(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】無針注射システム
(51)【国際特許分類】
A61M 5/307 20060101AFI20221114BHJP
A61M 5/44 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
A61M5/307
A61M5/44
(21)【出願番号】P 2020572746
(86)(22)【出願日】2019-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2019066712
(87)【国際公開番号】W WO2020002262
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2021-02-22
(32)【優先日】2018-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】リアン・プラナール-ルオン
(72)【発明者】
【氏名】フラヴィ・ジヤン
【審査官】二階堂 恭弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-504346(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0240230(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/307
A61M 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物を注射するための無針注射システム(150)であって、前記システム(150)が
、加圧ガスを収容する貯蔵器(102)を備え、かつ/または前記貯蔵器(102)を受容するように設計され、前記システム(150)が、搬送ダクト(306、306a、306b)を備え、前記ガスが、
第1に、前記加圧ガスの膨張によって生成された冷気を用いてヒトのケラチン物質を冷却するために前記ヒトのケラチン物質に向かって、および/または前記ヒトのケラチン物質を冷却するために、前記加圧ガスの膨張によって生成された前記冷気を取り込み、前記冷気を前記ヒトのケラチン物質に向かって送
るように構成された表面(340)に向かって、
第2に、前記ガス
の圧力を使用して前記組成物を前記ヒトのケラチン物質の中に推し進めるための機構(308、309、10、9)に向かって、
誘導されるのを可能にする、
システム。
【請求項2】
ハンドピース(300)であって、前記加圧ガスを収容する前記貯蔵器(102)を備える、かつ/または前記貯蔵器(102)を受容するように設計された、ハンドピース(300)を備える、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記加圧ガスの前記膨張によって生成された前記冷気によって冷却され、前記ヒトのケラチン物質に押しつけ
るように構成された熱パッド(304)を備える、
請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記熱パッド(304)が環形状であり、注射が前記パッドを通して行われる、
請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
中にある、または接触した前記加圧ガスが膨張する、少なくとも1つの熱橋(302)を備え、前記熱橋または各熱橋(302)が、前記加圧ガスの前記膨張によって生成された前記冷気を前記熱パッド(304)に搬送す
るように構成される、
請求項3または4に記載のシステム。
【請求項6】
前記組成物が
、粉体相、または気相のルースパウダーである、
請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記組成物が液体であり、液相、液相および粉体相の混合物、液相および気相の混合物、または液体、粉体、および気相の混合物を含
む、
請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記組成物が、液体媒体中に粒子の分散を含み、前記組成物が前記粒子の凝集によって固まることが可能である、
請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記組成物が、少なくとも1つのバイオポリマ
ーと、イオン溶
液と、を含む、
請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
ある量の前記組成物が、第1のチャンバ(5)内の、第1のピストン(9)とガスバッファ(400)との間に位置する、
請求項1から9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記組成物が、
バイオポリマー、ヒアルロン酸および/もしくはヒアルロン酸の塩のうちの1つ、ハイドロキシアパタイト粒子、ポリ乳酸、アルギン酸塩、モノメチルトリシラノールオルトヒドロキシ安息香酸ナトリウム、コラーゲン、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ならびに/またはデキストランマイクロスフェアからなる群から選択された少なくとも1つの充填剤を含む、
請求項1から10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
ガスのパルスを前記搬送ダクト(306、306a、306b)に送
るように構成された調整および制御システム(140)を備え、前記調整および制御システム(140)が、送るガスの前記パルス
の圧力、流量、継続時間、および/または周波数を調整および制御するための手段を備え、前記調整および制御システム(140)が
、前記ヒトのケラチン物質への前記組成物の前記注射を始動すること、および/もしくは前記ヒトのケラチン物質を冷却することを選択的に可能にし、ならびに/または前記調整および制御システム(140)が
、前記ヒトのケラチン物質への前記組成物の単回注射、または複数の連続注射のうちの1シーケンスもしくは複数シーケンスの始動を可能にす
るように構成される、
請求項1から11のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無針注射システムおよびヒトのケラチン物質の処置、特に美容処置のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~6は、ガスを含む貯蔵器と、ピストンおよび注射される粘性の液剤を収容するチャンバと、を含み、チャンバが注射ノズルと連通する、無針注射器を開示している。
【0003】
チャンバが空になると、そのような無針注射器は、再び使用可能になることができるように、特に手作業で交換または補充される必要がある。
【0004】
そのような無針注射器は、注射ノズルを有し、その形状および寸法は不変であり、それによって、特に粘性に関して、使用することができる製剤を制限する。これは、行うことができる処置の制限につながる。
【0005】
たとえば、ヒアルロン酸またはボトックスなど、しわを処置するための、市場で現在利用可能な様々な製品があり、これらは異なる流動性を有する。したがって、注射ノズルの形状および寸法、特にその出口開口のサイズは、注射される製品に適合するように調整される必要があるので、上で説明したような1つの同じ無針注射器は、これらの両方の製品を注射することができない。
【0006】
さらに、特許文献7は、注射される流体のカートリッジと、カートリッジと連通する注射ノズルと、を備えるハンドピースを備える無針注射器を開示している。そのような注射器は、流体を注射するための推進機構を作動させる加圧ガス貯蔵器をさらに備える。この特許文献は、注射の前に、注射部位の皮膚の表面を冷却または加熱できることに言及しているが、これを行う方法を明記していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第8876758号明細書
【文献】米国特許第9186461号明細書
【文献】米国特許第8066661号明細書
【文献】米国特許出願公開第20160129191号明細書
【文献】米国特許第8734384号明細書
【文献】米国特許第9265888号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0240230号明細書
