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特許7175983新規な成長ホルモン受容体拮抗剤及びその融合タンパク質
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】新規な成長ホルモン受容体拮抗剤及びその融合タンパク質
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/27 20060101AFI20221114BHJP
   C07K 14/61 20060101ALI20221114BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20221114BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221114BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20221114BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20221114BHJP
   A61K 47/62 20170101ALI20221114BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20221114BHJP
   A61K 47/56 20170101ALI20221114BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20221114BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20221114BHJP
   A61P 5/12 20060101ALI20221114BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221114BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20221114BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20221114BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20221114BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20221114BHJP
   A61P 5/10 20060101ALI20221114BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20221114BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20221114BHJP
   C12N 15/18 20060101ALN20221114BHJP
【FI】
A61K38/27
C07K14/61 ZNA
C07K19/00
A61P43/00 111
A61K47/60
A61K47/54
A61K47/62
A61K47/68
A61K47/56
A61K47/64
A61K47/65
A61P5/12
A61P35/00
A61P3/10
A61P13/12
A61P19/02
A61P11/00
A61P5/10
A61P5/00
C12P21/02 H
C12N15/18
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020534611
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 KR2018016311
(87)【国際公開番号】W WO2019125002
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】10-2017-0176493
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0147700
(32)【優先日】2018-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517432732
【氏名又は名称】アルテオジェン・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク,ソン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】コ,ジェヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ユウ,スン-ア
(72)【発明者】
【氏名】ユン,サン ホン
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-512298(JP,A)
【文献】特表2015-506951(JP,A)
【文献】特表2015-518882(JP,A)
【文献】特表2012-524062(JP,A)
【文献】特表2014-534166(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0007711(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
C07K 14/61
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成長ホルモン(growth hormone)のアミノ酸配列において1つ以上のアミノ酸が他のアミノ酸に置換された成長ホルモン変異体(growth hormone variant)を含有する成長ホルモン受容体拮抗剤(growth hormone receptor antagonist)であって、前記他のアミノ酸への置換が以下を含む、成長ホルモン受容体拮抗剤
末端から120番目のアミノ酸のリシンへの置換、21番目のアミノ酸のアスパラギンへの置換、174番目のアミノ酸のセリンへの置換、N末端から54番目のアミノ酸のプロリンへの置換、64番目のアミノ酸のリシンへの置換、及び176番目のアミノ酸のチロシンへの置換。
【請求項2】
前記他のアミノ酸への置換は、さらにN末端から167番目のアミノ酸のアスパラギンへの置換、171番目のアミノ酸のセリンへの置換を含む、請求項1に記載の成長ホルモン受容体拮抗剤。
【請求項3】
成長ホルモン(growth hormone)のアミノ酸配列において1つ以上のアミノ酸が他のアミノ酸に置換された成長ホルモン変異体(growth hormone variant)を含有する成長ホルモン受容体拮抗剤(growth hormone receptor antagonist)であって、前記他のアミノ酸への置換が以下を含む、成長ホルモン受容体拮抗剤:
N末端から120番目のアミノ酸のリシンへの置換、21番目のアミノ酸のアスパラギンへの置換、174番目のアミノ酸のセリンへの置換、46番目のアミノ酸のリシンへの置換、18番目のアミノ酸のアスパラギン酸への置換及び179番目のアミノ酸のトレオニンへの置換。
【請求項4】
前記成長ホルモン変異体は、長時間作用型キャリア(long-acting carrier)が融合された形態である、請求項1~3のいずれか一項に記載の成長ホルモン受容体拮抗剤。
