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特許7176009セルフシーリングタイヤ用シーリングコンパウンド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】セルフシーリングタイヤ用シーリングコンパウンド
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20221114BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20221114BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20221114BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20221114BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
C08L9/00
C08L101/00
C08L9/06
C09K3/10 A
B60C1/00 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020569005
(86)(22)【出願日】2019-06-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 EP2019065332
(87)【国際公開番号】W WO2019238746
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-02-05
(31)【優先権主張番号】18177546.1
(32)【優先日】2018-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516112462
【氏名又は名称】アランセオ・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジアウェン・ジョウ
(72)【発明者】
【氏名】ゴラン・ストイツェヴィッチ
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-010354(JP,A)
【文献】特開昭55-127212(JP,A)
【文献】特開昭60-240502(JP,A)
【文献】特開昭60-240780(JP,A)
【文献】特開平10-036597(JP,A)
【文献】特表2017-533296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
C09K 3/10
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくとも1つの架橋したブチルゴムであって、前記の少なくとも1つの架橋したブチルゴムが、
a)少なくとも1つのイソオレフィン;及び
b)共役マルチオレフィンに由来する構造単位が、(i)少なくとも部分的にハロゲン化されている又は(ii)ハロゲン化されていない、少なくとも1つの共役マルチオレフィン、
に由来する構造単位を含むコポリマーであり、
架橋したブチルゴムがさらに
(I)125℃においてASTM D 1646,ML1+8に準拠して測定して少なくとも30のムーニー粘度;及び
(II)250mgの前記少なくとも1つの架橋ブチルゴムを25mlのトルエン中で23℃において24時間撹拌しながら膨潤させ、得られたゲルを20000rpmで120分間遠心分離をし、ゲルを分離して、70℃で一定質量になるまで乾燥させて、秤量し、ゲル含有量=mg単位でのゲルの乾燥質量/250mgとして測定して、少なくとも5質量%のゲル含有量
を有する、架橋したブチルゴム;
(B)シクロペンタジエン(CPD)又はジシクロペンタジエン(DCPD)ホモポリマー又はシクロペンタジエンコポリマー樹脂、テルペンホモポリマー又はコポリマー樹脂、テルペン/フェノールホモポリマー又はコポリマー樹脂、C 画分またはC 画分のホモポリマー又はコポリマー樹脂、α-メチルスチレンのホモ-又はコポリマー樹脂、及び記載したものの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの炭化水素樹脂;
(C)少なくとも1つの老化安定剤;
(D)1質量%~60質量%のスチレン含有量を有するスチレン/ブタジエンコポリマー;及び
(E)少なくとも1つの可塑剤、
を含む、シーリング組成物。
【請求項2】
(F)少なくとも1つのフィラーをさらに含む、請求項1に記載のシーリング組成物。
【請求項3】
架橋ブチルゴムのムーニー粘度が30~120であり、架橋ブチルゴムのゲル含有量が5~60質量%である、請求項1又は2に記載のシーリング組成物。
【請求項4】
少なくとも1つのイソオレフィンに由来する構造単位が、イソブテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、及び2-メチル-2-ブテンからなる群から選択される少なくとも1つのイソオレフィンの構造単位を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のシーリング組成物。
【請求項5】
少なくとも1つの共役マルチオレフィンに由来する構造単位が、イソプレン、ブタジエン、2-メチルブタジエン、2,4-ジメチルブタジエン、ピペリレン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、2-ネオペンチルブタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、2,5-ジメチル-2,4-ヘキサジエン、2-メチル-1,4-ペンタジエン、4-ブチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジブチル-1,3-ペンタジエン、2-エチル-1,3-ペンタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,6-ヘプタジエン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、1-ビニル-シクロヘキサジエン、及び1-メチルシクロヘプテンからなる群から選択される少なくとも1つの共役マルチオレフィンの構造単位を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のシーリング組成物。
【請求項6】
少なくとも1つの架橋したブチルゴムが、
c)b)による共役マルチオレフィン以外の少なくとも1つの架橋性マルチオレフィン、に由来する構造単位をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のシーリング組成物。
【請求項7】
少なくとも1つの架橋性マルチオレフィンに由来する構造単位が、ノルボルナジエン、2-イソプロペニルノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、又は前記の化合物のC~C20アルキル置換誘導体からなる群から選択される少なくとも1つの架橋性マルチオレフィンの構造単位を含む、請求項6に記載のシーリング組成物。
【請求項8】
架橋性ブチルゴム(A)及びスチレン/ブタジエンコポリマー(D)の合計を100phrとして、シーリング組成物中の架橋ブチルゴムの総量が45phr~100phrである、請求項1~7のいずれか一項に記載のシーリング組成物。
【請求項9】
炭化水素樹脂(B)が、(D)CPD/ビニル芳香族コポリマー樹脂、(D)CPD/テルペンコポリマー樹脂、(D)CPD/C 画分コポリマー樹脂、(D)CPD/C 画分コポリマー樹脂、テルペン/ビニル芳香族コポリマー樹脂、テルペン/フェノールコポリマー樹脂、C 画分/ビニル芳香族コポリマー樹脂、及びここに挙げたものの混合物からなる群から選択される炭化水素樹脂である、請求項1~8のいずれか一項に記載のシーリング組成物。