【非特許文献】
【0008】
【文献】「Caracterisation rheologique d'un systeme de gel d'alginate injectable」["Rheological characterization of an injectable alginate gel system"]と題する、B. Larsenらによる文書、BMC Biotechnology 2015、15~29頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特に、皮膚の領域の凹凸(relief)および/またはひだを防ぐ、処置する、かつ/または減らすために、無針注射器によるヒトのケラチン物質への製品の注射をさらに改善する必要が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、組成物を注射するための無針注射システムによってこの必要性に応え、このシステムは、特に気体および/または液体の形で保管された加圧ガスを収容する貯蔵器を備え、かつ/または貯蔵器を受容するように設計され、このシステムは、搬送ダクトを備え、ガスが、
第1に、加圧ガスの膨張によって生成された冷気を用いてヒトのケラチン物質を冷却するために上記の物質に向かって、および/またはヒトのケラチン物質を冷却するために、加圧ガスの膨張によって生成された冷気を取り込み、それをヒトのケラチン物質に向かって送るなどのように構成された表面に向かって、
第2に、ガス圧力を使用して組成物をヒトのケラチン物質の中に推し進めるための機構に向かって、
誘導されるのを可能にする。
【0011】
「無針注射システム」は、注射針の穿刺なしに表皮を通して組成物を推し進めるために機械力が使用されるシステムであると理解すべきである。
【0012】
「加圧ガス」は、求められる用途に適した圧力で気体および/または液体の形で保管された圧縮ガスを意味すると理解される。
【0013】
本発明によるこのシステムは、推進機構を動作させるために使用される加圧ガスの存在を利用することによって、冷気を容易に生成することができるという利点を提供する。この冷気は、注射部位でまたは注射部位の周辺でヒトのケラチン物質の冷却を可能にし得、これは特に、処置中に使用者が感じる場合がある潜在的な痛みの感覚を減らすことを可能にする。冷却は、複数の連続する膨張が経時的に互いに接近して行われるとき、いっそう効果的であり、これは、冷却に使用される膨張および注射に使用される膨張が相伴って起こるとき、発生し得る。
【0014】
「皮膚」は、真皮、および表皮、ならびに唇などの粘膜の表面領域を示す。
【0015】
推進機構は、作動チャンバと、推力(thrust)要素と、プッシュロッドと、第1のピストンと、を備えてもよい。
【0016】
推進機構は、推力要素、プッシュロッド、および/または第1のピストンを動かすガス圧力によって作動されてもよい。
【0017】
好ましくは、本発明によるこのシステムは、ハンドピースであって、加圧ガスを収容する貯蔵器を備える、かつ/または貯蔵器を受容するように設計された、ハンドピースを備える。これは、コンパクトな注射システムを使用することを可能にする。
【0018】
本発明によるこのシステムは、注射される組成物を備えてもよい。
【0019】
このシステムは、加圧ガスの膨張によって生成された冷気によって冷却され、かつ注射部位でまたは注射部位の周辺でヒトのケラチン物質に押しつけるなどのように構成された熱パッドを備えてもよい。
【0020】
この熱パッドは、環形状であってもよく、その場合注射はパッドを通して行われる。
【0021】
このシステムは、中にある、または接触した加圧ガスが膨張する少なくとも1つの熱橋(thermal bridge)を備えてもよく、熱橋または各熱橋は、加圧ガスの膨張によって生成された冷気を熱パッドに搬送するなどのように構成される。
【0022】
好ましくは、加圧ガスの膨張が、ハンドピースの中で起こる。これは、ケラチン物質にできるだけ接近して冷気を生成することを可能にする。
【0023】
好ましくは、熱橋または各熱橋および熱パッドは、熱伝導材料、特にアルミニウム、銅、および/または銀を含む金属材料から作られる。好ましくは、熱伝導材料は、アルミニウムまたはアルミニウム合金である。一変形態では、熱伝導材料はセラミックである。
【0024】
熱橋または各熱橋は、液体またはゲルなど、熱伝導流体(熱伝達流体としても知られる)であってもよい。
【0025】
熱伝導材料の密度は、5000kg/m3以上であってもよい。
【0026】
熱伝導材料の熱伝導率は、25W/mK以上であってもよい。
【0027】
熱伝導材料の熱拡散率は、1000.108m2/s以上であってもよい。
【0028】
熱伝導材料の熱浸透率は、10,000J/m2.K.s1/2以上であってもよい。
【0029】
好ましくは、上述の熱橋または各熱橋は、熱パッドと接触するか、または実際には熱パッドと一体型に作られる。これは、熱橋または各熱橋で加圧ガスの膨張によって生成された冷気を、伝導によって、より効果的に熱パッドに伝えることを可能にする。熱橋または各熱橋と熱パッドとの接触の領域は、熱伝導グリス(thermal paste)を含んでもよい。これは、この接触の領域での熱橋または各熱橋と熱パッドとの間の熱伝達が改善されることを可能にする。
【0030】
熱橋または各熱橋は、少なくとも1つの中空部分を含んでもよい。加圧ガスの膨張は、熱橋または各熱橋内の、特にこの中空部分で起こり得る。
【0031】
気体は、CO2または任意の他の推進ガスであってもよい。
【0032】
使用される加圧ガスは、液体の形で保管されてもよい。
【0033】
好ましくは、使用されるガスはCO2である。実際、後者のガスは、生体適合性があり、皮膚に気泡を生成する可能性は、他のガスと比較して極めて小さい。
【0034】
本発明によるこのシステムは、ガスのパルスを搬送ダクトに送るなどのように構成された調整および制御システムを備えてもよい。
【0035】
調整および制御システムは、送るガスのパルスの圧力、流量、継続時間、および/または周波数を調整および制御するための手段を備えてもよい。たとえば、調整および制御システムは、少なくとも1つの電気弁(electrovalve)および/または少なくとも1つの減圧弁を備える。
【0036】
調整および制御システムは、ヒトのケラチン物質への組成物の注射を始動すること、および/またはヒトのケラチン物質を冷却することを選択的に可能にしてもよい。これは、ヒトのケラチン物質への組成物の注射を単独で、もしくはヒトのケラチン物質の冷却を単独で、または注射および冷却を同時に許可してもよい。
【0037】
調整および制御システムは、ヒトのケラチン物質への組成物の単回注射、または複数の連続注射のうちの1シーケンスもしくは複数シーケンスの始動を可能にするなどのように構成されてもよい。これは、注射を1回ずつまたは連続して行うことを可能にし得る。
【0038】
本発明によるこのシステムは、
- 注射される組成物を収容する、かつ/または注射される組成物を受容するように設計された、少なくとも1つの第1のチャンバと、
- 第1のチャンバまたは各第1のチャンバと連通する少なくとも1つの注射ノズルと、
を備えるカートリッジを備えてもよく、
カートリッジは、複数の第1のチャンバを備え、かつ/またはカートリッジは、注射される組成物を収容し、少なくとも1つの供給ダクトによって第1のチャンバと連通する少なくとも1つの第2のチャンバを備え、少なくとも1つの供給ダクトによって第1のチャンバは、第2のチャンバに収容されている組成物を供給される。
【0039】
本発明の一実施形態では、カートリッジは、注射される組成物を受容するように設計された第1のチャンバと、第1のチャンバと連通する注射ノズルと、注射される組成物を収容し、少なくとも1つの供給ダクトによって第1のチャンバと連通する少なくとも1つの第2のチャンバと、を備え、少なくとも1つの供給ダクトによって第1のチャンバは、第2のチャンバに収容されている組成物を供給される。複数の出口ダクト付きのノズルがあるとき、出口チャネルの構成は、処置される領域の形状に一致してもよく、たとえば充填されるしわの形状に一致してもよい。
【0040】
一変形態では、カートリッジは、注射される組成物を各々が収容する複数の第1のチャンバと、各第1のチャンバと連通する少なくとも1つの注射ノズルと、を備える。
