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特許7175981風力タービンタワーからブレードチップまでの測定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】風力タービンタワーからブレードチップまでの測定システム
(51)【国際特許分類】
   F03D 17/00 20160101AFI20221114BHJP
   G01B 11/14 20060101ALI20221114BHJP
   G01B 11/16 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
F03D17/00
G01B11/14 H
G01B11/16 H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020529709
(86)(22)【出願日】2018-12-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 EP2018083557
(87)【国際公開番号】W WO2019110624
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-07-26
(31)【優先権主張番号】17001973.1
(32)【優先日】2017-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519043291
【氏名又は名称】ニデック・エスエスベー・ウィンド・システムズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(72)【発明者】
【氏名】ベルトロッティ,ファビオ
【審査官】落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0135466(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0322925(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102005048805(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービン(1)であって、タワー(10)と、ナセル(20)と、ハブ(110)および前記ハブに直角に取り付けられた少なくとも1つのブレード(100)であって、前記少なくとも1つのブレードは、ブレードチップ部を有し、前記ハブは、回転速度(ω)でハブ回転軸の周りを回転する、ハブ(110)および少なくとも1つのブレード(100)と、基準位置に対する前記ハブ回転軸の周りのロータ角度位置(Ω)の測定値を提供するロータエンコーダ(40)であって、前記少なくとも1つのブレードが地面の方を向き、前記タワーに平行であるとき、前記ロータ角度位置が検出位置(Ω)である、ロータエンコーダ(40)とを備え、前記風力タービンは、タービン制御ロジックを実行するタービン制御システムを有し、
-前記ブレードチップ部に配置され、前記ブレードチップ部を囲むインジケータストライプ(220)と、
-前記タワーを囲むインジケータリング(230)であって、前記インジケータストライプから前記ハブまでの距離に本質的に等しい前記ハブからの距離において前記タワーに配置されているインジケータリング(230)と、
-画像面を有するカメラ(200)であって、前記ロータ角度位置が前記検出位置(Ω)と等しい場合、前記画像面内に前記インジケータストライプおよびインジケータリングを配置するように配向され、前記ロータ角度位置が、前記検出位置(Ω)と等しい場合、前記画像面に画像をデジタルに記録し、前記デジタルに記録された画像情報を、さらなる処理のために格納する、カメラ(200)と、
-前記デジタルに記録された画像情報を受信し、前記デジタルに記録された画像情報を使用して、前記インジケータストライプと前記インジケータリングとの間の物理的な分離距離を計算する画像プロセッサおよびチップタワークリアランス計算ユニットであって、前記物理的な分離距離は、前記ブレードチップからタワーへのクリアランスを示す、画像プロセッサおよびチップタワークリアランス計算ユニットとを特徴とする、風力タービン(1)。
【請求項2】
前記物理的な分離距離は、前記タービン制御ロジックで使用するために前記タービン制御システムに送信されることをさらに備えた、請求項1に記載の風力タービン。
【請求項3】