【請求項10】
シーリング組成物中の炭化水素樹脂(B)の量が、架橋したブチルゴム及びスチレン/ブタジエンコポリマー(D)の合計に基づいて、10phr~60phrである、請求項1~9のいずれか一項に記載のシーリング組成物。
【請求項11】
各場合において架橋ブチルゴム(A)及びスチレン/ブタジエンコポリマー(D)の合計に基づいて、
・ 45phr~100phrの少なくとも1つの架橋ブチルゴム、
・ 10phr~60phrの少なくとも1つの炭化水素樹脂(B)、
・ 20phr未満の少なくとも1つの老化安定剤(C)、
・ 55phr未満の少なくとも1つのスチレン/ブタジエンコポリマー(D)、
・ 60phr未満の少なくとも1つの可塑剤(E)、
・ 任意選択により場合によっては、1phr~50phrの少なくとも1つのフィラー(F)、
を含有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のシーリング組成物。
【請求項12】
少なくとも、固体又は液体成分又はその溶液を混合する工程を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のシーリング組成物を製造する方法。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載のシーリング組成物を含む空気圧式車両タイヤ。
【請求項14】
請求項13に記載の少なくとも1つの空気圧式車両タイヤを含む車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の架橋したブチルゴムを含むシーリングコンパウンド、特にタイヤシーリングコンパウンド、及びその使用、並びに前記シーリングコンパウンドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車及びトラック用の空気入りタイヤの使用中には、異物の侵入の結果としてのタイヤに対する損傷、及び損傷によるタイヤの空気の喪失のリスクがある。タイヤの空気の喪失は不安定な乗り心地をしばしばもたらし、それはタイヤの即時交換又は間に合わせの修理を必要とする。危険な交通状況においてタイヤの交換又は修理のために車両を停止したり車両から離れたりすることを必要としないように、さまざまなタイヤ及びホイールのデザインが開発されてきている。したがって、タイヤの空気圧が失われた場合に、トレッドを下のサポートリングへと下げることにより、一時的に旅を続けることを可能にするランフラット特性を有するタイヤが市場に存在する。さらに、強化されたタイヤサイドウォールを特徴とするランフラットタイヤがあり、これはタイヤの空気圧が失われた場合に、危険な乗車状況になることなく、限られた時間のあいだ空気圧がなくても、車軸荷重に耐えることができる。市場に存在しているこれら全てのデザインは、タイヤの質量及び転がり抵抗を顕著に増大させ、したがって、自動車の運転において、燃料の消費を増加させる。
【0003】
浸入している異物を取り囲む、及び/又は異物が形成する穴を直接閉じる自己シーリング層の形態のシーリングコンパウンドを有するタイヤが、原則として知られている。
【0004】
米国特許第3,565,151(A)号明細書は、インナーライナーによって分離され、かつタイヤカーカス内でビードからビードへと支持されている2層のシーリングコンパウンドを含むセルフシーリングタイヤを開示している。シーリング材は主にスチレン-ブタジエンゴム(SBR)及び少量の架橋剤から構成されており、SBR成分は80phrから95phr(100質量部のゴムに対する質量部)のコールド重合SBR及び5phrから20phrのホット重合SBRの混合物である。この文献は、接着及び凝集特性については全く言及していない。
【0005】
セルフシーリングタイヤは、米国特許第3,981,342(A)号明細書にも開示されている。この特許は、低分子量液体エラストマー及び高分子量固体エラストマーの混合物と、その混合物の部分的な架橋を生じさせるのに十分な量の架橋剤を含む層を有するセルフシーリングタイヤについて記載しており、液体エラストマーは固体エラストマーよりも多い量で存在している。
【0006】
米国特許第4,228,839(A)号明細書は、高エネルギー放射線によって分解可能なポリマー材料と、放射線及び/又は熱によって架橋可能なポリマー材料との混合物を含む層を有するセルフシーリングタイヤを開示している。
【0007】
米国特許第4,664,168(A)号明細書は、製造及び使用中にシーリングコンパウンドを所定の位置に保持するために、内側のうえのセルフシーリング層と、そのシーリング層と部分的に重なる多数の支持要素とを有するセルフシーリングタイヤを開示している。
【0008】
米国特許第7,004,217(B)号明細書は、カーカスとインナーライナーの間にシーリングコンパウンドを有するシーリングチャンバーを含むセルフシーリングタイヤを開示している。
【0009】
米国特許第4,113,799(A)号明細書は、高分子量のブチルゴムと低分子量のブチルゴムとを20:80から60:40の比率で含み、55質量%から70質量%の量の粘着付与剤を添加したシーリング層を開示している。
【0010】
ドイツ国特許出願公開第10-2009-003333号明細書は、セルフシール空気式自動車タイヤのための、粘弾性ゲルから構成されたシーリングコンパウンドを開示しており、これは0.05mmから8mmの平均直径を有する粒子の形態の未加硫又は加硫されたゴムなどのポリマーから構成されるフィラーを含む。この粒子は、ゲルから構成されている既知のシーラントと比較して、シーリング作用をさらに改善することを意図している。接着及び凝集特性への効果は明らかにされていない。
【0011】
国際公開第2008/019901号は、とりわけ、p-キノンジオキシム及び過酸化ベンゾイルで部分的に架橋されたブチルゴムに基づくシーリングコンパウンドを開示している。
【0012】
さらに、米国特許第5,295,525(A)号明細書は、ゴム、及び低分子量の液体ゴムタイプと高分子量の固体ゴムタイプの組み合わせに基づくシーラントを開示している。
【0013】
米国特許第6,508,898(B)号明細書に詳述されているゲルシステムは、ポリウレタン及びシリコーンに基づいている。しかし、シリコーンゴムから作られた加硫物は、例えば、ナフテン油及び芳香族油に対する耐性がない。他の基材への低い接着性(低い表面エネルギー)、並びに高い水蒸気及びガス透過性も同様に、タイヤに使用するには不利である。シリコーンゴムは、BR又は天然ゴムより100倍高いガス透過性を有すると述べられている(Kautschuk Technologie [Rubber Technology], F.Roethemeyer, F. Sommer, Carl Hanser Verlag Munich Vienna, 2006; 206ページ)。ポリウレタンゴムを使用することの欠点は、可塑剤との相容性がないことである。フタル酸エステル及びアジピン酸エステルは、最大30phrまで相溶する。ポリエステルタイプは、加水分解安定剤を必要とする。ポリエーテルタイプは、UV安定剤を必要とする。硬度スケールの高い方の領域に見られるポリウレタンエラストマーも、加水分解の傾向があるため、好ましくない耐熱性を有している(Kautschuk Technologie, F.Roethemeyer, F. Sommer, Carl Hanser Verlag Munich Vienna, 2006; 218ページ)。上記の理由により、したがって、シリコーンゴムベース及びポリウレタンゴムベースのタイヤ用途のためのシーラントの使用は不利である。
【0014】