【0041】
別の変形態では、カートリッジは、注射される組成物を各々が収容する、かつ/または組成物を受容するように各々が設計された、複数の第1のチャンバと、各第1のチャンバと連通する少なくとも1つの注射ノズルと、注射される組成物を収容し、少なくとも1つの供給ダクトによって第1のチャンバと連通する少なくとも1つの第2のチャンバと、を備え、少なくとも1つの供給ダクトによって第1のチャンバは、第2のチャンバに収容されている組成物を供給される。
【0042】
複数の第1のチャンバがあるとき、対応するノズルの出口チャネルは、単一の第1のチャンバの場合のように、処置される領域、たとえばしわの形状に一致してもよい。
【0043】
カートリッジは、使える状態でありかつ使用の前に使用者の側での調整を必要としないという利点を提供する。カートリッジは、その形状および寸法のために、詳細には1つの特定のタイプの使用に専用であってもよい。たとえば、注射ノズルの第1のチャンバおよび第2のチャンバの形状および寸法は、所与の処置を行う目的で、注射される組成物の量および性質、特にその流動性に合わせて調整される。
【0044】
第2のチャンバは、注射される組成物用の複数回投与量の貯蔵器を構成してもよい。第2のチャンバはまた、複数の注射を含む完全な処置セッションを行うのに十分に多量の注射される組成物を収容してもよい。
【0045】
第1のチャンバに収容されている組成物の投与量が注射された後、この第1のチャンバには、第2のチャンバに収容されている組成物を自動的に補充でき、カートリッジを交換する必要がない。これは、処置中の取扱い動作を減らすことを可能にする。
【0046】
好ましくは、特に組成物が注射のために第1のチャンバ内で加圧されるとき、供給ダクトまたは各供給ダクトは遮断部材を備え、遮断部材はたとえばボールである。この遮断部材が、注射中に供給ダクトを遮断してもよい。
【0047】
好ましくは、遮断部材は、注射中には第1のチャンバ内の圧力によって閉じられたままであり、第1のチャンバが第2のチャンバに収容されている組成物を充填することを可能にするために、2回の注射の間に開く。
【0048】
カートリッジは、第1のチャンバが、注射される組成物の単回投与量をあらかじめ充填されて、またはされずに、使用者に供給されてもよい。
【0049】
第1のチャンバまたは各第1のチャンバは、様々な方法で加圧されてもよい。
【0050】
好ましくは、第1のチャンバは、プッシュロッドに接続された第1のピストンを受容し、第1のピストンは、第1のチャンバの縦軸に沿って摺動し、プッシュロッドによって駆動される。注射中にこの第1のピストンにかけられる圧力は、400kPa~2MPaであってもよい。好ましくは、注射ノズルは、カートリッジの遠位端を形成する。ノズルは、少なくとも1つの出口チャネルを備え、出口チャネルまたは各出口チャネルは開口を備え、この開口から、注射される組成物が外部に吐き出される。
【0051】
好ましくは、第1のチャンバ、第2のチャンバ、注射ノズル、および供給ダクトは、単一部品として形成された本体によって、少なくとも部分的に定められる。そのような一体型構成が、強化された強度を与える場合があり、操作および使用がより簡単であることがわかる。
【0052】
カートリッジは、交換される必要なしに、3回以上の、またはより良くは10回以上の注射を行うことを可能にし得る。
【0053】
好ましくは、第1のチャンバの容積V1は、第2のチャンバの容積V2よりも小さい。これは、第1のチャンバが、第2のチャンバに収容されている組成物を、数回繰り返して供給または充填されることを可能にし、同じカートリッジを使用して複数回の注射を行うことができるようになる。注射中、第1のチャンバの内容物の全部または一部が、使用者に送られてもよい。言い換えれば、第1のチャンバは、注射中のシングルショットで空にされる場合があり、または一変形態では、第1のチャンバの内容物を使用して複数回の注射が行われた後に、適宜に生成物を充填される。
【0054】
好ましくは、第1のチャンバの容積は、50mm3以上である。
【0055】
第1のチャンバは、管形状であってもよい。その壁は、その遠位端で、特に注射ノズルの出口チャネルまで、集束してもよい。
【0056】
好ましくは、第2のチャンバの容積は、100mm3以上である。
【0057】
好ましくは、ノズルの出口チャネルまたは各出口チャネルの開口の断面積は、0.5mm2以下であり、たとえば0.1mm2~0.2mm2の間である。
【0058】
第2のチャンバは、環形状であって、第1のチャンバの周りに広がってもよい。これは、コンパクトな構成をもたらし、2つのチャンバ間の連通は、単に半径方向の供給ダクトにより実現され得る。
【0059】
好ましくは、第2のチャンバは、その軸方向端部の一方で、第2のピストン、特に環形状のピストンが、第2のチャンバの縦軸に沿って摺動することによって閉じられる。この第2のピストンは、第2のチャンバを空にするなどのために、第2のチャンバの遠位端に向かって押されてもよい。圧力は、たとえばばねによって、連続してかけられてもよく、または第1のチャンバの充填中にのみかけられてもよい。
【0060】
達成しようとする目的に応じて、組成物には様々な調合物および流動性がある場合がある。
【0061】
好ましくは、組成物は液体であり、液相、液相および粉体相(pulverulent phase)の混合物、ならびに/または液相および気相の混合物を含む。
【0062】
液体組成物は、25℃および大気圧において1mPa.s以上の粘度を有してもよい。
【0063】
一変形態では、組成物は、ルースパウダー(loose powder)などの粉体相、または気相のルースパウダーである。この場合、注射は、第1のピストンの作動によってではなく、むしろ、カートリッジから組成物を引き込むガスのパルスによって、注射ノズル内の1つまたは複数の開口を通して行われる。
【0064】
前述の遮断部材は、ベンチュリ効果により、第2のチャンバに収容されている組成物を第1のチャンバに供給するなどのために、注射中に開いたままにしておいてもよく、またはさらには存在せず、特にダクトに置き換えられてもよい。
【0065】
ある量の組成物が、第1のチャンバ内の、第1のピストンとガスバッファとの間に位置していてもよい。このガスバッファの存在により、注射中、組成物が少なくとも一部は皮膚および詳細には角質層を透過することが可能となるように、組成物がノズルから皮膚に向かって放出される速度を上げることができるようになる。角質層は、皮膚の最も外側の部分に対応し、有機体と環境との間のバリアとして働く。角質層は扁平であって、ケラチンが豊富であり、角質細胞としても知られている死細胞(dead cell)からなる。
【0066】
このタイプのガスバッファは、たとえば、液体組成物がある場合に使用されてもよい。
【0067】
バッファを構成するガスは、空気であってもよく、好ましくは周囲空気であってもよい。
【0068】
組成物は、しわの処置および/または防止のために設計され、少なくとも1つの充填剤(filler)を含んでもよく、特にヒアルロン酸および/もしくはヒアルロン酸の塩のうちの1つ、ハイドロキシアパタイト粒子、ポリ乳酸、アルギン酸塩、モノメチルトリシラノールオルトヒドロキシ安息香酸ナトリウム(sodium monomethyltrisilanol orthohydroxybenzoate)、コラーゲンなどのバイオポリマー、ポリアクリルアミドなどのアクリルポリマー、メタクリルポリマー(methacrylic polymer)、ならびに/またはデキストランマイクロスフェア(dextran microsphere)を含んでもよい。
【0069】
組成物は、特に、液体媒体に分散状態の粒子を有する液体媒体を含んでもよく、上記粒子の凝集によって固められてもよい。
【0070】
好ましくは、組成物は、少なくとも1つのバイオポリマー、特にアルギン酸塩と、イオン溶液、特に2価イオン溶液と、を含む。
【0071】
本発明は、老化の皮膚兆候に対抗すること、ならびに特に、皮膚のはり(firmness)、弾力性、および色合いを改善し、老化の皮膚兆候の出現を防ぐことを目的として、皮膚の粘弾性または生体力学特性を維持および/または回復することを可能にし得る。
【0072】
本発明の文脈では、「皮膚の粘弾性または生体力学特性」は、皮膚の伸展性、色合い、はり、柔軟性、および/または弾力性特性を意味すると理解される。
【0073】
