶部分に記憶された情報から、当該作業者の身体的特徴に関連付けられた作業権限の種類を特定し、
前記第2記憶部分に記憶された情報から、前記特定した作業権限の種類で実行可能な作業内容を特定する、請求項1に記載の部品実装システム。
【請求項3】
前記作業内容記憶部は、特定の作業者から取得した身体的特徴に関連付けて、前記部品実装部で実行される実装処理の作動条件を設定する設定作業を実行可能として記憶しており、
前記作業内容判定部は、
前記特定の作業者によって前記設定作業が行われるときは、当該設定作業を有効とする一方、
前記特定の作業者以外の者によって前記設定作業が行われるときは、当該設定作業を無効とする、請求項1又は2に記載の部品実装システム。
【請求項4】
前記作業内容判定部によって作業者によって行われた作業が無効とされたときに、その旨を報知する報知部をさらに備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の部品実装システム。
【請求項5】
前記報知部は、前記作業内容判定部によって無効にされた作業を実行可能な作業者に対して、その旨を報知する、請求項4に記載の部品実装システム。
【請求項6】
前記管理装置は、前記作業内容設定部によって設定された管理情報が、特定の権限を有する管理者によって設定されているときに、当該管理情報を有効とする一方、前記特定の権限を有する管理者以外の者によって設定されているときに、当該管理情報を無効とする管理情報判定部をさらに備えており、
前記送信部は、前記管理情報判定部によって前記管理情報が有効と判定されたときに、当該管理情報を前記複数の部品実装機に送信する、請求項1~5のいずれか一項に記載の部品実装システム。
【請求項7】
前記管理装置は、前記管理情報判定部によって前記管理情報が有効と判定されたときに、当該管理情報と、当該管理情報を設定した管理者とを関連付けて記憶する管理情報記憶部をさらに備える、請求項6に記載の部品実装システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、電子部品を基板に実装する部品実装機および部品実装システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2012-248815号公報には、基板に電子部品を実装する部品実装機の一例が開示されている。このような部品実装機では、当該部品実装機で実行される実装処理の作動条件を設定できるものがある。部品実装機では、作業者毎に、その作業者が実行可能な作業内容(すなわち、作業権限)が異なる。このため、この種の部品実装機は、作業者を認証するための認証部を備えている。部品実装機は、認証部で認証された作業者が作業権限を有しているとき、その作業者によって行われた作業が有効とされる。一般的に、認証部では、パスワードを用いて作業者を認証している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したように、従来の部品実装機では、パスワードを用いて作業者を認証している。しかしながら、パスワードによる認証では、作業を行う毎に、作業者がパスワードを入力しなければならない。このため、作業を行う度に作業者による入力操作が必要となり、手間がかかるという問題があった。本明細書は、部品実装機において、作業者の認証を容易にする技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書に開示する部品実装機は、電子部品を基板に実装する。部品実装機は、電子部品を基板に実装する実装処理を実行する部品実装部と、作業者毎に、その作業者から取得した身体的特徴と、その作業者が実行可能な作業内容とを関連付けて記憶する作業内容記憶部と、作業者から身体的特徴を取得する第1身体的特徴取得部と、部品実装部に対して作業者から作業が行われる場合において、当該作業者によって行われる作業が、第1身体的特徴取得部で取得された当該作業者の身体的特徴に関連付けられた作業内容として作業内容記憶部に記憶されているときに、当該作業者によって行われる作業を有効とする一方、当該作業者によって行われる作業が、第1身体的特徴取得部で取得された当該作業者の身体的特徴に関連付けられた作業内容として作業内容記憶部に記憶されていないときに、当該作業者によって行われる作業を無効とする、作業内容判定部と、を備える。