-前記ナセル(20)は、前記タワー(10)の上部に回転可能に取り付けられ、タワー軸の周りのヨーイング運動を可能にし、前記ヨーイング運動は、ヨー角によって特徴付けられ、
-前記カメラ(200)は、前記ナセル(20)の内側に配置され、
-前記インジケータリング(230)は、前記タワー(10)の直径を増加させるような材料厚さを有し、前記インジケータリング(230)の前記材料厚さは、すべてのヨー角において、前記インジケータリング(230)が、前記カメラ(200)に見えるままであることを可能にする、請求項1または2に記載の風力タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タワーからブレードチップまで(tower to blade-tip clearance)のクリアランス測定システムを有する風力タービンに関する。さらに、本発明は、風力タービン(wind turbine)におけるブレードチップからタワーまでの距離(blade-tip to tower distance)を推定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
当技術分野で現在知られている、チップからタワーまでのクリアランス推定器は、商業的用途での使用には不正確すぎる、高価すぎる、または信頼できないかのいずれかである。堅牢で正確なシステムが必要とされる。さらに、先行した推定値(advanced estimate)は、修正動作を実行するためにタービン制御ロジックで使用できるため、次の「最接近位置(closest approach position)」でのチップタワークリアランスの値を事前に推定できるシステムも必要とされる。たとえば、タービン制御動作は、チップタワークリアランスが所定のしきい値を下回ったときに、運転の安全性を高めるために行われる。そのような動作は、たとえば、ピッチ角度(pitch angle)βを変更すること、または回転速度ωを低減することにより、ブレード100への負荷(loads on the blade 100)を低減することを含み得る。
【0003】
当技術分野で現在知られているチップからタワーまでのクリアランス推定器は、商業的用途での使用には不正確すぎる、高価すぎる、または信頼できないかのいずれかである。堅牢で正確なシステムが必要とされる。EP 2 402 603 A2、DE 10 2006 054 667 A1、DE 10 2005 048 8051、US 2004/0057828 A1はすべて、アクティブ送信機をブレードチップにおいて、またはタワーの周囲に配置して、チップからタワーまでのクリアランスを測定する。開示されたアクティブ送信機は、発光システム、音響システム、レーダシステム、または電磁インダクタンスシステムを含む。しかしながら、当技術分野ではよく知られていることであるが、落雷(lightning strike)の可能性が高い事象により、タービンの残りの電気システムと電気的に接触しているブレードチップにおけるあらゆる電気システムは、現場では許可されない。したがって、従来技術で唯一許容できる解決策は、ブレードチップにおいてパッシブシステムを使用するものである。すべての許容可能な従来技術のシステムは、タワーに配置された1つまたは複数のアクティブ送信機を使用している。すべての可能な風力タービン構成をカバーするために、風向に追従するようにヨー角(yaw angle)が変更されるとき、従来技術のシステムは、タワーの周囲に空間的に間隔を空けて配置された多数のセンサを使用する。システムはタワーの外部にあるため、活発な落雷ゾーンにあり、落雷から保護する必要がある。さらに、現在のタワーの高さは100メートルをはるかに超えているため、タワー上のこれらのセンサの位置に到達してサービスするのは困難である。したがって、これらのシステムは、初期資本投資のコスト高と、メンテナンスにおけるコスト高との両方により、最適ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
必要なものは、タワーおよびブレードチップの両方の構成要素が、パッシブで、低コストで、メンテナンスの必要なく、過酷な動作条件に対して堅牢で、落雷に対して堅牢な、チップタワークリアランスシステムである。
【0005】