「老化の皮膚兆候」は、時間生物学的および/または外因性の、主として光で誘起された老化、たとえばしわおよび小じわ、ちりめん(crepiness)、たるんだ皮膚、薄くなった皮膚、輝きのないくすんだ皮膚、皮膚の弾力性および/または色合いの不足など、老化による皮膚の外観におけるどんな変化も意味すると理解される。
【0074】
好ましくは、組成物は、化粧品組成物であるが、一変形態では組成物は、皮膚科学的作用を発揮する。
【0075】
カートリッジは、注射システムのハウジングに受容されるように配置されてもよい。一変形態では、カートリッジは、特にねじ留めまたは差込み固定によって、注射システムに取外し可能に固定されるように構成される。
【0076】
使用者は、したがって、使用者の必要に合わせるために容易にカートリッジを変えることができる。
【0077】
好ましくは、注射システムは、注射システムの縦軸に沿ってプッシュロッドを動かす推力要素を備える。
【0078】
このシステムは、注射システムの縦軸に沿って、第2のチャンバの端部の一方を閉じる第2のピストンを動かすために、特に環形状の、少なくとも1つのアクチュエータを備えてもよい。
【0079】
好ましくは、第1のチャンバを空にすることができる推力要素および/またはプッシュロッド、ならびに第2のチャンバを空にすることができるアクチュエータは、ガスカートリッジに収容されている加圧ガスによって、システムの縦軸に沿って注射ノズルに向かって動かされる。
【0080】
一変形態では、推力要素および/またはプッシュロッド、ならびにアクチュエータは、ばね、モーター、または電磁石など、他の駆動手段によって、システムの縦軸に沿って注射ノズルに向かって動かされる。
【0081】
好ましくは、このシステムは、少なくとも1つの弾性復帰部材を備え、推力要素および/もしくはプッシュロッドの動きに付随するまたはこれを減衰させることを可能にし、かつ/またはこれらが注射後にこれらの最初の位置に戻るのを助ける。
【0082】
本発明によるこの無針注射システムは、処置領域の自動認識のためのシステムを備えてもよく、このシステムは、この注射システムが皮膚に近づけられたとき、処置される領域の場所および深さを自動的に決定し、注射パラメータ、特に注射の深さを自動的に適応させるなどのように構成される。このシステムは、皮膚への望ましい浸透を実現するために、使用されるカートリッジおよび/または前述の駆動手段を使用してかけられる圧力に関する情報を生成してもよい。
【0083】
本発明の態様の別のものによる本発明のさらなる主題は、ヒトのケラチン物質の処置、特に美容の、すなわち非治療的な処置のための方法であって、
a) 注射される組成物と、加圧ガスを収容する貯蔵器と、を備える、上で定義したような本発明による無針注射システムを提供するステップと、
b) 処置されるヒトのケラチン物質の近くにこの無針注射システムを配置するステップと、
c) 加圧ガスの膨張によって冷気を生成するステップと、
d) ガスの圧力を使用することによって、注射されるある量の組成物を、この無針注射システムの外に放出するステップ、特に上記ヒトのケラチン物質の中に送るステップであって、上記ある量の組成物をこの無針注射システムの外に放出するステップが、単回の放出としてまたは複数の連続注射のうちの1シーケンスとしてもしくは複数のシーケンスとして行われる、ステップと、
e) 加圧ガスの膨張によって生成された冷気を用いて、上記ヒトのケラチン物質を冷却するステップと、
を含む方法である。
【0084】
本発明によるこの方法のステップd)は、ステップc)の前および/または間に行われてもよい。一変形態では、ステップd)はその後に行われる。
【0085】
本発明によるこの方法のステップe)は、ステップd)の前および/または間に行われてもよい。一変形態では、ステップe)は、ステップd)の後に行われる。
【0086】
本発明によるこの方法は、以下のステップを含んでもよい:
i. 注射されるある量の組成物を第1のピストンの下の第1のチャンバに取り入れるステップ。
ii. 第1のチャンバ内の組成物の下に、第1のチャンバ内のエアバッファを形成するために、注射ノズルの出口チャネル内の開口から周囲空気を引き込むなどのように、第1のピストンを上げて第1のチャンバに入れるステップ。
iii. 第1のチャンバ内にある組成物を、注射ノズルの出口チャネル内の開口からこの無針注射システムの外に放出するなどのように、第1のピストンを第1のチャンバの中で下げるステップ。
【0087】
好ましくは、ステップiii.は、ステップii.の終了後直ちにまたは直後に、たとえば、ステップii.の終了後1秒未満に行われる。
【0088】
好ましくは、ヒトのケラチン物質は、たとえば30℃~37℃の間であるそれらの最初の温度に対して、少なくとも3℃、好ましくは少なくとも5℃~10℃だけ冷却される。たとえば、処置されるヒトのケラチン物質の最初の温度が37℃であるとき、それらは34℃以下、好ましくは32℃~27℃以下の温度にされてもよい。
【0089】
本発明によるこの方法は、カートリッジの第2のチャンバから取られた組成物の投与量を、2回の注射の間に第1のチャンバに補充することにあるステップを含んでもよい。
【0090】
好ましくは、組成物は、10ミクロン以上の深さまでケラチン物質に注射される。この深さは、真皮を透過するには十分ではない場合があり、たとえば、2mmまたはさらには1mm以下である場合がある。本発明は、特に組成物を表皮および/または真皮に注射することを可能にする。注射の深さに影響を及ぼすことを目的として、第1のチャンバ内の圧力および組成物をノズルから皮膚に向かって放出する速度は変えられてもよい。
【0091】
本発明によるこの方法は、ヒトのケラチン物質における障害または欠損、好ましくは、皮膚の審美的すなわち非病的障害または欠損を防止、処置、および/または軽減することを可能にし得る。
【0092】
本発明によるこの方法は、当該の審美的障害の軽減またはさらには消失を観察することにあるステップをさらに含んでもよい。
【0093】
本発明の態様の別のものによる本発明のさらなる主題は、皮膚の外観、特に審美的外観を改善するために、上で定義したような、本発明による無針注射システムの美容の、すなわち非治療的用途である。
【0094】
詳細には、本発明によるこの無針注射システムは、皮膚の領域の凹凸および/またはひだ、特に小じわ、しわ、および/または傷跡など、皮膚の領域の審美的すなわち非病的欠損または障害を防止、処置、および/または軽減するために使用され得る。
【0095】
組成物
本発明による注射される組成物は、少なくともそれが注射される瞬間に、好ましくは液体である。
【0096】
組成物は、液相、液相および粉体相の混合物、液相および気相の混合物、または液体、粉体、および気相の混合物であってもよい。
【0097】
組成物は、それが注射される瞬間に、1mPa.s以上の粘度を有してもよい。
【0098】
粘度は、回転速度200min-1において、粘度範囲に従って、測定ボブ(measuring bob)をMK-R-1、2、または3で、および対応する測定チューブをMB-R-1、2、または3で適合された、Rheomat 180粘度計を使用して、1atmのもとで25℃で測定され、測定は、10分の回転(この時間の終わりに、測定ボブの粘度および回転速度が安定したことに留意されたい)後に行われる。
【0099】
本発明による注射される組成物はさらに、ルースパウダーなどの粉体相、または気相のルースパウダーであってもよい。
【0100】
本発明による組成物は、脂肪相を含んでもよい。脂肪相は、特に油、ワックス、またはペースト状脂肪物質を含んでもよい。「ペースト状脂肪物質」は、液体分と固体分とを含む粘性のある生成物を意味すると理解されたい。特に、20℃~55℃の範囲の融点および/またはContraves TVまたはRheomat 180で測定された40℃において0.1Pa.s~40Pa.s(1~400ポアズ)の範囲の粘度を有する脂肪物質を意味すると理解されたい。
【0101】
本発明による組成物は、水相を含んでもよい。
【0102】
好ましくは、注射される組成物は無菌であり、生体適合性がある。
【0103】
注射される組成物は、化粧品組成物であってもよく、その場合、組成物は、生理学的に許容できる媒体、すなわち、人間の皮膚に注射することができる毒性のない媒体を含む。
【0104】
注射される組成物は、さらに皮膚科学的組成物であってもよい。
【0105】