【0005】
上記の部品実装機では、作業者の身体的特徴(例えば、指紋、虹彩、顔等)を利用することによって、適正な作業者であることを認証するための手続き(例えば、パスワードの入力等の入力操作)を必要としない。このため、作業者は、部品実装機に対する認証を容易に行うことができる。また、適正な作業者でない者が行った作業は、作業内容判定部において無効とされる。このため、部品実装機の適正な運用を担保することができる。
【0006】
また、本明細書に開示する部品実装システムは、上記の部品実装機を複数備えた部品実装ラインと、複数の部品実装機と通信可能に接続され、部品実装ラインを管理する管理装置と、を備える。管理装置は、作業者から身体的特徴を取得する第2身体的特徴取得部と、第2身体的特徴取得部で取得された身体的特徴を有する作業者に対して、当該作業者が実行可能な作業内容を設定する作業内容設定部と、作業内容設定部で設定された身体的特徴と実行可能な作業内容とを関連付けた管理情報を複数の部品実装機に送信する送信部と、を備える。複数の部品実装機は、管理装置の送信部から管理情報を受信したときに、当該部品実装機の作業内容記憶部に記憶されている情報を更新する。
【0007】
上記の部品実装システムでは、作業者の身体的特徴と当該作業者が実行可能な作業内容とを関連付けた管理情報を管理装置から複数の部品実装機に送信する。このため、各部品実装機における設定作業を不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例に係る部品実装システムの概略構成を示す図。
図2】部品実装機の概略構成を示す図。
図3図2のIII-III線における断面図。
図4】部品実装機の制御装置の機能を示すブロック図。
図5】管理装置の演算装置の機能を示すブロック図。
図6】管理装置において、演算装置が作業者に対して作業権限を設定する処理の一例を示すフローチャート。
図7】部品実装機において、制御装置が作業者による作業を受け付ける処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。
【0010】
本明細書に開示する部品実装機では、作業内容記憶部は、作業者毎に、その作業者から取得した身体的特徴と、その作業者に付与された作業権限の種類とを関連付けて記憶する第1記憶部分と、作業権限の種類毎に、その作業権限の種類で実行可能な作業内容を記憶する第2記憶部分と、を備えていてもよい。作業内容判定部は、部品実装部に対して作業者から作業が行われる場合に、第1記憶部分に記憶された情報から、当該作業者の身体的特徴に関連付けられた作業権限の種類を特定し、第2記憶部分に記憶された情報から、特定した作業権限の種類で実行可能な作業内容を特定してもよい。このような構成によると、作業者毎に作業権限の種類を設定することで、作業者の能力やスキルに応じて実行可能な作業内容の範囲を適切に管理することができる。
【0011】
本明細書に開示する部品実装機では、作業内容記憶部は、特定の作業者から取得した身体的特徴に関連付けて、部品実装部で実行される実装処理の作動条件を設定する設定作業を実行可能として記憶していてもよい。作業内容判定部は、特定の作業者によって設定作業が行われるときは、当該設定作業を有効とする一方、特定の作業者以外の者によって設定作業が行われるときは、当該設定作業を無効としてもよい。このような構成によると、権限を有しない作業者による作業条件の設定が無効とされるため、作業条件の設定に対するセキュリティを強化することができる。
【0012】
本明細書に開示する部品実装機は、作業内容判定部によって作業者によって行われた作業が無効とされたときに、その旨を報知する報知部をさらに備えていてもよい。このような構成によると、報知部によって、適正な作業者ではない者によって行われた作業が無効とされたことが報知される。このため、適正な作業者による作業を促すことができる。
【0013】
本明細書に開示する部品実装機では、報知部は、作業内容判定部によって無効にされた作業を実行可能な作業者に対して、その旨を報知してもよい。このような構成によると、適切な作業者による作業を迅速に行うことができる。
【0014】