さらに、従来技術のシステムは、ブレードが通過するときのチップタワークリアランスのみを測定する。先行した推定値は、修正動作を実行するためにタービン制御ロジックで使用できるため、次の「最接近位置」でのチップタワークリアランスの値を事前に推定できるシステムも必要とされる。たとえば、タービン制御動作は、チップタワークリアランスが所定のしきい値を下回ったときに、運転の安全性を高めるために行われる。そのような動作は、たとえば、ピッチ角度βを変更することにより、または回転速度ωを低減することにより、ブレード100への負荷を低減することを含み得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、風力タービンが提供され、風力タービンは、タワーと、ナセル(nacelle)と、ハブおよびハブに直角に取り付けられた(attached rectangular to the hub)少なくとも1つのブレードであって、少なくとも1つのブレードは、ブレードチップ部を有し、ハブは、回転速度でハブ回転軸の周りを回転する、ハブおよび少なくとも1つのブレードと、基準位置に対する上記ハブ回転軸の周りのロータ角度位置の測定値を提供するロータエンコーダであって、ロータ角度位置は、少なくとも1つのブレードが地面の方を向き(pointing towards the ground)、タワーに平行であるときの検出位置である、ロータエンコーダとを備え、風力タービンは、タービン制御ロジックを実行するタービン制御システムを有し、風力タービンは、
-ブレードチップ部に配置され、ブレードチップ部を囲むまたは取り囲むインジケータストライプと、
-タワーを囲むまたは取り囲むインジケータリングであって、インジケータストライプからハブまでの距離に本質的に等しいハブからの距離においてタワーに配置されているインジケータリングと、
-画像面(image plane)すなわち第1の画像面を有するカメラすなわち第1のカメラであって、ロータ角度位置が検出位置と等しい場合、画像面すなわち第1の画像面内にインジケータストライプおよびインジケータリングを配置するように配向され、ロータ角度位置が検出位置と等しい場合、画像面すなわち第1の画像面に画像をデジタルに記録し、デジタルに記録された画像情報を、さらなる処理のために格納する、カメラすなわち第1のカメラと、
-デジタルに記録された画像情報を受信し、デジタルに記録された画像情報を使用して、インジケータストライプとインジケータリングとの間の物理的な分離距離を計算する画像プロセッサおよびチップタワークリアランス計算ユニットであって、物理的な分離距離は、ブレードチップからタワーまでのクリアランスを示すか、またはブレードチップからタワーまでのクリアランスである、画像プロセッサおよびチップタワークリアランス計算ユニットとをさらに備える。
【0007】
実施形態によれば、物理的な分離距離は、タービン制御ロジックで使用するためにタービン制御システムに送信される。
別の実施形態によれば、ナセルは、タワーの上部に回転可能に取り付けられ、タワー軸の周りのヨーイング運動を可能にする。特に、上記ヨーイング運動は、ヨー角によって特徴付けられる。ヨー角は、タービンヨー角とも呼ばれる。好ましくは、カメラすなわち第1のカメラは、ナセルの内側に配置される。特に、インジケータリングは、タワーの直径を増加させるかまたは効果的に増加させるような材料厚さを有し、インジケータリングの材料厚さは、すべてのヨー角において、インジケータリングが、カメラすなわち第1のカメラに見えるままであることを可能にする。好ましくは、インジケータリングは、カメラの観察画像におけるインジケータリングの視認性を高めるために、カメラ観察軸に垂直な面(normal surface)を提供する。
【0008】
好ましくは、少なくとも1つのブレードは、長手方向軸を有する。さらに別の実施形態によれば、少なくとも1つのブレードは、ハブに回転可能に取り付けられて、上記長手方向軸の周りのピッチング運動(pitching motion)を可能にし、上記ピッチング運動は、ピッチ角度によって特徴付けられる。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、風力タービンにおけるブレードチップからタワーまでの距離を推定するための方法が提供され、風力タービンは、タワーと、ナセルと、ハブおよびハブに直角に取り付けられた少なくとも1つのブレードであって、少なくとも1つのブレードは、ブレードチップ部および長手方向軸を有し、ハブは、回転速度でハブ回転軸の周りを回転する、ハブおよび少なくとも1つのブレードと、基準位置に対する上記ハブ回転軸の周りのロータ角度位置の測定値を提供するロータエンコーダであって、ロータ角度位置は、少なくとも1つのブレードが地面の方を向き、タワーに平行であるときの検出位置であり、ロータ角度位置が検出位置に等しくなるたびに同期パルスが生成される、ロータエンコーダとを備え、風力タービンは、タービン制御ロジックを実行するタービン制御システムと、少なくとも1つのブレードが、タワーに対して最接近位置にあるときに、ブレードチップからタワーまでの距離を示す、チップタワークリアランス信号を生成する測定システムとを備える。