皮膚の領域の凹凸および/またはひだを処置および/または防止するための組成物
充填剤
上述のように、本発明による組成物は、少なくとも1つの充填剤を含んでもよい。
【0106】
少なくとも1つの充填剤を含む組成物は、皮膚への注射の前後で同じ流動性を示しても、示さなくてもよい。詳細には、組成物は、注射の瞬間により流動性があってもよく、その場で固まるまたはより粘性を有するようになってもよい。
【0107】
好ましくは、充填剤は、少なくとも1つのバイオポリマーを含む。
【0108】
バイオポリマーの作用機序のおかげで、また本発明によってそれらが多量に、かつ局所組成物の使用では達成することができない深さまで皮膚に注射されるので、長く続く、目に見える効果を得ることができる。
【0109】
充填剤は、吸収性または半吸収性であってもよい。「吸収性の」は、3か月~6か月で皮膚内で完全に分解することができる充填剤を示し、「半吸収性の」は、6か月~24か月で皮膚内で完全に分解することができる充填剤を示す。これらの時間スケールは、充填剤の作用が続く時間に対応する。一変形態では、充填剤は、非再吸収性である。
【0110】
本発明による組成物は、ヒアルロン酸および/またはその誘導体のうちの1つおよび/またはその塩のうちの1つなど、少なくとも1つの充填剤を含んでもよい。
【0111】
ヒアルロン酸は、好ましくは架橋される。架橋は、水和し、水中で膨潤する、硬質で、弾性のある架橋ゲルを形成することを可能にする。架橋されたヒアルロン酸は、ゲルの堅さ、またその高粘弾性特性および高水和能力のために、特に皮膚の小じわおよび/またはしわに関して、その充填特性のために使用される。
【0112】
一変形態では、ヒアルロン酸は架橋されない。
【0113】
ヒアルロン酸は、特に、リドカインおよび/またはデキストランマイクロスフェアとの混合物に使用されてもよい。
【0114】
注射される組成物は、Merzが販売するBELOTERO(登録商標)製品群の液剤、特にBELOTERO(登録商標) Soft液剤であってもよい。
【0115】
本発明による組成物は、ヒドロキシアパタイト粒子、特にカルシウムヒドロキシアパタイト粒子、ポリ乳酸、アルギン酸塩、モノメチルトリシラノールオルトヒドロキシ安息香酸ナトリウム、コラーゲン、ポリアクリルアミドなどのアクリルポリマー、メタクリルポリマー、および上の化合物の任意の混合物を含んでもよい。
【0116】
可変流動性の薬剤
本発明による注射される組成物は、少なくとも1つの可変流動性の薬剤を含む組成物であってもよい。したがってこの組成物の粘度は、組成物が用意される瞬間と、注射後、それが皮膚内のその目的地に達した後の瞬間と、の間で増加する。
【0117】
粘度の増加は、ゲル化により、または組成物の粒子もしくは微粒子を塊にするいずれかの他の物理現象により、たとえば静電気の力または合体する力の効果により発生する場合があり、一種の網またはメッシュの形成に至る。
【0118】
凝集プロセスは、組成物の温度がある値を超えたとき、熱によって始動されてもよく、ある値は、好ましくは37℃に近いように選ばれる。したがって、注射されるとき組成物は、その後注射の箇所で皮膚のその場に有する粘度よりも低い粘度を有してもよい。これは、皮膚欠損を充填することに関して、その性能に悪影響を及ぼすことなく注射をより容易にする。
【0119】
注射の前に、組成物の粘度は、たとえば大気圧における25℃で1mPa.s以上である。
【0120】
組成物は、液体媒体に分散された粒子を含む液体組成物であってもよく、上記組成物は粒子の凝集によって固まる可能性がある。
【0121】
組成物は、少なくとも1つのバイオポリマー、好ましくはアルギン酸塩と、イオンの溶液、詳細には2価イオンの溶液と、を含んでもよい。バイオポリマーの粘度は、有利には、バイオポリマーのゲル化のために、バイオポリマーが固体になるまで、皮膚において増加する。バイオポリマーが集まり、それらが多量に、かつ局所組成物の使用では達成することができない深さまで皮膚に注射される機構のおかげで、長く続く、目に見える効果を得ることができる。
【0122】
本発明により考えられるバイオポリマーのうちの1つが、MerzによるNovabel(登録商標)アルギン酸塩であり得、3か月~6か月で吸収(resorb)され得る。
【0123】
好ましい一実施形態では、組成物は、アルギン酸ナトリウム、およびカルシウム塩溶液、好ましくは炭酸カルシウムCaCO3溶液を含む。カルシウムイオンを加えたアルギン酸塩の改善された反応性は、非特許文献1に説明されている。炭酸カルシウム溶液など、活性化合物の溶液が、イオンエネルギー移動によって、皮膚の層内に薄膜または骨格を形成する沈殿物をその場で生成することを可能にする。
【0124】
1つの特に好適なアルギン酸ナトリウムは、褐藻類から得られ、水に溶解された注射可能なFMC(登録商標)ポリマー粉末であってもよい。そのような化合物は、コロイド粒子が水中に分散した親水性ポリマーであるコロイド系として定義される、親水性コロイド、または親水コロイドである。
【0125】
バイオポリマーおよびイオン溶液は、システムにパッケージングされる前に混合されてもよい。一変形態では、バイオポリマーおよびイオン溶液は、異なる貯蔵器に含まれ、別々に、相次いで注射される。組成物の凝集は、有利には、皮膚への注射後に熱によって始動される。
【0126】
組成物は、吸収性、半吸収性、または非吸収性であってもよい。
【0127】
添加剤
本発明による組成物は、充填剤以外の少なくとも1つの従来の化粧品成分を含んでもよく、それは特に、酸化防止剤、日焼け止め剤、ビタミン剤、保湿剤、抗しわ有効成分、皮膚軟化剤、親水性または脂溶性有効成分、遊離基抑制剤(agents combating free radical)、およびそれらの混合物から選択されてもよい。
【0128】
長期的に、組成物をヒトのケラチン物質に注射すると、コラーゲン産生細胞による使用者自身のコラーゲンの生成を刺激する場合がある。したがって長く続く効果が観察され、特に皮膚の小じわおよび/またはしわの充填が観察され得る。
【0129】
本発明は、その非限定的例示的実施形態の次の詳細な説明を読むことにより、また添付図面を調べることにより、より良く理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【
図1】本発明による無針注射システムの一例の概略的な斜視図である。
【
図4】本発明による注射システムの一例を概略的に示す図である。
【
図5】本発明による注射される組成物を含むカートリッジの一例の概略的な斜視図である。
【
図7】プッシュロッドなしの、
図6と同様の図である。
【
図8】注射システムの一実施形態の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0131】
図1は、本発明による無針注射システム150の一例を示す。
【0132】
このシステム150は、一般に伸長軸Xに沿って伸びる。このシステム150は、注射デバイス100と、注射される組成物を含むカートリッジ1と、を備える。
【0133】
カートリッジ1は、注射される組成物を受容するように設計された第1のチャンバ5と、第1のチャンバ5と連通する注射ノズル6と、注射される組成物を収容し、少なくとも1つの供給ダクト8によって第1のチャンバ5と連通する少なくとも1つの第2のチャンバ7と、を備え、少なくとも1つの供給ダクト8によって第1のチャンバ5は、第2のチャンバ7に収容されている組成物を供給される。
【0134】
供給ダクトまたは各供給ダクト8は、遮断部材12を備え、遮断部材12はたとえばボールである。遮断部材12は、注射中に供給ダクト8を遮断し得る。
【0135】
システム150は、好ましくは、熱可塑性材料、特にポリカーボネート系材料から作られたハンドピース300を備える。
【0136】
ハンドピース300は、様々な形状を与えられてもよい。
【0137】
好ましくは、ハンドピース300は、手に持つこと、および操作することをより容易にするために、細長い形状を有する。
【0138】
システム150は、加圧ガスを収容する貯蔵器を備える。貯蔵器は、ガスカートリッジ102であってもよい。
【0139】
所望される場合、
図1に示すように、ガスカートリッジ102をハンドピース300に内蔵するコンパクトな注射システム150が使用されてもよい。ハンドピースは、その場合、カートリッジ102を受容するためのハウジング105を備えてもよい。
【0140】