本明細書に開示する部品実装システムでは、管理装置は、作業内容設定部によって設定された管理情報が、特定の権限を有する管理者によって設定されているときに、当該管理情報を有効とする一方、特定の権限を有する管理者以外の者によって設定されているときに、当該管理情報を無効とする管理情報判定部をさらに備えていてもよい。送信部は、管理情報判定部によって管理情報が有効と判定されたときに、当該管理情報を複数の部品実装機に送信してもよい。このような構成によると、特定の権限を有しない管理者による設定作業が無効とされるため、作業者の認証情報の設定に対するセキュリティを強化することができる。
【0015】
本明細書に開示する部品実装システムでは、管理装置は、管理情報判定部によって管理情報が有効と判定されたときに、当該管理情報と、当該管理情報を設定した管理者とを関連付けて記憶する管理情報記憶部をさらに備えていてもよい。このような構成によると、管理装置に管理情報を設定した管理者を記憶することによって、管理情報のトレーサビリティが向上し、管理情報を適切に管理することができる。
【実施例
【0016】
以下、実施例に係る部品実装システム1について説明する。図1に示すように、部品実装システム1は、管理装置50と、複数の部品実装ライン100を備えている。複数の部品実装ライン100のそれぞれは、複数の部品実装機10を備えている。複数の部品実装機10はそれぞれ管理装置50と通信可能に接続されている。管理装置50は、複数の部品実装ライン100(すなわち、複数の部品実装ライン100がそれぞれ備える複数の部品実装機10)を管理している。例えば、図1では、部品実装ライン100は5つの部品実装機10を備えており、管理装置50は15台の部品実装機10を管理している。なお、1つの部品実装ライン100が備える部品実装機10の数は上記に限定されるものではなく、また、管理装置50が管理する部品実装ライン100の数も上記に限定されるものではない。
【0017】
部品実装機10は、電子部品4を回路基板2に実装する。回路基板2は、部品実装ライン100の一端から他端に向かって送られる。回路基板2には、各部品実装機10において、予め定められた電子部品4が実装される。部品実装ライン100の他端まで送られた回路基板2は、最終製品として出荷、又は半製品として後工程に送られる。部品実装機10には、複数の部品フィーダ12が設置可能となっている。部品実装機10に部品フィーダ12を設置することで、部品フィーダ12から部品実装機10に電子部品4が供給される。なお、部品フィーダ12は、部品実装ライン100において、複数の部品実装機10のいずれに対しても設置可能となっている。部品実装機10にどの種類の部品フィーダ12が設置されるかは、管理装置50において決定される。
【0018】
ここで、部品実装機10の構成について説明する。図2図4に示すように、部品実装機10は、部品実装部22と、インターフェース装置24と、識別情報取得部26と、送受信部28と、制御装置30を備えている。
【0019】
図2図3に示すように、部品実装部22は、複数の部品フィーダ12と、フィーダ保持部14と、装着ヘッド16と、ヘッド移動装置18と、基板コンベア20を備える。各々の部品フィーダ12は、複数の電子部品4を収容している。部品フィーダ12は、フィーダ保持部14に着脱可能に取り付けられ、装着ヘッド16へ電子部品4を供給する。部品フィーダ12の具体的な構成は特に限定されない。各々の部品フィーダ12は、例えば、巻テープ上に複数の電子部品4を収容するテープ式フィーダ、トレイ上に複数の電子部品4を収容するトレイ式フィーダ、又は、容器内に複数の電子部品4をランダムに収容するバルク式フィーダのいずれであってもよい。
【0020】
フィーダ保持部14は、複数のスロットを備えており、複数のスロットのそれぞれには部品フィーダ12を着脱可能に設置することができる。フィーダ保持部14は、部品実装機10に固定されたものであってもよいし、部品実装機10に対して着脱可能なものであってもよい。装着ヘッド16は、一又は複数の吸着ノズル6を着脱可能に保持し、吸着ノズル6を用いて部品フィーダ12が供給する電子部品4を取り上げ、当該電子部品4を回路基板2上へ装着する。このとき、ヘッド移動装置18が、部品フィーダ12及び回路基板2に対して、装着ヘッド16を移動させる。これによって、複数の部品フィーダ12のうち特定の部品フィーダ12から電子部品4が取り上げられ、回路基板2の予め定められた位置に電子部品4が装着される。基板コンベア20は、回路基板2の搬入、支持及び搬出を行う。