ブレードたわみ(blade-deflection)測定システムは、瞬間的なブレード形状(instantaneous blade shape)を示す少なくとも1つのブレードたわみ信号を提供し、ブレードたわみ信号は、ロータ角度位置が検出位置と等しいときに存在し、ロータ角度位置が感知位置と等しいときに存在する。好ましくは、感知位置は、検出位置とは異なるロータ角度位置として定義される。特に、感知位置は、検出位置とは異なるロータ角度位置として定義される。さらに、計算ユニットは、ブレードたわみ信号、チップタワークリアランス信号、および同期パルスを受信し、計算ユニットは、同期パルスの到着時にデータベクトルを構築して、チップタワークリアランス信号とブレードたわみ信号との両方が、本質的に同じ瞬間に発生する値を表し、タービン運転中に生成されたデータベクトルの集合がテーブルに収集され、テーブルの長さは時間とともに増加する。さらに、計算ユニットは、ロータ角度位置が、感知位置と等しいときにブレードたわみ信号を受信し、計算ユニットは、テーブルを使用して、ブレードたわみ信号とチップタワークリアランス推定値との機能関係を定義し、機能関係は、より多くのデータがデータベクトルに追加されると更新され、機能関係の精度が向上し、ブレードの構造の変化を獲得できるようになる。さらに、チップタワークリアランス推定値がタービン制御システムに送信される。
【0010】
実施形態によれば、少なくとも1つのブレードが、ハブに回転可能に取り付けられて、上記長手方向軸の周りのピッチング運動を可能にし、上記ピッチング運動は、ピッチ角度によって特徴付けられ、計算ユニットは、ピッチ角度を示す信号を受信し、ピッチ角度の値をデータベクトルに含める。
【0011】
別の実施形態によれば、計算ユニットは、回転速度を示す信号を受信し、回転速度の値をデータベクトルに含める。
さらに別の実施形態によれば、少なくとも1つのブレードは、長手方向軸に沿って延びる内部中空ボリューム(internal hollow volume)を有し、ブレードたわみ測定システムは、中空ボリュームの内側に配置されたカメラすなわち第2のカメラを備え、カメラすなわち第2のカメラは、画像面を有し、システムは、中空ボリュームの内側に、中空ボリュームの輪郭を描くブレード材料に固定して配置された少なくとも1つの反射体をさらに備え、少なくとも1つの反射体は、カメラすなわち第2のカメラの画像面で見ることができ、カメラすなわち第2のカメラは、画像面における少なくとも1つの反射体の位置を使用してブレードたわみ信号を計算する。
【0012】
本発明の第1の態様と本発明の第2の態様との両方によれば、風力タービンは、好ましくは、ロータを備え、ロータは、ハブおよび少なくとも1つのブレードを備える。特に、ハブ回転軸は、ロータ軸またはロータ回転軸とも呼ばれる。好ましくは、ロータ角度位置は、ハブ角度位置とも呼ばれる。特に、ロータ回転速度は、ハブ回転速度とも呼ばれる。
【0013】
次に、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して、例としてのみ説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1はタワー、ナセル、ハブ、およびハブに取り付けられた少なくとも1つのブレードを有する風力タービンを示す図である。
図2A図2aはブレードの1つに関連付けられた移動カメラを有する風力タービンの実施形態を示す図である。
図2B図2bはナセルの内側に配置されたカメラを有する風力タービンの別の実施形態を示す図である。
図3A図3aは通常のブレード負荷の場合に、ブレードがタワーに最接近しているときのカメラすなわち移動カメラの観察画像のスケッチを示す図である。
図3B図3bは高いブレード負荷の場合に、ブレードがタワーに最接近しているときのカメラすなわち移動カメラの観察画像のスケッチを示す図である。
図4図4はブレードたわみ測定システムを示す図である。
図5図5はチップタワークリアランス信号を生成する例を示す図である。
図6図6はテーブルを作成する例を示す図である。