国際公開第2009/143895号は、第二成分として予め架橋されたSBR粒子と、主成分として天然又は合成ゴムを含むシーリングコンパウンドを開示している。これらの架橋したSBRの粒子は、熱エマルション重合によって製造される。様々な研究が、高温エマルション重合の場合の50℃から低温エマルション重合の場合の5℃への重合温度の低下が、分子量分布に強い影響を及ぼしたことを示している。5℃でのフリーラジカル重合の初期段階でのチオールの迅速な反応における低分子量画分の形成が明らかに減少し、それによって、ポリマーの鎖長のより良い制御が可能にされた。改善された鎖長分布と並んで、望ましくない制御されていない架橋反応も明らかに減少したことが示された。高温エマルション重合によって得られたSBR粒子は、したがって、低温ポリマーと比較して、非常に広い分子量分布と高レベルの制御されていない分岐を有している。したがって、粘弾性特性の制御された調整は不可能である(Science and Technology of Rubber, James E. Mark, Burak Erman, Elsevier Academic Press, 2005, 50ページ)。
【0015】
ハロブチルゴムと窒素またはリンとを含む求核試薬から生成されたアイオノマーを含むシーラント層を備えたセルフシーリングタイヤが、欧州特許出願公開第2993061A号公報によって知られている。
【0016】
例えば一緒になって単一のシーラント層を形成する有機ペルオキシド解重合ブチルゴムを含む、内蔵型パンクシーラント層を備えたセルフシーリングタイヤが、欧州特許出願公開第2939823A1号公報に開示されている。
【0017】
国際公開第2017/017080号は、100MUから170MUの範囲にムーニー粘度(ML1+4@100℃)を有するシーリングゲルを含むシーリングコンパウンドを開示しており、これは、とりわけ、特定のプロセス条件下で、75MUから110MUのムーニー粘度(ML1+4@100℃)を有するジエンゴムゲルと少なくとも1つの架橋剤の存在下での少なくとも1つの共役ジエンのエマルション重合によって得ることができる。
【0018】
粘弾性は、純粋な弾性の特徴だけでなく、粘性流動性の特徴も存在するという意味での材料の特徴であり、これは、例えば、変形時の内部摩擦の発生に現れる。
【0019】
結果として生じるヒステリシスは、通常、高温(たとえば60℃)での損失係数tanδの測定によって特徴付けられ、これはタイヤ内のゴム混合物についての、特にタイヤトレッドについての重要なパラメータである。ヒステリシスは、動的応力(可逆伸び)下でのゴム混合物の熱蓄積の指標であるだけでなく、タイヤの転がり抵抗の優れた指標でもある(Rubber Technologist's Handbook, Volume 2; 190ページ)。ヒステリシス損失の測定パラメータはtanδであり、これは貯蔵弾性率に対する損失弾性率の比率として定義されている。たとえば、DIN 53 513、DIN 53 535も参照されたい。市販のシーリングコンパウンド、たとえばContinentalのContiSeal(登録商標)は、60℃、10Hz、3K/分の加熱速度において比較的高いtanδ値0.58を有する。
【0020】
アプリケーションに関連する適切な温度/周波数範囲及び振幅範囲内でのtanδの低下は、たとえば、エラストマーにおける熱蓄積の低減につながる。タイヤの最小の転がり抵抗は、そのタイヤを装着した車両の最小の燃料消費を可能にする。
【0021】
転がり抵抗は、単位長さ当たりの回転するタイヤによる機械的エネルギーの熱への変換を意味すると理解されている。転がり抵抗の次元(ディメンション)はジュール/メートルある(Scale Models in Engineering, D. Schuring, Pergamon Press, Oxford, 1977)。
【0022】
シーリングコンパウンドは、実際の使用における高い要求を満たさなければならない。それらは、-40℃から+90℃までの動作温度の全範囲にわたって、柔らかく、粘着性があり、かつ寸法的に安定していなければならない。それと同時に、シーリングコンパウンドはまた、粘性でなければならない。
【0023】
タイヤトレッドを通ってタイヤの内部に物体が入った後、シーリングコンパウンドがその物体を囲むべきである。その物体がタイヤから外へ出ると、その物体に付着しているシーリングコンパウンドは、結果として生じる穴の中へ引き込まれるか、又はシーリングコンパウンドはタイヤ内圧の結果としてその穴に流れ込み、その穴を閉じる。さらに、これらのシーリングコンパウンドはガスに対して非浸透性でなければならず、それにより、一時的なさらなる移動が可能になる。シーリングコンパウンドは、簡単なプロセスでインナータイヤライナーに適用できるべきである。
【0024】
シーリングコンパウンドは、さらに、タイヤ内で寸法的に安定した状態であることを保つために、インナーライナーへの高い接着性及び高い凝集力を備えていなければならない。
【0025】
従来技術は、既知のシーリングコンパウンドが、最小の転がり抵抗だけでなく、同時に優れた接着特性及び凝集特性も必要とされる特定の用途にはまだ不十分であることを示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【文献】米国特許第3,565,151(A)号明細書
【文献】米国特許第3,981,342(A)号明細書
【文献】米国特許第4,228,839(A)号明細書
【文献】米国特許第4,664,168(A)号明細書
【文献】米国特許第7,004,217(B)号明細書
【文献】米国特許第4,113,799(A)号明細書
【文献】ドイツ国特許出願公開第10-2009-003333号明細書
【文献】国際公開第2008/019901号
【文献】米国特許第5,295,525(A)号明細書
【文献】米国特許第6,508,898(B)号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2993061A号公報
【文献】欧州特許出願公開第2939823A1号公報
【文献】国際公開第2017/017080号
【非特許文献】
【0027】
【文献】Kautschuk Technologie [Rubber Technology], F.Roethemeyer, F. Sommer, Carl Hanser Verlag Munich Vienna, 2006; 206、218頁
【文献】Science and Technology of Rubber, James E. Mark, Burak Erman, Elsevier Academic Press, 2005, 50頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
発明のまとめ
本発明は、実際の使用における高い要求を、特に接着力及び凝集力の点で満たす、シーリングコンパウンド、特にセルフシーリングタイヤ用のシーリングコンパウンドを含む。
【0029】
本発明によるシーリングコンパウンドは優れた接着性および凝集性を示す一方、セルフシーリングタイヤに使用された場合には転がり抵抗の非常にわずかな悪化を引き起こすだけであり、後者もまた本発明の一部である。
【課題を解決するための手段】
【0030】
発明の詳細な説明
特に、本発明は、以下のもの:
(A)少なくとも1つの架橋したブチルゴム;
(B)少なくとも1つの樹脂;
を含み、さらに任意選択により以下の成分:
(C)少なくとも1つの老化安定剤;
(D)(A)による架橋したブチルゴム以外の少なくとも1つのゴム;
(E)少なくとも1つの可塑剤;
(F)少なくとも1つのフィラー
のうち1つ、2つ、3つ、又は全てを含んでいてもよい、シーリング組成物を特に含む。
【0031】
この時点で、本発明の範囲は、一般的な用語内で、又は好ましい範囲のなかで、上述した及び以下で引用する、成分、値の範囲、及び/又はプロセスパラメータの任意及び全ての可能な組み合わせを含むことに留意されたい。
【0032】