カートリッジ102は、取外し可能かつ交換可能であってもよい。カートリッジ102は、補充可能であっても、なくてもよい。好ましくは、ガスカートリッジ102は、液化CO2を収容する。
【0141】
好ましくは、カートリッジ102は、コンパクトである。カートリッジ102はたとえば、ガス質量が50g未満、たとえば12gまたは16g、長さが10cm未満、および直径が2cm未満である。
【0142】
カートリッジ102は、100以上の多数の注射を行うのに十分なガスの量を収容してもよい。そのような自律性が、顔のしわすべての処置を可能にし得る。
【0143】
カートリッジ102内の圧力は、たとえば、25バールを上回り、より良くは50バールを上回る。
【0144】
システム150は、少なくとも1つの熱橋302を備えてもよく、熱橋302内で加圧ガスは膨張する。この熱橋302は、加圧ガスの膨張によって生成された冷気を、ヒトのケラチン物質と接触するなどのように構成された熱パッド304に搬送するなどのように構成される。この熱パッド304は、環形状であってもよく、注射はパッドを通して行われる。
【0145】
熱橋または各熱橋302は、
図1に示すように、熱パッド304と接触するロッド302bを介して伸びる中空本体302aを備えてもよい。一変形態では、要素302bはリングである。
【0146】
好ましくは、中空本体または各中空本体302aは、ハンドピース300内に位置している。
【0147】
システム150は、
図3に示すように、注射システム150の縦軸と平行に配置された複数の搬送ダクト306と連通してガスカートリッジ102からの出口を配置することを可能にするコネクタ305を備える接続および分配インターフェース301を備えてもよい。
【0148】
好ましくは、接続および分配インターフェース301は、ハンドピース300内に位置している。
【0149】
ガスカートリッジ102は、特にねじ留めまたは差込み固定によって、接続および分配インターフェース301の入口に取外し可能に接続するなどのように構成される。好ましくは、この接続は、道具なしに、迅速かつ確実に行われる。インターフェース301の入口は、接続の漏れ止め(leaktightness)を保証するOリングを備えてもよい。カートリッジ102が、穴を開けることができる薄膜によって閉じられるとき、インターフェース301の入口は、この薄膜に穴を開けるための針を備えてもよい。
【0150】
図3に示すように、搬送ダクトまたは各搬送ダクト306は、カートリッジ102に収容されるガスの少なくとも一部を、作動チャンバ308に向かって搬送することを可能にする分岐部306aを備えてもよい。このチャンバ308は、プッシュロッド10のヘッド10bに接続された推力要素309を受容する。チャンバ308の加圧は、推力要素309、プッシュロッド10、およびロッド10の延長部分に位置している第1のピストン9を作動させることによって注射が行われることを可能にする。
【0151】
推力要素309および/またはプッシュロッド10は、注射の最中のそれらの動きを助ける、または代わりにそれらの動きを抑える、または推力要素309および/もしくはプッシュロッド10を注射後にそれらの最初の位置に戻すのを助けるなどのように構成された、少なくとも1つの弾性復帰部材(図示せず)を備えてもよい。
【0152】
搬送ダクトまたは各搬送ダクト306はまた、カートリッジ102に収容されるガスの少なくとも一部を、熱パッド302内に位置する吐出領域307に向かって搬送するために、中空本体302a内に受容されたダクト306bを備えてもよい。この領域307は、ロッドまたはリング302bの反対側に位置してもよい。
【0153】
ダクト306bは、吐出領域に開口を備える。これは、開口での高速気体流を促進し、したがってガスの膨張によるより顕著な冷却の生成を促進することを可能にする。
【0154】
吐出領域307は、ダクト306bの開口で加圧ガスの膨張によって生成された冷気を取り込むなどのように構成された表面340を有する。この表面340は、ダクト306bの開口の近くおよび/または反対側に位置していてもよい。
【0155】
注射デバイス100は、作動チャンバ308と、推力要素309と、プッシュロッド10と、第1のピストン9と、を備えてもよい推進機構を備える。
【0156】
図4に示すように、注射システム150は、注射デバイス100と、注射される組成物を収容するカートリッジ1と、を備えてもよい。注射デバイス100は、たとえば、少なくとも1つの弁および/または少なくとも1つの減圧弁を備える調整および制御システム140を備えてもよい。この制御システム140は、接続および分配インターフェース301を制御することを可能にしてもよく、特に搬送ダクト306にガスのパルスを送り出すことを可能にしてもよい。制御システム140は、ガスのパルスの圧力、流量、継続時間、および周波数などのパラメータを調整することを可能にしてもよい。
【0157】
調整および制御システム140は、推進機構の分岐部306aへの供給、および吐出システムのダクト306bへの供給を可能にする手動または電気制御の弁310を備えてもよい。これは、冷却および注射が相伴って行われることを可能にする。一変形態では、分岐部306aは、ダクト306bとは別個に供給されてもよい。これは、冷却のみを可能にする構成、または注射のみを可能にする構成を取得することを可能にする。
【0158】
弁310は、押しボタン(図示せず)などの制御部材での使用者動作によって制御されてもよく、たとえば、そのような部材がハンドピース300にあることが可能である。
【0159】
冷却のみを可能にする構成では、弁310は、単に吐出システムのダクト306bに、カートリッジ102に収容されるガスの少なくとも一部を供給するなどのように構成される。カートリッジ102に収容されるガスの少なくとも一部の膨張は、その場合、ダクト306bにまっすぐ沿って吐出領域307まで起こる。この膨張は、特に吐出領域307に、冷気を生成することを可能にする。この冷気は、熱橋302に、特にダクト306bを受容する中空本体302aに、および吐出領域307の反対側のロッドまたはリング302bの領域に伝えられる。熱橋302は、冷気を熱パッド304へ搬送する。この構成は、注射の前および/または後にヒトのケラチン物質を冷却することを可能にし得る。
【0160】
冷却のみを可能にする構成では、弁310は、単に推進機構の分岐部306aに、カートリッジ102に収容されるガスの少なくとも一部を供給するなどのように構成される。
【0161】
冷却および注射を相伴って可能にする構成では、弁310は、ダクト306bおよび分岐部306aに同時に、カートリッジ102に収容されるガスの少なくとも一部を供給するなどのように構成される。ダクト306bおよび分岐部306aにおけるガスの流量および/または圧力は、同一であっても、なくてもよい。
【0162】
一変形態では、調整および制御システム104は、
図3Aに示すように、弁310を備えていない。カートリッジ102から出発するガスは、この場合、分岐部306aとダクト306bとの両方に誘導される。カートリッジ102から出るガスの流量および/または圧力は、分岐部306aにおけるガスの流量および/または圧力が推進機構を作動させるのに十分であるように選ばれる。これは、弁310による制御なしで、冷却および注射が相伴って行われるのを可能にする。
【0163】
ヒトのケラチン物質への組成物の注射および/またはヒトのケラチン物質の冷却は、押しボタン(図示せず)などの制御部材での使用者動作によって制御されてもよく、たとえば、そのような部材がハンドピース300にあることが可能である。
【0164】
調整および制御システム140は、制御部材での使用者動作が単回注射、または一変形態では、複数の連続注射のうちの1または複数のシーケンスを始動するように構成されてもよい。注射は、したがって、1回ずつまたは連続して行われてもよい。調整および制御システム140は、シーケンスの最中の注射の回数および頻度、シーケンスの継続時間、ならびに適切な場合、シーケンスの回数および各シーケンス間の時間期間などのパラメータを調整することを可能にし得る。
【0165】
同様に、調整および制御システム140は、冷気を生成するために加圧ガスの単回膨張を、または一変形態では、複数の連続膨張のうちの1または複数のシーケンスを始動するように構成されてもよい。
【0166】