図7図7はチップタワークリアランス推定値を生成する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照すると、風力タービン1は、タワー10、ナセル20、ハブ110、およびハブに取り付けられた1つまたは複数のブレード100、100’、100’’を備える。ハブは、通常メインシャフト30で表されるハブ回転軸(ロータ軸)の周りを回転し、ロータエンコーダ40は、基準方向、通常は垂直方向に対するロータ角度位置(ハブ角度位置)Ωの測定値を提供する。ωで表されるロータ回転速度(ハブ回転速度)は、ロータ角度位置Ωの時間微分として取得される。ナセル20は、タワー10の上部に回転可能に取り付けられ、タワー軸の周りのヨーイング運動を可能にし、それにより、ロータ軸を風向に向ける。特に、ヨーイング運動は、ヨー角によって特徴付けられる。
【0016】
各ブレードは、ハブ110に取り付けられたブレードルート部(blade-root section)と、ブレードの反対側の端にあるブレードチップ部とを有する。ブレードチップとタワーとの間の距離を測定するためのシステムと、ブレードルートに対するブレードチップの位置の両方を推定するためのシステムが提示される。
【0017】
タワー10に対するブレード100の衝突は、壊滅的な事象であるため、風力タービンの運転が認可されるためには、ブレードチップとタワー10との間の最小距離が、ロータの回転中、常に所定の最小値より大きくなければならない。この最小距離は、本明細書では「チップタワークリアランス」と呼ばれ、ブレードが「最接近位置」にあるときに発生する。
【0018】
一般性を失うことなく、簡潔のために、図1におけるブレード100’および100’’のように、ハブに取り付けられた他のブレードに対する本発明の複製および拡張はともに可能で望ましく、ブレード100について本明細書で説明されているのと同じステップを使用して実行可能であることが理解される。
【0019】
ブレード100は、ロータ角度位置がΩであるときに「最接近位置」を有し、その時点で、ブレード100は地面の方を向き、タワーに平行である。Ωは「検出位置」とも呼ばれる。
【0020】
好ましい実施形態が図2bに示される。好ましい実施形態では、第1のカメラ200は、ナセル20の内側に配置される。第1のカメラ200は、ナセル20内の開口部212を通して見て、第1のカメラ200は、第1のカメラ200の視野がタワー10の長さに沿って延在するように配置および配向され、ブレード100が最接近位置にあるとき、ブレード100のチップを、本質的に観察画像の中央、または、所定の位置に配置する。したがって、ブレード100が最接近位置にあるとき、ブレードチップとタワー表面の一部との両方が、第1のカメラ200の視野内にある。第1のカメラ200は、サンプリングすることができ、関連するデータを電子的に格納することができる、CMOSセンサなどの画像センサ上に投影された観察画像を有するデジタルカメラである。
【0021】
別の好ましい実施形態(さらなる実施形態)が図2aおよび図1に示される。さらなる実施形態では、第1のカメラ200は存在せず、第1の移動カメラ202がブレード100に関連付けられる。第1の移動カメラ202は、ブレード100と同期してハブ回転軸の周りを回転し、ハブ110の外部に配置されてもよいが、好ましくは、天候および落雷に対する保護のためにハブ110の内側に配置される。ハブの内側に配置されている場合、第1の移動カメラ202は、ブレード100のピッチ角度βが変更されたときにブレード軸に沿って回転しない。第1の移動カメラ202は、ハブ110内の開口部210を通して見る。第1の移動カメラ202は、サンプリングすることができ、関連付けられたデータを電子的に格納することができる、CMOSセンサなどの画像センサ上に投影された観察画像を有するデジタルカメラである。第1の移動カメラ202は、第1の移動カメラ202の視野がブレード100の長さに沿って延在し、ブレード100のチップを本質的に観察画像の中央または所定の位置に配置するように配置および配向される。このさらなる実施形態では、複数のブレードがハブに取り付けられると、各ブレードは、関連付けられた第1の移動カメラ202を有する。
【0022】
以下の説明では、第1のカメラ200および第1の移動カメラ202は、機能的に同等であり、本文中で置換可能である。したがって、簡潔のために、第1のカメラ200のみが言及される。特に、以下の説明は、(好ましい実施形態という表現が使用されている場合でも)好ましい実施形態とさらなる実施形態との両方に当てはまる。さらに、簡潔のために、ブレード100のみが言及されているが、その説明は、このようなブレードが存在する場合、他のブレード100’および100’’にも等しく有効であることを理解されたい。
【0023】