【請求項5】
前記長時間作用型キャリアは、前記成長ホルモン変異体のN末端又はC末端に融合されている、請求項4に記載の成長ホルモン受容体拮抗剤。
【請求項6】
前記長時間作用型キャリアは、ポリエチレングリコール、脂肪酸、アルブミン又はそのフラグメント、アルブミン結合物質、α1-アンチトリプシン又はその変異体、免疫グロブリンFc又はそのフラグメント、特定アミノ酸配列の繰り返し単位の重合体、抗体又はそのフラグメント、FcRn結合物質、生体内結合組織又はその誘導体、ヌクレオチド、フィブロネクチン、トランスフェリン、サッカライド、及び高分子重合体からなる群から選択される、請求項4又は5に記載の成長ホルモン受容体拮抗剤。
【請求項7】
前記長時間作用型キャリアは、α1-アンチトリプシン又はα1-アンチトリプシン変異体である、請求項5に記載の成長ホルモン受容体拮抗剤。
【請求項8】
前記α1-アンチトリプシン変異体は、1つ以上のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたものであり、前記置換は、N末端から1番目~25番目のアミノ酸の1つ以上の位置での置換を含む、請求項7に記載の成長ホルモン受容体拮抗剤。
【請求項9】
前記α1-アンチトリプシン変異体は、N末端から9番目のアミノ酸のアスパラギンへの置換、232番目のアミノ酸のセリンへの置換、37番目のアミノ酸のアスパラギンへの置換、及び359番目のアミノ酸のトレオニンへの置換からなる群から選択される1つ以上の置換を含む、請求項7又は8に記載の成長ホルモン受容体拮抗剤。
【請求項10】
前記成長ホルモン変異体は、前記長時間作用型キャリアに直接融合されるか、又はリンカーを介して融合される、請求項4~9のいずれか一項に記載の成長ホルモン受容体拮抗剤。
【請求項11】
前記リンカーは、ペプチド性リンカー又は非ペプチド性リンカーである、請求項10に記載の成長ホルモン受容体拮抗剤。
【請求項12】
前記非ペプチド性リンカーは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール-プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、ポリ乳酸(PLA)、ポリ乳酸-グリコール酸(PLGA)、脂質ポリマー、キチン類、ヒアルロン酸又はそれらの組み合わせである、請求項11に記載の成長ホルモン受容体拮抗剤。
【請求項13】
前記ペプチド性リンカーは、2つ以上のアミノ酸が連結されている、請求項11に記載の成長ホルモン受容体拮抗剤。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の成長ホルモン受容体拮抗剤を含む、ヒト成長ホルモンにより誘発される疾患の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項15】
前記疾患は、末端肥大症、巨人症、癌、糖尿病性腎症、関節炎、肺炎、成長ホルモン欠乏症(GHD)、特発性低身長、ターナー症候群、プラダー・ウィリー(Prader-Willi)症候群、低出生体重児(small for gestational age)及び慢性腎不全(CRI)からなる群から選択される、請求項14に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
請求項1~3のいずれか一項に記載の成長ホルモン変異体をコードするポリヌクレオチドを含む細胞を培養するステップを含む、成長ホルモン受容体拮抗剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成長ホルモン(growth hormone)のアミノ酸配列において1つ以上のアミノ酸が他のアミノ酸に置換された成長ホルモン変異体(growth hormone variant)を含有する成長ホルモン受容体拮抗剤(growth hormone receptor antagonist)に関する。
【背景技術】
【0002】
成長ホルモンは、成長を促進する内分泌ホルモンである。ヒト成長ホルモン(hGH)は、脳下垂体から分泌されて肝臓を含めて様々な組織に作用する。これは、hGHとの複合体により二量体を形成するclass Iサイトカイン受容体スーパーファミリーに属するヒト成長ホルモン受容体(hGHR)の細胞外ドメインに結合し(非特許文献1)、後続のシグナル伝達がインスリン様成長因子1(IGF-1)の発現を増加させる(非特許文献2,3)。
【0003】
hGHの過度な分泌とそれによるIGF-1産生の増加は、手足の肥大を典型的な症状とする慢性疾患である末端肥大症を誘発する。末端肥大症の治療方法として、癌性脳下垂体の外科的除去、放射線療法及びドーパミン作動薬の投与が用いられている。しかし、外科的治療に反応しない患者群があり(非特許文献4,5)、放射線療法は効果が低いだけでなく、効果が遅延する(非特許文献6,7)。hGH受容体拮抗剤(hGHRA)は、hGHの代わりにhGH受容体を占有することにより、hGHがhGH受容体に結合することを防止するので、代替的な治療方法である(非特許文献8,9)。
【0004】
人体内で長期間持続可能なhGHRAは、服用回数を減らして患者の生活の質を向上させることができる。Pegvisomantは、hGH拮抗剤のペグ化されたバージョンとして市販されている(非特許文献10,11)。Pegvisomantの長期作用機序は、ポリエチレングリコールポリマーを治療用タンパク質に結合させることにより、分子の大きさを大きくし、腎臓で濾過されず、血流に留まるようにするものである(非特許文献12)。ペグ化は、タンパク質分解酵素から当該タンパク質を保護するという面もある(非特許文献13)。しかし、治療用タンパク質に対するペグ化(pegylation)は、その有用性が制限されることがある。ペグ化過程は一連の化学反応を必要とするが、これはコスト効率が悪く、反応生成物は一般的に均質でない。その結果、一般に実現困難な追加の精製ステップを必要とする。また、ペグ化タンパク質は、大きさの小さいポリエチレングリコール(例えば、5kDa)を用いる場合は安全であると考えられるが、動物研究において、腎臓の空胞形成(renal vacuolation)だけでなく、ペグ化に対する抗体出現の報告もあり、依然として安全面に課題が残っている。さらに、ペグ化されたタンパク質は、元のタンパク質よりタンパク質受容体との結合力が低下する傾向がある(非特許文献14,15,16)。よって、長期間持続し、特に受容体との結合力を向上させ、抑制活性を向上させることができる、hGHRAの代替技術が求められている。また、コスト効率が良く、簡単なプロセスが求められている。
【0005】
こうした背景の下、本発明者らは、長期間持続し、強力な成長ホルモン受容体抑制活性を示す新規な成長ホルモン受容体拮抗剤hGHRAを設計し、それを試験管内で特性化し、本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】韓国公開特許第10-2013-0136883号公報
【文献】韓国公開特許第10-2013-0029713号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】J.F. Bazan, Haemopoietic receptors and helical cytokines, Immunol. Today. 11 (1990) 350-354.