シーリングコンパウンドは、少なくとも1つの架橋したブチルゴム(A)を含む。
【0033】
本明細書で使用する場合、架橋したブチルゴム(架橋ブチルゴムとも記す)という用語は、以下:
a)少なくとも1つのイソオレフィン
b)共役マルチオレフィンに由来する構造単位が(i)少なくとも部分的にハロゲン化されているか又は(ii)ハロゲン化されていない、少なくとも1つの共役マルチオレフィン、及び、
c)任意選択により場合によって、しかし好ましくは、b)による共役マルチオレフィン以外の少なくとも1つの架橋性マルチオレフィン、
に由来する構造単位を含むコポリマーであって、
架橋したブチルゴムはさらに
(I)125℃においてASTM D 1646,ML1+8に準拠して測定して少なくとも30、好ましくは30~120、さらに好ましくは40~100、さらに好ましくは55~100、なおさらに好ましくは55~90のムーニー粘度、及び
(II)少なくとも5質量%、好ましくは5~60質量%、より好ましくは7~55質量%、最も好ましくは10~50質量%のゲル含有量
を有する、架橋したブチルゴムを意味する。
【0034】
ゲル含有量を測定するためには、250mgの架橋ブチルゴムを25mlのトルエン中で23℃において24時間撹拌しながら膨潤させる。得られたゲルを20000rpmで120分間遠心分離をし、分離して、70℃で、一定質量になるまで乾燥させて、秤量する。ゲル含有量は次のように計算される:
ゲル含有量=mg単位でのゲルの乾燥質量/250mg
【0035】
本発明によるシーリングコンパウンド中の架橋ブチルゴムの総量は、架橋ブチルゴム(A)及び存在する場合にはさらなるゴム(D)の合計量を100phrとして、典型的には45phr~100phr、好ましくは60phr~100phr、より好ましくは70phr~100phrである。
【0036】
明示的に別段の記載がない場合、phrは、ゴム100部当たりの部数を指す。
【0037】
本発明は、架橋ブチルゴムを調製するための特別なプロセスに限定されない。架橋ブチルゴムの調製は当業者に周知であり、例えば(A)標準的なイソプレン-イソブチレンゴム(IIR)又はそれらのハロゲン化類似体(CIIR、BIIR)を過酸化物又は架橋剤、特に上述したものを用いた温度誘導反応によって、又は(B)イソオレフィン、共役マルチオレフィン、及び架橋性マルチオレフィン、特に上述したものを、標準的な方法にしたがって共重合することによって、実施することができる。
【0038】
好ましくは、重合は、ブチルポリマーの製造における従来の温度、例えば、-100℃~+50℃の範囲の温度で行われる。ポリマーは、溶液中のモノマー混合物の重合によって、又はスラリー重合法によって製造することができる。重合は、好ましくは懸濁液中で行われる(スラリー法)-例えば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry (第5版の完全改訂版,A23巻;編集者Elversら, 290~292頁)を参照されたい。
【0039】
好ましくは、重合されるモノマー混合物は、75質量%~99.98質量%の範囲の少なくとも1つのイソオレフィン、0.01質量%~15質量%の範囲の少なくとも1つの共役マルチオレフィン、及び0.01質量%~10質量%の範囲の少なくとも1つの架橋性マルチオレフィンを含む。
【0040】
より好ましくは、モノマー混合物は、82質量%~99.9質量%の範囲のC~Cイソオレフィン、0.05質量%~10質量%の範囲の少なくとも1つの共役マルチオレフィン、及び0.05質量%から8質量%の範囲の少なくとも1つの架橋性マルチオレフィンを含む。
【0041】
最も好ましくは、モノマー混合物は、95質量%~99.85質量%の範囲のC~Cイソオレフィン、0.1質量%~5質量%の範囲の少なくとも1つの共役マルチオレフィン、及び0.05質量%~5質量%の少なくとも1つの架橋性マルチオレフィンを含む。全てのモノマーの合計が100質量%になることは当業者には明らかであろう。
【0042】
モノマー混合物は、少量の1つ又は複数の追加の重合可能なコモノマーを含みうる。例えば、モノマー混合物は、少量のスチレン系モノマー、例えば、p-メチルスチレン、スチレン、α-メチルスチレン、p-クロロスチレン、p-メトキシスチレン、インデン(インデン誘導体を含む)及びそれらの混合物を含みうる。それが存在する場合には、モノマー混合物の最大5.0質量%までの量でスチレン系モノマーを使用することが好ましい。イソオレフィンの量は、したがって、ここでも合計100質量%になるように調整しなければならない。
【0043】
適切なイソオレフィンの例には、4~16個の炭素原子、好ましくは4~7個の炭素原子を有するイソオレフィンモノマー、例えば、イソブテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテンが含まれる。最も好ましいイソオレフィンはイソブテンである。
【0044】
適切な共役マルチオレフィンの例には、イソプレン、ブタジエン、2-メチルブタジエン、2,4-ジメチルブタジエン、ピペリレン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、2-ネオペンチルブタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、2,5-ジメチル-2,4-ヘキサジエン、2-メチル-1,4-ペンタジエン、4-ブチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジブチル-1,3-ペンタジエン、2-エチル-1,3-ペンタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,6-ヘプタジエン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、及び1-ビニル-シクロヘキサジエン、1-メチルシクロヘプテンが含まれる。
【0045】
好ましい共役マルチオレフィンは、イソプレン及びブタジエンである。イソプレンが特に好ましい。
【0046】
共役マルチオレフィン以外の架橋性マルチオレフィンには、ノルボルナジエン、2-イソプロペニルノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、又は上記化合物のC~C20アルキル置換誘導体が含まれる。より好ましくは、架橋性マルチオレフィンは、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、又は前記化合物のC~C20アルキル置換誘導体である。最も好ましくは、架橋性マルチオレフィンは、ジビニルベンゼン又はジイソプロペニルベンゼンである。
【0047】
本発明によるコンパウンドに使用される架橋ブチルゴムの共役マルチオレフィンから誘導される構造単位の含有量は、典型的には0.1モル%以上、好ましくは0.1モル%~15モル%、別の実施形態では0.5モル%以上、好ましくは0.5モル%~10モル%、別の実施形態では0.7モル%以上、好ましくは0.7~8.5モル%、特に0.8~1.5、又は1.5~2.5モル%、又は2.5~4.5モル%、又は4.5~8.5
モル%であり、特にイソブテンとイソプレンが使用されている場合にそうである。
【0048】
少なくとも部分的にハロゲン化されている共役マルチオレフィンから誘導された構造単位を含む架橋ブチルゴムについて、そのハロゲンレベルは、架橋ブチルゴムに対して、例えば、0.1~5質量%、好ましくは0.5~3.0質量%である。
【0049】
ハロゲン化は、好ましくは、塩素化又は臭素化を意味するものとする。本発明の一実施形態では、コポリマーは、イソブチレン-イソプレンゴム(IIR、ブチルゴム)、ブロモブチルゴム(BIIR)、又はクロロブチルゴム(CIIR)である。
【0050】
モル%で示される「含有量」という用語は、架橋ブチルゴムのすべての構造単位に対する、それぞれのモノマーから誘導される構造単位のモル量を示す。