第1のカメラ200は、ロータエンコーダ40と機能的に接続されているので、ロータ角度位置がΩに等しく、ブレード100がその最接近位置にあるとき、トリガパルス(同期パルス)がカメラ200によって受信される。トリガパルスに対するカメラの反応時間が既知の時間遅延を含む場合、トリガパルスは、遅延を補償するために所定の予測で生成することができる。第1のカメラは、同期パルスを受信する(ロータ角度位置がΩに等しい)と、画像面にデジタルで画像を記録し、このカメラは、さらなる処理のために、デジタルで記録された画像情報を格納する。
【0024】
ブレード100は、その表面にインジケータストライプ220をさらに備える。インジケータストライプ220は、ブレード100のチップの近くに配置され、ブレード表面上の塗装されたストライプ、またはより好ましくは、逆反射性のストライプから構成され得る。インジケータストライプ220は、カメラ200の観察画像内で見えるように配置され、タービンの運転中に、ブレード100が異なる角度βに傾けられるとき、第1のカメラ200に見えるままであるようにブレード200を囲むか、または取り囲む。
【0025】
タワー10は、タワーを囲むか、または取り囲み、カメラ200の観察画像内で見ることができるインジケータリング230を備える。インジケータリング230は、タワーの断面と同じ形状を有し、したがって、タワーが純粋に円錐形または円筒形である場合、形状は円形である。インジケータリング230は、ブレード100が最接近位置にあるとき、インジケータストライプ220の高さと同じ地上高さでタワーに沿って配置されているため、インジケータリング230は本質的にカメラ200に対してインジケータストライプ220と同じ距離にある。好ましくは、インジケータリング230は、タワーの直径を効果的に増加させるような材料厚さを有し、それにより、カメラ観察軸に垂直な面を提供して、カメラ200の観察画像におけるインジケータリング230の視認性を高める。インジケータリングは、タワーを囲む、または取り囲んでいるので、インジケータリングは、すべてのタービンヨー角でカメラ200に見えるままである。
【0026】
図3aおよび図3bは、ロータ角度位置がΩに等しく、ブレード100がタワー10に最接近しているときのカメラ200の観察画像のスケッチを示す。図3aは、通常のブレード負荷の場合を示し、図3bは、高いブレード負荷の場合を示す。インジケータリング230とインジケータストライプ220は、カメラ200まで本質的に同じ距離にあるので、インジケータリング230上の任意の点と、インジケータストライプ220上の任意の点との間の物理的距離σは、図3aにおけるδによって示されるように、第1のカメラの画像センサにおけるインジケータリング230上の対応する点と、インジケータストライプ220上の対応する点との、観察画像における距離に直線的に比例する。好ましい実施形態では、観察画像は、CCDまたはCMOSセンサであり、上記観察画像距離δは、ピクセル数に関して決定することができる。当技術分野でよく知られているように、物理的寸法(たとえばメートル)で測定されたチップタワー距離σは、カメラ200からインジケータストライプ220までの既知の距離と、幾何光学の規則とを使用して、対応するピクセル値δから計算される。
【0027】
チップタワークリアランスΔは、タワーによる1つのブレード通過中の距離σの最小値として計算される。
特に、チップタワークリアランスを決定するプロセスは、ブレードが最接近位置にある瞬間に画像面をフリーズして(freezing)デジタルで格納することと、デジタル画像を処理して、インジケータストライプ220およびインジケータリング230の画像を分離する最小ピクセル数を決定することと、関連付けられた物理的距離Δを計算することとを備える。
【0028】
負荷がかかると、ブレード100は曲げが増加し、ブレードが最接近位置にあるとき、ブレードチップはタワー10に接近する。その結果、観察画像におけるインジケータリング230とインジケータストライプ220との観察画像距離δは減少する。
【0029】
運転中、第1のカメラ200は、ハブ110の材料変形、または第1のカメラ200をハブ110に取り付けるために使用される取り付け支持部の変形により、ハブ110またはブレード100に対して多少回転する可能性がある。この回転は、強力な機械的取り付けによって最小限に抑えることができるが、実際の設置では、いくつかの小さくて不要なカメラの回転が必然的に残る。したがって、ピクセル値δはカメラ回転の下で不変であるため、本発明は本質的に、カメラ回転運動が発生するときはいつでも完全なカメラ回転補償のための方法を提供することに留意する。特に、カメラの回転は、観察画像上でインジケータリング230とインジケータストライプ220との等しい平行移動を生成するため、2つのインジケータ間の距離に影響を与えない。一方、インジケータストライプ220のみを使用したブレードチップ位置の推定は、カメラの動きに非常に敏感であり、したがって信頼性が低くなる。