【文献】F.F. Casanueva, Physiology of growth hormone secretion and action, Endocrinol. Metab. Clin. North Am. 21 (1992) 483-517.
【文献】H. Li, P.M. Bartold, C.Z. Zhang, R.W. Clarkson, W.G. Young, M.J. Waters, Growth hormone and insulin-like growth factor I induce bone morphogenetic proteins 2 and 4: a mediator role in bone and tooth formation, Endocrinology. 139 (1998) 3855-3862. doi:10.1210/endo.139.9.6211.
【文献】B. Swearingen, F.G. Barker, L. Katznelson, B.M. Biller, S. Grinspoon, A. Klibanski, N. Moayeri, P.M. Black, N.T. Zervas, Long-term mortality after transsphenoidal surgery and adjunctive therapy for acromegaly, J. Clin. Endocrinol. Metab. 83 (1998) 3419-3426.
【文献】S. Ahmed, M. Elsheikh, I.M. Stratton, R.C. Page, C.B. Adams, J.A. Wass, Outcome of transphenoidal surgery for acromegaly and its relationship to surgical experience, Clin. Endocrinol. (Oxf.). 50 (1999) 561-567.
【文献】A.L. Barkan, I. Halasz, K.J. Dornfeld, C.A. Jaffe, R.D. Friberg, W.F. Chandler, H.M. Sandler, Pituitary irradiation is ineffective in normalizing plasma insulin-like growth factor I in patients with acromegaly, J. Clin. Endocrinol. Metab. 82 (1997) 3187-3191. doi:10.1210/jcem.82.10.4249.
【文献】A.J. van der Lely, W.W. de Herder, S.W. Lamberts, The role of radiotherapy in acromegaly, J. Clin. Endocrinol. Metab. 82 (1997) 3185-3186. doi:10.1210/jcem.82.10.4325.
【文献】J.J. Kopchick, C. Parkinson, E.C. Stevens, P.J. Trainer, Growth Hormone Receptor Antagonists: Discovery, Development, and Use in Patients with Acromegaly, Endocr. Rev. 23 (2002) 623-646. doi:10.1210/er.2001-0022.
【文献】A.F. Muller, J.J. Kopchick, A. Flyvbjerg, V.D. Lely, A. Jan, Growth Hormone Receptor Antagonists, J. Clin. Endocrinol. Metab. 89 (2004) 1503-1511. doi:10.1210/jc.2002-022049.
【文献】M.O. Thorner, C.J. Strasburger, Z. Wu, M. Straume, M. Bidlingmaier, S.S. Pezzoli, K. Zib, J.C. Scarlett, W.F. Bennett, Growth hormone (GH) receptor blockade with a PEG-modified GH (B2036-PEG) lowers serum insulin-like growth factor-I but does not acutely stimulate serum GH, J. Clin. Endocrinol. Metab. 84 (1999) 2098-2103. doi:10.1210/jcem.84.6.5732.
【文献】V. Goffin, P. Touraine, Pegvisomant. Pharmacia, Curr. Opin. Investig. Drugs Lond. Engl. 2000. 3 (2002) 752-757.
【文献】R.J. Ross, K.C. Leung, M. Maamra, W. Bennett, N. Doyle, M.J. Waters, K.K. Ho, Binding and functional studies with the growth hormone receptor antagonist, B2036-PEG (pegvisomant), reveal effects of pegylation and evidence that it binds to a receptor dimer, J. Clin. Endocrinol. Metab. 86 (2001) 1716-1723. doi:10.1210/jcem.86.4.7403.
【文献】S. Jevsevar, M. Kunstelj, V.G. Porekar, PEGylation of therapeutic proteins, Biotechnol. J. 5 (2010) 113-128. doi:10.1002/biot.200900218.
【文献】R.P. Garay, R. El-Gewely, J.K. Armstrong, G. Garratty, P. Richette, Antibodies against polyethylene glycol in healthy subjects and in patients treated with PEG-conjugated agents, Expert Opin. Drug Deliv. 9 (2012) 1319-1323. doi:10.1517/17425247.2012.720969.