【0021】
識別情報取得部26は、作業者から、その作業者の身体的特徴に関する情報(以下、識別情報ともいう)を取得する。識別情報は、その作業者を識別するために用いられ、その種類は特に限定されない。例えば、識別情報は、作業者の指紋であってもよいし、作業者の虹彩、顔等であってもよい。識別情報取得部26は、識別情報を取得可能な構成となっている。例えば、本実施例では、識別情報は各作業者の指紋であり、識別情報取得部26は指紋センサである。また、識別情報が各作業者の虹彩や顔等である場合には、識別情報取得部26は虹彩や顔等を撮影可能に構成されるカメラとなる。識別情報取得部26は制御装置30に接続されており、識別情報取得部26に入力された識別情報は制御装置30に入力される。識別情報として作業者の身体的特徴に関する情報を用いることによって、作業者を識別するための手続き(例えば、パスワードの入力等の入力操作)を必要としない。このため、作業者を識別するための手続を容易にすることができる。なお、識別情報取得部26は、「第1身体的特徴取得部」の一例である。
【0022】
図4に示すように、制御装置30は、メモリ32とCPU40を含むコンピュータを用いて構成されている。メモリ32には、登録情報記憶部34と、権限情報記憶部36が設けられている。
【0023】
登録情報記憶部34は、予め登録された作業者に関する情報を記憶している。本実施例では、登録情報記憶部34には、作業者を識別するための識別情報として、各作業者の指紋に関する情報が記憶されている。また、登録情報記憶部34は、識別情報(例えば、本実施例では各作業者の指紋に関する情報)と、その作業者に許可される作業権限とを組み合わせて記憶している。以下では、識別情報と作業権限との組み合わせを「管理情報」と称することがある。管理情報は、管理装置50で登録され、管理装置50から部品実装ライン100を構成する各部品実装機10の送受信部28にそれぞれ送信される。送受信部28は、受信した管理情報を制御装置30に出力し、制御装置30は、送受信部28から入力された管理情報を登録情報記憶部34に記憶する。なお、登録情報記憶部34は、「第1記憶部分」の一例である。
【0024】
権限情報記憶部36は、各作業者に付与される作業権限の種類と、その作業権限の種類で作業者が実行可能な作業内容とを組み合わせて記憶している。具体的には、権限情報記憶部36には、作業権限の種類毎に、当該作業権限を有する作業者が入力可能な作業条件の設定範囲が記憶されている。権限情報記憶部36には、複数種類の作業権限が記憶されている。権限情報記憶部36には記憶される作業権限の種類は特に限定されないが、本実施例では、オペレータ権限、エンジニア権限、管理者権限の3種類の作業権限が記憶されている。
【0025】
オペレータ権限は、部品実装部22が実装処理を実行する際に必要な補助的な操作(例えば、部品や器具の補充等)を行う権限である。例えば、オペレータ権限を有する作業者は、部品フィーダ12が部品切れになった場合に、部品フィーダ12に電子部品4を補充する作業を実行できる。エンジニア権限は、オペレータ権限に加え、生産ラインに関する設定の変更を行う権限である。例えば、エンジニア権限を有する作業者は、部品実装ライン100の構成を変更することができる。管理者権限は、エンジニア権限に加え、作業者の登録及び削除を行う権限である。例えば、管理者権限を有する作業者は、作業者の管理情報(すなわち、各作業者の識別情報(本実施例では、作業者の指紋)と、その作業者に与えられる作業権限)を登録又は削除することができる。以下では、管理者権限を有する作業者を「管理者」と称することがある。なお、権限情報記憶部36は、「第2記憶部分」の一例である。
【0026】
本実施例では、登録情報記憶部34は、作業者毎に作業者の識別情報と共にその作業者に許可される作業権限を記憶している。これによって、作業者の能力やスキルに合わせて、その作業者が実行可能な作業内容の範囲を適切に管理することができる。
【0027】
メモリ32には演算プログラムが記憶されており、CPU40が当該演算プログラムを実行することで、CPU40は識別部42、作業内容判定部44として機能する。