【0030】
図5を参照すると、チップタワークリアランスを示す値Δは、タワーの1つのブレード通過中のσの最小値として決定され、Δはタービン制御ロジック480に送信され、そこで制御ロジック動作に組み込まれる。
【0031】
カメラ200およびインジケータリング230を備えるシステムは、ブレード100’の最接近位置に対応するロータ角度位置がΩに等しい場合に、チップタワークリアランスΔを直接測定するが、ロータ角度位置が、感知位置Ωである場合のチップタワークリアランスの測定値または推定値を提供しない。特に、ΩはΩとは異なる。たとえば、ブレード100が垂直に上向きである場合、風速の急激な増加によりブレードの曲げが増加し、増加した風速が持続する場合、増加した曲げにより、その後、次のブレードタワー通過時に、チップタワークリアランスが減少する。タービン制御の目的のために、次の最接近位置におけるチップタワークリアランスを予測または予想して、適切な制御動作を事前に(pre-emptively)実行できるようにすることが有益である。
【0032】
時間連続ベースで、チップタワークリアランス推定値を提供するために、好ましい実施形態は、ブレードの瞬間的な幾何学的形状を示す少なくとも1つの信号を提供するブレードたわみ測定システムを備える。例として、ブレードたわみ測定システムは、ひずみゲージ(strain gauge)を使用して、ブレードルートにおけるブレード材料のひずみを測定する。材料ひずみは、ブレード負荷に比例して増加し、ブレードの曲げもブレード負荷とともに増加するため、現在のブレードの幾何学的構成(つまり、曲げ)の間接的な指標を推測できる。ブレードスパンに沿って配置されたジャイロスコープや加速度計などの追加のセンサを使用して、推測の精度を向上させることができる。
【0033】
図4を参照すると、好ましい実施形態では、ブレード100は、少なくとも部分的にブレード100内に延び、光学的に遮るもののないボリュームと、ブレードルートにおいて、またはブレードルート近傍において、ブレード100内に配置され、ブレード100の光学的に遮られていないボリューム内を見るように配向された第2のカメラ300を備えたブレードたわみ測定システムとを備える。ブレード内部では、光学的に遮られていないボリュームの、事前に選択されたスパン位置(「スパン」は、ブレード軸に沿った座標である)で、反射体が、ブレード表面に接着される。少なくとも1つの反射体が必要であるが、好ましい実施形態は、増加するスパン位置において4つまたは5つの反射体を使用する。図4を参照して、第2のカメラ300および4つの反射体310、312、314、316が示されている。
【0034】
反射体は、第2のカメラ300の画像面で見ることができ、ブレードが曲げられると、反射体は第2のカメラに対して移動する。したがって、ブレード100のたわみは、第2のカメラの画像面における反射体の動きから推論することができる。ブレードたわみ測定システムは、反射体が配置されている選択されたブレードスパン位置での(ゼロ負荷構成からの)ブレードたわみを示すたわみ測定値S,S,S,Sを提供する。
【0035】
図6および図7を参照すると、計算ユニット420は、ブレードたわみ信号S,S,S,S、チップタワークリアランスΔ、同期パルス45、ならびにロータ速度ωおよびピッチ角度βを示す信号を受信する。これらすべての信号は時間同期されているため、同期パルス45が到着すると、S,S,S,S,Δ,ω,βの瞬間値は、同じ瞬間に行われた測定値を表し、時間同期データベクトル{Δ,S,S,S,S,ω,β}にともにリンクされる。データベクトルは表形式で、または同等の関数形式で、テーブル430に格納される。そのような1つのデータベクトルは、ブレード100がその最接近位置を通過するたびに作成される。
【0036】
テーブル430内の多くのデータベクトル{Δ,S,S,S,S,ω,β}の収集により、計算ユニットは、チップタワークリアランス推定値Δと、残りの量S,S,S,S,ω,βとの間の機能関係F、
Δ=F(S,S,S,S,ω,β)を生成できる。
【0037】