【文献】A. Bendele, J. Seely, C. Richey, G. Sennello, G. Shopp, Short communication: renal tubular vacuolation in animals treated with polyethylene-glycol-conjugated proteins, Toxicol. Sci. Off. J. Soc. Toxicol. 42 (1998) 152-157. doi:10.1006/toxs.1997.2396.
【文献】V.L. Elliott, G.T. Edge, M.M. Phelan, L.-Y. Lian, R. Webster, R.F. Finn, B.K. Park, N.R. Kitteringham, Evidence for metabolic cleavage of a PEGylated protein in vivo using multiple analytical methodologies, Mol. Pharm. 9 (2012) 1291-1301. doi:10.1021/mp200587m.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、成長ホルモンのアミノ酸配列において1つ以上のアミノ酸が他のアミノ酸に置換された成長ホルモン変異体を含有する成長ホルモン受容体拮抗剤を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、成長ホルモン受容体拮抗剤を含有する、ヒト成長ホルモンにより誘発される疾患の予防又は治療用薬学的組成物を提供することを目的とする。
【0010】
さらに、本発明は、成長ホルモン受容体拮抗剤の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0012】
なお、本明細書で開示される各説明及び実施形態はそれぞれの他の説明及び実施形態にも適用される。すなわち、本明細書で開示される様々な要素のあらゆる組み合わせが本発明に含まれる。また、以下の具体的な記述に本発明が限定されるものではない。
【0013】
また、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、通常の実験のみを用いて本明細書に記載された本発明の特定の態様の多くの等価物を認識し、確認することができるであろう。さらに、その等価物も本発明に含まれることが意図されている。
【0014】
前記課題を解決するための本発明の一態様は、成長ホルモンのアミノ酸配列において1つ以上のアミノ酸が他のアミノ酸に置換された成長ホルモン変異体を含有する成長ホルモン受容体拮抗剤を提供する。
【0015】
本願における「成長ホルモン(growth hormone)」とは、脳下垂体から分泌されて体の成長を促進するペプチドホルモンを意味し、これは体の成長以外に他の物質代謝調節機能も有する。具体的には、成長ホルモンはヒトの成長ホルモン(human growth hormone: hGH)であり、hGHは公知の通り191個のアミノ酸からなる。
【0016】
本発明における「成長ホルモン変異体」とは、成長ホルモン(growth hormone)のアミノ酸配列において1つ以上のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたものを意味する。すなわち、1つ以上のアミノ酸の置換を有する成長ホルモンを意味する。
【0017】
具体的には、前記置換は、成長ホルモンのアミノ酸配列における120番目のアミノ酸の置換(より具体的には、リシン又はアルギニンへの置換)を含んでもよい。また、46番目のアミノ酸の置換(より具体的には、リシンへの置換)を含んでもよい。
【0018】
さらに、前記置換は、成長ホルモンのアミノ酸配列における174番目のアミノ酸の置換(より具体的には、セリンへの置換)を含んでもよく、21番目のアミノ酸の置換(より具体的には、アスパラギンへの置換)を含んでもよい。
【0019】
具体的には、前記置換は、アミノ酸配列における18番目のアミノ酸、21番目のアミノ酸、46番目のアミノ酸、54番目のアミノ酸、64番目のアミノ酸、120番目のアミノ酸、167番目のアミノ酸、168番目のアミノ酸、171番目のアミノ酸、172番目のアミノ酸、174番目のアミノ酸、176番目のアミノ酸及び179番目のアミノ酸からなる群から選択される1つ以上の位置の置換を含んでもよい。
【0020】
より具体的には、前記置換は、成長ホルモンのアミノ酸配列におけるH18D、H21N、Q46K、F54P、R64K、G120K、R167N、K168A、D171S、K172R、E174S、F176Y及びI179Tから選択される1つ以上の置換を含んでもよい。
【0021】
場合によっては、前記変異体は、リン酸化(phosphorylation)、硫酸化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、グリコシル化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)、アセチル化(acetylation)、アミド化(amidation)などにより修飾(modification)されてもよい。
【0022】
本発明の一例として、前記成長ホルモン変異体は、表1の配列番号で表されるタンパク質であってもよいが、これらに限定されるものではない。配列番号1~9の成長ホルモン変異体は、それぞれ後述する実施例1~9の成長ホルモン変異体の配列と同一である。一方、実施例10及び実施例11は、それぞれ配列番号7及び9の成長ホルモン変異体を含む。