【0028】
識別部42は、識別情報取得部26で取得した識別情報が、登録情報記憶部34に記憶されているか否かを判定する。
【0029】
作業内容判定部44は、作業者によって入力された作業条件が、当該作業者に付与される作業権限の設定範囲に含まれるか否かを判定する。すなわち、インターフェース装置24から作業条件が入力されると、作業内容判定部44は、インターフェース装置24を操作した作業者の作業権限を特定し、入力された作業条件が特定した作業権限の範囲内か否かを判定する。例えば、エンジニア権限を有する作業者が、生産ラインの設定変更を行うための作業条件を入力した場合には、作業内容判定部44は、当該作業条件が作業権限の設定範囲に含まれると判定する一方、オペレータ権限を有する作業者が、同様の作業条件を入力した場合には、作業内容判定部44は、当該作業条件が作業権限の設定範囲に含まれないと判定する。
【0030】
インターフェース装置24は、作業者に部品実装機10の各種の情報を提供する表示装置であると共に、作業者からの指示や情報を受け付ける入力装置である。例えば、インターフェース装置24は、作業者が入力した作業条件が当該作業者の作業権限の範囲外である場合に、その旨を当該作業者に報知するメッセージを表示する。本実施例では、インターフェース装置24は、タッチパネルであるが、このような構成に限定されない。例えば、インターフェース装置24は、ディスプレイ等の表示装置とキーボードやマウス等の入力装置で構成されていてもよい。
【0031】
送受信部28は、管理装置50との間で情報の送受信を行う。具体的には、送受信部28は、管理装置50から送信される管理情報を受信すると共に、作業者が入力した作業条件が当該作業者の作業権限の範囲外である場合に、その旨を管理装置50に送信する。送受信部28は、管理装置50の送受信部56(後述)とLAN(ローカルエリアネットワーク)によって接続されている。なお、送受信部28と送受信部56は通信可能に接続されていればどのような形態であってもよく、例えば、有線接続であってもよいし、無線接続であってもよい。
【0032】
次に、管理装置50の構成について説明する。図5に示すように、管理装置50は、インターフェース装置52と、識別情報取得部54と、送受信部56と、演算装置60によって構成されている。
【0033】
インターフェース装置52は、作業者(特に、管理者)に管理装置50の各種の情報を提供する表示装置であると共に、作業者(特に、管理者)からの指示や情報を受け付ける入力装置である。例えば、インターフェース装置52は、部品実装機10において作業者が入力した作業条件が当該作業者の作業権限の範囲外であることを送受信部56が受信した場合に、その旨を管理者に報知するメッセージを表示する。本実施例では、インターフェース装置52は、ディスプレイ等の表示装置とキーボードやマウス等の入力装置によって構成されているが、インターフェース装置52の構成は特に限定されるものではなく、例えば、タッチパネルであってもよい。
【0034】
識別情報取得部54は、作業者から識別情報を取得するように構成されており、本実施例では、指紋センサである。また、送受信部56は、各部品実装機10との間で情報の送受信を行うように構成されており、具体的には、送受信部28は、管理情報を各部品実装機10に送信すると共に、各部品実装機10から送信された情報を受信する。なお、識別情報取得部54及び送受信部56の構成は、上述の識別情報取得部26及び送受信部28と略同一の構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0035】
演算装置60は、メモリ62とCPU70を含むコンピュータを用いて構成されている。メモリ62には、管理情報記憶部64が設けられている。
【0036】
管理情報記憶部64は、管理装置50で設定された作業者の管理情報(すなわち、各作業者の識別情報(本実施例では、作業者の指紋)と、その作業者に与えられる作業権限)と、その管理情報を設定した管理者に関する情報とを組み合わせて記憶している。管理情報を設定した管理者に関する情報は、その管理者を特定できるものであればよく、当該管理者の識別情報であってもよいし、当該管理者のIDや氏名等であってもよい。
【0037】