したがって、ある瞬間に測定されたS,S,S,S,ω,βが与えられると、ロータ角度位置がΩではなくても、チップタワークリアランス推定値が計算される。ブレードが最接近位置を通過する前に評価が行われる場合、推定されるチップタワークリアランスは、最接近位置に到達したときにブレードが生成する、先行する推定値である。
【0038】
瞬間風速場特性は、計算ユニットに知られている場合がある。たとえば、風力タービンには、タービンの前、またはタービン自体においてのいずれかで、風速Uと、垂直ウィンドシア(wind shear)Sとの両方の測定値を提供するLIDARユニットを装備することができる。機能関係Fの最も好ましい形式は、風情報、およびロータ角度位置Ωと温度Tを組み込んで、ロータ角度位置がΩではない場合のチップタワークリアランスのより正確な推定、
Δ=F(S,S,S,S,ω,β,Ω,U,S,T)を提供する。
【0039】
たとえば、ウィンドシアSにより、ブレードは、ロータ面の内外に1回転の正弦波運動を引き起こす。この情報はF内で使用され、チップタワークリアランス推定値を提供するときに、ウィンドシアによって生成される運動を含める。
【0040】
推定された瞬間的なチップクリアランスΔは、タービンコントローラ480に送られ、推定は、ブレードチップタワークリアランスの先読み予測を提供し、これは必要に応じて、適切な制御動作を講じるために使用され得る。
【0041】
テーブル430の長さは、時間とともに増加し、それによって、その完全性が増す。より多くのデータが利用可能になると、計算ユニットは、機能関係Fを更新する。したがって、瞬間的なチップクリアランス推定値は、テーブル430の長さによって精度が向上し、機能関係は、ブレードの構造の変化を捉えるために経時的に更新される。
【0042】
ブレードの構造状態、またはブレードの空気力学的状態に影響を与える追加のプロセスが、テーブル430に組み込まれる。たとえば、ブレード表面での氷の形成は、ブレードの質量分布と、ブレードの空気力との両方を変化させる。計算ユニットは、瞬間的なチップクリアランス推定値の計算においてこれらの物理的事象を考慮する。関連する物理的事象は、温度、構造の劣化、氷の形成、表面の汚れ、先端の侵食が含まれるが、これらに限定されない。
【0043】
表面の汚れと先端の浸食を補償するために、テストタービンブレードに、所定の位置において、長さに沿って表面粗さストリップを一時的に取り付けることができる。次に、テーブル430は、これらのケースを含むように拡張される。
【0044】
表面の着氷を補償するために、テストタービンブレードに、その長さに沿って所定の位置に一時的に追加の質量を加えることができる。次に、テーブル430は、これらのケースを含むように拡張される。
【0045】
構造的な劣化を補償するために、テーブル430は定期的にアーカイブされ、新しいテーブルが(所定の時間間隔で、たとえば毎年)構築される。テーブルは通常のタービン運転中に拡張され、機能関係Fもタービン運転中に更新されるため、これらのプロセスは、タービンを停止する必要がなく、エネルギー生成の損失を引き起こさない。
【0046】
テーブル430は、同じタイプのブレードを有するタービン間で共有することもできる。様々な気候条件と様々な経年変化状態のタービンがその形成に寄与するため、このオプションは完全なテーブル430の作成を大幅に加速する。
【0047】
複数のブレードの場合、上記の発明は、各ブレードについて繰り返される。したがって、各ブレードが、最接近位置にあるときに同期パルスが受信され、各ブレードについて、チップタワークリアランス推定値が生成される。ハブ110は常に同じ方向に回転するので、各ブレードがそれ自体の最接近位置を通過する順序は固定されており、既知である。この順序により、先行するブレードのチップタワークリアランスを、次のブレードのチップタワークリアランスの推定値として使用できる。そのような推定値を推定値Δと組み合わせて、各ブレードについて、改善されたチップタワークリアランス推定値を提供できる。
【0048】
本発明は、チップタワークリアランス測定値を提供し、ここでは、タワーおよびブレードチップの両方の構成要素が、パッシブで、低コストで、メンテナンスの必要なく、過酷な動作条件に対して堅牢で、落雷に対して堅牢であり、アクティブ要素は、ナセルまたはハブの内部にあり、したがって、過酷な条件、落雷から十分に保護され、到達および保守が容易であり、システムのコストは低く、システムは、ブレードが最接近位置に到達する前の、チップタワークリアランスの先行した推定値を提供できる。
図1
図2a
図2b
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7