【0023】
【表1】
【0024】
本発明における「成長ホルモン受容体(Growth Hormone Receptor: GHR)」とは、成長ホルモンに結合し、シグナルを細胞の内部に伝達する受容体を意味する。細胞膜を1回貫通する構造を有し、受容体が活性化すると、JAK/STAT経路を介してSTAT二量体が核の内部で様々な遺伝子の転写を調節する。成長ホルモン受容体は、肝臓、筋肉、脂肪、腎臓、初期胚及び胎児の組織など、体内全般の組織で発見された。
【0025】
成長ホルモンが受容体に結合すると、後続のシグナル伝達によりIGF(insulin like growth factor)-1の分泌が増加する。hGHの過度な分泌とそれによるIGF-1産生の増加は、手足の肥大を典型的な症状とする慢性疾患である末端肥大症を誘発する。
【0026】
本発明における「成長ホルモン受容体拮抗剤(growth hormone receptor antagonist)」とは、成長ホルモン受容体に成長ホルモンが結合することを拮抗し、成長ホルモン受容体と成長ホルモンの結合過多により現れる副作用を抑制するための作用剤を意味する。
【0027】
具体的には、成長ホルモン受容体拮抗剤は、成長ホルモン受容体との結合力が強く、競合的に成長ホルモンの効能を拮抗することのできる成長ホルモン変異体である。
【0028】
また、成長ホルモン受容体拮抗剤は、成長ホルモン変異体に融合された長時間作用型キャリアを含むものであってもよい。
【0029】
本発明における「長時間作用型キャリア」とは、生体内半減期を延長させることができる物質を意味する。本発明による成長ホルモン変異体に、従来から公知の様々な生体内半減期を延長させることが知られている長時間作用型キャリアを融合させると、成長ホルモン受容体を拮抗すると共に生体内半減期を延長させる持続性製剤として用いられるものと予想される。
【0030】
本願における長時間作用型キャリアとして、腎クリアランス(renal clearance)を減少させることのできる様々なキャリア、具体的には、ポリエチレングリコール、脂肪酸、アルブミン又はそのフラグメント、アルブミン結合物質、α1-アンチトリプシン又はその変異体、免疫グロブリンFc又はそのフラグメント、特定アミノ酸配列の繰り返し単位の重合体、抗体又はそのフラグメント、FcRn結合物質、生体内結合組織又はその誘導体、ヌクレオチド、フィブロネクチン、トランスフェリン、サッカライド、及び高分子重合体からなる群から選択される1つ以上が用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
より具体的には、α1-アンチトリプシン(A1AT)又はその変異体が長時間作用型キャリアとして用いられる。
【0032】
α1-アンチトリプシン又はその変異体については、特許文献1及び2に開示されている。具体的には、A1ATは、ヒト血漿において1リットル当たり1.5~3.5グラムの濃度を有する最も豊富なタンパク質の一つであり、主に肝細胞で合成されて血液に分泌される。α1-アンチトリプシン変異体は、グリコシル化を促進し、その内在的活性をなくすために、A1ATに追加の突然変異を有するように設計されている。α1-アンチトリプシン変異体は、標的タンパク質に融合されると、標的タンパク質の半減期を延長させることができる。
【0033】
α1-アンチトリプシン変異体技術の主な利点の一つは、非免疫原性である。特に、ヒト血漿のA1ATは、肺気腫、肺疾患によるA1AT欠乏患者の治療剤として既に用いられており、毎週の服用量は体重1kg当たり60mgと非常に多い。深刻な副作用はまだ報告されておらず、これは治療剤としてのA1ATの安全性を示すものである。
【0034】
本発明においては、成長ホルモン受容体拮抗剤として、α1-アンチトリプシン変異体を成長ホルモン変異体に融合することにより長期間持続するhGHRAを提供するが、これに限定されるものではない。前記α1-アンチトリプシン変異体は、α1-アンチトリプシンの配列において1番目~25番目のアミノ酸のうち1つ以上の置換を含むものであってもよく、前記成長ホルモン変異体は、成長ホルモンのアミノ酸配列においてH18D、H21N、Q46K、F54P、R64K、G120K、R167N、K168A、D171S、K172R、E174S、F176Y及びI179Tから選択される1つ以上の置換を含むものであってもよい。
【0035】
より具体的には、例えばα1-アンチトリプシン変異体は、表2の配列番号10のアミノ酸配列を有してもよい。本発明のα1-アンチトリプシン変異体は、「NexP」(特許文献1)であってもよい。
【0036】
【表2】
【0037】
血漿半減期の延長のためにα1-アンチトリプシン変異体が成長ホルモン変異体に融合された成長ホルモン受容体拮抗剤は、ペグ化された成長ホルモン変異体と比較して、成長ホルモン受容体との結合力が強いだけでなく、成長ホルモンの効能をより強く拮抗することができる。
【0038】
具体的には、本発明における成長ホルモン受容体拮抗剤としての実施例4、6、7、8、9、10及び11は、従来から成長ホルモン抑制剤として知られているPegvisomantと比較しても、hGH受容体との結合力が強く、拮抗剤としての活性が高いことを示したが、これらに限定されるものではない(図4及び図5、表4参照)。
【0039】