メモリ62には演算プログラムが記憶されており、CPU70が当該演算プログラムを実行することで、CPU70は識別部72、作業内容設定部74として機能する。
【0038】
識別部72は、識別情報取得部54で取得した識別情報が、管理情報記憶部64に記憶されている管理者の識別情報であるか否かを判定する。すなわち、識別部72は、識別情報取得部54で取得した識別情報が、管理情報記憶部64に記憶されており、かつ、その識別情報と組み合わせて記憶される作業権限が管理者権限である場合、当該識別情報を管理者の識別情報であると判定する。一方、識別部72は、識別情報取得部54で取得した識別情報が、管理情報記憶部64に記憶されていない場合、及び、管理情報記憶部64に記憶されているものの、その識別情報と組み合わせて記憶される作業権限が管理者権限でない(オペレータ権限又はエンジニア権限である)場合、当該識別情報を管理者の識別情報ではないと判定する。
【0039】
作業内容設定部74は、識別情報取得部54で取得した識別情報に対して、作業権限を設定する。上述したように、作業者に対する作業権限の設定は、管理者のみが実行可能な作業である。したがって、作業内容設定部74は、作業者の識別情報を取得し、その識別情報が識別部72によって管理者の識別情報であると判定された場合に、作業権限を設定することが可能となるように構成されている。作業内容設定部74で設定された作業権限は、対応する作業者の識別情報とその作業権限を設定した管理者に関する情報と共に、管理情報記憶部64に記憶される。
【0040】
図6を参照して、管理者によって作業者に対して作業権限が設定される処理について説明する。各作業者の作業権限は、管理者によって管理装置50で設定される。そして、管理装置50で設定された管理情報(作業者の識別情報及び作業権限)は、各部品実装機10に送信される。これによって、同一の作業者の作業権限を複数の部品実装機10のそれぞれにおいて設定する作業を省略することができる。以下に、管理装置50において、演算装置60が作業者に対して作業権限を設定する処理について説明する。
【0041】
図6に示すように、まず、演算装置60は、識別情報取得部54に識別情報が入力されたか否かを判定する(S12)。管理者は、識別情報取得部54に管理者自身を特定する識別情報を入力する。本実施例では、識別情報取得部54は指紋センサであるため、管理者は、識別情報取得部54に管理者自身の指紋を読み取らせる。識別情報取得部54は、取得した識別情報(すなわち、読み取った管理者の指紋に関する情報)を演算装置60に出力する。識別情報取得部54から識別情報が入力されていない場合(ステップS12でNOの場合)、演算装置60は、識別情報取得部54から識別情報が入力されるまで待機する。
【0042】
識別情報取得部54から識別情報が入力された場合(ステップS12でYESの場合)、識別部42は、ステップS12で入力された識別情報に関する作業者が予め登録された管理者であるか否かを判定する(S14)。すなわち、識別部42は、ステップS12で入力された識別情報が、管理情報記憶部64に記憶されているか否かを判定する。そして、入力された識別情報が管理情報記憶部64に記憶されている場合には、その識別情報と組み合わせて記憶されている作業権限が、管理者権限であるか否かを判定する。すなわち、入力された識別情報が、管理情報記憶部64に管理者権限と関連付けて記憶されているか否かを判定する。具体的には、識別部72は、ステップS12で入力された識別情報が管理情報記憶部64に記憶されており、さらに、その識別情報と組み合わせて記憶されている作業権限が管理者権限である場合、入力された識別情報が、管理情報記憶部64に管理者権限と関連付けて記憶されていると判定する。一方、識別部72は、ステップS12で入力された識別情報が管理情報記憶部64に記憶されていない場合と、入力された識別情報が管理情報記憶部64に記憶されているが、その識別情報と組み合わせて記憶されている作業権限が管理者権限ではない(すなわち、オペレータ権限又はエンジニア権限である)場合、入力された識別情報が、管理情報記憶部64に管理者権限と関連付けて記憶されていないと判定する。
【0043】