【0051】
シーリングコンパウンドは、少なくとも1つの樹脂(B)をさらに含む。
【0052】
有用な樹脂の例には、炭化水素樹脂が含まれる。炭化水素樹脂は、炭素及び水素に基づく化合物を意味すると当業者によって理解されており、これはポリマー混合物中で粘着性付与剤(タッキファイアー)として通常使用されている。それらは、使用される量でポリマー混合物と混和性であるか、又は少なくとも相容性であり、混合物中の希釈剤及び/又は増量剤として作用する。炭化水素樹脂は、固体又は液体でありうる。炭化水素樹脂は、脂肪族、脂環式、芳香族、及び/又は水素化芳香族化合物を含みうる。様々な合成及び/又は天然樹脂を使用することができ、オイルベース(鉱油樹脂)でありうる。使用する樹脂のTgは-50℃より上、好ましくは-50℃と100℃の間であるべきである。炭化水素樹脂はまた、熱可塑性樹脂として説明することができ、これは加熱した場合に、軟化し、したがって成形することができる。それらは、軟化点、又は、例えば顆粒の形で、樹脂が互いにくっつくその温度によって特徴付けることができる。
【0053】
好ましい樹脂は、以下の特性の少なくとも1つ、より好ましくは全てを示す:
- -50℃より高いTg、
- -30℃より高い軟化点(特に-30℃から135℃の範囲)、
- 数平均分子量(Mn)が、400g/モル~2000g/モルの範囲にある、
- 多分散度(PDI=Mw/Mn、Mw=重量平均分子量)が3未満である。
【0054】
軟化点は、規格ISO 4625の「リングアンドボール」法によって決定される。Mn及びMwは、当業者によく知られている技術手段、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定することができる。
【0055】
使用される炭化水素樹脂の例は、シクロペンタジエン(CPD)又はジシクロペンタジエン(DCPD)ホモポリマー又はシクロペンタジエンコポリマー樹脂、テルペンホモポリマー又はコポリマー樹脂、テルペン/フェノールホモポリマー又はコポリマー樹脂、C画分またはC画分のホモポリマー又はコポリマー樹脂、α-メチルスチレンのホモ-又はコポリマー樹脂、及び記載したものの混合物である。ここでは、(D)CPD/ビニル芳香族コポリマー樹脂、(D)CPD/テルペンコポリマー樹脂、(D)CPD/C画分コポリマー樹脂、(D)CPD/C画分コポリマー樹脂、テルペン/ビニル芳香族コポリマー樹脂、テルペン/フェノールコポリマー樹脂、C画分/ビニル芳香族コポリマー樹脂、及び記載したものの混合物が特に挙げられるべきである。
【0056】
「テルペン」という用語は、α-ピネン、β-ピネン、及びリモネンに基づくモノマーを包含し、リモネン、又はリモネンエナンチオマーの混合物が好ましい。適切なビニル芳香族は、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、p-(tert-ブチル)スチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、又はC画分からの、若しくはC~C10画分からの任意のビニル芳香族である。
【0057】
本発明のシーリングコンパウンド中の樹脂(B)の量は、架橋ブチルゴムと、存在する場合はさらなるゴム(D)との合計に基づいて、典型的には10phr~60phr、好ましくは20phr~55phr、より好ましくは25phr~50phrである。
【0058】
シーリングコンパウンドは、少なくとも1つの老化安定剤(C)をさらに含んでいてもよい。
【0059】
適切な老化安定剤には、フェノール系老化防止剤、例えば、アルキル化フェノール、スチレン化フェノール、立体障害フェノール、例えば、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(BHT)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、エステル基を含む立体障害のあるフェノール類、チオエーテル基を含む立体障害のあるフェノール類、2,2’-メチレンビス-(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)(BHP)、及び立体障害のあるチオビスフェノール類が含まれる。
【0060】
ゴムの変色がそれほど重要でない場合は、アミン老化安定剤、例えば、ジアリール-p-フェニレンジアミン類(DTPD)、オクチル化ジフェニルアミン(ODPA)、フェニル-α-ナフチルアミン(PAN)、フェニル-β-ナフチルアミン(PBN)の混合物、好ましくは、フェニレンジアミンに基づくものも使用することができる。フェニレンジアミンの例は、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-1,3-ジメチルブチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N-1,4-ジメチルペンチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(7PPD)、N,N’-ビス-1,4-(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(77PD)等である。
【0061】
他の老化安定剤には、ホスファイト類、例えば、亜リン酸トリス(ノニルフェニル)、重合した2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(TMQ)、2-メルカプトベンゾイミダゾール(MBI)、メチル-2-メルカプトベンゾイミダゾール(MMBI)、メチルメルカプトベンゾイミダゾール亜鉛(ZMMBI)が含まれる。ホスファイト類は、フェノール系老化安定剤と組み合わせて使用してもよい。
【0062】
シーリングコンパウンド中の老化安定剤(C)の量は、架橋ブチルゴムと存在する場合はさらなるゴム(D)の合計に基づいて、典型的には0.5phr~20phr、好ましくは1phr~10phr、より好ましくは1phr~7phrである。
【0063】
シーリングコンパウンドは、成分(A)による架橋ブチルゴム以外の少なくとも1つのゴムをさらに含んでいてもよい。
【0064】
適切なゴム(D)には、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、又はそれらの混合物を含む群からの共役ジオレフィンに基づくコポリマー、より好ましくは、天然のシス-1,4-ポリイソプレン、合成のシス-1,4-ポリイソプレン、3,4-ポリイソプレン、ポリブタジエン、1,3-ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、及びそれらの混合物を含む群からのコポリマーが含まれる。
【0065】
そのようなゴムは、例えば、I. Franta, Elastomers and Rubber Compounding Materials, Elsevier, New York 1989,又はUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, Vol. A23, VCH Verlagsgesellschaft, Weinheim 1993に記載されており、以下のものが含まれる:
BR- ポリブタジエン、
Nd-BR- ネオジムポリブタジエンゴム、
Co-BR- コバルトポリブタジエンゴム、
Li-BR- リチウムポリブタジエンゴム、
Ni-BR- ニッケルポリブタジエンゴム、
Ti-BR- チタンポリブタジエンゴム、
PIB- ポリイソブチレン、
ABR- ブタジエン/C1-4アルキルアクリレートコポリマー、
IR- ポリイソプレン、
SBR- 1質量%~60質量%、好ましくは2質量%~50質量%のスチレン含有量を有するスチレン/ブタジエンコポリマー、