長時間作用型キャリアが成長ホルモン変異体に融合された成長ホルモン受容体拮抗剤において、前記長時間作用型キャリアは、前記成長ホルモン変異体のN末端又はC末端に融合されてもよい。
【0040】
特に、特定の成長ホルモン変異体において、そのN末端に長時間作用型キャリアが融合された成長ホルモン受容体拮抗剤は、C末端に融合されたものと比較して、成長ホルモン受容体に対する結合力が著しく強いか、成長ホルモンの効能を強く拮抗することができる。本発明の一例として、hGH-A7及びhGH-A9と比較して、hGH-A10及びhGH-A11は、同じアミノ酸配列を有する成長ホルモン変異体であっても、変異体のN末端に融合されたもののほうが成長ホルモンの効能を著しく強く拮抗することが確認されたが、これらに限定されるものではない(図4のC及びD、図5、表4参照)。
【0041】
本願における前記長時間作用型キャリアは、前記成長ホルモン変異体に直接融合されてもよく、リンカーを介して融合されてもよい。
【0042】
前記リンカーは、長時間作用型キャリアと成長ホルモン変異体の共有結合に用いられて活性に影響を与えないものであればいかなるものでもよい。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール-及びプロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、ポリ乳酸(PLA)、ポリ乳酸-グリコール酸(PLGA)、脂質ポリマー、キチン類、ヒアルロン酸又はそれらの組み合わせの非ペプチド性リンカーであってもよく、2つ以上のアミノ酸が連結されたペプチド性リンカーであってもよい。一例としてGGGGSが挙げられ、長さが様々に調節された(2X、3X、4Xなど…)リンカーを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
前記課題を解決するための本発明の他の態様は、成長ホルモン受容体拮抗剤を含む、ヒト成長ホルモンにより誘発される疾患の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。ここで用いられる用語は前述した通りである。
【0044】
本発明における「ヒト成長ホルモンにより誘発される疾患」とは、脳下垂体が成長ホルモンの分泌を正常に調節できずに過剰分泌するなどの原因により誘発される疾患を意味する。一例として、末端肥大症、巨人症、癌、糖尿病性腎症、関節炎、肺炎、成長ホルモン欠乏症(GHD)、特発性低身長、ターナー症候群、プラダー・ウィリー(Prader-Willi)症候群、低出生体重児(small for gestational age)、慢性腎不全(CRI)などが挙げられる。
【0045】
また、ヒト成長ホルモンにより誘発される疾患には、成長ホルモンの作用過剰によるIGF(insulin like growth factor)-1の分泌増加に起因する疾患が含まれる。
【0046】
本発明の実施例(hGH-A1~hGH-A11)においては、成長ホルモンとその受容体の結合を抑制するので、ヒト成長ホルモンにより誘発される疾患の予防又は治療用途に活用できることが確認されたが、これらに限定されるものではない(実験例及び表4参照)。
【0047】
前記課題を解決するための本発明のさらに他の態様は、成長ホルモン(growth hormone)のアミノ酸配列において1つ以上のアミノ酸が他のアミノ酸に置換された成長ホルモン変異体をコードするポリヌクレオチドを含む細胞を培養するステップを含む、成長ホルモン受容体拮抗剤の製造方法を提供する。ここで用いられる用語は前述した通りである。
【0048】
前記細胞は、成長ホルモン変異体の発現ベクターを転移させた細胞であってもよく、一例としてCHO(Chinese hamster ovary)-K1などが用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
前記課題を解決するための本発明のさらに他の態様は、前記成長ホルモン受容体拮抗剤を含む薬学的組成物を個体に投与するステップを含む、ヒト成長ホルモンにより誘発される疾患の予防又は治療方法を提供する。ここで用いられる用語は前述した通りである。
【0050】
本発明における「投与」とは、任意の適切な方法で患者に本発明の薬学的組成物を導入することを意味し、本発明の組成物の投与経路は、標的組織に送達できるものであれば、経口又は非経口の様々な経路で投与することができる。本発明による製剤は、目的とする投与方法で様々な剤形に作製することができる。
【0051】
投与は、予防的に又は治療的に行われてもよい。
【0052】
本発明の製剤の投与頻度は、特にこれらに限定されるものではないが、1日1回投与してもよく、用量を数回に分けて投与してもよい。
【0053】
本発明による製剤の投与対象となる個体とは、ヒトを含むあらゆる動物を意味する。前記動物は、ヒトだけでなく、それに類似した症状の治療を必要とするウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ラクダ、カモシカ、イヌ、ネコなどの哺乳動物であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0054】
前記課題を解決するための本発明のさらに他の態様は、前記成長ホルモン受容体拮抗剤を含む薬学的組成物における、ヒト成長ホルモンにより誘発される疾患の予防又は治療用途を提供する。ここで用いられる用語は前述した通りである。
【発明の効果】
【0055】