制御システム140は、電源160に電気的に接続されてもよい。電源160の役割は、制御システムが機能できるように、制御システムに電気エネルギーを供給することである。電源160は、燃料電池またはバッテリーであってもよく、特に再充電可能な燃料電池またはバッテリー、主電源、または任意の他の電力源であってもよい。
【0167】
カートリッジ102に収容された加圧ガスの膨張は、第1のチャンバ5に収容された組成物をケラチン物質に強制的に吐き出すために、プッシュロッド10の作動を可能にしてもよく、適切な場合には、第2のチャンバ7に収容された組成物の蓄えを、第1のチャンバ5に補充するために第1のチャンバ5に向かって押す。注射デバイス100は、プッシュロッド10を備えてもよい。一変形態では、プッシュロッド10は、カートリッジ1内にある。
【0168】
カートリッジ102に収容された加圧ガスの膨張はまた、熱橋302内に冷気を生成することを可能にしてもよく、この冷気は、伝導によって熱パッド304に伝えられる。カートリッジ1は、熱橋または各熱橋302の少なくとも一部、および特に、
図6および
図7に示すように、熱橋または各熱橋302のロッドまたはリング302bの少なくとも一部を備えてもよい。
【0169】
接続および分配インターフェース301、搬送ダクトまたは各搬送ダクト306、熱橋または各熱橋302、および熱パッド304は少なくとも、優れた熱伝導特性を示す材料から作られるのが好ましい。
【0170】
注射システム150は、注射される組成物を含み、ハンドピース300の延長部分に位置している取外し可能、交換可能なカートリッジを備えてもよい。一変形態では、カートリッジは取外し可能でも交換可能でもない。
【0171】
図5は、一般に伸長軸Xに沿って伸びるカートリッジ1の一例を示す。
図5を簡略化するために、熱橋または各熱橋302のロッドまたはリング302bの少なくとも一部は示していない。
【0172】
カートリッジ1は、注射デバイス100と接触するように、特にこれに挿入されるように構成される。カートリッジ1は、任意の手段によって注射デバイス100に固定されてもよい。
【0173】
カートリッジ1は、端部3に開口3aがある円筒形部分2aを有する本体2を備える。
【0174】
円筒形部分2aは、端部3から反対端部で、円錐台部分2bの形で伸長し、注射ノズル6を形成する。カートリッジ1は、
図5に示していない注射デバイスに取り付けられるなどのように構成される。注射ノズル6は、出口チャネル6aと、処置されるヒトのケラチン物質に面してまたはこれと接触して配置される端面6bと、を有する。
【0175】
カートリッジ1は、熱橋302のロッドまたはリング302b(図の理解をより容易にするために
図6では透明な形で示す)の少なくともいくつかを備え、これらが熱パッド304と接触する。
【0176】
カートリッジ1はまた、注射される組成物を受容するように設計された第1のチャンバ5を備える。注射ノズル6のチャネル6aは、この第1のチャンバ5と連通する。
【0177】
第2のチャンバ7は、組成物の蓄えを収容し、少なくとも供給ダクト8によって第1のチャンバ5と連通する。
【0178】
図示の例では、第1のチャンバ5は、カートリッジ1の中央位置を占め、断面S1の、円筒形の第1の部分5aと、断面S1よりも小さい断面S2の、円筒形の第2の部分5cと、を有する。第1および第2の部分5aおよび5cは、カートリッジ1の遠位端に向かって集束する中間部分5bによって接続される。第1のチャンバ5は、その壁がカートリッジ1の遠位端に向かって集束する遠位部分5dを有し、この部分5dが第1のチャンバ5の端壁を形成する。第1のチャンバ5は、図示したように、その全長にわたって円形断面を有する。
【0179】
第1のチャンバ5の容積は、たとえば、50mm3以上である。
【0180】
出口チャネル6aは、その全長に沿って、一定の断面、たとえば円形断面を有してもよい。
【0181】
一変形態では、注射ノズル6は、複数の出口チャネル6aを備え、複数の出口チャネル6aは、各々が第1のチャンバ5の端壁5dに接続され、各々が対応する開口6cによってノズルの端部で開いている。
【0182】
注射ノズル6の出口チャネルまたは各出口チャネル6aの開口6cは、最初の使用の前に、注射ノズル6の端部に付着する取外し可能な薄膜(図示せず)によって覆われてもよい。この薄膜は、カートリッジ1に収容された組成物が保護され、無菌のままであることを保証する。
【0183】
ノズル6のチャネルまたは各チャネル6aの開口6cの断面積は、たとえば、0.5mm2以下であり、特に0.1mm2~0.2mm2の間である。
【0184】
第1のチャンバ5は、第1のピストン9を受容し、第1のピストン9の遠位端9aは、第1のチャンバ5の端壁5dの円錐形を補完する円錐形を有する。この第1のピストン9は、エラストマー材料から作られてもよい。
【0185】
第1のピストン9は、第1のチャンバ5の部分5cの内表面を密封状態で押し、1つまたは複数の環状シールリップ、たとえば、図示のように2つのリップ9bおよび9cを有してもよい。
【0186】
カートリッジ1は、プッシュロッド10を備えてもよく、プッシュロッド10の遠位端10aは、クリップ留め、ねじ留め、摩擦、および/または任意の他の手段によって、第1のピストン9に固定される。その近位端には、ロッド10は、注射デバイスの駆動システムと協働するなどのように構成されたヘッド10bを備える。
【0187】
カートリッジ1は、第1のピストン9が、プッシュロッド10によって駆動され、第1のチャンバ5内でその縦軸に沿って摺動するようにして配置される。
【0188】
一変形態では、カートリッジ1は、
図7に示すように、第1のピストン9もプッシュロッド10も備えていない。第1のピストン9は、その場合プッシュロッド10の遠位端10aに固定されてもよい。カートリッジ1の近位端3にある第1のチャンバ5の開口は、最初の使用の前に、カートリッジ1の近位端3に付着する取外し可能な薄膜(図示せず)で覆われてもよい。この薄膜は、カートリッジ1に収容された組成物が保護され、無菌のままであることを保証する。
【0189】
第2のチャンバ7は、図に示すように、環形状であって、第1のチャンバ5の周りに広がってもよい。好ましくは、第2のチャンバ7の容積は、第1のチャンバ5の容積よりも大きい。第2のチャンバ7の容積は、たとえば、100mm3以上である。
【0190】
第2のチャンバ7は、供給ダクト8によって第1のチャンバ5と連通する。供給ダクト8は、図に示すように、チャンバ5の軸に対して直角であってもよく、または上方もしくは下方に傾斜していてもよい。
【0191】
このダクト8は、第2のチャンバ7から第1のチャンバ5への組成物の流れの方向に開く弁11を備え付けられている。この弁には、この例ではボールで構成された遮断部材12を、停止状態に戻すためのばねがない。
【0192】
一変形態では、第2のチャンバ7は、複数の供給ダクト8によって第1のチャンバ5と連通する。これは、第2のチャンバ7から第1のチャンバ5へ組成物がより良く移動すること、特により速く移動することを可能にする。
【0193】
第2のチャンバ7は、その端部の一方で、この例では環形状であると考える第2のピストン14によって閉じられる。この第2のピストン14は、第2のチャンバ7の内壁7aを密封状態で押す。第2のピストン14は、1つまたは複数のシールリップ14aおよび14bを有してもよい。
【0194】
第2のピストン14は、任意の手段によって、第2のチャンバ7を空にする方向に駆動されてもよい。
【0195】
第1のチャンバ5、第2のチャンバ7、注射ノズル6、および供給ダクト8は、一体型構成要素内に形成されてもよい。一変形態では、それらは複数の構成要素の組立体によって形成される。
【0196】
カートリッジ1は、熱可塑性材料、特にポリカーボネート系材料から作られてもよい。注射される組成物と接触しているカートリッジ1の要素、特に第1のチャンバ5、第2のチャンバ7、供給ダクト8、および出口チャネル6aの壁は、ガラス、特にシリコーンガラスおよび/または脱パイロジェン(depyrogenated)ガラスで覆われてもよい。
【0197】
一変形態では、組成物の粘度が許す場合、カートリッジ1の半径方向外側の壁20は、変形可能な可撓性材料から作られる。その場合これは、使用者が、壁20に圧力、たとえば指圧をかけることによって、第2のチャンバ7に収容されている組成物を第1のチャンバ5に供給することを可能にする。
【0198】