ステップS12で入力された識別情報が管理情報記憶部64に管理者として記憶されていない場合(ステップS14でNOの場合)、当該作業者は管理者権限を有していないと判断され、当該作業者による作業権限の設定が拒否される。このため、ステップS12に戻り、ステップS12からの処理を繰り返す。
【0044】
ステップS12で入力された識別情報が管理情報記憶部64に管理者として記憶されている場合(ステップS14でYESの場合)、当該管理者は管理者権限を有する管理者であると判断され、当該管理者による他の作業者に対する作業権限の設定が許可される。そして、演算装置60は、識別情報取得部54に識別情報が入力されたか否かを判定する(S16)。ここでは、新たに管理情報を設定する作業者や設定されている管理情報を削除する作業者が、識別情報取得部54に識別情報を入力する。識別情報取得部54から識別情報が入力されていない場合(ステップS16でNOの場合)、演算装置60は、識別情報取得部54から識別情報が入力されるまで待機する。識別情報取得部54から識別情報が入力されると(ステップS16でYESの場合)、演算装置60は、入力された作業者の識別情報を取得する(S18)。
【0045】
次に、演算装置60は、ステップS18で識別情報を入力した作業者に対して設定する作業権限がインターフェース装置52に入力されたか否かを判定する(S20)。このとき、インターフェース装置52への作業権限の入力は、ステップS12で識別情報を入力した管理者によって実行される。インターフェース装置52に当該作業権限が入力されていない場合(ステップS20でNOの場合)、演算装置60は、インターフェース装置52に当該作業権限が入力されるまで待機する。
【0046】
インターフェース装置52に作業権限が入力されると(ステップS20でNOの場合)、作業内容設定部74は、入力された作業権限をステップS18で取得した識別情報と組み合わせて設定する(S22)。設定された識別情報と対応する作業権限は、管理情報記憶部64に記憶される。このとき、管理情報記憶部64には、設定された識別情報とこれに対応する作業権限と共に、入力を実行した管理者に関する情報が組み合わされて記憶される。すなわち、管理情報記憶部64は、ステップS18で取得した作業者の識別情報と、作業者に対して設定された作業権限と、ステップS12で取得した管理者に関する情報とを組み合わせて記憶する。これによって、管理情報がどの管理者の元で設定されたのかが記憶され、管理情報のトレーサビリティを向上させることができる。このため、管理情報を適切に管理することができる。
【0047】
管理情報が管理情報記憶部64に記憶されると、演算装置60は、管理情報記憶部64に記憶される管理情報を、送受信部56を介して各部品実装機10に送信する(S24)。管理装置50から送信された管理情報は、各部品実装機10の送受信部28が受信し、各部品実装機10の制御装置30は、受信した管理情報を登録情報記憶部34に記憶させる。これによって、管理装置50で設定された管理情報を各部品実装機10に記憶させることができる。
【0048】
上述したように、管理装置50において、管理者であることが判定された場合にのみ、作業者に対して作業権限を設定することができる。換言すると、管理者権限を有していない作業者は、作業者に対する作業権限を設定することができない。これによって、作業権限の設定に対するセキュリティを強化することができる。
【0049】
次に、図7を参照して、作業者によって部品実装機10に対する作業が実行される際の部品実装機10の処理について説明する。図7に示すように、まず、制御装置30は、識別情報取得部26に識別情報が入力されたか否かを判定する(S32)。部品実装機10に対して作業を実行しようとする作業者は、識別情報取得部26に作業者自身を特定する識別情報(本実施例では、作業者の指紋)を入力する。識別情報取得部26は、取得した識別情報を制御装置30に出力する。識別情報取得部26から識別情報が入力されていない場合(ステップS32でNOの場合)、制御装置30は、識別情報取得部26から識別情報が入力されるまで待機する。
【0050】