本発明による成長ホルモン受容体抑制剤は、成長ホルモン受容体との結合力が強く、持続的に拮抗作用を示す。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】成長ホルモンと成長ホルモン受容体が結合された複合体の構造を示す図である(PDB id: 3HHR)。
図2】hGH、hGH-A1及びhGH-A2におけるhGH効能を示す図である。
図3】本発明の成長ホルモン受容体拮抗剤としてのhGHR-A3のクロマトグラフィーによる精製を示す図である。図3のAはhGHR-A3の精製のための第2イオン交換カラムクロマトグラフィーのクロマトグラムを示す図であり、図3のBは各精製分画の10%SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果を示す図である。図3のCはサイズ排除HPLCにより分析した、精製されたhGHR-A3の純度を示す図である。
図4】hGH-A7、hGH-A9、hGH-A10、hGH-A11及びPegvisomantを対象としたhGH受容体結合分析及びhGH競合的抑制活性分析の結果を示す図である。
図5】hGH-A1~hGH-A11と比較例Pegvisomantの相対的結合力及びhGHの競合効能の結果をプロットした図である。
図6】本発明の成長ホルモン受容体拮抗剤を製造する過程の一例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本発明を例示するもので、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0058】
製造例:成長ホルモン受容体拮抗剤の製造
1.クローニング、形質転換及び細胞培養
hGH-NexPのcDNAクローンは、周知の方法により作製した。hGH受容体拮抗剤(hGHRA-NexP)は、hGH-NexPの遺伝子に対する部位特異的突然変異誘発(site-directed mutagenesis)により製造した。その後、突然変異は、DNA塩基配列分析により確認した。CHO(Chinese hamster ovary)-K1細胞は、各hGHRA-NexPクローンの塩基配列を含むプラスミドで一時的に形質転換した。形質転換した細胞は、5%CO2の加湿培養器において10%FBSを補充したIMDM培地(Isocove's Modified Dulbecco's Medium)で7日間成長させた。
【0059】
2.hGHRA-NexPの精製
一時的に形質転換したCHO-K1細胞から一連のカラムクロマトグラフィーによりhGHRA-NexPの変異体を精製した。培養上清液は、同じ体積の緩衝液A(20mMリン酸ナトリウム,pH8.0)で希釈し、緩衝液Aで平衡化したイオン交換カラムに適用した。緩衝液Aで洗浄し、その後緩衝液AからNaClの線形勾配でタンパク質を溶出した。次に、hGHRA-NexPを含有する分画は、緩衝液B(20mM Tris-HCl,100mM NaCl,pH7.5)で平衡化した親和性カラムに直接ロードした。緩衝液BからMgCl2勾配で分画を溶出した。溶出プールのpH及び電気伝導率を調節し、その後それを緩衝液C(20mM sodium phosphate,80mM NaCl,pH8.0)で平衡化した第2イオン交換樹脂にロードした。タンパク質分画物は、Vivaspin 20濃縮器(Sartorius)を用いて濃縮し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に対して透析した。
【0060】
3.SE-HPLC分析
hGHRA-NexPの純度を決定するために、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)分析を行った。タンパク質溶液は、TSKgel G3000SWXLカラム(Tosoh)にロードし、ランニングバッファー(50mM sodium phosphate,150mM NaCl,0.05% sodium azide,pH6.8)を用いて0.5mL/分の流速でクロマトグラムを得た。クロマトグラムの主要ピークの面積パーセント(%)を計算した。
【実施例
【0061】
成長ホルモン受容体拮抗剤の例示
本発明は、hGH配列に対する部位特異的突然変異誘発と持続性を付与するNexP技術により、成長ホルモン受容体拮抗剤の抑制剤を製造することを目的とするものであり、hGHの120番目のアミノ酸が置換された実施例1(hGH-A1:G120K)及び実施例2(hGH-A2:G120R)を製造した。また、前記目的を達成するために、hGH配列においてhGH-A1のsite 1に追加のミューテーションを導入して実施例3~7を製造した。具体的には、各実施例で置換されたアミノ酸は表3に示すものである。実施例9は、リシンの導入による陽イオン-π相互作用を誘導するために、Q46K変異を導入した。
【0062】
【表3】
【0063】
表3において、hGH-A1~hGH-A9はNexPが変異体のC末端に融合されたものであり、hGH-A10及びhGH-A11はNexPが変異体のN末端に融合されたものである。
【0064】
前記hGHRA-NexPタンパク質は、前述した製造例の通り、CHO-K1細胞の形質転換と一連のカラムクロマトグラフィーにより製造した。代表例として、第2イオン交換カラムクロマトグラフィーのクロマトグラムを図3のAに示す。純粋なタンパク質をクロマトグラフィーから得たところ、精製されたタンパク質は100kDaと70kDaの間に移動していた(図3のB)。分画番号7~14の分画を集め、溶液をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に対して透析した。タンパク質の純度は、SE-HPLCクロマトグラムの主要ピークから分かるように、95%の高い純度を示すことが確認された(図3のC)。