E-SBR- エマルジョンスチレン/ブタジエンコポリマー、
S-SBR- 溶液スチレン/ブタジエンコポリマー、
XSBR- スチレン/ブタジエンコポリマー、及びアクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、ヒドロキシエチルアクリレート及び/又はヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレートとのグラフトポリマーであって、2質量%~50質量%のスチレン含有量、及び1質量%~30質量%の共重合した極性モノマーの含有量を有するもの、
NBR- ブタジエン/アクリロニトリルコポリマー、典型的には5質量%~60質量%、好ましくは10質量%~50質量%のアクリロニトリル含有量を有するもの、
HNBR- 二重結合の最大100%までが水素化された、完全に水素化された、及び部分的に水素化されたNBRゴム、
HXNBR- カルボキシル化された、部分的に水素化された、及び完全に水素化されたニトリルゴム、
EP(D)M- エチレン/プロピレン/(ジエン)コポリマー、
EVM- エチレン-酢酸ビニル、
任意選択により場合によっては、架橋したブチルゴムに対して上で示した定義を満たさない範囲で、
IIR- イソブチレン/イソプレンコポリマー、好ましくは0.5質量%から10質量%のイソプレン含有量を有するもの、
BIIR- 臭素化イソブチレン/イソプレンコポリマー、好ましくは0.1質量%~10質量%の臭素含有量を有するもの、
CIIR- 塩素化イソブチレン/イソプレンコポリマー、好ましくは0.1質量%~10質量%の塩素含有量を有するもの、
並びに、全ての上述したゴムの混合物。
【0066】
本発明のシーリングコンパウンド中のゴム(D)の量は、架橋ブチルゴム及びさらなるゴム(D)の合計に基づいて、典型的には0phr~55phr、好ましくは0phr~40phr、より好ましくは0phr~30phrである。
【0067】
シーリングコンパウンドは、少なくとも1つの可塑剤をさらに含みうる。
【0068】
可塑剤は、冷たい条件下、特に0℃未満の温度において、シーリング混合物のシーリング効果を改善するために、ゴム及び樹脂を含むマトリックスを希釈して、それをより柔らかく且つよりしなやかにする。適切な可塑剤は、典型的には、-20℃より低い、好ましくは-40℃より低いTを有する。
【0069】
適切な可塑剤は、芳香族又は非芳香族のいずれかであってよい任意の液体エラストマー又は潤滑油、及びエラストマー、特にジエン含有エラストマーにおいて可塑化作用が知られている任意の液体物質である。特に適切なものは、400~90000g/モルのMnを有する液体エラストマーである。潤滑油の例は、低粘度又は高粘度を有する水素化又は非水素化形態のナフテン油、パラフィン油、芳香族又はDAE(蒸留芳香族抽出物)油、MES(中抽出溶媒)油、TDAE(処理蒸留芳香族抽出物)油、ミネラルオイル、植物油(及びそれらのオリゴマー、例えば、パーム油、菜種油、大豆油、又はひまわり油)、及び言及した油の混合物である。
【0070】
ポリブテンに基づく油、特にポリイソブチレン(PIB)ベースの油、並びに、エーテル-、エステル-、ホスフェート-、及びスルホネート系可塑剤も適切であり、エステル類及びホスフェート類が好ましい。好ましいホスフェート可塑剤は、12~30個の炭素原子を有するもの、例えば、リン酸トリオクチルである。好ましいエステル可塑剤は、トリメリテート、ピロメリテート、フタレート、1,2-シクロヘキサンジカルボキシレート、アジペート、アゼレート、セバケート、グリセロールトリエステル、及びそれらの混合物を含む群からの物質である。合成又は天然の形態(例えば、ひまわり油又は菜種油の場合)で優先的に使用される脂肪酸は、50質量%より多く、より好ましくは80質量%より多くオレイン酸を含む脂肪酸である。トリエステルの中で、主に50質量%より多い、より好ましくは80質量%より多い量の不飽和C18脂肪酸、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、及びその混合物からなるグリセロールトリエステルが好ましい。そのようなトリエステルはオレイン酸の含有量が高く、文献には、タイヤのトレッドに使用されるゴム混合物のための可塑剤として、例えば、米国特許出願公開第2004/0127617号明細書に記載されている。
【0071】
液体エラストマーの場合とは異なり、液体可塑剤の数平均分子量(Mn)は、好ましくは400~25000g/モルの範囲、さらにより好ましくは800~10000g/モルの範囲である(GPCによって測定して)。
【0072】
まとめると、液体エラストマー、ポリオレフィン油、ナフテン油、パラフィン油、DAE油、MES油、TDAE油、鉱油(ミネラルオイル)、植物油;エーテル、エステル、ホスフェート、スルホネートからなる可塑剤;及び記載したものの混合物の群からの液体可塑剤を用いることが好ましい。
【0073】
本発明によるシーリングコンパウンド中の可塑剤(E)の量は、架橋ブチルゴム及び存在する場合にはさらなるゴム(D)の合計量に基づいて、例えば、0phr~60phr、好ましくは10phr~55phr、より好ましくは15phr~50phrであってよい。
【0074】
シーリングコンパウンドは、少なくとも1つのフィラーをさらに含んでいてもよい。
【0075】
本明細書で使用される場合、フィラーという用語は、強化フィラー(典型的には、500nm未満、特に20nm~200nmの範囲の平均サイズを有する粒子)及び非強化フィラー又は不活性フィラー(典型的には、1μmより大きい、たとえば2μm~200μmの範囲の平均サイズを有する粒子)を含む。強化フィラー及び非強化フィラーは、シーリングコンパウンドにおいて凝集力を向上させることを意図している。
【0076】
適切なフィラーには以下のものが含まれる。
- タイヤ製造で通常使用されるカーボンブラック。たとえば、ASTM規格300、600、700、又は900(N326、N330、N347、N375、N683、N772、又はN990)に準拠したカーボンブラックであり、通常はサーマルブラック、ファーネスブラック、又はガスブラック法によって製造され、20m/g~200m/gのBET表面積(ISO 6810規格に記載されたCTABの吸収を用いて決定して)を有し、例えば、SAF、ISAF、IISAF、HAF、FEF、又はGPFカーボンブラックである。あるいは、20m/g未満の表面積を有するカーボンブラックを使用することもできる。
- シリカ、例えば、シリケートの溶液の沈殿又はハロゲン化ケイ素の火炎加水分解によって生成され、5~1000、好ましくは30m/g~400m/gの比表面積(ISO 5794/1規格によって測定されたBET表面積)を有し、5~400nmの一次粒径を有する。シリカは、任意選択で、他の金属酸化物、例えば、Al、Mg、Ca、Ba、Zn、及びTiの酸化物との混合酸化物の形態であってもよい。
- 合成シリケート、例えば、ケイ酸アルミニウム、アルカリ土類金属シリケート、例えば、ケイ酸マグネシウム又はケイ酸カルシウムであり、20m/g~400m/gのBET表面積(ISO 5794/1規格によって測定して)及び10nm~400nmの一次粒子径を有する。
- 天然シリケート、例えば、カオリン及びその他の天然シリカ。
- 金属酸化物、例えば、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム。
- 金属炭酸塩、例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛。
- 金属硫酸塩、例えば、硫酸カルシウム、硫酸バリウム。
- 金属水酸化物、例えば、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウム。
- 着色性フィラー又は着色されたフィラー、例えば、顔料。