識別情報取得部26から識別情報が入力された場合(ステップS32でYESの場合)、識別部42は、ステップS12で入力された識別情報に関する作業者が予め登録された作業者であるか否かを判定する(S34)。すなわち、識別部42は、ステップS32で入力された識別情報が、登録情報記憶部34に記憶されているか否かを判定する。ステップS32で入力された識別情報が登録情報記憶部34に記憶されていない場合(ステップS34でNOの場合)、当該作業者は部品実装機10に対して作業を実行する権限を有していないと判断され、部品実装機10に対する作業が拒否される。このため、ステップS32に戻り、ステップS32からの処理を繰り返す。
【0051】
ステップS32で入力された識別情報が登録情報記憶部34に記憶されている場合(ステップS34でYESの場合)、制御装置30は、当該部品実装機10に対して作業者によって作業条件が入力されたか否かを判定する(S36)。部品実装機10に対して作業条件が入力されていない場合(ステップS36でNOの場合)、制御装置30は、部品実装機10に対して作業条件が入力されるまで待機する。
【0052】
部品実装機10に対して作業条件が入力された場合(ステップS36でYESの場合)、作業内容判定部44は、入力された作業条件が、ステップS32で識別情報を入力した作業者によって実行可能であるか否かを判定する。上述したように、登録情報記憶部34には、各作業者を識別するための識別情報(本実施例では、作業者の指紋)と共に、その作業者に許可される作業権限とを組み合わせた管理情報が記憶されている。作業内容判定部44は、ステップS32で入力された識別情報について、登録情報記憶部34に記憶される識別情報と対応する作業権限を特定する。そして、作業内容判定部44は、ステップS36で入力された作業条件が、権限情報記憶部36に記憶される情報に基づいて、特定された作業権限で実行可能な作業内容に含まれているか否かを判定する。
【0053】
ステップS36で入力された作業条件が、特定された作業権限で実行可能な作業内容に含まれている場合(ステップS38でYESの場合)、制御装置30は、入力された作業条件に従い作業を実行する(S40)。
【0054】
一方、ステップS36で入力された作業条件が、特定された作業権限で実行可能な作業内容に含まれていない場合(ステップS38でNOの場合)、制御装置30は、当該作業者が入力された作業条件を実行する権限を有していないと判断し、作業条件の実行を拒否する。そして、制御装置30は、インターフェース装置24に作業が実行不能である旨を表示する(S42)。例えば、インターフェース装置24には、「権限がありません」や「権限のある人を呼んでください」等のメッセージを表示する。これによって、作業を実行しようとした作業者に対して、権限がないために作業を実行できないことを報知することができる。これによって、適切な作業権限を有する作業者による作業を促すことができる。なお、本実施例では、インターフェース装置24に「権限がありません」等のメッセージを表示しているが、作業者に対して作業を実行する権限がないことを報知できる構成であればよく、インターフェース装置24に表示する文言は特に限定されない。また、音声によって報知する音声発生器によって作業者に報知してもよいし、アラーム等の警告音によって作業者に報知してもよい。
【0055】
本実施例では、ステップS36で入力された作業条件が当該作業者の有する作業権限で実行可能な作業内容である場合にのみ、入力された作業条件に従い作業が実行される。すなわち、適正な作業者でない者が入力した作業条件は実行されない。このため、作業条件の入力に対するセキュリティを強化でき、部品実装機10の実装処理を適正に行うことができる。
【0056】
なお、本実施例では、入力された作業条件がその作業者の有する作業権限で実行可能な作業内容に含まれていない場合に、その旨を当該作業者に報知しているが、このような構成に限定されない。例えば、制御装置30は、入力された作業条件がその作業者の有する作業権限で実行可能な作業内容に含まれていない場合に、管理装置50にその旨を送信し、管理装置50のインターフェース装置52にその旨を報知するメッセージを表示してもよい。また、適切な作業権限を有する作業者に無線通信端末を携行させ、当該作業者が携行する無線通信端末に情報を送信してもよい。これによって、作業権限を有する作業者(例えば、管理者)に作業を迅速に実行させることができる。
【0057】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7