別の変形態では、カートリッジは、第2のチャンバ7に収容されている組成物の充填レベルの視覚的インジケータ、たとえば、壁20に作られた透明窓を備える。
【0199】
カートリッジは、詳細には1つの用途に専用であってもよく、特に、皮膚の表面のしわ、たとえば唇鼻(labionasal)領域(笑線とも呼ばれる)、目尻の小じわ(crow's feet)領域、眉間領域、および/または額領域のしわの処置および/または予防に専用であってもよい。カートリッジは、小じわ、表面のしわ、および/または深いしわでの使用に専用であってもよい。
【0200】
活性化合物の性質は、注射される組成物に存在し、第1のチャンバおよび第2のチャンバならびに注射ノズルの容積および寸法は、目的用途、および組成物がルースパウダーであるときは粒子サイズ分布、または組成物が液体であるときは粘度など、組成物の物理的/化学的特性に適合させるために調整される。
【0201】
一変形態では、カートリッジ1は、複数の第2のチャンバを備える。各第2のチャンバは、少なくとも1つの供給ダクトによって第1のチャンバと連通する。各第2のチャンバは、管形状であって、第1のチャンバの外側に配置され、その近位端で対応する第2のピストンによって閉じられてもよい。これらの第2のチャンバはすべて、注射される同じ組成物を収容してもよい。一変形態では、第2のチャンバは、異なる組成物を収容する。これは、複数の用途において1つの同じカートリッジ1が使用されることを可能にする。適切な場合、第2のチャンバの少なくとも1つが、注射される組成物の代わりに洗浄剤を収容する。これは、カートリッジ1および複数の注射ノズル6が、異なる組成物の2回の注射の間に洗浄されることを可能にする。洗浄溶液は、相互に融和性があるように、注射される組成物の溶媒のうちの1つから選択され、イソデカン(isodecane)、揮発性シリコーンまたは他のアルコールまたは水を含んでもよい。
【0202】
カートリッジは、補充可能であっても、なくてもよい。
【0203】
図8に示すように、特に限定はしないが、ヒトのケラチン物質に注射される組成物Cが液体であるとき、注射システム150は、第1のチャンバ5内の、第1のピストン9とガスバッファ400との間に位置するある量の組成物Cを含んでもよい。
【0204】
好ましくは、バッファ400を構成するガスは、周囲空気である。
【0205】
エアバッファ400は、第1のピストン9が第1のチャンバ5内で上昇することによって得られてもよく、これによりある量の周囲空気が、注射ノズル6の出口チャネルまたは各出口チャネル6aの開口6cを通って引き込まれ、通って引き込まれたこの量の周囲空気が、エアバッファ400を形成する。
【0206】
好ましくは、ガスバッファ400の高さは、第1のピストン5の高さの半分以上である。
【0207】
カートリッジは、注射される組成物または処置されるヒトのケラチン物質の領域を加熱するための手段を備えてもよい。
【0208】
注射ノズル6の端面6bの断面積および曲率半径は、処置されるケラチン物質のタイプに従って、適宜に選ばれ、その場合面6bは、処置されるケラチン物質と直接接触して当てられる。曲率半径は、処置される領域の曲率に実質的に一致するなどのように選ばれてもよい。これは、いくつかの体表面への注射システムの適用を容易にすることを可能にする。たとえば、面6bは、外向きに凹んだ形状を有する。
【0209】
異なる形状のノズルを有する複数のカートリッジ1が、注射デバイスに取り付けるために使用者に提供されてもよい。これは、形に関して、処置されるケラチン物質の領域に最も適している注射ノズルを有するカートリッジ1を選択することを可能にする。
【0210】
図示していない一変形態では、カートリッジは、複数の注射を並行して、同時に、または連続して可能にするなどのために、それぞれのピストンを備え付けられた複数の第1のチャンバ5を備える。これらの第1のチャンバは、1つの同じ第2のチャンバによって、またはそれぞれの第2のチャンバによって供給されてもよい。単一の第1のチャンバ5のみを備える一例示的な実施形態に関する上の説明はすべて、複数の第1のチャンバを備える一変形態にも当てはまる。
【0211】
注射システム150は、注射デバイス150の縦軸に沿って第2のチャンバ7内で第2のピストン14を摺動させるなどのように構成されたアクチュエータ(図示せず)、特に環形状のアクチュエータを備えてもよい。これは、第1のチャンバ5に補充するために、第2のチャンバ7に収容された組成物の蓄えを、第1のチャンバ5に向かって移動させることを可能にする。
【0212】
ガスカートリッジ102は、アクチュエータを駆動することを可能にし得る。一変形態では、アクチュエータは、電磁石またはその圧縮が手動もしくは電動である場合があるばねによって、または任意の他の手段によって作動される。
【0213】
一変形態では、カートリッジ1は、第1のチャンバ5の周りにすべて配置され、各々がその近位端で第2のピストンによって閉じられた複数の第2のチャンバ7を備えてもよい。カートリッジ1は、回転する能力を備えて、注射デバイス100に取り付けられてもよい。注射デバイス上でのカートリッジ1の回転は、アクチュエータがカルーセル型配置の第2のチャンバのうちの1つと位置合わせされることを可能にする。この回転は、手動で行われてもよく、または電動で行われてもよい。これは、使用者が、第2のチャンバ7のうち、第1のチャンバ5に供給したいと思うものから1つを選択できることを意味する。
【0214】
別の変形態では、デバイスは複数のアクチュエータを備える。
【0215】
第2のチャンバ7に収容されている組成物の蓄えから第1のチャンバ5への供給は、使用者が作動することができる要素を用いて、同じく適宜に行われてもよい。
【0216】
注射システム150は、注射される1つまたは複数の組成物を収容する1つまたは複数のカートリッジ1とともに、たとえば、一般的なパッケージング内で使用者に提供されてもよく、これらのカートリッジは各々が、行われる処置のタイプに固有のノズルを有することが可能である。
【0217】
注射システム150は、持ち運びできる、自律システムを構成してもよい。
【0218】
注射システム150は、適切な場合には、たとえば電気機械センサー、電気接点、または電子チップを用いて、カートリッジ1を認識するためのシステムを備えてもよい。たとえば、カートリッジ1は、注射デバイス100によって読み取られるRFIDチップを備える。カートリッジ1は、したがって、注射デバイス100によって自動的に認識されてもよい。カートリッジが所定の位置にあることをデバイスが認識しているということは、デバイスの動作パラメータ、たとえば、ガスカートリッジ102を出るガスのパルスの圧力、継続時間、流量、および/または周波数が自動的に適合されることを可能にし得る。
【0219】
一変形態では、注射システム150の動作および/または設定は、たとえばスマートフォンで、遠隔制御される。注射システム150は、その場合ワイヤレス通信インターフェースを備える。
【0220】
本発明は、まさに説明した例に限定されない。たとえば、一変形態では、注射システムの推進機構には、第1のチャンバの内容物を加圧するためのプッシュロッドまたは第1のピストンがない。
【0221】
たとえば、組成物は粉末であり、ガスジェットによって第1のチャンバから注射される。この場合、第1のチャンバへの供給は、たとえば、ベンチュリ効果によって行われる。ノズルの出口での飛沫同伴ガスの速度は、組成物を少なくとも部分的に皮膚に浸透させるのに十分であるなどのように選ばれる。
【0222】
「備える」という用語は、それとは反対に規定されていない限り、その一般的に受け入れられる意味において、すなわち「少なくとも1つを備える」と同義であると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0223】
1 カートリッジ
5 第1のチャンバ
6 注射ノズル
7 第2のチャンバ
8 供給ダクト
9 第1のピストン
10 プッシュロッド
11 弁
12 遮断部材
14 第2のピストン
100 注射デバイス
102 ガスカートリッジ
105 ハウジング
140 調整および制御システム
150 無針注射システム
160 電源
300 ハンドピース
301 接続および分配インターフェース
302 熱橋
304 熱パッド
306 搬送ダクト
307 吐出領域
308 作動チャンバ
309 推力要素
310 弁
340 表面
400 ガスバッファ/エアバッファ