- 5nm~1000nmの粒子径を有する、ポリクロロプレン、NBR、及び/又はポリブタジエンに基づくゴムゲル。
【0077】
前述のフィラーは、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0078】
フィラーは、本発明によるシーリングコンパウンド中に、架橋ブチルゴム及び存在する場合はさらなるゴム(D)の合計に基づいて、1phr~50phrの量で、好ましくは1phr~35phrの量で、より好ましくは1phr~30phrの量で存在しうる。
【0079】
本発明によるシーリングコンパウンドは、さらなる成分をさらに含むことができる。
【0080】
そのようなさらなる成分には、ゴム混合物で通常使用されるゴム助剤、例えば、1つ以上のさらなる架橋剤、促進剤、熱安定剤、光安定剤、オゾン安定剤、加工助剤、増量剤、有機酸、又は難燃剤が含まれる。
【0081】
上記のさらなるゴム助剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0082】
ゴム助剤は、合計で0.1phr~50phrの量で使用することができる。
【0083】
本発明の一実施形態では、シーリングコンパウンドは、各場合に架橋ブチルゴム(A)及び存在する場合にはさらなるゴム(D)の合計に基づいて、
・ 45phr~100phr、好ましくは60phr~100phr、より好ましくは70phr~100phrの少なくとも1つの架橋ブチルゴム、
・ 10phr~60phr、好ましくは20phr~55phr、より好ましくは25phr~50phrの少なくとも1つの樹脂(B)、
・ 0phr~20phr、好ましくは1phr~10phr、より好ましくは1phr~7phrの少なくとも1つの老化安定剤(C)、
・ 0phr~55phr、好ましくは0phr~40phr、より好ましくは0phr~30phrの少なくとも1つのゴム(D)、
・ 0phr~60phr、好ましくは10phr~55phr、より好ましくは15phr~50phrの少なくとも1つの可塑剤(E)、
・ 任意選択により場合によっては、1phr~50phr、好ましくは1phr~35phr、より好ましくは1phr~30phrの少なくとも1つのフィラー(F)、
を含有する。
【0084】
本発明の一実施形態では、本発明によるシーリングコンパウンドは、以下で説明する特性のうち少なくとも1つをさらに示す。
【0085】
本発明のシーリングコンパウンドは、例えば、5MUから50MU以下、好ましくは6MUから20MU以下のムーニー粘度(ML1+4@100℃)を有する。ムーニー粘度は、規格ASTM D1646(1999)によって決定され、昇温した温度におけるサンプルのトルクを測定する。シーリングコンパウンドを事前にカレンダー加工することが有用であることが判明している。この目的のために、シーリングコンパウンドを、T≦60℃のローラー温度においてローラー上で加工して、圧延シートが得られる。打ち抜かれた円筒形のサンプルを加熱チャンバーに入れ、所望の温度まで加熱する。1分の予熱時間の後、ローターは一定の2回転/分で回転し、4分後にトルクを測定する。測定されたムーニー粘度(ML1+4)は、「ムーニー単位」(MU,100MU=8.3Nm)である。
【0086】
本発明のシーリングコンパウンドに対し、例えば、ローリングボールタック試験において鋼球がカバーする距離は、典型的には3cm未満、より好ましくは2cm未満、最も好ましくは0.05cm~2.0cmの範囲である。
【0087】
シーリングコンパウンドは、タイヤの転がり抵抗に対して最小の影響しか及ぼさないべきである。この目的のために、転がり抵抗の指標として業界で確立されている60℃における損失係数tanδが測定パラメータとして使用され、これは、レオメーターを使用した動的機械分析(DMA)によって決定される。その測定から、温度に依存した貯蔵及び損失係数G'及びG”が得られる。温度に依存したtanδ値は、損失弾性率の貯蔵弾性率に対する商により計算される。本発明のシーリングコンパウンドについての60℃及び10Hzでのtanδ値は、典型的には0.35未満、好ましくは0.30未満、より好ましくは0.25未満である。
【0088】
本発明によるシーリングコンパウンドは、当業者に知られている全ての方法によって製造することができる。たとえば、固体又は液体の個々の成分を混合することができる。この目的に適した装置の例は、ローラー、内部ミキサー、又は混合押出機である。例えば、第1の工程において、少なくとも1つの架橋ブチルゴムを、樹脂の軟化温度よりも高い温度(第1の混合温度)において少なくとも1つの樹脂(B)と混合する。ここで、温度は、ミキサーに対する目標温度ではなく、混合物と、存在する場合にはそれに続く追加の成分の実際の温度であることに注意されたい。さらなる加工ステップは、好ましくは、樹脂(B)の軟化温度より低い温度、例えば、50℃(第2の混合温度)にて行われる。
【0089】
あるいは、シーリングコンパウンドの製造は、スクリュー押出機中で、マスターバッチとして次のように実施してもよい。
【0090】
一軸スクリュー押出機が使用され、それは混合成分のための第1の計量した添加及び液化樹脂(B)のための第2の計量した添加(計量ポンプ)を有する。混合はスクリューを回転させることによって行われ、混合成分に高せん断がかけられる。混合物は、次に、チョッパーツールを備えたホモジナイザーに送られる。このゾーンの下流で、マスターバッチは最終的に単純な押し出しヘッドを通して目的の形状に押し出される。得られたシーリングコンパウンドは、例えば、2つのシリコーンコーティングされたフィルムの間に包装され、冷却され、すぐに使用できるようになる。このステップにおいて必要に応じて、さらに混合成分(顔料、フィラーなど)を量り入れることができるようにするために、押出物を事前に二本ロールシステムに送ることもできる。計量添加は連続的に行ってもよい。ロール温度は好ましくは100℃未満である。シーリング混合物は同様に包装される。このシーリング混合物は、例えばシーリングコンパウンドがロールに付着した結果としての、ツールの汚染/汚れのリスクにさらされることなく、工業的な条件下で製造することができる。
【0091】
タイヤへのシーリング層の適用は、タイヤの加硫に続いて行うことができる。シーリング層を適用する典型的な方法は、例えば、米国特許第5,295,525A号明細書に記載されている。ジエンゴムゲルに基づくシーリングコンパウンドは、例えば、加硫を受ける必要なしに、連続プロセスにおいてタイヤライニングに適用することができる。シーリングコンパウンドは、例えば、タイヤの内側上のシーリング層又はストリップとして押し出すことができる。代替の実施形態では、シーリングコンパウンドはストリップとして加工することができ、これが次にタイヤの内側に接着される。
【0092】
さらなる代替の実施形態では、シーリングコンパウンドは、例えば、タイヤの内側上に噴霧される溶剤セメントとして調製することができる。ラミネートとしてのさらなる代替の適用形式は、米国特許第4,913,209A号明細書に記載されている。
【0093】
本発明によるシーリングコンパウンドは、セルフシーリングタイヤのシーリング成分として、並びに中空体及び膜のシールとして特に有用である。
【0094】
したがって、本発明はさらに、タイヤにおけるシーリングコンパウンドの使用、好ましくは空気圧式車両用タイヤのインナーライナー上のシーリング層としての使用に関する。
【0095】
したがって、本発明はさらに、本発明によるシーリングコンパウンドを含む空気圧式車両用タイヤ、及びそのような空気圧式車両用タイヤの少なくとも1つを含む車両を提供する。
【0096】
本発明によるシーリングコンパウンドの利点は、優れた凝集及び接着特性、並びにタイヤの転がり抵抗に対するそれらの低い影響である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