【0065】
実験例:hGH効能及び受容体結合力分析
1.hGH効能の分析方法
この分析のために、hGH受容体シグナルにより誘導されるルシフェラーゼ遺伝子を含有するHEK293F細胞の染色体にhGH受容体遺伝子を導入した。生成された細胞株をhGHR/Luc/HEK293Fと命名した。hGHR/Luc/HEK293Fを含有する96ウェル白色プレートにhGHとhGHRA-NexPの一連の希釈液をそれぞれ添加した。プレートを37℃の5%CO2培養器で24時間培養した。培養後に、100μLのルシフェラーゼ分析試薬(Steady-Glo(登録商標) luciferase assay system, Promega)を各ウェルに添加し、プレートを包装して光から保護した。室温で5分間放置し、マルチモードマイクロプレートリーダー(SpectraMax M5, Molecular Devices)を用いてウェルからの発光を分析した。
【0066】
hGH、hGH-A1及びhGH-A2において測定された結果を図2に示す。hGHとは異なり、hGH-A1及びhGH-A2は効能を示さないことが確認された。
【0067】
2.hGH受容体結合分析
hGH受容体に対するhGRA-NexPの結合親和力は、組換えhGH受容体Fcキメラを用いる結合分析により評価した。マイクロプレートをhGH受容体キメラで25℃にて一晩コーティングした。TPBS緩衝液(0.05% Tween-20を含むPBS緩衝液)で洗浄し、その後試料(実施例1~11とPegvisomant)を各ウェルにロードした。サンプルを3回洗浄し、その後抗hGH-ポリクローナル抗体-ビオチンとの接合反応を行った。さらに、洗浄ステップを経て、3,3',5,5'-tetramethylbenzidine(TMB)を各ウェルに添加してTMB反応を施した。反応からの吸光シグナルは450~650nmで記録した。
【0068】
hGH-A7(●)、hGH-A9(○)及びPegvisomant(□)の結合プロファイルを測定した結果を図4のAに示す。また、hGH-A10(▲)、hGH-A11(△)及びPegvisomant(□)の結合プロファイルを測定した結果を図4のCに示す。
【0069】
hGH-A7及びhGH-A9は、Pegvisomantと比較してhGH受容体結合力が強いことが分かった。また、hGH-A10及びhGH-A11は、Pegvisomantと比較してhGH受容体結合力が著しく強いことが分かった。
【0070】
3.hGH競合的抑制活性分析
hGH競合分析により、下流シグナル伝達に対するhGHRA-NexPの抑制活性を分析した。hGHR/Luc/HEK293Fを含有する96ウェルプレートの各ウェルに実施例1~11とPegvisomantの一連の希釈液を添加した。プレートを37℃の5%CO2培養器で24時間培養した。培養後に、100μLのルシフェラーゼ分析試薬(Steady-Glo(登録商標) luciferase assay system, Promega)を各ウェルに添加し、プレートを包装して光から保護した。室温で5分間放置し、マルチモードマイクロプレートリーダー(SpectraMax M5, Molecular Devices)を用いてウェルからの発光を分析した。
【0071】
hGH-A7(●)、hGH-A9(○)及びPegvisomant(□)の結合プロファイルを測定した結果を図4のBに示す。また、hGH-A10(▲)、hGH-A11(△)及びPegvisomant(□)の結合プロファイルを測定した結果を図4のDに示す。
【0072】
hGH-A7及びhGH-A9は、Pegvisomantと比較してhGH競合的抑制活性が高いことが分かった。また、hGH-A10及びhGH-A11は、Pegvisomantと比較してhGH競合的抑制活性が著しく高いことが分かった。
【0073】
hGH-A1~hGH-A11と比較例Pegvisomantの相対的結合力及びhGH競合的抑制活性についての分析結果を表4に示す。その結果を図5にプロットした。
【0074】
【表4】
【0075】
表4に示すように、hGH-A4、hGH-A6、hGH-A7、hGH-A8、hGH-A9、hGH-A10及びhGH-A11は、従来から知られているPegvisomantと比較しても、強いhGH受容体結合力と高い競合的抑制活性を表して、特にNexPが変異体のN末端に融合されたhGH-A10及びhGH-A11は、競合的抑制活性が著しく高かった。
【0076】
以上の説明から、本発明の属する技術分野の当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。なお、前記実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本発明には、明細書ではなく請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導出されるあらゆる変更や変形された形態が含まれるものと解釈すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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