図1】パンクチャー-シーリング-テストのテスト装置を示す図である。
【0098】
以下の実施例は、本発明を説明するが、それを限定するものではない。
【実施例
【0099】
実施例:
実施例では、表1による次の物質を使用した。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
試験方法:
架橋ブチルゴムのムーニー粘度は、規格ASTM D1646(1999)によって決定し、1999 Alpha Technologies MV 2000ムーニー粘度計(メーカーのシリアル番号:25AIH2753)を使用して昇温した温度においてサンプルのトルクを測定する。
【0103】
ゲル含有量は、本発明の詳細な説明において上で記載したようにして測定した。
【0104】
本発明によるシーリングコンパウンドの粘着性(接着力の測定パラメータ)は、ローリングボールタックテスターによって決定した。
【0105】
試験は、標準規格ASTM D3121-06に準拠して周囲温度において実施した。シーリングコンパウンドを105℃及び120バールにおいて1 mmの厚さに10分間プレスし、圧力下で12時間にわたり室温まで冷却した。このようにプレスされたシーリングコンパウンドを、エッジの長さが20 cm×10 cmの長方形に切断し、滑らかかつ汚染のない表面を確保した。厚さ1mmの長方形のシーリングコンパウンドを平らな面上に置き、テスターが同様に平らになり(水準器でチェックした)かつ6 cm以上のボールの転がり距離が可能となるように、ローリングボールタックテスターを長方形のシーリングフィルム上に設置した。1cmの直径を有する研磨された鋼球(ChemInstruments)を、各試験の前にアセトンで洗浄し、次にローリングボールタックテスターの上に置いた。ローリングボールタックテスターのトリガー機構を作動させることによって、ボールを、制御された動きの状態に置いた。ボールが試験材料上を転がった距離を測定した。これは、ローリングボールテスターの端からボールの中央までを測定することによって行った。各試験は、汚染のない表面上で実施した。試験は少なくとも3回繰り返し、平均を結果として報告した。
【0106】
転がり抵抗の指標としての60℃における損失係数tanδの決定は、DIN-ISO 6721-1及び6721-2に準拠して、ここではTA InstrumentsのARES-G2レオメーターを使用して行った。転がり抵抗の指標としての損失係数を測定するためのシーリングコンパウンドの調製は、以下のように行った:シーリングコンパウンドを、T≧60℃のローラー温度においてローラー上で加工して、圧延シートを得た。そのシートを続いて0.5 mmのロールギャップを通過させ、その結果、3.5 mm以下の厚さを有するシートが得られた。このシートからサイズ10 cm×10 cmのサンプルを採取し、10 cm×10 cm×0.1 cmの型内で、120 barの圧力、105℃以上の温度Tにおいて10分間プレスした。10分以内に室温まで冷却した後、動的機械的測定のために、8 mmの直径を有する丸いサンプルを、プレスされた材料から打ち抜いた。このサンプルを2枚のプレートの間に固定した。温度試験の前に、100℃及び2 Nの初期荷重で10分間、サンプルに対して時間試験を行った。その後、2 Nの初期荷重及び2%の最大変形で、10 Hzの一定周波数及び3 K/分の加熱速度で、-100℃から170℃の範囲において温度試験を行った。
【0107】
例1及び2
<パンクチャー-シーリング-テスト(PST)>
シーリングコンパウンドの瞬間的なシーリング挙動を、-25℃、周囲温度、及び100℃において、パンクシーリングテスト(PST)によって決定した。テスト装置を、液体窒素で冷却することができ、加熱することができる気候チャンバー内に配置した。テスト装置を図1に示し、これを引張り試験機(Zwick Z010 Retroline, BZ 010/7H2AS02, シリアル番号:139055、組み立て年1998)に組み込んだ。これは、窒素を充填することができる、タイヤを模したガラス製圧力容器(5)、圧力を監視するための、コンピューターに接続されたマノメーター(6)、シーリングコンパウンド(3)の厚さ3 mmの層を備えたタイヤ断面(2)から構成されている。この目的のために、シーリングコンパウンドを105℃及び120バールにおいて10分間、3 mmの厚さにプレスし、12時間にわたり圧力下で室温まで冷却する。タイヤ断面の寸法にカットされた、プレスされたシールコンパウンドを、タイヤ断面の表面上に押し付けて、タイヤ断面と圧力容器の間に配置する。
【0108】
試験を開始する前に、圧力容器(5)を、250 kPaの圧力に達する窒素で満たした。その圧力を少なくとも12時間にわたり一定に保った。シーリングコンパウンドを含むサンプルは、試験を開始する前に少なくとも1時間、それぞれ、テスト温度においてコンディショニングした。穿刺(1)は、直径5 mmのスチール製の釘を500 mm/分の速度でタイヤ断面(2)の中へ押し込み、その釘の少なくとも2.5 cmの長さが穴(4)を通って圧力容器(5)内に入るようにすることによって調製した。圧力を15分間監視した後、500 mm/分の速度で釘を引き抜き、再び圧力をさらに15分間観察した。
【0109】
試験したシーリングコンパウンドは、2013年4月に組み立てられたCollin W 150Gロールミルで製造した。混合操作中のロール温度は90℃だった。ロールのギャップは1 mmから3 mmの間であり、摩擦は-10%で、1分あたりのロールの回転数は7 rpmから8 rpmだった。
【0110】
本発明の例1によるシーリングコンパウンドの製造のために、架橋したブチルゴム(A)を、最初にゴム(D)と一緒に均一に混合した。その後、樹脂(B)を少しずつ徐々に添加し、続いて老化安定剤(C)、顔料(F)、最後に可塑剤(E)を添加した。
【0111】
比較例2によるシーリングコンパウンド及び本発明の例1によるシーリングコンパウンドの組成を表2に特定してある。
【0112】
【表2】
【0113】
シーリングコンパウンドの特性を、下の表3にまとめてある。
【0114】
【表3】
【0115】
本発明によるシーリングコンパウンド(例1)は、使用下における典型的な温度、すなわち夏の条件下での回転条件(約100℃)において、従来技術(例2)によるものと比較して優れていることは明らかである。
【0116】
<タイヤテスト>
例1及び2によるコンパウンドを、タイヤで試験した。
【0117】
厚さ3 mmのシーラント層を、キュアしたタイヤの内側の、膨らませている空気と接するインナーライナー上に接着剤で接着させることによって適用した。例1によるコンパウンドをタイヤA及びBの中に適用し、例2によるコンパウンドをタイヤC及びDに適用した。
【0118】
トライアルでは、乗用車タイプの215/55 R17サイズの「ContiEcoContact3ブランド」のタイヤを試験した。次に、9つのミシン目孔のある直径2.5 mmの釘3つ、直径3.4 mmの釘3つ、直径5 mmの釘3つを、トレッド及びクラウン部を通して、取り付けて膨らませたタイヤ(250 kPa)の1つに刺した。
【0119】
タイヤは、時速80 km/hにて、公称荷重536 kgのもとで、200 kmのあいだ圧力の損失なしにローリングドラム(直径1707~2000 mm)上での走行に耐え、その後、長距離走行を停止した。
【0120】
タイヤA及びCを周囲温度において8時間以上保管した後、室温において、釘を1本ずつ引き抜いた。低温性能試験では、タイヤB及びDを-25℃において気候チャンバー内に8時間より長く保管した。
【0121】
タイヤC及びDの9つの穴のうち6つは、釘を抜いた後にシールされた。驚くべきことに、タイヤAの9つの穴のうちの8つ及びタイヤBの9つの穴のすべて(!)は、釘を引き抜いた後にシールされ、これは本発明によるシーリングコンパウンドの優位性を明確に示している。
図1